説明

治具装置及び治具システム

【課題】棒体の配置位置の自由度が向上した治具装置及び当該治具装置を備えた治具システムを提供することを課題とする。
【解決手段】治具装置1は、棒体30と、棒体30を収納した筒体20と、筒体20を保持した本体10と、を備え、筒体20は、棒体30の移動を許容する胴部21、22、胴部21、22間に設けられ棒体30の移動を規制可能な絞り部23、を含み、絞り部23が棒体30により塞がれた状態で胴部21、22内の少なくとも一方の気圧が筒体20外の気圧よりも大きくなることにより、絞り部23は、棒体30の移動を許容するように拡大する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治具装置及び治具システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば電子部品の製造工程においては、様々な治具装置が用いられる(特許文献1〜3参照)。例えば、複数の棒体と、複数の棒体を保持した本体とを備えた治具装置がある。例えば、材料を付着させた棒体の他の部材に当接することにより、他の部材に材料を転写する治具装置がある。また、複数の棒体により所定の部材を支持する治具装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−22794号公報
【特許文献2】特表平10−501178号公報
【特許文献3】特開2002−298815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
転写対象や支持対象の部材の種類により、転写する位置や支持する位置は異なる。従って、使用される棒体と使用されない棒体とについても、対象となる部材毎に異なる。このため、複数の棒体はそれぞれ本体に対して進退自在に保持されている。この治具装置では、使用される棒体については本体から突出した状態で保持し、使用されない棒体については本体に収納した状態で保持可能な保持機構が設けられている。
【0005】
このような保持機構は、複数の棒体に対して共通に用いられるものがある。この場合、この保持機構によっては、本体に対する棒体の配置位置の自由度が制限される恐れがある。
【0006】
本発明は、棒体の配置位置の自由度が向上した治具装置及び当該治具装置を備えた治具システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示の治具装置は、棒体と、前記棒体を収納した筒体と、前記筒体を保持した本体と、を備え、前記筒体は、前記棒体の移動を許容する第1及び第2胴部、前記第1及び第2胴部間に設けられ前記棒体の移動を規制可能な絞り部、を含み、前記絞り部が前記棒体により塞がれた状態で前記第1及び第2胴部内の少なくとも一方の気圧が前記筒体外の気圧よりも大きくなることにより、前記絞り部は、前記棒体の移動を許容するように拡大する。
【0008】
本明細書に開示の治具システムは、上記治具装置と、前記筒体に空気を供給するための供給孔を有した本体を備えた設定治具と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
棒体の配置位置の自由度が向上した治具装置及び当該治具装置を備えた治具システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施例1の治具装置の説明図である。
【図2】図2A〜2Dは、治具装置の使用方法の説明図である。
【図3】図3A、3Bは、筒体、棒体の説明図である。
【図4】図4A、4Bは、筒体、棒体の説明図である。
【図5】図5A、5Bは、棒体の上昇の説明図である。
【図6】図6A、6Bは、棒体の上昇の説明図である。
【図7】図7は、棒体の上昇の説明図である。
【図8】図8A、8Bは、棒体の下降の説明図である。
【図9】図9A、9Bは、棒体の下降の説明図である。
【図10】図10は、棒体の下降方法の別の例の説明図である。
【図11】図11A、11Bは、実施例1の治具装置の変形例の説明図である。
【図12】図12は、実施例2の治具装置の説明図である。
【図13】図13A、13Bは、それぞれ実施例2の第1及び第2変形例である。
【図14】図14は、設定治具の説明図である。
【図15】図15A、15Bは、設定治具の内部構造を示した図である。
【図16】図16は、設定治具の説明図である。
