説明

油圧シリンダ装置

【課題】複雑な構造を用いなくてもダウン動作を高速化させることができ、かつ、外部から荷重が加わった状態でも安定した動作を行うことができる油圧シリンダ装置を提供する。
【解決手段】油圧シリンダ装置は、油圧ポンプ20と油圧シリンダ7とを備えている。油圧回路100には、油圧シリンダ7のロッド9を収縮させるダウン動作時に、第1油室11Aから回収した余剰油をリザーバタンク15に返送する返送路34が設けられている。返送路34の一端は、第1チェック弁41Aと油圧ポンプ20の第1ポート21Aとの間に接続されている。返送路34の他端はリザーバタンク15に接続されている。ダウン動作時には、第1シャトル52Aが第1チェック弁41A側に移動し、返送路34が開通される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダを備え、当該油圧シリンダによって駆動力を出力する油圧シリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、油圧シリンダ装置は、小型でありながら大きな駆動力を出力できる装置として、各種の機械および装置等に利用されている。例えば、油圧シリンダ装置は、船外機や農機具等に対して好適に利用されている。
【0003】
油圧シリンダ装置が備える油圧シリンダとして、いわゆるシングルロッド型の油圧シリンダが知られている。シングルロッド型の油圧シリンダは、シリンダチューブと、シリンダチューブ内を摺動するピストンと、ピストンの一方の側からシリンダチューブの外部に延びるロッドとを備えている。シリンダチューブ内はピストンにより、第1油室と第2油室とに区画されている。
【0004】
以下の説明では、ロッドは第2油室を通ってシリンダチューブの外部に延びているものとする。また、ロッドのシリンダチューブから外部に延びている部分を伸長させる動作をアップ動作と称し、ロッドのシリンダチューブから外部に延びている部分を収縮させる動作をダウン動作と称することとする。また、ロッドのシリンダチューブから外部に延びている部分が伸長することを、単に「ロッドの伸張」と称する。ロッドのシリンダチューブから外部に延びている部分が収縮することを、単に「ロッドの収縮」と称する。アップ動作時には、第1油室に油が供給されると共に第2油室から油が回収され、ピストンは第1油室側から第2油室側に移動する。ダウン動作時には、第1油室から油が回収されると共に第2油室に油が供給され、ピストンは第2油室側から第1油室側に移動する。ピストンの移動に伴って、第1油室および第2油室の容積は変化する。ところが、第1油室内にはロッドが存在しないのに対し、第2油室内にはロッドが存在しているため、第1油室と第2油室とでは容積の変化量が異なる。第1油室の容積の変化量は、第2油室の容積の変化量よりも大きくなる。そのため、ダウン動作時には、第1油室から回収する油の量は、第2油室に供給する油の量よりも多くなる。回収量から供給量を引いた分の油、言い換えると余剰油は、リザーバタンクに返送する必要がある。
【0005】
余剰油をリザーバタンクに返送する方法として、第1油室から回収した油をいったん油圧ポンプに吸入させ、油圧ポンプから第2油室に油を供給する一方、油圧ポンプから吐出される油の一部をリザーバタンクに排出する方法が考えられる。しかし、この方法では、余剰油は油圧ポンプを経由してからリザーバタンクに返送されることになる。そのため、余剰油の返送が円滑に行われにくく、ダウン動作が遅くなるという課題がある。
【0006】
そこで、ダウン動作を高速化するための技術として、例えば、下記特許文献1および2に記載された技術が知られている。
【0007】
特許文献1に記載された装置では、第1油室と油圧ポンプとをつなぐ通路に、リザーバタンクに連通する返送路が接続されている。この返送路には、ダウン動作時に開かれる電磁弁が設けられている。ダウン動作時には電磁弁が開かれ、第1油室から回収された余剰油は、返送路を通じてリザーバタンクに返送される。余剰油は油圧ポンプを経由することなくリザーバタンクに返送されるので、ダウン動作の高速化が図られる。
【0008】
特許文献2に記載された装置では、油圧ポンプとリザーバタンクとの間に、正逆双方向の油の流れを制御する切換弁が設けられている。切換弁は、アップ動作時には、第2油室とリザーバタンクとを連通させ、油圧ポンプには、第2油室およびリザーバタンクの双方から油が吸入される。切換弁は、ダウン動作時には、第1油室とリザーバタンクとを連通させる。ダウン動作時には、第1油室から回収された余剰油は、切換弁を経てリザーバタンクに返送される。余剰油は油圧ポンプを経由することなくリザーバタンクに返送されるので、ダウン動作の高速化が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−291794号公報
【特許文献2】特開2006−105226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1に記載された装置では、返送路に専用の電磁弁を設ける必要がある。また、上記電磁弁をダウン動作と連動して開く必要があるため、ダウン動作を検知する手段が別途必要となる。そのため、構造が複雑化するという課題があった。
【0011】
特許文献2に記載された装置では、ダウン動作を検知する手段は不要である。しかし、リザーバタンクは、ダウン動作時に第1油室と連通するだけでなく、アップ動作時に第2油室と連通する。油圧シリンダ装置は、外部から荷重が加わった状態で作動する場合がある。例えば、ロッドを伸長させる方向の荷重が外部から加わっている状態のときに、アップ動作を行う場合がある。このような場合、第2油室の油圧は通常よりも大きくなってしまう。特許文献2に記載された装置では、アップ動作時に切換弁がリザーバタンクと第2油室とを連通させるため、上記のような場合に、第2油室の油の一部がリザーバタンクに流入するおそれがある。すなわち、本来は第2油室およびリザーバタンクの双方から油圧ポンプに油が吸入されなければならないところ、第2油室の油の一部がリザーバタンクに返送され、油の逆流が生じるおそれがあった。そのため、動作が不安定となるおそれがあった。
