説明

注射可能なフォスファチジルコリン調製物

本発明の製剤は、フォスファチジルコリンと、胆汁酸または胆汁酸塩と増粘化剤とからなり、局所化された脂肪の沈着の非外科的除去のための利用、または脂肪の沈着の減少のためのかかる製剤を内部−脂肪パッド注射する方法による利用が記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘稠で注射可能なフォスファチジルコリン調製物、局所化された脂肪の組織(脂肪)沈着の減少または除去のためのそれらの利用、および局所化された脂肪の沈着の非外科的除去または減少のためのかかる調製物の投与のための内部−脂肪パッド注射(intra−fat pad injection)ならびにインプラント方法の関する。
【背景技術】
【0002】
Lipostabil(登録商標)静脈注射溶液(93% 3−sn−フォスファチジルコリン含有)は脂質アテローム、高コレステロール血症、脂肪塞栓症および動脈壁へのプラーク固着の治療のために開発された注射可能な組成物である。このものはLipostabil(登録商標)Ni.V.(Rote Liste,March 2003)として上市され、そしてフォスフォリピド、胆汁酸、DL−アルファ−トコフェロール、エタノールおよび水を含むものとして認識され、脂肪塞栓症の予防および治療のために承認されたものである。Harper's Bazaar,October 2001、137頁の記事中にLipostabil(登録商標)溶液が皮下脂肪の沈着を減少させるのに用いうることの報告がなされている。しかしながらこれらの報告中に用いられたLipostabil(登録商標)は静脈注射にのみ用いるために開発されたものであって皮下脂肪沈着の減少のために開発されたものではない。
【0003】
さらにまた、体重超過の人々で目の下や、お腹やまたはヒップのしわに見られるような脂肪パッドについて、容貌の審美的な改良について処置をうけた人々がLipostabil(登録商標)Ni.V.の皮下注射を受けたことがあったことが報告されている(Patricia Guedes Rittes,The Use of Phosphatidylcholine for Correction of Lower Lid Bulging Due to Prominent Fat Pads,Dermatol.Surg.2001;27;391−392)。
【0004】
また種々の用途のための水性のフォスフォリピド リポソーム系が知られている。これらの系は例えば化粧品分野や医薬製品の製造のために用いられている。これらの系はまたリポソームと呼ばれる球形の小胞を有することで特徴づけられるものである。このリポソームと外部との境界は脂質二重膜で形成され、内部に水性相を含んでいる。少なくとも一つのフォスフォリピド、少なくとも一つの胆汁酸および水からなる水性フォスフォリピド系は、例えば米国特許第6663885号に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、局所化された脂肪を減少させるかまたは除去するための内部−脂肪パッド適用(intra−fat pad application)のために逆の効果を伴うことなく用いられ、またはLipostabil(登録商標)のこのような使用と比較して少なくとも減少した水準の効果の、粘稠な処方物を提供するものである。フォスファチジルコリンと機能的添加物との組成物が調合されて送達され、処置の標的位置において、フォスファチヂルコリンの所望の濃度を維持するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の組成物は、フォスファチジルコリン約0.1から約25質量%(w/w)を好ましくは水溶液中に含有する。Lipostabil(登録商標)溶液はフォスファチジ
ルコリン約6質量%(w/w)を水溶液中に含有する。本発明の一つの実施態様によれば粘度がLipostabil(登録商標)溶液のそれよりも大きいフォスファチジルコリン組成物が提供される。
【0007】
本発明の他の実施態様によれば、水溶性の増粘剤または粘稠な溶液を組成物に配合することにより、Lipostabil(登録商標)溶液の粘度よりも大きい粘度を有するフォスファチジルコリン組成物が提供される。
【0008】
本発明の更なる実施態様によれば、本発明の組成物の内部−脂肪パッドの投与を含む、患者における皮下脂肪沈着の減少方法が提供される。
【0009】
本発明の組成物は、内部−脂肪パッド投与に好適した処方物中のフォスファチジルコリンよりなる。すなわち、この組成物は皮膚を通して直接に標的の脂肪パッドに注射されうる。好適な組成物は水溶液を含むが、非水性組成物もまた使用することができる。
【0010】
