説明

海水排煙脱硫システムおよび発電システム

【課題】排ガスの脱硫率の調整を容易に行うことができる海水排煙脱硫システムおよび発電システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る海水排煙脱硫システム10は、排ガス25と海水21aとを気液接触して排ガス25を洗浄する排煙脱硫吸収塔11と、排煙脱硫吸収塔11の後流側に設けられ、硫黄分を含んだ硫黄分吸収海水27を海水21bと希釈混合する希釈混合槽12と、海水21aを排煙脱硫吸収塔11に供給する海水供給ラインL12と、排煙脱硫吸収塔11の塔内と塔外との何れか一方または両方で海水供給ラインL12から分岐し、海水21aを希釈混合槽12に供給する余剰海水分岐配管L21、L22とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭焚き、原油焚き及び重油焚き等の工業燃焼設備等から排出される排ガス中の硫黄酸化物を、海水を用いて脱硫する海水排煙脱硫システムおよび発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭や原油等を燃料とする発電プラントにおいて、石炭等の化石燃料を燃焼することでボイラから排出される燃焼排気ガス(以下、「排ガス」と呼ぶ)には硫黄酸化物(SOx)など硫黄分が含まれる。そのため、排ガスは、脱硫処理され、排ガス中に含まれている二酸化硫黄(SO2)等のSOxを除去してから大気に放出される。このような脱硫処理方法として、石灰石石膏法、スプレードライヤー法及び海水法等がある。
【0003】
発電所などは大量の冷却水を必要とするため海に面した場所に建設される場合が多い。そのため、脱硫処理に要する稼動コストを抑えることなどの観点から、海水を排ガス中の硫黄酸化物を吸収する吸収液として利用して脱硫を行う海水脱硫を用いた海水排煙脱硫装置が提案されている。
【0004】
海水排煙脱硫装置は、略円筒のような筒形状又は角形状を縦置きにした脱硫塔(吸収塔)の内部に海水及びボイラ排ガスを供給し、海水を吸収液として気液接触させることでSOxを除去している。脱硫塔内で吸収剤として使用した脱硫後の海水(硫黄分吸収海水)は、たとえば、上部が開放された長い水路(Seawater Oxidation Treatment System;SOTS)内を流れ、海水と混合して希釈されて排出される。硫黄分吸収海水は、水路の一部の底面に設置したエアレーション装置から流出される微細気泡によって脱炭酸(爆気)される(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0005】
海水排煙脱硫装置では、海水を用いて脱硫を行う場合、脱硫塔内に供給される排ガスと脱硫塔の外部に排出される排ガスとの比から求められる排ガスの脱硫率は、所定値(例えば、90%程度)となるように調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−055779号公報
【特許文献2】特開2009−028570号公報
【特許文献3】特開2009−028572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
海水を用いて脱硫を行う場合、海水のアルカリ度、海水温度、海水のpH、脱硫した海水中に含まれる硫酸イオン(SO42-)濃度などの海水性状に応じて、排ガスの脱硫率が所定値(例えば、90%程度)よりも高くなる場合がある。
【0008】
海水を脱硫塔内に供給する際、海水の供給量の調整はポンプを運転する台数を変更して制御を行なうようにしているため、脱硫塔内に供給する海水の供給量の微調整は困難である。そのため、排ガスの脱硫率が所定値よりも高くなった場合、排ガスの脱硫率の微調整が困難である、という問題がある。
【0009】