【0012】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複雑な構造を用いなくてもダウン動作を高速化させることができ、かつ、外部から荷重が加わった状態でも安定した動作を行うことができる油圧シリンダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る油圧シリンダ装置は、油圧シリンダと、油圧ポンプと、油が貯留されたリザーバタンクと、第1通路と、第2通路と、第1チェック弁と、第2チェック弁と、開放機構と、第3通路と、返送路とを備える。前記油圧シリンダは、シリンダチューブと、前記シリンダチューブを第1油室と第2油室とに区画するピストンと、前記ピストンから前記第2油室内を通って前記シリンダチューブの外部に延びるロッドと、を有するシングルロッド型の油圧シリンダである。前記油圧ポンプは、第1ポートおよび第2ポートを有し、油を前記第2ポートから吸入すると共に前記第1ポートから吐出する第1の運転と、油を前記第1ポートから吸入すると共に前記第2ポートから吐出する第2の運転とを選択的に実行可能に構成されている。前記第1通路は、前記第1ポートと前記第1油室とを接続する。前記第2通路は、前記第2ポートと前記第2油室とを接続する。前記第1チェック弁は、前記第1通路に設けられ、前記第1ポートから前記第1油室に向かって油が流れるときに開くように構成されている。前記第2チェック弁は、前記第2通路に設けられ、前記第2ポートから前記第2油室に向かって油が流れるときに開くように構成されている。前記開放機構は、前記油圧ポンプが前記第1の運転を行うときに前記第2チェック弁を開き、前記油圧ポンプが前記第2の運転を行うときに前記第1チェック弁を開くように構成されている。前記第3通路は、一端が前記リザーバタンクに接続され、他端が前記第2チェック弁と前記第2ポートとの間に接続され、前記一端から前記他端に向かう油の流れを許容する第3チェック弁が設けられている。前記返送路は、一端が前記第1チェック弁と前記第1ポートとの間に接続され、他端が前記リザーバタンクに接続され、前記油圧ポンプが前記第1の運転を行うときおよび停止しているときには閉鎖され、前記油圧ポンプが前記第2の運転を行うときには開通されるように構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複雑な構造を用いなくてもダウン動作を高速化させることができ、かつ、外部から荷重が加わった状態でも安定した動作を行うことができる油圧シリンダ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係る油圧シリンダ装置が搭載された船舶の後部を側方から見た断面図である。
【図2】油圧シリンダ装置の油圧回路図である。
【図3】アップ動作時の油の流れを示す油圧回路図である。
【図4】ダウン動作時の油の流れを示す油圧回路図である。
【図5】第1実施形態に係る油圧シリンダ装置の断面図である。
【図6】第1実施形態に係る油圧シリンダ装置の一部の拡大断面図である。
【図7】ポンプケースの上ケースの底面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図7のIX−IX線断面図である。
【図10】第1実施形態に係る油圧シリンダ装置の一部のアップ動作時における拡大断面図である。
【図11】第1実施形態に係る油圧シリンダ装置の一部のダウン動作時における拡大断面図である。
【図12】第1実施形態の変形例に係る油圧回路図である。
【図13】第1実施形態の他の変形例に係る油圧回路図である。
【図14】第2実施形態に係る油圧シリンダ装置の部分断面図である。
【図15】第3実施形態に係る油圧シリンダ装置の断面図である。
【図16】第3実施形態に係る油圧シリンダ装置のダウン動作時の断面図である。
【図17】第3実施形態に係る油圧シリンダ装置のアップ動作時の断面図である。
【図18】第3実施形態に係る油圧シリンダ装置の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る油圧シリンダ装置の実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明に係る油圧シリンダ装置を、船体に対する船外機の取付角度を調整するトリム装置に適用したものである。ただし、本発明に係る油圧シリンダ装置は様々な機械および装置等に適用可能であり、その適用対象はトリム装置に限定される訳ではない。
【0017】
(船舶の構成)
図1に示すように、船舶1は、水2に浮かぶ船体3と、船体3の後部に取り付けられたクランプブラケット4と、クランプブラケット4に水平軸5によって揺動可能に支持された船外機6とを備えている。船外機6は、水面下に配置されたプロペラ8と、プロペラ8を駆動するエンジン17とを備えている。プロペラ8を駆動させると、船舶1は前方Frに推進される。クランプブラケット4と船外機6との間に、油圧シリンダ装置の油圧シリンダ7が配置されている。油圧シリンダ7の一端は、クランプブラケット4に水平軸18によって揺動可能に支持されている。油圧シリンダ7の他端は、船外機6に水平軸19によって揺動可能に支持されている。
【0018】
アップ動作時には、船外機6は図示A方向に回転する。いわゆるチルトアップが行われ、船外機6の傾斜角度は大きくなる。ダウン動作時には、船外機6は図示B方向に回転する。いわゆるチルトダウンが行われ、船外機6の傾斜角度は小さくなる。油圧シリンダ7の長さを調整することにより、船体3に対する船外機6の取付角度を調整することができる。
【0019】
(油圧回路の構成)
油圧シリンダ装置は、図2に示すような油圧回路100を備えている。油圧回路100は、油圧シリンダ7と、油圧ポンプ20と、油が貯留されたリザーバタンク15とを備えている。
【0020】
油圧シリンダ7は、シリンダチューブ14と、シリンダチューブ14内を第1油室11Aと第2油室11Bとに区画するピストン12と、を備えている。油圧シリンダ7は、いわゆるシングルロッド型の油圧シリンダである。ロッド9は、ピストン12から第2油室11Bを通ってシリンダチューブ14の外部に延びている。ロッド9の先端には、水平軸19(図1参照)に支持される支持部10が設けられている。
【0021】
油圧ポンプ20は、正転および逆転が可能なギアポンプによって構成されている。油圧ポンプ20はモータ22に接続されている。モータ22は正転および逆転が可能なモータであり、油圧ポンプ20はモータ22によって駆動される。油圧ポンプ20は、第1ポート21Aおよび第2ポート21Bを有している。油圧ポンプ20は、油を第2ポート21Bから吸入すると共に第1ポート21Aから吐出する第1の運転と、油を第1ポート21Aから吸入すると共に第2ポート21Bから吐出する第2の運転とを選択的に実行可能である。
【0022】
油圧ポンプ20の第1ポート21Aと油圧シリンダ7の第1油室11Aとは、第1通路31Aによって接続されている。第1通路31Aには第1チェック弁41Aが設けられている。第1チェック弁41Aは、第1ポート21Aから第1油室11Aに向かって油が流れるときに開くように構成されている。油圧ポンプ20の第2ポート21Bと油圧シリンダ7の第2油室11Bとは、第2通路31Bによって接続されている。第2通路31Bには第2チェック弁41Bが設けられている。第2チェック弁41Bは、第2ポート21Bから第2油室11Bに向かって油が流れるときに開くように構成されている。
【0023】
第2通路31Bにおける第2油室11Bと第2チェック弁41Bとの間には、スローリターンバルブ26が設けられている。スローリターンバルブ26は、絞り23と、絞り23をバイパスするように配置されたチェック弁25とを有している。チェック弁25は、第2チェック弁41Bから第2油室11Bに向かう方向の油の流れを許容し、その逆の方向の油の流れを阻止するように構成されている。このスローリターンバルブ26により、第2油室11Bから油を回収するときの方が、第2油室11Bに油を供給するときよりも、油の流れの抵抗が大きくなり、流量が少なくなる。