Lipostabil(登録商標)製品に含まれるフォスファチジルコリンは大豆から得られるが、他のフォスファチジルコリン原料も利用可能である。これらには卵黄から得られるフォスファチジルコリン、および1−パルミトイルー2−オレオイル−sn−グリセロ−3−フォスフォコリンのような合成フォスファチジルコリンが含まれる。フォスファチジルコリンの活性は、それが合成品であるかまたは大豆もしくは卵黄からえられたものであるかによって有意に異なるとは予想されない。本発明の組成物には天然のまたは人工の如何なる形のフォスファチジルコリンも含まれる。
【0011】
Lipostabil(登録商標)製品はまた、よく知られた一つの胆汁酸であるデオキシコール酸を含む。本発明の組成物はデオキシコール酸のような胆汁酸をフォスファチジルコリンと組み合わせて含有する。他の胆汁酸にはコール酸およびリソコール酸(lithocholic acid)を含む。胆汁酸はまた塩として提供されてもよい。よく知られた胆汁酸塩にはタウロコール酸ナトリウム(Na taurocholate)、タウロケノデオキシコ−ル酸ナトリウム(Na taurochenodeoxycholate)、タウロデオキシコール酸ナトリウム(Na taurodeoxycholate)、およびグリコデオキシコ−レ−トを含む。一つの実施態様において、胆汁酸に対するフォスファチジルコリンの比率は,約1から約4重量/重量(w/w)である。一つの特定の実施態様において、用いられた胆汁酸はデオキシコール酸である。本発明の特定の実施態様では、デオキシコール酸に対するフォスファチジルコリンの比率は、約2.2から1重量/重量(w/w)で、これはLipostabil(登録商標)溶液中のこれらの組成物とほぼ同じ比率である。
【0012】
組成物はまた必要によって製薬上の添加剤を含み得る。下記する実施例においては組成物は保存剤としてベンジルアルコールを含む。これらはまた浸透圧調節剤として塩化ナトリウムを含む。水酸化ナトリウムは患者に使用するための好ましいレベルにpHを調節するために加えられる。
【0013】
エバンスブル−染料溶液(滅菌したPBS中の1%溶液)をB6.V−Lepobマウスの腹部脂肪パッドに注射後にその分布を観測するために注射した。注射の直ぐ後に青色の溶液が腹部の全領域で認められた。処置(注射)部位におけるフォスファチジルコリンの接触時間を増加させるためには、より粘稠な溶液を配合することが望ましい。このことは溶液中のフォスファチジルコリンの濃度を増大させるか、増粘添加剤を配合するか、または粘稠な溶液を用いることによって達成することができる。このような増粘添加剤には、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロースの別名またはHPMC)、メチルセルロース、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンが含まれるが、これらには限定されない。また粘稠な溶液にはミネラルオイルまたはポリエチレング
リコールが含まれるがこれらには限定されない。
【0014】
脂肪パッドへの直接注射の別法として、本発明の組成物はin situゲルインプランテーションを用いる標的化送達(targeted delivery)によって投与することができる。
【0015】
他の実施態様は、ポリマー担体例えばポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド);ポリ(ラクチド−コ−グリコリド);ポリ(DL−ラクチド);ポリ(L−ラクチド);ポリ(グリコリド);ポり(ε−カプロラクトン);ポリ(DL−ラクチド−コ−カプロラクトン)であるがこれらに限定されないもの、に被包されているフォスファチジルコリンを投与することである。
【0016】
市販のLipostabil(登録商標)製品は、静脈に適用して、導管にゆるく接着しているかまたは血流に分散している脂肪物質を可溶化するように設計されたものである。この製品の投与量は5mL中のフォスファチジルコリン250mgよりなるものである。PPC−Pは大豆から得られる(3−snフォsファチジル)コリンである。局所化された脂肪の沈着に対するよりよい効率のためにはより大きい可溶化力が要求されるものと信じられている。フォスファチジルコリンのより高い濃度(25.0%w/wまでの)の注射可能処方物を仕上げることができ、いくつかのプロトタイプの実例がセクション4において記述されている。
【0017】
本発明の組成物は、脂肪腫(lipoma)、目の突出(eye bulging)、黄色腫症(xanthelamas)、バッファローネック(buffalo neck)(またバッファローハンプ(buffalo−hump)として知られ、首の脂肪の再分散によって患者に起こるものである)、他にDercum's diseaseによって起こる脂肪沈着のような脂肪器官のまれな病気およびLaunois−Cleret 症候群、であるがこれらにかぎられないものの、多くの障害の治療に用いることができる。
【0018】
