説明

液体吐出ヘッド、ヘッドカートリッジ、インクジェット記録装置、及び薬剤吸入装置

【課題】 微小滴を形成する液体吐出ヘッドにおいて、吐出効率が高く、微小滴を安定して長い間吐出し続ける高耐久性の液体吐出ヘッド、及び液体吐出装置を提供する。
【解決手段】 液流路3と、液体を滴として吐出するための吐出口4が開口した吐出口プレート5と、前記吐出口4に対応して設けられ、前記液体に与えるエネルギを発生させるエネルギ発生素子1とを有し、前記吐出口4には、前記吐出口プレート5の前記吐出口4が開口した面に対して凹部となる位置の略中央に細孔7aを配した絞り部7が設けられ、前記液体が、前記絞り部7が前記液体中に位置するように前記吐出口4内でメニスカス8を形成して保持される液体吐出ヘッドにおいて、前記絞り部7が前記エネルギ発生素子1によるエネルギによって変位するのを抑制する抑制手段7bを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録分野において記録用のインクを吐出するのに使用されるインクジェット(液体)吐出ヘッド、医療分野において液状薬剤を霧状として肺吸入させるさいに使用される薬剤吸入装置、液体を微小液滴にして液体を塗布する、とくに立体物へ液体を塗布するのに有効な塗布装置などに好適に用いられる、液体吐出ヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット吐出ヘッドの記録品位に対する要求はさらに高まっており、近年ではとくに、記録媒体に付着したインクの粒状感を目立たなくするために、吐出する液滴の微小化の要求が増大していることは知られている(例えば、特許文献1ないし4参照)。
液滴の体積がサブピコリットルオーダー以下にまで微小化することを達成できれば、インクジェット記録分野だけでなく、他の分野への応用も考えられる。例えばサブピコリットルオーダー以下といった極めて微小な液滴を吐出する液体吐出ヘッドが提案されている。
特許文献1ないし特許文献3には、サブピコリットルオーダー以下の微小な液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの構成が提案されている。特許文献4には、口腔及び/または鼻腔経由でタンクの内容物(ニコチン、アスコルビン酸、メントール、その他各種香料)を適量吸入させる少なくとも微小液滴噴射機構と、この微小液滴噴射機構に繋がったタンクと、噴射量調整機構と、呼吸感知機構からなる吸入装置が提案されている。
【特許文献1】特開2003−154655公報
【特許文献2】特開2003−154664公報
【特許文献3】特開2003−154665公報
【特許文献4】特開2001−161819公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1ないし特許文献3に開示された液体吐出ヘッドでは、吐出開始前は、吐出口形成部材の吐出口においてメニスカスが形成され、絞り部の細孔が液中に位置する状態である。そして、液吐出のために発熱素子を駆動すると、気泡が発生、成長し、それに伴い気泡と吐出口との間にある液体は少なくとも吐出口側に移動する。
このとき、液体は吐出口側への移動にさいして、絞り部の細孔を通過する。その結果、細孔を通過した後の液体の移動速度がその通過前より格段と速くなり、さらに、吐出口を開口する凹部内の液体の移動において、細孔に対応する流速が相対的に速くなる。
したがって、吐出口におけるメニスカスの、細孔に相対する中央部が盛り上がって液滴が吐出される。すなわち、吐出口を開口する凹部内の液体の全体的な吐出にならないので、極微小の液滴を吐出することが可能である。
しかしながら、発熱素子を駆動し発生した気泡は数十KHzの周波数で数μm(従来例の実施例では1μm)の厚さの絞り部に衝撃を与えることになり、絞り部の耐久性が悪いといった課題が生じる。とくに絞り部の固定端に亀裂が入って破損するケースが多く見られる。
また、発熱素子の熱によって液体が気化してできた気泡からの圧力は液体を絞り部の細孔を通過させるために使われるが、気泡を絞り部へ接触させるので、直接気泡の力が直接絞り部に伝わり絞り部が変位することで気泡の力がロスすることになり、液滴の吐出に使われるエネルギ効率が悪くなる。
そこで、本発明の目的は、上述した実情を考慮して、微小滴を形成する液体吐出ヘッドにおいて、吐出効率が高く、微小滴を安定して長い間吐出し続ける高耐久性の液体吐出ヘッド、液体吐出装置、及び薬剤吸入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、液流路と、液体を滴として吐出するための吐出口が開口した吐出口プレートと、前記吐出口に対応して設けられ、前記液体に与えるエネルギを発生させるエネルギ発生素子とを有し、前記吐出口には、前記吐出口プレートの前記吐出口が開口した面に対して凹部となる位置の略中央に細孔を配した絞り部が設けられ、前記液体が、前記絞り部が前記液体中に位置するように前記吐出口内でメニスカスを形成して保持される液体吐出ヘッドにおいて、前記絞り部が前記エネルギ発生素子によるエネルギによって変位するのを抑制する抑制手段を備えた液体吐出ヘッドを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、前記凹部の絞り部にリブを有する請求項1記載の液体吐出ヘッドを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、前記凹部の絞り部に有するリブが前記細孔の一部を成すことが無い請求項2記載の液体吐出ヘッドを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、前記凹部の前記絞り部の固定端での厚みが前記細孔近傍での厚みよりも厚い請求項1記載の液体吐出ヘッドを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、前記エネルギ発生素子が発熱素子であり、この発熱素子の熱によって前記液体が気化した気泡を前記絞り部に接触させる請求項1ないし4のいずれか1項記載の液体吐出ヘッドを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、前記絞り部が前記吐出口プレートの厚さ方向の間の位置に設けられている請求項1ないし5のいずれか1項記載の液体吐出ヘッドを特徴とする。
