説明

活性物質の経皮送達及び試料採取のためのマイクロデバイス及び方法

本発明の主題は、活性薬剤を経皮送達するためのナノコンジットを作製及び使用する方法を提供する。本発明の主題は、高アスペクト比微細構造(HARMS)と、それを用いてナノコンジットを生成する方法とを提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、参照によりその教示が全体として本明細書に組み込まれている、2006年12月22日出願の米国特許仮出願第60/876948号の優先権の恩恵を主張する。
【0002】
[発明の分野]
本発明の主題は、活性物質を経皮送達するためのマイクロデバイスと、それを使用する方法とに関する。
【0003】
[発明の背景]
経皮送達が成功した主な理由は、初回通過代謝の回避及び使いやすさであった。これは、他の送達方法と比べて、薬物の生体利用度を増大させる。経皮薬物送達システム(DDS)は、持続可能な放出を実現する定速度の薬物送達も可能であり、これが追加の利点となっている。しかし、経皮薬物送達法もそれらの欠点を有する。最も重要なのは、従来の経皮システム(TTS)技法が、皮膚を横切る、比較的小さな薬物の送達のみに適しているという事実である。それは、皮膚を通した薬物の輸送を制限する、外側の皮膚障壁層、すなわち角質層の存在によって、開始が遅いという難点も有する。
【0004】
したがって、経皮製品市場の今後の成長を推進するには、新規な経皮薬物送達法が必要である。生物学的産物も、現在の標準法である皮下注射針注射に取って代わる新規な非侵襲性送達技法から大きな利益を得るであろう。経皮分野の当初のプレーヤーは、そのような改良を導入するのに成功しておらず、それらは、その後、多くのイノベーターによって導入された。
【0005】
大まかに言って、現在、経皮薬物送達に関する2つの異なった新規なアプローチ、すなわち、(1)物理的装置を用いたナノ穿孔/最小擦過、及び(2)脂質封入製剤を用いたナノ担体が追求されている。ソノポレーション、熱穿孔(thermoporation)、又は極めて微細かつ短い針の使用は前者に属し、超変形性担体(トランスファーソーム(Transfersome)(登録商標)、エソソーム(Ethosome)(登録商標)又は液性リポソームなど)は、後者の例である。これらのうちのいずれのものも、皮膚を横切って、小分子又は大分子を送達できる。経皮送達の一部の例が、米国特許第7094423号、第7049140号、第7041870号、第7037499号、第7034126号、第7033598号、第7014855号、第6991805号、第6982084号及び第6979729号明細書に記載されている。
【0006】
しかし、制御された方法で物質を効率的に送達するための、改良されたディスポーサブル経皮送達装置への継続的な必要性が存在する。
【0007】
[発明の概要]
ナノ担体法及びナノ穿孔法の両方を結合して、新規な経皮薬物送達媒体を作出することが本発明の主題の目的である。
【0008】
ナノ穿孔装置の適用を容易にする機械的アプリケーターを開示することが、この主題の別の目的である。
【0009】
薬物を経皮送達する湿性装置/薬物の併用方法を開示することが、この主題のさらに別の目的である。上記装置/薬物の併用には、(1)上記装置を用いて哺乳動物を前処置し、その後に薬物を哺乳動物に適用するもの、(2)薬物を哺乳動物に適用し、次いで上記装置を用いて哺乳動物を処置するもの、及び(3)上記装置に薬物を一時的に固着させ、その後にこの装置/薬物系を用いて哺乳動物を処置するものが含まれるが、これらに限定されない。
【0010】
一部の実施形態では、治療有効量の少なくとも1種の薬剤を、それを必要とする哺乳動物に送達する、本明細書に提示の方法が、
アプリケーター装置を哺乳動物の皮膚の一領域に適用して、上記装置に、皮膚の上記領域の角質層内に複数のナノコンジットを生成させ、それによって、皮膚の調製済み領域を作出するステップと、
少なくとも1種の薬剤を含む湿性製剤を皮膚の調製済み領域に適用するステップと、
角質層内のナノコンジットを介して、有効量の少なくとも1種の薬剤が上記哺乳動物に入るのを可能にするステップと
を含み、
上記アプリケーター装置が、複数のナノコンジットを角質層内に生成できる要素を含む方法。
【0011】
一部の実施形態では、本発明の主題は、本明細書に記載のマイクロデバイスのアプリケーターを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】図1A及び図1Bは、ドセタキセルを含有するリポソームナノ粒子の2種の調製物を示す図である。
【図1B】図1A及び図1Bは、ドセタキセルを含有するリポソームナノ粒子の2種の調製物を示す図である。
【図2】図2は、マイクロニードルの使用時又は非使用時における、弾性リポソーム内のドセタキセルの貫入(%)を示す図である。
【図3】図3は、弾性リポソームナノ粒子内に封入された蛍光標識ドセタキセルが、皮膚を横切って良好に輸送されていることを示す図である。
【図4】図4は、様々な方法によるインターフェロンの送達を示す図である。
【図5】図5は、乾性製剤を用いたインターフェロンの送達を示す図である。
【図6】図6は、ローダミンBの、皮膚を横切る拡散の、レーザー共焦点走査顕微鏡写真を示す図である。
【図7】図7は、リザーバ間にある皮膚隔膜内のナノコンジットを介したインシュリンのin vitro経皮送達を示す図である。
【0013】
[発明の詳細な説明]
本発明の主題は、活性薬剤を経皮送達するためのナノコンジットを作製及び使用する方法を提供する。本発明の主題は、高アスペクト比微細構造(HARMS)と、それを用いてナノコンジットを生成する方法とを提供する。本発明の主題は、薬物、ワクチン、診断用薬剤及び美容物質の経皮送達、並びにヒトなどの哺乳動物の医学的状態を治療、予防又は改善するための体液試料の採取に上記装置を用いる方法も提供する。一部の実施形態では、この方法は、装置を用いて哺乳動物の局所部位を処置するステップと、有効な量の薬剤を上記局所部位に適用して、上記哺乳動物の体内に薬剤が浸透するのを可能にするステップとを含む。上記装置は微細構造のアレイを含みうる。上記微細構造は、約5:1、10:1、15:1、20:1又はより高いアスペクト比を有しうる。
【0014】
本明細書で使用される場合、「ナノコンジット」という用語は、組織を貫入して、コンジットを作出する要素又は装置によって置換除去される組織に直接的又は間接的に沿って並ぶ(lined with)マイクロスケール又はナノスケールの経皮コンジットを指す。ナノコンジットは、皮膚の角質層の厚みを垂直に横断するように生成された、細孔、チャネル及びコンジットである。ナノコンジットは、それによって、本発明の主題の薬剤などの物質を皮膚の外から、角質層の下にある生存表皮層内に輸送するのを容易にする。ナノコンジットという用語は、ナノポア及びナノチャネルという用語と同義的に用いられる。皮膚内に生成されるナノコンジットは、(a)角質層の厚さにほぼ等しいか、又はそれをわずかに超える深度を有し、(b)生存表皮層内に貫入する深度を任意選択で有し、かつ(c)真皮層内の血管、リンパ管又は神経に貫入しない深度を任意選択で有する。本発明のナノコンジットは、約500ダルトン超の分子量を有する薬剤の皮膚内への浸透と、角質層の通過とを可能にする。本発明のナノコンジットは、ナノコンジットの存在しない皮膚と比較して、約500ダルトン未満の分子量を有する薬剤の皮膚内への浸透及び角質層の通過の強化を可能にする。
【0015】
「マイクロスケール」又は「ナノスケール」の経皮コンジットは、適用された前記マイクロデバイス又は要素によって置換除去された組織に沿って並ぶ。マイクロスケールは、スケールが1マイクロメーターから数百マイクロメーターまでの桁である大きさを指す。ナノスケールは、数十ナノメータから、数万ナノメータまでの範囲の桁の大きさを指す。本明細書に記載の一実施形態では、マイクロデバイスの先端(又は、マイクロブレード若しくはマイクロナイフのエッジの幅)が1万ナノメータ以下の幅であり、マイクロデバイスの本体が10〜20マイクロメーター以上の幅である。マイクロデバイスの長さは、通常、マイクロスケールのものであり、例えば数ミクロンから100ミクロンまでの範囲の長さ、又はより長い長さを有する。本明細書に記載の一実施形態では、マイクロデバイスの長さは、皮膚内に生成することを望むであろうナノコンジットの深さに対応している。マイクロデバイスは、ナノスケールの幅の先端と、マイクロスケールの幅の本体とを有する針、刃又はこれらの組合せの形態にある。本発明の微細構造では、挿入力を低下させるために、マイクロニードルの先端、又はマイクロブレード及びマイクロナイフのエッジが鋭い必要があり、一方、マイクロデバイスの本体は、それが角質層を完全に貫入するのを可能にするのに十分な高さを有するべきである。
【0016】
先端の幅と装置の長さとの比率は、「アスペクト比」と呼ばれる。本発明の好ましい装置のアスペクト比は、通常、約10:1以上であり、先端及びエッジのサイズが5ミクロン未満であり、マイクロデバイスの高さが50ミクロン超である。高アスペクト比微細構造(HARMS)は、通常、5:1超のアスペクト比を有し、それらは様々な目的に有用でありうる。したがって、マイクロニードル、マイクロブレード及びマイクロナイフを含めた、皮膚を通した薬物送達又は皮膚からの体液抽出のためのマイクロデバイスを製作するのにHARMSを用いることができる。HARMSの別の例は、マイクロ流体操作及び輸送用のナノチャネルである。HARMSは通常、微小電気機械システム(MEMS)と、薄膜堆積、フォトリソグラフィ、エッチング及び電気メッキ、注入成形、ホットエンボス加工並びに自己集合のうちのいくつか、並びにLIGAプロセスを用いたナノファブリケーション技法とによって作製される。
【0017】
一部の実施形態では、本発明の主題は、哺乳動物(例えば患者)の医学的状態のための薬剤を局所又は全身に送達するシステムを提供する。このシステムは、(1)微細構造のアレイを含むマイクロデバイスと、(2)マイクロデバイスを患者の皮膚の一領域に適用して、皮膚の調製済み領域を生成するためのアプリケーターであり、皮膚の上記調製済み領域が、その角質層内に複数のナノコンジットを含むアプリケーターと、(3)皮膚の上記調製済み領域の角質層内のナノポア又はナノチャネルを通した哺乳動物への薬剤の送達を引き起こす送達機作とを含む。一部の実施形態では、上記マイクロデバイスは、約5:1、10:1、15:1、20:1又はより高いアスペクト比を有しうるナノスケールの先端及びマイクロスケールの本体を含みうる。
