説明

液晶装置、及び、電子機器

【課題】絶縁膜による配向材の流動性阻害を抑制することにより配向膜の厚みムラに起因
する表示品位の低下を抑制する。
【解決手段】本発明の液晶装置は、一対の基板及びこれらに挟持されてなる液晶を有し、
複数のサブ画素Gを備えるとともにサブ画素には透過表示領域Gt及び反射表示領域Gr
が設けられ、一方の基板110はサブ画素に対応して設けられてなるスイッチング素子1
13及びこれに接続されてなる配線112並びにこのスイッチング素子及び配線上に配置
される絶縁膜115を有し、絶縁膜は透過表示領域及び隣接するサブ画素の境界に沿う領
域に凹部115x,115zを有し、絶縁膜のうち凹部以外の部分の少なくとも一部が反
射表示領域と平面的に重なり配置され、隣接するサブ画素の境界に沿う領域に形成された
凹部115zは透過表示領域に形成された凹部115xより浅いことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶装置、及び、電子機器に係り、特に、サブ画素内に透過表示領域及び反射
表示領域を備えた電気光学装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶装置は、一対の基板間に液晶を封入したセル構造を有し、基板の内面に、
液晶の初期配向状態を規制する配向膜が形成される。配向膜の形成方法としては、たとえ
ば、ポリイミド等の未硬化の樹脂を基板の内面上にスピンコート法や印刷法などにより塗
布し、乾燥あるいは焼成を施すことなどによって形成される。
【0003】
一方、液晶装置の表示形式としては、バックライト等の照明光を透過させることによっ
て透過光で表示を行う透過型液晶装置と、外光などを反射させて反射光で表示を行う反射
型液晶装置とがあるが、特に、携帯型電子機器には、透過表示と反射表示の双方を可能に
した半透過反射型の液晶装置が搭載されることが多い。この半透過反射型の液晶装置は、
有効駆動領域内に、バックライトによる透過表示を可能とする透過表示領域と、外光によ
る反射表示を可能とする反射表示領域を共に備えたサブ画素を配列したものである。
【0004】
上記の半透過反射型の液晶装置では、透過表示を構成する透過光は液晶層を一回だけ通
過するのに対して、反射表示を構成する反射光は液晶層を往復二回通過するため、透過表
示と反射表示で表示光に対する液晶層の光変調の度合(リタデーション)が大きく異なる
ことになる。このため、透過表示と反射表示における光変調の差を低減するために、通常
、反射表示領域における液晶層の厚みを透過表示領域における液晶層の厚みよりも小さく
している。
【0005】
具体的には、基板の内面上に絶縁膜を部分的に形成することで、液晶層の厚みをコント
ロールしている。すなわち、サブ画素の反射表示領域には絶縁膜を厚く形成し、透過表示
領域には絶縁膜を形成しない、或いは、薄く形成することにより、一対の基板間に挟まれ
た液晶層の厚みを反射表示領域と透過表示領域で異なるものとしている(例えば、以下の
特許文献1参照)。
【0006】
ところが、上記の半透過反射型の液晶装置では、基板上に絶縁膜が部分的に形成されて
いるため、その基板上に未硬化の配向樹脂を塗布したとき、絶縁膜の非形成領域(透過表
示領域)に配向樹脂が溜まり、これが配向膜の厚みムラを招来して、表示品位を低下させ
るという問題点があった。そこで、隣接する画素間で凹状の透過表示領域が連続するよう
に構成することにより、配向樹脂の流動性を高め、配向膜の厚みムラを低減することが提
案されている(たとえば、以下の特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−248222号公報
【特許文献2】特開2004−325822号公報(特に、図3、図13乃至図17)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の改良された液晶装置では、凹状の透過表示領域が画素間で連続し
ているために配向樹脂の流動性が向上しているものの、透過表示領域における配向膜の厚
みムラが充分に解消されない場合がある。たとえば、反射表示領域もまた画素間で連続す
るようなパターンで絶縁膜を形成した場合には、連続する透過表示領域の間に、連続する
反射表示領域が介在することとなるので、反射表示領域から流入した配向樹脂が透過表示
領域の連続方向にばらつき、特に、反射表示領域に近い透過表示領域の周縁部で配向膜の
厚みムラが生じ、表示品位が低下することがある。また、印刷法によって配向樹脂を塗布
する場合には、その印刷方向と透過表示領域の連続方向の関係によっては表示品位の低下
が避けられない場合があった。
【0009】
一方、前述の液晶装置では画素毎に島状の反射表示領域を形成する例も開示され、この
場合には各画素の反射表示領域間にも溝状の凹部が形成されることとなるため、縦横(行
方向及び列方向)に配向樹脂が流動できるようになって配向膜の厚みムラが低減されるも
のと考えられる。しかし、この場合には、反射表示領域の面積に比べてその周縁距離が長
くなるため、反射表示領域の周縁に形成された段差によって液晶の配向不良が発生しやす
くなり、表示品位が悪化するという問題点がある。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、絶縁膜による配向材
の流動性阻害を抑制することにより配向膜の厚みムラに起因する表示品位の低下を抑制で
きるとともに、絶縁膜の周縁における液晶の配向不良に起因する表示品位の低下をも抑制
できる液晶装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
斯かる実情に鑑み、本発明の液晶装置は、一対の基板及び当該一対の基板間に挟持され
てなる液晶を有し、複数のサブ画素を備えるとともに、当該サブ画素には透過表示領域及
び反射表示領域が設けられてなる液晶装置において、一方の前記基板は前記サブ画素に対
応して設けられてなるスイッチング素子及び前記スイッチング素子に接続されてなる配線
、並びに、当該スイッチング素子及び配線上に配置される絶縁膜を有し、前記絶縁膜は、
前記透過表示領域、及び、隣接する前記サブ画素の境界に沿う領域に凹部を有し、前記絶
縁膜のうち前記凹部以外の部分の少なくとも一部が前記反射表示領域と平面的に重なり配
置され、前記液晶は、前記凹部を反映して、前記透過表示領域における層厚より前記反射
