説明

流量制御弁

【課題】弁体の作動安定性を向上しながらも、計量面の形状測定を可能とする弁体を備えた流量制御弁を提供する。
【解決手段】PCVバルブ40は、ケース42とバルブ体60とスプリング68とを備える。ケース42のガス通路50に形成された計量孔53と、バルブ体60の計量面62とにより計量部66が構成される。バルブ体60の軸方向の移動により流量を制御する。バルブ体60は、ガイド70,80を備える。前側のガイド70は、計量面62上に放射状に突出された複数のリブ部72により構成される。後側のガイド80は、バルブ体60の後端部に鍔状に形成されかつ切欠部84を有する鍔部63により構成される。切欠部84は、計量面62の形状測定に際して基準となる基準面84として形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流量を制御する流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両における内燃機関(エンジン)のブローバイガス還元装置には、ブローバイガスの流量を制御する流量制御弁としてPCV(Positive Crankcase Ventilation)バルブが用いられる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
PCVバルブの従来例(特許文献1参照)について説明する。図12はPCVバルブを示す断面図である。
図12に示すように、PCVバルブ1は、ケース2とバルブ体3とスプリング4とを備えている。ケース2には、軸方向(図12において左右方向)に延びる中空円筒状のガス通路5が設けられている。ガス通路5にはブローバイガスが流通する。また、バルブ体3は、ガス通路5内に軸方向に進退可能に設けられている。また、スプリング4は、ケース2とバルブ体3との間に介装されており、バルブ体3を後退方向(図12において右方)へ付勢している。ガス通路5の途中には、中空円筒状の計量孔5aが同心状に形成されている。また、バルブ体3には、先細りテーパ状の計量面3aが同心状に形成されている。計量孔5aと計量面3aとにより計量部6が構成されている。また、ケース2におけるガス通路5の計量部6よりも上流側の通路壁面5bは、中空円筒状に形成されている。
【0004】
PCVバルブ1は、バルブ体3の進退によって計量部6の通路断面積を調整することにより、ガス通路5を流れるブローバイガスの流量を制御すなわち計量する。また、バルブ体3の計量面3a上には、バルブ体3の軸方向に一直線状に延びる3個(図12では2個が表されている)のリブ7が放射状に形成されている。リブ7の外端面(バルブ体3の外周側に位置する端面)は、計量孔5aの内周面に摺動接触可能となっている。また、バルブ体3の後端部(図12において右端部)には、径方向外方へ張り出す3個(図12では2個が表されている)の突起8が放射状に形成されている。突起8の外端面(バルブ体3の外周側に位置する端面)は、ガス通路5の上流側の通路壁面5bに摺動接触可能となっている。したがって、バルブ体3の進退に際し、計量孔5aの内周面にリブ7が摺動接触するとともに、ガス通路5の上流側の通路壁面5bに突起8が摺動接触することによって、バルブ体3が軸方向にガイドされる。これにより、バルブ体3の径方向の振れが防止され、弁体の作動安定性が向上される。また、バルブ体3の周方向に隣り合う突起8の相互間の空間部によりブローバイガスが流通する開口部9が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−182939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来例によると、バルブ体3の計量面3a上に3個のリブ7が放射状に形成されているため、形状測定機を用いてバルブ体3の計量面3aの形状を確認する場合、形状測定機の測定針を計量面3aに沿ってバルブ体3の軸方向にトレースすることになる。しかし、バルブ体3の突起8の外端面は、ガス通路5の上流側の通路壁面5bに摺動接触する円弧面であるため、計量面3aの形状測定に際して基準となる基準面にならない。このため、計量面3aの形状を確認することが困難であった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、弁体の作動安定性を向上しながらも、計量面の形状測定を可能とする弁体を備えた流量制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とする流量制御弁により解決することができる。
