説明

液体噴射ヘッド

【課題】液体噴射ヘッドの小型化を図る。
【解決手段】圧電素子列の間に個別素子電極端子48が形成されると共に駆動IC52が配置され、駆動ICの流路基板側とは反対側に回路基板39が配置され、弾性体膜における駆動ICの入力端子に対応する位置に、入力用パッドが形成され、駆動ICの出力端子と個別素子電極端子とが電気的に接合され、駆動ICの入力端子と入力用パッドとが電気的に接合されると共に、入力用パッドと回路基板の基板端子とが電気的に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット式記録ヘッドなどの液体噴射ヘッドに関するものであり、特に、液体噴射ヘッドの圧力発生素子に対応した配線端子を列設して成る配線端子列を有する液体噴射ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
圧力室内の液体に圧力変動を生じさせることでノズルから液滴として吐出させる液体噴射ヘッドの一種に、振動板に接合された圧電素子(圧力発生素子の一種)を変形させることで液滴を噴射させるように構成されたものがある。この液体噴射ヘッドでは、駆動電圧(駆動パルス)を印加して圧電素子を駆動させることで圧力室容積を変化させ、圧力室内に貯留された液体に圧力変動を生じさせ、この圧力変動を利用することでノズルから液滴を噴射させる。
【0003】
一般的な記録ヘッドにおいて、プリンター本体側からの駆動信号や制御信号を受ける回路基板(プリント基板)が設けられ、この回路基板と圧電素子とが、当該圧電素子の駆動を制御する駆動ICを実装したCOF(Chip On Film)やTCP(Tape Career Package)等のフィルム状の配線部材(以下、フレキシブルケーブル)によって電気的に接続され、このフレキシブルケーブルを介して圧電素子に駆動電圧が供給される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−131881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のように、回路基板とアクチュエーターとの間をフレキシブルケーブルで配線する構成では、当該フレキシブルケーブルを配置するスペースが必要となり、その分、記録ヘッドの小型化が困難となっていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液体噴射ヘッドの小型化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、別素子電極および共通素子電極間に駆動電圧が印加されることにより圧力室内の液体に圧力変動を生じさせて当該圧力室に通じるノズルから液体を噴射させる圧力発生素子を有するアクチュエーターユニットを備え、
前記アクチュエーターユニットは、複数の圧力発生素子が列設されて成る圧力発生素子群を複数有する液体噴射ヘッドであって、
前記圧力室が形成された基板の前記圧力発生素子設置面における圧力発生素子群の間に、前記圧力発生素子の個別素子端子に導通する個別素子電極端子が形成され、
前記圧力発生素子設置面上における隣り合う圧力発生素子群の間に駆動ICが配置され、
前記駆動ICの前記基板側とは反対側にプリント基板が配置され、
前記圧力発生素子設置面における前記駆動ICの入力端子に対応する位置に、入力用パッドが形成され、
前記駆動ICの出力端子と前記個別素子電極端子とが電気的に接合され、
前記駆動ICの入力端子と前記入力用パッドとが電気的に接合されると共に、前記入力用パッドと前記プリント基板の基板端子とが電気的に接合されたことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、基板の圧力発生素子設置面における圧力発生素子群の間に個別素子電極端子が形成され、圧力発生素子設置面上における隣り合う圧力発生素子群の間に駆動ICが配置され、駆動ICの基板側とは反対側にプリント基板が配置され、圧力発生素子設置面における駆動ICの入力端子に対応する位置に、入力用パッドが形成され、駆動ICの出力端子と個別素子電極端子とが電気的に接合され、駆動ICの入力端子と入力用パッドとが電気的に接合されると共に、入力用パッドとプリント基板の基板端子とが電気的に接合されるので、従来の構成においてプリント基板とアクチュエーターユニットとの配線に用いられていたCOF等の配線部材が不要となり、その分の設置面積を削減することができる。これにより、液体噴射ヘッドの小型化が可能となる。また、配線部材を用いないので、その分のコストが削減される。
【0009】
上記構成において、前記駆動ICの出力端子と前記個別素子電極端子とが、フリップチップボンディングにより接合される構成を採用することが望ましい。
【0010】
当該構成によれば、駆動ICの出力端子と個別素子電極端子とが、ボンディングワイヤーを用いることなく直接接合されるので、配線スペースが削減され、その結果、液体噴射ヘッドの小型化に寄与することができる。
【0011】
また、上記構成において、前記駆動ICの出力端子と前記個別素子電極端子とが、フリップチップボンディングにより接合される構成を採用することが望ましい。