表示領域における層厚の方が薄く構成され、前記隣接する前記サブ画素の境界に沿う領域
に形成された前記凹部は、前記透過表示領域に形成された前記凹部より浅いことを特徴と
する。
【0012】
本発明によれば、隣接するサブ画素の境界に沿う領域に設けられた凹部により、配向材
の流動性を向上させることができるとともに、何らかの遮光が施されることの多いサブ画
素の境界に沿う領域に凹部が形成されるために表示への影響を抑制することができ、また
、隣接するサブ画素の境界に沿う領域に設けられた凹部が透過表示領域に設けられた凹部
よりも浅く形成されることにより、液晶に接する表面段差を低減することができるため、
表示への影響をより低減できる。さらに、隣接するサブ画素の境界に沿う領域に配線が配
置される場合には、当該領域の凹部が透過表示領域の凹部より浅いことによって凹部の底
部下に絶縁膜の一部が残るので、短絡不良の防止を図ることが可能になる。
【0013】
本発明において、前記サブ画素は行方向及び列方向に配列され、前記透過表示領域に設
けられた前記凹部は前記行方向に連続し、前記隣接する前記サブ画素の境界に沿う領域に
設けられた前記凹部は、前記行方向に隣接する前記サブ画素の境界に沿う領域に配置され
ていることが好ましい。これによれば、透過表示領域に設けられた凹部が行方向に連続し
、これより浅い凹部が行方向に隣接するサブ画素の境界に沿う領域に配置されるため、行
方向と列方向の双方に配向材の流動性を高めることができる。
【0014】
本発明において、前記サブ画素は行方向及び列方向に配列され、前記透過表示領域に設
けられた前記凹部は前記行方向に連続し、前記隣接する前記サブ画素の境界に沿う領域に
設けられた前記凹部は、前記列方向に延長形成されていることが好ましい。これによれば
、透過表示領域に設けられた凹部が行方向に連続し、これより浅い凹部が列方向に延長形
成されるため、行方向と列方向の双方に配向材の流動性を高めることができる。
【0015】
本発明において、前記サブ画素は行方向及び列方向に配列され、前記隣接する前記サブ
画素の境界に沿う領域に設けられた前記凹部は前記行方向に伸びる部分及び前記列方向に
伸びる部分を有することが好ましい。これによれば、行方向と列方向の双方に配向材の流
動性を高めることができる。
【0016】
また、本発明の別の液晶装置は、一対の基板及び当該一対の基板間に挟持されてなる液
晶を有し、複数のサブ画素を備えるとともに、当該サブ画素には透過表示領域及び反射表
示領域が設けられてなる液晶装置において、一方の前記基板は前記サブ画素に対応して設
けられてなるスイッチング素子及び前記スイッチング素子に接続されてなる配線、並びに
、当該スイッチング素子及び配線上に配置される絶縁膜を有し、前記絶縁膜は、前記透過
表示領域、及び、前記配線上の領域に凹部を有し、前記絶縁膜のうち前記凹部以外の部分
の少なくとも一部が前記反射表示領域と平面的に重なり配置され、前記液晶は、前記凹部
を反映して、前記透過表示領域における層厚より前記反射表示領域における層厚の方が薄
く構成され、前記配線上の領域に形成された前記凹部は、前記透過表示領域に形成された
前記凹部より浅いことを特徴とすることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、配線上の領域に設けられた凹部により、配向材の流動性を向上させる
ことができるとともに、配線自体によって遮光され、或いは何らかの遮光が施されること
の多い配線上の領域に凹部が形成されるために表示への影響を抑制することができ、また
、配線上の領域に設けられた凹部が透過表示領域に設けられた凹部よりも浅く形成される
ことにより、液晶に接する表面段差を低減することができるため、表示への影響をより低
減できる。さらに、配線上の凹部が透過表示領域の凹部より浅いことによって凹部の底部
下に絶縁膜の一部が残るので、短絡不良の防止を図ることが可能になる。
【0018】
本発明において、前記配線上の領域に形成された前記凹部は、前記配線に沿って伸びる
凹溝であることが好ましい。これによれば、配向材の流動性をさらに高めることができる
とともに、隣接するサブ画素の境界に沿って形成することができるので、表示への影響を
低減することができる。
【0019】
本発明において、前記サブ画素は行方向及び列方向に配列され、前記透過表示領域に設
けられた前記凹部は前記行方向に連続し、前記配線上の領域に形成された前記凹部は、前
記列方向に延長形成されていることが好ましい。これによれば、透過表示領域に設けられ
た凹部が行方向に連続し、これより浅い凹部が列方向に延長形成されるため、表示への影
響を低減しつつ、配向材の流動性を高めることができる。
【0020】
本発明において、前記サブ画素は行方向及び列方向に配列され、前記配線は前記列方向
に伸び、前記配線より下層に配置された前記行方向に伸びる下層の配線と、前記配線と前
記下層の配線の間に配置された層間絶縁層とをさらに有することが好ましい。これによれ
ば、下層の配線上には層間絶縁層が配置されているので、下層の配線に起因する短絡不良
等の問題は生じにくいが、上記配線は層間絶縁層の上層に配置されているので、当該配線
に起因する短絡不良等の問題は相対的に生じやすくなるから、本発明の構成は特に効果的
である。
【0021】
次に、本発明の異なる液晶装置は、一対の基板及び当該一対の基板間に挟持されてなる
液晶を有し、複数のサブ画素を備えるとともに、当該サブ画素には透過表示領域及び反射
表示領域が設けられてなる液晶装置において、一方の前記基板は前記サブ画素に対応して
設けられてなるスイッチング素子及び前記スイッチング素子に接続されてなる配線、当該
スイッチング素子及び配線上に配置される絶縁膜、並びに、前記反射表示領域において前
記絶縁膜上に形成された反射層を有し、前記配線は隣接する前記サブ画素の境界に沿って
形成され、前記絶縁膜は、前記透過表示領域、及び、前記配線に沿う領域に凹部を有し、
前記絶縁膜のうち前記凹部以外の部分の少なくとも一部が前記反射表示領域と平面的に重
なり配置され、前記液晶は、前記凹部を反映して、前記透過表示領域における層厚より前
記反射表示領域における層厚の方が薄く構成され、前記配線と前記配線に沿う領域に設け
られた前記凹部の内底部との間に前記絶縁膜の厚み方向の一部が介在していることを特徴
とする。
【0022】
これによれば、絶縁膜が透過表示領域以外において配線に沿う領域に凹部を有すること
