説明

流動体移送装置、流動体充填装置及び流動体の移送方法

【課題】往復運動を用いて流動体を移送するものであって、往復運動の一周期の間の流動体移送量の平均値と、流動体移送量のピーク値との差を抑制することができる流動体移送装置、その流動体移送装置を備える流動体充填装置、及び、流動体の移送方法を提供する。
【解決手段】往復部材105が往復運動することにより容積が変化するベローズ101を備え、ベローズ101を拡張することでトナーTを吸引し、圧縮することで吸引したトナーTを圧送するベローズポンプ100において、往復部材105の往復運動を制御するカム130の形状を、回転角度の増加によって回転軸から周面までの距離が小さくなる拡張側割付角度よりも、回転角度の増加に比例して回転軸から周面までの距離が大きくなる圧縮側割付角度が大きい形状として、ベローズ101を拡張させる時間よりも圧縮させる時間の方を長くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体等の流動性を備える移送対象を移送する流動体移送装置、その流動体移送装置を備える流動体充填装置、及び、流動体の移送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成に用いられるトナーは、トナー充填装置によってトナー容器に充填され、トナー容器に収容された状態で画像形成装置に設置される。トナー充填装置において、充填用のトナーを収納するトナー収納容器からトナー容器までトナーを移送するトナー移送装置として、螺旋状の移送部材を回転させるオーガ式のものが知られている。しかし、オーガ式のトナー移送装置では、回転する移送部材との摺擦によってトナーにストレスがかかって劣化し、トナーの品質が低下するおそれがあった。
【0003】
トナー移送装置としては、トナー収納容器内のトナーに空気を供給して流動性を高めた状態とし、往復運動ポンプによってトナー容器まで移送するものが特許文献1に記載されている。往復運動ポンプは、往復部材が往復運動することにより容積が変化する容積変化部を備える。そして、この容積変化部の容積を拡張することで、トナーをトナー収納容器から吸引し、容積変化部の容積を圧縮することで吸引したトナーをトナー容器へと圧送する。このように、往復運動ポンプを用いてトナーを移送する構成であれば、オーガ式のようにトナーと移送部材との摺擦に起因するトナーの劣化を防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の往復運動ポンプを用いたトナー充填装置では、トナー容器のトナー充填量のバラツキが大きくなるという問題があった。これは、以下の理由による。
すなわち、往復運動ポンプでは、駆動を停止した際にすぐにトナーの移送が停止せず、少量のトナーが移送される。このような往復運動ポンプを用いるトナー充填装置では、トナー容器の重量を測定する重量測定器を備え、所望量のトナーが充填されたトナー容器の重量よりも少し軽い重量を測定したときに往復運動ポンプの駆動を停止する。
【0005】
従来の往復運動ポンプは、圧縮しきった状態の容積変化部を拡張し、再度、圧縮しきるまでを一周期としたときに、一周期の往復運動における容積変化部の容積を拡張する時間と、圧縮する時間とが同じであった。トナー容器へのトナーの圧送は、容積変化部の容積が圧縮している時間のみ行われるため、トナー容器にトナーが移送される時間は、一周期の半分以下の時間である。ここで、一周期の時間をさらに短い時間で分けた時間当たりのトナー移送量について考えると、トナーが移送される時間が一周期の半分以下の時間では、一周期の間のトナー移送量の平均値に対するトナー移送量のピーク値の値が大きくなる。
【0006】
このような従来の往復運動ポンプでは、一周期の間の停止タイミングによって、駆動を停止したあとに移送されるトナーの量のバラツキが大きくなる。具体的には、トナー移送量がピーク値となるタイミングの直前に駆動が停止されると、ピーク値分のトナーが移送され、比較的に多くのトナーが充填される。一方、容積変化部の容積を拡張しているタイミング、または、その直前に駆動が停止されると、駆動を停止したあとにトナーはほとんど移送されない。このように、駆動を停止したあとに、比較的に多くのトナーが充填される場合と、トナーがほとんど移送されない場合とがあると、充填工程が終了したトナー容器のトナー充填量のバラツキが大きくなる。
【0007】
このようなトナー充填量のバラツキを抑制するために、往復運動を用いた構成で、一周期の間のトナー移送量の平均値と、トナー移送量のピーク値との差が小さいトナー移送装置が求められる。
また、一周期の間に移送できるトナーの総量に対して、トナー移送量のピーク値が小さいと、移送対象であるトナー及びトナー移送装置を構成する各部材に対する負荷を抑制することができる。このような観点からも一周期の間のトナー移送量の平均値と、トナー移送量のピーク値との差が小さいトナー移送装置が求められる。
充填装置に用いられたときの充填量のバラツキを抑制する課題や、移送対象である流動体及び移送装置を構成する各部材に対する負荷を抑制する課題は、トナー移送装置に限るものではない。よって、トナー移送装置に限らず、トナー以外の粉体や液体、気体など他の流動体を移送する流動体移送装置であっても、一周期の間の移送量の平均値と、移送量のピーク値との差が小さいことが望ましい場合がある。
【0008】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、往復運動を用いて流動体を移送するものであって、往復運動の一周期の間の流動体移送量の平均値と、流動体移送量のピーク値との差を抑制することができる流動体移送装置、その流動体移送装置を備える流動体充填装置、及び、流動体の移送方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、往復部材が往復運動することにより容積が変化する容積変化部を備え、該容積変化部の容積を拡張することで、流動体を移送方向上流側から吸引し、該容積変化部の容積を圧縮することで吸引した該流動体を移送方向下流側へと圧送する流動体移送装置において、上記容積変化部の容積を拡張させる時間よりも圧縮させる時間の方が長くなるように、上記往復部材の往復運動を制御する駆動制御機構を備えることