説明

液晶表示装置の駆動回路

【課題】入出力間オフセット電圧を削減しつつ消費電流を削減する。
【解決手段】第1導電型の第1差動回路は、第1入力信号と出力信号とを差動入力信号とする。第1導電型の第2差動回路は、第2入力信号と出力信号とを差動入力信号とする。第2導電型の第3差動回路は、第1入力信号と出力信号とを差動入力信号とする。第2導電型の第4差動回路は、第2入力信号と出力信号とを差動入力信号とする。出力段回路は、第1乃至第4差動回路の出力に基づいて出力信号を出力する。差動増幅器は、上記第1乃至第4差動回路、出力段回路を具備し、制御信号に基づいて、第1乃至第4差動回路を形成するトランジスタのチャネル長とチャネル幅との比を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置を駆動する駆動回路に搭載される差動増幅器に関し、特に内挿機能を有する差動増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置を駆動するソースドライバは、差動増幅器を搭載し、液晶パネルの画素容量を駆動する回路である。ソースドライバは、外部から印加されるγ電圧を抵抗で分圧して液晶階調の基準電圧を生成する。DAC(Digital to Analog Converter)回路によって選択された基準電圧は、電圧フォロアの差動増幅器(以下ソースアンプとする)に入力される。ソースアンプは、その基準電圧を微調整し、インピーダンスを下げて出力する。ソースアンプの出力は、液晶パネルのソース端子へ接続され、液晶パネルの画素容量を駆動する。
【0003】
近年、テレビジョン受像機やパーソナルコンピュータ用ディスプレイに使用される液晶表示装置の大画面化・高精細化が進んでいる。それに伴いソースドライバには、より大きな負荷を、より高速に、より省電力で、駆動する能力が必要とされる。特に、カラー液晶の高精細化に関しては、多階調化が進み、RGB各6ビットで表現される26万色から、各8ビットで表現される1670万色、各10ビットで表現される10億色に移行している。
【0004】
このビット数の増加にしたがって、ソースアンプに入力される階調電圧は、6ビットで64階調、8ビットで256階調、10ビットで1024階調と増加する。階調電圧数の増加によって、ソースアンプに入力される電圧の刻みが小さくなるため、ソースアンプに対して出力電圧精度の向上が要求される。したがって、ソースアンプの入出力間オフセット電圧や出力偏差、振幅差偏差などの特性規格がより厳しくなってきている。
【0005】
ソースアンプとして用いられている増幅回路は、例えば、図1に示されるように構成される。ここに示されるソースアンプは、いわゆるRail−to−Rail増幅器であり、教科書や著名な文献等に参考回路として記載される一般的な差動増幅器である。この増幅器300は、入力段310、中間段320、出力段330に大きく分けられる。
【0006】
入力段310は、NチャネルMOSトランジスタMN31〜MN33と、PチャネルMOSトランジスタMP31〜MP33とを備える。バイアス電圧BN1が印加されて定電流源として機能するトランジスタMN33は、Nチャネル差動対を形成するトランジスタMN31、MN32のテール電流を供給する。トランジスタMN31のゲートは、入力ノードINに接続され、入力電圧VINが印加される。トランジスタMN32のゲートは、出力ノードOUTに接続され、フィードバックされる出力電圧VOUTが印加される。トランジスタMN31、MN32のドレインは、中間段320のノードb、ノードaにそれぞれ接続される。また、バイアス電圧BP1が印加されて定電流源として機能するトランジスタMP33は、Pチャネル差動対を形成するトランジスタMP31、MP32のテール電流を供給する。トランジスタMP31のゲートは、入力ノードINに接続され、入力電圧VINが印加される。トランジスタMP32のゲートは、出力ノードOUTに接続され、フィードバックされる出力電圧VOUTが印加される。トランジスタMP31、MP32のドレインは、中間段320のノードc、ノードdにそれぞれ接続される。
【0007】
中間段320は、NチャネルMOSトランジスタMN34〜MN39と、PチャネルMOSトランジスタMP34〜MP39とを備える。トランジスタMN34〜MN37は、低電圧用カレントミラー回路を形成する。トランジスタMN36、MN37のゲートにはバイアス電圧BN2が印加される。トランジスタMN34とトランジスタMN36との接続ノードdには、入力段310のPチャネル差動回路の一方の出力が印加され、トランジスタMN35とトランジスタMN37との接続ノードcには、入力段310のPチャネル差動回路の他方の出力が印加される。
【0008】
トランジスタMP34〜MP37は、高電圧用カレントミラー回路を形成する。トランジスタMP36、MP37のゲートには、バイアス電圧BP2が印加される。トランジスタMP34とトランジスタMP36との接続ノードaには、入力段310のNチャネル差動回路の一方の出力が印加され、トランジスタMP35とトランジスタMP37との接続ノードbには、入力段310のNチャネル差動回路の他方の出力が印加される。
【0009】
トランジスタMN36とトランジスタMP36との間に、並列に接続されるトランジスタMN38、MP38が挿入される。バイアス電圧BN3がゲートに印加されるトランジスタMN38と、バイアス電圧BP3がゲートに印加されるトランジスタMP38とは、定電流源として機能する。また、トランジスタMN37とトランジスタMP37との間に、並列に接続されるトランジスタMN39、MP39が挿入される。バイアス電圧BN4がゲートに印加されるトランジスタMN39と、バイアス電圧BP4がゲートに印加されるトランジスタMP39とは、定電流源として機能する。
【0010】
出力段330は、NチャネルMOSトランジスタMN30とPチャネルMOSトランジスタMP30とを備える。トランジスタMP30とトランジスタMN30とは、電源電圧VDDと電源電圧VSSとの間に直列に接続される。トランジスタMP30とトランジスタMN30との接続ノードは、出力ノードOUTとして出力電圧VOUTを出力する。トランジスタMN30のゲートは、中間段320のNチャネルカレントミラー回路と定電流源との接続ノード(トランジスタMN37、MN39の接続ノード)に接続される。トランジスタMP30のゲートは、中間段320のPチャネルカレントミラー回路と定電流源との接続ノード(トランジスタMP37、MP39の接続ノード)に接続される。また、トランジスタMN30、MP30が接続される出力ノードOUTと、中間段320との間に位相補償用キャパシタC1、C2が接続される。
【0011】
図1に示される回路図を簡略化して示される図2を参照して、増幅器400の入力可能な電圧を説明する。ソースアンプに供給される電源は、正側電源電圧VDD、負側電源電圧VSSとする。トランジスタMN41、MN42は、図1に示されるトランジスタMN32、MN31に対応し、定電流源I41は、トランジスタMN33に対応する。また、トランジスタMP41、MP42は、図1に示されるトランジスタMP32、MP31に対応し、定電流源I43は、トランジスタMP33に対応する。中間段420は、図1に示される中間段320に対応し、出力段430は図1に示される出力段330に対応する。
【0012】
入力段410は、Rail−to−Railを実現するため、NチャネルMOSトランジスタMN41、MN42とPチャネルMOSトランジスタMP41、MP42とを備える。入力ノードINから入力される電圧VINが電源VSS寄りの低い時には、入力段トランジスタMP41、MP42が動作し、電圧VINが電源VDD寄りの高い時には、入力段トランジスタMN41、MN42が動作する。その中間電圧では、入力段トランジスタMP41、MP42、MN41、MN42が動作する。したがって、ソースアンプは、電源電圧間のほぼ全範囲に相当する入力電圧範囲で動作する入力段を得ることができる。
【0013】
ソースアンプには、γ電圧を抵抗分割した複数の階調電圧がDAC回路を介して入力される。その電圧は、一般的に極性信号POLが正極性、負極性の場合それぞれについて64階調(6bit)〜256階調(8bit)が主流になっている。これ以上にビット数を増やすと、表示装置を見る人がさらに階調間の輝度差を識別しにくくなり、さらに滑らかな階調表現を実現することができる。しかし、ビット数が増加すると、抵抗分割により生成される複数の階調電圧から映像データのディジタル値に対応する1つの階調電圧を選択して出力するDAC回路が大きくなる。例えば、階調数が8ビット(256階調)のDAC回路を、単純に1ビット増やして9ビットにしようとすると、元の8ビットのDAC回路の面積の2倍以上になってしまうのが一般的である。
