説明

洗浄液供給システムおよび洗浄システム

【課題】洗浄液供給システムで生成する過硫酸濃度を迅速に測定して洗浄側に供給する溶液の過硫酸濃度の制御を可能にする。
【解決手段】硫酸溶液の電解反応により、過硫酸イオンを生成する電解反応装置と、電解反応装置で生成した過硫酸イオンを含む硫酸溶液を洗浄液の一部又は全部として被洗浄材を洗浄する洗浄側に供給可能にし、洗浄側から返流される洗浄液として使用した硫酸溶液を受け、硫酸溶液の一部又は全部を電解反応装置に供給する循環ラインと、硫酸溶液を貯留して電解反応装置との間で硫酸溶液を循環し、10〜90℃に調整された硫酸溶液が返流側の循環ラインから導入されるとともに、貯留槽内の硫酸溶液が送出側の循環ラインに送られて100〜170℃に加熱されて洗浄側に供給される貯留槽と、貯留槽内の硫酸溶液中の過硫酸濃度を測定する過硫酸濃度測定装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウエハなどに付着した汚染物などを剥離効果が高い過硫酸および硫酸を含む溶液で洗浄剥離する際に、硫酸溶液を繰り返し利用しつつ過硫酸を再生して洗浄に供することが可能な洗浄液供給システムおよび洗浄システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超LSI製造工程におけるウエハ洗浄技術は、レジスト残渣、微粒子、金属および自然酸化膜などを剥離洗浄するプロセスでは、濃硫酸と過酸化水素の混合溶液(SPM)あるいは、濃硫酸にオゾンガスを吹き込んだ溶液(SOM)が多用されている。過酸化水素もしくはオゾンによって硫酸が酸化されてできる過酸化物が洗浄に役立つことが分かっている。SPMには、過酸化水素が分解して減少する分を補うための過酸化水素水の補給が必要である。過酸化水素水中の水で希釈されるため、液組成を一定に維持することが難しく、所定時間もしくは規定の処理バッチ数毎に液が廃棄され、更新されている。このため多量の薬品を保管しなければならないという問題がある。
【0003】
一方のSOMでは液が希釈されることがなく、一般的にSPMより液更新サイクルを長くできるものの、オゾンによる過酸化物の生成効率が低く、洗浄効果においてはSPMよりやや劣る。また、これらの方法では、生成する過酸化物の濃度には限界があり、これが洗浄効果の限界につながっている。
本発明者らは、洗浄効果の高い過硫酸を連続して、しかも多量に供給し続ける技術を発明し提案している(特許文献1参照)。すなわち硫酸溶液を電解処理することで過硫酸を連続的に生成して硫酸をリサイクルする洗浄液供給システムを開発し、提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−114880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記で提案した洗浄液供給システムでは、工業的には過硫酸を効率よく生成して、無駄なく電解を行うことが必要である。そのためには、過硫酸濃度について適宜サンプリングして、イオンクロマトグラフィーなどの分析装置などで測定する必要がある。しかし、このような測定方法では、電解反応で製造した過硫酸濃度を知る迄にはかなりの時間を要することになり、稼働状態において適時、好適な条件で操業することは困難であるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、システム内の硫酸溶液中の過硫酸濃度を適時に迅速に測定することを可能にし、よって好適な条件で操業することが可能な洗浄液供給システムおよび洗浄システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の洗浄液供給システムのうち、請求項1記載の発明は、硫酸溶液の電解反応により、該硫酸溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成する電解反応装置と、該電解反応装置で生成した過硫酸イオンを含む硫酸溶液を洗浄液の一部または全部として電子材料基板である被洗浄材を洗浄する洗浄側に供給可能にする洗浄液供給システムにおいて、
前記洗浄側から返流される前記洗浄液として使用した前記硫酸溶液を受け、該硫酸溶液の一部または全部を前記電解反応装置に供給するとともに、前記電解反応装置で電解した硫酸溶液を前記洗浄側に送出する循環ラインと、前記硫酸溶液を貯留して前記電解反応装置との間で前記硫酸溶液を循環する貯留槽と、を備え、
