説明

波長分散補償器

【課題】波長分散補償の際に生じる光損失を補償することができ、効率的な省スペース化が可能な波長分散補償器を提供する。
【解決手段】波長分散補償器は、入力ポートINおよび出力ポートOUTの間に光サーキュレータ1を介して波長分散補償部2が接続されており、該波長分散補償部2は、希土類イオンをドープした光路21と、該光路21に沿って形成されたグレーティング部22とを有し、上記光路21には、励起部3から出力される励起光が供給される。光サーキュレータ1を通って光路21の一端に入力された信号光は、光路21内を増幅されながら伝搬し、グレーティング部22で反射されて光路21の一端に戻されることにより、波長分散補償と光損失の補償とが同時に行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信に利用される信号光の波長分散補償を低損失で行う波長分散補償器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の通信トラフィックの増加を背景として、波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)または光時分割多重(Optical Time Division Multiplexing:TDM)を用い、超高速かつ大容量の通信を可能にするフォトニック網の構築が進んでおり、最近では、例えば40ギガビット毎秒(Gb/s)の伝送速度をベースとしたWDM光伝送システムが実稼動を始めている。
【0003】
信号光の伝送速度が40Gb/s以上になると、該信号光の光パルス幅は数ピコ秒と狭くなる。このため、光ファイバの僅かな波長分散(Chromatic Dispersion)による波形歪みが、信号光の伝送特性を著しく劣化させる。また、光ファイバの波長分散値は温度等の環境の変化に伴って時間的に変動し、その僅かな変化が伝送特性に影響を及ぼすことも知られている。
【0004】
上記のような波長分散による伝送特性劣化に対しては、波長分散補償技術の適用が有効である。従来の波長分散補償は、伝送路上に分散補償ファイバを配置し、伝送路の波長分散による波形歪みを分散補償ファイバで補償する構成がよく知られている(例えば、特許文献1参照)。WDM光の波長分散補償を行う場合には、伝送路上に分散補償ファイバを配置するだけでなく、伝送路を伝搬したWDM光を分波して受信する光受信装置内についても、分波後の単一波長の信号光が伝搬する各光路上に、波長分散補償器を備えるようにするのが有効である。各光路上の波長分散補償器では、分波された信号光の波長に応じて好ましい波長分散補償が行われる。
【0005】
上記波長分散補償器としては、ファイバブラッググレーティング(Fiber Bragg Grating:FBG)、エタロン(Etalon)、VIPA(Virtually Imaged Phased Array)などの光デバイスを利用した種々の構成が知られている。このような波長分散補償器では比較的大きな光損失が発生するため、信号光の受信パワーが小さくなるとビット誤り率(Bit Error Rate:BER)が急激に増加する。このBERの増加を抑えるためには、波長分散補償器の入力側または出力側に光増幅器を適用して波長分散補償器の挿入損失を補償することが必要になる。
【0006】
図1は、従来のFBGを用いた波長分散補償器について挿入損失を補償可能にした構成例である。この構成例では、入力ポートINおよび出力ポートOUTの間に、光サーキュレータ101を介して、FBGを用いた波長分散補償器102が接続されている。また、入力ポートINと光サーキュレータ101の間の光路上には、入力側の光増幅器103Aが設けられ、光サーキュレータ101と出力ポートOUTの間の光路上には、出力側の光増幅器103Bが設けられている。入力ポートINに与えられる信号光は、入力側の光増幅器103Aで増幅された後に、光サーキュレータ101を通って波長分散補償器102の一端に入力される。波長分散補償器102内では、信号光がその波長に応じて異なる位置で反射されて光サーキュレータ101側に戻されることにより、該信号光の波長分散補償が行われる。波長分散補償器102の一端より出力される信号光は、光サーキュレータ101を通って出力側の光増幅器103Bに与えられ、所要の光パワーに増幅された信号光が出力ポートOUTから出力される。各光増幅器103A,103Bの利得は、各々の出力光パワーをモニタ(MON)104A,104Bで検出した結果を基にして制御回路(CONT)105A,105Bにより制御される。このような構成により、波長分散補償器102の挿入損失の補償が入力側および出力側の光増幅器103A,103Bによって実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−115077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のような波長分散補償器および光増幅器を適用した構成は、部品点数の増加および実装面積の増大を招くことになる。これにより、例えば、前述したような分波後の単一波長の信号光が伝搬する各光路上に波長分散補償器が配置される光受信装置を考えると、各波長に対応した受信部構成に割り当てることが可能な実装スペースは、一般的に装置全体の大きさに制約されるため、波長分散補償器および光増幅器を含む種々の機能部品を所定のスペース内に実装することが困難になる可能性がある。
【0009】
また、上記所定のスペース内に所要の機能部品を実装できたとしても、各機能部品が密に実装されることにより、装置内の通風が悪くなり温度が上昇し、個々の機能部品に定められた許容温度を超過するおそれがある。このような状況は、光受信装置の性能および信頼性を劣化させることは勿論のこと、光受信装置そのものが設計できなくなるという熱設計上の課題もある。
【0010】