【0014】
これを回避するため、ビット数の多い液晶表示装置を駆動するソースドライバICでは、ソースアンプに内挿電圧発生機能(以降、内挿機能という)を持たせてDAC回路の面積の増加を抑える。内挿機能を有するソースアンプの回路図が図3に示される。この差動増幅器500は、入力段510に2回路のNチャネル差動回路と、2回路のPチャネル差動回路とを有する。Nチャネル差動回路では、トランジスタMN51、MN52に対して、ドレインを共通にして並列にトランジスタMN53、MN54が設けられ、トランジスタMN53、MN54のテール電流を流す定電流源I52が設けられる。Pチャネル差動回路についても同じように、トランジスタMP53、MP54が設けられ、トランジスタMP53、MP54のテール電流を流す定電流源I54が設けられる。トランジスタMN54、MP54のゲートに入力信号を印加するノードIN2も追加される。中間段520、出力段530は、図1に示される中間段320、出力段330と同じ回路である。
【0015】
Nチャネルの2つの差動増幅器を構成するトランジスタMN51〜MN54が全て同じディメンジョンのトランジスタで、2つのテール電流源I51、I52が同じ電流値であり、Pチャネルの2つの差動増幅器を構成するトランジスタMP51〜MP54が全て同じディメンジョンのトランジスタで、2つのテール電流源I53、I54が同じ電流値である場合は、この入力段510は入力IN1とIN2の電圧の中間(1/2)の値を出力する、1/2内挿機能を持つ。例えば、入力ノードIN1に電圧(V1+α)、入力ノードIN2に電圧(V1−α)を入力すると、出力ノードOUTには、入力ノードIN1の電圧と入力ノードIN2の電圧との1/2内挿電圧すなわち電圧V1が出力される。また、例えば、入力ノードIN1、IN2の両方に電圧(V1+α)を入力すると、出力ノードOUTには、入力ノードIN1、IN2の電圧の1/2内挿電圧すなわち電圧(V1+α)が出力される。すなわち、差動増幅器500では、入力電圧として電圧(V1+α)と電圧(V1−α)の2つがあれば、電圧(V1+α)、電圧V1および電圧(V1−α)の3通りの出力が得られる。したがって、電圧V1を入力する必要がなくなる、ついまり、DAC回路の増加分に比べて十分面積の小さい差動回路を2つ追加するだけで階調を1ビット追加したのと同様の機能を実現できるため、その分のDAC回路の回路規模、ひいてはソースドライバIC全体の面積の増加を抑えることが可能になる。
【0016】
内挿機能を有するソースアンプは、電源電圧VDD、VSS付近で内挿動作をすると、入出力間オフセット電圧が劣化することがある。それは以下の理由による。内挿するとき、入力ノードIN1には電圧(V1+α)、入力ノードIN2には電圧(V1−α)が入力される。これにより出力ノードOUTには、入力ノードIN1の電圧と入力ノードIN2の電圧との内挿電圧すなわち電圧V1が出力されるのが理想である。
【0017】
ここで、Nチャネル入力段の動作閾値が電圧V1であるとすると、電圧(V1+α)が入力されている差動回路のトランジスタMN51、52は、入力ノードIN1の電圧が動作閾値以上であり動作する。しかし、電圧(V1−α)が入力される差動回路のトランジスタMN54は、入力ノードIN2に印加される電圧が動作閾値より低いため、動作閾値以下での動作状態、つまりほとんどオフ状態になる。
【0018】
この状態を言い換えると、Pチャネル入力段のトランジスタMP51〜MP54は、理想通り出力ノードOUTの電圧が電圧V1に収束するように負帰還動作するが、Nチャネル入力段では、トランジスタMN51、MN52しか動作していないため、出力が電圧(V1+α)に収束するように負帰還動作する。したがって、Pチャネル入力段とNチャネル入力段との間で収束電圧の違いが生じ、結果として出力ノードOUTには、電圧(+α)と同じプラス方向の入出力間オフセット電圧を持つ出力が現れる。
【0019】
このような欠点を改善するための技術が、特開2006−50296号公報に示されている。この技術では、図3に示される増幅器500の外部に、判断部と入力段制御部とが追加される。判断部は、入力もしくは出力の電圧値に基づいて、入力段を停止させるか否かを判断する。入力段制御部は、その判断部の結果を受けて入力段を動作させるか停止させるかを制御する。Nチャネル入力段だけを停止させるとき、電流源I51、I52両方を停止する。Pチャネル入力段だけを停止させるとき、電流源I53、I54両方を停止する。入力電圧が電源電圧VSS付近のとき、Nチャネル入力段は、入力段制御部によって完全にオフにされているため、Pチャネル入力段の入出力間オフセット電圧が出力ノードOUTに現れる。入力電圧が電源電圧の中間の電圧である時、NチャネルおよびPチャネル入力段ともオン状態であるため、NチャネルおよびPチャネル入力段がもつ入出力間オフセット電圧が出力ノードOUTに現れる。入力電圧が電源電圧VDD付近のとき、Pチャネル入力段は、入力段制御部によって完全にオフにされているため、Nチャネル入力段がもつ入出力間オフセット電圧が出力ノードOUTに現れる。この入力段制御により、前述のPチャネル入力段とNチャネル入力段との間で収束電圧の違いが生じる状態が無くなるため、入出力間オフセット電圧の劣化は抑えられる。
【0020】
入出力間オフセット電圧と入力電圧との関係が図4に示される。入力ノードIN1に電圧VIN1が印加され、入力ノードIN2に電圧VIN2が印加されるものとすると、入力電圧VINは、電圧(VIN1+VIN2)/2として示される。入力ノードIN1の電圧VIN1と、入力ノードIN2の電圧VIN2との差(VIN1−VIN2)を内挿電圧差と称する。図4では、内挿電圧差が0ボルト、0.3ボルト、0.5ボルトの時の入出力間オフセット電圧が示される。内挿電圧差を大きくしていくと入出力間オフセット電圧が大きくなり劣化することがわかる。すなわち、この技術では、電源電圧付近の入力電圧における入出力間オフセット電圧の低減には効果があるが、内挿電圧差が大きいときの入出力間オフセット電圧の低減効果はない。
【0021】
内挿電圧差を0ボルトおよび0.5ボルトに固定した時の入力段の差動回路に流れる電流と入力電圧との関係が図5に示される。横軸に入力電圧VINが示される。縦軸は、図5(a)ではNチャネル差動回路の各経路に流れる電流を示し、図5(b)ではPチャネル差動回路の各経路に流れる電流を示し、図5(c)では内挿電圧差0.5ボルトのときの入出力間オフセット電圧を示す。内挿電圧差が0ボルトのとき、図5(a)に示されるように、Nチャネル差動回路に流れる電流IdsN1−、IdsN1+、IdsN2−、IdsN2+は、全て同じ値になる。図5(b)に示されるように、Pチャネル差動回路に流れる電流IdsP1−、IdsP1+、IdsP2−、IdsP2+も全て同じになる。内挿電圧差0.5ボルトのとき、Nチャネル差動回路の電流IdsN1+と電流IdsN2−の経路には、電流源I51、I52の電流がそれぞれすべて流れ、電流IdsN1−と電流IdsN2+の経路には、ほとんど電流が流れない。すなわち、トランジスタMN51、MN54は、遮断された状態になっている。Pチャネル差動回路については、電流IdsP1−と電流IdsP2+の経路には、それぞれ電流源I53、I54の電流がそれぞれすべて流れ、電流IdsP1+と電流IdsP2−の経路には、ほとんど電流が流れない。すなわち、トランジスタMP52、MP53が遮断された状態になっている。このように遮断された状態は、差動回路の入力電圧範囲を超えていることを示している。
【0022】
フィードバック経路を切断し、入力電圧VINと電圧(VDD/2)とを比較するように、差動増幅器500をコンパレータ動作させる場合、入力段510の差動回路に流れる電流と入力電圧との関係は、図6に示されるようになる。すなわち、出力ノードOUTに接続されるトランジスタMN51、MN53、MP51、MP53のゲートに電圧(VDD/2)が印加される。入力ノードIN1、IN2には、共通に、可変の入力電圧VINが印加される。横軸は、入力電圧VINを示し、縦軸は、図6(a)ではNチャネル差動回路の各経路に流れる電流を示し、図6(b)ではPチャネル差動回路の各経路に流れる電流を示し、図6(c)では出力電圧VOUTを示す。
【0023】
出力電圧VOUTが電圧VSSから電圧VDDに切り替わるところ、すなわち、入力電圧VINが電圧(VDD/2)に等しい場合、差動回路の各トランジスタに流れる電流が交差する。交差するポイント(負帰還増幅器の収束点)では、各トランジスタの電流値がI51/2、I52/2、I53/2、I54/2となり、つまりテール電流の半分の電流が流れている。この交差するポイント(収束点)が入力段の差動回路の入力電圧範囲の中心になる。一般的に、MOSトランジスタで構成される差動回路の入力電圧範囲は、差動回路のテール電流をIssとすると、交差するポイントから±√(2×Iss/β)の範囲で示される。差動回路は、この入力電圧範囲内でのみ差動入力回路として機能する。
