説明

汚染土壌浄化装置

【課題】有害有機物で汚染された土壌の浄化処理に係る効率を大幅に向上させることができる汚染土壌浄化装置を提供する。
【解決手段】土壌1と部分水溶性を有する洗浄溶剤5とを混合してスラリ6を生成させる混合槽110と、洗浄溶剤5が下方から上方へ向けて流通すると共に、スラリ6が上方から下方へ向けて流通する洗浄塔120と、洗浄塔120の下部に連結されて内部に水が充填されるシール槽130と、シール槽130に連結されて回収した土壌1を乾燥させる土壌後処理槽140と、洗浄塔120の上方に連結されて送出されてきた洗浄溶剤5と水3とを比重分離する第一の比重分離槽150と、第一の比重分離槽150で分離された洗浄溶剤5を蒸留して洗浄溶剤5と水3と有害有機物2を含有する濃縮物とに分離する蒸留装置160とを備えて汚染土壌浄化装置を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCBやダイオキシン類等の有機性塩素化合物や油等のような有害有機物で汚染された土壌から当該有害有機物を除去する汚染土壌浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
PCBやダイオキシン類等の有機性塩素化合物や油等のような有害有機物で汚染された土壌を浄化する従来の汚染土壌浄化装置の一例の概略構成を図7に示す(例えば、下記特許文献1〜3等参照)。
【0003】
図7に示すように、従来の汚染土壌浄化装置20は、有害有機物2で汚染された土壌1を投入された洗浄槽21内にアルコールやケトン等のような親水性の洗浄溶剤4が供給されて、当該土壌1中の有害有機物2を洗浄溶剤4に抽出移行した後、当該土壌1を乾燥させることにより、土壌1を浄化するようになっている。
【0004】
また、土壌1の洗浄に使用されて、有害有機物2と共に土壌1中の水3を含有した洗浄溶剤4は、蒸留装置22で蒸留されることにより、精製回収されて土壌1の洗浄に再び利用される。
【0005】
そして、洗浄溶剤4の精製によって残留する水3及び有害有機物2の混合物は、濃縮蒸留装置23でさらに濃縮蒸留され、水3が留去されることにより、減容化が図られる。回収された水3は、土壌1中へ戻され、有害有機物3の残留濃縮物は、有害有機物処理工程で無害化処理される。
【0006】
【特許文献1】特開平11−005075号公報
【特許文献2】特開2001−334249号公報
【特許文献3】特開2003−220380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したような従来の汚染土壌浄化装置20においては、土壌1が粘土質であると、洗浄槽21内の土壌1中に洗浄溶剤4が均一に浸透しにくいと同時に、土壌1中に洗浄溶剤4が残留しやすいため、砂や礫等の粗粒系の土壌の場合と比べて、作業効率が悪くなってしまっていた。
【0008】
このようなことから、本発明は、有害有機物で汚染された土壌の浄化処理に係る効率を大幅に向上させることができる汚染土壌浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するための、第一番目の発明による汚染土壌浄化装置は、有害有機物で汚染された土壌から当該有害有機物を除去する汚染土壌浄化装置であって、前記土壌と、水よりも小さい比重を有すると共に部分水溶性を有する洗浄溶剤とを混合して当該土壌のスラリを生成させるスラリ生成手段と、前記洗浄溶剤が下方から上方へ向けて流通すると共に、前記スラリが上方から下方へ向けて流通する洗浄塔と、前記洗浄塔の下部に連結されて、内部に水が充填されるシール槽と、前記シール槽に連結されて、回収された前記土壌を乾燥させる土壌の後処理手段と、前記洗浄塔の上方に連結されて、当該洗浄塔内から送出されてきた前記洗浄溶剤と水とを比重分離する第一の比重分離手段と、前記第一の比重分離手段で分離された前記洗浄溶剤を蒸留して当該洗浄溶剤と水と前記有害有機物を含有する濃縮物とに分離する蒸留手段とを備えていることを特徴とする。
【0010】
第二番目の発明による汚染土壌浄化装置は、第一番目の発明において、前記洗浄溶剤の水に対する飽和溶解度が30wt.%以下であることを特徴とする。
【0011】
第三番目の発明による汚染土壌浄化装置は、第一番目又は第二番目の発明において、前記蒸留手段が、蒸留する液に酸を加える第一の酸添加手段を備えていることを特徴とする。
【0012】
第四番目の発明による汚染土壌浄化装置は、第一番目から第三番目の発明のいずれかにおいて、水と共沸する共沸溶剤と、前記蒸留手段で分離回収された水とを混合して共沸蒸留することにより、当該水中に残存する有害有機物を含有する濃縮物を回収する濃縮蒸留手段を備えていることを特徴とする。
【0013】
第五番目の発明による汚染土壌浄化装置は、第四番目の発明において、前記共沸溶剤が、親水性を有するものであり、前記濃縮蒸留手段が、前記共沸溶剤と、前記蒸留手段で分離回収された水とを混合して共沸蒸留することにより、当該水中に残存する有害有機物を含有する濃縮物を回収する濃縮蒸留装置本体を備えていることを特徴とする。
【0014】
第六番目の発明による汚染土壌浄化装置は、第四番目の発明において、前記共沸溶剤が、部分水溶性を有するものであり、前記濃縮蒸留手段が、前記共沸溶剤と、前記蒸留手段で分離回収された水とを混合して共沸蒸留することにより、当該水中に残存する有害有機物を含有する濃縮物を回収する濃縮蒸留装置本体と、共沸蒸留された前記水と前記共沸溶剤とを比重分離する第二の比重分離手段と、比重分離された前記水を蒸留することにより、当該水が含有する前記共沸溶剤と当該水とを分離する再蒸留装置とを備えていることを特徴とする。
【0015】
第七番目の発明による汚染土壌浄化装置は、第六番目の発明において、前記共沸溶剤の水に対する飽和溶解度が30wt.%以下であることを特徴とする。
【0016】