【0012】
当該構成によれば、駆動ICの端子形成面がプリント基板とは反対側に向く構成においても、駆動ICの入力端子とプリント基板の基板端子とを電気的に接合することができる。
【0013】
また、上記構成において、前記圧力発生素子設置面上における前記圧力発生素子群及び前記個別素子電極端子が形成された領域から外れた位置に、前記共通素子電極に導通する共通素子電極配線部および当該共通素子電極配線部に導通する共通電極用パッドが形成され、
前記駆動ICのグランド端子と前記共通電極用パッドとが、電気的に接合される構成を採用することが望ましい。
【0014】
さらに、前記プリント基板は、前記駆動ICとは反対側の面に、外部配線が接続されるコネクターが、配線接続口を前記駆動ICとは反対側に向けた状態で設けられる構成を採用することが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】プリンターの構成を説明する斜視図である。
【図2】記録ヘッドを斜め上方から観た分解斜視図である。
【図3】ヘッドユニットの分解斜視図である。
【図4】ヘッドユニットの断面図である。
【図5】ヘッドユニットの一部の構成を省略した部分的な分解斜視図である。
【図6】圧電素子の素子電極および素子電極配線部のレイアウトについて説明する模式図である。
【図7】アクチュエーターユニットに対する駆動ICや回路基板の配線について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下の説明は、本発明の液体噴射ヘッドとして、インクジェット式プリンター(本発明の液体噴射装置の一種)に搭載されるインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドという)を例に挙げて行う。
【0017】
まず、プリンターの概略構成について、図1を参照して説明する。プリンター1は、記録紙等の記録媒体2の表面へ液体状のインクを噴射して画像等の記録を行う装置である。このプリンター1は、インクを噴射する記録ヘッド3、この記録ヘッド3が取り付けられるキャリッジ4、キャリッジ4を主走査方向に移動させるキャリッジ移動機構5、記録媒体2を副走査方向に移送するプラテンローラー6等を備えている。ここで、上記のインクは、本発明の液体の一種であり、インクカートリッジ7に貯留されている。このインクカートリッジ7は、記録ヘッド3に対して着脱可能に装着される。なお、インクカートリッジ7がプリンター1の本体側に配置され、当該インクカートリッジ7からインク供給チューブを通じて記録ヘッド3に供給される構成を採用することもできる。
【0018】
上記のキャリッジ移動機構5はタイミングベルト8を備えている。そして、このタイミングベルト8はDCモーター等のパルスモーター9により駆動される。従ってパルスモーター9が作動すると、キャリッジ4は、プリンター1に架設されたガイドロッド10に案内されて、主走査方向(記録媒体2の幅方向)に往復移動する。
【0019】
図2は、上記記録ヘッド3の構成を示す分解斜視図である。本実施形態における記録ヘッド3は、ケース15と、複数のヘッドユニット16と、ユニット固定板17と、ヘッドカバー18とにより概略構成されている。
ケース15は、内部にヘッドユニット16や集束流路(図示せず)を収容する箱体状部材であり、上面側に針ホルダ19が形成されている。この針ホルダ19は、インク導入針20を取り付けるための板状部材であり、本実施形態においてはインクカートリッジ7のインク色に対応させて8本のインク導入針20がこの針ホルダ19に横並びに配設されている。このインク導入針20は、インクカートリッジ7内に挿入される中空針状の部材であり、先端部に開設された導入孔(図示せず)からインクカートリッジ7内に貯留されたインクをケース15内の集束流路を通じてヘッドユニット16側に導入する。
【0020】
また、ケース15の底面側には、4つのヘッドユニット16が、主走査方向に横並びに位置決めされた状態で各ヘッドユニット16に対応した4つの開口部17′を有する金属製のユニット固定板17に接合されると共に、同じく各ヘッドユニット16に対応する4つの開口部18′が開設された金属製のヘッドカバー18によって固定される。
【0021】
図3は、ヘッドユニット16(記録ヘッド3よりも狭義の液体噴射ヘッド)の構成を示す分解斜視図であり、図4は、ヘッドユニット16の断面図である。また、図5は、ヘッドユニット16の一部の構成を省略した部分的な分解斜視図である。なお、便宜上、各部材の積層方向を上下方向として説明する。
本実施形態におけるヘッドユニット16は、ノズルプレート22、流路基板23、保護基板24、及び、コンプライアンス基板25から概略構成され、これらの部材を積層した状態でユニットケース26に取り付けられている。
【0022】
ノズルプレート22(ノズル形成部材の一種)は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル27を列状に開設した板状の部材である。本実施形態では、300dpiに対応するピッチで300個のノズル27を列設することでノズル列(ノズル群の一種)が構成されている。本実施形態においては、当該ノズルプレート22に2つのノズル列が形成されている。