【0018】
したがって、本発明の主題の一態様は、治療有効量の少なくとも1種の薬剤を、それを必要とする哺乳動物に送達する方法であって、
アプリケーター装置を哺乳動物の皮膚の一領域に適用して、上記装置に、皮膚の上記領域の角質層内に複数のナノコンジットを生成させ、それによって、皮膚の調製済み領域を作出するステップと、
少なくとも1種の薬剤を含む湿性製剤を皮膚の調製済み領域に適用するステップと、
角質層内のナノコンジットを介して、有効量の少なくとも1種の薬剤が哺乳動物に入るのを可能にするステップと
を含み、
上記アプリケーター装置が、複数のナノコンジットを角質層内に生成できる要素を含む方法に関する。
【0019】
一部の実施形態では、本発明の主題は、医学的状態のために薬剤を哺乳動物に送達する方法を提供する。この方法は、(1)アプリケーターをマイクロデバイスに適用して、マイクロデバイスを皮膚の一領域と接触させて、皮膚の上記領域の角質層を貫く複数のナノポア又はナノチャネルを含む、皮膚の調製済み領域を生成するステップと、(2)皮膚の調製済み領域に薬剤を含む組成物を適用するステップと、(3)角質層内のナノポア又はナノチャネルを通して、有効量の薬剤を患者に送達させるステップとを含む。
【0020】
一部の実施形態では、本明細書に記載の、薬剤を送達する方法は、(1)皮膚の一領域に薬剤を含む組成物を適用するステップと、(2)アプリケーターをマイクロデバイスに適用して、マイクロデバイスを皮膚の上記領域と接触させて、皮膚の上記領域の角質層を貫く複数のナノポア又はナノチャネルを生成するステップと、(3)角質層内のナノポア又はナノチャネルを通して、有効量の薬剤を患者に送達させるステップとを含む。
【0021】
一部の実施形態では、本明細書に記載の、薬剤を送達する方法は、(1)アプリケーターをマイクロデバイスに適用して、マイクロデバイスを哺乳動物(例えば患者)の皮膚の一領域と接触させて、皮膚の上記領域の角質層を貫く複数のナノポア又はナノチャネルを含む、皮膚の調製済み領域を生成するステップと、(2)角質層内のナノポア又はナノチャネルを通して、有効量の薬剤を患者に送達させるステップとを含む。マイクロデバイスは、薬剤を含む組成物でコーティングすることができる。一部の実施形態では、上記送達させるステップが、薬剤を封入しているリポソームナノ粒子を含む弾性リポソームを含有する湿性製剤を適用し、薬剤を角質層を通して哺乳動物体内に輸送させることによって実現される。一部の実施形態では、上記湿性製剤が弾性リポソームを含有しない。
【0022】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、場合により、「製剤」という用語と同義的に使用されうる。「湿性製剤」という用語は、水分含量が1質量%より多い任意の形態の湿性製剤、又は他のあり方で、ある種の液体形態若しくは部分的に液体形態である湿性製剤を指す。湿性製剤の好ましい実施形態は、2質量%超の水を含有している。一部の実施形態では、湿性製剤が、皮膚用パッチ剤、クリーム、軟膏剤、ゲル、パッチ剤、弾性リポソーム、ローション又はこれらの組合せでありうる。湿性製剤は、水性組成物及び非水性組成物を含有しうる。一部の実施形態では、湿性製剤が、薬剤を封入するリポソームナノ粒子を含む弾性リポソームを含有しうる。一部の実施形態では、湿性製剤が薬剤を含みうるが、弾性リポソームではない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「薬剤」という用語は、いかなる診断用、治療用、美容用又は予防用薬剤も指す。「薬剤」という用語は、場合により、「活性薬剤」、「生理活性薬剤」又は「作用物質」と同義的に言及される。生理活性薬剤は、少なくとも1つの既知かつ特異的な生理活性を有する薬剤を指す。生理活性薬剤は、診断用薬剤でも、治療用薬剤でもありうる。治療用薬剤は、治療効果又は予防効果をもたらす薬剤である。「治療効果」は、例えば、疾患又は障害を予防又は治療するなど、生物体に有益な効果をもたらす薬剤の能力を指す。治療有効量は、疾患又は障害の予防又は治療をもたらす、薬剤の量を指す。
【0024】
皮膚構造
皮膚は、その外層に、角質層と呼ばれる生物学的障壁を有する。厚さ約10〜25ミクロンのこの層は、ほとんどの分子を、皮膚を貫入することから阻止する。角質層の下の層は、生存表皮と呼ばれる。表皮は、50から100ミクロンまでの間の厚さである。生存表皮層は血管を有しておらず、この層内の分子は、生存表皮の下の層である真皮へ、そして真皮から輸送されうる。真皮は、1から3mmの間の厚さである。真皮層内には、血管、リンパ管及び神経が存在する。これまでのところ、例えば皮膚用パッチ剤は、500Da未満の薬物分子しか、皮膚を通して送達することができない。加えて、皮膚を通して送達できる小分子は、通常、疎水性のものに限定されている。500Da超の薬物分子は、容易に皮膚を通して送達することができない。
【0025】
「表皮内薬物送達」という用語は、本明細書で使用される場合、真皮と角質層との間にある部位に薬物送達を行う一部の実施形態の方法を指す。角質層を効果的に破壊し、表皮層に薬物を送達することによって、薬物は、大きいものも、小さいものも、表皮層及び真皮層を通って容易に哺乳動物の体内に拡散できる。
【0026】
薬物、ワクチン及び美容物質の送達のための必要条件
治療用薬物、ワクチン、及び美容物質の良好な経皮送達は、皮膚障壁、すなわち角質層を通して、分子、特に大分子を輸送する方法を必要としている。これらの物質は、製薬上の必要条件に許容されるいかなる形態で皮膚に送達することもできるが、(1又は複数種の)活性成分の調節放出を実現するには、ゲル組成物が好ましい。
【0027】
本明細書に記載のマイクロデバイスは、薬剤又は薬剤の組合せの効果的な経皮送達に用いることができる。上記マイクロデバイスは、金属、半導体、ガラス、セラミック又はポリマー物質から形成された複数の微細構造を含むマイクロデバイスアレイでありうる。一部の実施形態では、上記マイクロデバイスが、マイクロニードル、マイクロナイフ又はマイクロブレードでありうる。一部の実施形態では、上記マイクロデバイスが、ナノスケールの先端又はエッジと、マイクロスケールの本体とを有する微細構造を含む。
【0028】
マイクロデバイス
本明細書に記載のマイクロデバイスは、マイクロニードル、マイクロブレード、マイクロナイフ又はこれらの組合せのうちの任意のものでありうる。本明細書で使用される場合、「マイクロニードル」という用語は、長さと、横断面の最も長い寸法との比率が少なくとも約1:1以上である細長な要素を意味する。マイクロニードルは、例えば、円形、楕円形、幾何学形又はこれらの組合せなど、規則的な形の横断面を有するものでも、不規則な形の横断面を有するものでもよい。上記ニードルは、ニードルが伸長する中心軸の長さの部分又は全長にわたって伸びる1又は複数のエッジを任意選択で含有していてもよい。「マイクロニードル」という用語は、角質層などの皮膚組織を穿刺して、それによってナノコンジットを生成するのに十分な鋭さを有する手段も指しうる。
【0029】
本明細書で使用される場合、「マイクロブレード」及び「マイクロナイフ」という用語は共に、実質的に長くて薄い細長い要素、例えば、長さと厚さとの比率が少なくとも約2:1以上である要素を意味する。各マイクロブレードは、単一の長いエッジで接触する2つの表面を含有する。エッジの長軸は、皮膚表面と平行でも、皮膚表面に垂直でも、皮膚表面に対して、ある角度で配置されてもよい。皮膚表面に対して有意に平行なエッジを有するマイクロブレードは、ナノコンジットに関して上述した通りの狭い幅と、皮膚内への深さを有する、皮膚の表面に沿った細長い開口部又はチャネルとなるナノコンジットを皮膚内に生成しうる。皮膚表面に対して有意に垂直なエッジを有するマイクロブレードは、狭い幅を有する、皮膚内の細長い開口部であるナノコンジットを皮膚内に生成するか、又は上記ナノコンジットは、開口部があらゆる方向に狭い幅を有する、むしろ、穴の様な形態のかさを有するものでありうる。「マイクロブレード」及び「マイクロニードル」という用語は、角質層などの皮膚組織を穿刺して、それによってナノコンジットを生成するのに十分な鋭さを有する細長いエッジを有する手段も指しうる。マイクロデバイスは、1つ又は複数のマイクロニードル、マイクロブレード又はマイクロナイフを含みうる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「マイクロニードルアレイ」は、一表面における、複数のマイクロニードル、マイクロブレード、マイクロナイフ又はこれらの組合せの局在的配置を指す。この局在的配置は、規則的パターン又は不規則なパターンのマイクロニードル、マイクロブレード又はマイクロナイフを含みうる。例えば、マイクロニードル及び/又はマイクロブレードは、複数の列に配置しても、ランダムに形成させても、又はこれらの組合せでもよい。マイクロニードル、マイクロブレード、マイクロナイフ又はマイクロニードルのアレイは、アプリケーター装置の1又は複数の表面に存在しうる。
【0031】
上記マイクロデバイスは、マイクロチャネル及びマイクロリザーバをさらに含有しうる。マイクロデバイス又はマイクロニードルアレイは、くぼみ、空隙、滑らかでない手触り及び/又は空洞を任意選択で含みうる。くぼみ、空隙、滑らかでない手触り及び/又は空洞の潜在的使用の1つは、ナノコンジットの生成と同時に薬剤を皮膚に適用する実施形態で、薬剤を局在、濃縮又は送達する部位としてのものである。一部の実施形態では、マイクロニードル又はマイクロブレードが、例えばリザーバからの拡散又は能動的な注入を介して薬剤を送達するための中空なチャネルを含む。他の実施形態では、マイクロニードル又はマイクロブレードが、拡散又は能動的な注入を介して薬剤を送達するための中空なチャネルを含まない。上記マイクロデバイスの一部の例は、2005年5月18日出願の米国特許出願第10/908584号明細書及び2006年8月25日出願の第11/510078号明細書に記載されている。両出願の教示を参照により全体として本明細書に組み込む。
【0032】
物質及び装置の滅菌