第八番目の発明による汚染土壌浄化装置は、第四番目の発明において、前記共沸溶剤が、疎水性を有するものであり、前記濃縮蒸留手段が、前記共沸溶剤と、前記蒸留手段で分離回収された水とを混合して共沸蒸留することにより、当該水中に残存する有害有機物を含有する濃縮物を回収する濃縮蒸留装置本体と、共沸蒸留された前記水と前記共沸溶剤とを比重分離する第二の比重分離手段と、比重分離された前記水を曝気する第一の曝気手段とを備えていることを特徴とする。
【0017】
第九番目の発明による汚染土壌浄化装置は、第四番目から第八番目の発明のいずれかにおいて、前記濃縮蒸留手段で分離回収されて系外へ排出される前記水を流通させることにより、当該水の最終処理を行う分離膜装置及び活性炭槽を備えていることを特徴とする。
【0018】
第十番目の発明による汚染土壌浄化装置は、第四番目から第九番目の発明のいずれかにおいて、前記濃縮蒸留手段で回収された前記濃縮物を曝気する第二の曝気手段を備えていることを特徴とする。
【0019】
第十一番目の発明による汚染土壌浄化装置は、第四番目から第十番目の発明のいずれかにおいて、前記濃縮蒸留手段で蒸留する液に酸を加える第二の酸添加手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
第一番目の発明による汚染土壌浄化装置では、土壌が粘土質であっても、土壌中に洗浄溶剤を均一に浸透させることが容易にできるのはもちろんのこと、土壌中から洗浄溶剤を残留させることなく除去することが容易にできるので、土壌が粘土質であっても、効率よく処理を行うことができ、砂や礫等の粗粒系の土壌の場合と比べても遜色のない作業性を得ることができると共に、有害有機物を含有する洗浄溶剤が土壌に再付着することを容易に防止することができる。
【0021】
第二番目の発明による汚染土壌浄化装置では、土壌の洗浄処理を効率よく行うことができる。
【0022】
第三番目の発明による汚染土壌浄化装置では、蒸留する洗浄溶剤がアルカリ性を示すような場合であっても、蒸留時の洗浄溶剤の発泡を防止することができるので、蒸留の際に水と共に有害有機物が流出してしまうことを容易に防止することができ、作業効率を大幅に向上させることができる。
【0023】
第四番目の発明による汚染土壌浄化装置では、水と共に有害有機物質が系外へ流出してしまうことを確実に防止することが容易にできるので、有害有機物の混合物の減容化を容易に行うことができ、作業効率を大幅に向上させることができる。
【0024】
第五番目の発明による汚染土壌浄化装置では、第四番目の発明による効果を確実に得ることができる。
【0025】
第六番目の発明による汚染土壌浄化装置では、第四番目の発明による効果を確実に得ることができる。
【0026】
第七番目の発明による汚染土壌浄化装置では、第六番目の発明による効果を効率よく得ることができる。
【0027】
第八番目の発明による汚染土壌浄化装置では、第四番目の発明による効果を確実に得ることができる。
【0028】
第九番目の発明による汚染土壌浄化装置では、水と共に有害有機物質が系外へ流出してしまうことをさらに確実に防止することが容易にできる。
【0029】
第十番目の発明による汚染土壌浄化装置では、有害有機物の濃縮物のさらなる減容化を図ることができるので、後処理工程のさらなる容易化を図ることができる。
【0030】
第十一番目の発明による汚染土壌浄化装置では、水と共に有害有機物質が系外へ流出してしまうことを確実に防止することが容易にできるので、有害有機物の混合物の減容化を容易に行うことができ、作業効率を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明に係る汚染土壌浄化装置の実施形態を図面を用いて以下に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0032】
[第一番目の実施形態]
本発明に係る第一番目の実施形態を図1を用いて説明する。図1は、本発明に係る第一番目の実施形態の概略構成図である。
【0033】
本実施形態に係る汚染土壌浄化装置は、図1に示すように、PCBやダイオキシン類等の有機性塩素化合物や油等のような有害有機物2で汚染された土壌1から当該有害有機物2を除去する汚染土壌浄化装置100であって、土壌1と、水3よりも小さい比重を有すると共に部分水溶性を有する洗浄溶剤5とを混合して当該土壌1のスラリ6を生成させるスラリ生成手段である混合槽110と、洗浄溶剤5が下方から上方へ向けて流通すると共に、スラリ6が上方から下方へ向けて流通する洗浄塔120と、洗浄塔120の下部に連結されて、内部に水が充填されるシール槽130と、シール槽130に連結されて、回収された土壌1を乾燥させる土壌の後処理手段である土壌後処理槽140と、洗浄塔120の上方に連結されて、洗浄塔120内から送出されてきた洗浄溶剤5と水3とを比重分離する第一の比重分離手段である第一の比重分離槽150と、第一の比重分離槽150で分離された洗浄溶剤5を蒸留して洗浄溶剤5と水3と有害有機物2を含有する濃縮物とに分離する蒸留手段である蒸留装置160とを備えている。
【0034】
前記混合槽110は、土壌1及び洗浄溶剤5を供給される槽本体111と、土壌1と洗浄溶剤5とを撹拌する撹拌羽根112とを備えている。
【0035】
前記洗浄塔120は、前記混合槽110の槽本体110で生成したスラリ6を送給する送給ポンプ101が上部に連絡し、前記蒸留装置160で分離回収された洗浄溶剤5並びに新たに補充される洗浄溶剤5を送給する送給ポンプ102が下方に連絡している。
【0036】
前記シール槽130は、前記比重分離槽150で分離された水3及び前記蒸留装置160で分離回収された水3並びに運転開始時に系外から予め補給しておく水3を送給する送給ポンプ103が側方の上寄りに連絡している。
【0037】
前記土壌後処理槽140は、前記洗浄塔120からシール槽130を介して水3と共に送給されてきた土壌1から水3を除去するように当該土壌1と水3とを固液分離すると共に、固液分離した土壌1を乾燥させることができようになっている。