【0023】
流路基板23(本発明における圧力室が形成された基板に相当)は、その上面に二酸化シリコンからなる弾性膜30が熱酸化によって形成されている。また、この流路基板23には、図4及び図5に示すように、異方性エッチング処理によって複数の隔壁で区画された圧力室31が各ノズル27に対応して複数形成されている。この流路基板23における圧力室31の列の外側には、各圧力室31の共通のインクが導入される室としての共通液室32の一部を区画する連通空部33が形成されている。この連通空部33は、インク供給路34を介して各圧力室31と連通している。
【0024】
流路基板23の上面に形成された弾性膜30上(本発明における圧力発生素子設置面に相当)には、金属製の下電極膜(共通素子電極46)と、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等からなる圧電体層(図示せず)と、金属からなる上電極膜(個別素子電極47)とを順次積層することで形成された圧電素子35(本発明における圧力発生素子の一種)が圧力室31毎に複数列設されている。本実施形態において、2列のノズル列に対応して2列の圧電素子列(本発明における圧力発生素子群に相当)が、ノズル列方向で見て圧電素子35が互い違いとなる状態でノズル列に直交する方向に並設されている。この圧電素子35は、所謂撓みモードの圧電素子であり、圧力室31の上部を覆うように形成されている。なお、下電極膜が個別素子電極47で、上電極膜が共通素子電極46である構成を採用することもできる。
【0025】
圧電素子35の各素子電極47,46からはそれぞれ電極配線部48,49が弾性膜30上に延出されており、これらの電極配線部の電極端子(電極パッド)に相当する部分に、圧電素子35を駆動する駆動IC52の端子が電気的に接続される。そして、各圧電素子35は、駆動IC52を通じて個別素子電極47および共通素子電極46間に駆動電圧が印加されることにより変形するように構成されている。本実施形態において、上記弾性膜30、各電極46,47を含む圧電素子35、及び圧電素子35の各電極に導通する電極配線部48,49、その他、弾性膜30上に形成されている端子等の部分が、本発明におけるアクチュエーターユニットに相当する。
【0026】
上記圧電素子35が形成された流路基板23上には、厚さ方向に貫通した貫通空部36を有する保護基板24が配置される。この保護基板24における貫通空部36は、流路基板23の連通空部33と連通して共通液室32の一部を区画する。また、保護基板24には、圧電素子35に対向する領域に当該圧電素子35の駆動を阻害しない程度の大きさの圧電素子収容空部37が形成されている。さらに、保護基板24において、隣り合う圧電素子列(本発明における圧力発生素子群に相当)の間には、基板厚さ方向を貫通した配線空部38が形成されている。この配線空部38内には、平面視において、圧電素子35の個別素子電極端子48や共通素子電極端子51等が配置されると共に、駆動IC52が配置される。そして、保護基板24上には、回路基板39が配線空部38を跨いで配置される。即ち、回路基板39は、駆動IC52に対して基板側とは反対側に配置される。この回路基板39は、プリンター本体側の制御部から外部配線(図示せず)を通じて送られてくる駆動信号や制御信号等を駆動IC52に供給する回路配線が形成されたプリント基板である。また、この回路基板39には、駆動IC52の入出力端子に対応して基板端子(図示せず)が形成されると共に、外部配線が接続されるコネクター39aが設けられている。このコネクター39aは、配線接続口を駆動IC52側とは反対側に向けた状態で回路基板39上に立設されている。
【0027】
保護基板24の上面側には、コンプライアンス基板25が配置される。このコンプライアンス基板25における保護基板24の貫通空部36に対向する領域には、インク導入針20側からのインクを共通液室32に供給するためのインク導入口40が厚さ方向に貫通して形成されている。また、このコンプライアンス基板25の貫通空部36に対向する領域のインク導入口40及び後述する貫通口25a以外の領域は、極薄く形成された可撓部41となっており、この可撓部41によって貫通空部36の上部開口が封止されることで共通液室32が区画形成される。そして、この可撓部41は、共通液室32内のインクの圧力変動を吸収するコンプライアンス部として機能する。さらに、コンプライアンス基板25の中央部には、貫通口25aが形成されている。この貫通口25aは、ユニットケース26の空部44と連通する。
【0028】
ユニットケース26は、インク導入口40に連通してインク導入針20側から導入されたインクを共通液室32側に供給するためのインク導入路42が形成されると共に、可撓部41に対向する領域にこの可撓部41の膨張を許容する凹部43が形成された部材である。このユニットケース26の中心部には、厚さ方向に貫通した空部44が開設されている。この空部44は、コンプライアンス基板25の貫通口25aと連通する。これにより形成される空間内には、回路基板39及びそのコネクター39aが収容される。
