説明

液体供給システム

【課題】ピストンの往復動作に伴って液体の吸入及び吐出を行うポンプと、圧縮流体によってポンプのピストンを変位させるアクチュエータとを備えるものにあって、吐出する液体の圧力の制御性が低下しやすいこと。
【解決手段】シリンジポンプ11,31から吐出される液体の圧力を第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2の操作量で除算した値(増幅率)は、ピストン12,32の位置毎にテーブルデータとして不揮発性メモリ64内に保持される。第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2の操作量は、目標圧力を増幅率で除算することで算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストンの往復動作に伴って液体の吸入及び吐出を行うポンプと、圧縮流体によって前記ポンプのピストンを変位させるアクチュエータと、前記ピストンの位置を検出する位置検出手段と、前記アクチュエータを操作することで、前記ポンプから吐出される液体の圧力を制御する制御装置とを備える液体供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の液体供給システムとしては、薬液ポンプを駆動するためのアクチュエータとしての駆動シリンダを設け、その駆動シリンダに対して供給される空気圧力等によりシリンダピストンを変位させるとともに、該シリンダピストンの変位に連動させて薬液ポンプを駆動させるようにした薬液供給システムも提案されている。その構成を図10に示す。図10では、2つのシリンジポンプ101,111が設けられるとともに、該ポンプごとに駆動シリンダ103,113が設けられている。駆動シリンダ103,113に対しては通路切替弁104,114を介して空圧源121から加圧エアが供給され、通路切替弁104,114の切替動作によって駆動シリンダ103,113へのエア圧力が切り替えられることにより、各シリンジポンプ101,111のピストン102,112が駆動され、それに伴い薬液の吸入又は吐出が行われる。この場合、薬液の吸入時には、ピストン102,112が図の下方に変化し、吸入通路122を介してシリンジポンプ101,111に薬液が吸入される。また、薬液の吐出時には、ピストン102,112が図の上方に変化し、吐出通路123を介してシリンジポンプ101,111から薬液が吐出される。
【0003】
なお、液体供給システムとしては、ほかに、例えば下記特許文献1記載のものもある。
【特許文献1】特開平8−182952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記薬液供給システムにあっては、各シリンジポンプの製造時の構造上の個体差や、経年変化、更にはピストン位置毎の吐出特性の相違等に起因して、吐出される液体の圧力を常時一定とすることが困難であることが発明者らによって見出されている。
【0005】
なお、上記システムに限らず、ピストンの往復動作に伴って液体の吸入及び吐出を行うポンプと、圧縮流体によってポンプのピストンを変位させるアクチュエータと、ピストンの位置を検出する位置検出手段とを備えるものにあっては、吐出される液体の圧力を所望に制御することが困難なこうした実情も概ね共通したものとなっている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ピストンの往復動作に伴って液体の吸入及び吐出を行うポンプと、圧縮流体によってポンプのピストンを変位させるアクチュエータとを備えるものにあって、吐出する液体の圧力をより高精度に制御することのできる液体供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
手段1記載の発明は、ピストンの往復動作に伴って液体の吸入及び吐出を行うポンプと、圧縮流体によって前記ポンプのピストンを変位させるアクチュエータと、前記ピストンの位置を検出する位置検出手段と、前記アクチュエータを操作することで、前記ポンプから吐出される液体の圧力を制御する制御装置とを備える液体供給システムにおいて、前記アクチュエータの操作量と前記ポンプの吐出する液体の圧力とについてのアクチュエータ固有の関係情報であって且つ前記ポンプのピストン位置毎の関係情報を記憶する記憶手段と、前記ポンプの吐出する液体の圧力をその目標値に制御すべく、前記位置検出手段の都度の検出値に応じた前記アクチュエータのそれぞれの操作量を、前記関係情報及び前記目標値に基づき設定する設定手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記発明では、ピストン位置毎にアクチュエータの操作量とポンプの吐出する液体の圧力との関係情報を用いることで、操作量が同一であるときにポンプの吐出する液体の圧力がピストン位置に応じて変動したとしても、関係情報を用いてこれを補償することができる。このため、ピストン位置にかかわらずポンプから吐出される液体の圧力を所望に制御することができる。
【0010】
なお、手段1記載の発明は、前記関係情報として前記記憶手段に記憶されるデータには、前記ポンプの吐出する液体の圧力と操作量との関係についての予め作成されたテーブルデータが含まれることを特徴としてもよい。
【0011】
更に、手段1記載の発明は、前記ポンプから吐出される液体の圧力を検出する圧力検出手段と、前記ポンプの吐出する液体の圧力と前記アクチュエータの操作量とについての前記位置検出手段の検出値毎の関係情報を学習する学習手段とを更に備えることを特徴としてもよい。
【0012】
手段2記載の発明は、ピストンの往復動作に伴って液体の吸入及び吐出を行う複数のポンプと、圧縮流体によって前記複数のポンプのそれぞれのピストンを変位させる複数のアクチュエータと、前記ピストンの位置を検出する位置検出手段と、前記複数のアクチュエータを操作することで、前記複数のポンプの吐出口の合流部を介して吐出される液体の圧力を制御する制御装置とを備える液体供給システムにおいて、前記複数のアクチュエータのそれぞれの操作量と該当するポンプの吐出する液体の圧力とについての各アクチュエータ固有の関係情報であって且つ該当するポンプのピストン位置毎の関係情報を記憶する記憶手段と、前記合流部を介して吐出される液体の圧力をその目標値に制御すべく、前記位置検出手段の都度の検出値に応じた前記複数のアクチュエータのそれぞれの操作量を、前記関係情報及び前記目標値に基づき設定する設定手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
上記発明では、ピストン位置毎にアクチュエータの操作量と該当するポンプの吐出する液体の圧力との関係情報を用いることで、操作量が同一であるときにポンプの吐出する液体の圧力がピストン位置に応じて変動したとしても、関係情報を用いてこれを補償することができる。このため、ピストン位置にかかわらず単一のポンプから吐出される液体の圧力を所望に制御することができる。更に、関係情報として、複数のアクチュエータのそれぞれに固有の情報を記憶することで、この関係情報を用いてアクチュエータ間の個体差等の影響をも補償することができる。このため、上記合流部から吐出する液体の圧力をより高精度に制御することができる。
【0014】
