説明

洗車機における車形検出方法及び車形検出装置

【課題】洗車内容に応じた車体検出のしきい値を設定しながらも、車体の装備品を確実に検出することができる洗車機における車形検出方法及び車形検出装置を提供する。
【解決手段】車形検出装置9は、洗車処理装置5cよりも先行する洗車機の前方に備え、対向した発光素子の発光に伴う受光素子で車体検出と判断するしきい値は、実行しようとする洗車の内容が高圧スプレー洗浄を含むものであるとき、自動車もしくは洗車機が走行を開始してから前記洗車処理装置5cによる高圧スプレー洗浄が実行されるまでは大きく設定され、高圧スプレー洗浄が実行されてからは小さく設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車する自動車の形状を検出する車形検出方法及び車形検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗車エリアを挟むように発光素子と受光素子とを複数対向させ、各受光素子での受光レベルによって車体の有無を検出する車形検出装置を設け、洗車機と自動車の相対移動に伴い車形検出装置で車体の有無を検出して、この検出データを洗車機の走行位置と合わせて記憶蓄積し、この蓄積した検出データから自動車車体の輪郭を抽出する車形検出装置を備えた洗車機が知られている。
【0003】
こうした洗車機は、車形検出と洗浄作業とを同時に行うといった状況で使用されることが多く、洗浄水が飛散する環境下で光信号による車体検出を行うが故に、飛散する水滴により車体検出の結果に影響を受けないよう対策する必要があった。このため、本出願人は、特許文献1において、水滴により光信号の授受が阻害されても誤検出とならないよう、実行する洗車内容や環境に応じて受光素子で車体検出と判断するしきい値を可変するようにした洗車機を提案している。
【0004】
特許文献1によれば、車体検出と判断するためのしきい値を実行しようとする洗車の内容に応じて可変することにより、洗車の内容によって車形検出するときの環境が変わっても、その洗車内容に合った判定条件となるようしきい値を変えて確実な車体検出が可能になる。すなわち、高圧スプレー洗浄を伴う洗車コースを実行する場合は、受光素子へ到達する光信号のレベルが低くなると予想し、しきい値を小さくして飛散する水滴を車体検出としないようにし、一方、高圧スプレー洗浄を伴わない洗車コースを実行する場合は、光信号の減衰が小さいと予想し、しきい値を大きくしてフロントウィンドウやリアウィンドウを車体検出として確実に検出できるようにしたものである。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、高圧スプレー洗浄を伴う洗車コースを実行するときは、一貫してしきい値を小さくするため、例えば、車体前部に取り付けられるナンバープレートやフォグランプの取り付け金具のようにあまり厚さがない備品を検出することができなかった。すなわち、しきい値を小さくすることで、ナンバープレートやフォグランプの取り付け金具で減衰しながらもわずかに透過する光信号を受けて「車体なし」と判定してしまい、抜けが発生してしまっていた。
【特許文献1】特許第4035379号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、洗車内容に応じた車体検出のしきい値を設定しながらも、車体の装備品を確実に検出することができる洗車機における車形検出方法及び車形検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、自動車もしくは洗車機のいずれかもしくは両方が走行し、この走行に伴い洗車機に備える洗車処理装置で自動車車体の洗浄・乾燥等を行う洗車機であって、自動車を幅方向に挟んで発光部と受光部を配置し、発光部からの投光が受光部で受光されるか否かによって車体の有無を検出し、前記自動車もしくは洗車機の各移動位置での車体検出の結果を集めて車形データを形成する車形検出装置を備えた洗車機において、車形検出装置は、洗車処理装置よりも先行する洗車機の前方に備え、対向した発光素子の発光に伴う受光素子での受光量の増加分が所定のしきい値以下と認められるとき、車体検出と判断するものであり、しきい値は、実行しようとする洗車の内容が高圧スプレー洗浄を含むものであるとき、自動車もしくは洗車機が走行を開始してから前記洗車処理装置による高圧スプレー洗浄が実行されるまでは大きく設定され、高圧スプレー洗浄が実行されてからは小さく設定されることを特徴とする洗車機における車形検出方法として、上記課題の解決をはかったものである。