また、請求項7に記載の発明は、インク滴を吐出するインクジェットヘッドとこのインクジェットヘッドにインクを供給するインクタンクを一体化したヘッドカートリッジにおいて、前記インクジェットヘッドが請求項1ないし6のいずれか1項記載の液体吐出ヘッドであるヘッドカートリッジを特徴とする。
また、請求項8に記載の発明は、インク滴を吐出するインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドが請求項1ないし6のいずれか1項記載の液体吐出ヘッドあるいは請求項7記載のヘッドカートリッジであるインクジェット記録装置を特徴とする。
また、請求項9に記載の発明は、前記液体が、肺吸入に用いられる薬剤である、請求項1ないし6のいずれか1項記載の液体吐出ヘッド及びその液体吐出ヘッドを搭載した薬剤吸入装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、絞り部が、前記エネルギ発生素子によるエネルギによって変位するのを抑制することによって、数十KHzの周波数で発熱素子を駆動し発生した気泡が数μmの厚さの絞り部に衝撃を与えることがあっても、絞り部の固定端での破損がなくなり、絞り部の耐久性の向上に繋がって、微小滴を安定して長い間吐出し続けることが可能となる。
また、エネルギ発生素子のエネルギは液体が絞り部の細孔を通過するために使われるが、そのエネルギは有効に液滴の吐出に使われるので、液滴の吐出に使われるエネルギ効率が高くなる。
さらに、本発明による液体吐出ヘッドを用いると、より小さな微小滴を高速で吐出可能であり、そのためより多くの薬液を口や鼻孔から効率よく肺まで到達させることが可能な吸入装置が実現可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明における「記録」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を被記録媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を被記録媒体に付与することにも関する。
図1は本発明による液体吐出ヘッドの第1の実施の形態を示す平面図である。図2は図1の液体吐出ヘッドのX−X線断面図である。図1に示す第1の実施の形態の液体吐出ヘッドでは、液体を吐出するためのエネルギ発生素子である発熱素子1が基板2上に設けられている。
発熱素子1は間隔規定部材6によって画成された各液流路3に対応して配置されている。基板2は本実施の形態では面方位<100>のシリコン単結晶で形成されている。基板2の上面には、発熱素子1、この発熱素子1を駆動するための駆動トランジスタ等からなる駆動回路が配置されている。
基板2の上面には、また、配線板と接続するためのコンタクトパッド、駆動回路とコンタクトパッドとを接続する配線等が半導体プロセスを用いて形成されているが、図1では本発明に関わる主要部のみを示している。
図1では、発熱素子1及び液流路3は3つしか示していないが、実際には、1枚の基板2上に複数の発熱素子1が多数配列されており、発熱素子1ごとに液流路3が配置されている。
なお、エネルギ発生素子は発熱素子1のような電気熱変換素子に限らず、圧電素子のような振動エネルギ発生素子であってもよい。間隔規定部材6により画成された液流路3は、液体を滴として吐出するための吐出口4が開口した吐出口プレート5と、この吐出口プレート5と基板2の間の間隔を規定する間隔規定部材6とにより囲まれて、発熱素子1に対応して構成されている。
【0007】
液流路3へはインク供給路11を介して共通液室12から液が供給される。吐出口4には、吐出口プレート5の吐出口4が開口した面である吐出口面5aに対して凹となる位置に、絞り部7、すなわち吐出口4の横断面積を他の部分と比較して急激に絞り込んだ部分が設けられている。
また、吐出口4の凹部内は親水性表面であり、吐出口4の周辺の吐出口面5aは撥水性表面となっている。よって、吐出される液体Lは吐出口4内において、吐出口面5aと絞り部7との間でメニスカス8を形成して保持される。
したがって、絞り部7は液流路3から吐出口プレート5の吐出口面5aまでの経路における液L中に位置している。吐出口4は600dpi(約42μm)の密度で並んでおり、吐出口4の開口径は10μm、絞り部7での開口領域である細孔7aの孔径は3μm、発熱素子1は10μm四方の正方形とした。
また、吐出口プレート5の厚さは5μm、液流路3の高さは5μmとした。絞り部7の厚さは細孔7aの位置で1μm、絞り部7の固定端7bの位置で2μmとした。絞り部7は細孔7aから固定端7bにかけて連続的に厚さが変化(テーパー状の漸増)している。
本発明の各実施形態では、絞り部7がエネルギ発生素子1によるエネルギによって変位するのを抑制する抑制手段として、絞り部7の肉厚を内径側と外径側とで異ならせた構成が特徴的である。
【0008】
次に、このような形態の液体吐出ヘッドの吐出動作を説明する。図3ないし図7は図1の第1の実施の形態の液体吐出ヘッドを駆動させたときの液体吐出の様子を示している。