ここで、
β=μ×Cox×W/L
μ:移動度
Cox:単位面積当たりのゲート酸化膜容量
W:トランジスタのチャネル幅
L:トランジスタのチャネル長
とする。
【0024】
差動増幅器500では、トランジスタMN51、MN53、MP51、MP53のゲートは、負帰還するように出力ノードOUTに接続されている。内挿動作をしない場合、すなわち、入力ノードIN1、IN2に同じ電圧が印加される場合、交差するポイントで収束動作する。そのため、トランジスタMN51、MN52に流れる電流、トランジスタMN53、MN54に流れる電流、トランジスタMP51、MP52に流れる電流、トランジスタMP53、MP54に流れる電流は、それぞれ同じになる。
【0025】
次に、内挿電圧差がある場合のコンパレータ動作について検討する。フィードバック経路を切断し、トランジスタMN51、MN53、MP51、MP53のゲートに電圧(VDD/2)が入力される。入力ノードIN1と入力ノードIN2との内挿電圧差を0.5ボルトに保ったまま、入力電圧VIN1、VIN2を変化させる。この時の差動回路に流れる電流と入力電圧との関係が、図7に示される。ここでは、入力ノードIN1の電圧VIN1が入力ノードIN2の電圧VIN2より0.5ボルト高いものとする。横軸は、入力電圧VIN=(VIN1+VIN2)/2を示す。縦軸は、図7(a)ではNチャネル差動回路の各経路に流れる電流を示し、図7(b)ではPチャネル差動回路の各経路に流れる電流を示し、図7(c)では出力電圧VOUTを示す。
【0026】
この場合、交差するポイントは、出力電圧VOUTが電圧VSSから電圧VDDに切り替わるところから、±(内挿電圧差/2)だけずれる。図7(a)に示されるように、この付近ではトランジスタMN51、MN52を含む差動回路の入力電圧範囲と、トランジスタMN53、MN54を含む差動回路の入力電圧範囲とには、オーバーラップがほとんどない。Pチャネルについても図7(b)に示されるように、トランジスタMP51、MP52を含む差動回路の入力電圧範囲と、トランジスタMP53、MP54を含む差動回路の入力電圧範囲とには、オーバーラップがほとんどない。言い換えると、出力電圧VOUTが電圧VSSから電圧VDDに切り替わるポイントにおいて、差動回路は、入力電圧範囲を超えている状態になっている。
【0027】
差動増幅器500が負帰還で使用される場合、図7(c)に示されるように、出力電圧VOUTが電圧VSSから電圧VDDに切り替わるポイントにおいて収束動作することになる。トランジスタMN51、MN52を含む差動回路を例に説明すると、このポイントにおいて、トランジスタMN51は、電流IdsN1−がほとんど流れず遮断している。定電流源I51の電流は、全てトランジスタMN52を流れる電流IdsN1+になっている。したがって、負帰還による収束動作点が入力段の差動回路の入力電圧範囲を超えているため、差動入力回路としての機能が低下し、期待通りの内挿動作が行われず入出力間オフセット電圧や出力偏差が劣化する。
【0028】
一般的に、内挿機能は、出力設定電圧によって内挿機能の有無を選択して用いられるため、出力電圧全範囲において内挿する状態と内挿しない状態とが混じることになる。前述のように、内挿すると入出力間オフセット電圧が劣化するため、出力電圧の全範囲にわたり入出力間オフセット電圧差が顕著となり、画質劣化に至る可能性がある。
【0029】
また、中間利得段を用いずに高利得を得られ、簡単・低廉な差動増幅器に関する技術が、特開平06−326529号公報に開示されている。この差動増幅器は、正電圧供給線路と、負電圧給電線路と、増幅すべき信号を受入れる第1および第2増幅器入力端子と、差動増幅器手段と、電流加算回路と、駆動/出力段と、浮遊電流源とを備え、線路間共通モード領域を有する。差動増幅器手段は、第1および第2増幅器入力端子に結合する入力手段、出力手段、第1差動増幅器として第1電流源を介し正電圧給電線路に結合する第1トランジスタ対および第2差動増幅器として第2電流源を介し負電圧給電線路に結合する第2トランジスタ対を備える。電流加算回路は、差動増幅器手段の出力手段に結合する。駆動/出力段は、少なくとも1個の信号出力端子に結合する第1および第2の出力トランジスタを含むとともに電流加算回路に結合する入力手段を有する。浮遊電流源は、出力トランジスタにおける一定静止バイアス電流を制御するとともに維持するようにして電流加算回路に結合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開2006−050296号公報
【特許文献2】特開平06−326529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明は、入出力間オフセット電圧を削減しつつ消費電流を削減することができる内挿機能を有する差動増幅器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0032】
以下に、[発明を実施するための形態]で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、[特許請求の範囲]の記載と[発明を実施するための形態]との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号・符号を、[特許請求の範囲]に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0033】
本発明の観点では、差動増幅器は、第1導電型(Nチャネル)の第1差動回路(MN11/MN12/MN15/MN16、MN21/MN22/MN25/MN26)と、第1導電型(Nチャネル)の第2差動回路(MN13/MN14/MN17/MN18、MN23/MN24/MN27/MN28)と、第2導電型(Pチャネル)の第3差動回路(MP11/MP12/MP15/MP16、MP21/MP22/MP25/MP26)と、第2導電型(Pチャネル)の第4差動回路(MP13/MP14/MP17/MP18、MP23/MP24/MP27/MP28)と、出力段回路(130)とを具備し、制御信号(CTRL)に基づいて、第1乃至第4差動回路を形成するトランジスタのチャネル長とチャネル幅との比を変更する。第1差動回路(MN11/MN12/MN15/MN16、MN21/MN22/MN25/MN26)は、第1入力信号(VIN1)と出力信号(VOUT)とを差動入力信号とする。第2差動回路(MN13/MN14/MN17/MN18、MN23/MN24/MN27/MN28)は、第2入力信号(VIN2)と出力信号(VOUT)とを差動入力信号とする。第3差動回路(MP11/MP12/MP15/MP16、MP21/MP22/MP25/MP26)は、第1入力信号(VIN1)と出力信号(VOUT)とを差動入力信号とする。第4差動回路(MP13/MP14/MP17/MP18、MP23/MP24/MP27/MP28)は、第2入力信号(VIN2)と出力信号(VOUT)とを差動入力信号とする。出力段回路(130)は、第1乃至第4差動回路の出力に基づいて出力信号(VOUT)を出力する。
【0034】
本発明の他の観点では、液晶表示装置の駆動回路は、上記の差動増幅器を搭載し、第1入力信号として第1階調電圧を印加し、第2入力信号として第2階調電圧を印加する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、入出力間オフセット電圧を削減しつつ消費電流を削減することができる内挿機能を有する差動増幅器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、一般的な差動増幅器の構成を示す図である。
【図2】図2は、一般的な差動増幅器の構成を簡略化して示す図である。
【図3】図3は、内挿機能を有する差動増幅器の構成を示す図である。
【図4】図4は、内挿機能を有する差動増幅器における入出力間オフセット電圧と入力電圧との関係を示す図である。
【図5】図5は、内挿電圧差を0ボルトおよび0.5ボルトに固定した時の入力段の差動回路に流れる電流と入力電圧との関係を示す図である。
【図6】図6は、コンパレータ動作させる差動増幅器の入力段の差動回路に流れる電流と入力電圧との関係を示す図である。
【図7】図7は、内挿電圧差が0.5ボルトのときの差動回路に流れる電流と入力電圧との関係を示す図である。
【図8】図8は、本発明の第1の実施の形態に係る差動増幅器の構成を示す図である。
【図9】図9は、1/2内挿用DAC回路の構成を簡略化して示す図である。