により、表示に対する影響を抑制しつつ配向材の流動性を高めることができるとともに、
配線と当該凹部との間に絶縁膜の厚み方向の一部が介在していることにより、配線及び凹
部に起因する短絡不良を防止することができる。
【0023】
本発明において、前記絶縁膜は、前記透過表示領域及び前記反射表示領域に形成される
下層絶縁層と、前記反射表示領域に形成される上層絶縁層とを含み、前記配線と前記配線
に沿う領域に設けられた前記凹部の内底部との間に前記下層絶縁層が介在していることが
好ましい。
【0024】
さらに、本発明のさらに異なる液晶装置は、一対の基板及び当該一対の基板間に挟持さ
れてなる液晶を有し、行方向及び列方向に配列された複数のサブ画素を備えるとともに、
当該サブ画素には透過表示領域及び反射表示領域が設けられてなる液晶装置において、一
方の前記基板は、前記サブ画素に対応して設けられてなるスイッチング素子及び前記スイ
ッチング素子に接続されてなる前記行方向に伸びる下層の配線と前記列方向に伸びる上層
の配線、当該下層の配線と上層の配線の間に配置された層間絶縁層、並びに、前記上層の
配線上に配置される絶縁膜を有し、前記絶縁膜は、前記透過表示領域に凹部を有し、当該
凹部は前記列方向に隣接する複数の前記サブ画素に亘って連続するとともに、前記凹部以
外の部分で前記上層の配線を被覆し、前記絶縁膜のうち前記凹部以外の部分の少なくとも
一部が前記反射表示領域と平面的に重なり配置され、前記液晶は、前記凹部を反映して、
前記透過表示領域における層厚より前記反射表示領域における層厚の方が薄く構成されて
いることを特徴とする。
【0025】
これによれば、行方向に伸びる下層の配線を横切るように、透過表示領域に設けられた
絶縁層の凹部を列方向に連続させるとともに、列方向に伸びる上層の配線を絶縁膜の凹部
以外の部分で被覆することによって、配向材の流動性を確保しつつ、配線及び凹部に起因
する短絡を防止することが可能になる。
【0026】
以上説明した各発明において、前記サブ画素ごとに前記素子に導電接続された画素電極
を有し、前記絶縁膜における前記透過表示領域に設けられた前記凹部の内底部の縁に前記
素子と前記画素電極とのコンタクト部が形成されていることが好ましい。これによれば、
絶縁膜の凹部を利用して素子と画素電極との導電コンタクトを確保できるため、コンタク
トホールの形成工程等を設ける必要がなくなる。
【0027】
次に、本発明の電子機器は、上記のいずれかに記載の液晶装置を搭載し、当該液晶装置
により表示部を構成したことを特徴とする。電子機器の種類は特に限定されないが、透過
表示領域に基づく透過表示と反射表示領域に基づく反射表示とが共に可能になる点で、携
帯電話機、携帯型コンピュータ、電子携帯時計等の携帯型電子機器であることが特に効果
的である。
【0028】
さらに、本発明の液晶装置の製造方法は、一対の基板及び当該一対の基板間に挟持され
てなる液晶を有し、複数のサブ画素を備えるとともに、当該サブ画素には透過表示領域及
び反射表示領域が設けられてなる液晶装置の製造方法において、一方の前記基板に、前記
サブ画素に対応して設けられてなるスイッチング素子及び前記スイッチング素子に接続さ
れてなる配線を形成する工程と、前記スイッチング素子及び配線上に、前記透過表示領域
、及び、隣接する前記サブ画素の境界に沿う領域に凹部を有し、前記絶縁膜のうち前記凹
部以外の部分の少なくとも一部が前記反射表示領域と平面的に重なり配置され、前記隣接
する前記サブ画素の境界に沿う領域に形成された前記凹部は、前記透過表示領域に形成さ
れた前記凹部より浅い絶縁膜を形成する工程と、前記一方の基板に配向材が前記凹部内を
流動する態様で当該配向材を塗布し、配向膜を形成する工程と、前記凹部を反映して、前
記透過表示領域における層厚より前記反射表示領域における層厚の方が薄く構成される前
記液晶を配置する工程と、を具備することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
[第1実施形態]
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は第1実施
形態の液晶装置100の一方の基板110の平面構造を示す概略平面図、図2は図1のA
−A線に沿った断面構造を示す概略縦断面図、図3は図1のB−B線に沿った断面構造を
示す概略縦断面図、図4は液晶装置100の拡大縦断面図である。なお、本願に添付した
各図は全て寸法や寸法比等を作図上の都合により適宜に設定して描いてあり、実際の寸法
や寸法比を示すものではない。
【0030】
液晶装置100は、図4に示すように、一対の基板、すなわち、第1基板110と第2
基板120とを図示しないシール材等を介して貼り合わせ、両基板間に液晶131を封入
したパネル構造を有する。本実施形態の場合、第1基板110は配線及び素子を有するア
レイ基板(素子基板)であり、第2基板120はカラーフィルタを有するCF基板(対向
基板)である。
【0031】
本実施形態においては、図1及び図4に示すように、サブ画素Gが行方向(図1及び図
4の左右方向)及び列方向(図1の上下方向、図4の紙面と直交する方向)の双方に配列
されている。サブ画素G内には、それぞれ、後述する反射層116によって第2基板12
0側から入射した光が反射される反射表示領域Grと、反射層116が形成されず、入射
した光が透過する透過表示領域Gtとが形成されている。
【0032】
第1基板110上には、Ta25やSiO2等で構成される絶縁層111が形成され、
この絶縁層111上には、列方向に配列された複数のサブ画素Gからなるサブ画素列ごと
に、Ta、Ta−W、Al等の金属で構成された配線112が配置されている。配線11
2は行方向に隣接するサブ画素Gの境界に沿って列方向に伸びるように設けられている。
なお、図示例では上記境界上に配線112が配置されているが、実際には配線112は上
記境界に対して行方向にずれて配置されていてもよい。
【0033】
配線112はサブ画素ごとに設けられた素子113に導電接続され、この素子113は
コンタクト電極114に導電接続されている。本実施形態では、素子113は二端子非線
形素子であるTFD(薄膜トランジスタ、MIM素子)である。図示例の場合、素子11
3は図1には二つの極性が逆のTFD素子構造が直列に接続されてなるバックツーバック
構造を有している。
【0034】
配線112、素子113及びコンタクト電極114は、蒸着法やスパッタリング法等の