本明細書に記載のマイクロデバイスは、金属、セラミック、シリコン、ガラス、ポリマー及びこれらの組合せを含めた多くの異なった物質又はそれらの組合せから作製できる。上記物質の例は、チタニウム、ステンレス、ニッケル、ニッケル−鉄合金、シリコン、酸化ケイ素、ガラス、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアリールエーテルケトンナイロン、PET、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ乳酸−グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリカーボネート及びポリスチレンである。上記装置は、(1又は複数種の)薬剤の送達又は生物体液の収集を確実にしながら、破損及び/又は座屈することなく皮膚を貫入するのに十分な機械的強度を有するべきである。それらは、確立されているプロトコールを用いて滅菌可能でありうる(例えば、その内容が参照によりその全体において本明細書に組み込まれている、ANSI/AAMI/ISO 11134:1993、ANSI/AAMI/ISO 11135:1994及びANSI/AAMI/ISO 11137:1994によって記述されている、湿熱、エチレンオキシド又は放射線滅菌を参照)。
【0033】
弾性リポソーム
弾性リポソームは、細胞小胞に似るように設計され、薬物又は遺伝物質を細胞内に送達するのに使用される人工的な小胞である。境界膜はリポソームのものより柔軟であり、これによって、それが変形して、皮膚などの障壁内にある平均小胞サイズよりその直径がはるかに小さい開口部を通過することが可能となっている。弾性リポソームは、少なくとも二成分の集合体であり、ほとんどの場合、小胞である。この集合体の主な機能的特性は、その二重層様の膜コーティングの極端な柔軟性及び透過性である。その基礎は、この二重層に自己調節性及び自己最適化を与える局所的な膜形態と組成との相互依存性である。この二重層は、それゆえ、局所的かつ可逆的な二重層成分デミキシングを介したストレス適応が可能である。このすべてが、弾性リポソームを、例えば無傷の皮膚を横切った、非侵襲性及び標的指向性の薬物送達に適したツールにしている。
【0034】
二重層の高柔軟性の別の有益な帰結は、弾性リポソームが水に結合して、保持する親和性の増大である。したがって、乾燥した環境に置かれた超変形性弾性リポソーム小胞は、水がより豊富な領域を見出そうとする。これは、むきだしの皮膚に適用された弾性リポソーム小胞が適切な水和を求めて皮膚障壁を貫入するように強いるものである。この結果得られる小胞の移動は、連続的な二重層適応及び変形の結果であるが、現実の適用で、容認できないほど、小胞の完全性又は保護的な皮膚障壁特性を損なってはならない。
【0035】
基本的な弾性リポソームは、小胞に自己集合する傾向がある1種の天然両親媒性物質(ホスファチジルコリンなど)で構成されている。その後、後者に少なくとも1種の二重層軟化剤(例えば生体適合性界面活性物質)を補足する。小胞様な弾性リポソームは、それゆえ通常、複合的で、極めて流動的かつ適応的な脂質二重層によって囲まれた水性の核を保持している。その基本的な構成は、大まかには単純脂質小胞(リポソームとも呼ばれる)に類似したものであるが、弾性リポソームは、それが、より柔軟かつ透過性である「軟化」二重層膜である点で後者とは異なっている。弾性リポソーム小胞は、その結果、複合二重層が経験した局所ストレスに、二重層内の2種の成分の相対濃度を調整することによって、即時かつ容易に変形できる。これは、小胞二重層の、ストレス依存的又は変形依存的な弾性又は透過性を研究することによって間接的に観察できる。単一の実験では、ナノ多孔性フィルター(平均小胞サイズよりかなり小さな細孔を有する)を通した弾性リポソーム懸濁液流動の圧力依存性を測定することによって、同じ目標が実現できる。この結果得られる輸送速度は、最大流速に達するまで、駆動力(ヘッド圧)と共に非直線的(しばしばシグモイド形)に増大しなければならない。細孔で摩擦を全く受けない理想的な弾性リポソームでは、最大流速が、同様な膜通過圧で測定された懸濁液の流速と同等であり、良好な輸送を得るのに必要な最小圧が二重層の柔軟性の尺度となる。したがって、圧力に対する懸濁液流動の観察された依存性の関数を、その根底にある、能動的輸送過程として見た強制輸送の理論的記述に基づいて、透過性だけでなく、二重層の弾性及び柔軟性を得るのに用いることができる。
【0036】
リポソーム担体
一部の実施形態では、本明細書に記載の送達製剤が弾性リポソームを含む担体を含有する。一部の実施形態では、上記リポソームが、脂質に封入された治療用薬剤を含有するナノ粒子でありうる。上記リポソーム又はナノ粒子は、複合集合体であり、ほとんどの場合、小胞である。一部の実施形態では、柔軟かつ自己調節性の膜が得られ、それによって、上記小胞が極めて変形性に富んだものになるように、上記リポソーム又はナノ粒子を最適化することができる。これらのリポソーム又はナノ粒子は、通常、皮膚に適用することができ、局所性又は全身性の有害な副作用を低減し、かつしばしば薬物効力を増大させながら、適用部位又はその近傍で高い薬物濃度が得られるように設計することができる。「高い薬物濃度」という用語は、有意な副作用を招くことなく、望ましい治療効果を得るのに十分な局所濃度を指す。
【0037】
リポソームナノ粒子は、当技術分野で知られているいかなる方法で生成させてもよい。通常、リポソームナノ粒子を生成する方法は、薄膜分散、逆相蒸発、アルコール注入、又は圧力下若しくは非圧力下での押し出しであってもよく、これらの方法は当技術分野で知られている(例えば、参照によりその内容が全体として本明細書に組み込まれている、Planas M.E.、Gonzalez M.E.、Rodriguez L.ら、「Noninvasive percutaneous induction of topical analgesia by a new type of drug carrier,and prolongation of local pain insensitivity by anesthetic liposomes」、Anesth.Analg.1992年、75(4):615−621;Gregor Cevc、Gabiele Blume、Andreas S.ら、「The skin pathway for systemic treatment with patches and lipid based agent carries」、J.Advanced Drug Delivery Reviews、18:349(1996年);Gregor Cevcら、「Ultradeformable lipid vesicles can penetrate the skin and other semi−permeable barriers unfragmented.Evidence from double label CLSM experiments and direct size measurements」、Biochimica et Biophysica Acta 1564:21−30(2002年);G.Cevcら、「Overcoming semi−permeable barriers,such as the skin,with ultradeformable mixed lipid vesicles,Transfersomes(登録商標) liposomes or mixed lipid micelles」Langmuir 19:10753−10763(2003年);Gregor Cevc、「Lipid vesicles and other colloids as drug carriers on the skin」、Advanced Drug Delivery Reviews 56:675−711(2004年)を参照)。
【0038】
図1A及び1Bは、ドセタキセルを含有するリポソームナノ粒子の2種の調製物を示す。
【0039】
使用方法
本明細書に記載の装置は、治療を必要とする状態を治療、予防又は改善するための薬剤又は薬剤の組合せを経皮送達するのに使用できる。その方法は、通常、本明細書に記載のマイクロデバイスで送達する皮膚部位を処置するステップと、薬剤を哺乳動物(例えば使用者又は患者)の身体に送達するステップとを含んでいる。
【0040】
アプリケーター及び方法は、穏やかな衝撃を用いた、複数のマイクロニードルを含有するマイクロニードル/ナノ穿孔装置の適用に関して記載されている。この方法は、皮膚障壁を通した活性薬剤の輸送を改善するのに使用される。
【0041】
皮膚を通して薬物を送達するのに、従来技術が薬物コーティングされた先端又は中空のマイクロニードルを用いることは注目に値する。対照的に、本発明の主題は、例えば、マイクロニードルアレイによって皮膚を前処置して、皮膚の前処置された領域を生成するステップと、前処置された領域に湿性製剤を適用して、治療用薬剤(例えば薬物)又は治療用薬剤の組合せの、皮膚を通した輸送を可能にステップとを含む方法を提供する。上記湿性製剤は、ローション、クリーム、ゲルパッチ、軟膏剤又は皮膚用パッチ剤の形態でありうる。
【0042】
一部の実施形態では、担体を含有するコーティング又は担体を含有しないコーティングとして、薬剤をマイクロデバイスに含有させることができる。これらの実施形態では、望ましい量又は時間の送達が得られるまで送達部位に取り付けたマイクロデバイスを用いて、薬剤を送達することができる。
【0043】
一部の実施形態では、薬剤がマイクロデバイスから分離していてもよい。これらの実施形態では、薬剤の送達に選択された皮膚部位をマイクロデバイスで前処置することができる。その後、薬剤を送達皮膚部位に適用して、使用者又は患者の体内に薬剤を浸透させることができる。
【0044】
上記身体状態は、医学的状態でも、美容状態でもよい。代表的な医学的状態には、AIDS、乳癌、黒色腫、肝臓癌、肺癌、血液癌、下垂体腫瘍、他の癌、インフルエンザ、感染、血液疾患、心臓病、背部痛、頸痛、身体疼痛、一般的な疼痛、関節炎、骨粗鬆症、頭痛、うつ病、喫煙、アルコール症、過体重及び肥満、閉経、顔の毛の成長、はげ、多嚢胞性卵巣症候群、接種の必要、癌、麻酔薬の必要、並びに、とりわけ皮膚疾患が含まれるが、これらに限定されない。代表的な美容状態には、皮膚の加齢、皮膚のしわ、ダークスポット、皮膚の変色、加湿、皮膚の明色化、皮膚の美白、スキンファーミング、皮膚の吊り上げ、ざ瘡、いぼ、感染、過敏、皮膚乾燥及び脂性肌が含まれるが、これらに限定されない。ここに記載のいずれかの状態の様々な組合せも、さらに本発明で企図されている。
【0045】
本発明のマイクロデバイスは、ディスポーサブルとして、又は再使用可能な装置として設計される。一実施形態では、マイクロデバイスがディスポーサブルである。マイクロデバイスが、それらの表面に活性物質のコーティングを有するか否かに応じて、好ましい実施形態では、薬物、美容物質及びワクチンの送達における、3つのカテゴリーの適用がある。
【0046】
