説明

液晶表示装置及びその製造方法

【課題】 低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電対膜による増反射効果を十分に発揮させることができる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 画素電極12と該画素電極を駆動する駆動回路とがマトリックス状に配列された駆動基板14と、対向電極16が形成された透明基板34とを、画素電極と対向電極とが対向するように間に液晶LCを挟んで接合してなる液晶3示装置において、前記画素電極の画素間隙に誘電体を設け、該誘電体と前記画素電極との間の高低差の位相差が0.2λ(λ:読み出し光の波長)以下とし、更に前記画素電極の形成された画素エリア全体に第1の誘電体膜と、該第1の誘電体膜より高屈折率な第2の誘電体膜とを積層する。これにより、使用波長において増反射効果を生ぜしめる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオプロジェクタ等の大画面ディスプレイに用いる反射型の液晶表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、屋外公衆用や管制業務用のディスプレイ、また、ハイビジョン等の高精細映像の表示用ディスプレイ、或いは投射プロジェクタ等のように、映像を大画面に表示するための投射型表示装置の要望が高まっている。
その投射型表示装置には、大別すると、透過方式と反射方式のものがあるが、双方の方式とも、LCD(Liquid Crystal Display)、すなわち、液晶表示装置が用いられ、この液晶表示装置に読み出し光を入射させ、その入射光を映像信号に対応させて画素単位で変調することにより投射光を得るようになっている(例えば特許文献1、2、3、4、5)。
【0003】
ここで、反射型の液晶表示装置を用いた一般的な投射プロジェクタの一例を説明する。
図11は液晶表示装置を用いたプロジェクタを示す原理図、図12は1つの画素の等価回路図、図13は液晶表示装置の一部を示す部分拡大断面図である。
図11において、このプロジェクタは、読み出し光Lを発生する光源2と、内部に液晶が封入されて画像信号に応じて読み出し光Lを変調させて反射する液晶表示装置4と、上記光源2からの読み出し光Lを偏光させて上記液晶表示装置4に向けて反射させると共に、上記液晶表示装置4からの変調された反射光を透過する偏光ビームスプリッタ6と、この偏光ビームスプリッタ6を透過した光を投射する投射レンズ8とよりなり、この投射レンズ8からの光をスクリーン10上に投射することにより、このスクリーン10に画像を表示するようになっている。
【0004】
上記液晶表示装置4は、表面にマトリックス状に反射型の複数の画素電極(反射電極)12が設けられた駆動基板14と、共通になされた透明な対向電極16との間に液晶LCを封入して構成されており、結果的に複数の画素がマトリックス状に縦横方向に配列されていることになる。従って、上記各画素電極12は、所定の画素間幅だけ離間させて縦横方向へマトリックス状に配列される。
図12は1つの画素の等価回路図を示しており、1つの画素は例えばMOSトランジスタよりなるスイッチングトランジスタTrと、このスイッチングトランジスタTrのドレインDに接続される保持容量Cとを有し、上記ドレインDは画素電極12にも接続されている。
【0005】
そして、上記スイッチングトランジスタTrのソースSは、画像信号が伝送される信号線18に接続され、ゲートGはゲート線20に接続される。これにより、信号線18に画像信号を印加した状態で、ゲート線20によりゲートGをオンしてこの画素を周期的に選択することにより、上記画像信号は保持容量Cに蓄積され、ゲートGをオフしても所定の時間はこの保持容量Cに蓄積された電荷が画素電極12に供給されて、この画素の液晶LCを駆動表示することになる。
【0006】
ここで、図13を参照して液晶表示装置4の断面構造について説明する。前述したように、この液晶表示装置4は、駆動基板14と、対向電極16と、これらの間に封入された液晶LCとを有している。
具体的には、上記駆動基板14は、例えばP型シリコン基板よりなる半導体基板22を有しており、この表面にソースS、ドレインD、ゲートGよりなるスイッチングトランジスタTrが形成され、このトランジスタTrに隣接して保持容量Cを形成し、これにより上記画素電極12を駆動する駆動回路を構成している。
【0007】
また、上記駆動基板14の表面(上面)には、複数の画素電極12がマトリックス状に配置されており、隣り合う画素電極2同士間には僅かな隙間24が設けられており、互いに絶縁状態になされている。この隙間24の幅が画素間幅となる。そして、この画素電極12の下方には、例えばSiO よりなる絶縁層28Aを介して配線も兼ねる遮光層26が設けられており、上記隙間24を介して半導体基板22側へ入ってくる侵入光をできるだけ遮断するようになっている。この遮光層26は、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金により形成される。
【0008】
また、上記遮光層26の下方には、例えば、SiO よりなる絶縁層28Bを介して配線層30が形成されている。当然のこととして、上記配線層30は複数に分割されており、一部は信号線18(図12参照)としてソースSに接続され、他の一部はドレインDと保持容量Cとを接続すると共に、上記遮光層26を介して画素電極12へも接続している。そして、上記画素電極2の上面には配向膜32が形成されている。
【0009】
一方、上記対向電極16は、例えば、透明なガラス板よりなる透明基板34の表面に形成されており、この対向電極16の表面(図中下側)にも配向膜36が形成されている。そして、上述のように形成された画素電極12はこの駆動基板14と対向電極16付きの透明基板34との間にスペーサ(図示せず)を介して液晶LCを封入して液晶表示装置を形成している。そして、上記反射方式の液晶表示装置は、スイッチングトランジスタTrや保持容量C等の駆動回路を画素電極12の下に形成できるため透過方式の液晶表示装置と比較して開口率(表示領域全面に対する光変調に係わる画素領域の占める割合)を大きくとることができ、この効果は画素の大きさが小さくなる程、顕著になる。しかし、この反射型の液晶表示装置でも画素電極同士は互いに間隙(画素間隙)24を隔てて形成しなればならず、原理的にも開口率を100%にすることはできない。例えば、実際の液晶表示装置では画素電極12同士間の間隙24の間隔(画素間幅)L1は0.5〜1μm程度であり、画素ピッチが10μm程度になると、単純に開口率を計算しても81〜90%程度となる。
【0010】
また、このような液晶表示装置では、画像品質の向上を目的として、次のような平坦化処理が行われる場合が多い。
すなわち、図14は、従来の液晶表示装置の画素電極の一部を拡大したものを示し、図13中のA部の拡大図を示している。図15は画素間隙を埋め込む時の従来の工程を示す工程図である。