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の流動体移送装置において、上記駆動制御機構は、回転駆動源と、該回転駆動源からの駆動伝達によって回転し、その回転軸から周面までの距離が周面の位置によって変化するカムと、該カムの周面に接触し、且つ、該カムの回転方向に移動しないように支持されることで、該カムの回転時に周面上における接触位置が変化して該カムが一回転する毎に一往復する往復運動を行うカムフォロワと、該カムフォロワの往復運動を上記往復部材に伝達する往復運動伝達部材とを備え、該カムは、回転角度の増加に比例して回転軸から周面までの距離が大きくなり、該往復部材に上記容積変化部の容積を圧縮する運動を伝達する圧縮側割付角度を形成する領域と、回転角度の増加によって回転軸から周面までの距離が小さくなり、該往復部材に上記容積変化部の容積を拡張する運動を伝達する拡張側割付角度を形成する領域とを備え、該圧縮側割付角度が該拡張側割付角度よりも大きいことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項2の流動体移送装置において、上記拡張側割付角度における上記カムの周面に上記カムフォロワが追従するように、該カムフォロワを該カムの周面に向けて押圧する圧縮バネを備えることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項2または3の流動体移送装置において、上記カムの1分間当たりの回転数は、20回転から90回転の範囲であることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の流動体移送装置において、上記往復部材及び上記容積変化部を複数配置し、移送方向上流側の流路と、移送方向下流側の流路とをそれぞれ連結したことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項5の流動体移送装置において、上記容積変化部の容積を拡張させる一回分の拡張時間と圧縮させる一回分の圧縮時間との合計を一周期として、複数配置された該容積変化部の該拡張時間及び該圧縮時間は同じであり、該一周期の時間を該容積変化部の数で分割した時間差分の位相差を設けて、各容積変化部材に対応した上記往復部材が往復運動することを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項6の流動体移送装置において、上記拡張時間は、上記位相差の時間よりも短く、上記一周期の12分の1の時間よりも長いことを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、充填用の粉体を収納する粉体収納部内の該粉体を、粉体移送手段によって粉体容器に移送し、該粉体容器内に該粉体を充填する粉体充填装置において、該粉体移送手段として、請求項1乃至7の何れか1項に記載の流動体移送装置を用いることを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8の粉体充填装置において、上記流動体移送装置の駆動を停止し、上記粉体容器に対する上記粉体の充填を停止する際には、上記容積変化部の容積を圧縮する圧縮工程の状態にあるタイミングで該流動体移送装置の駆動を停止し、該容積変化部の容積を拡張する拡張工程の状態にあるタイミングでは該流動体移送装置の駆動を停止しないことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、往復部材が往復運動することにより容積が変化する容積変化部の容積を拡張することで、流動体を移送方向上流側から吸引し、該容積変化部の容積を圧縮することで吸引した該流動体を移送方向下流側へと圧送する流動体の移送方法において、上記往復部材及び上記容積変化部を複数配置し、移送方向上流側の流路と、移送方向下流側の流路とをそれぞれ連結し、該容積変化部の容積を拡張させる一回分の拡張時間と圧縮させる一回分の圧縮時間との合計を一周期として、複数並列配置された該容積変化部の該拡張時間及び該圧縮時間は同じであり、該複数の往復部材の往復運動に位相差を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
請求項1の構成を備えた発明においては、容積変化部の容積を拡張させる拡張時間よりも圧縮させる圧縮時間の方が長いため、拡張時間と圧縮時間とが同じ時間であった従来の流動体搬送装置に比べて、一周期当たりの流動体を圧送する時間を長く設定することができる。これにより、一周期当たりの流動体の移送量が同じであれば、圧送する時間が長い分、移送されているタイミングにおける時間当たりの流動体移送量を抑制でき、流動体移送量のピーク値を抑制することができる。一周期当たりの流動体の移送量が同じで一周期の時間が同じであれば、一周期の間の流動体移送量の平均値は同じである。よって、流動体移送量のピーク値を抑制することで、往復運動の一周期の間の流動体移送量の平均値と、流動体移送量のピーク値との差を抑制することができる。
【0011】
また、請求項10の発明においては、複数の往復部材の往復運動に位相差を設けたことにより、一周期の往復運動の間に、流動体移送量がピーク値となるタイミングが複数回生じる。これにより、流動体移送量がピーク値となるタイミングが一回のものに比べて、往復運動の一周期の間の流動体移送量の平均値と、流動体移送量のピーク値との差を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、往復運動の一周期の間の流動体移送量の平均値と、流動体移送量のピーク値との差を抑制することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るトナー充填装置の概略説明図。
【図2】実施形態に係るベローズポンプの説明図、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図。
【図3】実施形態に係るベローズポンプが備えるカムの拡大説明図。
【図4】従来例のベローズポンプの説明図、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は上面図。
【図5】従来例のベローズポンプが備えるカムの拡大説明図。
