説明

活性剤の持続性IN−VIVO送達のための方法及びデバイス

本発明は、対象への活性剤の持続性のin−vivoの放出を提供するための方法及びデバイスを含む。ある側面において、このような放出は、対象の内部に持続性放出活性剤デポーを形成するために、活性剤を、in−vivoでデポー形成剤と反応させることによって達成することができる。次いでデポーは、活性剤を持続した時間放出することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、個体の身体組織の局所化された領域、特に眼を経由する活性剤の最小に侵襲的な又は非侵襲的な送達に従う、活性剤のin−vivoの持続性送達のための系、方法、及びデバイスに関する。従って、本発明は、化学、薬科学、及び医薬、特に眼科学の分野に関係する。
【0002】
発明の背景
失明を防止するために眼の薬物送達を必要とする前部及び中間部の眼の疾病は、中でもブドウ膜炎、細菌性及び真菌性眼内炎、加齢関連黄斑変性症、ウイルス性網膜炎、及び糖尿病性網膜症を含む。例えば、後部ブドウ膜炎の報告された発生率は、米国内において100,000人より多い。未治療のまま放置した場合、ブドウ膜症は、失明に導く。これは、米国内の全ての視覚障害の約10パーセントに当り、そして世界中の失明の、3番目の主要な原因である。
【0003】
中間部及び後部ブドウ膜炎の治療は、局所的に適用される薬物治療のための後部眼球の非到達性によって複雑である。中間部及び後部ブドウ膜症のための現時点の療法は、コルチコステロイドによる繰返した眼窩周囲の注射及び/又は高投与量の全身性療法を必要とする。血管網膜関門が、ほとんどの薬物の全身性の循環血液から眼の内部への通過を妨害するために、注射が全身性薬物投与より通常好ましい。従って、中間部及び後部ブドウ膜症を治療するために大量の全身性投与量が必要であり、これは、しばしば、免疫抑制、副腎抑制、潰瘍発生、流体及び電解質不均衡、脂肪再分布及び心理的疾患を含む全身性の毒性となる。
【0004】
眼内炎は、米国において毎年概略10,000人に影響している。眼内炎は、典型的には眼の手術又は外傷後にグラム陽性菌によって起こされるが、しかしこれは、特質として真菌性又は細菌性であることもできる。眼内炎の現時点の治療の方法は、抗生物質の硝子体への直接注射である。眼窩周囲注射及び全身性投与は、眼の標的部位に有効な量の抗生物質を送達しないために、硝子体注射が必要である。加齢関連黄斑変性症(AMD)は、50歳を超える年齢の患者の中心部視野の不可逆的喪失の主要な原因である。AMDは、世界中で1500万人より多いヒトに影響している。
【0005】
後部眼の疾病の治療は、硝子体内及び眼窩周囲注射又は全身性薬物投与を必要とする。全身性投与は、先に検討したように全身性毒性となるために、通常好ましくない。硝子体内及び眼窩周囲注射は、全身性投与より好ましいが、ほとんどの硝子体中に注射された化合物の半減期は比較的短く、通常数時間のみの規模である。従って、硝子体内注射は、頻繁な投与を必要とする。注射の繰返しは、疼痛、不快感、眼内圧の増加、眼内出血、感染の機会の増加、及び網膜剥離の可能性を起こすことができる。眼窩周囲注射の主要な合併症は、眼球の事故的な穿孔であり、これは、疼痛、網膜剥離、高眼圧、及び眼球内出血を起こす。眼窩周囲注射の他の可能性のある合併症は、疼痛、中央部網膜動脈/静脈閉塞、及び眼内圧増加を含む。従って、眼の後部へのこれらの眼の薬物の送達の方法は、大きな制約及び多くの欠点を有する。更に、注射は、患者によって非常に不良に受入れられる。これらの方法は、熟練し、そして経験を有する注射を行う医師が関係するために、更に、高い健康管理費にも関係する。
【0006】
眼のイオン泳動(ocular iontophoresis)は、患者の眼の内部への関心のある化合物の送達のために使用される非侵襲的技術である。実施において、電気回路を完成するために、二つのイオン泳動電極が使用される。伝統的な強膜経由のイオン泳動において、少なくとも一つの電極が活性なイオン泳動電極と考えられ、一方他は、リターン電極、不活性電極、又は不関電極と考えることができる。活性な電極は、典型的には、眼の表面に置かれる。関心のある化合物は、電流が組織を経由して電極に適用された時に、組織を通して活性な電極に運搬される。化合物の運搬は、直接の電場効果(例えば電気泳動)、間接的な電場効果(例えば電気浸透)、電気的に誘導された細孔又は運搬経路の形成(電気穿孔)、又はこれらのいずれかの組合せの結果として起こることができる。眼の薬物送達のための現時点で既知のイオン泳動デバイス及び方法の例は、米国特許第6,319,240号;6,539,251号;6,579,276号;6,697,668号及びPCT出願公開WO03/030989及びWO03/043689中に見出すことができ、これらのそれぞれは、本明細書中に参考文献として援用される。
【0007】
その見かけ上の利益にも関わらず、イオン泳動は、実質的に眼球内部への薬物の運搬の侵襲性を制約する方法であるのみである。一旦眼球内に入れば、水溶性化合物の薬物動態は、硝子体内注射に続くものと同一であり、即ちこれらの半減期は、数時間の桁である。従って、多くの場合、伝統的なイオン泳動は、硝子体内注射と同様に頻繁に繰返さなければならず、患者の不都合、費用の増加、及びイオン泳動治療自体によって起こされる不都合な効果の可能性に導く。
【0008】
中間部及び後部の眼の疾病の治療のための眼における化合物の持続性送達を提供するために、各種の技術が提案されている。例えば、眼内の生分解可能なポリマーの移植は、米国特許第5,443,505号;5,766,242号;5,824,072号;6,331,313号;及び6,699,493号中で開示され、そして検討され、これらのそれぞれは、本明細書中に参考文献として援用される。潜在的に有効ではあるが、これらの方法は侵襲的であり、そして従って患者への高い程度の危険度及び不快感を提起する。
【0009】
投与の頻度に関する問題は、眼の疾病の治療を悩ます問題だけでなく、ほとんどの他の薬物療法の管理に対しても問題である。経口投与製剤のほとんどの管理は、少なくとも一日に一回、そしてしばしば一日当り多数回投与されなければならない。ほとんどの局所投与の管理も、更にこの問題を共有し、そして局所用製剤の毎日の適用を必要とする。経皮貼布は、より少ない頻度の投与の管理を可能にすることができるが、経皮貼布は、これらが皮膚に着けるという事実のために、他への注目度、皮膚の刺激、及び剥離のような他の問題に悩まされる。更に、長期の薬物放出を提供するその潜在性においてさえ、皮膚の刺激及び剥離に問題のために、現在市販されている最も永く続く貼布は、新しい貼布を投与しなければならなくなる前に、典型的には7日間しか続かず、そして更にしばしば3−4日間しか続かない。
【0010】
このように、頻繁な投与を必要としない、最小に侵襲的に又は非侵襲的に薬物を、特に眼の内部に送達することが可能であるデバイス、系、及び方法が、探求され続けている。
【0011】
発明の概要
従って、本発明は、最小のみないし非侵襲的で、対象中の活性剤の持続性in−vivo放出を提供する系、デバイス、及び方法を提供する。一つの側面において、このような方法は、活性剤を対象に送達すること、活性剤を対象中でデポー形成剤と反応させて、活性剤を沈殿させ、そして活性剤の持続性放出デポーを作製すること、及びデポーから持続した時間にわたって活性剤を放出させておくこと、を含むことができる。持続性放出デポーを形成するために使用することができる例示的な反応は、制約されるものではないが、活性剤及びデポー形成剤間のイオン性会合、活性剤の一部を開裂し、そして従ってその水溶解性を低下する反応、並びにデポー、又は有効なデポー(即ち持続性放出効果)の形成を起こす生理学的環境の影響の導入を含むことができる。多くの場合、持続性放出デポーの形成は、上記に列挙した機構のいずれか又は他の機構による活性剤のin−vivoの沈殿と考えることができる。
【0012】
本発明の一つの重要な側面は、活性剤及びデポー形成剤が、対象に別個に投与されることである。言い換えれば、これらは、送達されるとき、混合された溶液又は懸濁液中のように、互いに物理的に接触していない。然しながら、活性剤及びデポー形成剤が、互いに物理的に接触せずに送達されるが、これらは、ある側面において同一のデバイスから送達されることは注意すべきである。更に、このような薬剤は、これらがin−vivoで反応して、持続性放出デポーを形成する限り、同時に、同一の経路によって、又は異なった時間及び異なった経路を経由して投与することができる。
【0013】
ある側面において、デポー形成剤は、対象の身体の内在性物質であることができ、そしてこれを投与することができるが、しかしある場合にはその必要はない。この場合、活性剤のみが投与されるものである。
【0014】
送達される特定の活性剤は、もたらされる特定の治療にもよるが、各種の物質であることができる。このような物質は、都合のよいそして有効な、最小に侵襲的な、又は非侵襲的な放出、それに続くin−vivoの持続性放出デポーの形成を得るために必要とするように、そのプロドラッグを含む各種の形態の薬物を含むことができる。例示的な活性剤は、更に本明細書中で以下に列挙する。
【0015】
同様に、in−vivoの持続性放出デポーの形成を促進するために、各種のデポー形成剤を使用することができる。具体的なデポー形成剤の選択における考慮は、制約されるものではないが、使用される特定の活性剤、生理的範囲及び投与の種類、並びに送達製剤中に含まれる他の成分を含むことができる。使用することができる具体的なデポー形成剤の例は、本明細書中で以下に更に列挙する。
【0016】
なおもう一つの側面において、in−vivoのデポーの形成は、対象の身体中の活性剤を不動化することによって補助することができる。不動化は、例えば、持続性放出デポーが形成される前に、活性剤が、身体の他の部分に循環されることを防止することができる。活性剤を不動化するための多くの機構を使用することができ、そして送達の近辺において血管を収縮する血管収縮剤の使用のように当業者によって認識されるものである。同様な機構は、対象の身体中でデポー形成剤を不動化するために使用することができる。
【0017】
In−vivoの持続性放出デポーを形成するための方法に加えて、本発明は、更に本明細書中で述べられた方法によって形成される、対象中の医薬デポー製剤を包含する。一つの側面において、このようなデポーは、沈殿物の形態の活性剤の塊りを含み、これは、可溶化され、そして持続した時間にわたって活性剤を放出することができる。
【0018】
本発明は、更に活性剤及びデポー形成剤の投与のためのデバイスを包含し、これは、本明細書中に列挙した方法を行うために使用することができる。一つの側面において、対象中の活性剤の持続性in−vivo放出を提供するためのこのようなデバイスは、活性剤を含有するために形成された第1の電極アセンブリー、デポー形成剤を含有するために形成された第2の電極アセンブリー含むことができ、第1及び第2の電極は、活性剤及びデポー形成剤を対象に放出するために使用された場合、in−vivoで形成される持続性放出デポーの位置を制御する距離を互いに有する。
【0019】