本発明は、前記課題に鑑み、排ガスの脱硫率の調整を容易に行うことができる海水排煙脱硫システムおよび発電システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、排ガスと海水とを気液接触して前記排ガスを洗浄する排煙脱硫吸収塔と、前記排煙脱硫吸収塔の後流側に設けられ、硫黄分を含んだ硫黄分吸収海水を希釈用の海水と希釈混合する希釈混合槽と、前記海水を前記排煙脱硫吸収塔に供給する海水供給ラインと、前記排煙脱硫吸収塔の塔内と塔外との何れか一方または両方で前記海水供給ラインから分岐し、前記海水の一部を前記排煙脱硫吸収塔の塔底部又は前記希釈混合槽のいずれか一方又は両方に供給する余剰海水分岐配管と、前記余剰海水分岐配管に設置された余剰海水分岐量を調節する調節弁と、を有することを特徴とする海水排煙脱硫システムである。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記余剰海水分岐配管の分岐部は、前記海水供給ラインに設けられる海水送給ポンプの後流側に設けられることを特徴とする海水排煙脱硫システムである。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記排煙脱硫吸収塔における脱硫率を算出して得られた脱硫率に基づいて、前記排煙脱硫吸収塔内に前記海水を噴霧する噴霧ノズルからの海水の噴霧量を算出し、前記余剰海水分岐配管に設置された調節弁の開度を調整することで、前記海水の噴霧量を調節することを特徴とする海水排煙脱硫システムである。
【0013】
第4の発明は、第1から第3の何れか1つの発明において、前前記排煙脱硫吸収塔、前記希釈混合槽および前記酸化槽が同一槽で構成されることを特徴とする海水排煙脱硫システムである。
【0014】
第5の発明は、ボイラと、前記ボイラから排出される排ガスを蒸気発生用の熱源として使用すると共に、発生した蒸気を用いて発電機を駆動する蒸気タービンと、第1から第4の何れか1つの発明の海水排煙脱硫システムとを有し、前記蒸気タービンで凝縮した水を回収し、循環させる復水器と、前記ボイラから排出される排ガスの脱硝を行う排煙脱硝装置と、前記排ガス中の煤塵を除去する集塵装置と、前記排ガスと熱交換器内を循環する熱媒体とを熱交換する熱回収器と、前記排ガスと海水とを気液接触して前記排ガスを洗浄する排煙脱硫吸収塔から排出される浄化ガスと前記熱媒体とを熱交換して、前記浄化ガスを再加熱する再加熱器とを含む熱交換器と、前記海水排煙脱硫システムで脱硫された浄化ガスを外部へ排出する煙突との少なくとも1つを有することを特徴とする発電システムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、排ガスの脱硫率の調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る海水排煙脱硫システムの構成を示す概略図である。
【図2】図2は、排ガスの脱硫率を調整する運転方法の一例を示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施例2に係る発電システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施例により本発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【実施例1】
【0018】
本発明による実施例1に係る海水排煙脱硫システムについて、図面を参照して説明する。図1は、海水排煙脱硫システムの構成を示す概略図である。図1に示すように、本実施例に係る海水排煙脱硫システム10は、排煙脱硫吸収塔11と、希釈混合槽12と、酸化槽13とを有する。
【0019】
海水21は海22からポンプ23により海水供給ラインL11に汲み上げられ、一部の海水21aはポンプ24により海水供給ラインL12を介して排煙脱硫吸収塔11に供給され、他の残りの海水21bは希釈海水供給ラインL13を介して希釈混合槽12に供給される。海水21は、海22からポンプ23により直接汲み上げた海水を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図示しない復水器から排出される海水21の排液などを用いるようにしてもよい。
【0020】
排煙脱硫吸収塔11は、排ガス25と海水21aとを気液接触して排ガス25を浄化する塔である。排煙脱硫吸収塔11では、海水21aは噴霧ノズル26より上方に液柱状に噴出させ、排ガス25と海水供給ラインL12を介して供給される海水21aとを気液接触させて、排ガス25中の硫黄分の脱硫を行っている。本実施例では、噴霧ノズル26は、上方に液柱状に噴出させる噴霧ノズルであるが、これに限定されるものではなく、下方にシャワー状に噴霧するようにしてもよい。
【0021】
即ち、排煙脱硫吸収塔11において排ガス25と海水21aとを気液接触させて、下記式(I)に示すような反応を生じさせ、排ガス25中のSO2などの形態で含有されているSOxなどの硫黄分を海水21aに吸収させ、排ガス25中の硫黄分を、海水21aを用いて除去している。
