説明

消火方法、消火装置、及び風力発電装置

【課題】誤作動を低減し、ナセル内の火災発生を確実に検知できて安全・確実・迅速に火災を消火することのできる消火方法及び消火装置を提供すること。
【解決手段】この消火方法は、ナセル4内の複数の異なる場所に設置された少なくとも3つの煙検知器14a〜14cからの各煙検知信号を監視するステップと、各煙検知信号のうち、少なくとも2つの煙検知器からの煙検知信号が第1の所定基準値以上となった場合に火災発生と判断するステップと、火災発生と判断した場合に第1の消火剤12をナセル4内に放出するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置の消火方法及び消火装置に係り、特に高所に設置された風力発電用ナセル内の火災をガスを用いて消火する消火方法及び消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電は風が有するエネルギを回転運動エネルギに変換し、さらに電気エネルギとして取り出す方法である。二酸化炭素や窒素酸化物等を排出することなく発電可能な方法であり、クリーンなエネルギの利用方法である。より大きい出力を得るためには、できるだけ高効率に風を捉えることが必要であり、大型の風力発電装置においては風を捉えるための半径数10m(例えば30m)のプロペラが、数10m(例えば60m)の高さのタワー上に設けられる。
【0003】
図4に風力発電装置Sの外観斜視図を示す。風力発電装置Sは、外観的には基礎101上に立設されたタワー102の先端部分にナセル103が設けられ、そのナセルがプロペラ104を有して構成されている。プロペラ104は、通常2、3枚のブレード104aを有し、風速に応じて回転するようになっている。ナセル103は、プロペラ104を回転支持し、また、風向に対応して効率よく風力を得るためにタワー102に対して回転可能に設けられている。
【0004】
ナセル103内には種々の装置、例えばローター、増速機、発電機、ローターブレーキ等が設置されている。風力エネルギは、これらの装置によって回転運動のエネルギに変換され、さらに電気エネルギへと変換されて取り出され、電力として利用される。
【0005】
ナセル内の各装置は運動や通電によって熱を発生する。したがって、火災を生じる可能性を考慮する必要がある。しかし上述したようにナセルは数10mの高所に設置されるので、人が近づいて消火作業を行うことが困難である場合が多い。そのため、ナセル内又はナセル近傍には自動消火のための消火設備が設置されることがある。例えば、不燃性粉体等と爆発物とをナセル内に備え、爆発によって不燃性粉体等を飛散させて消火を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。また、ナセル内に不活性ガスを充満させて消火を行う方法も提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【特許文献1】特開2003−214326号公報
【特許文献2】特開2003−214324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の方法によれば、爆発によって不燃性粉体等を飛散させて消火を行うので、消火作業後にはナセル内の各装置は粉体等を多量に浴びてしまう。また爆風によるダメージも受けてしまうので、その後、それらの装置は使用できなくなってしまうという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の方法によれば、不活性ガスを用いて消火を行うが、一般に消火には大量の不活性ガスを必要とする。そのため、ナセル内に消火に必要な大量の不活性ガスを常備しなければならないが、ナセル内の容積は限られているため、不活性ガス常備のためのスペースを十分に確保できないという問題もある。ナセルは高所に設置され、風向に対応して回転するので、その体積や重量をいたずらに大きくすることはできない。
【0008】