【図17】図17は、実施例2の治具装置の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、複数の実施例を記載する。
【実施例1】
【0012】
図1は、実施例1の治具装置1の説明図である。治具装置1は、本体10、後述する本体10に保持された複数の筒体20、複数の筒体20の各々に保持された複数の棒体30、含む。図1に示すように、棒体30は、本体10の支持壁12から大きく突出した状態のものと僅かに突出した状態のものとがある。
【0013】
図2A〜2Dは、治具装置1の使用方法の説明図である。
例えば治具装置1は、電子部品がプリント基板上に実装された基板ユニットを製造する工程などで用いられる。例えば治具装置1は、鉛直方向に昇降可能な昇降機により昇降可能に保持される。図2Aに示すように、板3上に貯留された材料Rに棒体30の先端を付着させる。この場合、本体10の支持壁12から大きく突出した状態の棒体30の先端にのみ材料Rが付着される。材料Rは、接着剤として機能するAgペーストである。次に、図2Bに示すように、棒体30の先端をプリント基板5の表面に当接させる。これにより、図2Cに示すように、プリント基板5の所定の箇所には材料Rが転写される。次に、プリント基板5に転写された材料R上に電子部品6を配置する。これにより、電子部品6はプリント基板5に接着される。このように治具装置1は、プリント基板5に接着剤を塗布することができる塗布装置として用いられる。尚、治具装置1を用いて接着剤以外の材料を他の部材に転写してもよい。例えば、材料Rとして液体であってもペースト状のものであってもよい。例えば、材料Rとしてペースト状のクリーム半田を用いてもよい。また、治具装置1は、プリント基板等の板状部材を支持する装置としても用いられる。
【0014】
図3A、3B、4A、4Bは、筒体20、棒体30の説明図である。
図3Aは、筒体20の説明図である。図3Aに示すように、筒体20は、胴部21、22、絞り部23を含む。絞り部23は、胴部21、22の間に設けられている。筒体20は、略円筒状である。従って、胴部21、22、絞り部23の軸方向断面の外形は、略円形である。筒体20は、金属製であり、例えばリン青銅である。胴部21、22は、略同一の長さの内周、内径を有している。絞り部23の内周は、胴部21、22の内周よりも小さい。筒体20は、上端に絞り部25が形成され、下端に絞り部26が形成されている。絞り部25、26は、それぞれ導入口O1、O2を画定する。導入口O1、O2は、それぞれ胴部21、22内と連通している。絞り部25、26の内周は、それぞれ、胴部21、22の内周よりも小さい。胴部21には、部分的に複数の逃げ口O3が設けられている。逃げ口O3については後述する。
【0015】
図3Bは、棒体30の説明図である。図3Bに示すように、棒体30は、太部31、細部32、中部33を有している。中部33は、太部31と細部32との間に設けられている。棒体30は、金属製であり、例えばステンレスである。棒体30は略円柱状である。従って、太部31、細部32、中部33の軸方向断面の外形は、略円形である。太部31の外周は、細部32の外周よりも大きい。太部31の外周は、棒体30の最大の外周である。中部33の外周は、太部31から細部32に至るまでに徐々に小さくなっている。尚、棒体30の外周とは、棒体30の軸方向周りの外周を意味する。
【0016】
図4A、4Bは、棒体30を保持した筒体20を示している。図4Aは、筒体20の絞り部23に棒体30が保持された状態を示している。棒体30の中部33は絞り部23に挟まれている。換言すれば、絞り部23は棒体30に塞がれている。図4Aに示すように、筒体20の軸方向の長さは、棒体30の軸方向の長さよりも長い。胴部21、22の内周は、太部31の外周よりも大きい。このため、胴部21、22は、棒体30の軸方向の移動を許容する。尚、絞り部25、26の内周は、太部31の外周よりも小さい。これにより、棒体30が筒体20から離脱するのを防止できる。絞り部23の内周は、太部31の外形よりも小さい。このため、図4Aに示すように、中部33は絞り部23に保持されることが可能となる。このように、絞り部23は、棒体30の通過を規制する機能を有している。絞り部23に棒体30が保持された状態では、筒体20内に棒体30が収納される。尚、筒体20の内周とは、筒体20の軸方向周りの内周を意味する。
