説明

油性組成物

【課題】油性組成物中のカロテノイド類の退色、変色を防止する手段を提供するとともに、該油性組成物を用いて美容および疲労、食欲不振、血行不良、睡眠不足、眼精疲労を改善するための食品組成物の提供。
【解決手段】カロテノイドと、赤ワインエキスとを含有する油性組成物。さらに、コラーゲンペプチドを含有する油性組成物。該カロテノイドは、2種以上または3種以上のカロテノイド類の混合物であることが好ましい。また、該油性組成物は、カプセルに含有される食品組成物であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカロテノイドと、赤ワインエキスとを含有する油性組成物及びそれを含む食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カロテノイドは、天然に存在する黄色から赤のテルペノイド類の色素で、植物類、藻類、及びバクテリアに見つけることができる。
カロテノイドは、栄養素としての役割に加え、その抗酸化作用(活性酸素消去能)から、食品、化粧品、医薬品の原材料及びそれらの加工品等への添加が検討・実施されている。
しかしながら天然物由来のカロテノイドは、不安定な構造であり、特に酸化や熱に対して保存安定性を向上させることは困難であった。
カロテノイド色素等の退色を防止する方法として、例えば色素製剤にプロアントシアニジンを含有させる方法が試されている(特許文献1)が、油性組成物やカプセルに含有された油性組成物中のカロテノイド類の退色、変色を防止するには不十分であった。
またカロテノイドを含有した油性組成物を経口用美肌剤として利用することが試みられている(特許文献2)が、その効果は限られた項目に限定されているうえ、ヒトにおける疲労、食欲不振、血行不良、睡眠不足、眼精疲労を改善に対する効果は分かっていない。
【特許文献1】特開2002-338842号公報
【特許文献2】特開2003-335688号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、油性組成物中のカロテノイド類の退色、変色を防止する手段を提供するとともに、該油性組成物を用いて美容および疲労、食欲不振、血行不良、睡眠不足、眼精疲労を改善するための食品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
カロテノイド類を含有する油性組成物中に、赤ワインエキス類を含有させることで、カロテノイド類の退色、変色を防止することを見出した。
本発明は、以下の構成よりなる。
<1>
カロテノイドと、赤ワインエキスとを含有する油性組成物。
<2>
さらに、コラーゲンペプチドを含有することを特徴とする、上記<1>に記載の油性組成物。
<3>
カロテノイドが、2種以上のカロテノイド類の混合物である、上記<1>または<2>に記載の油性組成物。
<4>
カロテノイドが、3種以上のカロテノイドの混合物である、上記<1>または<2>に記載の油性組成物。
<5>
カプセルに含有されることを特徴とする、上記<1>〜<4>のいずれかに記載の油性組成物。
<6>
上記<1>〜<5>のいずれかに記載の油性組成物を含有する食品組成物。
<7>
上記<1>〜<5>のいずれかの油性組成物を用いた美容増強剤。
<8>
上記<1>〜<5>のいずれかの油性組成物を用いた、食品に添加するための美容増強剤。
<9>
上記<1>〜<5>のいずれかの油性組成物を用いた疲労改善剤。
<10>
上記<1>〜<5>のいずれかの油性組成物を用いた食欲不振改善剤。
<11>
上記<1>〜<5>のいずれかの油性組成物を用いた血行不良改善剤。
<12>
上記<1>〜<5>のいずれかの油性組成物を用いた睡眠不足改善剤。
<13>
上記<1>〜<5>のいずれかの油性組成物を用いた眼精疲労改善剤。
<14>
上記<7>または<8>の美容増強剤とカロテノイドを配合した皮膚外用剤とを併用することを特長とする、美容増強のための方法。
<15>
美容増強のための、上記<7>または<8>の美容増強剤とカロテノイドを配合した皮膚外用剤とのセット。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、カロテノイド類の光による変色、退色が抑制された油性組成物が提供される。本発明では天然物由来の赤ワインエキスを用いるため、安全で簡便でありながら高い効果を得ることができる。さらに美容および疲労、食欲不振、血行不良、睡眠不足、眼精疲労に効果の高い食品を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
[カロテノイド類]
本発明におけるカロテノイド類(カロチノイド類ともいう)としては、天然色素を含むカロテノイド類を好ましく挙げることができ、これには、黄色から赤のテルペノイド類の色素であり、植物類、藻類、及びバクテリアのものが含まれる。
