説明

液晶ポリエステル樹脂組成物、その成形体、及び光学装置

【課題】 480nmにおける光反射率とアイゾット衝撃強度などの機械的強度とを高水準で両立する成形体を得ることができる液晶ポリエステル樹脂組成物、その成形体及び当該成形体を備える光学装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、液晶ポリエステル(A)100質量部と、表面処理として酸化アルミニウム処理、酸化ケイ素処理およびオルガノシロキサン処理が施された酸化チタン(B)50〜150質量部と、無機繊維状充填材(C)0〜50質量部とを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステル樹脂組成物、その射出成形体および該成形体を使用した光学装置に関するものである。特に、本発明は、発光ダイオード(以下「LED」という。)を使用した光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光源としてLEDを使用した照明装置や表示装置等の光学装置が広範な分野で使用されている。これらは通常、LED素子が基板上の回路パターンに導電性接着剤やハンダ等で実装されワイヤボンディングで必要な結線がなされたLED装置を備えている。そして、LED装置には、LED素子の周囲にLEDの光利用率を上げるためのリフレクター(反射枠)が設けられており、リフレクター内に位置するLED素子は透光性樹脂で封止されている。
【0003】
白色LEDは、一般的に、緑(G:525nm)、青(B:470nm)、赤(R:630nm)等の複数のLEDを組み合わせて白色を得るようにしたものや、封止樹脂中に蛍光物質を配合して波長変換の作用を利用しているものが知られている。後者の場合、紫外線発光LEDが光源として使用されることもある。これらの白色LEDのリフレクターには、金属酸化物などの白色顔料粒子を配合した樹脂組成物の成形体が使用されることがある。樹脂製のLEDリフレクターの場合、LED素子を基板に実装する際のハンダ等の加熱工程、封止樹脂の熱硬化時の発熱、LED装置を他の部材に結合するときの加熱、LED装置を使用する環境における加熱等に対する耐熱性を十分有していることが求められる。
【0004】
上記の事情から、LEDリフレクターの形成材料として、耐熱性に優れた液晶ポリエステルと白色顔料とを含む樹脂組成物が提案されている。(例えば、特許文献1〜4を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−38520号公報
【特許文献2】特開2004−256673号公報
【特許文献3】特開2004−277539号公報
【特許文献4】特開2007−254669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LEDリフレクターは長期にわたって高い光反射率を維持していることが要求され、特に、白色LEDのリフレクターの場合、500nm以下の波長域の光に対する反射率が十分高いことが求められる。しかし、上記特許文献1及び2の液晶ポリエステル樹脂組成物から形成されたLEDリフレクターは、白色光の反射率指標である480nmの光に対する反射率が、従前から使用されていたポリアミド系樹脂組成物からなるものに比較して低いという問題を有している。
【0007】
上記特許文献3及び4の液晶ポリエステル樹脂組成物の射出成形体は、480nmにおける光反射率は向上しているものの、反射率を上げるために白色顔料を多量に配合する必要があり、成形体の機械的強度が低下するおそれがある。近年、電気・電子機器の軽薄短小化がいっそう進み、それに伴ってLEDリフレクターなどの電子部品も小型化、薄肉化が進んでいるため、部材の強度に対する要求水準が高くなってきている。そのため、特許文献3及び4に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物であっても機械的強度の点で未だ改善の余地がある。
【0008】
液晶ポリエステルに添加する白色顔料としては、その高い加工温度に対する耐熱性を有し且つ隠蔽力が高い金属酸化物が用いられており、中でも酸化チタンが多用されている。酸化チタンには、樹脂との親和性や分散性等の向上のために酸化アルミニウム処理等の表面処理が施されたものが知られている。液晶ポリエステル樹脂組成物の白色光に対する反射率を高めるには、酸化チタンの配合量を多くすることが考えられる。しかし、本発明者らの検討によると、上記の表面処理が施された酸化チタンであっても、高配合すると樹脂組成物が脆くなり機械的強度、特にアイゾット衝撃強度が大きく低下することを見出した。この要因としては、酸化チタン粒子の二次凝集や分散不良が生じること、及び樹脂組成物中における液晶ポリエステルの量が相対的に少なくなることなどが考えられる。
【0009】
