説明

活性成分のための保護親水コロイド

(変性)イネ胚乳タンパク質が、活性成分、特に脂溶性活性成分および/または着色剤の新規な保護親水コロイドとして使用される。(変性)イネ胚乳タンパク質と少なくとも1つの活性成分とを含んでなる組成物およびそれらの製造、ならびに(変性)イネ胚乳タンパク質それ自体およびその製造が含まれる。これらの組成物は食物、飲料、動物飼料、パーソナルケアまたは医薬組成物の富栄養化、強化および/または着色のため、そしてこのような(変性)イネ胚乳タンパク質およびこのような組成物をそれぞれ含有する、食物、飲料、動物飼料、パーソナルケア、および医薬組成物のために使用される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、活性成分、特に脂溶性活性成分および/または着色剤のための新規な保護親水コロイドとしての(変性)イネ胚乳タンパク質の使用に関する。さらに本発明は、(変性)イネ胚乳タンパク質と少なくとも1つの活性成分とを含んでなる組成物、およびそれらの製造、ならびに(変性)イネ胚乳タンパク質それ自体、およびその製造に関する。本発明は、さらに食物、飲料、動物飼料、パーソナルケアまたは医薬品組成物の富栄養化、強化および/または着色のためのこのような組成物の使用、およびこのような(変性)イネ胚乳タンパク質とこのような組成物をそれぞれ含有する食物、飲料、動物飼料、パーソナルケア、および医薬組成物に関する。
【0002】
活性成分、特に脂溶性活性成分または着色剤は、食物、飲料、動物飼料、パーソナルケアおよび医薬組成物に、それ自体で添加されないことが多いが、化学安定性、(水)溶解性、易流動性、および徐放などの特性を増強する理由で、ヒドロプロテクト性コロイド中の活性成分調合物の形態で添加される。既知のヒドロプロテクト性コロイドは、例えば異なる起源(家禽、ウシ、ブタ、魚)のゼラチンおよびデンプンである。動物起源のヒドロプロテクト性コロイドは、宗教上のまたはアレルゲン性の理由から所望されないことが多く、デンプンベースのヒドロプロテクト性コロイドは、グルテンおよびコーンを含まない製品に関心のある消費者に好まれないため、代案のヒドロプロテクト性コロイドに対する継続する必要性がある。
【0003】
イネ胚乳タンパク質は、栄養的および低アレルギー性として認識され、したがって活性成分調合物のための保護親水コロイドの適切な代案の起源であることができる。しかし中性pHにおけるイネ胚乳タンパク質の高い非溶解性および機能不良は、食物および医薬製品中の機能性成分としてのその産業上の利用を制限する。本発明はこれらの制限を克服し、活性成分、特に脂溶性活性成分および/または着色剤調合物のための保護親水コロイドとして(変性)イネ胚乳タンパク質を組み込む。
【0004】
米タンパク質は、トウモロコシおよび小麦をはじめとするその他の穀類と比較して栄養価が上位にあり、したがって食物成分として莫大な潜在的用途を有すると考えられる。穀物タンパク質は、必須アミノ酸システインおよびメチオニンに富む。リジンは、穀物タンパク質中の主要な制限アミノ酸であるが、米はその他の穀物タンパク質(小麦2.3、トウモロコシ2.5g/16gN)よりも多くのリジン(3.8g/16gN)を含有する(下に引用する参考文献4を参照されたい)。米は概して一般的な穀物(小麦10.6%、トウモロコシ9.8%、大麦11.0%、雑穀11.5%)中で、最も低いタンパク質含量(7.3%)を有すると見なされるが、米タンパク質の正味タンパク質利用率(73.8%)は穀物中で最も高い(小麦53.0%、トウモロコシ58.0%、大麦62.0%、雑穀56.0%)。
【0005】
米タンパク質の単離はその他の穀物タンパク質と比較して困難であり、したがって高価である。主要米タンパク質であるグルテリンは疎水性であり、ジスルフィド結合によって架橋している。抽出されるタンパク質は、本来高度に不溶性であり、タンパク質単離で使用される条件はそれらの溶解性をさらに低下させ、したがって機能性成分としての応用を制限してきた。高タンパク質米製品は、アルカリ抽出とそれに続くタンパク質の等電pHでの沈殿によって、米粉から得ることができる。α−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、およびプルラナーゼなどのデンプン加水分解酵素を使用して、デンプンを可溶化および除去することで、米粉中のタンパク質を分離することが多い。デンプン加水分解酵素に加えて、米タンパク質濃縮物中のタンパク質含量をさらに増大させるために、セルラーゼおよびヘミセルラーゼ酵素が使われている。しかし適切な抽出方法、およびこのような単離物の機能性に関する情報は限られている。認可された食品等級酵素および薬品を使用した効率的な抽出方法は、米タンパク質の商業生産および応用にとって必須である。
【0006】
この必要性は、イネ胚乳タンパク質および活性成分を含んでなる本発明の組成物によって満たされる。
【0007】
[背景情報]
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【0008】
[発明の詳細な説明]
[発明の組成物]
本発明の組成物は、固体組成物、すなわち安定した水溶性または水分散性粉末であっても良く、またはそれらは液体組成物、すなわち前述の粉末の水性コロイド溶液または水中油分散体であってもよい。水中油エマルジョンであってもよく、または懸濁された、すなわち固体粒子、および乳化された、すなわち液体小滴の混合物を特徴としてもよい安定化水中油分散体は、下述の方法によって、または類似した様式によって調製されてもよい。
【0009】
より具体的には、本発明は、(変性)イネ胚乳タンパク質マトリックス中の1つ以上の(脂溶性)活性成分および/または1つ以上の着色剤を含んでなる、粉末形態の安定した組成物に関する。
【0010】
好ましくは(変性)イネ胚乳タンパク質の量は、組成物総量を基準にして、1〜70重量%、より好ましくは5〜50重量%、さらにより好ましくは10〜40重量%、最も好ましくは10〜20重量%であり(20重量%が最も好ましい量である)、および/または(脂溶性)活性成分および/または着色剤の量は0.1〜90重量%、好ましくは1〜80重量%、より好ましくは1〜20重量%である。トコフェロールおよび/またはパルミチン酸アスコルビルなどの追加的アジュバントおよび/または賦形剤が存在する場合、それらは組成物総量を基準にして、0.01〜50重量%の量、好ましくは0.1〜30重量%の量、より好ましくは0.5〜10重量%の量で存在する。
【0011】
[(変性)イネ胚乳タンパク質]
本発明の好ましい実施態様では、イネ胚乳タンパク質は、その製造について下述する変性イネ胚乳タンパク質である(13頁26行から18頁23行まで、および実施例1〜7を参照されたい)。特に好ましい米タンパク質は、アルカリ抽出、(特にアルカラーゼ(Alkalase)での酵素変性)、遠心分離および限外濾過のステップによって得られるものである。さらなる用途のために必要ならば、このようにして得られた変性イネ胚乳タンパク質はまた、乾燥させても良い。しかし本発明は、このような製造された変性イネ胚乳タンパク質の使用に限定されない。
【0012】
さらにより好ましいのは、≧220、好ましくは≧350、より好ましくは≧500、さらにより好ましくは500〜1000のエマルジョン能力を有する(変性)イネ胚乳タンパク質である。さらに本発明の好ましい実施態様では、使用される(変性)イネ胚乳タンパク質は、≧0.2、好ましくは≧0.45、より好ましくは≧0.5、さらにより好ましくは0.5〜1.0のエマルジョン活性を有する。エマルジョン能力の判定については実施例8で記載され、エマルジョン活性の判定については実施例9で記載される。本発明は、これらの(変性)イネ胚乳タンパク質それ自体についてもまた言及する。
【0013】
本発明のさらに好ましい組成物では、(変性)イネ胚乳タンパク質は、還元糖、糖タンパク質またはグリコペプチドからなる群から選択される、少なくとも1つの化合物と架橋している。
【0014】
[活性成分]
活性成分は、薬理学的効果のある成分、または一般にヒトまたは動物の身体に健康上の利点を提供する成分である。好ましくは、活性成分は脂溶性活性成分および/または着色剤である。
【0015】
脂溶性活性成分および/または着色剤は、好ましくはカロテンおよび構造的に関連したポリエン化合物、脂溶性ビタミン、補酵素Q10、エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)などの多価不飽和脂肪酸とそのエステル((同一または異なる脂肪酸を含有する)エチルエステルまたはトリグリセリドなど)、ポリ不飽和脂肪酸に富んだモノ−、ジ−、トリグリセリド、脂溶性UV−Aフィルター、UV−Bフィルター、ならびにそれらと特にC1〜20炭酸とのエステルなどのそれらの生理学的に許容可能な誘導体、およびそれらの任意の混合物からなる群から選択される。
【0016】
最も好ましい脂溶性ビタミンは、ビタミンAまたはEである。
【0017】
カロテンおよび構造的に関連したポリエン化合物の好ましい例は、α−カロテン、β−カロテン、8’−アポ−β−カロテナール、エチルエステルなどの8’−アポ−β−カロテン酸エステル、カンタキサンチン、アスタキサンチン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、クロセチン、α−ゼアカロテン、β−ゼアカロテンなどのカロテノイド、ならびにそれらと特にC1〜20炭酸とのエステルなどのそれらの生理学的に許容可能な誘導体、およびそれらの任意の混合物である。
【0018】
最も好ましいカロテノイドはβ−カロテンである。
【0019】
「β−カロテン」という用語は、全てのシスならびに全てのトランス異性体、および全ての可能な混合したシス−トランス−異性体を包含する。その他のカロテノイドについても同様である。
【0020】
「ゼアキサンチン」という用語は、天然R,R−ゼアキサンチン、ならびにS,S−ゼアキサンチン、メソ−ゼアキサンチンおよびそれらの任意の混合物を包含する。ルテインについても同様である。
【0021】
(脂溶性)活性成分は天然起源であってもよく、すなわち植物から単離/抽出されて純化および/または濃縮されてもよく、ならびに化学および/または微生物学的(発酵性)経路によって合成されるものであってもよい。
【0022】
[さらなる構成要素]
活性成分および(変性)イネ胚乳タンパク質に加えて、本発明の組成物は、好ましくは少なくとも1つの水溶性抗酸化剤および/または脂溶性抗酸化剤をさらに含有してもよい。
【0023】
水溶性抗酸化剤は、例えばアスコルビン酸またはその塩、好ましくはアスコルビン酸ナトリウムであってもよく、ヒドロキシチロソール、およびオレウロペインアグリコンなどの水溶性ポリフェノールであっても、没食子酸エピガロカテキン(EGCG)またはローズマリーまたはオリーブの抽出物であってもよい。
【0024】
脂溶性抗酸化剤は、例えばdl−α−トコフェロール(すなわち合成トコフェロール)、d−α−トコフェロール(すなわち天然トコフェロール)、β−またはγ−トコフェロール、またはこれらの2つ以上の混合物などのトコフェロールと、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)と、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)と、エトキシキン、没食子酸プロピルと、tert.ブチルヒドロキシキノリンと、または6−エトキシ−1,2−ジ−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチルキノリン(EMQ)、または好ましくはパルミチン酸アスコルビルまたはステアリン酸アスコルビルなどの脂肪酸のアスコルビン酸エステルであってもよい。
【0025】
本発明の組成物は、脂肪酸のモノ−およびジグリセリド、脂肪酸のポリグリセロールエステル、レシチンと、N−アシル化アミノ酸およびそれらの誘導体、アルキルまたはアルケニルラジカルがあるN−アシル化ペプチド、およびそれらの塩と、硫酸アルキルまたはアルケニルエーテルまたはエステル、およびそれらの誘導体および塩と、ポリオキシエチレン化アルキルまたはアルケニル脂肪エーテルまたはエステルと、ポリオキシエチレン化アルキルまたはアルケニルカルボン酸およびそれらの塩と、N−アルキルまたはN−アルケニルベタインと、アルキルトリメチルアンモニウムまたはアルケニルトリメチルアンモニウムおよびそれらの塩と、ポリオールアルキルまたはアルケニルエーテルまたはエステルと、それらの混合物からなる群から選択される共乳化剤をさらに含有してもよい。
【0026】
ポリオールアルキルまたはアルケニルエーテルまたはエステルの好ましい例は、Seppic社によりMontanox 40 DFの商品名の下に販売されるパルミチン酸ソルビタン20 EOまたはポリソルベート40、ICI社によりトウィーン(Tween)20の商品名の下に販売されるラウリン酸ソルビタン20 EOまたはポリソルベート20などの少なくとも20単位の酸化エチレンでポリオキシエチレン化されたソルビタンアルキルまたはアルケニルエステル、およびモノステアリン酸ソルビタンである。
【0027】
本発明に従った調合物はさらに錠剤に圧搾されてもよく、単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類、グリセロール、およびトリグリセリドからなる群から選択される1つ以上の賦形剤および/またはアジュバントが添加されてもよい。
【0028】
本発明の組成物中に存在してもよいモノ−および二糖類の好ましい例は、スクロース、転化糖、キシロース、グルコース、フルクトース、乳糖、マルトース、ショ糖および糖アルコールである。
【0029】
オリゴ糖類および多糖類の好ましい例は、デンプン、加工デンプン、およびデンプン加水分解産物である。デンプン加水分解産物の好ましい例はデキストリンおよびマルトデキストリンであり、特に5〜65個の範囲のデキストロース同等物(DE)を有するもの、および特に20〜95個の範囲のDEを有するようなグルコースシロップである。「デキストロース同等物(DE)」という用語は加水分解度を意味し、乾燥重量を基準にしてD−グルコースとして計算される還元糖量の基準である。尺度は、0に近いDEを有する天然デンプン、および100のDEを有するグルコースを基準とする。
【0030】
トリグリセリドは、適切には、植物油または脂肪、好ましくはトウモロコシ油、ヒマワリ油、ダイズ油、ベニバナ油、ナタネ油、落花生油、パーム油、パーム核油、綿実油、オリーブ油またはココナッツ油である。
【0031】
固体組成物は、ケイ酸またはリン酸三カルシウムなどの固化防止剤、および10重量%までで通例2〜5重量%の水をさらに含んでもよい。
【0032】
[組成物の製造]
本発明の目的はまた、
I)(変性)イネ胚乳タンパク質の水溶液またはコロイド溶液を調製するステップと、
II)場合によりステップI)で調製された溶液に、少なくとも水溶性賦形剤および/またはアジュバントを添加するステップと、
III)少なくとも活性成分、好ましくは少なくとも脂溶性活性成分および/または着色剤、および場合により少なくとも脂溶性アジュバントおよび/または賦形剤の溶液または分散体を調製するステップと、
IV)ステップI)〜III)で調製された溶液を互いに混合するステップと、
V)このようにして得られた混合物を均質化するステップと、
VI)場合により(変性)イネ胚乳タンパク質を架橋するための架橋剤を添加するステップと、
VIa)場合によりステップVI)を実施した後に得られた混合物に酵素処理または熱処理を施して(変性)イネ胚乳タンパク質を架橋するステップと、
VII)場合によりステップV)および/またはVI)で得られた分散体を粉末に加工するステップと、
VIII)場合によりステップVII)で得られた粉末を乾燥するステップと、
IX)場合により乾燥粉末に酵素処理または熱処理を施して(変性)イネ胚乳タンパク質を架橋するステップと
を含んでなり、ただしステップVI)が実施される場合、ステップVIa)またはステップIX)の双方でなく片方のみが実施される、本発明の組成物を製造する方法である。
【0033】
[ステップI]
このステップは、場合により撹拌しながら、単に水を(変性)イネ胚乳タンパク質に添加して、または(変性)イネ胚乳タンパク質を水に添加して実施される。あるいは、均質化は超音波処理によって可能であり得る。
【0034】
好ましくは上述のような選択性のある(変性)イネ胚乳タンパク質が使用される。
【0035】
[ステップII]