請求項1に記載された流量制御弁によると、中空円筒状の流体通路を設けたケースと、流体通路内に軸方向に進退可能に設けた弁体と、弁体を後退方向へ付勢するスプリングとを備え、流体通路の途中に形成された中空円筒状の計量孔と、弁体の外周面に形成された先細りテーパ状の計量面とにより計量部が構成され、弁体の軸方向の移動によって計量部の通路断面積を調整することにより流体の流量を制御する流量制御弁であって、弁体は、前側のガイド及び後側のガイドを備え、前側のガイドは、弁体の計量面上に放射状に突出されかつ計量孔の内周面に対して摺動接触する摺動面を有する複数のリブ部により構成され、後側のガイドは、弁体の後端部に鍔状に形成されかつ流体通路の計量孔よりも上流側の通路壁面に対して摺動接触する摺動面及びその通路壁面との間に流体が流通する開口部を形成する切欠部とを有する鍔部により構成され、切欠部には、計量面の形状測定に際して基準となる基準面が形成され、計量面と基準面とは、弁体の正面視において弁体の径方向に関して少なくとも一部が重複するように配置されている。この構成によると、弁体の進退に際し、ケースの計量孔の内周面に前側のガイドのリブ部の摺動面が摺動接触するとともに、流体通路の上流側の通路壁面に後側のガイドの鍔部の摺動面が摺動接触することによって、弁体が軸方向にガイドされる。これにより、弁体の径方向の振れを防止し、弁体の作動安定性を向上することができる。また、切欠部には、計量面の形状測定に際して基準となる基準面が形成され、計量面と基準面とは、弁体の正面視において弁体の径方向に関して少なくとも一部が重複するように配置されているため、基準面を基準として弁体の計量面の形状測定を行うことができる。したがって、計量面の形状測定を可能とする弁体を備えた流量制御弁を提供することができる。
【0009】
請求項2に記載された流量制御弁によると、リブ部の摺動面と鍔部の摺動面とは、弁体の正面視において弁体の径方向に関して少なくとも一部が重複するように配置されている。この構成によると、弁体の作動安定性を向上することができる。
【0010】
請求項3に記載された流量制御弁によると、基準面は、弁体の軸線に対して平行な平面である。この構成によると、弁体の軸線に対して平行な平面を基準面とすることができる。このため、形状測定(トレース)時の傾きの補正を容易に行うことができる。
【0011】
請求項4に記載された流量制御弁によると、鍔部は、基準面が形成された切欠部を複数有する。この構成によると、複数の基準面を基準として弁体の複数の計量面の形状測定を行うことができる。
【0012】
請求項5に記載された流量制御弁によると、リブ部は、弁体の周方向に等間隔で配置されている。この構成によると、弁体の作動安定性を向上することができる。
【0013】
請求項6に記載された流量制御弁によると、基準面は、弁体の周方向に等間隔で配置されている。
【0014】
請求項7に記載された流量制御弁によると、リブ部と基準面との個数は同じである。
【0015】
請求項8に記載された流量制御弁によると、リブ部と基準面との個数は3個である。
【0016】
請求項9に記載された流量制御弁によると、内燃機関のブローバイガス還元装置に用いられるPCVバルブである。この構成によると、弁体の作動安定性を向上しながらも、計量面の形状測定を可能とする弁体を備えたPCVバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態にかかるPCVバルブを示す断面図である。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】図1のIII−III線矢視断面図である。
【図4】バルブ体を示す斜視図である。
【図5】バルブ体を示す正面図である。
【図6】バルブ体を示す側面図である。
【図7】ブローバイガス還元装置を示す構成図である。
【図8】形状測定機にバルブ体をセットした状態を示す側面図である。
【図9】形状測定機の測定針のトレース開始状態を示す側面図である。
【図10】バルブ体の計量面の測定したトレース線を示す図である。
