説明

治療用化合物の同定のための方法および組成物

本発明により、プロドラッグの活性化を担う酵素が同定され、プロドラッグとしての候補化合物の同定のために利用される。本発明は、適したプロドラッグとして候補化合物を同定する方法、および治療剤としての適合性について候補化合物をスクリーニングする方法を包含する。その同定する方法は、(a)エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基を有する候補化合物を提供する工程;(b)その候補化合物と、GS−7340エステル加水分解酵素を含む抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および(c)その1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、候補化合物のエステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または候補化合物のエステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、その候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程、を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第119(e)条のもとに、2003年10月24日に出願された米国仮特許出願第60/514,241号、2003年10月24日に出願された米国仮特許出願第60/514,299号、2003年10月24日に出願された米国仮特許出願第60/513,532号、2003年10月24日に出願された米国仮特許出願第60/513,542号、2003年10月29日に出願された米国仮特許出願第60/514,894号、および2003年10月29日に出願された米国仮特許出願第60/514,925号の利益を主張する。米国特許法第119(e)条のもとに利益が主張された上述の出願の各々は、その全体が参考として本明細書中に援用される。本出願はまた、米国特許法第365(c)条および米国特許法第120条のもとに、2003年4月25日に出願された国際出願のPCT/US03/12943に対する優先権を主張し、その一部継続である。本出願はまた、2004年10月22日に出願された「Methods and Compositions for Identifying Therapeutic Compounds」という発明の名称の米国特許出願(代理人整理番号18477.041、この米国特許出願は、その全体が参考として本明細書中に援用される)の継続出願であり、その利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明により、プロドラッグの活性化を担う酵素が同定され、プロドラッグとしての候補化合物の同定のために利用される。本発明は、適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法および治療剤としての適合性について候補化合物をスクリーニングする方法を包含する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
標的細胞および標的組織への薬物または他の薬剤の送達の改善は、長年の多くの研究の焦点である。インビボおよびインビトロの両方において細胞へ生物学的活性分子を移入するための効率的な方法を開発するために、多くの試みがなされているが、完全に満足のいくものは立証されていない。例えば周辺細胞への薬物の細胞間再分布を最小にしながら、薬物とその細胞内標的との結合を最適化することは、しばしば困難であるかまたは非効率的である。したがって、主要な目的は、薬剤を細胞および組織に特異的に標的化する方法および組成物を開発することである。このような処置の利点としては、このような薬剤の、他の細胞および組織(例えば、未感染細胞)への不適切な送達による全身の生理学的影響を回避することが挙げられる。
【0004】
細胞内標的化は、生物学的活性薬剤の細胞内での蓄積または保持を可能にする方法および組成物によって達成され得る。
【0005】
感染性因子の存在、不在または量、あるいは医学的状態の存在または不在を決定し得るアッセイ方法は、そのような因子または状態のインヒビターの探索において実用的に有用である。
【0006】
所望の薬物動態学的特性(強化された活性を含む)、改善された経口生物学的利用能、より大きな作用強度、およびインビボでの延長された有効な半減期を有する治療剤(例えば、プロドラッグ)に対する必要性が存在する。同定されたプロドラッグは、好ましくは、より小さな副作用しか有さず、投薬スケジュールがより複雑でなく、そしてより経口的に活性である。そのようなプロドラッグは、医学的状態の発症および進行を制限するために、そして医学的状態の診断アッセイにおいて、有用であり得る。このように、そのようなプロドラッグの同定を容易にする酵素に対する必要性が存在する。
【0007】
ホスホルアミデートプロドラッグ(例えば、ヌクレオチドアミド化トリエステル)の生物活性化は、一般的なスキームに従い得るというコンセンサスがある(非特許文献1;非特許文献2,非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5)。図1を参照のこと。工程Aは、アミノ酸様カルボン酸エステル(carboxylic ester)の加水分解である。亜リン酸のカルボン酸による求核攻撃(工程B)が、5員環中間体の形成を開始させ、この中間体がモノアミデートジエステル(アミノ酸ヌクレオシド一リン酸、AAM、代謝物Xと呼ばれる)へ急速に加水分解されると考えられる。代謝物XのようなAAM化合物は、例えば抗ウイルス性ヌクレオシドのような細胞内蓄積形態が考慮される。種々の酵素および非酵素性触媒が、ヌクレオチドの形成をもたらすAAM化合物のアミド結合の加水分解に関与している。ヌクレオチドは、ヌクレオチド二リン酸およびヌクレオチド三リン酸への酵素性リン酸化により活性化される。エステル加水分解酵素活性はまた、ホスホルアミデート以外のプロドラッグ分子へ適用されると仮定され得る。しかし、現在まで、プロドラッグのエステル加水分解酵素切断の機序および特異性の同定は、同定可能なエステル加水分解酵素の利用が限られていることから、制限されている。
【非特許文献1】Valetteら、J.Med.Chem.,(1996)39:p.1981−1991
【非特許文献2】McGuiganら、Antivir.Chem.Chemotheraphy,(1998)9:p.109−115
【非特許文献3】McGuiganら、Antivir.Chem.Chemotheraphy,(1998)9:p.473−479
【非特許文献4】Saboulardら、Mol.Pharmacol.,(1999)56:p.693−704
【非特許文献5】Siddiquiら、J.Med.Chem.,(1999)42:p.4122−4128
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法を包含および提供する。その方法は、(a)エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基を有する候補化合物を提供する工程;(b)その候補化合物と、GS−7340エステル加水分解酵素を含む抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および(c)その1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、候補化合物のエステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または候補化合物のエステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、その候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程、を包含する。
【0009】
本発明は、適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法を包含および提供する。その方法は、(a)エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基を有する候補化合物を提供する工程;(b)その候補化合物と、GS−7340エステル加水分解酵素を含む末梢血単核細胞の抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および(c)その1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、候補化合物のエステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または候補化合物のエステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、その候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程、を包含する。
【0010】
本発明は、適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法を包含および提供する。その方法は、(a)エステル化ホスホネート基を有する候補化合物を提供する工程;(b)その候補化合物と、GS−7340エステル加水分解酵素を含む抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および(c)その1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、候補化合物のエステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合に、その候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程、を包含する。
【0011】
本発明は、適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法を包含および提供する。その方法は、(a)エステル化カルボキシル基を有する候補化合物を提供する工程;(b)その候補化合物と、GS−7340エステル加水分解酵素を含む抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および(c)その1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、候補化合物のエステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、その候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程、を包含する。
【0012】
本発明は、適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法を包含および提供する。その方法は、(a)エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基を有する候補化合物を提供する工程;(b)その候補化合物と、GS−7340エステル加水分解酵素活性を有する末梢血単核細胞の抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および(c)その1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、候補化合物のエステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または候補化合物のエステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、その候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程、を包含する。
【0013】
本発明は、治療剤としての適合性について候補化合物をスクリーニングする方法を包含および提供する。その方法は、(a)エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基を有する候補化合物を提供する工程、その候補化合物と、GS−7340エステル加水分解酵素を含む抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程、およびその1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、候補化合物のエステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または候補化合物のエステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、その候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程によって、適したプロドラッグとして同定された候補化合物を提供する工程;(b)その候補化合物の治療的活性を測定する工程;および(c)その候補化合物の細胞内残留性(intracellular persistence)を測定する工程、を包含する。
【0014】
本発明はまた、適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法を包含および提供する。その方法は、(a)エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基で、治療的活性を有すると考えられるプロトタイプ化合物を置換することによって形成される候補化合物を提供する工程;(b)その候補化合物と、GS−7340エステル加水分解酵素を含む末梢血単核細胞の抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および(c)その1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、候補化合物のエステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または候補化合物のエステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、その候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程、を包含する。
【0015】
本発明はまた、適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法を包含および提供する。その方法は、(a)エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基を有する候補化合物を提供する工程;(b)その候補化合物と、カテプシンAまたはそのフラグメントを含む抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および(c)その1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、候補化合物のエステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または候補化合物のエステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、その候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程、を包含する。
【0016】
本発明はまた、適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法を包含および提供する。その方法は、(a)エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基で、治療的活性を有すると考えられるプロトタイプ化合物を置換することによって形成される候補化合物を提供する工程;(b)その候補化合物と、カルボン酸エステル加水分解酵素活性を有する末梢血単核細胞の抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および(c)その1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、候補化合物のエステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または候補化合物のエステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、その候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程、を包含する。
【0017】
本発明はまた、適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法を包含および提供する。その方法は、(a)エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基で、ヒト免疫不全ウイルスに対して治療的活性を有すると考えられるプロトタイプ化合物を置換することによって形成される候補化合物を提供する工程;(b)その候補化合物と、カルボン酸エステル加水分解酵素活性を有する末梢血単核細胞の抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および(c)その1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、候補化合物のエステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または候補化合物のエステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、その候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程、を包含する。
【0018】
本発明はまた、適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法を包含および提供する。その方法は、(a)エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基で、炎症に対して治療的活性を有すると考えられるプロトタイプ化合物を置換することによって形成される候補化合物を提供する工程;(b)その候補化合物と、カルボン酸エステル加水分解酵素活性を有する末梢血単核細胞の抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および(c)その1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、候補化合物のエステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または候補化合物のエステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、その候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程、を包含する。
【0019】
本発明はまた、適したプロドラッグとして候補化合物を同定する工程を包含および提供する。その方法は、(a)エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基で、癌に対して治療的活性を有すると考えられるプロトタイプ化合物に置換することによって形成される候補化合物を提供する工程;(b)その候補化合物と、カルボン酸エステル加水分解酵素活性を有する末梢血単核細胞の抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および(c)その1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、候補化合物のエステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または候補化合物のエステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、その候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程、を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書中で使用される場合、「細胞負荷(cell loading)」は、プロドラッグ、プロドラッグ代謝物または薬物分子の、細胞内への蓄積である。
【0021】
本明細書中で使用される場合、「感染因子」とは、一般的に、任意の疾患原因生物体をいい、細菌、ウイルスおよび菌類(酵母および糸状菌を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書中で使用される場合、用語「プロドラッグ」とは、生体系に投与したとき、自発的な化学反応、酵素に触媒される化学反応、光分解および/または代謝化学反応の結果として、薬物物質(すなわち、活性成分)を生じる任意の化合物をいう。すなわち、プロドラッグは、生体系に投与されたときに、プロドラッグ代謝物として薬物物質を形成する。プロドラッグは、治療的活性化合物の共有結合的に修飾されたアナログまたは潜在形態である。プロドラッグは、酸化、還元、アミノ化、脱アミノ化、エステル化、脱エステル化、アルキル化、脱アルキル化、アシル化、脱アシル化、リン酸化、脱リン酸化、光分解、加水分解され得るか、あるいはそのプロドラッグの化学結合の形成または破壊に関する他の官能基の変化または変換を有し得る化合物を含む。好ましい実施形態において、プロドラッグは、エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基を有する。