また、天然由来のものに限定されず、常法に従って得られるものであればいずれのものも、本発明におけるカロテノイドに含まれる。例えば、後述のカロテノイド類のカロテン類の多くは合成によっても製造されており、市販のβ−カロテンの多くは合成により製造している。
【0007】
カロテノイド類の多くは、シス及びトランス異性体の形で天然に存在するが、合成物はしばしばラセミ混合物である。
カロテノイド類は一般に植物素材から抽出することができる。これらのカロテノイド類は種々の機能を有しており、例えば、マリーゴールドの花弁から抽出するルテインは家禽の餌の原料として広く使用され、家禽の皮フ及び脂肪並びに家禽が産む卵に色を付ける機能がある。
【0008】
このようなカロテノイド類としては、炭化水素類(カロテン類)及びそれらの酸化アルコール誘導体類(キサントフィル類)が挙げられ、中でも、アクチニオエリスロール、アスタキサンチン、ビキシン、カンタキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、β−アポ−8’−カロテナール(アポカロテナール)、β−12’−アポ−カロテナール、α−カロテン、β−カロテン、”カロテン”(α−及びβ−カロテン類の混合物)、γ−カロテン、β−クリプトキサンチン、ルテイン、リコピン、ビオレリトリン、ゼアキサンチン、及びそれらのうちヒドロキシル又はカルボキシルを含有するもののエステル類を好ましく挙げることができる。本発明に用いられるカロテノイド類としては、β‐カロテン、リコピンおよびアスタキサンチン類が好ましい。
【0009】
・β‐カロテン
β‐カロテン(β‐カロチンともいう)はニンジン、カボチャ、サツマイモ、ピーマン等に含まれ、ビタミンAの前駆体(プロビタミンA)として重要である。また、抗酸化作用、ガンの予防と抑制などβ‐カロテンの生態における調節機能も注目をあびている。
β‐カロテン含有量は、油性組成物に対し、0.01〜30質量%が好ましく、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。0.01質量%以上であればβ‐カロテンの有する生体への有益な効果を得ることが期待でき、30質量%以下であれば、油性組成物をソフトカプセルに充填する際の油性組成物の物性調整が容易である。
【0010】
・リコピン
リコピンは、トマト、スイカ、カキ等の果実に多量に存在するカロテノイドの一種であり、天然の褐赤色色素として、天然着色や生理活性付与の目的で、食品、化粧品、医薬品等に広く用いられている。
リコピンの含有量は、油性組成物に対し、0.01〜30質量%が好ましく、0.05〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%が特に好ましい。0.01質量%以上であればリコピンの有する生体への有益な効果を得ることが期待でき、30質量%以下であれば、油性組成物をソフトカプセルに充填する際の油性組成物の物性調整が容易である。
【0011】
・アスタキサンチン類
アスタキサンチン類とは、アスタキサンチン及びアスタキサンキチンのエステル等の誘導体のことをいう。
アスタキサンチンは、476nm(エタノール)、468nm(ヘキサン)に吸収極大を持つ赤色の色素でカロテノイドの一種キサントフィルに属している(Davies, B.H. : In "Chemistry and Biochemistry of Plant Pigments", T. W. Goodwin ed., 2nd ed., 38-165, Academic Press, NY, 1976.)。アスタキサンチンの化学構造は3,3'−di
hydroxy−β,β−carotene−4,4’−dione (C40H52O4、分子量596.82)である。
【0012】
アスタキサンチンは、分子の両端に存在する環構造の3(3’)−位の水酸基の立体配置により、3S,3S’−体、3S,3R’−体(meso−体)、3R,3R’−体の三種の異性体が存在する。また、さらに分子中央の共役二重結合のcis−、trans−の異性体も存在する。例えば全cis−、9−cis体と13−cis体などの如くである。
【0013】