導電体の成膜処理、陽極酸化法やCVD法等の絶縁体の成膜処理、フォトリソグラフィ法
やエッチング処理等のパターニング処理等を用いる公知の方法で形成される。
【0035】
上記配線112及び素子113上には、アクリル樹脂等で構成された透明な絶縁膜11
5が形成されている。この絶縁膜115は、印刷法、スピンコーティング法、CVD法等
の成膜処理と、フォトリソグラフィ法やエッチング法等のパターニング処理によってサブ
画素G内で所定のパターンを有するように構成されている。図示例の場合、サブ画素G内
では、透過表示領域Gtにおいて絶縁膜115が形成されず、反射表示領域Grでは絶縁
膜115が形成されている。ただし、絶縁膜115が透明材料で構成される場合には、透
過表示領域Gt内に絶縁膜115の厚み方向の一部が存在していてもよい。すなわち、本
実施形態では、絶縁膜115に凹部が形成され、この凹部を反映して、透過表示領域Gt
における液晶131の層厚が反射表示領域Grの層厚より厚く構成されるようになってい
ればよい。
【0036】
また、上記絶縁膜115は、複数のサブ画素Gが集まって最小の表示単位を構成する画
素Pごとに同一のパターンを有するように構成されている。画素Pは、図示例では、後述
するカラーフィルタ121の複数色の着色層121R,121B,121Gにそれぞれ対
応する複数種類のサブ画素Gが集まって構成されている。具体的には、行方向に隣接する
三つのサブ画素Gが一つの画素Pを構成している。
【0037】
基板110上では、上記絶縁膜115は、透過表示領域Gt、及び、列方向に隣接する
サブ画素Gの境界に沿う領域において形成されず、これらの領域が凹部を構成するように
なっている。そして、透過表示領域Gtに設けられた凹部115xは、列方向に隣接する
サブ画素Gの境界に沿う領域に設けられた凹部115yによって行方向に隣接するサブ画
素G間で相互に連続するように構成されている。
【0038】
絶縁膜115は、行方向に隣接するサブ画素の境界に沿う領域に凹溝115zを有し、
この凹溝115zは絶縁膜115の厚みより浅く形成されている。すなわち、凹溝115
zの内底部は、絶縁膜115の下地面(絶縁膜115が配置されている面)より上に存在
し、当該内底部の下に絶縁膜115の厚み方向の一部が残存している。また、凹溝115
zの下方には、上記配線112が凹溝115zと平行に(すなわち列方向に)伸びるよう
に配置されている。
【0039】
凹溝115zは、図示例の場合、画素P内において、後述する赤の着色層が配置される
サブ画素(図1及び図4の左端のサブ画素)Gと、青の着色層が配置されるサブ画素(図
1及び図4の中央のサブ画素)Gとの境界に沿う領域にのみ形成されている。これは、赤
と青のサブ画素の境界領域は、青のサブ画素と緑のサブ画素(図1及び図4の右端のサブ
画素)の境界、或いは、緑と赤のサブ画素の境界に比べて配向不良が目立ちにくいからで
ある。ただし、これらのいずれの境界に沿う領域に凹溝115zを形成しても構わない。
【0040】
上記の絶縁膜115は透明な材料で構成され、特に、樹脂材料で構成されることが好ま
しい。樹脂材料で構成された絶縁膜115は、例えば、ハーフトーンマスクを用いたフォ
トリソグラフィ法で形成することができる。具体的には、ポジ型の感光性樹脂を印刷等で
塗布し、上記凹部115x、115yに相当する領域に光透過部を有し、上記凹溝115
zに相当する領域に半透過部を有し、それ以外の領域に光遮蔽部を有するフォトマスクで
露光し、現像することによって形成することができる。なお、ネガ型の感光性樹脂を用い
る場合には、光透過部と光遮蔽部とが逆の関係になる。
【0041】
上記絶縁膜115は微細な表面凹凸を有するように形成されることが好ましい。この微
細な表面凹凸は、上記のフォトリソグラフィ法で絶縁膜115を形成する場合には、フォ
トマスクに微細な光透過部を分散して設けることによって形成することができる。
【0042】
絶縁膜115の縁部のうち、反射表示領域Grと透過表示領域Gtの境界部分に形成さ
れる段差面の下、すなわち、凹部115xの内底部の縁には、上記コンタクト電極114
が露出している。このコンタクト電極114は、後述する画素電極117に導電接続され
る。
【0043】
上記絶縁膜115の表面上には、Al,Agなどの高い反射率を呈する光反射性材料か
らなる反射層116が形成される。この反射層116は、サブ画素G内の上記反射表示領
域Grに対応する領域、すなわち、サブ画素G内の上記絶縁膜115上に形成される。反
射層116は、上記絶縁膜115の微細な表面凹凸を反映して微細な凹凸を有する散乱性
反射面を備えたものとなる。図示例の場合、反射層116は導電性材料(金属材料)で構
成されるので、上記コンタクト電極114に導電接続されるように構成されていてもよい

【0044】
上記のサブ画素G内にはITO(インジウムスズ酸化物)等の透明導電体で構成される
画素電極117が形成される。この画素電極117は、直接、若しくは、上記反射層11
6を介して、上記コンタクト電極114に導電接続される。
【0045】
一方、第2基板120上には、図4に示すように、アクリル樹脂等の透明樹脂基材中に
染料や顔料等の着色材を分散配置させてなる着色層121R,121B,121Gが所定
パターンで配置される。図示例の場合には、同じ色の着色層が列方向に配置され、異なる
色の着色層が行方向に繰り返し配列されたストライプ配列のカラーフィルタ121が構成
されている。ここで、着色層121Rは赤、着色層121Bは青、着色層121Gは緑の
フィルタ要素を構成する。異なる色の着色層間には、例えば、行方向に隣接するサブ画素
の境界に沿う領域で隣接する、異なる色の着色層を重ねることによって構成された遮光部
を設けることができる。また、金属膜や黒色樹脂等の遮光性材料によって遮光部を形成し
てもよい。図示例の場合、凹溝115zと重なる領域では、黒色樹脂等からなる遮光層1
21BMによる遮光部を形成している。これは、凹溝115zの形成領域では、凹溝11
5zによる基板110の表面段差によって液晶の配向不良が発生しやすいので、光漏れ等
によるコントラスト不良が発生しやすいからである。
【0046】
カラーフィルタ121上にはアクリル樹脂等からなる透明保護膜122が形成される。
この透明保護膜122は、不純物の侵入による着色層の劣化を防止するとともにカラーフ
ィルタ121の表面を平坦化するために設けられる。
【0047】
透明保護膜122上にはITO等の透明導電体からなる対向電極(共通電極)123が