【図11】バルブ体の計量面の測定したトレース線の傾きを補正したトレース線を示す図である。
【図12】従来例にかかるPCVバルブを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための一実施形態について図面を用いて説明する。本実施形態では、流量制御弁として、内燃機関のブローバイガス還元装置に用いられるPCVバルブを例示する。説明の都合上、ブローバイガス還元装置の一例を説明した後でPCVバルブについて説明する。なお、図7はブローバイガス還元装置を示す構成図である。
図7に示すように、ブローバイガス還元装置10は、内燃機関であるエンジン12のエンジン本体13の燃焼室からシリンダブロック14のクランクケース15内に洩れたブローバイガスをインテークマニホールド20内に導入することにより、燃焼室で再び燃焼させるシステムである。
【0019】
前記エンジン本体13は、前記シリンダブロック14と、前記クランクケース15の下面側に締結されたオイルパン16と、シリンダブロック14の上面側に締結されたシリンダヘッド17と、シリンダヘッド17の上面側に締結されたシリンダヘッドカバー18とを備えている。エンジン本体13は、吸気、圧縮、爆発、排気といった行程を経ることにより駆動力を得る。また、エンジン本体13の燃焼室(図示しない。)内での燃焼にともない、エンジン本体13内すなわちクランクケース15内や、そのクランクケース15内に連通するシリンダヘッドカバー18内にはブローバイガスが発生する。また、ブローバイガスが流入するシリンダヘッドカバー18内及びクランクケース15内等は、本明細書でいう「エンジン本体内」に相当する。
【0020】
前記シリンダヘッドカバー18には、新気導入口18a及びブローバイガス取出口18bが設けられている。新気導入口18aに、新気導入通路30の一端(下流端)が連通されている。また、ブローバイガス取出口18bに、ブローバイガス通路36の一端(上流端)が連通されている。なお、新気導入口18a及び/又はブローバイガス取出口18bは、シリンダヘッドカバー18に代えてクランクケース15に設けることもできる。
【0021】
前記シリンダヘッド17には、インテークマニホールド20の一端(下流端)が連通されている。インテークマニホールド20はサージタンク21を備えている。インテークマニホールド20の他端(上流端)には、スロットルボデー24及び吸気管路23を介してエアクリーナ25が連通されている。スロットルボデー24は、スロットル弁24aを備えている。スロットル弁24aは、例えばアクセルペダル(図示しない)に連繋されており、そのペダルの踏込み量(操作量)に応じて開閉される。また、エアクリーナ25は、空気いわゆる新気を導入するもので、その新気をろ過するフィルタエレメント26を内蔵している。エアクリーナ25、吸気管路23、スロットルボデー24及びインテークマニホールド20により、新気すなわち吸入空気をエンジン本体13の燃焼室に導入するための一連の吸気通路27が形成されている。吸気通路27において、スロットル弁24aよりも上流側の通路部分を上流側の吸気通路部27aといい、スロットル弁24aよりも下流側の通路部分を下流側の吸気通路部27bという。
【0022】
前記吸気管路23には新気取入口29が形成されている。新気取入口29には、前記新気導入通路30の他端(上流端)が連通されている。新気導入通路30には逆流防止弁32が設けられている。逆流防止弁32は、前記上流側の吸気通路部27aからクランクケース15内への空気いわゆる新気の流れ(図7中、矢印Y1参照)を許容し、かつ、その逆方向への流れすなわち逆流(図7中、矢印Y3参照)を阻止する。また、前記サージタンク21にはブローバイガス導入口34が形成されている。ブローバイガス導入口34には、前記ブローバイガス通路36の他端(下流端)が連通されている。なお、逆流防止弁32は、必要に応じて設けられるものであり、省略することもできる。
【0023】
次に、前記ブローバイガス還元装置10の作動について説明する。エンジン12の軽、中負荷時においては、スロットル弁24aがほぼ全閉に近い状態にある。このため、吸気通路27の下流側の吸気通路部27bに上流側の吸気通路部27aより大きな負圧(真空側に大きくなる負圧)が発生する。したがって、エンジン本体13内のブローバイガスが、ブローバイガス通路36を通じて下流側の吸気通路部27bに導入される(図7中、矢印Y2参照)。このとき、ブローバイガス通路36を流れるブローバイガスの流量がPCVバルブ40(後述する)によって制御される。