添加してもよい水溶性賦形剤および/またはアジュバントは、例えば単糖類、二糖類、オリゴ糖類および多糖類、グリセロールおよび水溶性抗酸化剤である。それらの例は上に示した。
【0036】
[ステップIII]
活性成分は、上述したようなものである。
【0037】
(脂溶性)活性成分および/または着色剤および任意の脂溶性賦形剤およびアジュバント(adjuvents)は、それ自体として、またはトリグリセリドおよび/または(有機)溶剤に溶解または懸濁して使用される。
【0038】
適切な有機溶剤は、ハロゲン化脂肪族炭化水素、脂肪族エーテル、脂肪族および環式炭酸塩、脂肪族エステルおよび環式エステル(ラクトン)、脂肪族および環式ケトン、脂肪族アルコール、およびそれらの混合物である。
【0039】
ハロゲン化脂肪族炭化水素の例は、モノ−またはポリハロゲン化直鎖、分枝または環式C1〜C15−アルカンである。特に好ましい例はモノ−またはポリ−塩素化または−ブロム化された直鎖、分枝または環式C1〜C15−アルカンである。より好ましいのはモノ−またはポリ塩素化直鎖、分枝または環式C1〜C15−アルカンである。最も好ましいのは塩化メチレンおよびクロロホルムである。
【0040】
脂肪族エステルおよび環式エステル(ラクトン)の例は、酢酸エチル、酢酸イソプロピルおよびn−酢酸ブチル、およびγ−ブチロラクトンである。
【0041】
脂肪族および環式ケトンの例は、アセトン、ジエチルケトンおよびイソブチルメチルケトン、およびシクロペンタノンおよびイソホロンである。
【0042】
環式炭酸塩の例は、特に炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンおよびそれらの混合物である。
【0043】
脂肪族エーテルの例は、アルキル部分が1〜4個の炭素原子を有するジアルキルエーテルである。好ましい一例はジメチルエーテルである。
【0044】
脂肪族アルコールの例は、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、およびブタノールである。
【0045】
さらに溶剤として、任意の油(トリグリセリド)、オレンジ油、リモネンなどおよび水が使用できる。
【0046】
添加してもよい脂溶性賦形剤および/またはアジュバントは、例えばトウモロコシ油、モノ−または脂肪酸のジグリセリド、ポリグリセロール脂肪酸、および中鎖トリグリセリド(「MCT」)である。
【0047】
[ステップIV]
本発明の代案の方法ではステップIII)が実施されないが、活性成分および任意の脂溶性賦形剤および/またはアジュバントが、ステップI)またはII)の溶液に直接添加される。
【0048】
[ステップV」
均質化のためには、高圧均質化、高剪断乳化(ロータ・ステータシステム)、微粒子化(micronisation)、湿潤製粉、マイクロチャネル(microchanel)乳化、膜乳化または超音波処理などの従来の技術を応用できる。食物、飲料、動物飼料、化粧品または医薬組成物の富栄養化、強化および/または着色のために、(脂溶性)活性成分および/または着色剤を含有する組成物の調製のために使用されるその他の技術については、その内容を参照によって本明細書に援用するEP−A 0 937 412号明細書(特に段落[0008]、[0014]、[0015]、[0022]から[0028])、EP−A 1 008 380号明細書(特に段落[0005]、[0007]、[0008]、[0012]、[0022]、[0023]から[0039])および米国特許第6,093,348号明細書(特に2欄24行から3欄32行、3欄48行から65行、4欄行53行から6欄60行)で開示される。
【0049】
[ステップVI]
架橋剤は、好ましくは還元糖、糖タンパク質、およびグリコペプチドからなる群から選択される。したがって(変性)イネ胚乳タンパク質と、糖タンパク質/グリコペプチドの糖または糖部分との分子間架橋が形成する。好ましい架橋剤の例は、グルコース、フルクトース、ショ糖、およびキシロースなどの還元糖である。
【0050】
[ステップVIa]
架橋は、上述のように架橋剤をさらに含有する混合物を熱処理してメイラード型反応において糖とタンパク質との架橋を引き起こし、すなわち好ましくは約30〜約160℃の温度、より好ましくは約70〜約100℃の温度、最も好ましくは約80〜約90℃の温度で熱的に処理して達成できる。
【0051】
(変性)イネ胚乳タンパク質と架橋剤との架橋はまた、好都合には約0〜約70℃の温度、好ましくは約20〜約40℃の温度で実施される、架橋酵素(例えばトランスグルタミナーゼであるEC2.3.2.13タンパク質−グルタミン:γ−グルタミルトランスフェラーゼなどのアシル転移酵素EC2.3)での処理、すなわち酵素的処理によって達成できる。好ましくはステップVIa)に従った酵素処理は架橋酵素、特にトランスグルタミナーゼによる処理である。
【0052】
トランスグルタミナーゼの場合、酵素的架橋はε−(γ−グルタミル)−リジンイソペプチド結合の形成によって、安定したタンパク質含有多糖類網目状組織をもたらす。酵素的架橋のためには、糖タンパク質またはグリコペプチドの使用が好ましい。
【0053】
親油性部分の組み込みのため、メイラード型反応において糖とタンパク質の架橋を引き起こす熱処理、および酵素的架橋の双方の技術が使用でき、組成物の乾燥形態(ステップIX)、または水溶液または懸濁液(ステップVIa)中のどちらかで実施できる。酵素的架橋は、好ましくは水溶液または懸濁液中で実施される。
【0054】
[ステップVII]
水中油分散体であるこのようにして得られた分散体は、噴霧乾燥、流動床顆粒化と組み合わさった噴霧乾燥(後者の技術は一般に流動化噴霧乾燥またはFSDとして知られている)によって、または噴霧されたエマルジョン小滴がデンプン、ケイ酸カルシウム、および二酸化ケイ素などの吸収材の床に捕捉されて引き続いて乾燥される粉末捕捉技術などの任意の従来の技術を使用して、有機溶剤(存在する場合)の除去後に、例えば乾燥粉末などの固体組成物に転換できる。
【0055】
噴霧乾燥は、約100〜約250℃、好ましくは約150℃〜約200℃、より好ましくは約160〜約190℃の入口温度、および/または約45〜約160℃、好ましくは約55〜約110℃、より好ましくは約65〜約95℃の出口温度(製品温度)で実施されてもよい。
【0056】
[ステップVIII]
ステップVIIで得られた粉末の乾燥は、好ましくは≦100℃の温度、好ましくは20〜100℃の温度、より好ましくは60〜70℃の温度で実施される。乾燥が真空中で実施される場合、温度はより低い。
【0057】
[ステップIX]
熱処理を通じた架橋は、ステップVIaについて既に上述したようにして実施される。酵素処理についても同様であるが、好ましくは溶液/懸濁液中で実施される。
【0058】
[(変性)イネ胚乳タンパク質の製造]
本発明はまた、
a)粉砕米の水溶液または懸濁液を調製し、製粉前に米糠が除去されて溶液または懸濁液が好ましくは水溶液または懸濁液総量を基準にして0.1〜30重量%、好ましくは10〜15重量%の乾燥質量含量を有するステップと、
b)場合により粉砕米の非タンパク質部分またはタンパク質部分を除去してイネ胚乳タンパク質を得るステップであって、米糠が製粉前に除去されるステップと、
c)場合により粉砕米のタンパク質部分を変性させて変性イネ胚乳タンパク質を得るステップであって、米糠が製粉前に除去されるステップと、
d)場合により(変性)イネ胚乳タンパク質を単離するステップと、
e)場合により(変性)イネ胚乳タンパク質を固形に加工するステップと
を含んでなり、ただしステップb)、c)、およびd)の少なくとも1つが実施される、粉砕米から開始して、米糠が製粉前に除去された(変性)イネ胚乳タンパク質を製造する方法にも関する。
【0059】
本発明の文脈で「イネ胚乳タンパク質」とは、特にステップa)とb)、またはステップa)とd)、またはステップa)とb)とe)、またはステップa)とb)とd)、またはステップa)とd)とe)、またはステップa)とb)とd)とe)のいずれかを実施することによって得られる生成物を意味する。好ましいのはステップa)およびb)(およびd)および/またはe))が実施される実施態様であり、特に好ましいのは、ステップa)、b)、およびd)(およびe))が実施される実施態様である。
【0060】
本発明の文脈で「変性イネ胚乳タンパク質」とは、特にステップc)が実施される生成物、すなわちステップa)とc)、またはステップa)とb)とc)、またはステップa)とc)とd)、またはステップa)とc)とe)、またはステップa)とb)とc)とd)、またはステップa)とc)とd)とe)、またはステップa)とb)とc)とe)、またはステップa)とb)とc)とd)とe)のいずれかを実施することによって得られる生成物を意味する。
【0061】
変性イネ胚乳タンパク質(およびその選択性)は、イネ胚乳タンパク質よりも好ましい。最も好ましいのは、ステップa)、b)、c)およびd)(およびe))を実施することによって得られる生成物である。
【0062】
[ステップa)]
製粉前に米糠が除去された粉砕米はまた、「米粉」の表現の下に知られている。
【0063】
このステップは、場合により米粉が完全に分散するまで激しく(機械的撹拌機で)撹拌しながら、または米粉懸濁液をホモジナイザーで例えば室温で5分間均質化して、単に米粉に水を添加して、または水に米粉を添加して実施される。
【0064】
[ステップb)]
[非タンパク質部分の除去]
ステップb)は、好ましくは米粉をいかなるpH調節もなしに(pH6〜7)非タンパク質分解酵素により、例えば0.5%ターマミル(Termamyl)(登録商標)水性懸濁液により温度90℃で2時間、次に0.1%セルラーゼ水性懸濁液により温度50℃で30分間処理して酵素を不活性化して、米粉のタンパク質部分から非タンパク質部分を分離し除去することによって行われてもよい。
【0065】
好ましい非タンパク質分解酵素の例は、α−アミラーゼなどのデンプン分解酵素、およびセルラーゼ、すなわちセルロース分解酵素、およびそれらの混合物である。α−アミラーゼの好ましい例は、米国のノボ・ノルディスク・バイオケム・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド(Novo Nordisk Biochem、North America,Inc.)から市販されるターマミル(登録商標)120、タイプLである。その他の好ましい例は、米国のノボ・ノルディスク・バイオケム・ノース・アメリカ・インコーポレーテッドから市販されるLiquzyme(登録商標)Supra、日本国名古屋市(Nagoya,Japan)の天野製薬株式会社(Amano Pharmaceutical Co.Ltd.)から市販されるアミラーゼS「アマノ」35G、米国のジェネンコア・インターナショナル・インコーポレーテッド(Genencor International,Inc(USA))から市販されるMultifectセルラーゼ、および日本国名古屋市の天野製薬株式会社から市販されるセルラーゼT「アマノ」4である。
【0066】
酵素反応は、無機機酸(例えば塩酸)または有機酸(例えばクエン酸)または塩基が使用される場合は溶液または懸濁液を中性化することで、または加熱して酵素を変性させることで停止できる。
【0067】
変性は、溶液を80〜95℃の温度、好ましくは80〜85℃の温度に10〜15分加熱することで達成してもよい(特に3.5〜4.5の低pHで)。その後溶液を50℃に冷却してもよい。
【0068】
非タンパク質部分の分離は、遠心分離(5000gで15分間)(非タンパク質部分は水相中に存在する)と、それに続く脱イオン水での洗浄によって達成されてもよい。イネ胚乳タンパク質はペレットのままである。
【0069】
[タンパク質部分の除去]
あるいは、遠心分離または濾過前にいわゆる「アルカリ抽出」またはいわゆる「塩抽出」を実施してもよい。
【0070】
「アルカリ抽出」とは、最初に40〜60℃で3時間、米粉溶液または懸濁液のpHを7〜12の値、好ましくは8〜10の値、より好ましくは約9の値に、アルカリ溶液(例えばNaOH水溶液)で調節することを意味する。
【0071】
タンパク質収率がタンパク質機能性よりも重要な場合は、pHを好ましくは8〜12、より好ましくは9〜12、さらにより好ましくは10〜12の値に調節することが有利であり得る。
【0072】
好ましくはこのような塩基は、約0.1〜5M、好ましくは約0.5〜約2Mの濃度を有する。塩基は無機塩基であってもよい。無機塩基の例は、水酸化ナトリウム(好ましい)、水酸化カリウム、および水酸化カルシウムなどのアルカリ(土類)水酸化物である。
【0073】
「塩抽出」は「アルカリ抽出」に類似するが、塩基に加えて塩化ナトリウムなどの塩が使用される。好ましい本発明の実施態様では、0.08Mの塩化ナトリウム水溶液(NaOHでpH11に調節)が、抽出溶剤として使用される。
【0074】
(アルカリまたは塩抽出)どちらの場合もタンパク質部分は、水相に移動される。次に遠心分離または濾過によって、非タンパク質部分からタンパク質部分を分離してもよい。
【0075】
[ステップc)]
米粉の変性は、(市販される)食品等級アルカリ性、中性および/または酸性タンパク質分解酵素で、それ(そのタンパク質部分)を処理することによって達成されてもよい。いくつかのタンパク質分解酵素について、酵素規格および最適条件を実施例で提供する。
【0076】
タンパク質分解酵素は、細菌または真菌からのもの、ならびに果実からのもの、または動物起源であってもよい。
【0077】
アルカリ性タンパク質分解酵素の例は、市販される米国ノースカロライナ州フランクリントン(Franklinton,NC,USA)のノボ・ノルディスク・バイオケムからのアルカラーゼ(Alkalase)(登録商標)、米国ニューヨーク州ニューヨーク(New York,NY,USA)のEnzyme Development CorporationからのAlkaline protease(登録商標)、米国ニューヨーク州ロチェスター(Rochester,NY,USA)のジェネンコア・インターナショナル・インコーポレーテッドからのProtex 6L(登録商標)(ジェネンコア(登録商標)Bacterial Alkaline Protease)、および米国ニューヨーク州ロチェスターのジェネンコア・インターナショナル・インコーポレーテッドからのジェネンコア(登録商標)Protease 899である。
【0078】
中性タンパク質分解酵素の例は、市販される米国ニューヨーク州ニューヨークのEnzyme Development CorporationからのBromelain(ブロメライン)(登録商標)、米国ニューヨーク州ニューヨークのEnzyme Development Corporationからのリキパノール(Liquipanol)(登録商標)、および米国ニューヨーク州ロチェスターのジェネンコア・インターナショナル・インコーポレーテッドからの細菌中性タンパク質分解酵素である。中性タンパク質分解酵素のさらなる例は、植物であるパパイヤ(Carica papaya)からの製品、すなわち果実起源酵素である、オランダ国デルフト(Delft,Netherlands)のDSM Food Beveragesから市販されるCollupilin(登録商標)である。
【0079】
酸性タンパク質分解酵素の例は、米国シグマ(Sigma(USA))からのペプシンおよび日本国名古屋市の天野製薬株式会社からの酸性タンパク質分解酵素である。
【0080】
本発明の方法の好ましい実施態様では、米粉のタンパク質部分は、引き続いて7〜10の範囲のpHにおいて40〜60℃で10〜80分、2つの異なるアルカリ性タンパク質分解酵素によって処理される。
【0081】
好ましくはこれらのタンパク質分解酵素の1つは、アルカラーゼ(Alkalase)(登録商標)、Protex 6L(登録商標)などのセリン特異的タンパク質分解酵素、またはアルカリ性タンパク質分解酵素(登録商標)であり、もう1つはリキパノール(登録商標)またはブロメライン(登録商標)などのシステイン特異的タンパク質分解酵素である。
【0082】
ステップはまた、酵素を一度に添加せず、それらを(引き続いてまたは同時に)小分けにして添加することで、修正されてもよい。
【0083】
ステップc)はまた、ステップd)の後に実施されてもよく、すなわち最初にイネ胚乳タンパク質を単離して次にそれを変性してもよい。
【0084】
[ステップd)]
ステップd)は、好ましくは遠心分離および/または濾過によって、好ましくは限外濾過によって実施される。限外濾過は、先行する遠心分離なしに実施されてもよい。