図3は図1の第1の実施の形態の液体吐出ヘッドの吐出開始前の状態を示す断面図である。図3に示すように、吐出口プレート5の吐出口4において充填された液体Lにメニスカス8が形成され、絞り部7の細孔7aが液中に位置する状態である。
図4は絞り部の細孔に相対するメニスカスの中央部が盛り上がる状態を示す断面図である。液吐出のために発熱素子1に電圧を印加すると、図4に示すように発熱素子1が発熱する。それにより発熱素子1表面と接する液流路3の液体が加熱され、その液体に膜沸騰に伴う気泡が発生する。
膜沸騰に伴う気泡12が発生すると、その気泡12の体積は急峻に成長するため、それに伴い液体は下流側(吐出口4側)及び上流側(液体供給側)に移動する。したがって、吐出口4に対応する液体表面のメニスカス8の、細孔7aに相対する中央部が盛り上がってくる。
【0009】
図5はメニスカスが尾を長く引いた形状に盛り上がった状態を示す断面図である。さらに気泡12が成長すると、図5に示すように、メニスカス8が尾を長く引いた形状に盛り上がる。
このとき、液体は吐出口4側への移動にさいして、絞り部7の細孔7aを通過する。その結果、細孔7aの通過後の液体の移動速度がその通過前より格段と速くなり、さらに、吐出口4を開口する凹部内の液体の移動において、細孔7aに対応する流速が相対的に速くなる。
図6はメニスカスの尾が分離されて形成される液滴を示す断面図である。発熱素子1に印加している電圧を切ると気泡12は収縮し、それに伴いメニスカス8面は液流路3内の負圧により下方へ変位する。絞り部7の下方への変位によって、メニスカス8の尾が分離され、液滴13が形成される。
本発明の液体吐出ヘッドによれば、発熱素子1の熱によって液体が気化してできた気泡12は液体が絞り部7の細孔7aを通過するために使われるが、気泡12の力は有効に液滴の吐出に使われる。その結果、効率よくエネルギを液体に伝えることができる。
また、絞り部7の固定端7bが細孔7a近傍と較べて厚くなっているので、絞り部7の厚さが均一な従来例と比較して絞り部7が気泡12の圧力を受けても変位し難く、絞り部7の固定端7bでの破損は抑えられ、絞り部7の耐久性が向上した。つまり、絞り部7の断面形状が、絞り部がエネルギ発生素子によるエネルギによって変位するのを抑制する抑制手段を構成している。
【0010】
図7は気泡が消滅し初期状態に戻り、次の電圧が印加されるまでの待機状態にあることを示す断面図である。図7に示すように、気泡12が消滅し初期状態に戻り、次の電圧が印加されるまで待機状態となる。
吐出口4を開口する凹部内の液体の全体的な吐出にならないので、1pl(ピコリットル)以下の極微小の液滴を吐出することが可能である。また、細孔7aが液中に位置するように吐出口4を開口する凹部内に液体が溜まっているため、細孔7a内の液体が乾燥によって目詰まりを起こすことがなく、吐出開始から良好な液滴を吐出することができる。
以上の説明は熱エネルギによる膜沸騰により生じる気泡の圧力を利用して、吐出口よりインク等の液体を吐出するサーマルインクジェット方式を例としたが、吐出原理はこれに限られるものではない。
例えば、圧電素子の変位を用いて液体を吐出する圧電型、静電気力によって振動板を変位させ振動板の復元力によって液体を吐出する静電型などにも同様に適用できる。
しかし、エネルギ発生手段によって押し出される液体の体積である排除体積はサーマルインクジェット方式では、その他の方式よりも大きい。圧電型や静電型では、排除体積は変位する領域の面積と、変位量の積であり、サーマルインクジェット方式では気泡の体積となる。
また、サーマルインクジェット方式では本実施の形態に示したように、気泡の力を直接絞り部に伝えることができるが、その他の方式ではこのような動作はできない点からも、サーマルインクジェット方式を好適に用いることができる。
600〜2400dpiからなる吐出口4のピッチサイズにおいては、絞り部7の厚さは、比較的ヤング率の小さい樹脂材料では1μm〜10μm、ヤング率が100〜300GPaである比較的硬い材料、例えば、金属、シリコンあるいは金属酸化物、金属窒化物、シリコン酸化物、シリコン窒化物などでは0.1μm〜3μmを用いることができる。
歩留り、生産性の点を考慮に入れると0.2μm〜1.5μmがさらに好適である。絞り部7はまた単層だけではなく、積層でもよい。これらの無機材料膜は、スパッタ、プラズマCVD、蒸着などの成膜手段により容易に、制御性良く作製が可能である。
【0011】
また、絞り部7を形成する部材と、吐出口4が形成される部材を別の材料で形成することも可能である。このような構成とすることによって、絞り部7をスパッタ、プラズマCVD、蒸着などの薄膜成膜により厚さ精度よく作製できる。
また、細孔7aはドライエッチ、ウェットエッチ、レーザ加工などの方法により、精度よく、均一に、生産性良く作製することが可能である。その上に3〜10μmと比較的厚く形成可能な樹脂などで吐出口4を形成することが可能である。樹脂に感光性樹脂を使い吐出口4を作製することも可能である。
また、レーザ加工、マスキングしてエッチングすることによる吐出口4の形成も可能である。本発明の液体吐出ヘッドは、微小な液滴を吐出(噴霧も含む)するための装置に好適に用いることができる。
その具体的な例としては、例えば、インクジェット記録分野におけるインクジェット記録ヘッドや、医療分野における薬剤吸入用のヘッドが挙げられる。本発明の液体吐出ヘッドをインクジェット記録ヘッドとして用いる場合は、吐出口を1列または複数列に配列して構成する。
吐出する液体としては、インクや、記録シートへのインクの滲みを防止するためにインクに先立って記録シートへ付着させる表面処理液などの記録用液体が用いられる。
吐出口4の配列方向及び配列長さを適宜設定することで、シリアルタイプのインクジェット記録装置に用いられるインクジェット記録ヘッドとすることもできるし、ラインタイプのインクジェット記録装置に用いられるインクジェット記録ヘッドとすることもできる。