手段3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記関係情報として前記記憶手段に記憶されるデータには、前記各ポンプの吐出する液体の圧力と操作量との関係についての予め作成されたテーブルデータが含まれることを特徴とする。
【0015】
上記発明では、予めテーブルデータを作成するために、当該システムとは独立してポンプを動作させたときの液体の圧力の検出値を用いてテーブルデータを作成するができる等、その作成を簡易に行うことができる。また、当該システムによる吐出開始直後から関係情報を用いることができるため、吐出開始直後から圧力を高精度に制御することができる。
【0016】
手段4記載の発明は、請求項2又は3記載の発明において、前記合流部から吐出される液体の圧力を検出する圧力検出手段と、前記複数のポンプのいずれか一つのみが吐出動作を行う期間において、該いずれか1つのポンプの吐出する液体の圧力と該当するアクチュエータの操作量とについての前記位置検出手段の検出値毎の関係情報を学習する学習手段とを更に備えることを特徴とする。
【0017】
上記発明では、学習手段を備えることで、たとえ上記関係情報を予め取得しておかなかったとしても、関係情報を取得しこれに基づきアクチュエータを操作することが可能となる。また、上記関係情報を予め取得しておいた場合、ポンプやアクチュエータの経年変化によって取得した関係情報が変化したり、環境変化によって取得した関係情報が変化したりする際に、これを更新することができる。
【0018】
なお、手段4記載の発明は、前記学習手段は、前記いずれか1つのポンプの吐出する液体の圧力と該当するアクチュエータの操作量とについての前記ピストンの所定位置間隔毎の関係情報を学習するものであって且つ、隣接するピストン位置同士における前記学習された関係情報の相違の度合いに応じて前記所定位置間隔を可変設定する手段を備えることを特徴としてもよい。
【0019】
これにより、所定位置間隔を、圧力制御を高精度に行うために適切な値に自動的に調節することができる。
【0020】
手段5記載の発明は、請求項2〜4のいずれかに記載の発明において、前記合流部から吐出される液体の圧力を検出する圧力検出手段と、該圧力検出手段の検出値を前記目標値に追従させるべく、前記複数のアクチュエータの操作量をフィードバック補正する補正手段とを更に備えることを特徴とする。
【0021】
上記関係情報に基づくアクチュエータの操作によれば、吐出される液体の圧力をフィードフォワード制御することができるため、吐出圧力を所望の圧力に迅速に制御することができる。しかし、フィードフォワード制御は応答性が高い反面、操作対象等の経年変化や、環境変化等に対するロバスト性が低い。この点、上記発明では、フィードバック制御を併用することで、操作対象等の経年変化や、環境変化等に好適に対処することができる。
【0022】
手段6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記補正手段は、前記アクチュエータのうちのいずれか1つがピストンの所定位置において前記目標値を実現するための操作量である基本操作量を補正するものであり、前記設定手段は、前記基本操作量を、前記位置検出手段の検出値及び前記関係情報に基づき補正することで前記アクチュエータの操作量を設定することを特徴とする。
【0023】
上記発明では、フィードバック補正の補正対象を、いずれか1つのアクチュエータのピストン所定位置において目標値を実現するための操作量である基本操作量として一元化する。このため、複数のアクチュエータの操作量を、簡易にフィードバック補正することができる。
【0024】
手段7記載の発明は、請求項2〜6のいずれかに記載の発明において、前記関係情報は、前記アクチュエータの操作量と該当するポンプの吐出する液体の圧力とについてのピストンの所定位置における関係情報と、前記アクチュエータの操作量に対する前記所定位置の液体の圧力とピストン位置毎の液体の圧力との異同に関する情報とを含み、前記合流部から吐出される液体の圧力を検出する圧力検出手段と、該圧力検出手段の検出結果に基づき前記所定位置における関係情報を補正する手段とを更に備えることを特徴とする。
【0025】
上記発明では、所定位置における関係情報を補正することで、アクチュエータの操作量に対する液体の圧力についてのピストン位置毎の全ての情報を簡易的に補正することができる。すなわち、所定位置における関係情報が補正されると、上記異同に関する情報を用いて、アクチュエータの操作量に対する液体の圧力についてのピストン位置毎の全ての情報が間接的に補正されることとなる。
【0026】
手段8記載の発明は、請求項2〜7のいずれかに記載の発明において、前記複数のポンプのうち吐出する期間が前後する2つのポンプによる液体の吐出期間を互いに重複させて且つ、先行して液体の吐出を開始したポンプを先に液体の吐出状態から吸入状態に移行させることを特徴とする。
【0027】
上記発明では、いずれか1つのポンプの吐出期間において、残りの少なくとも1つのポンプの吸入期間を設けることができる。このため、システム全体としては、常時少なくとも1つのポンプによって液体を吐出させることができる。このため、途切れることなく連続的に液体を吐出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる液体供給システムを高速液体クロマトグラフィに適用した第1の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
図1に、本実施形態にかかる液体供給システムの全体構成を示す。
【0030】
図1では、2つのポンプ装置が設けられている(便宜上、これらを第1ポンプ装置P1、第2ポンプ装置P2という)。これら各ポンプ装置P1,P2は主要な構成としてそれぞれ液体を吸入及び吐出するためのシリンジポンプ11,31と、該シリンジポンプ11,31を駆動するための空圧式の駆動シリンダ21,41とを備えている。各ポンプ装置P1,P2は同様の構成を有するものであるため、以下では第1ポンプ装置P1について構成を詳述する。
【0031】
第1ポンプ装置P1において、シリンジポンプ11は往復動可能なピストン12を有している。ピストン12によってポンプ室13が区画形成されており、ピストン12の位置に応じてポンプ室13の容積が可変とされる。ポンプ室13には液体通路14が接続されている。液体通路14は二方に分岐され、一方の分岐通路である吸入側通路14aには液体タンク51が接続されている。吸入側通路14aには、液体タンク51側からポンプ室13側へと進む方向を順方向とする逆止弁15が設けられている。液体タンク51には検査対象となる液体が貯留されており、同タンク51内の液体は、図示しないポンプにより汲み上げられ、逆止弁15を介してポンプ室13に吸入されるようになっている。
【0032】
また、液体通路14の他方の分岐通路は吐出側通路14bとなっており、その途中には、ポンプ室13側から吐出口52側へと進む方向を順方向とする逆止弁16が設けられている。吐出側通路14bの最下流部には圧力計53と可変絞り54とが設けられている。
【0033】
なお、シリンジポンプ11に設けられる液体通路の他の構成として、シリンジポンプ11に吸入用及び吐出用の2つのポートを設けるとともに、それら各ポートに個別の液体通路を設ける構成とすることも可能である。この場合、吸入用及び吐出用の各液体通路にそれぞれ逆止弁又は流量制御弁が設けられる。