【0024】
また、ブローバイガスがエンジン本体13内からブローバイガス通路36を通じて下流側の吸気通路部27bに導入されるにともない逆流防止弁32が開弁する。これにより、吸気通路27の上流側の吸気通路部27aの新気が、新気導入通路30を通じてエンジン本体13内に導入される(図7中、矢印Y1参照)。そして、エンジン本体13内に導入された新気は、ブローバイガスとともにブローバイガス通路36を通じて下流側の吸気通路部27bに導入される(図7中、矢印Y2参照)。上記のようにして、エンジン本体13内が掃気される。
【0025】
また、エンジン12の高負荷においては、スロットル弁24aの開度が大きくなる。したがって、吸気通路27の下流側の吸気通路部27bの圧力が大気圧に近づく。したがって、エンジン本体13内のブローバイガスが下流側の吸気通路部27b内に導入されにくくなり、エンジン本体13内の圧力も大気圧に近づく。このため、上流側の吸気通路部27aから新気導入通路30を通ってエンジン本体13内に導入される新気の流量も減少する。また、逆流防止弁32の閉弁によって、エンジン本体13内から新気導入通路30へのブローバイガスの逆流(図7中、矢印Y3参照)が阻止される。
【0026】
前記ブローバイガス通路36には、ブローバイガスの流量を制御するための流量制御弁としてのPCVバルブ40が設けられている。PCVバルブ40は、ブローバイガスの上流側圧力と下流側圧力との差圧に応じてブローバイガスの流量を制御すなわち計量することによって、エンジンで発生するブローバイガス量に見合ったブローバイガス流量を流すことができる。
【0027】
次に、PCVバルブ40について説明する。図1はPCVバルブを示す断面図、図2は図1のII−II線矢視断面図、図3は図1のIII−III線矢視断面図である。なお、説明の都合上、図1の左側を前側とし、その右側を後側として説明を行う。
図1に示すように、PCVバルブ40のケース42は、例えば樹脂製で、中空円筒状に形成されている。ケース42内の中空部は、軸方向(図1において左右方向)に延びるガス通路50となっている。また、ケース42の後端部(図1において右端部)は、前記ブローバイガス通路36(図3参照)の上流側の通路部に接続される。また、ケース42の前端部(図1において左端部)は、ブローバイガス通路36の下流側の通路部に接続される。また、ケース42の後端部は、前記シリンダヘッドカバー18のブローバイガス取出口18b(図3参照)に接続される場合もある。ガス通路50には、流体であるブローバイガスが流れる。なお、ガス通路50は本明細書でいう「流体通路」に相当する。
【0028】
前記ケース42は、軸方向(前後方向)に二分割された前後一対のケース半体42a,42bを相互に接合することによって構成されている。前側のケース半体42aの後部側中央部には、径方向内方へフランジ状に突出するバルブシート部43が同心状に形成されている。バルブシート部43の後側面には段付面43aが形成されている。また、後側のケース半体42b内すなわちガス通路50のガス流入側(図1において右側)には、中空円筒状の上流側の通路壁面45が形成されている。上流側の通路壁面45内が上流側の通路部52となっている。また、前側のケース半体42aのバルブシート部43よりも前側すなわちガス流出側(図1において左側)には、中空円筒状の下流側の通路壁面47が形成されている。下流側の通路壁面47内が下流側の通路部54となっている。また、バルブシート部43内の中空円筒状の孔は、上流側の通路部52と下流側の通路部54とを同心状に連通する計量孔53となっている。また、後側のケース半体42bの後端部には、上流側の通路壁面45よりも径方向内方へフランジ状に突出する絞り壁部48が同心状に形成されている。絞り壁部48内の円形の中空孔部は、ガス通路50(詳しくは上流側の通路部52)の入口51となっている。
【0029】