また、本発明の液体吐出ヘッドを薬剤吸入用のヘッドとして用いる場合は、液体吐出ヘッドを薬剤のディスペンサと連結した構成とし、吐出する液体としては、インスリン、人成長ホルモン、性腺刺激ホルモンなどの蛋白製剤、ニコチン、または麻酔薬などが用いられる。
【0012】
図8は図1に示した液体吐出ヘッドの第1の変形例を示す平面図である。図9は図8の液体吐出ヘッドの第1の変形例のX−X線断面図である。図8に図1に示した液体吐出ヘッドの第1の変形例を示しており、共通の部位は同一番号を付して説明する。簡単化のため1つの液流路のみを示している。
図8及び図9に示す第1の変形例では、絞り部7によって形成される細孔7aの近傍の厚さは均一で、固定端7b近傍の厚さのみが厚くなっている点が、図1に示したものと異なっている。
このように、絞り部7の固定端7b近傍のみの厚さを厚くするだけでも絞り部7の面積、形状、厚さ、材質などによっては十分に機能する。
吐出口4の凹部内の絞り部7の固定端7b近傍の厚さを厚くする。これにより、発熱素子1を駆動し発生した気泡が絞り部7を押し上げようとしても固定端7b近傍の厚さが厚いことによって絞り部7の変位は抑制される。したがって、絞り部7の耐久性の向上に繋がって、微小滴を安定して長い間吐出し続けることが可能となる。
発熱素子1の熱によって液体が気化してできた気泡は液体が絞り部7の細孔7aを通過するために使われるが、気泡の力は有効に液滴の吐出に使われる。その結果、効率よくエネルギを液体に伝えることができる。
また、絞り部7の固定端7bが細孔7a近傍と較べて厚くなっているので、絞り部7が気泡(図示せず)の圧力を受けても変位し難く、絞り部7の固定端7bでの破損は抑えられ、絞り部7の耐久性が向上した。
吐出口4は600dpi(約42μm)で並んでおり、吐出口4の開口径は10μm、絞り部7での開口領域である細孔7aの孔径は3μm、発熱素子1は10μm四方の正方形とした。また、吐出口プレート5の厚さは5μm、液流路3の高さは5μmとした。
絞り部7の厚さは細孔7aの場所で1μm、固定端7b近傍の厚さは、1μmのR(曲線)を付け、固定端7bでは絞り部7の厚さを含め2μmとしている。絞り部7の固定端7bから1μmの位置で、絞り部7の厚さの1μmとなるよう徐々に厚さを変化させている。
【0013】
図10は本発明による液体吐出ヘッドの第2の実施の形態を示す平面図である。図11は図10の液体吐出ヘッドのX−X線断面図である。図10は本発明による液体吐出ヘッドの第2の実施の形態を示しており、図1の第1の実施の形態共通の部位は同一符号を付して説明する。
図10に示す第2の実施の形態では、吐出口4の凹部内の絞り部7上面に細孔7aから固定端7bにかけて、放射状に4本のリブ(突条)9を設けている。ここではリブ9を放射状に4本設けているが、4本に限ったことではなく、液滴を噴射させる上で絞り部7の変位が問題にならなければ2本でも、3本でも良くまた5本以上でもかまわない。
これは絞り部7の面積、形状、厚さ、材質などによって適宜選ぶことができる。吐出口4の凹部内の絞り部7上にリブ9を設けることにより、発熱素子1を駆動し発生した液流路3内の気泡が絞り部7を押し上げようとしてもリブ9により絞り部7の変位は抑制される。
これが絞り部7の耐久性の向上に繋がって、微小滴を安定して長い間吐出し続けることが可能となる。発熱素子1の熱によって液体が気化してできた気泡は液体が絞り部7の細孔7aを通過するために使われるが、気泡の力は有効に液滴の吐出に使われる。その結果、効率よくエネルギを液体に伝えることができる。
吐出口4は600dpi(約42μm)で並んでおり、吐出口4の開口径は10μm、絞り部7での開口領域である細孔7aの孔径は3μm、発熱素子1は10μm四方の正方形とした。
また、吐出口プレート5の厚さは5μm、液流路3の高さは5μmとした。絞り部7の厚さは細孔7aの場所で1μm、リブ9の厚さは絞り部7の厚さを含めて2μmとした。
【0014】
図12は図10の本発明による液体吐出ヘッドの第2の実施の形態の変形例を示す平面図である。図13は図12の液体吐出ヘッドのX−X線断面図である。図12は、図10に示す液体吐出ヘッドの変形例を示しており、共通の部位は同一番号を付して説明する。
この図に示す変形例では、絞り部7の細孔7aと固定端7bとの間にリング状のリブ9を設けている。ここではリブ9をリング状に1本設けているが、1本に限ったことではなく、液滴を噴射させる上で絞り部7の変位が問題にならないよう2本以上同心円状に設けてもかまわない。
これは絞り部7の面積、形状、厚さ、材質などによって適宜選ぶことができる。吐出口4の凹部内の絞り部7上にリブ9を設けることにより、発熱素子1を駆動し発生した気泡が絞り部7を押し上げようとしてもリブ9により絞り部7の変位は抑制される。
したがって、絞り部7の耐久性の向上に繋がって、微小滴を安定して長い間吐出し続けることが可能となる。発熱素子1の熱によって液体が気化してできた気泡は液体が絞り部7の細孔7aを通過するために使われるが、気泡の力は有効に液滴の吐出に使われる。その結果、効率よくエネルギを液体に伝えることができる。
吐出口4は600dpi(約42μm)で並んでおり、吐出口4の開口径は10μm、絞り部7での開口領域である細孔7aの孔径は3μm、発熱素子1は10μm四方の正方形とした。
また、吐出口プレート5の厚さは5μm、液流路3の高さは5μmとした。絞り部7の厚さは細孔7aの場所で1μm、リブ9の厚さは絞り部7の厚さを含めて1.5μmとした。
【0015】
次に、細孔7aについての他の実施の形態を説明する。これらの実施の形態は第1及び第2の実施の形態及びそれら変形例全てに適応可能であるが、説明は第1の実施の形態の構成をもって説明する。図中の番号は第1の実施の形態と同じにする。