さらに、上記所定のスペース内に実装する機能部品の種類は、システムが高性能化していくのに伴って増加するため、実装スペースの不足が高性能化への対応を難しくしてしまう場合もある。特に、増加した機能部品の挿入損失を補償するために、光増幅器の台数を増やしたり、或いは、光増幅器の性能を限界近くまで引き伸ばしたりするなどの措置が必要な場合、それを限られた実装スペースで安定に実現するのは容易なことではない。
【0011】
WDM光の各波長に対応した受信部構成の実装スペースを拡大することは、個々の波長に対するスペースの拡大量が僅かであっても、光受信装置全体ではWDM光の波長数と同等数倍のサイズアップになるので、光受信装置の設計に大きな影響を及ぼす。このため、実装スペースの拡大は、小型化が要求される光受信装置の設計においては受け入れ難い。
【0012】
本発明は上記の点に着目してなされたもので、波長分散補償の際に生じる光損失を補償することができ、効率的な省スペース化が可能な波長分散補償器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明による波長分散補償器の一態様は、入力ポートおよび出力ポートの間に接続された光サーキュレータと、希土類イオンがドープされた光路、および、該光路の長手方向の少なくとも一部分に沿ってグレーティングを形成したグレーティング部を有し、前記入力ポートからの信号光が前記光サーキュレータを介して前記光路の一端に入力され、該光路を伝搬する信号光を前記グレーティング部により波長に応じて反射して前記光路の一端に戻すことで前記信号光の波長分散補償を行い、該波長分散補償された信号光を前記光サーキュレータを介して前記出力ポートに出力する波長分散補償部と、希土類イオンを励起可能な励起光を前記光路に供給する励起部と、を備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
上記のような波長分散補償器では、入力ポートに入力された信号光が、光サーキュレータを通って、波長分散補償部の希土類イオンがドープされた光路の一端に与えられる。この光路には励起部からの励起光が供給されており、希土類イオンの誘導放出作用により信号光が増幅されながら光路内を伝搬し、信号光がグレーティング部の形成部分に到達すると波長に応じて反射されて光路の一端に戻され、光サーキュレータを通って出力ポートより出力される。これにより、波長分散補償部において、信号光の波長分散補償を行うのと同時に、グレーティング部による光損失を往路および復路に亘る光増幅によって効率的に補償することができる。波長分散補償を行うための信号光の伝搬経路と、該信号光を増幅するための光増幅媒体とが波長分散補償部の光路により共通化されているので、効率的な省スペース化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】従来の波長分散補償器の挿入損失を補償可能にした構成例を示す図である。
【図2】第1実施形態による波長分散補償器の構成を示す図である。
【図3】第1実施形態における光ファイバ型の波長分散補償部の構成例を示す図である。
【図4】第1実施形態における光導波路型の波長分散補償部の構成例を示す図である。
【図5】第1実施形態における励起部の好ましい構成例を示す図である。
【図6】第1実施形態における励起光の波長固定化を説明する図である。
【図7】図5の構成例を具体化した図である。
【図8】第1実施形態における信号光の損失低減効果について説明する図である。
【図9】第1実施形態に関連した変形例を示す図である。
【図10】第1実施形態に関連した他の変形例を示す図である。
【図11】図9および図10を組み合わせた構成を示す図である。
【図12】第1実施形態に関連した別の変形例を示す図である。
【図13】第2実施形態による波長分散補償器の構成を示す図である。
【図14】第3実施形態による波長分散補償器の構成を示す図である。
【図15】第3実施形態に関連した変形例を示す図である。
【図16】第3実施形態に関連した他の変形例を示す図である。
【図17】上記実施形態の波長分散補償器を適用した光受信装置の一例を示す図である。
【図18】上記実施形態の波長分散補償器を適用した光中継装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図2は、第1実施形態による波長分散補償器の構成を示す図である。
図2において、本実施形態の波長分散補償器は、例えば、入力ポートINおよび出力ポートOUTの間の光路上に、光サーキュレータ1を介して接続された波長分散補償部2と、該波長分散補償部2に対して励起光を供給する励起部(PUMP)3と、該励起部3を制御する制御部4とを備えている。
【0017】
光サーキュレータ1は、例えば、3つのポートを有しており、第1のポートP1が入力ポートINに接続され、第2のポートP2が可変波長分散補償部11に接続され、第3のポートP3が出力ポートOUTに接続されている。この光サーキュレータ1は、各ポート間で光を一方向に伝達する特性を持ち、第1のポートP1に入力される光を第2のポートP2に出力し、第2のポートP2に入力される光を第3のポートP3に出力する。なお、一般的な光カプラおよび光アイソレータを組み合わせることにより、上記光サーキュレータ1と同様の機能を実現することも可能である。
【0018】
波長分散補償部2は、例えば、希土類イオンがドープされた光路21(図1の太線部分)と、該光路21に沿って形成されたグレーティング部22と、該グレーティング部22の温度を調整する補償量可変部としての温度調整回路(TEMP)23とを具備する。
【0019】
光路21は、その一端が光サーキュレータ1の第2のポートP2に接続され、他端が励起部3に接続されている。この光路21は、波長分散補償を行うための信号光の伝搬経路になると共に、該信号光を増幅するための光増幅媒体としても機能する。光路21の形態は、光ファイバのコア部に希土類イオンをドープした光ファイバ型、および、基板に形成された光導波路に希土類イオンをドープした光導波路型のいずれであってもよい。光路21の全長は、グレーティング部22に起因して発生する光損失を少なくとも補償できる利得が、励起部3からの励起光の供給を受けて実現されるように予め設定されている。