SO2(G) + H2O → H2SO3(L) → HSO3- + H ・・・(I)
【0022】
この海水脱硫により海水21aと排ガス25との気液接触により発生したH2SO3が解離して水素イオン(H+)が海水21a中に遊離するためpHが下がり、硫黄分吸収海水27には多量の硫黄分が吸収される。このため、硫黄分吸収海水27は硫黄分を高濃度に含んでいる。このとき、硫黄分吸収海水27のpHとしては、例えば3〜6程度となる。そして、排煙脱硫吸収塔11で硫黄分を吸収した硫黄分吸収海水27は、排煙脱硫吸収塔11の塔底部に貯留される。排煙脱硫吸収塔11の塔底部に貯留された硫黄分吸収海水27は、硫黄分吸収海水排出ラインL14を介して希釈混合槽12に送給される。希釈混合槽12で硫黄分吸収海水27は希釈混合槽12に供給される海水21bと混合され、希釈される。
【0023】
また、排煙脱硫吸収塔11で脱硫された浄化ガス29は浄化ガス排出通路L15を介して大気中に放出される。
【0024】
また、海水供給ラインL12には、余剰海水分岐配管L21、またはL22、あるいはその両方が設けられている。余剰海水分岐配管L21は、海水供給ラインL12のポンプ24と排煙脱硫吸収塔11との間の分岐部28Aで海水供給ラインL12と連結している。また、余剰海水分岐配管L22は、排煙脱硫吸収塔11内の海水供給ラインL12の分岐部28Bと連結している。余剰海水分岐配管L21、L22から抜き出された余剰海水21cは、希釈混合槽12に送給される。余剰海水分岐配管L21、L22には、調節弁V11、V12が設けられ、余剰海水分岐配管L21、L22から抜き出される余剰海水21cの量を調整している。
【0025】
余剰海水分岐配管L21、L22により海水供給ラインL12から海水21aの一部を余剰海水21cとして抜き出すことで、排煙脱硫吸収塔11に供給される海水21aの量を容易に調整することができるため、排煙脱硫吸収塔11における排ガス25の脱硫率の調整を容易に行うことができる。また、ポンプ24の吐出圧が抑えられるため、海水21aを排煙脱硫吸収塔11に供給する動力を低減することができる。更に、余剰海水分岐配管L21、L22に抜き出される余剰海水21cは希釈混合槽12に供給されるため、硫黄分吸収海水27を混合し、硫黄分吸収海水27中のSO2濃度を低減することができることから、希釈混合槽12中の硫黄分吸収海水27中に含まれるSO2が大気中に再飛散することを低減することができる。
【0026】
排ガス25の脱硫率は、排煙脱硫吸収塔11に供給される排ガス25中の入口SO2濃度と出口SO2濃度との比(出口SO2濃度/入口SO2濃度)や硫黄分吸収海水27の海水性状に基づいて余剰海水分岐配管L21、L22に抜き出される余剰海水21cの量により調整される。
【0027】
本実施例において、海水性状とは、硫黄分吸収海水27のアルカリ度、海水温度、pH、SO4濃度などをいう。アルカリ度とは、炭酸(H2CO3)、炭酸イオン(CO32-)、炭酸水素イオン(HCO3-)、OH-、有機酸や弱酸の塩(ケイ酸、リン酸、ホウ酸)などの酸を消費する成分の含有量である。排ガス25の脱硫率を硫黄分吸収海水27の海水性状に基づいて余剰海水分岐配管L21、L22に抜き出される余剰海水21cの量を調整する場合には、硫黄分吸収海水27のアルカリ度、海水温度、pH、SO4濃度の少なくとも1つ以上に基づいて調整される。中でも海水性状としては、アルカリ度(HCO3-)に基づいて調整するのが好ましい。
【0028】
排煙脱硫吸収塔11には、排ガス25の入口および出口には、排ガス25の入口SO2濃度および出口SO2濃度を測定するためのSO2濃度計が設けられている。また、排煙脱硫吸収塔11には、硫黄分吸収海水27の海水温度、pH、SO4濃度を測定するための温度計、pH測定器、SO4濃度計を設ける。
【0029】
図2は、排ガス25の脱硫率を調整する運転方法の一例を示す図である。図2に示すように、排煙脱硫吸収塔11における排ガス25の脱硫率および硫黄分吸収海水27の海水性状を求める(ステップS11)。排ガス25の脱硫率が所定の閾値(例えば、設定値+α)以上か否かを判断する(ステップS12)。ここで、本実施例において、脱硫率の所定の閾値とは、例えば、排煙脱硫吸収塔11が、通常、脱硫に必要とされる所定の設定値(例えば、脱硫率が90%)と余分α(例えば、脱硫率が数%)との和の値をいう。
【0030】