【0008】
また、自動車もしくは洗車機のいずれかもしくは両方が走行し、この走行に伴い洗車機に備える洗車処理装置で自動車車体の洗浄・乾燥等を行う洗車機であって、自動車を幅方向に挟んで発光部と受光部を配置し、発光部からの投光が受光部で受光されるか否かによって車体の有無を検出して、前記自動車もしくは洗車機の各移動位置での車体検出の結果を集めて車形データを形成する車形検出装置を備えた洗車機において、車形検出装置で対向した発光素子の発光に伴う受光素子での受光量の増加分が所定のしきい値以下と認められるとき車体検出と判断する判定手段と、実行しようとする洗車の内容が高圧スプレー洗浄を含むものであるとき、自動車もしくは洗車機が走行を開始してから前記洗車処理装置による高圧スプレー洗浄が実行されるまではしきい値を大きく設定し、高圧スプレー洗浄が実行されてからはしきい値を小さく設定する設定手段と、該設定手段で与えるしきい値に基づいて前記判定手段から得る車体検出信号を取り込み、この車体検出信号に応じた車形データを形成する車形データ形成手段とを設けたことを特徴とする洗車機における車形検出装置として、上記課題の解決をはかったものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車体検出と判断するためのしきい値を、高圧スプレー洗浄が開始されるまでは大きくし、高圧スプレー洗浄が開始されてからは小さくするようにしたので、自動車前部の装備品(ナンバープレート・フォクランプ取付金具など)に対してしきい値を大きくして車体検出が実行され、検出精度を向上することができる。
【0010】
すなわち、従来のように実行しようとする洗車の内容が高圧スプレー洗浄を伴う場合は、受光素子へ到達する光信号のレベルが低くなると予想して、洗車開始と同時にしきい値を小さくした車体検出が行われていたが、本発明によれば、スプレー洗浄が始まるまではしきい値を大きくし、「車体あり」とする判定基準を上げて自動車前部の装備品を見逃さないようにし、スプレー洗浄が始まってからはしきい値を小さくし、「車体あり」とする判定基準を下げて水滴などの影響を拝上した車体検出を行うことができる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施例について図面を基に説明する。図1は洗車場における洗車機の平面図である。
1は洗車機本体で、門型に形成されレール2・2上を自動車Aを跨ぐように往復走行する。本体1は、図1に見られるように、通常レール2・2で与えられる走行範囲の後端部に停止し、この位置から洗車を開始する。本体1には、ブラシ装置3・4・4,ブロワノズル6・7・7をはじめ散水ノズル5a・5b・5c,液剤タンク(図示しない)等が備えられ、走行に伴って水,洗剤,ワックス等を散布してブラッシングする洗浄作業やブロワノズルより空気を吹き付ける乾燥作業を行う。
【0012】
ここで、洗車を受ける自動車Aは、レール2・2で与えられる本体1の走行範囲前方から進入し、本体1前方位置に停車して洗車を受け、走行走行範囲後方から退場する。すなわち、自動車は前進走行して進入し、洗車後は同じく前進走行して退場するもので、洗車機利用客が自動車に乗ったまま洗車を受けて通り抜ける、いわゆるドライブスルーによる洗車を可能にしている。
【0013】
前記ブラシ装置は、本体1前側に位置し車体上面に沿って昇降し同上面をブラッシングする上面ブラシ装置3と、上面ブラシ装置3の後方に位置し車体に対して接離(開閉)動作して車体の前後面および側面をブラッシングする左右一対の側面ブラシ装置4・4とからなる。なお、このブラシ装置3・4・4は散水ノズル5a・5b・5cと共にブロワノズル6・7・7より本体1前側にあって、洗浄部Wを形成している。
【0014】