【0038】
前記第一の比重分離槽150は、前記洗浄塔120の上方から流出する洗浄溶剤5が上方から供給されると共に、前記土壌後処理槽140で分離された水3を送給する送給ポンプ104が上方に連絡している。
【0039】
前記蒸留装置160は、前記第一の比重分離槽150で分離された洗浄溶剤5を送給する送給ポンプ105が連結されて当該洗浄溶剤5を蒸留して水3と洗浄溶剤5及び有害有機物2とに分離する第一の蒸留装置161と、第一の蒸留装置161で分離された洗浄溶剤5及び有害有機物2を蒸留して洗浄溶剤5と有害有機物2を含有する濃縮物とに分離する第二の蒸留装置162とを備えている。
【0040】
なお、上記送給ポンプ105から送出される洗浄溶剤5は、その一部が前記混合槽110の槽本体111の内部に供給されるようになっている。
【0041】
また、前記洗浄溶剤5は、水3よりも小さい比重を有すると共に部分水溶性を有するものであり、特に、水に対する飽和溶解度が30wt.%以下であると好ましく、例えば、ブタノール、アミルアルコール、エチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のような、炭素数4以上の、アルコール系、エーテル系、ケトン系、エステル系等の溶剤であると好ましい。
【0042】
このような本実施形態に係る汚染土壌浄化装置100を使用した汚染土壌浄化方法を次に説明する。
【0043】
混合槽110の槽本体111の内部に洗浄溶剤5を供給し、撹拌羽根112を回転させながら土壌1を投入することによりスラリ6を生成させる。このとき、土壌1は、水3を含んでいるものの、上記洗浄溶剤5が部分水溶性であるため、洗浄溶剤5に対してまんべんなく分散して均一なスラリ6となると共に、土壌1に付着している有害有機物2が洗浄溶剤5に溶解して移行する。
【0044】
次に、送給ポンプ103を作動することにより、前記シール槽130内に水3を充填した後、送給ポンプ101を作動することにより、混合槽110の槽本体111のスラリ6を洗浄塔120の内部に上方から下方へ向けて供給すると共に、送給ポンプ102を作動することにより、洗浄塔120の内部に下方から上方へ向けて洗浄溶剤5を供給すると、上記スラリ6と洗浄溶剤5とが洗浄塔120内で対向流となって流通するようになる。
【0045】
このため、スラリ6中の洗浄溶剤5は、下方から流通してきた洗浄溶剤5により、上方へ押し流され土壌1から分離される一方、スラリ6中の土壌1は、洗浄溶剤5との比重差により、下方へそのまま流通し、シール槽130内へ供給される。
【0046】
これにより、スラリ1中の洗浄溶剤5及び洗浄塔120の内部に下方から供給された洗浄溶剤5は、土壌1に付着していた有害有機物2と共に洗浄塔120の上方から前記比重分離槽150内に送給され、土壌1は、有害有機物2を洗浄溶剤5と共に除去されてシール槽130内に堆積するようになる。
【0047】
また、シール槽130は、内部に水3が充填されていることから、有害有機物2を含有する洗浄溶剤5が内部に混入してしまうことはないので、内部に堆積した土壌1への有害有機物2の再付着が防止される。
【0048】
このようにして有害有機物2を洗浄除去された土壌1は、シール槽130内から土壌後処理槽140内に水3と共に送給され、当該処理槽140内で固液分離されると共に乾燥処理されることにより、水3(水3に溶存する洗浄溶剤5も含む)が除去された後、当該処理槽140から取り出されて浄化処理が終了する。一方、土壌1から分離された上記水3は、送給ポンプ104の作動により、前記比重分離槽150内に送給される。
【0049】
前記比重分離槽150内では、洗浄塔120の上方から送給されてきた洗浄溶剤5(有害有機物2含有)が上層に位置し、前記土壌後処理槽140から送給された水3が下層に位置するように二層に分離している。
【0050】
よって、必要に応じて送給ポンプ103を作動して、上記比重分離槽150内の下層の水3を前記シール槽130に供給することにより、当該シール槽130内で不足する水3を補充することができる。
【0051】
また、送給ポンプ105を作動し、上記比重分離槽150内の上層の洗浄溶剤5を蒸留装置160の第一の蒸留装置161に送給して蒸留することにより、当該洗浄溶剤5中に溶存する水3を留去することができ、有害有機物2を含有する洗浄溶剤5を分取することができる。留去された水3は、前記比重分離槽150からの水3と共に前記シール槽130内の水3の補充に利用される。
【0052】
なお、送給ポンプ105の作動により上記比重分離槽150内から送出される前記洗浄溶剤5は、蒸留装置160の第一の蒸留装置161に送給されるだけでなく、その一部が前記混合槽110の槽本体111の内部に供給されて再利用される。また、系内の水3が余剰となる場合、蒸留装置160の第一の蒸留装置161で留去された水3は、バルブ100aを開放して系外へ排出されるようになっている。
【0053】
一方、上記第一の蒸留装置161で分取された上記洗浄溶剤5は、第二の蒸留装置162で蒸留されることにより精製回収され、有害有機物2の濃縮物が残留する。精製回収された洗浄溶剤5は、送給ポンプ102の作動により、前記洗浄塔120の内部に下方から供給されるように再利用される。有害有機物2の濃縮残留物は、有害有機物処理工程で無害化処理される。
【0054】
つまり、本実施形態では、部分水溶性を有する洗浄溶剤5により土壌1をスラリ化することにより、土壌1を均一に分散させながら土壌1に流動性を与えると共に土壌1中の有害有機物2を洗浄溶剤5に移行させ、このスラリ6を洗浄溶剤5と対向流で接触させることにより、スラリ6の土壌1から有害有機物2と共に洗浄溶剤5を押し流して土壌1と有害有機物2及び洗浄溶剤5とを分離するようにしたのである。
【0055】
このため、本実施形態においては、土壌1が粘土質であっても、土壌1中に洗浄溶剤5を均一に浸透させることが容易にできるのはもちろんのこと、土壌1中から洗浄溶剤4を残留させることなく除去することが容易にできる。
