説明

流動床ガス化炉及びその流動層監視・制御方法

【課題】流動床ガス化炉における層高や流動不良などの流動層状態を簡単に検出することができ、さらには局所的な流動不良の発生位置を特定することができる流動床ガス化炉及びその監視・制御方法を提案する。
【解決手段】廃棄物50を熱分解して熱分解ガス53を発生させる流動床ガス化炉1であって、炉下部に複数並設された風箱10a、10bを有し、該風箱を介して炉内に供給される燃焼空気51により流動砂を流動化させて流動層9を形成した流動床ガス化炉1において、流動床ガス化炉1の立ち上げ時に流動層9内に位置する少なくとも一の温度センサ23を含み、流動層の深さ方向に複数設置された温度センサからなる第1のセンサ群23、24、25と、風箱の並び方向に複数設置された温度センサからなる第2の温度センサ群21、24、22とを備え、温度センサ群から得られる温度分布から流動不良部位を特定する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物を熱分解して熱分解ガスを発生させ、該熱分解ガスの燃焼熱で灰分を溶融するガス化溶融システムにおける流動床ガス化炉に関し、特に、流動層の流動不良や層高などの流動層状態を監視でき、且つ流動不良が発生した場合にも速やかにこれを解消して流動の安定化を図るようにした流動床ガス化炉及びその流動層監視・制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、都市ごみを始めとして不燃ごみ、焼却残渣、汚泥、埋立ごみ等の廃棄物まで幅広く処理できる技術としてガス化溶融システムが知られている。ガス化溶融システムは、廃棄物を熱分解してガス化するガス化炉と、該ガス化炉の下流側に設けられ、ガス化炉にて生成された熱分解ガスを高温燃焼し、ガス中の灰分を溶融スラグ化する溶融炉と、該溶融炉から排出される排ガスを燃焼する二次燃焼室とを備えており、廃棄物の資源化、減容化及び無害化を図るために、溶融炉からスラグを取り出して路盤材等の土木資材として再利用したり、二次燃焼室から排出される排ガスから廃熱を回収して発電を行うなどしている(特許文献1等)。
【0003】
このようなガス化溶融システムのガス化炉には、流動床ガス化炉が多く用いられている。流動床ガス化炉は、炉底に燃焼空気の供給により流動媒体を流動化させた流動層が形成され、該流動層内に投入した廃棄物を部分燃焼させ、該燃焼熱により高温に維持される流動層内で廃棄物を熱分解する装置である。廃棄物中に混入した不燃物は、燃焼空気にて浮遊させ、炉底に設けられた不燃物排出口より排出するようになっている。
このように流動層は、炉下部からの燃焼空気の供給により流動媒体を流動させるとともに廃棄物の部分燃焼を促進し、流動層内の温度を維持する作用を担っており、均一な流動状態を安定的に維持することが重要である。
【0004】
特許文献2(特開平10−9511号公報)では、異なる2つの領域を有する流動層において、この2つの領域における流動化ガス(燃焼空気)の質量速度及び酸素含有量を異ならせ、流動層内に流動媒体の循環流を形成する構成を提案している。このように流動媒体を良好な流動状態とすることにより、熱を拡散させて高負荷運転を可能とし、また可燃物が炉の底部へ沈みすぎるのを防止するとともに熱分解ガスの上昇を促進し、且つ不燃物の排出を促すようにしている。
【0005】
また、流動層内の温度を適切に維持する技術として、特許文献3(特開2003−343823号公報)には、流動層内に温度検出器を設置し、該温度検出器により検出される流動層温度が設定値に一致するように流動化空気(燃焼空気)の供給量を制御する構成が開示されている。
さらに、特許文献4(特開2004−132667号公報)では、安定流動を確保し、温度制御を可能とした流動床ガス化溶融炉システムが提案されており、空気を窒素濃度が高い空気と酸素濃度が高い空気とに分離し、窒素濃度が高い空気を流動床ガス化炉に供給する構成とし、ガス化炉の燃焼を抑制しつつ流動化を維持するようにしている。また、温度計により層温度を検出し、温度が低下傾向にある場合には酸素濃度が高い空気を供給するようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−144402号公報
【特許文献2】特開平10−9511号公報
【特許文献3】特開2003−343823号公報