【0085】
酵素不活性化後、加水分解産物(hydrolyate)を好ましくは低速で遠心分離して(1000gで10分間)、不溶性タンパク質および不純物を分離してもよい。
【0086】
次にタンパク質加水分解産物の可溶性画分をワットマン(Whatman)4号濾紙を通して濾過し、濾液に分子量カットオフ(MWCO)≧5kDaの膜、好ましくは分子量カットオフ(MWCO)≧30kDaの膜、より好ましくは分子量カットオフ(MWCO)≧50kDaの膜、最も好ましくは分子量カットオフ(MWCO)50〜750kDaの膜で、逐次限外濾過(UF)およびダイアフィルトレーション(DF)を施してもよい。
【0087】
限外濾過およびダイアフィルトレーションは、室温において20〜25psiの入口圧力および10psiの出口圧力で実施されてもよい。次に溶液を5倍の濃縮率に限外濾過する。限外濾過直後に、保持物(retenate)を2倍の体積の脱イオン水で2回ダイアフィルトレーションしてもよい。限外濾過およびダイアフィルトレーション中に、タンパク質を可溶性に保つため溶液のpHをpH8.0〜9.0の間に維持してもよい。
【0088】
[ステップe)]
例えば乾燥粉末などの固体形態への変換は、当業者に知られている任意の乾燥法によって達成できる。好ましいのは噴霧乾燥または凍結乾燥である。噴霧乾燥は好ましくは約200℃〜約210℃の入口温度、および約70℃〜約75℃の出口温度で実施される。凍結乾燥は好ましくは約−20℃〜約−50℃の温度で10〜48時間実施される。
【0089】
本発明の目的はまた、上述の任意の方法によって得られる(変性)イネ胚乳タンパク質でもある。
【0090】
[産業上の利用可能性]
本発明は、食物、飲料、動物飼料、パーソナルケアまたは医薬組成物の富栄養化、強化および/または着色のための上述のような組成物の使用、ならびにこのような上述のような組成物を含有する食物、飲料、動物飼料、パーソナルケアおよび医薬組成物それ自体に関する。
【0091】
本発明はまた、上述のような(変性)イネ胚乳タンパク質を含有する食物、飲料、動物飼料、パーソナルケア、および医薬組成物、ならびに活性成分、特に脂溶性活性成分および/または着色剤のための保護親水コロイドとしての好ましくは上述のようなこのような(変性)イネ胚乳タンパク質の使用にも関する。
【0092】
ヒトをはじめとする動物は、本発明の文脈でヒトの他に、特にヒツジ、雌牛、ウマ、家禽(ブロイラーおよび卵の着色)、エビおよび魚(特にサケおよびニジマス)などの飼育動物、ならびにネコ、イヌ、鳥(例えばフラミンゴ)、および魚などのペットを包含する。
【0093】
本発明の組成物が、特に着色剤または機能性成分として使用できる飲料は、例えば、着香天然発泡ミネラルウォーター、清涼飲料またはミネラル飲料などの炭酸飲料、ならびに例えば着香水、果汁、フルーツポンチ、およびこれらの飲料の濃縮形態などの非炭酸飲料であることができる。それらは天然果汁または野菜汁または人工香料をベースにしてもよい。アルコール飲料および即席飲料粉末もまた含まれる。糖含有飲料の他に、ノンカロリーおよび人工甘味料を用いたダイエット飲料もまた含まれる。
【0094】
さらに天然起源または合成から得られる乳製品は、本発明の組成物が、特に着色剤としてまたは機能性成分として使用できる食品の範囲内である。このような製品の典型的な例は、乳飲料、アイスクリーム、チーズ、ヨーグルトなどである。豆乳飲料および豆腐製品などの乳代替製品もまた、この応用範囲に含まれる。
【0095】
菓子製品や、キャンデーや、ガムや、例えばアイスクリーム、ゼリー、プディング、即席プディング粉末などのデザートなど、本発明の組成物を着色剤としてまたは機能性成分として含有する甘み食品もまた含まれる。
【0096】
本発明の組成物を着色剤としてまたは機能性成分として含有する、穀類、スナック、クッキー、パスタ、スープ、およびソース、マヨネーズ、サラダドレッシングなどもまた含まれる。さらに乳製品および穀類のために使用される果実調製品もまた含まれる。
【0097】
本発明の組成物を通じて食品に添加される(脂溶性)活性成分および/または着色剤の最終濃度は、食物組成物の総重量を基準にして0.1〜500ppm、特に1〜50ppmであってもよく、着色または強化される特定の食品、および意図される着色または強化の程度に左右される。
【0098】
本発明の食物組成物は、好ましくは食品に、本発明の組成物の形態の(脂溶性)活性成分および/または着色剤を添加することによって得られる。食品または医薬品の着色または強化のために、本発明の組成物は、本発明の水分散性固体組成物の応用について知られている方法に従って使用できる。
【0099】
一般に組成物は、特定の応用に従って、水性原液、乾燥粉末混合物、またはその他の適切な食物成分とのプレブレンドのいずれかとして添加してもよい。混合は最終応用の配合次第で、例えば乾燥粉末ブレンダー、低剪断ミキサー、高圧ホモジナイザーまたは高剪断ミキサーを使用して実施できる。容易に明らかであるように、このような専門的事項は専門家の技能の範囲内である。
【0100】
組成物が着色剤として使用される錠剤またはカプセルなどの医薬組成物もまた、本発明の範囲内である。錠剤の着色は、錠剤コーティング混合物に液体または固体着色剤組成物の形態で本発明の組成物を別々に添加する、または錠剤コーティング混合物の構成要素の1つに着色剤組成物を添加することによって達成できる。着色硬質または軟質シェルカプセルは、着色剤組成物をカプセル塊水溶液に組み込むことによって調製できる。
【0101】
組成物が活性成分として使用される、チュアブル錠、発泡性錠剤またはフィルム被覆錠剤などの錠剤、または硬質シェルカプセルなどのカプセルのような医薬組成物もまた本発明の範囲内である。本発明の組成物は、典型的に錠剤化混合物に粉末として添加され、またはカプセルの製造について知られている様式でカプセル内に充填される。
【0102】
組成物が、例えば卵黄、食用家禽、ブロイラーまたは水産動物(特にエビ、サケ、ニジマス)を着色するための着色剤として、または活性成分として使用される、栄養成分プレミックス、複合飼料、ミルク代替え品、流動食または飼料調製品などの動物飼料製品もまた、本発明の範囲内である。
【0103】
組成物が着色剤として、または活性成分として使用される、化粧品、洗面用品、および皮膚用製品、すなわちクリーム、ローション、バス、リップスティック、シャンプー、コンディショナー、スプレーまたはジェルなどのスキンおよびヘアケア製品をはじめとするパーソナルケア組成物は、本発明の範囲内である。
【0104】
本発明を次の実施例によってさらに例示する。
【0105】
[実施例]
次の略語が使用される。
UF=限外濾過
DF=ダイアフィルトレーション
DH=加水分解度
DI水=脱イオン水
MWCO=分子量カットオフ
SDS=ドデシル硫酸ナトリウム
【0106】
米粉はアーカンソー州シュトゥットガルトのライスランド・フーズ(Riceland Foods(Stuttgart,AR))から得られた。次の食品等級酵素をタンパク質の単離で使用した。(1)ターマミル−米国のノボ・ノルディスク・バイオケム・ノース・アメリカ・インコーポレーテッドからの熱安定性α−アミラーゼ、(3)Multifectセルラーゼ−米国のジェネンコア・インターナショナル・インコーポレーテッドからの2,000IU/gの真菌セルラーゼ。次の規格の食品等級タンパク質分解酵素を使用した(表1aおよび1b)。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
[概要]
アルカリ、塩、および酵素的方法によるイネ胚乳タンパク質単離の最適化について実験を行い、それらの抽出性および物理化学および機能特性についてそれらを評価した。目的は、改善された米タンパク質機能性のための最適抽出法を同定するために、抽出法を最適化し、抽出物の物理化学特性を評価することであった。
【0110】
米タンパク質単離物は、化学的および酵素的方法によって調製した。予備試験を行って、最大収率およびタンパク質含量があるタンパク質の抽出条件を最適化した。化学的および酵素的方法の手順の例として、米タンパク質単離物調製品RPを図1に、90℃でのターマミル(登録商標)処理とそれに続くセルラーゼ処理による米タンパク質単離物調製品(RPET)を図2に示す。
【0111】
[濾過による(変性)イネ胚乳タンパク質単離]
1インチ径中空繊維ポリスルホン膜カートリッジを装着した米国のKoch membrane systemsからのRomicon限外濾過システムを使用して、限外濾過実験を実施した。(変性)イネ胚乳タンパク質の可溶性画分をワットマン4号濾紙を通して濾過し、50、30、10、および5kDaの名目上の分子量カットオフ(MWCO)を有する膜−カートリッジを使用して、濾液に逐次限外濾過を施した。各MWCOカートリッジ中で、溶液を5倍の濃縮率に限外濾過した。限外濾過の直後に、保持物(retenate)を体積の2倍の脱イオン水によって2回ダイアフィルトレーションした。1回目の(50kDa)限外濾過(UF)およびダイアフィルトレーション(DF)の透過物をプールして、次にMWCO(30kDa)UFおよびDFを施した。各MWCOカートリッジから得られた保持物(retenate)を凍結乾燥し、DH、溶解性、および乳化特性について評価した。
【0112】
[(A)タンパク質抽出]
[実施例1:アルカリ抽出([化学抽出」)によるイネ胚乳タンパク質の単離]
[実施例1−1:(REP 1−1)]
米国ニューヨーク州ガーディナー(Gardiner,N.Y.,U.S.A.)のThe Virtis Co.からのブレンダー(Virtishear Tempest)内で、室温において設定6で5分間、500グラムの米粉を4Lの脱イオン水(1:8、w/v)により均質化した。1NのNaOHを使用してスラリーをpH11.0に調節し、懸濁液を40℃で3時間撹拌した。溶液中の可溶化したタンパク質を遠心分離(5,000g、20分間)によって分離した。この手順をもう一度繰り返し、残留物からさらに抽出した。1回目および2回目の抽出の合わせた上清中のタンパク質をpH4.5で等電点沈殿させ、4℃に2時間保った。沈殿物を10,000gで20分間の遠心分離によって回収し、脱イオン水(1:4、w/v、pH4.5)で2回洗浄し、pH7.0に調節して、凍結乾燥して5℃で保存した。
【0113】
[代案の実施例1−2:(REP 1−2)]
5Kgの米粉を40Lの脱イオン水(1:8、w/v)により均質化し、3NのNaOHを添加してスラリーのpHをpH11に調節し、懸濁液を40℃で3時間撹拌した。溶液中の可溶化したタンパク質を遠心分離(5000g、15分間)によって分離した。この手順をもう一度繰り返し、残留物からさらに抽出した。1回目および2回目の抽出の合わせた上清中のタンパク質をpH4.5で等電点沈殿させ、4℃に2時間保った。沈殿物を5000gで20分間の遠心分離によって回収し、脱イオン水(1:4、w/v、pH4.5)で2回洗浄し、pH7.0に調節して5℃で保存した。
【0114】
[代案の実施例1−3:(REP 1−3)]
米国ニューヨーク州ガーディナーのThe Virtis Co.からのホモジナイザー(Virtishear Tempest)内で、5分間1キログラムの米粉を8Lの脱イオン水(1:8、w/v)により均質化した。1NのNaOHを使用してスラリーのpHを11.0に調節し、懸濁液を40℃で3時間撹拌した。溶液中の可溶化したタンパク質を遠心分離(2000g、15分間)によって分離した。この手順を繰り返して、残留物から追加的タンパク質を抽出した。1回目および2回目の抽出の合わせた上清中のタンパク質をpH4.5で等電点沈殿させ、4℃に1時間保った。沈殿物を5000gで20分間の遠心分離によって回収し、脱イオン水(1:4、w/v、pH4.5)で洗浄し、pH7.0に調節して凍結乾燥し(RP)、5℃で保存した(図1)。
【0115】
[実施例1−4(REP 1−4):塩抽出によるイネ胚乳タンパク質の単離]
米タンパク質(RP)の塩抽出は上のアルカリ法(REP 1−3参照)に類似しているが、0.08Mの塩化ナトリウム(NaOHでpH11に調節)の合わせた溶液を抽出溶剤として使用した。
【0116】
[実施例2:非タンパク質部分の酵素的分解によるイネ胚乳タンパク質の単離(「酵素的抽出」)]
[実施例2−1:(REP 2−1)]
500グラムの米粉を3Lの蒸留水(1:6、w/v)に分散した。米粉−水を40℃で15分間撹拌して、スラリーを形成した。スラリーを0.5%のα−アミラーゼで処理して温度を90℃に徐々に上昇させて、90℃で2時間インキュベートした。20℃において5,000×gで15分間の遠心分離によって、可溶化されたデンプンを除去した。残留物を1.5Lの脱イオン水と再度混合し、0.1%のセルラーゼで処理して50℃で30分間インキュベートした。90℃でpHを3.5に低下させて、酵素を不活性化した。可溶化したデンプンおよびセルロース画分を5000×gで15分間の遠心分離によって除去した。沈殿したタンパク質を温脱イオン水で2回洗浄して可溶性糖および残留酵素を除去し、pH7.0に調節して凍結乾燥して5℃で保存した。
【0117】
[代案の実施例2−2:(REP 2−2)]
5Kgの米粉を30L脱イオン水により均質化して、60℃で15分間撹拌した。スラリーを0.2%ターマミルで処理し、温度を90℃に徐々に上昇させて、その温度で2時間インキュベートした。可溶化したデンプンをチーズクロスで濾過して除去した。ペレットを15Lの脱イオン水と再度混合し、0.1%のペクチナーゼと共に50℃で30分間インキュベートし、新たな0.1%酵素ターマミルを添加した。温度を90℃に徐々に上昇させて、その温度で30分間インキュベートした。90℃でpHを5.0に低下させて、酵素を不活性化した。可溶化した細胞壁構成要素および残留デンプンをチーズクロスで濾過して除去した。タンパク質ペレットを温脱イオン水で2回洗浄して可溶性糖および残留酵素を除去し、pH7.0に調節して5℃で保存した。
【0118】
[代案の実施例2−3:(REP 2−3)]
1kgの米粉を6Lの脱イオン水により均質化して、60℃で15分間撹拌した。スラリーを0.5%ターマミルで処理し、温度を90℃に徐々に上昇させて、その温度で2時間インキュベートした。可溶化したデンプンを遠心分離(5000g、15分間)によって除去した。ペレットを3Lの脱イオン水と再度混合し、0.1%セルラーゼと共に50℃で30分間インキュベートした。90℃でpHを4.5に低下させて酵素を不活性化した。次に可溶化したセルロース画分を遠心分離によって除去した。沈殿したタンパク質を温脱イオン水で2回洗浄して、可溶性糖および残留酵素を除去し、pH7.0に調節して凍結乾燥し(RPET)5℃で保存した(図2)。
【0119】
[代案の実施例2−4:(REP 2−4)]
アミラーゼS(RPEA)抽出は、ターマミルの代わりにアミラーゼSが使用されること以外は、ターマミル法(REP 2−3参照)と本質的に同一である。アミラーゼSは70℃で最適活性を有し、90℃で作用するターマミル法よりもさらに穏和な抽出条件を提供する。タンパク質単離物の水分、タンパク質、デンプン、繊維、脂肪、および灰分含量は、アメリカ穀物化学者協会公認法,第8版,第2巻,AACC,St.Paul,MN.1990年,1〜2頁;方法46−08で開示されるようにして判定した。
【0120】
[(B)タンパク質変性]
[実施例3:タンパク質分解酵素による、アルカリ抽出イネ胚乳タンパク質の変性(REP 3−1〜3−8)]
[REP 3−1〜REP 3−5の調製の詳細な説明]
アルカリ抽出したイネ胚乳タンパク質単離物REP 1−1に、タンパク質分解酵素処理を施した。タンパク質を脱イオン水と混合して(1:12.5、w/v)均質化し、各酵素の最適pHに調節して50℃で10分間撹拌した。各酵素に最適化条件下で、分散体を食品等級タンパク質分解酵素で処理した。各酵素に最適化条件を表2に示す。商業食品等級のタンパク質分解酵素(ブロメライン(REP 3−1)、Protex 6L(REP 3−2)、ペプシン(REP 3−3)、アルカラーゼ(Alkalase)(REP 3−4)、およびリキパノール(REP 3−5))を使用して、溶解および機能特性を改善した。得られた加水分解産物の加水分解度をOPA法(ニールセン(Nielsen)ら、Journal of Food Science 2001年,66(5),642〜646頁)によって最適化し、機能特性を最大化した。各酵素の特異的不活性化条件によって、要求されるDHで酵素的反応を終了させた。加水分解生成物を噴霧乾燥し5℃で保存した。
【0121】
【表3】