【0029】
そして、これらのノズルプレート22、流路基板23、保護基板24、コンプライアンス基板25、及び、ユニットケース26は、接着剤や熱溶着フィルム等を間に配置して積層した状態で加熱することで相互に接合される。
【0030】
以上のように構成されたヘッドユニット16を備える記録ヘッド3は、各ノズルプレート22がプラテンに対向した状態でノズル列方向が副走査方向と一致するようにキャリッジ4に取り付けられる。そして、各ヘッドユニット16は、インクカートリッジ7からのインクを、インク導入路42を通じてインク導入口40から共通液室32側に取り込み、共通液室32からノズル27に至るインク流路(液体流路の一種)をインクで満たす。そして、駆動電圧を圧電素子35に供給してこの圧電素子35を撓み変形させることによって、対応する圧力室31内のインクに圧力変動を生じさせ、このインクの圧力変動を利用してノズル27からインクを噴射させる。
【0031】
図6は、圧電素子35の素子電極および当該素子電極から延びる素子電極配線部のレイアウトを説明する模式図である。また、図7は、アクチュエーターユニットに対する駆動IC52や回路基板39の配線について説明する図であり、(a)は保護基板24、駆動IC52、回路基板39、及びコネクター39aの斜視図、(b)は(a)における領域Aの拡大図である。なお、図6において、濃いハッチングで示す部分は個別素子電極47およびこれに導通する個別素子電極配線部48であり、薄いハッチングで示す部分は共通素子電極46およびこれに導通する共通素子電極配線部49である。また、同図では、縦方向がノズル列設方向(圧電素子列設方向)であり、ノズル列2列分に対応する構成が図示されている。本実施形態において、電極膜の材料としては、白金又は金が用いられる。
【0032】
本実施形態においては、圧力室31の一部を区画する弾性膜30上に各圧電素子35に共通な共通素子電極46(46a,46b)が、ノズル列方向に沿って同方向に長尺な平面視矩形状に連続的に形成され、その上に圧電体層(図示せず)、個別素子電極47(47a,47b)が順次積層されて圧電素子35毎にパターニングされている。個別素子電極47の長手方向の寸法は、共通素子電極46の短尺方向の幅よりも少し長くなっている。また、個別素子電極47の幅方向(短尺方向)の寸法は、圧力発生素子35の幅と同程度に揃えられている。隣り合う圧電素子列の間には、個別素子電極47に導通する個別素子電極端子48(個別素子電極配線部の一種)が、駆動IC52の出力端子53に対応する位置に形成されている。そして、一方(図において左側)のノズル列に対応する個別素子電極端子48と、他方(図において右側)のノズル列に対応する個別素子電極端子48とは、ノズル列方向において互い違いとなるように一定のピッチで列状に配置されている。
【0033】
また、弾性膜30上には、共通素子電極46、個別素子電極47、及び個別素子電極端子48が形成されている領域を囲繞する枠状の共通素子電極部49(共通素子電極配線部の一種)が形成されている。この共通素子電極部49は、枝電極部50を通じて各共通素子電極46a,46bと導通している。また、弾性膜30上における共通素子電極部49の枠内であって、共通素子電極46、個別素子電極47、及び個別素子電極端子48が形成された領域から外れた位置に、共通素子電極部49に導通する共通素子電極端子51(共通電極用パッドの一種)が形成されている。この共通素子電極端子51は、駆動IC52のグランド端子56に対応する位置まで延在している。
【0034】
駆動IC52の端子形成面において、アクチュエーターユニットの各個別素子電極端子48に対応する位置にはそれぞれ出力端子54が形成され、アクチュエーターユニットの共通素子電極端子51に対応する位置にはそれぞれグランド端子56が形成されている。また、駆動IC52の端子形成面において、アクチュエーターユニットの入力用パッド55に対応する位置には入力端子53が形成されている。そして、駆動IC52は、端子形成面側をアクチュエーターユニット側に向け、入出力端子の平面位置をアクチュエーターユニット側の対応する各端子(パッド)の平面位置に合わせた状態で圧電素子列の間に配置される。この状態で、出力端子54とこれに対応する個別素子電極端子48とが電気的に接合されると共に、入力端子53と入力用パッド55とが電気的に接合される。即ち、駆動IC52の各端子は、フリップチップボンディングによりアクチュエーターユニット側の対応する端子と接合される。フリップチップボンディングによる接合方法としては、超音波接合や導電性接着剤による接着等の既存の方法を採用することができる。このように、本実施形態では、駆動IC52の各端子がアクチュエーターユニット側の対応する端子とボンディングワイヤーを用いることなく直接接合されるので、配線スペースが削減され、その結果、記録ヘッド3の小型化に寄与することができる。
【0035】