散水ノズル5a・5b・5cは、ブラシ装置によるブラッシングと前後して洗浄水や洗剤・ワックス等の液剤の希釈水を通常圧で散布する低圧ノズル5a・5bと、車体の砂・泥等を落とすよう洗浄水や液剤希釈水を高圧噴霧する高圧ノズル5cとからなっている。高圧ノズル5cは、ブラッシングに先立って車体の砂・泥等を落とし、砂・泥等をブラシで擦り付けて車体に洗車傷を発生させないようスプレー洗浄するもので、ブラシ装置3・4・4より前側で後述の車形検出装置10の後方に位置している。これら散水ノズル5a・5b・5cは、本体1と別体として設置される公知の給水装置(図示しない)から送水を受けており、また給水装置に公知の温水ボイラ(図示しない)が接続されて、冬などの寒冷期には洗浄水として温水が供給される。
【0015】
前記ブロワノズルは、各ブラシ装置3・4・4の後方にあって、車体上面に沿って昇降し同上面に空気を吹き付けて乾燥をはかる上面ブロワノズル6と、該上面ブロワノズル6より更に本体1後方に位置し車体側面に空気を吹き付けて乾燥をはかる左右一対の側面ブロワノズル7・7とからなり、本体1の後側に乾燥部Dを形成している。
【0016】
8は洗車機本体1の走行位置を検出する走行位置検出装置、9は本体1のブラシ装置より前側の前縁部に設けられ自動車の車形を検出する車形検出装置である。走行位置検出装置8は、本体1が単位距離走行する毎にパルス出力するエンコーダを備え、そのパルス信号をカウントすることで本体1の走行位置を検知する。車形検出装置9は、複数の発光素子を上下に配列させた発光部9aと、これに対向して複数の受光素子を上下に配列した受光部9bとを備え、両者間で光信号(赤外光)の授受を行い車体の上面位置を検知する。そして、エンコーダ8からのパルス信号に同期して車形検出装置9から車体の上面位置を検出することで、車形データが作成されるものであり、詳しくは後述する。こうして作成される車形データは、ブラシ装置・ブロワノズルの制御に使用されることになる。
【0017】
10はレール2・2で与えられる本体1走行範囲に入る手前で自動車の運転席から操作可能な高さに設けられる操作ボックスで、料金投入と洗車内容の選択入力等の操作を受け付ける。
【0018】
図2は実施例の制御系を示すブロック図で、20はマイクロコンピュータを備えた制御部、21は各部の駆動回路である。制御部20は、操作ボックス10において洗車を受け付け、上記した走行位置検出装置8,車形検出装置9をはじめ図示しないその他の各種センサ等からの信号に基づき予めプログラムされたシーケンスに従って、洗車機本体1の走行、ブラシ3・4・4およびブロワノズル6・7・7の作動、散水ノズル5a・5b・5cからの放水等を制御する。
【0019】
実行される代表的な洗車動作としては、本体1が1往復して洗浄動作し2回目の往行時に乾燥動作するノーマル洗車、本体1が1往復して洗浄動作とワックス塗布を行い2回目の往行時に乾燥動作するワックス洗車とがある。また、こうした洗車動作(1)〜(2)のオプション動作として高圧ノズル5cからの高圧スプレー洗浄が設定され、操作ボックス10において高圧スプレーを実行するか否かを選択することができる。なお、この他にもコーティング処理・水垢処理などの処理を盛り込んで2往復・3往復といったより付加価値の高い洗車動作をさせることもできる。
【0020】
図3は実施例における主に車形検出装置9の制御系の説明図である。
車形検出装置9は、発光部9aを構成する多数の発光素子L1〜Lnと受光部9bを構成する多数の受光素子R1〜Rnとが、水平に対向する同士でそれぞれに1対1で対応させて車体検出する構成となっている。22は発光部9aの駆動部、23は受光部9bの駆動部、24は受光部9bでの受光検出部で、洗車に際して車体検出する場合には、発光駆動部22で上方の発光素子L1より下方の発光素子Lnへ走査するように順次に光信号を出力させ、これと同期して受光駆動部23では発光する素子と対をなす受光素子R1〜Rnで順次受光させて、受光検出部24において各素子での受光レベル(受光量)を取得していく。
【0021】
受光検出部24には、各受光素子R1〜Rnで取得した受光レベルに基づきその素子の高さ位置で車体が検出されたか否かを判断する判定部25と、判定部25で車体検出の判断をするためのしきい値を設定する設定部26と、判定部25の判定結果に基づき車体の上面位置を検出する上面位置検出部27とが含まれる。受光素子R1〜Rnでの受光レベルは、発光素子L1〜Lnからの光信号を受けると高くなり、光信号が車体により遮られると低くなる。従って、判定部25では各受光素子R1〜Rnが対応する発光素子L1〜Lnからの光信号を受けたか否かを判断し、光信号が遮られて車体検出と判断された最も上方にある受光素子の高さ位置を車体上面の位置として上面位置検出部27より信号出力する。