【図6】実施形態に係るベローズポンプが備えるカムのカム線図。
【図7】従来例のベローズポンプが備えるカムのカム線図。
【図8】実施形態に係るベローズポンプの粉体吐出速度と回転角度との関係を示すグラフ。
【図9】従来例のベローズポンプの粉体吐出速度と回転角度との関係を示すグラフ。
【図10】実施形態に係るベローズポンプのベローズを多連式に配置したときの粉体吐出速度と回転角度との関係を示すグラフ。
【図11】従来例のベローズポンプのベローズを多連式に配置したときの粉体吐出速度と回転角度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した流動体移送装置としてベローズポンプ100の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態のベローズポンプ100を備えたトナー充填装置500の概略構成を説明する概略説明図である。トナー充填装置500は、トナーTを収容するトナー収納容器10の底面から矢印Aで示すように空気を供給し、流動化したトナーTをベローズポンプ100によってトナー容器20内に一定量充填する装置である。
図2は、トナー充填装置500が備えるベローズポンプ100の説明図である。図2(a)は、図1と同じ方向から見た正面図、図2(b)は、図2(a)中の右側から見た側面図、図2(c)は、図2(a)及び(b)中の上方から見た上面図である。
【0015】
トナー収納容器10は、その内部に収納容器底部11から空気を供給し、収納するトナーTを流動化するトナー流動部を構成する。ベローズポンプ100は、バルブブロック140にねじ込んだベローズ101を圧縮及び拡張させることで、二つのダックビルバルブ(110、120)を介してトナー収納容器10からトナー容器20への一方向にトナーTを移送するポンプ部である。また、トナー容器20を設置する箇所には、トナー容器20内に充填されたトナーTの重量を測定する重量測定器21が配置され、トナー計量部を構成している。
【0016】
トナー収納容器10は、収納容器底部11にトナーTの粒径よりも開口が小さい濾材をトナーとの界面に配置し、この濾材を介して空気をトナーTに供給することでトナーを流動化させるものである。
ベローズポンプ100は、流動化したトナーTを図1中の矢印Bで示すように、トナー収納容器10から吸引し、その後、図中矢印Cで示すようにトナーTをトナー容器20に移送するものである。
上記トナー計量部は、トナー容器20に送られてくるトナーの重量を重量測定器21で計量して、その計測結果に基づいて、不図示の制御部が、ベローズポンプ100を停止し、所定の重量のトナーTをトナー容器20内に充填する。
【0017】
ベローズポンプ100は、トナーTを一方向に送るための逆止弁の役目をする吸引側の第一ダックビルバルブ110及び吐出側の第二ダックビルバルブ120の二個の第二ダックビルバルブ120を備え、ベローズ101の拡張・圧縮によって吸引と吐出とを行う装置である。
ベローズ101の拡張・圧縮は回転軸であるカム軸131にカム130を配置し、カム130によって従動するカムフォロワ133の付いたレバー102によって、上下の往復運動が伝達される連結棒104の昇降によって行われる。レバー102のカムフォロワ133が配置された側の端部は圧縮バネ134によって下方に向けて押圧されており、カムフォロワ133が常にカム130の周面に接触する構成となっている。トナー充填装置500は、モータ等の不図示の駆動機器でカム軸131を回転することで粉体充填をおこない、停止することで充填を終了するものである。
【0018】
レバー102の長手方向の一端にはカムフォロワ133が固定されており、他端にはレバー102とベローズ101とを連結する連結棒104が接続されている。連結棒104の下端にはベローズ101の往復部材105が固定されており、連結棒104の上端は回動連結部材106によって、連結棒104がレバー102に対して回動可能に接続されている。レバー102は、レバー回動軸103を中心に回動可能となっており、連結棒104はレバー102の回動運動を上下の往復運動として往復部材105に伝達する。
【0019】
ベローズ101は、蛇腹管の上部に往復部材105を固定した構造であり、往復部材105が下降すると蛇腹管が収縮し、その内部の容積が縮小する圧縮動作となる。一方、往復部材105が上昇すると蛇腹管が拡張し、その内部の容積が拡張する拡張動作となる。
【0020】
カム130が回転することにより、カム軸131の中心からカム130の周面上のカムフォロワ133が接触する位置までの距離が変化する。この距離が増加すると、カムフォロワ133はカム軸131に対して上方に押し上げられ、レバー回動軸103を挟んで反対側のレバー102の端部に連結棒104を介して接続された往復部材105は押し下げられて、下降する。一方、上述した距離が減少すると、レバー102のカムフォロワ133が配置された側の端部は圧縮バネ134によって下方に押し下げられ、往復部材105は上昇する。
【0021】
カム130が回転することにより、カム軸131の中心からカム130の周面上のカムフォロワ133が接触する位置までの距離が増加すると、往復部材105が下降し、ベローズ101は圧縮する。このため、ベローズ101のねじ込みにより連結されたバルブブロック140の空隙部分の圧力が上昇する。これにより、吸引側の第一ダックビルバルブ110の先端部が塞がり、吸引側移送管12との管路が閉ざされる。このとき、吐出側の第二ダックビルバルブ120の口先が外側に押されて開き、ベローズ101内のトナーTが吐出側移送管22へと吐出される。
【0022】
カム130が回転することにより、カム軸131の中心からカム130の周面上のカムフォロワ133が接触する位置までの距離が減少すると、往復部材105が上昇し、ベローズ101が拡張して、バルブブロック140の空隙部分に負圧が発生する。これにより、吐出側の第二ダックビルバルブ120の口先が内側に引かれて閉じ、吐出側移送管22との管路が閉ざされる。このとき、吸引側の第一ダックビルバルブ110の口先が内側に引かれて開き、吸引側移送管12からベローズ101内へのトナーTの吸引が行われる。
【0023】
