説明

液体吐出方法及び液体吐出装置

【課題】所定の膜厚を有するレジストパターンを精度良く形成する。
【解決手段】複数のノズルからレジスト粒子が溶媒中に分散されたレジストインクを基板に向かって吐出する液体吐出方法であって、前記粒子の体積平均粒子径は、前記基板上に着弾して平衡状態になった前記レジストインクの溶媒の膜厚よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする液体吐出方法を提供することにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出方法及び液体吐出装置に係り、特にプリント配線基板に配線パターンを形成する際に用いられるレジストのパターンニング技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリント配線基板の製造方法として、サブトラクティブ法、セミアディティブ法、アディティブ法が知られている。
【0003】
サブトラクティブ法は、まず、絶縁層901と銅箔903からなる銅張積層板902(図16(a))にスルーホールとなる貫通穴904を形成した後に(図16(b))、無電解メッキ及び電解メッキを用いて全面に配線層(銅箔層)903’を形成する(図16(c))。次に、ドライフィルムレジストまたは液レジストによりレジスト層905を形成した後に、レジスト層905のパターンニングを行う(図16(d))。そして、パターンニングされたレジスト層905をマスクとして、レジスト層905で被覆されていない銅箔903及び配線層903’をエッチングにより除去し(図16(e))、レジスト層905を除去すると、所定の配線パターンを有するプリント配線基板902(図16(f))が得られる。
【0004】
また、アディティブ法は、絶縁基板(絶縁層)911(図17(a))にスルーホールとなる貫通穴914を形成し(図17(b))、レジスト層915をパターンニングする(図17(c))。次いで、無電解メッキを用いてレジスト層915の非形成部分に配線パターンとなる銅箔913をパターンニングし(図17(d))、レジスト層915を剥離すると、所定の配線パターンが形成された配線基板912(図17(e))が得られる。
【0005】
また、セミアディティブ法は、絶縁基板921(図18(a))にスルーホールとなる貫通穴924を形成し(図18(b))、無電解メッキにより絶縁基板921の全面に銅箔923を形成する(図18(c))。次に、銅箔923の上にレジスト層925をパターンニングし(図18(d))、電解メッキを用いて配線パターンとなる銅箔923’をパターンニングし(図18(e))、レジスト層925を剥離し(図18(f))、更にレジスト層925が剥離されて露出した余分な銅箔923を除去すると、所定の配線パターンを有するプリント配線基板922(図18(g))が得られる。
【0006】
サブトラクティブ法によって微細回路を形成する場合、金属導電層のサイドエッチングによる画線の細り等があるため、微細回路に対して不利とされている。また、アディティブ法は、微細回路に対しては有利であるが、無電解めっきで全ての金属導電層を形成するため、製造コストが高いという問題がある。また、セミアディティブ法は、多工程であるが、高速作業が可能な電解めっきを使用することができるために、微細回路製造方法として、優位に用いることができる。
【0007】
これらの各方法では、レジスト層をパターニングする際、従来よりフォトリソ法が用いられている。フォトリソ法は、基板上にドライフィルムレジスト又は液レジストによりレジスト層を形成し、フォトマスクを介して該レジスト層を紫外線照射してパターン露光し、現像することにより、レジスト層をパターンニングしている。しかし、フォトリソ法では、フォトマスクの作製に時間を費やしたり、レジストパターニング工程において現像工程が必要であったり、時間、コストともに課題となっている。また、現像工程における廃液の問題もある。
【0008】
また、他の方法として、インクジェット方式の記録ヘッド(インクジェットヘッド)からレジスト液を吐出することにより、基板上に所定のレジストパターンを直接形成する方法が知られている。インクジェット方式を利用した方法によれば、フォトリソ法に比べてレジストパターン形成に要する工程を短縮化することができる。しかしながら、インクジェットヘッドからは比較的低粘度のレジスト液が吐出されるため、レジストパターンの厚膜形成は難しいという問題がある。
【0009】
一方、特許文献1では、インクジェット方式を利用した方法において、レジストパターンに必要な所定の膜厚を確保するために、レジスト液を重ね打ち(積層パターニング)する方法が提案されている。
【特許文献1】特許第3744967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
インクジェットヘッドから吐出される液状レジスト液は、一般に耐酸性且つアルカリ可溶液の高分子溶液である。このため、基板上にレジスト液が着弾すると、レジスト液の濡れ広がりにより、厚膜のレジストパターンを得ることは難しい。
【0011】
特許文献1では、液状レジスト液の濡れ広がりは考慮されておらず、レジスト液を重ね打ちしたとしても、高精度なレジストパターンを得ることは困難である。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、所定の膜厚を有するレジストパターンを精度良く形成することができる液体吐出方法及び液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数のノズルからレジスト粒子が溶媒中に分散されたレジストインクを基板に向かって吐出する液体吐出方法であって、前記レジスト粒子の体積平均粒子径は、前記基板上に着弾して平衡状態になった前記レジストインクの溶媒の膜厚よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする液体吐出方法を提供する。
【0014】
本発明によれば、基板上に着弾したレジストインクに含有されるレジスト粒子は溶媒の濡れ広がりに影響されることなく移動が抑制されるので、所定の厚さ(特に厚膜)のレジストパターンを精度良く形成することができる。
【0015】
本明細書において、「レジスト粒子」とは、熱可塑性を有するレジスト樹脂(固形)を粒子化したものをいう。また、「レジストインク」とは、レジスト粒子を溶媒中に分散したインクをいう。
【0016】
なお、本発明で用いる「レジストインク」との区別を図るために、上述した従来技術に代表されるように、一般的に用いられるレジスト液(レジスト樹脂を溶媒に溶解した溶液又はモノマー液)については、「液状レジスト」又は「液状レジスト液」、或いは、単に「レジスト液」という。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液体吐出方法であって、前記溶媒の前記基板に対する接触角をθ、前記ノズルから吐出されたレジストインクの液滴半径をr、前記レジスト粒子の半径をRとしたとき、次式を満足することを特徴とする。
【0018】
【数1】

【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の液体吐出方法であって、前記基板上に着弾したレジストインクを加圧加熱して定着させることを特徴とする。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の液体吐出方法であって、前記レジストインクはガラス転移点の異なる少なくとも2種類のレジスト粒子を含有し、前記レジストインクを加圧加熱して定着させる際の加熱温度は、第1のレジスト粒子のガラス転移点より大きく、かつ、第2のレジスト粒子のガラス転移点より小さいことを特徴とする。
【0021】
請求項4の態様によれば、定着手段による加圧加熱時に、第2のレジスト粒子がスペーサとして機能するので、レジスト膜厚の精度を制御しやすく、高精細なレジストパターンの形成が可能となる。
【0022】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の液体吐出方法であって、前記レジストインクに含有されるレジスト粒子は、前記レジスト粒子より低いガラス転移点を有するレジストで表面が覆われたコアシェル型レジスト粒子であり、前記レジストインクを加圧加熱して定着させる際の加熱温度は、前記レジスト粒子の表面を覆うレジストのガラス転移点より大きく、かつ、前記レジスト粒子のガラス転移点より小さいことを特徴とする。
【0023】
請求項5の態様によれば、定着手段による加圧加熱時に、コアシェル型レジスト粒子のシェルを構成するレジストは溶融する一方で、そのコアを構成するレジスト粒子は溶融せずにスペーサとして機能する。従って、請求項4の態様と同様、レジスト膜厚の精度を制御しやすく、高精細なレジストパターンの形成が可能となる。
【0024】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の液体吐出方法であって、前記基板上の同一位置に対して複数のレジストインクを吐出することを特徴とする。
【0025】
請求項6の態様によれば、基板上の同一位置に複数のレジストインクを吐出することにより、基板上に形成されるレジストパターンの被覆性を向上させることができる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の液体吐出方法であって、静電濃縮型のヘッドを用いて前記レジストインクを吐出することを特徴とする。
【0027】
静電濃縮型のヘッドは、ヘッド内でレジストインクを濃縮して吐出することが可能であり、溶媒の濡れ広がりに伴うレジスト粒子の移動を効果的に抑制することができ、高精細、高精度なレジストパターンを形成することができる。また、濃縮吐出により液滴中のレジスト粒子濃度が高まるため、レジストパターンの被覆効率が向上する。
【0028】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の液体吐出方法であって、前記基板上に前記レジストインクが着弾する前に前記基板を加熱することを特徴とする。
【0029】
請求項8の態様によれば、基板上に着弾したレジストインクの溶媒の蒸発が促進されるので、高精度なレジストパターンの形成が可能となる。
【0030】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の液体吐出方法であって、レジストインク供給系に、前記レジストインクの循環を行う工程、前記レジストインクを攪拌する工程、及び前記レジストインクを洗浄する工程の少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0031】
請求項9の態様によれば、レジストインクに含有されるレジスト粒子の沈降を防止することができる。
【0032】
また、前記目的を達成するために、請求項10乃至請求項18に記載の発明は装置発明を提供する。
【0033】
請求項10に記載された発明は、複数のノズルからレジスト粒子が溶媒中に分散されたレジストインクを基板に向かって吐出する吐出手段を備え、前記粒子の体積平均粒子径は、前記基板上に着弾して平衡状態になった前記レジストインクの溶媒の膜厚よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする液体吐出装置を提供する。
【0034】
請求項11に記載された発明は、請求項10に記載の液体吐出装置であって、前記溶媒の前記基板に対する接触角をθ、前記ノズルから吐出されたレジストインクの液滴半径をr、前記レジスト粒子の半径をRとしたとき、次式を満足することを特徴とする。
【0035】
【数2】

【0036】
請求項12に記載された発明は、請求項10又は請求項11に記載の液体吐出装置であって、前記基板上に着弾したレジストインクを加圧加熱して定着させる定着手段を更に備えたことを特徴とする。
【0037】