【0017】
図4Bは、棒体30が絞り部23を通過した状態を示している。詳しくは後述するが、所定の作業を行なうことにより、棒体30は絞り部23を通過可能になる。棒体30は、絞り部23を通過して、胴部22側に保持されている。棒体30が胴部22側で保持された状態では、棒体30の細部32の大部分が絞り部26から突出する。導入口O2の内周は、細部32の外周より大きい。また、上述したように絞り部23の内周は太部31の外周よりも小さい。このため、棒体30が胴部22側で保持された状態で棒体30がある程度の力で胴部21側に押された場合であっても、棒体30の胴部21側への移動は絞り部23により規制される。棒体30が胴部22側で保持された状態で、細部32の先端に上述した材料Rを付着させ、プリント基板5に細部32の先端を当接させる。これにより、プリント基板5に材料Rを転写することができる。
【0018】
図5A、5B、6A、6B、7は、棒体30の上昇の説明図である。
尚、これら図においては、図3A、3B、4A、4Bと異なり、理解を容易にするために筒体20、棒体30の形状を誇張して示している。本体10は、互いに対向する支持壁11、12を有している。筒体20は、支持壁11、12に形成された孔を貫通するようにして保持されている。尚、支持壁11、12は、例えば合成樹脂である。支持壁11、12には図示した以外にも複数の筒体20が保持されている。
【0019】
図5Aに示すように、棒体30が筒体20から突出した状態においては、棒体30は導入口O2を塞いでいる。棒体30は、自重により導入口O2を塞いでいる。詳細には、絞り部26の内縁と中部33の外縁とが当接している。絞り部26は、若干支持壁12よりも外側に突出している。絞り部26の外周を覆うように、チューブT1を筒体20に差し込む。チューブT1は、空気を搬送するためのポンプが連結されている。この状態で、チューブT1から空気を送る。チューブT1から空気が送り込まれると、図5Bに示すように、空圧により棒体30は絞り部26から離れるように上昇して絞り部23に当接する。空気は導入口O2から胴部22内に流れる。導入口O2は、胴部22内に空気を導入可能とするために設けられている。棒体30が上昇すると、棒体30の太部31が絞り部23を塞ぐ。これにより、胴部22内の空気が胴部21側に流れることが防止される。この状態で更に空気が送られると、胴部22内の気圧は、胴部21内の気圧、筒体20外の気圧よりも高くなる。
【0020】
胴部22内に更に空気が送られると胴部22内の気圧が更に高くなり、図6Aに示すように絞り部23の内周は、太部31の通過を許容する程度に拡大する。詳細には、絞り部23周辺の筒体20の側壁が外側に向けて膨張する。尚、図6Aにおいては、絞り部23の状態は誇張して示している。絞り部23の内周が太部31の通過を許容する程度に拡大すると、棒体30は、胴部21内と胴部22内との気圧差に基づいて胴部21側に吸引される。これにより、棒体30は胴部21側に移動する。胴部21内と胴部22内との気圧差に基づいて、図6Bに示すように、棒体30の中部33、細部32は、絞り部23を通過する。この状態で、チューブT1から筒体20内への空気の供給を停止することにより、図7に示すように、絞り部23が元の内周の大きさに復帰して、棒体30は自重により落下する。絞り部23は棒体30を保持する。このようにして、筒体20は棒体30に対して昇降する。絞り部23は、拡大していない状態で棒体30を保持する。
【0021】
図5Bに示したように、太部31が絞り部23を塞ぐことにより、胴部21内の空間は密閉される。この状態でチューブT1から胴部21内に空気が供給されることにより、胴部21内の気圧が上昇する。これに伴い、絞り部23が拡大する。このように、太部31が絞り部23を塞ぐことにより、胴部21内の気圧を上昇させることができ、これにより絞り部23を拡大せることができる。尚、絞り部26の周辺は、支持壁12により囲まれているため、導入口O2の内周は変化しない。
【0022】
棒体30が絞り部23で保持された状態においては、細部32の先端は筒体20から突出していてもよいし、突出していなくてもよい。棒体30が絞り部23で保持された状態での筒体20から棒体30の突出量は、棒体30が胴部22側で保持された状態での筒体20からの棒体30の突出量よりも小さければよい。
【0023】