トナー容器20に精度よくトナーを充填するため、ベローズポンプ100の圧縮工程における吐出速度の変動を小さくして、トナー充填装置500の充填精度を向上させることが求められる。さらに、トナーの劣化を抑制するために、トナー充填装置500を用いた充填作業時のトナーへのストレスを抑制することが求められる。
【0024】
本実施形態のトナー充填装置500は、上述したように、粉体であるトナーT中に気体を混合して流動化させる手段を持ち、伸縮するベローズ101にダックビルバルブ等の逆止弁を吸引・吐出側の各々配置して送粉するベローズポンプ100を用いる。そして、トナー容器20内に充填された重量を計測してベローズポンプ100を止めることで一定量のトナーTをトナー容器20に充填する流動体充填装置である。
【0025】
さらに本実施形態のトナー充填装置500は、ベローズポンプ100のベローズ101に往復運動を伝達するカム130が次のようの形状となっている。すなわち、カム130の回転角度について、ベローズ101の圧縮動作に割り付ける角度(圧縮側割付角度)を拡張運動に割り付ける角度(拡張側割付角度)より大きくし、かつその圧縮する速度が一定となるようにカムの形状を設定している。
【0026】
ここで、本実施形態のベローズポンプ100が備えるカム130について説明する。図3は、カム130の拡大説明図である。
ベローズポンプ100が駆動すると、カム軸131に回転駆動が入力されることにより、カム130が図3中の矢印Dで示すように反時計回り方向に回転する。このときに、図3中のαで示す角度の領域の周面にカムフォロワ133が接触している間は、カム軸131の中心131pからカム130の周面上のカムフォロワ133が接触する位置までの距離rが増加する。以下、αで示す角度を圧縮側割付角度αという。一方、カム130が回転するときに、図3中のβで示す角度の領域の周面にカムフォロワ133が接触している間は、カム軸131の中心131pからカム130の周面上のカムフォロワ133が接触する位置までの距離rが減少する。以下、βで示す角度を拡張側割付角度βという。
【0027】
図3に示すように、カム130は、拡張側割付角度βに比べて、圧縮側割付角度αが十分に大きい形状となっている。また、図中矢印D方向に回転したときにカム130の圧縮側割付角度αにおける周面にカムフォロワ133が接触している間は、距離rが回転角度に対して近似的に比例の関係で増加する。距離rが回転速度に対して近似的に比例して増加することにより、一定の回転速度で回転しているときに、圧縮側割付角度αにおける周面にカムフォロワ133が接触している間は距離rが近似的に一定の速度で増加する。これにより、カムフォロワ133が一定速度で上昇し、レバー102を介して、往復部材105が一定速度で下降し、ベローズ101の容積が一定速度で減少する。この結果、圧縮動作時には、ベローズ101内のトナーTが吐出側移送管22へと一定の速度で吐出される。
【0028】
ここで、従来のトナー充填装置に用いるトナーの移送方式について説明する。従来、トナーの移送方式としては、オーガ方式やチューブ方式、流動加圧方式、流動落下方式、ベローズポンプ方式などがある。
特に流動加圧方式、流動落下方式やベローズポンプ方式では、トナーの流動性を高めることで移送を容易にし、トナーにかかるストレスを抑制して移送する技術が既に知られている。
【0029】
特許文献1には、往復運動ポンプであるベローズポンプからなる粉体トナー吸引手段と粉体トナーへの送気手段からなるトナー充填装置が記載されている。このトナー充填装置では、粉体トナーを配置したトナー収納容器内に気体を送気して、送気された気体により流動化した粉体トナーをベローズポンプで吸入してトナー収納容器からトナー容器に粉体トナーを移送させる。ベローズポンプを用いることで、移送する際の粉体トナーに対するストレスを抑制できる。特許文献1に記載のトナー充填装置では、トナー移送装置としてベローズポンプを用いる点で本実施形態のトナー充填装置500と同様である。しかし、従来のベローズポンプは脈動が大きいため、トナーボトルなどのトナー容器内に一定量のトナーを充填する場合に、ベローズポンプの停止タイミングによって充填量のバラツキが大きいという問題があった。
【0030】
特許文献2には、ベローズポンプとして、ベローズに対する往復運動の伝達にリードスクリュを用い、駆動モータを正逆回転させることでベローズを伸縮させ、流動体を移送する構成が記載されている。リードスクリュを用いることで、ベローズの圧縮を一定速度で行い、トナーを一定の速度で吐出することができる可能性がある。しかし、正回転と逆回転とを同じ回転速度で行うと、ベローズポンプの停止タイミングによって充填量のバラツキが大きいという問題があった。
【0031】
図4は、従来のベローズポンプ100の一例の説明図であり、図4(a)は、ベローズポンプ100正面図、図4(b)は、ベローズポンプ100の側面図である。また、図5は、図4に示す従来のベローズポンプ100が備えるカム130の説明図である。
【0032】
従来のベローズポンプ100は、ベローズ101を圧縮及び拡張させるカム130として、図4及び図5に示すように、偏心カムを使用する。偏心カムは円板に円の中心から偏心量Wだけ外れた位置にカム軸を貫通させたものである。
図4に示す従来のベローズポンプ100は、連結棒104の上端がカムフォロワ133となり、偏心カムが連結棒104に対して直接に上下方向の往復運動を伝達する。偏心カムは円形状であるため、左右対称である。このため、角度の増加に伴い、中心131pからカム130の周面上のカムフォロワ133が接触する位置までの距離rが増加する圧縮側割付角度αと、距離rが減少する拡張側割付角度βとの角度比が1:1である。
また、上記距離rと回転角度θとの関係は、近似的に、「r=R−Wcosθ」の式で示される単弦曲線で示される。この式における「R」は、円板の半径であり、「W」は偏心量である。
【0033】
図3と図5とを比較すると、図5に示す従来のカム130では、圧縮側割付角度αと拡張側割付角度βとが同じ角度であるのに対して、図3に示す本実施形態のカム130は、圧縮側割付角度αの方が十分に大きくなる形状である。
このため、カム130の回転速度が同じであれば、カム130が一回転する間に、カム130の周面のうち圧縮側割付角度αの周面にカムフォロワ133が接触している時間が従来のカム130に比べて長くなる。これにより、カム130が一回転する時間をさらに短い時間で分けた単位時間当たりの吐出量のピーク値を、カム130が一回転する間の単位時間当たりの平均値に対して小さくすることができる。