【0034】
上記駆動シリンダ21のシリンダケース22には、ロッド部17を介して上記ピストン12と連結されたピストン23が収容されている。ピストン23は、シリンダケース22内をその軸方向に往復動可能となっている。ピストン23によってシリンダケース22内が2つの圧力室24,25に区画されている。このうち一方の圧力室24はロッド部17側に設けられる閉空間であり、以下これを「ロッド側圧力室24」と言う。また、他方の圧力室25はその逆側に設けられる閉空間であり、以下これを「ヘッド側圧力室25」と言う。なお、説明の便宜上、ピストン23の変位におけるロッド部17側の限界位置を「トップ点」、逆側の限界位置を「ボトム点」と言い、ピストン23がトップ点側に変位することを「上動」、ボトム点側に変位することを「下動」とも言うこととする。
【0035】
上記駆動シリンダ21のピストン23が変位すると、それに連動してシリンジポンプ11のピストン12が変位する。ここで、シリンジポンプ11と駆動シリンダ21とでは、各ピストン12,23の受圧面積が相違している。本実施の形態では、「シリンジポンプ11側のピストン12の受圧面積<駆動シリンダ21側のピストン23の受圧面積」となっており、駆動シリンダ21の作動時には、そのピストン面積比(=駆動シリンダ21側のピストン23の受圧面積/シリンジポンプ11側のピストン12の受圧面積)に応じてシリンジポンプ11の液体吐出圧力が加圧される。この場合、上記面積比により決まる加圧の度合と駆動シリンダ21側圧力とによって、シリンジポンプ11での液体吐出圧力が決定されるようになっている。なお、「シリンジポンプ11側のピストン12の受圧面積>駆動シリンダ21側のピストン23の受圧面積」として構成することも可能であり、かかる構成においては、駆動シリンダ21の作動時に、そのピストン面積比(=シリンジポンプ11側のピストン12の受圧面積/駆動シリンダ21側のピストン23の受圧面積)に応じてシリンジポンプ11の液体吐出圧力が減圧される。
【0036】
上記ロッド部17は、実際には、各ピストン12,23の各別のロッド部からなり、これらの接続点には浮動ジョイント機構27が設けられている。この浮動ジョイント機構27により両ピストン12,23のコジリ等が防止されるようになっている(ただし、同浮動ジョイント機構を省略することも可能である)。
【0037】
電空レギュレータRG1,RG2は駆動シリンダ21の駆動装置を構成するものであり、これら各電空レギュレータRG1,RG2にはそれぞれ、空圧源55よりエア通路56を通じて加圧エアが供給される。一方の電空レギュレータRG1は駆動シリンダ21のロッド側圧力室24に接続され、電空レギュレータRG1によってロッド側圧力室24内の圧力が調節される。また、他方の電空レギュレータRG2は駆動シリンダ21のヘッド側圧力室25に接続され、電空レギュレータRG2によってヘッド側圧力室25内の圧力が調節される。このとき、ロッド側圧力室24内の圧力がヘッド側圧力室25内の圧力を上回るとピストン23がボトム点側に変位し(下動し)、逆にヘッド側圧力室25内の圧力がロッド側圧力室24内の圧力を上回るとピストン23がトップ点側に変位する(上動する)。
【0038】
上記ピストン12及びピストン23を接続するロッド部17には、ロッド部17との連結箇所を通じてピストン12の位置を検出するポテンショメータ26が設けられている。
【0039】
第2ポンプ装置P2は第1ポンプ装置P1と同様の構成を有するため、簡単に説明する。第2ポンプ装置P2において、シリンジポンプ31は往復動可能なピストン32を有しており、ピストン32によってポンプ室33が区画形成されている。ポンプ室33には液体通路34が接続されており、吸入側通路34a及び逆止弁35を介して液体タンク51からポンプ室33に液体が吸入されるとともに、逆止弁36及び吐出側通路34bを介して液体が吐出口52側に吐出される。
【0040】
また、駆動シリンダ41内は、ピストン43によってシリンダケース42内がロッド側圧力室44とヘッド側圧力室45とに区画されている。駆動シリンダ41のピストン43とシリンジポンプ31のピストン32とはロッド部37によって連結されており、駆動シリンダ41のピストン43が変位すると、それに連動してシリンジポンプ31のピストン32が変位する。なお、ロッド部37は、実際には、各ピストン32,43の各別のロッド部からなり、これらの接続点には浮動ジョイント機構47が設けられている。
【0041】
電空レギュレータRG3,RG4は駆動シリンダ41の駆動装置を構成するものであり、これら各電空レギュレータRG3,RG4にはそれぞれ空圧源55より加圧エアが供給される。一方の電空レギュレータRG3は駆動シリンダ41のロッド側圧力室44に接続され、電空レギュレータRG3によってロッド側圧力室44内の圧力が調節される。また、他方の電空レギュレータRG4は駆動シリンダ41のヘッド側圧力室45に接続され、電空レギュレータRG4によってヘッド側圧力室45内の圧力が調節される。
【0042】
上記ロッド部37には、ロッド部37との連結箇所を通じてピストン32の位置を検出するポテンショメータ46が設けられている。
【0043】
制御装置60は、CPU62や不揮発性メモリ64等を備えて構成されており、ポテンショメータ26,46から検出信号が入力される。制御装置60は、ポテンショメータ26,46の検出値に応じて各ポンプ装置P1,P2の電空レギュレータRG1〜RG4に対して操作信号を出力することで、駆動シリンダ21,41を操作する。このとき、各ポンプ装置P1,P2の電空レギュレータRG1〜RG4の操作によって、空圧源55から駆動シリンダ21,41に供給されるエア圧力の切替が順次行われ、それに伴い両ポンプ装置P1,P2による液体の連続吐出が実現されるようになっている。
【0044】
次に、本実施形態にかかる液体吐出の様子を図2のタイムチャートを用いて説明する。詳しくは、図2(a)は、液体の吐出圧力の推移を示す。図2(b)〜図2(d)は、第1ポンプ装置P1について、駆動シリンダ21のロッド側圧力(電空レギュレータRG1の操作圧力)の推移、シリンジポンプ11のピストン12の位置、駆動シリンダ21のヘッド側圧力(電空レギュレータRG2の操作圧力)の推移をそれぞれ示す。また、図2(e)〜図2(g)は、第2ポンプ装置P2について、駆動シリンダ41のロッド側圧力(電空レギュレータRG3の操作圧力)の推移、シリンジポンプ31のピストン32の位置、駆動シリンダ41のヘッド側圧力(電空レギュレータRG4の操作圧力)の推移をそれぞれ示す。
【0045】
図2では、各ポンプ装置P1,P2の初期状態として各駆動シリンダ21,41のピストン23,43がボトム点にある場合を想定しており、各シリンジポンプ11,31では、ポンプ室13,33の容積が最大となり同ポンプ室13,33内に液体が吸入された状態となっている。本例は、液体吐出の開始に伴い先に第1ポンプ装置P1により液体吐出が開始されるともに、その後は両ポンプ装置P1,P2にて交互に液体吐出が行われるようになっている。ただし、制御開始の初期状態は任意である。
【0046】
さてタイミングaでは、第1ポンプ装置P1側において電空レギュレータRG2が操作され、駆動シリンダ21のヘッド側圧力が上昇する。これにより、駆動シリンダ21のピストン23が上動し始め、シリンジポンプ11では、ポンプ室13内の液体がピストン面積比分加圧され、加圧された液体がポンプ室13から吐出される。タイミングbでは、駆動シリンダ21のヘッド側圧力が所定圧力に達することに伴い、液体の吐出圧力が目標圧力(例えば15MPa)に達する。