前記3(3’)−位の水酸基は脂肪酸とエステルを形成することができる。オキアミから得られるアスタキサンチンは、脂肪酸二個結合したジエステル(Yamaguchi,K., Miki,W., Toriu, N., Kondo,Y., Murakami,M., Konosu,S., Satake,M., Fujita,T. : The composition of carotenoid pigments in the antarctic krill Euphausia superba, Bull. Jap. Sos. Sci. Fish., 1983, 49, p.1411-1415.)、H. pluvialisから得られるものは3S,3S'−体で、脂肪酸一個結合したモノエステル体が多く含まれている(Renstrom, B., Liaaen-Jensen, S. : Fatty acids of some esterified carotenols, Comp. Biochem. Physiol. B, Comp. Biochem., 1981, 69, p.625-627.)。
【0014】
また、Phaffia Rhodozymaより得られるアスタキサンチンは、3R,3R’−体(Andrewes, A.G., Starr, M.P. : (3R,3'R)-Asttaxanthin from the yeast Phaffa rhodozyma, Phytochem., 1976, 15, p.1009-1011.)であり、通常天然に見出される3S,3S'−体と反対の構造を持っている。また、これは脂肪酸とエステル形成していないフリー体で存在している(Andrewes, A.G., Phaffia, H.J., Starr, M.P. : Carotenids of Phaffia rhodozyma, a red pigmented fermenting yeast, Phytochem., 1976, 15, p.1003-1007.)。
【0015】
アスタキサンチン及び同エステル体はR.Kuhnらによってロブスター(Astacus gammarus L.)から初めて分離され、その推定構造が開示された(Kuhn, R., Soerensen, N.A. : The coloring matters of the lobster (Astacus gammarus L.), Z. Angew. Chem.,1938, 51, p.465-466.)。それ以来、アスタキサンチンが自然界に広く分布し、通常アスタキサンチン脂肪酸エステル体として存在すること、甲殻類などでたんぱく質と結合したアスタキサンチン蛋白(オボルビン、クラスタシアニン)としても存在することが明らかにされている(Cheesman, D.F. : Ovorubin, a chromoprotein from the eggs of the gastropod mollusc Pomacea canaliculata, Proc. Roy. Soc. B, 1958, 149, p.571-587.)。
【0016】
前記アスタキサンチン及びそのエステル(アスタキサンチン類)は、アスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有する天然物から分離・抽出したアスタキサンチン含有オイルとして含まれていてもよい。このようなアスタキサンチン含有オイルとして、例えば、赤色酵母ファフィア、緑藻ヘマトコッカス、海洋性細菌等を培養し、その培養物からの抽出物、南極オキアミ等からの抽出物を挙げることができる。
ヘマトコッカス藻抽出物(ヘマトコッカス藻由来色素)は、オキアミ由来の色素や、合成されたアスタキサンチンとは脂肪酸エステル体(モノエステル、ジエステルなど)の主成分の点で異なることが知られている。(http://www.astaxanthin.co.jp/chemical/basic.htm)
【0017】
本発明において用いることができるアスタキサンチン類は、前記抽出物、また更にこの抽出物を必要に応じて適宜精製したものでもよく、また合成品であってもよい。前記アスタキサンチン類としては、ヘマトコッカス藻から抽出されたもの(ヘマトコッカス藻抽出物ともいう。)が、品質、生産性の点から特に好ましい。
【0018】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物の由来としては、具体的には、ヘマトコッカス・プルビアリス(Haematococcus pluvialis)、ヘマトコッカス・ラキュストリス(Haematococcus lacustris)、ヘマトコッカス・カペンシス(Haematococcus capensis)、ヘマトコッカス・ドロエバゲンシス(Haematococcus droebakensis)、ヘマトコッカス・ジンバビエンシス(Haematococcus zimbabwiensis)等が挙げられる。
【0019】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻の培養方法は、特開平8−103288号公報等に開示された様々な方法を採用することができ、特に限定されるものではなく、栄養細胞から休眠細胞であるシスト細胞に形態変化していればよい。