他方、液晶ポリエステルへの酸化チタンの添加は一般に溶融混練により実施される。金属酸化物である酸化チタンは酸性化合物であるので、溶融混練工程では、溶融状態にある液晶ポリエステルと酸性化合物とが共存し、かつ継続して大きな剪断力が加えられることとなる。これにより、液晶ポリエステルの分子鎖切断が生じて、分子量の低下、低分子量成分の生成等が起こりやすくなり、その結果として樹脂組成物の溶融粘度が低くなり、成形体の機械的強度、特にアイゾット衝撃強度が低下することも考えられる。この現象は、樹脂組成物を射出成形するときの可塑化工程においても同様に生じるものと考えられる。更に、このような現象は、高温でより顕著になることが予想されるから、液晶ポリエステルの融点が高いほど組成物の製造や成形時の工程の影響は大きいと考えられる。そのため、融点が320℃を超える全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルなどは優れた耐熱性を有しているものの、かかる樹脂材料の活用は制限されていた。
【0010】
上記のとおり、従来の表面処理の酸化チタンを配合した液晶ポリエステル樹脂組成物では、小型薄肉化が顕著なLEDリフレクターにおける光反射率と機械的強度、特にアイゾット衝撃強度とを共に高水準で両立するような射出成形体が得られていなかった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、480nmにおける光反射率とアイゾット衝撃強度などの機械的強度とを高水準で両立する成形体を得ることができる液晶ポリエステル樹脂組成物、その成形体及び当該成形体を備える光学装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明者らは鋭意検討した結果、液晶ポリエステルに、特定の表面処理が施された酸化チタンを特定の割合で配合することにより、波長480nmの光に対する反射率が従来よりも高く、なおかつアイゾット衝撃強度が高い射出成形体が得られることを見出し、この知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、液晶ポリエステル(A)100質量部と、表面処理として酸化アルミニウム処理、酸化ケイ素処理およびオルガノシロキサン処理が施された酸化チタン(B)50〜150質量部と、無機繊維状充填材(C)0〜50質量部と、を含有することを特徴とする。
【0014】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物によれば、上記構成を有することにより、480nmにおける光反射率とアイゾット衝撃強度などの機械的強度とを高水準で両立する成形体を得ることができる。また、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、通常の溶融混練工程による調製や射出成形による成形が可能であり、この場合であっても、上記本発明による効果を得ることができる。更に、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、370℃における溶融粘度が従来の酸化チタンを用いた場合に比べて低くなるにもかかわらず、優れた機械的強度を有する成形体を得ることができ、このことは、溶融せん断による液晶ポリエステルの分子鎖切断の問題を鑑みると、予想外の効果といえる。
【0015】
上記液晶ポリエステル(A)は、融点が320℃以上の全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0016】
また、上記酸化チタン(B)は、一次粒子径が0.2〜0.3μmの範囲にあることが好ましい。
【0017】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、射出成形して得られる成形体の成形表面における波長480nmの光に対する反射率が85%以上であり、かつ、成形体のアイゾット衝撃強度が40kJ/m以上であることが好ましい。
【0018】
本発明はまた、上記本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物のいずれかを射出成形して得られる成形体を提供する。
【0019】
本発明はまた、光源と、上記本発明の成形体からなる、光源のリフレクターとを備える光学装置を提供する。
【0020】
本発明の光学装置において、上記光源は白色LEDであることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、480nmにおける光反射率とアイゾット衝撃強度などの機械的強度とを高水準で両立する成形体を得ることができる液晶ポリエステル樹脂組成物、その成形体及び当該成形体を備える光学装置を提供することができる。
【0022】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、通常の溶融混練工程を経て調製されたものでも液晶ポリエステルの優れた耐熱性及び成形性を保持しており、白色光反射率及びアイゾット衝撃強度に優れた成形体を射出成形により形成できる。本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物の射出成形体は、その表面を反射面としたリフレクターとして用いることができ、特に白色LEDに好適なリフレクターとして用いることができる。本発明によれば、従来よりも高い反射率を有するとともに機械的強度にも優れるリフレクターを実現できるため、これを備える光の取り出し効率に優れた光学装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<液晶ポリエステル(A)>