【0056】
したがって、本実施形態によれば、土壌1が粘土質であっても、効率よく処理を行うことができ、砂や礫等の粗粒系の土壌の場合と比べても遜色のない作業性を得ることができる。
【0057】
また、部分水溶性を有する洗浄溶剤5との対向流で洗浄した土壌1を水3中に一旦送給するようにしたので、有害有機物2を含有する洗浄溶剤5が土壌1に再付着することを容易に防止することができる。
【0058】
[第二番目の実施形態]
本発明に係る第二番目の実施形態を図2を用いて説明する。図2は、本発明に係る第二番目の実施形態の概略構成図である。なお、前述した第一番目の実施形態の場合と同様な部分については、前述した第一番目の実施形態の説明で用いた符号と同一の符号を用いることにより、前述した第一番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0059】
本実施形態に係る汚染土壌浄化装置は、図2に示すように、有害有機物2で汚染された土壌1から当該有害有機物2を除去する汚染土壌浄化装置200であって、土壌1と洗浄溶剤5とを混合して当該土壌1のスラリ6を生成させるスラリ生成手段である混合槽110と、洗浄溶剤5が下方から上方へ向けて流通すると共に、スラリ6が上方から下方へ向けて流通する洗浄塔120と、洗浄塔120の下部に連結されて、内部に水が充填されるシール槽130と、シール槽130に連結されて、回収された土壌1を乾燥させる土壌の後処理手段である土壌後処理槽140と、洗浄塔120の上方に連結されて、洗浄塔120内から送出されてきた洗浄溶剤5と水3とを比重分離する第一の比重分離手段である第一の比重分離槽150と、第一の比重分離槽150で分離された洗浄溶剤5を蒸留して洗浄溶剤5と水3と有害有機物2を含有する濃縮物とに分離する蒸留手段である蒸留装置260とを備えている。
【0060】
前記蒸留装置260は、前記第一の比重分離槽150で分離された洗浄溶剤5を送給する送給ポンプ105が連結されて当該洗浄溶剤5を蒸留して水3と洗浄溶剤5及び有害有機物2とに分離する第一の蒸留装置161と、第一の蒸留装置161で分離された洗浄溶剤5及び有害有機物2を蒸留して洗浄溶剤5と有害有機物2を含有する濃縮物とに分離する第二の蒸留装置162と、第一の蒸留装置161で蒸留する上記洗浄溶剤5に塩酸や硫酸等の酸7を加える第一の酸添加手段である第一の酸添加装置263とを備えている。
【0061】
このような本実施形態に係る汚染土壌浄化装置200においては、送給ポンプ105を作動し、前記比重分離槽150内の上層の洗浄溶剤5を蒸留装置160の第一の蒸留装置161に送給すると共に、当該洗浄溶剤5のpHを計測し、当該洗浄溶剤5がアルカリ性(pH7を超える)の場合には、当該洗浄溶剤5が中性から弱酸性(pH6〜7)となるように前記酸添加装置263から当該洗浄溶剤5に酸7を添加してから、第一の蒸留装置161で当該洗浄溶剤5を蒸留する。
【0062】
つまり、本実施形態では、前述した第一番目の実施形態において、蒸留する洗浄溶剤5がアルカリ性の場合には、当該洗浄溶剤5を中性から弱酸性にするようにしたのである。
【0063】
なぜなら、蒸留する洗浄溶剤5がアルカリ性であると、当該洗浄溶剤5中に溶存する有害有機物2(特に油分)がアルカリ成分と反応して発泡しやすく、蒸留運転制御が難しくなってしまうからである。
【0064】
このため、本実施形態においては、蒸留する洗浄溶剤5がアルカリ性であっても、蒸留時には中性から弱酸性に調整されているので、蒸留時に洗浄溶剤5が発泡してしまうようなことはない。
【0065】
したがって、本実施形態によれば、前述した第一番目の実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、蒸留する洗浄溶剤5がアルカリ性を示すような場合であっても、蒸留時の洗浄溶剤5の発泡を防止することができるので、蒸留運転制御の安定化を容易に行うことができ、作業効率を大幅に向上させることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、第一の蒸留装置161で蒸留する液(水3及び有害有機物2を含有する洗浄溶液5)のみに酸7を添加するようにしたが、第二の蒸留装置162で蒸留する液(有害有機物2を含有する洗浄溶液5)もアルカリ性を示すようであれば、当該第二の蒸留装置162で蒸留する液にも酸7を添加できるように酸添加手段をさらに設けるようにすることも可能である。
【0067】
[第三番目の実施形態]
本発明に係る第三番目の実施形態を図3を用いて説明する。図3は、本発明に係る第三番目の実施形態の概略構成図である。なお、前述した第一,二番目の実施形態の場合と同様な部分については、前述した第一,二番目の実施形態の説明で用いた符号と同一の符号を用いることにより、前述した第一,二番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0068】
本実施形態に係る汚染土壌浄化装置は、図3に示すように、有害有機物2で汚染された土壌1から当該有害有機物2を除去する汚染土壌浄化装置300であって、土壌1と洗浄溶剤5とを混合して当該土壌1のスラリ6を生成させるスラリ生成手段である混合槽110と、洗浄溶剤5が下方から上方へ向けて流通すると共に、スラリ6が上方から下方へ向けて流通する洗浄塔120と、洗浄塔120の下部に連結されて、内部に水が充填されるシール槽130と、シール槽130に連結されて、回収された土壌1を乾燥させる土壌の後処理手段である土壌後処理槽140と、洗浄塔120の上方に連結されて、洗浄塔120内から送出されてきた洗浄溶剤5と水3とを比重分離する第一の比重分離手段である第一の比重分離槽150と、第一の比重分離槽150で分離された洗浄溶剤5を蒸留して洗浄溶剤5と水3と有害有機物2を含有する濃縮物とに分離する蒸留手段である蒸留装置260と、水3と共沸すると共に親水性を有する共沸溶剤8と蒸留装置260で分離回収された水3とを混合して共沸蒸留することにより、当該水3中に残存する有害有機物2を含有する濃縮物を回収する濃縮蒸留手段である濃縮蒸留装置370と、濃縮蒸留装置370で分離回収されて系外へ排出される水3を流通させることにより、当該水3の最終処理を行う分離膜装置381及び活性炭槽382とを備えている。