さらに、従来の消火方法によれば誤作動する場合があり、火災発生をより確実に検出でき、安全・確実・迅速にナセル内の火災を消火する方法が強く望まれていた。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みて為されたもので、誤作動を低減し、ナセル内の火災発生を確実に検知できて安全・確実・迅速に火災を消火することのできる消火方法及び消火装置を提供することを例示的目的とする。また、消火用として用いるためにナセル内に確保するスペースを縮小し、かつ、消火後にもナセル内の各装置へのダメージを最小限に低減することができる消火方法を提供することも例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の例示的側面としての消火方法は、所定空間内の複数の異なる場所に設置された少なくとも3つの煙検知器からの各煙検知信号を監視するステップと、各煙検知信号のうち、少なくとも2つの煙検知器からの煙検知信号が第1の所定基準値以上となった場合に火災発生と判断するステップと、火災発生と判断した場合に第1の消火剤を所定空間内に放出するステップとを有することを特徴とする。所定空間内の火災発生を確実・迅速に検知することができる。また、火災発生を検知した場合に、確実・迅速に消火を自動的に行うことができる。
【0011】
第1の消火剤はハロゲン化物系ガスを含んでもよい。ハロゲン化物系ガスは、例えばハロン1301やHFC−227ea(商品名:FM−200)を含む概念である。ハロゲン化物系ガスは人体に無害であるので、所定空間内に人がいる場合でも安全に放出することができる。また、消火によって所定空間内に設置された各種機器にダメージを与えることもない。消火能力が高く、例えば不活性ガスの1/3.7倍程度の量で同等の消火能力を発揮するので、消火剤の設置スペースを低減することができる。ハロン1301を用いた場合は、所定空間に外部と連通する開口がある場合でも空間内を高濃度の消火剤で充満しやすいという効果が得られる。また、HFC−227eaを用いた場合は、オゾン層を破壊しないので環境にも優しい。
【0012】
所定空間内に設置された少なくとも1つの温度検知器からの温度検知信号を監視するステップと、火災発生と判断した場合であって、かつ温度検知信号が第2の所定基準値以上となった場合に第2の消火剤を所定空間内に放出するステップとを有してもよい。また、第1の消火剤を所定空間内に放出してから所定時間経過後に第2の消火剤を所定空間内に放出してもよい。第2の消火剤は粉末消火剤であってもよい。これにより、第1の消火剤のみで鎮火しない火災の場合でもさらなる延焼を食い止めることができ、より確実に所定空間内の火災を消火することができる。
【0013】
本発明の他の例示的側面としての消火装置は、非不燃性材料で形成された、風力発電装置のナセル内の火災を第1の消火剤を用いて消火する消火装置であって、第1の消火剤がハロゲン化物系ガスを含むことを特徴とする。ハロゲン化物系ガスは人体に無害であるので、所定空間内に人がいる場合でも安全に放出することができる。また、消火によって所定空間内に設置された各種機器にダメージを与えることもない。消火能力が高く、例えば不活性ガスの1/3.7倍程度の量で同等の消火能力を発揮するので、消火剤の設置スペースを低減することができる。また、火災発生箇所を局所的に消火するのみでなく、第1の消火剤がナセル内全体に行き渡って全面消火を行うので、複数箇所で同時に火災発生した場合でも確実に消火を行うことができる。
【0014】
その消火装置が、第1の消火剤とは異なる第2の消火剤と、ナセル内の複数の異なる場所に設置された少なくとも3つの煙検知器と、煙検知器からの煙検知信号を監視するとともに、少なくとも2つの煙検知器からの煙検知信号が第1の所定基準値以上となった場合に火災発生と判断する煙信号制御手段と、火災発生時に第1の消火剤をナセル内に放出する第1消火剤放出手段と、ナセル内に設置された少なくとも1つの温度検知器と、温度検知器からの温度信号を監視するとともに、少なくとも1つの温度検知信号が第2の所定基準値以上となったか否かを判断する温度信号制御手段と、火災発生時であって、かつ温度検知信号が第2の所定基準値以上となった場合に第2の消火剤をナセル内に放出する第2消火剤放出手段とを有してもよい。
【0015】
風力発電装置のナセル内で発生した火災を誤作動なく確実・迅速に検知することができる。また、火災発生を検知した場合に、確実・迅速に消火を自動的に行うことができる。さらに、第1の消火剤のみで鎮火しない火災の場合でもさらなる延焼を食い止めることができ、より確実にナセル内の火災を消火することができる。
【0016】
第2消火剤放出手段が、熱溶融チューブを有して構成されていてもよい。第2消火剤放出手段を簡単かつ低コストに構成することができる。
【0017】