前記貯留槽は、10〜90℃に調整された硫酸溶液が返流側の前記循環ラインから導入されるとともに、該貯留槽内の硫酸溶液が送出側の前記循環ラインに送られて100〜170℃に加熱されて前記洗浄側に供給されるものであり、
前記貯留槽内の硫酸溶液中の過硫酸濃度を測定する過硫酸濃度測定装置を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の洗浄液供給システムの発明は、請求項1記載の発明において、前記洗浄側は、電子材料基板に付着したレジスト残渣などの有機化合物の剥離と該有機化合物の酸化分解を行うものであることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の洗浄液供給システムの発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記過硫酸濃度測定装置は、導電性ダイヤモンド電極を備え、該導電性ダイヤモンド電極が洗浄液供給システム内の前記硫酸溶液と接触するように配置されて該硫酸溶液中の前記過硫酸濃度を測定することができるものであることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の洗浄液供給システムの発明は、請求項3記載の発明において、前記過硫酸濃度測定装置は、前記導電性ダイヤモンド電極を作用極として、電位走査を行った際の電流値の変化を測定するものであることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の洗浄液供給システムの発明は、請求項3記載の発明において、前記過硫酸濃度測定装置は、前記導電性ダイヤモンド電極を作用極として、ある一定の電位に対する電流値の変化を測定するものであることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の洗浄液供給システムの発明は、請求項3記載の発明において、前記過硫酸濃度測定装置は、前記導電性ダイヤモンド電極を作用極および対極として備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の洗浄液供給システムの発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記電解反応装置に使用する電極の少なくとも陽極が、導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の洗浄システムの発明は、請求項1〜7のいずれかに記載の洗浄液供給システムと、該洗浄液供給システムから供給される硫酸および過硫酸を含む溶液を使用して被洗浄材の洗浄を行い、該洗浄に使用した洗浄液を前記洗浄液供給システムに返流する洗浄装置とを備えることを特徴とする。
【0015】
すなわち、本発明の洗浄液供給システムによれば、洗浄効果のある過硫酸を含んだ硫酸溶液は、洗浄側に供給され、電子材料基板などの被洗浄材を洗浄する。この洗浄に際しては、電子材料基板上などに付着した汚染物の剥離、除去、酸化分解などがなされる。なお、洗浄側における洗浄液の硫酸濃度は、レジストなどの剥離効果が高い濃度として10M以上が好適である。硫酸濃度が10M未満であると、レジスト等の有機化合物の溶解度が低くなり剥離し難くなって十分な洗浄能力が得られにくい。
また、硫酸溶液に含まれる過硫酸濃度も洗浄効果を大きく左右する。本発明では、過硫酸濃度測定装置でシステムの過硫酸濃度を測定することができ、この結果に基づいて洗浄側に供給する硫酸溶液中の過硫酸濃度を適切に調整、維持することができる。
【0016】
さらに、洗浄側における洗浄液の温度は、例えば100℃〜170℃が好適である。硫酸溶液は、高温にすることで洗浄効果が高まり、過硫酸は、温度が高い程、自己分解速度が速くなり高い剥離洗浄作用が得られる。130℃といった高温では過硫酸イオンの半減期が5分程度と自己分解速度が非常に速くなり、優れた洗浄作用を示す。洗浄液の温度が低すぎると、過硫酸の自己分解が十分に進行せず、優れた洗浄性能が発揮されない。一方、洗浄液の温度が過度に高くなると、過硫酸の分解速度が速くなりすぎて、洗浄性能が低下する。したがって、洗浄側における洗浄液の温度は、上記範囲が望ましい。洗浄液は、洗浄液供給システムにおいて加熱して洗浄に適当な温度にして供給可能にするものであってもよく、また、洗浄側において加熱することで適温に調整するものであってもよく、洗浄側と洗浄液供給システム側の両方において洗浄液を加熱するものであってもよい。