【0122】
図4は加水分解時間の関数として、アルカラーゼ(Alkalase)、リキパノールまたはペプシンで処理されたイネ胚乳タンパク質の加水分解プロフィールを示す。
【0123】
図7は、SDS PAGEゲル電気泳動法により判定される米タンパク質、およびペプシン、リキパノール、およびアルカラーゼでの処理によって生成する加水分解産物の分子サイズプロフィールを示す。
レーン1−標準マーカー、
レーン2−米タンパク質(対照)、
レーン3−ペプシン2.2%DH、
レーン4−ペプシン6.5%DH、
レーン5−リキパノール3.9%DH、
レーン6−リキパノール10.5%DH、
レーン7−アルカラーゼ7.7%DH、
レーン8−アルカラーゼ14.7%DH。
【0124】
図8は、SDS PAGEゲル電気泳動法により判定される、アルカラーゼ処理米タンパク質加水分解産物の分子サイズプロフィールを示す。
レーン1−標準マーカー、
レーン2−米タンパク質(対照)、
レーン3−アルカラーゼ5.2%DH、
レーン4−アルカラーゼ7.7%、
レーン5−アルカラーゼ11.2%、
レーン6−アルカラーゼ13.5%、
レーン7−アルカラーゼ14.7%DH。
【0125】
[REP 3−6、3−7、および3−8の調製の詳細な説明]
実施例REP 3−1、REP 3−2、REP 3−3、REP 3−4、およびREP 3−5のようにREP 1−1を使用する代わりに、REP 3−6、REP 3−7、およびREP 3−8の調製ではREP 1−2を使用した。
【0126】
[REP 3−6]
アルカリ抽出した米タンパク質単離物REP 1−2をDI水(8%w/v)によって均質化し、pH8.0に調節した。タンパク質溶液を50℃で1%アルカラーゼにより3.5分間処理した。酵素を70℃においてpH5.0で15分間不活性化した。タンパク質加水分解物(REP 3−6)を噴霧乾燥して5℃で保存した。
【0127】
[REP 3−7]
アルカリ抽出した米タンパク質単離物REP 1−2をDI水(8%w/v)によって均質化し、pH8.0に調節した。タンパク質溶液を50℃で1%アルカラーゼにより7.5分間処理した。酵素を70℃においてpH5.0で15分間不活性化した。タンパク質加水分解物(REP 3−7)を噴霧乾燥して5℃で保存した。
【0128】
[REP 3−8]
アルカリ抽出した米タンパク質単離物REP 1−2をDI水(8%w/v)によって均質化し、pH8.0に調節した。タンパク質溶液を50℃で1%アルカラーゼにより11分間処理した。酵素を70℃においてpH6.0で15分間不活性化した。タンパク質加水分解物(REP 3−8)を噴霧乾燥して5℃で保存した。
【0129】
[実施例4:2つのタイプタンパク質分解酵素(REP4)によるアルカリ抽出イネ胚乳タンパク質の変性]
アルカリ抽出イネ胚乳タンパク質単離物(REP 1)に、セリンおよびシステインタンパク質分解酵素の併用処理を施した。タンパク質を脱イオン水(1:12.5、w/v)と混合して均質化し、pH9.0に調節して60℃で10分間撹拌した。分散体を食品等級アルカラーゼ(Alkalase)2.4L(0.5%)で処理し、60℃で15分間インキュベートした。次にリキパノール(0.5%)を反応混合物に添加して50℃で15分間インキュベートした。酵素反応を80℃、10分間で終了させ、変性イネ胚乳タンパク質を噴霧乾燥して5℃で保存した。
【0130】
[実施例5:タンパク質分解酵素によるアルカリ抽出イネ胚乳タンパク質の変性、および引き続く前記変性イネ胚乳タンパク質の限外濾過とダイアフィルトレーション(REP5)]
アルカリ抽出イネ胚乳タンパク質単離物(REP 1)に、セリンおよびシステインタンパク質分解酵素の併用処理による長時間加水分解を施した。タンパク質を脱イオン水(1:12.5、w/v)と混合して均質化し、pH9.0に調節して60℃で10分間撹拌した。分散体を食品等級アルカラーゼ(Alkalase)2.4L(0.5%)で処理し、60℃で60分間インキュベートした。次にリキパノール(0.5%)を反応混合物に添加して、50℃で60分間インキュベートした。酵素反応を80℃、10分間で終了させた。このようにして変性されたイネ胚乳タンパク質をワットマン5号濾紙で濾過した。米国のKoch membrane systemsからの容量2〜10LのRomicon限外濾過システムに装着された、MWCOが50kDaの中空繊維ポリスルホン膜カートリッジを使用して、濾液に限外濾過を施した。溶液を10倍の濃縮率に限外濾過した。限外濾過直後に、残留物を2倍の体積の脱イオン水で2回ダイアフィルトレーションした。得られた残留物を噴霧乾燥した。
【0131】
[実施例6:非タンパク質部分の酵素的分解によるイネ胚乳タンパク質の単離、タンパク質分解酵素での処理による前記イネ胚乳タンパク質の変性、および引き続く前記変性イネ胚乳タンパク質限外濾過とダイアフィルトレーション(REP 6−1〜REP 6−5)]
[REP 6−1]
実施例2で得られた酵素抽出イネ胚乳タンパク質単離物(REP 2−1)に、セリンおよびシステインタンパク質分解酵素の併用処理による長時間加水分解を施した。タンパク質を脱イオン水(1:12.5、w/v)と混合して均質化し、pH9.0に調節して60℃で10分間撹拌した。分散体を食品等級アルカラーゼ(Alkalase)2.4L(0.5%)で処理し、60℃で60分間インキュベートした。次にリキパノール(0.5%)を反応混合物に添加して、50℃で90分間インキュベートした。酵素反応を80℃、10分間で終了させた。加水分解物(hydrolyate)を低速で(1000gで10分間)遠心分離して、不溶性タンパク質および不純物を分離した。変性イネ胚乳タンパク質の可溶性部分を、ワットマン4号濾紙を通して濾過し、50kDaのMWCOで限外濾過を施した。溶液を10倍の濃縮率に限外濾過した。限外濾過直後に、保持物(retenate)を2倍の体積の脱イオン水で2回ダイアフィルトレーションした。酵素的加水分解、遠心分離、および限外濾過処理において、タンパク質を可溶性に保つために(変性)イネ胚乳タンパク質のpHを8.0に維持した。得られた保持物(retentates)を噴霧乾燥した(REP 6−1)。
【0132】
[REP 6−2調製の詳細な説明]
実施例2(REP 2−2)で得られた酵素抽出イネ胚乳タンパク質単離物に、アルカラーゼ処理を施した。タンパク質単離物をDI水(4%)と混合して均質化し、pH9.0に調節して50℃で10分間撹拌した。分散体をアルカラーゼ2.4L(1%)で処理し、混合物を50℃で8分間インキュベートした。酵素反応をpH5.0において70℃、15分間で終了させた。加水分解産物を低速(1000rpm、1分間)で遠心分離し、不溶性タンパク質および不純物を除去した。加水分解産物の可溶性部分に10kDaのMWCOの膜で限外濾過を施した。溶液を5倍の濃縮率で限外濾過した。得られた保持物(retentate)(≧10kDa)を噴霧乾燥して5℃で保存した(REP 6−2)。
【0133】
[REP 6−3調製の詳細な説明]
実施例2(REP 2−2)で得られた酵素抽出イネ胚乳タンパク質単離物に、アルカラーゼ処理を施した。タンパク質単離物をDI水(4%)と混合して均質化し、pH9.0に調節して50℃で10分間撹拌した。分散体をアルカラーゼ2.4L(1%)で処理し、混合物を50℃で12分間インキュベートした。酵素反応をpH5.0において70℃、15分間で終了させた。加水分解産物を低速(1000rpm、1分間)で遠心分離し、不溶性タンパク質および不純物を除去した。加水分解産物の可溶性部分に10kDaのMWCOの膜で限外濾過を施した。溶液を5倍の濃縮率で限外濾過した。得られた保持物(retentate)(≧10kDa)を噴霧乾燥して5℃で保存した(REP 6−3)。
【0134】
[REP 6−4調製の詳細な説明]
実施例2(REP 2−2)で得られた酵素抽出イネ胚乳タンパク質単離物に、アルカラーゼ処理を施した。タンパク質単離物をDI水(4%)と混合し、メタ重亜硫酸ナトリウム(sodium metabisufite)(20mg/gタンパク質)を添加して均質化し、pH9.0に調節して50℃で10分間撹拌した。分散体をアルカラーゼ2.4L(1%)で処理し、混合物を50℃で8分間インキュベートした。酵素反応をpH5.0において70℃、15分間で終了させた。加水分解産物を低速(1000rpm、1分間)で遠心分離し、不溶性タンパク質および不純物を除去した。加水分解産物の可溶性部分に10kDaのMWCOの膜で限外濾過を施した。溶液を5倍の濃縮率で限外濾過した。得られた保持物(retentate)(≧10kDa)を噴霧乾燥して5℃で保存した(REP 6−4)。
【0135】
[REP 6−5調製の詳細な説明]
実施例2(REP 2−2)で得られた酵素抽出イネ胚乳タンパク質単離物に、アルカラーゼ処理を施した。タンパク質単離物をDI水(4%)と混合し、メタ重亜硫酸ナトリウム(sodium metabisufite)(10mg/gタンパク質)を添加して均質化し、pH9.0に調節して50℃で10分間撹拌した。分散体をアルカラーゼ2.4L(1%)で処理し、混合物を50℃で30分間インキュベートした。酵素反応をpH5.0において70℃、15分間で終了させた。加水分解産物を低速(1000rpm、1分間)で遠心分離し、不溶性タンパク質および不純物を除去した。加水分解産物の可溶性部分に10kDaのMWCOの膜で限外濾過を施した。溶液を5倍の濃縮率で限外濾過した。得られた保持物(retentate)(≧10kDa)を噴霧乾燥して5℃で保存した(REP 6−5)。
【0136】
[(C)ペプシン補助米タンパク質抽出とそれに続く限外濾過]
[実施例7:酸性タンパク質分解酵素によるイネ胚乳タンパク質の変性、および引き続く前記変性イネ胚乳タンパク質(REP7)の限外濾過]
ブレンダー内で500グラムの米粉を3L脱イオン水(1:6、w/v)によって室温で5分間均質化した。3N HClを使用して、スラリーをpH2.4に調節し、懸濁液を37℃で30分間撹拌した。スラリーを0.44%ペプシンで処理し、37℃で130分間インキュベートした。溶液中の可溶化した変性イネ胚乳タンパク質を遠心分離(5,000g、20分間)によって分離した。残留米粉を500ml脱イオン水と混合して、可溶性部分を遠心分離によって分離して、残留物からより多くを抽出した。実施例5で記載されるようなMWCOが50kDaの膜を使用して、1回目および2回目の抽出の合わせた上清中のタンパク質に限外濾過を施した。UFおよびDFの併用は、小型タンパク質断片およびその他の不純物を効果的に排除した。
【0137】
[(D)分析法]
[実施例8:エマルジョン能力の判定]
グボゴウリ(Gbogouri)ら、Journal of Food Science 2004年、69巻、8号、615頁の方法に従って、油滴定に基づいて(変性)イネ胚乳タンパク質のエマルジョン能力を判定した。(変性)イネ胚乳タンパク質の分散体(0.1%w/w、50mL、pH7.0)を脱イオン水によって調製した。米国ニューヨーク州ガーディナーのThe Virtis Co.からのホモジナイザー(Virtishear Tempest)内において、設定1でタンパク質溶液を均質化した。蠕動ポンプを使用して、約17g/分の流速でトウモロコシ油をタンパク質溶液に添加した。導電率計によって、エマルジョンの電導率を連続的に記録し、エマルジョンの転移点判定のためのパラメータとして使用した。転移点までに添加された油の量を使用して、乳化能力を計算した。乳化能力は、乳化油からブランクを差し引いたもののサンプル中タンパク質量に対する比率として表現される。ブランクは、50mLの脱イオン水中で相転換前に添加された油の量であった。
【0138】
あるいは、ビュイルマー(Vuillemard)らの方法に従って、油滴定に基づいてタンパク質加水分解産物REP 3−6、3−7、3−8、6−2、6−3、6−4、6−5)のエマルジョン能力を判定した。タンパク質分散体(0.5%w/w、40mL、pH7.0)は、蒸留水中で調製された。
【0139】
米国ニューヨーク州ガーディナーのThe Virtis Co.からのホモジナイザー(Virtishear Tempest)内において、設定6で、タンパク質溶液を均質化した。ポンプを使用してタンパク質溶液にトウモロコシ油を約12g/分の流速で添加した。エマルジョンの導電率を導電率計によって連続的に記録し、エマルジョンの転移点判定のパラメータとして使用した。転移点になるまでに添加した油の量を使用して乳化能力を計算した。乳化能力は、サンプル中の乳化油からブランクを差し引いたものと、タンパク質量との比率として表わされた。ブランクは40mL蒸留水中で相転換前に添加された油量であった。
【0140】
[実施例9:エマルジョン活性の判定]
ピアスおよびキンゼラ,Journal of Agric Foods Chem.1978年,26:716〜722頁の比濁法によって、エマルジョンを活性を判定した。米国ニューヨーク州ガーディナーのThe Virtis Co.からの超音波処理器(Virtishear Tempest)内において、pH 7.0の10mMリン酸緩衝液中の0.1%(変性)イネ胚乳タンパク質溶液6mLと、トウモロコシ油2mLとの混合物を設定6で1分間均質化した。均質化の0および10分後に、50μLの混合物を5mLの0.1%SDS(w/v)水溶液中に移した。日本国京都市(Kyoto,Japan)の島津製作所(Shimadzu)からの分光計(モデル(Model)UV−1601)によって、500nmにおける溶液の吸光度を判定した。均質化0分後の吸光度が、(変性)イネ胚乳タンパク質のエマルジョン活性である。
【0141】
図9は、アルカラーゼ(Alkalase)、リキパノール、およびペプシンで処理された米タンパク質加水分解産物の乳化特性を加水分解度の関数として示す。
【0142】
[実施例10:加水分解度の判定]
ニールセンらの方法(ニールセン,P.M.,ピーターソン(Petersen),D.およびダンブマン(Dambmann),C,2001年.「食物タンパク質加水分解度を判定するための改善された方法(Improved method for determining food protein degree of hydrolysis)」.Journal of Food Science,66(5),642〜646頁)によってDHを判定した。次のようにしてo−フタルジアルデヒド(OPA)試薬を調製した。7.620gの四ホウ酸二ナトリウム十水和物(Na・10HO)および200mgのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を150mLの脱イオン水に溶解し、次に160mgのOPA(4mLのエタノールに事前溶解された97%OPA)および176mgの99%ジチオスレイトール(DTT)と混合した。脱イオン水で最終溶液を200mLにした。凍結乾燥されたタンパク質サンプル0.1gを10mLの脱イオン水に可溶化した。吸光度を測定するために、3mLのOPA試薬を10mL試験管に入れ、次に400μLのサンプル溶液、セリン標準(10mg/100mL)、および脱イオン水を4本の試験管の各サンプル、標準、およびブランクにそれぞれ添加した。この後、5秒間混合し、正確に2分間保持した。日本国京都市の島津製作所からの分光光度計(モデルUV−1601)によって、340nmで吸光度を読み取った。DHを次のようにして計算した。
【0143】
DH=h/htotal100%
式中、hは加水分解された結合数であり、htotalは、タンパク質当量あたりのペプチド結合の総数である。
h=(セリン−NH2−β)/α equiv/gタンパク質
式中、hは加水分解された結合数であり、htotalは、タンパク質当量あたりのペプチド結合の総数であり、穀物タンパク質ではαは1.00、βは0.40、および、htotalは8.0である。
【0144】
セリン−NH2=[(A340sample−A340blank)/(A340standard−A340blank)]0.9516meqv/L0.01100/(XP)
式中、セリン−NH2=meqvセリンNH2/gタンパク質;X=gサンプル;P=サンプル中の%タンパク質;0.01は1L中のサンプル体積である。
【0145】
[実施例11:タンパク質および総溶解度の判定]
タンパク質溶解度は、いくつかの修正を加えて、ベラ,M.B.;ムーカジ(ベラ,M.B.;ムーカジ,R.K.、1989年.「米糠タンパク質濃縮物の溶解性、乳化、および起泡特性」.J Food Sci 54(1):142〜145頁)の方法によって判定した。200mgのタンパク質サンプルを10mLの脱イオン水中に分散し、1N HClまたは1N NaOHでpHを7.0に調節した。分散体を連続的に30分間撹拌し、米国カリフォルニア州(Calif.,U.S.A)のBeckman,Fullertonからの(モデルJ2−21)によって5000rpmで15分間遠心分離した。上清を回収し、上清中のタンパク質含量を自動ケルダール法(AACC 1990)によって判定した。タンパク質溶解度の百分率を次の式によって計算した。
【数1】