【0023】
本明細書中で使用される場合、「薬学的に受容可能なプロドラッグ」とは、一般的に、酵素作用あるいは一般酸または一般塩基の加溶媒分解のいずれかにより、被験体において代謝(例えば、加水分解または酸化)され、活性成分を形成し得る化合物をいう。本発明のプロドラッグの代表的な例は、化合物の官能基部分に、生物学的に不安定な保護基を有する。
【0024】
本明細書中で使用される場合、「プロトタイプ化合物(prototype compound)」とは、治療的活性を有すると考えられる任意の候補化合物をいう。一般的に、本発明の方法において、合成の負担および開発コストを減らすために、既知の構造および合成経路を有するプロトタイプ化合物が好ましくは選択される。
【0025】
本明細書中で使用される場合、「被験体」は、状態または疾患の処置を受けることができる任意の生体である。
【0026】
「処置の必要な被験体」は、疾患または状態の処置により利益を受け得る任意の被験体(患者のような、ヒトを含む)である。処置により利益を受け得る被験体としては、疾患または状態を有すると診断された被験体、疾患または状態を有すると疑われる被験体、あるいは疾患または状態にかかりやすくあり得る被験体が挙げられる。処置の利益としては、疾患または状態の予防、あるいは疾患または状態の寛解(疾患または状態の排除を含む)が挙げられ得る。
【0027】
本明細書中で使用される場合、処置によって利益を受け得るサンプルまたは被験体としては、生体のような天然物質または人工物質;組織または細胞培養物;生物学的物質サンプル(血液、血清、尿、脳脊髄液、涙、痰、唾液、組織サンプルなど)のような生物学的サンプル;研究室サンプル;食物サンプル、水サンプルまたは空気サンプル;細胞(特に、所望の糖タンパク質を合成する組み換え細胞)の抽出物のような生物産物(bioproduct)サンプル;などが挙げられる。サンプルは、任意の媒体(水および有機溶媒/水混合物を含む)に含まれ得る。サンプルとしては、生体(例えば、ヒト)および人工物質(例えば、細胞培養物)が挙げられる。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「標的酵素」とは、その比活性が強化されようとしている任意の酵素をいう。
【0029】
本明細書中で使用される場合、「治療的活性」は、被験体に投与されるかインビボで試験される場合に、反応を誘導する化合物の能力を包含する。治療的活性は処置を包含し、これは予防的であってもよいし寛解性であってもよい。疾患または状態の処置は、疾患または状態の任意の程度の改善(疾患または状態の排除を含む)を包含し得る。治療的活性を測定するために、化合物の治療的活性が評価され得る任意の方法が、使用され得る。例えば、インビボ法およびインビトロ法の両方が使用され得、その方法としては、臨床的評価、EC50およびIC50アッセイならびに用量反応曲線が挙げられる。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「GS−7340エステル加水分解酵素」はまた、例えばGS−7340加水分解酵素および7340加水分解酵素ともいわれる。
【0031】
(本発明の抽出酵素およびポリペプチド)
本発明は、酵素およびそのフラグメントを包含する。例えば、1つの実施形態において、本発明は、GS−7340加水分解酵素ならびにそのフラグメントおよびホモログを包含する。別の実施形態において、本発明は、カテプシンAならびにそのフラグメントおよびホモログを包含する。別の実施形態において、本発明は、GS−7340エステル加水分解酵素活性を有する1種以上の酵素およびそのフラグメントを包含する。別の実施形態において、本発明は、カテプシンA様活性を有する酵素を包含する。
【0032】
好ましい実施形態において、本発明は、本発明の1種以上の酵素またはそのフラグメントを含む抽出物を包含する。抽出物は、代表的に、任意の位置または供給源から抽出、回収または得られている。抽出物は、当業者に明らかな任意の技術または技術の組み合わせ(当該分野において公知な技術および本明細書中に記載される技術を含む)により、抽出、回収または得られ得る。非限定的な例として、抽出物は、実施例4に記載されるように得られ得る。
【0033】
抽出物は、1種以上の酵素またはそのフラグメントと、任意の他の成分(例えば、細胞成分、緩衝液または任意の他の成分)との任意の組み合わせを含み得る。抽出物は、溶液、懸濁液、乳濁液、粉末または当業者に明らかな任意の他の形態であり得る。好ましい実施形態において、抽出物は、ヒト細胞から得られる。非常に好ましい実施形態において、抽出物は、ヒト末梢血単核細胞から得られる。抽出物はまた、例えば、組み換え技術またはペプチド合成により、合成的にも調製され得る。
【0034】
1つの実施形態において、抽出物は、エステル加水分解酵素活性を有する。好ましい実施形態において、抽出物は、エステル加水分解酵素活性を有するが、αナフチルアセテート(ANA)の切断における活性を有する。別の好ましい実施形態において、抽出物は、エステル化カルボキシル基またはエステル化ホスホネート基においてエステル加水分解酵素活性を有するが、αナフチルアセテート(ANA)の切断においてわずかな活性しか有さない。
【0035】
別の実施形態において、本発明の抽出物は、カルボン酸エステル加水分解酵素活性を有する抽出物である。好ましい実施形態において、カルボン酸エステル加水分解酵素活性を有する抽出物は、末梢血単核細胞(PBMC)の抽出物である。好ましい実施形態において、抽出物は、カルボン酸エステル加水分解酵素活性を有するが、αナフチルアセテート(ANA)の切断においてわずかしかエステル加水分解酵素活性を有さない。別の好ましい実施形態において、抽出物は、カルボン酸エステル加水分解酵素活性を有し、かつPBMC由来である。なお別の実施形態において、そのカルボン酸エステル加水分解酵素活性を有するPBMC由来の抽出物は、無細胞環境においてGS−7340エステル加水分解酵素を含む。
【0036】
本発明の好ましい実施形態において、エステル加水分解酵素活性は、実施例2Bに記載されるように計測される。酵素活性を有する種々の量の抽出物が、プロドラッグ基質と一緒にインキュベートされる。生成される代謝物が各反応混合物から抽出され、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して親のプロドラッグ基質から分離される。1つの実施形態において、抽出された1以上の代謝産物は、生成された総代謝物の、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約97%、約98%、約99%を含む。代謝産物は、分光光度法によりモニターされる。エステル加水分解酵素活性は、生成される代謝物X(ピコモル(pmole))/分/酵素サンプルの容量、として表される。
【0037】
本発明の好ましい実施形態において、αナフチルアセテートの切断における活性は、実施例3に記載されるように計測される。酵素活性を有する種々の量の抽出物が、ANAと一緒にインキュベートされる。切断されたαナフチル生成物は、分光光度計により検出される。活性は、酵素サンプル容量当たり、1分当たりに生成される産物のピコモルとして表される。
【0038】
αナフチルアセテートの切断におけるわずかな活性は、好ましくは、候補化合物に対するエステル加水分解酵素活性の約75%未満〜約100%未満;好ましくは候補化合物に対するエステル加水分解酵素活性の約90%未満〜約100%未満;またはより好ましくは、候補化合物に対するエステル加水分解酵素活性の約95%未満、約96%未満、約97%未満、約98%未満、約99%未満、約99.5%未満もしくは約99.9%未満の、ANAに対する活性である。非常に好ましい実施形態において、αナフチルアセテートの切断におけるわずかな活性は、ANAに対する検出不可能な活性である。
【0039】
1つの実施形態において、抽出物は、GS−7340エステル加水分解酵素またはそのフラグメントを含み、ここでそのフラグメントは、GS−7340エステル加水分解酵素活性を示す。GS−7340エステル加水分解酵素活性は、特異的なエステル加水分解酵素活性を含み、すなわち、それは、候補化合物に対するエステル加水分解酵素活性およびαナフチルアセテート(ANA)の切断におけるわずかな活性である。GS−7340エステル加水分解酵素活性は、GS−7340エステル加水分解酵素により示される任意の活性または活性の組み合わせ(例えば、特定の化合物により阻害されること、またはプロドラッグ基質に対して特定の比活性もしくは相対活性を有すること)を包含する。1つの実施形態において、抽出物は、GS−7340エステル加水分解酵素活性を有する。別の実施形態において、抽出物は、カテプシンA、またはそのフラグメントもしくはホモログを含む。
【0040】
別の実施形態において、抽出物は、カテプシンA様活性を有する酵素を含む。本発明の好ましい実施形態において、カテプシンA様活性は、特異的なエステル加水分解酵素活性を含み、すなわち、それは、候補化合物に対するエステル加水分解酵素活性およびαナフチルアセテート(ANA)の切断におけるわずかな活性である。カテプシンA様活性は、カテプシンAにより示される任意の活性または活性の組み合わせ(例えば、特定の化合物により阻害されること、またはプロドラッグ基質に対して特定の比活性もしくは相対活性を有すること)を包含する。
【0041】
GS−7340エステル加水分解酵素のインヒビターは、GS−7340エステル加水分解酵素を阻害する任意の組成物を含み得る。GS−7340加水分解酵素の好ましいインヒビターとしては、フルオロホスホネート/フルオロホスフェート(ジイソプロピルフルオロホスフェート(DFP))、3,4ジクロロイソクマリン(3,4−DCI)のようなイソクマリン、ならびにクロロ−メチルケトンおよびフルオロ−メチルケトンのペプチドカルボン酸エステル(AlaAlaProAla−CMK、AlaAlaProVal−CMK、PheAla−FMK)が挙げられる。GS−7340加水分解酵素の多くのインヒビターがストック溶液中に溶解され得、ここで例えば、その溶液は、100%エタノールのような溶媒または水性緩衝液中のインヒビターからなる。好ましい実施形態において、インヒビターは、100%エタノール中に溶解される。さらに好ましい実施形態において、GS−7340エステル加水分解酵素の阻害は、実施例12に記載されるように、緩衝化MES溶液において実施される。
【0042】
1つの実施形態において、GS−7340エステル加水分解酵素は、ゲル濾過において、約50kDa〜約120kDaの分子量、好ましくは、約80kDa〜約110kDaの分子量、より好ましくは約70kDa〜約100kDaの分子量を有する。
【0043】
別の実施形態において、GS−7340加水分解酵素は、候補化合物に対するエステル加水分解酵素活性およびαナフチルアセテート(ANA)の切断におけるわずかな活性を有する。
【0044】
1つの実施形態において、GS−7340エステル加水分解酵素は約4.0〜約6.0、好ましくは、約4.5〜約5.5の等電点(pI)を有する。1つの実施形態において、GS−7340加水分解酵素は、約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9または約6.0の等電点を有する。本発明の好ましい実施形態において、pIは、線形pH勾配を使用するモノPカラムからの結合タンパク質の溶出により計測される。例えば、実施例11を参照のこと。
【0045】
選択された例示的候補化合物についての構造データは、表1に提供される。
【0046】
【表1−1】

【0047】
【表1−2】

【0048】
【表1−3】

【0049】
【表1−4】

【0050】
【表1−5】

【0051】
【表1−6】

本発明の1つの実施形態において、ほぼ等価な相対活性または比活性とは、任意の比較において、最大の相対活性または比活性の値の上下で、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満または約1%未満である相対活性または比活性をいう。本発明の1つの実施形態において、別の化合物に対する相対活性または比活性よりも大きなある化合物に対する相対活性または比活性は、別の候補化合物に対する相対活性または比活性より、少なくとも約20%大きい、少なくとも約30%大きい、少なくとも約40%大きい、少なくとも約50%大きい、少なくとも約60%大きい、少なくとも約70%大きい、少なくとも約80%大きい、少なくとも約90%大きい、少なくとも約100%大きい、少なくとも約200%大きい、少なくとも約300%大きい、少なくとも約500%大きい、少なくとも約700%大きい、少なくとも約1000%大きい、少なくとも約1500%大きい、少なくとも約2000%大きい、少なくとも約5000%大きい、または少なくとも約10,000%大きい相対活性または比活性を含む。
【0052】
1つの実施形態において、全ての比活性が相対活性に基づいて評価される場合、化合物Aの変換に関して、GS−7340加水分解酵素は、化合物FFおよび化合物HHに対してほぼ等価な比活性を有する。
【0053】
1つの実施形態において、全ての比活性が相対活性に基づいて評価される場合、化合物Aの変換に関して、GS−7340加水分解酵素は、化合物AAおよび化合物JJに対してほぼ等価な比活性を有する。
【0054】
1つの実施形態において、全ての比活性が相対活性に基づいて評価される場合、化合物Aの変換に関して、GS−7340加水分解酵素は、化合物Aに対する比活性よりも大きい化合物Kに対する比活性を有する。
【0055】
1つの実施形態において、全ての比活性が相対活性に基づいて評価される場合、化合物Aの変換に関して、GS−7340加水分解酵素は、化合物Vに対する比活性よりも大きい化合物Uに対する比活性を有する。
【0056】
1つの実施形態において、全ての比活性が相対活性に基づいて評価される場合、化合物Aの変換に関して、GS−7340加水分解酵素は、化合物Zに対する比活性よりも大きい化合物Xに対する比活性を有する。
【0057】
1つの実施形態において、全ての比活性が相対活性に基づいて評価される場合、化合物Aの変換に関して、GS−7340加水分解酵素は、化合物EEに対する比活性よりも大きい化合物Wに対する比活性を有する。
【0058】
1つの実施形態において、全ての比活性が相対活性に基づいて評価される場合、化合物Aの変換に関して、GS−7340加水分解酵素は、化合物LLに対する比活性よりも大きい化合物KKに対する比活性を有する。
【0059】
1つの実施形態において、全ての比活性が相対活性に基づいて評価される場合、化合物Aの変換に関して、GS−7340加水分解酵素は、化合物Yに対する比活性よりも大きい化合物BBに対する比活性を有する。
【0060】
1つの実施形態において、全ての比活性が相対活性に基づいて評価される場合、化合物Aの変換に関して、GS−7340加水分解酵素は、化合物Iに対する比活性よりも大きい化合物GGに対する比活性を有する。
【0061】
1つの実施形態において、全ての比活性が相対活性に基づいて評価される場合、化合物Aの変換に関して、GS−7340加水分解酵素は、化合物Bまたは化合物Dに対する比活性よりも大きい化合物DDに対する比活性を有する。
【0062】
1つの実施形態において、全ての比活性が相対活性に基づいて評価される場合、化合物Aの変換に関して、GS−7340加水分解酵素は、化合物Lに対する比活性よりも大きい化合物CCに対する比活性を有する。
【0063】
1つの実施形態において、全ての比活性が化合物Aの変換に関して測定される場合、GS−7340は、以下:(1)化合物FFおよび化合物HHに対するほぼ等価な比活性;(2)化合物AAおよび化合物JJに対するほぼ等価な比活性;(3)化合物Aに対する比活性よりも大きい、化合物Kに対する比活性;(4)化合物Vに対する比活性よりも大きい、化合物Uに対する比活性;(5)化合物Zに対する比活性よりも大きい、化合物Xに対する比活性;(6)化合物EEに対する比活性よりも大きい、化合物Wに対する比活性;(7)化合物LLに対する比活性よりも大きい、化合物KKに対する比活性;(8)化合物Yに対する比活性よりも大きい、化合物BBに対する比活性;(9)化合物Iに対する比活性よりも大きい、化合物GGに対する比活性;(10)化合物Bまたは化合物Dに対する比活性よりも大きい、化合物DDに対する比活性;および(11)化合物Lに対する比活性よりも大きい、化合物CCに対する比活性からなる群より選択される、少なくとも1個の比活性、少なくとも2個の比活性、少なくとも3個の比活性、少なくとも4個の比活性、少なくとも5個の比活性、少なくとも6個の比活性、少なくとも7個の比活性、少なくとも8個の比活性、少なくとも9個の比活性、少なくとも10個の比活性、または好ましくは11個の比活性を有する。
【0064】
1つの実施形態において、相対活性が化合物Aの変換に関して測定される場合、GS−7340加水分解酵素は、組み換えカテプシンAの化合物Kおよび化合物Uに対する相対活性とほぼ等価な、化合物Kおよび化合物Uに対する相対活性を有する。
【0065】
1つの実施形態において、GS−7340加水分解酵素は、約0.35μm〜約0.75μm(好ましくは、約0.5μm)の濃度のDCIにより、50%まで阻害される。1つの実施形態において、GS−7340加水分解酵素は、約100μm〜約500μm(好ましくは、約200μm〜約400μm)の濃度のMeOSuc−Ala−Ala−Pro−Ala−CMKにより、50%まで阻害される。1つの実施形態において、GS−7340加水分解酵素は、約75μm〜約125μm(好ましくは、約100μm)の濃度のMeOSuc−Ala−Ala−Pro−Val−CMKにより、50%まで阻害される。1つの実施形態において、GS−7340加水分解酵素は、約75μm〜約125μm(好ましくは、約100μm)の濃度のビオチン−Phe−Ala−FMKにより50%まで阻害される。1つの実施形態において、GS−7340加水分解酵素は、約2.5μm〜約7.5μm(好ましくは、約5μm)の濃度のDFPにより、50%まで阻害される。1つの実施形態において、GS−7340加水分解酵素は、約0.35μm〜約0.75μm(好ましくは、約0.5μm)のDCI;約100μm〜約500μm(好ましくは、約200μm〜約400μm)の濃度のMeOSuc−Ala−Ala−Pro−Ala−CMK;約75μm〜約125μm(好ましくは、約100μm)のMeOSuc−Ala−Ala−Pro−Val−CMK;約75μm〜約125μm(好ましくは、約100μm)の濃度のビオチン−Phe−Ala−FMK;約2.5μm〜約7.5μm(好ましくは、約5μm)の濃度のDFPからなる群より選択される、少なくとも1つの化合物、少なくとも2つの化合物、少なくとも3つの化合物、少なくとも4つの化合物、または5つの化合物により、50%まで阻害される。阻害は、実施例12に記載されるように、インヒビターと一緒にかまたはインヒビターなしで、HPLCアッセイにより酵素性の代謝物生成を観察することにより、計測される。
【0066】
1つの実施形態において、GS−7340加水分解酵素は、配列番号1または配列番号2、あるいはいずれかのフラグメントを含むかまたはそれらからなる。1つの実施形態において、GS−7340加水分解酵素は、配列番号1および配列番号2、またはいずれかのフラグメントを含むかまたはそれらからなる。1つの実施形態において、GS−7340加水分解酵素は、配列番号1またはそのフラグメントを含まないかまたはそれらから構成されない。1つの実施形態において、GS−7340加水分解酵素は、配列番号2またはそのフラグメントを含まないかまたはそれらから構成されない。1つの実施形態において、GS−7340加水分解酵素は、配列番号1または配列番号2およびいずれかのフラグメントからなる群より選択される任意の配列を含まないかまたはそれらから構成されない。
【0067】