図14は図1に示す液体吐出ヘッドの細孔部に関する第1の変形例を示す断面図である。ここでは簡単化のため1つの液流路のみを示している。この図に示す第1の変形例では、絞り部7によって形成される細孔7aの孔径が液流路3側から吐出口面5a側に向けてテーパ状に細くなっている点が、図1に示したものと異なっている。
このように、絞り部7の細孔7aをテーパ状としても、図1に示した液体吐出ヘッドと同様の効果が得られる。なお、図14に示した第1の変形例では、孔径が液流路3側から吐出口面5a側に向けて細くなる細孔7aを示した。
しかしながら、絞り部7の細孔7aの孔径が吐出口面5a側から液流路3側に向けて細くなるものや、絞り部7の細孔7aの孔径が液流路3側から吐出口面5a側に向けて一度細くなり再び拡大するものであってもよい。
また、絞り部7の細孔7aの角部の角がとれていてもよい。さらに言えば、絞り部7の細孔7aの孔径が、液体の吐出方向に関して変化していれば、細孔7aの内壁や角部の形状は任意である。
図15は図1に示す液体吐出ヘッドの細孔部に関する第2の変形例を示す断面図である。図15に示す第2の変形例では、絞り部7によって形成される細孔7aが1つの発熱素子1に対して複数設けられている。
このように、吐出口4に複数の細孔7aを設けることで、上述した効果に加え、1つの吐出口4から複数の液滴を同時に吐出することができる。絞り部7の細孔7aの厚さよりも固定端7bの厚さを厚くしていることで、絞り部7の変位を抑制できる。
気泡の力は絞り部7の変位でロスすることなく液体が絞り部7の細孔7aを通過するために使われるので、効率良くエネルギを液体へ伝えることができるため、このような構成を取って複数の液滴を同時に吐出することが可能になっている。
また、細孔7aの向きは液滴を飛ばす方向を決めるが、本発明では上述のように絞り部7の変位、変形を抑制しているので、複数の液滴は分離されたまま、同一方向へ飛翔させることができる。
【0016】
次に、絞り部7の位置を変えた実施の形態について説明する。本実施の形態は前記の第1及び第2の実施の形態、それらの変形例及び細孔部に関する変形例6全てに適応可能であるが、説明は第1の実施の形態の構成をもって説明する。図中、参照符号は第1の実施の形態と同じにする。
図16は図1に示した液体吐出ヘッドの絞り部の位置を変えた変形例を示す断面図である。図16に示す変形例では、絞り部7の位置が、吐出口プレート5の吐出口4が開口した面と、液流路3の高さを規定する間隔規定部材6の上面との間に設定されている点が、図1に示したものと異なっている。詰まり、絞り部7を形成する高さ位置を、吐出口4の内壁の下端縁に設けるのではなく、吐出口4の上端縁と下端縁との中間位置(下端縁寄り位置)に設けている。
このように、吐出口4内における絞り部7の位置を、吐出口面5aに対して凹となる範囲で変更しても、図1に示した液体吐出ヘッドと同様の効果が得られる。
また、液流路3側にも凹部が形成されるため、気泡の横方向への成長が阻害され、液滴吐出方向へ気泡の力が有効的に働くため、効率が良くなるという利点がある。なお、以上説明した第1及び第2の実施の形態、それらの変形例及び細孔部に関する変形例は、単独で適用することは勿論のこと、適宜組み合わせて本発明の液体吐出ヘッドに適用することが可能である。
【0017】
図17は本発明の液体吐出ヘッドをインクジェットヘッドに用いた場合の実施の形態を示す平面図である。図18は図17の液体吐出ヘッドのY−Y線断面図である。図中、参照番号は第1の実施の形態と同じにする。
本実施の形態では大滴用の吐出口並び15と、微小滴用の吐出口並び16を備えている。吐出口並び16の断面は図2に示すものと同様である。吐出口並び16では0.05〜1plの微小インク滴を吐出する。したがって、符号3は液流路、4は吐出口、7aは絞り部7の細孔、11はインク供給路、そして12は共通液室を示している。
図18は大滴用吐出口並び15のY−Yにおける断面図を示し、吐出口14は10μmの径のものを用いており、吐出口並び16のような凹部を設けていない。よって、従来のインクジェットヘッドの吐出口と同様のものであり、3〜8pl程度のインク滴を吐出する。
大滴用と小滴用の2つ種類の吐出口を設けたことにより、文字、グラフィックや塗りつぶし領域などは大滴用吐出口、グラフィックや写真のハイライト部分は微小滴用吐出口というように使い分けることによって、粒状性の少ない高画質な画像を高速で印字することができる。
微小滴は1pl以下とすることによって、被記録媒体上で人間の目にはドットとして認識できない。その結果、画像の粒状性が感じられなく、良好な画像が得られる。本実施の形態の説明では、或る色における吐出口配列を例としたが、色ごとに、例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色に本構成の吐出口並びを設けることによって、フルカラーの画像を得ることができる。
【0018】
図19は図15の液体吐出ヘッドをインクジェットヘッドに用いた場合の実施の形態を示す平面図である。図中の参照番号は図17の実施の形態と同一にしている。本実施の形態では図17の実施の形態と同様に、大滴用の吐出口並び15と、微小滴用の吐出口並び16を備えている。
図示してないが大滴用吐出口並び15のY−Y線断面図は図18の図17の液体吐出ヘッドのY−Y線断面図と同一である。3〜8pl程度のインク滴を吐出する。また、吐出口並び16の断面は図15に示すものと同様であるものを用いた。
吐出口並び16では0.05〜1plの微小インク滴を複数同時に吐出する。本実施の形態では5滴の微小滴を吐出するが、5滴とは限らない。3〜5滴が液滴飛翔時に互いに結合することなく被記録媒体上に着弾させることができ好適である。