【0047】
その後、シリンジポンプ11の吐出期間においてピストン12が所定量変位したタイミングcでは、第2ポンプ装置P2側において電空レギュレータRG4が操作され、駆動シリンダ41のヘッド側圧力が徐々に上昇する。タイミングdでは、駆動シリンダ41のヘッド側圧力が所定圧力に達することに伴い、駆動シリンダ41のピストン43が上動し始める。すると、第2ポンプ装置P2側のシリンジポンプ31では、ポンプ室33内の液体がピストン面積比分加圧され、加圧された液体がポンプ室33から吐出される。つまり、タイミングd〜eの期間では、両ポンプ装置P1,P2による液体吐出が重複して行われる。
【0048】
その後、タイミングeでは、第1ポンプ装置P1側において、電空レギュレータRG1の操作により駆動シリンダ21のロッド側圧力が徐々に上昇するとともに、電空レギュレータRG2の操作により駆動シリンダ21のヘッド側圧力が徐々に下降する。これにより、第1ポンプ装置P1側において駆動シリンダ21のピストン23が下動し始め、それに伴うシリンジポンプ11のピストン12の動作によりポンプ室13への液体吸入が開始される。タイミングeの後、第2ポンプ装置P2側のシリンジポンプ31によってのみ液体の吐出が行われる。
【0049】
その後、シリンジポンプ11の吸入期間においてピストン12が所定量変位したタイミングfでは、電空レギュレータRG1の操作により駆動シリンダ21のロッド側圧力が徐々に下降する。
【0050】
タイミングgでは、第1ポンプ装置P1側において電空レギュレータRG2が操作され、駆動シリンダ21のヘッド側圧力が徐々に上昇する。タイミングhでは、駆動シリンダ21のヘッド側圧力が所定圧力に達することに伴い、駆動シリンダ21のピストン23が上動し始める。すると、第1ポンプ装置P1側のシリンジポンプ11では、ポンプ室13内の液体がピストン面積比分加圧され、加圧された液体がポンプ室13から吐出される。つまり、タイミングh〜iの期間では、両ポンプ装置P1,P2による液体吐出が重複して行われる。
【0051】
その後、シリンジポンプ31の吐出期間においてピストン32が所定量変位したタイミングiでは、第2ポンプ装置P2側において、電空レギュレータRG3の操作により駆動シリンダ41のロッド側圧力が徐々に上昇するとともに、電空レギュレータRG4の操作により駆動シリンダ41のヘッド側圧力が徐々に下降する。これにより、第2ポンプ装置P2側において駆動シリンダ41のピストン43が下動し始め、それに伴うシリンジポンプ31のピストン32の動作によりポンプ室33への液体吸入が開始される。タイミングiの後、第1ポンプ装置P1側のシリンジポンプ11によってのみ液体の吐出が行われる。
【0052】
以降、第1ポンプ装置P1側での液体吐出と第2ポンプ装置P2側での液体吐出とが繰り返し行われる。
【0053】
上記電空レギュレータRG1〜RG4の操作信号は、シリンジポンプ11,31のポンプ室13,33内の圧力の指令値に応じて一義的に定まっている。このため、圧力指令値を設定することで、電空レギュレータRG1〜RG4を操作することができる。ただし、電空レギュレータRG1〜RG4を所定の指令値にて操作したときのシリンジポンプ11,31から吐出される液体の圧力は、シリンジポンプ11,31の個体差や経年変化、当該システムのおかれる環境(温度等)、更には、ピストン12,32の位置に応じて変化し得る。このため、電空レギュレータRG1〜RG4を同一の指令値にて操作したとしても、吐出される液体の圧力は一義的に定まらない懸念がある。そこで本実施形態では、第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2のそれぞれについて、指令値と実際の吐出圧力との比(増幅率)をピストン12,32の位置毎に計測して予めテーブルデータとして不揮発性メモリ64に記憶しておく。そして、このテーブルデータを用いて指令値(第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2のアクチュエータ操作量)を設定することで、吐出圧の変動を補償する。
【0054】
図3(a)に、第1ポンプ装置P1の上記テーブルデータを示し、図3(b)に、第2ポンプ装置P2の上記テーブルデータを示す。本実施形態では、シリンジポンプ11,31内でのピストン12,32のストロークを「15mm」としている。そして、上記テーブルデータは、指令値に対する実際の吐出圧の比(増幅率)についてのピストン12,32の位置がストロークの中間位置、すなわち「7.5mm」変位した位置における計測値(基本増幅率)を含んでいる。更に、シリンジポンプ11のピストン12の位置及びシリンジポンプ31のピストン32の位置について、「0.5mm」毎に、指令値に対する実際の吐出圧である増幅率の計測値を上記基本増幅率で除算したものである増幅率比X1,X2を含んでいる。
【0055】
これにより、吐出圧を目標圧力に制御する際には、まず基本増幅率G1,G2にて目標圧力を除算し、これを、ピストン12,32の現在の位置に対応する増幅率比X1,X2で除算した値を、圧力の指令値として設定すればよいこととなる。図4に、目標圧力を「15MPa」としたときの、各ピストン位置での指令値(操作量)を示す。詳しくは、図4(a)は、第1ポンプ装置P1の操作量を示し、図4(b)は、第2ポンプ装置P2の操作量を示す。
【0056】
図示されるように、目標値の「15MPa」を先の図3に示した各基本増幅率G1,G2で除算することで、基本操作量BMV1,BMV2を算出することができる。この基本操作量BMV1,BMV2は、ピストン位置S1,S2が「7.5mm」であるときの操作量となっている。そして、各ピストン位置S1,S2の操作量は、基本操作量BMV1,BMV2を増幅率比X1,X2でそれぞれ除算することで算出される。
【0057】
上記態様にて操作量を決定するなら、第1ポンプ装置P1、第2ポンプ装置P2の製造時の個体差や、ピストン12,32の位置毎の吐出特性を補償しつつ吐出圧をフィードフォワード制御することができる。ただし、第1ポンプ装置P1、第2ポンプ装置P2の経年変化によってその吐出特性が変化したり、これらのおかれた環境によって吐出特性が変化したりする場合には、上記フィードフォワード制御によっては吐出圧を適切に制御することができないおそれがある。そこで、本実施形態では、圧力計53の検出値と目標値との差に基づく吐出圧のフィードバック制御をも併せ行う。以下、これについて詳述する。
【0058】
図10に、本実施形態にかかる吐出圧の制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置60によって、例えば所定周期で繰り替えし実行される。
【0059】
この一連の処理では、まずステップS10において、当該システムに対して吐出開始指令が出されているか否かを判断する。この処理は、外部より制御装置60に入力される指令信号の有無の判断として行うことができる。吐出開始指令が出されていると判断されるときには、ステップS12において、第1ポンプ装置P1の基本増幅率G1を読み出す。続くステップS14においては、目標圧力を基本増幅率G1で除算することで第1ポンプ装置P1の基本操作量BMV1を算出する。続くステップS16においては、第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2を用いた圧力制御を開始する。圧力制御は、吐出停止指令が出されるまで行われる(ステップS18:YES)。