【0020】
グレーティング部22は、上記希土類イオンがドープされた光路21の長手方向の一部分または全体に沿って、当該部分の屈折率を周期的に変化させることでグレーティングを形成し、ブラッグ回折を発生させて反射フィルタの機能を持たせたものである。このグレーティング部22は、グレーティング(ブラッグ回折)のピッチを徐々に変えて反射光の戻り時間を波長に応じて変化させることで波長分散を発生させる。なお、ファイバグレーティングを用いた波長分散補償器の動作原理および特性に関しては、例えば「次世代高速通信用分散補償ファイバグレーティング」、フジクラ技報、2004年4月、第106号に詳しく記述されているため、ここでの説明を省略する。
【0021】
温度調整回路23は、入力ポートINに入力される信号光の波長情報に基づいて、グレーティング部22の温度を調整する。この温度調整回路23によってグレーティング部22の温度が変化してグレーティングのピッチが変わることで、グレーティング部22における波長分散補償量が可変となる。なお、ここではグレーティング部22の温度調整により可変の波長分散補償を実現する一例を示したが、温度調整に代えて、若しくは温度調整と並行して、グレーティングが形成されている光路部分に応力を加えることにより、波長分散補償量を変化させるようにしてもよい。
【0022】
図3および図4は、上記波長分散補償部2の光路21とグレーティング部22の具体的な構成を示した図である。図3は、光ファイバ型の構成例であり、上段が第1実施形態の波長分散補償部2に対応し、下段が従来のFBGを用いた波長分散補償器に対応している。また、図4は、光導波路型の構成例である。
【0023】
図3に示す光ファイバ型の構成例について、まず、従来のFBGを用いた波長分散補償器の構成(下段)は、シングルモードファイバ(Single Mode Fiber:SMF)を利用し、そのコア部の長手方向に沿って、波長分散補償の対象となり得る信号光の波長に対応した所要のピッチでグレーティングを形成したものが一般的である。この従来の波長分散補償器に利用されるSMFのコア径は、通常10μmである。
【0024】
これに対して本実施形態における波長分散補償部2(上段)は、上記SMFのコア径よりも小さなコア径を有する光ファイバを用い、そのコア部に希土類イオンをドープすることにより、好ましい光増幅特性が得られるようにしている。具体的には、例えば、SMFのコア径のおよそ半分の5μm前後のコア径を有する光ファイバを使用し、そのコア部にエルビウムイオンを高濃度(例えば、1000ppm以上)でドープすることで、コア部に光増幅媒体としての機能を持たせることが可能である。コア径の小さい光ファイバを用いる理由は、光ファイバの中心部分にドープされた希土類イオンに対して、信号光よりも波長の短い励起光を効率良くオーバーラップさせるためである。図3の上段右側は、光ファイバの断面方向についての励起光の強度分布を例示しており、励起光がコア部に集中していることが分かる。これにより、所望の利得を短い光路長で実現可能にしている。そして、上記希土類イオンがドープされたコア部の長手方向に沿って、波長分散補償の対象となり得る信号光の波長に対応した所要ピッチでグレーティング部22を形成することにより、従来の波長分散補償器と同様な波長分散補償機能を実現している。つまり、図3上段に示した波長分散補償部2は、光増幅媒体としての機能と波長分散補償器としての機能とを兼ね備えており、両機能を共通の構成により実現することで省スペース化を図っている。
【0025】
図4に示す光導波路型の構成例は、一般的な光導波路基板を利用し、その光導波路21’に希土類イオンをドープすることで光増幅媒体としている。そして、光導波路21’の長手方向に沿って、波長分散補償の対象となり得る信号光の波長に対応した所要ピッチでグレーティング部22を形成することにより波長分散補償機能を実現している。光導波路型の光増幅媒体については、濃度消光が殆ど発生しないため、希土類イオンをより高濃度でドープすることが可能である。希土類イオンのドープ濃度が高くなれば、所要の利得を実現する光導波路長が短くなる。したがって、光導波路型の構成を適用することにより、前述した光ファイバ型の構成例と比べて、より省スペースの波長分散補償部2を実現することが可能である。
【0026】
励起部3(図2)は、上記波長分散補償部2の光路21内にドープされた希土類イオンを励起可能な波長を有する励起光を発生し、該励起光を光路21の他端(光サーキュレータとの接続端とは反対側の端部)に直接与える。この励起部3は、例えば図5に示すように、励起光源31および波長固定手段32を備えるようにするのが好ましい。波長固定手段32は、励起光源31から出力される励起光の波長とスペクトル幅を、波長分散補償部2の周期的に繰り返される透過帯域に対応させて固定化するものである。
【0027】
一般的に、希土類イオンの励起に用いられる励起光源は多モード発振であり、該励起光源から出力される励起光のスペクトル幅は5〜10nm程度である。この励起光のスペクトル幅は、信号光のスペクトル幅として想定される1nm以下と比べると広い。波長分散補償部2は、前述したようにグレーティングを用いた共振器構造になっており、波長に対して透過損失が周期的に変化する特性を有している。前記透過損失は、波長分散補償部2の一方の端部に入力される光に対して、波長分散補償部2の他方の端部から出力される当該光がどれだけ損失を受けているかを表す。すなわち、波長分散補償部2の一方の端部に入力される波長λの光の入力パワーをPin(λ)とし、波長分散補償部2の他方の端部から出力される当該光の出力パワーをPout(λ)とすると、波長分散補償部2の透過損失は、Pin(λ)−Pout(λ)で定義される。この波長分散補償部2の波長λの光に対する透過損失は、基本的に、グレーティング部22の波長λの光に対する反射率に応じた値となるので、透過損失を反射率に置き換えて考えてもよい。