【図10】図10は、本発明の第1の実施の形態に係るSW制御回路の構成を示す図である。
【図11】図11は、本発明の第1の実施の形態に係るSW制御回路の動作を説明するための図である。
【図12】図12は、本発明の第1の実施の形態に係るSW制御回路の別の構成を示す図である。
【図13】図13は、本発明の第1の実施の形態に係るSW制御回路の動作を説明するための図である。
【図14】図14は、本発明の第1の実施の形態に係る差動増幅器をコンパレータ動作させるときの入力段の差動回路に流れる電流と入力電圧との関係を示す図である。
【図15】図15は、本発明の第1の実施の形態に係る差動増幅器において、内挿電圧差が0.5ボルトのときの入力段の差動回路に流れる電流と入力電圧との関係を示す図である。
【図16】図16は、本発明の第1の実施の形態に係る差動増幅器において、内挿電圧差が0ボルトおよび0.5ボルトの時の入力段の差動回路に流れる電流と入力電圧との関係を示す図である。
【図17】図17は、本発明の第1の実施の形態に係る差動増幅器において、内挿電圧差が0.5ボルトの時の入出力間オフセット電圧と入力電圧との関係を示す図である。
【図18】図18は、本発明の第1の実施の形態に係る差動増幅器において、内挿電圧差が0.5ボルトの時の出力偏差波形を示す図である。
【図19】図19は、本発明の第1の実施の形態に係る差動増幅器において、内挿電圧差が0.5ボルトの時の振幅差偏差波形を示す図である。
【図20】図20は、本発明の第2の実施の形態に係る差動増幅器の構成を示す図である。
【図21】図21は、本発明の第2の実施の形態に係る差動増幅器において、内挿電圧差が0.5ボルトの時の入出力間オフセット電圧と入力電圧との関係を示す図である。
【図22】図22は、直並列接続を切り替えてディメンションを変更するトランジスタ回路の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0038】
(第1の実施の形態)
図8に、第1の実施の形態に係る差動増幅器の構成が示される。第1の実施の形態に係る差動増幅器100は、入力段110、中間段120、出力段130を備える。中間段120および出力段130は、図1に示される中間段320、出力段330と同じ構成であり、詳細な説明は省略する。入力段110は、図3に示される入力段310と比べると、トランジスタMN51〜MN54、MP51〜MP54が2分割され、スイッチSW11〜SW18が追加されている。また、スイッチSW11〜SW18を制御するSW制御回路140が設けられる。したがって、入力段110は、NチャネルMOSトランジスタMN11〜MN18と、PチャネルMOSトランジスタMP11〜MP18と、定電流源I11〜I14と、スイッチSW11〜SW18とを備え、4つの差動回路に分けられる。スイッチSW11〜SW18は、SW制御回路140から出力される制御信号CTRLに基づいて回路を開閉する。スイッチSW11〜SW18は、制御信号CTRLが“H”を示すときオン(閉成)となり、“L”を示すときオフ(開放)となる。
【0039】
第1の差動回路は、Nチャネル差動回路であり、トランジスタMN11、MN12、MN15、MN16と、定電流源I11と、スイッチSW11、SW12とを備える。トランジスタMN11、MN12、MN15、MN16のソースは、共通に接続され、定電流源I11を介して電源電圧VSSに接続される。トランジスタMN11、MN15のドレインは、差動回路の負荷回路となる中間段120のノードaに接続され、ノードaから電流IdsN1−が流れる。トランジスタMN11、MN15のゲートは、出力ノードOUTに接続されて出力電圧VOUTが印加される。スイッチSW11は、トランジスタMN15のドレインと中間段120のノードaとの間に設けられる。トランジスタMN12、MN16のドレインは、中間段120のノードbに接続され、ノードbから電流IdsN1+が流れる。トランジスタMN12、MN16のゲートは、入力ノードIN1に接続されて入力電圧VIN1が印加される。スイッチSW12は、トランジスタMN16のドレインと中間段120のノードbとの間に設けられる。
【0040】
第2の差動回路は、Nチャネル差動回路であり、トランジスタMN13、MN14、MN17、MN18と、定電流源I12と、スイッチSW13、SW14とを備える。トランジスタMN13、MN14、MN17、MN18のソースは、共通に接続され、定電流源I12を介して電源電圧VSSに接続される。トランジスタMN13、MN17のドレインは、差動回路の負荷回路となる中間段120のノードaに接続され、ノードaから電流IdsN2−が流れる。トランジスタMN13、MN17のゲートは、出力ノードOUTに接続されて出力電圧VOUTが印加される。スイッチSW13は、トランジスタMN17のドレインと中間段120のノードaとの間に設けられる。トランジスタMN14、MN18のドレインは、中間段120のノードbに接続され、ノードbから電流IdsN2+が流れる。トランジスタMN14、MN18のゲートは、入力ノードIN2に接続されて入力電圧VIN2が印加される。スイッチSW14は、トランジスタMN18のドレインと中間段120のノードbとの間に設けられる。
【0041】
第3の差動回路は、Pチャネル差動回路であり、トランジスタMP11、MP12、MP15、MP16と、定電流源I13と、スイッチSW15、SW16とを備える。トランジスタMP11、MP12、MP15、MP16のソースは、共通に接続され、定電流源I13を介して電源電圧VDDに接続される。トランジスタMP11、MP15のドレインは、差動回路の負荷回路となる中間段120のノードdに接続され、ノードdへ電流IdsP1−が流れる。トランジスタMP11、MP15のゲートは、出力ノードOUTに接続されて出力電圧VOUTが印加される。スイッチSW15は、トランジスタMP15のドレインと中間段120のノードdとの間に設けられる。トランジスタMP12、MP16のドレインは、中間段120のノードcに接続され、ノードcへ電流IdsP1+が流れる。トランジスタMP12、MP16のゲートは、入力ノードIN1に接続されて入力電圧VIN1が印加される。スイッチSW16は、トランジスタMP16のドレインと中間段120のノードcとの間に設けられる。
【0042】
第4の差動回路は、Pチャネル差動回路であり、トランジスタMP13、MP14、MP17、MP18と、定電流源I14と、スイッチSW17、SW18とを備える。トランジスタMP13、MP14、MP17、MP18のソースは、共通に接続され、定電流源I14を介して電源電圧VDDに接続される。トランジスタMP13、MP17のドレインは、差動回路の負荷回路となる中間段120のノードdに接続され、ノードdへ電流IdsP2−が流れる。トランジスタMP13、MP17のゲートは、出力ノードOUTに接続されて出力電圧VOUTが印加される。スイッチSW17は、トランジスタMP17のドレインと中間段120のノードdとの間に設けられる。トランジスタMP14、MP18のドレインは、中間段120のノードcに接続され、ノードcへ電流IdsP2+が流れる。トランジスタMP14、MP18のゲートは、入力ノードIN2に接続されて入力電圧VIN2が印加される。スイッチSW18は、トランジスタMP18のドレインと中間段120のノードcとの間に設けられる。
【0043】
トランジスタMN11、MN15のW寸法(チャネル幅)は等しく、例えば、図3に示されるトランジスタMN51のW寸法(チャネル幅)を2等分した寸法になっている。したがって、スイッチSW11がオン状態のとき(閉成されているとき)、トランジスタMN11、MN15は、トランジスタMN51と同等の動作をする。同様に、トランジスタMN16〜MN18、MP15〜MP18のW寸法(チャネル幅)は、トランジスタMN12〜MN14、MP11〜MP14のW寸法(チャネル幅)と等しく、トランジスタMN52〜MN54、MP51〜MP54のW寸法(チャネル幅)を2等分した寸法になっている。したがって、スイッチSW12〜SW18がオン状態のとき(閉成されているとき)、トランジスタMN12〜MN14、MP11〜MP14と、トランジスタMN16〜MN18、MP15〜MP18との組のそれぞれは、トランジスタMN52〜MN54、MP51〜MP54と同等の動作をする。ここでは、説明を簡単にするため、トランジスタMN11〜MN14、MP11〜MP14のW寸法と、トランジスタMN15〜MN18、MP15〜MP18のW寸法とが等しいとして説明するが、異なるW寸法でもよい。すなわち、実効的にW寸法が変わるトランジスタであればよい。
【0044】