ここで、棒体30の移動途中において導入口O1を塞ぐ可能性について説明する。上昇した棒体30は常に導入口O1を塞ぐわけではないが、チューブT1から送られる空気の量や棒体30の重量によっては、筒体20が導入口O1を塞ぐ場合が起こる恐れがある。この場合には、胴部21内の空気は胴部21の側面に設けられた逃げ口O3から排出される。逃げ口O3は、図6Bに示すように、支持壁11よりも外側に位置している。これにより、棒体30が上昇して導入口O1を塞いだ場合であっても、筒体20内の気圧を外気圧と同程度までに早期に減圧することができる。
【0024】
逃げ口O3が設けられていない場合、棒体30が導入口O1を塞いだ状態でチューブT1から筒体20内に継続的に空気が送られていると、筒体20内の気圧が筒体20外の気圧よりも大きくなる。これにより、筒体20に負荷がかかる。特に、筒体20が薄い材料で形成した場合に、問題が生じる恐れがある。しかしながら、本実施例では逃げ口O3が設けられているので、棒体30が導入口O1を塞いだ場合であっても、筒体20内を早期に減圧でき筒体20の負荷を低減できる。
【0025】
また、逃げ口O3が設けられていない場合、棒体30が導入口O1を塞ぎ筒体20内に空気が送られている間絞り部23が拡大した状態に維持される恐れがある。これにより、一旦胴部21側に上昇した棒体30が、自重により再び下降して胴部22側に落下する恐れがある。しかしながら、本実施例では逃げ口O3が設けられているので、棒体30が導入口O1を塞いだ場合であっても、筒体20内を早期に減圧でき、絞り部23を直ちに元の形状に復帰させることができる。これにより、上昇した棒体30が自重で再び落下する前に絞り部23を元の形状に復帰させることができ、棒体30の下降を規制することができる。
【0026】
また、逃げ口O3が設けられていることにより、棒体30が導入口O1を塞いでいない場合であっても棒体30が上昇した際に直ちに筒体20内を減圧することができる。上述したように、拡大する前の絞り部23の内周は、太部31の内周よりは小さいが細部32の内周よりも大きい。従って、棒体30が下降することを防止する観点から、棒体30が上昇して中部33が絞り部23を通過した時点で直ちに絞り部23が元の形状に復帰していることが望ましい。胴部21側に導入口O1のみならず逃げ口O3も設けられていることにより、筒体20内を早期に減圧することができる。これにより絞り部23を早期に元の形状に復帰させることができ、棒体30が再び下降して胴部22側に移動することを防止できる。
【0027】
図8A、8B、9A、9Bは、棒体30の下降の説明図である。
図8Aに示すように、チューブT1を絞り部25側から筒体20に差し込む。この際、逃げ口O3を塞ぐようにチューブT1を筒体20に差し込む。この状態で、チューブT1から空気を送る。空気は、導入口O1から胴部21内に供給される。このように、導入口O1は胴部21内に空気を導入するために設けられている。絞り部23は棒体30により塞がれているので、胴部21内の気圧は、胴部22内の気圧、筒体20外の気圧よりも大きくなる。更に胴部21内に空気が供給されると、図8Bに示すように、絞り部23は棒体30を通過可能な程度に拡大する。絞り部23が拡大すると、胴部21内と胴部22内の気圧差と棒体30の自重とに基づいて、棒体30は絞り部23を通過する。この状態でチューブT1から筒体20内への空気の供給を停止することにより、図9Aに示すように棒体30は胴部22側で保持される。このようにして筒体20は棒体30に対して下降する。
【0028】
図9Bは、棒体30に上方の力が作用した場合の図である。上述したように絞り部23の内周は、通常状態においては太部31の外周よりも小さい。このため、絞り部23が棒体30の上昇を規制している。例えば、治具装置1が他の部材に材料を転写するために用いられる場合には、棒体30の先端に材料が塗布される時や棒体30の先端を他の部材に当接させる時には、棒体30には上方の力が作用する。このような場合においても、絞り部23が棒体30の上昇を規制している。
【0029】
尚、図9A、9Bに示すように、胴部22側で保持されている棒体30は、軸方向での所定範囲のストロークが許容されている。胴部22の軸方向の長さは、太部31の軸方向の長さよりも長いからである。これにより、例えば治具装置1を昇降機などに連結されて昇降させて棒体30の先端を他の部材に当接する際に、棒体30に負荷が係りすぎることを防止しできる。