形成される。本実施形態のように素子113が二端子非線形素子である場合には、対向電
極123は行方向に伸びる帯状の電極であり、複数の対向電極123が列方向に平行に配
列されて、全体としてストライプ状に形成される。ただし、素子113がTFTのような
三端子非線形素子である場合には、行方向及び列方向に配列された複数のサブ画素Gに対
して共通に対向配置される一体の共通電極が設けられる。
【0048】
なお、図4に示すスペーサ132は絶縁樹脂等で構成され、図示例の場合、第1基板1
10の表面上にフォトリソグラフィ法等によって形成される。ただし、このスペーサ13
2は一対の基板のいずれかに固定されていればよい。また、図示例のように固定されたも
のに限らず、両基板に固定されていないスペーサであってもよい。また、シール材等に混
入させることによって表示領域にはスペーサを配置しない構成とすることも可能である。
【0049】
上記のように構成された第1基板110及び第2基板120の内面には、配向樹脂等の
配向材が塗布され、焼成若しくは乾燥処理が施されることなどによって、配向膜118及
び124が形成される。例えば、典型的には、ポリイミド樹脂を印刷法(例えば凸版印刷
)やスピンコーティング法等によって塗布し、その後、所定温度で焼成する。なお、この
ように構成された配向膜118,124自体に液晶配向能が或る場合にはそのままでよい
が、そうでない場合には、必要に応じてラビング処理等の後処理が配向膜に施される。
【0050】
上記のように配向材が塗布されるとき、第1基板110の表面には上記絶縁膜115に
よる凹凸構造が形成されているので、配向材の流動が阻害され、これによって特に透過表
示領域Gtにおける配向膜の厚みムラが生じ、これによって液晶の配向ムラが発生して、
表示ムラが出る場合がある。しかしながら、本実施形態では、透過表示領域Gtに設けら
れた凹部115xが凹部115yによって行方向に連続した状態とされ、しかも、列方向
に凹溝115zが伸びるように設けられているため、行方向にも列方向にも配向材が流動
しやすくなることから、表示ムラを低減することができる。特に、凹溝115zは列方向
に隣接するサブ画素G間の凹部115x及び115yを連通する態様で構成されているの
で、配向材の列方向の流動性を高めることができる。
【0051】
また、本実施形態では、凹部115yが列方向に隣接するサブ画素Gの境界に沿う領域
に設けられ、凹溝115zが行方向に隣接するサブ画素Gの境界に沿う領域に設けられて
いるので、これらの凹部若しくは凹溝による表面段差に起因する液晶の配向不良による表
示への影響を抑制できる。特に、凹溝115zは絶縁層115の厚みより浅く形成されて
いるので、表面の段差量そのものが低減されるから、凹溝115zによる液晶の配向不良
をさらに低減することができる。
【0052】
さらに、本実施形態では、凹溝115zが配線112に沿った領域(図示例の場合には
配線112上の領域)に形成されているが、凹溝115zの下方には絶縁膜115の厚み
の一部が残存しているので、配線112と、反射層116や画素電極117との短絡を防
止することができる。
【0053】
なお、凹部115yと凹溝115zの交差部では、配線112を被覆するために、絶縁
膜115の厚みの一部が残るように、例えば、凹溝115zの内底部と同じ厚みの絶縁層
が残るように構成することが好ましい。ただし、この交差部において絶縁膜115が全て
除去されていても構わない。
【0054】
また、上記実施形態では、透過表示領域Gtに設けられた凹部115xが行方向に隣接
するサブ画素Gの境界に沿う領域に設けられた細幅の凹部115yによって行方向に連続
するように構成されているが、これとは異なり、凹部115yを透過表示領域Gtと同じ
列方向の範囲で透過表示領域Gtと同幅に構成することによって、透過表示領域Gtを通
過する一体の帯状の凹部が行方向に伸びるように構成してもよい。
【0055】
[第2実施形態]
次に、図5を参照して、本発明に係る液晶装置の第2実施形態について説明する。なお
、本実施形態において、第1実施形態と同様の部分には同一符号を付し、それらの説明は
省略する。また、図示しない構成は第1実施形態の説明と同様に構成されるものとする。
【0056】
本実施形態では、第1実施形態と同様の配線112及び素子113の上に透明な下層絶
縁層115Aが形成される。また、下層絶縁層115A上には上層絶縁層115Bが形成
される。この上層絶縁層115Bは本実施形態の場合には透明材料でなくても構わない。
上層絶縁層115Bは、第1実施形態の絶縁層115と同様に、凹部115x及び凹溝1
15zを設けるようにパターニングされる。ここで、凹部115x及び凹溝115zは、
上層絶縁層115Bを形成しないことによって構成され、したがって、凹部115x及び
凹溝115zの内底部は下層絶縁層115Aの表面で構成される。なお、上層絶縁層11
5Bの表面には微細な表面凹凸が形成され、その上に形成された反射層116が散乱性反
射面を構成する点は第1実施形態と同様である。
【0057】
本実施形態では、素子113に導電接続されたコンタクト電極114’が下層絶縁層1
15Aに設けられたコンタクトホール115a内に形成され、このコンタクトホール11
5aを介してコンタクト電極114’が下層絶縁層115A上の画素電極117と導電接
続されている。このコンタクトホール115aは、上層絶縁層115Bをパターニングし
て凹部115x及び凹溝115zを形成した後に別途パターニング工程を設けることによ
り形成してもよく、或いは、感光性樹脂からなる下層絶縁層115A及び上層絶縁層11
5Bを積層した後にハーフトーンマスクを用いたフォトリソグラフィ法で凹部115x及
び凹溝115zと同時に形成してもよい。
【0058】
本実施形態では、配線112と凹溝115zの内底部との間に下層絶縁層115Aが形
成されているので、下層絶縁層115Aと上層絶縁層115Bを第1実施形態の絶縁膜と
見た場合、第1実施形態と同様に配線112と凹溝115zの内底部との間に絶縁膜の一
部が介在していることとなる。したがって、第1実施形態と同様に、配線112と、反射
層116及び画素電極117との間の短絡不良を確実に防止できる。
【0059】
なお、本実施形態では、凹部115xの深さと凹溝115zの深さを同一としているが
、第1実施形態と同様に、凹溝115zを凹部115xよりも浅く形成することがより好