更に、本発明は、活性剤の持続性放出デポーを対象の特定の位置に送達する方法を包含する。一つの側面において、このような方法は、活性剤を含有する第1の電極アセンブリーを、対象の身体の表面に位置させ、そしてデポー形成剤を含有する第2の電極アセンブリーを、対象内のデポー形成の位置を決定する第1の電極からの一定の電極間距離で対象の身体表面の範囲に位置させることを含むことができる。
【0020】
本発明は、更に、本明細書中に列挙したデバイス、系、及び方法を使用して各種の症状及び疾病を治療する方法を含む。一つの特定の側面において、このような症状又は疾病は、眼の症状又は疾病であることができる。このような症状の例は、制約されるものではないが、黄斑浮腫、加齢関連黄斑変性症、前部、中間部、及び後部ブドウ膜症、HSV網膜炎、糖尿病性網膜症、細菌性、真菌性、又はウイルス性眼内症、眼癌、神経膠芽腫、緑内障、及び眼神経の緑内障性変性を含む。
【0021】
発明の詳細な説明
持続性放出の眼の薬物送達のための本発明の系及び方法を開示し、そして記載する前に、本発明が、本明細書中に開示される特定の方法の工程及び物質に制約されるものではなく、しかし当業者によって認識されるものであるようにその同等物に拡張されることは理解されることである。本明細書中で使用される用語が、特定の態様を記載する目的のためのみに使用され、そして制約されることを意図したものではないことも更に理解されるべきである。
【0022】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、単数の形態“一つ(a)”、“一つの(an)”及び“その(the)”は、文脈が明確に他を指していない限り、複数の指示対象を含むことは注意すべきである。従って、例えば、“ポリマー(a polymer)”に対する言及は、一つ又はそれより多いこのようなポリマーに対する言及を含み、そして“賦形剤(an excipient)”は、一つ又はそれより多いこのような賦形剤に対する言及を含む。
【0023】
定義
本発明を記載し、そして特許請求することにおいて、以下の用語が、以下に記載される定義によって使用されるものである。
【0024】
本明細書中で使用される場合、“製剤”及び“組成物”は、本明細書中で互換的に使用することができ、そして二つ又はそれより多い要素、又は物質の組合せを指す。ある態様において、組成物は、活性剤、賦形剤、又は、送達又はデポー形成を向上する担体を含むことができる。
【0025】
本明細書中で使用される場合、“活性剤”、“生理活性剤”、“医薬的活性剤”及び“医薬品”は、互換的に使用することができて、有意な又は有効な量で対象に投与された場合、測定可能な特異的又は選択的生理学的活性を有する薬剤或いは物質を指す。用語“薬物”は、多くの薬物及びプロドラッグが、特異的な生理学的活性を有することが知られているように、本発明の定義によって明確に包含されることは理解されることである。これらの技術的用語は、製薬及び医学技術において周知である。本発明において有用な薬物の例は、制約されるものではないが、ステロイド、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤、代謝拮抗剤、免疫抑制剤、VEGF阻害剤、ICAM阻害剤、抗体、タンパク質キナーゼC阻害剤、化学療法剤、神経保護剤、鎮痛剤、核酸誘導体、アプタマー、タンパク質、酵素、ペプチド、及びポリペプチドを含む。
【0026】
本明細書中で使用される場合、“プロドラッグ”は、薬物(その普通に知られた薬理学的に活性な形態)に転換されるものである分子を指す。プロドラッグ自体も、更に薬理学的に活性であることができ、そして従って、更に先に列挙したような“活性剤”の定義内に明確に含まれる。例えば、リン酸デキサメタゾンは、デキサメタゾンのプロドラッグとして分類することができ、そしてリン酸トリアムシノロンアセトニドは、トリアムシノロンアセトニドのプロドラッグとして分類することができる。
【0027】
本明細書中で使用される場合、“有効な量”及び“十分な量”は、互換的に使用することができ、そしてこれが、組成物中に含まれた場合、意図した組成的又は生理学的効果を達成するために十分である成分の量を指す。従って、“治療的に有効な量”は、非毒性の、しかし活性剤が有効であることが知られた症状を治療することにおいて治療的結果を達成するための活性成分の十分な量を指す。各種の生物学的因子がその意図する課題を達成する物質の能力に影響することができることは理解される。従って、“有効な量”又は“治療的に有効な量”は、ある場合、このような生理学的因子に依存することができる。更に、治療的効果の達成は、医師又は他の医療関係者によって、当技術において既知の評価法を使用して測定することができるが、治療に対する個人的変化及び反応が、治療効果の達成を主観的決定とすることができることが認識されている。有効な量の決定は、十分に、医薬科学及び医学の技術における通常の技術の範囲である。例えば、本明細書中に参考文献として援用される、Meiner and Tonascia,“Clinical Trials:Design,Conduct,and Analysis”,Monographs in Epidemiology and Biostatistics,Vol.8(1986)を参照されたい。
【0028】
本明細書中で使用される場合、“強膜”は、眼の中の強膜組織、又は眼の表面の角膜縁及び円蓋間の結膜を指し、これは、眼の白い部分である。“強膜”は、更に他の眼の組織を指すことにも使用される。
【0029】
本明細書中で使用される場合、“対象(subject)”は、本明細書中に列挙されるような組成物の投与又は方法から利益を得ることができる哺乳動物を指す。最もしばしば、対象はヒトであるものであるが、しかしイヌ又はネコのような他の動物であることができる。
【0030】
本明細書中で使用される場合、“投与”及び“投与すること”は、活性剤、又はそのようなものを含有する組成物が、対象に与えられることを指す。本明細書中で検討されるように、本発明は、主としてイオン泳動放出、特に眼への送達に関する。
【0031】
本明細書中で使用される場合、“非侵襲的”は、それを通して関心のある薬物又は化合物が送達される生物学的膜又は構造が、機械的手段で破裂又は穿刺されない投与の形態を指す。多くの非侵襲的送達機構は、貼布及び局所製剤のように経皮技術において十分に認識されている。多くのこのような製剤は、活性剤の非侵襲的送達を促進するために化学的浸透向上剤(a chemical penetration enhancer)を使用することができる。更に、薬物の浸透を向上するためのイオン泳動のような非化学的機構を使用する他の系又はデバイスも、更に知られている。“最小に侵襲的”は、生物学的膜又は構造を穿刺するが、しかし対象への過剰な不快感及び重度の不都合な効果を起こさない投与の形態を指す。“最小に侵襲的”な薬物送達の例は、マイクロニードル、レーザー、又は経皮放出の熱パンクチュエーション(heat punctuation)及び眼への送達の眼窩周囲注射である。
【0032】
本明細書中で使用される場合、“デポー”は、生物学的組織又は系の内部の一時的な塊を指し、これは、時間をかけて塊から放出される薬物を含む。ある態様において、デポーは活性剤と、活性剤自体より低い溶解性であり、そのためin−vivoで沈殿する、活性剤複合体を形成する、複合体形成イオンのようなデポー形成剤、との相互作用によって形成することができる。
【0033】
本明細書中で使用する場合、“身体表面”は、眼及び経皮送達において遭遇する組織表面、或いは頬側送達のための口、または膣内送達のための膣管のような身体空洞を内張りする粘膜組織、のような対象の外部組織表面を指す。用語“皮膚”は、対象の外部組織表面を指す。従って、皮膚が、更に粘膜及び上皮組織、並びに眼の外部表面を指すことも意図している。
【0034】
本明細書中で使用される場合、“電極アセンブリー”は、少なくとも一つの電極及び少なくとも一つの貯蔵器のアセンブリーを指す。
【0035】
本明細書中で使用される場合、“貯蔵器”は、デポー形成剤又は活性剤を含有することができる物体又は塊を指す。このように、貯蔵器は、液体を含有することができるいずれもの構造、並びに送達される薬剤を構成する固体の構造を含むことができる。ある場合には、電極を貯蔵器と考えることができる。
【0036】
本明細書中で使用される場合、用語“反応すること”は、活性剤を変化する、いずれもの力、環境条件の変化、他の化学薬剤の存在又はそれとの遭遇、等を指す。例えば、活性剤及びデポー形成剤間で“反応すること”は、物理的又は化学的相互作用であることができる。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語“沈殿物”は、完全に可溶化しないいずれものものを指す。このように、沈殿物は、結晶だけでなく、更にゲル、半固体、増加した分子量、等を含むことができる。
【0038】
濃度、量、溶解度、及び他の数値データは、本明細書中において、範囲の形式で表示され又は与えられることができる。このような範囲の形式が、単に便宜上及び簡潔さのために使用され、そして従って範囲の限界として明確に列挙した数値だけでなく、更に全ての個別の数値又はその範囲に包含される小範囲を、それぞれの数値及び小範囲が明確に列挙されているかのように含んで、柔軟に解釈されるべきであることは理解されることである。
【0039】
例示として、“約1ないし約5”の数値の範囲は、約1ないし約5の明確に列挙された値を含むだけでなく、更に示された範囲内の個々の値及び小範囲をも含むと解釈されるべきである。従って、この数値の範囲に含まれるものは、2、3、及び4のような個々の値、並びに1−3、2−4、及び3−5、等のような小範囲である。この同様な原則は、ただ一つの数値が記載された範囲に適用される。更にこのような解釈は、範囲の幅又は記載される特徴に関係なく適用されるべきである。
【0040】
本発明
本発明は、対象中に持続性放出デポーを、in−vivoで形成するための方法、デバイス、及び製剤を提供する。このようなデポーは、対象の組織の内部に又は器官中に形成することができ、これから治療剤が持続性に基づいて放出される。このような投与の方法に利益があることができる器官の一つの例は、眼である。然しながら、本発明の特許請求の範囲が、本発明の側面を効果的に行うことができる全ての組織を包含することを意図していることは注意すべきである。
【0041】