排ガス25の脱硫率が所定の閾値(例えば、設定値+α)以上の場合には、硫黄分吸収海水27の海水性状と排ガス25の脱硫率とから海水21aの噴霧に必要な噴霧量を算出する(ステップS13)。海水21aの噴霧に必要な噴霧量に基づいて調節弁V11、V12の開度を算出する(ステップS14)。算出された調節弁V11、V12の開度に基づいて調節弁V11、V12の開閉度を調整する(ステップS15)。
【0031】
算出された調節弁V11、V12の開度に基づいて調節弁V11、V12の開閉度を調整することで、排煙脱硫吸収塔11に供給される海水21aの量を調整することができるため、噴霧ノズル26から噴霧される海水21aの噴霧量を容易に調整することができる。これにより、上述の通り、排煙脱硫吸収塔11において、排ガス25の脱硫率の調整を容易に行うことができる。
【0032】
また、本実施例においては、余剰海水分岐配管L21、L22は、希釈混合槽12と連結し、余剰海水分岐配管L21、L22から抜き出された余剰海水21cは希釈混合槽12に送給するようにしているが、抜き出された余剰海水21cの供給先は希釈混合槽12に限定されるものではなく、排煙脱硫吸収塔11の塔底部に送給するようにしてもよいし、酸化槽13へ直接送給するようにしてもよい。また、抜き出された余剰海水21cは、希釈混合槽12と排煙脱硫吸収塔11の塔底部との両方に送給するようにしてもよいし、酸化槽13と排煙脱硫吸収塔11の塔底部との両方に送給するようにしてもよい。さらに、抜き出された余剰海水21cは、希釈混合槽12、酸化槽13および排煙脱硫吸収塔11の塔底部に送給するようにしてもよい。
【0033】
希釈混合槽12は、排煙脱硫吸収塔11の後流側に設けられ、硫黄分を含んだ硫黄分吸収海水27を希釈用の海水21bと希釈・混合する槽である。希釈混合槽12において、排煙脱硫吸収塔11で排ガス25中の硫黄分を海水21aと接触させて海水脱硫することによって生じた硫黄分を含んだ硫黄分吸収海水27を海水21bと混合・希釈する。硫黄分吸収海水27を海水21bと混合し、希釈することで、希釈混合槽12内の硫黄分吸収希釈海水31のpHを上昇させ、SO2ガスの再放散を防ぐことができる。また、希釈混合槽12においてSO2が放散され、外部に漏洩するのを防止することで、刺激臭を放つのを防止することができる。
【0034】
そして、硫黄分吸収希釈海水31は、希釈混合槽12の下流側に設けられている酸化槽13に送給される。酸化槽13は、希釈混合槽12の下流側に設けられ、硫黄分吸収希釈海水31の水質回復処理を行う曝気装置(エアレーション装置)32を有する槽である。
【0035】
曝気装置32は、空気33を供給する酸化用空気ブロア34と、空気33を送給する散気管35と、空気33を酸化槽13内の硫黄分吸収希釈海水31に供給する酸化空気用ノズル36とを有するものである。酸化用空気ブロア34により外部の空気33が散気管35を介して酸化空気用ノズル36から酸化槽13内に送り込まれ、下記式(II)のような酸素の溶解を生じる。酸化槽13において硫黄分吸収希釈海水31中の硫黄分が空気33と接触して下記式(III)〜(V)のような亜硫酸水素イオン(HSO3-)の酸化反応と、重炭酸イオン(HCO3-)の脱炭酸反応とを生じ、硫黄分吸収希釈海水31は水質回復され、水質回復海水37となる。
2(G) → O2(L)・・・(II)
HSO3- + 1/2O2 → SO42- + H ・・・(III)
HCO3- + H → CO2(G) + H2O ・・・(IV)
CO32- +2H → CO2(G) + H2O ・・・(V)
【0036】
これにより、硫黄分吸収希釈海水31のpHを上昇させると共に、CODを低減することができ、水質回復海水37のpH、溶存酸素濃度、CODを海水放流可能なレベルとして放出することができる。また、酸化槽13で硫黄分吸収希釈海水31の水質回復を行う際にガスが発生しても、この発生するガスはSO2環境基準濃度を満たすようにして酸化槽13で放散させることができる。水質回復海水37は海水排出ラインL31を介して海22へ放流される。
【0037】
このように、本実施例に係る海水排煙脱硫システム10は、排煙脱硫吸収塔11に供給される排ガス25の入口SO2濃度と出口SO2濃度との比および硫黄分吸収海水27のアルカリ度に基づいて余剰海水分岐配管L21、L22に抜き出される余剰海水21cの量を調整することで、噴霧ノズル26から噴霧される海水21aの噴霧量を調整して排ガス25の脱硫率の調整を容易に行うことができる。また、海水21aを排煙脱硫吸収塔11に供給する動力を低減することができる。更に、余剰海水21cを希釈混合槽12中の硫黄分吸収海水27に混合することで、硫黄分吸収海水27中のSO2濃度を低減することができる。このため、屋外開放型の酸化槽13に流れた硫黄分吸収海水27を酸化処理し水質回復を行う際、排煙脱硫吸収塔11において吸収したSO2が希釈混合槽12において放散され、SO2ガスが外部に漏洩するのを防止し、刺激臭を放つのを防止することができる。