【0017】
電解反応装置では、洗浄側で過硫酸が自己分解することによって過硫酸濃度が低下した硫酸溶液を用いて電解をする。電解反応に供する溶液の硫酸濃度は、電解工程での過硫酸生成効率(通過電流に対する過硫酸の生成割合)を高くするために、1〜6Mが望ましい。硫酸濃度が1M未満であると、洗浄側で使用される平均硫酸濃度が低くなるため、硫酸濃度を調整するための水分低減処理などの負担が大きくなる。一方、硫酸濃度が6Mを超えると、電解工程での電流効率が低下する。なお、洗浄側で好適な硫酸濃度は上記のように10M以上であるので、高濃度の硫酸溶液が電解反応装置に供給される場合には、水の添加などによって希釈して上記濃度とするのが望ましい。この希釈によって増加する水分は、洗浄側から返流される硫酸溶液の水分を低減することによって相殺することができる。
【0018】
電解反応装置では、上記のように硫酸溶液を電解して洗浄効果を高める過硫酸を生成する。この電解においては、溶液温度が低いほど過硫酸の生成効率が良く、また電極の損耗も小さくなる。したがって、過硫酸を生成するときの電解温度は10〜90℃が望ましく、さらには20〜50℃の範囲が一層望ましい。上記温度範囲を超えると、電解効率が低下し、電極の損耗も大きくなる。一方、上記温度を下回ると、洗浄側に供給する溶液を洗浄に適当な温度に加熱するための熱エネルギが莫大になる。
【0019】
なお、電解反応装置に供給される硫酸溶液には、洗浄側で使用された硫酸溶液が用いられる。洗浄側の溶液は上記のように相対的に高温にして洗浄に供されるため、洗浄側から返流される硫酸溶液も通常は高温になっている。この高温の硫酸溶液は、適宜の冷却手段で冷却して上記電解に好適な温度にすることが望ましい。該冷却手段としては空冷、水冷などの冷却器を例示することができる。また、上記のように硫酸溶液の濃度を希釈して調整する際に、常温などの相対的に低温の希釈水を混合することで溶液の濃度を低下させるとともに温度を低下させることができる。
【0020】
上記電解反応装置では、陽極と陰極とを対にして電解がなされる。これら電極の材質は、本発明としては特定のものに限定されない。しかし、電極として一般に広く利用されている白金を本発明の電解反応装置の陽極として使用した場合、過硫酸イオンを効率的に製造することができず、白金が溶出するという問題がある。
これに対し、導電性ダイヤモンド電極は、過硫酸イオンの生成を効率よく行えるとともに、電極の損耗が小さい。したがって、電解反応装置の電極のうち、少なくとも、硫酸イオンの生成がなされる陽極を導電性ダイヤモンド電極で構成するのが望ましく、陽極、陰極ともに導電性ダイヤモンド電極で構成するのが一層望ましい。
【0021】
導電性ダイヤモンド電極は、シリコンウエハ等の半導体材料を基板とし、このウエハ表面に導電性ダイヤモンド薄膜を合成させたものや、板状に析出合成したセルフスタンド型導電性多結晶ダイヤモンドを挙げることができる。また、Nb,W,Tiなどの金属基板上に積層したものも利用できる
導電性ダイヤモンド電極によって、硫酸から過硫酸を製造することは、電流密度を0.2 A/cm程度にした場合については報告されているが(Ch. Comninellis et al., Electrochemical and Solid−State Letters, Vol. 3(2)77−79(2000)、特表2003−511555)、金属基板にダイヤモンド薄膜を担持した電極ではダイヤモンド膜の剥離が生じて、作用効果が短期間で消失するという問題があった。よって、導電性シリコン基板上に析出させた導電性ダイヤモンド電極が望ましい。なお、導電性ダイヤモンド薄膜は、ダイヤモンド薄膜の合成の際にボロンまたは窒素の所定量をドープして導電性を付与したものであり、通常はボロンドープしたものが一般的である。これらのドープ量は、少なすぎると技術的意義が発生せず、多すぎてもドープ効果が飽和するため、ダイヤモンド薄膜の炭素量に対して、50〜20,000ppmの範囲のものが適している。
【0022】
本発明では、洗浄液供給システム内の硫酸溶液中の過硫酸濃度を測定する過硫酸濃度測定装置を備えており、該装置における過硫酸濃度の測定は、過硫酸が電気化学的に硫酸へと還元される反応を利用するのが望ましい。これにより、極めて短い時間で迅速に過硫酸濃度を測定することが可能になる。