吐出量のピーク値を抑えることで、従来のベローズポンプ100に比べて安定した吐出動作を得ることができる。
【0034】
図2に示すベローズポンプ100では、ベローズ101を伸縮させるカム130の形状が、ベローズ圧縮側を拡張側より長く割り付ける形状である。このため、往復運動の一周期の時間が同じであり、往復運動の一周期当たりのトナーの移送量が同じであれば、従来の偏心カムで動作させる場合よりも、圧縮速度を低速にでき、ベローズ101の圧縮によって送り出されるトナーTの単位時間当り吐出量少なくできる。さらに、その圧縮速度は、近似的に一定速になるようにしている。よって、狙いの充填量に近づいてベローズポンプ100の不図示のカム軸駆動モータを停止した際に、トナーの充填が停止されるまでに送り出されるトナーTの量の変動が少なくなる。よって、トナー容器20に対するトナーTの充填量のバラツキが少なくなる。さらに、トナーTにストレスを与える圧縮速度が小さくなるので偏心カムを用いた場合よりも低速で圧縮されることとなりトナーTに掛かるストレスが減少する。
【0035】
また、図2に示すように、ベローズポンプ100のベローズ101を多連式に配置することにより、時間当たりの移送量を増加することと、時間当たりの吐出量の平均化を測ることができる。
不図示のカム軸駆動モータでカム軸131を駆動し、カム軸131上に複数のカム130(本実施形態では4つ)を配置したものである。カム130は、360[°]を連数(本実施形態では4)で割った角度の位相差で配置する。
【0036】
図6は、本実施形態のベローズポンプ100が備えるカム130の回転角度θと外周までの距離rとの関係を示すカム線図である。
回転角度θが圧縮側割付角度α内であるときには、回転角度θと距離rとの関係は直線的に上昇している。また、拡張側割付角度βに比べて圧縮側割付角度αの方がθ方向に長くなっているため、回転速度が一定の場合、ベローズ101の容積を拡張させる拡張工程の時間よりも圧縮させる圧縮工程の時間の方が長くなる。
【0037】
図7は、図4及び図5で示した従来例のベローズポンプ100が備えるカム130の回転角度θと外周までの距離rとの関係を示すカム線図である。
従来例のカム線図は、図5を用いて説明したように、近似的に、r=R−Wcosθ」(R:円板の半径、W:偏心量)で示すことができるため単弦曲線を描く。
また、拡張側割付角度βと圧縮側割付角度αとのθ方向の長さが同じであるため、回転速度が一定の場合、ベローズ101の容積を拡張させる拡張工程の時間と、圧縮させる圧縮工程の時間とが同じ長さとなる。
【0038】
図8は、本実施形態のベローズポンプ100の単位時間当たりのトナーTの吐出量(以下、粉体吐出速度という)と、回転角度θとの関係を示すグラフである。
カム線図におけるカム曲線が直線的に増加する圧縮工程においてベローズ101は略一定速度で容積が減少するのでほぼ一定の粉体吐出速度で吐出する。
拡張工程においては、第二ダックビルバルブ120が吐出側移送管22との管路を閉じるので、吸引のみが行われる。
【0039】
図9は、図4及び図5で示した従来例のベローズポンプ100の粉体吐出速度と、回転角度θとの関係を示すグラフである。
従来例のベローズポンプ100は単弦運動をする偏心カムによって押し下げられるので、ベローズ101の収縮によって押し出される粉体の吐出量も単弦波形状となり周期的に変化する。また、拡張工程においては、第二ダックビルバルブ120が吐出側移送管22との管路を閉じるので、吸引のみが行われる。
圧縮工程と拡張工程との時間比は1:1となり、吐出速度の最大値は図8に示す本実施形態のベローズポンプ100と比較して大きな値となる。
【0040】
このため従来例のベローズポンプ100では脈動が大きくなる。これに対して、本実施形態のベローズポンプ100では従来例によるものよりも吐出速度のピークが低速の吐出となり、脈動の少ない粉体の移送が可能となる。
図1に示すトナー充填装置500のように、トナーの充填に使用する場合は、重量測定器21による充填量の計測値が目標値に近づいたときに、不図示のカム軸駆動モータを停止してからトナーTの吐出が完全に停止するまである程度の時間を要する。このとき、カム130の回転角度θによって吐出速度の値にバラツキが多い従来例のベローズポンプ100では、そのタイミングによってカム軸駆動モータを停止してから吐出されるトナーTの量にバラツキが多くなる。一方、吐出速度の値にバラツキが少ない本実施形態のベローズポンプ100では、カム軸駆動モータを停止してから吐出されるトナーTの量にバラツキを抑制することができる。
【0041】
また、圧縮時にはトナーTの密度が上昇しトナーTにストレスを与えやすいので吐出に掛ける時間を長く、吐出速度のピーク値を低速にすることが出来ることにより、近年の軟化点の低い製品については有効である。
また、圧縮による反力が開放される拡張工程については、時間を短縮してもトナーに対して悪影響を与えることなく吸引することは可能である。
【0042】
図10は、本実施形態のベローズポンプ100のベローズ101を多連式に配置したときの粉体吐出速度と、回転角度θとの関係を示すグラフである。
四つのカム130を備えているため、360[°]を連数の四で分割した90[°]毎の位相差をつけて各カム130を配置したとき、各位相(第1相〜第4相)についての粉体吐出速度と、回転角度θとの関係は図10のようになる。
これらの各位相によって移送されるトナーTを合流させたときの合成吐出速度と、回転角度θとの関係は図10中の最下段のようになり、全ての回転角度θにおいて脈動の少ない吐出が可能となる。
よって、トナー容器20にトナーを充填するトナー充填装置500に、本実施形態のベローズポンプ100を使用することで精度の高い充填が可能となる。
【0043】
図11は、上述した従来例のベローズポンプ100のベローズ101を多連式に配置したときの粉体吐出速度と、回転角度θとの関係を示すグラフである。
四つのカム130を備えているため、360[°]を連数の四で分割した90[°]毎の位相差をつけて各カム130を配置したとき、各位相(第1相〜第4相)についての粉体吐出速度と、回転角度θとの関係は図11のようになる。これらの各位相によって移送されるトナーTを合流させたときの合成吐出速度と、回転角度θとの関係は図11中の最下段のようになり、4箇所で吐出速度のピーク値を持つ脈動が発生することになる。