ここで、図14に示すように、画素電極12はパターンニングにより形成されたものであり、画素間に高さH1が200〜300nm程度の段差がある。そして、配向膜32を形 成して、このまま基板として用いて液晶表示装置を組み立てても良いが、段差が大きいとそこで配向乱れが生じ、画像品質を悪化させる場合がある。
そこで、一般には画質劣化を防止するため、図15に示すように段差の原因となる画素間隙24をSiO 等の絶縁材料40で埋め込んで平坦化処理してから使用される場合が多い。この平坦化処理は、LSIプロセスでは通常用いられている手法である。
【0011】
具体的には、上記平坦化処理は、まず、図15(A)に示すように、駆動基板14上に複数の画素電極12がマトリクス状に配列された状態で、図15(B)に示すように、画素間隙24を十分に埋め尽くす厚さでSiO 等よりなる絶縁材料40を形成する。この成膜方法は、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いることができる。
【0012】
次に、図15(C)に示すように、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法を用いて上記絶縁材料40を平坦にしながら適当な厚さまで研磨する。
更に、図15(D)に示すように、絶縁材料40のみを選択的にエッチングするエッチングガス等を用いてエッチバックを行い、これにより画素電極12上に残ったSiO 膜よりなる絶縁材料40を除去する。そして、この後に、必要に応じて増反射膜を形成し、最後に配向膜を形成することになる。
【0013】
【特許文献1】特開平11−135479号公報
【特許文献2】特開平11−344726号公報
【特許文献3】特開2000−193994号公報
【特許文献4】特表2002−533773号公報
【特許文献5】特開2004−012670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、プロジェクタなどでは、その表示性能として明るさが非常に重要である。明るさを向上する方法としては、光源や光学系の効率が高いことが必要であると同時に、用いられる反射型の液晶表示装置では画素電極の反射率が高いことが基本的に重要である。そして、開口率もできるだけ高いことが重要である。
【0015】
ここで、反射型の液晶表示装置では画素電極の面積そのものが開口率を決定するので開口率を上げるには、単純に画素間幅L1を小さくすればよい。しかし、例えば0.3μmの画素間幅で電極間を高歩留まりに加工するには、0.15μm以下の微細加工技術が必要となる。
ところが、基板の駆動回路の加工にはそこまで微細な加工技術は不要であり、画素加工のためだけにこのような高価な微細加工装置を導入することは大きなコストアップにつながってしまう。
【0016】
また反射率に関しては、一般に画素電極12としてはAlまたはAlCu、AlSiCuなどのアルミニウム合金膜で作られているが、液晶中でのこの画素電極12の反射率は85〜89%程度でかならずしも十分とはいえない。
そこで、アルミニウム合金の代わりに反射率の高い銀合金を電極にする方法が考えられる。ただし、銀合金は加工が難しいため、また、コストも高いため実用化しにくい。この問題を改善する方法として、特許文献5に開示されている銀合金薄膜をアルミニウム合金電極上に積層する方法がある。この方法により、画素電極の反射率は向上される。
図17は、アルミニウム合金膜に銀合金膜を付与した時の分光反射率を示す。ここでは銀合金膜の厚さを0〜100nmまで変化させている。ただし、このような方法で表示装置を作製しても実際の表示システムでは必ずしも数値通りに明るさが向上しない場合があった。この原因を調べた結果、画素電極の反射率は上がっているが同時に回折ロスも増加しているためであることがわかった。
【0017】
さらに、反射率を向上させる別の方法として、特許文献2に開示されているように、画素電極12の上に誘電体多層膜による増反射膜を付与することが提案されている。この方法は、画素電極12上に低屈折率材料膜と高屈折率材料膜を光学膜厚でおよそλ/4の厚さ(λは波長)でそれぞれ積層する方法である。
【0018】
上記増反射膜による増反射効果は、原理的には確実に画素電極の反射率を増加させることができる。
しかしながら、図15(D)に示すエッチバック工程では、画素電極12上に残ったSiO よりなる絶縁材料40の部分的なバラツキを吸収するため、過剰にエッチングするのが普通であり、そのため実際には高さH2が50〜90nmの段差が生ずる場合がある。そして、このような段差が生じた状態で、この段差の上に上記したような増反射膜を形成すると、反射率は増加するものの回折も増加し、この回折による反射率の損失の方が大きくなって、結果的に、表示システムとしての明るさが低下してしまうことがわかった。
この場合、各プロセスを厳密に制御して、段差がほとんどないデバイスを作ることは不可能ではないが、これでは生産性は著しく低下してコストアップにつながってしまうので現実的ではない。従来はこのような制御は不要であり、特に問題はないと考えられていた。
【0019】
本発明は、以上のような問題点に着目し、これを有効に解決すべく創案されたものである。
本発明の目的は、最新の微細加工装置を導入したり、プロセスを厳密に制御するもことなく、画素間隙において段差が生じなくて全面的に平坦化でき、もって低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜による増反射効果を十分に発揮させることができる液晶表示装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者等は、増反射膜の増反射効果について鋭意研究した結果、増反射膜は原理的には確実に画素電極の反射率が増加するはずであるが、画素ピッチが10数μm以下の高微細表示デバイスに適用すると必ずしも効果があるわけではないことが本発明者等の実験により判った。
それは表示デバイスがある一定の画素間隙を有する画素電極で構成されている場合に回折光が発生し、それが無視できない量になるためである。そして、回折強度は画素電極の部分と画素間隙の部分の反射率及び位相差で変わり、例えば、画素電極と画素間隙の部分が 平坦であれば位相差は無い。
しかし、実際の表示デバイスでは加工上の理由から必ず段差が存在し、画素間にも反射膜が付くことにより、かえって回折を増加させていることが判った。
【0021】
図16は、画素間の段差と画素間部(画素間隙)の反射率で回折ロスがどのように変化するかをシミュレーションしたグラフである。
図16において、段差無し(位相差がゼロ)で画素間反射率が100%(画素がない状態)を100%として、段差による位相差と0次光反射率の関係を、画素間反射率をパラメータとして示している。なお、画素ピッチは9.5μm、画素間幅(画素間隙)は0.63μmである。