【0020】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物は、上記の原料を、必要に応じて、例えば特開平5−68585号公報等に開示された方法により細胞壁を破砕して、アセトン、エーテル、クロロホルム及びアルコール(エタノール、メタノール等)等の有機溶剤や、超臨界状態の二酸化炭素等の抽出溶剤を加えて抽出することによって得られる。
また、本発明では、広く市販されているヘマトコッカス藻抽出物を用いることができ、例えば、武田紙器(株)製のASTOTS−S、同−2.5 O、同−5 O、同−10O等、富士化学工業(株)製のアスタリールオイル50F、同 5F等、東洋酵素化学(株)製のBioAstin SCE7等が挙げられる。
【0021】
本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物中のアスタキサチン類の色素純分としての含有量は、好ましくは0.001〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜25質量%である。
なお、本発明に使用できるヘマトコッカス藻抽出物は、特開平2−49091号公報記載の色素同様、色素純分としてはアスタキサンチンもしくはそのエステル体を含むが、エステル体を、一般的には50モル%以上、好ましくは75モル%以上、より好ましくは90%モル以上含むものである。
さらに詳細な説明は「アスタキサンチンの化学」、平成17年、インターネット〈URL:http://www.astaxanthin.co.jp/chemical/basic.htm〉に記載されている。
【0022】
これらのアスタキサンチン類は、超臨界炭酸ガスを用いて抽出したものが、粉末としたときの臭気の点でより好ましい。
【0023】
アスタキサンチン類の含有量は、油性組成物に対し、0.1〜20.0質量%が好ましく、0.5〜10質量%が好ましく、1.0〜3.0質量%が特に好ましい。0.1質量%以上であればアスタキサンチン類の有する生体への有益な効果を得ることが期待でき、20質量%以下であれば、油性組成物をソフトカプセルに充填する際の油性組成物の物性調整が容易である。
【0024】
[赤ワインエキス]
赤ワインは、赤ワインを多く消費するフランスでは、脂肪摂取量の割に冠動脈硬化による死亡率が低い(いわゆるフレンチ・パラドックス)ことから注目を集めた。赤ワインには、フェノール酸類、スチルベン類の他、アントシアン類(アントシアニジン類、アントシアニン類を含む)、フラボノール類、フラバノール類などのフラボノイド類、プロアントシアニジン類、タンニン類など、種々のポリフェノールが含有され、その抗酸化作用により、生体への有益な効果が期待される。しかし、赤ワインには10%程度のアルコールが含まれており、アルコールを苦手とする人や未成年者には摂取できない。そこで、赤ワインや、赤ワインを加工する際に発生する搾汁粕を、蒸留、濃縮、抽出、乾燥(噴霧乾燥、凍結乾燥など)などの操作により濃縮物、抽出物としたものが市販されている。本発明にはこれらの赤ワインおよび/または赤ワイン搾汁粕の、濃縮物および/または抽出物(本発明ではこれらを赤ワインエキス類という)を使用できる。赤ワインエキスは、上記の赤ワインに含まれるポリフェノールを含有する。
赤ワインエキス類の含有量としては、油性組成物に対し、0.1〜16質量%が好ましく、0.3〜10質量%がより好ましく、0.5〜4.0質量%が特に好ましい。0.1質量%以上であれば本発明の光による退色防止効果を十分に得られ、16質量%以下であれば、油性組成物をソフトカプセルに充填する際の油性組成物の物性調整が容易である。
【0025】
[油性組成物]
本発明の油性組成物は、上記カロテノイドと、赤ワインエキスとを含有する。
カロテノイド類はそのほとんどが油溶性であり、乳液や水溶液に加工するより、油性組成物とすることが容易である。また、カプセルの中でも安定性に優れるソフトカプセルに充填するには、油性組成物であることが特に好ましい。
本発明の油性組成物は、食品、化粧品、医薬品などに使用できる。食品に使用することが特に好ましい。
【0026】
[コラーゲンペプチド]
本発明の油性組成物は、さらにコラーゲンペプチドを含有することが好ましい。
コラーゲンペプチドは、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの哺乳類、ニワトリ、シチメンチョウなどの鳥類、マグロ、カツオ、フナ、コイ、ウナギ、サメ、エイなどの魚類、イカやタコなどの軟骨動物類、節足動物類の皮膚組織、軟骨組織、骨組織、血管組織、臓器、腱から得られるコラーゲンまたはゼラチンの加水分解により得られる物質であり、これらの1種又は2種以上を用いることができる。平均分子量は250〜20000が好ましく、300〜15000が特に好ましく、平均分子量が500〜10000が特に好ましい。