【0069】
前記共沸溶剤8は、水3と共沸すると共に親水性を有するものであり、例えば、エタノール、プロパノール等のようなアルコール系、ケトン系、エステル系等の溶剤であると好ましい。
【0070】
前記濃縮蒸留装置370は、蒸留装置260で分離回収されて前記バルブ100aを介して送給ポンプ106により送給されてきた水3と前記共沸溶剤8とを混合して共沸蒸留することにより、当該水3中に万が一にでも残存してしまったごくわずかな有害有機物2を含有する濃縮物を回収する濃縮蒸留装置本体371を備えている。
【0071】
前記分離膜装置381は、濃縮蒸留装置370で分離回収されて系外へ排出される前記水3と共沸溶剤8との混合液が流通することにより、当該混合液に万が一にでも混入してしまった非常に微量な不溶の有害有機物2を当該混合液から除去することができるようになっている。
【0072】
前記活性炭槽382は、前記分離膜装置381を流通した前記混合液が流通することにより、当該混合液に万が一にでも混入溶解してしまった非常に微量な有害有機物2を当該混合液から除去することができるようになっている。
【0073】
このような本実施形態に係る汚染土壌浄化装置300においては、蒸留装置260で分離回収されて前記バルブ100aを介して送給ポンプ106により送給されてきた水3と前記共沸溶剤8とが濃縮蒸留装置370の濃縮蒸留装置本体371で混合されて共沸蒸留されることにより、当該水3中に万が一にでも残存してしまったごくわずかな有害有機物2を含有する濃縮物と水3及び共沸溶剤8の混合液とが分離回収される。
【0074】
分離回収された有害有機物2の濃縮物は、有害有機物処理工程で無害化処理される。一方、分離回収された水3及び共沸溶剤8の混合液は、分離膜装置381を流通することにより、当該混合液に万が一にでも混入してしまった非常に微量な不溶の有害有機物2が確実に除去された後、活性炭槽382を流通することにより、当該混合液に万が一にでも混入溶解してしまった非常に微量な有害有機物2が確実に除去されてから、系外へ排出される。
【0075】
つまり、本実施形態は、前述した第二番目の実施形態において、系外へ排出する水3を共沸溶剤8と共に共沸蒸留することにより、当該水3中に万が一にでも残存してしまったごくわずかな有害有機物2を確実に除去すると共に、分離回収した前記混合液を濾過処理及び吸着処理することにより、当該混合液に万が一にでも混入してしまった非常に微量な各種の有害有機物2も確実に除去するようにしたのである。
【0076】
このため、本実施形態においては、水3と共に有害有機物質3が系外へ流出してしまうことを確実に防止することが容易にできる。
【0077】
したがって、本実施形態によれば、前述した第二番目の実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、水3と共に有害有機物質3が系外へ流出してしまうことを確実に防止することが容易にできるので、有害有機物2の混合物の減容化を容易に行うことができ、作業効率を大幅に向上させることができる。
【0078】
[第四番目の実施形態]
本発明に係る第四番目の実施形態を図4を用いて説明する。図4は、本発明に係る第四番目の実施形態の概略構成図である。なお、前述した第一〜三番目の実施形態の場合と同様な部分については、前述した第一〜三番目の実施形態の説明で用いた符号と同一の符号を用いることにより、前述した第一〜三番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0079】
本実施形態に係る汚染土壌浄化装置は、図4に示すように、有害有機物2で汚染された土壌1から当該有害有機物2を除去する汚染土壌浄化装置400であって、土壌1と洗浄溶剤5とを混合して当該土壌1のスラリ6を生成させるスラリ生成手段である混合槽110と、洗浄溶剤5が下方から上方へ向けて流通すると共に、スラリ6が上方から下方へ向けて流通する洗浄塔120と、洗浄塔120の下部に連結されて、内部に水が充填されるシール槽130と、シール槽130に連結されて、回収された土壌1を乾燥させる土壌の後処理手段である土壌後処理槽140と、洗浄塔120の上方に連結されて、洗浄塔120内から送出されてきた洗浄溶剤5と水3とを比重分離する第一の比重分離手段である第一の比重分離槽150と、第一の比重分離槽150で分離された洗浄溶剤5を蒸留して洗浄溶剤5と水3と有害有機物2を含有する濃縮物とに分離する蒸留手段である蒸留装置260と、水3と共沸すると共に部分水溶性を有する共沸溶剤9と蒸留装置260で分離回収された水3とを混合して共沸蒸留することにより、当該水3中に残存する有害有機物2を含有する濃縮物を回収する濃縮蒸留手段である濃縮蒸留装置470と、濃縮蒸留装置470で分離回収されて系外へ排出される水3を流通させることにより、当該水3の最終処理を行う分離膜装置381及び活性炭槽382とを備えている。
【0080】
前記共沸溶剤9は、部分水溶性を有するものであり、特に、水に対する飽和溶解度が30wt.%以下であると好ましく、例えば、ブタノール、アミルアルコール、エチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のような、炭素数4以上の、アルコール系、エーテル系、ケトン系、エステル系等の溶剤であると好ましい。
【0081】