ましい。
【0060】
[第3実施形態]
次に、図6を参照して、本発明に係る液晶装置の第3実施形態について説明する。この
実施形態では、第2実施形態において形成した下層絶縁層115A及び上層絶縁層115
Bを単一の絶縁膜115’によって構成したものである。他の構成は第2実施形態と同様
であるので、同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
【0061】
本実施形態では、凹部115x及び凹溝115zが絶縁膜115’の厚みより浅く形成
され、これらの内底部の下に絶縁膜115’の厚み方向の一部が残存している。したがっ
て、第2実施形態と同様に、配線112と凹溝115zの内底部との間に絶縁膜115’
の厚み方向の一部が介在しているため、胆略不良を防止できる。
【0062】
本実施形態では、配線112及び素子113を形成した後、絶縁膜115’を形成し、
その後、凹部115x、凹溝115z、コンタクトホール115a’を形成する。しかる
後に、コンタクトホール115a’内にコンタクト電極114を形成し、そして、反射層
116及び画素電極117を形成する。この場合、絶縁膜115’のパターニングは、第
2実施形態と同様に、凹部115x及び凹溝115zの形成と、コンタクトホール115
a’の形成とを別工程で行ってもよく、或いはまた、ハーフトーンマスク等を利用して同
時に行ってもよい。
【0063】
なお、本実施形態においては、凹部115xの深さと、凹溝115zの深さとが同一と
なっているが、第1実施形態と同様に凹溝115zを凹部115xより浅く形成すること
がより好ましい。
【0064】
[第4実施形態]
次に、図7及び図8を参照して、本発明に係る第4実施形態について説明する。この実
施形態では、第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。ま
た、図示しない部分については特に言及するものを除き、基本的に同様に構成されている
ものとする。
【0065】
本実施形態では、先の実施形態とは異なり、素子113’としてTFT(薄膜トランジ
スタ)等の三端子非線形素子を用いている。したがって、行方向に伸びる配線(走査線)
112Aと、列方向に伸びる配線(信号線)112Bが設けられ、これらが各サブ画素G
に対応して設けられた素子113に接続されている。また、図示しない第2基板上の対向
電極は全てのサブ画素Gに対向配置される共通電極とされる。
【0066】
本実施形態において、配線112Aは下層に配置され、この下層の配線112A上に層
間絶縁層112Xが形成され、さらに、この層間絶縁層112X上に上層の配線112B
が形成されている。
【0067】
また、素子113’は、配線112Aに導電接続された(或いは、配線112Aと一体
に構成された)ゲート電極113g’と、このゲート電極113g’に対して図示しない
ゲート絶縁膜を介して対向配置される多結晶シリコンやアモルファスシリコン等で構成さ
れる半導体層113s’とを有している。半導体層113s’における上記ゲート電極1
13g’と対向するチャネル領域の一側にある部分は上記配線112Bと導電接続され、
同チャネル領域の他側にある部分はコンタクト電極114に導電接続されている。なお、
凹部115xの内底部の縁にコンタクト電極114が露出し、画素電極117に導電接続
されている点は第1実施形態と同様である。
【0068】
ここで、下層の配線112Aは、その上に層間絶縁層112Xを有するため短絡不良の
問題を生じにくいが、上層の配線112Bは、その上に絶縁膜115が配置されているだ
けであるので、絶縁膜115に設けられた凹溝115zが絶縁膜115の厚み全体を除去
する態様で形成されているとすると、配線112Bと、反射層116及び画素電極117
との間の短絡不良が発生しやすくなる。
【0069】
しかしながら、本実施形態では、凹溝115zが絶縁膜115の厚みより浅く形成され
ているので、凹溝115zの内底部の下に絶縁膜115の厚み方向の一部が残存している
ことから、上層の配線112Bと反射層116及び画素電極117との間の短絡不良を防
止できる。
【0070】
[第5実施形態]
次に、図9を参照して、本発明に係る第5実施形態について説明する。この実施形態で
は、第1実施形態と同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略する。また、図示
しない部分は特に言及するものを除き、第1実施形態の説明と同様に構成されているもの
とする。
【0071】
図9は本実施形態の第1基板110の概略平面図である。本実施形態が第1実施形態と
異なる点は、行方向に伸びる凹溝115vをさらに設けた点である。この凹溝115vは
、サブ画素G内の透過表示領域Gtと反射表示領域Grの境界に沿って伸び、行方向に隣
接する複数のサブ画素Gに亘って形成されている。この凹溝115vは、上記凹溝115
zと同様に、透過表示領域Gtに設けられた凹部115xよりも浅く形成されている。な
お、凹部115xの内底部の縁にコンタクト電極114が露出し、画素電極117に導電
接続されている点は第1実施形態と同様である。
【0072】
凹溝115vを設けることで、配向材の凹部115x間の行方向の流動性を高めること
ができる。特に、透過表示領域Gtの凹部115xの列方向の一側に上記凹部115yが
形成されているが、凹溝115vは透過表示領域Gtの凹部115xの列方向の他側に臨
むように設けられているため、透過表示領域Gtの凹部115xの列方向両側において行
方向に見た配向材の流動性が向上することから、表示ムラをさらに低減することができる

【0073】
凹溝115vは素子113の上方に配置されているので、凹溝115vを透過表示領域
Gtに設けられた凹部115xと同様の深さとなるように構成すると、素子113と反射
層116や画素電極117との間の短絡不良を生ずる可能性が高くなるが、本実施形態の
場合、凹溝115vは凹部115xより浅く形成されていることから、上記の短絡不良を
防止できる。
【0074】
[第6実施形態]
次に、図10及び図11を参照して本発明に係る第6実施形態について説明する。この
実施形態でも、先の第4実施形態と同一部分には同一符号を付し、それらの説明は省略す
る。
【0075】
図10は第1基板の概略平面図、図11は第1基板の概略縦断面図である。この実施形
態では、サブ画素G’内の透過表示領域Gt’に凹部115x’が設けられ、この凹部1