よって、トナー容器20にトナーを充填するトナー充填装置500に、従来例のベローズポンプ100を使用すると、停止タイミングによって吐出が完全に停止までに吐出されるトナーTの量が変動するため充填の精度が低くなる。
【0044】
従来例のベローズポンプ100では、4つのベローズ101の圧縮拡張運動の位相をずらしても、4箇所で吐出速度のピーク値を持つ脈動が発生する。しかし、一つのベローズ101を備える構成に比べて、往復運動の一周期の間の流動体移送量の平均値と、流動体移送量のピーク値との差を抑制することができることが図11より確認できる。
【0045】
本発明者らがトナー充填装置500によってトナー容器20に450[g]の充填量で充填作業を行ったところ、従来例のベローズポンプ100を用いた構成では、標準偏差が0.950[g]であった。一方、本実施形態のベローズポンプ100を用いた構成では、標準偏差が0.584[g]に抑えることができた。
上述した実施形態では、流動体移送装置がベローズポンプの構成について説明したが、本発明が適用可能な流動体移送装置としてはこれに限るものではない。往復運動によって容積が変化する容積変化部を備えていればよく、ダイヤフラムポンプ等、他の往復運動ポンプにも適用可能である。
【0046】
以上、本実施形態の流動体移送装置であるベローズポンプ100では、往復部材105が往復運動することにより容積が変化する容積変化部であるベローズ101を備える。そして、ベローズ101の容積を拡張することで、流動体であるトナーTを移送方向上流側のトナー収納容器10から吸引し、ベローズ101の容積を圧縮することで吸引したトナーTを移送方向下流側へと圧送する。このようなベローズポンプ100において、図1〜図2で示すように、ベローズ101の容積を拡張させる時間よりも圧縮させる時間の方が長くなるように、往復部材105の往復運動を制御する駆動制御機構としての図3に示すカム130等を備える。図3に示すカム130を備えることにより、ベローズ101の圧縮・拡張運動の一周期当たりのトナーTを圧送する時間を長く設定することができる。これにより、一周期当たりのトナーTの移送量が同じであれば、圧送する時間が長い分、移送されているタイミングにおける時間当たりのトナー移送量を抑制でき、トナー移送量のピーク値を抑制することができる。一周期当たりのトナーTの移送量が同じで一周期の時間が同じであれば、一周期の間のトナー移送量の平均値は同じである。よって、トナー移送量のピーク値を抑制することで、往復運動の一周期の間のトナー移送量の平均値と、トナー移送量のピーク値との差を抑制することができる。これにより、ベローズポンプ100の不図示のカム軸駆動モータを停止した際に、その停止タイミングによってトナーの充填が停止されるまでにベローズ101から送り出されるトナーTの量の変動が少なくなる。よって、トナー容器20に対するトナーTの充填量のバラツキが少なくなる。
【0047】
また、図1及び図2に示すベローズポンプ100の駆動制御機構は、回転駆動源である不図示のカム軸駆動モータと、カム130と、カムフォロワ133と、レバー102と、連結棒104とを備える。カム130は、カム軸駆動モータからの駆動伝達によって回転し、その回転軸から周面までの距離が周面の位置によって変化する。カムフォロワ133は、カム130の周面に接触し、且つ、カム130の回転方向に移動しないように支持されることで、カム130の回転時に周面上における接触位置が変化してカム130が一回転する毎に一往復する往復運動を行う。レバー102及び連結棒104は、カムフォロワ133の往復運動を往復部材105に伝達する往復運動伝達部材である。
カム130は、回転方向について圧縮側割付角度αを形成する領域と、拡張側割付角度βを形成する領域とを備える。カム130の回転角度が圧縮側割付角度αの範囲である場合、回転角度の増加に比例して回転軸から周面までの距離が大きくなり、往復部材105にベローズ101の容積を圧縮する運動を伝達する。一方、カム130の回転角度が拡張側割付角度βの範囲である場合、回転角度の増加によって回転軸から周面までの距離が小さくなり、往復部材105にベローズ101の容積を拡張する運動を伝達する。そして、カム130は、圧縮側割付角度αが拡張側割付角度βよりも大きい形状である。このように、圧縮側割付角度αが拡張側割付角度βよりも大きい形状のカム130を用いることにより、ベローズ101の容積を拡張させる時間よりも圧縮させる時間の方が長くなるように、往復部材105の往復運動を制御する駆動制御機構を実現することができる。
また、駆動制御機構としては、カムの形状によってベローズの容積を拡張させる時間よりも圧縮させる時間の方が長くなるように、往復部材の往復運動を制御するものに限るものではない。例えば、特許文献2に記載のように、リードスクリュを用いてベローズの圧縮・拡張を行う構成の場合、正回転時と逆回転時とで正逆回転モータの回転速度を異ならせることで、ベローズの拡張時間よりも圧縮時間の方を長くしてもよい。
【0048】
図1及び図2に示すベローズポンプ100は、拡張側割付角度βにおけるカム130の周面にカムフォロワ133が追従するように、カムフォロワ133をカム130の周面に向けて押圧する圧縮バネ134を備える。このような構成により、カム130の回転運動をカムフォロワ133の往復運動として伝達する駆動制御機構を実現することができる。
【0049】
また、本実施形態のベローズポンプ100のカム130の1分間当たりの回転数は、20回転から90回転の範囲であることが望ましい。20回転よりも遅い範囲であると、ベローズ101内に吸引されたトナーTの粒子同士の間の空気が抜けてトナーTの流動性が低下するおそれがある。トナーTの流動性が低下すると、ベローズ101内や吐出側移送管22内でトナーが詰まる原因となる。また、90回転よりも速い範囲であると、トナーTに対するストレスが多くなり、トナーTの粒子同士の凝集が生じ易くなる。
【0050】