【0024】
第1通路31Aには、第1補助通路32Aが接続されている。第1補助通路32Aには、リリーフ弁27Aと、チェック弁28Aとが接続されている。リリーフ弁27Aは、第1補助通路32Aの油圧が所定値以上になると開くように構成されている。リリーフ弁27Aが開くと、第1補助通路32Aからリザーバタンク15に油が排出される。これにより、第1通路31Aの油圧の過上昇が防止される。チェック弁28Aは、リザーバタンク15から第1補助通路32Aに向かう方向の油の流れを許容し、その逆の方向の油の流れを阻止するように構成されている。第1補助通路32Aの油圧がリザーバタンク15の油圧よりも低くなると、チェック弁28Aが開き、リザーバタンク15から第1補助通路32Aを通じて第1通路31Aに油が供給される。
【0025】
第2通路31Bには、第2補助通路32Bが接続されている。第2補助通路32Bの構成は、第1補助通路32Aと同様である。すなわち、第2補助通路32Bには、リリーフ弁27Bと、チェック弁28Bとが接続されている。リリーフ弁27Bは、第2補助通路32Bの油圧が所定値以上になると開くように構成されている。リリーフ弁27Bが開くと、第2補助通路32Bからリザーバタンク15に油が排出される。チェック弁28Bは、リザーバタンク15から第2補助通路32Bに向かう方向の油の流れを許容し、その逆の方向の油の流れを阻止するように構成されている。第2補助通路32Bの油圧がリザーバタンク15の油圧よりも低くなると、チェック弁28Bが開き、リザーバタンク15から第2補助通路32Bを通じて第2通路31Bに油が供給される。
【0026】
第1チェック弁41Aは、本来は、第1油室11Aから第1ポート21Aに向かって油が流れるときに閉じるように構成されている。第2チェック弁41Bは、本来は、第2油室11Bから第2ポート21Bに向かって油が流れるときに閉じるように構成されている。すなわち、本来、第1チェック弁41Aは油圧ポンプ20が第2の運転を行うときには閉じるように構成され、第2チェック弁41Bは油圧ポンプ20が第1の運転を行うときには閉じるように構成されている。しかし、油圧ポンプ20は、第1の運転を行うときには、第2油室11Bの油を第2ポート21Bから吸入しなければならない。油圧ポンプ20は、第2の運転を行うときには、第1油室11Aの油を第1ポート21Aから吸入しなければならない。そこで、油圧回路100には、油圧ポンプ20が第1の運転を行うときに第2チェック弁41Bを開き、油圧ポンプ20が第2の運転を行うときに第1チェック弁41Aを開く機構(以下、開放機構という)50が設けられている。
【0027】
開放機構50の構成は特に限定されないが、本実施形態に係る開放機構50は、第1ハウジング51Aと、第1ハウジング51A内に摺動可能に収容された第1シャトル52Aと、第2ハウジング51Bと、第2ハウジング51B内に摺動可能に収容された第2シャトル52Bとを有している。第1ハウジング51Aと第1シャトル52Aとは、第1ポート21Aと第1チェック弁41Aとの間に位置する第3油室13Aを形成している。第2ハウジング51Bと第2シャトル52Bとは、第2ポート21Bと第2チェック弁41Bとの間に位置する第4油室13Bを形成している。第1シャトル52Aは、第3油室13Aを介して第1チェック弁41Aと対向している。第2シャトル52Bは、第4油室13Bを介して第2チェック弁41Bと対向している。
【0028】
第1シャトル52Aは、第1チェック弁41Aの方に移動すると、第1チェック弁41Aを押し開くように構成されている。第1シャトル52Aが第1チェック弁41Aから遠ざかると、第1チェック弁41Aは閉じられる。第2シャトル52Bは、第2チェック弁41Bの方に移動すると、第2チェック弁41Bを押し開くように構成されている。第2シャトル52Bが第2チェック弁41Bから遠ざかると、第2チェック弁41Bは閉じられる。
【0029】
第1シャトル52Aと第2シャトル52Bとは、連動するように構成されている。第1シャトル52Aが第1チェック弁41Aに近づくと、第2シャトル52Bは第2チェック弁41Bから遠ざかる。第1シャトル52Aが第1チェック弁41Aから遠ざかると、第2シャトル52Bは第2チェック弁41Bに近づく。
【0030】
第1シャトル52Aと第2シャトル52Bとを連動させる機構は特に限定されないが、本実施形態では、油圧を利用した機構となっている。言い換えると、第1シャトル52Aと第2シャトル52Bとを連動させる機構は、油圧回路によって構成されている。
【0031】
詳しくは、第1ハウジング51A内において、第1シャトル52Aの第3油室13A側と反対側には、第5油室15Aが形成されている。第5油室15Aは、第1ハウジング51Aと第1シャトル52Aとにより形成されている。第1シャトル52Aは、第3油室13Aと第5油室15Aとの間に位置している。第1シャトル52Aには、第3油室13Aと第5油室15Aとを連通する連通路30Aが形成されている。連通路30Aには、第3油室13Aから第5油室15Aに向かう油の流れを許容し、第5油室15Aから第3油室13Aに向かう油の流れを阻止するチェック弁29Aが設けられている。
【0032】
第2ハウジング51B内において、第2シャトル52Bの第4油室13B側と反対側には、第6油室15Bが形成されている。第6油室15Bは、第2ハウジング51Bと第2シャトル52Bとにより形成されている。第2シャトル52Bは、第4油室13Bと第6油室15Bとの間に位置している。第2シャトル52Bには、第4油室13Bと第6油室15Bとを連通する連通路30Bが形成されている。連通路30Bには、第4油室13Bから第6油室15Bに向かう油の流れを許容し、第6油室15Bから第4油室13Bに向かう油の流れを阻止するチェック弁29Bが設けられている。
【0033】
第5油室15Aと第6油室15Bとは、連通路33によって連通されている。
【0034】
第3油室13Aに油が流入すると、第1シャトル52Aはこの油によって押され、第5油室15A側に移動する。すると、第5油室15A内の油が第1シャトル52Aによって押し出され、連通路33を通じて第6油室15Bに流入する。第6油室15Bに油が流入すると、第2シャトル52Bはこの油によって押され、第2チェック弁41B側に移動する。このように、第1シャトル52Aが第1チェック弁41Aから遠ざかると、第2シャトル52Bは第2チェック弁41Bに近づくことになる。
【0035】
第4油室13Bに油が流入すると、第2シャトル52Bはこの油によって押され、第6油室15B側に移動する。すると、第6油室15B内の油が第2シャトル52Bによって押し出され、連通路33を通じて第5油室15Aに流入する。第5油室15Aに油が流入すると、第1シャトル52Aはこの油によって押され、第1チェック弁41A側に移動する。このように、第2シャトル52Bが第2チェック弁41Bから遠ざかると、第1シャトル52Aは第1チェック弁41Aに近づくことになる。
【0036】