一つの側面において、持続性放出デポーは、対象への活性剤の送達後、例えば眼のような身体の組織中の、活性剤のデポー形成剤との反応によって形成することができる。活性剤の送達は、非侵襲的又は最小に侵襲的な既知の手段によって、そして能動的送達又は受動的送達を含むことができる。デポー形成剤も対象に送達することができ、又はこれは、活性剤と反応する内在性物質であることができる。いずれの場合も、デポー形成剤及び活性剤は、活性剤が対象中に送達されるまで互いに相互作用しない。このように、ほとんどの場合、活性剤及びデポー形成剤は、両方がin−vivoに位置するまで分離されるものである。デポー形成剤が患者に送達される場合、両方の薬剤は別個に送達されなければならない。内在性デポー形成剤は、もちろん投与が起こるまで活性剤と接触しないものである。従って、活性剤及びデポー形成剤間のin−vivoの反応は、活性剤又はその誘導体がデポーを形成することを起こすものである。一つの側面において、このようなデポー形成機構は、活性剤の溶解度の変化であり、従って沈殿及びその後のデポーの形成を起こすことができる。次いでこの活性剤の複合体のデポーは、生物学的系に治療化合物を時間をかけて送達することが可能である。このような持続性放出は、対象への活性剤の局所的又は全身性の送達を含むことができる。このように、一つの態様において、デポー形成剤は、対象の所望する位置に形成することができ、そして活性剤を、全身性で投与することができ、そしてデポー形成剤を“収集”して、活性剤が身体を通して循環する間にデポーを形成することができる。もう一つの側面において、デポー形成剤は、活性剤と直接反応しないが、しかし持続性放出デポーの形成を促進するために機能することができる。このような場合、デポー形成剤は、局所雰囲気の範囲と反応して、そこで変化を起こすことができる。次いで活性剤は、局所雰囲気の変化された範囲と反応して、デポー形成剤によって促進された変化の結果として、デポーを形成するものである。
【0042】
持続性放出の機構として、本発明のデポー形成が、一般的に活性剤自体のそれより低いものであるin−vivoの溶解度を有することは認識されるものである。この方法において、活性剤がデポーから時間をかけて溶解するために、持続した治療効果を得ることができる。更に、デポー中の活性剤が、そこから放出されるまで治療効果を有することが不可能であるために、デポーの溶解度特性が、長期間にわたって維持するために十分な量の薬物を送達した場合に通常生じるものである、潜在的な毒性及び過剰投与の懸念を制約する。
【0043】
詳細な側面において、本発明による一つの方法は:a)活性剤を、対象に局所化された生理学的領域、例えば眼のような器官に、イオン泳動を使用して送達すること;b)活性剤を、対象の内部でデポー形成剤と反応させて、活性剤を沈殿させ、そして活性剤の持続性放出デポーを作製すること;及び、c)デポーから継続した時間にわたって活性剤を放出させておくこと、を含むことができる。薬物放出の速度は、デポーの溶解度に関係し、そして拡散律速過程に従う。この方法は、治療化合物のイオン泳動による運搬、及び前部、中間部、及び後部の眼の疾病の治療のための眼の中の化合物の持続性放出によって、眼中のそのレベルを持続するために特に適している。イオン泳動に加えて、活性剤は、音泳動、電気穿孔、受動拡散、等を含む当業者にとって既知の手段によって送達することができる。
【0044】
もう一つの側面において、送達された薬物の対象へのその後の持続性放出を伴う非侵襲的薬物送達を提供する方法は、活性剤及びデポー形成剤の対象への非侵襲的投与により、対象中に活性剤のデポーを形成すること、及び、活性剤のデポーからの時間をかけた放出をさせておくこと、を含むことができる。
【0045】
本発明の方法及びデバイスから多くの症状が利益を得ることができるものであるが、これらは、直接、組合せ、及び補助的療法として、眼疾病の治療に特によく適している。これは、眼の組織の比較的高い透過性及び眼内の大きい水性の区画のためである。眼の疾病の例は、制約されるものではないが、黄斑浮腫、加齢関連黄斑変性症、前部、中間部、及び後部ブドウ膜炎、HSV網膜炎、糖尿病性網膜症、細菌性、真菌性、又はウイルス性眼内炎、眼癌、神経膠芽腫、緑内障、及び眼神経の緑内障性変性を含む。更に、ヘルペス、癌、及び乾癬のような皮膚疾病は、本明細書中に記載された各種の側面によって有効に治療することができる。本発明の方法及びデバイスからの利益を得るものである他の症状は、疼痛並びに筋肉及び関節の炎症の治療におけるような局所的及び全身性経皮放出から利益を得ることができる疾病である。
【0046】
結膜、ブドウ膜、及び強膜のような血液の循環によって取囲まれている組織中の有効な持続性放出のために、デポーは、低い水溶解度を有していなければならない。少なくとも概略1日の持続性放出を達成するために、1:1の活性剤とデポー形成剤の複合体に対して、活性剤の水溶解度が、10−4Mより低いことが好ましく、又は溶解度積(Ksp)が、10−8より低いことが好ましい。デポー複合体の溶解度は、活性剤の永い持続性放出のために高すぎてはならず、そして治療効果を得るために低すぎてはならない。活性剤の好ましい溶解度は、活性剤化合物の物理化学的特性及び治療の作用にもよるが、10−12ないし10−4Mの範囲である。活性剤又はデポー複合体の溶解度は、唯一の持続性放出のパラメーターではない。活性剤放出の速度は、更に組織中に蓄積された活性剤の量にも関係し、これは、活性剤放出の所望する速度に対してイオン泳動のような送達方法によって制御される。活性剤化合物の放出に影響する他のパラメーターは、組織中の活性剤の拡散係数、組織の多孔性、組織の屈曲度、及び血液の脈管構造のクリアランスである。熱及び振動のような外部の手段も、更に放出の速度を向上するために使用することができる。更に、デポー複合体の形成は、活性剤又はデポー形成剤の複合体化前の除去(pre-complexation clearance)を防止するために迅速に起こらなければならない。デポーの核形成のために必要なデポー形成剤及び活性剤の濃度は、低くなければならない。
【0047】
使用中に、デポー形成剤は、活性剤の水溶解度を低下するために作用することができる。このように溶解度特性を変化することによって、活性剤は、in−vivoで沈殿を起こし、そして薬剤のデポーを形成し、次いでこれは、薬物を長時間にわたって対象に放出することができる。活性剤の溶解度を低下するための各種の機構を使用することができる。一つの態様において、デポー形成剤は、活性剤と、活性剤自体によるそれより低い溶解度を有する複合体を形成することができる。
【0048】
当業者によって認識されるものであるように、広い範囲の活性剤を、本発明において使用することができる。事実、デポー形成剤とin−vivoで反応して、デポーを形成することができるほとんどいずれもの薬剤を使用することができる。各種の症状の治療において使用することができる活性剤の例は、制約されるものではないが、興奮剤、鎮痛剤、麻酔剤、抗喘息剤、抗関節炎剤、抗癌剤、抗コリン剤、抗痙攣剤、抗鬱剤、抗糖尿病剤、止痢剤、制吐剤、駆虫剤、抗ヒスタミン剤、抗高脂血症剤、血圧降下剤、抗感染剤、抗炎症剤、抗片頭痛剤、抗悪性腫瘍剤、抗パーキンソン病薬、鎮痒剤、抗精神病剤、解熱剤、鎮痙剤、抗結核剤、抗潰瘍剤、抗ウイルス剤、抗不安剤、食欲抑制剤、注意欠陥障害及び注意欠陥多動性障害薬物、カルシウムチャネル遮断剤、抗狭心症剤、中枢神経系(“CNS”)剤、ベータ遮断剤及び抗不整脈剤を含む心血管治療剤、中枢神経系刺激剤、利尿剤、遺伝子材料、ホルモノリチック(hormonolytics)、催眠剤、血糖降下剤、免疫抑制剤、筋弛緩剤、麻薬拮抗剤、ニコチン、栄養剤、副交感神経遮断剤、ペプチド薬物、精神刺激薬、鎮静剤、ステロイド、禁煙剤、交感神経刺激剤、精神安定剤、血管拡張剤、β−作動剤、及び子宮収縮抑制剤、並びにこれらの混合物を含む。
【0049】
更に、活性剤の更なる例は、ステロイド、アミノステロイド、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤、代謝拮抗剤、VEGF阻害剤、ICAM阻害剤、抗体、タンパク質キナーゼC阻害剤、化学療法剤、免疫抑制剤、神経保護剤、鎮痛剤、核酸誘導体、アプタマー、タンパク質、酵素、ペプチド、ポリペプチド及びこれらの混合物を含むことができる。有用な抗ウイルス性活性剤の具体的な例は、アシクロビル又はその誘導体を含む。
【0050】
活性剤の具体的な例は、更に、ヒドロモルホン、リン酸デキサメタゾン、アミカシン、オリゴヌクレオチド、Fabペプチド、PEG−オリゴヌクレオチド、サリチル酸塩、トロピカミド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、スクアラミン、トリアムシノロンアセトニド、ジクロフェナク、コンブレタスタチンA4、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、及びこれらの混合物を含むこともできる。
【0051】
多くの環境下で、使用される活性剤は、プロドラッグ又はプロドラッグの形態であることができる。プロドラッグの好都合な使用の例は、特に、薬物自体が、デポー形成剤と適当に相互作用して、デポーを形成しない場合、又は更に長時間の投与期間が所望される場合を含むことができる。ほとんどいずれもの所望する活性剤のためのプロドラッグは、当業者によって容易に認識されるものである。更に、低い水溶解度を持つ薬物に代謝される高い電気移動度を持つプロドラッグは、薬物及びデポー形成剤の両方として好都合に使用することができる。この場合、プロドラッグは、イオン泳動的に送達され、そして次いでプロドラッグの薬物への代謝(例えば酵素的開裂)によってin−vivoでデポー中に沈殿することができる。
【0052】
デポーを形成することが可能ないずれものプロドラッグは、本発明の範囲内であると考えられるものであるが、例は、ステロイドの誘導体、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤、代謝拮抗剤、VEGF阻害剤、ICAM阻害剤、抗体、タンパク質キナーゼC阻害剤、化学療法剤、免疫抑制剤、神経保護剤、鎮痛剤、核酸誘導体、アプタマー、タンパク質、酵素、ペプチド、ポリペプチド、及びこれらの混合物含むことができる。ステロイド誘導体の一つの具体的な例は、リン酸トリアムシノロンアセトニド又はトリアムシノロンアセトニド他の誘導体、リン酸デキサメタゾンを含むことができる。例えば、プロドラッグが、眼の中に有効に送達され、そして沈殿させるイオンと複合体を形成することができるように、ステロイドを、一つ又はそれより多いリン酸、硫酸、或いは炭酸官能基で標識することは好ましいことであることができる。
【0053】
なおもう一つの側面において、イオン泳動において低い溶解度の薬物の電気的に移動性のプロドラッグは、眼の中に持続性放出系を形成するために使用することができる。プロドラッグが高い電気移動度を有するために、これは有効に眼に送達される。次いでプロドラッグは、眼の中で低い溶解度の薬物に変換され、そして不溶性の薬物は、眼の中で沈殿する。眼の中の固体状態の薬物は、眼の中にゆっくりと放出され、そして眼の持続性放出状態を与えるものである。
【0054】
比較的高い溶解度の薬物において、低い溶解度を持つプロドラッグ及び高い溶解度を持つプロ−プロドラッグを使用することができる。高い電気移動度のプロ−プロドラッグは、プロ−プロドラッグの有効なイオン泳動送達を可能にする。眼に入った場合、プロ−プロドラッグは、プロドラッグに変換され、これは、不溶性であり、そして眼の中に沈殿する。プロドラッグの薬物への変換は、薬物を沈殿物からゆっくりと放出し、そして持続性放出状態を与えるものである。
【0055】