本発明のさらに他の例示的側面としての風力発電装置は、基礎部の上に立設されたタワー部と、タワー部の端部付近に水平方向に回転可能に設けられ、内部に少なくとも発電器と増速器とを有し、かつその筐体が非不燃性材料で形成されたナセルと、ナセルに回転支持されたプロペラ部と、上記の消火装置とを有することを特徴とする。
【0018】
ナセル内で発生した火災を確実・迅速に検知することができる。また、火災発生を検知した場合に、確実・迅速に消火を自動的に行うことができる。ハロゲン化物系ガスは人体に無害であるので、所定空間内に人がいる場合でも安全に放出することができる。また、消火によってナセル内に設置された各種機器にダメージを与えることもない。消火能力が高く、例えば不活性ガスの1/3.7倍程度の量で同等の消火能力を発揮するので、消火剤の設置スペースを低減することができる。さらに、所定空間に外部と連通する開口がある場合でも、空間内を高濃度の消火剤で充満しやすい。また、オゾン層を破壊しないので環境にも優しい。さらに、第1の消火剤のみで鎮火しない火災の場合でもさらなる延焼を食い止めることができ、より確実にナセル内の火災を消火することができる。
【0019】
本発明の他の目的及び更なる特徴は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態により明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、誤作動なく確実にナセル内の火災発生を検知でき、完全・確実・迅速に火災を消火することができる。また、消火に用いるためにナセル内に確保するスペースを縮小することができ、ナセル内スペースを有効に利用することができる。消火後にもナセル内の各装置へのダメージを最小限に低減することができる。また、火災の程度によって、2種類の消火剤を用いることにより、さらに確実にナセル内の消火を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施の形態1に係る消火装置について、図面を用いて説明する。この消火装置は、風力発電装置のナセル内で発生した火災に適用可能である。
【0022】
図1は、この消火装置を搭載した風力発電装置1の外観斜視図である。この風力発電装置1は、外観的には基礎部2の上に略鉛直方向に長く延びるタワー部3が立設され、そのタワー部3の端部3a付近、すなわち頂上付近にナセル4が設けられている。ナセル4にはプロペラ部5が取り付けられている。例えば、本実施の形態においては、タワー部3の高さは約60m、プロペラ部5の半径は約30mである。
【0023】
ナセル4はタワー部3に対して略鉛直軸周り、すなわち略水平面内で回転可能に支持されている。そして、プロペラ部5は、複数(例えば本実施の形態においては3枚)のブレード5aを有してナセル4に対して略水平のローター軸5b(図2も参照。)周り、すなわち略鉛直面内で回転可能に支持されている。風向に応じてプロペラ部5が風を正面から受けるようにナセル4は回転してその向きを変えるようになっている。また、風速に応じてプロペラ部5のブレード5aはローター軸5b周りに回転し、風速が速いとブレード5aは高速回転するようになっている。
【0024】
図2は、所定空間の例としてのナセル4内部の概略構成を示すブロック図である。ナセル4の筐体は、例えばFRP(繊維強化プラスチック)等の材料で形成されている。このFRPは、容易に燃焼する材料ではないが不燃性材料ではなく、内部に火災が発生した場合は燃焼又は溶融する可能性がある。また、ナセル4の筐体には、排熱のためにナセル4内部と外部とを連通する開口部4aが形成されている。
【0025】
ナセル4内には、ローター軸5bを介してプロペラ部5と連結された増速器6、発電器7、ブレーキ8、変圧器9が設置されている。増速器6は、プロペラ部5の回転速度を変速してより高速回転に変換するものであり、例えばギアボックス等が用いられる。発電器7は、ローター軸5bの回転運動エネルギを電気エネルギに変換するものである。ブレーキ8は、緊急時やメンテナンス時等にプロペラ部5の回転を停止させるためのものである。変圧器9は、発電器7によって発電された電力を所望の電圧に降圧又は昇圧させるもので、例えばトランス等が用いられる。その他、ナセル4内には、必要に応じて非常用電源、冷却設備、各種制御盤、配電盤等が備えられるが、詳細は省略する。
【0026】