第1シャトル52Aには、連通路34aが形成されている。第1ハウジング51Aには連通孔59が形成されている。この連通孔59には、リザーバタンク15に接続された連通路34bが接続されている。連通路34bには、絞り44が設けられている。連通路34aと連通路34bとは、第1シャトル52Aが第1チェック弁41Aを開いているときには連通し、第1シャトル52Aが第1チェック弁41Aを開いていないときには連通しないように構成されている。これら連通路34aおよび連通路34bにより、油圧ポンプ20が第1の運転を行うときおよび停止しているときには閉鎖され、油圧ポンプ20が第2の運転を行うときには開通される返送路34が構成されている。第1シャトル52Aに形成された連通路34aは、返送路34の一部を構成している。なお、連通路34bが省略され、第1ハウジング51Aの連通孔59がリザーバタンク15に臨んでいてもよい。この場合、返送路34は連通路34aによって構成されることになる。
【0037】
第1通路31Aと第2通路31Bとは、排出通路35によって連通されている。排出通路35の一端は、第1通路31Aにおける第1油室11Aと第1チェック弁41Aとの間の部分に接続されている。排出通路35の他端は、第2通路31Bにおける第2油室11Bと第2チェック弁41Bとの間の部分に接続されている。排出通路35には、マニュアルバルブ42が設けられている。マニュアルバルブ42は、排出通路43を介してリザーバタンク15に接続されている。手動によりマニュアルバルブ42を開くことによって、第1通路31Aおよび/または第2通路31Bの油を、排出通路35および排出通路43を通じてリザーバタンク15に排出することができる。
【0038】
排出通路35のマニュアルバルブ42よりも第1通路31A側の部分および第2通路31B側の部分には、それぞれリリーフ弁44A,44Bが接続されている。リリーフ弁44A,44Bは、リザーバタンク15に接続されている。第1通路31Aの油圧が高くなりすぎた場合、リリーフ弁44Aが開き、第1通路31Aの油が排出通路35を通じてリザーバタンク15に排出される。これにより、第1通路31Aの油圧の過剰な上昇を抑えることができる。第2通路31Bの油圧が高くなりすぎた場合、リリーフ弁44Bが開き、第2通路31Bの油が排出通路35を通じてリザーバタンク15に排出される。これにより、第2通路31Bの油圧の過剰な上昇を抑えることができる。
【0039】
なお、リリーフ弁44A,44Bが開放される圧力は、油圧回路100の通常の動作時における第1通路31A、第2通路31Bの圧力よりも十分に高い圧力に設定されている。そのため、通常、後述する油圧回路の動作時にリリーフ弁44A,44Bが開放されることはない。
【0040】
(油圧回路の動作)
次に、油圧回路100の動作について説明する。油圧回路100では、油圧シリンダ7のロッド9のシリンダチューブ14から外部に延びている部分を伸長させる動作、すなわちアップ動作と、ロッド9のシリンダチューブ14から外部に延びている部分を収縮させる動作、すなわちダウン動作とが可能である。以下、アップ動作、ダウン動作の順に説明する。
【0041】
(アップ動作)
図3は、アップ動作時の油の流れを示す図である。アップ動作時には、油圧ポンプ20は第1の運転を行う。油圧ポンプ20の第1ポート21Aから吐出された油は、第3油室13Aに流入する。すると、第3油室13Aの油圧が上昇し、第1チェック弁41Aは開かれる。第3油室13Aの油は第1チェック弁41Aを通過し、第1油室11Aに流入する。第1油室11Aに流入した油は、ピストン12を第2油室11B側に押し込む。これにより、ピストン12が第2油室11B側に移動し、ロッド9が伸長する。
【0042】
また、第3油室13Aの油圧の上昇に伴い、第1シャトル52Aが第5油室15A側に移動する。これにより、第5油室15A内の油が第1シャトル52Aによって押し出され、連通路33を通じて第6油室15Bに流れ込む。すると、第6油室15Bの油圧が高まり、第2シャトル52Bが第4油室13B側に押し込まれる。その結果、第2シャトル52Bは第2チェック弁41B側に移動し、第2チェック弁41Bを開放する。
【0043】
ピストン12が第2油室11B側に移動すると、第2油室11Bの油は第2通路31Bに流出する。上述の通り、第2チェック弁41Bは開放されているので、第2通路31Bに流入した油は、スローリターンバルブ26の絞り23および第2チェック弁41Bを通過し、第4油室13Bに流入する。
【0044】
また、チェック弁28Bが開き、第2補助通路32Bを通じて、リザーバタンク15から第4油室13Bに油が供給される。供給された油は、第2油室11Bから回収された油と共に、第4油室13Bから油圧ポンプ20の第2ポート21Bに吸入される。
【0045】
油圧シリンダ7はシングルロッド型の油圧シリンダであるため、ピストン12の移動に伴う第1油室11Aの容積変化は、第2油室11Bの容積変化よりも大きい。第2油室11Bから回収した油の量以上の油を、第1油室11Aに供給する必要がある。本実施形態によれば、第2補助通路32Bを通じてリザーバタンク15から第4油室13Bに油が補充されるので、第1油室11Aに対して十分な量の油を供給することができる。したがって、ロッド9を円滑に伸長させることができる。
【0046】
(ダウン動作)
次に、ダウン動作を説明する。図4は、ダウン動作時の油の流れを示す図である。ダウン動作時には、油圧ポンプ20は第2の運転を行う。油圧ポンプ20の第2ポート21Bから吐出された油は、第4油室13Bに流入する。すると、第4油室13Bの油圧が上昇し、第2チェック弁41Bは開放される。第4油室13Bの油は第2チェック弁41Bを通過し、スローリターンバルブ26のチェック弁25を通って、第2油室11Bに流入する。第2油室11Bに流入した油は、ピストン12を第1油室11A側に押し込む。これにより、ピストン12が第1油室11A側に移動し、ロッド9が収縮する。
【0047】
また、第4油室13Bの油圧の上昇に伴い、第2シャトル52Bが第6油室15B側に移動する。これにより、第6油室15B内の油が第2シャトル52Bによって押し出され、連通路33を通じて第5油室15Aに流れ込む。すると、第5油室15Aの油圧が高まり、第1シャトル52Aが第3油室13A側に押し込まれる。その結果、第1シャトル52Aは第1チェック弁41A側に移動し、第1チェック弁41Aを開放する。また、連通路34aと連通路34bとがつながる。すなわち、返送路34が開通する。
【0048】
ピストン12が第1油室11A側に移動すると、第1油室11Aの油は第1通路31Aに流入する。上述の通り、第1チェック弁41Aは開放されているので、第1通路31Aに流入した油は、第3油室13Aに流入する。第3油室13Aの油の一部は、油圧ポンプ20の第1ポート21Aに吸入される。
【0049】
また、返送路34が開通するため、第3油室13Aの残りの油(余剰油)は、返送路34を通じてリザーバタンク15に返送される。前述した通り、油圧シリンダ7はシングルロッド型の油圧シリンダであるため、ピストン12の移動に伴う第1油室11Aの容積変化は、第2油室11Bの容積変化よりも大きい。第1油室11Aから回収した油の一部を、リザーバタンク15に返送する必要がある。本実施形態によれば、余剰油は返送路34を通じてリザーバタンク15に返送される。そのため、ロッド9を円滑に収縮させることができる。また、余剰油は油圧ポンプ20を経由することなく、リザーバタンク15に返送される。そのため、ロッド9の収縮速度を高速化することができる。すなわち、ダウン動作を高速化することができる。