本発明に係る液晶ポリエステル(以下、単に「LCP」と略称する場合もある)は、サーモトロピック液晶ポリマーと呼ばれるポリエステルで、450℃以下の温度で異方性溶融体を形成するものである。LCPとしては、例えば、芳香族ヒドロキシカルボニル単位、芳香族および/または脂肪族ジヒドロキシ単位、並びに、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位などから選ばれる構造単位からなるものが挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボニル単位としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などから生成した構造単位、芳香族および/または脂肪族ジヒドロキシ単位としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ヒドロキノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどから生成した構造単位、芳香族および/または脂肪族ジカルボニル単位としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などから生成した構造単位が挙げられる。
【0024】
本発明で用いる液晶ポリエステルは、成形性、機械的強度、耐熱性のバランスが優れることから、全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルが好ましい。全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルとしては、例えば、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールと芳香族ヒドロキシカルボン酸との組み合わせからなるもの、異種の芳香族ヒドロキシカルボン酸からなるもの、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールとの組み合わせからなるもの、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルに芳香族ヒドロキシカルボン酸を反応させたもの等が挙げられる。LEDリフレクターを作製する場合、耐ハンダ耐熱性が要求されるため、融点が320℃以上である全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルを用いることが好ましい。
【0025】
融点が320℃以上の全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルを得るには、原料モノマーとしてp−ヒドロキシ安息香酸を40モル%以上使用するとよい。この他に、公知の他の芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジヒドロキシ化合物を適宜組み合わせて使用することができる。例えば、p−ヒドロキシ安息香酸や6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸のみから得られるポリエステル、さらにこれらとテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、および/またはハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,6−ジヒドロキシナフタレンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とから得られる液晶性ポリエステルなどが好ましいものとして挙げられる。
【0026】
特に好ましくは、p−ヒドロキシ安息香酸(I)、テレフタル酸(II)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル(III)(これらの誘導体を含む。)を80〜100モル%(但し、(I)と(II)の合計を60モル%以上とする。)、および、(I)、(II)、(III)のいずれかと重縮合反応可能な他の芳香族化合物0〜20モル%を重縮合して得られる全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルである。
【0027】
全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルの製造に当たっては、溶融重縮合時間を短縮し工程中の熱履歴の影響を低減させるため、上記のモノマーの水酸基を予めアセチル化した後に溶融重縮合を行うことが好ましい。さらに、工程を簡略化するためには、アセチル化は反応槽中のモノマーに無水酢酸を供給して行うのが好ましい。このアセチル化工程は、溶融重縮合工程と同じ反応槽を用いて行うのが好ましい。すなわち、反応槽中で原料モノマーと無水酢酸でアセチル化反応を行い、反応終了後昇温して重縮合反応に移行するのが好ましい。
【0028】