【0038】
したがって、本実施例に係る海水排煙脱硫システム10によれば、排ガス25の安定した脱硫率を維持しつつ、安全性および信頼性の高い海水排煙脱硫装置を提供することができる。
【0039】
また、本実施例においては、排煙脱硫吸収塔11で海水脱硫に用いた海水21aの処理をする海水排煙脱硫システムについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。海水排煙脱硫装置は、例えば各種産業における工場、大型、中型火力発電所などの発電所、電気事業用大型ボイラ又は一般産業用ボイラ、製鉄所、精錬所等から排出される排ガス中に含まれる硫黄酸化物を海水脱硫する海水排煙脱硫装置にも適用することができる。
【0040】
また、本実施例においては、排煙脱硫吸収塔11、希釈混合槽12および酸化槽13は各々別々の槽として独立しており、排煙脱硫吸収塔11と希釈混合槽12と酸化槽13とを連結するようにしているが、本実施例はこれに限定されるものではなく、排煙脱硫吸収塔11、希釈混合槽12および酸化槽13を一体として一つの槽で構成してもよいし、希釈混合槽12と酸化槽13とを一体として一つの槽で構成するようにしてもよい。
【実施例2】
【0041】
本発明の実施例2に係る発電システムについて、図面を参照して説明する。本実施例に係る発電システムに適用される海水排煙脱硫システムには、実施例1に係る海水排煙脱硫システムが用いられる。なお、実施例1と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
【0042】
図3は、本発明の実施例2に係る発電システムの構成を示す概略図である。図3に示すように、本実施例に係る発電システム40は、ボイラ41と、蒸気タービン42と、復水器43と、排煙脱硝装置44と、集塵装置45と、海水排煙脱硫システム10とを有するものである。尚、本実施例において、上述のように、硫黄分吸収海水とは、海水排煙脱硫システム10においてSO2など硫黄分を吸収した使用済み海水をいう。
【0043】
ボイラ41は、油タンクまたは石炭ミルなどから供給される燃料46を空気予熱器(AH)47で予熱された空気48と共にバーナ(不図示)から噴射して燃焼させる。外部から供給される空気48は押込みファン49により空気予熱器47に送給され予熱される。燃料46と空気予熱器47で予熱された空気48とは前記バーナに供給され、燃料46はボイラ41で燃焼される。これにより、蒸気タービン42を駆動するための蒸気50を発生する。
【0044】
ボイラ41内で燃焼して発生する排ガス51は排煙脱硝装置44に送給される。また、排ガス51は復水器43から排出される水52と熱交換し、蒸気50を発生する熱源として使用される。蒸気タービン42はこの蒸気50を用いて発電機53を駆動している。そして、復水器43は蒸気タービン42で凝縮した水52を回収し、再びボイラ41に戻し、循環させている。
【0045】
ボイラ41から排出された排ガス51は排煙脱硝装置44内で脱硝され、空気予熱器47で空気48と熱交換した後、集塵装置45に送給され、排ガス51中の煤塵を除去する。そして、集塵装置45で除塵された排ガス51は、誘引ファン55により海水排煙脱硫システム10内に供給される。この時、排ガス51は熱交換器56で、海水排煙脱硫システム10で脱硫され排出される浄化ガス29と熱交換された後、海水排煙脱硫システム10内に供給される。また、排ガス51は熱交換器56で浄化ガス29と熱交換することなく海水排煙脱硫システム10に直接供給するようにしてもよい。
【0046】
また、熱交換器56は、熱回収器と、再加熱器とを含むものであり、前記熱回収器と前記再加熱器との間を熱媒体が循環している。前記熱回収器は、空気予熱器47と集塵装置45との間に設けられ、ボイラ41から排出される排ガス51と前記熱媒体とを熱交換する。前記再加熱器は、排煙脱硫吸収塔11の後流側に設けられ、排煙脱硫吸収塔11から排出される浄化ガス57と前記熱媒体とを熱交換して、浄化ガス29を再加熱する。
【0047】