【0050】
(油圧シリンダ装置の構成)
次に、図5〜図11を参照しながら、上記油圧回路100を備えた油圧シリンダ装置101の構成を説明する。以下の説明では便宜上、上、下、左、右は、それぞれ図面中の上、下、左、右をそれぞれ意味するものとする。ただし、油圧シリンダ装置101は、任意の姿勢で使用することができる。以下の説明中の方向は、必ずしも実際の方向を表すとは限らない。
【0051】
図5に示すように、油圧シリンダ7の側方には、油圧シリンダ7と平行に延びる略円筒状の第1ハウジング61が配置されている。油圧シリンダ7の下端部および第1ハウジング61の下端部は、第2ハウジング62に取り付けられている。第1ハウジング61の上端部には、モータ22が収容されたモータハウジング68が取り付けられている。第1通路31Aおよび第2通路31Bの一部は、第2ハウジング62の内部に形成されている。
【0052】
図6に示すように、第1ハウジング61と第2ハウジング62との間には、上ケース63および下ケース64からなるポンプケース65が配置されている。上ケース63および下ケース64は略円板状に形成されており、ボルト67によって第2ハウジング62に固定されている。第1ハウジング61内には、内部に空気等の気体が充填された弾性変形可能な袋66が収容されている。袋66として、例えばゴム製の袋を好適に用いることができる。この袋66およびポンプケース65の周囲に、油が貯留されている。リザーバタンク15は、第1ハウジング61および第2ハウジング62の内部であって、かつ、袋66およびポンプケース65の外部に形成されている。
【0053】
図示は省略するが、下ケース64の内部には、互いに噛み合った一対のポンプギアが収容されている。モータ22の駆動軸69は、一方のポンプギアに連結されている。駆動軸69が回転すると、一方のポンプギアが回転し、そのポンプギアと噛み合った他方のポンプギアも回転する。両ポンプギアは、互いに逆方向に回転する。これら両ポンプギアにより、油圧ポンプ20(図2参照)が構成されている。
【0054】
図7は、上ケース63の底面図である。図8は図7のVIII−VIII線断面図であり、図9は図7のIX−IX線断面図である。図7に示すように、上ケース63には、貫通孔69aおよび貫通孔69bが形成されている。貫通孔69aには、駆動軸69に連結された一方のポンプギアの軸が挿通されている。貫通孔69bには、他方のポンプギアの軸が挿通されている。
【0055】
図7および図8に示すように、上ケース63には、下方に開いた孔71Aおよび孔71Bが形成されている。図6に示すように、これらの孔71A、孔71Bには、第1シャトル52A、第2シャトル52Bがそれぞれ収容されている。孔71A、孔71Bは、それぞれ第1ハウジング51A、第2ハウジング51Bの一部を形成している。第1シャトル52A、第2シャトル52Bは、それぞれスプリング72によって、上方に付勢されている。
【0056】
第1シャトル52Aの上方には第5油室15Aが形成され、第1シャトル52Aの下方には第3油室13Aが形成されている。第2シャトル52Bの上方には第6油室15Bが形成され、第2シャトル52Bの下方には第4油室13Bが形成されている。上ケース63には、孔71Aと孔71Bとを連通する水平に延びる孔73が形成されている。連通路33は、この孔73によって構成されている。
【0057】
第1シャトル52Aには鉛直方向に延びる貫通孔74Aが形成され、貫通孔74Aは上方から板ばね75Aによって覆われている。この板ばね75Aは、チェック弁29Aを構成している。同様に、第2シャトル52Bにも鉛直方向に延びる貫通孔74Bが形成され、貫通孔74Bは上方から板ばね75Bによって覆われている。板ばね75Bは、チェック弁29Bを構成している。なお、板ばね75Aおよび板ばね75Bの材料は何ら限定されず、例えば、ゴムシート等を好適に用いることができる。
【0058】
図8に示すように、上ケース63には、孔71A内と上ケース63の側方とを連通する水平に延びる孔76が形成されている。この孔76は、返送路34の連通路34bを構成している。孔76の孔71A側の部分76aは、他の部分よりも流路断面積が小さくなっている。当該部分76aは、絞り44を構成している。図6に示すように、第1シャトル52Aの貫通孔74Aの中途部には、水平方向に延びる孔78が形成されている。この孔78と貫通孔74Aの一部(孔78よりも下側の部分)とは、返送路34の連通路34aを構成している。
【0059】
図9に示すように、上ケース63には、貫通孔79Aおよび貫通孔79Bが形成されている。図7に示すように、貫通孔79Aは孔71Aと連通し、貫通孔79Bは孔71Bと連通している。貫通孔79Aは、上側部分の方が下側部分よりも直径が大きくなるように拡径している。貫通孔79Aの上側部分には、ボール80Aが収容されている。油が貫通孔79Aを上方に向かって流れると、ボール80Aが油によって持ち上げられ、貫通孔79Aは開通する。一方、油が貫通孔79Aを下方に向かって流れると、ボール80Aは貫通孔79Aの下側部分を閉鎖する。これら貫通孔79Aおよびボール80Aは、第1補助通路32Aおよびチェック弁28Aを構成している。貫通孔79Bも、上側部分の方が下側部分よりも直径が大きくなるように拡径している。貫通孔79Bの上側部分にはボール80Bが収容されている。これら貫通孔79Bおよびボール80Bは、第2補助通路32Bおよびチェック弁28Bを構成している。
【0060】
図6に示すように、下ケース64には、上ケース63の孔71A、孔71Bの下方に位置する孔81A、孔81Bがそれぞれ形成されている。孔81Aは孔71Aと共に、第1ハウジング51Aを構成している。孔81Bは孔71Bと共に、第2ハウジング51Bを構成している。孔81Aには、スプリング82Aによって上方に付勢された弁体83Aが収容されている。これら弁体83Aおよびスプリング82Aは、第1チェック弁41Aを構成している。孔81Bには、スプリング82Bによって上方に付勢された弁体83Bが収容されている。これら弁体83Bおよびスプリング82Bは、第2チェック弁41Bを構成している。
【0061】
図10は、アップ動作時の状態を表している。アップ動作時には、油圧ポンプ20から第3油室13Aに油が流入し、第1チェック弁41Aが開かれ、また、第1シャトル52Aが上方に押し上げられる。第1シャトル52Aが上方に移動すると、孔76と孔78とは連通しない状態となり、返送路34は閉鎖される。また、第1シャトル52Aが上方に移動すると、第5油室15Aから第6油室15Bに油が流入し、この油によって第2シャトル52Bは下方に押し下げられる。第1油室11A(図5参照)には、第3油室13Aから第1通路31Aを通じて油が供給される。第2油室11Bの油は、第2通路31Bを通じて第4油室13Bに回収される。その結果、ロッド9は伸長する。