請求項13に記載された発明は、請求項12に記載の液体吐出装置であって、前記吐出手段は、前記複数のノズルからガラス転移点の異なる少なくとも2種類のレジスト粒子を含有したレジストインクを吐出する手段であり、前記定着手段は、第1のレジスト粒子のガラス転移点より大きく、かつ、第2のレジスト粒子のガラス転移点より小さい加熱温度で加熱する手段であることを特徴とする。
【0038】
請求項14に記載された発明は、請求項12に記載の液体吐出装置であって、前記吐出手段は、前記レジスト粒子より低いガラス転移点を有するレジストで前記レジスト粒子の表面を覆ったコアシェル型レジスト粒子を含有したレジストインクを吐出する手段であり、前記定着手段は、前記レジスト粒子の表面を覆うレジストのガラス転移点より大きく、かつ、前記レジスト粒子のガラス転移点より小さい加熱温度で加熱する手段であることを特徴とする。
【0039】
請求項15に記載された発明は、請求項10乃至請求項14のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、前記吐出手段は、前記基板上の同一位置に対して複数のレジストインクを吐出する手段であることを特徴とする。
【0040】
請求項16に記載された発明は、請求項10乃至請求項15のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、前記吐出手段は、静電濃縮型のヘッドであることを特徴とする。
【0041】
請求項17に記載された発明は、請求項10乃至請求項16のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、前記基板上に前記レジストインクが着弾する前に前記基板を加熱する基板加熱手段を更に備えたことを特徴とする。
【0042】
請求項18に記載された発明は、請求項10乃至請求項17のいずれか1項に記載の液体吐出装置であって、レジストインク供給系に対して、前記レジストインクの循環を行う循環手段、前記レジストインクを攪拌する手段、及び前記レジストインクを洗浄する洗浄手段の少なくとも1つを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、基板上に着弾したレジストインクに含有されるレジスト粒子は溶媒の濡れ広がりに影響されることなく移動が抑制されるので、所定の厚さ(特に厚膜)のレジストパターンを精度良く形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態(第1〜第3の実施形態)について詳説する。
【0045】
〔第1の実施形態〕
まず、本発明に係る液体吐出装置の第1の実施形態としてのインクジェット記録装置について説明する。本実施形態のインクジェット記録装置は、記録ヘッド(以下、単にヘッドと記載する。)に設けられる複数の吐出口から所定のレジスト粒子を溶媒中に分散したレジストインクを吐出することにより、基板上に所定厚みのレジストパターンを形成する記録装置である。例えば、上述したサブトラクティブ法、セミアディティブ法、アディティブ法によりプリント配線基板を製造する際、このインクジェット記録装置を用いて基板上にレジストパターンを形成する。
【0046】
図1は、本実施形態のインクジェット記録装置の概略構成を示した全体構成図である。図1に示すインクジェット記録装置10は、レジストインクを吐出する複数のヘッド12A、12B、12C、12D(本発明の吐出手段に相当)を有する描画部12と、描画部12に供給するレジストインクを貯蔵しておくレジストインク貯蔵/装填部14と、装置内部に基板16を供給する供給部18と、描画部12のノズル面(吐出面)に対向して配置され、基板16を保持しながら描画部12の下部の吐出領域へ搬送する吸着ベルト搬送部22と、基板16上に形成されたレジストパターンを加熱して定着させる定着処理部23と、基板16上に形成されたレジストパターンを読み取る吐出検出部24と、装置外部に基板16を排出する排出部26と、を備えている。
【0047】
レジスト粒子については、インクジェット記録装置10の利用形態に応じてその機能が決定されることはいうまでもない。例えば、上述したサブトラクティブ法、セミアディティブ法、アディティブ法でインクジェット記録装置10を利用する場合、電解めっき液に対する耐久性(電解めっき液に不溶な樹脂を含有する)やレジストの剥離性(レジスト除去液に可溶)が必要であり、また、エッチングが行われる場合にはエッチング液に対する耐久性も必要である。インクジェット記録装置10で基板16上にレジストパターンを直接形成する方法によれば、フォトリソ法のようにレジスト粒子に感光性材料を必ずしも含有させる必要がない。
【0048】
また、本例のレジスト粒子は定着処理部23の構成に対応して溶融する機能を有している。本例では、加熱により溶融する熱可塑性機能を有するレジスト粒子が用いられる。
【0049】
基板16は、レジストパターンが形成される被記録媒体であり、ガラスエポキシや紙エポキシなどの絶縁層の表面及び裏面に銅箔層を形成した銅張積層板(図16(a)参照)や、絶縁基板(図17(a)、図18(a)参照)などが適用される。もちろん、これらに限定されず、例えば、樹脂材料の絶縁層の表面及び裏面に金や銅などの導電層(銅箔層)が形成されたフレキシブル基板を適用することもできる。
【0050】
複数種類の基板を利用可能な構成にした場合、基板の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をストッカーに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される基板の種類を自動的に判別し、基板の種類に応じて適切なレジストインクの吐出を実現するように吐出制御を行うことが好ましい。なお、基板情報はユーザインターフェイスを用いてユーザが入力可能に構成してもよい。
【0051】
供給部18から装置内部に送り出される基板16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも描画部12のノズル面及び吐出検出部24のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0052】
ベルト33は、基板16の幅よりも広い幅寸法を有しており、図示は省略するが、ベルト面には多数の吸引穴が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において描画部12のノズル面及び吐出検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の基板16が吸着保持される。即ち、ベルト33の吸引口が形成されている領域は基板16の保持領域として機能する。なお、ベルト33上に基板16を保持する態様はエアー吸着に限定されず、静電気による吸着など他の方法を適宜適用可能である。
【0053】
ベルト33が巻かれているローラ31,32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示、図6中符号88として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された基板16は図1の左から右へと搬送される。
【0054】
ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)には、ベルト33に付着したレジストインクを除去するベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0055】
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上の最上流位置には、基板16の有無を検出する(基板16の先端部が吸着ベルト搬送部22へ達したか否かを判断する)供給側センサ(不図示)が設けられている。該供給側センサは、基板16を挟んで光源(例えば、LED)と受光素子が配置された構造を有し、受光素子に入射した光量に比例した検出信号が出力される。光源と受光素子との間に基板16が存在すると、基板16が存在しないときに比べて受光素子に入射する光量が減少するので、受光素子に入射する光量(即ち、検出信号の大小)で基板16の有無が判断される。なお、光源から出された光の基板16による反射光を受光するように光源と受光素子とを基板16に対して同じ側に配置してもよい。
【0056】
供給側センサの次段(基板搬送方向下流側)には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、レジストパターン形成前の基板16に加熱空気を吹き付け、基板16を加熱する、いわゆる基板16のプリヒート処理手段(本発明の基板加熱手段に相当)として機能する。レジストパターン形成前に基板16を加熱(プリヒート)しておくことにより、基板16のレジストインクの着弾が安定するとともにレジストインクの着弾後の溶媒乾燥を促進させる作用がある。なお、加熱ファン40及び定着処理部23に代えて、ベルト33の内部にヒータ37(破線で図示)を備える態様も可能である。
【0057】
ベルト33の内部にヒータ37を備える態様では、ベルト33に基板16が保持されている間の基板16の温度を所定の温度に制御可能であり、基板16に着弾したレジストインクの溶媒乾燥促進に寄与する。
【0058】
図1に示すヒータ37の配置例では、ベルト33の基板16が保持される領域の全幅に対応するとともに、基板搬送方向の描画部12のレジストインクの吐出開始位置から吐出検出部24にわたる領域に(即ち、プリヒートから基板16に着弾したレジストインクが定着するまでの間に対応して)、ヒータ37が設けられている。
【0059】
加熱ファン40の次段(基板搬送方向下流側)に設けられる描画部12は、最大基板幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを基板搬送方向(副走査方向)に対して直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。
【0060】
図2に示したように、各ヘッド12A、12B、12C、12Dは、インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの基板16の少なくとも一辺を超える長さにわたって吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
【0061】
副走査方向に沿って上流側から順にヘッド12A、12B、12C、12Dが配置されている。基板16を搬送しつつ各ヘッド12A、12B、12C、12Dからそれぞれレジストインクを吐出することにより基板16上にレジストパターンを形成し得る。
【0062】
このように基板16の幅の全域をカバーするフルライン型の記録ヘッドによれば、主走査方向について基板16と描画部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の走査で)基板16の全面にレジストパターンを記録することができる。これにより、ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速記録が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0063】
なお、本例では、描画部12に4つのヘッド12A〜12Dを配置した構成を例示したが、ヘッド数については本実施形態に限定されず、必要に応じてヘッド数を増減させてもよい。例えば、基板16上の同一位置にレジスト粒子を積み重ねる必要がない場合には描画部12に1つのヘッドを配置すればよいし、複数のレジスト粒子を積み重ねて厚膜のレジストパターンを得る必要がある場合には積み重ね数に応じた複数のヘッドを配置すればよい。もちろん、1つのヘッドで基板16上の同一位置に複数のレジスト粒子を積み重ねることできるようにノズル配置を工夫してもよい。基板16上の同一にレジスト粒子を積み重ねる場合にはレジストパターンの被覆性を向上させることができる。