持続性放出デポーが形成されることとなる各種の反応が意図されている。活性剤及びデポー形成剤間の反応は、イオン性会合を含むことができる。従って、一つの側面において、デポー形成剤は、活性剤上の少なくとも一つの荷電基に対して少なくとも一つの反対の電荷を有することができる。もう一つの側面において、デポー形成剤は、一つより多い電荷を有することができ、そして活性剤上の一つより多い電荷と並置することが可能であるものである。なおもう一つの側面において、デポー形成剤上の電荷は、多価であることができ、一つより多い活性剤がデポー複合体に入ることを可能にする。これは、複合化デポー形成剤間のより強い会合を可能にし、これによってデポー複合体の溶解度定数、Kspを低下し、従って治療の期間を増加する。一つの側面において、デポー形成剤は、イオンであることができる。有用なデポー形成剤の例は、制約されるものではないが、Ca2+、Sn2+、Fe2+、Fe3+、Mn2+、Mg2+、Zn2+、NH、周期表の遷移金属のイオン、PO3−、CO2−、SO2−、有機カチオン、有機アニオン、多価金属、キレート化剤、及び一般的に製薬工業において使用されるか、又は当業者にとって既知のイオン性医薬賦形剤を含む。デポー形成剤は、有効なイオン泳動送達及び有効に活性剤を沈殿させるために、好ましくは一つより多い電荷を有する。一つの側面において、デポー形成剤は、有効なイオン泳動送達及び活性剤と有効に反応して、持続性放出デポーを形成することの両方のために、十分なイオン性電荷を有することができる。
【0056】
デポー形成剤と活性剤の比は、一対一であることができる。然しながら、多価デポー形成剤の場合、一つより多い活性剤が、同一のデポー形成剤と複合体化して、デポー複合体を形成することができる。一つの側面において、デポー複合体は、約1:1ないし約1:4のデポー形成剤と活性剤の比を有することができる。もう一つの側面において、比は、約1:1であることができる。更なる側面において、比は、約1:2であることができる。なおもう一つの側面において、比は、約1:3であることができる。なお更なる側面において、比は、約1:4であることができる。一つの更なる側面において、デポー形成剤と活性剤の比は、約4:1ないし約1:4であることができる。
【0057】
二つ又はそれより多いデポー形成剤を、同時に使用して、持続性放出デポーを形成することができる。多数のデポー形成剤により、眼の中の同一の活性剤の全量を沈殿させるためのそれぞれのデポー形成剤の濃度を、減少することができる。これは、送達中及びその後の眼の中のデポー形成剤の濃度を有効に減少し、従ってデポー形成剤の濃度は、眼に不都合な影響を起こすことができるレベルより常に低い。多数のデポー形成剤の使用は、更に他の利益も提供する。例えば、持続性放出は、異なったデポー複合体のKsp値を有する多数のデポー形成剤を使用することによって更に制御することができる。
【0058】
デポー形成剤の他の例は、制約されるものではないが、触媒、重合開始剤、ペグ化剤(pegylating agents)、溶媒、pH、熱、又はイオン強度に敏感なポリマー、眼疾病の治療に使用される活性剤、スクアラミンのようなアミノステロイド、トリアムシノロンアセトニドの誘導体、並びにこれらの組合せ及び混合物を含むことができる。
【0059】
典型的には、デポー形成剤は、身体及び眼中で非毒性である。固体のデポー複合体は、非毒性でなくてなならず、そして眼においていずれもの副作用を起こしてはならない。デポー複合体の形成は、また、硝子体からの活性剤又はデポー形成剤の複合体化前の除去を防止するために、迅速に起こらなければならない。更に、デポーの核形成のために必要なデポー形成剤及び活性剤の濃度は、低くなければならない。デポー複合体は、減少された溶解度を有し、そしてその複合体の形態で、眼から除去されないか、又は減少された除去(reduced clearance)を有する。このように、眼の中のデポー形成剤及び活性剤の除去は、デポー形成の完結を可能にするために、沈殿過程と比較して比較的ゆっくりでなければならない。
【0060】
もう一つの側面において、反応過程は、ゲル又は凝集の形態のデポー複合体となることができ、そして別の方法として結晶質又は非晶質の形態であることができる。この場合、ゲルは、眼にいずれもの所望しない副作用を起こしてはならない。例えば、一つの具体的な側面において、デポーは、リン酸トリアムシノロンアセトニドのような活性剤及びCa2+イオンのようなデポー形成剤の複合体によって形成されたゲルであることができる。ある態様において、デポー内の粒子の大きさは、薬物の放出速度を決定するために制御又は調節することができる。更に、なおもう一つの側面において、反応過程は、活性剤の一部の開裂の結果であり、従って活性剤の水溶解性を低下することができる。このような過程の一つの例は、活性剤の酵素的開裂を含むことができる。このように、デポー形成剤は、酵素であるものである。
【0061】
検討されたように、一つの側面において、デポー形成剤は、対象の身体中の内在性物質であることができる。このような薬剤の例は、制約されるものではないが、各種の酵素、アスコルビン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、各種のアミノ酸、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、塩化物、フッ化物、並びに組織及び眼の硝子体中に見出されるイオンを含むことができる。このような場合、身体の内部のこのような物質の存在は、デポーを形成するために頼りにすることができ、そして活性物質のみが送達されるものである。別の方法として、これらが、デポーを形成するために十分な量で存在すると考えられない場合、このような物質を身体に送達することができる。
【0062】
関心のある化合物の一つの例は、トリアムシノロンアセトニド及びリン酸トリアムシノロンアセトニドのようなその誘導体(プロドラッグ)である。トリアムシノロンアセトニドは、リン酸トリアムシノロンアセトニドの代謝及び加水分解から得ることができる。トリアムシノロンアセトニドの低い水溶解度のために、組織中のトリアムシノロンアセトニドの沈殿は、リン酸トリアムシノロンアセトニドの送達後、持続性放出系を与える。然しながら、リン酸トリアムシノロンアセトニドは、送達部位から急速に除去されることができ、そしてリン酸トリアムシノロンアセトニドの代謝及び加水分解のために、組織中の十分に長い滞留を与えることができない。一つの側面において、リン酸トリアムシノロンアセトニドは、まず組織中の対イオンによって沈殿することができ、これは、トリアムシノロンアセトニドのそれより高い水溶解度を有する。リン酸トリアムシノロンアセトニド−対イオン複合体は、十分に低い溶解度を有して、リン酸塩からトリアムシノロンアセトニドへの変換のための組織中の滞留を与える。リン酸トリアムシノロンアセトニドが、沈殿物のデポーから放出されるとき、リン酸トリアムシノロンアセトニドは、トリアムシノロンアセトニドに変換される。トリアムシノロンアセトニドの溶解度は低く、そして組織中に沈殿して、更なる持続性放出能力を与えるものである。もう一つの側面において、沈殿過程は、ゲル又は凝集の形態のイオン−薬物複合体となることができる。ゲル又は凝集は、薬物の除去の前に、酵素的分解及び転換が起こることを可能にする。ゲルの形成は、リン酸デキサメタゾン(デキサメタゾンのプロドラッグ)又はリン酸トリアムシノロンアセトニドがカルシウムイオンと混合された場合に観察された。
【0063】
ある場合には、イオン泳動処置中に、送達された全活性剤のわずか一部が、小部分でさえ、デポー形成剤と反応することは好ましくないものではない。このような場合、眼のイオン泳動薬物送達の結果としての眼の中の比較的高い遊離活性剤の濃度は、初期のイオン泳動治療後の最初の数時間(又は数日)、“噴出(burst)”治療効果を与える。この初期の“噴出”治療期後、デポー複合体は、活性剤を比較的ゆっくりした速度で放出し、そして比較的低いが、しかし治療的に有効な眼の中の薬物濃度を、初期の治療の後、数ヶ月まで持続する。
【0064】
適用位置を、活性剤及び/又はデポー形成剤の送達後、密封剤で密封することは、利益のあることであることができる。この方法は、イオン泳動投与の起こった組織を保護することができる。密封剤は、ゲル、接着剤、及び不透過性の重合性又は樹脂性の膜を含む当業者にとって既知のいずれもを含むことができる。
【0065】
ある場合には、デポー形成は、眼の中のデポー形成剤又は活性剤のいずれかのin−vivoの移動によって妨害されることがある。従って、このような移動を制限する又は緩徐化するための各種の手段が、デポー形成の有効性を改良することが考えられる。一つの側面において、in−vivoの移動は、活性剤の沈殿又は他のデポー形成過程が起こる範囲に存在する血管の収縮によって制限することができる。このような収縮は、血管収縮剤の投与によって導入することができる。このような血管収縮剤は、イオン泳動又は他の手段によって能動的に投与することができるか、或いはこれは、受動的に送達することができる。血管収縮剤の具体的な非制約的な例は、ナファゾリン、及びテトラヒドロゾリンのようなα−作動剤、フェニルエチルアミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、ドブタミン、コルテロール、エチルノルエピネフリン、イソプロテレノール、イソエタリン、メタプロテレノール、テルブタリン、メテアラミノール(metearaminol)、フェニレフリン、チラミン、ヒドロキシアンフェタミン、リトロドリン(ritrodrine)、プレナルテロール、メトキシアミン、アルブテロール、アンフェタミン、メタンフェタミン、ベンズフェタミン、エフェドリン、フェニルプロパノールアミン、メテンテルミン(methentermine)、フェンテルミン、フェンフルラミン、プロピルヘキセドリン、ジエチルプロピオン、フェンメトラジン、及びフェンジメトラジンのような交感神経刺激剤を含む。血管収縮剤は、活性剤の投与の前又は同時のいずれかに投与することができる。血管収縮剤の投与は、活性剤の投与に続いて起こることができるが、結果は、事前又は同時投与より効果が少ない。更に、ある側面において、血管収縮剤は、活性剤と同一極性を有することができ、そして活性剤と同時に投与することができる。同様に、血管収縮剤は、デポー形成剤と同一極性を有することができ、そしてデポー形成剤と共に投与することができる。
【0066】
本発明のもう一つの側面において、in−vivoの移動は、血管への物理的力の適用の結果としての血管の収縮によって制限することができる。
【0067】
本発明の各種の側面は、持続性放出デポーを形成するために機能するイオン泳動デバイスを包含することを企図する。従って、一つの側面において、対象中の活性剤の持続性in−vivo放出を提供するためのデバイスが記載される。このようなデバイスは、活性剤を含有するように形成された第1の電極アセンブリー及びデポー形成剤を含有するように形成された第2の電極アセンブリーを含むことができる。それぞれの電極アセンブリーは、少なくとも一つの貯蔵器及び少なくとも一つの電極で構成される。これらの電極は、それぞれの貯蔵器に電流を与え、そしてこのようにして、対象中に活性剤及びデポー形成剤をイオン泳動的に運ぶ。第1及び第2の電極アセンブリー間の距離は、デバイスが対象に活性剤及びデポー形成剤を送達するために使用される場合、in−vivoで形成される持続性放出デポーの位置を制御することができる。
【0068】