【0146】
タンパク質溶解度は、上清中のタンパク質と最初のサンプル中の総タンパク質との%比率として計算した。
【0147】
総溶解度はオーブン乾燥法によって判定し、上清中の総可溶性部分と、タンパク質単離物総重量との%比率として表した。
【数2】

【0148】
図6は、アルカラーゼ(Alkalase)、リキパノールまたはペプシンで処理されたイネ胚乳タンパク質加水分解産物の溶解度を加水分解度の関数として示す。
【0149】
[実施例12:分子量の判定]
ラエムリ,U.K.、「バクテリオファージT4の頭部のアセンブリー中の構造タンパク質の切断」.Nature 1970年,227,680〜686頁に従って、SDS−PAGEによってタンパク質の近似分子量を判定した。SDS−PAGEは、SDS−トリス−グリシン不連続の緩衝液システム中のスラブゲル(4%濃縮用ゲル、12%分離用ゲル)上で実施した。非還元サンプル緩衝液(62.5mMトリス−HCl pH6.8、2%SDS、10%グリセロール、および0.05%ブロモフェノールブルー)中で、タンパク質溶液(6〜10μgタンパク質/μL)を調製した。12μLの溶液をゲルに充填した。電気泳動法を200Vの定電圧で約40分間実施した。ゲルを酢酸/エタノール/水溶液(10:40:50、v:v:v)中の0.1%クーマシーブリリアントブルーによって染色し、クーマシーブリリアントブルーなしの同一溶剤で脱染した。6.5〜200kDaの範囲にわたるバイオ・ラッド(Bio−Rad)広域分子量標準によって近似分子量を判定した。米国カリフォルニア州(CA,USA)のAdvanced American Biotechnology and Biomedical Instruments Incからの画像分析ソフトウェア、windows、MacおよびDosを使用して、バンドの分子量と密度を判定した。
【0150】
[実施例13:表面疎水性の判定]
ハヤカワ,S.;ナカイ、「ミルクおよび大豆タンパク質の溶解性に対する疎水性および実効電荷の関係」.J.Food Sci.1985年,50,486〜491頁によって概説される方法からの1−アニリノ−8−ナフタレンスルホネート(ANS)の疎水性蛍光プローブによって、タンパク質単離物の表面疎水性を判定した。濃度範囲0.008〜0.025%w/vの0.01Mリン酸緩衝液(pH7)中で4mLのタンパク質溶液を作製した。10μLの0.01Mリン酸緩衝液(pH7)中の8mM ANSを各タンパク質溶液に添加して、日本国京都市の島津製作所からの蛍光分光光度計(モデルRF−1501)により、390nmの励起および470nmの発光で、これらの溶液の蛍光強度を測定した。蛍光強度対タンパク質濃度の傾斜として表わされる表面疎水性は、直線回帰によって計算された。
【0151】
図5は、アルカラーゼ(Alkalase)、リキパノールまたはペプシンで処理されたイネ胚乳タンパク質加水分解産物の表面疎水性を加水分解度の関数として示す。
【0152】
[実施例14:粘度の判定]
室温(26℃)で、MVDIN測定紡錘体(半径=19.36mm、高さ=58.08mm)を装着した、独国(Germany)のHaakeからの回転レオメータ(VT550)によって、タンパク質単離物の粘度を判定した。タンパク質単離物を脱イオン水と混合して10%スラリーを形成し、分析前にスラリーを60分間平衡状態に保った。サンプル(30ml)を円柱状カップ(半径=21.0mm)に充填して、コンピューター制御プログラムを使用して、3分間かけて0から4001/秒に変化する剪断速度をかけた。データを独国のHaake Mess TechからのRheowin Proデータ・マネージャ、バージョン2.84によって分析した。
【0153】
[実施例15:熱特性の判定]
米国コネチカット州ノーウォークのパーキン−エルマー・コーポレーション(Perkins−Elmer Corp.(Norwalk,Conn.,U.S.A.))からの熱分析ソフトウェア(バージョン4.00、Pyris−1−DSC)を装着した米国コネチカット州ノーウォークのパーキン−エルマー・コーポレーションからの示差走査熱量計(モデルPyris−1)を使用して、熱特性を判定した。200mgのタンパク質を適切な量の水に分散して、タンパク質含量20%のスラリーを形成した。スラリーをよく混ぜて、分析前に60分間平衡状態に保った。スラリー(約50μL)をステンレス鋼パン(大容積カプセル)に正確に量り入れて密封し、10℃/分の速度で25から140℃への温度上昇中にスキャンした。空のパンを基準として使用した。データ処理ソフトウェアを使用して、温度記録からピーク温度およびエンタルピーを計算した。
【0154】
実施例9の手順を使用して、PearceおよびKinsellaの比濁法によって、乳化活性および安定性を判定した。0時間における吸光度はイネ胚乳タンパク質の乳化活性として表わされ、エマルジョン安定性(ES)は次のようにして計算される。
エマルジョン安定性=T×Δt/ΔT
式中、ΔTは、Δt(10分間)の時間間隔中の初期吸光度(T)の濁度(吸光度)の低下である。
【0155】
全ての実験は、三回行った。ノースカロライナ州ケアリーのSASインスティチュート・インコーポレーテッド(SAS Institute Inc.(Cary,NC.))からのJMP5.1ソフトウェア(SAS Inst)SAS,2002,JMP(登録商標)ユーザー・ガイド、バージョン5によって、分散および平均値多重比較についてデータを分析した。5%の有意水準(P<0.05)で、チューキーHSD手順によって平均間の有意差を判定した。
【0156】
[(E)結果]
次の表3aには、実施例9および8でそれぞれ記載されるような方法によって測定される、実施例1〜7に従って得られた(変性)イネ胚乳タンパク質(REP 1−1〜REP7)のエマルジョン活性および能力が示される。
【0157】
REP 3については、毎回、ブロメライン、Protex 6L、ペプシン、アルカラーゼ(Alkalase)(登録商標)またはリキパノール(登録商標)の別の酵素によって実施例を8回実施したために8つの値が示され(REP 3−1〜REP 3−8を参照されたい)、REP 6については、毎回、実施例6で詳細に記載されるような異なる処理条件を適用して実施例を5回実施したために5つの値が示される(REP 6−1〜REP 6−5を参照されたい)。
【0158】
【表4】