アセチル化されたモノマーの脱酢酸反応を伴いながら溶融重縮合反応を行う場合、反応は、モノマー供給手段、酢酸排出手段、溶融ポリエステル取り出し手段および攪拌手段を備えた反応槽を用いて行うのが好ましい。このような反応槽(重縮合装置)は公知のものから適宜選択することができる。重合温度は好ましくは150℃〜350℃である。アセチル化反応終了後、重合開始温度まで昇温して重縮合を開始し、0.1℃/分〜2℃/分の範囲で昇温して、最終温度として280〜350℃まで上昇させるのが好ましい。重縮合反応の触媒として、Ge、Sn、Ti、Sb、Co、Mn、Mg等の化合物を使用することができる。重縮合の進行により生成重合体の溶融温度が上昇するのに対応して重縮合温度も上昇する。
【0029】
溶融重縮合において、その流動点が200℃以上、好ましくは220℃〜330℃に達したら、低重合度の全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルを溶融状態のまま重合槽から抜出し、スチールベルトやドラムクーラー等の冷却機へ供給し、冷却して固化させる。
【0030】
ついで、固化した低重合度の全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルを、後続の固相重縮合に適した大きさに粉砕する。粉砕方法は特に限定されないが、例えば、ホソカワミクロン社製のフェザーミル、ビクトミル、コロプレックス、パルベラーザー、コントラプレックス、スクロールミル、ACMパルベラーザー等の衝撃式粉砕機、マツボー社製の架砕式粉砕機であるロールグラニュレーター等が挙げられる。特に好ましくは、ホソカワミクロン社製のフェザーミルである。本発明においては、粉砕物の粒径に特に制限はないが、工業フルイ(タイラーメッシュ)で4メッシュ通過〜2000メッシュ不通の範囲が好ましく、5メッシュ〜2000メッシュ(0.01〜4mm)にあればさらに好ましく、9メッシュ〜1450メッシュ(0.02〜2mm)にあれば最も好ましい。
【0031】
ついで、粉砕工程で得られた粉砕物を固相重縮合工程に供して固相重縮合を行う。固相重縮合工程に使用する装置、運転条件には特に制限はなく、公知の装置および方法を用いることができる。LEDリフレクターとして使用するためには、融点が320℃以上のものが得られるまで固相重縮合反応を行うことが好ましい。
【0032】
樹脂組成物における液晶ポリエステル(A)の含有量は、樹脂組成物全量基準で40〜60質量%であることが好ましく、40〜50質量%であることがより好ましい。
【0033】
<酸化チタン(B)>
本発明で用いる酸化チタンは、表面処理として酸化アルミニウム処理、酸化ケイ素処理、及びオルガノシロキサン処理が施されたものである。
【0034】
酸化チタンとしてはルチル型とアナターゼ型があり、隠蔽力の大きいルチル型酸化チタンが好ましい。酸化チタンの製法としては、硫酸法、塩素法等の従来公知の任意の製造方法によって得られたものが使用できる。中でも白度が優れていることから、塩素法で製造されたものが好ましい。
【0035】
酸化チタンの一次粒子径(他と明確に分離できる最小単位の粒子の数平均粒子径)は、0.05〜0.5μmが好ましく、0.2〜0.3μmがより好ましい。一次粒子径が下限値を下回ると、遮光性、光反射率が不充分となる場合があり、また、押出機による溶融混練の際に、粉体原料のスクリュへの食い込み不良が発生し、押出量が著しく低下して生産性が下がり好ましくない。一次粒子径が上限値を上回ると、衝撃強度が低下する場合がある。なお、数平均粒子径は、動的光散乱法やレーザー光散乱法等の一般的な方法によって測定される。
【0036】
本発明で用いる酸化チタンは、酸化アルミニウム処理、酸化ケイ素処理、及びオルガノシロキサン処理による表面処理がなされる。これらの表面処理方法は公知の方法を用いることができる。酸化チタンの表面を酸化アルミニウム処理する方法としては、例えば、特開平5−286721号記載の方法あるいは該特許文献中に従来方法として記載されている方法を用いることができる。酸化チタンの表面を酸化ケイ素処理する方法としては、例えば、特開平9−124968号公報の段落「0032」に記載の方法が挙げられる。酸化チタンの表面をオルガノシロキサン処理する方法としては、例えば、特開2005−306927号公報の段落「0054」及び「0055」に記載の方法が挙げられる。
【0037】
これらの処理は、酸化チタンに対して、酸化ケイ素処理、酸化アルミニウム処理及びオルガノシロキサン処理をどのような順序で行ってもよい。
【0038】
処理量は、酸化チタン粒子に対して、酸化アルミニウムが0.1〜10質量%、酸化ケイ素が0.1〜5質量%、オルガノシロキサンが0.1〜5質量%が好ましい。処理量が下限を下回ると、液晶ポリエステルと酸化チタンとの親和性、液晶ポリエステル樹脂組成物中の酸化チタンの分散性が不充分となるおそれがあり、処理量が上限を超えると、液晶ポリエステル樹脂組成物の製造時に処理剤が熱分解し、液晶ポリエステル樹脂の劣化につながるおそれがある。
【0039】
本発明で用いる酸化チタンは、酸化アルミニウム処理、酸化ケイ素処理及びオルガノシロキサン処理の3種の表面処理が必須である。液晶ポリエステル樹脂組成物を押出機を用いて製造する際の加工温度は300℃を超える。一般に、オルガノシロキサンなどの有機化合物はこの温度レベルでは熱分解のおそれが大きい。しかし、本発明に係る酸化チタンによれば、酸化アルミニウム処理及び酸化ケイ素処理とオルガノシロキサン処理との組み合わせにより、300℃を超える高い加工温度であっても、処理剤の分解による液晶ポリエステル樹脂の著しい劣化もなく、酸化チタンが高配合された液晶ポリエステル樹脂組成物を得ることが可能となる。