前記ケース42内すなわちガス通路50には、バルブ体60が軸方向(図1において左右方向)に進退可能すなわち軸方向に移動可能に配置されている。バルブ体60は、例えば樹脂製で、ほぼ円柱状のバルブ本体部61を主体として形成されている。バルブ本体部61の前部(図1において左部)の外周面には、先細りのテーパ状をなす計量面62が同心状に形成されている。本実施形態では、計量面62が大径側(図1において右側)から小径側(同、左側)に向かって計4段の計量面部62a〜62dを有する段付きテーパ状に形成されている。なお、各計量面部62a〜62dのテーパ角は適宜設定されるものであり、大径側を除いた計量面部62b〜62dのうち1つ又は2つの計量面部についてはストレート面とされる場合もある。
【0030】
前記バルブ本体部61の前端部(先端部)は、ガス通路50の上流側の通路部52側から計量孔53内に挿通されている。また、計量孔53(詳しくは内周面)とバルブ体60の計量面62とにより計量部66が構成されている。したがって、バルブ体60が後退(図1において右方へ移動)するにともなって計量部66の有効開口面積すなわち通路断面積が増大される。また逆に、バルブ体60が前進(図1において左方へ移動)するにともなって計量部66の通路断面積が減少される。また、バルブ本体部61の後端部(図1において右端部)には、径方向外方へ突出する鍔状の鍔部63が同心状に形成されている。なお、バルブ体60は本明細書でいう「弁体」に相当する。
【0031】
前記ケース42と前記バルブ体60との間には、圧縮コイルスプリングからなるスプリング68が介装されている。スプリング68は、バルブ体60のバルブ本体部61に嵌合されている。また、スプリング68の前端部(詳しくは座巻部)は、前記バルブシート部43の段付面43aに係止されている。また、スプリング68の後端部(詳しくは座巻部)は、バルブ体60の鍔部63の前側端面63aに係止されている。スプリング68は、常にバルブ体60を後退方向(図1において右方)すなわち計量部66の通路断面積が増大する方向へ付勢している。なお、バルブ体60の後退時には、最後退位置において鍔部63がケース42の後側のケース半体42bの絞り壁部48に当接する。
【0032】
前記バルブ体60は、前側のガイド70及び後側のガイド80を備えている。図4はバルブ体を示す斜視図、図5は同じく正面図、図6は同じく側面図である。
図4〜図6に示すように、前側のガイド70は、前記バルブ体60の計量面62上に放射状に突出された複数(本実施形態では3個)のリブ部72により構成されている。リブ部72の外端面(バルブ体60の外周側に位置する端面)は、摺動面72aとなっている。摺動面72aは、前記計量孔53(図2参照)の内周面に対して摺動接触可能となっている。リブ部72の摺動面72aは、バルブ本体部61の外周面とほぼ同一面をなしている。また、リブ部72は、バルブ体60の軸方向に沿って直線状に延びている。また、リブ部72は、バルブ体60の周方向に等間隔すなわち120°間隔で配置されている(図5参照)。また、リブ部72の設定にともない、計量面62及び計量部66はバルブ体60の径方向に3分割される。
【0033】
前記後側のガイド80は、前記鍔部63(詳しくは外周部)により構成されている。鍔部63の外周面には、複数(本実施形態では3個)の摺動面82及び複数(本実施形態では3個)の切欠部84とを有する。摺動面82と切欠部84は、鍔部63の周方向に交互に形成されている。また、摺動面82は、バルブ体60の周方向に等間隔すなわち120°間隔で配置されている。また、切欠部84は、バルブ体60の周方向に等間隔すなわち120°間隔で配置されている。また、本実施形態では、鍔部63の周方向に隣り合う摺動面82の間に切欠部84が形成されている。また、摺動面82は、前記上流側の通路壁面45(図3参照)に対して摺動接触可能となっている。また、切欠部84と上流側の通路壁面45との間には、ブローバイガスが流通する開口部90(図3参照)が形成されている。
【0034】