位相差がゼロなら画素間の反射率が増加した分だけ全体の反射率が上がるのは当然である。しかし、位相差が大きくなると、例えば、画素間反射率が30%もある場合であっても、0.25λ以上になると単純に開口率で決まる反射率87%より小さくなってしまうことが分かる。
【0022】
このような表示装置を、後述する図10に示すような光学系に用いた場合、投射レンズまでの光路長が長いため、高次の回折光が利用出来なくなり、反射光を有効にスクリーンに映し出すことができない。すなわち、結果的に暗くなるのである。
ところで、実際の表示装置はどのようになっているかというと、図14に示すように、画素電極12はパターンニングにより形成されたものであり、画素間に高さH1が200〜300nm程度の段差がある。そして、配向膜32を形成して、このまま基板として用いて液晶表示装置を組み立てても良いが、段差が大きいとそこで配向乱れが生じ、画像品質を悪化させる場合がある。
そこで、一般には画質劣化を防止するため、図15に示すように、段差の原因となる画素間隙24をSiO 等の絶縁材料(誘電体)40で埋め込んで平坦化処理してから使用される場合が多い。そして、反射率を上げるためには、特許文献4に開示されているように、平坦化後に誘電体膜を付加して、増反射構造とする。
【0023】
しかし、平坦化されたといっても実際には小さな段差やうねりがあるものである。LSIプロセスでは歩留りを考慮して、図15(D)のように、必ずオーバエッチングされて、段差H2を生ずる。
また、CMP法を用いても、図15(B)のうねり形状が、ある程度継承されて、図15(C)のような理想的な平坦にはならない。十分に厚い平坦化膜を形成して研磨すれば平坦性は良くなるが、研磨に時間がかかるだけでなく、今度は膜厚分布が悪くなる問題が生ずる。これに対処するためにはオーバエッチングをさらに多くしなければならない。
【0024】
特許文献4などに開示された発明には理想的な平坦な図が掲載されているが、これは真に平坦を意味するものではない。平坦化の目的が配向不良を無くし画質を向上するためなので、多少の凹凸があっても目的は達せられ、十分平坦であると表現しても間違いではない。
特許文献4中の図5は、本発明との目的の違いを明確に示しており、このような形状は画質向上には効果があり、画素の反射率は確かに向上するが、プロジェクタとしての明るさ向上には逆効果になる場合がある。
本発明者等は、以上のような知見を得ることにより、本発明に至ったものである。
【0025】
請求項1に係る発明は、画素電極と該画素電極を駆動する駆動回路とがマトリックス状に配列された駆動基板と、対向電極が形成された透明基板とを、前記画素電極と対向電極とが対向するように間に液晶を挟んで接合してなる液晶表示装置において、前記画素電極の画素間隙に誘電体を設け、該誘電体と前記画素電極との間の高低差の位相差が0.2λ(λ:読み出し光の波長)以下とし、更に前記画素電極の形成された画素エリア全体に第1の誘電体膜と、該第1の誘電体膜より高屈折率な第2の誘電体膜とを積層したことを特徴とする液晶表示装置である。
【0026】
請求項2に係る発明は、画素電極と該画素電極を駆動する駆動回路とがマトリックス状に配列された駆動基板と、対向電極が形成された透明基板とを、前記画素電極と対向電極とが対向するように間に液晶を挟んで接合してなる液晶表示装置の製造方法において、前記画素間隙を埋め込むと同時に前記画素電極上に埋め込み用の誘電体層を形成する埋め込み工程と、前記誘電体層の表面を平坦化する平坦化工程と、前記誘電体層と前記画素電極に対するエッチング選択比が実質的に同じ条件で少なくとも前記画素電極が露出するまで前記誘電体層をエッチングするエッチング工程と、表面全体に第1の誘電体膜を所定の厚さで形成する工程と、該第1の誘電体膜上に第2の誘電体膜を所定の厚さで形成する工程と、を備えたことを特徴とする液晶表示装置の製造方法である。
【0027】
請求項3に係る発明は、画素電極と該画素電極を駆動する駆動回路とがマトリックス状に配列された駆動基板と、対向電極が形成された透明基板とを、前記画素電極と対向電極とが対向するように間に液晶を挟んで接合してなる液晶表示装置において、前記画素電極上および画素間隙に誘電体を設けて第1の誘電体膜を形成し、該第1の誘電体膜の画素電極上と前記画素間隙における表面の高低差による位相差が0.2λ(λ:読み出し光の波長)以下とし、前記第1の誘電体膜上に前記第1の誘電体膜よりも高屈折率な第2の誘電体膜を積層したことを特徴とする液晶表示装置である。
【0028】
請求項4に係る発明は、画素電極と該画素電極を駆動する駆動回路とがマトリックス状に配列された駆動基板と、対向電極が形成された透明基板とを、前記画素電極と対向電極とが対向するように間に液晶を挟んで接合してなる液晶表示装置の製造方法において、前記画素間隙を埋め込むと同時に前記画素電極上に誘電体層を形成する埋め込み工程と、前記誘電体層の表面を所定の厚さになるまで平坦化して前記第1の誘電体膜とする平坦化工程と、該第1の誘電体膜上に第2の誘電体膜を所定の厚さで形成する工程と、を備える。
【0029】
請求項5に係る発明は、請求項1記載の液晶表示装置において、前記画素電極がアルミニウム合金電極上に20〜50nmの厚さの銀合金膜が積層されたものである。
請求項6に係る発明は、請求項1記載の液晶表示装置において、前記前記第1及び第2の誘電体膜の膜厚を、前記読み出し光の波長λにおいて略λ/4にそれぞれ設定した。
請求項7に係る発明は、請求項3記載の液晶表示装置において、前記前記第1及び第2の誘電体膜の膜厚を、前記読み出し光の波長λにおいて略λ/4にそれぞれ設定した。
【0030】
請求項8に係る発明は、画素電極と該画素電極を駆動する駆動回路とがマトリックス状に配列された駆動基板と、対向電極が形成された透明基板とを、前記画素電極と対向電極とが対向するように間に液晶を挟んで接合してなる液晶表示装置の製造方法において、前記画素間隙を埋め込むと同時に前記画素電極上に埋め込み用の誘電体層を形成する埋め込み工程と、前記誘電体層の表面を平坦化する平坦化工程と、前記画素電極が露出するまで前記誘電体層をエッチングするエッチング工程と、前記画素電極のみをエッチングするエッチング工程と、表面全体に第1の誘電体膜を所定の厚さで形成する工程と、該第1の誘電体膜上に第2の誘電体膜を所定の厚さで形成する工程と、を備えたことを特徴とする液晶表示装置の製造方法である。
【0031】
請求項9に係る発明は、画素電極と該画素電極を駆動する駆動回路とがマトリックス状に配列された駆動基板と、対向電極が形成された透明基板とを、前記画素電極と対向電極とが対向するように間に液晶を挟んで接合してなる液晶表示装置の製造方法において、前記画素電極上に所定の厚さを有するカバー層を形成するカバー層形成工程と、前記画素間隙を埋め込むと同時に前記カバー層を備えた画素電極上に埋め込み用の誘電体層を形成する埋め込み工程と、前記誘電体層の表面を平坦化する平坦化工程と、前記カバー層が露出するまで前記誘電体層をエッチングするエッチング工程と、前記カバー層のみをエッチングするエッチング工程と、表面全体に第1の誘電体膜を所定の厚さで形成する工程と、該第1の誘電体膜上に第2の誘電体膜を所定の厚さで形成する工程と、を備えたことを特徴とする液晶表示装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る液晶表示装置及び製造方法によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。