15x’が列方向に複数のサブ画素G’に亘って連続するように構成されている。具体的
には、列方向に隣接するサブ画素G’の境界に凹部115y’が設けられ、この凹部11
5y’によって凹部115x’が列方向に連続している。
【0076】
図示例では、凹部115x’の行方向の幅と、凹部115y’の行方向の幅とが同一で
あり、両凹部によって列方向に伸びる一体の帯状の凹部が形成されている。そして、これ
ら複数の帯状の凹部が行方向に平行に配列され、全体としてストライプ状に構成されてい
る。ここで、各サブ画素G’内では、反射表示領域Gr’が透過表示領域Gt’の行方向
両側に構成されているが、サブ画素G’において、反射表示領域Gr’を透過表示領域G
t’の行方向片側にのみ設けてもよい。また、列方向に伸びる上層の配線112Bは絶縁
膜115’の凹部以外の部分によって完全に被覆されている。
【0077】
本実施形態では、下層の配線112A、層間絶縁層112X及び上層の配線112Bか
らなる構造は第4実施形態と同様であるが、凹部115x’及び115y’によって透過
表示領域Gt’が列方向に連続するように構成されている。このとき、列方向に連続する
凹部は配線112Aを横切ることとなるが、配線112Aは層間絶縁層112Xの下層に
形成されているために短絡不良等の問題は生じない。一方、上層の配線112Bは絶縁膜
115’の凹部以外の部分によって完全に被覆されているので、配線112Bに起因する
短絡不良も生じない。なお、凹部115x’の内底部の縁にコンタクト電極114が露出
し、画素電極117に導電接続されている点は第1実施形態と同様である。
【0078】
[電子機器]
最後に、上記の液晶装置100を搭載した電子機器について説明する。図12は上記液
晶装置100を搭載した電子機器を示す概略斜視図である。
【0079】
図12は、本発明に係る電子機器の実施形態である携帯電話機を示している。ここに示
す携帯電話機300は、複数の操作ボタン301a,301b及び送話口などを備えた操
作部301と、表示画面302aや受話口などを備えた表示部302とを有し、表示部3
02の内部に上記の液晶装置100が組み込まれてなる。そして表示部302の表示画面
302aにおいて液晶装置100により形成された表示画像を視認することができるよう
になっている。この場合、携帯電話機300の内部には、上記液晶装置100を制御する
表示制御回路が設けられる。この表示制御回路は、液晶装置100に対して映像信号その
他の入力データや所定の制御信号を送り、その動作態様を決定するように構成されている

【0080】
尚、本発明の液晶装置及び電子機器は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、
本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば
、上記図示例の凹溝は断面が矩形(正方形若しくは長方形)状に構成され、その内底部が
平坦に構成されているが、これはあくまでも図示の都合上このように示しているに過ぎず
、実施にはこのように平坦な内底部を有するものでなくてもよい。例えば、溝断面の輪郭
がU字、V字、W字状など、種々の形状を有していても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】第1実施形態の第1基板の概略平面図。
【図2】第1実施形態の第1基板の概略縦断面図(図1のA−A断面図)。
【図3】第1実施形態の第1基板の概略縦断面図(図1のB−B断面図)。
【図4】第1実施形態の液晶装置の概略縦断面図。
【図5】第2実施形態の第1基板の概略縦断面図。
【図6】第3実施形態の第1基板の概略縦断面図。
【図7】第4実施形態の第1基板の概略平面図。
【図8】第4実施形態の第1基板の概略縦断面図(図7のC−C断面図)。
【図9】第5実施形態の第1基板の概略平面図。
【図10】第6実施形態の第1基板の概略平面図。
【図11】第6実施形態の第1基板の概略縦断面図(図10のD−D断面図)。
【図12】電子機器の概略斜視図。
【符号の説明】
【0082】
100…液晶装置、110…第1基板、111…絶縁層、112…配線、113…素子
、114…コンタクト電極、115…絶縁膜、115x,115y…凹部、115z…凹
溝、116…反射層、117…画素電極、118…配向膜、120…第2基板、121…
カラーフィルタ、122…透明保護膜、123…対向電極、124…配向膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の基板及び当該一対の基板間に挟持されてなる液晶を有し、複数のサブ画素を備え
るとともに、当該サブ画素には透過表示領域及び反射表示領域が設けられてなる液晶装置
において、
一方の前記基板は前記サブ画素に対応して設けられてなるスイッチング素子及び前記ス
イッチング素子に接続されてなる配線、並びに、当該スイッチング素子及び配線上に配置
される絶縁膜を有し、
前記絶縁膜は、前記透過表示領域、及び、隣接する前記サブ画素の境界に沿う領域に凹
部を有し、
前記絶縁膜のうち前記凹部以外の部分の少なくとも一部が前記反射表示領域と平面的に
重なり配置され、
前記液晶は、前記凹部を反映して、前記透過表示領域における層厚より前記反射表示領
域における層厚の方が薄く構成され、
前記隣接する前記サブ画素の境界に沿う領域に形成された前記凹部は、前記透過表示領
域に形成された前記凹部より浅いことを特徴とする液晶装置。
【請求項2】
前記サブ画素は行方向及び列方向に配列され、
前記透過表示領域に設けられた前記凹部は前記行方向に連続し、
前記隣接する前記サブ画素の境界に沿う領域に設けられた前記凹部は、前記行方向に隣
接する前記サブ画素の境界に沿う領域に配置されていることを特徴とする請求項1に記載
の液晶装置。
【請求項3】
前記サブ画素は行方向及び列方向に配列され、
前記透過表示領域に設けられた前記凹部は前記行方向に連続し、
前記隣接する前記サブ画素の境界に沿う領域に設けられた前記凹部は、前記列方向に延
長形成されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶装置。
【請求項4】
前記サブ画素は行方向及び列方向に配列され、
前記隣接する前記サブ画素の境界に沿う領域に設けられた前記凹部は、前記行方向に伸
びる部分及び前記列方向に伸びる部分を有することを特徴とする請求項1に記載の液晶装