【0028】
前述したように波長分散補償部2は、光路21の途中で信号光を反射し、該反射光の戻り時間を波長に応じて異ならせることにより波長分散補償を行う構成であるので、波長分散の補償帯域とグレーティング部22の反射帯域とが同等となるように設計が行われる。このため、グレーティング部22の周期的に繰り返される反射帯域の幅は、信号光のスペクトル幅(≦1nm)に近い狭い帯域幅になる。このグレーティング部22の周期的な反射波長特性は、信号光の波長帯域付近だけでなく、励起光の波長帯域付近にも続いている。したがって、図6上段に示すように、スペクトル幅の広い励起光は、グレーティング部22の周期的な反射波長特性により、スペクトル成分の一部が光路21の途中で反射されることになる。つまり、グレーティング部22の反射率が大きい帯域にある励起光のスペクトル成分は光路21の途中までしか伝搬しないので、希土類イオンの励起に寄与する励起光のエネルギーが減少してしまう。上記の内容を前述した波長分散補償部2の透過損失で言い換えると、透過損失が大きい帯域にある励起光のスペクトル成分は、光路21を一端から他端に透過することが困難であるので、励起効率の低下を招いてしまう。
【0029】
そこで、上記図5に示した励起部3の好ましい構成例では、波長固定手段32により、波長分散補償部2の透過損失(または、グレーティング部22の反射率)が小さい帯域を選択して、励起光源31から出力される励起光の波長とスペクトル幅を固定化している。これにより、図6下段に示すように、励起光のスペクトル幅は、信号光のスペクトル幅と同程度となり、波長分散補償部2の一つの透過帯域の幅と同等になるので、波長分散補償部2の光路21上での励起光エネルギーの減少が回避される。よって、光路21にドープされた希土類イオンを効率的に励起することができるようになる。
【0030】
なお、一般的な希土類ドープファイバを用いた光増幅器では、光増幅に寄与する希土類イオンが反転分布を形成するにあたり、励起準位の幅が広いため、スペクトル幅の広い励起光を使用した方が好ましい増幅特性を得ることができる。このため、上記のように励起光のスペクトル幅を信号光のスペクトル幅と同等まで狭くする必要性は、通常の使用においては生じない。
【0031】
図7は、上記図5に示した励起部3の構成例を具体化したものである。図7上段の具体例は、一般的な励起光源(LD)33の出力側のファイバに、特定の波長だけを比較的低い反射率で反射するファイバグレーティング34を形成し、該ファイバグレーティング34と励起光源33の後方チップ端面33Aとの間で共振器構造をとっている。ファイバグレーティング34の反射波長を、波長分散補償部2の少なくとも1つの透過帯域の中心波長に一致するように設定しておくことにより、ファブリペローの原理に従って、波長の固定された狭帯域の励起光が励起部3から出力されるようになる。また、図7下段の具体例は、分布帰還型レーザー(distributed feedback laser)35を励起光源として適用している。分布帰還型レーザーは、信号光の光源として一般的に利用されており、スペクトル幅の狭い固定波長の光を発生することが可能である。
【0032】
制御部4(図2)は、例えば、入力ポートINから光サーキュレータ1を介して波長分散補償部2に入力される信号光のパワーをモニタするための光分岐器41Aおよび入力モニタ(MON)42Aと、波長分散補償部2から光サーキュレータ1を介して出力ポートOUTに出力される信号光のパワーをモニタするための光分岐器41Bおよび出力モニタ(MON)42Bと、入力モニタ42Aおよび出力モニタ42Bの各モニタ結果を基に、励起部3を制御する制御回路(CONT)43と、を備えている。制御回路43は、出力モニタ42Bのモニタ結果を基に出力光パワーを判断し、その出力光パワーが予め設定したレベルで一定となるように、励起部3から波長分散補償部2に供給される励起光のパワーをフィードバック制御する。また、制御回路43は、入力モニタ42Aのモニタ結果を基に入力光の異常を判断して、励起部3のシャットダウン制御などを行う。
【0033】
次に、第1実施形態の動作について説明する。
上記のような構成の波長分散補償器では、入力ポートINに入力された信号光が、光サーキュレータ1の第1のポートP1から第2のポートP2を通って、波長分散補償部2の希土類イオンがドープされた光路2の一端に与えられる。なお、入力される信号光は、単一波長の信号光であっても、所定の間隔で波長配置された複数の信号光を含むWDM光であってもよい。入力される信号光の一部は、入力ポートINおよび光サーキュレータ1の間に配置された光分岐器41Aで分岐され、該分岐光のパワーが入力モニタ42Aでモニタされて、そのモニタ結果が制御回路43に伝えられる。制御回路43では、入力モニタ42Aのモニタ結果を基に信号光の入力状態が判断され、異常が発生していなければ、励起部3が駆動状態にされる。励起部3から出力される励起光は、波長分散補償部2の光路21に対して、信号光の入力端とは反対側の端部より供給される。これにより、光路21の内部の希土類イオンが励起状態となる。また、波長分散補償部2の温度調整回路23では、外部等から与えられる波長情報を基に、入力される信号光に対する波長分散補償量が判断され、その波長分散補償量が実現されるようにグレーティング部22の温度調整が行われる。
【0034】
波長分散補償部2の光路21の一端に入力した信号光は、励起された希土類イオンの誘導放出作用により増幅されながら光路2を伝搬し、グレーティング部22が形成されている部分に到達すると、波長に応じた位置で反射されて伝搬方向が反転される。この反射光も、希土類イオンの誘導放出作用により増幅されることになり、光路2を光サーキュレータ1に向けて伝搬する。信号光が波長分散補償部2内を往復して光サーキュレータ1の第2のポートP2に戻されることにより、該信号光の波長分散補償が行われると同時に、グレーティング部22に起因して発生する光損失が往路および復路に亘る光増幅によって効率的に補償される。