前記濃縮蒸留装置470は、蒸留装置260で分離回収されて前記バルブ100aを介して送給ポンプ106により送給されてきた水3と前記共沸溶剤9とを混合して共沸蒸留することにより、当該水3中に万が一にでも残存してしまったごくわずかな有害有機物2を含有する濃縮物を回収する濃縮蒸留装置本体371と、共沸蒸留された水3と共沸溶剤9とを比重分離する第二の比重分離手段である第二の比重分離槽472と、比重分離された水3を蒸留することにより、当該水3が含有する共沸溶剤9と当該水3とを分離する再蒸留装置473とを備えている。
【0082】
前記第二の比重分離槽472は、濃縮蒸留装置本体371で共沸蒸留した水3及び共沸溶剤9が内部に上方から供給され、共沸溶剤9が上層に位置し、水3が下層に位置するようにこれら液3,9を二層に分離することができるようになっている。
【0083】
前記再蒸留装置473は、前記比重分離槽472の内部下方から送給ポンプ107を介して送給されてきた水3を蒸留することにより、当該水3中に溶存する共沸溶剤9と水3とに分離することができるようになっている。なお、分離された共沸溶剤9は、送給ポンプ108を介して前記濃縮蒸留装置本体371内に再び供給されるようになっている。
【0084】
このような本実施形態に係る汚染土壌浄化装置400においては、濃縮蒸留装置470の濃縮蒸留装置本体371で共沸蒸留された水3及び共沸溶剤9が前記比重分離槽472に送給されて比重分離され、比重分離された共沸溶剤9が上記濃縮蒸留装置本体371内に戻される一方、比重分離された水3がポンプ107を介して再蒸留装置473に送給され、溶存している共沸溶剤9と水3とに分離され、蒸留分離された共沸溶剤9が上記濃縮蒸留装置本体371内に戻される。蒸留分離された水3は、分離膜装置381及び活性炭槽382を流通して系外へ排出される。
【0085】
つまり、前述した第三番目の実施形態は、親水性を有する共沸溶剤8を適用した場合であったが、本実施形態は、部分水溶性を有する共沸溶剤9を適用した場合なのである。
【0086】
したがって、本実施形態によれば、前述した第三番目の実施形態の場合と同様な効果を得ることができる。
【0087】
[第五番目の実施形態]
本発明に係る第五番目の実施形態を図5を用いて説明する。図5は、本発明に係る第五番目の実施形態の概略構成図である。なお、前述した第一〜四番目の実施形態の場合と同様な部分については、前述した第一〜四番目の実施形態の説明で用いた符号と同一の符号を用いることにより、前述した第一〜四番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0088】
本実施形態に係る汚染土壌浄化装置は、図5に示すように、有害有機物2で汚染された土壌1から当該有害有機物2を除去する汚染土壌浄化装置500であって、土壌1と洗浄溶剤5とを混合して当該土壌1のスラリ6を生成させるスラリ生成手段である混合槽110と、洗浄溶剤5が下方から上方へ向けて流通すると共に、スラリ6が上方から下方へ向けて流通する洗浄塔120と、洗浄塔120の下部に連結されて、内部に水が充填されるシール槽130と、シール槽130に連結されて、回収された土壌1を乾燥させる土壌の後処理手段である土壌後処理槽140と、洗浄塔120の上方に連結されて、洗浄塔120内から送出されてきた洗浄溶剤5と水3とを比重分離する第一の比重分離手段である第一の比重分離槽150と、第一の比重分離槽150で分離された洗浄溶剤5を蒸留して洗浄溶剤5と水3と有害有機物2を含有する濃縮物とに分離する蒸留手段である蒸留装置260と、水3と共沸すると共に疎水性を有する共沸溶剤10と蒸留装置260で分離回収された水3とを混合して共沸蒸留することにより、当該水3中に残存する有害有機物2を含有する濃縮物を回収する濃縮蒸留手段である濃縮蒸留装置570と、濃縮蒸留装置570で分離回収されて系外へ排出される水3を流通させることにより、当該水3の最終処理を行う分離膜装置381及び活性炭槽382とを備えている。
【0089】
前記共沸溶剤10は、疎水性を有するものであり、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン等のような、脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素系等の溶剤であると好ましい。
【0090】
前記濃縮蒸留装置570は、蒸留装置260で分離回収されて前記バルブ100aを介して送給ポンプ106により送給されてきた水3と前記共沸溶剤10とを混合して共沸蒸留することにより、当該水3中に万が一にでも残存してしまったごくわずかな有害有機物2を含有する濃縮物を回収する濃縮蒸留装置本体371と、共沸蒸留された水3と共沸溶剤10とを比重分離する第二の比重分離手段である第二の比重分離槽472と、比重分離された水3を曝気することにより、当該水3にわずかながらも混在している共沸溶剤10を除去する第一の曝気手段であるブロア574、曝気管575、曝気槽576、冷却器577等とを備えている。
【0091】
このような本実施形態に係る汚染土壌浄化装置500においては、濃縮蒸留装置470の濃縮蒸留装置本体371で共沸蒸留されて前記比重分離槽472で比重分離された共沸溶剤10が上記濃縮蒸留装置本体371内に戻される一方、比重分離された水3が前記曝気槽576内に送給され、ブロア574を介して曝気管575から曝気槽576内の水3中に空気11が送出されることにより、当該水3が曝気され、当該水3にわずかながらも混在してしまった共沸溶剤10が気化され、当該水3から当該共沸溶剤10が完全に除去される。
【0092】
気化した共沸溶剤10は、冷却器577で冷却されて液化され、送給ポンプ108を介して前記濃縮蒸留装置本体371内に戻される一方、当該共沸溶剤10を完全に除去された水3は、分離膜装置381及び活性炭槽382を流通して系外へ排出される。
【0093】
つまり、前述した第三番目の実施形態は、親水性を有する共沸溶剤8を適用した場合であり、前述した第四番目の実施形態は、部分水溶性を有する共沸溶剤9を適用した場合であったが、本実施形態は、疎水性を有する共沸溶剤10を適用した場合なのである。