【0030】
図8Aに示したように、中部33が絞り部23を塞ぐことにより、胴部22内の空間は密閉される。この状態でチューブT1から胴部22内に空気が供給されることにより、胴部22内の気圧が上昇する。これに伴い、絞り部23が拡大する。このように、中部33が絞り部23を塞ぐことにより、胴部22内の気圧を上昇させることができ、これにより絞り部23を拡大せることができる。
【0031】
以上のように、筒体20は、収納した棒体30を昇降可能に保持している。また、図1に示したように、本体10には、筒体20と棒体30とが対になった状態で複数の筒体20、棒体30が設けられている。このように、それぞれの棒体30に対して、棒体30を昇降可能に保持した筒体20が設けられている。このため、本体10における筒体20、棒体30の配置位置の自由度が向上している。
【0032】
例えば、複数の筒体20を共通の機構により昇降可能に保持した機構の場合には、筒体20の配置位置は、この機構の制約を受ける。しかしながら、本実施例のように、各筒体20に対応するように棒体30が設けられているので、筒体20、棒体30の配置位置の自由度が向上している。
【0033】
尚、図7、8Aに示したように、拡大していない状態で絞り部23は棒体30を保持可能である。これにより、棒体30が筒体20内でがたつくことを防止できる。
【0034】
図10は、棒体30の下降方法の別の例の説明図である。
導入口O1に棒Lを差し込んで棒体30を下方に押し込んでもよい。この場合、絞り部23の内縁は、棒体30の中部33を滑り、絞り部23の内周は太部31の外周にまで拡大する。このような方法により、棒体30を下降させてもよい。
【0035】
図11A、11Bは、実施例1の治具装置1の変形例の説明図である。
図11Aに示すように、筒体20の外側を覆う外筒40が設けられている。外筒40は、筒状である。外筒40の材料は、例えば金属である。外筒40の厚みは、筒体20よりも厚い。外筒40は、筒体20よりも高い剛性を有している。外筒40は、支持壁11、12に保持されている。筒体20と外筒40との間の支持壁11には、部分的に複数の連通孔11a1が設けられている。連通孔11a1は、外筒40、筒体20、支持壁11、12とにより囲まれた空間Sと、外の空間とを連通する機能を有している。外筒40は、支持壁11から若干突出している。
【0036】
棒体30を上昇させる場合には、図11Bに示すように、チューブT1を絞り部26側から筒体20に挿入し、チューブT2を支持壁11側から外筒40の内縁に差し込む。チューブT2には、空気を吸引可能なポンプが連結されている。この状態で、チューブT1から筒体20内に空気を供給し、チューブT2から空間S内の空気を吸引する。チューブT2から空間S内の空気を吸引することにより、空間S内の気圧は、外筒40外の気圧よりも低くなる。また、チューブT1から空気が供給されることにより、胴部22内に気圧は外筒40外の気圧よりも低くなる。これにより、絞り部23の拡大変形が容易となる。また、チューブT2は、胴部21内の空気も吸引している。これにより、胴部21内の気圧は、外気圧よりも低くなる。このため、胴部21内と胴部22内との気圧差が大きくなる。この気圧差により、絞り部23が拡大した際に棒体30は胴部22側から絞り部23へと移動する。このようにして、棒体30の上昇が行なわれる。
【実施例2】
【0037】
図12は、実施例2の治具装置1aの説明図である。
尚、実施例2について、実施例1と同様の構造については同様の符号を付することにより重複する説明を省略する。本体10の支持壁11、側壁には、それぞれヒータ50a、50bが配置されている。ヒータ50a、50bは、例えばカートリッジヒータやセラミックヒータであるが、これに限定されない。ヒータ50a、50bは、例えば電気抵抗により発生する熱を利用したものである。ヒータ50a、50bは、上述した筒体20の絞り部23を加熱するためのものである。絞り部23を加熱することにより、絞り部23が膨張して絞り部23の内周の拡大を促進することができる。これにより、上述したチューブT1を用いて棒体30を移動させる際に、絞り部23を容易に変形させ棒体30の移動を容易にすることができる。
【0038】