1/2内挿用DAC(Digital to Analog Converter)回路の構成を抜粋して図9に示す。図9に示される各スイッチは、階調データD0、D1、D2が0(=Lレベル)の時の状態(NC側を選択)を示し、階調データD0、D1、D2が1(=Hレベル)の時は、切り替わって反対側(NO側)を選択するように動作する。出力ノードDAO1は、差動増幅器100の入力ノードIN1に接続され、出力ノードDAO2は、入力ノードIN2に接続される。一例として、このDAC回路の下位3ビット(D2:D0)が“000”〜“011”のときの動作を抜粋すると以下の様になる。
【表1】

【0045】
このように、1/2内挿の有無は、階調データD0によって定まるため、交互に現れる。図9に示される1/2内挿用DAC回路では、階調データD0が“0”のとき、1/2内挿が行われるように出力ノードDAO1、DAO2に異なる電圧が出力され、階調データD0が“1”の時には同じ電圧が出力される。
【0046】
内挿が階調データの範囲全体にわたって行われる場合、階調データD0がDAC制御信号DACCとしてSW制御回路140に入力される。SW制御回路140は、DAC制御信号DACCに基づいて生成される制御信号CTRLを出力し、スイッチSW11〜SW18を制御する。ここでは、階調データD0に基づいて制御信号CTRLを生成するため、SW制御回路140は、図10に示されるように、スイッチSW11〜SW18を駆動するレベルシフト回路141を備える。
【0047】
SW制御回路140は、図11に示されるように、階調データD0に基づいて(図11(c))、制御信号CTRLを生成し(図11(d))、スイッチSW11〜SW18を制御する。差動増幅器100は、入力電圧VINを入力して(図11(a))、出力電圧VOUTを出力する(図11(b))。階調データD0が“1”のとき(図11(c))、DAC回路の出力ノードDAO1、DAO2に同じ電圧が出力される。したがって、入力ノードIN1、IN2に同じ入力電圧VIN1、VIN2が印加され(図11(a))、制御信号CTRLは“H”を示し(図11(d))、スイッチSW11〜SW18はオン(閉成)状態になる。このとき、入力段110は、図3に示される入力段510と同じように動作する。
【0048】
階調データD0が“0”のとき(図11(c))、DAC回路の出力ノードDAO1、DAO2に異なる電圧が出力される。したがって、入力ノードIN1、IN2に異なる入力電圧VIN1、VIN2が印加され(図11(a))、制御信号CTRLは“L”を示し(図11(d))、スイッチSW11〜SW18はオフ(開放)状態になる。このとき、入力段110のトランジスタMN11〜MN14、MP11〜MP14には、トランジスタMN15〜MN18、MP15〜MP18に流れていた電流も流れるため、2倍の電流が流れることになる。このように、スイッチSW11〜SW18がオン・オフすることにより、入力段110の特性が切り替わる。特性については後述する。
【0049】
また、内挿が階調データの特定の範囲内で行われる場合、SW制御回路140は、限定された範囲内において階調データD0に基づいて、スイッチSW11〜SW18を制御する制御信号CTRLを生成する。階調データがγ電圧の電源電圧付近を示すとき、γ電圧の変化量は大きく、傾きが一定ではない。階調データが中間のデータを示すとき、γ電圧は傾きがほぼ一定となる。したがって、例えば、電源電圧付近の8階調において1/2内挿を行わず、中心付近の階調において1/2内挿を行うようにして内挿誤差を抑制することが行われる。このように、所定の階調範囲内で内挿が行われる場合、SW制御回路140は、内挿が行われる階調範囲を判定する内挿判定回路を含む。階調データが8ビットで与えられるとすると、上位5ビットの階調データD7、D6、D5、D4、D3が全て“1”または全て“0”となる階調データは電源電圧付近の8階調を示し、内挿が行われない。また、最下位ビットの階調データD0が“1”のときは、内挿が行われない。
【0050】
このような階調データD7〜D3、D0をDAC制御信号DACCとして入力するSW制御回路140は、図12に示されるように、排他的NOR回路(EXNOR)146と、OR回路144と、レベルシフト回路142とを備える。排他的NOR回路146が内挿範囲を判定する回路であり、階調データがその範囲内であってかつ階調データD0が“0”のときにだけ内挿が行われる。すなわち、動作は以下のようになる。
【表2】

【0051】
このようなSW制御回路140は、図13に示されるように、階調データD7〜D3、D0に基づいて(図13(c)(d))、制御信号CTRLを生成する(図13(f))。階調データD7〜D3(図13(c))によって示される内挿を行う範囲は、排他的NOR回路146の出力(内挿を行う範囲:“0”)によって示される(図13(e))。排他的NOR回路146の出力が“0”を示す期間のうちの階調データD0が“0”を示す期間(図13(d))が、内挿を行う期間として制御信号CTRLが“0”となる(図13(f))。この制御信号CTRLによりスイッチSW11〜SW18が制御され、差動増幅器100は入力電圧VINを入力して(図13(a))、出力電圧VOUTを出力する(図13(b))。
【0052】
階調データD7〜D3が“00000”または“11111”(図13(c))、階調データD0が“1”のとき(図13(d))、出力ノードDAO1、DAO2に同じ電圧が出力される。すなわち、入力ノードIN1、IN2に同じ入力電圧VIN1、VIN2が印加されるとき(図13(a))、制御信号CTRLは“H”を示し(図13(f))、スイッチSW11〜SW18は、オン(閉成)状態になる。このとき、入力段110は、図3に示される入力段510と同じように動作する。
【0053】
階調データD7〜D3が“00001”〜“11110”(図13(c))、かつ、階調データD0が“0”(図13(d))のとき、出力ノードDAO1、DAO2に異なる電圧が出力される。すなわち、入力ノードIN1、IN2に異なる入力電圧VIN1、VIN2が印加されるとき(図13(a))、制御信号CTRLは“L”を示し(図13(f))、スイッチSW11〜SW18は、オフ(開放)状態になる。このとき、入力段110のトランジスタMN11〜MN14、MP11〜MP14には、トランジスタMN15〜MN18、MP15〜MP18に流れていた電流も流れるため、2倍の電流が流れることになる。
【0054】
このように、スイッチSW11〜SW18がオン・オフすることにより、入力段110の特性が切り替わる。前述の通り、本実施の形態では、差動増幅器100のトランジスタMN11、MN15のW寸法(チャネル幅)は等しく、図3に示される差動増幅器500のトランジスタMN51のW寸法(チャネル幅)を2等分した寸法になっている。スイッチSW11がオフしている時はトランジスタMN15の経路が遮断されてトランジスタMN11だけが動作し、トランジスタのW寸法(チャネル幅)は、トランジスタMN51のW寸法の1/2相当になる。スイッチSW11がオンしているときは、トランジスタMN11、MN15が動作し、トランジスタのW寸法(チャネル幅)は、元のトランジスタMN51のW寸法と同等になる。同様に、トランジスタMN12〜MN14、MP11〜MP14のW寸法(チャネル幅)と、トランジスタMN16〜MN18、MP15〜MP18のW寸法(チャネル幅)とは等しく、トランジスタMN52〜MN54、MP51〜MP54のW寸法(チャネル幅)を2等分した寸法となっている。したがって、スイッチSW12〜SW18のオン・オフによってトランジスタのW寸法(チャネル幅)が切り替わることになる。
【0055】
スイッチSW11〜SW18がオン状態、オフ状態における、入力段の差動回路に流れる電流と入力電圧との関係を図6と同じ条件で測定して比較すると、図14に示されるようになる。すなわち、図14には、差動増幅器100をコンパレータとして、入力電圧VINと電圧(VDD/2)とを比較動作させるときの各差動回路に流れる電流が示される。Nチャネル差動回路に流れる電流IdsN1±、IdsN2±について、図14(a)には、スイッチSW11〜SW14がオン状態のときの電流が、図14(b)には、スイッチSW11〜SW14がオフ状態のときの電流が示される。Pチャネル差動回路に流れる電流IdsP1±、IdsP2±について、図14(c)には、スイッチSW15〜SW18がオン状態のときの電流が、図14(d)には、スイッチSW15〜SW18がオフ状態のときの電流が示される。図14(e)には、入力電圧と出力電圧との関係が示される。
【0056】
