説明

流体搬送ライン用物品及びその製造方法

【課題】含フッ素共重合体の層と非フッ素樹脂の層との接着性に優れる積層体からなる流体搬送ライン用物品の提供。
【解決手段】テトラフルオロエチレン及び/又はクロロトリフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(a)およびカルボニル基を含有する含フッ素共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/エチレン/(パーフルオロエチル)エチレン/無水イタコン酸共重合体。)の層(A)と非フッ素樹脂の層(B)とが直接積層されてなる積層体からなり、流体接触面が前記含フッ素共重合体の層(A)の表面からなる流体搬送ライン用物品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体搬送ライン用物品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂は、耐薬品性、耐熱性に優れ、化学プラント、半導体プラント等において薬液や気体等の流体の搬送ライン用の配管、チューブ、継手、バルブ、ポンプ等の流体に接触する面に用いられている。流体搬送ライン用の継手、バルブのボディー、弁、ポンプのケーシング、インペラ等の物品(以下、流体搬送ライン用物品という。)は、通常、フッ素樹脂の射出成形により製造され、また、金属基材の表面にフッ素樹脂を被覆して製造される(例えば、非特許文献1を参照。)。
【0003】
一般的に、フッ素樹脂の射出成形で流体搬送ライン用物品を成形する場合には、フッ素樹脂被膜の肉厚を厚くして物品の機械的強度を確保する必要があり、フッ素樹脂を多量に使用するため経済的に不利である。また、フッ素樹脂は比重が大きいために、物品の重量が重くなる。
【0004】
金属基材をフッ素樹脂で被覆する方法では、フッ素樹脂と金属基材の表面との接着性を向上するために接着剤を基材表面を被覆する場合が多く、工程が煩雑となり、また、被膜を焼成する必要があり、生産性が低い。
【0005】
その解決方法として、共射出成形により積層体を得る方法が提案されている(特許文献1を参照。)が、フッ素樹脂の層と非フッ素樹脂の層との接着性が充分でなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−277341号公報
【非特許文献1】ふっ素樹脂ハンドブック、第93頁(日本弗素樹脂工業会)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の問題を解決し含フッ素共重合体の層と非フッ素樹脂の層との接着性に優れ、機械的強度、耐久性、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性、薬品バリア性、耐高温水性、耐スチーム性、スチームバリア性、ガスバリア性に優れる積層体からなる流体搬送ライン用物品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、テトラフルオロエチレン及び/又はクロロトリフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(a)及びカルボニル基を含有する含フッ素共重合体の層(A)と非フッ素樹脂の層(B)とが直接積層されてなる積層体からなり、流体接触面が前記含フッ素共重合体の層(A)の表面からなることを特徴とする流体搬送ライン用物品を提供する。
【0009】
また、本発明は、前記積層体が、含フッ素共重合体と非フッ素樹脂との共射出成形により製造されることを特徴とする前記流体搬送ライン用物品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の流体搬送ライン用物品は、含フッ素共重合体の層と非フッ素樹脂の層との接着性に優れる。該物品は、耐久性、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性、薬品バリア性、耐高温水性、耐スチーム性、スチームバリア性、ガスバリア性等に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における含フッ素共重合体は、テトラフルオロエチレン(以下、TFEという。)及び/又はクロロトリフルオロエチレン(以下、CTFEという。)に基づく繰り返し単位(a)及びカルボニル基を含有する。カルボニル基を含有するので非フッ素樹脂との接着性に優れる。
【0012】
カルボニル基としては、酸無水物、ジカルボン酸、カルボン酸、エステル、アルデヒド、カルボン酸ハライド、カーボネート等の官能基中のカルボニル基が好ましい。より好ましくは酸無水物基又はジカルボン酸基の官能基中のカルボニル基である。
【0013】
含フッ素共重合体中のカルボニル基の含有量は、好ましくは含フッ素共重合体中の炭素原子数10個当り10〜50000個であり、より好ましくは50〜30000個であり、最も好ましくは100〜10000個である。
【0014】
カルボニル基の導入方法としては、カルボニル基を有し重合性不飽和結合を有するモノマーを共重合させる方法、カルボニル基を有する重合開始剤を用いる重合方法、カルボニル基を有する連鎖移動剤を用いる重合方法、カルボニル基を含有し重合性不飽和結合を有するモノマーを過酸化物又は電離放射線等を用いて含フッ素共重合体にグラフト重合する方法等が挙げられる。好ましくはカルボニル基を有し重合性不飽和結合を有するモノマー(以下、AMと略す。)を共重合させる方法である。AMとしては、重合性不飽和カルボン酸及び重合性不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、その具体例としては、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物等が挙げられる。より好ましくは、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸及び5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物からなる群から選ばれる1種以上である。最も好ましくは、無水イタコン酸である。