【0094】
したがって、本実施形態によれば、前述した第三,四番目の実施形態の場合と同様な効果を得ることができる。
【0095】
[第六番目の実施形態]
本発明に係る第六番目の実施形態を図6を用いて説明する。図6は、本発明に係る第六番目の実施形態の概略構成図である。なお、前述した第一〜五番目の実施形態の場合と同様な部分については、前述した第一〜五番目の実施形態の説明で用いた符号と同一の符号を用いることにより、前述した第一〜五番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0096】
本実施形態に係る汚染土壌浄化装置は、図6に示すように、有害有機物2で汚染された土壌1から当該有害有機物2を除去する汚染土壌浄化装置600であって、土壌1と洗浄溶剤5とを混合して当該土壌1のスラリ6を生成させるスラリ生成手段である混合槽110と、洗浄溶剤5が下方から上方へ向けて流通すると共に、スラリ6が上方から下方へ向けて流通する洗浄塔120と、洗浄塔120の下部に連結されて、内部に水が充填されるシール槽130と、シール槽130に連結されて、回収された土壌1を乾燥させる土壌の後処理手段である土壌後処理槽140と、洗浄塔120の上方に連結されて、洗浄塔120内から送出されてきた洗浄溶剤5と水3とを比重分離する第一の比重分離手段である第一の比重分離槽150と、第一の比重分離槽150で分離された洗浄溶剤5を蒸留して洗浄溶剤5と水3と有害有機物2を含有する濃縮物とに分離する蒸留手段である蒸留装置260と、水3と共沸すると共に疎水性を有する共沸溶剤10と蒸留装置260で分離回収された水3とを混合して共沸蒸留することにより、当該水3中に残存する有害有機物2を含有する濃縮物を回収する濃縮蒸留手段である濃縮蒸留装置570と、濃縮蒸留装置570で分離回収されて系外へ排出される水3を流通させることにより、当該水3の最終処理を行う分離膜装置381及び活性炭槽382と、濃縮蒸留装置570で回収された前記濃縮物を曝気する第二の曝気手段である曝気装置690とを備えている。
【0097】
前記曝気装置690は、濃縮蒸留装置570の濃縮蒸留装置本体371で回収された有害有機物2の濃縮物が供給される曝気槽691と、この曝気槽691の内部下方に配設された曝気管692と、この曝気管692に連結されて空気11を送給するブロア693と、曝気槽691の上方に連結された冷却器694とを備えている。
【0098】
このような本実施形態に係る汚染土壌浄化装置500においては、濃縮蒸留装置570の濃縮蒸留装置本体371で回収された有害有機物2の濃縮物を曝気装置690の曝気槽691の内部に送給し、ブロア693を介して曝気管692から曝気槽691内の前記濃縮物中に空気11を送出すると、当該濃縮物が曝気され、当該濃縮物中に混在している共沸溶剤10が気化され、当該濃縮物がさらに高濃縮化される。
【0099】
高濃縮化された有害有機物2は、有害有機物処理工程で無害化処理される。一方、気化された上記共沸溶剤10は、冷却器694で冷却されて液化され、送給ポンプ109を介して前記濃縮蒸留装置570の前記濃縮蒸留装置本体371内に戻される。
【0100】
つまり、本実施形態は、前述した第五番目の実施形態において、濃縮蒸留装置570で回収された有害有機物2の濃縮物を曝気するようにしたのである。
【0101】
このため、本実施形態では、上記濃縮物をさらに高濃縮化することができ、さらに減容化を図ることができる。
【0102】
したがって、本実施形態によれば、前述した第五番目の実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、有害有機物2の濃縮物のさらなる減容化を図ることができるので、後処理工程のさらなる容易化を図ることができる。
【0103】
[他の実施形態]
なお、前述した第三〜六番目の実施形態において、濃縮蒸留装置本体371や再蒸留装置437で蒸留する水3に酸7を加える第二の酸添加手段を設けることにより、前述した第二番目の実施形態の場合と同様に、蒸留する水3がアルカリ性の場合には、当該水3を中性から弱酸性にして蒸留するようにすることも可能である。
【0104】
また、前述した第六番目の実施形態では、前述した第五番目の実施形態における濃縮蒸留装置570で回収された有害有機物2の濃縮物を曝気装置690で曝気することにより、当該濃縮物のさらなる減容化を図るようにしたが、例えば、前述した第三、四番目の実施形態における濃縮蒸留装置370,470で回収された有害有機物2の濃縮物を曝気装置690で曝気することにより、当該濃縮物のさらなる減容化を図ることも可能である。
【0105】
また、前述した第三〜六番目の実施形態では、前述した第二番目の実施形態に係る汚染土壌浄化装置200から排出される水3を、濃縮蒸留装置370,470,570、分離膜装置381、活性炭槽382、曝気装置690等によりさらに処理する場合について説明したが、本発明に係る汚染水浄化方法及び汚染水浄化装置は、このような場合に限らず、有害有機物を含有する水から当該有害有機物を除去する場合であれば、前述した第三〜六番目の実施形態の場合と同様にして適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明による汚染土壌浄化装置は、PCBやダイオキシン類等の有機性塩素化合物や油等のような有害有機物で汚染された土壌から当該有害有機物を除去する場合に利用することができるので、産業上、極めて有益である。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明に係る第一番目の実施形態の概略構成図である。
【図2】本発明に係る第二番目の実施形態の概略構成図である。
【図3】本発明に係る第三番目の実施形態の概略構成図である。
【図4】本発明に係る第四番目の実施形態の概略構成図である。
【図5】本発明に係る第五番目の実施形態の概略構成図である。