図14(a)〜(d)に示されるように、スイッチSW11〜SW18がオフ状態である方が、入力電圧に対する差動電流の傾きが緩くなり、結果として入力電圧範囲が広がる。トランジスタMN11、MN15を1つのトランジスタとみると、スイッチSW11がオフのときのトランジスタのW寸法(チャネル幅)は半分となるため、β(=μ×Cox×W/L)が小さくなる。したがって、入力電圧範囲を示す±√(2Iss/β)が大きくなると考えることができる。また、トランジスタMN11単体で考えると、トランジスタMN11に流れる電流Issが、遮断されたトランジスタMN15の分も流れて2倍になり、±√(2Iss/β)が大きくなるともいえる。
【0057】
スイッチSW11〜SW18がオン状態とオフ状態において、入力段の差動回路に流れる電流と入力電圧との関係を図7と同じ条件で測定して比較すると、図15に示されるようになる。すなわち、図15には、内挿電圧差を0.5ボルトに保ってコンパレータ動作をさせる場合の各差動回路に流れる電流が示される。Nチャネル差動回路に流れる電流IdsN1±、IdsN2±について、図15(a)には、スイッチSW11〜SW14がオン状態のときの電流が、図15(b)には、スイッチSW11〜SW14がオフ状態のときの電流が示される。Pチャネル差動回路に流れる電流IdsP1±、IdsP2±について、図15(c)には、スイッチSW15〜SW18がオン状態のときの電流が、図15(d)には、スイッチSW15〜SW18がオフ状態のときの電流が示される。図15(e)には、入力電圧と出力電圧との関係が示される。
【0058】
スイッチSW11〜SW18がオフの場合、入力電圧範囲が広がり、出力電圧VOUTが電圧VSSから電圧VDDに切り替わる付近の入力電圧範囲のオーバーラップ量が、スイッチSW11〜SW18がオンのときと比べて多くなる。負帰還で使用する場合、図15に示されるように、出力電圧VOUTが電圧VSSから電圧VDDに切り替わる入力電圧付近で収束動作する。スイッチSW11〜SW18がオフ状態の回路では、上述のように入力電圧範囲がオーバーラップし、入力段110は入力電圧範囲内で動作する。その結果、差動入力回路として機能することになり、期待通りの内挿動作が行われて入出力間オフセット電圧の劣化が改善できる。
【0059】
スイッチSW11〜SW18がオン状態とオフ状態において、入力段の差動回路に流れる電流と入力電圧との関係を図5と同じ条件で測定して比較すると、図16に示されるようになる。すなわち、図16には、内挿電圧差を0ボルトおよび0.5ボルトに固定した時の各差動回路に流れる電流が示される。図16(a)には、スイッチSW11〜SW14がオン状態のときの、図16(b)には、スイッチSW11〜SW14がオフのときのNチャネル差動回路に流れる電流IdsN1±、IdsN2±が示される。図16(c)には、スイッチSW15〜SW18がオン状態のときの、図16(d)には、スイッチSW15〜SW18がオフ状態のときのPチャネル差動回路に流れる電流IdsP1±、IdsP2±が示される。
【0060】
図16(a)に示されるように、スイッチSW11〜SW14がオン状態のとき、Nチャネル差動回路に流れる電流IdsN1−、IdsN2+は、遮断されているが、スイッチSW11〜SW14がオフ状態のときは、図16(b)に示されるように、Nチャネル差動回路に流れる電流IdsN1−、IdsN2+は、流れている。Pチャネル差動回路に流れる電流IdsP1+、IdsP2−も同様に、図16(c)に示されるように、スイッチSW15〜SW18がオン状態では遮断されているのに対し、図16(d)に示されるようにスイッチSW15〜SW18がオフ状態では電流が流れる。これは差動回路の入力電圧範囲内で動作していることを示している。すなわち、スイッチSW11〜SW18がオフされることにより入力電圧範囲が広がり、同じドレイン電流でも差動回路が機能する。
【0061】
入出力間オフセット電圧と入力電圧との関係は、内挿電圧差を0.5ボルトにして、スイッチSW11〜SW18がオン状態のときとオフ状態のときを比較すると、図17に示されるようになる。スイッチがオフ状態のときは、オン状態のときに比べて、入出力間オフセット電圧の劣化が抑えられている。
【0062】
また、出力偏差波形は、内挿電圧差を0.5ボルトにして、スイッチSW11〜SW18がオン状態のときとオフ状態のときを比較すると、図18に示されるようになる。オフ状態のときは、オン状態のときに比べて、出力偏差の劣化が抑えられている。
【0063】
さらに、振幅差偏差波形は、内挿電圧差を0.5ボルトにして、スイッチSW11〜SW18がオン状態のときとオフ状態のときを比較すると、図19に示されるようになる。オフ状態のときは、オン状態の回路に比べて、振幅差偏差の劣化が抑えられている。このように、内挿動作をするときには、スイッチSW11〜SW18をオフにして入力電圧範囲を広げて性能の劣化を抑制し、内挿動作をしないときはスイッチSW11〜SW18をオンにしてトランジスタの特性の相対ばらつきを小さくして安定化することができる。
【0064】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る差動増幅器の構成が図20に示される。第1の実施の形態では、トランジスタがスイッチ制御によって並列に接続されるが、第2の実施の形態では、トランジスタがスイッチ制御によって直列に接続される。SW制御回路240は、図10または図12に示されるように、第1の実施の形態におけるSW制御回路140と同じであり、説明を省略する。
【0065】
第2の実施の形態に係る差動増幅器200は、入力段210、中間段220、出力段230を備える。中間段220および出力段230は、第1の実施の形態と同様に、図1に示される中間段320、出力段330と同じ構成であり、詳細な説明は省略する。入力段210は、図3に示される入力段310と比べると、トランジスタMN51〜MN54、MP51〜MP54がそれぞれ2個の直列接続されるトランジスタを含み、スイッチSW21〜SW28が追加されている。したがって、入力段210は、NチャネルMOSトランジスタMN21〜MN28と、PチャネルMOSトランジスタMP21〜MP28と、定電流源I21〜I24と、スイッチSW21〜SW28とを備え、4つの差動回路に分けられる。また、スイッチSW21〜SW28を制御するSW制御回路240が設けられる。スイッチSW21〜28は、SW制御回路240から出力される制御信号CTRLに基づいて回路の開閉が制御され、制御信号CTRLが“H”を示すときにオン(閉成)、“L”を示すときにオフ(開放)となる。
【0066】
第1の差動回路は、Nチャネル差動回路であり、トランジスタMN21、MN22、MN25、MN26と、定電流源I21と、スイッチSW21、SW22とを備える。トランジスタMN21、MN25は、定電流源I21と中間段220のノードaとの間に直列に接続される。トランジスタMN21のソースは、定電流源I21を介して電源電圧VSSに接続される。トランジスタMN25のドレインは、中間段220のノードaに接続される。トランジスタMN25のソースと中間段220のノードaとの間にスイッチSW21が、トランジスタMN25と並列に接続される。スイッチSW21は、回路を閉成すると、トランジスタMN25をバイパスする。トランジスタMN21、MN25のゲートは、出力ノードOUTに接続され、出力電圧VOUTが印加される。トランジスタMN22、MN26は、定電流源I21と中間段220のノードbとの間に直列に接続される。トランジスタMN22のソースは、定電流源I21を介して電源電圧VSSに接続される。トランジスタMN26のドレインは、中間段220のノードbに接続される。トランジスタMN26のソースと中間段220のノードbとの間にスイッチSW22が、トランジスタMN26と並列に接続される。スイッチSW22は、回路を閉成すると、トランジスタMN26をバイパスする。トランジスタMN22、MN26のゲートは、入力ノードIN1に接続され、入力電圧VIN1が印加される。
【0067】
第2の差動回路は、Nチャネル差動回路であり、トランジスタMN23、MN24、MN27、MN28と、定電流源I22と、スイッチSW23、SW24とを備える。トランジスタMN23、MN27は、定電流源I22と中間段220のノードaとの間に直列に接続される。トランジスタMN23のソースは、定電流源I22を介して電源電圧VSSに接続される。トランジスタMN27のドレインは、中間段220のノードaに接続される。トランジスタMN27のソースと中間段220のノードaとの間にスイッチSW22が、トランジスタMN27と並列に接続される。スイッチSW22は、回路を閉成すると、トランジスタMN27をバイパスする。トランジスタMN23、MN27のゲートは、出力ノードOUTに接続され、出力電圧VOUTが印加される。トランジスタMN24、MN28は、定電流源I22と中間段220のノードbとの間に直列に接続される。トランジスタMN24のソースは、定電流源I22を介して電源電圧VSSに接続される。トランジスタMN28のドレインは、中間段220のノードbに接続される。トランジスタMN28のソースと中間段220のノードbとの間にスイッチSW24が、トランジスタMN28と並列に接続される。スイッチSW24は、回路を閉成すると、トランジスタMN28をバイパスする。トランジスタMN24、MN28のゲートは、入力ノードIN2に接続され、入力電圧VIN2が印加される。