【0064】
吐出検出部24の後段(即ち、吸着ベルト搬送部22の基板搬送方向下流側)には、基板16の有無を検出する(基板16の後端部が吸着ベルト搬送部22から抜け出したか否かを判断する)排出側センサ(不図示)が設けられている。該排出側センサの構成は上述した供給側センサと同一の構成が適用される。
【0065】
こうしてレジストパターンが形成された基板16は排出部26から排出される。また、図1には示さないが、排出部26には、種類ごと(例えば、サイズ別、レジストパターン別)に基板16を集積するソーターが設けられる。
【0066】
図1に示したように、レジストインク貯蔵/装填部14は、描画部12に供給されるレジストインクを貯蔵するタンクを有し、該タンクは不図示の管路を介して描画部12と連通されている。また、レジストインク貯蔵/装填部14は、レジストインク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えている。
【0067】
描画部12の後段に設けられる定着処理部23(本発明の定着手段に相当)は、基板16上に形成されたレジストパターンを加熱することで溶融させて基板16に定着させる。レジストパターンを加熱する加熱手段には、ヒータによって加熱した空気を吹き付ける態様や、赤外線やレーザにより加熱する態様が適用可能である。本実施形態においては、ヒートローラが適用される。
【0068】
本例の吐出検出部24は、基板16に形成されたレジストパターンを読み取り、所定の信号処理などを行ってパターン形成状況(パターン欠損など)を検出し、制御系(例えば、図6の吐出制御部80)に提供する吐出検出手段として機能する。本例の吐出検出部24は、ベルト33の全幅(基板搬送方向と直交する副走査方向の長さ)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される(図2参照)。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が2次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
【0069】
なお、描画部12に設けられる各ヘッド12A〜12Dの構造は共通しているので、以下では、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
【0070】
次に、ヘッド50の構造について、図3及び図4を用いて説明する。図3は、ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図4は、図3中4−4線に沿う断面図である。
【0071】
図3に示すように、本例のヘッド50は、レジストインクを吐出するノズル51と、該ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数の吐出素子53を千鳥でマトリクス状(2次元状)に配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向に相当する主走査方向に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0072】
ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっている。圧力室52の一の隅部にはノズル51が設けられ、ノズル51に対向する他の隅部には供給インクの流入口(供給口)54が設けられている。
【0073】
図4に示すように、ノズル51はそれに対応する圧力室52と連通している。圧力室52は、ノズル51から吐出するためのレジストインクが充填される空間部である。また、圧力室52の一端には供給口54が形成されており、各圧力室52はそれぞれ供給口54を介して共通流路55と連通している。共通流路55は、圧力室52に供給するためのレジストインクが貯留される空間部である。共通流路55には、図1に示したレジストインク貯蔵/装填部14から不図示の管路を経由してレジストインクが供給される。
【0074】
圧力室52の一壁面は振動板56で構成され、該振動板56上の圧力室52に対応する位置(即ち、振動板56を挟んで圧力室52に対向する位置)には、個別電極57を備えた圧電素子58が設けられている。本実施形態では、圧電素子58の共通電極は振動板56が兼ねている。圧電素子58に所定の駆動電圧が印加されると、圧電素子58の伸縮変形に伴う振動板56のたわみ変形によって、圧力室52の容積は変化し、圧力室52内のレジストインクが加圧され、ノズル51からレジストインクが液滴として吐出される。吐出後、共通流路55から供給口54を通って新しいレジストインクが圧力室52に供給される。
【0075】
次に、インクジェット記録装置10のレジストインク供給系の概略構成について説明する。図5は、インクジェット記録装置10におけるレジストインク供給系の構成を示した概要図である。図5において、レジストインク供給タンク60はレジストインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したレジストインク貯蔵/装填部14に設置される。レジストインク供給タンク60の形態には、レジストインク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からレジストインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてレジストインクの種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、レジストインクの種類情報をバーコード等で識別して、レジストインクの種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
【0076】
図5に示すように、レジストインク供給タンク60とヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
【0077】
なお、ヘッド50の近傍又はヘッド50と一体にサブタンク(不図示)を設ける構成も好ましい。サブタンクは、圧力室52や共通流路55の内圧変動を防止するダンパ効果及びリフィルを改善する機能を有する。
【0078】
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル51近傍のレジストインクの粒子濃度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ヘッド50のノズル面の清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。このキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によってヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
【0079】
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によってヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
【0080】
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構によりヘッド50のノズル面に摺動可能である。ノズル面にレジストインク又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル面に摺動させることでレジストインク等を拭き取る。
【0081】
描画中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上レジストインクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のレジストインクの溶媒が蒸発してレジスト粒子濃度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電素子58(図4参照)が動作してもノズル51からレジストインクを吐出できなくなってしまう。
【0082】
したがって、このような状態になる前に圧電素子58を動作させ、ノズル近傍の高濃度化したレジストインクを排出すべく、インク受けとしての機能も兼ねるキャップ64に向かって予備吐出が行われる。また、ノズル面の清掃手段として設けられているクリーニングブレード66等のワイパーによってノズル面の汚れを清掃した後に、このワイパー摺擦動作によってノズル内に異物が混入するのを防止するためにも予備吐出が行われる。なお、予備吐出は、「空吐出」、「パージ」、「唾吐き」などと呼ばれる場合もある。
【0083】
また、ノズル51や圧力室52に気泡が混入したり、ノズル部にレジスト粒子がつまると、上記予備吐出ではインクを吐出できなくなる。そこで、このような場合にはヘッド50のノズル面にキャップ64を当接させて、吸引ポンプ67でヘッド50内のレジストインク(気泡が混入したレジストインク又は高濃度化したレジスト粒子)を吸引する動作が行われる。吸引されたインクは回収タンク68へ送液される。このような吸引動作は、初期のレジストインクのヘッド50への装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも劣化インクの吸い出しが行われる。
【0084】
なお、吸引動作は圧力室52内のレジストインク全体に対して行われるので、レジストインクの消費量が大きくなる。したがって、レジストインクの濃度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
【0085】
次に、インクジェット記録装置10の制御系について説明する。図6はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、吐出制御部80、バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0086】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくるレジストパターンデータを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリを搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出されたレジストパターンデータは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力されたレジストパターンを一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0087】
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0088】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがって搬送駆動系のモータ88を駆動するドライバー(駆動回路)である。
【0089】
ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがってヒータ89を駆動するドライバーである。なお、図6に示すヒータ89には、図1の定着処理部23に用いられるヒータ、ベルト33に内蔵されるヒータ37、ヘッド50の温度調節ヒータなどのヒータが含まれる。
【0090】
吐出制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内のレジストパターンデータから吐出制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した吐出制御信号(吐出データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。吐出制御部80において所要の信号処理が施され、該レジストパターンデータに基づいてヘッドドライバ84を介してヘッド50のレジストインクの吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のパターン幅やパターン形状を有するレジストパターンが実現される。