上記測定では、作用極と参照極とを利用して上記還元に伴う電流の変化を測定することができる。また、これに加えて対極を使用して3極式とすることもできる。作用極には、導電性ダイヤモンド電極を用いるのが望ましく、該導電性ダイヤモンド電極は、上述した電解反応装置内に利用する電極と同様のものであっても良いし、基板を取り去った自立型の電極であっても良い。電極の大きさには特に制限がないが、0.1〜2cm程度の接液面積を有することが望ましい。
【0023】
接液の対象は、高濃度硫酸溶液中であるので、参照電極、対極についても導電性ダイヤモンド電極を利用することが望ましい。作用極の電圧を走査する場合、走査速度については、特に制限はないが、1〜500 mV/s程度が望ましい。また、作用極の走査幅については、導電性ダイヤモンド電極を参照極として0V程度から−3V程度に走査することが望ましい。−3Vを超える負の電位を与えると水素発生が激しくなり、過硫酸の還元電流と重なってしまい、測定が困難になる。過硫酸が還元される際に生じる電流はポテンショスタットによって観測することができるが、100nA程度の微弱な電流であっても精度良く検出される。
【0024】
過硫酸濃度の測定については、上記のように電位を走査しても良いが、一定電位に固定しながら還元電流の推移を観測しても良い。固定する電位については、導電性ダイヤモンド電極を参照極として、0〜−3Vの範囲内で、−1.5〜−2.5V程度に選定するのが望ましい。操作としては、電位を0Vにしておいて、−2Vまで電位をステップさせてその際の還元電流を観測する。
【0025】
なお、本発明では、種々の被洗浄材を対象にして洗浄液を供給することができるが、シリコンウエハ、液晶用ガラス基板、フォトマスク基板などの電子材料基板を対象にして洗浄処理をする用途に好適である。さらに具体的には、半導体基板上に付着したレジスト残渣などの有機化合物の剥離プロセスに利用することができる。また、半導体基板上に付着した微粒子、金属などの異物除去プロセスに利用することができる。
また、本発明は、シリコンウエハなどの基板上に付着した汚染物を高濃度硫酸溶液で洗浄剥離するプロセスに利用することができ、アッシングプロセスなどの前処理工程を省略してレジスト剥離・酸化効果を高めるために過硫酸溶液を電解反応装置によってオンサイト製造して、硫酸溶液を繰り返し利用して外部からの過酸化水素やオゾンなどの薬液添加を必要としないシステムに関する。
【発明の効果】
【0026】
以上、説明したように、本発明の洗浄液供給システムによれば、硫酸溶液の電解反応により、該硫酸溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成する電解反応装置と、該電解反応装置で生成した過硫酸イオンを含む硫酸溶液を洗浄液の一部または全部として電子材料基板である被洗浄材を洗浄する洗浄側に供給可能にする洗浄液供給システムにおいて、
前記洗浄側から返流される前記洗浄液として使用した前記硫酸溶液を受け、該硫酸溶液の一部または全部を前記電解反応装置に供給するとともに、前記電解反応装置で電解した硫酸溶液を前記洗浄側に送出する循環ラインと、前記硫酸溶液を貯留して前記電解反応装置との間で前記硫酸溶液を循環する貯留槽と、を備え、
前記貯留槽は、10〜90℃に調整された硫酸溶液が返流側の前記循環ラインから導入されるとともに、該貯留槽内の硫酸溶液が送出側の前記循環ラインに送られて100〜170℃に加熱されて前記洗浄側に供給されるものであり、
前記貯留槽内の硫酸溶液中の過硫酸濃度を測定する過硫酸濃度測定装置を備えるので、硫酸溶液中の過硫酸濃度を稼働中に迅速に測定して電解反応装置の制御などに利用することを可能にし、確実な洗浄効果を得るとともに稼働効率を一層高めることができる。
硫酸を繰り返し使用しつつ過硫酸を電解によって再生することで、洗浄効果の高い洗浄液を継続して供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態の洗浄液供給システムおよび洗浄システムを示す概略構成図である。
【図2】同じく、過硫酸濃度測定装置を示す図である。
【図3】実施例における走査電位と測定された還元電流との関係を示すグラフである。
【図4】同じく、還元電流と過硫酸濃度との相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の一実施形態を図1、2に基づいて説明する。