【0062】
図11は、ダウン動作時の状態を表している。ダウン動作時には、油圧ポンプ20から第4油室13Bに油が流入し、第2チェック弁41Bが開かれ、また、第2シャトル52Bが上方に押し上げられる。第2シャトル52Bが上方に移動すると、第6油室15Bから第5油室15Aに油が流入し、この油によって第1シャトル52Aは下方に押し下げられる。その結果、第1チェック弁41Aが開放される。また、孔76と孔78とが連通し、返送路34が開通される。第2油室11B(図5参照)には、第4油室13Bから第2通路31Bを通じて油が供給される。第1油室11Aの油は、第1通路31Aを通じて第3油室13Aに回収される。第3油室13Aに回収された油の一部、すなわち余剰油は、孔76および孔78を通じてリザーバタンク15に返送される。
【0063】
(油圧シリンダ装置の作用効果)
以上のように、本実施形態に係る油圧シリンダ装置101によれば、図4に示すようにダウン動作時には、余剰油は第1油室11Aから第3油室13Aに流入した後、返送路34を通じてリザーバタンク15に返送される。すなわち、余剰油は、油圧ポンプ20の第1ポート21Aに吸入されずに、リザーバタンク15に返送される。したがって、余剰油をリザーバタンク15に速やかに返送することができるので、ダウン動作を高速化することができる。本実施形態によれば、余剰油を返送するための専用の電磁弁は不要であり、ダウン動作と連動して上記電磁弁を開閉させる特別な機構も不要である。ダウン動作を検知する装置も特に必要ではない。したがって、その分、構造の簡単化を図ることができる。なお、本実施形態に係る油圧シリンダ装置101では、ダウン動作を検知する検知装置を排除する訳ではなく、そのような検知装置があってもよいことは勿論である。
【0064】
図3に示すようにアップ動作時には、リザーバタンク15から第2補助通路32Bを通じて第2通路31Bに油が補充される。第2補助通路32Bには、チェック弁28Bが設けられている。そのため、ロッド9に引っ張り荷重(ロッド9を伸長させる方向の荷重)が加わった状態でアップ動作を行った場合でも、第2通路31Bからリザーバタンク15に油が流れ出ることはない。すなわち、油の逆流は防止される。本実施形態によれば、外部から荷重が加わった状態で作動した場合であっても、油の逆流が生じることを防止することができる。したがって、外部から荷重が加わった状態であっても、安定した動作を行うことができる。
【0065】
油圧シリンダ装置101は、油圧ポンプ20が第1の運転を行うときに第2チェック弁41Bを開放させ、油圧ポンプ20が第2の運転を行うときに第1チェック弁41Aを開放させる開放機構50を備えている。本実施形態では、開放機構50は、第3油室13Aを介して第1チェック弁41Aと対向する第1シャトル52Aと、第4油室13Bを介して第2チェック弁41Bと対向する第2シャトル52Bとを備え、それら第1シャトル52Aおよび第2シャトル52Bが互いに連動するように構成されている。そのため、油圧ポンプ20から第3油室13Aに油を導入するだけで、第2チェック弁41Bを開くことができる。また、油圧ポンプ20から第4油室13Bに油を導入するだけで、第1チェック弁41Aを開くことができる。
【0066】
本実施形態によれば、ダウン動作時に余剰油をリザーバタンク15に返送する返送路34の一部、すなわち連通路34aは、第1シャトル52Aに形成されている。そのため、第1シャトル52Aに、開放機構50としての機能だけでなく、ダウン動作時に余剰油をリザーバタンク15に返送する返送路34としての機能も持たすことができる。
【0067】
本実施形態によれば、連通路34aの一端は第3油室13Aに開口し、第1ハウジング51Aには連通孔59が形成されている。第1シャトル52Aが第1チェック弁41Aに近づく方向へ移動して第1チェック弁41Aを開放したときに、連通路34aの他端は連通孔59につながり、返送路34が開通される。一方、第1シャトル52Aが第1チェック弁41Aから遠ざかる方向へ移動すると、連通路34aの他端は連通孔59からずれた位置に移動し、返送路34は閉鎖される。したがって、本実施形態によれば、第1シャトル52Aの移動に伴って、返送路34はダウン動作時には自動的に開通され、アップ動作時には自動的に閉鎖される。
【0068】
本実施形態によれば、第1シャトル52Aの貫通孔74A(図6参照)は、第3油室13Aと第5油室15Aとを連通させる連通路30A(図2参照)を形成している。また、貫通孔74Aの孔76よりも下側の部分と、孔76とは、返送路34の一部である連通路34aを形成している。そのため、貫通孔74Aの孔76よりも下側の部分は、連通路34aの一部を形成すると共に、連通路30Aの一部を形成している。連通路34aと連通路30Aとの一部が共通している。したがって、本実施形態によれば、構造のコンパクト化を図ることができる。
【0069】
返送路34には絞り44が設けられている。この絞り44により、ダウン動作時にリザーバタンク15に返送される油の速度を低減させることができる。そのため、ダウン動作時に、ピストン12が急激に収縮することによって第2油室11Bの圧力が大きく低下することを避けることができる。これにより、ハンチング現象を抑制することができ、ダウン動作をより安定させることができる。ただし、実用上問題になるようなハンチング現象が生じなければ、絞り44は特に必要ではない。絞り44は適宜設ければよく、省略することも可能である。
【0070】
(変形例1)
前記実施形態では、第1補助通路32Aにリリーフ弁27Aおよびチェック弁28Aが接続されていた。しかし、図12に示すように、チェック弁28Aを省略することも可能である。
【0071】
(変形例2)
前記実施形態では、スローリターンバルブ26は、第2通路31Bにのみ設けられ、第1通路31Aには設けられていなかった。しかし、図13に示すように、第1通路31Aおよび第2通路31Bの両方にスローリターンバルブ26を設けるようにしてもよい。
【0072】
<第2実施形態>
第1実施形態に係る油圧シリンダ装置101では、開放機構50は、第5油室15Aと第6油室15Bと連通路33とを備え、油圧を利用して第1シャトル52Aおよび第2シャトル52Bを連動させるものであった。しかし、開放機構50の構成は特に限定される訳ではない。開放機構50は、油圧以外の手段により、第1シャトル52Aと第2シャトル52Bとを連動させるものであってもよい。
【0073】
図14に示すように、第2実施形態に係る油圧シリンダ装置102では、開放機構50は、第1シャトル52Aと第2シャトル52Bとを機械的に連動させるものである。以下の説明では、第1実施形態と同様の要素には同様の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0074】