この風力発電装置1はナセル4内の火災を消火するための消火装置11を有している。消火装置11は、第1の消火剤12、第2の消火剤13、煙検知器14、信号制御手段15、第1消火剤放出手段16、温度検知器17、第2消火剤放出手段19を有して大略構成される。これらのうち、少なくとも3つの煙検知機14と少なくとも1つの温度検知機17とは、ナセル4内に設置されるが、それ以外のものについては、必要に応じてナセル4内に設置してもナセル4の外、例えばタワー部3内に設置してもよい。例えば、第1、第2の消火剤12,13をタワー部3内に設置した場合は、それらの消火剤がナセル4内に導入されるように配管を敷設すればよい。煙検知機14の設置数と温度検知機17の設置数とはそれぞれ3つ以上及び1つ以上であればいくつでもよいが、本実施の形態においては図2に示すように3つの煙検知機14a〜14c、1つの温度検知機17をナセル4内のそれぞれ異なる場所に設置している。信号制御手段15は、煙信号制御手段としての機能と温度信号制御手段としての機能とを併せ持っている。
【0027】
煙検知器14a〜14cは、ナセル4内に火災が発生した場合の、その設置位置近傍における煙の量又は濃度を例えば光学的又は化学的に検知するセンサーであり、その煙検知信号を煙信号制御手段として機能する信号制御手段15に向けて送信する。また、温度検知器17は、その設置位置近傍におけるナセル4内の温度を検知する温度センサーであり、その温度検知信号を温度信号制御手段として機能する信号制御手段15に向けて送信する。これらの煙検知器14a〜14c、温度検知器17の構成については公知であるのでその説明を省略する。
【0028】
信号制御手段15は、煙検知器14a〜14cからの煙検知信号を受信して監視し、その煙検知信号が第1の所定基準値以上となったか否かを判断するものである。ここで第1の所定基準値としては、ナセル4内に火災が発生したと判断しうる程度の煙濃度に対応する値が設定される。本実施の形態においてはより確実に火災発生を検知するために、信号制御手段15は3つの煙検知器14a〜14cからの煙検知信号を常時監視し続け、そのうちの少なくとも2つの煙検知信号が第1の所定基準値以上となった場合にナセル4内に火災が発生したと判断する。そして、火災発生と判断すると、信号制御手段15は、火災発生信号を第1消火剤放出手段16に向けて送信する。
【0029】
第1消火剤放出手段16は、信号制御手段15からの火災発生信号を受信すると第1の消火剤12を放出する機能を有する。例えばリレー又はシーケンサ及びスイッチ等を有して構成され、ナセル4内での火災発生時に第1の消火剤12が充填されたタンクのバルブを開成してナセル4内に第1の消火剤12を放出する。
【0030】
第1の消火剤12は、ハロゲン化物系ガスを含んでタンクに充填されている。ハロゲン化物系ガスとして、例えば本実施の形態においてはハロン1301やHFC−227eaを用いる。例えばCOガスを含む消火ガスを用いると、高濃度の場合に人体に有害であるので、ナセル4内に人がいる場合に使用できない。しかしハロゲン化物系ガスは人体に対して無害であるので、例えナセル4内に人がいるときに火災が発生したとしても、安全に放出することができる。また、不活性ガスに比較して約1/3.7倍程度の量で同等の消火能力を有するので、設置スペースを節約することができる。ナセル4が開口部4aを有して消火ガス濃度が高濃度となりにくい状況であってもハロゲン化物系ガスの消火能力が高いので有効である。また、粉末消火剤や液体消火剤を用いた場合のように、ナセル4内の設置機器にダメージを与えることが殆どなく、火災発生及び消火後にも設置機器の再使用が可能となる。粉末消火剤や液体消火剤を用いた場合のように火災発生箇所を局所的に消火するのみでなく、ハロゲン化物系ガスがナセル4内全体に行き渡って全面消火を行うので、ナセル4内の複数箇所で同時に火災発生した場合でも確実に消火を行うことができる。
【0031】
また、信号制御手段15は、温度検知器17からの温度検知信号を受信して監視し、その温度検知信号が第2の所定基準値以上となったか否かをも判断する。ここで第2の所定基準値としては、ナセル4内に火災が鎮火していないと判断しうる程度の温度に対応する値が設定される。本実施の形態においては信号制御手段15は1つの温度検知器17からの温度検知信号を常時監視し続け、第1の消火剤12が放出されてから所定時間経過しても温度検知信号が第2の所定基準値以上であった場合にナセル4内の火災が鎮火していない(延焼中)と判断する。そして、延焼中と判断すると、信号制御手段15は、延焼信号を第2消火剤放出手段19に向けて送信する。
【0032】