【0035】
光サーキュレータ1の第2のポートP2に戻された信号光は、光サーキュレータ1の第3のポートP3を通って出力ポートOUTより外部に出力される。このとき、光サーキュレータ1および出力ポートOUTの間に配置された光分岐器41Bで信号光の一部が分岐され、該分岐光のパワーが出力モニタ42Bでモニタされて、そのモニタ結果が制御回路43に伝えられる。制御回路43では、出力モニタ42Bのモニタ結果を基に、出力ポートOUTから出力される信号光のパワーが判断され、該出力光パワーが予め設定したレベルで一定となるように、励起部3の駆動状態をフィードバック制御する。これにより、波長分散補償された信号光が一定のパワーで出力ポートOUTより外部に出力されるようになる。
【0036】
上記のように第1実施形態の波長分散補償器によれば、希土類イオンをドープした光路21に沿ってグレーティング部22を形成し、該光路21に励起光を供給して、信号光の波長分散補償とその際に生じる光損失の補償とを共通の波長分散補償部2で行うようにしたことで、効率的な省スペース化が可能になる。これに加えて、グレーティング部22の形成された光路21を光増幅媒体としたことにより、励起部3から出力される励起光を、信号光が伝搬する光路21に光合波器等を介すことなく直接供給することができるので、光路21上で信号光が受ける光損失を低減することが可能になる。
【0037】
上記光損失の低減効果について図8を参照しながら詳しく説明する。図8に例示した構成は、上述の図1に示した従来の構成について、FBGを用いた波長分散補償器102と光サーキュレータ101の間に別途光ファイバ増幅器110を設けることにより、波長分散補償器102の挿入損失の補償を行うことを想定ものである。上記第1実施形態に対応させて言い換えると、グレーティング部の形成された光路を光増幅媒体とはせずに、波長分散補償の機能と光増幅(挿入損失の補償)の機能とを別個にした構成を想定している。この図8の構成では、光ファイバ増幅器110の光増幅媒体111に対して励起光源112から出力される励起光を供給するために、光サーキュレータ101と波長分散補償器102の間の光路上に光合波器113を挿入しなければならない。波長分散補償器102に対して入出力される信号光は、この光合波器113を通過するので、光合波器113の挿入損失を往復で2回受けることになる。
【0038】
一方、第1実施形態の構成(図2)では、グレーティング部22の形成された光路21が光増幅媒体となっているので、励起部3から出力される励起光を光路21の信号光入出力端とは反対側の端部より直接供給することができる。つまり、信号光の伝搬経路上に励起光を供給するための光合波器を必要としない。このため、図8の構成に比べて信号光が受ける光損失を減少させることができ、信号光のSN劣化やNF劣化を抑えることが可能になる。
【0039】
また、第1実施形態の波長分散補償器によれば、波長分散補償量を可変にするために、温度調整回路23によりグレーティング部22の温度調整を行っているが、これは同時に、希土類イオンをドープした光路21の温度の変化を抑えることにも寄与する。希土類イオンをドープした光増幅媒体で得られる利得は温度に依存して変動するので、温度調整回路23により光路21の温度が安定化されることにより、信号光の増幅特性が向上するという効果も得られる。
【0040】
さらに、波長分散補償部2の周期的な透過損失の波長特性に対応させて、励起部3から出力される励起光の波長とスペクトル幅を固定化すれば、励起効率を一層高めることもできる。
加えて、波長分散補償部2に光導波路型の構成を適用した場合には、希土類イオンを高濃度でドープすることができるので、所要の利得を実現するのに必要な導波路長が短くなり、より一層の省スペース化が可能になる。
【0041】
なお、上記第1実施形態では、励起部3から出力される励起光を波長分散補償部2の光路21に直接供給するようにしたが、本発明における希土類イオンをドープした光路への励起光の供給方法は上記に限定されない。例えば図9に示すように、光路21の信号光入出力端とは反対側の端部に光合波器3Aを設け、該光合波器3Aを介して、励起部3から出力される励起光を光路21に供給するようにしてもよい。この場合、信号光はグレーティング部22で反射されて光サーキュレータ1側に戻されるので、光合波器3Aの挿入損失を信号光が受けることはない。光合波器3Aに接続されている光終端器5は省略することも可能である。また、例えば図10に示すように、光路21の信号光入出力端に光合波器3A’を設け、該光合波器3A’を介して、励起部3から出力される励起光を光路21に供給するようにしてもよい。この場合、信号光が光合波器3A’を通過するので、光合波器3A’の挿入損失を受けて信号光が減衰することにはなるが、それ以外の省スペース化などの効果は第1実施形態の場合と基本的に同様である。図10の構成では、残留励起光が光路21の他端より放出される可能性があるので、光終端器5を光路21の他端に接続しておくのが好ましい。さらに、例えば図11に示すように、図9および図10を組み合わせて、光路21の両端から励起光を供給することも勿論可能である。
【0042】
また、上記第1実施形態では、希土類イオンをドープした光路21に沿ってグレーティング部22を一箇所に形成する構成を示したが、例えば図12に示すように、グレーティング部を複数の場所に分けて形成するようにしてもよい。グレーティング部の数および光路21上での配置は、光路21の長さやグレーティングの形成のしやすさなどを考慮して適宜に決めることができる。なお、図の例では、各グレーティング部22,22にそれぞれ対応させて温度調整回路23,23を個別に設けているが、共通の温度調整回路により各グレーティング部22,22の温度調整を行うようにしても構わない。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図13は、第2実施形態による波長分散補償器の構成を示す図である。