【0091】
吐出制御部80にはバッファメモリ82が備えられており、吐出制御部80におけるレジストパターンデータ処理時にレジストパターンデータやパラメータなどのデータがバッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図6においてバッファメモリ82は吐出制御部80に付随する態様で示されているが、メモリ74と兼用することも可能である。また、吐出制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0092】
ヘッドドライバ84は、吐出制御部80から与えられる吐出データに基づいてヘッド50の圧電素子58(図4参照)を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0093】
プログラム格納部90には、インクジェット記録装置10の制御プログラムが格納され、システムコントローラ72はプログラム格納部90に格納されている種々の制御プログラムを適宜読み出し、制御プログラムを実行する。
【0094】
吐出検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、基板16に形成されたレジストパターン(レジストパターンを形成するドット)を読み取り、所要の信号処理などを行ってレジストインクの吐出状況(吐出の有無、着弾位置及びドット径のばらつき、積層されるレジストインクの位置ズレ等)を検出し、その検出結果を吐出制御部80に提供する。吐出制御部80は、必要に応じて吐出検出部24から得られる情報に基づいてヘッド50に対する各種補正を行う。
【0095】
例えば、レジストパターンの欠陥を発見した場合には、該欠陥位置及び該欠陥位置に対応するノズルを特定し、次の基板へのレジストパターン形成時には、特定されたノズルに対して他の近隣ノズルを用いて補正吐出を行うように制御する態様がある。
【0096】
上述した不図示の供給側センサ及び排出側センサから出力される検出信号は、システムコントローラ72に送出され、ベルト33の記録紙搬送路上に基板16があるか否かが判断される。
【0097】
なお、図6にはメモリ類を記憶される情報の内容によって分類して記載したが、これらのメモリ類は適宜共通化或いは分離することが可能である。また、システムコントローラ72や吐出制御部80に付随して設けられる態様に限らず、システムコントローラ72や吐出制御部80を構成するプロセッサの内蔵メモリを用いてもよい。
【0098】
次に、本実施形態のインクジェット記録装置10で形成されるレジストパターンについて詳説する。まず、レジストインクに含有されるレジスト粒子が微粒子である場合について説明し、次いで、本発明が適用される場合について説明する。
【0099】
図7は、レジストインクに含有されるレジスト粒子が微粒子である場合を示した説明図である。ノズル51から吐出されたレジストインク100が基板16上に着弾すると(図7(a))、レジストインク100の溶媒104は濡れ広がり、レジストインク100は平衡状態になる(図7(b))。このとき、レジスト粒子102が微粒子である場合、溶媒104の濡れ広がりに影響を受けて、溶媒104中に分散しているレジスト粒子102も溶媒104の濡れ広がり方向に移動してしまう。なお、溶媒104の濡れ広がる範囲や膜厚は、ノズル51から吐出されるレジストインクの液滴量(体積)と基板16表面に対する溶媒104の接触角(前進接触角)に応じて決定される。
【0100】
その後、溶媒104の蒸発によって基板16上にレジスト粒子102のみが存在するようになり(図7(c))、更に、基板16上のレジスト粒子102を加圧加熱して定着を行うと、基板16上にレジスト層106を得ることができる(図7(d))。しかしながら、このようにして得られたレジスト層106は、上述したように、レジスト粒子102が溶媒104の濡れ広がりに影響を受けて、その濡れ広がり方向に移動してしまうため、基板16上に得られるレジスト層106の膜厚は薄くなってしまう。また、基板16上の同一位置に複数のレジストインクを積層しても、濡れ広がりの影響によって所望のパターン形状を得ることは困難である。
【0101】
そこで本発明では、レジストインクに含有されるレジスト粒子が溶媒の濡れ広がりの影響を受けない程度に大きな粒子を用いる。図8は、本発明が適用される場合を示した説明図である。ノズル51から吐出されたレジストインク110(110A)が基板16上に着弾し(図8(a)参照)、レジストインク110Aの溶媒114は濡れ広がり、レジストインク110Aは平衡状態になる(図8(b)参照)。本発明においては、レジスト粒子102の体積平均粒子径(以下、単に粒子径ともいう。)が、基板16上に着弾して平衡状態になったレジストインク110Aの溶媒114の膜厚より大きくなるように構成する。これにより、基板16上に着弾したレジストインク110Aの溶媒114が濡れ広がっても、その濡れ広がり方向へのレジスト粒子112の移動が溶媒114の膜厚により抑制される。なお、上述したように、溶媒114の濡れ広がる範囲や膜厚は、ノズル51から吐出されるレジストインク110Aの液滴量(体積)と基板16表面に対する溶媒114の接触角(前進接触角)に応じて決定される。
【0102】
本実施形態のインクジェット記録装置10では、加熱ファン40又はヒータ37(図1参照)によって基板16は加熱(プリヒート)されており、基板16上に着弾したレジストインク110Aの溶媒114の蒸発が促進され、基板16上にはレジスト粒子112のみが存在するようになる(図8(c))。更に、定着処理部23(図1参照)に配置されるヒートローラにより、基板16上のレジスト粒子112は加圧加熱されて基板16上に定着し、図7(d)に示した場合に比べて厚膜のレジスト層116を得ることができる。また、このようにして得られるレジスト層116は、レジスト粒子112が溶媒114の濡れ広がりによる影響を受けていないため所望のパターン形状になる。従って、所定の厚さ(特に厚膜)のレジストパターンを精度良く形成することが可能となる。
【0103】
次に、レジスト粒子112の体積平均粒子径(直径)が、基板16上に着弾して平衡状態になったレジストインク110Aの溶媒114の膜厚より大きくなるように構成するための条件について、図9を用いて説明する。
【0104】
図9は、レジスト粒子112の粒子径に関する条件を説明するための概念図である。図9(a)は、飛翔中(基板16上に着弾する前)のレジストインク(液滴)110Aの様子を示している。また、図9(b)は、図9(a)のレジストインク110Aが基板16上に着弾して平衡状態になったときの様子を示しており、図8(b)に示した状態に相当する。
【0105】
図9(a)に示したレジストインク110Aは略球状であるとして、レジストインク110Aの半径をr、レジスト粒子112の半径をRとする。また、図9(b)に示したレジストインク110Aの溶媒114の基板16表面(レジストインク110Aが着弾する側の面)に対する接触角(前進接触角)をθ、溶媒114の膜厚をhとする。図9(a)、(b)にそれぞれ示すレジストインク110Aの体積は等しいことから、図9(b)に示す溶媒114の膜厚hは、次のように表現することができる。
【0106】
【数3】

【0107】
また、レジスト粒子112の粒子径が、基板16上に着弾して平衡状態になったレジストインク110Aの溶媒114の膜厚より大きくなるように構成するためには、図9(b)に示すように、溶媒114の膜厚hとレジスト粒子112の半径Rについて、次のような関係が成立する。
【0108】
【数4】

【0109】
式(1)と式(2)から、次式を得ることができる。
【0110】
【数5】

【0111】
従って、式(3)を満足するようなレジスト粒子112を含有したレジストインク110Aを用いることによって、溶媒114の濡れ広がりに影響されることなく、レジスト粒子112の移動を抑制することができ、高精細なレジスト層116を得ることができる。よって、所定の厚さ(特に厚膜)のレジストパターンを精度良く形成することが可能となる。
【0112】
一例として本発明が適用された場合の実施例を挙げておくと、レジストインク110Aの溶媒114を水、基板16をシリコンウェハ、基板16表面に対する溶媒114の接触角θを15度、ノズル51から吐出されるレジストインク110Aの液滴半径rを8μmとしたとき、レジスト粒子102の半径Rを2.9μm以上となるように構成すればよい。
【0113】
本実施形態において、レジスト粒子112の半径Rは2.5μm以上が好ましく、3.0μm以上がより好ましい。また、レジスト粒子112は単分散であることが好ましい。また、レジスト粒子112の粒子径に分布をもつ場合には、微小粒子を含有しないことが好ましい。
【0114】
また、レジストインク110Aの溶媒114は、レジストパターニング後のプロセス(サブトラクティブ法の場合はエッチング、アディティブ法の場合はメッキ)を行う前に除去(例えば、揮発、洗浄など)されるものである。このため、溶媒104は揮発性が高いことが好ましい。
【0115】
また、レジスト粒子112は、エッチング液又はメッキ液に耐性があり、エッチング又はメッキ後に除去可能な材料を適宜選択する。レジストインク110Aの樹脂固形分濃度は、好ましくは5wt%以上、より好ましくは10wt%以上である。粒子分散系では濃度アップしても粘度が劇的にアップしないため、インクジェット吐出適性も高い。更に、必要に応じて、分散剤、染料、顔料、消泡剤を含有してもよい。レジスト粒子112表面に基板16との密着性付与基をもつことが好ましい。
【0116】
このように本発明が適用されるレジスト粒子112を含有するレジストインク110Aを用いて基板16上にレジストパターンを形成する際、定着後に粒子間隙間が生じやすく被覆性が悪くなる場合が考えられる。このような場合には、レジストパターニングを繰り返して行う態様、即ち、基板16上の同一位置に複数のレジストインク110Aを吐出することが好ましい。同一のノズル51から基板16上の同一位置に対して複数のレジストインク110Aを吐出する態様や、異なる複数のノズル51から基板16上の同一位置に対してそれぞれレジストインク110Aを吐出する態様がある。図10は、レジストパターニングを繰り返して行ったときの様子を示した概念図であり、図8(c)に示した場合に相当する。図10に示すように、レジストパターニングを繰り返して行うことにより、基板16上の同一位置に複数のレジスト粒子112が積層されるので、基板16上に形成されるレジストパターンの被覆性を向上させることができる。
【0117】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、レジスト粒子112の体積平均粒子径が、基板16上に着弾して平衡状態になったレジストインク110Aの溶媒114の膜厚より大きくなるように(具体的には、式(3)を満足するように)構成することで、溶媒114の濡れ広がりに影響されることなく、レジスト粒子112の移動が抑制される。この結果、所定の厚さ(特に厚膜)のレジストパターンを精度良く形成することが可能となる。
【0118】
本実施形態(後述する各実施形態も同様)では、前記効果以外にも次のような効果を得ることができる。図11は、基板上に着弾したレジストインクの隣接する位置に他のレジストインクが着弾してから定着するまでの様子を示した概念図である。
【0119】