【特許文献4】特開2004−132667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、流動床ガス化炉では可燃分を含む熱分解ガスを安定的に発生させることが重要であり、そのため熱分解を行う流動層の状態を逐次監視し、これを良好な状態に保つ必要がある。即ち、ごみ質に応じた流動層の層高を保ち、流動不良が発生した場合にはこれを検出し、速やかに解消しなければならない。
特許文献1に記載されるガス化溶融システムにおいては、流動層の状態を検出する構成は備えておらず、また、特許文献2に記載される流動層ガス化方法では、流動不良や層高等の流動状態を検出する手段を備えていない。
【0008】
さらに、特許文献3及び特許文献4に記載される構成は流動層の温度を検出・制御するものであり、流動不良や層高等の流動層状態を正確に把握することは困難である。また、流動不良の原因の一つとして、流動化ガス(燃焼空気)を供給する散気管が廃棄物や不燃物などにより閉塞し、流動化に必要とされる量の流動化ガスが供給されず、局所的な流動不良を発生させることが考えられる。しかしながら、上記従来技術においてはこの流動不良発生部位を特定することが困難であり、このような局所的流動不良には対応できないのが実状である。
【0009】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、流動床ガス化炉における層高や流動不良などの流動層状態を簡単に且つリアルタイムで検出することができ、さらに局所的な流動不良の発生部位を特定することができる流動床ガス化炉及びその流動層監視・制御方法を提案することを目的とする。
また、流動層の局所的な流動不良が検出された場合には、この流動不良を速やかに解消して流動状態の安定化を図ることができる流動床ガス化炉及びその流動層監視・制御方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、廃棄物を熱分解して熱分解ガスを発生させる流動床ガス化炉であって、炉下部に複数並設された風箱を有し、該風箱を介して炉内に供給される燃焼空気により流動媒体を流動化させて流動層を形成した流動床ガス化炉において、
前記流動床ガス化炉の立ち上げ時に前記流動層内に位置する少なくとも一の温度センサを含み、前記流動層の深さ方向に複数設置された温度センサからなる第1のセンサ群と、
前記風箱の並び方向に複数設置された温度センサからなる第2の温度センサ群と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、流動層の深さ方向に設置された第1の温度センサ群により流動層の層高が容易に把握でき、また、風箱の並び方向に設置された第2の温度センサ群により、流動不良の発生部位が容易に特定できるため、簡単な構成で且つリアルタイムで流動層状態を把握することが可能となる。
また、第1の温度センサ群のうち少なくとも一の温度センサは、流動床ガス化炉の立ち上げ時に充填される流動層内に位置するようにしたため、立ち上げ時の流動化開始が適確に判断できる。これは、流動化開始後は流動化開始前よりも流動層温度が上昇するため、この温度変化を検出することにより流動化の開始を判断できるものである。尚、立ち上げ時には燃焼空気を供給しないこともあるため、立ち上げ時の流動層は静止状態の場合も含む。
さらに、第1の温度センサ群は流動層の深さ方向に設置されるため、深さ方向の温度分布から流動層の層高、流動状態が容易に把握できる。
【0012】
一方、第2の温度センサ群は、深さ方向の設置高さは略同一とし、風箱の並び方向に所定間隔を隔てて複数設置される。該第2の温度センサ群により流動層の水平断面における温度分布が得られ、この温度分布と定常運転時の温度分布を比較することにより、流動層の異常部位を検出する。例えば、温度分布の中で部分的に低温を示す位置では局所的な流動不良が発生しているものとみなす。これにより、簡単に且つリアルタイムで流動不良部位を特定することが可能となる。
尚、本発明において、流動床ガス化炉にて発生する熱分解ガスには、チャー(未燃炭素)、灰分を含むものとする。
【0013】
また、前記流動層を前記風箱の並び方向に3つの帯状領域に区分し、前記第2の温度センサ群は、夫々の帯状領域に少なくとも一の温度センサが配置されるようしたことを特徴とする。
このように、流動層を3つの帯状領域に区分し、夫々の領域の温度を検出する構成とすることにより、流動層全体の温度分布を効率良く把握することができるようになる。
【0014】
また、前記第2の温度センサ群により前記流動層の水平断面の温度分布を検出し、該検出した温度分布に基づき前記風箱への燃焼空気供給量を制御する風量制御手段を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、第2の温度センサ群にて得られる温度分布から流動不良部位を特定することができ、燃焼空気供給量の制御により流動不良を速やかに解消し、流動の安定化を図ることができる。