半導体ウエハ5の洗浄が行われる洗浄槽1は、洗浄液導入路2と洗浄液返流路3とが接続されており、洗浄液導入路2は、洗浄液供給システム10の洗浄液供給路16に接続可能とされ、洗浄液返流路3は、ポンプ4を介して洗浄液供給システム10の硫酸溶液返流路11に接続可能とされている。上記洗浄槽1と洗浄液供給システム10とを接続することによって本発明の洗浄システムが構成される。
【0029】
洗浄液供給システム10では、硫酸溶液返流路11の下流側は、循環用分岐路11bと減水用分岐路11aとに分岐しており、循環用分岐路11bには、洗浄液を加熱するヒータ14とフィルタ15とが介設されており、その下流側で後述する過硫酸溶液送液路38と合流して前記洗浄液供給路16に接続されている。
【0030】
一方、減水用分岐路11aは、下流側で溶液水分低減手段である放散塔20(ガスストリッピング装置)の塔頂部に接続されている。放散塔20には、ガラスラシヒリングなどの充填材(図示しない)が充填されており、下方側から放散用空気が導入されて塔頂部から充填材を通って流下する溶液と下方側から充填材を通って上昇する空気とを向流させて溶液の水分の一部を蒸散させて上昇空気に取り込んで出口ガスとともに放出する。水分が低減された溶液は放散塔20の塔底部から排水路21へと取り出される。排水路21には、ポンプ22が介設され、下流側は、電解用分岐路21aと、循環用分岐路21bとに分岐しており、循環用分岐路21bは、前記した循環用分岐路11bに合流している。
【0031】
前記電解用分岐路21aは、第一貯留槽25に接続されており、該第一貯留槽25には、希釈水送液路26が接続されている。また、第一貯留槽25には、送出路27が接続されており、該送出路27は、ポンプ28を介して電解用分岐路27aと循環用分岐路27bとに分岐している。循環用分岐路27bは、熱交換器29を介して第一貯留槽25に循環接続されている。
上記電解用分岐路27aは、第二貯留槽30に接続されており、該第二貯留槽30には、図2に示す過硫酸濃度測定装置40の電極部41が組み込まれている。該電極部41は、ポリテトラフルオロエチレン製のロッド41dと、それぞれ導電性ダイヤモンド電極からなる作用極41a、参照極41b、対極41cが先端面に取り付けられて構成されており、これら電極は、前記第二貯留槽30内の硫酸溶液に接液されて過硫酸濃度の測定に用いられる。上記各電極は、ポテンショスタット42に接続されて過硫酸濃度測定装置40を構成している。
なお、各作用極41a、参照極41b、対極41cは、図2(b)に示すように、ロッド41dの先端面に、平板上に配置しても良く、また、図2(c)に示すように、反応効率を高めるために、例えば、作用極41a、対極41cを下方に突出させて対面させ、参照極41bは、平板上に配置することができる。なお、下方に突出させた電極は、対向面以外(背面側および底面側)を過硫酸に耐性のあるポリテトラフルオロエチレン41eなどで覆うのが望ましい。
【0032】
また、上記第二貯留槽30には、送出路32が接続されており、該送出路32には、ポンプ33を介して切替弁34が接続されている。該切替弁34の一つのポートには、電解用送り路35が接続され、切替弁34の他のポートには過硫酸溶液供給路38が接続されている。該過硫酸溶液供給路38は、前記循環路11bと合流して洗浄液供給路16に接続されている。
一方、電解用送り路35の下流端は、電解反応装置に含まれる電解反応槽36の入液側に接続されており、電解反応槽36の出液側には電解用戻り路37が接続され、該電解用戻り路37は、前記第二貯留槽30に接続されている。
【0033】
上記電解反応槽36には、陽極36aおよび陰極36bが配置されており、さらに所望により陽極36aと陰極36bとの間に所定の間隔をおいてバイポーラ電極36cが配置されている。なお、バイポーラ電極を有しない形で電解反応槽を構成することも可能である。上記陽極36aおよび陰極36bには、直流電源(図示しない)が接続され、電極間に溶液を通液しつつ直流電源により通電することで電解反応槽36での溶液の直流電解が可能になっている。この実施形態では、上記電極は導電性ダイヤモンド電極によって構成されている。該導電性ダイヤモンド電極は、基板状にダイヤモンド薄膜を形成するとともに、該ダイヤモンド薄膜の炭素量に対して、好適には50〜20,000ppmの範囲でボロンをドープすることにより製造したものである。また、薄膜形成後に基板を取り去って自立型としたものであってもよい。
上記した電極を含む電解反応槽36および図示しない直流電源によって電解反応装置が構成される。
また、洗浄液供給システムにおける各路によって本発明の循環ラインが構成されている。
【0034】