また、図2に示すように、ベローズポンプ100は、往復部材105及びベローズ101を複数並列配置した構成で、移送方向上流側の流路である吸引側移送管12と、移送方向下流側の流路である吐出側移送管22とをそれぞれ連結した構成とする。これにより、ベローズ101一つ当たりの単位時間当たりの移送量を増加させることなく、ベローズポンプ100全体での単位時間当たりの移送量を増加させることができる。ベローズ101一つ当たりの単位時間当たりの移送量を増加させないことにより、トナーTに対する移送時のストレスを抑制したまま、単位時間当たりの移送量を増加させることができる。
【0051】
また、図2に示すベローズポンプ100は、ベローズ101の容積を拡張させる一回分の拡張時間と圧縮させる一回分の圧縮時間との合計を一周期として、四つ配置されたベローズ101の拡張時間及び圧縮時間は同じである。そして、図10に示すように、一周期の時間をベローズ101の数で分割した時間差分の位相差を設けて、各ベローズ101に対応した往復部材105が往復運動する。すなわち、360[°]をベローズ101の連数である4で分割した90[°]の位相差を設けてカム130を配置している。このように、一周期の時間をベローズ101の数で分割した時間差分の位相差を設けることにより、図10中の最下段の「合成」で示すように、ベローズポンプ100全体としての粉体吐出速度が一周期の間で略均一となる。
【0052】
また、図2に示すベローズポンプ100は、ベローズ101の拡張時間を、上述した位相差の時間よりも短く設定する。これにより、一つのベローズ101が拡張工程の状態にあってトナーTを移送していない状態であっても、他のベローズ101が圧縮工程の状態となり、ベローズポンプ100全体として常にトナーTが移送される構成となる。また、カム130を用いた構成では、拡張時間を短くするために、拡張側割付角度βを小さくし過ぎると、カムフォロワ133がカム130の周面に追従できなくなる。このため、拡張時間が一周期の12分の1の時間よりも長くなるように、すなわち、拡張側割付角度βが30[°]よりも大きくなるように設定することが望ましい。
【0053】
図1に示すトナー充填装置500は、充填用の粉体であるトナーTを収納する粉体収納部であるトナー収納容器10内のトナーTを、粉体移送手段によって粉体容器であるトナー容器20に移送し、トナー容器20内にトナーTを充填する粉体充填装置である。そして、粉体移送手段として、本実施形態の流動体移送装置であるベローズポンプ100を用いる。
【0054】
トナー充填装置500は、トナー収納容器10内のトナーTに対して空気を送り込んでトナーTの流動性を高める流動床としての機能を有する収納容器底部11を備える。ここで流動性が高められたトナーTを、ベローズ101の拡張によって発生する負圧によって吸引し、ベローズ101の圧縮によって発生する正圧によって吐出するバルブブロック140を備える。バルブブロック140は、第一ダックビルバルブ110及び第二ダックビルバルブ120を備える。第二ダックビルバルブ120は、ベローズ101の拡張によって発生する負圧によって先端の先細部分が閉じることによって吐出管路を閉じる。また、第一ダックビルバルブ110は、ベローズ101の圧縮によって発生する正圧によって先端の先細部分が閉じることによって吸引管路を閉じる。
ベローズポンプ100は、空気を送り込むことで流動性を高めたトナーTをベローズ101の圧縮拡張動作によって発生する負圧と正圧を、二つのダックビルバルブによる逆止弁効果で一方向に送るように制御することによってポンプ機能を有する。
【0055】
ベローズポンプ100は、ベローズ101が圧縮拡張するための往復運動を往復部材105に伝達する連結棒104と、これに昇降運動をあたえるカム130と、カム130を回転させるカム軸131を備える。さらに、ベローズポンプ100は、カム軸131を回転駆動する不図示のカム軸駆動モータを備える。また、カム130の形状がカム軸131の中心から圧縮側割付角度αにおける周面までの距離が回転角に比例して大きくなる形状であるため、往復部材105を一定速度で押し下げることができ、ベローズ101の容量を一定速度で圧縮することができる。さらに、往復部材105を押し下げるときにカムフォロワ133が接触する周面に対応した圧縮側割付角度αは、往復部材105を引き上げるときにカムフォロワ133が接触する周面に対応した拡張側割付角度βはよりも大きい。また、トナー充填装置500は、トナー容器20に充填された重量を測定する重量測定器21を備える。そして、重量測定器21の測定結果に基づいて、トナー容器20が所定の重量となったことを検出したときに、ベローズポンプ100による移送を停止した際に、本実施形態のベローズポンプ100であれば、カム軸駆動モータを停止した後のトナーTの移送量にバラツキが少ない。よって、本実施形態のトナー充填装置500であれば、トナー容器20に対するトナーTの充填量のバラツキを抑制することができる。
【0056】
また、トナー充填装置500におけるベローズポンプ100の駆動を停止し、トナー容器20に対するトナーTの充填を停止する際には、ベローズ101の容積を圧縮する圧縮工程の状態にあるタイミングでベローズポンプ100の駆動を停止し、ベローズ101の容積を拡張する拡張工程の状態にあるタイミングではベローズポンプ100の駆動を停止しないことが望ましい。すなわち、カムフォロワ133がカム130の圧縮側割付角度αに対応した周面に接触するタイミングでカム軸駆動モータを停止することが望ましい。これは、拡張工程の状態にあるタイミングでカム軸駆動モータを停止すると、その後にトナーTが移送されないか、移送されても少量となる。このような場合、カム軸駆動モータを停止した後のトナーTの移送量が、圧縮工程の状態にあるタイミングでカム軸駆動モータを停止した場合と比べて少なくなり、充填量のバラツキの原因となる。よって、圧縮工程の状態にあるタイミングでカム軸駆動モータを停止することで、充填量のバラツキを抑制することができる。
【0057】