図13において、本実施形態の波長分散補償器は、前述の図2に示した第1実施形態の構成について、光路21の一端(光サーキュレータとの接続端)付近に、励起光反射部6を追加している。この励起光反射部6は、励起光を反射すると共に、信号光を透過するフィルタ特性を備えている。励起光反射部6の具体的な構成としては、例えば、励起光の波長λpに対応した所要のピッチを有するグレーティングとすることにより、グレーティング部22と同一の工程で励起光反射部6を形成できるようになるので好ましい。ただし、励起光反射部6の構成がグレーティングに限定されることを意味するものではない。
【0044】
上記のような構成の波長分散補償器によれば、前述した第1実施形態の場合と同様の作用効果が得られるのに加えて、希土類イオンの励起に寄与しなかった残留励起光が励起光反射部6で反射されて再利用されるようになるため、励起効率の更なる向上を図ることが可能になる。
【0045】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
上述した第1,2実施形態では、波長分散補償部に対する信号光の入出力を、3つのポートを有する光サーキュレータを用いて行うようにした。第4実施形態では、光サーキュレータのポート数を増やして光路長を伸長することによって、より高い性能の波長分散補償を実現可能にする応用例について説明する。
【0046】
図14は、第3実施形態による波長分散補償器の構成を示す図である。
図14において、本実施形態の波長分散補償器は、例えば、4つのポートを有する光サーキュレータ1’を用いており、その第1のポートP1には、入力モニタ用の光分岐器42Aを介して入力ポートINが接続されている。また、第2のポートP2には、第1実施形態と同様の波長分散補償部2が接続され、第3のポートP3には、光増幅機能を有していない波長分散補償部7が接続されている。さらに、第4のポートP4には、出力モニタ用の光分岐器42Bを介して出力ポートOUTが接続されている。なお、ここでは4ポートの光サーキュレータを用いた構成例について説明するが、5ポート以上の光サーキュレータについても同様にして応用することが可能である。
【0047】
波長分散補償部2の希土類イオンがドープされた光路21には、第1実施形態と同様にして、励起部3から出力される励起光が供給されており、信号光の波長分散補償と光増幅が同時に行われる。また、制御部4による出力光パワーの一定制御も第1実施形態と同様に実施されている。
【0048】
光サーキュレータ1の第3のポートP3に接続された波長分散補償部7は、上述の図1に示した従来のFBGを用いた波長分散補償器102と基本的に同様のものであり、希土類イオンをドープしていない光路71の長手方向に沿ってグレーティング部72が形成されている。また、温度調整回路(TEMP)73によるグレーティング部72の温度調整によって、波長分散補償量が可変とされている。
【0049】
上記のような構成の波長分散補償器では、第1実施形態の場合と同様にして、入力ポートINに入力される信号光が、光サーキュレータ1’の第1のポートP1から第2のポートP2を通って波長分散補償部2に与えられ、波長分散補償部2の光路21を往復する。波長分散補償部2から出力される信号光は、さらに、光サーキュレータ1’の第2のポートP2から第3のポートP3を通って波長分散補償部7に与えられ、波長分散補償部7の光路71を往復する。これにより、波長分散補償部2だけでなく波長分散補償部7でも信号光の波長分散補償が行われるようになるので、より広い範囲の波長分散補償が可能になる。また、各波長分散補償部2,7のグレーティング部22,72による挿入損失は、波長分散補償部2の希土類イオンがドープされた光路21における光増幅によって補償される。そして、波長分散補償部7から出力される信号光は、光サーキュレータ1’の第3のポートP3から第4のポートP4を通って出力ポートOUTより外部に出力される。
【0050】
上記のように第3実施形態の波長分散補償器によれば、第1実施形態の場合と同様の効果が得られるのに加えて、4つのポートを有する光サーキュレータ1’を用い、信号光の波長分散補償が行われる光路を伸長したことにより、波長分散補償量の可変範囲を拡大することができ、波長分散補償器の性能を向上させることが可能になる。
【0051】
なお、上記第3実施形態では、2つの波長分散補償部のうちの一方にだけ光増幅機能を持たせた場合を説明したが、例えば図15に示すように、光サーキュレータ1’の第2および第3のポートP2,P3の双方に第1実施形態と同様な波長分散補償部2,2’を接続してもよい。この場合、各波長分散補償部2,2’において光増幅による挿入損失の補償が行われることになる。これにより、波長分散補償器全体でより高い利得を得ることができ、挿入損失の補償範囲を拡大させることが可能になる。
【0052】
さらに、例えば図16に示すように、上記図15の構成において後段の波長分散補償部2’に励起光を供給している励起部3’を省略する応用も可能である。図16の構成では、前段の波長分散補償部2における残留励起光が光サーキュレータ1’を通って後段の波長分散補償部2’に供給される。これにより、各波長分散補償部2,2’での光増幅を共通の励起部3により実現でき、構成の簡略化および省スペース化を図ることが可能になる。
【0053】
次に、上述した第1〜第3実施形態による波長分散補償器を適用した各種装置の実施例について説明する。
図17は、WDM光伝送システムに用いられる光受信装置の一例を示している。
図17に示す光受信装置8は、光プリアンプ81,光分波器82、複数の光受信ユニット83A,83B,83C…およびユニット制御回路84を備える。また、各光受信ユニット83A,83B,83C…は、上述した第1〜第3実施形態のいずれかによる波長分散補償器831および光受信モジュール832を有している。
【0054】