1つの実施形態において、GS−7340加水分解酵素は、以下の群からなる少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つまたは7つの特徴を有する;(1)ゲル濾過において約50kDa〜約120kDa、好ましくは約80kDa〜約110kDa、より好ましくは約70kDa〜約100kDaの分子量;(2)候補化合物に対するエステル加水分解活性およびαナフチルアセテート(ANA)の切断におけるわずかな活性;(3)約4.0〜約6.0(好ましくは、約4.5〜約5.5)の等電点(pI)または約4.0、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、約5.0、約5.1、約5.2、約5.3、約5.4、約5.5、約5.6、約5.7、約5.8、約5.9または約6.0の等電点;(4)約0.35μm〜約0.75μm(好ましくは、約0.5μm)の濃度のDCI;約100μm〜約500μm(好ましくは、約200μm〜約400μm)のMeOSuc−Ala−Ala−Pro−Ala−CMK;75μm〜約125μm(好ましくは、約100μm)の濃度のMeOSuc−Ala−Ala−Pro−Val−CMK;約75μm〜約125μm(好ましくは、約100μm)の濃度のビオチン−Phe−Ala−FMK;約2.5μm〜約7.5μm(好ましくは、約5μm)の濃度のDFPからなる群より選択される、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは5つの化合物による、50%までの阻害;(5)配列番号1、配列番号2およびいずれかのフラグメントからなる群より選択される配列を含むかまたはその配列からなる;(6)全ての比活性が化合物Aの変換に関して測定される場合、GS−7340は、(i)化合物FFおよび化合物HHに対してほぼ等価な比活性;(ii)化合物AAおよび化合物JJに対してほぼ等価な比活性;(iii)化合物Aに対する比活性よりも大きい化合物Kに対する比活性;(iv)化合物Vに対する比活性よりも大きい化合物Uに対する比活性;(v)化合物Zに対する比活性よりも大きい化合物Xに対する比活性;(vi)化合物EEに対する比活性よりも大きい化合物Wに対する比活性;(vii)化合物LLに対する比活性よりも大きい化合物KKに対する比活性;(viii)化合物Yに対する比活性よりも大きい化合物BBに対する比活性;(ix)化合物Iに対する比活性よりも大きい化合物GGに対する比活性;(x)化合物Bまたは化合物Dに対する比活性よりも大きい化合物DDに対する比活性;および(xi)化合物Lに対する比活性よりも大きい化合物CCに対する比活性からなる群より選択される、少なくとも1個の比活性、少なくとも2個の比活性、少なくとも3個の比活性、少なくとも4個の比活性、少なくとも5個の比活性、少なくとも6個の比活性、少なくとも7個の比活性、少なくとも8個の比活性、少なくとも9個の比活性、少なくとも10個の比活性、または好ましくは11個の比活性を有する;ならびに(7)相対活性が化合物Aの変換に関して測定される場合、GS−7340加水分解酵素は、化合物Kおよび化合物Uに対する組み換えカテプシンAの相対活性とほぼ等価な、化合物Kおよび化合物Uに対する相対活性を有する。
【0068】
本発明の好ましい局面において、抽出物は、精製された抽出物である。精製された抽出物は、精製形態の1種以上の酵素またはそのフラグメントを含み得る。精製形態は、任意の程度または型の精製を包含する。任意の数の精製工程が実施され得る。本発明の文脈において、精製抽出物は、部分的に精製されていても、中程度に精製されていても、実質的に精製されていても、または完全に精製されていてもよい。本明細書中で使用される場合、部分的に精製された抽出物は、全く精製に供されていない同じ抽出物よりも、少なくとも約25%より小さいANA切断における活性(ANA活性)を含む。中程度に精製された抽出物は、全く精製に供されていない同じ抽出物よりも、少なくとも約50%より小さいANA活性を含む。実質的に精製された抽出物は、全く精製に供されていない同じ抽出物よりも、少なくとも約90%より小さいANA活性を含む。完全に精製された抽出物は、ANA切断における検出可能な活性を含まない。好ましい実施形態において、精製抽出物は、完全に精製されている。部分的、中程度、実質的または完全に精製された抽出物は、任意の数および組み合わせの精製工程から生じ得る。部分的、中程度または実質的に精製された抽出物は、好ましくは、1回以上のさらなる精製工程に供され得る。
【0069】
さらに好ましい実施形態において、精製された抽出物は、GS−7340エステル加水分解酵素活性を含む。好ましい実施形態において、精製された抽出物は、GS−7340エステル加水分解酵素またはそのフラグメントを含む。別の実施形態において、精製された抽出物は、カテプシンAまたはそのフラグメントを含む。別の好ましい実施形態において、完全に精製された抽出物は、カテプシンA様活性を含む。別の実施形態において、精製された抽出物は、配列番号1、配列番号2およびいずれかのフラグメントからなる群より選択される1つ以上の配列を含むかまたはその配列からなる酵素を含む。
【0070】
別の好ましい実施形態において、精製された抽出物は、検出可能なエステル加水分解酵素活性を有するただ1つの酵素を含む。別の好ましい実施形態において、精製された抽出物は、検出可能なGS−7340エステル加水分解酵素活性を有するただ1つの酵素を含む。好ましい実施形態において、精製された抽出物は、検出可能なGS−7340エステル加水分解酵素活性を有するただ1つの酵素を含み、かつその酵素はGS−7340エステル加水分解酵素である。好ましい実施形態において、精製された抽出物は、検出可能なGS−7340エステル加水分解酵素活性を有するただ1つの酵素を含み、かつその酵素は、カテプシンAである。別の実施形態において、精製された抽出物は、検出可能なGS−7340エステル加水分解酵素活性を有するただ1つの酵素を含み、かつその酵素は、カテプシンAあるいはそのフラグメントまたはホモログである。1つの実施形態において、抽出物は、検出可能なGS−7340加水分解酵素活性を有するただ1つの酵素を含み、かつその酵素は、配列番号1、配列番号2およびいずれかのフラグメントからなる群より選択されるポリヌクレオチド配列を含むかまたはその配列からなる。
【0071】
(酵素のフラグメント、同一性、およびホモログ)
本発明の酵素の1つのサブセットは、酵素のフラグメントである。1つの実施形態において、酵素のフラグメントは、ポリペプチドであり得る。本明細書中で使用される場合、ポリペプチドは、ペプチド結合により結合された3個以上のアミノ酸分子を有する任意の分子である。ポリペプチドは、任意の追加の化学基を含み得、そして任意の立体構造に折り畳まれ得る。1つの実施形態において、フラグメント分子は、候補化合物に対してエステル加水分解酵素活性を有する。好ましい実施形態において、ポリペプチド分子は、候補化合物に対するエステル加水分解酵素活性およびαナフチルアセテートに対するわずかな活性を有する。酵素のフラグメントは、本発明の酵素の重要なポリペプチド配列(または実際にほとんどのポリペプチド配列)からなり得る。あるいは、そのフラグメントは、例えば約3〜約150個のアミノ酸、およびより好ましくは、約5〜約15個のアミノ酸、または約20〜約40個のアミノ酸、または約40〜約70個のアミノ酸、または約70〜約150個のアミノ酸、または約90〜約120個のアミノ酸を有するより小さなポリペプチドを含み得る。
【0072】
本発明の別の局面において、本発明の1以上の酵素またはそのフラグメントは、配列番号1または配列番号2に示されるポリペプチド配列あるいはいずれかのフラグメントの1つ以上と、約100%と約70%との間の配列同一性を共有する。本発明のさらなる局面において、本発明の1以上のポリペプチド分子は、配列番号1または配列番号2に示されるポリペプチド配列あるいはいずれかのフラグメントの1つ以上と、約100%と約90%との間の配列同一性を共有する。本発明の局面において、本発明の1つ以上のポリペプチド分子は、配列番号1または配列番号2に示されるポリペプチド配列あるいはいずれかのフラグメントの1つ以上と、約100%と約95%との間の配列同一性を共有する。本発明の別の局面において、本発明の1つ以上のポリペプチドは、配列番号1または配列番号2に示されるポリペプチド配列あるいはいずれかのフラグメントの1つ以上と、約100%と約99%との間の配列同一性を共有する。
【0073】
好ましい実施形態において、パーセント同一性の計算は、LASERGENEバイオインフォマティクスパッケージソフト(bioinformatics computing suite)(デフォルトパラメーター、DNASTAR Inc.,Madison,Wis.)のMegalignプログラムを使用して実施される。
【0074】
ホモログもまた、本発明に包含される。本明細書中で使用される場合、ホモログまたはそのフラグメントは、別の種におけるそれに対応する分子またはフラグメントである。ホモログはまた、分子進化またはDNAシャフリング技術(その結果、分子は元のポリペプチドの少なくとも1つの機能的特徴または構造的特徴を保持する;例えば、米国特許第5,811,238号を参照のこと)によって作製され得る。
【0075】
本発明の化合物はまた、互いに融合されるポリペプチドも包含する。本発明の化合物はまた、宿主細胞に導入されるポリペプチドも包含する。
【0076】
(保存的置換)
本発明により、酵素またはそのフラグメントは、当業者によってなされる改変を含み得る。例えば、当業者には明らかであるように、GS−7340加水分解酵素またはそのフラグメントは、例えば本発明のポリペプチド配列内での保存的なアミノ酸変化により、改変され得る。例えば、GS−7340加水分解酵素またはそのフラグメントが、その酵素フラグメントのエステル加水分解酵素活性を減少させない保存的なアミノ酸変化により、改変され得ることが企図される。エステル加水分解酵素活性を有意には減少させない保存的変化は、保存的なアミノ酸変化を有さない酵素と比較してエステル加水分解酵素活性において約25%より小さい減少、保存的なアミノ酸変化を有さない酵素と比較してエステル加水分解酵素活性において約15%より小さい減少、保存的なアミノ酸変化を有さない酵素と比較してエステル加水分解酵素活性において約15%より小さい減少、好ましくは保存的なアミノ酸変化を有さない酵素と比較してエステル加水分解酵素活性において約10%より小さい減少、保存的なアミノ酸変化を有さない酵素と比較してエステル加水分解酵素活性において約7%より小さい減少、保存的なアミノ酸変化を有さない酵素と比較してエステル加水分解酵素活性において約5%より小さい減少、保存的なアミノ酸変化を有さない酵素と比較してエステル加水分解酵素活性において約4%より小さい減少、保存的なアミノ酸変化を有さない酵素と比較してエステル加水分解酵素活性において約3%より小さい減少、保存的なアミノ酸変化を有さない酵素と比較してエステル加水分解酵素活性において約2%より小さい減少、保存的なアミノ酸変化を有さない酵素と比較してエステル加水分解酵素活性において約1%より小さい減少を引き起こし得るか、または保存的なアミノ酸変化を有さない酵素と比較してエステル加水分解酵素活性において検出可能な変化を引き起こさない。
【0077】
1つの実施形態においてGS−7340加水分解酵素またはそのフラグメント、あるいはGS−7340加水分解酵素活性を有する酵素は、配列番号1、配列番号2またはそれらのフラグメントを含むかそれらからなり、そして保存的置換が、配列番号1、配列番号2またはそれらのフラグメントに対してなされる。そのような変化は、例えば本発明のGS−7340加水分解酵素もしくはフラグメントまたは他の酵素もしくはそのフラグメントが、細胞または生物に導入される場合に、コドン使用の最適化を可能にする。保存的なアミノ酸変化は、ある群のあるアミノ酸を同じ群の別のアミノ酸と置換することによりなされ得る。保存的なアミノ酸変化はまた、1つ以上のコドンを、同じアミノ酸を生成する1つ以上の異なるコドンと置換することによりなされ得る。この様式において、保存的な変化は、ヌクレオチドレベルでなされ、その結果、同じアミノ酸が異なるヌクレオチド配列によりコードされる。本発明の酵素またはそのフラグメントの生物学的機能等価物は、10個またはそれより少ない保存的アミノ酸変化、より好ましくは7個またはそれより少ない保存的アミノ酸変化、および最も好ましくは5個またはそれより少ない保存的アミノ酸変化を有し得る。したがって、コードするヌクレオチド配列は、対応する塩基置換を有し、そのヌクレオチド配列が、本発明の酵素またはそのフラグメントの生物学的機能の等価な形態をコードすることを可能にする。
【0078】
特定のアミノ酸は、例えば、抗体の抗原結合領域または基質分子上の結合部位のような構造との相互作用的結合能力を認識し得るほどに失うことなく、ポリペプチドにおいて他のアミノ酸に置換され得ることが理解される。特定のアミノ酸配列置換が、ポリペプチド配列、および当然その根底にあるDNAコード配列においてなされ得、そしてそれにもかかわらず、同様の特性を有するポリペプチドが得られ得る。したがって、生物学的有用性または活性を認識し得るほどに失うことなく、種々の変化が、本発明の酵素またはそのフラグメントのポリペプチド配列、またはそのポリペプチドをコードする対応するDNA配列においてなされ得る。このようなアミノ酸変化をコードし得るコドンは、当該分野において公知であることが理解される。
【0079】
本発明のポリペプチドへの変化の作製において、ヒドロパシー指数(hydropathic index)が考慮され得る。タンパク質に対する相互作用的な生物学的機能の付与におけるヒドロパシーアミノ酸指標の重要性は、一般的に、当該分野において理解される(KyteおよびDoolittle,J.Mol.Biol.157,105−132(1982))。アミノ酸の相対的なヒドロパシー特性が二次構造に寄与し、これが続いて他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定するということは、容認される。
【0080】
各アミノ酸は、その疎水性および電荷特性に基づいて、ヒドロパシー指数が割り当てられている(KyteおよびDoolittle,J.Mol.Biol.157,105−132(1982));ヒドロパシー指数は、イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+3.8)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、トレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタミン酸(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパラギン酸(−3.5)、アスパラギン(−3.5)、リジン(−3.9)およびアルギニン(−4.5)である。
【0081】
このような変化の作製において、ヒドロパシー指数が+/−2内のアミノ酸の置換が好ましく、+/−1内のアミノ酸の置換が特に好ましく、そして+/−0.5内のアミノ酸の置換がさらにより特に好ましい。
【0082】
同様のアミノ酸の置換が、親水性に基づいて効率的になされ得ることもまた、当該分野において理解される。米国特許第4,554,101号において詳述されるように、以下の親水性値がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0)、リジン(+3.0)、アスパラギン酸(+3.0+/−1)、グルタミン酸(+3.0+/−1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、トレオニン(−0.4)、プロリン(−0.5+/−1)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(−1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)およびトリプトファン(−3.4)。
【0083】
このような変化の作製において、親水性値が+/−2内のアミノ酸の置換が好ましく、+/−1内のアミノ酸の置換が特に好ましく、そして+/−0.5内のアミノ酸の置換がさらにより特に好ましい。
【0084】
(本発明の核酸分子)
本発明の核酸分子は、本発明の酵素またはそのフラグメントをコードする核酸分子またはそのフラグメントを含む。1つの実施形態において、本発明の核酸分子は、GS−7340エステル加水分解酵素活性を有する酵素またはそのフラグメントをコードする。1つの実施形態において、本発明の核酸分子は、GS−7340エステル加水分解酵素またはそのフラグメントをコードする。
【0085】
1つの実施形態において、本発明の核酸分子は、配列番号1またはそのフラグメントを含むかまたはそれらからなる酵素をコードする。別の実施形態において、本発明の核酸分子は、配列番号2またはそのフラグメントを含むかまたはそれらからなる酵素をコードする。1つの実施形態において、核酸分子は、配列番号1、配列番号2およびいずれかのフラグメントからなる群より選択される任意の配列を含まないかまたはそれらから構成されない酵素をコードする。
【0086】
1つの実施形態において、本発明の核酸分子は、カテプシンAあるいはそのフラグメントまたはホモログをコードする。1つの実施形態において、本発明の核酸分子は、カテプシンA、そのフラグメントおよびそのホモログからなる群より選択されるいずれのメンバーもコードしない。1つの実施形態において、本発明の核酸分子は、カテプシンA様活性を有する酵素またはそのフラグメントをコードする。1つの実施形態において、本発明の核酸分子は、カテプシンA様活性を有する酵素およびそのフラグメントからなる群より選択されるいずれのメンバーもコードしない。1つの実施形態において、本発明の核酸分子は、カテプシンAまたはそのフラグメントをコードする。別の実施形態において、本発明の核酸分子は、カテプシンAのホモログまたはそのフラグメントをコードする。1つの実施形態において、本発明の核酸分子は、カテプシンAのホモログおよびそのフラグメントからなる群より選択されるいずれのメンバーもコードしない。
【0087】
(核酸分子のフラグメント、同一性および相同性)
本発明の核酸分子の1つのサブセットは、フラグメント核酸分子である。フラグメント核酸分子は、本発明の核酸分子の重要な部分(または実際にほとんど)からなり得る。あるいは、そのフラグメントは、より小さなオリゴヌクレオチド、例えば、約15〜約400ヌクレオチド残基、そしてより好ましくは約15〜約30ヌクレオチド残基、または約50〜約100ヌクレオチド残基、または約100〜約200ヌクレオチド残基、または約200〜約400ヌクレオチド残基、または約275〜約350ヌクレオチド残基を有するオリゴヌクレオチドを含む。
【0088】
核酸分子について、本明細書中において使用される場合、2つの核酸分子が逆平行の二重鎖核酸構造を形成し得る場合、その2つの核酸分子は互いに特異的にハイブリダイズし得るといわれる。
【0089】
2つの核酸分子が完全な相補性を示す場合、核酸分子は、別の核酸分子と「相補的」であるといわれる。本明細書中で使用される場合、一方の分子の全てのヌクレオチドが他方のヌクレオチドに相補的である場合、分子は完全な相補性を示すといわれる。2つの分子が、少なくとも従来の低ストリンジェンシー条件下でそれらが互いにアニールし続けるのを可能にするのに十分な安定性で、互いにハイブリダイズし得る場合、その2つの分子は最低限に相補的であるといわれる。同様に、分子が、従来の高ストリンジェンシー条件下でそれらが互いにアニールし続けるのを可能にするのに十分な安定性で、互いにハイブリダイズし得る場合、その2つの分子は相補的であるといわれる。
【0090】
従来のストリンジェンシー条件は、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,第2版、Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)およびHaymesら、Nucleic Acid Hybridization,A Practical Approach,IRL Press,Washington,D.C.(1985)に記載される。それゆえ、完全な相補性からの逸脱は、そのような逸脱が分子の二重鎖構造を形成する能力を完全には失わせない限り、許容できる。したがって、核酸分子がプライマーまたはプローブとして機能するためには、用いられる特定の溶媒および塩濃度の下で安定な二重鎖構造を形成し得るのに十分に、配列において相補的であることだけが必要とされる。
【0091】
DNAのハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシー条件(例えば、約45℃にて6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、続いて20℃〜25℃にて2.0×SSCで洗浄)は、当業者に公知であるかまたはCurrent Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,N.Y.(1989),6.3.1−6.3.6に見出され得る。例えば、その洗浄工程における塩濃度は、50℃にて約2.0×SSCの低ストリンジェンシー〜65℃にて0.2×SSCの高ストリンジェンシーから選択され得る。さらに、その洗浄工程における温度は、室温(約22℃)での低ストリンジェンシー条件から約65℃での高ストリンジェンシー条件まで上昇され得る。温度および塩の両方が変動してもよいし、温度または塩濃度のいずれかが一定に固定され、その一方で他の変数が変化されてもよい。
【0092】
好ましい実施形態において、本発明の核酸は、中程度のストリンジェンシー条件(例えば、約2.0×SSCおよび約65℃)の下で、配列番号1または配列番号2あるいはいずれかのフラグメントをコードする1つ以上の核酸分子に特異的にハイブリダイズする。特に好ましい実施形態において、本発明の核酸は、高ストリンジェンシー条件(例えば、0.2×SSCおよび約65℃)の下で、配列番号1または配列番号2に示されるポリペプチド配列あるいはいずれかのフラグメントをコードする1つ以上の核酸分子に特異的にハイブリダイズする核酸分子を含む。
【0093】
本発明の別の局面において、本発明の1つ以上の核酸分子は、配列番号1または配列番号2に示されるポリペプチド配列あるいはいずれかのフラグメントをコードする1つ以上の核酸配列と、約100%と約70%との間の配列同一性を共有する。本発明のさらなる局面において、本発明の1つ以上の核酸分子は、配列番号1または配列番号2に示されるポリペプチド配列あるいはいずれかのフラグメントをコードする1つ以上の核酸配列と、約100%と約90%との間の配列同一性を共有する。本発明の1つの局面において、本発明の1つ以上の核酸分子は、配列番号1または配列番号2に示されるポリペプチド配列あるいはいずれかのフラグメントをコードする1つ以上の核酸配列と、約100%と約95%との間の配列同一性を共有する。本発明の別の局面において、本発明の1つ以上の核酸分子は、配列番号1または配列番号2に示されるポリペプチド配列あるいはいずれかのフラグメントをコードする1つ以上の核酸配列と、約100%と約99%との間の配列同一性を共有する。