【0159】
続く表3bおよび3cには、実施例10および11でそれぞれ記載されるような方法によって測定される、実施例3および6に従って得られたREP 3および6の変性イネ胚乳タンパク質のタンパク質溶解度および総溶解度および加水分解度が示される。
【0160】
【表5】

【0161】
【表6】

【0162】
化学的および酵素的抽出手順の概要を図1および2にそれぞれ提示する。アルカリ−および塩−方法は、それぞれ67.9および60.3%の収率で、米粉中の総タンパク質の内、タンパク質含量87.2および89.4%のタンパク質単離物を抽出した。
【0163】
アルカリおよび塩方法では、pHがタンパク質抽出に強い影響を有した。pHと抽出性の正の相関はpH12まで見られた。しかし高いpHは、望ましくないタンパク質変性をもたらし、タンパク質と共沈殿する非タンパク質構成要素の抽出を増大して、単離物の質を低下させ得る。しかしpH10以下は、米タンパク質抽出では質の劣る溶剤である。したがって、タンパク質収率に関してはpH11が最適抽出pHと判断された。タンパク質の乳化特性などのタンパク質の機能性については、より低いpH(好ましくはpH8〜10)が興味の対象となり得る。さらに3分間の均質化または超音波の前処理と組み合わさったpH11でのタンパク質抽出は、タンパク質の抽出性を改善した。これらの前処理は、疎水性的に相互作用するタンパク質−タンパク質またはタンパク質−多糖類相互作用を引き離し、タンパク質抽出を容易にした可能性がある。
【0164】
酵素抽出では、熱安定性αアミラーゼであるターマミルと、それに続くセルラーゼ処理が89.2%の収率で85.8%のタンパク質含量を単離した。酵素ターマミルは90℃で最適活性を有する。ターマミル処理中の90℃での高度なタンパク質変性を避けるために、70℃で最適活性を有する別の非熱安定性アミラーゼ(アミラーゼS)に手順を応用した。セルラーゼ処理と組み合わさったアミラーゼSは、下の表に示すように90.5%の収率で81.7%のタンパク質を単離した。
【0165】
【表7】