前記切欠部84は、バルブ体60の軸線60Lに対して平行な平面で形成されており、切欠部84自体が前記計量面62の形状測定に際して基準となる基準面(切欠部と同一符号を付す)84となっている(図5参照)。また、基準面84は、バルブ体60の接線方向に延びている。すなわち、基準面84は、バルブ体60の軸線60Lを通りかつ周方向に隣り合う摺動面82の相互間を二分する直線に対して直交する平面で形成されている。また、前記計量面62と基準面84とは、バルブ体60の正面視(図5参照)においてバルブ体60の径方向に関して少なくとも一部が重複するように配置されている。本実施形態では、バルブ体60の正面視(図5参照)においてバルブ体60の径方向に関して計量面62が基準面84に対して全面的に重複している。また、前記リブ部72と前記基準面84との個数は3個で同じである。また、リブ部72の摺動面72aと鍔部63の摺動面82とは、バルブ体60の正面視(図5参照)においてバルブ体60の径方向に関して重複するように配置されている。本実施形態では、バルブ体60の正面視(図5参照)においてバルブ体60の径方向に関して摺動面72aが摺動面82に対して全面的に重複している。
【0035】
次に、前記したPCVバルブ40(図1参照)の作動について説明する。ケース42内のガス通路50の上流側の通路部52よりも下流側の通路部54が低圧(負圧)になると、ブローバイガスが、入口51から上流側の通路部52内に流入した後、鍔部63の切欠部84による開口部90、計量部66、下流側の通路部54を通って流出する。このとき、上流側の通路部52の上流側圧力と下流側の通路部54の下流側圧力(スプリング68の付勢力を含む)との差圧に応じて、バルブ体60が進退(軸方向に移動)する。これにより、ガス通路50を流れるブローバイガスの流量が制御すなわち計量される。詳しくは、上流側圧力が下流側圧力より大きくかつ上流側圧力と下流側圧力との差圧が大きいときには、バルブ体60がコイルスプリング68の付勢力に抗して前進されることにより、計量部66の通路断面積が減少されるため、ブローバイガスの流量が少なくなる。また、上流側圧力と下流側圧力との差圧が小さくなると、バルブ体60がスプリング68の付勢力により後退されることにより、計量部66の通路断面積が増大されるため、ブローバイガスの流量が多くなる。このように、計量部66の通路断面積が増減されることにより、ガス通路50を流れるブローバイガスの流量が制御される。
【0036】
また、バルブ体60の進退に際し、ケース42の計量孔53の内周面に前側のガイド70の各リブ部72の摺動面72aが摺動接触するとともに、ガス通路50の上流側の通路壁面45に後側のガイド80の鍔部63の各摺動面82が摺動接触する(図2及び図3参照)。これによって、バルブ体60が軸方向にガイドされる。
【0037】
次に、前記バルブ体60の計量面62の形状を確認する際の形状測定方法の一例を説明する。図8は形状測定機にバルブ体をセットした状態を示す側面図、図9は形状測定機の測定針のトレース開始状態を示す側面図、図10はバルブ体の計量面の測定したトレース線を示す図、図11はバルブ体の計量面の測定したトレース線の傾きを補正したトレース線を示す図である。
図8に示すように、例えば接触(触針式)式の形状測定機のテーブル100上にVブロック102が設置されている。Vブロック102にバルブ体60をセットする。このとき、バルブ体60は、鍔部63(後側のガイド80を含む)の測定したい側の計量面62及び基準面84を上向きとし、バルブ体60の後端面をVブロック102の一方の基準支持面102aに面接触状に当接させることにより、テーブル100の上面すなわち基準平面100aに対して所定の傾斜角θで傾斜した状態とされる。なお、バルブ本体部61の後端面を基準支持面102aに両面テープを介して接着するとよい。
【0038】
次に、図9に示すように、バルブ体60の基準面84上に形状測定機の測定針104を載せる。そして、測定針104を測定トレース線T1に沿って、バルブ体60の測定方向である軸方向(図9中、矢印参照)に走査させることにより、基準面84及び計量面62を含むバルブ体60の表面形状を検出し、その表面形状のトレース線T2(図10参照)のデータを得る。なお、バルブ体60を傾斜状態として測定針104を移動させることにより、鍔部63における基準面84と計量面62との間の前側端面63aに沿って測定針104をスムーズに移動させることができる。すなわち、バルブ体60の計量面62を、該計量面62に対応する基準面84から鍔部63の前側端面63aを介して計量面62の先端部に至るまで、測定針104を連続的に走査させることができる。
【0039】