【図6】本発明に係る第六番目の実施形態の概略構成図である。
【図7】従来の汚染土壌浄化装置の一例の概略構成図である。
【符号の説明】
【0108】
1 土壌
2 有害有機物
3 水
5 洗浄溶剤
6 スラリ
7 酸
8〜10 共沸溶剤
11 空気
100 汚染土壌浄化装置
100a バルブ
101〜109 送給ポンプ
110 混合槽
111 槽本体
112 撹拌羽根
120 洗浄塔
130 シール槽
140 土壌後処理槽
150 第一の比重分離槽
160 蒸留装置
161 第一の蒸留塔
162 第二の蒸留塔
200 汚染土壌浄化装置
260 蒸留装置
263 第一の酸添加装置
300 汚染土壌浄化装置
370 濃縮蒸留装置
371 濃縮蒸留装置本体
381 分離膜装置
382 活性炭槽
400 汚染土壌浄化装置
470 濃縮蒸留装置
472 第二の比重分離槽
473 再蒸留装置
500 汚染土壌浄化装置
570 濃縮蒸留装置
574 ブロア
575 曝気管
576 曝気槽
577 冷却器
600 汚染土壌浄化装置
690 曝気装置
691 曝気槽
692 曝気管
693 ブロア
694 冷却器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害有機物で汚染された土壌から当該有害有機物を除去する汚染土壌浄化装置であって、
前記土壌と、水よりも小さい比重を有すると共に部分水溶性を有する洗浄溶剤とを混合して当該土壌のスラリを生成させるスラリ生成手段と、
前記洗浄溶剤が下方から上方へ向けて流通すると共に、前記スラリが上方から下方へ向けて流通する洗浄塔と、
前記洗浄塔の下部に連結されて、内部に水が充填されるシール槽と、
前記シール槽に連結されて、回収された前記土壌を乾燥させる土壌の後処理手段と、
前記洗浄塔の上方に連結されて、当該洗浄塔内から送出されてきた前記洗浄溶剤と水とを比重分離する第一の比重分離手段と、
前記第一の比重分離手段で分離された前記洗浄溶剤を蒸留して当該洗浄溶剤と水と前記有害有機物を含有する濃縮物とに分離する蒸留手段と
を備えていることを特徴とする汚染土壌浄化装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記洗浄溶剤の水に対する飽和溶解度が30wt.%以下である
ことを特徴とする汚染土壌浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記蒸留手段が、蒸留する液に酸を加える第一の酸添加手段を備えている
ことを特徴とする汚染土壌浄化装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかにおいて、
水と共沸する共沸溶剤と、前記蒸留手段で分離回収された水とを混合して共沸蒸留することにより、当該水中に残存する有害有機物を含有する濃縮物を回収する濃縮蒸留手段を備えている
ことを特徴とする汚染土壌浄化装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記共沸溶剤が、親水性を有するものであり、
前記濃縮蒸留手段が、
前記共沸溶剤と、前記蒸留手段で分離回収された水とを混合して共沸蒸留することにより、当該水中に残存する有害有機物を含有する濃縮物を回収する濃縮蒸留装置本体を備えている
ことを特徴とする汚染土壌浄化装置。
【請求項6】
請求項4において、
前記共沸溶剤が、部分水溶性を有するものであり、
前記濃縮蒸留手段が、
前記共沸溶剤と、前記蒸留手段で分離回収された水とを混合して共沸蒸留することにより、当該水中に残存する有害有機物を含有する濃縮物を回収する濃縮蒸留装置本体と、
共沸蒸留された前記水と前記共沸溶剤とを比重分離する第二の比重分離手段と、
比重分離された前記水を蒸留することにより、当該水が含有する前記共沸溶剤と当該水とを分離する再蒸留装置と
を備えていることを特徴とする汚染土壌浄化装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記共沸溶剤の水に対する飽和溶解度が30wt.%以下である
ことを特徴とする汚染土壌浄化装置。
【請求項8】
請求項4において、
前記共沸溶剤が、疎水性を有するものであり、
前記濃縮蒸留手段が、
前記共沸溶剤と、前記蒸留手段で分離回収された水とを混合して共沸蒸留することにより、当該水中に残存する有害有機物を含有する濃縮物を回収する濃縮蒸留装置本体と、
共沸蒸留された前記水と前記共沸溶剤とを比重分離する第二の比重分離手段と、
比重分離された前記水を曝気する第一の曝気手段と
を備えていることを特徴とする汚染土壌浄化装置。
【請求項9】
請求項4から請求項8のいずれかにおいて、
前記濃縮蒸留手段で分離回収されて系外へ排出される前記水を流通させることにより、当該水の最終処理を行う分離膜装置及び活性炭槽を備えている
ことを特徴とする汚染土壌浄化装置。
【請求項10】
請求項4から請求項9のいずれかにおいて、
前記濃縮蒸留手段で回収された前記濃縮物を曝気する第二の曝気手段を備えている
ことを特徴とする汚染土壌浄化装置。
【請求項11】
請求項4から請求項10のいずれかにおいて、
前記濃縮蒸留手段で蒸留する液に酸を加える第二の酸添加手段を備えている
ことを特徴とする汚染土壌浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−218479(P2006−218479A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146194(P2006−146194)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【分割の表示】特願2003−339450(P2003−339450)の分割
【原出願日】平成15年9月30日(2003.9.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】