なお、図19においては図1及び図2におけると同様に、符号3は液流路、4は吐出口、7aは絞り部7の細孔、11はインク供給路、そして12は共通液室を示している。
微小滴を用いることによって粒状性の少ない画像が得られるが、被記録媒体上で色として認識するためには微小滴を多数打ち込まなければならない。そのため印字に時間が掛かってしまう。本実施の形態では、複数の微小滴を吐出させる吐出口を設けたので、速く印字が可能である。
本実施の形態においても、色ごとに本構成の吐出口並びを設けることによって、フルカラーの画像を得ることができる。図17及び図19の実施の形態では、2種類の吐出口を設けた例を示したが、3種類以上の吐出口を備えたものでもよい。
図20は液体吐出ヘッドと液体容器を一体化または分離可能に保持するヘッドカートリッジを示す斜視図である。図20には以上説明したいずれかの液体吐出ヘッド21と、それに供給する液体を保持する液体容器を一体化または分離可能に保持するヘッドカートリッジ20を示している。極微小滴を吐出可能であるので、高画質印字が可能なヘッドカートリッジの実現が可能である。なお、符号1は発熱素子を含む素子基板を示している。
【0019】
図21は本発明によるインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置を説明する概略斜視図である。図22は図21のインクジェット記録装置を搭載した複写装置の機構部の側面説明図である。
このインクジェット記録装置は、記録装置本体23の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ、キャリッジに搭載した本発明を実施したインクジェットヘッドからなる液体吐出ヘッド、液体吐出ヘッドへインクを供給するインクカートリッジ等で構成される印字機構部24等を収納する。
図21及び図22において、装置本体23の下方部には前方側から多数枚の用紙25を積載可能な給紙カセット(或いは給紙トレイでもよい)26を抜き差し自在に装着することができる。
また、用紙25を手差しで給紙するための手差しトレイ27を開倒することができ、給紙カセット26或いは手差しトレイ27から給送される用紙25を取り込み、印字機構部24によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ28に排紙する。
印字機構部24は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド29と従ガイドロッド30とで、キャリッジ31を主走査方向に摺動自在に保持する。
このキャリッジ31にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出する本発明に係るインクジェットヘッドからなるヘッド32を複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
また、キャリッジ31にはヘッド32に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ33を交換可能に装着している。インクカートリッジ33は上方に大気と連通する大気口、下方にはインクジェットヘッドへインクを供給する供給口を、内部にはインクが充填された多孔質体を有している。
多孔質体の毛管力によりインクジェットヘッドへ供給されるインクを僅かな負圧に維持している。また、記録ヘッドとしてここでは各色のヘッド32を用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドでもよい。
【0020】
ここで、キャリッジ31は後方側(用紙搬送方向下流側)を主ガイドロッド31に摺動自在に嵌装し、前方側(用紙搬送方向上流側)を従ガイドロッド30に摺動自在に載置している。
そして、このキャリッジ31を主走査方向に移動走査するために、主走査モータ34で回転駆動される駆動プーリ35と従動プーリ36との間にタイミングベルト37を張装し、このタイミングベルト37をキャリッジ31に固定しており、主走査モータ34の正逆回転によりキャリッジ31が往復駆動される。
一方、給紙カセット26にセットした用紙25をヘッド32の下方側に搬送するために、給紙カセット26から用紙25を分離給装する給紙ローラ38及びフリクションパッド39と、用紙25を案内するためのガイド部材40を備えている。
さらに、給紙された用紙25を反転させて搬送する搬送ローラ41と、この搬送ローラ41の周面に押し付けられる搬送コロ42及び搬送ローラ41からの用紙25の送り出し角度を規定する先端コロ43とを設けている。
搬送ローラ41は副走査モータ44によってギヤ列を介して回転駆動される。そして、キャリッジ31の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ41から送り出された用紙25をヘッド32の下方側で案内する用紙ガイド部材である印写受け部材(図示せず)を設けている。
この印写受け部材の用紙搬送方向下流側には、用紙25を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ45、拍車46を設け、さらに用紙25を排紙トレイ28に送り出す排紙ローラ47及び拍車48と、排紙経路を形成するガイド部材49、50とを配設している。
【0021】
記録時には、キャリッジ31を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド32を駆動することにより、停止している用紙25にインクを吐出して1行分を記録し、用紙25を所定量搬送後次の行の記録を行う。