本発明によれば、画素電極上と画素電極同士の間である画素間隙上とを含んでその表面が平坦になるように形成された第1の誘電体膜と、第1の誘電体膜上に形成されて第1の誘電体膜よりも高い屈折率を有する第2の誘電体膜とを形成し、また、第1及び第2の誘電体膜の膜厚を、読み出し光の波長(使用波長)λにおいて略λ/4にそれぞれ設定したので、増反射効果を生ずることになり、この結果、最新の微細加工装置を導入したり、プロセスを厳密に制御することなく、画素間隙において段差が生じなくて全面的に平坦化でき、もって低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜による増反射効果を十分に発揮させることができる。
更にまた、画素電極に銀含有膜を用いることにより反射率を更に高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明に係る液晶表示装置及びその製造方法の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。
図1は本発明に係る液晶表示装置の第1及び第2実施例の複数の画素電極の部分を拡大した拡大図、図2は本発明に係る液晶表示装置の第1実施例の主要部を製造するための工程を説明する工程図、図3は本発明に係る液晶表示装置の第2実施例の主要部を製造するための工程を説明する工程図、図4は本発明に係る液晶表示装置の第2実施例の変形例1の主要部を製造するための工程を説明する工程図、図5は本発明に係る液晶表示装置の第2実施例の変形例2の主要部を製造するための工程を説明する工程図、図6は本発明に係る液晶表示装置の第3実施例の主要部を製造するための工程を説明する工程図、図7は図6に示す本発明装置の第3実施例の主要部を製造するための工程を更に詳しく説明する工程図、図8は本発明に係る液晶表示装置の第3実施例の変形例の主要部を製造するための工程を説明する工程図、図9は図8に示す本発明装置の第3実施例の変形例の主要部を製造するための工程を更に詳しく説明する工程図である。
尚、図11〜図15に示す構成部分と同一構成部分については、同一参照符号を付してその説明を省略する。
【0034】
本発明に係る液晶表示装置は、画素電極12上に第1の誘電体膜を平坦状態で形成し、この上に屈折率の大きな第2の誘電体膜を積層した点を除き、図11〜図15を参照して説明した従来の液晶表示装置と全く同様に構成されているので、その説明を省略し、ここでは画素電極12上の増反射率膜の積層構造について詳しく説明する。
図1(A)は本発明の液晶表示装置の第1実施例を示し、図1(B)は本発明の液晶表示装置の第2実施例を示している。
すなわち、本発明の液晶表示装置の第1実施例においては、図1(A)に示すように、駆動基板14の絶縁層28A上に形成された方形状の画素電極12同士の間である画素間隙24(図15参照)は絶縁材料40で埋め込まれて、その表面全面が画素電極12の上面も含んで平坦化されている。
【0035】
そして、この平坦化された面上に、第1の誘電体膜42を平坦に形成し、更に、この第1の誘電体膜42上に、第1の誘電体膜42の屈折率よりも大きい屈折率を有する第2の誘電体膜44を形成する。そして、この第2の誘電体膜44上に配向膜32が形成される。ここで、上記第1の誘電体膜42は、低屈折率材料である例えばシリコン酸化膜(SiO )よりなり、第2の誘電体膜は、シリコン酸化膜よりも屈折率の大きな高屈折率材料である例えばタンタル酸化膜(Ta )よりなる。
【0036】
そして、第1及び第2の両誘電体膜42、44の膜厚は、ここでの読み出し光の波長(以下「使用波長」とも称す)λの略1/4(=λ/4)に設定されており、増反射効果を生ずるように設定されている。
ここでは、上記画素電極12の上面と画素間隙24を埋め込む絶縁材料40の上面とが同一水平レベルとなるようにするために、後述するように、画素電極12と絶縁材料40に対するエッチング選択比が実質的に同じ条件になるようにエッチングを行うようにしている。従って、絶縁材料40と第1の誘電体膜42とは、互いに同じ材料で形成してもよい。
【0037】
図1(B)に示す第2実施例の場合には、全体の構成は上記第1実施例の場合と同じであるが、上記絶縁材料40と誘電体膜42とを同じ材料、例えば、シリコン酸化膜で形成し、且つ後述するように同一の工程で、画素間隙24の埋め込みと第1の誘電体膜42の形成を行うようにしている。この場合、第1の誘電体膜42の表面に凹凸が残るので、これを平坦化すると共に、一定の膜厚が残るようにエッチングが行われている。
【0038】
このように、画素電極12上と画素電極同士の間である画素間隙24上とを含んでその表面が平坦になるように形成された第1の誘電体膜42と、この第1の誘電体膜42上に形成されて第1の誘電体膜42よりも高い屈折率を有する第2の誘電体膜44とを形成し、第1及び第2の誘電体膜42、44を、使用波長λにおいて増反射効果を生ずるような厚さ(略λ/4)にそれぞれ設定したので、最新の微細加工装置を導入したり、プロセスを厳密に制御することなく、画素間隙において段差が生じなくて全面的に平坦化でき、もって、低屈折率誘電体膜と高屈折率誘電体膜による増反射効果を十分に発揮させることができる。
【0039】
<第1実施例の製造方法>
次に、本発明の液晶表示装置の第1実施例の主要部の製造方法について説明する。
まず、図2(A)に示すように、駆動基板14上に複数の画素電極12がマトリクス状に配列された状態で、図2(B)に示すように画素間隙24を十分に埋め尽くす厚さで誘電体であるSiO 等よりなる絶縁材料40を形成し、埋め込み工程を行う。この結果、画素電極12上にも絶縁材料40が厚く堆積して絶縁体層が形成され、その表面には画素間隙24に対応した凹凸が発生することになる。ここでの成膜方法は、例えば、CVD法を用いる。
【0040】
次に、図2(C)に示すように、この誘電体層である絶縁材料40をCMP法により表面の凹凸を平坦にしながら研磨を行うことによって平坦化処理を行い、画素電極12が露出する直前の適度な膜厚にする。
ここで残存する絶縁材料40の膜厚が厚過ぎると、後続して行うエッチング工程での時間が長くなり過ぎるので好ましくなく、残存する膜厚H3は100nm程度に設定するのが好ましい。
【0041】
このように、平坦化工程が終了したならば、次に、図2(D)に示すように、誘電体層である絶縁材料40と画素電極12に対するエッチング選択比が実質的に同じ条件(エッチングレートが同じ)で、少なくとも画素電極12の表面が露出するまで上記絶縁材料40をエッチング(エッチバック)するエッチング工程を行う。