第2消火剤放出手段19は、信号制御手段15からの延焼信号を受信すると第2の消火剤13を放出する機能を有する。例えばリレー又はシーケンサ及びスイッチ等を有して構成され、ナセル4内での延焼中に第2の消火剤13が充填されたタンクのバルブを開成してナセル4内に第2の消火剤13を放出する。また、例えば第2の消火剤13の配管経路中に第2の所定基準値に相当する温度で溶融する熱溶融チューブ20を設け、ナセル4内の温度が第2の所定基準値に応答する温度となった場合に、自動的に熱溶融チューブ20が溶融して第2の消火剤13を放出するように構成してもよい。
【0033】
第2の消火剤13は、例えば粉末消火剤を含んでタンクに充填されている。この第2の消火剤13は、例えば変圧器9に向けて放出されるように配置されている。
【0034】
次に、この実施の形態に係る消火装置11の動作について図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0035】
風力発電装置1において、消火装置11の一部としての煙検知器14a〜14c及び温度検知器17が、それぞれナセル4内の異なる複数の場所において煙濃度や温度を監視している(S.1)。この実施の形態においてはナセル4は約60mの高所に設置されているので、ナセル4内に火災が発生し地上から火災が確認できても、すぐに人がナセル4に到達することは困難である。また、消火活動を地上から行うことも困難である。しかし、この消火装置11によって完全・確実・迅速に火災を検知し、消火を完了させることができる。
【0036】
煙検知器14a〜14cからの煙信号及び温度検知器17からの温度信号が信号制御手段15により常時監視されている。煙検知器14a〜14cのうち2つ以上の煙検知器からの煙信号が第1の所定基準値以上でなく(S.2)、かつ温度検知器17からの温度信号が第2の所定基準値以上でない場合(S.3)、火災発生はないと判断され(S.4)そのまま煙信号及び温度信号の監視が続行される。しかし、何らかのトラブルによりナセル4内に火災が発生すると、ナセル4内に煙が充満するとともにナセル4内の温度が上昇する。そして煙検知器14a〜14cのうち2つ以上の煙検知器からの煙信号が第1の所定基準値以上となれば(S.2)、ナセル4内の火災発生と判断し(S.5)、第1消火剤放出手段によりナセル4内に第1の消火剤12が放出される(S.6)。また、煙の発生が殆どなく煙検知器14a〜14cのうち2つ以上の煙検知器からの煙信号が第1の所定基準値以上とならなかった場合でも(S.2)、温度検知器17からの温度信号が第2の所定基準値以上となった場合(S.3)は、やはり火災発生と判断し(S.5)、第1の消火剤12が放出される(S.6)。もちろん煙信号と温度信号とはともに常時監視されているので、それらの判断の順序はいずれが先であっても、また双方略同時であってもよい。
【0037】
第1の消火剤12はハロゲン化物系ガスを含む消火ガスであるので、例えナセル4内に人がいたとしても無害である。また、消火能力が高いので、ナセル4の筐体に開口部4aがあっても充分な消火能力を発揮することができる。
【0038】
第1の消火剤12が放出されてから所定時間経過後に(S.7)温度検知器17からの温度検知信号が第2の所定基準温度以上となっていなければ(S.8)、延焼なし、すなわち鎮火と判断し、消火動作は終了する(S.9)。しかしながら、第1の消火剤12が放出されてから所定時間経過後に温度検知器17からの温度検知信号が第2の所定基準温度以上となっていれば(S.8)、延焼中と判断し(S.10)、第2消火剤放出手段によりナセル4内に第2の消火剤13が放出される(S.11)。これにより、ナセル4内の火災は確実に鎮火し、消火装置11による消火動作が終了する。
【0039】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。例えば、より簡単に装置を構成するために、上記実施の形態における温度検知器17、信号制御手段15のうちの温度信号制御機能、第2消火剤放出手段19、第2の消火剤13を省略することも可能である。その場合、図3における(S.7)以降の工程を行わず、第1消火剤12を放出して消火動作が完了するようにしてもよい。
【0040】
また、本実施の形態においては、煙信号制御手段としての機能と温度信号制御手段としての機能とを併せ持つ信号制御手段15を用いたが、もちろん別々の煙信号制御手段と温度信号制御手段とを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態に係る消火装置を搭載した風力発電装置の外観斜視図である。