一実施形態では、薬物、ワクチン又は美容物質を送達するために、角質層を穿孔又は掻爬するのにマイクロデバイスを用いることができる。その後、それらを直ちに取り除き、活性物質の製剤、すなわち活性物質を含有するローション、クリーム、ゲルパッチ、軟膏剤又は皮膚用パッチ剤などをマイクロデバイスで処置された領域に直ちに適用する。製剤は、予め決めた時間の間、皮膚上に残留し、薬物などの薬剤又は薬剤の組合せの持続可能な調節放出をもたらすであろう。好ましい実施形態では、上記製剤が湿性の皮膚用パッチ剤である。
【0047】
別の実施形態は、以下で定義するように、基質内に活性物質を貯蔵し、マイクロデバイスが皮膚に接触したときに、受動拡散に依拠することである。
【0048】
さらに別の実施形態では、ゲル、クリーム、軟膏剤及びローションの形態、又はこれらの形態の組合せである薬物を、皮膚上の望ましい処置領域に適用し、その後、前記マイクロデバイスを用いて上記皮膚部位を薬物で処置することができる。
【0049】
さらに別の実施形態では、活性物質を含有する組成物でマイクロニードルシャフトをプレコートすることができる。コーティングされたマイクロニードルを皮膚に適用し、処置の全時間にわたって皮膚上に留める。皮膚を通した輸送の速度は、当技術分野で知られているin vitro法又はin vivo法で測定できる。
【0050】
アプリケーター
一部の実施形態では、アプリケーターを用いて、本明細書に記載のマイクロデバイスによって、皮膚の一領域を前処置することができる。本明細書で使用される場合、「アプリケーター装置」又は「アプリケーター」は、皮膚内にナノコンジットを生成させるのに使用する装置又は物体を指す。アプリケーターは、皮膚内にナノコンジットを生成させるための駆動構造、要素、機作及び/又は手段を含むことが好ましい。アプリケーターは、送達するべき薬剤を含む表面、パッチ又はリザーバと併せて用いることが好ましい。アプリケーターは、所定の単一皮膚部位で一度に、薬剤の送達及びナノコンジットの生成の両方を補助する。したがって、代替の実施形態では、アプリケーターが、上記皮膚部位で同時に、ナノコンジットを生成し、かつ予め塗布された薬剤を適用しうる。
【0051】
駆動機作は、バネベースでも、ソレノイドベースでも、電気機械ベースでも、磁気ベースでも、人工筋肉ベースでも、ある進路に沿ったマイクロデバイスによる、角質層の貫入を引き起こすのに有用である他のいかなる機作に基づくものでもよい。一実施形態では、アプリケーターは、ハウジングと、マイクロデバイスを保持するように構成された可動ホルダーと、駆動機作と、深さ固定装置とを含みうる。
【0052】
別の実施形態では、上記アプリケーター装置が、ソノポレーション、エレクトロポレーション、レーザー光、マイクロデバイス又はこれらの組合せによって、角質層内に複数のナノコンジットを生成する要素を含む。
【0053】
一実施形態では、バネ駆動のアプリケーターは、それがマイクロニードルを挿入するか、又はマイクロナイフ及びマイクロブレードを用いて皮膚表面を切るのに必要な駆動力を、いかなる独立的な動力源にも依存せずに提供するので、特に魅力的である。そのような装置の使用は、一端にマイクロデバイスが付いているディスポーサブル要素を、使用者がアプリケーター内に装着することを要求する。このアプリケーターは、皮膚内にマイクロニードルを発射するか、又は皮膚表面を切り通して、再現可能なナノコンジットを迅速に生成することができる。これらのナノコンジットは、適用過程中に組織を置換除去することによって生成する。そのようなアプリケーター装置は、ナノコンジットの生成前、生成中、又は生成後のいずれかに、活性薬剤を適用する手段と結合されうる。
【0054】
一部の実施形態では、アプリケーターは、ナノコンジットを生成するための衝撃力を生成するために、1又は複数の振動数の振動を利用しうる。例えば、一実施形態では、アプリケーターは、2つの偏心ホイールを有する電池駆動モーターに連結され、回転を振動に変換する交換可能なヘッドを含有しうる。振動は、交換可能なヘッド表面に搭載された複数のマイクロニードルを介して、皮膚に衝撃を与えることができる。振動数は、偏心ホイールの回転速度と質量分布とに依存し、約10Hzから約50000Hzの範囲でありうる。一部の実施形態では、振動数の範囲が、約1000から約8000Hzでありうる。当業者ならば、アプリケーターを設計し、それに従って作製することができる。様々な使用に供するアプリケーターの設計の一部の例は、参照によりその内容が全体として本明細書に組み込まれている、米国特許第390089号、第1512981号、第1657312号、第1683851号、第1780757号、第1790962号、第1900609号、第2411196号、第4237911号、第4979525号、第5054149号、第5095924号、第5215193号、第5328682号、第5713492号、第5738122号、第D416387号、第6092252号及び第6220253号明細書に記載されている。
【0055】
一部の実施形態では、機械的皮膚処置のためのアプリケーターが、
(a)内部空間を画定する複数の壁を有するハウジングであって、内部空間が、ハウジングの内部空間への選択的なアクセスを可能にする上部開口部を有し、カバーがハウジングの内部空間の上部開口部を閉鎖するためのものになるように、カバー部材がハウジングに脱着可能に結合可能である、上記ハウジングと、
(b)ハウジングの内部空間内に脱着可能に挿入可能であるベース部分に連結された複数のマイクロニードルヘッド部分であって、アプリケーターのそれぞれが、使用者が皮膚を処置するのを補助するのに適合している、上記複数のマイクロニードルヘッド部分と
を備え、
マイクロニードルアレイアセンブリを含有する複数の上記アプリケーターが、
(i)皮膚を選択的に処置するように適合しているマイクロニードルアレイアセンブリと、
(ii)ヘッド部分及びベース部分を有するマイクロニードルアセンブリであって、ベース部分がハウジングの内部空間に挿入可能であるように、ヘッド部分がベース部分に選択的に結合可能であり、マイクロニードルアレイアセンブリのベース部分が1対のくぼみを有し、前記くぼみのそれぞれが、ベース部分の長さの一部に沿って伸長しており、前記くぼみの一方が、前記くぼみのもう一方の反対側に位置しており、それによって、アプリケーターの使用者の手からベース部分が滑るのを抑制するように、前記くぼみが使用者の手の指先を受容するのに適合している、前記マイクロニードルアセンブリと
を備える。
【0056】
一部の実施形態では、上述したアプリケーターのベース部分が、ベース部分に位置付けられたモーターアセンブリをさらに含むことができ、ヘッド部分が、ヘッド部分に位置付けられたドライブアセンブリを有し、ドライブアセンブリが、ベース部分に動作可能に結合されており、ベース部分が、ヘッド部分の上端から外向きに伸長し、モーターアセンブリが、ドライブアセンブリに動作可能に結合されており、それによってモーターアセンブリがドライブアセンブリを作動させるものとなり、ドライブアセンブリが、ドライブアセンブリがモーターアセンブリによって作動されている場合にベース部分を振動させるものとなる。
【0057】
一部の実施形態では、上述のアプリケーターが、ベース部分から伸長する複数のマイクロニードルを有するヘッド部分をさらに含むことができ、マイクロニードルは、マイクロニードルヘッド部分がドライブアセンブリによって振動させられた際に、皮膚を処置するのに適合している。
【0058】
一部の実施形態では、上述のアプリケーターが、モーターを有するモーターアセンブリをさらに含むことができ、モーターが、モーターから伸長するシャフトを有し、モーターが、シャフトを作動させるためのものであり、シャフトが、シャフトの作動がドライブアセンブリを作動させるように、ベース及びヘッド部分のドライブアセンブリに動作可能に結合するためのものであり、動力源がモーターに動力を提供するものとなるように、動力源がモーターに動作可能に結合されている。
【0059】
一部の実施形態では、上述のアプリケーターが、モーターの作動の際に振動を生むように設計された重い偏心質量を含むことができ、振動の補助を介して皮膚治療が行われるように、モーターが、ベース及びヘッド部分に振動を与えるように作動する。この態様では、マイクロニードル適用方法が、
電気アプリケーター及び重い偏心質量それぞれの質量、並びに重い偏心質量の重心の偏心位置を予め測定するステップと、予め測定された条件に従って、モーターの出力を約1000〜15000rpmに確立するステップと、モーターを作動させることによって、約1000〜15000rpmの振動を生成するステップと、
ハンドル部分に連結した微小な円環の使用によって、振動をヘッド部分上のマイクロニードルの先端に伝えて、ベース部分及びヘッド部分の軸方向に沿って作用する押付力を増強するステップと、治療を要する皮膚部位に対して押付けるステップとを含む。
【0060】
一部の実施形態では、上述のアプリケーターが、スイッチを有するモーターアセンブリをさらに含むことができ、スイッチが動力源とモーターとの間を動作可能に結合し、スイッチが、動力源からモーターへの動力を制御するためのものである。
【0061】
キット
別の態様では、本発明の主題は、薬剤を哺乳動物に送達するためのキットであって、
(a)マイクロニードル、マイクロブレード、マイクロナイフ及びこれらの組合せから選択された構造を含むマイクロデバイスと、
(b)生理活性薬剤を含む湿性製剤と、
(c)ナノコンジットを皮膚上に形成するのに十分な駆動力を提供する機作であって、上記ナノコンジットが上記駆動力によって置換除去された組織に沿って並ぶ、上記機作と
を含むキットに関する。
【0062】
この関連では、上記駆動力は、限定されるものではないが、超音波、イオンフォレシス、高周波、レーザー光、熱勾配又はこれらの組合せでありうる。
【0063】
加えて、本発明のキットは、マイクロデバイスを哺乳動物の皮膚の一領域に適用するための、マイクロデバイスのアプリケーター、及び/又は皮膚の領域の角質層を通した哺乳動物体内への輸送に、上記生理活性薬剤を駆動するための駆動力機作をさらに含みうる。上記駆動力機作は、超音波、高周波、熱勾配、レーザー光、イオンフォレシス装置又はこれらの組合せを含みうる。好ましい実施形態では、上記アプリケーターが機械的アプリケーターである。
【0064】
本発明のキットは、医学的状態を有する哺乳動物を治療するのに特に有用である。本発明のキットによって治療可能な一部の潜在的医学的状態には、慢性背部痛、癌、術前疼痛管理、手術室疼痛管理、癌疼痛、術後疼痛、腰痛及び術後疼痛管理が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