図11(a)は、図7に示した場合に相当し、レジストインク100に含有されるレジスト粒子102が微粒子である場合を表している。このような場合において、基板16上のレジストインク100が定着する前に、そのレジストインク100の隣接する位置に他のレジストインク100′が着弾すると、着弾干渉が生じ、後から着弾したレジストインク100′が先に着弾したレジストインク100側に全体的に引き寄せられように移動してしまい、所望のドット形状が得られなくなることがある。特に、本実施形態のインクジェット記録装置10のように、フルライン型ヘッドによるシングルパス記録が行われる場合には、基板16上の隣接位置に略同時にレジストインク100が着弾するため、このような着弾干渉は生じやすい。また、基板16上にレジストパターンを形成する場合には、被覆性の観点から高膜厚(液滴量大)のため打滴干渉による影響はより深刻な問題となる。
【0120】
一方、図11(b)は、図8に示した場合に相当し、本発明が適用される場合を示している。本発明においては、上述したように、レジスト粒子112の体積平均粒子径は、基板16上に着弾して平衡状態になったレジストインク110Aの溶媒114の膜厚よりも大きくなるように構成される。つまり、レジスト粒子112の粒子径は、図11(a)に示すレジスト粒子102の粒子径に比べて大きく構成されるため、緩和時間が長いため流体に対する粒子の追従性が悪い。従って、図11(b)に示すように、基板16上のレジストインク110Aの隣接する位置に他のレジストインク110A′が着弾しても、各レジストインク110A、110A′の溶媒114同士は合一しても、それらに含有されるレジスト粒子112の移動は抑制されるので、結果的にレジスト粒子112の偏りは起こりにくく着弾干渉を効果的に防止することができる。
【0121】
本実施形態においては、レジストインクの吐出方式として、圧電素子の変形を利用して吐出を行う圧電方式について例示したが、ヒータなどの発熱素子で生じる熱エネルギーを利用して吐出を行うサーマル方式、その他各種吐出方式を適用してもよい。本発明においては、後述する静電吐出方式(静電濃縮型という。)が特に好適である。
【0122】
また、本実施形態においては、プリント配線基板の製造方法の一部工程として、インクジェット方式を利用して配線基板となる基板上にレジストパターンを形成する方法について例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、液晶カラーフィルタ製造における顔料レジストパターニングに本発明を適用することも可能である。
【0123】
また、本実施形態の応用例として、例えば、図16に示したサブトラクティブ法において、銅張積層板902にスルーホールとなる貫通穴904を形成し(図16(b))、電解メッキを用いて全面に配線層(銅箔層)903’を形成した後に(図16(c))、本発明が適用されるレジストインクを銅張積層板902の表裏面に付与するだけでなく、該レジストインクで貫通穴904内部を埋めるようにしてもよい。その後、レジスト層905のパターニング(図16(d))や銅箔903及び配線層903‘のエッチング(図16を経て、最後に、レジスト層905とともに貫通穴904内部のレジストを一括して除去すればよい。本応用例において、ノズル51から吐出されるレジストインクの液滴径が貫通穴904の穴径より小さくなるように、ノズル51の吐出量を制御することが好ましい。貫通穴904内の空気の排出が容易になる。また、パターニングデータ読み出し手段、穴径と穴深さより吐出回数を算出する手段、吐出位置及び吐出回数を制御する手段を設けてもよい。また、穴位置検出手段により、穴径や穴位置を検出し、吐出位置及び吐出回数を制御する手段を設けてもよい。
【0124】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下、既述した第1の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
【0125】
第2の実施形態は、ガラス転移点の異なる少なくとも2種類のレジスト粒子を含有したレジストインクを用いる態様である。図12は、第2の実施形態を示した概念図である。本実施形態のレジストインク110Bは、レジスト粒子(第1のレジスト粒子)112だけでなくレジスト粒子(第2のレジスト粒子)118も溶媒114中に分散した液体である。レジストインク110Bが基板16上に着弾すると(図12(a))、基板16上においてレジストインク110Bの溶媒114は濡れ広がり、レジストインク110Bは平衡状態になる(図12(b))。
【0126】
本実施形態においては、第1のレジスト粒子112だけでなく第2のレジスト粒子118の体積平均粒子径が、基板16上に着弾して平衡状態になったレジストインク110Bの溶媒114の膜厚より大きくなるように構成する。図示の例では、第1のレジスト粒子112と第2のレジスト粒子118の粒子径は略同じであるが、もちろん、異なっていてもよい。このように構成することで、第1及び第2のレジスト粒子112、118は、溶媒114の濡れ広がりによる影響を受けずに、その濡れ広がり方向への移動は抑制される(図12(b))。その後、溶媒114の蒸発によって、基板16上には第1及び第2のレジスト粒子112、118が残存するようになる(図12(c))。
【0127】
また、本実施形態においては、基板16上に残存した第1のレジスト粒子112を加圧加熱して定着させる際の加熱温度(レジストベーク温度)は、第1のレジスト粒子112のガラス転移点より大きく、かつ、第2のレジスト粒子118のガラス転移点より小さくなるように構成される。このため、図12(d)に示すように、第2のレジスト粒子118は溶融変形せずにスペーサとして機能するので、第2のレジスト粒子118の粒子径(直径)と略同程度の厚さのレジスト層116を得ることができる。つまり、第2のレジスト粒子118の大きさに応じてレジスト層116の厚さが決定されるので、レジスト層116の厚膜精度を制御しやすくなり、所定の厚さ(特に厚膜)のレジストパターンを更に精度良く形成することが可能となる。
【0128】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。以下、既述した各実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
【0129】
第3の実施形態は、コアシェル型レジスト粒子を含有したレジストインクを用いる態様である。図13は、第3の実施形態を示した概念図である。本実施形態のレジストインク110Cは、レジスト粒子120の表面を、該レジスト粒子120より低いガラス転移点を有するレジスト122で被覆したコアシェル型レジスト粒子124を溶媒114中に分散した液体である。レジストインク110Cが基板16上に着弾すると(図13(a))、基板16上においてレジストインク110Cの溶媒114は濡れ広がり、レジストインク110Cは平衡状態になる(図13(b))。
【0130】
本実施形態においては、コアシェル型レジスト粒子124の体積平均粒子径が、基板16上に着弾して平衡状態になったレジストインク110Cの溶媒114の膜厚よりも大きくなるように構成する。これにより、コアシェル型レジスト粒子124は、溶媒114の濡れ広がりによる影響を受けることなく、その濡れ広がり方向への移動は抑制される。その後、溶媒114の蒸発によって、基板16上にはコアシェル型レジスト粒子124が残存するようになる(図13(c))。
【0131】
また、本実施形態においては、基板16上に残存したコアシェル型レジスト粒子124を加圧加熱して定着させる際の加熱温度(レジストベーク温度)は、コアシェル型レジスト粒子124のシェルを構成するレジスト122のガラス転移点より大きく、かつ、コアシェル型レジスト粒子124のコアを構成するレジスト粒子120のガラス転移点より小さく構成される。このため、図13(d)に示すように、コアシェル型レジスト粒子124のコアを構成するレジスト粒子120は溶融変形せずにスペーサとして機能し、シェルを構成するレジスト122のみが溶融するので、レジスト粒子120の直径と略同程度の厚さのレジスト層116を得ることができる。つまり、コアシェル型粒子124のコアを構成するレジスト粒子120の大きさに応じてレジスト層116の厚さが決定されるので、レジスト層116の厚膜精度を制御しやすくなり、所定の厚さ(特に厚膜)のレジストパターンを更に精度良く形成することが可能となる。
【0132】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。以下、既述した各実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
【0133】
図14は、第4の実施形態としてインクジェット記録装置10のレジストインク供給系の構成を示した概要図である。なお、図14中、説明と関係ない部分については図示を省略している。図14において、200はレジストインク供給タンク、202は供給サブタンク、204は回収サブタンク、206は洗浄液タンク、208は高濃度補充タンク、210は希釈補充タンクである。
【0134】
レジストインク供給タンク200はレジストインクを供給するための基タンクであり、図5に示したレジストインク供給タンク60に相当する。レジストインク供給タンク200は、その内部に貯蔵されるレジストインクを攪拌するための攪拌手段212が設けられている。レジストインク供給タンク200から延びる流路214は2つに分岐し、一方の流路218は供給サブタンク202に接続され、他方の流路220は回収サブタンク204に接続される。
【0135】
供給サブタンク202は、レジストインク供給タンク200から供給されたレジストインクを一旦貯蔵してヘッド50に供給するためのサブタンクであり、ヘッド50の内圧変動を防止するダンパ効果及びリフィルを改善する機能を有する。供給サブタンク202とヘッド50は流路222を介して接続される。また、回収サブタンク204は、ヘッド50内部のレジストインクを一旦回収してレジストインク供給タンク200に戻すためのサブタンクである。ヘッド50と回収サブタンク204は流路224を介して接続される。更に、供給サブタンク202と回収サブタンク204からそれぞれ延びる流路226、228は1つに合流して流路230となり、流路230の他端はレジストインク供給タンク200に接続される。
【0136】
レジストインク供給タンク200から延びる流路214にはポンプ232が設けられている。このポンプ232を駆動させると、レジストインク供給タンク200内のレジストインクは流路218を介して供給サブタンク202に供給されるとともに、流路220を介して回収サブタンク204にも供給される。図示するように、流路212には、異物や気泡を除去するためにフィルタ234を設けることが好ましい。
【0137】
供給サブタンク202内のレジストインクは流路222を介してヘッド50に供給される。また、ヘッド50に供給されたレジストインクは流路224を介して回収サブタンク204に回収される。図示の例では、供給サブタンク202、ヘッド50、及び回収サブタンク204の水頭差を利用してレジストインクの供給や回収が行われる。もちろん、ポンプなどを利用して強制的にレジストインクの供給や回収を行ってもよい。
【0138】
供給サブタンク202と回収サブタンク204の内部のレジストインクは、それぞれ接続される流路226、228を介し、更には流路230を介して、レジストインク供給タンク200に戻される。
【0139】
また、高濃度補充タンク208と希釈補充タンク210には、用いられるレジストインクの種類に応じた所定の液体が貯蔵されており、レジストインク供給タンク200内のレジスト粒子の濃度が所定範囲となるように各タンク208、210の液体が適宜補充される。
【0140】
レジストインク供給タンク200内のレジストインクを攪拌手段212により定期的に攪拌する態様が好ましい。レジストインクに含有される粒子が分散した状態でレジストインクを循環させることができる。
【0141】
また、劣化したレジストインクを洗浄するための洗浄手段を設ける態様が好ましい。図示の例では、流路214、230にそれぞれ三方制御弁238、240を設け、ポンプ242を利用して三方制御弁238を介して流路214内へ洗浄液を供給し、洗浄されたレジストインクは三方制御弁240を介して洗浄液タンク206に戻される。
【0142】