【0040】
酸化アルミニウム処理、酸化ケイ素処理、及びオルガノシロキサン処理が施された酸化チタンは市場からも入手できる。例えば、レジノカラー工業(株)製の「DCF−T−17008S」(商品名)が挙げられる。
【0041】
本発明に係る酸化チタンの配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、50質量部〜150質量部の範囲である。配合量が50質量部未満では、十分な白色度が得られず、150質量部を超えると、成形性が著しく低下する。酸化チタンの配合量を上記範囲内とすることにより、成形表面の波長480nmの光に対する反射率が85%以上であり、アイゾット衝撃強度が40kJ/m以上である成形体をより確実に得ることができる。
【0042】
<無機繊維状充填材(C)>
本発明の樹脂組成物には、公知の無機繊維状充填材を本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。無機繊維状充填材の例としては、ガラス繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ウォラストナイト等が挙げられる。これらは、単独で使用しても2種類以上使用してもよい。
【0043】
無機繊維状充填材の繊維長は、数平均長さで10μm〜3mmが好ましく、更に好ましくは100μm〜3mmである。無機繊維状充填材の太さは、数平均径6〜15μmが好ましく、更に好ましくは数平均径6〜10μmである。
【0044】
無機繊維状充填材の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、0〜50質量部である。
【0045】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物において、組成物が無機繊維状充填材(C)を含まない場合、高い白色度を得る観点から、酸化チタン(B)の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、60〜150質量部とすることが好ましく、100〜150質量部とすることがより好ましい。
【0046】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物において、組成物が無機繊維状充填材(C)を含む場合、曲げ強度を高くする観点から、酸化チタン(B)及び無機繊維状充填材(C)の配合量がそれぞれ、液晶ポリエステル100質量部に対して、50〜150質量部及び10〜50質量部、且つ、酸化チタン(B)及び無機繊維状充填材(C)の合計配合量が、液晶ポリエステル100質量部に対して、50〜150質量部とすることが好ましい。
【0047】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、射出成形して得られる成形体の成形表面における波長480nmの光に対する反射率が85%以上であり、かつ、成形体のアイゾット衝撃強度が40kJ/m以上であることが好ましく、上記反射率が87%以上であり、かつ、アイゾット衝撃強度が40kJ/m以上であることがより好ましい。
【0048】
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物によれば、液晶ポリエステルと、酸化アルミニウム処理、酸化ケイ素処理及びオルガノシロキサン処理の表面処理が施された酸化チタンと、必要に応じて無機繊維状充填材とを、上述した割合で含有することにより、上記の反射率及びアイゾット衝撃強度を有する成形体を得ることができる。この効果は、上記3種の特定の表面処理の組み合わせによって酸化チタンと液晶ポリエステル樹脂との親和性や、樹脂組成物中の酸化チタンの分散性が改善されたことによるものと本発明者は考えている。
【0049】
なお、従来の酸化チタンが配合された液晶ポリエステル樹脂組成物の場合、酸化チタン充填量が多くなると溶融粘度が高くなり成形性が悪くなるのに対して、上記3種の特定の表面処理が施された酸化チタンを配合した本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、同等の酸化チタン充填量とした従来品に比べて溶融粘度が低い。通常、溶融粘度が低くなるのは溶融混練に伴う液晶ポリエステル樹脂の劣化(分子切断)が原因であり、その場合は衝撃強度が大きく低下する。これに対して、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、溶融粘度が低くなってもアイゾット衝撃強度は高くなる。この理由も酸化チタンと液晶ポリエステル樹脂との親和性等が寄与しているのではないかと本発明者は考えている。
【0050】
<液晶ポリエステル樹脂組成物の製造方法について>