【0060】
そして、吐出停止指令が出されると、ステップS20において、第1ポンプ装置P1の基本増幅率G1及び第2ポンプ装置P2の基本増幅率G2を先の図1に示した不揮発性メモリ64に記憶させる。この処理は、後述するように、基本増幅率G1,G2が、圧力制御中に更新されることがあるために行われるものである。このため、更新された基本増幅率G1,G2を次回使用するために、これらを不揮発性メモリ64に記憶する。なお、実際には、不揮発性メモリ64を、読み出し専用メモリ(ROM)及び電気的書き換え可能な読み出し専用メモリ(EEPROM)を備えて構成し、図3に示した基本増幅率G1,G2についてはROMに、また、更新された基本増幅率G1,G2については、EEPROMにそれぞれ記憶させることが望ましい。これにより、基本増幅率G1,G2が不適切な値に更新された場合であっても、もともとのデータをROM内に保持することができる。
【0061】
なお、上記ステップS10において否定判断されるときや、ステップS20の処理が完了するときには、この一連の処理を一旦終了する。
【0062】
図6に、上記ステップS16の処理のうち、特に第1ポンプ装置P1の吐出処理の手順を示す。
【0063】
この一連の処理では、まずステップS30において、第1ポンプ装置P1の吐出期間であるか否かを判断する。そして、第1ポンプ装置P1の吐出期間であると判断されるときには、ステップS32において、第1ポンプ装置P1のピストン位置S1(ポテンショメータ26による検出値)を取得する。続くステップS34では、第1ポンプ装置P1の最終操作量MV1を算出する。最終操作量MV1は、第1ポンプ装置P1の基本操作量BMV1をピストン位置S1における増幅率比X1で除算することで算出される。なお、ピストン位置S1が先の図3に示したテーブルデータの値と一致しない場合には、補間演算を行うことで増幅率比X1を算出する。
【0064】
続くステップS36では、目標圧力Ptと、圧力計53による圧力検出値Prとを取得する。そしてステップS38においては、ピストン位置S1がそのストロークの中間、すなわち、「7.5mm」であるか否かを判断する。そして、ステップS38において肯定判断されるときには、ステップS40において、圧力検出値Prと目標圧力Ptとの差の絶対値が閾値α以下であるか否かを判断する。この処理は、実際の吐出圧が目標圧力Ptに追従しているか否かを判断するものである。上記閾値αは、実際の吐出圧が目標圧力Ptに追従して定常状態が実現されているときに圧力検出値Prと目標圧力Ptとの間に生じ得る差に応じて設定されている。
【0065】
そして、閾値α以下であると判断されるときには、圧力検出値Prが目標圧力Ptに追従しているため、このときの実際の増幅率は、基本増幅率G1としての最新の値として信頼性の高いものであると考えられる。このため、ステップS42において第1ポンプ装置P1の基本増幅率G1を更新する。この処理は、現在の最終操作量MV1と圧力検出値Prとに基づき基本増幅率G1を算出することで行われる。
【0066】
一方、上記ステップS38において否定判断されるときには、ステップS44において、第1ポンプ装置P1の吐出期間のうちの初期の期間であるか否かを判断する。この処理は、第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2の吐出期間が互いにオーバーラップしているか否かを判断するものである。そして、ステップS44において否定判断されるときや、ステップS40において否定判断されるとき、更にはステップS42の処理が完了するときには、オーバーラップ期間でないことから、ステップS46に移行する。ステップS46においては、目標圧力Ptと圧力検出値Prとの差に基づくフィードバック補正量を算出する。ここでは、目標圧力Ptと圧力検出値Prとの差にゲインを乗算したものを補正量FMVとしてもよい。また、差にゲインを乗算したものと差の微分値にゲインを乗算したものとの和を補正量FMVとしてもよい。
【0067】
続くステップS48では、第1ポンプ装置P1の基本操作量BMV1を補正量FMVで補正する。
【0068】
なお、上記ステップS30において否定判断されるときや、ステップS44において肯定判断されるとき、更にはステップS48の処理が完了するときには、この一連の処理を一旦終了する。
【0069】
図7に、上記ステップS16の処理のうち、特に第2ポンプ装置P2の吐出処理の手順を示す。なお、図7において、先の図6に示した処理と対応する処理は、ステップ番号が「20」異なるものとなっている。
【0070】
この一連の処理では、まずステップS50において、第2ポンプ装置P2の吐出期間であるか否かを判断する。この処理は、先の図6のステップS30と対応するものである。そして、ステップS50において肯定判断されるときには、ステップS51において、第2ポンプ装置P2の基本操作量BMV2を算出する。ここでは、第1ポンプ装置P1の基本操作量BMV1に、第2ポンプ装置P2の基本増幅率G2に対する第1ポンプ装置P1の基本増幅率G1の比を乗算することで、第2ポンプ装置P2の基本操作量BMV2を算出する。
【0071】
続くステップS52では、第2ポンプ装置P2のピストン位置S2(ポテンショメータ46による検出値)を取得する。続くステップS54では、第2ポンプ装置P2の最終操作量MV2を算出する。最終操作量MV2は、第2ポンプ装置P2の基本操作量BMV2をピストン位置S2における増幅率比X2で除算することで算出される。
【0072】
続くステップS56においては、目標圧力Pt及び圧力検出値Prを取得する。そして、ステップS58においては、第2ポンプ装置P2のピストン位置S2がストロークの中間であるか否かを判断する。そして、ステップS58において肯定判断されるときには、ステップS60において、目標圧力Ptと圧力検出値Prとの差の絶対値が閾値α以下であるか否かを判断する。この処理は、先の図6のステップS40と同趣旨である。そして、閾値α以下であると判断されるときには、ステップS62において、基本増幅率G2を更新するとともに、基本操作量BMV1を更新する。ここで、基本増幅率G2を更新する処理については、先の図6のステップS42の処理と同様である。また、基本操作量BMV1を更新する処理は、現在の最終操作量MV2に、第1ポンプ装置P1の基本増幅率G1に対する更新された基本増幅率G2の比を乗算することで行うことができる。
【0073】
一方、ステップS58において否定判断されるときには、ステップS64において第2ポンプ装置P2の吐出期間の初期であるか否かを判断する。この処理は、先の図6のステップS44と対応する。そして、ステップS60、S64において否定判断されるときや、ステップS62の処理が完了するときには、ステップS66において補正量FMVを算出し、ステップS68において第1ポンプ装置P1の基本操作量BMV1を補正する。ちなみに、ステップS66における補正量FMVの算出ゲインと、先の図6のステップS46における補正量FMVの算出ゲインとを、各別に設定してもよい。これにより、第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2の各吐出特性の相違に応じて、それぞれ適切な値にゲインを設定することができる。