次に、上記構成よりなる洗浄液供給システムおよび洗浄システムの作用について説明する。
上記洗浄槽1内に、硫酸濃度が10M以上(例えば75質量%程度)の硫酸溶液が収容される。該硫酸溶液は100〜170℃に加熱して、半導体ウエハ5の洗浄に使用される。洗浄液は、ポンプ4によって、順次、洗浄液返流路3を通して洗浄液供給システム10に返流される。返流された硫酸溶液は、硫酸溶液返流路11に導入され、必要に応じて一部が減水用分岐路11aに分配され、残りは循環用分岐路11bに分配される。
【0035】
減水用分岐路11aに分配された硫酸溶液は、放散塔20の塔頂部に導入され、充填材中を流下する。一方、放散塔20には、下方側からクリーンルームなどから供給される放散用空気が導入されて充填材中を上昇し、硫酸溶液の一部の水分が蒸散により低減され、排水路21へと移動する。この排水路21に移動した硫酸溶液は、水分の低減によって硫酸濃度が高まっており、また、放散用空気との接触および水分の蒸散によって温度が低下している。一方、放散塔20で水分をストリッピングした空気は、出口ガスとして排気される。排水路21の濃縮された硫酸溶液は、ポンプ22で送液され、一部は必要に応じて電解用分岐路21aを通して第一貯留槽25に分配され、残部は循環用分岐路21bを通して循環用分岐路11bに合流し、該循環用分岐路11bを流れる硫酸溶液と混合される。循環用分岐路11bにおける混合された溶液は、洗浄槽1から返流された後、温度が低下しており、これをヒータ14によって加熱して洗浄に好適な100℃〜170℃に加熱する。また、洗浄槽1での洗浄によって固体浮遊物(SS)などが溶液中に混入しているおそれがあるため、フィルタ15によって固形分を取り除いて洗浄液供給路16に供給する。
【0036】
一方、第一貯留槽25では、電解用分岐路21aによって比較的高温の高濃度硫酸溶液が供給されており、希釈水送液路26を通して希釈水が供給される。第一貯留槽25では、高濃度硫酸溶液と希釈水との混合比率を適切に維持することで、電解反応槽36における電解に適した1〜6Mの硫酸濃度に調整する。また、この際に、比較的低温の希釈水を混合することで、溶液の温度を低下させることができる。
第一貯留槽25内の硫酸溶液は、電解を行う時機でない場合には、ポンプ28によって送出路27に送出され、全量が循環用分岐路27bに送られて熱交換器29で冷却された後、第一貯留槽25に戻される。これを繰り返して硫酸溶液を循環させることで硫酸溶液の温度を電解反応に適した10〜90℃に調整する。該硫酸溶液を電解する時機には、上記循環を止め、送出路27、電解用分岐路27aを通してポンプ28によって硫酸溶液を第二貯留槽30に移送する。第二貯留槽30に収容された硫酸溶液は、電解に際し、送出路32を通してポンプ33で送液される。送出路32は切替弁34によって電解用送り路35に連通させる。これにより硫酸溶液は電解用送り路35へと送液され、電解反応槽36へと供給される。電解反応槽36では、電解に際し、陽極36aおよび陰極36bに直流電源によって通電されており、バイポーラ電極36cが分極する。電解反応槽36に送液される上記硫酸溶液は電極間に通水されながら電解される。この際に通液線速度が1〜10,000m/hrとなるように設定するのが望ましい。なお、上記通電では、導電性ダイヤモンド電極表面での電流密度が10〜100,000A/mとなるように通電制御するのが望ましい。
【0037】
電解反応槽36で硫酸溶液に対し通電されると、硫酸溶液中の硫酸イオンが酸化反応して過硫酸イオンが生成され過硫酸溶液が効率よく得られる。電解反応槽36で得られた過硫酸溶液は、電解用戻り路37を通して第二貯留槽30に戻され、さらに、電解用送り路36を通して送液することで、硫酸溶液を第二貯留槽30と電解反応槽36との間で循環させつつ電解をすることで高濃度の過硫酸を生成することができる。なお、上記電解によって過硫酸溶液は昇温するため、電解用送り路36や電解用戻り路37などにおいて必要に応じて過硫酸溶液を冷却するようにしてもよい。
【0038】