【0027】
本発明におけるコラーゲンペプチドの含有量は、油性組成物に対し、0.1〜30質量%が好ましく、0.3〜20質量%がより好ましく、0.5〜15質量%が特に好ましい。
【0028】
[その他添加物]
本発明の油性組成物には、さらに乳化安定剤を配合することが好ましい。乳化安定剤の種類は特に限定されず、慣用的で人体に無害な乳化安定剤から適宜選択することができ、例えば、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルおよびレシチンなどが挙げられる。
また、本発明の油性組成物には、さらに油脂を含有することができる。油脂としては、常温で、液体の油脂(脂肪油)及び固体の油脂(脂肪)が挙げられる。
前記液体の油脂としては、例えばオリーブ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油、アボガド油、月見草油、タートル油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルチミン酸グリセリン、サラダ油、サフラワー油(ベニバナ油)、パーム油、ココナッツ油、ピーナッツ油、アーモンド油、ヘーゼルナッツ油、ウォルナッツ油、グレープシード油等が挙げられる。
また、前記固体の油脂としては、牛脂、硬化牛脂、牛脚脂、牛骨脂、ミンク油、卵黄油、豚脂、馬脂、羊脂、硬化油、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム硬化油、モクロウ、モクロウ核油、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
また、本発明の油性組成物には、公知の食品添加物や、公知の水溶性ビタミン、脂溶性ビタミン、各種ミネラル、植物または動物系由来の素材などを任意の割合で配合することが可能である。特にビタミンEを好ましく含有できる。
【0029】
[カプセル皮膜]
本発明の油性組成物は、錠剤や液体等各種形態で提供されうるが、カプセル皮膜材に包まれたカプセルとして提供されることが好ましい。
カプセル皮膜材としては、ゼラチン、グリセリン、水、砂糖などを組み合わせたものがあげられる。カプセル皮膜に配合できる他の成分としては、卵殻カルシウム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カラメル、カラギーナン、デンプン、カロブ、セルロース、ソルビトール、香料などが挙げられる。[ドリンク]
ドリンクはカロテノイドの乳化分散物を配合して作成されたものであれば特に限定されないが、選択されるカロテノイドとしてはアスタキサンチンが好ましい。好適な例としては、特開2007-269749もしくは特開2007-326829に示されたアスタキサンチン含有乳化物を用いたドリンクを挙げることが出来る。
【0030】
[皮膚外用剤]
皮膚外用剤としてはローション、クリーム、エッセンスが挙げられる。これらはカロテノイドの乳化分散物を配合して作成されたものであれば特に限定されないが、選択されるカロテノイドとしてはアスタキサンチンが好ましい。好適な例としては、特開2007-269749もしくは特開2007-326829に示されたアスタキサンチン含有乳化物を用いたローション、エッセンス、クリームを挙げることが出来る。
[カロテノイドを配合したカプセルおよびドリンクと皮膚外用剤との併用]
カロテノイドを配合した経口剤としては美肌用剤が知られている(特許文献2)。またカロテノイドを配合した皮膚外用剤としてはアスタキサンチンを配合した皮膚外用剤が知られている(K. Arakane : Carotenoid Science, V7, p21-24 (2002)) が、両者をセットで用いた際の効果については知られていない。
【実施例】
【0031】
以下に実施例を用いて本発明について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
[サンプル調製]
下記表の成分組成に従い、油性組成物を調整した。表中、単位はグラムである。
まず、菜種油全量のうち10質量%を80℃に加熱し、ミツロウ、グリセリン脂肪酸エステルと混合し、溶解した後、40℃まで冷却した。さらに他の成分を入れ、均一になるまで混合し、油性組成物を調整した。
この油性組成物を通常の方法に従い、ソフトカプセル皮膜に充填し、ソフトカプセルを作製した。ソフトカプセルの内容量は200mg、総重量は330mgであった。カプセル皮膜の組成は、ゼラチン(魚由来)68質量%、グリセリン25%、純水7質量%であった。
【0033】
[退色試験]
作製したソフトカプセルを25℃で蛍光灯照射下(30000 lx)、24時間保存し、保存前と後との色を色差計にて測定し、保存前後のL値、a値およびb値から下式に従ってΔEを算出した。得られた結果を表1に示す。