【0074】
なお、上記ステップS50において否定判断されるときや、ステップS64において肯定判断されるとき、更にステップS68の処理が完了するときには、この一連の処理を一旦終了する。
【0075】
上記一連の処理では、第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2のいずれの吐出期間であるか否かにかかわらず、フィードバック制御の補正対象パラメータを、第1ポンプ装置P1の基本操作量BMV1に一元化している。このため、フィードバック制御を簡易に行うことができるとともに、フィードバック制御の連続性を保つことができる。特に、フィードフォワード制御の制御誤差の生じる要因としては、第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2のおかれた環境(温度等)の影響が大きいため、第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2間で主な要因が一致している。このため、フィードフォワード制御の制御誤差を補償するフィードバック補正量FMVとして、これら第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2間で同一の値を用いることでその値を適切なものとすることができると考えられる。
【0076】
また、上記一連の処理では、基本増幅率G1,G2を更新することで、第1ポンプ装置P1や第2ポンプ装置P2の経年変化によってその吐出特性が変化したとしても、この変化を基本増幅率G1,G2の変化として簡易に学習することができる。そして、これら基本増幅率G1,G2に基づき算出される基本操作量BMV1,BMV2を増幅率比X1,X2によって除算することで最終操作量MV1,MV2を算出することで、各ピストン位置S1,S2における吐出特性の変化を簡易に補償することができる。しかも、基本増幅率G1,G2は、第1ポンプ装置P1による吐出及び第2ポンプ装置P2による吐出の1周期で更新可能であるため、迅速な対応が可能となる。
【0077】
ちなみに、シリンジポンプを複数備えてこれらの吐出口を逆止弁等を介して接続する場合において、各シリンジポンプの吐出圧を逆止弁の上流側で各別に監視すると、逆止弁の上流及び下流間で圧力差が生じ得るために、吐出圧に制御誤差が生じやすい。これに対し、本実施形態では、上記フィードバック制御や基本増幅率G1,G2の学習補正を、第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2の吐出口の合流部に設けられた単一の圧力計53を用いて行うことで、合流部52の吐出圧を高精度に制御することができる。
【0078】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0079】
(1)吐出する液体の圧力を目標圧力に制御すべく、各ピストン位置S1,S2毎の固有の吐出特性に基づき、各ピストン位置S1,S2における最終操作量MV1,MV2を設定した。これにより、第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2の個体差等の影響を補償することができ、ひいては、液体の圧力をより高精度に制御することができる。
【0080】
(2)先の図3に示したテーブルデータを備えた。これにより、当該システムによる吐出開始直後から関係情報を用いることができるため、吐出開始直後から圧力を高精度に制御することができる。
【0081】
(3)圧力検出値Prの目標圧力Ptへのフィードバック制御を併用した。これにより、第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2の経年変化や、環境変化等に好適に対処することができる。
【0082】
(4)フィードバック補正対象となるパラメータを第1ポンプ装置P1の基本操作量BMV1にて一元化した。このため、第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2の操作量を、簡易にフィードバック補正することができる。
【0083】
(5)第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2のピストンの所定位置における増幅率(基本増幅率G1,G2)と、同基本増幅率G1,G2に対する各ピストン位置S1,S2における増幅率の比(増幅率比X1,X2)とをテーブルデータとして記憶し、基本増幅率G1,G2を学習補正した。これにより、各ピストン位置S1,S2毎の全ての増幅率を簡易的に補正することができる。
【0084】
(6)第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2のうち吐出する期間が前後する2つのポンプによる液体の吐出期間を互いに重複させて且つ、先行して液体の吐出を開始したポンプを先に液体の吐出状態から吸入状態に移行させた。これにより、途切れることなく連続的に液体を吐出させることができる。
【0085】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0086】
本実施形態では、増幅率比X1,X2をも更新する処理を行う。図8に、増幅率比X1,X2の更新処理の手順を示す。この処理は、制御装置60によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0087】
この一連の処理では、まずステップS70において、目標圧力Ptと圧力検出値Prとの差の絶対値が閾値β以下であるか否かを判断する。この処理は、実際の吐出圧が目標圧力Ptに追従しているか否かを判断するものである。そして、安定していると判断されるときには、ステップS72において、ピストン位置S1,S2を検出する。続くステップS74においては、第1ポンプ装置P1の単独吐出期間であるか否かを判断する。そして、第1ポンプ装置P1の単独吐出期間であるときには、ステップS76において、第1ポンプ装置S74の現在のピストン位置S1における増幅率比X1を更新する。
【0088】
すなわち、ステップS74において肯定判断されるときには、第1ポンプ装置P1単独で実際の圧力を目標圧力Ptに追従させている状況にあると考えられる。このため、このときに算出される増幅率比X1が先の図3に示した増幅率比X1と異なる場合には、第1ポンプ装置P1の経年変化等による吐出特性の変化が生じていることを意味している。このため、現在の第1ポンプ装置P1の吐出特性をより高精度に表現する増幅率比X1とするために、増幅率比X1を更新する。ここで、第1ポンプ装置P1の増幅率比X1の更新は、ピストン位置S1が先の図3のテーブルデータに定義された位置であるときにおける圧力検出値Prによってそのときの基本操作量BMV1を除算した値を更新値とすることで行うことができる。
【0089】
一方、ステップS74において否定判断されるときには、ステップS78において第2ポンプ装置P2の単独吐出期間であるか否かを判断する。そして第2ポンプ装置P2の単独吐出期間であると判断されるときには、ステップS80において、現在のピストン位置S2における第2ポンプ装置P2の増幅率比X2を更新する。この処理は、上記ステップ