【0022】
28は車形検出装置9の制御部で、走行位置検出装置8で単位距離の走行を検出する毎に発光駆動部22・受光駆動部23へ駆動信号を出力して車体検出させ、これに伴って上面位置検出部27で与える上面位置を走行位置検出装置8で与える走行位置と対応させて、車形データとして車形記憶部29へ記憶させる。また制御部28には、車形データ以外のしきい値の設定データ等を記憶する記憶部30を備えており、洗車内容によって記憶部30からしきい値を読み出し、車形検出装置9での検出に反映させる。
【0023】
図4は実施例とした洗車機での洗車動作を説明するフローチャート、図5は図4で実施される初期設定の一部として実行される車形検出の初期設定を説明するフローチャートである。以下、これらの図面を基に実施例の動作を説明する。
【0024】
図4において、操作ボックス10で洗車開始入力があると(1)、入場処理シーケンスを実行して自動車を所定の洗車位置まで誘導し(2)、この間に制御部20・28では初期設定をして洗車動作に備える(3)。入場処理シーケンスでは、洗車機本体1前側に設けるガイド灯(図示しない)により「前進」「停止」「後退」を切換表示し、自動車を洗車位置に停止させる。こうして自動車が洗車位置で停車すると洗車シーケンスを実行して洗車を行う(4)。洗車が終了すると、終了処理シーケンスを実行して自動車が安全に退場するよう誘導し洗車機本体1を洗車開始位置へ復帰させる(5)。終了処理シーケンスでは、洗車機本体1後方に設けられる表示器(図示しない)において洗車終了の報知と退場を促す表示をし、自動車が退場すると洗車機本体1を後退させて図1に示す開始位置へ復帰させるよう処理するものである。
【0025】
ステップ(3)で実行される初期設定において、車形検出装置9の制御部28では、図5に示す設定動作を行う。図5において、まず自動車が検出範囲にいない状態で車形検出動作をする初期検出動作を行う(3-1)。発光素子L1〜Lnまたは受光素子R1〜Rnは、その器差や汚れの付着などに応じて対をなす素子間で授受される信号レベルが異なるため、洗車直前に車体非検出状態で交わされる信号レベルを検出し、各素子毎に記憶部30へ記憶しておく。ここで記憶する信号レベルとは、発光素子が発光することによって対応の受光素子が受けることになる受光量の増加分(利得量)である。
【0026】
続いて、操作ボックス10において、洗車客が選択した洗車内容を読み取り(3-2)、洗車内容に基づいて前記設定部26でしきい値を設定する(3-3)。ここで、しきい値とは、発光素子が発光したことによって対応の受光素子で受ける受光量の増加分と対比される数値であり、発光により受光量がしきい値以上増加すれば透光(車体なし)と判断し、増加分がしきい値に達しなければ遮光(車体あり)と判断する。よって、しきい値を大きくするほど(車体あり)を判定しやすくなり、しきい値を小さくするほど(車体なし)を判定しやすくなる。
【0027】
以下、このしきい値の設定方法について説明する。
ステップ(3-1)において、洗車動作直前の空車時の受光量を検出しこれを基礎データとするが、この基礎データ取得時には、まだ洗車が行われておらず洗浄水が飛散したり湯気が発生したりする状況ではないため、実際の洗車時ではこの基礎データより受光量はかなり減衰することになる。この減衰の程度は、洗車機本体における各部の位置や構造によっても異なるが、出願人の試験によれば、高圧スプレーを使用しない通常の洗車で最大50%、高圧スプレーを使用する洗車で最大70%、寒冷時の湯気が発生した場合には最大85%の減衰が認められた。
【0028】