記録終了信号または、用紙25の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙25を排紙する。また、キャリッジ31の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、ヘッド32の吐出不良を回復するための回復装置51を配置している。
回復装置51はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有している。キャリッジ31は印字待機中にはこの回復装置51側に移動されてキャッピング手段でヘッド32をキャッピングし、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。
また、記録途中などに記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でヘッド32の吐出口(ノズル)を密封する。
チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出し、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。また、吸引されたインクは、本体下部に設置された廃インク溜(図示せず)に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
このように、このインクジェット記録装置においては本発明を実施したインクジェットヘッドを搭載しているので、粒状性の少ない階調性のよい画像が得られ、印字速度が速いインクジェット記録装置が実現可能である。
【0022】
上述したように(例えば、図1ないし図13参照)、凹部の絞り部7にリブ9を設けることにより、エネルギ発生素子1を駆動し発生するエネルギが絞り部7を押し上げようとしても絞り部7の変位は抑制され、絞り部7の耐久性の向上に繋がって、微小滴を安定して長い間吐出し続けることが可能となる。
また、エネルギ発生素子1のエネルギは液体が絞り部7の細孔7aを通過するために使われるが、そのエネルギは有効に液滴の吐出に使われるので、液滴の吐出に使われるエネルギ効率が高くなる。
凹部(吐出口4)の絞り部7に有するリブ9は細孔7aの一部となっていないので、細孔7aの厚さはリブ9の形状に依らず決めることができ一定の厚さにできるので、液滴の吐出特性を保持したまま、リブ9の導入が絞り部7の耐久性の向上に繋がって、微小滴を安定して長い間吐出し続けることが可能となる。
凹部の絞り部7の固定端7bの厚みを絞り部7の細孔7a近傍の厚みよりも厚くしているので、エネルギ発生素子1を駆動し発生するエネルギが絞り部7を押し上げようとしても絞り部7の変位は抑制され、また、絞り部7の固定端7bでの破損はなくなり、絞り部の耐久性の向上に繋がって、微小滴を安定して長い間吐出し続けることが可能となる。
エネルギ発生素子1は発熱素子を用い、熱エネルギによる膜沸騰により生じる気泡の圧力を利用して、吐出口4より液体を吐出するにあたり、発熱素子1の熱によって液体が気化した気泡12を、絞り部7に接触させるので、気泡12の力を直接絞り部7に伝えることができる。それによってより小さな微小滴を安定して形成することができ、吐出速度を大きくすることができる。
絞り部7は、吐出口プレート5の厚さ方向の間の位置に設けられているので、液流路3側にも凹部が形成され、エネルギの横方向への伝播が阻害され、液滴吐出方向へのエネルギが有効的に働き効率が良くなる。
とくに、エネルギ発生素子として発熱素子1を用い、この発熱素子1の熱によって液体が気化してできた気泡12を用いる構成では、気泡12の横方向への成長が阻害され、液滴吐出方向へ気泡12の力が有効的に働き効率が良くなる。
インク滴を吐出するインクジェットヘッドとこのインクジェットヘッドにインクを供給するインクタンクを一体化したヘッドカートリッジ20(図20参照)に本発明による液体吐出ヘッドを適用したので、極微小滴の吐出が可能となり、高画質印字ができるヘッドカートリッジが実現できる。
インクジェットヘッドが本発明による液体吐出ヘッドあるいはヘッドカートリッジであるので、粒状性の少ない階調性のよい画像が得られ、印字速度が速いインクジェット記録装置が実現可能である。
【0023】
図23は本発明による液体吐出ヘッドを液状薬剤の肺吸入用の薬剤吸入装置に用いた実施の形態を示す概略図である。図23には本発明による液体吐出ヘッドを医療分野において液状薬剤を霧状として肺吸入させるさいに使用される薬剤吸入装置に用いた実施の形態を示している。
薬剤吸入装置52はより多くの薬液を効率よく肺まで到達させることが必要である。本発明の液滴吐出ヘッドを吸入装置52に搭載することにより、極微小滴を高速で吐出することが可能であるので、より多くの薬液を肺まで送ることができる。
本発明の液体吐出ヘッドを薬剤吸入用のヘッドとして用いる場合は、液体吐出ヘッドを薬剤のディスペンサと連結した構成とし、吐出する液体としては、インスリン、人成長ホルモン、性腺刺激ホルモンなどの蛋白製剤、ニコチン、または麻酔薬などが用いられる。さらにはアスコルビン酸、メントール、その他各種香料なども用いられる。
本発明は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の被記録媒体に対して記録を行うプリンタ、複写機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を有するワードプロセッサなどの画像記録装置に応用できる。
本発明は、さらには各種処理装置と複合的に組み合わせた産業用記録装置、電子デバイス、電気配線部品などの配線形成装置に適用できる記録ヘッド及びその応用装置にも関連する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による液体吐出ヘッドの第1の実施の形態を示す平面図である。