【0068】
第3の差動回路は、Pチャネル差動回路であり、トランジスタMP21、MP22、MP25、MP26と、定電流源I23と、スイッチSW25、SW26とを備える。トランジスタMP21、MP25は、定電流源I23と中間段220のノードdとの間に直列に接続される。トランジスタMP21のソースは、定電流源I23を介して電源電圧VDDに接続される。トランジスタMP25のドレインは、中間段220のノードdに接続される。トランジスタMP25のソースと中間段220のノードdとの間にスイッチSW25が、トランジスタMP25と並列に接続される。スイッチSW25は、回路を閉成すると、トランジスタMP25をバイパスする。トランジスタMP21、MP25のゲートは、出力ノードOUTに接続され、出力電圧VOUTが印加される。トランジスタMP22、MP26は、定電流源I23と中間段220のノードcとの間に直列に接続される。トランジスタMP22のソースは、定電流源I23を介して電源電圧VDDに接続される。トランジスタMP26のドレインは、中間段220のノードcに接続される。トランジスタMP26のソースと中間段220のノードcとの間にスイッチSW26が、トランジスタMP26と並列に接続される。スイッチSW26は、回路を閉成すると、トランジスタMP26をバイパスする。トランジスタMP22、MP26のゲートは、入力ノードIN1に接続され、入力電圧VIN1が印加される。
【0069】
第4の差動回路は、Pチャネル差動回路であり、トランジスタMP23、MP24、MP27、MP28と、定電流源I24と、スイッチSW27、SW28とを備える。トランジスタMP23、MP27は、定電流源I24と中間段220のノードdとの間に直列に接続される。トランジスタMP23のソースは、定電流源I24を介して電源電圧VDDに接続される。トランジスタMP27のドレインは、中間段220のノードdに接続される。トランジスタMP27のソースと中間段220のノードdとの間にスイッチSW27が、トランジスタMP27と並列に接続される。スイッチSW27は、回路を閉成すると、トランジスタMP27をバイパスする。トランジスタMP23、MP27のゲートは、出力ノードOUTに接続されて出力電圧VOUTが印加される。トランジスタMP24、MP28は、定電流源I24と中間段220のノードcとの間に直列に接続される。トランジスタMP24のソースは、定電流源I24を介して電源電圧VDDに接続される。トランジスタMP28のドレインは、中間段220のノードcに接続される。トランジスタMP28のソースと中間段220のノードcとの間にスイッチSW28が、トランジスタMP28と並列に接続される。スイッチSW28は、回路を閉成すると、トランジスタMP28をバイパスする。トランジスタMP24、MP28のゲートは、入力ノードIN2に接続され、入力電圧VIN2が印加される。
【0070】
直列に接続されるトランジスタのサイズは等しく、例えば、トランジスタMN21、MN25は、図3に示されるトランジスタMN51と同一のサイズのトランジスタを2個直列接続した回路になる。スイッチSW21がオン状態のとき(閉成されているとき)、トランジスタMN15はバイパスされ、トランジスタMN11だけ動作し、トランジスタMN51と同等の動作をする。スイッチSW21がオフ状態のとき(開放されているとき)、トランジスタMN21、MN25は直列に接続される。これは、トランジスタMN51のL寸法(チャネル長)が2倍になったのと同じ状態である。同様に、トランジスタMN22〜24、トランジスタMP21〜24にも、それぞれ同じサイズのトランジスタMN26〜MN28、トランジスタMP25〜MP28が直列に接続される。これにより、直列接続される2個のトランジスタを1トランジスタとしてみると、スイッチSW21〜28がオフ状態のときは、差動回路の各トランジスタのL寸法(チャネル長)は、スイッチSW21〜SW28がオンのときと比べて2倍になる。このとき、β=μ×Cox×W/Lが小さくなり、√(2Iss/β)が大きくなる。前述の通り、入力電圧範囲は、±√(2Iss/β)で示されるため、スイッチSW21〜SW28がオフ状態のときの入力電圧範囲は、スイッチSW21〜SW28がオン状態のときより広くなる。
【0071】
内挿電圧差を0.5ボルトにして、入出力間オフセット電圧と入力電圧との関係を、スイッチSW21〜SW28がオン状態とオフ状態において比較すると、図21に示されるようになる。スイッチSW21〜SW28がオフ状態のときは、スイッチSW21〜SW28がオン状態のときに比べ入出力間オフセット電圧の劣化が抑えられる。
【0072】
また、図22に示されるように、例えば、トランジスタMN51をトランジスタMN65、MN66に2分割して直並列接続させることにより、上記同様に入力電圧範囲を拡大することができる。この場合、トランジスタMN51は、トランジスタMN65、MN66と、スイッチSW63、SW64、SW65とを含む実効的トランジスタ回路に置き換えられる。トランジスタMN65、MN66のドレインはスイッチSW63を介して接続され、トランジスタMN65、MN66のソースはスイッチSW64を介して接続される。トランジスタMN65のソースと、トランジスタMN66のドレインはスイッチSW65を介して接続される。トランジスタMN65のドレインがトランジスタMN51のドレインに相当し、トランジスタMN66のソースがトランジスタMN51のソースに相当する。トランジスタMN65、MN66のゲートは接続されて、トランジスタMN51のゲートに相当する。
【0073】
制御信号CTRLが“H”のとき、スイッチSW63、SW64は回路を閉成し、スイッチSW65は回路を開放し、トランジスタMN65、MN66は並列に接続される。制御信号CTRLが“L”のとき、スイッチSW63、SW64は回路を開放し、スイッチSW65は回路を閉成し、トランジスタMN65、MN66は直列接続される。このように接続を切り替えることにより、β(=μ×Cox×W/L)を小さく、入力電圧範囲を示す±√(2Iss/β)を大きくすることができ、同じトランジスタのサイズ、同じテール電流であっても、入力電圧範囲を広げることができる。Pチャネルのトランジスタについても同様である。すなわち、広い入力電圧範囲を必要とする内挿機能を有する差動増幅器を、内挿を使用しない差動増幅器と同様のテール電流で動作させることができ、消費電流を削減することができる。入力電圧範囲を広げる必要のある時だけβを小さくするようにスイッチを切り替えることにより、より少ないテール電流で安定した差動増幅器を得ることができる。ここでは、Rail−to−Rail増幅器について説明したが、入力段としてNチャネルまたはPチャネルの差動回路のみを有する差動増幅器に適用することも可能である。
【0074】
このように、内挿機能を有する差動増幅器において、内挿機能使用時に入力段を構成するトランジスタのディメンション(W/L)を小さくするように制御し、許容入力電圧範囲を拡張することにより、出力電圧全範囲での入出力間オフセット電圧差の絶対値(内挿機能使用/不使用を含めた場合の平均)、相対値(内挿機能使用と不使用との場合の平均の差)を改善することができる。入出力間オフセット電圧差の改善により、パネル画質を向上させることができる。また、上記実施の形態では、Nチャネル差動回路とPチャネル差動回路とを有するRail−to−Rail増幅器について説明したが、Nチャネル差動回路あるいはPチャネル差動回路の一方を有する差動増幅器に適用することも可能である。
【0075】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、上記実施の形態は、矛盾のない限り組み合わせて実施可能である。また、本願発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0076】
100、200、300、400、500 差動増幅器
110、210、310、410、510 入力段
120、220、320、420、520 中間段
130、230、330、430、530 出力段
140、240 SW制御回路
141、142 レベルシフト回路
144 OR回路
146 排他的NOR回路
C1、C2 位相補償容量
I11〜I14、I21〜I24、I41、I42 定電流源
MN11〜MN18、MN21〜MN28、MN30〜MN39、MN41、MN42、MN51〜MN54、MN65、MN66 トランジスタ