【0015】
本発明におけるフッ素モノマー(ただし、TFE及びCTFEを除く。)としては、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(以下、VdFという。)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPという。)、CF=CFORf1(ここで、Rf1は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキル基。)、CF=CFORf2SO(ここで、Rf2は炭素数1〜10で炭素原子間に酸素原子を含んでもよいペルフルオロアルキレン基、Xはハロゲン原子又は水酸基。)、CF=CFORf2CO(ここで、Rf2は前記と同じ、Xは水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基。)、CF=CF(CFOCF=CF(ここで、pは1又は2。)、CH=CX(CF(ここで、X及びXは、互いに独立に水素原子又はフッ素原子、qは2〜10の整数。)、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)等が挙げられる。
【0016】
好ましくは、VdF、HFP、CF=CFORf1及びCH=CX(CFからなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくは、CF=CFORf1又はCH=CX(CFである。
CF=CFORf1としては、CF=CFOCFCF、CF=CFOCFCFCF、CF=CFOCFCFCFCF、CF=CFO(CFF等が挙げられる。好ましくは、CF=CFOCFCFCFである。
CH=CX(CFとしては、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH等が挙げられる。好ましくは、CH=CH(CFF又はCH=CH(CFFである。
【0017】
前記含フッ素共重合体としては、TFE及び/又はCTFEに基づく繰り返し単位(a)、フッ素モノマー(ただし、TFE及びCTFEを除く。)に基づく繰り返し単位(b)、及び、重合性不飽和カルボン酸及び重合性不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる1種以上に基づく繰り返し単位(c)を含有し、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)、繰り返し単位(c)の合計モル量に対して、繰り返し単位(a)が50〜99.89モル%、繰り返し単位(b)が0.1〜49.99モル%、繰り返し単位(c)が0.01〜5モル%である含フッ素共重合体であることが好ましい。この組成範囲にあると、機械的強度、耐水性、耐久性、基材との接着性に優れる。
【0018】
本発明において、前記含フッ素共重合体が、さらに非フッ素モノマー(ただし、重合性不飽和カルボン酸及び重合性不飽和カルボン酸無水物を除く。)に基づく繰り返し単位(d)を含有することも好ましい。該非フッ素モノマーとしては、エチレン、プロピレン等の炭素数2〜3のオレフィン、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル等が挙げられる。好ましくは、エチレン又はプロピレンであり、より好ましくは、エチレンである。
【0019】
繰り返し単位(d)を含有する場合には、繰り返し単位(d)の含有量は、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)及び繰り返し単位(c)の合計モル量に対して、5〜90モル%が好ましく、5〜70モル%がより好ましく、10〜65モル%が最も好ましい。
【0020】
本発明の含フッ素共重合体の具体例としては、エチレン/TFE/AM系共重合体、CTFE/AM系共重合体、エチレン/CTFE/AM系共重合体、TFE/HFP/AM系共重合体、TFE/CF=CFOCFCFCF/AM系共重合体等が挙げられる。より好ましくはエチレン/TFE/AM系共重合体である。
【0021】
含フッ素共重合体の容量流速は、0.1〜1000mm/秒が好ましく、1〜100mm/秒がより好ましい。容量流速は分子量の尺度であり、大きな値が低分子量を表す。容量流速がこの範囲にあると成形性が良好である。本発明における容量流速は、島津製作所製フローテスタを用いて、含フッ素共重合体の融点より50℃高い温度において、荷重7kg下に直径2.1mm、長さ8mmのオリフィス中に押出すときの含フッ素共重合体の押出し速度である。
【0022】
本発明の含フッ素共重合体の製造方法は特に制限はなく、ラジカル重合開始剤を用いる重合方法が用いられる。重合方法としては、塊状重合、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合、水性媒体及び必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合、水性媒体及び乳化剤を使用する乳化重合が挙げられ、特に溶液重合が好ましい。
【0023】
ラジカル重合開始剤としては、半減期が10時間である温度が好ましくは0℃〜100℃、より好ましくは20〜90℃であるラジカル重合開始剤である。具体例としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、イソブチリルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド等の非フッ素系ジアシルペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカ−ボネート、ジ−n−プロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート、tert−ブチルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシイソブチレート、tert−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル、(Z(CFCOO)(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、pは1〜10の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルペルオキシド、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。