なお、第二貯留槽30では、過硫酸濃度測定装置40によって硫酸溶液中の過硫酸濃度が適時、例えば所定時間間隔で間欠的に測定されている。該測定では、参照電極41bに対する電位として作用極41aに付加する電圧を0〜−3V(好適には−1.5〜−2.5V)の範囲で走査し、還元電流をポテンショスタット42で測定する。得られた電流値と過硫酸濃度とを予め関連付けておくことで、硫酸溶液中の過硫酸濃度を知ることができる。この過硫酸濃度が、予め定めた所定値に達すると、洗浄側への供給が可能であると判定をし、電解を停止するとともに、切替弁34を切り替えて送出路32と過硫酸溶液供給路38とを連通させる。ポンプ33の動作によって過硫酸濃度を十分に高めた硫酸溶液は、第二貯留槽30から送出路32、過硫酸溶液供給路38を通して洗浄液供給路16へと送液される。これにより、洗浄側へは常に所定値を超える過硫酸濃度の洗浄液が供給され、安定した洗浄効果をもたらすことができる。また、電解反応槽36では、必要以上に電解を行うことがなく、効率のよい操業が可能になる。
【0039】
洗浄槽1では、高濃度の過硫酸を含む状態で高濃度硫酸溶液が供給される。洗浄槽1内の洗浄液は、高濃度と硫酸と、過硫酸イオンの自己分解による高い酸化力によって半導体ウエハに付着したレジストを効果的に、剥離除去し、さらに酸化分解する。なお、洗浄液では、自己分解によって過硫酸イオン濃度が低下する。ただし、この洗浄液は、前記のように洗浄液返流路3を通して洗浄液供給システム10に返流され、一部が電解反応槽36で効率的に電解されて所定の濃度の過硫酸が再生されて再度洗浄液に供給される。このため、洗浄槽1内での過硫酸イオン濃度を適度に維持することができる。また、洗浄液は、電解用のものを除いて、洗浄槽に循環供給されるとともに、一部では水分が低減され過硫酸濃度が高められて洗浄液に再度供給されるため、電解に供する硫酸溶液に加えられる希釈水の増加分が相殺されて洗浄槽1での洗浄液の硫酸濃度が洗浄に好適な高濃度に維持される。
すなわち、本形態によれば、高濃度硫酸溶液を電解して、過硫酸を生成させて、生成量を連続的かつ迅速にモニタすることで、過硫酸溶液を洗浄液として半導体ウエハなどの基板上に付着した汚染物、主には有機物を剥離・酸化を長期間安定に完全剥離することができる。
【0040】
以上、本発明について上記実施形態に基づいて説明をしたが、上記実施形態は本発明の一形態であり、該内容が本発明を限定するものではない。例えば、電解工程において硫酸溶液の濃縮や水による希釈なしに高濃度硫酸溶液をそのまま電解する場合にも本発明の過硫酸濃度測定装置により、硫酸溶液中の過硫酸濃度を迅速に把握できる。また、電解溶液を循環せずに電解する場合にも本発明を実施することができる。
【実施例1】
【0041】
上記実施形態の洗浄システムを用いて、洗浄槽に、97%濃硫酸34 リットル、超純水21リットルの割合で調整した高濃度硫酸溶液を調製して150℃に加熱保持した。洗浄槽には、レジスト付きの12インチのシリコンウエハを10分の浸漬サイクルで50枚/サイクル浸漬させて、レジスト溶解を行った。この溶解液の一部を引き抜いて、放散塔へ送り、第一貯留槽で超純水を加えて、4M硫酸溶液とした。この溶液を熱交換器で40℃まで冷却した後に、第二貯留槽へと送り、電解反応装置との間を循環させて、過硫酸濃度を高めた。電解反応装置内には、12×12cm、厚さ3mmの導電性Si基板にボロンドープした導電性ダイヤモンド電極を10枚組み込んだ槽を2槽直列に配列させた。電解のための有効陽極面積は18dmであり、電流密度を100A/dmに設定して、40 ℃で電解した。第二貯留槽と電解反応装置との間で送液ポンプにより2l/minの流量で循環させた。第二貯留槽において、過硫酸濃度測定装置で、導電性ダイヤモンド電極を参照電極として、間欠的に5回電位電流曲線を測定した。また同時に、ヨウ化カリウムを用いた酸化還元滴定により過硫酸濃度を測定した。そのうち、電解する前の4M硫酸溶液(過硫酸濃度0g/L)と、4Mの硫酸溶液を電解して過硫酸濃が最大値(180g/L)となった硫酸溶液の電位電流曲線を図3に示した。
【0042】
図3のように過硫酸濃度が最大値を示した硫酸溶液(実線)は過硫酸が存在しない4M硫酸(破線)に比べて還元方向に電流が流れることがわかる。
そして全5データの電位電流曲線上で、−1.7V付近の還元電流の絶対値を読み取った。過硫酸濃度と還元電流の絶対値は図4に示すように良い相関性が認められた。過硫酸濃度が高くなると、還元電流は略一次関数的に大きくなることがわかる。
−1.7V付近で75mA(電流密度は15mA/cm)の還元電流を観測した。この電流値から、過硫酸濃度が150 g/Lに達したことがわかったので、バルブの切り替えを行って、洗浄槽へ高濃度過硫酸溶液を送り、レジスト付きシリコンウエハを洗浄した。このようなウエハ洗浄を8時間(洗浄ウエハ枚数は2,400枚)継続した。適宜、ウエハを抜き出して質量分析計でウエハ上の有機物残渣を分析したところ、有機物量は200pg/cm程度であった。このように高濃度硫酸溶液のレジスト剥離効果は良好であった。そこで、さらに32時間(洗浄ウエハ枚数は9,600枚、総処理枚数は12,000枚)継続したが、高濃度硫酸溶液のレジスト剥離効果は良好であった。