S76の処理と同一趣旨であり、且つ同様にしてなされる処理である。なお、上記ステップS70、S78において否定判断されるときや、ステップS76、S80の処理が完了するときには、この一連の処理を一旦終了する。
【0090】
なお、実際には、不揮発性メモリ64を、ROM及びEEPROMを備えて構成し、先の図3に示した増幅率比X1,X2についてはROMに、また、更新された増幅率比X1,X2については、EEPROMにそれぞれ記憶させることが望ましい。これにより、増幅率比X1,X2が不適切な値に更新された場合であっても、もともとのデータをROM内に保持することができる。
【0091】
以上説明した本実施形態によれば、先の第1の実施形態の上記(1)〜(6)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0092】
(7)第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2のいずれか1つのみが吐出動作を行う期間において、その増幅率比X1,X2を更新した。これにより、第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2の経年変化や環境変化に起因して取得したテーブルデータの増幅率比X1,X2が真の値からずれる際に、これを更新することができる。
【0093】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第2の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0094】
本実施形態では、更新される増幅率比X1,X2が隣接するピストン位置間で大きく異なるときには、増幅率比X1,X2を更新するピストン位置間隔を縮小する処理を行う。図9に、増幅率比X1,X2の更新処理の手順を示す。この処理は、制御装置60によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0095】
この一連の処理では、まずステップS90において、第1ポンプ装置P1の増幅率比X1{S1(n)}又は第2ポンプ装置P2の増幅率比X2{S2(n)}が更新されたか否かを判断する。そして、更新されたと判断されるときには、更新された増幅率比X1{S1(n)}と隣接する増幅率比X1{S1(n−1)}、X1{S1(n+1)}との差の絶対値、又は更新された増幅率比X2{S2(n)}と隣接する増幅率比X2{S2(n−1)}、X2{S2(n+1)}との差の絶対値が所定値ε以上であるか否かを判断する。この処理は、先の図3に示した増幅率比X2の定義されるピストン位置間隔(ここでは、「5mm」)では、ピストン位置の変化に対する吐出特性の変化を好適に補償するフィードフォワード制御をすることができないか否かを判断するものである。すなわち、所定値ε以上であるときには、上記ピストン位置間隔の間に吐出特性が大きく変化することから、ピストン位置間隔の間の位置における最終操作量MV1,MV2を補間演算によって算出したのでは、その値を高精度に算出することが困難となり、上記フィードフォワード制御の精度が低下する懸念がある。
【0096】
このため、所定値ε以上であると判断されるときには、ステップS94において、更新するピストン位置間隔を(例えば「2.5mm」に)縮小する。なお、上記ステップS90,S92において否定判断されるときや、ステップS94の処理が完了するときには、この一連の処理を一旦終了する。
【0097】
以上説明した本実施形態によれば、先の第2の実施形態の上記(1)〜(6)の効果や先の第2の実施形態の上記(7)の効果に加えて、更に以下の効果が得られるようになる。
【0098】
(8)更新される増幅率比X1,X2が隣接するピストン位置間で大きく異なるとき、増幅率比X1,X2を更新するピストン位置間隔を縮小する処理を行った。これにより、増幅率比X1,X2を学習する間隔を、これに基づくフィードフォワード制御の精度を確保するために適切な値とすることができる。
【0099】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0100】
・基本増幅率G1,G2は、ストロークの中間位置において定義するものに限らない。ただし、中間位置近傍の領域においては、最終操作量MV1,MV2に対する吐出圧が安定する傾向にあることに鑑みれば、中間位置近傍の領域において定義することが望ましい。
【0101】
・ピストン12,32の位置を検出する位置検出手段としては、ポテンショメータ26,46に限らない。例えば駆動シリンダ21,41のピストン23,43の位置を段階的に検出するリミットスイッチであってもよい。
【0102】
・更新される基本増幅率G1,G2や、増幅率比X1,X2が、更新前の値から大きく変化するときには、制御に異常が生じていると判断して外部(ユーザ)に警告するようにしてもよい。
【0103】
・フィードバック補正処理は、上記態様にて行うものに限らない。例えば基本操作量BMV1,BMV2を増幅率比X1,X2で除算した値に、フィードバック補正量を加算する構成としてもよい。この際、補正量は、例えば比例項、積分項及び微分項の和としてもよい。
【0104】
・上記各実施形態では、実際の吐出圧が目標圧力Ptに追従しているか否かを、圧力検出値Prと目標圧力Ptとの差の絶対値が閾値α、β以下であるか否かによって判断したが、これに限らない。例えば圧力検出値Prと目標圧力Ptとの差の絶対値が閾値α、β以下となる状態が所定時間(又は所定ピストン変位量)継続したか否かによって判断してもよい。更に、例えば上述したように基本操作量BMV1,BMV2を増幅率比X1,X2で除算した値に、フィードバック補正量を加算する構成とする場合、積分項の変化量が所定値以下であるときとしてもよい。
【0105】
・第2、第3の実施形態において、先の図6のステップS40、S42における基本増幅率G1の更新処理や、先の図7のステップS60、S62における基本増幅率G2の更新処理を省いてもよい。これによっても、先の図8の処理を行うことで、第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2の経年変化等に起因する吐出特性の変化を好適に補償することができる。
【0106】
・第2、第3の実施形態については、当該システムの構築前に予め先の図3に示したテーブルデータを作成しておかなくてもよい。この場合であれ、先の図8に示した処理によって、システムによる圧力制御の開始後に、テーブルデータを作成することができる。
【0107】
・先の図6のステップS46、S48のフィードバック補正処理や、先の図7のステップS66、S68のフィードバック補正処理については、これを行わなくてもよい。この場合であっても、先の図6のステップS40、S42における基本増幅率G1の更新処理や、先の図7のステップS60、S62における基本増幅率G2の更新処理、先の図8に示した処理を用いることで、第1ポンプ装置P1及び第2ポンプ装置P2の経年変化や環境変化等に起因する吐出特性の変化を好適に補償することができる。
【0108】