【0094】
本発明の核酸分子はまた、相同なポリペプチドまたはそのフラグメントもコードし得る。
【0095】
本発明の別の局面において、本発明の1つ以上の核酸分子は、アミノ酸をコードする1つ以上のコドンが、本来コードされている同じアミノ酸を生成するコドンで置換されているという事実に起因して、酵素またはそのフラグメントをコードする核酸分子とは核酸配列において異なっている。利用され得る保存的置換の技術は、当業者に明らかなものであり得、同様に、例えば本明細書中の上記に記載されたものであり得る。
【0096】
本発明の化合物はまた、互いに融合される核酸分子も含む。本発明の化合物はまた、宿主細胞へ導入される核酸分子も含む。
【0097】
(抽出酵素およびそのフラグメントの精製)
抽出に続いて、本発明の酵素またはそのフラグメントは、当該分野において公知な技術により、所望の程度の均質性および活性まで、分離もしくは精製、または分離もしくは精製の両方をされ得る。抽出物は、その抽出物の1つ以上の特性(例えば、量、質、純度、比活性、または相対活性が挙げられる)を強化する任意の技術により処理され得る。処理は、1つ以上の他の特性において任意の効果(有利な効果、有害な効果、または効果なしを含む)を有しながら、その抽出物の1つ以上の活性を強化し得る。好ましい実施形態において、抽出物は、精製された抽出物である。精製された抽出物は、精製のための任意の公知の方法または方法の組み合わせにより精製された任意の抽出物を含む。
【0098】
ポリペプチド精製に関する種々の技術が、当業者に明らかである。多数のテキスト(ScopeのProtein purification:principles and practice(Springer Verlag,New York(1997))、HarrisのProtein purification applications:a practical approach(Oxford,New York(1990))、およびMethods in EnzymologyにおけるDeutscherの「Guide to protein purification」(Vol.128,Academic Press,San Diego(1990))を含む)は、タンパク質精製に関するガイダンスを提供する。さらに、好ましい実施形態において、抽出物は、実施例5〜7およびそのバリエーションにおける任意の1つ以上の手順により精製され得る。
【0099】
分離および精製は、例えば、多相抽出、溶媒または溶媒混合物からの結晶化、蒸留、昇華、あるいはクロマトグラフィーを必要とし得る。
【0100】
1つの実施形態において、クロマトグラフィー技術が、本発明の酵素の精製のために適用され得る。クロマトグラフィーは、かなりの数の方法を含み、その方法としては、例えば:吸着クロマトグラフィー;アフィニティークロマトグラフィーおよびイムノアフィニティークロマトグラフィー;サイズ排除クロマトグラフィー;イオン交換クロマトグラフィー;分配クロマトグラフィー;疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC);クロマトフォーカシング;高圧液体クロマトグラフィー、中圧液体クロマトグラフィー、および低圧液体クロマトグラフィー;小縮尺分析クロマトグラフィー(small scale analytical chromatography);擬似移動層(simulated moving bed(SMB))ならびに分取用薄層クロマトグラフィーおよび厚層(thick layer)クロマトグラフィー、ならびに小縮尺薄層クロマトグラフィーの技術;逆相クロマトグラフィーおよび順相クロマトグラフィー;ならびに重力(gravity)クロマトグラフィーおよびフラッシュクロマトグラフィーが挙げられる。
【0101】
本発明の酵素の分離および精製において、例えばイオン交換樹脂を使用するようなカラム精製のような技術が使用され得る。イオン交換樹脂は、荷電した基を含む。樹脂は、自然には酸性であっても塩基性であってもよい。酸性樹脂は、カチオン交換体であり、塩基性樹脂は、アニオン交換体である。弱カチオン交換体または強カチオン交換体および弱アニオン交換体または強アニオン交換体が使用され得る。非限定的な例示的樹脂としては、CMセルロース/セファデックス(弱カチオン交換体)、SPセファデックス(強カチオン交換体)、DEセルロース/セファデックス(弱アニオン交換体)、およびQAEセファデックス(強アニオン交換体)が挙げられる。
【0102】
Q15アニオン交換、コンカナバリンA(Con A)アフィニティー、クロマトフォーカシング、HRアニオン交換、ブチルセファロース−HIC、ヒドロキシアパタイト、ゲル濾過、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、およびレンチルレクチンのような技術が、それらの技術の中で企図されるものである。本発明の1つの実施形態において、酵素精製は、Q15アニオン交換カラムを使用し、続いてブチルセファロース−HICカラムを使用することにより、達成される。本発明の1つの局面において、本発明の抽出物は、酵素混合物を、Q15アニオン交換カラム、ブチルセファロースカラムおよびモノPカラムまたはそれらの組み合わせの1つ以上に連続的に適用することにより、精製される。好ましい実施形態において、酵素精製は、クロマトフォーカシングクロマトグラフィーにより強化され得る。非常に好ましい実施形態において、酵素精製は、Q15カラムを使用し、続いてブチルセファロースHICカラム、続いてConAカラムを使用することにより達成される。
【0103】
本発明において有用な別の種類の分離法および精製法は、所望の産物、未処理の開始物質、反応副産物などに結合するか、そうでなければそれらを分離可能にさせるように選択された試薬を用いる、混合物の処理を包含する。そのような試薬としては、活性炭のような吸収剤または吸着剤、分子ふるい、イオン交換媒体などが挙げられる。あるいは、その試薬は、塩基性物質の場合は酸、酸性物質の場合は塩基、抗体のような結合試薬、結合タンパク質、クラウンエーテルのような選択性キレート剤、液体/液体イオン交換試薬(LIX)などであり得る。
【0104】
本発明の方法の適用において、分離および精製の適切な方法の選択は、含まれる物質の性質に依存する。その物質の性質としては、例えば、沸点、蒸留および昇華における分子量、クロマトグラフィーにおける極性官能基の存在もしくは不在またはpH、多相抽出における酸性媒体および塩基性媒体での物質の安定性などが挙げられる。当業者は、所望の分離または精製あるいはその両方を最も達成しそうな技術を適用する。例えば、非限定的な分離および精製方法は、明細書、実施例および図面(実施例5〜7を含む)に提供される。
【0105】
精製されるべき抽出物は、任意の供給源から得られ得る。1つの実施形態において、精製されるべき抽出物は、組み換え法により作製され得る。代替の実施形態において、その抽出物は、天然供給源(例えば、天然において見られる有機供給源)に由来し得る。好ましくは、その抽出物は、哺乳動物供給源から得られる。非常に好ましい実施形態において、その抽出物は、カルボン酸エステル加水分解酵素活性を有する末梢血単核細胞(PBMC)から得られる。抽出物における酵素は、任意の1つ以上の化学的手順により修飾され得る。化学的手順による修飾としては、酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化、リン酸化、グリコシル化など、または当業者の理解の範囲内である任意の他の化学的操作が挙げられ得る。
【0106】
好ましい局面において、本発明の抽出物は、末梢血単核細胞(PBMC)の細胞抽出物から精製され、そして候補化合物に対してエステル加水分解酵素活性を示すが、αナフチルアセテート(ANA)の切断においてはわずかしかエステル加水分解酵素活性を有さない。別の好ましい局面において、本発明の抽出物は、当該分野において公知な任意のクロマトグラフィー技術により、ANAを切断し得る非特異的エステラーゼから分離され得る。そのクロマトグラフィー技術としては、明細書、実施例および図面に例示される方法が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、実施例5〜7を参照のこと。好ましくは、本発明の化合物は、アニオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、およびコンカナバリンクロマトグラフィーにより、ANAを切断し得る非特異的エステラーゼから分離され得る。
【0107】
1つの局面において、精製は、1つ以上の不要な成分を除去し得る。1つの実施形態において、精製は、ANAに対する未精製抽出物の約95%未満、約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満または約1%未満のエステル加水分解酵素活性を有する、精製された抽出物をもたらす。未精製の抽出物は、抽出後にいずれの精製にも供されていない抽出物である。
【0108】
好ましい局面において、精製は、ANAの切断において、未精製の細胞抽出液の約50%未満のエステル加水分解酵素活性を有する精製された抽出物を生成する。より好ましくは、本発明の精製された抽出物は、ANAの切断において、未精製の細胞抽出物の約40%未満、約30%未満、約20%未満または約10%未満のエステル加水分解酵素活性を有する。なおより好ましくは、本発明の精製された化合物は、ANAの切断において、未精製の細胞抽出物の約5%未満のエステル加水分解酵素活性を有する。なおより好ましくは、本発明の精製された化合物は、ANAの切断において、未精製の細胞抽出物の約4%未満、約3%未満、約2%未満または約1%未満のエステル加水分解酵素活性を有する。非常に好ましい実施形態において、本発明の化合物は、ANAに対して検出可能なエステル加水分解酵素活性を示さない。
【0109】
任意の化合物(例えば、候補化合物およびαナフチルアセテートを含む)に対するエステル加水分解酵素活性は、当業者に利用可能な任意の手順または手順の組み合わせにより計測され得る。本発明の好ましい実施形態において、エステル加水分解酵素活性は、実施例2Bおよび実施例3に記載されるように計測される。
【0110】
精製はまた、本来の抽出物の特定の酵素の割合と比較して、その酵素の割合を増やす。1つの実施形態において、精製された調製物における標的酵素の濃度が、未精製の抽出物における標的酵素の濃度と比較され得る。標的酵素の精製の程度を変動させることは、本発明の方法により達成され得る。1つの実施形態において、精製後、その標的酵素は、標的酵素の濃度の増加によって計測すると、本来の酵素組成物における標的酵素よりも約2倍〜約10,000倍純粋であり得る。別の実施形態において、精製後、その標的酵素は、標的酵素の濃度の増加によって計測すると、本来の酵素組成物における標的酵素よりも約50倍〜約100倍純粋であり得る。別の実施形態において、精製後、その標的酵素は、標的酵素の濃度の増加によって計測すると、本来の酵素組成物における標的酵素よりも約101倍〜約400倍純粋であり得る。別の実施形態において、精製後、その標的酵素は、標的酵素の濃度の増加によって計測すると、本来の酵素組成物における標的酵素よりも約401倍〜約1500倍純粋であり得る。別の実施形態において、精製後、その標的酵素は、標的酵素の濃度の増加によって計測すると、本来の酵素組成物における標的酵素よりも約1700倍〜約6200倍純粋であり得る。別の実施形態において、精製後、その標的酵素は、標的酵素の濃度の増加によって計測すると、本来の酵素組成物における標的酵素よりも約1501倍〜約6500倍純粋であり得る。別の実施形態において、精製後、その標的酵素は、標的酵素の濃度の増加によって計測すると、本来の酵素組成物における標的酵素よりも約1000倍〜約8500倍純粋であり得る。別の実施形態において、精製後、その標的酵素は、標的酵素の濃度の増加によって計測すると、本来の酵素組成物における標的酵素よりも約10,000倍純粋であり得る。
【0111】
別の実施形態において、酵素の比活性もまた、精製により強化され得る。そのため、標的酵素の純度は、その標的酵素の比活性を参照して評価され得る。酵素の比活性は、任意の量増加され得る。1つの実施形態において、精製後、その標的酵素は、標的酵素の比活性の増加によって計測すると、本来の酵素組成物における標的酵素よりも約2倍〜約10,000倍純粋であり得る。別の実施形態において、精製後、その標的酵素は、標的酵素の比活性の増加によって計測すると、本来の酵素組成物における標的酵素よりも約50倍〜約100倍純粋であり得る。別の実施形態において、精製後、その標的酵素は、標的酵素の比活性の増加によって計測すると、本来の酵素組成物における標的酵素よりも約101倍〜約400倍純粋であり得る。別の実施形態において、精製後、その標的酵素は、標的酵素の比活性の増加によって計測すると、本来の酵素組成物における標的酵素よりも約401倍〜約1500倍純粋であり得る。別の実施形態において、精製後、その標的酵素は、標的酵素の比活性の増加によって計測すると、本来の酵素組成物における標的酵素よりも約1700倍〜約6200倍純粋であり得る。別の実施形態において、精製後、その標的酵素は、標的酵素の比活性の増加によって計測すると、本来の酵素組成物における標的酵素よりも約1501倍〜約6500倍純粋であり得る。別の実施形態において、精製後、その標的酵素は、標的酵素の比活性の増加によって計測すると、本来の酵素組成物における標的酵素よりも約1000倍〜約8500倍純粋であり得る。別の実施形態において、精製後、その標的酵素は、標的酵素の比活性の増加によって計測すると、本来の酵素組成物における標的酵素よりも約10,000倍純粋である。
【0112】
本発明の方法により、酵素の精製は、好ましくは、抽出物における1つ以上の酵素の濃度を維持しながら達成される。1つ以上の酵素の濃度は、任意の量維持され得、ここでその維持は未精製の酵素抽出物の濃度に関して計測される。好ましい実施形態において、維持される酵素組成物の濃度は、好ましくは、未精製の酵素抽出物における酵素の濃度の少なくとも約0.2%、未精製の酵素抽出物における酵素の濃度の少なくとも約0.5%、未精製の酵素抽出物における酵素の濃度の少なくとも約1%、未精製の酵素抽出物における酵素の濃度の少なくとも約2%、未精製の酵素抽出物における酵素の濃度の少なくとも約5%、未精製の酵素抽出物における酵素の濃度の少なくとも約10%、未精製の酵素抽出物における酵素の濃度の少なくとも約15%、未精製の酵素抽出物における酵素の濃度の少なくとも約20%、未精製の酵素抽出物における酵素の濃度の少なくとも約25%、未精製の酵素抽出物における酵素の濃度の少なくとも約30%、未精製の酵素抽出物における酵素の濃度の少なくとも約40%、未精製の酵素抽出物における酵素の濃度の少なくとも約50%、未精製の酵素抽出物における酵素の濃度の少なくとも約60%、未精製の酵素抽出物における酵素の濃度の少なくとも約70%、未精製の酵素抽出物における酵素の濃度の少なくとも約80%、未精製の酵素抽出物における酵素の濃度の少なくとも約90%、またはなおより好ましくは、未精製の酵素抽出物における酵素の濃度の約90%より多い。
(候補化合物)
候補化合物は、エステル加水分解酵素に対して基質となり得る任意の有機化合物を含む。非限定的な候補化合物の例としては、エステルおよびアミド(例えば、カルボン酸エステル(例えば、エステル化カルボン酸塩)、チオエステル(例えば、チオカルボン酸エステルおよびチオホスホン酸のチオエステル)、リン酸エステル、硫酸エステル、エステル化ホスホネートおよびカルボキシアミド)が挙げられる。特に好ましい例示的な候補化合物としては、エステル化カルボン酸塩またはエステル化ホスホネートを有するものが挙げられる。好ましい実施形態において、候補化合物は、αナフチルアセテートに対してわずかな活性を有する抽出物によって加水分解される。候補化合物はまた、候補化合物の代謝物も含み得る。代謝物は、インビボで代謝されている化合物である。代謝されている化合物としては、例えば、候補化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化などにより(主に酵素性プロセスによって)生じる化合物が挙げられる。代謝物の構造は、例えば従来の技術(例えば、MS分析、NMR分析またはIR分析)を含む任意の様式において決定され得る。
【0113】
好ましい実施形態において、候補化合物は、エステル化カルボキシレートまたはエステル化ホスホネートを含む。好ましい実施形態において、エステル化ホスホネート基を含む候補化合物は、酸素原子を通じてリン原子に結合されたヒドロキシ有機酸で一置換されている。好ましい実施形態において、そのヒドロキシ有機酸は、α位にある。
【0114】
別の好ましい実施形態において、候補化合物は、アミノ酸基で置換されており、そのアミノ酸のカルボキシル基はエステル化されている。好ましい実施形態において、そのアミノ酸基は、α位にある。本発明の好ましい実施形態において、候補化合物は、アミノ酸ホスホノアミデートであり、ここでそのアミノ酸のカルボキシル基はエステル化されている。別の好ましい実施形態において、候補化合物は、エステル基の細胞外加水分解に対して実質的に安定である。
【0115】
好ましい実施形態において、候補化合物は、プロトタイプ化合物である。非常に好ましい実施形態において、候補化合物は、プロトタイプ化合物を、エステル化カルボキシル基またはエステル化ホスホネート基で置換することにより形成され、ここで置換の前に、そのプロトタイプ化合物は、ヒト免疫不全ウイルス、癌または炎症に対して治療的活性を有すると考えられている。当業者に明らかな任意の種々の合成手段が、プロトタイプ化合物を、エステル化カルボキシル基またはエステル化ホスホネート基で置換するのに使用され得る。
【0116】
本発明の文脈において、ヒト免疫不全ウイルスとは、当該分野において通常理解されるものをいう。好ましい実施形態において、ヒト免疫不全ウイルスは、白血球と関連する。ヒト免疫不全ウイルスに対して治療的活性を有すると考えられるプロトタイプ化合物は、例えば、Physician’s Desk Reference(例えば、第58版,Thomson PDR Pub.,(2004)ISBN 1−56363−471−6を参照のこと)に記載される。
【0117】
本発明の文脈において、癌とは、当該分野において通常理解されるものをいう。好ましい実施形態において、癌は白血球と関連する。より好ましい実施形態において、癌は、任意の型の白血病である。癌に対して治療的活性を有すると考えられるプロトタイプ化合物は、例えばPhysician’s Desk Reference(例えば、第58版、Thomson PDR Pub.,(2004)ISBN 1−56363−471−6を参照のこと)に記載される。
【0118】
本開示の文脈において、炎症とは、当該分野において通常理解されるものをいう。好ましい実施形態において、炎症は、白血球に関連する炎症である。より好ましい実施形態において、炎症は、任意の形態の組織拒絶(例えば、固形臓器移植拒絶)、喘息、または任意の型の関節炎(例えば、好ましくは、関節リウマチ)である。
【0119】
プロトタイプ化合物は、当業者に利用可能な任意の情報に基づいて、治療的活性を有すると考えられ得る。例えば、プロトタイプ化合物は、Physician’s Desk Referenceに含まれる情報に基づいて、治療的活性を有すると考えられ得る。上記を参照のこと。さらに、非限定的な例として、化合物は、臨床医の経験、化合物の構造、構造活性相関データ、EC50アッセイデータ、IC50アッセイデータ、動物研究もしくは臨床研究、または任意の他の根拠、あるいはそのような根拠の組み合わせに基づいて、治療的活性を有すると考えられ得る。別の実施形態において、プロトタイプ化合物はヌクレオシドではなく、かつヌクレオシド塩基を含まない。
【0120】
治療的活性化合物は、治療的活性(例えば、化合物の、被験体に投与されるかまたはインビトロで試験された場合に特定の応答を誘導する能力)を有する化合物である。疾患または状態の処置としては、疾患または状態の任意の量の改善(疾患または状態の予防、寛解、および排除を含む)が挙げられ得る。治療的活性は、任意の疾患または状態(好ましい実施形態においては、ヒト免疫不全ウイルス、癌、関節炎またはそれらの任意の組み合わせを含む)に対してもたらされ得る。治療的活性を測定するために、化合物の治療的活性が評価され得る任意の方法が使用され得る。例えば、インビボ法およびインビトロ法の両方が使用され得、その方法としては、例えば、臨床的評価、EC50アッセイおよびIC50アッセイ、および用量反応曲線が挙げられる。
【0121】