もう一つの側面において、対象中のデポー形成の位置を制御するための方法が記載される。この方法は、活性剤を含有する第1の電極アセンブリーを位置すること、及びデポー形成剤を含有する第2の電極アセンブリーを位置することを含み、そして第1及び第2の電極アセンブリーは、デポー形成の位置を制御する一定の電極間距離で位置させることができる。
【0069】
このようなデポーを形成するために、対象の組織を経由する活性剤及びデポー形成剤のイオン泳動投与を可能にする各種のデバイスの構成が企図されている。例えば、デバイスは、第1の電極アセンブリー及び第2の電極アセンブリーが、一体化された単一の装置中に構築することができる。一つの側面において、第1の電極アセンブリー及び第2の電極アセンブリーは、一体化された単一の装置内に互いに隣接して形成することができる。別の方法として、デバイスは、単一の装置として機能する別個の電極アセンブリー又はアレーの収集物として構築することができる。このように、本発明の一つの側面において、デバイスは、活性剤及びデポー形成剤の両方を含有し、そして送達する単一の一体化装置であることができる。このようなデバイスは、一つは活性剤を含有し、そして一つはデポー形成剤を含有するための、別個の電極アセンブリーを有することができる。これらの電極アセンブリーのそれぞれは、身体表面と接触して置かれ、これを経由して活性剤及びデポー形成剤がイオン泳動的に投与される。眼のイオン泳動の場合、デバイスの形状は、眼の表面に適合するように形成することができる。このような構成において、電極アセンブリー及びこれらのそれぞれの貯蔵器は、結膜のような眼の各種の組織構造と接触することができる。一つの側面において、デバイスの一部は角膜を覆い、少なくとも一つの貯蔵器は結膜と接触している。角膜を覆う部分は、デバイスの眼への更に良好な適合を与える。もう一つの側面において、デバイスは、同一の目的のために眼瞼の下の盲嚢中(cul-de-sac)に延長される。盲嚢中のデバイスの部分は、活性剤及びデポー形成剤のいずれか又は両方を投与するために、結膜と接触する更に一つの電極アセンブリー或いは複数の電極アセンブリーを保持することができる。
【0070】
活性剤及びデポー形成剤を、互いに隔離して維持して、デバイス内での反応を防止することは利益のあることであることができる。従って、電極アセンブリーの貯蔵器は、電気的に不活性な物質で製造されたバリアによって分離することができる。このバリアは、身体表面に沿った貯蔵器間の電流を最小にするために、眼の表面のような身体表面の表面まで延長されなければならない。バリアは、リップシールであることができ、そしてこれは、実質的に貯蔵器の周囲の密封を形成することができる。更に、電気的に不活性な物質は、貯蔵器の本体と同一の構造であることができ、又はこれは、その誘電特性から選択される別個の物質であることができる。貯蔵器間の分離の距離は、その間に置かれる物質の誘電特性に依存することができ、そして従って非常に変化することができる。一つの側面において、分離は、約0.05mmないし約5mmであることができる。もう一つの側面において、分離は、約0.1ないし約3mmであることができる。なおもう一つの側面において、分離は、約0.2ないし約1mmであることができる。並んだ電極アセンブリーの構成において、貯蔵器間の分離の距離は、また、身体表面から組織中への薬剤の浸入の深さ及び分布の制御のためにも使用することができる。デバイスの構成にもよるが、電極アセンブリーは、更に電流を、身体表面との境界における貯蔵器間より、組織を経由するように向けるために、互いに身体表面で電気的に遮へいすることを必要とすることができる。一つの側面において、このような電気的遮へいは、電極アセンブリー及び身体表面間に一時的な密封剤を適用することによって達成することができる。電流が組織を経由するように向けることに加えて、このような密封剤は、更に電極アセンブリーを身体表面上の位置に一時的に固定し、そして保持するために都合よく機能することもできる。密封剤は、当業者にとって既知のいずれもの有用な遮へい性物質、例えば、そして制約されるものではなく、ゲル、ワックス、接着剤、不透過性の重合性又は樹脂性物質、等であることができる。
【0071】
もう一つの側面において、多数の電極アセンブリーを、対象に活性剤及びデポー形成剤を投与するために使用することができる。このように、それぞれの電極アセンブリーは、対象に同時に又は連続して結合することができる。対象に同時に結合された場合、活性剤及びデポー形成剤は、同時に又は連続的に投与することができる。更に、薬剤の一つを連続的に送達し、一方、他方を断続的に送達することができる。別の方法として、対象に連続して結合された場合、第1の電極アセンブリーは、活性剤又はデポー形成剤のいずれかを投与するために結合することができる。次いで第1の電極アセンブリーは、第2の電極アセンブリーと置換えられて、持続性放出デポーの形成を起こすために残りの薬剤を投与することができる。第2の電極アセンブリーは、第1の電極アセンブリーと同一又は異なった部位に結合することができる。多数の電極アセンブリーを有する構成は、そこに含有された両方の電極アセンブリーを有するデバイスと同様な機能性を可能にするが、しかし更に、電極間の距離を動的に変化し、そして従って持続性放出デポーのin−vivoの形成の位置を動的に変化する能力を可能にする。
【0072】
イオン泳動投与のために単一のデバイス又は多数のデバイスが使用されるか否かに関わらず、電極アセンブリーの各種の設置の構成が意図されている。例えば、多くの場合、並んだ(side-by-side)電極アセンブリーの構成が、利益があることであることができる。このような構成は、標的位置における有効なイオン泳動を可能にし、一方身体の他の部分の電流の移動の範囲を最小にすることができる。これは、潜在的な副作用が、眼の後部の網膜、視神経、等のような特に敏感な組織を通過する過剰な電流によって起こされることのある、眼のような敏感な範囲に活性剤が投与される場合に、特に利益があることであることができる。眼に関する投与のために、一つの側面において、電極アセンブリーは、結膜及び強膜上に並べて位置させることができる。もう一つの側面において、一つの電極アセンブリーは下盲嚢中(inferior cul-de-sac)に置くことができ、そして他方の電極アセンブリーは、上盲嚢中(superior cul-de-sac)に置くことができる。デポーは、電極アセンブリーの相対的位置によって、強膜、結膜、結膜下腔、毛様体、脈絡膜、網膜、前眼房、硝子体、等のような各種の組織領域にin−vivoで形成することができる。持続性放出デポーの好ましい部位は、薬理学的効果を与えるための眼の薬物の作用の部位によることができる。
【0073】
眼のほとんどいずれもの部分に対する投与は、適していることができるが、一つの側面において、薬剤は、別個の放出デバイスを使用して、眼の反対側に投与することができる。電極を経由して電流が適用された場合、活性剤及びデポー形成剤は、放出され、そしてそのそれぞれの電場によって移動前面(moving fronts)となって移動する。このように、前面は、眼の実質的に中心部で出会い、網膜及び脈絡膜の血管クリアランス床から離れた眼球の中心近辺の持続性放出デポーの形成となる。このような態様において、デポー形成剤をリターン電極中に置き、そして同時に下盲嚢及び上盲嚢のようにそれぞれある距離によって分離されていたとしても、活性及びリターン電極の両方を眼に置き、そしてイオン泳動を行うことによって、活性剤及びデポー形成剤を同時に同時送達することが可能である。もう一つの態様において、例として、電極が、角膜縁の近辺の毛様体扁平部に置かれた場合、送達の部位は、好ましくは電極下の後眼房及び前眼房である。電極が円蓋の側に置かれた場合、送達の部位は、電極下の結膜及び強膜である。
【0074】
所望するデポー形成の効率、所望するデポーの位置、対象の安楽さ、活性剤/デポー形成剤の構成、等によるが、電極アセンブリーのための各種の並んだ構成が可能である。一つの側面において、電極アセンブリーは、互いに隣接して置くことができ、そして制約されるものではないが、円形、楕円形、三角形、四角形、長方形、多角形、台形、等のような各種の形状であることができる。隣接は、上と下、外側と内側、又はこれらのいずれもの対角的組合せのようないずれもの相対的位置を含む。
【0075】
もう一つの側面において、電極アセンブリーは、環状の構成であることができ、そして従って眼の少なくとも一部を取囲む。このような環状の電極アセンブリーは、いっしょに入れ子状態に構成することができ、そして従って活性剤及びデポー形成剤を電極によって規定された領域内の接近した近位で投与することができる。例えば、外部環電極及び内部環電極を、角膜を取囲む強膜上に位置することができる。図1に示した一つの具体的な側面において、内部区域14を有する第1の環状電極アセンブリー12を有するイオン泳動デバイス10を示す。第2の環状電極アセンブリー16は、第1の環状電極アセンブリー12の内部領域14内に位置することができる。一つの側面において、第1及び第2の環状電極アセンブリーに伴われた第1及び第2の電極は、環状の形状であることができる。この具体的な態様において、第1の環状電極アセンブリー12に伴われた外側貯蔵器は、第1の電極と実質的に同じ形状のものであることができるか、又はこれは、異なった形状のものであることができる。同様に、第2の環状電極アセンブリー16に伴われた内側貯蔵器は、第2の電極と実質的に同じ形状のものであることができるか、又は異なった形状のものであることができる。活性剤を、第1の又は外側貯蔵器中に含有することができ、そしてデポー形成剤を、第2の又は内側貯蔵器中に含有することができ、或いは活性剤を、内側貯蔵器中に含有することができ、そしてデポー形成剤を、外側貯蔵器中に含有することができる。投与された活性剤及びデポー形成剤のこのような環状の位置は、二つの薬剤の貯蔵器間の相対的位置を維持しながら、二つの薬剤間の相互作用の範囲を増加し、そして従って持続性放出デポーのin−vivo形成の効率を増加することができる。
【0076】
なおもう一つの具体的な側面において、多数の活性剤電極アセンブリー及びデポー形成剤電極アセンブリーを、薬剤の相互作用の範囲及び持続性放出デポーのin−vivo形成の効率を更に増加するために使用することができる。図2は、同心の“標的”型に配列された多数の電極アセンブリー22、24を有するイオン泳動デバイス20を示す。一つの側面において、電極アセンブリーに伴う貯蔵器において、活性剤又はデポー形成剤のいずれかを交互の配置で含有することは利益のあることであることができる。例えば、22と標識された電極アセンブリーに伴われた貯蔵器は、活性剤を含有することができ、そして24と標識された電極アセンブリーに伴われた貯蔵器は、デポー形成剤を含有することができ、そして逆もある。それぞれの電極アセンブリーを、単一の電極又は単一の電流源に結合することができ、或いは多数の電極アセンブリーを、単一の電極又は単一の電流源に結合することができる。他の側面において、多数の電極アセンブリーの配列は、活性剤及びデポー形成剤に関して交互の構成である必要はなく、しかし当業者にとって既知のいずれもの構成であることができることは注意すべきである。更に、二つより多い電極アセンブリーを含む多くの構成が企図され、そしてこれらの全ては、本発明の範囲内であると考えられる。例えば、活性剤を含有する単一の電極アセンブリーは、デポー形成剤又は多数のデポー形成剤を含有する多数の電極アセンブリーを伴うことができる。同様に、デポー形成剤を含有する単一の電極アセンブリーは、活性剤又は多数の活性剤を含有する多数の電極アセンブリーを伴うことができる。