海水排煙脱硫システム10は、上述の実施例1に係る海水排煙脱硫装置である。すなわち、海水排煙脱硫システム10は、排煙脱硫吸収塔11と、希釈混合槽12と、酸化槽13と、余剰海水分岐配管L21、L22とを有するものである。
【0048】
海水排煙脱硫システム10では、上述の通り、排ガス51中に含有されている硫黄分を海22から汲み上げられた海水21を用いて海水脱硫を行っている。また、海水21は海22からポンプ23により汲み上げられ、復水器43で熱交換した後、一部の海水21aは海水供給ラインL12を介してポンプ24により海水排煙脱硫システム10に送給される。また、残りの海水21bは海水供給ラインL13を介して希釈混合槽12の上流側に送給される。海水排煙脱硫システム10において排ガス51と海水21aとを気液接触させて、排ガス51中の硫黄分を海水21aに吸収している。硫黄分を吸収した硫黄分吸収海水27は排煙脱硫吸収塔11から希釈混合槽12の上流側に送給され、海水21bと混合し、希釈される。
【0049】
また、海水排煙脱硫システム10で浄化された排ガス51は、浄化ガス29となって浄化ガス排出通路L15を介して煙突57から外部に排出される。
【0050】
本実施例では、海水排煙脱硫システム10は、海水供給ラインL12に余剰海水分岐配管L21、L22を設けている。余剰海水分岐配管L21は海水供給ラインL12のポンプ24と排煙脱硫吸収塔11との間で海水供給ラインL12と連結している。また、余剰海水分岐配管L22は排煙脱硫吸収塔11内の海水供給ラインL12と連結している。余剰海水分岐配管L21、L22から抜き出された余剰海水21cは希釈混合槽12に送給される。余剰海水分岐配管L21、L22により海水供給ラインL12から海水21aの一部を余剰海水21cとして抜き出すことで、排煙脱硫吸収塔11に供給される海水21aの量を調整し、排煙脱硫吸収塔11における排ガス51の脱硫率の調整を行う。排ガス25の脱硫率は、上述の通り、排煙脱硫吸収塔11に供給される排ガス51中の入口SO2濃度と出口SO2濃度との比(出口SO2濃度/入口SO2濃度)や硫黄分吸収海水27のアルカリ度に基づいて余剰海水分岐配管L21、L22に抜き出される余剰海水21cの量により調整される。よって、余剰海水分岐配管L21、L22により海水供給ラインL12から海水21aの一部を抜き出す量を容易に調整できるため、排煙脱硫吸収塔11に供給される海水21aの量を容易に調整することができる。このため、排煙脱硫吸収塔11における排ガス51の脱硫率の調整を容易に行うことができる。また、ポンプ24の吐出圧が抑えられるため、海水21aを排煙脱硫吸収塔11に供給する動力を低減することができる。
【0051】
また、海22から汲み上げられた海水21は復水器43で熱交換した後、海水排煙脱硫システム10に送給し、海水脱硫に用いているが、海22から汲み上げた海水21を復水器43で熱交換させずに海水排煙脱硫システム10に直接送給し、海水脱硫に用いるようにしてもよい。
【0052】
希釈混合槽12で硫黄分吸収海水27を海水21bと混合し、希釈された硫黄分吸収希釈海水31は、酸化槽13に送給され、酸化槽13で硫黄分吸収希釈海水31を水質回復し、水質回復海水37とする。酸化槽13で得られた水質回復海水37は、pH、溶存酸素濃度、CODを海水放流可能なレベルとして酸化槽13から海水排出ラインL32を介して海22へ放流される。
【0053】
また、海水供給ラインL11から海水21の一部を、希釈海水供給ラインL13を介して酸化槽13内の水質回復海水37の後流側に供給するようにしてもよい。これにより、水質回復海水37を更に希釈することができる。これにより、水質回復海水37のpHを上昇させ、海水排液のpHを海水近くにまで上昇させ、海水排液のpHの排水基準(pH6.0以上)を満たすと共に、CODを低減することができ、水質回復海水37のpH、CODを海水放流可能なレベルとして放出することができる。
【0054】
このように、本実施例に係る発電システム40によれば、排煙脱硫吸収塔11において排ガス51の脱硫率の調整を容易に行うことができると共に、海水21aを排煙脱硫吸収塔11へ供給する動力を低減しランニングコストの抑制を図ることができる。また、余剰海水分岐配管L21、L22に抜き出される余剰海水21cは希釈混合槽12に供給され、硫黄分吸収海水27中のSO2濃度を低減することができることから、希釈混合槽12中の硫黄分吸収海水27中に含まれるSO2が大気中に再飛散することを低減することができる。したがって、排ガス51の安定した脱硫率を維持しつつ、安全性および信頼性の高い発電システムを提供することができる。