この場合、実際には、画素電極12の表面が露出しても、しばらくはエッチングを続行するが、両部材に対するエッチング選択比が同じなので、画素電極12の表面が露出した後でも、上面の平坦性が保持されたまま画素電極12と絶縁材料40とが同時にエッチングされて行く。従って、画素電極12の上面が削られて、その高さは僅かに低くなる。
【0042】
上述したような条件を満たすには、例えば、エッチングガスとしてAr+H 等を用い、プラズマのパワーや入射角度等を最適にするようにすればよい。
このようにしてエッチング工程が終了したならば、次に図2(E)に示すように蒸着法により低屈折率材料で第1の誘電体膜42を所定の厚さで形成する。
【0043】
次に、図2(F)に示すように蒸着法により、上記第1の誘電体膜42より屈折率の大きな高屈折率材料で第2の誘電体膜44を所定の厚さで形成する。
ここでは第1の誘電体膜42の材料として、例えば、シリコン酸化膜を用い、その厚さを、例えば、90nmに設定している。また、第2の誘電体膜44の材料として例えばタンタル酸化膜を用い、その厚さを60nmに設定している。このようにして第1及び第2の誘電体膜42、44を形成することによって増反射効果を発揮するようにしている。
尚、最終的には、この第2の誘電体膜44上に配向膜32(図1(A)参照)が形成される。
【0044】
<第2実施例の製造方法>
次に、本発明の液晶表示装置の第2実施例の主要部の製造方法について図3を参照して説明する。
図3(A)〜図3(C)に示す各工程は、図2(A)〜図2(C)に示す各工程とそれぞれ同じであり、その説明は省略する。
ただし、ここでは絶縁材料40として第1の誘電体膜42と同じ材料のものを用いており、しかもCMP処理を図2(C)の場合よりも膜厚が薄くなるまで行っている。ここで注 意することは第1の誘電体を膜厚分布ができるだけ小さくなる条件で成膜すること、表面のうねりが出来るだけ小さくなる条件で研磨することである。
すなわち、図3(C)に示すようにCMP法により絶縁材料40の表面を平坦化しつつ、厚さ(高さ)H4が所定の厚さになるまで削る。これにより、表面が平坦に維持された状態で第1の誘電体膜42が形成されることになる。この場合、この第1の誘電体膜42の厚さH4は、図2に示す場合と同様に、例えば、90nmである。
【0045】
次に、図3(D)に示すように蒸着法により、上記第1の誘電体膜42上に高屈折率材料で第2の誘電体膜44を所定の厚さで形成する。図2に示した場合と同様に、この高屈折率材料としては、例えば、タンタル酸化膜を用いることができ、その厚さを60nmに設定している。このようにして第1及び第2の誘電体膜42、44を形成することによって増反射効果を発揮するようにしている。
尚、最終的には、この第2の誘電体膜44上に配向膜32(図1(A)参照)が形成される。
【0046】
<第2実施例の変形例1の製造方法>
更に、上記第2実施例の変形例1の方法を説明する。
図4は本発明に係る液晶表示装置の第2実施例の変形例1の主要部を製造するための工程を説明する工程図である。
図4(B)の絶縁膜40は、SOG(Spin−On−Grass)を用いて作成する。SOGは薄くても良好に平坦化できる粘度の低いもので、例えば触媒化成工業のセラメートLNTを用いて行い、電極上の厚みを150nmとする。更に、RIE(Reactive Ion Etching)法を用いて所定の厚さH4になるように上記絶縁膜40をエッチングして第1の誘電体膜42を得る(図4(C)参照)。
このようにして得られた第1の誘電体膜42の厚さH4は、図2に示す場合と同様に、例えば90nmである。
次に、図4(D)に示すように蒸着法により、Ta 膜を60nmの厚さでそれぞれ形成して増反射膜を設けた。
【0047】
<第2実施例の変形例2の製造方法>
更に、上記第2実施例の変形例2を説明する。
図5は本発明に係る液晶表示装置の第2実施例の変形例2の主要部を製造するための工程を説明する工程図である。
図5(A)の駆動基板14の画素電極12は電極加工前に銀合金膜を30nmの膜厚で形成したもので、アルミニウム合金電極上に同厚みの銀合金膜50が積層されている。
後は上述の図4に示した第2実施例の変形例1と同様なプロセスを行なうことにより駆動基板ができあがる。
【0048】
<第3実施例の製造方法>
次に、本発明の液晶表示装置の第3実施例の主要部の製造方法について図6を参照して説明する。
図6(A)〜図6(C)に示す各工程は、図2(A)〜図2(C)に示す各工程とそれぞれ同じであり、その説明は省略する。
【0049】
このように、図6(C)に示すようにCMP法による平坦化工程が終了したならば、次に、図6(D)に示すように、誘電体層である絶縁材料40を少なくとも画素電極12の表面が露出するまでエッチング(エッチバック)するエッチング工程を行う。実際には、画素電極12の表面が露出してもしばらくはエッチングを続行され、この時に画像電極12と絶縁材料40との間のエッチングレートの差より、絶縁材料40が多くエッチングされ、画素電極12と絶縁材料40との段差ができることになる。
この段差量は、エッチングの初期のうちは誘電体のエッチング速度が早いため段差は増加するが、深さが大きくなると、凹部にエッチングガスが入り難くなるため、エッチングレートが減少する。そして、最後にはほとんどエッチングされなくなる。
従って、エッチング前の膜厚分布が大きな基板であっても、エッチング時間を長めにすることにより、基板全面に亘って深さの比較的均一な段差を形成することができる。
【0050】
次に、図6(E)に示すように、画素電極12と絶縁材料40との段差をとり除くため、画素電極12のみをRIE法を用いてエッチングし、平坦化する。
上述したような条件を満たすには、例えばエッチングガスとしてClなどの 塩素系ガスを用いるようにするとよい。
このようにして画素電極12のエッチング工程が終了したならば、次に図6(F)に示すように蒸着法により低屈折率材料で第1の誘電体膜42を所定の厚さで形成する。
【0051】
次に、図6(G)に示すように、蒸着法により、上記第1の誘電体膜42より屈折率の大きな高屈折率材料で第2の誘電体膜44を所定の厚さで形成する。
ここでは、第1の誘電体膜42の材料として、例えば、シリコン酸化膜を用い、その厚さを、例えば、90nmに設定している。また、第2の誘電体膜44の材料として、例えば、タンタル酸化膜を用い、その厚さを60nmに設定している。
このようにして第1及び第2の誘電体膜42、44を形成することによって増反射効果を発揮するようにしている。
尚、最終的には、この第2の誘電体膜44上に配向膜32(図1(A)参照)が形成される。
【0052】
ここで、上記第3実施例の主要部の製造方法において、図6(E)〜図6(G)に示す各工程について、図7を参照して更に詳しく説明する。
図6(E)に示す画素電極12のみをエッチングする工程に対応して、図7(A)及び図7(B)に示すように、画素電極12と絶縁材料40との段差を取り除くため、画素電極12のみをRIE法を用いてエッチングし、平坦化する。
【0053】