光プリアンプ81では、伝送路を伝搬してきたWDM光が所要のレベルまで一括して増幅されて光分波器82に出力される。光分波器82では、光プリアンプ81からのWDM光が各波長の信号光に分波され、各々の信号光が各光受信ユニット83A,83B,83C…に出力される。各光受信ユニット83A,83B,83C…では、光分波部82からの信号光が波長分散補償器831で波長分散補償された後、該波長分散補償器831から所要パワーで出力される信号光が光受信モジュール832に与えられてデータの再生処理等が行われる。このとき、各光受信ユニット83A,83B,83C…の動作は、外部から通知される波長情報(光受信装置8で受信されるWDM光の波長数や使用波長など)に基づいてユニット制御回路84により制御される。
【0055】
上記のような光受信装置8においては、各光受信ユニット83A,83B,83C…に割り当てられる実装スペースが、装置全体の大きさに制約されることになり、WDM光の波長数が多くなるほど各々の波長に対応した実装スペースは狭くなる。しかし、上述したように各実施形態による波長分散補償器831は、光増幅機能を持たせつつ効率的に省スペース化が図られているので、限られたスペースへの実装が可能である。これにより、40Gb/s以上の超高速な信号光を確実に受信処理できる光受信装置の提供が可能になる。
【0056】
図18は、WDM光伝送システムに用いられる光中継装置の一例を示している。
図18に示す光中継装置9は、2段構成のWDM用光アンプ91,92の段間に、上述した第1〜第3実施形態のいずれかによる波長分散補償器93および利得等化器94を備えている。
【0057】
上記光中継装置9では、前段のWDM用光アンプ91で一括増幅されたWDM光が波長分散補償器93に入力され、波長分散補償器93において、WDM光に含まれる各波長の信号光に対する波長分散補償がまとめて行われる。利得等化器94は、各WDM用光アンプ91,92および波長分散補償器93における利得波長特性をキャンセルして、光中継装置9から出力されるWDM光パワーの波長間偏差を低減する。
【0058】
なお、上記利得等化器94は省略することも可能である。また、システムの受信端において各波長の信号光ごとに高精度の波長分散補償が行われる場合には、光中継装置9における波長分散補償の精度は比較的低くてもよいので、各信号光に対する波長分散補償量を固定とすることも可能である。
【0059】
以上の各実施形態に関して、さらに以下の付記を開示する。
(付記1) 入力ポートおよび出力ポートの間に接続された光サーキュレータと、
希土類イオンがドープされた光路、および、該光路の長手方向の少なくとも一部分に沿ってグレーティングを形成したグレーティング部を有し、前記入力ポートからの信号光が前記光サーキュレータを介して前記光路の一端に入力され、該光路を伝搬する信号光を前記グレーティング部により波長に応じて反射して前記光路の一端に戻すことで前記信号光の波長分散補償を行い、該波長分散補償された信号光を前記光サーキュレータを介して前記出力ポートに出力する波長分散補償部と、
希土類イオンを励起可能な励起光を前記光路に供給する励起部と、
を備えたことを特徴とする波長分散補償器。
【0060】
(付記2) 付記1に記載の波長分散補償器であって、
前記励起部は、励起光源から出力される励起光の波長およびスペクトル幅を、前記波長分散補償部の周期的に繰り返される透過帯域に対応させて固定化する手段を具備することを特徴とする波長分散補償器。
【0061】
(付記3) 付記1または2に記載の波長分散補償器であって、
前記励起部は、前記光路の他端から励起光を供給することを特徴とする波長分散補償器。
【0062】
(付記4) 付記3に記載の波長分散補償器であって、
前記光路の一端付近に、前記光路を伝搬した励起光を反射する励起光反射部を備えたことを特徴とする波長分散補償器。
【0063】
(付記5) 付記1〜4のいずれか1つに記載の波長分散補償器であって、
前記波長分散補償部は、前記グレーティング部のグレーティングピッチを変化させることで波長分散補償量を可変にする補償量可変部を有することを特徴とする波長分散補償器。
【0064】
(付記6) 付記5に記載の波長分散補償器であって、
前記補償量可変部は、前記グレーティング部の温度を調整してグレーティングピッチを変化させることを特徴とする波長分散補償器。
【0065】
(付記7) 付記1に記載の波長分散補償器であって、
前記光路は、シングルモードファイバのコア径よりも小さいコア径を有する光ファイバのコア部に希土類イオンをドープしたものであり、
前記グレーティング部は、前記コア部の長手方向の少なくとも一部分に沿って、波長分散補償の対象となり得る信号光の波長に対応したピッチでグレーティングが形成されていることを特徴とする波長分散補償器。
【0066】
(付記8) 付記1に記載の波長分散補償器であって、
前記光路は、光導波路に希土類イオンをドープしたものであり、
前記グレーティング部は、前記光導波路の長手方向の少なくとも一部分に沿って、波長分散補償の対象となり得る信号光の波長に対応したピッチでグレーティングが形成されていることを特徴とする波長分散補償器。
【0067】
(付記9) 付記1に記載の波長分散補償器であって、
前記光路は、希土類イオンのドープ濃度が1000ppm以上であることを特徴とする波長分散補償器。
【0068】
(付記10) 付記1に記載の波長分散補償器であって、
前記波長分散補償部から前記光サーキュレータを介して前記出力ポートに出力される信号光のパワーをモニタし、該パワーが予め設定した一定のレベルとなるように、前記励起部から前記光路に供給される励起光のパワーを制御する制御部を備えたことを特徴とする波長分散補償器。
【0069】
(付記11) 付記1に記載の波長分散補償器であって、
前記光サーキュレータは、4つ以上のポートを有し、前記入力ポートが接続されるポートの隣のポートに前記波長分散補償部が接続され、該波長分散補償部が接続されるポートと前記出力ポートが接続されるポートとの間に位置する残りのポートには、グレーティングを用いて信号光の波長分散補償を行う別の光路が接続されることを特徴とする波長分散補償器。