式1 ΔE=((L0−L12+(a0−a12+(b0−b121/2

式中、L0は保存前のL値であり、L1は保存後のL値である。a0は保存前のa値であ
り、a1は保存後のa値である。b0は保存前のb値である。b1は保存後のb値である。
ソフトカプセルの商品価値の観点から、本実施例の条件におけるΔEは、2.0以下が好ましく、1.0以下がより好ましく、0.5以下が特に好ましい。
【0034】
[使用原材料]
・赤ワインエキス … 株式会社セダハーブジャパン プロヴィノル
・コラーゲンペプチド … クローダジャパン株式会社製 バイコM
・ヘマトコッカス藻抽出物
(アスタキサンチン10質量%含有) … 武田紙器株式会社 アスタッツ‐10O
・トマト抽出物(リコピン18質量%含有) … 協和発酵工業株式会社 リコピン18
・β‐カロテン懸濁液(β‐カロテン30%含有) … DSMニュートリションジャパン株式会社 β‐カロチン30%懸濁液
・グリセリン脂肪酸エステル … 花王株式会社 エキセルT‐95
・ブドウ種子抽出物(プロアントシアニジン38%含有) … キッコーマン株式会社
グラヴィノール
・松樹皮抽出物(プロアントシアニジン67%含有) … NSI株式会社 オリゴピン
・ブルーベリーエキス(アントシアニジン25%含有) … タマ生化学株式会社 ブルーベリーエキス末
・マリーゴールド抽出物(ルテイン20質量%含有) … 理研ビタミン株式会社 ルテイン20
・温州みかん抽出物(β‐クリプトキサンチン0.001質量%含有) … オリザ油化株式会社 温州みかんエキス‐P
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
各種カロテノイド類に対し、カロテノイド類とともに赤ワインエキスを含有させる(実施例1〜3)ことで、赤ワインエキスを含有させない場合(比較例1〜3)に比べ、顕著にカロテノイド類の退色を抑制できた。また、複数種のカロテノイド類と赤ワインエキスを混合した場合(実施例4〜5)に、特に退色抑制効果が高かった。また、カロテノイド類と赤ワインエキスに比べ、さらにコラーゲンペプチドを含有させる(実施例6、7)ことで、コラーゲンペプチドを含有させない場合(実施例1、5)に比べ、退色抑制効果が高かった。
また、ブドウ種子エキス、松樹皮抽出物、ブルーベリーエキスを用いた場合(比較例8〜12)に比べ、赤ワインエキスを用いた場合に退色抑制効果が高かった。赤ワインエキス特有の含有ポリフェノール組成が、油脂組成物中のカロテノイド類に退色抑制に顕著な効果を持つものと考えられる。
【0040】
〔ボランティアによる試験1−1〕
実施例5の組成物からなるソフトカプセルを被験サンプルとして美容試験を行った。女性ボランティア24人を2群に分け、試験群には実施例5の組成物からなるカプセルを、対照群には菜種油とカラメル色素配合ゼラチン皮膜からなるプラセボ品をそれぞれ2粒/日摂取させた。同時に被験群にはアスタキサンチン配合ドリンク(富士フイルム(株)製:商品名f3i-11)を、対照群には食用の合成着色料で色付けし、さらに風味付けをしたプラセボドリンクをそれぞれ1本/日摂取させた。試験は二重盲検で行い、期間は2007年10月より2007年12月までの6週間で実施した。試験期間中に皮膚水分量測定(CORNEOMETER CM825:株式会社インテグラル製使用)、皮膚表面の画像解析(VISIA:株式会社インテグラル製使用)、被験者本人のアンケートによる評価を行い、これらのデータ解析を行った。
【0041】
結果について、使用開始から2週間後の被験者アンケート結果を図1、同じく6週間後の結果を図2に、皮膚水分量変化を図3に、画像解析によるしわ数変化を図4に示す。
図1、図2より、「肌のキメ」「肌のハリ」「肌のたるみ」「目尻の小じわ」といった肌状態の評価項目に6週間の継続使用による改善が見られることがわかり、また図3、図4の機器測定においても皮膚水分量、しわ本数には改善効果があることが分かった(図3では皮膚水分量は被験群、対照群とも低下しているが、これは10月から12月にかけての寒い時期に向かう間の試験であったことが大きく影響しており、そんな悪条件下においても試験群では低下傾向が抑えられているといえる)。これら図1〜図4の結果により、本発明の組成物に美容増強効果があることが明らかとなった。
【0042】
〔ボランティアによる試験1−2〕
1−1と同様の二重盲検試験を行い、摂取開始2週間後に被験者に生活習慣、体調に関するアンケートを行った。その結果を図5に示す。
図5より、本発明の組成物に「疲労」「食欲」「血行」「睡眠」「眼の疲れ」に改善効果があることが分かった。
【0043】
〔ボランティアによる試験2〕