【0024】
本発明において、含フッ素共重合体の容量流速を制御するために、連鎖移動剤を使用することも好ましい。連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボンが挙げられる。エステル基、カーボネート基、水酸基、カルボキシ基、カルボニルフルオリド基等の官能基を有する連鎖移動剤を用いると含フッ素共重合体にポリアミド等の非フッ素樹脂との接着性に優れる高分子末端基が導入されるので好ましい。該連鎖移動剤としては、酢酸、無水酢酸、酢酸メチル、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0025】
本発明において重合条件は特に限定されず、重合温度は0〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。重合圧力は0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。重合時間は1〜30時間が好ましい。
【0026】
重合中のAMの濃度は、全モノマーに対して0.01〜5%が好ましく、0.1〜3%がより好ましく、0.1〜1%が最も好ましい。AMの濃度が高すぎると、重合速度が低下する傾向となる。前記範囲にあると製造時の重合速度が低下せず、かつ、含フッ素共重合体は、非フッ素樹脂との接着性に優れる。重合中、AMが重合で消費されるに従って、消費されたAM量を連続的又は断続的に重合槽内に供給し、AM濃度をこの範囲に維持することが好ましい。
【0027】
含フッ素共重合体には、目的とする物品の機械的強度を高める等のために炭素繊維、ガラス繊維、カーボンブラック等のフィラー、可塑剤、帯電防止剤、染料、顔料などの各種添加剤や樹脂組成物を添加することができる。
【0028】
本発明の含フッ素共重合体を成形する場合にはペレット形状の含フッ素共重合体を用いることが好ましい。ペレットは単軸又は二軸の押出し機を用いて製造することが好ましい。押出し機のシリンダー温度は100〜350℃が好ましく、クロスヘッド温度及びダイ温度はそれぞれ200〜350℃が好ましく、スクリュー回転数は特に規定されないが10〜200回転/分が好ましい。押出機内の滞留時間は1〜10分が好ましい。ダイの吐出孔は直径2〜20mmが好ましい。溶融されて吐出孔から吐出されたストランド状の含フッ素共重合体は伸張されながら水又は空気で冷却固化され、カッターで切断されて、長さ1〜5mm、直径1〜5mmの円柱状のペレットが得られる。
【0029】
本発明における非フッ素樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド66等のポリアミド、芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンスルフィド等が挙げられる。
【0030】
好ましくは、耐熱性、機械強度等に優れる、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6、ポリアミド66、芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィドである。より好ましくは、半芳香族ポリアミドである。半芳香族ポリアミドとは、高分子主鎖の一部に芳香族環を有するポリアミドである。
【0031】
本発明における非フッ素樹脂には、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系の酸化防止剤、紫外線吸収剤を含む耐候剤、滑剤、フィラー、可塑剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、防雲剤、染料、顔料などの各種添加剤や樹脂組成物を添加できる。
【0032】
本発明における積層体は、含フッ素共重合体の層(A)と非フッ素樹脂の層(B)とが直接積層されてなり、例えば、層(A)と層(B)との2層からなる(A)/(B)積層体、サンドイッチ構造を有し3層からなる(A)/(B)/(A)積層体等が挙げられる。また、他のフッ素樹脂の層又は非フッ素樹脂の層が一層以上さらに積層した3層以上の積層体も適用できる。いずれの場合でも層(A)と層(B)とが直接積層した構造を有し、層(A)と層(B)との層間の接着性に優れる。
【0033】
本発明において、含フッ素共重合体の層(A)の厚さは10μm〜10mmが好ましく、50μm〜10mmがより好ましく、100μm〜5mmが最も好ましい。また、非フッ素樹脂の層(B)の厚さは10μm〜20mmが好ましく、50μm〜20mmがより好ましく、100μmから10mmが最も好ましい。各層の厚さがこの範囲にあると接着性に優れ、機械強度に優れる。
【0034】
本発明における積層体は、含フッ素共重合体と非フッ素樹脂とを共射出成形して得ることが好ましい。共射出成形とは、2機又は3機以上の押出機を用い、2種類又は3種類以上の樹脂を同時に射出することにより樹脂が層状に金型に充填され、2層又は3層以上の射出成形体が得られる成形方法である。射出条件としては、射出温度が、樹脂の融点以上から450℃が好ましく、含フッ素共重合体の射出機内の滞留時間は10秒〜10分が好ましい。
【0035】
共射出成形法で得られる積層体からなる流体搬送ライン用物品の大きさは特に限定されないが、内径が10mm〜500mmの範囲が好ましく、25mm〜250mmの範囲がより好ましい。この範囲にあると成形性、得られる物品の機械物性に優れる。