【0070】
(付記12) 付記11に記載の波長分散補償器であって、
前記光サーキュレータの残りのポートに接続される別の光路にも希土類イオンがドープされていることを特徴とする波長分散補償器。
【0071】
(付記13) 伝送路を伝搬した波長多重光を各波長の信号光に分波して受信する光受信装置であって、
付記1〜12のいずれか1つに記載の波長分散補償器が、分波後の単一波長の信号光が伝搬する各光路上に配置されていることを特徴とする光受信装置。
【0072】
(付記14) 波長多重光が伝搬する伝送路上に配置される光中継装置であって、
付記1〜12のいずれか1つに記載の波長分散補償器が、前段および後段の波長多重用光増幅器の段間に設けられていることを特徴とする光中継装置。
【符号の説明】
【0073】
1,1’…光サーキュレータ
2,7…波長分散補償部
21,71…光路
22,22,22,72…グレーティング部
23,23,23,73…温度調整回路
3,3’…励起部
3A,3A’…光合波器
31,33…励起光源
32…波長固定手段
34…ファイバグレーティング
35…分布帰還型レーザー
4…制御部
41A,41B…光分岐器
42A…入力モニタ
42B…出力モニタ
43…制御回路
5…光終端器
6…励起光反射部
8…光受信装置
81…光プリアンプ
82…光分波器
83A,83B,83C…光受信ユニット
831…波長分散補償器
832…光受信モジュール
84…ユニット制御回路
9…光中継装置
91,92…WDM用光アンプ
93…波長分散補償器
94…利得等化器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力ポートおよび出力ポートの間に接続された光サーキュレータと、
希土類イオンがドープされた光路、および、該光路の長手方向の少なくとも一部分に沿ってグレーティングを形成したグレーティング部を有し、前記入力ポートからの信号光が前記光サーキュレータを介して前記光路の一端に入力され、該光路を伝搬する信号光を前記グレーティング部により波長に応じて反射して前記光路の一端に戻すことで前記信号光の波長分散補償を行い、該波長分散補償された信号光を前記光サーキュレータを介して前記出力ポートに出力する波長分散補償部と、
希土類イオンを励起可能な励起光を前記光路に供給する励起部と、
を備えたことを特徴とする波長分散補償器。
【請求項2】
請求項1に記載の波長分散補償器であって、
前記励起部は、励起光源から出力される励起光の波長およびスペクトル幅を、前記波長分散補償部の周期的に繰り返される透過帯域に対応させて固定化する手段を具備することを特徴とする波長分散補償器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の波長分散補償器であって、
前記励起部は、前記光路の他端から励起光を供給することを特徴とする波長分散補償器。
【請求項4】
請求項3に記載の波長分散補償器であって、
前記光路の一端付近に、前記光路を伝搬した励起光を反射する励起光反射部を備えたことを特徴とする波長分散補償器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の波長分散補償器であって、
前記波長分散補償部は、前記グレーティング部のグレーティングピッチを変化させることで波長分散補償量を可変にする補償量可変部を有することを特徴とする波長分散補償器。
【請求項6】
請求項5に記載の波長分散補償器であって、
前記補償量可変部は、前記グレーティング部の温度を調整してグレーティングピッチを変化させることを特徴とする波長分散補償器。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の波長分散補償器であって、
前記光路は、シングルモードファイバのコア径よりも小さいコア径を有する光ファイバのコア部に希土類イオンをドープしたものであり、
前記グレーティング部は、前記コア部の長手方向の少なくとも一部分に沿って、波長分散補償の対象となり得る信号光の波長に対応したピッチでグレーティングが形成されていることを特徴とする波長分散補償器。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の波長分散補償器であって、
前記光路は、光導波路に希土類イオンをドープしたものであり、
前記グレーティング部は、前記光導波路の長手方向の少なくとも一部分に沿って、波長分散補償の対象となり得る信号光の波長に対応したピッチでグレーティングが形成されていることを特徴とする波長分散補償器。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の波長分散補償器であって、
前記波長分散補償部から前記光サーキュレータを介して前記出力ポートに出力される信号光のパワーをモニタし、該パワーが予め設定した一定のレベルとなるように、前記励起部から前記光路に供給される励起光のパワーを制御する制御部を備えたことを特徴とする波長分散補償器。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の波長分散補償器であって、
前記光サーキュレータは、4つ以上のポートを有し、前記入力ポートが接続されるポートの隣のポートに前記波長分散補償部が接続され、該波長分散補償部が接続されるポートと前記出力ポートが接続されるポートとの間に位置する残りのポートには、グレーティングを用いて信号光の波長分散補償を行う別の光路が接続されることを特徴とする波長分散補償器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−256527(P2010−256527A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105075(P2009−105075)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】