本実施形態では、第1シャトル52A、第2シャトル52Bには、上向きに突出する突起84A、突起84Bがそれぞれ形成されている。ポンプケース65の上方には、切替レバー85が配置されている。切替レバー85は、下側部分が上側部分よりも外径が大きくなるような2段式の円筒形状に形成されている。駆動軸69の下端部は、切替レバー85の孔に挿入されている。切替レバー85は揺動自在に構成され、右上がりに傾斜する状態と、左上がりに傾斜する状態との間で揺動する。切替レバー85は、いわゆるシーソーのように動作する。切替レバー85の右側部分85Aの下面は、第1シャトル52Aの突起84Aと接触している。切替レバー85の左側部分85Bの下面は、第2シャトル52Bの突起84Bと接触している。
【0075】
図14に示すように、ダウン動作のときには、油圧ポンプ20の第2ポート(図示せず)から第4油室13Bに油が流入する。すると、第4油室13Bの油圧が上昇し、第2チェック弁41Bが開放される。第4油室13Bの油は第2チェック弁41Bを通過し、第2油室11B(図2参照)に流入する。また、第4油室13Bの油圧の上昇に伴い、第2シャトル52Bは上方に押し上げられる。すると、切替レバー85の左側部分85Bは第2シャトル52Bによって押し上げられ、切替レバー85は揺動する。切替レバー85の右側部分85Aは、第1シャトル52Aを押し下げる。その結果、第1シャトル52Aは下方へ移動し、第1チェック弁41Aを開放する。また、第1シャトル52Aの下方への移動に伴って、孔78と孔76とが連通する。第1油室11A(図2参照)から第3油室13Aに流入した油の一部は、第1チェック弁41Aを通じて、油圧ポンプ20の第1ポート(図2参照)に吸入される。第3油室13Aの残りの油(余剰油)は、孔78および孔76を通じて、リザーバタンク15に返送される。
【0076】
図示は省略するが、アップ動作のときには、油圧ポンプ20の第1ポート(図2参照)から第3油室13Aに油が流入する。すると、第3油室13Aの油圧が上昇し、第1チェック弁41Aが開放される。第3油室13Aの油は第1チェック弁41Aを通過し、第1油室11A(図2参照)に流入する。また、第3油室13Aの油圧の上昇に伴い、第1シャトル52Aは上方に押し上げられる。すると、切替レバー85の右側部分85Aは第1シャトル52Aによって押し上げられ、代わりに、左側部分85Bが下降する。第2シャトル52Bは切替レバー85の左側部分85Bによって押し下げられ、第2チェック弁41Bが第2シャトル52Bによって開放される。第2油室11B(図2参照)の油は、第4油室13Bに流入し、第2チェック弁41Bを通じて油圧ポンプ20の第2ポート(図2参照)に吸入される。
【0077】
本実施形態においても、第1実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0078】
なお、切替レバー85は、第1シャトル52Aと第2シャトル52Bとを連結する連結機構の一例である。本実施形態では、切替レバー85と両シャトル52A,52Bとは、固定されずに単に接触するように構成されていた。しかし、上記連結機構は、両シャトル52A,52Bに固定された部材を備えたものであってもよい。ここでいう「連結」とは、連動するように組み合わせられることを意味し、互いに固定されている場合だけでなく、上記実施形態の切替レバー85および両シャトル52A,52Bのように、単に接触している場合も含まれる。
【0079】
切替レバー85は、シーソーのように揺動するものに限られず、例えばリンク機構によって両シャトル52A,52Bを連結するものであってもよい。
【0080】
<第3実施形態>
第2実施形態に係る油圧シリンダ装置102は、切替レバー85によって第1シャトル52Aと第2シャトル52Bとを連動させるものであった。図15に示すように、第3実施形態に係る油圧シリンダ装置103は、第1シャトル52Aと第2シャトル52Bとが一体化されたものである。本実施形態においても、第1実施形態と同様の要素には同様の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0081】
ハウジング91の内部には、ギアポンプからなる油圧ポンプ20が収容されている。ハウジング91の上部にはモータケーシング93が取り付けられている。モータケーシング93内には、図示しないモータが収容されている。ハウジング91の下部には、略水平方向に延びる孔94が形成されている。この孔94の内部には、一体化された第1シャトル52Aおよび第2シャトル52Bと、第1シャトル52Aの右方に配置された第1チェック弁41Aと、第2シャトル52Bの左方に配置された第2チェック弁41Bとが設けられている。第1シャトル52Aおよび第2シャトル52Bは、一体となって左方および右方に移動可能となっている。孔94の第1チェック弁41Aの右方および第2チェック弁41Bの左方には、それぞれブロック92が嵌め込まれている。第1チェック弁41Aの弁体83Aは、スプリング82Aによって左方に付勢されている。第2チェック弁41Bの弁体83Bは、スプリング82Bによって右方に付勢されている。
【0082】
図16に示すように、ダウン動作のときには、油圧ポンプ20の第2ポート(図示せず)から第4油室13Bに油が流入する。すると、第4油室13Bの油圧が上昇し、第2チェック弁41Bは開放される。第4油室13Bの油は第2チェック弁41Bを通過し、第2油室11Bに流入する。第2油室11Bに流入した油はピストン12を右方に押し、ロッド9は収縮する。また、第4油室13Bの油圧の上昇に伴い、第1シャトル52Aおよび第2シャトル52Bは右方に移動する。これにより、第1チェック弁41Aが第1シャトル52Aによって開放される。また、連通路34aと連通路34bとが連通する。第1油室11Aの油は、ピストン12によって押し出され、第3油室13Aに流入する。第3油室13Aの油の一部は、第1チェック弁41Aを通じて油圧ポンプ20の第1ポート(図示せず)に吸入される。第3油室13Aの残りの油(余剰油)は、連通路34aおよび連通路34bを通じて、リザーバタンク15に返送される。
【0083】
図17に示すように、アップ動作のときには、油圧ポンプ20の第1ポート(図示せず)から第3油室13Aに油が流入する。すると、第3油室13Aの油圧が上昇し、第1チェック弁41Aは開放される。第3油室13Aの油は第1チェック弁41Aを通過し、第1油室11Aに流入する。第1油室11Aに流入した油はピストン12を左方に押し、ロッド9は伸長する。また、第3油室13Aの油圧の上昇に伴い、第1シャトル52Aおよび第2シャトル52Bは左方に移動する。これにより、第2チェック弁41Bが第2シャトル52Bによって開放される。第2油室11Bの油はピストン12によって押し出され、第4油室13Bに流入する。第4油室13Bに流入した油は、油圧ポンプ20の第2ポート(図示せず)に吸入される。
【0084】
本実施形態においても、第1実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0085】
また、本実施形態によれば、第1シャトル52Aと第2シャトル52Bとが一体化されているので、第1シャトル52Aと第2シャトル52Bとを容易に連動させることができる。
【0086】
(変形例)