【0077】
本発明の更なる側面において、図3は、多数の非環状電極アセンブリーを有する眼のイオン泳動デバイス30の例を示す。デバイス30は、活性剤32又はデポー形成剤34のいずれかを含有する複数の電極アセンブリーを有する基材36を含むことができる。いずれもの数又は空間配列の電極アセンブリーも、本発明の範囲内に含まれることを意図している。図3は、各種の並んだ電極配置が可能であることを示すことを単に意図している。
【0078】
本発明の側面による貯蔵器は、対象の身体表面を経由して投与される前の活性剤又はデポー形成剤のいずれかを保持するために設計される。一つの側面において、貯蔵器は、個別であり、互いに完全に離れた管腔を有する。更に、貯蔵器は、対象の身体表面と接触する間に、貯蔵器を充填することを可能にするために、少なくとも一つのアクセスポートを有することができる。この配置は、その中の薬剤が消耗されるような、使用中に貯蔵器を充填することを可能にすることができる。各種のイオン泳動貯蔵器の物質が、当業者にとって既知であり、そして全てが、本発明の範囲内であると考えられる。
【0079】
デポー形成剤と関係ない活性剤の即時放出のための付加的な電極を、並んだ活性剤電極及びデポー形成剤電極と同時に操作することができる。眼への送達のために、この付加的な電極は、並んだ電極の近辺から離れた眼の表面に置かれる。付加的な電極は、イオン泳動による初期の高投与量の疾病の治療のための活性剤の“噴出”を与えるものである。活性剤及びデポー形成剤間の更に有効なin−vivoの相互作用のための、デポー形成剤の噴出も、更にこの設定下で与えることができる。眼から離れた身体表面、例えば顔面上のリターン電極として働くもう一つの電極も、更に眼の並んだ電極及び即時放出電極と関連して使用することができる。電極を通して適用される電流を制御する電流源としての投与量制御器は、並んだ電極並びにこれらの補助電極からの、活性剤及びデポー形成剤の両方のために異なった投与間隔を与えるためにプログラムすることができる。この系は、活性剤及びデポー形成剤の送達を制御し、そして電流の通る期間を減少して、電流の適用による可能性のある副作用を最小にするために、これらの電極を通る電流の入切の切換えを可能にする。異なった電流のプロトコルを、これらの電極を使用して、活性剤の有効な即時及び持続性放出を得るために行うことができる。
【0080】
本発明の電極は、電流を関連した貯蔵器を通して供給して、その中に位置する薬剤をイオン泳動的に送達するために設計される。電極は、当業者にとって既知のいずれもの物質又は製法のものであることができる。各種の例は、金属電極、伝導性ガラス電極、等を含む。単一の電極は、与えられた電極アセンブリーの特定の配置にもよるが、単一の貯蔵器又は多数の貯蔵器に結合することができる。更に、本発明のある側面において、電極は、更に電極の本体からデポー形成剤が送達される貯蔵器であることもできる。
【0081】
活性剤、賦形剤、及びデポー形成剤の眼への最適なイオン泳動送達のために、選択透過性の物質を、眼の表面へのイオン伝導性の関係で設置することができる。AC、DC、及びDCを重ね合せたACの電流を使用して、関心のある化合物を選択透過性の物質を経由して眼に運搬することができる。選択透過性物質は、競合するイオンのイオン泳動運搬を妨害し、そしてイオン泳動中の関心のある化合物の運搬効率を増加することが可能である。結果として、本発明は、関心のある化合物が、選択透過性の物質がないイオン泳動より、更に効率的に眼にイオン泳動的に送達されることを可能にする。例えば、更に効率のよいイオン泳動運搬を、電極及び貯蔵器チャンバー間の電流駆動電極(例えばAg/AgCl)に対して選択透過性物質を置き、電極表面において発生した電気化学反応の生成物(例えば、Ag又はClイオン)が、貯蔵器に移動することを防止することによって達成することができる。もう一つの例は、選択透過性物質を身体表面及び貯蔵器間に置いて、活性剤及び内因性イオンのデポー形成剤貯蔵器への、或いは逆にデポー形成剤及び内因性イオンの活性剤貯蔵器への泳動をイオン泳動中防止することである。関心のある化合物のイオン泳動運搬中の競合イオンのイオン泳動運搬を妨害することが可能ないずれもの選択透過性物質を、本発明に関連して使用することができる。選択透過性物質は、本明細書中に参考文献として援用される、2003年2月21日に出願された“METHODS AND SYSTEMS FOR CONTROLING AND/OR INCREASING IONTOPHORETIC FLUX”の表題の、本出願人の同時系属中の米国特許出願10/371,148中に記載されているようないずれもの多くの形態で得ることができる。例えば、この物質は、液体、部分的に液体、ゲル、部分的に固体、又は完全に固体の状態で得ることができる。ある場合には、選択透過性物質は、取扱いの容易さのために十分な機械的一体性を有しながら、多孔性及び、選択透過性物質の性能を妨害することを回避するような十分な化学的不活性、を有する付加的な膜のような支持体構造によって支持されていることができる。この物質は、また、直接接触のための大きさ及び/又は形状の表面、又は電流駆動電極(例えば、Ag/AgCl)と直接接触するための形状の表面、を有する膜の形態でも得ることができる。他の場合に、選択透過性物質は、イオン又はイオン化可能な基を有する単一の分子或いは分子の集合であることができる、多価電解質を含んでなることができる。
【0082】
認識されるものであるように、非侵襲的送達の機構は、イオン泳動送達のような当技術において既知の広い範囲の適した機構から選択することができる。一つの側面において、投与は、対象の眼に対してであることができる。他の側面において、非侵襲的放出機構は、眼及び又は経皮送達のいずれかにおいて使用されるもののような、貼布、局所軟膏、音泳動、電気穿孔に関連することができる。具体的な機構は、一部、対象の身体の標的の生理学的範囲への投与のための適性に基づいて選択することができる。更に、活性剤及びデポー形成剤が、作用の部位に達するために、単一の経路、又は異なった経路を使用して投与することができることは注意すべきである。このような場合、薬物又はデポー形成剤のいずれかは、他と比較して別の経路を経由して送達することができる。単一の経路が使用される場合、投与は、適当に両方の薬剤を収容する単一のデバイスを使用して行うことができ、又は別個のデバイスから送達することができる。投与の別個の又は異なった経路の場合、ほとんど常に、多数の又は別個のデバイスが使用されるものである。更に、イオン泳動法及び音泳動法は、投与に先立って適用の位置を撹乱させることによって補助することができる。このような撹乱は、マイクロニードル、熱、レーザー、等による処置を含む。
【0083】
上記で検討したような非侵襲的イオン泳動機構に加えて、最小に侵襲的な方法も、更に眼を含む対象の組織への活性剤及び/又はデポー形成剤の送達も企図している。最小に非侵襲的な投与法の一つの例は、眼窩周囲の注射を含む。
【0084】
実施例
以下の実施例は、単に本明細書中に開示された本発明の各種の側面の例示であることを意図し、そして特許請求される本発明の範囲を、いかなる方法においても制約することを意図していない。当業者によって同等であると考えられる本発明の他の側面も、更に本発明の範囲内である。
【0085】
実施例1
表1は、リン酸デキサメタゾン(DexP)及び亜鉛(Zn)イオンの溶解度を試験するために行ったベンチトップ実験を示す。この実験において、亜鉛イオンはデポー形成剤であり、そしてDexPは活性剤であった。
【0086】
【表1】

【0087】
ベンチトップ実験を、更にDexP及び第一鉄(Fe)イオンでも行った(表2)。
【0088】
実施例2
この実施例において、第一鉄イオンはデポー形成剤であり、そしてDexPは活性剤であった。
【0089】
【表2】

【0090】
なおもう一つの実施例において、DexP及びカルシウム(Ca)イオンの溶解度を研究した。カルシウムイオンは、デポー形成剤であり、DexPは、活性剤であった。DexP二ナトリウム塩の溶液(≧0.005M)及びCaClの溶液(≧0.005M)を混合することにより、ゲルを形成することが見出された。
【0091】
もう一つの研究において、デポーとしての異なった形態の沈殿(ZnDexP、SnDexP、及びCaDexP)からのリン酸デキサメタゾン(DexP)の溶解を、透析膜系中でモニターした。図4は、これら三つの製剤(それぞれ製剤1、2、及び3としてのデポー形成剤、Zn、Sn、Ca)及び対照(デポー形成剤なしのDexP製剤;持続性放出(SR)製剤ではない)の溶解特性を示す。図4の結果は、デポー形成剤及び活性剤間の沈殿の方法が、1週間より大きいゆっくりした、そして持続性の薬物放出を与えることを示す。
【0092】
実施例3
この実施例は、ウサギのin−vivoの眼への薬物送達に対する、眼の持続性放出系の非侵襲的放出の証拠を与える。この研究において、並んだ活性剤及びデポー形成剤のチャンバー(図3のものと同様な)の眼のデバイスを、ウサギの眼に置いた。デバイスの電極チャンバーを、毛様体扁平部の近辺の結膜上に位置した。活性剤及びデポー形成剤は、それぞれ、0.5Mのリン酸トリアムシノロンアセトニド及び1.0Mのドデシルアンモニウムであった。持続性放出系の送達は、2ミリアンペアの一定の直流電流を並んだチャンバーを通して15分間適用することによって達成され、ここにおいて活性剤は、カソードから送達され、そしてデポー形成剤は、アノードから送達された。比較のために、デポー形成剤、ドデシルアンモニウムを伴わないリン酸トリアムシノロンアセトニドのイオン泳動送達を、対照として行った。2ないし3匹のウサギの六つのグループを、それぞれのグループを異なった時点(10分、4時間、又は1日)に割当て、そして異なったプロトコル(慣用的イオン泳動の対照又は持続性放出イオン泳動)を使用した。イオン泳動の適用の10分、4時間、及び1日後に、ウサギを安楽死させ、そしてトリアムシノロンアセトニド及びリン酸トリアムシノロンアセトニド分析のために眼球摘出した。分析方法は、これらの化合物を、結膜、強膜、及び硝子体液からpHを調節された有機溶媒で抽出すること、及びHPLC分析を含んでいた。イオン泳動の適用後の眼の中の活性剤の量を、表3に示す。表の結果は、本発明が、慣用的な眼のイオン泳動のそれと比較して、持続性放出系を提供することを示唆する。
【0093】
【表3】

【0094】
先に記載した実施態様が、単に本発明の原理の適用の例示であることは理解されるべきである。多くの改変及び別の実施態様は、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく当業者によって考案することができる。従って、本発明が、本発明の最も実際的な、そして好ましい態様と現時点で見做されるものに関して、特殊性及び詳細を伴って先に記載されてきたが、制約されるものではないが、大きさ、物質、形状、形態、機能、及び操作の様式、アセンブリー及び使用の変更を含む多くの改変が、本明細書中に記載された原理及び概念から逸脱することなく行うことができることは、当業者にとって明白であるものである。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、本発明の一つの側面によるイオン泳動デバイスの正面図である。