【0166】
米タンパク質の組成物であるアルブミン、グロブリン、グルテリン、およびプロラミンが表4に提示される。米粉は7.8%のタンパク質を含有し、総タンパク質の4.1%はアルブミン、11.8%はグロブリン、77.4%はグルテリン、および2.1%はプロラミンであった。アルカリおよび塩抽出は、グロブリン以外は同様のタンパク質プロフィールを有した。塩抽出タンパク質は、アルカリ抽出タンパク質(3.1%)よりも高いグロブリン(6.2%)を含有した。米中の主要タンパク質はグルテリンであるので、アルカリ−および塩−抽出タンパク質は、酵素−抽出タンパク質(80.2%)よりも高い、それぞれ87.9および86.7%のグルテリンを含有した。対照的に、プロラミン含量はアルカリ性−(0.5%)および塩−(0.7%)抽出よりも酵素抽出でより高い(2.8%)。
【0167】
【表8】

【0168】
4つのタンパク質単離物の組成を表6に示す。RPおよびRPの双方は同様の組成を有し、そのどちらも酵素抽出したタンパク質、RPET(84.8%)、およびRPEA(81.7%)より高いタンパク質含量、87.2および89.4%をそれぞれ有した。デンプン、脂質、繊維、灰分をはじめとする非タンパク質構成要素は、酵素−抽出タンパク質よりもアルカリ−および塩−抽出タンパク質のどちらよりも低い。
【0169】
【表9】

【0170】
米タンパク質の電気泳動法プロフィールを図3に示す。米タンパク質の分子サイズプロフィールはSDSPAGEゲル電気泳動法によって判定された。
レーン1−標準標識(6.5〜200kDa)、
レーン2−RP
レーン3−RP
レーン4−RPET
レーン5−RPEA
【0171】
米タンパク質は全部で6つのバンドを有し、分子サイズは7〜97kDaの範囲であった。主要バンドは97kDa(2%)、45kDa(3%)、33kDa(72%)、21kDa(7%)、14kDa(6%)、および7kDa(8%)で観察された。ほとんどの主要バンドは、72%の密度で33kDaの分子サイズにおいて観察された(図3、レーン1および2)。これは主要な米タンパク質のグルテリンである。
【0172】
米タンパク質単離物の熱変性温度および変性のエンタルピー値を表7に提示する。
【0173】
【表10】

【0174】
RP、RP、RPET、およびRPEAの変性温度は、それぞれ81.4、78.9、79.9、および78.8℃であった。RP(1.82J/g)、RP(1.10J/g)、RPET(検出不能)、およびRPEA(0.18J/g)のエンタルピー値は有意に異なり、抽出方法が抽出条件次第で、異なる度合いにタンパク質を変性させたことが示唆された。エンタルピー変化は、タンパク質変性の程度を予測するのに使用し得る。ビリアデリス,C.G.、「食品研究における示差走査熱量測定:レビュー」.Food Chem.1983年,10,239〜265頁。タンパク質が部分的に変性するとエンタルピー変化は減少し、タンパク質が完全に変性するとエンタルピー変化はゼロである。ユー,Z.Y.;ヘティアラキ,N.S.;ラス,N.、「米粉タンパク質の抽出、変性、および疎水性」.J.Food Sci.2001年,66(2),229〜232頁は、アルブミン、グロブリン、およびグルテリンについて、それぞれ2.88、3.14、および3.79J/gのエンタルピー値を報告した。本発明者らの研究ではアルカリ抽出タンパク質(RP)が最も高いエンタルピー値(1.82J/g)を有し、それはユーらのアルブミン(2.88J/g)、グロブリン(3.14J/g)、およびグルテリン(3.79J/g)の値よりも顕著に低かった。アルカリおよび塩抽出中に施された物理的処理が、タンパク質をある程度変性させた可能性がある。酵素−抽出タンパク質の内、RPET(ターマミル、90℃)はいかなる検出可能なエンタルピー変化も示さず、完全なタンパク質変性が示唆された。
【0175】
[表面疎水性および溶解度]
米タンパク質単離物の表面疎水性、溶解度、および粘度を表8に提示する。
【0176】
【表11】

【0177】
米タンパク質単離物の疎水性は、544〜931の範囲にわたる。抽出方法は、これらのタンパク質の疎水性の差に寄与する。酵素−抽出タンパク質の疎水性RPET(931.3)およびRPEA(791.6)は、アルカリ−および塩−抽出タンパク質(それぞれ563.8および544.2)よりも高かった。これは表面疎水性を増大させるタンパク質の変性に起因し得る。酵素−抽出タンパク質の熱誘発性アンフォールディングは、表面疎水性を増大させる。
【0178】
米タンパク質単離物の溶解度は、4〜10の広いpH範囲で低い(データ示さず)。アミノ酸組成物および疎水性相互作用が溶解度を決定する。テクソンら(8)による米グルテリンの細分画研究は、米グルテリンの高分子質量が、過剰な分子内および分子間ジスルフィドおよび疎水性相互作用を有して溶解度を低下させたことを示した。ウェンおよびリュース(9)もまた、米グルテリン中の最も豊富なアミノ酸がグルタミン酸/グルタミン、アスパラギン酸/アスパラギン、アルギニン、グリシン、およびアラニンであると報告した。グルタミンおよびアスパラギン側鎖中のアミド基はグルテリンの凝集を促進し、米タンパク質の溶解度を低下させた。比較すると酵素−抽出タンパク質は、アルカリ−および塩−抽出タンパク質よりも低い溶解度を有し、これは抽出中の高レベル変性、高表面疎水性、および水溶性タンパク質(アルブミン)損失に起因し得る。
【0179】
米タンパク質単離物の乳化および発泡特性を表9に提示する。
【0180】
【表12】

【0181】
アルカリ−および塩−抽出タンパク質の乳化および発泡特性は、酵素−抽出タンパク質よりも高かった。アルカリ−および塩−抽出タンパク質の乳化活性はそれぞれ0.224および0.216で、安定性はそれぞれ19.6および17.1分間であり、それは酵素−抽出タンパク質よりも有意に高かった。発泡能力および安定性でも同様の結果パターンが観察された。乳化および発泡特性を有するためには、タンパク質は水相中に可溶化して迅速にアンフォールドし、境界面に凝集性層を形成しなくてはならない。エマルジョンおよび発泡を安定化するためのタンパク質の分子および物理的要件は類似している(ダモダーン,S.、「タンパク質安定化気泡およびエマルジョン」.J.Food Sci.205年,70(3),54〜66頁。
【0182】
異なる抽出方法によって得られた機能特性の相違の可能な理由は、タンパク質単離物のタンパク質純度、組成、表面疎水性、および溶解度に起因し得る。しかし出願人がこれらの理論によって拘束されることは意図されない。
【0183】
第1に、2つの酵素−抽出タンパク質の熱特性は、RPおよびRPよりも高度な変性を示した。過剰な変性は、タンパク質凝集の促進、またはより多数の疎水性アミノ酸の露出のどちらかにより、乳化および発泡特性にとって有害であり得る。表面疎水性データは、酵素−抽出タンパク質の疎水性の増大を証明した。過剰な表面疎水性は、広範な疎水結合の形成を容易にし、タンパク質の溶解度および可撓性を低下させることにより、タンパク質の乳化または発泡特性にとって好ましくないことがある。
【0184】
第2に、高い温度またはpHなどの極端な抽出条件が、ジスルフィド架橋の形成を促進した可能性がある。米グルテンが過剰な結合を有することが報告されている。抽出タンパク質の極めて低い溶解度は、抽出中の熱−またはpH−誘発性タンパク質アンフォールディングが、タンパク質内部のチオール基を露出させた可能性があることを示唆した。これらの露出したチオール基は、隣接するタンパク質分子とジスルフィド結合を容易に形成できる。新たに形成したジスルフィド結合が、タンパク質の分子可撓性、溶解度、および表面活性を低下させた可能性がある。タンパク質の特定セグメントの可撓性は、タンパク質の乳化および発泡特性を決定する主要特性の1つである。
【0185】
第3に、米タンパク質単離物の組成は、アルカリ−および塩−抽出タンパク質単離物が、酵素−抽出タンパク質よりも多くのタンパク質および少ない非タンパク質を含有したことを示した。酵素抽出タンパク質単離物RPETおよびRPEA中の顕著な量の繊維、灰分、脂質、および残留デンプンは、それらの乳化および発泡特性を低下させた可能性がある。これらの非タンパク質構成要素はタンパク質と相互作用してタンパク質の正味電荷および疎水性を変化させ、タンパク質の機能性に影響し得る。
【0186】
最後に、酵素抽出タンパク質のより低い溶解度は、乳化および発泡特性に悪影響を及ぼした。エマルジョンおよび発泡特性を有するためには、タンパク質は可溶化してアンフォールドし、境界面に凝集性層を形成しなくてはならない。これにはタンパク質溶解性および可撓性が必要とされる。これらの特性を欠いた酵素−抽出タンパク質は、アルカリ−および塩−抽出タンパク質よりも乳化および発泡特性が低下する。
【0187】
これらの研究から、アルカリおよび塩方法はそれぞれ67.9および60.3%の収率で、87.2および89.4%のタンパク質を抽出したことが分かった。酵素的方法は、ターマミルおよびアミラーゼSはそれぞれ、89.2および90.5%の収率で、84.8および81.8%のタンパク質を抽出した。アルカリ−および塩−抽出タンパク質は、酵素−抽出タンパク質よりも高いタンパク質含量と、デンプン、脂質、繊維、および灰分をはじめとするより低い非タンパク質構成要素とを有した。比較すると、アルカリ−および塩−抽出したタンパク質のより好ましいタンパク質組成、より低い疎水性、より高い溶解度、およびより低い熱変性度が、酵素−抽出タンパク質よりも高い乳化および発泡特性に寄与した。したがってアルカリおよび塩抽出方法はより穏やかな抽出条件であり、タンパク質はより良い機能特性を保持した。
【0188】
米タンパク質は、ヒト消費のために栄養的で低アレルギー性であり、健康的である。認可された食品等級酵素および薬品を使用した効率的な抽出方法は、米タンパク質の商業生産および機能性成分としての応用にとって必須である。イネ胚乳タンパク質をアルカリ、塩、および酵素的方法によって単離し、抽出性および物理化学的特性について評価した。アルカリ(RP)および塩(RP)方法は、それぞれ67.9および60.3%の収率で、87.2および89.4%のタンパク質を抽出した。ターマミル(RPET)およびアミラーゼS(RPEA)での酵素的方法は、それぞれ89.2および90.5%収率で、84.8および81.8%のタンパク質を抽出した。示差走査熱量計によって判定されたRP(1.82J/g)、RP(1.10J/g)、RPET(非検出可能な)、およびRPEA(0.18J/g)のエンタルピー値は、抽出方法次第で変動するタンパク質変性レベルを実証した。表面疎水性データはこの観察を支持する。アルカリ−および塩−抽出タンパク質は、酵素−抽出タンパク質よりも高い溶解度および乳化特性を有し、したがって、アルカリ−および塩−抽出タンパク質は、増強された機能性用途、および個別に調整された(tailored)米タンパク質単離物を調製するための出発原料としての可能性を有することができる。
【0189】
熱安定性α−アミラーゼ、ターマミル(登録商標)で単離されたイネ胚乳タンパク質を中性、酸性、および/またはアルカリ性タンパク質分解酵素で処理した。加水分解産物の加水分解度をOPA方法によって最適化し、溶解度および乳化特性を最大化した。酵素不活性化後、可溶性画分を遠心分離(1000gで10分間)によって分離し、特定分子量(50kDa)のカットオフ膜を通して可溶性加水分解産物を濾過した。50kDaを超える、得られた加水分解産物を噴霧乾燥させ、加水分解度、溶解度、エマルジョン能力、活性、および安定性について評価した。
【0190】
2つのタイプのタンパク質分解酵素、システイン(リキパノール)およびセリン(アルカラーゼ(Alkalase))タンパク質分解酵素の併用処理と、それに続く遠心分離および限外濾過は、溶解度および乳化特性を顕著に改善した。得られた加水分解産物は53.5%の溶解度、586.3ml/gのエマルジョン能力、0.604の活性、および24.8分間の安定性を有し、非変性米タンパク質単離物(11.8%の溶解度、177.6ml/gのエマルジョン能力、0.214の活性、および14.7分間の安定性)よりも顕著に高かった。
【0191】
アルカラーゼ(Alkalase)およびリキパノールの組み合わせによる酵素的加水分解と、それに続く限外濾過は、イネ胚乳タンパク質の溶解度および乳化特性を改善した。高純度の一様な分子画分がある限外濾過されたイネ胚乳タンパク質加水分解産物は、その溶解度および乳化特性を増強した。
【0192】
[実施例12:β−カロテン調合物の製造]
イネ胚乳タンパク質およびβ−カロテンを含んでなる調合物は、次のようにして調製してもよい。
【0193】
[a)(油−ベースの)溶液1の調製:]
7.7gのトウモロコシ油および1.4gのdl−α−トコフェロールを混合した。16.1gの結晶性β−カロテンを180mlのクロロホルム(トリクロロメタン)中に分散し、得られた分散体をトウモロコシ油とトコフェロールの混合物に添加した。混合物を穏やかに撹拌し、同時に約60℃に加熱して溶液が得られた。
【0194】
[b)(水性)溶液2の調製:]
実施例1に従った35gのREP 1(REP 1−1)を60℃で撹拌して250mlの水に再溶解した。あるいは、実施例1に従って新鮮に調製したREP 1−1を使用することもでき、すなわち凍結乾燥および保存のステップを実施せず、得られたREP 1−1溶液それ自体を使用して温度を60℃にできる。さらに2.1gのパルミチン酸アスコルビルおよび42.7gのスクロースを添加した。8mlの水性1N NaOHを使用してpHを7.9の値に調節した。水溶液調製のために、REP 1−1の代わりにREP 1−2が適宜使用できる。
【0195】
[c)溶液1および2からのエマルジョン調製:]
激しく撹拌しながら、53℃で溶液1を溶液2に添加し、分散体をさらに30分間激しく撹拌した。撹拌される分散体を50〜55℃に30分間保った。残留トリクロロメタンを50〜55℃で除去した。閉じこめられた気泡を遠心分離によって除去した後、エマルジョンを50〜55℃でしばらく穏やかに撹拌し、次に内部相の粒度に関して特性決定した。エマルジョン内部相の平均粒度(ザウター(Sauter)径、D[3、2])は、レーザー回析(Malvern Masersizer)による測定で380nmであった。
【0196】
[d)エマルジョンからの固体調合物の調製:]
エマルジョンは、予冷したコーンスターチの流動床中に噴霧してもよい。過剰なコーンスターチはふるいによって除去でき、得られた粉末は室温において気流中で乾燥できる。0.16〜0.50mmの範囲内の粉末粒子画分は、ふるいによって収集でき、カロテノイド含量、水性分散体中の色強度および色調、コーンスターチ含量、および残留湿度について特性決定される。
【0197】
【表13】