このようにレジストインク供給タンク200、供給サブタンク202、回収サブタンク204、及びヘッド50の間でレジストインクを循環させることにより、レジストインクに含有される粒子(レジスト粒子、コアシェル型レジスト粒子)の沈降を防止することができ、粒子沈降を要因とする吐出不良を防止することができる。
【0143】
〔第5の実施形態〕
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。以下、既述した各実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的な部分を中心に説明する。
【0144】
図15は、第5の実施形態として静電吐出式(静電濃縮型)のインクジェット記録装置の要部構成を示した概略図である。以下に説明する静電濃縮型インクジェット記録装置は、ヘッド300内でレジストインク316を濃縮して吐出するので、基板16に着弾したレジストインク316の溶媒を乾燥させる構成を備えることなく基板16上での着弾干渉を効果的に防止できるとともに、レジストインク316に帯電手段(電界付与手段)から電界を作用させてレジストインク316を吐出するので、高精細なドットを形成でき、且つ、安定した高い着弾精度を実現することができる。従って、高精細及び高精度が要求されるプリント配線基板のレジストパターン形成にはより好適である。
【0145】
図15(a)は本実施形態のヘッド300の一部断面を模式的に示した概略断面図であり、図15(b)は図15(a)中15b−15b線に沿う断面図である。図15(a)に示すように、ヘッド300は、ヘッド基板302と、吐出ガイド304と、吐出口306が形成された吐出口基板308とを有する。吐出口基板308には、吐出口306を囲むように吐出電極320が配置されている。ヘッド300の吐出側の面(図中、上面)に対面する位置に、基板16を支持する対向電極310と、基板16の帯電ユニットが配置される。
【0146】
また、ヘッド基板302と吐出口基板308は、互いに対面した状態で所定間隔離間して配置される。ヘッド基板302と吐出口基板308の間に形成される空間によって各吐出口306にインクを供給するレジストインク流路314が形成される。
【0147】
ヘッド300は、より高密度な画像記録を高速に行うために、複数の吐出口(ノズル)306が2次元的に配列されたマルチチャンネル構造を有する。ヘッド300の吐出口基板308に複数の吐出口306は2次元的に配列されているが、図15(a)及び図15(b)においては、ヘッド300を分かりやすく示すために、複数の吐出口のうちの1つの吐出口だけを示している。
【0148】
ヘッド300においては、電荷を有するレジスト粒子を絶縁性の液体(キャリア液)に分散してなるレジストインク316を用いる。そして、吐出口基板308に設けられた吐出電極320に駆動電圧を印加して吐出口306に電界を発生させ、吐出口306のレジストインクを静電力により吐出させる。また、吐出電極320に印加する駆動電圧を、レジストパターンデータに応じてon/off(吐出on/off)することにより、レジストパターンデータに応じて吐出口306からレジストインクを吐出して、基板16上にレジストパターンを形成する。
【0149】
以下、図15(a)及び図15(b)に示した本実施形態のヘッド300の構造についてより詳細に説明する。
【0150】
図15(a)に示すように、ヘッド300の吐出口基板308は、絶縁基板322と、吐出電極320と、を有し、絶縁基板322の図中下側の面(ヘッド基板302に対面する側の面)には、レジストインクを吐出するための駆動電圧が印加される吐出電極320が形成されている。
【0151】
また、吐出口基板308には、レジストインク滴328を吐出するための吐出口306が絶縁基板322を貫通して形成されている。吐出口306は、図15(b)に示すように、長方形の両方の短辺側を半円形にした、レジストインクの流れ方向に細長い繭形の開口(スリット)であり、レジストインクの流れ方向の長さLとレジストインクの流れに直交する方向の長さDとのアスペクト比(L/D)が1以上となる形状を有する。
【0152】
本発明では、このように、吐出口306をレジストインクの流れ方向の長さLとレジストインクの流れに直交する方向の長さDとのアスペクト比(L/D)が1以上の開口とすることで、吐出口306にレジストインクが流れやすくなる。つまり吐出口306へのレジストインクのレジスト粒子供給性を高めることができ、周波数応答性を向上させ、更に目詰まりも防止することができる。この点については、レジストインク滴の吐出の作用とともに、後ほど詳細に説明する。
【0153】
また、本実施の形態では、吐出口306を繭形の開口として形成したが、これに限らず、吐出口306からレジストインクを吐出することができるのであれば、円形や略円形、楕円形、矩形、正方形、ひし形、平行四辺形など任意の形状で吐出口306を形成することができる。
【0154】
吐出口306の形状としてはレジストインクの流れ方向の長さとレジストインクの流れに垂直な方向の長さとのアスペクト比が1以上となるようなレジストインクの流れ方向に細長い形状であることが好ましい。これにより、吐出口へのレジストインクの供給性が高められ、目詰まりを防止することができ、連続した大ドットを安定して基板16に形成することができ、より高い周波数の描画数波数で高画質のレジストパターンを描画することができる。例えば、レジストインクの流れ方向を長辺とする矩形状、又は、レジストインクの流れ方向を長軸とする楕円形若しくはひし形で吐出口を形成することができる。また、レジストインクの流れの上流側を上底、下流側を下底とし、レジストインクの流れ方向の高さが下底よりも長い台形状で吐出口を形成してもよい。この場合、上流側の辺を長くしても下流側の辺を長くしてもよい。また、レジストインクの流れ方向を長辺とする長方形の両方の短辺側に、直径がその長方形の短辺よりも大きな円が接続されたような形状にしてもよい。このように吐出口306をレジストインクの流れ方向に細長い形状とすることにより、この吐出口306へのレジストインクの供給性を高めることができるとともに目詰まりも防止することができる。また、吐出口306は、その中心に対して、上流側と下流側で対称な形状であっても非対称な形状であっても良い。
【0155】
次に、図15(a)に示したヘッド300の吐出口基板308に形成されている吐出電極320について説明する。絶縁基板322の下面(ヘッド基板302と対向する面)には、図15(b)に示すような吐出電極320が形成されている。吐出電極320は、吐出口306の周囲を囲むように吐出口306の周縁に沿って配置されている。図15(b)においては、吐出電極320は吐出口306と相似形の形状で形成されているが、これに限定されず、吐出口306の周囲を囲む形状であれば種々の形状に変更することができる。例えば、円形、略円形、楕円形、略楕円形などの形状で吐出電極を形成することができる。また、吐出口306の形状に応じて種々の形状に変更することができ。吐出口306の周囲を完全に取り囲んでいなくてもよく、例えば、レジストインクの流れ方向の上流側又は下流側の吐出電極の一部が切りかかれたようなC字型、コ字型などの形状であってもよい。また、レジストインクの流れ方向に平行で吐出口を挟むように配置された平行電極や略平行電極としてもよい。
【0156】
前述のように、ヘッド300は、吐出口306が2次元的に配列されたマルチチャンネル構造を有するので、吐出電極320もまた各吐出口306に対応して2次元的に配置されている。
【0157】
また、吐出電極320は、レジストインク流路314に露出し、レジストインク流路314を流れるレジストインク316と接触している。図15(a)に示すヘッド300は、このような構造としたことにより、レジストインクの吐出性を大幅に向上させることができる。この点については、後に、吐出の作用と共に詳述する。しかしながら、吐出電極320は、必ずしもレジストインク流路314に露出してレジストインクと接触している必要はなく、吐出電極320は吐出口基板308の内部に形成されていてもよいし、図15(a)に示した吐出電極320のレジストインク流路314に露出している面を絶縁層で被覆してもよい。
【0158】
また、吐出電極320は、図15(a)に示すように、駆動電圧制御部330に接続されている。駆動電圧制御部330は、レジストインク吐出時及び非吐出時に吐出電極に印加する駆動電圧を、描画信号(レジストパターンデータ)に応じて制御することができる。
【0159】
次に、図15(a)に示したヘッド300の吐出ガイド304について説明する。吐出ガイド304は、所定の厚みを有するセラミック製平板からなり、各吐出口306(吐出部)に対応してヘッド基板302の上に配置されている。吐出ガイド304は、吐出口306の長辺方向の長さに応じてわずかに幅広に形成されている。上述したように、吐出ガイド304は、吐出口306を通過し、その先端部分304Aが吐出口基板308の基板16側の表面(絶縁基板322の表面)よりも上方に突出している。
【0160】
吐出ガイド304の先端部分304Aは、レジストインクの流れ方向に平行な断面形状が、対向電極310側へ向かうに従って次第に細くなる略三角形(ないしは台形)になるように成形されている。吐出ガイド304は、先端部分304Aの傾斜面がレジストインクの流れ方向と交差するように配置される。これにより、吐出口306に流入するレジストインクが吐出ガイド304の先端部分304Aの傾斜面に沿って先端部分304Aの頂点に到達するので、吐出口306にレジストインクのメニスカスが安定して形成される。
【0161】
また、吐出ガイド304を吐出口306の長辺方向に幅広に形成することで、レジストインクの流れに直交する方向の幅を短くすることができ、レジストインクの流れに及ぼす影響を少なくすることができ、かつ後述するメニスカスを安定して形成させることができる。
【0162】
なお、吐出ガイド304の形状は、レジストインク316内のレジスト粒子を吐出口基板308の吐出口306を通って先端部分304Aに濃縮させることができれば、特に、制限的ではなく、例えば、先端部分304Aが対向電極310側に向かうに従って細くなるような形状でなくても良く、適宜変更することができる。例えば、吐出ガイド304の中央部分に、図中上下方向に毛細管現象によってレジストインク316を先端部分304Aに集める案内溝となる切り欠きが形成されていても良い。また、図15(b)では、吐出口の形状に応じて、レジストインク流方向に長い板状の形状としたが、これに限定されず、角柱にしてもよい。
【0163】
また、吐出ガイド304は、その最先端部に、金属が蒸着されていることが好ましく、吐出ガイド304の最先端部に金属を蒸着させることにより、吐出ガイド304の先端部分304Aの誘電率が実質的に大きくなる。これにより、吐出電極に駆動電圧が印加されたときに、吐出ガイド304に強電界を生じさせやすくなり、レジストインクの吐出性を向上することができる。
【0164】
本実施形態のヘッド300は、図15(a)に示すように、好ましい形態として、ヘッド基板302に吐出口306にレジストインクを誘導する誘導堰340が設けられている。誘導堰340は、ヘッド基板302のレジストインク流路314側の面、即ちレジストインク流路314の底面で、吐出ガイド304のレジストインクの流れ方向の上流側および下流側に設けられている。誘導堰340は、レジストインクの流れ方向に対して、吐出口306に対応する位置の近傍から吐出口306の中心に対応する位置に向かって、吐出口基板308に漸次近接するように傾斜した面を有している。即ち、誘導堰340は、レジストインクの流れ方向に沿って、吐出口306に向かって傾斜する形状を有している。
【0165】
また、誘導堰340は、レジストインクの流れに直交する方向には、吐出口306と略同一の幅を有し、底面から垂設する壁面を有する形状とされている。また、誘導堰340は、吐出口306を塞ぐことなく、レジストインク316の流路を確保するように、吐出口基板308のレジストインク流路314側の面、即ちレジストインク流路314の上面から所定の間隔を置いて設けられている。このような誘導堰340は、各々の吐出部にそれぞれ設けられている。