【図2】図2は、本発明のもう一つの側面によるイオン泳動デバイスの正面図である。
【図3】図3は、本発明のなおもう一つの側面によるイオン泳動デバイスの正面図である。
【図4】図4は、対照の溶解特性と比較した、本発明の各種の態様による三つのデポー製剤の溶解特性のグラフ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性剤を対象に送達すること;
前記活性剤を対象の内部でデポー形成剤と反応させて、前記活性剤を沈殿させ、そして活性剤の持続性放出デポーを作製すること;及び、
前記デポーから継続した時間にわたって活性剤を放出させておくこと;
を含んでなる、対象中の活性剤の持続性in−vivo放出を提供する方法。
【請求項2】
前記反応が、前記活性剤及び前記デポー形成剤間のイオン性会合である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記デポー形成剤が、多価であり、そして前記活性剤によって保持される電荷と反対である多数の電荷を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記デポー形成剤及び活性剤の沈殿物が、約4:1ないし約1:4のデポー剤と活性剤の比を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記反応が、前記活性剤の一部を開裂し、このようにして前記活性剤の水溶解性を低下する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記デポー形成剤が、酵素である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記デポー形成剤が、対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記デポー形成剤が、前記活性剤の前に、それと同時に、又はそれに続いてのいずれかで投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記デポー形成剤が、前記活性剤と同時に投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記デポー形成剤が、前記活性剤と同一の経路によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記デポー形成剤が、前記活性剤と異なった経路によって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記デポー形成剤が、身体中の内在性物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記持続性放出デポーが、結晶、ゲル、半固体、デポー形成剤と反応する前の活性剤の粘度より高い粘度を有する液体、又はこれらの組合せを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記活性剤が、本質的に:興奮剤、鎮痛剤、麻酔剤、抗喘息剤、抗関節炎剤、抗癌剤、抗コリン剤、抗痙攣剤、抗鬱剤、抗糖尿病剤、止痢剤、制吐剤、駆虫剤、抗ヒスタミン剤、抗高脂血症剤、血圧降下剤、抗感染剤、抗炎症剤、抗片頭痛剤、抗悪性腫瘍剤、抗パーキンソン病薬、鎮痒剤、抗精神病剤、解熱剤、鎮痙剤、抗結核剤、抗潰瘍剤、抗ウイルス剤、抗不安剤、食欲抑制剤、注意欠陥障害及び注意欠陥多動性障害薬物、カルシウムチャネル遮断剤、抗狭心症剤、中枢神経系(“CNS”)剤、ベータ遮断剤及び抗不整脈剤を含む心血管治療剤、中枢神経系刺激剤、利尿剤、遺伝子材料、ホルモン分解剤(hormonolytics)、催眠剤、血糖降下剤、免疫抑制剤、筋弛緩剤、麻薬拮抗剤、ニコチン、栄養剤、副交感神経遮断剤、ペプチド薬物、精神刺激薬、鎮静剤、ステロイド、禁煙剤、交感神経刺激剤、精神安定剤、血管拡張剤、β−作動剤、及び子宮収縮抑制剤、並びにこれらの混合物からなる群から選択されるメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記活性剤が、本質的に、ステロイド、アミノステロイド、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤、代謝拮抗剤、VEGF阻害剤、ICAM阻害剤、抗体、タンパク質キナーゼC阻害剤、化学療法剤、免疫抑制剤、神経保護剤、鎮痛剤、核酸誘導体、アプタマー、タンパク質、酵素、ペプチド、ポリペプチド、及びこれらの混合物からなる群から選択されるメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記活性剤が:ヒドロモルホン、リン酸デキサメタゾン、アミカシン、オリゴヌクレオチド、Fabペプチド、PEG−オリゴヌクレオチド、サリチル酸塩、トロピカミド、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、スクアラミン、トリアムシノロンアセトニド、ジクロフェナク、コンブレタスタチンA4、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されるメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記活性剤が、プロドラッグである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記プロドラッグが、本質的に、ステロイドの誘導体、抗細菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原虫剤、代謝拮抗剤、VEGF阻害剤、ICAM阻害剤、抗体、タンパク質キナーゼC阻害剤、化学療法剤、免疫抑制剤、神経保護剤、鎮痛剤、核酸誘導体、アプタマー、タンパク質、酵素、ペプチド、ポリペプチド、及びこれらの混合物からなる群から選択されるメンバーである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ステロイド誘導体が、リン酸トリアムシノロンアセトニドである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記活性剤が、前記活性剤が:黄斑浮腫、加齢関連黄斑変性症、前部、中間部、及び後部ブドウ膜炎、HSV網膜炎、糖尿病性網膜症、細菌性、真菌性、又はウイルス性眼内炎、眼癌、神経膠芽腫、緑内障、及び眼神経の緑内障性変性からなる群から選択される眼の疾患を治療するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記活性剤が、ヘルペスのような皮膚疾病を治療するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記活性剤が、アシクロビル又はその誘導体のいずれかである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記デポー形成剤が、本質的に:無機イオン、有機カチオン、有機アニオン、及びイオン性の医薬的賦形剤からなる群から選択されるメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記デポー形成剤が、周期表中の遷移金属から選択されるメンバーである、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記デポー形成剤が、Ca2+、Sn2+、Fe2+、Fe3+、Mn2+、Mg2+、Zn2+、NH、PO3−、CO2−、SO2−からなる群から選択されるイオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記デポー形成剤が、有効なイオン泳動的送達及び活性剤と有効に反応して、持続性放出デポーを形成することの両方のために、十分なイオン性電荷を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記デポーが、リン酸トリアムシノロンアセトニド活性剤及びCa2+デポー形成剤の複合体によって作製されたゲルである、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記デポー形成剤が、触媒、重合開始剤、ペグ化剤、又はこれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記デポー形成剤が、溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記デポー形成剤が、pH、熱、又はイオン強度に敏感なポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記デポー形成剤が、眼の疾病の治療に使用される活性剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記デポー形成剤が、アミノステロイドである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記アミノステロイドが、スクアラミンである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記デポー形成剤が、トリアムシノロンアセトニドの誘導体である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
更に、デポー形成剤との反応及び持続性放出デポーの形成を可能にするために、活性剤のin−vivoの移動を十分な時間制限することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
In−vivoの移動を制限することが、活性剤の沈殿が起こる範囲に存在する血管の収縮によって達成される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記血管の収縮が、血管収縮剤の投与によって導入される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記血管収縮剤が、ナファゾリン及びテトラヒドロゾリンのようなα−作動剤、フェニルエチルアミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、ドーパミン、ドブタミン、コルテロール、エチルノルエピネフリン、イソプロテレノール、イソエタリン、メタプロテレノール、テルブタリン、メテアラミノール(metearaminol)、フェニレフリン、チラミン、ヒドロキシアンフェタミン、リトロドリン(ritrodrine)、プレナルテロール、メトキシアミン、アルブテロール、アンフェタミン、メタンフェタミン、ベンズフェタミン、エフェドリン、フェニルプロパノールアミン、メテンテルミン(methentermine)、フェンテルミン、フェンフルラミン、プロピルヘキセドリン、ジエチルプロピオン、フェンメトラジン、及びフェンジメトラジンのような交感神経刺激剤からなる群から選択されるメンバーである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記血管収縮剤が、活性剤の投与の前、又はそれと同時のいずれかに投与される、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記血管収縮剤が、デポー形成剤と同一の極性を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