【図2】図1の液体吐出ヘッドのX−X線断面図である。
【図3】図1の第1の実施の形態の液体吐出ヘッドの吐出開始前の状態を示す断面図である。
【図4】絞り部の細孔に相対するメニスカスの中央部が盛り上がる状態を示す断面図である。
【図5】メニスカスが尾を長く引いた形状に盛り上がった状態を示す断面図である。
【図6】メニスカスの尾が分離されて形成される液滴を示す断面図である。
【図7】気泡が消滅し初期状態に戻り、次の電圧が印加されるまでの待機状態にあることを示す断面図である。
【図8】図1に示した液体吐出ヘッドの第1の変形例を示す平面図である。
【図9】図8の体吐出ヘッドの第1の変形例のX−X線断面図である。
【図10】本発明による液体吐出ヘッドの第2の実施の形態を示す平面図である。
【図11】図10の液体吐出ヘッドのX−X線断面図である。
【図12】図10の本発明による液体吐出ヘッドの第2の実施の形態の変形例を示す平面図である。
【図13】図12の液体吐出ヘッドのX−X線断面図である。
【図14】図1に示す液体吐出ヘッドの細孔部に関する第1の変形例を示す断面図である。
【図15】図1に示す液体吐出ヘッドの細孔部に関する第2の変形例を示す断面図である。
【図16】図1に示した液体吐出ヘッドの絞り部の位置を変えた変形例を示す断面図である。
【図17】本発明の液体吐出ヘッドをインクジェットヘッドに用いた場合の実施の形態を示す平面図である。
【図18】図17の液体吐出ヘッドのY−Y線断面図である。
【図19】図15の液体吐出ヘッドをインクジェットヘッドに用いた場合の実施の形態を示す平面図である。
【図20】液体吐出ヘッドと液体容器を一体化または分離可能に保持するヘッドカートリッジを示す斜視図である。
【図21】本発明によるインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置を説明する概略斜視図である。
【図22】図21のインクジェット記録装置を搭載した複写装置の機構部を示す側面説明図である。
【図23】本発明による液体吐出ヘッドを液状薬剤の肺吸入用の薬剤吸入装置に用いた実施の形態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0025】
1 エネルギ発生素子(発熱素子、素子基板)
2 基板
3 液流路
4 吐出口(凹部)
5 吐出口プレート
7 絞り部
7a 細孔
7b 固定端
8 メニスカス
9 抑制手段リブ(リブ)
12 気泡
20 ヘッドカートリッジ
21 液体吐出ヘッド
52 薬剤吸入装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液流路と、液体を滴として吐出するための吐出口が開口した吐出口プレートと、前記吐出口に対応して設けられ、前記液体に与えるエネルギを発生させるエネルギ発生素子とを有し、前記吐出口には、前記吐出口プレートの前記吐出口が開口した面に対して凹部となる位置の略中央に細孔を配した絞り部が設けられ、前記液体が、前記絞り部が前記液体中に位置するように前記吐出口内でメニスカスを形成して保持される液体吐出ヘッドにおいて、前記絞り部が前記エネルギ発生素子によるエネルギによって変位するのを抑制する抑制手段を備えたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記凹部の絞り部にリブを有することを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記凹部の絞り部に有するリブが前記細孔の一部を成していないことを特徴とする請求項2記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記凹部の前記絞り部の固定端での厚みが前記細孔近傍での厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記エネルギ発生素子が発熱素子であり、この発熱素子の熱によって前記液体が気化した気泡を前記絞り部に接触させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記絞り部が前記吐出口プレートの厚さ方向の間の位置に設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
インク滴を吐出するインクジェットヘッドとこのインクジェットヘッドにインクを供給するインクタンクを一体化したヘッドカートリッジにおいて、前記インクジェットヘッドが請求項1ないし6のいずれか1項記載の液体吐出ヘッドであることを特徴とするヘッドカートリッジ。
【請求項8】
インク滴を吐出するインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドが請求項1ないし6のいずれか1項記載の液体吐出ヘッドあるいは請求項7記載のヘッドカートリッジであることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記液体が、肺吸入に用いられる薬剤である、請求項1ないし6のいずれか1項記載の液体吐出ヘッド及びその液体吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする薬剤吸入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−35536(P2006−35536A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216649(P2004−216649)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】