【図2】図1に示す風力発電装置のナセル内部の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る消火装置の動作を説明するフローチャートである。
【図4】従来の風力発電装置の外観斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
S,1:風力発電装置
2:基礎部
3:タワー部
4:ナセル(所定空間)
4a:開口部
5:プロペラ部
5a:ブレード
5b:ローター軸
6:増速器
7:発電器
8:ブレーキ
9:変圧器
11:消火装置
12:第1の消火剤
13:第2の消火剤
14,14a〜14c:煙検知器
15:信号制御手段(煙信号制御手段、温度信号制御手段)
16:第1消火剤放出手段
17:温度検知器
19:第2消火剤放出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定空間内の複数の異なる場所に設置された少なくとも3つの煙検知器からの各煙検知信号を監視するステップと、
前記各煙検知信号のうち、少なくとも2つの煙検知器からの煙検知信号が第1の所定基準値以上となった場合に火災発生と判断するステップと、
前記火災発生と判断した場合に第1の消火剤を前記所定空間内に放出するステップとを有することを特徴とする消火方法。
【請求項2】
前記第1の消火剤はハロゲン化物系ガスを含むことを特徴とする請求項1に記載の消火方法。
【請求項3】
前記所定空間内に設置された少なくとも1つの温度検知器からの温度検知信号を監視するステップと、
前記火災発生と判断した場合であって、かつ前記温度検知信号が第2の所定基準値以上となった場合に第2の消火剤を前記所定空間内に放出するステップとを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の消火方法。
【請求項4】
前記第1の消火剤を前記所定空間内に放出してから所定時間経過後に前記第2の消火剤を前記所定空間内に放出することを特徴とする請求項3に記載の消火方法。
【請求項5】
前記第2の消火剤は粉末消火剤であることを特徴とする請求項4に記載の消火方法。
【請求項6】
非不燃性材料で形成された、風力発電装置のナセル内の火災を第1の消火剤を用いて消火する消火装置であって、
該第1の消火剤がハロゲン化物系ガスを含むことを特徴とする消火装置。
【請求項7】
前記第1の消火剤とは異なる第2の消火剤と、
前記ナセル内の複数の異なる場所に設置された少なくとも3つの煙検知器と、
該煙検知器からの煙検知信号を監視するとともに、少なくとも2つの煙検知器からの煙検知信号が第1の所定基準値以上となった場合に火災発生と判断する煙信号制御手段と、
前記火災発生時に前記第1の消火剤を前記ナセル内に放出する第1消火剤放出手段と、
前記ナセル内に設置された少なくとも1つの温度検知器と、
前記温度検知器からの温度信号を監視するとともに、少なくとも1つの温度検知信号が第2の所定基準値以上となったか否かを判断する温度信号制御手段と、
前記火災発生時であって、かつ前記温度検知信号が前記第2の所定基準値以上となった場合に前記第2の消火剤を前記ナセル内に放出する第2消火剤放出手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の消火装置。
【請求項8】
前記第2消火剤放出手段が、熱溶融チューブを有して構成されていることを特徴とする請求項7に記載の消火装置。
【請求項9】
基礎部の上に立設されたタワー部と、
該タワー部の端部付近に略鉛直軸周りに回転可能に設けられ、内部に少なくとも発電器と増速器とを有し、かつその筐体が非不燃性材料で形成されたナセルと、
該ナセルに略水平軸周りに回転支持されたプロペラ部と、
請求項6から請求項8のうちいずれか1項に記載の消火装置とを有することを特徴とする風力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−68294(P2006−68294A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255465(P2004−255465)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(593036165)西華産業株式会社 (10)
【出願人】(390031037)日本フエンオール株式会社 (33)
【Fターム(参考)】