上記実施形態では、スローリターンバルブ26は第2通路31Bにのみ設けられ、第1通路31Aには設けられていなかった。しかし、図18に示すように、第1通路31Aおよび第2通路31Bの両方にスローリターンバルブ26を設けるようにしてもよい。
【0087】
<その他の実施形態>
上述の通り、本発明に係る油圧シリンダ装置は、船外機の取付角度を調整するトリム装置として実施可能であるが、農機具等の他の機械または装置に対しても好適に実施することができる。本発明に係る油圧シリンダ装置の適用対象は、何ら限定される訳ではない。
【符号の説明】
【0088】
7 油圧シリンダ
9 ロッド
11A 第1油室
11B 第2油室
15 リザーバタンク
20 油圧ポンプ
21A 第1ポート
21B 第2ポート
31A 第1通路
31B 第2通路
32A 第1補助通路
32B 第2補助通路(第3通路)
34 返送路
41A 第1チェック弁
41B 第2チェック弁
50 開放機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブと、前記シリンダチューブを第1油室と第2油室とに区画するピストンと、前記ピストンから前記第2油室内を通って前記シリンダチューブの外部に延びるロッドと、を有するシングルロッド型の油圧シリンダと、
第1ポートおよび第2ポートを有し、油を前記第2ポートから吸入すると共に前記第1ポートから吐出する第1の運転と、油を前記第1ポートから吸入すると共に前記第2ポートから吐出する第2の運転とを選択的に実行可能な油圧ポンプと、
油が貯留されたリザーバタンクと、
前記第1ポートと前記第1油室とを接続する第1通路と、
前記第2ポートと前記第2油室とを接続する第2通路と、
前記第1通路に設けられ、前記第1ポートから前記第1油室に向かって油が流れるときに開くように構成された第1チェック弁と、
前記第2通路に設けられ、前記第2ポートから前記第2油室に向かって油が流れるときに開くように構成された第2チェック弁と、
前記油圧ポンプが前記第1の運転を行うときに前記第2チェック弁を開き、前記油圧ポンプが前記第2の運転を行うときに前記第1チェック弁を開く開放機構と、
一端が前記リザーバタンクに接続され、他端が前記第2チェック弁と前記第2ポートとの間に接続され、前記一端から前記他端に向かう油の流れを許容する第3チェック弁が設けられた第3通路と、
一端が前記第1チェック弁と前記第1ポートとの間に接続され、他端が前記リザーバタンクに接続され、前記油圧ポンプが前記第1の運転を行うときおよび停止しているときには閉鎖され、前記油圧ポンプが前記第2の運転を行うときには開通される返送路と、
を備えた油圧シリンダ装置。
【請求項2】
前記開放機構は、第1ハウジングと、前記第1ハウジング内に摺動可能に収容された第1シャトルと、第2ハウジングと、前記第2ハウジング内に摺動可能に収容された第2シャトルと、を有し、
前記第1ハウジングと前記第1シャトルとは、前記第1ポートと前記第1チェック弁との間に位置する第3油室を形成し、
前記第2ハウジングと前記第2シャトルとは、前記第2ポートと前記第2チェック弁との間に位置する第4油室を形成し、
前記第1シャトルは、前記第3油室を介して前記第1チェック弁と対向し、
前記第2シャトルは、前記第4油室を介して前記第2チェック弁と対向し、
前記第1シャトルおよび前記第2シャトルは、前記第1シャトルが前記第1チェック弁から遠ざかる方向へ移動すると、前記第2シャトルが前記第2チェック弁に近づく方向へ移動して前記第2チェック弁を開き、前記第2シャトルが前記第2チェック弁から遠ざかる方向へ移動すると、前記第1シャトルが前記第1チェック弁に近づく方向へ移動して前記第1チェック弁を開くように構成されている、請求項1に記載の油圧シリンダ装置。
【請求項3】
前記第1シャトルには、前記返送路の一部または全部を構成する第1連通路が形成されている、請求項2に記載の油圧シリンダ装置。
【請求項4】
前記第1連通路の一端は、前記第3油室に開口しており、
前記第1ハウジングには連通孔が形成され、
前記第1シャトルが前記第1チェック弁に近づく方向へ移動して前記第1チェック弁を開いたときに、前記第1連通路の他端は前記連通孔につながり、前記第1シャトルが前記第1チェック弁から遠ざかる方向へ移動したときに、前記第1連通路の他端は前記連通孔とつながらないように構成されている、請求項3に記載の油圧シリンダ装置。
【請求項5】
前記第1ハウジングと前記第1シャトルとは第5油室を更に形成し、前記第1シャトルは前記第3油室と前記第5油室との間に位置しており、
前記第2ハウジングと前記第2シャトルとは第6油室を更に形成し、前記第2シャトルは前記第4油室と前記6油室との間に位置しており、
前記第5油室と前記第6油室とは、第2連通路によって連通され、
前記第1シャトルには、前記第3油室から前記第5油室に向かう油の流れを許容するチェック弁が設けられた第3連通路が形成され、
前記第2シャトルには、前記第4油室から第6油室に向かう油の流れを許容するチェック弁が設けられた第4連通路が形成され、
前記第1連通路と前記第3連通路との一部が共通している、請求項4に記載の油圧シリンダ装置。
【請求項6】
前記第1ハウジングと前記第1シャトルとは第5油室を更に形成し、前記第1シャトルは前記第3油室と前記第5油室との間に位置しており、
前記第2ハウジングと前記第2シャトルとは第6油室を更に形成し、前記第2シャトルは前記第4油室と前記6油室との間に位置しており、
前記第5油室と前記第6油室とは、第2連通路によって連通され、
前記第1シャトルには、前記第3油室から前記第5油室に向かう油の流れを許容するチェック弁が設けられた第3連通路が形成され、
前記第2シャトルには、前記第4油室から第6油室に向かう油の流れを許容するチェック弁が設けられた第4連通路が形成されている、請求項2に記載の油圧シリンダ装置。
【請求項7】
前記第1シャトルが前記第1チェック弁から遠ざかる方向へ移動すると前記第2シャトルを前記第2チェック弁に近づく方向へ移動させ、前記第2シャトルが前記第2チェック弁から遠ざかる方向へ移動すると前記第1シャトルを前記第1チェック弁に近づく方向へ移動させるように、前記第1シャトルと前記第2シャトルとを連結する連結機構を備えている、請求項2に記載の油圧シリンダ装置。
【請求項8】
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとは一体化され、
前記第1シャトルと前記第2シャトルとは一体化されている、請求項2に記載の油圧シリンダ装置。
【請求項9】
前記返送路に絞りが設けられている、請求項1に記載の油圧シリンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−24383(P2013−24383A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162381(P2011−162381)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(506353600)ヤマハモーターハイドロリックシステム株式会社 (16)
【Fターム(参考)】