次に、形状測定機の演算処理部(図示省略)において、前記トレース線T2のデータに基づいて、前記傾斜角θ分の傾きの補正を行い、水平を基準としたトレース線T3のデータを得る(図11参照)。そして、トレース線T3のデータに基づいて、設計上の基準トレース線のデータと比較することにより、合致度の確認を行い、その確認結果を表示部(図示省略)に表示する。なお、確認結果が許容値を超えた場合には、例えば樹脂製のバルブ体60であれば成形型の成形面を修正したり、あるいは、金属製のバルブ体60であれば工作機械のNCプログラムを変更したりする。また、残りの計量面62についても、前記と同様にして測定することができる。また、形状測定機は、接触式に限らず、非接触式のものを用いてもよく、バルブ体60の計量面62を測定できるものであればよい。
【0040】
前記したPCVバルブ40によると、バルブ体60の進退に際し、ケース42の計量孔53の内周面に前側のガイド70のリブ部72の摺動面72aが摺動接触するとともに、ガス通路50の上流側の通路壁面45に後側のガイド80の鍔部63の摺動面82が摺動接触することによって、バルブ体60が軸方向にガイドされる。これにより、バルブ体60の径方向の振れを防止し、バルブ体60の作動安定性を向上することができる。
【0041】
また、切欠部84は、計量面62の形状測定に際して基準となる基準面84として形成され、計量面62と基準面84とは、バルブ体60の正面視(図5参照)においてバルブ体60の径方向に関して少なくとも一部が重複するように配置されている。このため、基準面84を基準としてバルブ体60の計量面62の形状測定を行うことができる。したがって、計量面62の形状測定を可能とするバルブ体60を備えたPCVバルブ40を提供することができる。
【0042】
また、リブ部72の摺動面72aと鍔部63の摺動面82とは、バルブ体60の正面視(図5参照)においてバルブ体60の径方向に関して少なくとも一部が重複するように配置されている。したがって、バルブ体60の作動安定性を向上することができる。
【0043】
また、基準面84は、バルブ体60の軸線60Lに対して平行な平面である。したがって、バルブ体60の軸線60Lに対して平行な平面を基準面84とすることができる。このため、形状測定(トレース)時の傾きの補正を容易に行うことができる。
【0044】
また、鍔部63は、基準面84が形成された切欠部84を複数(本実施形態では3個)有する。したがって、複数の基準面84を基準としてバルブ体60の複数の計量面62の形状測定を行うことができる。
【0045】
また、リブ部72は、バルブ体60の周方向に等間隔で配置されている。したがって、バルブ体60の作動安定性を向上することができる。
【0046】
また、エンジン12のブローバイガス還元装置10(図7参照)に用いられるPCVバルブ40である。したがって、バルブ体60の作動安定性を向上しながらも、計量面62の形状測定を可能とするバルブ体60を備えたPCVバルブ40を提供することができる。
【0047】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本発明は、PCVバルブ40に限らず、ブローバイガス以外の流体の流量を制御する流量制御弁としても適用することもできる。また、実施形態では、バルブ体60の正面視において、リブ部72の摺動面72aと鍔部63の摺動面82とがバルブ体60の径方向に関して少なくとも一部が重複するように配置したが、重複しないように配置してもよい。また、実施形態では、基準面84をバルブ体60の軸線60Lに対し平行な平面としたが、計量面62の形状測定に際して基準となる平面であればよく、基準面84をバルブ体60の軸線60Lに対して所定の角度で傾斜する平面としてもよい。また、実施形態では、基準面84をバルブ体60の接線方向に延びる平面としたが、基準面84をバルブ体60の接線方向に対して所定の角度で傾斜する平面としてもよい。また、鍔部63の切欠部84は、実施形態の3個に限らず、1個又は2個以上としてもよい。また、実施形態では、切欠部84を基準面84として形成したが、切欠部の一部に基準面を形成してもよい。例えば、凹溝状の切欠部の溝底部に基準面を形成することもできる。また、実施形態では、リブ部72をバルブ体60の周方向に等間隔で配置したが、リブ部72をバルブ体60の周方向に不等間隔で配置してもよい。また、実施形態では、基準面84をバルブ体60の周方向に等間隔で配置したが、基準面84をバルブ体60の周方向に不等間隔で配置してもよい。また、リブ部72と基準面84との個数は、実施形態では同じ3個としたが、異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0048】