【0015】
さらに、前記第2の温度センサ群のうち少なくとも一の温度センサが、前記流動層に流動媒体が供給される際の該流動媒体の落下位置若しくは該落下位置近傍に設置されることを特徴とする。
流動床ガス化炉の流動層において最も流動不良が発生し易い部位は、流動媒体の落下位置近傍であると考えられる。従って本発明のごとく、流動媒体の落下位置若しくはこの近傍に第2の温度センサ群を配置することにより、流動不良の発生を確実に検出することが可能となる。
【0016】
さらにまた、前記流動層に流動媒体が供給される際の該流動媒体の落下位置を前記流動床ガス化炉の側壁に近接する位置とし、前記第1の温度センサ群が前記流動媒体の落下位置若しくは該落下位置近傍の深さ方向に設置されることを特徴とする。
このように、流動媒体の落下位置若しくはこの近傍に第1の温度センサ群を設置することにより、流動層の層高、流動不良を検出し易く、また流動層の中心付近は温度センサの設置が困難であるため、流動媒体の落下位置を側壁に近接する位置とすることにより温度センサの設置が容易となる。
【0017】
また、廃棄物を熱分解して熱分解ガスを発生させる流動床ガス化炉であって、該流動床ガス化炉の炉下部に複数並設された風箱を介して炉内に燃焼空気を供給し、該燃焼空気により流動媒体を流動化させて形成した流動層を監視・制御する方法において、
前記流動床ガス化炉の立ち上げ時に前記流動層内に位置する少なくとも一の温度センサを含み、前記流動層の深さ方向に複数設置された温度センサからなる第1のセンサ群により主として流動層の層高を検出し、
前記風箱の並び方向に複数設置された温度センサからなる第2の温度センサ群により流動層の水平断面の温度分布を検出し、該検出した温度分布に基づき流動不良部位を特定することを特徴とする。
【0018】
さらに、前記流動不良部位が特定された場合に、該流動不良部位の下方に位置する前記風箱への燃焼空気供給量を一時的に増大させることを特徴とする。
さらにまた、前記燃焼空気供給量を増大させた後、前記風箱内の圧力を検出し、該圧力が定常運転範囲内となったら前記増大した燃焼空気供給量を元に戻すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上記載のごとく本発明によれば、流動層内に第1の温度センサ群及び第2のセンサ群を設置することにより、立ち上げ時の流動化開始、流動層の層高、及び局所的な流動不良部位の特定が可能となり、流動床ガス化炉における流動層の状態を簡単に且つリアルタイムで検出することができる。さらに、流動不良部位が特定された場合には、風箱への燃焼空気供給量を制御することにより速やかに流動不良を解消し、流動状態の安定化を図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本発明の実施例に係る流動床ガス化炉の構成を示し、(a)は側断面図、(b)は(a)のX−X線断面図、図2はガス化溶融システムの概略を示す全体構成図である。
【0021】
まず、図2を参照して、本実施例に係るガス化溶融システムの概略構成を説明する。
廃棄物投入ホッパ30から投入された廃棄物50は、必要に応じて破砕、乾燥された後に給じん機31を介して流動床式ガス化炉1へ定量供給される。流動床ガス化炉1では、温度約120〜230℃、空気比0.2〜0.7程度の燃焼空気51が炉下部から風箱10を介して炉内に吹き込まれ、流動層温度が500〜650℃程度に維持されている。
廃棄物50は流動床ガス化炉1で熱分解ガス化され、ガス、タール、チャー(炭化物)に分解される。タールは、常温では液体となる成分であるが、ガス化炉内ではガス状で存在する。
チャーは流動層内で徐々に微粉化され、ガス及びタールに同伴して溶融設備32の旋回溶融炉33へ導入される。以下、旋回溶融炉33へ導入されるこれらの成分を総称して熱分解ガス53と呼ぶ。また、溶融設備32は、旋回溶融炉33と、旋回溶融炉33の上方に連結された二次燃焼室34と、該二次燃焼室34の下流側に連結されるボイラ部35と、から構成される。
【0022】
前記流動床ガス化炉1の炉頂部より排出された熱分解ガス53は、ライニングダクトを経て旋回溶融炉33の熱分解ガスバーナへ導入される。該熱分解ガスバーナで、熱分解ガス53は燃焼空気54と混合されて炉内に導入され、旋回流を形成する。このとき、燃焼空気は空気比0.9〜1.1、好ましくは1.0程度であると良い。