また、往復部材105が往復運動することにより容積が変化する容積変化部であるベローズ101の容積を拡張することで、流動体であるトナーTを移送方向上流側から吸引し、ベローズ101の容積を圧縮することで、吸引したトナーTを移送方向下流側へと圧送するトナーTの移送方法として、往復部材105及びベローズ101を複数配置し、往復部材105の往復運動に位相差を設けることが望ましい。ベローズポンプ100では、往復部材105及びベローズ101を複数並列配置し、移送方向上流側のトナー収納容器10からの流路と、移送方向下流側のトナー容器20への流路とをそれぞれ連結している。また、ベローズ101の容積を拡張させる一回分の拡張時間と圧縮させる一回分の圧縮時間との合計を一周期として、複数並列配置されたベローズ101の拡張時間及び圧縮時間は同じである。そして、一周期の時間をベローズ101の数で分割した時間差分の位相差を設けて、各ベローズ101に対応した各往復部材105が往復運動することによって、ベローズ101の拡張時間と圧縮時間とが同じ長さのベローズポンプ100であっても図11の最下段のグラフに示すように、ベローズポンプ100全体として、往復運動の一周期の間のトナーTの移送量の平均値と、トナーTの移送量のピーク値との差を抑制することができる。
【符号の説明】
【0058】
10 トナー収納容器
11 収納容器底部
12 吸引側移送管
20 トナー容器
21 重量測定器
22 吐出側移送管
100 ベローズポンプ
101 ベローズ
102 レバー
103 レバー回動軸
104 連結棒
105 往復部材
106 回動連結部材
110 第一ダックビルバルブ
120 第二ダックビルバルブ
130 カム
131 カム軸
131p 中心
133 カムフォロワ
134 圧縮バネ
140 バルブブロック
500 トナー充填装置
r 距離
T トナー
W 偏心量
α 圧縮側割付角度
β 拡張側割付角度
θ 回転角度
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特許第4335216号
【特許文献2】特開2008−075534号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復部材が往復運動することにより容積が変化する容積変化部を備え、
該容積変化部の容積を拡張することで、流動体を移送方向上流側から吸引し、
該容積変化部の容積を圧縮することで吸引した該流動体を移送方向下流側へと圧送する流動体移送装置において、
上記容積変化部の容積を拡張させる時間よりも圧縮させる時間の方が長くなるように、上記往復部材の往復運動を制御する駆動制御機構を備えることを特徴とする流動体移送装置。
【請求項2】
請求項1の流動体移送装置において、
上記駆動制御機構は、回転駆動源と、
該回転駆動源からの駆動伝達によって回転し、その回転軸から周面までの距離が周面の位置によって変化するカムと、
該カムの周面に接触し、且つ、該カムの回転方向に移動しないように支持されることで、該カムの回転時に周面上における接触位置が変化して該カムが一回転する毎に一往復する往復運動を行うカムフォロワと、
該カムフォロワの往復運動を上記往復部材に伝達する往復運動伝達部材とを備え、
該カムは、回転角度の増加に比例して回転軸から周面までの距離が大きくなり、該往復部材に上記容積変化部の容積を圧縮する運動を伝達する圧縮側割付角度を形成する領域と、
回転角度の増加によって回転軸から周面までの距離が小さくなり、該往復部材に上記容積変化部の容積を拡張する運動を伝達する拡張側割付角度を形成する領域とを備え、
該圧縮側割付角度が該拡張側割付角度よりも大きいことを特徴とする流動体移送装置。
【請求項3】
請求項2の流動体移送装置において、
上記拡張側割付角度における上記カムの周面に上記カムフォロワが追従するように、該カムフォロワを該カムの周面に向けて押圧する圧縮バネを備えることを特徴とする流動体移送装置。
【請求項4】
請求項2または3の流動体移送装置において、
上記カムの1分間当たりの回転数は、20回転から90回転の範囲であることを特徴とする流動体移送装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の流動体移送装置において、
上記往復部材及び上記容積変化部を複数配置し、移送方向上流側の流路と、移送方向下流側の流路とをそれぞれ連結したことを特徴とする流動体移送装置。
【請求項6】
請求項5の流動体移送装置において、
上記容積変化部の容積を拡張させる一回分の拡張時間と圧縮させる一回分の圧縮時間との合計を一周期として、複数配置された該容積変化部の該拡張時間及び該圧縮時間は同じであり、
該一周期の時間を該容積変化部の数で分割した時間差分の位相差を設けて、各容積変化部材に対応した上記往復部材が往復運動することを特徴とすることを特徴とする流動体移送装置。
【請求項7】
請求項6の流動体移送装置において、
上記拡張時間は、上記位相差の時間よりも短く、上記一周期の12分の1の時間よりも長いことを特徴とする流動体移送装置。
【請求項8】
充填用の粉体を収納する粉体収納部内の該粉体を、粉体移送手段によって粉体容器に移送し、該粉体容器内に該粉体を充填する粉体充填装置において、
該粉体移送手段として、請求項1乃至7の何れか1項に記載の流動体移送装置を用いることを特徴とする粉体充填装置。
【請求項9】
請求項8の粉体充填装置において、
上記流動体移送装置の駆動を停止し、上記粉体容器に対する上記粉体の充填を停止する際には、上記容積変化部の容積を圧縮する圧縮工程の状態にあるタイミングで該流動体移送装置の駆動を停止し、
該容積変化部の容積を拡張する拡張工程の状態にあるタイミングでは該流動体移送装置の駆動を停止しないことを特徴とする粉体充填装置。
【請求項10】
往復部材が往復運動することにより容積が変化する容積変化部の容積を拡張することで、流動体を移送方向上流側から吸引し、該容積変化部の容積を圧縮することで吸引した該流動体を移送方向下流側へと圧送する流動体の移送方法において、
上記往復部材及び上記容積変化部を複数配置し、移送方向上流側の流路と、移送方向下流側の流路とをそれぞれ連結し、
該容積変化部の容積を拡張させる一回分の拡張時間と圧縮させる一回分の圧縮時間との合計を一周期として、複数並列配置された該容積変化部の該拡張時間及び該圧縮時間は同じであり、
該複数の往復部材の往復運動に位相差を設けたことを特徴とする流動体の移送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−233465(P2012−233465A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104617(P2011−104617)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】