【0043】
(比較例)
過硫酸モニタを設置しない以外は、上記実施例と同様にレジスト付きシリコンウエハの洗浄を行った。電解反応で生成する過硫酸濃度を迅速に分析することができず、バルブ切り替え時期の判断ができず、ウエハ洗浄効果にばらつきが見られた。
【符号の説明】
【0044】
1 洗浄槽
10 洗浄液供給システム
11 硫酸溶液返流路
16 洗浄液供給路
25 第一貯留槽
26 希釈水送液路
27 送出路
30 第二貯留槽
34 切替弁
35 電解用送り路
36 電解反応槽
36a 陽極
36b 陰極
36c バイポーラ電極
37 電解用戻り路
38 過硫酸溶液供給路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸溶液の電解反応により、該硫酸溶液に含まれる硫酸イオンから過硫酸イオンを生成する電解反応装置と、該電解反応装置で生成した過硫酸イオンを含む硫酸溶液を洗浄液の一部または全部として電子材料基板である被洗浄材を洗浄する洗浄側に供給可能にする洗浄液供給システムにおいて、
前記洗浄側から返流される前記洗浄液として使用した前記硫酸溶液を受け、該硫酸溶液の一部または全部を前記電解反応装置に供給するとともに、前記電解反応装置で電解した硫酸溶液を前記洗浄側に送出する循環ラインと、前記硫酸溶液を貯留して前記電解反応装置との間で前記硫酸溶液を循環する貯留槽と、を備え、
前記貯留槽は、10〜90℃に調整された硫酸溶液が返流側の前記循環ラインから導入されるとともに、該貯留槽内の硫酸溶液が送出側の前記循環ラインに送られて100〜170℃に加熱されて前記洗浄側に供給されるものであり、
前記貯留槽内の硫酸溶液中の過硫酸濃度を測定する過硫酸濃度測定装置を備えることを特徴とする洗浄液供給システム。
【請求項2】
前記洗浄側は、電子材料基板に付着したレジスト残渣などの有機化合物の剥離と該有機化合物の酸化分解を行うものであることを特徴とする請求項1記載の洗浄液供給システム。
【請求項3】
前記過硫酸濃度測定装置は、導電性ダイヤモンド電極を備え、該導電性ダイヤモンド電極が洗浄液供給システム内の前記硫酸溶液と接触するように配置されて該硫酸溶液中の前記過硫酸濃度を測定することができるものであることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄液供給システム。
【請求項4】
前記過硫酸濃度測定装置は、前記導電性ダイヤモンド電極を作用極として、電位走査を行った際の電流値の変化を測定するものであることを特徴とする請求項3記載の洗浄液供給システム。
【請求項5】
前記過硫酸濃度測定装置は、前記導電性ダイヤモンド電極を作用極として、ある一定の電位に対する電流値の変化を測定するものであることを特徴とする請求項3記載の洗浄液供給システム。
【請求項6】
前記過硫酸濃度測定装置は、前記導電性ダイヤモンド電極を作用極および対極として備えることを特徴とする請求項3記載の洗浄液供給システム。
【請求項7】
前記電解反応装置に使用する電極の少なくとも陽極が、導電性ダイヤモンド電極であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の洗浄液供給システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の洗浄液供給システムと、該洗浄液供給システムから供給される硫酸および過硫酸を含む溶液を使用して被洗浄材の洗浄を行い、該洗浄に使用した洗浄液を前記洗浄液供給システムに返流する洗浄装置とを備えることを特徴とする洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−69974(P2012−69974A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243186(P2011−243186)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2007−134945(P2007−134945)の分割
【原出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】