【0055】
また、本実施例に係る海水排煙脱硫装置10は、各種産業における工場、大型、中型火力発電所などの発電所、電気事業用大型ボイラ又は一般産業用ボイラ等から排出される排ガス中に含まれる硫黄酸化物を海水脱硫することで生じる硫黄分吸収溶液中の硫黄分の除去に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 海水排煙脱硫システム
11 排煙脱硫吸収塔
12 希釈混合槽
13 酸化槽
21、21a、21b 海水
21c 余剰海水
22 海
23、24 ポンプ
25、51 排ガス
26 噴霧ノズル
27 硫黄分吸収海水
28A、28B 分岐部
29 浄化ガス
31 硫黄分吸収希釈海水
32 曝気装置(エアレーション装置)
33 空気
34 酸化用空気ブロア
35 散気管
36 酸化空気用ノズル
37 水質回復海水
40 発電システム
41 ボイラ
42 蒸気タービン
43 復水器
44 排煙脱硝装置
45 集塵装置
46 燃料
47 空気予熱器(AH)
48 空気
49 押込みファン
50 蒸気
52 水
53 発電機
55 誘引ファン
56 熱交換器
57 煙突
L11、L12 海水供給ライン
L13 希釈海水供給ライン
L14 硫黄分吸収海水排出ライン
L15 浄化ガス排出通路
L21、L22 余剰海水分岐配管
L31、L32 海水排出ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスと海水とを気液接触して前記排ガスを洗浄する排煙脱硫吸収塔と、
前記排煙脱硫吸収塔の後流側に設けられ、硫黄分を含んだ硫黄分吸収海水を希釈用の海水と希釈混合する希釈混合槽と、
前記海水を前記排煙脱硫吸収塔に供給する海水供給ラインと、
前記排煙脱硫吸収塔の塔内と塔外との何れか一方または両方で前記海水供給ラインから分岐し、前記海水の一部を前記排煙脱硫吸収塔の塔底部又は前記希釈混合槽のいずれか一方又は両方に供給する余剰海水分岐配管と、前記余剰海水分岐配管に設置された余剰海水分岐量を調節する調節弁と、
を有することを特徴とする海水排煙脱硫システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記余剰海水分岐配管の分岐部は、前記海水供給ラインに設けられる海水送給ポンプの後流側に設けられることを特徴とする海水排煙脱硫システム。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記排煙脱硫吸収塔における脱硫率を算出して得られた脱硫率に基づいて、前記排煙脱硫吸収塔内に前記海水を噴霧する噴霧ノズルからの海水の噴霧量を算出し、前記余剰海水分岐配管に設置された調節弁の開度を調整することで、前記海水の噴霧量を調節することを特徴とする海水排煙脱硫システム。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1つにおいて、
前記排煙脱硫吸収塔、前記希釈混合槽および前記酸化槽が同一槽で構成されることを特徴とする海水排煙脱硫システム。
【請求項5】
ボイラと、
前記ボイラから排出される排ガスを蒸気発生用の熱源として使用すると共に、発生した蒸気を用いて発電機を駆動する蒸気タービンと、
請求項1から4の何れか1つの海水排煙脱硫システムとを有し、
前記蒸気タービンで凝縮した水を回収し、循環させる復水器と、
前記ボイラから排出される排ガスの脱硝を行う排煙脱硝装置と、
前記排ガス中の煤塵を除去する集塵装置と、
前記排ガスと熱交換器内を循環する熱媒体とを熱交換する熱回収器と、前記排ガスと海水とを気液接触して前記排ガスを洗浄する排煙脱硫吸収塔から排出される浄化ガスと前記熱媒体とを熱交換して、前記浄化ガスを再加熱する再加熱器とを含む熱交換器と、
前記海水排煙脱硫システムで脱硫された浄化ガスを外部へ排出する煙突との少なくとも1つを有することを特徴とする発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−179521(P2012−179521A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42962(P2011−42962)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】