置。
【請求項5】
一対の基板及び当該一対の基板間に挟持されてなる液晶を有し、複数のサブ画素を備え
るとともに、当該サブ画素には透過表示領域及び反射表示領域が設けられてなる液晶装置
において、
一方の前記基板は前記サブ画素に対応して設けられてなるスイッチング素子及び前記ス
イッチング素子に接続されてなる配線、並びに、当該スイッチング素子及び配線上に配置
される絶縁膜を有し、
前記絶縁膜は、前記透過表示領域、及び、前記配線上の領域に凹部を有し、
前記絶縁膜のうち前記凹部以外の部分の少なくとも一部が前記反射表示領域と平面的に
重なり配置され、
前記液晶は、前記凹部を反映して、前記透過表示領域における層厚より前記反射表示領
域における層厚の方が薄く構成され、
前記配線上の領域に形成された前記凹部は、前記透過表示領域に形成された前記凹部よ
り浅いことを特徴とする液晶装置。
【請求項6】
前記配線上の領域に設けられた前記凹部は、前記配線に沿って伸びる凹溝であることを
特徴とする請求項5に記載の液晶装置。
【請求項7】
前記サブ画素は行方向及び列方向に配列され、
前記透過表示領域に設けられた前記凹部は前記行方向に連続し、
前記配線上の領域に形成された前記凹部は、前記列方向に延長形成されていることを特
徴とする請求項5又は6に記載の液晶装置。
【請求項8】
前記サブ画素は行方向及び列方向に配列され、
前記配線は前記列方向に伸び、
前記配線より下層に配置された前記行方向に伸びる下層の配線と、前記配線と前記下層
の配線の間に配置された層間絶縁層とをさらに有することを特徴とする請求項5又は6に
記載の液晶装置。
【請求項9】
一対の基板及び当該一対の基板間に挟持されてなる液晶を有し、複数のサブ画素を備え
るとともに、当該サブ画素には透過表示領域及び反射表示領域が設けられてなる液晶装置
において、
一方の前記基板は前記サブ画素に対応して設けられてなるスイッチング素子及び前記ス
イッチング素子に接続されてなる配線、当該スイッチング素子及び配線上に配置される絶
縁膜、並びに、前記反射表示領域において前記絶縁膜上に形成された反射層を有し、前記
配線は隣接する前記サブ画素の境界に沿って形成され、
前記絶縁膜は、前記透過表示領域、及び、前記配線に沿う領域に凹部を有し、
前記絶縁膜のうち前記凹部以外の部分の少なくとも一部が前記反射表示領域と平面的に
重なり配置され、
前記液晶は、前記凹部を反映して、前記透過表示領域における層厚より前記反射表示領
域における層厚の方が薄く構成され、
前記配線と前記配線に沿う領域に設けられた前記凹部の内底部との間に前記絶縁膜の厚
み方向の一部が介在していることを特徴とする液晶装置。
【請求項10】
前記絶縁膜は、前記透過表示領域及び前記反射表示領域に形成される下層絶縁層と、前
記反射表示領域に形成される上層絶縁層とを含み、
前記配線と前記配線に沿う領域に設けられた前記凹部の内底部との間に前記下層絶縁層
が介在していることを特徴とする請求項9に記載の液晶装置。
【請求項11】
一対の基板及び当該一対の基板間に挟持されてなる液晶を有し、行方向及び列方向に配
列された複数のサブ画素を備えるとともに、当該サブ画素には透過表示領域及び反射表示
領域が設けられてなる液晶装置において、
一方の前記基板は、前記サブ画素に対応して設けられてなるスイッチング素子及び前記
スイッチング素子に接続されてなる前記行方向に伸びる下層の配線と前記列方向に伸びる
上層の配線、当該下層の配線と上層の配線の間に配置された層間絶縁層、並びに、前記上
層の配線上に配置される絶縁膜を有し、
前記絶縁膜は、前記透過表示領域に凹部を有し、当該凹部は前記列方向に隣接する複数
の前記サブ画素に亘って連続するとともに、前記凹部以外の部分で前記上層の配線を被覆
し、
前記絶縁膜のうち前記凹部以外の部分の少なくとも一部が前記反射表示領域と平面的に
重なり配置され、
前記液晶は、前記凹部を反映して、前記透過表示領域における層厚より前記反射表示領
域における層厚の方が薄く構成されていることを特徴とする液晶装置。
【請求項12】
前記サブ画素ごとに前記素子に導電接続された画素電極を有し、前記絶縁膜における前
記透過表示領域に設けられた前記凹部の内底部の縁に前記素子と前記画素電極とのコンタ
クト部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の液晶
装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の液晶装置を搭載し、当該液晶装置により表示
部を構成したことを特徴とする電子機器。
【請求項14】
一対の基板及び当該一対の基板間に挟持されてなる液晶を有し、複数のサブ画素を備え
るとともに、当該サブ画素には透過表示領域及び反射表示領域が設けられてなる液晶装置
の製造方法において、
一方の前記基板に、前記サブ画素に対応して設けられてなるスイッチング素子及び前記
スイッチング素子に接続されてなる配線を形成する工程と、
前記スイッチング素子及び配線上に、前記透過表示領域、及び、隣接する前記サブ画素
の境界に沿う領域に凹部を有し、前記絶縁膜のうち前記凹部以外の部分の少なくとも一部
が前記反射表示領域と平面的に重なり配置され、前記隣接する前記サブ画素の境界に沿う
領域に形成された前記凹部は、前記透過表示領域に形成された前記凹部より浅い絶縁膜を
形成する工程と、
前記一方の基板に配向材が前記凹部内を流動する態様で当該配向材を塗布し、配向膜を
形成する工程と、
前記凹部を反映して、前記透過表示領域における層厚より前記反射表示領域における層
厚の方が薄く構成される前記液晶を配置する工程と、を具備することを特徴とする液晶装
置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−282038(P2008−282038A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176571(P2008−176571)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【分割の表示】特願2005−286275(P2005−286275)の分割
【原出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(304053854)エプソンイメージングデバイス株式会社 (2,386)
【Fターム(参考)】