【実施例】
【0036】
以下の実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。層間剥離試験は以下の方法で実施した。
【0037】
[層間剥離試験]
積層体の積層面に垂直に厚さ1mm幅5mmの大きさに切出して試験片を作成する。この試験片の両端を挟み引張試験機にて50mm/分の速さで引張り、積層面で破断するか、積層面以外で破断するかを調べた。積層面以外で破断した場合は層間接着性に優れることを示す。
【0038】
[合成例]
溶液重合により、共重合組成がTFEに基づく繰り返し単位/エチレンに基づく繰り返し単位/(パーフルオロエチル)エチレンに基づく繰り返し単位/無水イタコン酸に基づく繰り返し単位=58.5/39/2/0.5(モル比)である含フッ素共重合体C−1を製造した。含フッ素共重合体C−1の融点は240℃、容量流速は15mm/秒であった。
【0039】
[実施例1]
2台の射出成形機を用いて、内層/外層の2層積層体からなるバルブボディーを成形した。該積層体の内径が30mmであり、内層/外層の厚さはそれぞれ2mm/8mmであった。外層を形成する射出成形機1にポリブチレンテレフタレート(ジュラネックス2002 ポリプラスチックス社製)を供給し、内径を形成する射出成形機2に含フッ素共重合体C−1を供給した。射出成形機1及び2の温度はそれぞれ250℃、300℃であり、金型温度は100℃、サイクル時間60秒で共射出成形した。得られた積層体からなるバルブボディーは、層間で剥離せず接着性に優れる。
【0040】
[実施例2]
2台の射出成形機を用いて、内層/中間層/外層の3層積層体からなるバルブボディーを成形した。該積層体の内径が30mm、内層及び外層が含フッ素共重合体C−1、中間層が半芳香族ポリアミド(ジェネスタ クラレ社製)で、内層/中間層/外層の厚さがそれぞれ2mm/6mm/2mmであった。中間層を形成する射出成形機1に半芳香族ポリアミドを供給し、内層及び外層を形成する射出成形機2に含フッ素共重合体C−1を供給した。成形機1及び2の温度はそれぞれ350℃、300℃であり、金型温度は150℃、サイクル時間60秒で共射出成形した。得られた積層体からなるバルブボディーは、層間で剥離せず接着性に優れる。
【0041】
[比較例1]
含フッ素共重合体C−1に替えて、カルボニル基を含有しないTFE/エチレン系共重合体(フルオンETFE88AX、旭硝子社製)を用いる以外は実施例1と同様にして2層積層体からなるバルブボディーを成形した。得られた積層体からなるバルブボディーは、層間で容易に剥離し、接着性が不充分であった。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の流体搬送ライン用物品は、化学プラント、半導体プラント等に用いられる薬液、気体等の流体の搬送ラインに用いられる継手、バルブ、ポンプ、インペラ等の物品に適する。
【0043】
また、コピー機の配紙コロ等のOA機器部品、ウェハ−バスケット等の半導体製造装置部品にも適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレン及び/又はクロロトリフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(a)及びカルボニル基を含有する含フッ素共重合体の層(A)と非フッ素樹脂の層(B)とが直接積層されてなる積層体からなり、流体接触面が前記含フッ素共重合体の層(A)の表面からなることを特徴とする流体搬送ライン用物品。
【請求項2】
前記含フッ素共重合体が、テトラフルオロエチレン及び/又はクロロトリフルオロエチレンに基づく繰り返し単位(a)、フッ素モノマー(ただし、テトラフルオロエチレン及びクロロトリフルオロエチレンを除く。)に基づく繰り返し単位(b)、及び、重合性不飽和カルボン酸及び重合性不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる1種以上に基づく繰り返し単位(c)を含有し、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)、繰り返し単位(c)の合計モル量に対して、繰り返し単位(a)が50〜99.89モル%、繰り返し単位(b)が0.1〜49.99モル%、繰り返し単位(c)が0.01〜5モル%である請求項1に記載の流体搬送ライン用物品。
【請求項3】
前記含フッ素共重合体が、さらに非フッ素モノマー(ただし、重合性不飽和カルボン酸及び重合性不飽和カルボン酸無水物を除く。)に基づく繰り返し単位(d)を含有し、繰り返し単位(a)、繰り返し単位(b)及び繰り返し単位(c)の合計モル量に対して、繰り返し単位(d)が5〜90モル%である請求項2に記載の流体搬送ライン用物品。
【請求項4】
前記重合性不飽和カルボン酸無水物がイタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸及び5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物からなる群から選ばれる1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の流体搬送ライン用物品。
【請求項5】
流体搬送ライン用物品が、継手、バルブ、弁、ポンプ又はインペラである請求項1〜4のいずれかに記載の流体搬送ライン用物品。
【請求項6】
前記積層体が、含フッ素共重合体と非フッ素樹脂との共射出成形により製造されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の流体搬送ライン用物品の製造方法。




【公開番号】特開2006−130832(P2006−130832A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323852(P2004−323852)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】