ここで、絞り部23が加熱されると併せて棒体30も加熱される。このため、筒体20は、熱膨張率が棒体30よりも大きい材料で形成されている。棒体30の熱膨張率が筒体20以上であると、絞り部23の内周と同様に棒体30の外周も拡大するからである。上述したように、筒体20の材料は、例えばりん青銅であり、棒体30の材料はステンレスである。熱膨張率は、りん青銅の方がステンレスよりも大きい。
【0039】
図13A、13Bは、それぞれ実施例2の第1及び第2変形例である。
図13Aに示すように、ヒータ50cは本体10内に設けられている。具体的には、ヒータ50cは、複数の筒体20を挟むようにして、支持壁11、12の間に設けられている。また、ヒータ50aは、支持壁11の外側に設けられており、筒体20の逃げ口O3を塞がないように設けられている。これにより、筒体20を効率的に加熱することができる。また、ヒータ50cは、複数の筒体20を挟むように設けられている。このため、ヒータ50cに挟まれている筒体20の間隔を広くすることなく、筒体20を加熱することができる。
【0040】
また、図13Bに示すように、ヒータ50dは、筒体20と交互に設けられている。これにより、短期間で効率的に筒体20を加熱することができる。尚、実施例2の第2変形例では、支持壁11dの外側にはヒータは設けられていない。これにより、治具装置全体の厚みの増大が抑制される。
【0041】
図14は、設定治具100の説明図である。
図14には、治具装置1aと設定治具100とを含む治具システムを示している。設定治具100には、本体110、ヒータ150とを含む。本体110は、例えば金属製である。本体110には、複数の供給孔120が設けられている。供給孔120は、治具装置1aの筒体20及び棒体30の位置に対応している。設定治具100には、チューブT3が接続されている。チューブT3には、空気を送り出すためのポンプが連結されている。チューブT3は、各供給孔120と連通している。
【0042】
チューブT3から空気が送り出されると供給孔120から空気が噴出する。供給孔120と筒体20とを嵌合するようにして設定治具100上に治具装置1aを配置して、チューブT3から空気を供給することにより、各筒体20には空気が供給される。これにより、全ての棒体30を上昇させて絞り部23に保持された状態にすることができる。ヒータ150は、筒体20内に供給される空気を加熱するためのものである。加熱された空気が筒体20内に供給されることにより、絞り部23の内周の拡大を促進することができる。また、本体110は金属製であるので、ヒータ150により早期に本体110を加熱することができ、これにより供給孔120から送り出される空気も加熱される。
【0043】
図15A、15Bは、設定治具100の内部構造を示した図である。
図15Aに示すように、本体110の底面にヒータ150が固定されている。ヒータ150は、例えばカートリッジヒータ又はセラミックヒータである。ヒータ150には、チューブT3を通過させるための孔が設けられている。本体110は、内部に各供給孔120に連通した連通室125が形成されている。チューブT3は、連通室125と連通している。チューブT3から連通室125に供給された空気は、各供給孔120へ送られる。連通室125は、ヒータ150に近い位置に設けられている。このため連通室125内の空気は加熱される。また、チューブT3は、連通室125の略中央部から空気を供給する。このため、各供給孔120に送られる空気の温度差を抑制することができる。
【0044】
図15Bは、設定治具100の変形例である設定治具100aを示している。設定治具100aの本体110aには、チューブT3を通過させるための孔が設けられている。チューブT3は、本体110aの側面に接続されている。これにより、ヒータ150aは、本体110aの底面の全体を加熱することができる。
【0045】
図16は、設定治具200の説明図である。
図16には、治具装置1aと設定治具200とを含む治具システムを示している。設定治具200は、略設定治具100と同様の構造を有している。設定治具200は、本体210、本体210の上面側に設けられたヒータ250、を有している。本体210は、例えば金属製である。本体210には、複数の供給孔220が設けられている。チューブT4は、各供給孔220と連通している。チューブT4から空気が送り出されると、供給孔220から空気が噴出する。また、供給孔220内にはネジ溝が設けられている。供給孔220の特定の箇所にネジDを嵌合させることにより、供給孔220から空気が噴出することを防止できる。