本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、上述した各成分(液晶ポリエステル、酸化チタン、および必要に応じて無機繊維状充填材)を溶融混練することにより得ることができる。溶融混練するための装置としては、単軸混練機、二軸混練機、バンバリーミキサー、加圧式ニーダー等が使用可能であるが、酸化チタン粒子の分散を好適にする点から二軸混練機が特に好ましい。より好ましくは、1対の2条スクリュを有する連続押出式の二軸混練機であって、その中でも切り返し機構を有することで充填材の均一分散を可能とする同方向回転式が好ましい。充填材の食い込みが容易となるバレルースクリュ間の空隙が大きい40mmφ以上のシリンダー径を有するものであり、スクリュ間の大きい、かみ合い率1.45以上のものであり、シリンダー途中から充填剤を供給可能なものを使用すると、本発明の樹脂組成物を効率よく得ることができる。また、無機繊維状充填材の少なくとも一部をシリンダーの途中へ供給するための設備を有するものを用いることが好ましい。
【0051】
液晶ポリエステルと、酸化チタン、及び無機繊維状充填材は、公知の固体混合設備、例えばリボンブレンダー、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサー等を用いて混合し、必要に応じて熱風乾燥器、減圧乾燥器等により乾燥し、二軸混練機のホッパーから供給することが好ましい。
【0052】
無機繊維状充填材を含有する樹脂組成物の製造においては、配合する無機繊維状充填材の少なくとも一部を、二軸混練機のシリンダーの途中より供給する(所謂サイドフィード)ことが好ましい。これにより、全ての無機繊維状充填材を他の原料と共にホッパーより供給する(所謂トップフィード)場合に比較して、得られる樹脂組成物を射出成形してなる成形体のウェルド部の機械的強度がより向上する傾向にある。配合する無機繊維状充填材全量のうちサイドフィードとする割合は、好ましくは50%以上であり、最も好ましくは100%である。サイドフィードとする割合が上記下限未満の場合には、コンパウンド(配合・混合)が困難となり、均質な樹脂組成物を得ることができなくなる傾向にある。
【0053】
<成形体及び光学装置について>
本発明の成形体は、上述した本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を成形してなるものである。成形方法としては、射出成形、押出成形、プレス成形などがあるが、成形の容易さ、量産性、コストなどの面で射出成形機を用いた射出成形が好ましい。例えば、ペレット化した本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物を射出成形し、該射出成形品の表面を反射面とすることにより、光反射率及び機械的特性(特には、アイゾット衝撃強度)に優れたLEDリフレクター、特には波長480nmの光に対する光反射率の良好な白色LEDに適するLEDリフレクターを得ることができる。
【0054】
射出成形の場合のシリンダー温度としては、液晶ポリエステルの融点を基準として、±20℃の範囲に設定することができる。
【0055】
本発明の光学装置は、光源と、上記本発明の成形体からなる光源のリフレクターとを備える。光源としては、白色LEDであることが好ましい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
(サーモトロピック液晶ポリエステルの製造:溶融重縮合)
ダブルヘリカル型攪拌翼を有し、内容積が1.7mのSUS316L(ステンレス鋼)製の反応槽に、p−ヒドロキシ安息香酸(上野製薬株式会社製)298.3kg(2.16キロモル)、4,4’−ジヒドロキシジフェニル(本州化学工業株式会社製)134.1kg(0.72キロモル)、テレフタル酸(三井化学株式会社製)89.7kg(0.54キロモル)、イソフタル酸(エイ・ジ・インターナショナルケミカル株式会社製)29.9kg(0.18キロモル)、触媒として酢酸マグネシウム(キシダ化学株式会社製)0.11kg、及び酢酸カリウム(キシダ化学株式会社製)0.04kgを仕込んだ。そして、重合槽の減圧−窒素注入を2回行って窒素置換した後、無水酢酸377.7kg(3.7キロモル)を添加し、攪拌翼の回転数45rpmで150℃まで1.5時間で昇温して、還流状態で2時間アセチル化反応を行った。アセチル化終了後、酢酸留出状態にして0.5℃/分で昇温して310℃まで昇温し、発生する酢酸を除去しながら重合反応を5時間20分行った。
【0058】
ついで、反応槽系を密閉し、その系内を窒素で14.7N/cm(1.5kgf/cm)に加圧し、反応槽内の溶融重縮合反応生成物である低重合度全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル約480kgを、反応槽の底部の抜出し口から抜出し、後述の冷却固化装置に供給した。このときの溶融重縮合反応生成物の温度は310℃であった。
【0059】
(冷却固化工程)
冷却固化装置として、特開2002−179779号公報に従い、直径630mmの一対の冷却ロール、ロール間距離2mm、距離1800mmの一対の堰を有する装置を用意した。この装置の一対の冷却ロールを18rpmの回転数で対向回転させ、一対の冷却ロールと一対の堰とで形成された凹部に、重縮合反応槽から抜出された流動状態の溶融重縮合反応生成物を徐々に供給し、凹部内に保持させつつ、一対の冷却ロール内の冷却水の流量を調整してロール表面温度を調整し、このロール間に溶融重縮合反応生成物を通過させることにより冷却固化して厚み2mmのシート状の固化物を得た。なお、ロール間を通過直後の冷却固化した低重合度全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルの表面温度は220℃であった。得られたシート状の固化物を解砕機(日空工業株式会社製)により、おおよそ50mm角に解砕した。