血管の収縮が、血管への物理的力の適用によって誘導される、請求項36に記載の方法。
【請求項42】
更に、前記活性剤が密封剤と共に送達された適用部位を密封することを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記密封剤が:ゲル、接着剤、及び不透過性の重合性又は樹脂性の膜からなる群から選択されるメンバーである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記活性剤又は前記デポー形成剤のいずれか、又は活性剤及びデポー形成剤の両方の送達が、最小に侵襲的である、請求項7に記載の方法。
【請求項45】
前記最小に侵襲的な送達が、眼窩周囲の注射による眼への送達である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記活性剤又は前記デポー形成剤、或いは前記活性剤及びデポー形成剤の両方の送達が、非侵襲的である、請求項7に記載の方法。
【請求項47】
前記非侵襲的投与が、イオン泳動、音泳動、又は電気穿孔投与のいずれかである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記非侵襲的投与が、イオン泳動である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記イオン泳動又は音泳動投与が、投与のために選択された適用位置を撹乱することによって補助される、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記投与方法が、皮膚に適用され、そして皮膚の撹乱方法がマイクロニードル処置である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記活性剤及び前記デポー形成剤が、単一のデバイスから送達される、請求項7に記載の方法。
【請求項52】
前記活性剤及び前記デポー形成剤が、異なったデバイスから送達される、請求項7に記載の方法。
【請求項53】
更に、選択透過性物質によって、前記活性剤又は前記デポー形成剤の送達、或いは前記活性剤及びデポー形成剤の両方の送達を向上することを含んでなる、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
前記選択透過性物質が、前記活性剤の送達を向上する、請求項47に記載の方法。
【請求項55】
更に、選択透過性物質によって持続性放出デポーの形成を向上することを含んでなる、請求項47に記載の方法。
【請求項56】
前記持続性放出デポーが、前記活性剤の局所的又は全身性送達のいずれかを提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項57】
前記活性剤が、対象の眼に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項58】
前記活性剤が、対象の眼の送達に放出され、そして前記デポー形成剤が、対象の眼の反対側に送達される、請求項7に記載の方法。
【請求項59】
前記デポー形成剤及び活性剤が、対象の眼に互いに並んで送達される、請求項7に記載の方法。
【請求項60】
前記活性剤又は前記デポー形成剤のいずれかが、組織に受動的に送達される、請求項7に記載の方法。
【請求項61】
前記血管収縮剤が、組織に受動的に送達される、請求項37に記載の方法。
【請求項62】
可溶化し、持続される時間にわたって活性剤を放出する、沈殿された形態の活性剤の塊、を含んでなる、請求項1に記載の方法によって形成される、対象中の医薬デポー製剤。
【請求項63】
活性剤を含有するために形成された第1の電極アセンブリー;及び
デポー形成剤を含有するために形成された第2の電極アセンブリー;
を含んでなり、
互いに一定の距離を有する前記第1及び第2の電極アセンブリーは、対象に前記活性剤及び前記デポー形成剤を送達するために使用される場合、in−vivoで形成される持続性放出デポーの位置を調節する、
対象中の活性剤の持続性in−vivo放出を提供するためのデバイス。
【請求項64】
前記第1の電極アセンブリー及び前記第2の電極アセンブリーが、一体化された単一の装置である、請求項63に記載のデバイス。
【請求項65】
第1の電極アセンブリー及び第2の電極アセンブリーが、前記一体化された単一の装置内に互いに隣接して形成される、請求項63に記載のデバイス。
【請求項66】
前記第1及び第2の電極アセンブリーが、環状、円形、細長い、四角形、三角形、楕円形、又はこれらの組合せからなる群から選択される形状を有する、請求項63に記載のデバイス。
【請求項67】
前記第1及び第2の電極アセンブリーが、環状である、請求項66に記載のデバイス。
【請求項68】
第1の環状電極アセンブリーが、内部半径の範囲を有し、そして第2の環状電極アセンブリーが、第1の環状電極アセンブリーの内部半径の範囲内に位置する、請求項67に記載のデバイス。
【請求項69】
前記第1の電極アセンブリーが、環状電極を含む、請求項67に記載のデバイス。
【請求項70】
前記第2の電極アセンブリーが、環状電極を含む、請求項67に記載のデバイス。
【請求項71】
前記第1及び第2の電極アセンブリーが、別個のデバイスである、請求項63に記載のデバイス。
【請求項72】
前記第1及び第2の電極アセンブリーが、一つの電流源に結合されるように形成される、請求項63に記載のデバイス。
【請求項73】
前記第1及び第2の電極アセンブリーが、選択透過性物質に機能的に結合される、請求項63に記載のデバイス。
【請求項74】
前記選択透過性物質が、膜である、請求項73に記載のデバイス。
【請求項75】
前記第1の電極アセンブリーが、複数の第1の電極アセンブリーであり、そして第2の電極アセンブリーが、複数の第2の電極アセンブリーである、請求項63に記載のデバイス。
【請求項76】
前記複数の第1の電極アセンブリー及び前記複数の第2の電極アセンブリーが、同心の配置で形成される、請求項75に記載のデバイス。
【請求項77】
前記複数の第1の電極アセンブリー及び前記複数の第2の電極アセンブリーが、同心の配置内で交互に形成される、請求項76に記載のデバイス。
【請求項78】
前記複数の第1の電極アセンブリーのそれぞれが、別個の電極に電気的に結合される、請求項75に記載のデバイス。
【請求項79】
前記複数の第2の電極アセンブリーのそれぞれが、別個の電極に電気的に結合される、請求項75に記載のデバイス。
【請求項80】
更に、前記活性剤を含有するために形成され、そしてそれに結合した電極を有する第3の電極アセンブリーを含んでなり、前記第3の電極アセンブリーは、前記活性剤のデポーを形成しない活性剤の一部の投与を可能にする、請求項63に記載のデバイス。
【請求項81】
更に、デポーを形成しない前記活性剤の一部の投与を促進するために、前記第3の電極アセンブリーに機能的に結合されたリターン電極を含んでなる、請求項80に記載のデバイス。
【請求項82】
前記デバイスの形状が、眼の表面に適合するように形成される、請求項63に記載のデバイス。
【請求項83】
前記第1及び第2の電極アセンブリーが、眼の結膜と接触する、請求項82に記載のデバイス。
【請求項84】
前記デバイスの一部が角膜を覆い、第1及び第2の電極アセンブリーが結膜と接触する、請求項82に記載のデバイス。
【請求項85】
前記デバイスの一部が、眼の眼瞼の下の盲嚢中に延長される、請求項82に記載のデバイス。
【請求項86】
前記第1及び第2の電極アセンブリーが、皮膚と接触する、請求項63に記載のデバイス。
【請求項87】
前記第1及び第2の電極アセンブリーが、眼の表面上に位置する一つ又はそれより多いバリアによって分離されて、流体の通過を防止し、そして前記第1及び第2の電極アセンブリー間の電流の流れを最小にする、請求項63に記載のデバイス。
【請求項88】
前記一つ又はそれより多いバリアが、第1及び第2の電極アセンブリーの周りの密封を形成する、請求項87に記載のデバイス。
【請求項89】
前記一つ又はそれより多い障害が、リップシールである、請求項88に記載のデバイス。
【請求項90】
第1の電極を有し、そして活性剤を含有する第1の貯蔵器を、対象の身体表面の範囲に位置し;そして
第2の電極を有し、そしてデポー形成剤を含有する第2の貯蔵器を、対象内のデポー形成の位置を指示する第1の電極から一定の電極間距離をおく、対象の身体表面の範囲に位置すること;
を含んでなる、活性剤の持続性放出デポーを対象中に位置する方法。
【請求項91】
前記活性剤及び前記デポー形成剤が、同時に投与される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記活性剤が、前記デポー形成剤の前に投与される、請求項90に記載の方法。
【請求項93】
前記活性剤が、前記デポー形成剤の後に投与される、請求項90に記載の方法。
【請求項94】
前記電極間の距離が、前記デポーの貫入の深さ及び広がりを制御する、請求項90に記載の方法。
【請求項95】
前記電極間距離が、約1mmより小さい、請求項90に記載の方法。
【請求項96】
前記電極間距離が、約2mmないし約4mmである、請求項90に記載の方法。
【請求項97】
前記電極間距離が、約1mmないし約2mmである、請求項90に記載の方法。
【請求項98】
前記電極間距離が、約4mmより大きい、請求項90に記載の方法。
【請求項99】
前記デポーが、前記活性剤を含んでなる、請求項90に記載の方法。
【請求項100】
前記デポーが、前記活性剤の誘導体を含んでなる、請求項90に記載の方法。
【請求項101】
前記第2の電極が、前記第2の貯蔵器である、請求項90に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−518038(P2008−518038A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539327(P2007−539327)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/039672
【国際公開番号】WO2006/047788
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(507141653)アシオント・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】