【0046】
このようにして、複数の供給孔220から、空気が噴出される供給孔220を選択することができる。このような供給孔220と筒体20とを嵌合するようにして治具装置1a上に設定治具200を配して、チューブT4から空気を供給することにより、所定の筒体20に空気を供給することができる。これにより、空気が供給された筒体20内で保持された棒体30は下降する。このようにして、特定の棒体30のみを下降させることができる。
【0047】
図17は、実施例2の治具装置の変形例の説明図である。
実施例2の変形例の治具装置1bは、プリント基板5を支持する支持装置として用いられる。本体10dに保持された複数の棒体30dのうち、特定の棒体30dのみを突出させる。この棒体30dは、支持対象であるプリント基板5に実装された電子部品6を回避した位置に当接させる。このようにして、治具装置1bはプリント基板5を支持する。尚、治具装置1bは、プリント基板5以外の板状の部材を支持することもできる。
【0048】
以上本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0049】
胴部21、22の内周の大きさは、棒体30の最大の外周よりも大きければ異なっていてもよい。筒体20は、角筒状であってもよい。棒体30は、角柱状、円錐状、角錐状のいずれであってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1、1a、1b 治具装置
5 プリント基板
6 電子部品
10、10d 本体
11、12、11d 支持壁
11a1 連通孔
20 筒体
21、22 胴部
23 絞り部
30 棒体
31 太部
32 細部
33 中部
40 外筒
50a、50b ヒータ
100、100a、200 設定治具
O1、O2 導入口
O3 逃げ口
R 材料
T1〜T4 チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒体と、
前記棒体を収納した筒体と、
前記筒体を保持した本体と、を備え、
前記筒体は、前記棒体の移動を許容する第1及び第2胴部、前記第1及び第2胴部間に設けられ前記棒体の移動を規制可能な絞り部、を含み、
前記絞り部が前記棒体により塞がれた状態で前記第1及び第2胴部内の少なくとも一方の気圧が前記筒体外の気圧よりも大きくなることにより、前記絞り部は、前記棒体の移動を許容するように拡大する、治具装置。
【請求項2】
前記第1及び第2胴部内の気圧差に基づいて、前記棒体は、前記第1及び第2胴部の一方側から他方側に移動する、請求項1の治具装置。
【請求項3】
前記絞り部は、拡大していない状態で前記棒体を挟んで保持可能である、請求項1又は2の治具装置。
【請求項4】
前記筒体は、前記第1胴部内に空気を導入可能な第1導入口、前記第2胴部内に空気を導入可能な第2導入口、を含み、
前記第1及び第2導入口は、それぞれ前記棒体の通過を規制する、請求項1乃至3の何れかの治具装置。
【請求項5】
前記筒体は、前記第1胴部内の空気を前記筒体の外部へ逃す逃げ口を含む、請求項5の治具装置。
【請求項6】
前記絞り部を加熱する加熱手段を備え、
前記絞り部の熱膨張率は、前記棒体の熱膨張率よりも大きい、請求項1乃至5の何れかの治具装置。
【請求項7】
前記筒体の外側を覆う外筒を有し、
前記外筒と前記筒との間の空気を吸引することにより前記絞り部の拡大が促進される、請求項1乃至6の何れかの治具装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかの治具装置と、
前記筒体に空気を供給するための供給孔を有した本体を備えた設定治具と、を備えた治具システム。
【請求項9】
前記設定治具は、前記筒体に供給される空気を加熱するための加熱手段を有している、請求項8の治具システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−44072(P2012−44072A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185621(P2010−185621)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】