こうしたデータに基づけば、最大85%の減衰に対応して、10〜15%の受光量が認められれば透光(車体なし)となるようにしきい値を設定しておけば、どんな条件でも車体検出できると考えられる。しかし、減衰が小さな状況においても、わずかな受光量で「車体なし」と判断すると、自動車の窓ガラス(特にフロントウィンドウおよびリアウィンドウ)や厚さのない装備品(ナンバープレートやフォグランプの取付金具)を透過してきた光が入っても「車体なし」となってしまい、車体として認識できなくなってしまう。従って、洗車に伴う減衰が小さな時にはしきい値を大きくして、窓ガラスや厚さのない装備品を透過して来た弱い光の受光で遮光と判断し「車体あり」とする必要がある。すなわち、減衰の程度を実行する洗車内容と実行するときの環境に応じて想定し、しきい値を設定する必要がある。
【0029】
例えば、最大50%の減衰が見込まれる通常洗車の場合、前記基礎データの20%程度をしきい値とし、最大70%の減衰が見込まれる高圧スプレーを使用する洗車の場合、前記基礎データの10%程度をしきい値とし、最大80%の減衰が見込まれる寒冷時の洗車の場合、前記基礎データの5〜10%をしきい値とすれば良い。このしきい値は、図5のステップ(3-1)で検出する基礎データと同様に各素子毎に算出・設定されて記憶部30へ記憶される。このため、しきい値を設定する比率(%)は共通であるが、各素子毎に異なるしきい値で車体検出が行われることになる。
【0030】
こうして、しきい値が設定されると、図4のステップ(4)において洗車が実行される。図6は洗車動作の一部として実行される車形検出動作を示すフローチャートである。なお、実行される洗車動作は、選択される洗車内容によって異なるが、ここでは高圧ノズル5cを使用するノーマル洗車を選択した場合を例示している。
【0031】
図6において、洗車開始に伴い洗車機本体1が往行を始め(4-1)、本体1の先行する位置にある車形検出装置9が車形検出を開始する。
さて、高圧スプレーを使用する洗車を行う場合、図5のステップ(3-3)において、しきい値は10%程度に設定されることになる。しかし、このしきい値は、高圧スプレーが作動している状態を前提としているので、高圧スプレーが噴射される前に光信号が減衰していない状況で車体検出を行うと、わずかな透過光が受光されても「車体なし」を検出してしまい、車体非検出となる部分が増加してしまう。例えば、車体の前面に取り付けられるナンバープレートやフォグランプの取り付け金具のように、あまり厚さがない装備品を確実に検出することが困難となる。
【0032】
そこで、高圧ノズル5cが車体前端に達するまで高圧噴射を行わないようにし、高圧ノズル5cからの噴射が行われるまではしきい値を大きくして車体検出を行い(4-2)、高圧ノズル5cが車体前端に達して高圧噴射を開始(4-3)してからは小さいしきい値で車体検出を行う(4-4)ようにしている。すなわち、図7に示すように、洗車機本体1が洗車開始位置P1から高圧ノズル5cの噴射開始位置P2まで走行する間は大きいしきい値(40〜50%程度)で車形検出を行い、洗車機本体1が高圧ノズル5cの噴射開始位置P2から洗車終了位置P3まで走行する間は小さいしきい値(10%程度)で車体検出を行う。
【0033】
これにより、車形検出装置9で車体前方の形状を検出しているときには、しきい値を大きくして確実な車形検出を行うことができ、ナンバープレートやフォグランプの取り付け金具を検出することが可能になる。その後、高圧ノズル5cから噴射が開始されると、しきい値を小さくして高圧噴射による影響を受けない車形検出を行うことが可能になる。
【0034】
なお、湯気の発生を検知する機能を持たせ、高圧スプレーを使用しない洗車においても湯気の発生が見込まれる場合には、上記した高圧スプレー洗車と同様に、散水を伴う洗浄が開始するまで大きいしきい値とし、散水を伴う洗車が開始した後は小さいしきい値とするといったことも可能である。また、高圧スプレーを使用する洗車で且つ湯気の発生が見込まれる場合には、実質的に洗車しながらの車形検出が不可能と判断し、車形検出工程のみを先に実行する。この場合、洗浄水を使用しないのでしきい値を基礎データの40〜50%程度に設定すれば良い。
【0035】