実施例5の組成物からなるソフトカプセルおよびアスタキサンチン配合ドリンクに加え、更にアスタキサンチン配合ローション、エッセンス、クリーム(富士フイルム(株)製:商品名ASTALIFT ; ローション:LotC062、エッセンス:LotC061、クリーム:LotC061)を併用したときの効果を試験1と同様の方法で調べた。本試験の被験者数は12人で、被験者には試験1−1で使用したソフトカプセルおよびアスタキサンチン配合ドリンクに加えて上記ローション、エッセンス、クリームをそれぞれ毎日朝晩2回使用させた。期間は試験1−1と同じく2007年10月より2007年12月までの6週間で実施した。
結果について、被験者のアンケート結果を図6に、皮膚水分量変化を図7に、画像解析によるしわ数変化を図8に示す。
【0044】
図6より、図1、図2と比較し、「肌の弾力」「肌のふっくら感」「うるおい感」といった肌状態の評価項目にも改善が見られるとともに、図7、図8より皮膚水分量、しわ本数にも図3、図4と比較し更なる改善効果が見られることが分かった。
図6〜図8の結果より、本発明の美容増強剤とカロテノイドを配合した皮膚外用剤のセットに美容増強効果があることが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】使用開始から2週間後の肌についての被験者アンケート結果を示すグラフである。縦軸は正が改善、負が悪化を示す。
【図2】使用開始から6週間後の肌についての被験者アンケート結果を示すグラフである。縦軸は正が改善、負が悪化を示す。
【図3】皮膚水分量変化を示すグラフである。
【図4】画像解析によるしわ数変化を示すグラフである。
【図5】使用開始から2週間後の体調等についての被験者アンケート結果を示すグラフである。縦軸は正が改善、負が悪化を示す。
【図6】皮膚外用剤との併用時の肌についての被験者アンケート結果を示すグラフである。縦軸は正が改善、負が悪化を示す。
【図7】皮膚外用剤との併用時の皮膚水分量変化を示すグラフである。
【図8】皮膚外用剤との併用時の画像解析によるしわ数変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カロテノイドと、赤ワインエキスとを含有する油性組成物。
【請求項2】
さらに、コラーゲンペプチドを含有することを特徴とする、請求項1に記載の油性組成物。
【請求項3】
カロテノイドが、2種以上のカロテノイド類の混合物である、請求項1または2に記載の油性組成物。
【請求項4】
カロテノイドが、3種以上のカロテノイドの混合物である、請求項1または2に記載の油性組成物。
【請求項5】
カプセルに含有されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の油性組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の油性組成物を含有する食品組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかの油性組成物を用いた美容増強剤。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかの油性組成物を用いた、食品に添加するための美容増強剤。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれかの油性組成物を用いた疲労改善剤。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかの油性組成物を用いた食欲不振改善剤。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかの油性組成物を用いた血行不良改善剤。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれかの油性組成物を用いた睡眠不足改善剤。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれかの油性組成物を用いた眼精疲労改善剤。
【請求項14】
請求項7または請求項8の美容増強剤とカロテノイドを配合した皮膚外用剤とを併用することを特長とする、美容増強のための方法。
【請求項15】
美容増強のための、請求項7または請求項8の美容増強剤とカロテノイドを配合した皮膚外用剤とのセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−159929(P2009−159929A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7274(P2008−7274)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】