【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】化学的および酵素的方法の手順の例としての米タンパク質単離物調製品RPである。
【図2】90℃でのターマミル(登録商標)処理とそれに続くセルラーゼ処理による米タンパク質単離物調製品(RPET)である。
【図3】米タンパク質の電気泳動法プロフィールである。
【図4】アルカラーゼ(Alkalase)、リキパノールまたはペプシンで処理されたイネ胚乳タンパク質の加水分解プロフィールを加水分解時間の関数として示す。
【図5】アルカラーゼ(Alkalase)、リキパノールまたはペプシンで処理されたイネ胚乳タンパク質加水分解産物の表面疎水性を加水分解度の関数として示す。
【図6】アルカラーゼ(Alkalase)、リキパノールまたはペプシンで処理されたイネ胚乳タンパク質加水分解産物の溶解度を加水分解度の関数として示す。
【図7】SDS PAGEゲル電気泳動法により判定される米タンパク質、およびペプシン、リキパノール、およびアルカラーゼでの処理によって生成する加水分解産物の分子サイズプロフィールを示す。
【図8】SDS PAGEゲル電気泳動法により判定される、アルカラーゼ処理米タンパク質加水分解産物の分子サイズプロフィールを示す。
【図9】アルカラーゼ(Alkalase)、リキパノール、およびペプシンで処理された米タンパク質加水分解産物の乳化特性を加水分解度の関数として示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イネ胚乳タンパク質および活性成分を含んでなる組成物。
【請求項2】
前記イネ胚乳タンパク質が変性イネ胚乳タンパク質である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記活性成分が脂溶性活性成分および/または着色剤である、請求項1および/または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂溶性活性成分および/または着色剤が、カロテンまたは構造的に関連したポリエン化合物、脂肪可溶性ビタミン、多価不飽和脂肪酸に富んだトリグリセリド、油溶性UV−Aフィルター、UV−Bフィルターまたはその混合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記カロテンまたは構造的に関連したポリエン化合物が、α−カロテン、β−カロテン、8’−アポ−β−カロテナール、8’−アポ−β−カロテン酸エステル、カンタキサンチン、アスタキサンチン、リコペン、ルテイン、ゼアキサンチン、クロセチン、α−ゼアカロテン、β−ゼアカロテンまたはその混合物などのカロテノイドである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記カロテノイドがβ−カロテンである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記脂溶性ビタミンがビタミンAまたはEである、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
単糖類、二糖類、オリゴ糖類、多糖類、グリセロール、トリグリセリド、水溶性抗酸化剤、および脂溶性抗酸化剤からなる群から選択される少なくとも1つの化合物がさらに存在する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記単糖類または二糖類が、スクロース、転化糖、キシロース、グルコース、フルクトース、乳糖、マルトース、ショ糖、および糖アルコールである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記オリゴ糖類または多糖類が、デンプン、デンプン加水分解産物または加工デンプンである、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記デンプン加水分解産物が、デキストリン、マルトデキストリンまたはグルコースシロップである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記トリグリセリドが植物油または脂肪である、請求項4および/または8に記載の組成物。
【請求項13】
脂肪酸のモノ−およびジグリセリド、脂肪酸のポリグリセロールエステル、レシチン、およびモノステアリン酸ソルビタンからなる群から選択される共乳化剤がさらに存在する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記(変性)イネ胚乳タンパク質が、≧220、好ましくは≧350、より好ましくは≧500のエマルジョン能力を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記(変性)イネ胚乳タンパク質が、≧0.2、好ましくは≧0.45、より好ましくは≧0.5のエマルジョン活性を有する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
組成物総量を基準にして、前記(変性)イネ胚乳タンパク質の量が約1〜約70重量%、および/または前記(脂溶性)活性成分および/または着色剤の量が約0.1〜約90重量%である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
粉末形態の請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記イネ胚乳タンパク質が、還元糖、糖タンパク質またはグリコペプチドからなる群から選択される少なくとも1つの化合物と架橋する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
I)(変性)イネ胚乳タンパク質の水溶液またはコロイド溶液を調製するステップと、
II)場合によりステップI)で調製された溶液に、少なくとも水溶性賦形剤および/またはアジュバントを添加するステップと、
III)少なくとも活性成分、好ましくは少なくとも脂溶性活性成分および/または着色剤、および場合により少なくとも脂溶性アジュバントおよび/または賦形剤の溶液または分散体を調製するステップと、
IV)ステップI)〜III)で調製された溶液を互いに混合するステップと、
V)このようにして得られた混合物を均質化するステップと、
VI)場合により前記(変性)イネ胚乳タンパク質を架橋するための架橋剤を添加するステップと、
VIa)場合によりステップVI)を実施した後に得られた混合物に酵素処理または熱処理を施して前記(変性)イネ胚乳タンパク質を架橋するステップと、
VII)場合によりステップV)および/またはVI)で得られた分散体を粉末に加工するステップと、
VIII)場合によりステップVII)で得られた粉末を乾燥するステップと、
IX)場合により前記(乾燥)粉末に酵素処理または熱処理を施して前記(変性)イネ胚乳タンパク質を架橋するステップと
を含んでなり、ただしステップVI)が実施される場合、ステップVIa)またはステップIX)の双方でなく片方のみが実施される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法。
【請求項20】
ステップVIa)またはステップIX)に記載の酵素処理が、架橋酵素、特にトランスグルタミナーゼによる処理である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記(変性)イネ胚乳タンパク質が、請求項14または15に記載のものである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
a)粉砕米の水溶液または懸濁液を調製して製粉前に米糠を除去し、前記溶液または懸濁液が水溶液または懸濁液総量を基準にして好ましくは0.1〜30重量%の乾燥質量含量を有するステップと、
b)場合により粉砕米の非タンパク質部分またはタンパク質部分を除去してイネ胚乳タンパク質を得るステップであって、米糠が製粉前に除去されるステップと、
c)場合により粉砕米のタンパク質部分を変性させて変性イネ胚乳タンパク質を得るステップであって、米糠が製粉前に除去されるステップと、
d)場合により前記(変性)イネ胚乳タンパク質を単離するステップと、
e)場合により前記(変性)イネ胚乳タンパク質を固形に加工するステップと
を含んでなり、ただしステップb)、c)、およびd)の少なくとも1つが実施される、粉砕米から開始して、米糠が製粉前に除去された(変性)イネ胚乳タンパク質を製造する方法。
【請求項23】
ステップd)が遠心分離または濾過、好ましくは限外濾過によって実施される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記濾過が名目上の分子量カットオフ≧5kDaの膜を使用して実施される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記非タンパク質部分の除去(ステップb)が、粉砕米を非タンパク質分解酵素で処理して酵素を不活性化し、粉砕米のタンパク質部分から非タンパク質部分を分離および除去することによって行われる、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記非タンパク質分解酵素が、デンプン分解酵素、セルロース分解酵素またはそれらの混合物である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記非タンパク質部分の分離が、遠心分離とそれに続くその洗い落としによって行われる、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
ステップc)が、粉砕米のタンパク質部分をアルカリ性、中性および/または酸性タンパク質分解酵素で処理することによって行われる、請求項23〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記粉砕米のタンパク質部分が、2つの異なるアルカリ性タンパク質分解酵素によって引き続いて処理される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
これらのタンパク質分解酵素の1つがセリン特異的タンパク質分解酵素であり、もう1つがシステイン特異的タンパク質分解酵素である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記タンパク質部分の除去(ステップb)が「粉砕米」溶液または懸濁液のpHを7〜12の値に調節することによって行われる、請求項23〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
ステップe)が、乾燥によって、好ましくは凍結乾燥または噴霧乾燥によって行われる、請求項23〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項23〜32のいずれか一項に記載の方法によって得られる、(変性)イネ胚乳タンパク質。
【請求項34】
≧220、好ましくは≧350、より好ましくは≧500のエマルジョン能力を有する(変性)イネ胚乳タンパク質。
【請求項35】
≧0.2、好ましくは≧0.45、より好ましくは≧0.5のエマルジョン活性をさらに有する、請求項34に記載の(変性)イネ胚乳タンパク質。
【請求項36】
食物、飲料、動物飼料、パーソナルケアまたは医薬組成物の富栄養化、強化および/または着色のための請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項37】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の組成物を含有する、食物、飲料、動物飼料、パーソナルケア、および医薬組成物。
【請求項38】
請求項33〜35のいずれか一項に記載の(変性)イネ胚乳タンパク質を含有する、食物、飲料、動物飼料、パーソナルケアおよび医薬組成物。
【請求項39】
活性成分、特に脂溶性活性成分および/または着色剤のための保護親水コロイドとしての好ましくは請求項33〜35のいずれか一項に記載されるような(変性)イネ胚乳タンパク質の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2009−519906(P2009−519906A)
【公表日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543745(P2008−543745)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011873
【国際公開番号】WO2007/065718
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】