前記旋回溶融炉33では、熱分解ガス53と燃焼空気54の混合ガスが燃焼することにより炉内温度が1300〜1500℃に維持され、熱分解ガス53中の灰分が溶融、スラグ化される。溶融したスラグは、旋回溶融炉33の内壁面に付着、流下し、炉底部のスラグ出滓口から排出される。旋回溶融炉33から排出されたスラグは、水砕水槽36で急冷され、スラグコンベア37により搬出されて水砕スラグとして回収される。回収された水砕スラグは、路盤材等に有効利用することが可能である。
【0023】
一方、旋回溶融炉33から排出された燃焼排ガスは二次燃焼室34へ導入される。二次燃焼室34では、燃焼空気55が空気比1.2〜1.5となるように供給され、前記燃焼排ガス中の未燃分はここで完全燃焼される。
燃焼排ガスは、ボイラ部35で熱回収されて、200〜250℃程度まで冷却される。ボイラ部35から排出された燃焼排ガスは、減温塔38へ導入され、直接水噴霧により150℃程度まで冷却される。減温塔38から排出された燃焼排ガスは、必要に応じて煙道で消石灰、活性炭が噴霧され、反応集塵装置39に導入される。反応集塵装置39では、燃焼排ガス中の煤塵、酸性ガス、DXN類等が除去される。反応集塵装置39から排出された集塵灰は薬剤処理して埋立処分され、燃焼排ガスは蒸気式加熱器40で再加熱され、触媒反応装置41でNOが除去された後、誘引ファン42を介して煙突43より大気放出される。
【0024】
次に、本実施例の主要構成となる流動床ガス化炉につき、図1を参照して説明する。
図1(a)、(b)に示されるように、流動床ガス化炉1は、角筒状のガス化炉本体2を有し、該本体2の一側壁に廃棄物投入口3が設けられるとともに、該廃棄物投入口3と対面する側壁に配置された流動砂供給口6と、該流動砂供給口6に隣接して配置された助燃バーナ7とが設けられ、該側壁の下部には不燃物排出口5が設けられている。尚、ガス化炉本体2の形状、及び廃棄物供給口3、流動砂供給口6、助燃バーナ7の取り付け位置は上記した構成に限定されるものではない。
【0025】
ガス化炉本体2の底部8は、廃棄物供給口3側から不燃物排出口5側へ向けて下方に傾斜しており、該底部8には複数の散気管(不図示)が設けられている。
底部8の下方には複数の風箱10(10a、10b)が設けられている。該風箱10は、炉底8の傾斜方向に複数並設されている。本実施例では2つの風箱10a、10bが配置された構成を示す。各風箱10a、10bには、押し込みファン12により燃焼空気51が供給される。燃焼空気51は、好適には温度約120〜230℃、空気比0.2〜0.7程度とし、必要に応じて水蒸気を加えてもよい。
【0026】
風箱10a、10bへの燃焼空気流路上にはダンパ11a、11bが設置され、夫々のダンパ11a、11bの開度を調整することにより風箱10a、10bへの燃焼空気供給量(風量)を制御するようになっている。風箱10a、10bに供給された燃焼空気51は、炉底8の散気管から炉内に噴出するようになっている。ダンパ11a、11bにより設定される風箱10a、10bへの風量をF、Fとする。
風箱10a、10bには夫々風箱内圧力を検出する圧力センサ(不図示)が設けられている。風箱10aの圧力をP、風箱10bの圧力をPとする。
【0027】
ガス化炉本体2には、流動砂供給口6から供給された流動砂が充填され、風箱10を介して底部2から供給される燃焼空気51により該流動砂が流動化した流動層9が形成されている。稼動時の流動層9は、500〜650℃程度の温度に維持される。また、流動層の層高は、廃棄物の水分蒸発負荷に応じて設定される。尚、本実施例にて、流動床ガス化炉1の立ち上げ時には燃焼空気51を供給しないこともあるため、立ち上げ時の流動層9は静止状態の場合も含む。図1(a)において、立ち上げ時の流動層9の層高をH、稼動時の流動層9の層高をHで示す。
【0028】
流動床ガス化炉1の立ち上げ時には、予め流動砂供給口6から炉内に流動砂を供給し、少なくとも層高Hまで充填する。そして、起動バーナ7を着火して昇温を開始し、昇温しながら流動砂を追加供給していく。このとき、風箱10へ燃焼空気51の供給も開始する。最終的に、流動状態において所定の層高Hとなるまで流動砂を供給する。
稼動時の流動層9は流動状態にあり、投入した廃棄物50を該流動層9内で乾燥、熱分解する。流動層9の層高は、風箱10の圧力P、Pにより求められる。運転に伴い、流動砂が不燃物52とともに排出されたり、熱分解ガス53に同伴されて溶融設備側へ抜けたりすることがあるため層高が低下する場合がある。従って、風箱10の圧力値が所定値以下となったら流動砂を追加供給する。