有用な薬剤として、本発明のアッセイと一緒に使用するための候補化合物または本発明のアッセイにより同定される候補化合物は、当該分野において既知の薬剤またはそれらのバリエーションであってもよいし、以前にいずれかの薬学的活性を有することが未知であった化合物であってもよい。本発明の候補化合物は、天然に存在してもよいし、研究室において設計されてもよい。候補化合物は、単一のジアステレオマー、1つより多いジアステレオマー、単一の鏡像異性体、または1つより多い鏡像異性体を含み得る。本発明のエステル加水分解酵素化合物は、候補化合物の一方のジアステレオマーまたは他方のジアステレオマーあるいは一方の鏡像異性体または他方の鏡像異性体に対して、より高いかまたはより低いエステル加水分解酵素活性を有し得る。好ましい実施形態において、候補化合物はジアステレオマーを含み、このジアステレオマーに対して、そのエステル加水分解酵素活性は、その候補化合物の任意の他のジアステレオマーに対するエステル加水分解酵素活性よりも高い。別の好ましい実施形態において、候補化合物は鏡像異性体を含み、その鏡像異性体に対して、そのエステル加水分解酵素活性は、その候補化合物の任意の他の鏡像異性体に対するエステル加水分解酵素活性よりも高い。別の好ましい実施形態において、候補化合物は、単一のジアステレオマーを含む。別の好ましい実施形態において、候補化合物は、単一の鏡像異性体を含む。
【0122】
候補化合物は、例えば微生物、動物もしくは植物から単離され得、そして組み換え的に生成され得、または当該分野において公知な化学的方法により合成され得る。所望される場合、本発明の候補化合物は、当該分野において公知な任意の多数のコンビナトリアルライブラリ法を使用して得られ得る。このライブラリ法としては、生物学的ライブラリ、空間的にアドレス可能な平行固相ライブラリまたは溶液相ライブラリ、逆重畳積分を必要とする合成ライブラリ法、「一ビーズ一化合物(one−bead one−compound)」ライブラリ法、およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリ法が挙げられるが、これらに限定されない。生物学的ライブラリアプローチは、ポリペプチドライブラリに限定される。他の4つのアプローチは、ポリペプチド、非ペプチドオリゴマー、または化合物の低分子ライブラリに適用可能であり、かつ本発明において好ましいアプローチである。Lam,Anticancer Drug Des.12:145−167(1997)を参照のこと。
【0123】
分子ライブラリを合成するための方法は、当該分野において周知である。(例えば、DeWittら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA 90:6909−6913(1993);Erbら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:11422(1994);Zuckermannら、J.Med.Chem.37:2678(1994);Choら、Science 261:1303(1993);Carellら、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059(1994);Carellら、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061(1994);Gallopら、J.Med.Chem.37:1233(1994)を参照のこと)。化合物のライブラリは、溶液中で(例えば、Houghten,BioTechniques 13:412−421(1992)を参照のこと)、またはビーズ上で(Lam,Nature 354:82−84(1991))、チップ上で(Fodor,Nature 364:555−556(1993))、細菌または胞子上で(Ladnerら、米国特許第5,223,409号)、プラスミド上で(Cullら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89,1865−1869 1992)、もしくはファージ上で(Scott & Smith,Science 249:386−390(1990);Devlin,Science 249:404−406(1990));Cwirlaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,97:6378−6382(1990);Felici,J.Mol.Biol.222:301−310(1991);およびLadnerら、米国特許第5,223,409号)提示され得る。
【0124】
(本発明の方法)
1つの実施形態において、本発明は、候補化合物を適したプロドラッグとして同定する方法を提供する。適したプロドラッグは、本発明の方法により同定され得る任意のプロドラッグを含む。例えば、1つの実施形態において、適したプロドラッグは、1以上の代謝化合物の生成により同定され得る任意のプロドラッグを含む。好ましい実施形態において、適したプロドラッグは、候補化合物において存在したエステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基の代わりに、ホスホン酸基またはカルボン酸基を有する1以上の代謝化合物の生成により同定される。本発明の方法により同定される適したプロドラッグは、同定後に、任意の所望の用途または分析に供され得る。例えば、適したプロドラッグは、毒性、治療剤としての適合性、効率的な濃度、または任意の他の特性について分析され得る。1つの実施形態において、本発明の方法により同定される適したプロドラッグは、サンプルまたは被験体を処置するために使用され得る。
【0125】
当業者に明らかな任意の方法が、候補化合物を適したプロドラッグとして同定するために使用され得る。1つの実施形態において、適したプロドラッグの同定は、候補化合物を提供し、1以上の代謝物の形成を認めることによりなされる。そのようなアッセイは、エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基を有する候補化合物を提供する工程、その候補化合物を、カルボン酸エステルの加水分解を触媒し得る抽出物と接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程、およびその1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、その候補化合物の該エステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、またはその候補化合物の該エステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、その候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程を包含し得るが、これらに限定されない。
【0126】
1つの実施形態において、本発明の方法は、候補化合物を提供する工程を包含する。1つの実施形態において、本発明の方法はさらに、候補化合物を抽出物と接触させる工程をさらに包含する。好ましい実施形態において、本発明は、候補化合物を、GS−7340エステル加水分解酵素を含む抽出物と接触させることを企図する。しかし、候補化合物は、任意の抽出物と接触され得る。候補化合物は、抽出物がその候補化合物と相互作用するのを可能にする任意の様式で、その抽出物と接触され得る。一例として、候補化合物は、任意の容器(例えば、チューブまたはバイアル)において、その候補化合物と抽出物とを一緒に混合することにより、その抽出物と接触され得る。1つの実施形態において、候補化合物は、インビトロで抽出物と接触される。別の実施形態において、候補化合物は、無細胞環境において抽出物と接触される。さらなる実施形態において、候補化合物は、細胞培養物中、好ましくは末梢血単核細胞培養物中で抽出物と接触される。
【0127】
さらなる実施形態において、本発明の方法は、抽出物が1以上の代謝化合物の形成を触媒した場合に、適したプロドラッグとして同定された候補化合物を提供する工程を包含する。代謝化合物の分析は、任意の方法により達成され得る。例えば、本明細書中に記載される分析方法または当業者に公知な任意の他の分析方法が使用され得る。NMR、IR(FT−IRを含む)および滴定のような従来の技術が、代謝物を同定するために使用され得るが、これらに限定されない。代謝化合物の生成は、実施例2Aに示されるように、放射標識代謝物を生成するための放射活性基質の使用によってもまた、モニターされ得る。別の局面において、エステル加水分解酵素活性は、実施例2Bに示されるように、好ましくは非放射標識代謝物の生成によってモニターされる。放射活性代謝物の場合、例えばシンチレーション計数を含む方法が、候補化合物に対するエステル加水分解酵素の比活性を確認するために使用され得る。非放射標識代謝物についての場合において、エステル加水分解酵素活性は、例えばクロマトグラフィーおよび質量分析を含む技術により検出され得る。
【0128】
エステル加水分解酵素活性によるプロドラッグの切断が、薬物のEC50と比較され得る。好ましい実施形態において、相関が、本発明の化合物のエステル加水分解酵素活性とその薬物のEC50との間で観察される。好ましい実施形態において、プロドラッグの切断は、薬物活性もしくは細胞負荷またはその両方の予測因子として使用され得る。
【0129】
候補化合物に対してエステル加水分解酵素活性を示す本発明の酵素またはそのフラグメントは、任意の他の候補化合物(例えば、同じ薬物種類の候補化合物または異なる薬物種類の候補化合物)に対する活性について評価され得る。
【0130】
本発明の方法は、インビボまたはインビトロで実施され得る。好ましい局面において、本発明の方法は、末梢血単核細胞(PBMC)を使用して実施される。末梢血単核細胞は、白血球除去法を受けているかまたは受けていない患者から得られ得る。好ましい実施形態において、そのPBMCは、白血球除去法を受けている患者から得られる。
【0131】
本発明の別の局面において、本発明のエステル加水分解酵素化合物の活性は、エステル加水分解酵素活性を阻害する任意の化合物または因子により、阻害され得る。インヒビターの例としては、フルオロホスホネート、フルオロホスホネート誘導体、3,4ジクロロイソクマリンのようなイソクマリン、ならびにクロロメチルケトンおよびフルオロメチルケトンのペプチドカルボン酸エステルが挙げられる。エステル加水分解酵素活性の阻害は、当業者に利用可能な任意の技術によって確認され得る。本発明の好ましい実施形態において、阻害は、実施例12に記載されるように、IC50アッセイにより計測される。
【0132】
別の局面において、本発明は、治療剤としての適合性について、候補化合物をスクリーニングするための方法を提供する。治療剤の適合性についてのスクリーニングは、治療剤としての化合物の能力に影響し得る化合物に関する1つの、いくつかの、または多くの基準の評価を含み得る。例えば、有効性、安全性、効率、保持、局在、組織選択性、分解または細胞内残留性のような因子が、考慮され得る。1つの実施形態において、治療剤としての適合性について候補化合物をスクリーニングする方法が提供され、ここでその方法は、適したプロドラッグとして同定された候補化合物を提供する工程、その候補化合物の治療的活性を測定する工程、およびその候補化合物の細胞内残留性を測定する工程を包含する。細胞内残留性は、例えば放射活性トレーサー、重同位体標識またはLCMSのような、当業者に明らかな任意の技術により計測され得る。
【0133】
さらに好ましい実施形態において、治療剤としての適合性について候補化合物をスクリーニングする方法は、候補化合物またはその候補化合物の代謝物(好ましくは、酸性代謝物)の組織選択性を決定する工程をさらに包含する。組織選択性とは、1以上の化合物(例えば、候補化合物または1以上の代謝化合物を含む)が、優先的に1以上の細胞、組織または臓器に蓄積する傾向をいう。組織選択性は、当業者に明らかな任意の種々の技術により評価され得る。例えば、組織選択性は、候補化合物に付加されている放射活性、蛍光または他の色素タグに基づいて観察され得る。次いで、特定の組織におけるそのタグの蓄積が、観察され得る。
【0134】
1つの実施形態において、本発明は、候補化合物を適したプロドラッグとして同定する方法を提供する。適したプロドラッグは、本発明の方法により同定される任意のプロドラッグを含む。例えば、1つの実施形態において、適したプロドラッグは、1以上の代謝化合物の生成により同定され得る任意のプロドラッグを含む。好ましい実施形態において、適したプロドラッグは、候補化合物において存在したエステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基の代わりに、ホスホン酸基またはカルボン酸基を有する1以上の代謝化合物の生成により同定される。本発明の方法により同定された適したプロドラッグは、同定後に、任意の所望の用途または分析に供され得る。例えば、適したプロドラッグは、毒性、治療剤としての適合性、効率的な濃度、または任意の他の特性について分析され得る。1つの実施形態において、本発明の方法により同定される適したプロドラッグは、サンプルまたは被験体を処置するために使用され得る。
【0135】
適したプロドラッグとして候補化合物を同定するために、任意の方法が使用され得る。例えば、好ましい実施形態において、候補化合物は、エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基を有する候補化合物を提供する工程、その候補化合物を、カルボン酸エステルの加水分解を触媒し得る抽出物と接触させ、代謝化合物を生成させる工程、およびその代謝化合物が、その候補化合物の該エステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、またはその候補化合物の該エステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、その候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程により、適したプロドラッグとして同定され得る。
【0136】
1つの実施形態において、治療的活性について候補化合物をスクリーニングする方法は、候補化合物もしくはその任意の代謝物または両方の治療的活性を測定する工程もまた包含し得る。任意の疾患または状態に対する治療的活性が、評価され得る。好ましい実施形態において、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対する治療的活性が、評価され得る。別の好ましい実施形態において、候補化合物の治療的活性を測定する工程は、HIVプロテアーゼ、HIVインテグラーゼ、HIV逆転写酵素、任意の他のHIV酵素またはそのような酵素の任意の組み合わせに対する活性を測定する工程を包含する。
【0137】
別の好ましい実施形態において、候補化合物の治療的活性を測定する工程は、候補化合物もしくはその任意の代謝物または両方に対するHIVの耐性を測定する工程を包含し得る。1つの実施形態において、候補化合物の治療的活性を測定する工程は、その候補化合物の代謝物の抗HIV活性を測定する工程をさらに包含し得る。好ましい実施形態において、その候補化合物の代謝物は、酸性代謝物(特に好ましくは、カルボン酸またはホスホン酸)である。候補化合物の治療的活性を測定する方法は、当業者に公知である。そのような方法は、インビトロまたはインビボで実施され得る。方法の例としては、臨床的評価、Kiアッセイ、EC50アッセイ、CC50アッセイおよびIC50アッセイならびに用量反応曲線および耐性研究のようなものが挙げられる。実施例17を参照のこと。
【0138】
治療剤としての適合性についての化合物のスクリーニングにおいて、候補化合物の細胞内残留性がまた、評価され得る。細胞内残留性の評価は、例えば、化合物の細胞内滞留時間または半減期の評価を含み得る。好ましい実施形態において、ヒト組織における化合物の半減期が測定される。半減期は、任意の組織において測定され得る。本発明の化合物の半減期を測定するための好ましいヒト組織としては、ヘルパー細胞、キラー細胞、リンパ節、および末梢血単核細胞が挙げられるが、これらに限定されない。任意の代謝化合物(好ましくは、酸性代謝物)の細胞内残留性(例えば、細胞内滞留時間を含む)もまた、評価され得る。細胞内残留性を測定するための当業者に公知な任意の技術が、本発明において使用され得る。非限定的な例として、化合物の残留性は、放射標識基質または色素標識基質(例えば、候補化合物または任意の代謝化合物を含む)の保持により計測され得る。
【0139】
本発明のさらなる局面は、状態または疾患の活性を阻害する方法に関し、この方法は、疾患または状態を有すると考えられるサンプルまたは被験体を、本発明の化合物により同定されたプロドラッグで処置する工程を包含する。本発明の組成物は、疾患または状態に対する治療的活性を有するプロドラッグについての同定因子(identifier)として機能する。好ましい局面において、本発明の組成物は、状態(例えば、癌、炎症、関節リウマチ、および免疫抑制またはそれらの任意の組み合わせを含む)に対して治療的活性を示す薬物についての同定因子として機能する。本発明の組成物はまた、感染因子に対する治療的活性を有する薬物についての同定因子としても機能し得る。治療的活性が有効であり得る感染因子としては、細菌、ウイルスおよび酵母が挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な例において、上記酵素は、HIVプロテアーゼに特有の構造を有する、HIVプロテアーゼの表面上または空洞内の位置に結合するインヒビタープロドラッグを同定するのに有用であり得る。
【0140】
所望される場合、同定されたプロドラッグの適用後に、感染性生物の量、または感染もしくは状態を示す任意の物質のレベルが、任意の方法(そのようなレベルを検出する直接法または間接法を含む)により観察され得る。そのようなレベルを測定する定量的方法、半定量的方法および定性的方法は、全て企図される。任意の方法(生きている生物の生理学的特性の観察を含むが、これに限定されない)もまた、適用可能である。
【0141】
しかし、いくつかの場合、例えばHIVプロテアーゼウイルスを阻害し得る化合物をスクリーニングする場合、酵素アッセイの結果は、細胞培養アッセイと相関しない可能性がある。したがって、細胞ベースのアッセイが、HIVの状況における用途のための主なスクリーニングツールであるべきである。
【0142】
(細胞)
本発明の局面において、細胞ベースの系が、プロドラッグ化合物についてのスクリーニングに使用され得る。1つの局面において、その細胞ベースの系は、非組み換えの細胞ベースの系である。本発明の1つの局面において、その細胞は、白血球除去法(leukophoresis)を受けている患者から得られた新鮮なヒト末梢血単核細胞である。別の局面において、その細胞は、白血球除去法を受けていない患者から得られた新鮮なヒト末梢血単核細胞である。さらなる局面において、GS−7340加水分解酵素またはそのフラグメントをコードする核酸配列またはそのフラグメントが、組み換え細胞ベースの系において使用される。別の局面において、GS−7340加水分解酵素活性を有する酵素をコードする核酸配列またはそのフラグメントが、組み換え細胞ベースの系において使用される。
【0143】
GS−7340エステル加水分解酵素もしくはそのフラグメントをコードする本発明のポリヌクレオチドは、宿主細胞中に導入され得る。宿主細胞株は、挿入された配列の発現を調節するその能力、または発現したGS−7340エステル加水分解酵素またはそのフラグメントを所望の様式で処理するその能力に対して選択され得る。GS−7340エステル加水分解酵素またはそのフラグメントのこのような修飾としては、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化が挙げられるが、これらに限定されない。GS−7340エステル加水分解酵素またはそのフラグメントの「プレプロ」形態を切断する翻訳後プロセシングもまた、正確な挿入、折り畳みおよび/または機能を促進するために使用され得る。翻訳後活性について特異的な細胞機構および特性機構を有する種々の宿主細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、HEK293およびWI38)は、American Type Culture Collection(ATCC 10801 University Boulvard、Manassas、Va.20110−2209)から入手可能であり、かつ外来タンパク質の正確な修飾およびプロセシングを保証するように選択され得る。さらなる宿主細胞は、研究室のストックにおいて維持され得るか、または市販され得る。適した宿主株は、当業者に公知である。
【0144】
宿主細胞の選択において、安定な発現が、組み換えポリペプチドの長期的な高収率の産生のために通常好ましい。例えば、GS−7340エステル加水分解酵素を安定に発現する細胞株は、発現ベクターを使用して形質転換され得る。この発現ベクターは、同じベクター上かまたは別々のベクター上に、ウイルスの複製起点および/または内在性発現エレメントおよび選択マーカー遺伝子を含有し得る。ベクターの導入に続いて、細胞は、選択培地に切り替えられる前に、栄養培地において1〜2日間増殖させられ得る。選択マーカーの目的は、選択に対する耐性を与えることであり、その存在により、導入された酵素配列を首尾よく発現する細胞の増殖および回復が可能となる。安定に形質転換された細胞の耐性クローンは、その細胞型に適切な組織培養技術を使用して、増殖され得る。例えば、Animal Cell Culture,R.I.Freshney編,1986を参照のこと。
【0145】