この関連では、上記キットで使用される薬剤は、限定されるものではないが、タンパク質、ペプチド、パクリタキセル、ドセタキセル、ワクチン、タンパク質ワクチン、ペプチドワクチン、遺伝子ワクチン、DNAワクチン及びこれらの組合せからなる群から選択された天然又は合成のワクチンでありうる。さらに、上記ワクチンは、インフルエンザ(flu)、ジフテリア、破傷風、百日咳(DTaP)、麻疹、おたふくかぜ、風疹(MMR)、B型肝炎、小児マヒ、インフルエンザ菌b型、水痘、結核、炭疽、黄熱、狂犬病、AIDS、癌、髄膜炎菌、SARS及び/又はコレラに対するものでありうる。別法では、上記薬剤が鎮痛剤である。この関連では、上記鎮痛剤が、リドカイン、テトラカイン、ジクロニン又はこれらの組合せでありうる。
【0066】
本発明のキットで使用される製剤は、薬剤を封入した弾性リポソームを含むことができる。上記弾性リポソームは、変形可能ナノ粒子を任意選択で含むことができる。別法では、本発明のキット内の製剤が弾性リポソームを含まない。加えて、上記製剤は、皮膚用パッチ剤、クリーム、軟膏剤又はローションから選択された局所又は全身送達製剤でありうる。好ましい実施形態では、上記製剤が湿性の皮膚用パッチ剤である。
【0067】
活性薬剤
一態様では、マイクロデバイスを用いて送達できる活性薬剤又は活性物質が、治療用薬剤である。「治療用薬剤」という用語は、本明細書では、治療を要する身体状態又は皮膚病を、治療、予防、又は改善できる活性薬剤を指すのに使用される。その例のリストには、薬物、天然又は合成ワクチン、ペプチド、タンパク質、遺伝子、DNA、RNA、栄養補助食品及び美容用品が含まれる。上記薬物は、局所投与することも、全身投与することもできる。本発明で活性薬剤として有用な薬物の例には、抗生物質、ホルモン、ステロイド、抗炎症薬、タンパク質薬物、麻酔薬、タンパク質ワクチン、ペプチドワクチン、遺伝子ワクチン、DNAワクチン、パクリタキセル、ドセタキセル、インシュリン、天然又は合成のDNA薬物、すなわち組換え体エリスロポイエチン(rhEPO)、タキソール(Taxol)(登録商標)、インターフェロン−α、インターフェロン−α−1b、インターフェロン−β、インターフェロン−γ、エムラ(Emla)(登録商標)、フルオロウラシル、リドカイン、サリチル酸、プレリラン(Pureriran)、塩酸エフロルニチン、スピロノラクトン、フルタミド、インシュリン、カルニチン、ナノ粒子薬物、硬膜外、組換え体ヒト副甲状腺ホルモン、成長ホルモン、カルシトニン、卵胞刺激ホルモン、甲状腺、コルチゾール、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロン及びこれらの組合せなどが含まれるが、これらに限定されない。ワクチン活性薬剤の非限定な例には、インフルエンザ(flu)、ジフテリア、破傷風、百日咳(DTaP)、麻疹、おたふくかぜ、風疹(MMR)、B型肝炎、小児マヒ、インフルエンザ菌b型、水痘、結核、炭疽、黄熱、狂犬病、AIDS、癌、髄膜炎菌、SARS、コレラ及びこれらの組合せに対するものが含まれるが、これらに限定されない。活性薬剤としての美容物質のさらなる例には、A型ボツリヌス毒素、ヒアルロン酸及びその誘導体、アセチルヘキサペプチド−3、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、α−ヒドロキシ酸、コラーゲン、ホルモン並びにこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。診断試薬も含まれ、本発明で企図されている。それらの例には、量子ドット、機能化されたナノ粒子、磁性粒子及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0068】
薬剤の用量は、治療される(1又は複数の)医学的状態に応じて変動しうる。当技術分野で確立されている、薬剤の有効量については、公的に入手可能でありうる。そのような情報は、米国食品医薬品局(FDA)、例えばFDAウェブサイトから入手可能である。例えば、リドダーム(LidoDerm)(登録商標)に関する情報は、参照によりその内容が全体として本明細書に組み込まれている、次のリンク、すなわち、http://www.fda.gov/medwaTCH/SAFETY/2006/Apr_PIs/Lidoderm_PI.pdf#search=%22lidoderm%20dosage%22で見出すことができる。
【0069】
一部の実施形態では、上記薬剤が、神経因性疼痛又は侵害受容性疼痛管理のための鎮痛剤である。そのような鎮痛剤には、リドカイン;プリロカイン、ジクロニン、テトラカイン、イブプロフェン;アセトアミノフェン;カプサイシン;EMLA(登録商標);トラマドール(ウルトラム);ガバペンチン、塩酸トラマドール、コルチコステロイド、スフェンタニル、クロニジン、ブピバカイン、三環系抗うつ薬、モルフィンなどのオピオイド鎮痛薬、ヒドロモルフォン、ナロキソン(ナルカン)、タルウィン、ヌベイン、スタドール、フェンタニール、メペリディン、ヒドロコドン、コデイン、オキシコドン;セレコキシブ(セレブレックス)などの非選択的NSAID、ロフェコキシブ(バイオックス)、バルデコキシブ(ベクストラ);並びにこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、本明細書に記載の鎮痛剤が、本明細書に列挙した任意の薬物/薬剤を明確に包含又は除外できる。
【0070】
一部の実施形態では、活性薬剤が筋弛緩物質であってもよく、それらには、ベンゾジアゼピン;メトカルバモール;カリソプロドール;クロルゾキサゾン;メタキサロン;シクロベンザプリン並びにこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、本明細書に記載の筋弛緩物質が、本明細書に列挙した任意の薬物/薬剤を明確に包含又は除外できる。
【0071】
薬物送達
一態様では、本発明の主題は、皮膚障壁、すなわち角質層を横切る、上記に定義した治療用活性薬剤を送達するための装置を提供する。ひとたび、物質が角質層を通過したならば、その物質が、それに続く皮膚の層、すなわち表皮及び真皮の中に拡散することに対する抵抗は、より小さくなる。物質は、真皮層内の微小血管及びリンパ管によって吸収され、人体全体に送達されるであろう。本明細書に開示のマイクロデバイスは、約500ダルトン未満の分子量の分子の皮膚貫入を介した送達を強化できる。一部の実施形態では、本発明のマイクロデバイスは、約500ダルトン超の分子量の大分子の皮膚輸送を介した送達も可能にできる。ウシ血清アルブミンの分子量は約66000ダルトンである。A型ボツリヌス毒素の分子量は、約150000ダルトンであり、インターフェロンα−1bの分子量は約17000ダルトンである。
【0072】
この関連では、本発明の系は、いかなる生成されたナノコンジットも含有しない皮膚領域に製剤が適用される系より、少なくとも2倍速く、少なくとも5倍速く、又は少なくとも10倍速く薬剤が皮膚を透過するのを可能にする。この関連では、上記薬剤は、いかなる生成されたナノコンジットも含有しない皮膚領域に製剤が適用される系より、少なくとも2倍多い、少なくとも5倍多い、又は少なくとも10倍多い累積量まで、皮膚を透過できる。
【0073】
一部の実施形態では、皮膚の一領域を調製して、皮膚の調製済み領域を生成し、その後、薬剤又は薬物を皮膚の調製済み領域に適用して、予め定義された量の薬物又は薬剤が皮膚の調製済み領域の角質層を通り抜けるのを可能にすることによって、本発明の主題の薬物送達を実現できる。
【0074】
一部の実施形態では、装置、例えば、マイクロニードルを皮膚の一領域に適用するバネ駆動の機械的アプリケーターを用いて、皮膚の調製済み領域を調製できる。機械的アプリケーターは、いかなる構造又は設計でもよく、皮膚の上記領域に対するマイクロニードルに印加する機械力を引き起こして、予め特定されたサイズ及び深さで、皮膚の上記領域内の角質層に細孔又はチャネルを生成することができる。細孔又はチャネルの上記サイズ及び深さによって、皮膚を通した、薬剤又は薬物の制御された量の放出が容易になりうる。一部の実施形態では、ナノコンジットを含む、皮膚の標的領域に適用されるパッチ剤に、制御された量の薬剤が含有されている。
【0075】
一部の実施形態では、マイクロニードルを皮膚の一領域に適用するのに、超音波装置又は機械的振動器を用いて、皮膚の調製済み領域をさらに処置することができる。超音波装置又は機械的振動器は、皮膚の上記領域に対するマイクロニードルに印加するべき所定の機械力を引き起こして、所定のサイズ及び深さで、皮膚の上記領域内の角質層に細孔又はチャネルを生成することができる。細孔又はチャネルの上記サイズ及び深さによって、送達される薬剤又は薬物の量の制御がもたらされうる。超音波装置又は機械的振動器が、弾性皮膚組織に穿孔して、予め特定されたサイズ及び/又は深さで細孔又はチャネルを生成する有効な方法でありうることは注目に値する。
【0076】
一部の実施形態では、皮膚の一領域の角質層を切るか、又は引き裂くことによって、マイクロナイフ又はマイクロブレードのアレイを用いて、予め特定されたサイズ又は寸法(例えば1cm×1cmの寸法)で皮膚の調製済み領域を調製して、予め特定された深さ及び/又は寸法でナノチャネルを生成することができる。裂創の上記寸法及び/又は深さ、並びに皮膚の調製済み領域の上記寸法によって、薬剤又は薬物の量の制御がもたらされうる。
【0077】
薬剤又は薬物が皮膚の調製済み領域の角質層を通り抜けるのを可能にするステップは、様々な機作によって実現できる。例えば、上記可能にするステップは、局所的組成物(例えば、ローション、クリーム、ゲルパッチ、軟膏剤又は皮膚用パッチ剤などの製剤)から、皮膚の調製済み領域を介して、患者又は使用者の体内への、薬剤又は薬物の拡散によって実現できる。一部の実施形態では、(a)製剤からの拡散及びナノコンジット内への拡散、(b)駆動力を加えることによるナノコンジット内への薬剤の導入、又は(c)これらの組合せによって、薬剤が皮膚内に貫入し、角質層を通過しうる。上記ナノコンジットは、十分な駆動力で皮膚に適用されたマイクロデバイス又は要素によって、皮膚内に生成され、上記十分な駆動力が、人力又は機械化された力によって得られる。人力は、手によって、及び/又はてこ若しくはてこ作用の支援を用いて手によってマイクロデバイスを動かすことを指す。機械化された力は、エネルギーで補助された手段によってマイクロデバイス又は要素を動かすことを指す。エネルギーで補助された、駆動力を得る手段には、例えば、バネ駆動の機械装置、モーター駆動の機械装置、機械的若しくは超音波振動装置、ガス圧若しくは液圧生成装置、又はこれらの組合せの使用が含まれうる。この関連では、上記駆動力は、皮膚を通して薬剤を能動的に駆動する、機械、電気機械、イオンフォレシス、ソノフォレシス、高周波(RF)、レーザー光、熱勾配又はこれらの組合せでありうる。