10…ブローバイガス還元装置
12…エンジン(内燃機関)
40…PCVバルブ(流量制御弁)
42…ケース
50…ガス通路(流体通路)
53…計量孔
60…バルブ体(弁体)
62…計量面
66…計量部
68…スプリング
70…前側のガイド
72…リブ部
72a…摺動面
80…後側のガイド
82…摺動面
84…切欠部(基準面)
90…開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒状の流体通路を設けたケースと、前記流体通路内に軸方向に進退可能に設けた弁体と、前記弁体を後退方向へ付勢するスプリングとを備え、
前記流体通路の途中に形成された中空円筒状の計量孔と、前記弁体の外周面に形成された先細りテーパ状の計量面とにより計量部が構成され、
前記弁体の軸方向の移動によって前記計量部の通路断面積を調整することにより流体の流量を制御する流量制御弁であって、
前記弁体は、前側のガイド及び後側のガイドを備え、
前記前側のガイドは、前記弁体の計量面上に放射状に突出されかつ前記計量孔の内周面に対して摺動接触する摺動面を有する複数のリブ部により構成され、
前記後側のガイドは、前記弁体の後端部に鍔状に形成されかつ前記流体通路の計量孔よりも上流側の通路壁面に対して摺動接触する摺動面及びその通路壁面との間に流体が流通する開口部を形成する切欠部とを有する鍔部により構成され、
前記切欠部には、前記計量面の形状測定に際して基準となる基準面が形成され、
前記計量面と前記基準面とは、前記弁体の正面視において該弁体の径方向に関して少なくとも一部が重複するように配置されている
ことを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
請求項1に記載の流量制御弁であって、
前記リブ部の摺動面と前記鍔部の摺動面とは、前記弁体の正面視において該弁体の径方向に関して少なくとも一部が重複するように配置されていることを特徴とする流量制御弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流量制御弁であって、
前記基準面は、前記弁体の軸線に対して平行な平面であることを特徴とする流量制御弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載に記載の流量制御弁であって、
前記鍔部は、前記基準面が形成された前記切欠部を複数有することを特徴とする流量制御弁。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の流量制御弁であって、
前記リブ部は、前記弁体の周方向に等間隔で配置されていることを特徴とする流量制御弁。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の流量制御弁であって、
前記基準面は、前記弁体の周方向に等間隔で配置されていることを特徴とする流量制御弁。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1つに記載の流量制御弁であって、
前記リブ部と前記基準面との個数は同じであることを特徴とする流量制御弁。
【請求項8】
請求項7に記載の流量制御弁であって、
前記リブ部と前記基準面との個数は3個であることを特徴とする流量制御弁。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の流量制御弁であって、
内燃機関のブローバイガス還元装置に用いられるPCVバルブであることを特徴とする流量制御弁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−83295(P2013−83295A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222963(P2011−222963)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【Fターム(参考)】