・液体供給システムとしては、シリンジポンプを2つ備えるものに限らず、3つ以上備えるものであってもよい。この場合であっても、吐出する期間が前後する2つのポンプによる液体の吐出期間を互いに重複させて且つ、先行して液体の吐出を開始したポンプを先に液体の吐出状態から吸入状態に移行させる設定とすることが望ましい。また、シリンジポンプを1つのみ備えるものにあっても、ピストン位置毎に吐出圧が異なる場合には、先の図3に例示したテーブルデータを備えたり、これを学習補正したりすることは有効である。
【0109】
・先の図3に示したテーブルデータを、異なる圧力指令値毎(例えば15MPaと30MPa)に、各別に設けてもよい。これによれば、吐出特性が吐出圧力に応じて変化する場合であっても、吐出圧をより高精度に制御することができる。また、増幅率比X1,X2や基本増幅率G1,G2を、吐出圧力に応じて各別に更新してもよい。
【0110】
・第3の実施形態において、増幅率比X1,X2を定めるピストン位置間隔の可変設定は、全ての領域において同一の間隔で一律縮小するものに限らない。例えば変化の大きい領域だけ間隔を縮小してもよい。
【0111】
・液体供給システムとしては、高速液体クロマトグラフィに搭載されるものに限らない。例えば半導体製造工程において、半導体ウエハに所定量ずつ薬液を塗布する薬液供給システムに適用してもよい。なお、液体供給システムを、液体の流量を制御する装置に搭載する場合、ピストン12,32の変位量に基づき供給する液体流量を算出するようにしてもよい。これにより、液体の流量を検出するマスフローセンサ等を用いることなく、流量を検出することができる。また、これに代えて、マスフローセンサ等の流量検出手段を備える装置に適用するに際し、流量の検出値を目標値に制御すべく、目標圧力Ptを操作してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】第1の実施形態にかかる液体供給システムの全体構成を示す図。
【図2】同実施形態にかかる液体の吐出処理の態様を示すタイムチャート。
【図3】同実施形態の備えるテーブルデータを示す図。
【図4】同実施形態にかかるフィードフォワード操作量の設定態様を例示する図。
【図5】同実施形態にかかる液体の吐出処理の手順を示す流れ図。
【図6】同実施形態にかかる第1ポンプ装置の吐出処理の手順を示す流れ図。
【図7】同実施形態にかかる第2ポンプ装置の吐出処理の手順を示す流れ図。
【図8】第2の実施形態にかかる第1ポンプ装置及び第2ポンプ装置の吐出特性の学習補正の処理手順を示す流れ図。
【図9】第3の実施形態にかかる増幅率比X1の設定間隔の変更処理の手順を示す流れ図。
【図10】従来の液体供給システムの全体構成を示す図。
【符号の説明】
【0113】
11、31…シリンジポンプ、12,32…ピストン、21,41…駆動シリンダ、60…制御装置、P1…第1ポンプ装置、P2…第2ポンプ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンの往復動作に伴って液体の吸入及び吐出を行うポンプと、圧縮流体によって前記ポンプのピストンを変位させるアクチュエータと、前記ピストンの位置を検出する位置検出手段と、前記アクチュエータを操作することで、前記ポンプから吐出される液体の圧力を制御する制御装置とを備える液体供給システムにおいて、
前記アクチュエータの操作量と前記ポンプの吐出する液体の圧力とについてのアクチュエータ固有の関係情報であって且つ前記ポンプのピストン位置毎の関係情報を記憶する記憶手段と、
前記ポンプの吐出する液体の圧力をその目標値に制御すべく、前記位置検出手段の都度の検出値に応じた前記アクチュエータのそれぞれの操作量を、前記関係情報及び前記目標値に基づき設定する設定手段とを備えることを特徴とする液体供給システム。
【請求項2】
ピストンの往復動作に伴って液体の吸入及び吐出を行う複数のポンプと、圧縮流体によって前記複数のポンプのそれぞれのピストンを変位させる複数のアクチュエータと、前記ピストンの位置を検出する位置検出手段と、前記複数のアクチュエータを操作することで、前記複数のポンプの吐出口の合流部を介して吐出される液体の圧力を制御する制御装置とを備える液体供給システムにおいて、
前記複数のアクチュエータのそれぞれの操作量と該当するポンプの吐出する液体の圧力とについての各アクチュエータ固有の関係情報であって且つ該当するポンプのピストン位置毎の関係情報を記憶する記憶手段と、
前記合流部を介して吐出される液体の圧力をその目標値に制御すべく、前記位置検出手段の都度の検出値に応じた前記複数のアクチュエータのそれぞれの操作量を、前記関係情報及び前記目標値に基づき設定する設定手段とを備えることを特徴とする液体供給システム。
【請求項3】
前記関係情報として前記記憶手段に記憶されるデータには、前記各ポンプの吐出する液体の圧力と操作量との関係についての予め作成されたテーブルデータが含まれることを特徴とする請求項2記載の液体供給システム。
【請求項4】
前記合流部から吐出される液体の圧力を検出する圧力検出手段と、
前記複数のポンプのいずれか一つのみが吐出動作を行う期間において、該いずれか1つのポンプの吐出する液体の圧力と該当するアクチュエータの操作量とについての前記位置検出手段の検出値毎の関係情報を学習する学習手段とを更に備えることを特徴とする請求項2又は3記載の液体供給システム。
【請求項5】
前記合流部から吐出される液体の圧力を検出する圧力検出手段と、
該圧力検出手段の検出値を前記目標値に追従させるべく、前記複数のアクチュエータの操作量をフィードバック補正する補正手段とを更に備えることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の液体供給システム。
【請求項6】
前記補正手段は、前記アクチュエータのうちのいずれか1つがピストンの所定位置において前記目標値を実現するための操作量である基本操作量を補正するものであり、
前記設定手段は、前記基本操作量を、前記位置検出手段の検出値及び前記関係情報に基づき補正することで前記アクチュエータの操作量を設定することを特徴とする請求項5記載の液体供給システム。
【請求項7】
前記関係情報は、前記アクチュエータの操作量と該当するポンプの吐出する液体の圧力とについてのピストンの所定位置における関係情報と、前記アクチュエータの操作量に対する前記所定位置の液体の圧力とピストン位置毎の液体の圧力との異同に関する情報とを含み、
前記合流部から吐出される液体の圧力を検出する圧力検出手段と、
該圧力検出手段の検出結果に基づき前記所定位置における関係情報を補正する手段とを更に備えることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の液体供給システム。
【請求項8】
前記複数のポンプのうち吐出する期間が前後する2つのポンプによる液体の吐出期間を互いに重複させて且つ、先行して液体の吐出を開始したポンプを先に液体の吐出状態から吸入状態に移行させることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の液体供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−223550(P2008−223550A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60726(P2007−60726)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】