任意の数の選択系が、形質転換された細胞株を回収するために使用され得る。これらとしては、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wiglerら、Cell 11:223−32(1977))およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowyら、Cell 22:817−23(1980))(これらはそれぞれ、ti細胞またはaprt細胞において用いられ得る)が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、代謝拮抗剤耐性、抗生物質耐性または除草剤耐性が、選択のための基礎として使用され得る。例えば、dhfrは、メトトレキセートに対して耐性を与え(Wiglerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:3567−70(1980))、nptは、アミノグリコシド、ネオマイシンおよびG−418に対して耐性を与え(Colbere−Garapinら、J.Mol.Biol.,150:1−14(1981))、そしてalsおよびpatは、それぞれクロルスルフロンおよびホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに耐性を与える(Murray,1992)。さらなる選択遺伝子が記載されている。例えば、trpBにより、細胞は、トリプトファンの代わりにインドールが利用可能になるか、またはhisDにより、細胞は、ヒスチジンの代わりにヒスチノール(histinol)が利用可能になる。(Hartman & Mulligan,Proc.Natl.Acad.Sci USA.85:8047−51(1988))。アントシアニン、β−グルクロニダーゼおよびその基質であるGUS、ならびにルシフェラーゼおよびその基質であるルシフェリンのような可視マーカーは、形質転換体を同定するために、そして特異的なベクター系に起因する一過性のタンパク質発現または安定なタンパク質発現の量を定量化するために、使用され得る(Rhodesら、Methods Mol.Biol.55:121−131(1995))。
【0146】
細胞ベースの系に加えて、候補化合物は、非トランスジェニック生物またはトランスジェニック生物においてスクリーニングされ得る。好ましい実施形態において、その生物はマウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、またはサルである。
【0147】
(哺乳動物発現)
本発明の酵素またはそのフラグメント、あるいは酵素またはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチドは、哺乳動物系において発現され得る。例えば、多数のウイルスベースの発現系が、哺乳動物宿主細胞において酵素またはそのフラグメントを発現するために使用され得る。アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、酵素またはそのフラグメントをコードする配列は、アデノウイルス転写/翻訳複合体(後期プロモーターおよび三連リーダー配列(tripartite leader sequence)を含む)に、連結され得る。ウイルスゲノムの非必須E1領域またはE3領域への挿入が、感染される宿主細胞において酵素またはそのフラグメントを発現し得る生存可能なウイルスを得るために使用され得る。(Logan & Shenk,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3655−3659(1984))。所望される場合、ラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサーのような転写エンハンサーが、哺乳動物宿主細胞における発現を増加させるために使用され得る。
【0148】
あるいは、本発明において、ヒト人工染色体(HAC)もまた、プラスミドに含まれ得、そして発現され得るDNAのフラグメントよりも大きいDNAフラグメントを送達するために使用され得る。6M〜10MのHACが構築され、そして従来の送達方法(例えば、リポソーム、ポリカチオン性アミノポリマーまたは小胞)によって細胞へ送達される。
【0149】
特異的な開始シグナルもまた、酵素またはそのフラグメントをコードする配列のより効率的な翻訳を達成するために、本発明の方法において使用され得る。そのようなシグナルは、ATG開始コドンおよび隣接配列を含む。酵素またはそのフラグメントをコードする配列、その開始コドンおよび上流配列が適切な発現ベクター中に挿入される場合においては、さらなる転写調節シグナルまたは翻訳調節シグナルは必要とされない可能性がある。しかし、コード配列またはそのフラグメントのみが挿入される場合は、外来性翻訳制御シグナル(ATG開始コドンを含む)が提供されるべきである。その開始コドンは、完全な挿入物の翻訳を保証するために、正確な読み取り枠にあるべきである。外来性の翻訳エレメントおよび開始コドンは、種々の起源(天然および合成の両方)であり得る。本発明の酵素もしくはそのフラグメント、またはポリヌクレオチドもしくはそのフラグメントの発現効率は、使用される特定の細胞系に適切なエンハンサーを含めることにより、高められ得る(Scharfら、Results Probl.Cell Differ.20,125−162,1994を参照のこと)。
【0150】
(トランスジェニック動物)
1つの実施形態において、GS−7340エステル加水分解酵素またはそのフラグメントをコードする核酸分子が、トランスジェニック動物を産生するために、動物内へ導入され得る。別の実施形態において、GS−7340エステル加水分解酵素活性を有する酵素またはそのフラグメントをコードする核酸分子が、トランスジェニック動物を産生するために、動物内へ導入され得る。そのような核酸を導入する技術は、当該分野において公知である。好ましい実施形態において、そのトランスジェニック動物は、哺乳動物であり、その哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモットまたはサルが挙げられる。本発明のトランスジェニック動物における発現のための好ましい特異的組織としては、肝臓、脾臓、筋肉および血液が挙げられる。特定の血球(例えば、PBMC)において本発明のGS−7340エステル加水分解酵素酵素または任意のポリペプチドを特異的に過剰発現するのが好ましくあり得る。GS−7340エステル加水分解酵素を発現または過剰発現するトランスジェニック動物は、薬物動態学的分析および代謝物分析のために使用され得る。本発明の別の実施形態において、そのトランスジェニック動物は、本発明のGS−7340エステル加水分解酵素酵素または任意のポリペプチドをコードするアンチセンス構築物を発現する。そのような動物は、1種以上の組織における試験化合物の変換を実証するために使用され得る。
【0151】
以下の実施例は、例示であり、多少なりとも限定的であることを意図されない。
【実施例】
【0152】
(実施例1)
(ヌクレオチドホスホルアミデートの代謝)
ヌクレオチドアミデートトリエステルの生物活性化は、一般的なスキームに従うという広いコンセンサスがある(Valetteら、J.Med.Chem.,39:1981−1991(1996);McGuiganら、Antivir.Chem.Chemotheraphy,9:109−115(1998)、McGuiganら、Antivir.Chem.Chemotheraphy,9:473−479(1998);Saboulardら、Mol.Pharmacol.,56:693−704(1999);Siddiquiら、J.Med.Chem.,42:4122−4128(1999))。工程Aは、アミノ酸様カルボン酸エステルの加水分解である。亜リン酸のカルボン酸による求核攻撃(工程B)が、5員環中間体の形成を開始させ、続いてこの中間体がモノアミデートジエステル(アミノ酸ヌクレオシド一リン酸、AAM、、または代謝物X’と呼ばれる、工程C)へ急速に加水分解されると考えられる。この化合物は、抗ウイルス性ヌクレオシドの細胞内蓄積形態であると考慮される。種々の酵素および非酵素性触媒が、ヌクレオチドの形成をもたらすAAM化合物のアミド結合の加水分解である工程Dに関与している。ヌクレオチドは、ヌクレオチド二リン酸およびヌクレオチド三リン酸への酵素的リン酸化により活性化される。図1を参照のこと。
【0153】
化合物Kの場合、アミノ酸ヌクレオシド一リン酸(代謝物X)へのこのプロドラッグの効率的な変換は、末梢血単核細胞(PBMC)において観察される代謝物X蓄積へつながる工程である。図1を参照のこと。代謝物Xの細胞蓄積は、実施例2Aおよび実施例2Bのように計測され得る。ホスホネートプロドラッグ部分を有する他の薬物骨格の場合においては、そのホスホネートに存在するカルボン酸エステルの切断もまた、対応する代謝物X産物の蓄積のために必要な工程であると予想され得る。化合物Kおよび他のホスホネートプロドラッグ基質(アミノ酸様カルボン酸エステルまたはホスホネートエステル)を切断し、代謝物Xを形成するGS−7340加水分解酵素Bの精製は、以下の実施例において記載される。
【0154】
(実施例2)
(エステル加水分解酵素アッセイ)
(A.[14C]代謝物Xの生成速度)
化合物Kからのおよび代謝物Xの酵素性生成を、以下のエステル加水分解酵素アッセイを使用してモニターする。末梢血単核細胞(PBMC)抽出物の量を変動させながら、カラム画分またはプールを、[14C]化合物Kと37℃で10分間〜90分間インキュベートする。[14C]代謝物Xの生成を、アニオン交換樹脂(DE−81)上に保持される放射活性の量を計測することによりモニターする。フィルター上に保持される反応混合物および放射活性の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および質量分析(MS)分析により、[14C]−代謝物XのみがDE−81フィルターに結合することを確認する。そのアッセイ条件下で、より疎水性の[14C]化合物Kは、DE−81膜上に保持されない。最終反応条件は、最終容量60μl中、25mMの2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)(pH6.5)、100mM NaCl、1mM DTT、30μm[14C]GS−7340基質、0.1%NP40および変動する量のGS−7340エステル加水分解酵素酵素である。その反応混合物を、37℃で、10分間、30分間および90分間インキュベートする。17μlの反応混合物をDE−81フィルター上にスポットする。そのフィルターを、25mM Tris(pH7.5)、100mM NaClで洗浄し、室温で乾燥させ、5mlのシンチレーション流体を含むバイアル中に入れる。フィルター上に存在する[14C]−代謝物Xを、シンチレーションカウンター(LS 6500,Beckman,Fullerton,CA)を使用して測定する。活性は、生成する代謝物X(ピコモル)/分/酵素サンプル容量として表される。GS−7340加水分解酵素比活性を、生成される代謝物X(ピコモル)/分/μgタンパク質として表す。
【0155】
(B.代謝物Xの生成速度)
非放射活性化合物Kおよび他のプロドラッグ化合物由来の代謝物Xの酵素性生成もまた、以下のHPLCアッセイを使用してモニターする。末梢血単核細胞(PBMC)抽出物の量を変動させながら、カラム画分またはプールを、非放射活性化合物基質と一緒に、37℃で10分間〜90分間インキュベートする。代謝物Xを、HPLCを使用して、反応混合物から抽出し、親プロドラッグから分離する。反応混合物は、100μlの最終容量において、25mM MesNa(pH6.5)、100mM NaCl、1mM DTT、0.1%NP−40、30μM基質および変動する量の酵素を含有する。酵素性反応を、37℃で10分間〜90分間実施し、180μlの氷冷メタノールを加えることにより停止させる。サンプルを−20℃で30分間インキュベートし、13,000RPMで30分間、4℃にて遠心分離する。上清を96ウェルプレートへ移し、speedvacを使用して減圧下でエバポレートする。沈殿物を100μlの緩衝液A(25mMリン酸カリウム(pH6.0)、5mM TBAB)に溶解する。結合した基質ならびに代謝物X産物を、260nmにてモニターし、20カラム容量(CV)勾配の緩衝液B(25mMリン酸カリウム(pH6.0)、5mM TBAB、60%アセトニトリル(CHCN))を使用して分解する。代謝物X産物(合成された代謝物Xの保持時間および質量分析から同定された)は、プロドラッグ基質よりも一貫してより早く溶出し、ピーク面積の積分により定量化する。活性を、生成する代謝物X(ピコモル)/分/酵素サンプル容量として表す。GS−7340エステル加水分解酵素比活性を、生成する代謝物X(ピコモル)/分/タンパク質μgとして表す。
【0156】
(実施例3)
(非特異的エステラーゼアッセイ)
非特異的エステル加水分解酵素活性を、αナフチルアセテート(ANA)の酵素性切断をモニタリングすることにより、モニターする(MastropaoloおよびYourno,Anal.Biochem.115:188−193(1981))。この基質は、エステラーゼ酵素活性の計測および組織サンプルにおけるエステラーゼのインサイチュ染色の両方に使用されている(YournoおよびMastropaolo,Blood 58:939−946(1981);Yournoら、Blood 60:24−29(1982);Yournoら、J.Histochem.Cytochem.34:727−733(1986))。記載される方法は、MattesおよびMattes,Toxicol.Appl.Pharmacol.114:71−76(1992)に記載されたアッセイの改変である。末梢血単核細胞(PBMC)の抽出物の量を変動させて、カラム画分またはプールを、ANAと一緒に37℃で20分間インキュベートする。最終反応条件は:150μlの最終容量中に、10mMリン酸ナトリウム(pH6.5)、97μm ANAおよび変動する量のGS−7340エステル加水分解酵素である。その反応混合物を37℃で20分間インキュベートし、その反応を10%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)中の20μlの10mM Blue salt RRを加えることにより停止する。αナフチル−Blue salt RR産物を、405nmの吸光度を読むことにより検出する。活性を、生成される産物(ピコモル)/分/酵素サンプル容量として表す。
【0157】
(実施例4)
(GS−7340エステル加水分解酵素の単離)
(ヒトPBMCからのGS−7340エステル加水分解酵素の抽出)
新鮮なヒトPBMCを、白血球除去法を受けている患者から得る;細胞は血漿中で輸送し、取出しから26時間以内に処理する。PBMCを、1200×gにて5分間遠心分離して収集し、RBC溶解緩衝液(155mM NHCl、1mM EDTA、10mM KHCO)に再懸濁することにより3回洗浄する。洗浄された細胞(29×10個)を、150mlの溶解緩衝液(10mM Tris(pH7.4)、150mM NaCl、20mM CaCl、1mM DTTおよび1% NP40)に懸濁し、氷上で20分間インキュベートする。そのPBMC粗抽出物を、1000×gにて30分間遠心分離して未溶解細胞を除去し、その上清を100,000×gにて1時間遠心分離する。その100,000×gの上清(PBMC抽出物:P0)を、収集し(165ml)、そしてペレット(1000×gおよび100,000×gペレット)を、10mM Tris(pH7.4)、150mM NaCl、20mM CaCl、1mM DTTに再懸濁し、GS−7340エステル加水分解酵素活性についてアッセイする。アッセイは、GS−7340エステル加水分解酵素の酵素性活性の2%未満が、そのペレット中に存在していることを示す。その細胞抽出物を、液体窒素中で瞬間凍結し、−70℃で保存する。凍結および解凍後の−70℃でのGS−7340加水分解酵素活性の安定性は、実証されている。
【0158】
(実施例5)
(アニオン交換クロマトグラフィー)
PBMC抽出物(30×10細胞、75〜85ml)を、25mM Tris(pH7.5)、10%グリセロール、1mM DTT(Q15緩衝液A)で希釈(1:10、容量:容量)し、事前にQ15緩衝液で平衡化したアニオン交換カラム(2.5cm×8.0cm、供給源Q15(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ))に充填する。結合したタンパク質を、線形NaCl勾配(30カラム容量(CV))で、0.5M NaClまで溶出する。溶出するタンパク質を、280nmの吸光度をモニタリングすることにより検出する。画分(12.0ml)を収集し、GS−7340エステル加水分解酵素およびANAエステラーゼ活性の両方についてアッセイする。GS−7340エステル加水分解酵素活性は、50〜70mM NaClの単一の主要なピークとして溶出する。溶出した画分における総GS−7340エステル加水分解酵素活性の回収は、充填された総活性の50〜65%である。有意なANAエステラーゼ活性(充填された総活性の30〜40%)を、カラムの貫流において検出する;しかし、約30%は、70〜100mM NaClにて2つのピークで溶出する。GS−7340エステル加水分解酵素活性を含む画分(Q15プール)をプールし、液体窒素において瞬間凍結して、−70℃にて保存する。
【0159】
(実施例6)
(疎水性相互作用(HIC)クロマトグラフィー)
上記Q15プールを解凍し、25mM Tris(pH8.0)、0.5M (NHSO、1mM DTT、10%グリセロール(BS−HIC緩衝液A)で希釈する(1:1、容量:容量)。1Mの(NHSOを加え、サンプル中において0.5M (NHSO、の最終濃度を得る。サンプル(300ml/10×10細胞)を、事前にBS−HIC緩衝液Aで平衡化されたブチルセファロースHICカラム(5ml HiTrap、Amersham Biosciences、Piscataway、NJ)に充填する。結合したタンパク質は、線形勾配(15CV)で、25mM Tris(pH8.0)、1mM DTT、10%グリセロールまで減少させて溶出させる。溶出するタンパク質を、280nmの吸光度のモニタリングにより検出する。画分(4.0ml)を収集し、GS−7340エステル加水分解酵素活性およびANAエステラーゼ活性の両方についてアッセイする。GS−7340エステル加水分解酵素活性は、200mM〜75mMの(NHSOにおいて、単一の主要なピークとして溶出する。溶出した画分における総GS−7340エステル加水分解酵素活性の回収は、充填された総活性の約50〜70%である。有意なANAエステラーゼ活性(充填した総活性の85%)を、カラムの貫流において検出する;しかし、約10〜15%は、450mM〜300mM (NHSOのピークで溶出する。GS−7340エステル加水分解酵素活性を含む画分(BS−HICプール)をプールし、液体窒素で瞬間凍結し、−70℃で保存する。
【0160】
(実施例7)
(コンカナバリンA(ConA)アフィニティークロマトグラフィー)
BS−HICプール(40ml/10×10細胞)を解凍し、ConA緩衝液A(20mM Tris(pH7.5)、0.5M NaCl、1mM MnCl、1mM CaCl)で希釈(1:1、容量:容量)する。GS−7340エステル加水分解酵素活性を含むサンプルを、事前にConA緩衝液Aで平衡化したConAカラム(1.0ml)に充填する。結合したタンパク質を、ConA緩衝液B(ConA緩衝液A+1Mメチル−α1−マンノ−ピラニシド)で溶出する。溶出するタンパク質を、280nmの吸光度をモニタリングして検出する。画分(0.5ml)を収集し、GS−7340エステル加水分解酵素活性についてアッセイする。溶出した画分における総GS−7340エステル加水分解酵素活性の回収は、充填した総活性の25〜30%である。GS−7340エステル加水分解酵素を含む画分(ConAプール)を、液体窒素で瞬間凍結し、−70℃で保存する。
【0161】
(実施例8)
(GS−7340エステル加水分解酵素精製の概要)
以下の表に、GS−7340エステル加水分解酵素の精製をまとめる。タンパク質を、クマシーブルー染色比色アッセイ(Bradford Protein Assay、BioRad、Hercules、CA)により計測する。1732倍〜6200倍の精製を、PBMC抽出物から達成する。PBMC抽出物からのGS−7340エステル加水分解酵素の全体の回収は、約5〜6%である。
【0162】
【表2】

(実施例9)
(ConAプールにおけるタンパク質のSDS−PAGE分離および同定)
精製したGS−7340加水分解酵素を含むConAプールを、約60μl(10kDa MWCO Viva細胞、Viva Science、Carlsbad、CA)に濃縮する。アリコート(10μlおよび50μl)を、SDS−PAGEゲル(4〜20%アクリルアミド勾配、NuPAGE;Invitrogen,Inc、Carlsbad、CA)上の隣り合うレーンに充填し、タンパク質を、製造者の指示に従って分離する。10μlのレーンにおけるタンパク質バンドを、銀染色を使用して可視化し、染色したタンパク質バンドに対応する未染色レーンにおけるそのゲルの隣の領域(50mlアリコート)を、切り出す。タンパク質のゲル内消化を、37℃で一晩、過剰のトリプシンを含む50mM炭酸水素アンモニウム中で実施する。得られるペプチドを、C18 ZipTipを通して精製し、Sciex Q−Star/Pulsar質量分析計(ABI Biotechnologies、Foster City、CA)を使用して、ポジティブESI−質量分析(ESI−MS)により分析する。サンプルを、ナノスプレー(nanospray)針を使用して導入し、データをMCAモードにおいて収集する。ペプチドを、MS/MS断片化を使用して配列決定する。タンパク質を、NCBI nr タンパク質/ペプチドデータベースのblast分析により、生成された配列から同定する。全ての可視化タンパク質を、この技術を使用して同定する。29kDaの見かけの分子量で泳動される目立ったタンパク質バンドは、I/LFPEYKの配列をもたらす。このバンドは、ConAプールに存在する総タンパク質の約5〜20%を示し、β−ガラクトシダーゼのためのヒト防御タンパク質であるカテプシン(NCBI登録番号 GI:12653639)(配列番号1−プロ型、配列番号2−成熟型)として同定される。カテプシンAとしてのGS−7340加水分解酵素の同一性を、天然の酵素および組み換えカテプシンAを用いて、天然の酵素活性の生化学的特徴と組み換えカテプシンA(カタログ番号1049−SE、R&D Systems,Minneapolis,MN)の生化学的特徴とを比較することにより、そして異なるヌクレオチドのホスホルアミデートプロドラッグ(produg)に存在するカルボン酸エステル結合の切断の相対速度(構造活性相関、SAR)を比較することにより、確認する。