【0166】
このように、レジストインク流路314の底面に、レジストインクの流れ方向に沿って、吐出口306に向かって傾斜する誘導堰340を設けることによって、吐出口306へ向かうレジストインクの流れが形成され、レジストインク316が吐出口306のレジストインク流路314側の開口部に誘導される。そのため、レジストインク316を吐出口306内部へ好適に流入させることができ、レジストインクのレジスト粒子供給性をより向上させることができる。更に吐出口の目詰まりも、より確実に防止することができる。
【0167】
誘導堰340のインク流方向の長さlは、隣接する吐出口と干渉しない範囲で、レジストインク316を吐出口306へ好適に誘導できるように適宜設定されればよいが、誘導堰340の最高部の高さhに対し、3倍以上(l/h≧3)とするのが好ましく、8倍以上(l/h≧8)とするのがより好ましい。
【0168】
誘導堰340のレジストインクの流れと直交する方向の幅は、吐出口306と同等か、若干広いのが好ましい。また、誘導堰340の幅は、図示例のように均一なものには限定されず、幅が漸減するものや漸増するもの等であってもよい。また、その壁面も、垂直面には限定されず、傾斜面等であってもよい。
【0169】
誘導堰340の傾斜面(レジストインクの誘導面)は、レジストインク316を吐出口306に誘導するのに好適な形状とすればよく、一定の傾斜角を有する斜面であってもよいし、傾斜角が変化する面や、湾曲面であってもよい。また、その表面は、平滑面には限定されず、インク流方向に、或いは吐出口306の中心部に向かって放射状に、1条以上の畝や溝等が形成されていてもよい。
【0170】
また、誘導堰340の上部の吐出ガイド304との接部近傍は、図示例のように段差を有することなく、滑らかにつながる形状としてもよい。
【0171】
図示例では、誘導堰340が吐出ガイド304の上流側および下流側に配置された形態としているが、吐出口306の上流側および下流側に斜面を有する台形状の誘導堰340を設け、その上部に吐出ガイド304を立設する形態としてもよいし、吐出ガイド304および誘導堰340を一体的に形成してもよい。このように、誘導堰340は、吐出ガイド304と別々に、または、一体的に形成されて、ヘッド基板302に取り付けられてもよいし、あるいは、従来公知の掘削手段によりヘッド基板302を削り出して形成されてもよい。
【0172】
なお、誘導堰340は、吐出口306の上流側に設けられていれば良いが、図示例のように、吐出口306の下流側にも、レジストインク滴328の吐出方向の高さが吐出口306から遠ざかるにつれて低くなるように設けられているのが好ましい。これにより、上流側の誘導堰340によって吐出口306に向かって誘導されたレジストインク316が滑らかに下流側へ流れるので、レジストインク316が乱流になることなく、レジストインクの流れの安定を保つことができ、吐出安定性を保つことができる。
【0173】
次に、ヘッド300のレジストインク滴328の吐出面と対面して配置される対向電極310について説明する。対向電極310は、図15(a)に示すように、吐出ガイド304の先端部分304Aに対向する位置に配置され、接地される電極基板350と、電極基板350の図中下側の表面、即ちヘッド300側の表面に配置される絶縁シート352で構成される。
【0174】
この対向電極310の図中下側の表面、即ち絶縁シート352の表面に、基板16が例えば静電吸着によって保持される。対向電極310(絶縁シート352)は、基板16のプラテンとして機能する。
【0175】
対向電極310の絶縁シート352に保持された基板16は、少なくとも記録時には、帯電ユニット312によって、吐出電極320に印加される駆動電圧と逆極性の所定の負の高電圧に帯電される。その結果、基板16は負帯電して負の高電圧にバイアスされ、吐出電極320に対する実質的な対向電極として作用し、かつ、対向電極310の絶縁シート352に静電吸着される。
【0176】
帯電ユニット312は、基板16を負の高電圧に帯電させるためのスコロトロン帯電器354と、スコロトロン帯電器354に負の高電圧を供給するバイアス電圧源356とを有している。なお、本発明に用いられる帯電ユニット312の帯電手段としては、スコロトロン帯電器354に限定されず、コロトロン帯電器、固体チャージャ、放電針などの種々の放電手段を用いることができる。
【0177】
また、図示例においては、対向電極310を電極基板350と絶縁シート352とで構成し、基板16を、帯電ユニット312によって負の高電圧に帯電させることにより、バイアス電圧を印加して対向電極として作用させ、かつ、絶縁シート352の表面に静電吸着させているが、本発明はこれに限定されず、対向電極310を電極基板350のみで構成し、対向電極310(電極基板350自体)を負の高電圧のバイアス電圧源に接続して、負の高電圧に常時バイアスしておき、対向電極310の表面に基板16を静電吸着させるようにしても良い。
【0178】
また、基板16の対向電極310への静電吸着と、基板16への負の高電圧への帯電または対向電極310への負のバイアス高電圧の印加とを別々の負の高電圧源によって行っても良いし、対向電極310による基板16の保持は、基板16の静電吸着に限られず、他の保持方法や保持手段を用いても良い。
【0179】
以上、本発明のヘッド300の構造について詳細に説明した。次に、このような構造を有するヘッドのレジストインクの吐出の動作について説明する。
【0180】
ヘッド300の記録動作時には、吐出電極320には、駆動電圧が印加される。即ち、描画信号(レジストパターンデータ)に同期して、レジストインクを吐出するための駆動電圧が印加される。レジストインクの吐出を指示する描画信号が吐出電極320に接続された駆動電圧制御部330に供給されると、その描画信号と同じタイミングで吐出電極320に駆動電圧が印加される。これにより、吐出電極320からインクの吐出に作用する電界が発生し、吐出口306からインクが吐出される。
【0181】
一方、レジストインクの非吐出を指示する描画信号が駆動電圧制御部に供給された場合には、吐出電極320には駆動電圧は印加されずに0[V]とされる。このため、吐出電極320からは吐出のための電界は発生しないので、吐出口306からインクは吐出されない。なお、描画信号の1周期が基板16に1ドットを形成するのに要する時間に相当する。また、吐出電極320に印加される駆動電圧は、例えば、600[V]に設定される。吐出電極320に駆動電圧を印加しない場合は、吐出電極320は、例えば、0[V]に設定される。駆動電圧の電圧値は、上記値に限定されず、吐出電極320に駆動電圧を印加したときに確実にインクを吐出させることができれば、任意の電圧値に設定することができる。
【0182】
次に、本実施形態のヘッド300に用いられるレジストインクについて説明する。
【0183】
レジストインク316は、レジスト粒子をキャリア液に分散することにより得られる。キャリア液は、高い電気抵抗率(109 Ω・cm以上、好ましくは1010Ω・cm以上)を有する誘電性の液体(非水溶媒)であるのが好ましい。キャリア液の電気抵抗が低いと、制御電極に印加される駆動電圧により、キャリア液自身が電荷注入を受けて帯電してしまい、レジスト粒子の濃縮がおこらない。また、電気抵抗の低いキャリア液は、隣接する制御電極間での電気的導通を生じさせる懸念もあるため不向きである。
【0184】
キャリア液として用いられる誘電性液体の比誘電率は、5以下が好ましく、より好ましくは4以下、更に好ましくは3.5以下である。このような比誘電率の範囲とすることによって、キャリア液中のレジスト粒子に有効に電界が作用し、泳動が起こりやすくなる。
【0185】
なお、このようなキャリア液の固有電気抵抗の上限値は1016Ω・cm程度であるのが望ましく、比誘電率の下限値は1.9程度であるのが望ましい。キャリア液の電気抵抗が上記範囲であるのが望ましい理由は、電気抵抗が低くなると、低電界下でのレジストインクの吐出が悪くなるからであり、比誘電率が上記範囲であるのが望ましい理由は、誘電率が高くなると溶媒の分極により電界が緩和され、これにより形成されたドットの滲みを生じたりするからである。
【0186】
キャリア液として用いられる誘電性液体としては、好ましくは直鎖状もしくは分岐状の脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、または芳香族炭化水素、および、これらの炭化水素のハロゲン置換体がある。例えば、へキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM(アイソパー:エクソン社の商品名)、シェルゾール70、シェルゾール71(シェルゾール:シェルオイル社の商品名)、アムスコOMS、アムスコ460溶剤(アムスコ:スピリッツ社の商品名)、シリコーンオイル(例えば、信越シリコーン社製KF−96L)等を単独あるいは混合して用いることができる。
【0187】
更に、レジスト粒子としては、例えば、ロジン類、ロジン変性フェノール樹脂、アルキッド樹脂、(メタ)アクリル系ポリマー、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニールアルコールのアセタール変性物、ポリカーボネート等を挙げられる。
【0188】
これらのうち、粒子形成の容易さの観点から、重量平均分子量が2,000〜1000,000の範囲内であり、かつ多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が、1.0〜5.0の範囲内であるポリマーが好ましい。更に、前記定着の容易さの観点から、軟化点、ガラス転移点または、融点の何れか1つが40℃〜120℃の範囲内にあるポリマーが好ましい。
【0189】
レジストインク316において、レジスト粒子の含有量(樹脂粒子あるいは更に分散樹脂粒子の合計含有量)は、レジストインク全体に対して0.5〜30重量%の範囲で含有されることが好ましく、より好ましくは1.5〜25重量%、更に好ましくは3〜20重量%の範囲で含有されることが望ましい。レジスト粒子の含有量が少なくなると、レジスト被覆性が不足したり、レジストインク316と基板16表面との親和性が得られ難くなって強固なパターンが得られなくなったりするなどの問題が生じ易くなり、一方、含有量が多くなると均一な分散液が得られにくくなったり、ヘッド等でのレジストインク316の目詰まりが生じやすく、安定なインク吐出が得られにくいなどの問題が生じるからである。
【0190】
また、キャリア液に分散されたレジスト粒子の平均粒径は、0.1〜5μmが好ましく、より好ましくは0.4〜1.5μmであり、更に好ましくは0.7〜1.5μmである。この粒径はCAPA−500(堀場製作所(株)製商品名)により求めたものである。
【0191】
レジスト粒子をキャリア液に分散させた後(必要に応じて、分散剤を使用しても可)、荷電制御剤をキャリア液に添加することによりレジスト粒子を荷電して、荷電したレジスト粒子をキャリア液に分散してなるレジストインク316とする。なお、レジスト粒子の分散時には、必要に応じて、分散媒を添加してもよい。
【0192】
荷電制御剤は、一例として、電子写真液体現像剤に用いられている各種のものが利用可能である。また、「最近の電子写真現像システムとトナー材料の開発・実用化」139〜148頁、電子写真学会編「電子写真技術の基礎と応用」497〜505頁(コロナ社、1988年刊)、原崎勇次「電子写真」16(No.2)、44頁(1977年)等に記載の各種の荷電制御剤も利用可能である。
【0193】
なお、レジスト粒子は、制御電極に印加される駆動電圧と同極性であれば、正電荷および負電荷の何れに荷電したものであってもよい。
【0194】
また、レジスト粒子の荷電量は、好ましくは5〜200μC/g、より好ましくは10〜150μC/g、更に好ましくは15〜100μC/gの範囲である。