【0078】
イオンフォレシス、ソノフォレシス、高周波(RF)又は熱は、薬物送達を促進又は強化するための、よく発達した機作である。薬物送達におけるイオンフォレシスシステムの一部の例が、http://www.vyteris.com及びhttp://www.iomed.comに記載されている。薬物送達におけるソノフォレシスシステムの一部の例が、www.sontra.comに記載されている(Becker B、Helfrich S、Baker Eら、「Ultrasound with topical anesthetic rapidly decreases pain of intravenous cannulation.」、Academic Emergency Medicine 2005年、12:289−295;Katz N、Shapiro D、Herrmann Tら、「Rapid onset of cutaneous anesthesia with EMLA cream after pretreatment with a new ultrasound−emitting device.」ブリガム&ウィメンズ病院疼痛試験センター(Pain Trials Center,Brigham and Women’s Hospital)、米国マサチューセッツ州ボストン(Boston)所在;Mitragotri S、Kost J、「Low frequency sonophoresis:A Review.」、Advanced Drug Delivery Reviews 2004年、56:589−601)。薬物送達における高周波システムの一部の例が、http://www.transpharma−medical.com/references.htmlに記載されている。熱を用いた薬物送達システムの一部の例が、http://www.zars.comに記載されている。これらの資料それぞれの内容を参照により全体として本明細書に組み込む。
【0079】
美容物質の局所送達又は全身送達
ある種の物質が美容用品としての特定の機能を有することが当業者に知られている。例えば、A型ボツリヌス毒素は、顔面のしわの処置及び低減を行うために特定の筋に少量(例えば、0.1mlの注射容積あたり10単位)注射された場合に、神経筋伝達を遮断する毒素である。任意の一点で任意の1つの筋に注射する1回の推奨最大用量は、25単位である。過量に与えられた場合、又は注射が不適切に行われた場合、注射の影響が次第になくなるまで、患者は、顔面が動かせない状態、又はマブタが垂れ下がった状態に置かれる可能性がある。副作用には、麻痺、腫脹及び頭痛が含まれる。本発明のマイクロデバイスを介して投与した場合、副作用を最小限にしながら、A型ボツリヌス毒素の調節放出を提供し、最良の結果を得るために最適な局所濃度を維持することが可能である。好ましい実施形態では、マイクロニードルアレイで前処置された皮膚に、A型ボツリヌス毒素を含むゲルパッチを適用する。マイクロデバイスを適用しなかった場合、皮膚を通した輸送が観察されなかったが、前記マイクロデバイスを用いた場合、A型ボツリヌス毒素の皮膚を通した有意な輸送が観察された。
【0080】
本明細書に記載のマイクロデバイスによって処置された皮膚を通した、薬剤の経皮送達は、その薬剤の分子量への依存性が、より少なくなっている。本明細書に記載の方法を用いた場合、本明細書に記載のマイクロデバイスを用いて、実際上いかなる美容物質も送達することができる。局所濃度は、負荷及び調節放出用の組成物を介して、並びにマイクロニードルの高さ、密度、サイズ及び形の組合せを介して調整できる。一実施形態では、マイクロデバイスによって生成されたナノコンジットによって強化された拡散を介して、ヒアルロン酸ゲルを送達することができる。ヒアルロン酸は、体内に天然に存在する物質である。ヒアルロン酸の主な重要な機能は、水分子を保持し、それらに結合することである。安定化された非動物性のヒアルロン酸は、動物性タンパク質を含有せず、処置前に皮膚試験を必要としない。したがって、しわ及び顔のしわの線を処置するために、マイクロデバイスを用いて、安定化された非動物性のヒアルロン酸を局所的に送達することは、ここでは好ましい実施形態である。
【0081】
さらに、本発明の主題の別の実施形態では、コラーゲンを、例えば、コラーゲンのアレルギー皮膚試験及び皮膚内への調節放出のために、マイクロニードルによって局所的に送達することができる。
【0082】
本発明の主題のさらに別の実施形態は、アセチルヘキサペプチド−3の局所送達を提供することである。この分子は、顔筋肉への過度な刺激を調節し、顔面の緊張を緩和する非毒性、非刺激性の化合物であり、顔筋肉への過剰な刺激による新規なしわの形成を低減及び防止できる。本発明で有用な美容薬剤のさらなる例には、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、α−ヒドロキシ酸、ホルモン及びこれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
ワクチンの送達
一部の実施形態では、本発明で提供されるマイクロデバイスは、角質層の下への、ワクチンの局所送達又は全身送達に用いることができる。上述の通り、ワクチンのタイプには、従来のワクチンに加えて、タンパク質、ペプチド及びDNAワクチンなどが含まれる。ワクチン接種は、マイクロデバイスで皮膚部位を処置して、その後、ワクチン組成物を使用者に送達することによって実施できる。
【0084】
大分子の送達
一部の実施形態では、大分子薬物の局所送達又は全身送達に、本発明で提供されるマイクロデバイスを用いることができる。上記薬物は、タンパク質又はペプチドでありうる。一部の実施形態では、薬物が比較的高い分子量を有する化学薬物でありうる。本明細書で使用される場合、大分子という用語は、約300ダルトン超の分子量を有する薬物を指す。例えば、上記分子は、約500ダルトン超、1000ダルトン超、約5000ダルトン超、約10000ダルトン超、約20000ダルトン超、約50000ダルトン超、約100000ダルトン超、約200000ダルトン超、約500000ダルトン超又は約1000000ダルトン超の分子量を有するものでありうる。
【0085】
疼痛管理
一部の実施形態では、本明細書に記載のマイクロデバイスを疼痛管理に用いることができる。上記マイクロデバイスは、疼痛を治療、軽減又は予防するために、鎮痛剤又はそれらの組合せの経皮送達を容易にするのに使用できる。一部の実施形態では、上記マイクロデバイスを用いて皮膚部位を処置することができ、その後、処置された部位に鎮痛剤又は鎮痛薬組成物を適用し、使用者へのこれらの薬剤の経皮送達を可能にすることができる。上記鎮痛剤は、FDAによって承認されているか、又は世界の他の場所で臨床使用されているいかなる鎮痛剤でもよい。一部の実施形態では、上記鎮痛剤が、限定されるものではないが、NSAID、COX−2阻害剤、ステロイド、筋弛緩物質でありうる。
【0086】
疼痛管理は、治療を行う医師によって定められた管理レジームに従って実施できる。例えば、一部の実施形態では、疼痛管理が、慢性疼痛又は急性疼痛の管理である。疼痛管理レジームは、限定されるものではないが、腰痛、慢性背部痛、ヘルペス後神経痛、癌疼痛、糖尿病性神経障害、幻肢痛、脊椎管狭窄症/坐骨神経痛、脊髄転移、HIV疼痛、術後疼痛、術前準備、手術室疼痛管理、及び針注射又はカニューレ挿入などの侵襲的医療によって引き起こされた疼痛でありうる。この関連では、慢性背部痛が特に好ましい。
【0087】
従来技術とは異なり、本発明の主題は、本発明のマイクロデバイスを用いて角質層を処置した後に、ソノフォレシス、イオンフォレシス、レーザー切除、高周波又は熱処理などの能動的経皮送達法の組合せの補助を介して、深部組織への、鎮痛剤の局所送達又は全身送達を行う。
【0088】
別の態様では、本発明の系及び方法が癌の治療に有用である。
【0089】
調節放出
本明細書に記載のマイクロデバイスは、治療上有用な血漿中濃度を維持するのに十分な速度で、皮膚を通して薬物分子を送達することが好ましい。マイクロデバイスのサイズ、密度、形及び長さは、送達必要条件を満たすように調整できる。マイクロデバイスは、乾燥薄膜を形成する、キトサン、カルボポール934P、セルロース、及びデンプンなどの高分子結合剤と共に、活性治療分子、ワクチン又は美容物質を含有する組成物でさらにコーティングすることができる。結合剤、レオロジー調節剤、表面活性薬、安定化剤、再水和剤の追加添加物を使用できる。特殊な組成物は、活性薬物分子の溶解速度を制御し、薬物放出速度を調節できる。一部の実施形態では、マイクロデバイスを、マイクロリザーバに連結された包埋マイクロ流体チャネルと共に組み込むことができる。他の実施形態では、マイクロデバイスは、包埋マイクロ流体チャネルも、マイクロリザーバも含まない。
【0090】
この関連では、本発明の方法は、薬剤のプラトー血漿濃度に帰結し、上記プラトーは、最初の接触の10時間後から、最初の接触の少なくとも24時間後まで、ピーク濃度の80%以内に維持されることが好ましい。上記プラトーは、最初の接触の10時間後から、最初の接触の少なくとも48時間後まで、ピーク濃度の80%以内に維持されうる。
【0091】
したがって、本明細書に記載の薬剤は、「薬物浸透」を有し、これは、所定の時間内に皮膚障壁を横切って拡散した薬剤の量(mg又はmmol)を意味する。
【0092】
内蔵センサー
本発明の主題の別の態様は、臨床用バイオセンサー及び/又はセンサーアレイがHARMS構造の近傍に作製されている装置を任意選択で提供することである。例えば、マイクロニードルは、極めて小さい試料容積の体液を患者から収集することができ、体液の迅速なポイントオブケア分析を可能にする。
【0093】
一実施形態では、抽出される試料容積が0.1μl未満、典型的には約0.01μlである。
【0094】
HARMS製作の方法