駆動IC52がアクチュエーターユニットに実装された後、駆動IC52が配線空部38内に収容される状態で保護基板24が取り付けられ、この保護基板24の上に回路基板39が配置される。そして、図7(b)に示すように、入力用パッド55及び共通素子電極端子51が、駆動IC52の端子との接合部分とは異なる位置で、それぞれ回路基板39における対応する基板端子58にボンディングワイヤー59を介して電気的に接続される。この構成によれば、本実施形態のように、駆動IC52の端子形成面が回路基板39とは反対側に向く構成においても、駆動IC52の端子とプリント基板の基板端子とを電気的に接合することができる。駆動IC52と回路基板39との間の配線がされた後、回路基板39のコネクター39aに、外部配線が接続される。これにより、プリンター1の制御部から外部配線を通じて送られてくる駆動信号等が回路基板39を介して駆動IC52に受信され、これに基づいて当該駆動IC52が各圧電素子35を制御することが可能となる。
【0036】
以上のように、本発明に係る記録ヘッド3では、従来の記録ヘッドで回路基板とアクチュエーターユニットとの配線に用いられていたCOF等の配線部材が不要となり、その分の設置面積を削減することができる。これにより、記録ヘッド3の小型化が可能となる。また、配線部材を用いないのでその分のコストが削減される。さらに、配線部材を用いないため、配線作業が容易となる。
【0037】
なお、以上では、液体噴射ヘッドの一種であるインクジェット式記録ヘッド3(ヘッドユニット16)を例に挙げて説明したが、本発明は、フレキシブルケーブルを通じて圧力発生素子に駆動電圧を供給する構成の他の液体噴射ヘッドにも適用することができる。例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材噴射ヘッド、バイオチップ(生物化学素子)の製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…プリンター,3…記録ヘッド,16…ヘッドユニット,23…流路基板,24…保護基板,27…ノズル,30…弾性体膜,31…圧力室,35…圧電素子,38…配線空部,39…回路基板,39a…コネクター,46…共通素子電極,47…個別素子電極,48…個別素子電極端子,49…共通素子電極部,50…枝電極部,51…共通素子電極端子,52…駆動IC,53…入力端子,54…出力端子,55…入力用パッド,56…グランド端子,58…基板端子,59…ボンディングワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別素子電極および共通素子電極間に駆動電圧が印加されることにより圧力室内の液体に圧力変動を生じさせて当該圧力室に通じるノズルから液体を噴射させる圧力発生素子を有するアクチュエーターユニットを備え、
前記アクチュエーターユニットは、複数の圧力発生素子が列設されて成る圧力発生素子群を複数有する液体噴射ヘッドであって、
前記圧力室が形成された基板の前記圧力発生素子設置面における圧力発生素子群の間に、前記圧力発生素子の個別素子端子に導通する個別素子電極端子が形成され、
前記圧力発生素子設置面上における隣り合う圧力発生素子群の間に駆動ICが配置され、
前記駆動ICの前記基板側とは反対側にプリント基板が配置され、
前記圧力発生素子設置面における前記駆動ICの入力端子に対応する位置に、入力用パッドが形成され、
前記駆動ICの出力端子と前記個別素子電極端子とが電気的に接合され、
前記駆動ICの入力端子と前記入力用パッドとが電気的に接合されると共に、前記入力用パッドと前記プリント基板の基板端子とが電気的に接合されたことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記駆動ICの出力端子と前記個別素子電極端子とが、フリップチップボンディングにより接合されたことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記入力用パッドと前記プリント基板の基板端子とが、ボンディングワイヤーを介して接合されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記圧力発生素子設置面上における前記圧力発生素子群及び前記個別素子電極端子が形成された領域から外れた位置に、前記共通素子電極に導通する共通素子電極配線部および当該共通素子電極配線部に導通する共通電極用パッドが形成され、
前記駆動ICのグランド端子と前記共通電極用パッドとが、電気的に接合されたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記プリント基板は、前記駆動ICとは反対側の面に、外部配線が接続されるコネクターが形成されたことを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−167908(P2011−167908A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33217(P2010−33217)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】