このとき段差は、例えば80nm程度とわずかなため、容易にエッチングできる。但し、実際には段差量の分布や、エッチング速度の分布が存在する。そのため、ジャストエッチング条件にしても僅かに段差は存在することになる。
例えば、図7(A)に示すように、画素電極12の上面に対して、絶縁材料40の上面が凹むことになる。あるいは、図7(B)に示すように、画素電極12の上面に対して、絶縁材料40の上面が出っ張ることになる。但し、この段差(高低差)は、画素電極12のみのエッチング工程により、位相差が0.2λ以下となっており、増反射効果を十分に発揮できるものである。
このようにエッチング工程が終了したならば、次に図7(C)あるいは図7(D)に示すように蒸着法により低屈折率材料で第1の誘電体膜42を所定の厚さで形成する。
【0054】
ここで、図7(C)は、エッチング工程において絶縁材料40の上面が凹んだときに、第1の誘電体膜42を形成した後の様子を示している。また、図7(D)は、同様に絶縁材料40の上面が出っ張ったとき、第1の誘電体膜42を形成した後の様子を示している。
次に、図7(E)あるいは図7(F)に示すように、蒸着法により、上記第1の誘電体膜42より屈折率の大きな高屈折率材料で第2の誘電体膜44を所定の厚さで形成する。
ここで、図7(E)は、エッチング工程において絶縁材料40の上面が凹んだときに、第2の誘電体膜44を形成した後の様子を示している。また、図7(F)は、同様に絶縁材料40の上面が出っ張ったとき、第2の誘電体膜44を形成した後の様子を示している。
【0055】
<第3実施例の変形例の製造方法>
次に、上記第3実施例の変形例の製造方法を説明する。
図8は本発明に係る液晶表示装置の第3実施例の変形例の主要部を製造するための工程を説明する工程図である。
図8は上記第3実施例の図6(E)のエッチング後の表面の段差やうねりを出来るだけ小さくするため、画素電極12上にカバー層51を成膜する工程を追加したものである。
図8(A)は、駆動基板14上に電極用導電膜(画素電極12)を形成し、その上にカバー層51として、例えばTiN膜などの金属窒化膜を所定の厚さに形成する。その後、マトリクス上に配列するように画素電極12を形成するためのフォトリソグラフィ法を行い、電極加工する工程である。
図8(B)〜図8(D)に示す各工程は、画素電極12上にカバー層51が形成されているが、図6(B)〜図6(D)に示す各工程とそれぞれ同じであり、その説明は省略するが、図8(D)に示すエッチング工程においては、誘電体層である絶縁材料40を少なくとも画素電極12上のカバー層51の表面が露出するまでエッチング(エッチバック)する。
【0056】
次に、図8(E)に示すように、画素電極12上のカバー層51のみをRIE法を用いてエッチングする。上述したような条件を満たすには、例えば、エッチングガスとしてClなどの塩素系ガスを用いるようにするとよい。
カバー層51であるTiN膜は、画素電極12よりエッチングレートが数倍早いため、画素電極12がほとんど削れないうちに、カバー層51を取り除くことができる。すなわち、図6(D)の段差分に相当する厚さにTiN膜を形成しておけば、図8(E)に示すような平坦な面ができる。
【0057】
この後の図8(F)〜図8(G)に示す各工程は、図6(F)〜図6(G)に示す各工程とそれぞれ同じであり、その説明は省略する。
ここで、上記第3実施例の変形例の製造方法において、図8(E)〜図8(G)に示す各工程について、図9を参照して更に詳しく説明する。
【0058】
図8(E)に示す画素電極12上のカバー層51を取り除く工程に対応して、図9(A)および図9(B)に示すように、画素電極12上のカバー層51を取り除くため、RIE法を用いてエッチングし、平坦化する。
このときに、実際には、エッチングの分布をもっているため、画素電極12を均等にエッチングすることはできない。そのため、画素電極12の上面と絶縁材料40の上面との段差が存在し、図9(A)に示すように、画素電極12の上面に対して、絶縁材料40の上面が凹むことになる。あるいは、図9(B)に示すように、画素電極12の上面に対して、絶縁材料40の上面が出っ張ることになる。但し、この段差(高低差)は、画素電極12上の誘電膜48と画素電極12のみのエッチング工程により、位相差が0.2λ以下となっており、増反射効果を十分に発揮できるものである。
【0059】
このようにエッチング工程が終了したならば、次に図9(C)あるいは図9(D)に示すように蒸着法により低屈折率材料で第1の誘電体膜42を所定の厚さで形成する。
ここで、図9(C)は、エッチング工程において絶縁材料40の上面が凹んだときに、第1の誘電体膜42を形成した後の様子を示している。また、図9(D)は、同様に絶縁材料40の上面が出っ張ったとき、第1の誘電体膜42を形成した後の様子を示している。
次に、図9(E)あるいは図9(F)に示すように、蒸着法により、上記第1の誘電体膜42より屈折率の大きな高屈折率材料で第2の誘電体膜44を所定の厚さで形成する。
【0060】
ここで、図9(E)は、エッチング工程において絶縁材料40の上面が凹んだときに、第2の誘電体膜44を形成した後の様子を示している。また、図9(F)は、同様に絶縁材料40の上面が出っ張ったとき、第2の誘電体膜44を形成した後の様子を示している。
【0061】
このようにして作製した各駆動基板と、ITO電極膜付きガラス基板を対向の透明基板として、それぞれの電極面に斜方蒸着法によりSiO の配向膜を形成し、スペーサを介して張り合わせ、液晶を注入して液晶表示装置を作製した。
作製された液晶表示装置は図10に示す光学系の緑色チャンネルを用いて明るさを評価した。
【0062】
その結果、本実施例のサンプルはどちらも従来基板のサンプルに対して明るさが12%向上した。しかし従来基板に増反射膜を付けたサンプルはほとんど反射率の増加がみられなかった。このような増反射膜による反射率の増加量はシミュレーションから予想すると8%程度になるはずであった。この原因は以下のように考えられる。すなわち、画素電極間の段差を計測すると従来基板は70nm、第1実施例と第3実施例の変形例1のサンプルは20nmであった。
【0063】
また、第2実施例のサンプルは、僅かなうねりはあるものの高低差は20nm以下であった。
また、第3実施例ではサンプルは、僅かなうねりはあるものの高低差は20nm以下であり、従来基板のサンプルに対して明るさが11%向上した。第3実施例の変形例1との明るさ1%ダウンの差は表面のうねりであると考えられる。
【0064】
ここで、画素電極は回折格子と考えることができる。そのため画素ピッチのほかに段差量H2(図15(D)参照)が重要なパラメータとなる。この段差量は上に誘電体膜を積層してもほとんど変わらない。回折強度は2nd/λ=0、1、2…の時に最小になり、1/2、3/2…の時に最大になる。d=H2、λ=550nmとすると、液晶の屈折率が1.5〜1.6であることから、従来基板の場合には、このような段差は位相差がおよそ0.4λとなり、最大に近い回折強度になったものと考えられる。そのため増反射効果が回折ロスにより打ち消され、本来なら向上するはずの明るさが結果的に増加しなかったものと考えられる。