HARMSは、MEMS(微小電気機械システム)マイクロファブリケーション技法を用いて製作できる。典型的な製作方法は、リソグラフィ、湿式エッチング及び乾式エッチング、薄膜堆積及び成長、電気メッキ、並びに注入成形及びホットエンボスを用いる。本発明で有用な製作法の一例は、深いSiエッチングを可能にするBosch法を用いるものである(www.oxfordplasma.de/process/sibo_1.html、参照によりこの開示を全体として本明細書に組み込む)。この方法は、装置本体として、又はさらに加工を行うための型として適したHARMSを生成する。アスペクト比は、それらの特徴をリソグラフィによって定義できる限り、特徴のサイズ及びパターンの形に関係なく、5:1より高いことが好ましい。別の製作法は、<100>面方位又は<110>面方位を有する単結晶Si基板のKOH又はTMAH湿式エッチングである。本発明で有用なさらに別の製作法は、多孔質Si構造を電気化学的に形成するのにHF溶液を用いることである(www.techfak.uni−kiel.de/matwis/amat/poren/ps.html、参照によりこの開示を全体として本明細書に組み込む)。切断、放電加工、切削、摩砕、研磨及び穿孔などの伝統的な機械加工法で製作された構造から開始して、電解研磨法と呼ばれるマスクレスプロセスを介してHARMSを製作するのに、金属を用いることができる(www.najet.com及びwww.fischion.com/product_support/model_110_application_notes.asp、参照によりこれらの開示を全体として本明細書に組み込む)。下記の実施例でさらに開示する、本明細書に記載のいずれの単一の方法の使用も、これらの方法の併用も、本発明の主題で開示されている望ましいHARMSの形態をもたらした。
【0095】
[実施例]
実施例1.マイクロニードルと弾性リポソームナノ粒子との組合せを用いたドセタキセルの送達
図2及び3は、本発明の主題の薬剤の経皮送達の効力を示した。図2及び3に示した試験では、皮膚の一領域を、上述のマイクロニードルを用いて前処置した。その後、蛍光標識されたアルブミン(分子量は66000)の製剤を適用し、それらの皮膚を通した輸送に成功した(図3)。マイクロニードルによって形成された細孔は、マイクロニードルの適用後72時間以内に完全に閉じることはないであろう。図2は、マイクロニードルの使用時又は非使用時における、弾性リポソーム内のドセタキセルの貫入(%)を示す。
【0096】
実施例2.マイクロニードルの組合せによるインターフェロンの送達
図4は、様々な方法によるインターフェロンの送達を示す。様々な送達方法、すなわち、(a)マイクロニードル表面の湿性インターフェロンゲルとマイクロニードルとの併用、(b)マイクロニードルで前処置された皮膚上の湿性インターフェロンゲルパッチとマイクロニードルとの併用、(c)皮下注射、及び(d)対照試料として、マイクロニードルなしの湿性インターフェロンゲルの使用の有効性を、インターフェロン活性の測定によって評価した。
【0097】
図5は、乾性製剤を用いたインターフェロンの送達を示す。図5が示す通り、パッチ剤が乾燥している場合には、速達速度が劇的に低下した。
【0098】
要約すると、図4及び5は、乾式パッチ剤を用いたインターフェロンの送達は、湿性パッチ剤を用いた場合より非効率的であることを示す。
【0099】
実施例3.皮膚を横切る浸透の測定
アプリケーターを用いてマイクロニードルアレイを皮膚に適用し、その後、赤色蛍光を発するローダミンBを含有するナノ粒子を30分未満の間、皮膚を通して拡散させることによって、図6の共焦点レーザー顕微鏡写真を得た。これらの写真は、様々な深度の皮膚切片である。深度は、各写真の上に記した。皮膚表面から深度10〜100μmの間で、高濃度の蛍光プローブを見出しうることが、これらの写真から明らかである。
【0100】
浸透測定の別の例を図7に示す。蛍光標識されたインシュリンは、1つの供給リザーバに入っていた。受容リザーバには、インシュリンが入っていない。これら2つのリザーバは、マイクロニードルによって生成されたナノコンジットを有する前処置された皮膚障壁によって分離されている。受容リザーバ側の蛍光強度は、皮膚を透過したインシュリンの量に正比例していた。
【0101】
本発明の主題の特定の実施形態を示し、記述したが、その、より広範な態様における、この主題から逸脱せずに、改変及び変形を行えることは、当業者には明白であろう。したがって、添付した特許請求の範囲は、この主題の真の趣旨及び範囲内にある限り、そのようなすべての改変及び変形を、それらの範囲に包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の少なくとも1種の薬剤を、それを必要とする哺乳動物に送達する方法であって、
アプリケーター装置を哺乳動物の皮膚の一領域に適用して、前記装置に、皮膚の前記領域の角質層内に複数のナノコンジットを生成させ、それによって、皮膚の調製済み領域を作出するステップと、
少なくとも1種の薬剤を含む湿性製剤を前記皮膚の調製済み領域に適用するステップと、
角質層内のナノコンジットを介して、有効量の少なくとも1種の薬剤が哺乳動物に入るのを可能にするステップと、
を含み、
前記アプリケーター装置が、複数のナノコンジットを角質層内に生成できる要素を含む方法。
【請求項2】
前記ナノコンジットが、前記要素によって置換除去された組織に沿って並ぶ、前処置された皮膚内のマイクロスケール導管又はナノスケール導管である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アプリケーター装置が、ソノポレーション、エレクトロポレーション、レーザー光、マイクロデバイス又はこれらの組合せによって、角質層内に複数のナノコンジットを生成する要素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マイクロデバイスが、ナノスケールの幅の先端と、マイクロスケールの幅の本体とを有する、針、刃又はこれらの組合せの形態にある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロデバイスが、金属、セラミック、シリコン、ガラス、ポリマー及びこれらの組合せからなる群より選択された物質を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記マイクロデバイスが約10:1以上のアスペクト比を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
皮膚内に生成された前記ナノコンジットが、(a)角質層の厚さにほぼ等しいか、又はそれを超える深度を有し、(b)生存表皮層内に貫入する深度を任意選択で有し、(c)真皮層内の血管、リンパ管又は神経に貫入しない深度を任意選択で有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
約500ダルトン超の分子量を有する薬剤の皮膚内への浸透と、角質層の通過とを可能にする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
約500ダルトン未満の分子量を有する薬剤の皮膚貫入を介した送達を強化する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
(a)前記製剤から、ナノコンジット内への拡散、(b)駆動力を加えることによるナノコンジット内への薬剤の導入、又は(c)これらの組合せによって、薬剤が皮膚内へと浸透し、角質層を通過する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
いかなる生成されたナノコンジットも含有しない皮膚領域に製剤が適用される系より少なくとも2倍迅速に前記薬剤が皮膚に浸透する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
いかなる生成されたナノコンジットも含有しない皮膚領域に製剤が適用される系より少なくとも2倍多い累積量にまで、前記薬剤が皮膚に浸透する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
薬剤がプラトー血漿濃度に達し、前記プラトーが、最初の接触の10時間後から、最初の接触の少なくとも24時間後まで、ピーク濃度の80%以内に維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記プラトーが、最初の接触の10時間後から、最初の接触の少なくとも48時間後まで、ピーク濃度の80%以内に維持される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記薬剤が、
(a)ナノコンジットが皮膚内に生成される前に、湿性製剤中で皮膚に適用されるか、
(b)ナノコンジットが皮膚内に生成される前に、湿性製剤として前記アプリケーター装置に添加されるか、
(c)ナノコンジットが皮膚内に生成された後に、湿性製剤中で皮膚に適用されるか、又は
(d)(a)、(b)又は(c)の任意な組合せを用いて適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記薬剤が、ローション、クリーム、ゲルパッチ、皮膚用パッチ剤、軟膏剤、弾性リポソーム又はこれらの組合せの形態で、湿性製剤として適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