【0163】
(実施例10)
(高分解能ゲル濾過クロマトグラフィー)
上記BS−HICプール(5ml/1.25×10細胞)を解凍し、5kDa分子量カットオフ濃縮器(20ml Vivaspin濃縮器、Viva Science、Carlsbad、CA)を使用して0.05mlに濃縮し、そして事前に25mM Tris(pH7.5)、150mM NaCl、10%グリセロール、20mM CaCl、1mM DTT(KW 802.5カラム緩衝液)で平衡化した高分解能ゲル濾過カラム(8mm×300mm、KW 802.5;Shodex、Thomas Instrument Co.,Oceanside,CA)に充填する。溶出するタンパク質を、280nmの吸光度をモニタリングして検出する。画分(0.5ml)を収集し、GS−7340エステル加水分解酵素についてアッセイする。GS−7340エステル加水分解酵素活性は、ゲル濾過における70kDa〜100kDaの見かけの分子量に対応する画分において、単一の主要なピークとして溶出する。溶出した画分における総GS−7340エステル加水分解酵素活性の回収は、充填した総活性の約75%より大きい。GS−7340エステル加水分解酵素活性を含む画分(KW 802.5プール)をプールし、液体窒素において瞬間凍結して−70℃で保存する。
【0164】
(実施例11)
(GS−7340エステル加水分解酵素の等電点(pI)の決定)
タンパク質の等電点(pI)は、そのタンパク質が正味のイオン性電荷を有さないpHとして定義される。クロマトフォーカシングは、負に荷電したタンパク質が、正味の正のイオン性電荷を有する親水性カラムへ結合するクロマトグラフィー手順である。タンパク質を、その推定pIよりも1〜2pH単位高いpHにて充填し、そして結合したタンパク質を、pH3.0〜4.0の緩衝液を使用してpH勾配の減少を生じさせることにより、溶出させる。タンパク質は、pIに対応するpHにおいて溶出する。
【0165】
上記BS HICプール(20ml、5×10細胞)のアリコートを4.0mlに濃縮し、脱塩カラムを使用する、交換緩衝液によるクロマトフォーカシングクロマトグラフィーのために調製する。その濃縮したBS−HICプールの1.0mlアリコートを、事前に25mMエタノールアミン(pH7.8、イミノ二酢酸でpH調整された)、10%グリセロール(モノP緩衝液A)で平衡化された5.0ml脱塩カラム(5.0ml HiTrap,Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)に充填する。脱塩されたGS−7340エステル加水分解酵素活性を、事前にモノP緩衝液Aで平衡化されたクロマトフォーカシングカラム(5mm×5mm HRモノP、Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)に充填する。結合したタンパク質を、10ml/100mlポリ緩衝液74(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)を用いてpH3.6までの20CV勾配で溶出させ、そしてそのpHをイミノ二酢酸で4.0に調整する。線形pH勾配を、pH7.8〜pH3.6で作製する。溶出するタンパク質を、280nmの吸光度をモニタリングして検出する。画分(0.5ml)を収集し、GS−7340エステル加水分解酵素についてアッセイする。GS−7340エステル加水分解酵素活性は、pH5.5〜pH4.5において、単一の主要なピークとして溶出する。溶出した画分における総GS−7340エステル加水分解酵素活性の回収は、充填した総活性の65〜70%である。GS−7340エステル加水分解酵素活性を含む画分(KW 802.5プール)をプールし、液体窒素において瞬間凍結して−70℃で保存する。
【0166】
(実施例12)
(セリン加水分解酵素インヒビターによるGS−7340エステル加水分解酵素の阻害)
フルオロホスホネート(ジイソプロピルフルオロホスフェート(DFP)誘導体)、3,4ジクロロイソクマリン(3,4−DCI)のようなイソクマリン、およびクロロ−メチルケトンおよびフルオロ−メチルケトンのペプチドカルボン酸エステル(AlaAlaProAla−CMK、AlaAlaProVal−CMK、PheAla−FMK)は、セリン加水分解酵素の公知の効率的なインヒビターである(PowersおよびHarper、Inhibitors of Serine Proteases in Protease Inhibitors、55−152、(BarrettおよびSalvesen編、Elsevier,(1986));DelbaereおよびBrayer,J.Mol.Biol.183:89−103(1985);Bullockら、J.Mol.Biol.255:714−725(1996);Yongshengら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:14694−14699(1999);Kamら、Bioconjug.Chem.4:560−567(1993))。化合物Kからの代謝物Xの酵素性生成の阻害を、以下のエステル加水分解酵素阻害アッセイを使用してモニターする。種々の量の精製されたGS−7340エステル加水分解酵素およびコントロールの酵素(ヒト白血球エラスターゼ(huLE)、ブタ肝臓のカルボキシルエステラーゼ(PLCE))を、37℃で10分間〜90分間、種々の量の公知のセリン加水分解酵素インヒビターの存在下および非存在下で、[14C]化合物Kと一緒にインキュベートする。[14C]代謝物Xの生成を、アニオン交換樹脂(DE−81)上に保持される放射活性の量を計測することにより、モニターする。最終的な反応条件は、60μlの最終容量において、25mMの2−[N−モルホリノ]エタンスルホン酸(MES)(pH6.5)、100mM NaCl、1mM DTT、30μM[14C]GS−7340基質、0.1% NP40、ならびに変動する量の酵素およびインヒビター(1.0μM〜1mM)である。反応混合物を37℃で10分間、30分間および90分間インキュベートし、各時点においてその反応混合物の17μlをDE−81フィルター上にスポットする。上記のように、そのフィルターを処理し、存在する[14C]代謝物Xの量を測定する。活性を、生成される代謝物X(ピコモル)/分/酵素サンプル容量として表す。エステル加水分解酵素およびコントロールの加水分解酵素の阻害を、インヒビターの非存在下における加水分解酵素活性と比較した、所定の濃度のインヒビターの存在下のパーセント活性として表す。この阻害実験の結果を、表3に示す。
【0167】
【表3】

(実施例13)
(天然の7340加水分解酵素および組み換えカテプシンAによるヌクレオチドホスホルアミデートプロドラッグの相対的切断速度)
異なるヌクレオチドホスホルアミデートプロドラッグに存在するカルボン酸エステル結合の切断の(化合物Kの切断に対する)相対速度(構造活性相関またはSAR)を、天然の酵素および組み換えカテプシンAを使用して測定する。反応混合物は、100μlの最終容量に、25mM MesNa(pH6.5)、100mM NaCl、1mM DTT、0.1% NP−40、30μMの基質および変動する量のGS−7340加水分解酵素または組み換えカテプシンAのいずれかを含む。代謝物X産物の生成を、実施例2Aに記載されたHPLC法を使用してモニターする。相対活性を、化合物Kの切断に対する、生成される代謝物X(ピコモル)/分/酵素サンプル容量として表す。GS−7340エステル加水分解酵素および組み換えカテプシンAは、多数のプロドラッグ基質に対して平行する活性を示す。
【0168】
(実施例14)
(ホスホネートプロドラッグ基質に対する天然の7340加水分解酵素、9005加水分解酵素Aおよび9005加水分解酵素Bの相対活性)
複数のホスホネートプロドラッグ基質に対する複数のエステル加水分解酵素(天然の7340加水分解酵素、9005加水分解酵素Aおよび9005加水分解酵素Bを含む)の相対活性(構造活性相関、SAR)を測定する。ホスホネートプロドラッグに対する7340加水分解酵素のSARは、他のエステル加水分解酵素(9005加水分解酵素Aおよび9005加水分解酵素Bの両方を含む)について観察されたSARとは異なっている。
【0169】
(実施例15)
(GS−7340加水分解酵素および組み換えカテプシンAの、[14C]化合物Kおよび[H]DFPでの標識化)
GS−7340加水分解酵素(5μg/ml)、組み換えカテプシンA(CatA)(10μg/mL)およびコンカナバリンA(75μg/ml)の、[14C]化合物Kおよび[H]DFPでの標識化を、天然の酵素および変性した酵素の両方で実施する。25mM Mes−Na緩衝液(pH6.5)、100mM NaCl、0.1% NP40および1mM DTTを含む100μLの反応液を調製する。80℃で3分間インキュベートして、変性した酵素を調製する。変性した酵素、天然の酵素およびコンカナバリンA(各60μl)を、別々に37℃で2分間プレインキュベートし、[14C]化合物K(1.5mM、0.04mCi/ml、37℃/2分)または[H]DFP(25μM、0.1mCi/ml、37℃/30分)のいずれかと反応させる。標識化を0.3%SDSでクエンチし、そしてタンパク質を、氷冷TCA(10%最終濃度)で沈殿させる。タンパク質を、13000×gでの遠心分離で回収する。TCAで沈殿されたタンパク質を、4℃、13000×gで30分間の遠心分離で回収し、700μlの氷冷100%アセトンで2回洗浄する。タンパク質をSDS−PAGEサンプル緩衝液(NuPAGE、Novex、La Jolla、CA)中に溶解し、さらに電気泳動前に10分間70℃で変性させる。ゲルをイソプロパノール:水:酢酸溶液(25:65:10)で固定し、Amplify Fluorogaphic Reagent(GE Health Care.,Piscataway,NJ)に浸漬し、80℃の減圧下で乾燥させ、事前にフラッシュされたX線フィルム(HyperFilm,MP,GE Health Care,Piscataway,NJ)に2週間曝露する。製造者の指示書にしたがってフィルムを現像した後に、放射活性標識されたバンドを可視化する。
【0170】
セリン加水分解酵素(カテプシンAを含む)の一般的な酵素学的機序は、酵素の活性部位におけるセリン残基と基質との間の、安定なアシル−酵素複合体の形成を含む(Satoh,TおよびHosakawa,M 1998)。反応の過程の間のSDS/TCAでの酵素の変性により、このアシル−酵素複合体の捕捉が可能になる。各反応混合物のSDS−PAGE分析は、29kDaにおける単一の[14C]−化合物K標識されたバンドの存在を示す。基質は、熱変性されたGS−7340およびカテプシンAの両方、ならびにコンカナバリンAタンパク質(15μgが充填された)を標識できない。
【0171】
H]−DFPでの標識は、セリン加水分解酵素の触媒性サブユニットを可視化するためのさらなる手段である(Lundqvist,H.,Dahlgren,C.,Inflamm.Res.、「The serine protease inhibitor diisopropylfluorophosphate inhibits neutrophil NADPH−oxidase activity induced by the calcium ionophore ionomycin and serum opsonised yeast particles」、44(12):517−517(1995))。アシル−酵素複合体の一時的な形成とは異なり、DFPは、セリンにおける水酸基と、これらの酵素の活性部位において安定な共有結合を形成する。[H]−DFPは、GS−7340加水分解酵素およびカテプシンAの両方の29kDa触媒性サブユニットを特異的に標識する。変性した酵素は、インヒビターと反応できない。これらのデータは、精製された加水分解酵素画分が、化合物Kを加水分解し得る単一のタンパク質を含むという強力な証拠を提供する。さらに、標識された29kDaバンドは、カテプシンAの触媒性サブユニットと一緒に泳動する。ヒトカテプシンAに対するポリクローナルヤギ抗体(R&D Systems,Minneapolis,MN)を使用するウェスタンブロット分析により、カテプシンAが、GS−7340加水分解酵素活性を示す画分の全てのプールに存在すること、およびその抗体が、[14C]−化合物Kおよび[H]−DFPを使用して標識される29kDaの触媒性サブユニットと一緒に泳動するバンドと反応することを確認する。
【0172】
(実施例16)
(CatA+/−の繊維芽細胞における非環式ヌクレオチドホスホネートプトドラッグの代謝)
ガラクトシアリドーシスを示す患者由来のヒト初代繊維芽細胞は、正確な折り畳みをさまたげる配列中の突然変異により、カテプシンAの発現を欠損している(CatA−)。CatA−繊維芽細胞(GM05076、GM02348)ならびにCatA+繊維芽細胞(GM00409、GM5400およびGM05757B)(Coriell Institute for Medical Research,Camden,NJ)を、2mM L−グルタミン、0.1mM非必須アミノ酸、1×ビタミンおよび15%ウシ胎仔血清(FBS)を補充した最小必須(イーグル−イーグル)培地において培養する。HEL繊維芽細胞(CatA+)(ATCC,Manassas,VA 20108)を、2mM L−グルタミン、0.1mM非必須アミノ酸、および1.0mMピルビン酸ナトリウム、および10%FBSを含むMEM(イーグル)培地で維持する。細胞密度が80%のコンフルーエンスに達したときに、細胞を1:3(容量:容量)にスプリットする。
【0173】
細胞を、培養培地に1cm当たり4000〜12000細胞の初期細胞密度にてT75フラスコに播種する。次の日に、培地を補充し、細胞培養物を37℃で1.5時間プレインキュベートする。14C−標識された化合物Kを、10μM(0.521μCi/ml)の最終濃度まで加え、繊維芽細胞をさらに37℃で15分〜240分間インキュベートする。選択した時点(0分、30分、60分、120分および240分)にて、培地を取り除き、細胞を氷冷PBS(1×)で2回洗浄する。繊維芽細胞を、1.5mlの1×トリプシン−EDTA PBS溶液(0.5g/ml)を使用して37℃で3分間インキュベーションして、そのフラスコから剥離する。トリプシン反応を、5mlの培養培地を加えて停止させ、細胞を1500RPMにて5分間の遠心分離(Bsckman GPR,4℃)により回収する。細胞を8mlのPBSで洗浄し、1mlの80%MetOHにおいて回収および抽出する。
【0174】
(細胞結合[14C]−代謝物の測定)
細胞抽出物(80%MetOH懸濁液)を、−20℃で一晩インキュベートする。可溶化された14C−代謝物を含む上澄みを、遠心分離(13000g)により回収し、speed−vac中でエバポレートし、200μlの水中に再び可溶化する。アリコート(40μl)を分析し、シンチレーションリーダー(Beckman LS 6500)を使用して、細胞中に存在する放射活性(14C−代謝物)の量を測定する。放射活性(cpm)対[14C]化合物Kのピコモルおよび40μlの溶解物中に存在する細胞数についての検量線を使用して、10細胞に存在する代謝物の(ピコモルでの)総量を計算する。細胞容量測定値を使用し、代謝物の濃度(μM)を決定する。
【0175】
(細胞容量測定)
繊維芽細胞をPBSで洗浄し、トリプシン(PBS中の0.5g/ml、1μM EDTA)と一緒に37℃で5分間インキュベートして剥離させる。細胞を培養培地中で30分間インキュベートし、その球状の形状を回復させる。細胞の写真を撮り、その直径を計測する。細胞の直径を、血球計を使用して測定する。細胞容量を、150細胞から得られた直径の平均値を使用して計算する。CatA+コントロール繊維芽細胞における代謝物の濃度は、CatA−(ガラクトシアリドーシス)患者由来の繊維芽細胞において観察された代謝物の濃度よりも約6〜9倍大きい。
【0176】
(実施例17)
(例示的な抗HIV化合物の特徴付け)
(HIV−1プロテアーゼ酵素アッセイ(Ki))
このアッセイは、最初にTothおよびMarshall,Int.J.Peptide Protein Res.36:544(1990)に記載されたように、既定された反応緩衝液における、HIV−1プロテアーゼによる合成ヘキサペプチド基質の切断の蛍光定量検出に基づく。
【0177】
使用される基質は、Bachem California,Inc.(Torrance,CA)製の、(2−アミノベンゾイル)Thr−Ile−Nle−(p−ニトロ)Phe−Gln−Arg基質(カタログ番号H−2992)である。E.coliにおいて発現される組み換えHIV−1プロテアーゼもまた、Bachem California,Inc.(Torrance,CA,カタログ番号H9040)から入手する。この反応は、100mM酢酸アンモニウム(pH5.3);1M塩化ナトリウム;1mMエチレンジアミンテトラ酢酸;1mMジチオスレイトール(DTT);および10%ジメチルスルホキシドを含む反応緩衝液(RB)中で実施する。阻害定数(Ki)を決定するために、以下のアッセイを実施する。同一の量の酵素(1〜2.5nM)および異なる濃度の試験インヒビターを含む一連の溶液を、反応緩衝液中で調製する。その溶液を、白い96ウェルプレートへ移す(各190μL)。その反応を、37℃で15分間プレインキュベートする。その基質を、800μMの濃度で100%ジメチルスルホキシドで可溶化する。その反応は、40μMの最終基質濃度まで、各ウェルへ10μLの800μMの基質を加えることにより開始する。リアルタイム反応の反応速度論を、37℃で、Gemini96ウェルプレート蛍光光度計(fluorimeter)(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を使用して、l(Ex)=330nmおよびl(Em)=420nmにて計測する。その反応の初速度を、異なるインヒビター濃度で決定する。Ki値(ピコモルの濃度単位)を、Ermolieffら、Biochemistry 36:12364(1997)に記載される強結合競合阻害(tight−binding competitive inhibition)のためのアルゴリズムに従って、EnzFitterプログラム(Biosoft,Cambridge,U.K.)を使用して計算する。
【0178】
(抗HIV−1細胞培養アッセイ(EC50))
以下の抗HIV−1アッセイは、試験インヒビターの存在下または非存在下での、ウイルス感染細胞の生存度の比色検出による、HIV−1関連細胞変性効果の定量化に基づく。HIV−1誘導性の細胞死を、代謝基質の2,3−ビス(2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム−5−カルボキサニリド(carboxanilide)(XTT)を使用して測定する。Weislowら、J.Natl.Cancer Inst.81:577(1989)に記載されるように、この基質は、インタクト細胞によってのみ、特異的な吸収特徴を有する産物へと変換される。
【0179】
EC50を決定するために、以下のアッセイ条件を使用する。MT2細胞を、5%ウシ胎仔血清および抗生物質を補充したRPMI−1640培地で維持する。このMT2細胞を、0.01に等しい感染多重度に対応するウイルス種菌を使用して、野生型HIV−1株IIIB(Advanced Biotechnologies,Columbia,MD)で、37℃にて3時間感染させる。溶液のセットを、96ウェルプレート(100μL/ウェル)において、5倍の段階希釈を作ることにより、種々の濃度の試験インヒビターを含むように調製する。
【0180】
感染細胞を、96ウェルプレートに分配する(100μL/ウェルに20,000細胞)。未処理の感染コントロール細胞および未処理の偽感染コントロール細胞を有するサンプルを含める。細胞を、37℃で5日間インキュベートする。アッセイプレート当たり6mLのXTT溶液を、リン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4)において、2mg/mLの濃度にて調製する。その溶液を、ウォーターバスにおいて、55℃で5分間加温する。6mLのXTT溶液当たり50mLのN−メチルフェナゾニウムメタサルフェート(methylphenazonium methasulfate)(5mg/mL)を加える。100mLの培地を、アッセイプレート上の各ウェルから除去する。100mLのXTT基質溶液を各ウェルに加え、そのアッセイプレートを、COインキュベーターにおいて、37℃で45〜60分間インキュベートする。ウイルスを不活化するために、20mLの2% Triton X−100を、各ウェルに加える。
【0181】