【0065】
一方、本実施例のサンプルにおける段差20nmは位相差としては0.11λにすぎず、図16における位相差からみても十分効果のある位置である。さらに、本実施例サンプルは、どちらも予想以上の明るさの向上があった。それは、従来基板のサンプルがもともとかなりの回折ロスを含んでいたのに対し、本実施例の両サンプルは、その分の回折ロスも軽減したためと考えられる。
なお、画素間部(画素間隙)の反射率は実測できないが、シミュレーションによると12%と見積もられた。
さらに、画素電極に銀合金膜を積層したサンプル(図5参照)では、従来基板のサンプルに対して15%の反射率向上があった。ちなみに従来基板の電極に銀合金膜を積層しただけのサンプルでは、その効果はほとんど見られなかった。
【0066】
<評価光学系の説明>
図10に評価に用いた光学系を示す。
図10において、プロジェクタは赤色緑色青色の三原色光を発する光源(図示せず)と、表示デバイスを含む色分解合成系(光学系60)と、プロジェクションレンズ、駆動回路等(いずれも図示せず)を有する。
上記光学系60は、何れも赤色光、緑色光及び青色光の内、緑色光の偏光面を90度回転させる第1の偏光板61と、緑色光を透過し、赤色光及び青色光を反射する第1の偏光ビームスプリッタ62と、第1の偏光ビームスプリッタ62で反射された赤色光及び青色光の内、赤色光の偏光面を90度回転させる第2の偏光板63と、を有している。
【0067】
また、光学系60は、赤色光を変調する赤色光用反射型液晶表示素子64と、青色光を変調する青色光用反射型液晶表示素子65と、第2の偏光板63からの赤色光及び青色光の内、赤色光を透過して青色光を反射し、赤色用反射型液晶表示素子64で変調された赤色光を反射し、青色用反射型液晶表示素子65で変調された青色光を透過する第2の偏光ビームスプリッタ66と、を有している。
【0068】
さらに、光学系60は、緑色光を変調する緑色光用反射型液晶表示素子68と、第1の偏光ビームスプリッタ62を透過した緑色光を透過し、緑色光用反射型液晶表示素子68で変調された緑色光を反射する第3の偏光ビームスプリッタ67と、を有している。
さらにまた、光学系60は、第2の偏光ビームスプリッタ66からの赤色光及び青色光の内、赤色光の偏光面を90度回転させる第3の偏光板69と、第3の偏光板69からの赤色光及び青色光を透過し、第3の偏光ビームスプリッタ67で反射された緑色光を反射する第4の偏光ビームスプリッタ70と、第4の偏光ビームスプリッタ70からの赤色光、緑色光及び青色光の内、緑色光の偏光面を90度回転させる第4の偏光板71と、を有している。
【0069】
光学系60に入射したS波の赤色光は、第1の変調板61を透過し、第1の偏光ビームスプリッタ62で反射され、第2の偏光板63でP波に変換され、第2の偏光ビームスプリッタ66を透過し、赤色光用変調素子64で変調されS波となり、第2の偏光ビームスプリッタ66で反射され、第3の偏光板69でP波に変換され、第4の偏光ビームスプリッタ70及び第4の偏光板71を透過する。
【0070】
光学系60に入射したS波の緑色光は、第1の変調板61でP波に変換され、第1の偏光ビームスプリッタ62及び第3の偏光ビームスプリッタ67を透過し、赤色用液晶表示素子68で変調されS波となり、第3の偏光ビームスプリッタ67で反射され、第4の偏光ビームスプリッタ70で反射され、第4の偏光板71でP波に変換される。
【0071】
光学系60に入射したS波の青色光は、第1の偏光板61を透過し、第1の偏光ビームスプリッタ62で反射され、第2の偏光板63を透過し、第2の偏光ビームスプリッタ66で反射され、青色光用液晶表示素子65で変調されてP波となり、第2の偏光ビームスプリッタ66、第3の偏光板69、第4の偏光ビームスプリッタ70及び第4の偏光板71を透過する。
第4の偏光板71を透過した3原色の光はプロジェクションレンズを通してスクリーンに投影される。また、光源のランプはたとえば発光効率の高い超高圧水銀ランプが使用される。
【0072】
反射型の光学系60は、図10に示されるように偏光ビームスプリッタと色合成系が直列につながるため、光路長が長くなってF値の小さい光学系の設計がむずかしい。そのため、デバイス表面で発生する回折光のすべてを投射レンズに取り込むことができず、残りは捨ててしまう。これが回折ロスであるが、F値の大きい反射型の光学系ではそれが無視できない程大きくなる。従って、明るさを向上させるには回折光を減少させることが非常に重要である。
【0073】
本実験の評価装置によれば画素電極間の段差が20nmであれば増反射膜(第1及び第2の誘電体膜42、44)を付与しても回折の増加はほとんど認められない。これはシミュレーションの結果とも矛盾がなく、段差による位相差が0.2λ以下であれば効果のあることも予想出来るものである。
本実施例の増反射膜は2層だけであるが、4層以上の増反射膜においても同様なことが言える。
【0074】
尚、上記実施例では、第1の誘電体膜42としてSOGやシリコン酸化膜を用いたが、これに限定されず、MgF やAl 等を用いることができる。また、上記実施例では、第2の誘電体膜44としてタンタル酸化膜を用いたが、これに限定されず、シリコン窒化膜やZrO 、TiO 、Nb 、Ta 等を含む金属酸化物の膜等を用いることができる。さらに本実施例の画素電極に用いた銀合金薄膜の厚さは30nmとしたが、これに限定されず、20〜50nm程度の範囲内が材料の使用量も少なくて効果的である。もちろん画素電極が銀合金単体でもよい。
またカバー層51に用いる材料は、上記した第3実施例の変形例では、TiN膜を用いたが、SiOなどの絶縁膜をエッチングするときのエッチングレート が小さく、カバー層51のエッチング時には絶縁膜や画素電極膜よりエッチングレートの高い材料であれば、他の金属材料を用いることができる。例えば、金属TiやTi合金でも良い。
【0075】
以上のように、本発明によれば画素電極を含むエリア上に平坦な増反射膜が容易に形成できるため、回折ロスの少ない明るい液晶表示装置を歩留まりよく作製できる。従って、より明るい液晶表示装置をローコストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係る液晶表示装置の第1及び第2実施例の複数の画素電極の部分を拡大した拡大図である。
【図2】本発明に係る液晶表示装置の第1実施例の主要部を製造するための工程を説明する工程図である。
【図3】本発明に係る液晶表示装置の第2実施例の主要部を製造するための工程を説明する工程図である。
【図4】本発明に係る液晶表示装置の第2実施例の変形例1の主要部を製造するための工程を説明する工程図である。
【図5】本発明に係る液晶表示装置の第2実施例の変形例2の主要部を製造するための工程を説明する工程図である。
【図6】本発明に係る液晶表示装置の第3実施例の主要部を製造するための工程を説明する工程図である。
【図7】図6に示す本発明装置の第3実施例の主要部を製造するための工程を更に詳しく説明する工程図である。