【0195】
また、荷電制御剤の添加によって誘電性溶媒の電気抵抗が変化することもあるため、下記に定義する分配率Pを、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、更に好ましくは70%以上とする。
【0196】
P=100×(σ1−σ2)/σ1
ここで、σ1は、レジストインク316の電気伝導度、σ2は、レジストインク316を遠心分離器にかけた上澄みの電気伝導度である。電気伝導度は、LCRメーター(安藤電気(株)社製AG−4311)および液体用電極(川口電機製作所(株)社製LP−05型)を使用し、印加電圧5[V]、周波数1kHzの条件で測定を行った値である。また遠心分離は、小型高速冷却遠心機(トミー精工(株)社製SRX−201)を使用し、回転速度14500rpm、温度23℃の条件で30分間行った。
【0197】
以上のようなレジストインク316を用いることによって、荷電レジスト粒子の泳動が起こりやすくなり、濃縮しやすくなる。
【0198】
レジストインク316の電気伝導度は、100〜3000pS/cmが好ましく、より好ましくは150〜2500pS/cm、更に好ましくは200〜2000pS/cmである。以上のような電気伝導度の範囲とすることによって、制御電極に印加する電圧が極端に高くならず、隣接する記録電極間での電気的導通を生じさせる懸念もない。
【0199】
また、レジストインク316の表面張力は、15〜50mN/mの範囲が好ましく、より好ましくは15.5〜45mN/m、更に好ましくは16〜40mN/mの範囲である。表面張力をこの範囲とすることによって、制御電極に印加する電圧が極端に高くならず、ヘッド周りにインクが漏れ広がり汚染することがない。
【0200】
更に、レジストインク316の粘度は0.5〜5mPa・secが好ましく、より好ましくは0.6〜3.0mPa・sec、更に好ましくは0.7〜2.0mPa・secである。
【0201】
このようなレジストインク316は、一例として、レジスト粒子をキャリア液に分散して粒子化し、かつ、荷電調整剤を分散媒に添加して、レジスト粒子に荷電を生じさせることで、調製できる。
【0202】
上述したように、本実施形態のヘッド300では、基板16に着弾するレジストインクの高粘度化手段を別途具備することなく、ヘッド内でレジストインクを濃縮して吐出することが可能であり、基板16上におけるレジストインクの着弾干渉を効果的に防止することができる。更に、高精細且つ、高い着弾精度といった特徴を有しているので、レジストパターンの形成には好適である。
【0203】
特に、本実施形態のヘッド300は、吐出口306を大開口に構成することが可能であり、大粒子を含有するレジストインクの吐出には好適であり、吐出口306の目詰まりが生じない。また、濃縮吐出により着弾時の濃度は20wt%以上となるので、溶媒の濡れ広がり時の粒子移動がより抑止され、高アスペクトで高精細なレジストパターンを得ることができる。また、レジストパターンの被覆効率が向上する。更に、吐出口306から電界によりレジストインクが加速飛翔するため、着弾位置精度が向上する。
【0204】
一例として本発明が適用された場合の実施例を挙げておくと、図5において、レジストインク316の溶媒をアイソパー、基板16をシリコンウェハ、基板16表面に対する溶媒の接触角θを約3度、吐出口306から吐出されるレジストインク滴328の液滴半径rを4μmとしたとき、レジスト粒子の半径Rは0.5μm以上(例えば0.7μm)となるように構成すればよい。
【0205】
また、図1で示したインクジェット記録装置10のヒータ37と同様に、本実施形態の静電濃縮型のインクジェット記録装置においても、インクジェット描画時に基板16を加熱する手段としてヒータ(不図示)を設ける態様もある。基板16の加熱により溶媒揮発が促進され、本発明の効果がより顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】インクジェット記録装置の概略構成を示した全体構成図
【図2】インクジェット記録装置の描画部周辺の要部平面図
【図3】ヘッドの構造例を示す平面透視図
【図4】図3中4−4線に沿う断面図
【図5】インクジェット記録装置のレジストインク供給系の構成を示した概要図
【図6】インクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【図7】レジストインクに含有されるレジスト粒子が微粒子である場合を示した説明図
【図8】本発明が適用される場合を示した説明図
【図9】レジスト粒子の粒子径に関する条件を説明するための概念図
【図10】レジストパターニングを繰り返して行ったときの様子を示した概念図
【図11】本発明の効果を説明するための図
【図12】第2の実施形態を示した概念図
【図13】第3の実施形態を示した概念図
【図14】第4の実施形態としてインクジェット記録装置のレジストインク供給系の構成を示した概要図
【図15】第5の実施形態として静電濃縮型のインクジェット記録装置の要部構成を示した概略図
【図16】サブトラクティブ法の説明図
【図17】アディティブ法の説明図
【図18】セミアディティブ法の説明図
【符号の説明】
【0207】
10…インクジェット記録装置、12…描画部、12A〜12D…ヘッド、16…基板、23…定着処理部、40…加熱ファン、50…ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、54…供給口、55…共通流路、56…振動板、58…圧電素子、110(110A〜110C)…レジストインク、112…レジスト粒子、114…溶媒、116…レジスト層、118、120…レジスト粒子、122…レジスト、124…コアシェル型粒子、200…レジストインクタンク、202…供給サブタンク、204…回収サブタンク、206…洗浄タンク、208…高濃度補充タンク、210…希釈補充タンク、300…ヘッド、304…吐出ガイド、306…吐出口、316…レジストインク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルからレジスト粒子が溶媒中に分散されたレジストインクを基板に向かって吐出する液体吐出方法であって、
前記粒子の体積平均粒子径は、前記基板上に着弾して平衡状態になった前記レジストインクの溶媒の膜厚よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする液体吐出方法。
【請求項2】
前記溶媒の前記基板に対する接触角をθ、前記ノズルから吐出されたレジストインクの液滴半径をr、前記レジスト粒子の半径をRとしたとき、次式を満足することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出方法。
【数1】

【請求項3】
前記基板上に着弾したレジストインクを加圧加熱して定着させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体吐出方法。
【請求項4】
前記レジストインクはガラス転移点の異なる少なくとも2種類のレジスト粒子を含有し、
前記レジストインクを加圧加熱して定着させる際の加熱温度は、第1のレジスト粒子のガラス転移点より大きく、かつ、第2のレジスト粒子のガラス転移点より小さいことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出方法。
【請求項5】
前記レジストインクに含有されるレジスト粒子は、前記レジスト粒子より低いガラス転移点を有するレジストで表面が覆われたコアシェル型レジスト粒子であり、
前記レジストインクを加圧加熱して定着させる際の加熱温度は、前記レジスト粒子の表面を覆うレジストのガラス転移点より大きく、かつ、前記レジスト粒子のガラス転移点より小さいことを特徴とする請求項3に記載の液体吐出方法。
【請求項6】
前記基板上の同一位置に対して複数のレジストインクを吐出することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の液体吐出方法。
【請求項7】
静電濃縮型のヘッドを用いて前記レジストインクを吐出することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の液体吐出方法。
【請求項8】
前記基板上に前記レジストインクが着弾する前に前記基板を加熱することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の液体吐出方法。
【請求項9】
レジストインク供給系に、前記レジストインクの循環を行う工程、前記レジストインクを攪拌する工程、及び前記レジストインクを洗浄する工程の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の液体吐出方法。
【請求項10】
複数のノズルからレジスト粒子が溶媒中に分散されたレジストインクを基板に向かって吐出する吐出手段を備え、
前記粒子の体積平均粒子径は、前記基板上に着弾して平衡状態になった前記レジストインクの溶媒の膜厚よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項11】
前記溶媒の前記基板に対する接触角をθ、前記ノズルから吐出されたレジストインクの液滴半径をr、前記レジスト粒子の半径をRとしたとき、次式を満足することを特徴とする請求項10に記載の液体吐出装置。
【数2】

【請求項12】
前記基板上に着弾したレジストインクを加圧加熱して定着させる定着手段を更に備えたことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記吐出手段は、前記複数のノズルからガラス転移点の異なる少なくとも2種類のレジスト粒子を含有したレジストインクを吐出する手段であり、
前記定着手段は、第1のレジスト粒子のガラス転移点より大きく、かつ、第2のレジスト粒子のガラス転移点より小さい加熱温度で加熱する手段であることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
前記吐出手段は、前記レジスト粒子より低いガラス転移点を有するレジストで前記レジスト粒子の表面を覆ったコアシェル型レジスト粒子を含有したレジストインクを吐出する手段であり、
前記定着手段は、前記レジスト粒子の表面を覆うレジストのガラス転移点より大きく、かつ、前記レジスト粒子のガラス転移点より小さい加熱温度で加熱する手段であることを特徴とする請求項12に記載の液体吐出装置。
【請求項15】
前記吐出手段は、前記基板上の同一位置に対して複数のレジストインクを吐出する手段であることを特徴とする請求項10乃至請求項14のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項16】
前記吐出手段は、静電濃縮型のヘッドであることを特徴とする請求項10乃至請求項15のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項17】
前記基板上に前記レジストインクが着弾する前に前記基板を加熱する基板加熱手段を更に備えたことを特徴とする請求項10乃至請求項16のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項18】
レジストインク供給系に対して、前記レジストインクの循環を行う循環手段、前記レジストインクを攪拌する手段、及び前記レジストインクを洗浄する洗浄手段の少なくとも1つを設けたことを特徴とする請求項10乃至請求項17のいずれか1項に記載の液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−198736(P2008−198736A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−31122(P2007−31122)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】