十分な駆動力で皮膚に適用されたマイクロデバイスによって、前記ナノコンジットが皮膚内に生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記十分な駆動力が、人力又は機械化された力によって得られる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記機械化された力が、バネ駆動の機械装置、モーター駆動の機械装置、機械的若しくは超音波的振動装置、又はガス圧若しくは液圧生成装置を用いて得られる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記薬剤が弾性リポソーム内に封入されている、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記湿性製剤が弾性リポソームを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記弾性リポソームがリポソームナノ粒子を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記駆動力が、機械、電気機械、イオンフォレシス、ソノフォレシス、高周波(RF)、レーザー光、熱勾配又はこれらの組合せから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記哺乳動物が医学的状態を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記薬剤が、タンパク質、ペプチド、パクリタキセル、ドセタキセル、ワクチン、タンパク質ワクチン、ペプチドワクチン、遺伝子ワクチン、DNAワクチン及びこれらの組合せからなる群から選択された天然又は合成のワクチンである、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記ワクチンが、インフルエンザ(flu)、ジフテリア、破傷風、百日咳(DTaP)、麻疹、おたふくかぜ、風疹(MMR)、B型肝炎、小児マヒ、インフルエンザ菌b型、水痘、結核、炭疽、黄熱、狂犬病、AIDS、癌、髄膜炎菌、SARS、コレラ及びこれらの組合せに対するものである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記薬剤が鎮痛剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記医学的状態が慢性背部痛である、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記医学的状態が癌である、請求項24に記載の方法。
【請求項30】
前記医学的状態が、術前疼痛管理、手術室疼痛管理又は術後疼痛管理である、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記鎮痛剤が、リドカイン、テトラカイン、ジクロニン又はこれらの組合せである、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記製剤が、皮膚用パッチ剤、クリーム、軟膏剤又はローションから選択された局所又は全身送達製剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記哺乳動物がヒトであり、前記医学的状態が、癌疼痛、術後疼痛及び腰痛である、請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記製剤が湿性の皮膚用パッチ剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
薬剤を哺乳動物に送達するためのキットであって、
(a)マイクロニードル、マイクロブレード、マイクロナイフ及びこれらの組合せから選択された構造を含むマイクロデバイスと、
(b)生理活性薬剤を含む湿性製剤と、
(c)ナノコンジットを皮膚上に形成するのに十分な駆動力を提供する機作であって、前記ナノコンジットが前記駆動力によって置換除去された組織に沿って並ぶ機作と
を含むキット。
【請求項36】
前記駆動力が、超音波、イオンフォレシス、高周波、レーザー光、熱勾配又はこれらの組合せである、請求項35に記載のキット。
【請求項37】
マイクロデバイスを哺乳動物の皮膚の一領域に適用するための、マイクロデバイスのアプリケーターをさらに含む、請求項35に記載のキット。
【請求項38】
皮膚の領域の角質層を通した哺乳動物体内への輸送に、前記生理活性薬剤を駆動するための駆動力機作をさらに含む、請求項35に記載のキット。
【請求項39】
前記哺乳動物が医学的状態を有する、請求項35に記載のキット。
【請求項40】
前記薬剤が、タンパク質、ペプチド、パクリタキセル、ドセタキセル、ワクチン、タンパク質ワクチン、ペプチドワクチン、遺伝子ワクチン及びDNAワクチンからなる群から選択された天然又は合成ワクチンである、請求項35に記載のキット。
【請求項41】
前記ワクチンが、インフルエンザ(flu)、ジフテリア、破傷風、百日咳(DTaP)、麻疹、おたふくかぜ、風疹(MMR)、B型肝炎、小児マヒ、インフルエンザ菌b型、水痘、結核、炭疽、黄熱、狂犬病、AIDS、癌、髄膜炎菌、SARS及びコレラに対するものである、請求項40に記載のキット。
【請求項42】
前記製剤が、前記薬剤を封入する弾性リポソームを含む、請求項35に記載のキット。
【請求項43】
前記製剤が弾性リポソームを含まない、請求項35に記載のキット。
【請求項44】
前記弾性リポソームが変形可能ナノ粒子を含む、請求項42に記載のキット。
【請求項45】
前記製剤が、皮膚用パッチ剤、クリーム、軟膏剤又はローションから選択された局所又は全身送達製剤である、請求項35に記載のキット。
【請求項46】
前記駆動力機作が、超音波、高周波、熱勾配、レーザー光、イオンフォレシス装置又はこれらの組合せを含む、請求項35に記載のキット。
【請求項47】
前記薬剤が鎮痛剤である、請求項35に記載のキット。
【請求項48】
前記医学的状態が慢性背部痛である、請求項39に記載のキット。
【請求項49】
前記医学的状態が癌である、請求項39に記載のキット。
【請求項50】
前記医学的状態が、術前疼痛管理、手術室疼痛管理又は術後疼痛管理である、請求項39に記載のキット。
【請求項51】
前記鎮痛剤が、リドカイン、テトラカイン、ジクロニン又はこれらの組合せである、請求項47に記載のキット。
【請求項52】
前記製剤が、ローション、クリーム、ゲルパッチ、軟膏剤又は皮膚用パッチ剤であり、かつ前記製剤が、リドカイン、テトラカイン、ジクロニン又はこれらの組合せを含む、請求項35に記載のキット。
【請求項53】
前記製剤が、皮膚用パッチ剤、クリーム、軟膏剤又はローションから選択された局所又は全身送達製剤である、請求項35に記載のキット。
【請求項54】
前記哺乳動物が、癌疼痛、術後疼痛及び腰痛から選択された医学的状態を有するヒトである、請求項39に記載のキット。
【請求項55】
前記アプリケーターが機械的アプリケーターである、請求項35に記載のキット。
【請求項56】
前記製剤が湿性の皮膚用パッチ剤である、請求項35に記載のキット。
【請求項57】
機械的皮膚処置のためのアプリケーターであって、
内部空間を画定する複数の壁を有するハウジングであって、内部空間が、ハウジングの内部空間への選択的なアクセスを可能にする上部開口部を有し、カバーがハウジングの内部空間の上部開口部を閉鎖するためのものになるように、カバー部材がハウジングに脱着可能に結合可能である、前記ハウジングと、
ハウジングの内部空間内に脱着可能に挿入可能であるベース部分に連結された複数のマイクロニードルヘッド部分であって、アプリケーターのそれぞれが、使用者が皮膚を処置するのを補助するのに適合している、前記複数のマイクロニードルヘッド部分と
を備え、
マイクロニードルアレイアセンブリを含有する複数の前記アプリケーターが、
皮膚を選択的に処置するように適合しているマイクロニードルアレイアセンブリと、
ヘッド部分及びベース部分を有するマイクロニードルアセンブリであって、ベース部分がハウジングの内部空間に挿入可能であるように、ヘッド部分がベース部分に選択的に結合可能であり、マイクロニードルアレイアセンブリのベース部分が1対のくぼみを有し、前記くぼみのそれぞれが、ベース部分の長さの一部に沿って伸長しており、前記くぼみの一方が、前記くぼみのもう一方の反対側に位置しており、それによって、アプリケーターの使用者の手からベース部分が滑るのを抑制するように、前記くぼみが使用者の手の指先を受容するのに適合している、前記マイクロニードルアセンブリと
を備える、アプリケーター。
【請求項58】
前記マイクロニードルアプリケーターのベース部分が、ベース部分に位置付けられたモーターアセンブリをさらに含み、ヘッド部分が、ヘッド部分に位置付けられたドライブアセンブリを有し、ドライブアセンブリが、ベース部分に動作可能に結合されており、ベース部分が、ヘッド部分の上端から外向きに伸長し、モーターアセンブリが、ドライブアセンブリに動作可能に結合されており、それによってモーターアセンブリがドライブアセンブリを作動させるものとなり、ドライブアセンブリが、ドライブアセンブリがモーターアセンブリによって作動されている場合にベース部分を振動させるものとなる、請求項57に記載のアプリケーター。
【請求項59】
ヘッド部分が、ベース部分から伸長する複数のマイクロニードルを含み、マイクロニードルヘッド部分がドライブアセンブリによって振動させられた場合に、マイクロニードルが、皮膚を処置するのに適合している、請求項58に記載のアプリケーター。
【請求項60】
モーターアセンブリがモーターを含み、モーターが、モーターから伸長するシャフトを有し、モーターが、シャフトを作動させるためのものであり、シャフトが、シャフトの作動がドライブアセンブリを作動させるように、ベース及びヘッド部分のドライブアセンブリに動作可能に結合するためのものであり、動力源がモーターに動力を提供するものとなるように、動力源がモーターに動作可能に結合されている、請求項58に記載のアプリケーター。
【請求項61】
モーターの作動の際に振動を生むように設計された重い偏心質量を含み、振動の補助を介して皮膚治療が行われるように、モーターが、ベース及びヘッド部分に振動を与えるように作動し、マイクロニードル適用方法が、
電気アプリケーター及び重い偏心質量それぞれの質量、並びに重い偏心質量の重心の偏心位置を予め測定するステップと、予め測定された条件に従って、モーターの出力を約1000〜15000rpmに確立するステップと、モーターを作動させることによって、約1000〜15000rpmの振動を生成するステップと、
ハンドル部分に連結した微小な円環の使用によって、振動をヘッド部分上のマイクロニードルの先端に伝えて、ベース部分及びヘッド部分の軸方向に沿って作用する押付力を増強するステップと、治療を要する皮膚部位に対して押付けるステップとを含む、請求項57に記載のアプリケーター。
【請求項62】
モーターアセンブリがスイッチを含み、スイッチが動力源とモーターとの間を動作可能に結合し、スイッチが、動力源からモーターへの動力を制御するためのものである、請求項57に記載のアプリケーター。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−514479(P2010−514479A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543276(P2009−543276)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/088667
【国際公開番号】WO2008/080109
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(509175399)
【Fターム(参考)】