【図8】本発明に係る液晶表示装置の第3実施例の変形例の主要部を製造するための工程を説明する工程図である。
【図9】図8に示す本発明装置の第3実施例の変形例の主要部を製造するための工程を更に詳しく説明する工程図である。
【図10】液晶表示装置の評価を行うための光学系を示す図である。
【図11】液晶表示装置を用いたプロジェクタを示す原理図である。
【図12】1つの画素を示す等価回路図である。
【図13】液晶表示装置の一部を示す部分拡大断面図である。
【図14】従来の液晶表示装置の画素電極の一部を示す拡大図である。
【図15】画素間隙を埋め込む時の従来の工程を示す工程図である。
【図16】0次光反射率のシミュレーション結果を示す図である。
【図17】銀合金薄膜の増反射効果を示す図である。
【符号の説明】
【0077】
12…画素電極、14…駆動基板、16…対向電極、22…半導体基板、24…画素間隙、32…配向膜、34…透明基板、40…絶縁材料(第1の誘電体膜)、42…第1の誘電体膜、44…第2の誘電体膜、48…誘電膜、50…銀合金薄膜、LC…液晶。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素電極と該画素電極を駆動する駆動回路とがマトリックス状に配列された駆動基板と、対向電極が形成された透明基板とを、前記画素電極と対向電極とが対向するように間に液晶を挟んで接合してなる液晶表示装置において、
前記画素電極の画素間隙に誘電体を設け、該誘電体と前記画素電極との間の高低差の位相差が0.2λ(λ:読み出し光の波長)以下とし、更に前記画素電極の形成された画素エリア全体に第1の誘電体膜と、該第1の誘電体膜より高屈折率な第2の誘電体膜とを積層したことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
画素電極と該画素電極を駆動する駆動回路とがマトリックス状に配列された駆動基板と、対向電極が形成された透明基板とを、前記画素電極と対向電極とが対向するように間に液晶を挟んで接合してなる液晶表示装置の製造方法において、
前記画素間隙を埋め込むと同時に前記画素電極上に埋め込み用の誘電体層を形成する埋め込み工程と、
前記誘電体層の表面を平坦化する平坦化工程と、
前記誘電体層と前記画素電極に対するエッチング選択比が実質的に同じ条件で少なくとも前記画素電極が露出するまで前記誘電体層をエッチングするエッチング工程と、
表面全体に第1の誘電体膜を所定の厚さで形成する工程と、
該第1の誘電体膜上に第2の誘電体膜を所定の厚さで形成する工程と、
を備えたことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項3】
画素電極と該画素電極を駆動する駆動回路とがマトリックス状に配列された駆動基板と、対向電極が形成された透明基板とを、前記画素電極と対向電極とが対向するように間に液晶を挟んで接合してなる液晶表示装置において、
前記画素電極上および画素間隙に誘電体を設けて第1の誘電体膜を形成し、該第1の誘電体膜の画素電極上と前記画素間隙における表面の高低差による位相差が0.2λ(λ:読み出し光の波長)以下とし、前記第1の誘電体膜上に前記第1の誘電体膜よりも高屈折率な第2の誘電体膜を積層したことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項4】
画素電極と該画素電極を駆動する駆動回路とがマトリックス状に配列された駆動基板と、対向電極が形成された透明基板とを、前記画素電極と対向電極とが対向するように間に液晶を挟んで接合してなる液晶表示装置の製造方法において、
前記画素間隙を埋め込むと同時に前記画素電極上に誘電体層を形成する埋め込み工程と、
前記誘電体層の表面を所定の厚さになるまで平坦化して前記第1の誘電体膜とする平坦化工程と、該第1の誘電体膜上に第2の誘電体膜を所定の厚さで形成する工程と、を備えたことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項5】
請求項3記載の液晶表示装置において、前記画素電極がアルミニウム合金電極上に20〜50nmの厚さの銀合金膜が積層されたものであることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項6】
請求項1記載の液晶表示装置において、前記前記第1及び第2の誘電体膜の膜厚を、前記読み出し光の波長λにおいて略λ/4にそれぞれ設定したことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項7】
請求項3記載の液晶表示装置において、前記前記第1及び第2の誘電体膜の膜厚を、前記読み出し光の波長λにおいて略λ/4にそれぞれ設定したことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項8】
画素電極と該画素電極を駆動する駆動回路とがマトリックス状に配列された駆動基板と、対向電極が形成された透明基板とを、前記画素電極と対向電極とが対向するように間に液晶を挟んで接合してなる液晶表示装置の製造方法において、
前記画素間隙を埋め込むと同時に前記画素電極上に埋め込み用の誘電体層を形成する埋め込み工程と、
前記誘電体層の表面を平坦化する平坦化工程と、
前記画素電極が露出するまで前記誘電体層をエッチングするエッチング工程と、
前記画素電極のみをエッチングするエッチング工程と、
表面全体に第1の誘電体膜を所定の厚さで形成する工程と、
該第1の誘電体膜上に第2の誘電体膜を所定の厚さで形成する工程と、
を備えたことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項9】
画素電極と該画素電極を駆動する駆動回路とがマトリックス状に配列された駆動基板と、対向電極が形成された透明基板とを、前記画素電極と対向電極とが対向するように間に液晶を挟んで接合してなる液晶表示装置の製造方法において、
前記画素電極上に所定の厚さを有するカバー層を形成するカバー層形成工程と、
前記画素間隙を埋め込むと同時に前記カバー層を備えた画素電極上に埋め込み用の誘電体層を形成する埋め込み工程と、
前記誘電体層の表面を平坦化する平坦化工程と、
前記カバー層が露出するまで前記誘電体層をエッチングするエッチング工程と、
前記カバー層のみをエッチングするエッチング工程と、
表面全体に第1の誘電体膜を所定の厚さで形成する工程と、
該第1の誘電体膜上に第2の誘電体膜を所定の厚さで形成する工程と、
を備えたことを特徴とする液晶表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−293243(P2007−293243A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207488(P2006−207488)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】