【0060】
(粉砕工程および固相重縮合工程)
上記で得られた解砕物を、ホソカワミクロン株式会社製のフェザーミルを用いて粉砕して固相重縮合用原料を得た。粉砕物は、目開き1mmのメッシュを通過するものであった。この粉砕物をロータリーキルンに収納し、窒素雰囲気中で、窒素流通下、室温から170℃まで3時間かけて昇温した後、250℃まで5時間かけて昇温し、さらに、280℃まで3時間かけて昇温して固相重縮合を行い、全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル約480kgを得た。
【0061】
(融点の測定)
液晶ポリエステルの融点は、セイコー電子工業(株)製の示差走査熱量計(DSC)により、リファレンスとしてα−アルミナを用いて測定した。このとき、昇温速度20℃/分で室温から400℃まで昇温してポリマーを完全に融解させた後、速度10℃/分で150℃まで降温し、更に20℃/分の速度で420℃まで昇温するときに得られる吸熱ピークの頂点を融点とした。DSCにより測定した融点は、350℃であった。
【0062】
(酸化チタンおよび他の充填材)
酸化チタンA;
レジノカラー工業(株)製:商品名「DCF−T−17008S」(酸化アルミニウム処理、酸化ケイ素処理、オルガノシロキサン処理により表面処理されたもの。一次粒子径0.25μm。)
酸化チタンB;
堺化学(株)製:商品名「SR−1」(焙焼工程を含む硫酸法により得られたルチル型酸化チタンを酸化アルミニウムで表面処理したもの。一次粒子径0.25μm。)
酸化チタンC;
堺化学(株)製:商品名「R−21」(焙焼工程を含む硫酸法により得られたルチル型酸化チタンを酸化アルミニウム、酸化ケイ素で表面処理したもの。一次粒子径0.20μm。)
ガラス繊維;
オーウェンスコーニング(株)製「PX−1」(平均繊維長3mm、平均径10μm)
【0063】
<樹脂組成物の製造>
(実施例1〜5、及び、比較例1〜5)
上記で得たれた全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステル100質量部に、酸化チタン粒子A、B、C、ガラス繊維の各成分を表1に示す組成(表中の組成は質量部を示す)となるようにそれぞれ別個に混合し、二軸押出機(池貝鉄鋼(株)製、PCM−30)を用いて、シリンダーの最高温度370℃で溶融混練することにより、樹脂組成物のペレットをそれぞれ得た。
【0064】
<射出成形品の製造>
得られたペレットを、射出成形機(住友重機械工業(株)製SG−25)を用いて、シリンダー温度350℃、射出速度100mm/sec、金型温度80℃で射出成形し、30mm(幅)×60mm(長さ)×3.0mm(厚さ)の射出成形品を得た。これを、白色光反射率の試験片とした。更に、上記と同様の条件で射出成形を行って、ASTM D790に準じた曲げ試験片を作成し、曲げ試験、衝撃試験の試験片とした。
【0065】
(白色光反射率の測定)
各試験片の表面について、自記分光光度計(U−3500:(株)日立製作所製)を用いて480nmの光に対する拡散反射率の測定を行った。なお、反射率は硫酸バリウムの標準白板の拡散反射率を100%とした時の相対値である。結果を表1に示す。
【0066】
(曲げ強度の測定)
上記で作製した曲げ試験の試験片を用い、ASTM D790に従い、曲げ強度の測定を行った。結果を表1に示す。
【0067】
(アイゾット衝撃強度の測定)
上記で作製した衝撃試験の試験片を用い、ASTM D256に従い、ノッチ無しでアイゾット衝撃強度の測定を行った。10回の測定の平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0068】
(生産性の評価)
上記の樹脂組成物の製造条件で、樹脂組成物のペレットが得られたものを「○」、溶融混練押し出しが困難でペレットが得られなかったものを「×」とした。結果を表1に示す。なお、ペレットが得られなかったものは他の評価試験ができなかった。
【0069】
(溶融粘度の測定)
液晶ポリエステル樹脂組成物の溶融粘度については、キャピラリーレオメーター(インテスコ(株)社製2010)を用い、キャピラリーとして径1.00mm、長さ40mm、流入角90°のものを用いて、せん断速度100sec−1で300℃から+4℃/分の昇温速度で等速加熱をしながら見掛け粘度を測定し、370℃における見掛け粘度を求め、これを溶融粘度とした。結果を表1に示す。なお、測定に際し、樹脂組成物は予め真空乾燥機にて、150℃で4時間乾燥した。
【0070】
【表1】



【0071】