MP11〜MP18、MP21〜MP28、MP30〜MP39、MP41、MP42、MP51〜MP54 トランジスタ
SW11〜SW18、SW21〜SW28、SW63〜SW65 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力信号と出力信号とを差動入力信号とする第1導電型の第1差動回路と、
第2入力信号と前記出力信号とを差動入力信号とする前記第1導電型の第2差動回路と、
前記第1入力信号と前記出力信号とを差動入力信号とする第2導電型の第3差動回路と、
前記第2入力信号と前記出力信号とを差動入力信号とする前記第2導電型の第4差動回路と、
前記第1乃至第4差動回路の出力に基づいて前記出力信号を出力する出力段回路と
を具備し、制御信号に基づいて、前記第1乃至第4差動回路を形成するトランジスタのチャネル長とチャネル幅との比を変更する
差動増幅器。
【請求項2】
前記第1入力信号と前記第2入力信号とが同電圧か異電圧かを示す前記制御信号を生成するSW制御回路をさらに具備する
請求項1に記載の差動増幅器。
【請求項3】
前記第1差動回路および前記第2差動回路は、
前記第1導電型の差動対を形成する第1および第2トランジスタと、
ソースを前記第1トランジスタのソースに接続され、ドレインを前記第1トランジスタのドレインに第1スイッチを介して接続され、ゲートを前記第1トランジスタのゲートに接続される第3トランジスタと、
ソースを前記第2トランジスタのソースに接続され、ドレインを前記第2トランジスタのドレインに第2スイッチを介して接続され、ゲートを前記第2トランジスタのゲートに接続される第4トランジスタと
をそれぞれ備え、
前記第3差動回路および前記第4差動回路は、
前記第2導電型の差動対を形成する第5および第6トランジスタと、
ソースを前記第5トランジスタのソースに接続され、ドレインを前記第5トランジスタのドレインに第3スイッチを介して接続され、ゲートを前記第5トランジスタのゲートに接続される第7トランジスタと、
ソースを前記第6トランジスタのソースに接続され、ドレインを前記第6トランジスタのドレインに第4スイッチを介して接続され、ゲートを前記第6トランジスタのゲートに接続される第8トランジスタと
をそれぞれ備え、
前記第1乃至第4スイッチにより回路を開閉して前記比を変更する
請求項1または請求項2に記載の差動増幅器。
【請求項4】
前記第1差動回路および前記第2差動回路は、
前記第1導電型の差動対を形成する第9および第10トランジスタと、
前記第9トランジスタのドレインと中間段回路との間に直列に接続される第11トランジスタと、
前記第11トランジスタと並列に接続され、回路を閉成して前記第11トランジスタをバイパスする第5スイッチと、
前記第10トランジスタのドレインと前記中間段回路との間に直列に接続される第12トランジスタと、
前記第12トランジスタと並列に接続され、回路を閉成して前記第12トランジスタをバイパスする第6スイッチと
をそれぞれ備え、
前記第3差動回路および前記第4差動回路は、
前記第2導電型の差動対を形成する第13および第14トランジスタと、
前記第13トランジスタのドレインと前記中間段回路との間に直列に接続される第15トランジスタと、
前記第15トランジスタと並列に接続され、回路を閉成して前記第15トランジスタをバイパスする第7スイッチと、
前記第14トランジスタのドレインと前記中間段回路との間に直列に接続される第16トランジスタと、
前記第16トランジスタと並列に接続され、回路を閉成して前記第16トランジスタをバイパスする第8スイッチと
をそれぞれ備え、
前記第5乃至第8スイッチにより回路を開閉して前記比を変更する
請求項1または請求項2に記載の差動増幅器。
【請求項5】
前記第1差動回路および前記第2差動回路は、前記第1導電型の差動対を形成する第1トランジスタ回路と、第2トランジスタ回路とをそれぞれ備え、
前記第1および第2トランジスタ回路は、
直列接続される前記第1導電型の第17および第18トランジスタと、
前記第17トランジスタのソースと前記第18トランジスタのドレインとの間に直列に接続される第9スイッチと、
前記第17トランジスタのドレインと前記第18トランジスタのドレインとの間に接続される第10スイッチと、
前記第17トランジスタのソースと前記第8トランジスタのソースとの間に接続される第11スイッチと
をそれぞれ含み、
前記第3および第4差動回路は、前記第2導電型の差動対を形成する第3トランジスタ回路と、第4トランジスタ回路とをそれぞれ備え、
前記第3および第4トランジスタ回路は、
直列接続される前記第2導電型の第19および第20トランジスタと、
前記第19トランジスタのソースと前記第20トランジスタのドレインとの間に直列に接続される第12スイッチと、
前記第19トランジスタのドレインと前記第20トランジスタのドレインとの間に接続される第13スイッチと、
前記第19トランジスタのソースと前記第20トランジスタのソースとの間に接続される第14スイッチと
をそれぞれ含み、
前記第9乃至第14スイッチにより回路を開閉して前記比を変更する
請求項1または請求項2に記載の差動増幅器。
【請求項6】
前記第1差動回路および前記第2差動回路に含まれる前記第1導電型のトランジスタは同じチャネル長、同じチャネル幅を有し、
前記第3差動回路および前記第4差動回路に含まれる前記第2導電型のトランジスタは同じチャネル長、同じチャネル幅を有する
請求項1から請求項5のいずれかに記載の差動増幅器。
【請求項7】
第1入力信号と出力信号とを差動入力信号とする第1導電型の第1差動回路と、
第2入力信号と前記出力信号とを差動入力信号とする前記第1導電型の第2差動回路と、
前記第1差動回路および第2差動回路の出力に基づいて前記出力信号を出力する出力段回路と
を具備し、前記第1入力信号と前記第2入力信号とが同電圧のときと異電圧のときとにおいて、前記第1および第2差動回路に含まれるトランジスタのチャネル長とチャネル幅との比を変える
差動増幅器。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の差動増幅器を搭載し、
前記第1入力信号として第1階調電圧を印加し、前記第2入力信号として第2階調電圧を印加する
液晶表示装置の駆動回路。
【請求項9】
第1入力信号をゲートに印加される第1トランジスタ群回路と、出力信号をゲートに印加される第2トランジスタ群回路とを備える第1差動回路と、
第2入力信号をゲートに印加される第3トランジスタ群回路と、前記出力信号をゲートに印加される第4トランジスタ群回路とを備える第2差動回路と、
前記第1差動回路の出力と前記第2差動回路の出力とに基づいて、前記出力信号を出力する出力段回路と
を具備し、
前記第1乃至第4トランジスタ群回路は、制御信号に基づいてそれぞれ接続を切り替えて実効的なチャネル長とチャネル幅との比を変更する
差動増幅器。
【請求項10】
前記制御信号は、前記第1入力信号と前記第2入力信号とが同電圧か異電圧かを示し、
前記第1乃至第4トランジスタ群は、前記第1入力信号の電圧と前記第2入力信号の電圧との同異に基づいてそれぞれ接続を切り替える
請求項9に記載の差動増幅器。
【請求項11】
前記第1乃至第4トランジスタ群回路の各々は、
並列に接続される第1および第2トランジスタと、
前記第1トランジスタのドレインと前記第2トランジスタのドレインとの間に接続される第1スイッチと
を備え、
前記第1スイッチは、回路を開放して前記第2トランジスタを遮断する
請求項9または請求項10に記載の差動増幅器。
【請求項12】
前記第1乃至第4トランジスタ群回路の各々は、
ゲートが共通に接続される第3および第4トランジスタと、
前記第3トランジスタのドレインと前記第4トランジスタのドレインとの間に設けられる第2スイッチと、
前記第3トランジスタのソースと前記第4トランジスタのソースとの間に設けられる第3スイッチと、
前記第3トランジスタのソースと前記第4トランジスタのドレインとの間に設けられる第4スイッチと
を備え、
前記第2乃至第4スイッチが回路を開閉することにより、前記第3トランジスタのドレインと前記第4トランジスタのソースとの間に、前記第3トランジスタと前記第4トランジスタとの接続が直列接続と並列接続とに切り替わる
請求項9または請求項10に記載の差動増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−77959(P2013−77959A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216381(P2011−216381)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】