【0029】
さらに本実施例の特徴的な構成として、立ち上げ時に流動層内に位置する少なくとも一の温度センサ23を含み、流動層9の深さ方向に設置された複数の温度センサ23、24、25からなる第1の温度センサ群と、風箱10の並び方向に設置された複数の温度センサ21、24、22からなる第2の温度センサ群と、を備えた構成となっている。温度センサとしては、熱電対等を用いることが好ましい。夫々の温度センサ21〜25により検出される温度をT〜Tで表す。好適には、第2の温度センサ群は、流動層9を風箱10の並び方向に3つの帯状領域に区分し、夫々の帯状領域に少なくとも一の温度センサが存在するように配設する。
【0030】
第1の温度センサ群のうち、立ち上げ時の流動層内に存在する温度センサ23は、主として立ち上げ時の流動化開始を検出する。これは、流動化開始後は流動化開始前よりも流動層温度が上昇するため、この温度変化を検出することにより流動化の開始を判断できるものである。
また、第1の温度センサ群23、24、25では、主として流動層9の層高及び深さ方向の流動状態を検出する。流動層9の層高は、上述したように風箱内圧でも検出可能であるが、散気管の閉塞等の流動化不良が生じた場合には風箱内圧から層高を求めることができない。従って、第1の温度センサ群でも同時に層高を検出することにより、正確な層高が得られるようになる。
【0031】
第2の温度センサ群21、24、22は、流動層9の深さ方向の設置高さは略同一とし、風箱10の並び方向に所定間隔を隔てて複数設置される。該第2の温度センサ群により流動層9の水平断面における温度分布が得られる。そして、この温度分布と定常運転時の温度分布を比較することにより局所的な流動不良を検出できる。例えば、得られた温度分布に部分的な低温箇所が存在する場合、この低温箇所に位置する流動層9が流動不良であると判断される。例えば、温度センサ24にて検出された温度Tが他の温度センサにて検出された温度T、Tより低い値を示した場合には、温度センサ24の近傍が局所的に流動不良を起こしていることがわかる。また、同様に第1の温度センサ群23、24、25においても、流動層の深さ方向の温度分布が得られるため、深さ方向の流動不良を検出することができる。
従って、第2の温度センサ群21、24、22を設置することにより、簡単に且つリアルタイムで流動不良部位を特定することが可能となる。
【0032】
このように、本実施例の構成によれば、流動層9の深さ方向に設置された第1の温度センサ群23、24、25により流動層9の層高及び流動状態を容易に把握でき、また、風箱10の並び方向に設置された第2の温度センサ群21、24、22により、流動不良の発生部位を容易に特定できるため、簡単な構成で且つリアルタイムで流動層状態を把握することが可能となる。
【0033】
さらに本実施例では、流動床ガス化炉1の定常運転時に局所的な流動不良が発生したことを検出した場合に、流動不良を解消する構成を有する。
流動不良の原因の一つとして、散気管の閉塞などにより圧力損失が大となり、流動化に必要とされる燃焼空気51が供給されないことが考えられる。
上記したごとく第2の温度センサにより流動不良部位が特定されたら、その下方に位置する風箱10の風量を定常運転時より増大させ、積極的に流動を生じさせる。図示されるように押し込みファン12とダンパ11a、11bにより燃焼空気供給機構を構成している場合には、ダンパ11a、11bの風量バランスを変える操作を行う。このように流動不良部位の風量を増大させることにより、閉塞物が吹き飛ばされて流動が回復する。
【0034】
流動が回復したか否かは、風箱10の圧力P若しくはPを見て確認することが好ましい。流動不良が発生している時には、その下方に位置する風箱10の圧力が定常運転時より高い値を示す。従って、回復動作を行いながら風箱圧力を検出し、該風箱圧力が低下したら流動が回復したものと判断する。流動が回復したら、風箱20への風量を定常運転時の値に戻すようにする。
また、流動の回復を検出せずに、風箱10の風量増大から所定時間経過後に風量を定常運転時の値に戻すようにしてもよい。
本構成によれば、流動不良が検出された場合であっても、風箱10への風量を制御することにより速やかに流動不良を解消し、流動状態の安定化を図ることが可能である。
【0035】