局所化された脂肪の沈着、ことにDercum's diseaseおよびbuffalo−humpのような病気に関連するものは痛くそして不愉快をもたらす。このような状況は患者に脂肪吸引またはデルモリペクトミー(dermolipectomy)のような切除処置を受けることに向かわせる。本発明の組成物はかかる皮下脂肪を安全で効率的に処置する方法に用いるために設計され処方物である。この本発明の用量が最適化された処方物は送達するのに適切な粘度を有しそしてこの脂肪可溶化組成物を処置する標的化された場所に閉じ込める。このことが正確に計算された一貫性のあるそして制御された治療方法を提供するのである。加えてインプラント可能な処方物は、組成物を或る期間、たとえば数週間にわたり放出するので、患者訪問回数および/または投与回数を減少させることができる。
【実施例】
【0019】
次の実施例はフォスファチジルコリンの注射可能な製剤またはインプラント可能な製剤として使用するのに有用な処方物を示す。これらの実施例に大豆フォスファチジルコリンを用いたが、他の生物由来のまたは化学合成源からのフォスファチジルコリンも使用することができる。フォスファチジルコリンの溶液粘度および濃度は、所望される処理部位における局所化されたそして持続的脂肪減少効果または除去効果の改善を達成するために変更される。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
粘度測定は、ブルックフィールド粘度計(Digital viscometer model No.DV−II)でスピンドル2を60RPMで2分間用いておこなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.1質量%から約25質量%のフォスファチジルコリン、胆汁酸または胆汁酸塩、および増粘化剤を包含し、ここで胆汁酸または胆汁酸塩に対するフォスファチジルコリンの比率は約1w/wから4w/wの間にある、皮下脂肪の沈着を減少させるのに好適な水性組成物。
【請求項2】
増粘化剤がハイプロメロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリドンの一つまたはそれ以上である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
増粘化剤が粘稠な溶液である請求項1記載の組成物。
【請求項4】
胆汁酸または胆汁酸塩は、デオキシコール酸、コール酸、リトコール酸、Naタウロコーレート、Naタウロケノデオキシコーレート、Naタウロデオキシコーレートまたはグリコデオキシコーレートである請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
フォスファチジルコリンが合成によってかまたは天然源から得られるものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
フォスファチジルコリンが大豆または卵黄から得られるものである請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
フォスファチジルコリンが1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−フォスフォコリンである請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
組成物が少なくとも約6%w/wのフォスファチジルコリンを含有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物の投与を含む皮下脂肪の沈着を減少させる方法。
【請求項10】
投与が内部−脂肪パッド注射によるものである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
投与がin situゲル インプラントである請求項9に記載の方法。
【請求項12】
皮下脂肪沈着を減少させる投与用医薬の製造のための請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
投与が内部−脂肪パッド注射である請求項12の使用。
【請求項14】
投与がin situゲル インプラントである請求項12の使用。

【公表番号】特表2007−515494(P2007−515494A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547426(P2006−547426)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/043484
【国際公開番号】WO2005/063205
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(500137976)アベンティス・ファーマスーティカルズ・インコーポレイテツド (76)
【Fターム(参考)】