吸光度を450nmにおいて読み取り、650nmにおけるバックグラウンドの吸光度を減算する。パーセンテージ吸光度を見処理のコントロールに対してプロットし、EC50値を、感染細胞の50%の保護をもたらす薬物濃度として計算する。
【0182】
(細胞毒性細胞培養アッセイ(CC50))
以下の細胞毒性アッセイは、Weislowら、J.Natl.Cancer Inst.81:577(1989)に記載されるように、代謝基質の2,3−ビス(2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム−5−カルボキサニリド(XTT)を使用するの、試験化合物の細胞毒性効果の評価に基づく。MT2細胞を、5%ウシ胎仔血清および抗生物質を補充したRPMI−1640培地において維持する。溶液のセットを、96ウェルプレート(100μL/ウェル)において、5倍の段階希釈を作ることにより、種々の濃度の試験されるインヒビターを含むように調製する。細胞を、96ウェルプレートに分配する(100μL/ウェルに20,000細胞)。未処理細胞を有するサンプルを、コントロールとして含める。細胞を、37℃で5日間インキュベートする。アッセイプレート当たり6mLの溶液に十分なXTT溶液を、リン酸緩衝化生理食塩水(pH7.4)中で、2mg/mLの濃度にて暗所において調製する。その溶液を、ウォーターバスにおいて55℃で5分間加温する。6mLのXTT溶液当たり50μLのN−メチルフェナゾニウムメタサルフェート(5μg/mL)を加える。100μLの培地を、アッセイプレート上の各ウェルから除去し、100μLのXTT基質溶液を各ウェルに加える。そのアッセイプレートを、COインキュベーターにおいて、37℃で45〜60分間インキュベートする。20μLの2%Triton X−100を各ウェルに加え、XTTの代謝変換を停止させる。450nmの吸光度を読み取り、650nmのバックグラウンドを減算する。その吸光度は、細胞増殖に直接的に比例すると考えられる。未処理のコントロールに対するパーセンテージ吸光度をプロットし、CC50値を、細胞増殖の50%阻害をもたらす薬物濃度として計算する。
【0183】
(耐性評価(I50VおよびI84V/L90M倍数変化))
このアッセイは、野生型HIV−1株とウイルスプロテアーゼ遺伝子に特異的な薬物耐性関連変異を含む変異体HIV−1株との間の、特定のHIVプロテアーゼインヒビターへの感受性における差異の測定に基づく。特定の試験化合物に対する各ウイルスの絶対的な感受性(EC50)を、上記のようなXTTベースの細胞変性アッセイを使用して計測する。試験化合物への耐性の程度を、野生型と特異的変異体ウイルスとの間のEC50における倍数変化として計算する。これは、種々の刊行物において実証されているように、HIV薬物耐性評価のための標準的アプローチを代表する(例えば、Maguireら、Antimicrob.Agents Chemother.46:731(2002);Gongら、Antimicrob.Agents Chemother.44:2319(2000);VandammeおよびDe Clercq、Antiviral Therapy 243(E.De Clercq編)、ASM Press,Washington,DC(2001))。
【0184】
(耐性評価のために使用されるHIV−1株)
プロテアーゼ遺伝子においてI50V変異を含む変異体ウイルスの2株を、この耐性アッセイにおいて使用する:ウイルスプロテアーゼ遺伝子において、一方はM46I/I47V/I50V変異(I50V #1と示される)を有し、他方はL10I/M46I/I50V(I50V #2と示される)変異を有する。I84V/L90M変異を有する第三のウイルスもまた、この耐性アッセイにおいて用いる。変異体I50V #1およびI84V/L90Mは、3つのオーバーラップDNAフラグメント間の相同組み換えにより構築する:1.プロテアーゼ遺伝子および逆転写酵素遺伝子が欠失した、野生型HIV−1プロウイルスDNA(HXB2D株)を含む直線化プラスミド;2.HXB2D株(野生型)由来の逆転写酵素遺伝子を含む、PCR増幅により生成したDNAフラグメント;3.PCR増幅により作製した変異ウイルスプロテアーゼ遺伝子のDNAフラグメント。ShiおよびMellors、Antimicrob.Agents Chemother.41:2781−85(1997)により記載されたアプローチと類似のアプローチを、作製されたDNAフラグメントからの変異体ウイルスの構築のために使用する。DNAフラグメントの混合物を、標準的なエレクトロポレーション技術を使用することにより、Sup−T1細胞に送達する。その細胞を、10%ウシ胎仔血清および抗生物質を補充したRPMI−1640培地において、組み換えウイルスが現れるまで(通常、エレクトロポレーション後10〜15日)培養する。その組み換えウイルスを含む細胞培養物の上清を収集し、アリコートで保存する。プロテアーゼ遺伝子配列の検証および感染ウイルス力価の測定後、そのウイルスストックを、薬物耐性研究のために使用する。変異体I50V #2は、Partaledisら、J.Virol.69:5228−5235(1995)に記載されるアプローチと類似のアプローチを使用して、9ヶ月を超える期間にわたって、増加する濃度のアンプレナビルの存在下で、野生型IIIB株からインビトロで選択されたアンプレナビル耐性HIV−1株である。5μMアンプレナビルの存在下で増殖し得るウイルスを、感染細胞の上清から収集し、滴定およびプロテアーゼ遺伝子配列決定後、耐性研究のために使用する。
【0185】
列挙される全ての刊行物および特許出願は、その全体が参考として本明細書中に援用される。特定の実施形態が詳細に記載されるが、当業者は、本明細書中の教示の精神および範囲から逸脱せずに、多くの改変が可能であることを明らかに理解する。全てのそのような改変は、本発明に包含されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0186】
【図1】図1は、プロドラッグの生物活性化のためのスキームを示す。
【図2】図2は、例示的な加水分解酵素の精製を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法であって、該方法は、以下:
(a)エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基を有する候補化合物を提供する工程;
(b)該候補化合物と、GS−7340エステル加水分解酵素を含む抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および
(c)該1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、該候補化合物の該エステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または該候補化合物の該エステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、該候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程;
を包含する、方法。
【請求項2】
前記抽出物が末梢血単核細胞から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出物が完全に精製された抽出物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出物が、配列番号1またはそのフラグメントを含む酵素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記提供する工程が、プロトタイプ化合物を置換することにより形成される候補化合物を提供する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
(d)前記候補化合物の細胞内残留性を測定する工程、をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
(d)前記1以上の代謝化合物の少なくとも1つの細胞内残留性を測定する工程、をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(d)前記候補化合物の組織選択性を測定する工程、をさらに包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
(d)前記1以上の代謝化合物の少なくとも1つの組織選択性を測定する工程、をさらに包含する、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
治療剤としての適合性について候補化合物をスクリーニングする方法であって、該方法は、以下:
(a)エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基を有する候補化合物を提供する工程、該候補化合物と、GS−7340エステル加水分解酵素活性を有する抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程、および該1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、該候補化合物の該エステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または該候補化合物の該エステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、該候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程によって、同定された候補化合物を提供する工程;ならびに
(b)該候補化合物の治療的活性を測定する工程;ならびに
(c)該候補化合物の少なくとも1つの細胞内残留性を測定する工程;
を包含する、方法。
【請求項11】
前記工程(b)が、前記候補化合物のHIVプロテアーゼに対する活性を測定する工程を包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記工程(b)が、前記候補化合物のHIVを阻害する能力を測定する工程を包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(b)が、前記候補化合物のHIVプロテアーゼを阻害する能力を測定する工程を包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(b)が、前記候補化合物のHIVインテグラーゼを阻害する能力を測定する工程を包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記工程(b)が、前記候補化合物のHIV逆転写酵素を阻害する能力を測定する工程を包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記工程(b)が、インビトロアッセイにより実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法であって、該方法は、以下:
(a)治療的活性を有すると考えられるプロトタイプ化合物を、エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基で置換することにより形成される候補化合物を提供する工程;
(b)該候補化合物と、GS−7340エステル加水分解酵素活性を有する抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および
(c)該1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、該候補化合物の該エステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または該候補化合物の該エステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、該候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程;
を包含する、方法。
【請求項18】
末梢血単核細胞の抽出物が、配列番号1またはそのフラグメントを含む酵素を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記接触させる工程が、前記候補化合物と前記抽出物とを無細胞環境において接触させる工程を包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記接触させる工程が、前記候補化合物と前記抽出物とをインビトロで接触させる工程を包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記接触させる工程が、前記候補化合物と前記抽出物とを細胞培養物中で接触させる工程を包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記接触させる工程が、前記候補化合物と前記抽出物とを末梢血単核細胞の培養物中で接触させる工程を包含する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記治療的活性が、HIVに対する治療的活性である、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記治療的活性が、癌に対する治療的活性である、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記治療的活性が、炎症に対する治療的活性である、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法であって、該方法は、以下:
(a)エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基を有する候補化合物を提供する工程;
(b)該候補化合物と、カテプシンAまたはそのフラグメントを含む抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および
(c)該1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、該候補化合物の該エステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または該候補化合物の該エステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、該候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程;
を包含する、方法。
【請求項27】
適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法であって、該方法は、以下:
(a)治療的活性を有すると考えられるプロトタイプ化合物を、エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基で置換することにより形成される候補化合物を提供する工程;
(b)該候補化合物と、カルボン酸エステル加水分解酵素活性を有する末梢血単核細胞の抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および
(c)該1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、該候補化合物の該エステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または該候補化合物の該エステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、該候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程;
を包含する、方法。
【請求項28】
前記プロトタイプ化合物は、ヌクレオシドではなく、かつヌクレオシド塩基を含まない、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
(d)前記候補化合物の細胞内残留性を測定する工程、をさらに包含する、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
(d)前記1以上の代謝化合物の少なくとも1つの細胞内残留性を測定する工程、をさらに包含する、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
(d)前記候補化合物および前記1以上の代謝化合物の少なくとも1つの細胞内残留性を測定する工程、をさらに包含する、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
(d)前記候補化合物の組織選択性を測定する工程、をさらに包含する、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
(d)前記1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つの組織選択性を測定する工程、をさらに包含する、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
(d)前記候補化合物および前記1以上の代謝化合物の少なくとも1つの組織選択性を測定する工程、をさらに包含する、請求項27に記載の方法。
【請求項35】
適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法であって、該方法は、以下:
(a)ヒト免疫不全ウイルスに対して治療的活性を有すると考えられるプロトタイプ化合物を、エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基で置換することにより形成される候補化合物を提供する工程;
(b)該候補化合物と、カルボン酸エステル加水分解酵素活性を有する末梢血単核細胞の抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および
(c)該1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、該候補化合物の該エステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または該候補化合物の該エステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、該候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程;
を包含する、方法。
【請求項36】
適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法であって、該方法は、以下:
(a)炎症に対して治療的活性を有すると考えられるプロトタイプ化合物を、エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基で置換することにより形成される候補化合物を提供する工程;
(b)該候補化合物と、カルボン酸エステル加水分解酵素活性を有する末梢血単核細胞の抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および
(c)該1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、該候補化合物の該エステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または該候補化合物の該エステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、該候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程;
を包含する、方法。
【請求項37】
適したプロドラッグとして候補化合物を同定するための方法であって、該方法は、以下:
(a)癌に対して治療的活性を有すると考えられるプロトタイプ化合物を、エステル化ホスホネート基またはエステル化カルボキシル基で置換することにより形成される候補化合物を提供する工程;
(b)該候補化合物と、カルボン酸エステル加水分解酵素活性を有する末梢血単核細胞の抽出物とを接触させ、1以上の代謝化合物を生成させる工程;および
(c)該1以上の代謝化合物のうちの少なくとも1つが、該候補化合物の該エステル化ホスホネート基の代わりにホスホン酸基を有する場合、または該候補化合物の該エステル化カルボキシル基の代わりにカルボン酸基を有する場合に、該候補化合物を適したプロドラッグとして同定する工程;
を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−508843(P2007−508843A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536834(P2006−536834)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【国際出願番号】PCT/US2004/035083
【国際公開番号】WO2005/047898
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(500029420)ギリアード サイエンシーズ, インコーポレイテッド (141)
【Fターム(参考)】