この実施例は以上のように構成されるものであるが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。例えば、実施例ではドライブスルー式の門型洗車機に適用した例を示すが、洗車機としてはドライブスルーである必要はないし、自動車をコンベアで搬送する連続式洗車機や、ブラシを使用せず高圧スプレーだけで洗車するブラシレス洗車機などにも、何の問題もなく適用することができる。また、実施例では、しきい値に影響する洗車内容として、高圧スプレーの有無や洗浄水使用の有無を上げているが、洗車内容によっては液剤散布の方向や量を変えて行うこともあり、また洗車機の構造によって影響の度合も異なるので、更にいろいろな条件でしきい値を可変することもできる。更に、実施例では、しきい値に影響する環境として、寒冷時の湯気の発生を取り上げているが、洗車機の構造や設置状況に応じては直射日光や雨・雪などの天候が車形検出に影響することもあり、こうした条件に応じてしきい値を変更することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例における洗車機本体1の平面図である。
【図2】実施例の制御系を示すブロック図である。
【図3】実施例における主に車形検出装置9の制御系の説明図である。
【図4】実施例とした洗車機での洗車動作を説明するフローチャート図である。
【図5】初期設定の動作を説明するフローチャート図である。
【図6】車形検出の動作を説明するフローチャート図である。
【図7】車形検出の動作を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 洗車機本体
3 上面ブラシ
5c 高圧ノズル
9 車形検出装置
9a 発光部
9b 受光部
20 洗車機本体の制御部
28 車形検出装置の制御部
L1〜Ln 発光素子
R1〜Rn 受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車もしくは洗車機のいずれかもしくは両方が走行し、この走行に伴い洗車機に備える洗車処理装置で自動車車体の洗浄・乾燥等を行う洗車機であって、自動車を幅方向に挟んで発光部と受光部を配置し、発光部からの投光が受光部で受光されるか否かによって車体の有無を検出し、前記自動車もしくは洗車機の各移動位置での車体検出の結果を集めて車形データを形成する車形検出装置を備えた洗車機において、
前記車形検出装置は、前記洗車処理装置よりも先行する洗車機の前方に備え、対向した発光素子の発光に伴う受光素子での受光量の増加分が所定のしきい値以下と認められるとき、車体検出と判断するものであり、
前記しきい値は、実行しようとする洗車の内容が高圧スプレー洗浄を含むものであるとき、自動車もしくは洗車機が走行を開始してから前記洗車処理装置による高圧スプレー洗浄が実行されるまでは大きく設定され、高圧スプレー洗浄が実行されてからは小さく設定されることを特徴とする洗車機における車形検出方法。
【請求項2】
自動車もしくは洗車機のいずれかもしくは両方が走行し、この走行に伴い洗車機に備える洗車処理装置で自動車車体の洗浄・乾燥等を行う洗車機であって、自動車を幅方向に挟んで発光部と受光部を配置し、発光部からの投光が受光部で受光されるか否かによって車体の有無を検出して、前記自動車もしくは洗車機の各移動位置での車体検出の結果を集めて車形データを形成する車形検出装置を備えた洗車機において、
前記車形検出装置で対向した発光素子の発光に伴う受光素子での受光量の増加分が所定のしきい値以下と認められるとき車体検出と判断する判定手段と、実行しようとする洗車の内容が高圧スプレー洗浄を含むものであるとき、自動車もしくは洗車機が走行を開始してから前記洗車処理装置による高圧スプレー洗浄が実行されるまではしきい値を大きく設定し、高圧スプレー洗浄が実行されてからはしきい値を小さく設定する設定手段と、該設定手段で与えるしきい値に基づいて前記判定手段から得る車体検出信号を取り込み、この車体検出信号に応じた車形データを形成する車形データ形成手段とを設けたことを特徴とする洗車機における車形検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−23777(P2010−23777A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−190443(P2008−190443)
【出願日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(000103138)エムケー精工株式会社 (174)
【Fターム(参考)】