実施例1、4、5の樹脂組成物を用いて作製された射出成形品は、酸化チタンA(酸化アルミニウム処理、酸化ケイ素処理及びオルガノシロキサン処理が施されたもの)が液晶ポリエステル100質量部に対して100質量部を超えて高充填され、それぞれ反射率が90%、89%、87%と非常に高く、かつアイゾット衝撃強度が40kJ/m以上と高い機械的強度を有していることが確認された。実施例2の樹脂組成物を用いて作製された射出成形品は、酸化チタンAが液晶ポリエステル100質量部に対して67質量部の割合で充填され、反射率が88%であり、かつアイゾット衝撃強度は90kJ/mと非常に優れた機械的強度を有するものであることが確認された。実施例3の樹脂組成物を用いて作製された射出成形品は、酸化チタンAが液晶ポリエステル100質量部に対して60質量部の割合で充填され、酸化チタンBを用いた比較例1の組成物よりも酸化チタン量が少ないが、反射率は85%と高く、アイゾット衝撃強度も65kJ/mと高いことが確認された。また、実施例1〜5の樹脂組成物を用いて作製された射出成形品は、いずれも曲げ強度が130MPa以上と高く、一方、溶融粘度は酸化チタンが高充填でも100Pa・s未満と低く、成形性も良好なことがわかる。
【0072】
これに対して、比較例1の樹脂組成物を用いて作製された射出成形品は、従来の酸化チタンBが液晶ポリエステル100質量部に対して75質量部の割合で充填され、反射率は84%であったが、アイゾット衝撃強度が30kJ/mと低く、機械的強度が不十分であった。比較例2の樹脂組成物を用いて作製された射出成形品は、酸化アルミニウムと酸化ケイ素の2種類で表面処理した酸化チタンCを液晶ポリエステル100質量部に対して75質量部の割合で充填したが、反射率は82%で、アイゾット衝撃強度が30kJ/mと低くなった。比較例3の樹脂組成物を用いて作製された射出成形品は、酸化チタンAが液晶ポリエステル100質量部に対して75質量部の割合で充填されているが、ガラス繊維が75質量部と本発明の上限を超えて充填されている。その結果、曲げ強度は190MPaと高いが、反射率が78%と低くなった。比較例4の樹脂組成物は、酸化チタンAの含有量が本発明に係る上限値を超えたため、作製された射出成形品のアイゾット衝撃強度が大きく低下した。比較例5の樹脂組成物は、酸化チタンAの含有量がさらに多すぎたため、樹脂組成物の生産が困難でペレットが得られなかった。
【0073】
以上のように、実施例に示される本発明に係る液晶ポリエステル樹脂組成物は、溶融粘度が低くてもアイゾット衝撃強度は高く、反射率も従来品を凌ぐ高いレベルにあり、従来なしえなかった高い反射率と高い機械的強度の両立を実現できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明によれば、480nmにおける光反射率とアイゾット衝撃強度などの機械的強度とを高水準で両立する成形体を得ることができる液晶ポリエステル樹脂組成物、その成形体及び当該成形体を備える光学装置を提供することができる。また、本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物は、通常の溶融混練工程を経て調製されたものでも液晶ポリエステルの優れた耐熱性及び成形性を保持しており、白色光反射率及びアイゾット衝撃強度に優れた成形体を射出成形により形成できる。本発明の液晶ポリエステル樹脂組成物の射出成形体は、その表面を反射面としたリフレクターとして用いることができ、特に白色LEDに好適なリフレクターとして用いることができる。本発明によれば、従来よりも高い反射率を有するとともに機械的強度にも優れるリフレクターを実現できるため、これを備える光の取り出し効率に優れた光学装置を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステル(A)100質量部と、表面処理として酸化アルミニウム処理、酸化ケイ素処理およびオルガノシロキサン処理が施された酸化チタン(B)50〜150質量部と、無機繊維状充填材(C)0〜50質量部と、を含有する、液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記液晶ポリエステル(A)は、融点が320℃以上の全芳香族サーモトロピック液晶ポリエステルである、請求項1に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記酸化チタン(B)は、一次粒子径が0.2〜0.3μmの範囲にある、請求項1又は2に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
射出成形して得られる成形体の成形表面における波長480nmの光に対する反射率が85%以上であり、かつ、前記成形体のアイゾット衝撃強度が40kJ/m以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液晶ポリエステル樹脂組成物を射出成形して得られる成形体。
【請求項6】
光源と、請求項5に記載の成形体からなる、前記光源のリフレクターと、を備える、光学装置。
【請求項7】
前記光源が白色LEDである、請求項6に記載の光学装置。


【公開番号】特開2011−74137(P2011−74137A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224825(P2009−224825)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】