さらに、第1、第2の温度センサの配置例として、図1(b)に示されるように該第1の温度センサ23、24、25、若しくは第2の温度センサのうち少なくとも一の温度センサ24を、流動層9の流動不良多発域9bに設置するようにしてもよい。流動不良多発域9bは流動床ガス化炉1の構造等に起因するが、特に流動不良が発生し易い部位として、流動砂供給口6から供給される流動砂の落下位置9a若しくはその近傍が考えられる。従って、この範囲を流動不良多発域9bとして温度センサを配置することが好ましい。
さらにこのとき、流動砂供給口6をガス化炉本体2の一側壁に近接する位置に設けることが好ましく、これにより流動砂の落下位置9aが側壁に近い位置となり、温度センサの設置が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例に係る流動床ガス化炉の構成を示し、(a)は側断面図、(b)は(a)のX−X線断面図である。
【図2】ガス化溶融システムの概略を示す全体構成図である。
【符号の説明】
【0037】
1 流動床ガス化炉
2 ガス化炉本体
3 廃棄物供給口
6 流動砂供給口
8 炉底
9 流動層
9a 流動砂落下位置
9b 流動不良多発域
10、10a、10b 風箱
11a、11b ダンパ
12 押し込みファン
21〜25 温度センサ
32 溶融設備
33 旋回溶融炉
34 二次燃焼室
35 ボイラ
立ち上げ時層高
稼動時層高

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を熱分解して熱分解ガスを発生させる流動床ガス化炉であって、炉下部に複数並設された風箱を有し、該風箱を介して炉内に供給される燃焼空気により流動媒体を流動化させて流動層を形成した流動床ガス化炉において、
前記流動床ガス化炉の立ち上げ時に前記流動層内に位置する少なくとも一の温度センサを含み、前記流動層の深さ方向に複数設置された温度センサからなる第1のセンサ群と、
前記風箱の並び方向に複数設置された温度センサからなる第2の温度センサ群と、を備えたことを特徴とする流動床ガス化炉。
【請求項2】
前記流動層を前記風箱の並び方向に3つの帯状領域に区分し、前記第2の温度センサ群は、夫々の帯状領域に少なくとも一の温度センサが配置されるようしたことを特徴とする請求項1記載の流動床ガス化炉。
【請求項3】
前記第2の温度センサ群により前記流動層の水平断面の温度分布を検出し、該検出した温度分布に基づき前記風箱への燃焼空気供給量を制御する風量制御手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の流動床ガス化炉。
【請求項4】
前記第2の温度センサ群のうち少なくとも一の温度センサが、前記流動層に流動媒体が供給される際の該流動媒体の落下位置若しくは該落下位置近傍に設置されることを特徴とする請求項1記載の流動床ガス化炉。
【請求項5】
前記流動層に流動媒体が供給される際の該流動媒体の落下位置を前記流動床ガス化炉の側壁に近接する位置とし、前記第1の温度センサ群が前記流動媒体の落下位置若しくは該落下位置近傍の深さ方向に設置されることを特徴とする請求項1記載の流動床ガス化炉。
【請求項6】
廃棄物を熱分解して熱分解ガスを発生させる流動床ガス化炉であって、該流動床ガス化炉の炉下部に複数並設された風箱を介して炉内に燃焼空気を供給し、該燃焼空気により流動媒体を流動化させて形成した流動層を監視・制御する方法において、
前記流動床ガス化炉の立ち上げ時に前記流動層内に位置する少なくとも一の温度センサを含み、前記流動層の深さ方向に複数設置された温度センサからなる第1のセンサ群により主として流動層の層高を検出し、
前記風箱の並び方向に複数設置された温度センサからなる第2の温度センサ群により流動層の水平断面の温度分布を検出し、該検出した温度分布に基づき主として流動不良部位を特定することを特徴とする流動床ガス化炉の流動層監視・制御方法。
【請求項7】
前記流動不良部位が特定された場合に、該流動不良部位の下方に位置する前記風箱への燃焼空気供給量を一時的に増大させることを特徴とする請求項6記載の流動床ガス化炉の流動層監視・制御方法。
【請求項8】
前記燃焼空気供給量を増大させた後、前記風箱内の圧力を検出し、該圧力が定常運転範囲内となったら前記増大した燃焼空気供給量を元に戻すことを特徴とする請求項7記載の流動床ガス化炉の流動層監視・制御方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−271203(P2007−271203A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99147(P2006−99147)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】