説明

液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法、および液滴吐出装置

【課題】 低コスト化および小型化を図りつつ、複数のノズルを高密度に配することができる液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法、および液滴吐出装置を提供すること。
【解決手段】 液滴吐出ヘッド100は、液滴を吐出するためのヘッド部A、Bが複数重ねられている。互いに隣接する2つのヘッド部Aとヘッド部Bとは、それらの間に共通基板30を共有しており、一方のヘッド部Bの電極34が共通基板30の一方の面に設けられているとともに、共通基板30の他方の面により他方のヘッド部Aの収容室70が区画形成されている。また、互いに隣接する2つのヘッド部Aとヘッド部Aとは、それらの間に共通基板10を共有しており、一方のヘッド部Aの電極12が共通基板10の一方の面に設けられているとともに、共通基板10の他方の面に他方のヘッド部Aの電極12が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電駆動方式を採用する液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法、および液滴吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、インクジェットプリンタ等の液滴吐出装置には、液滴を吐出するための液滴吐出ヘッドが備えられている。液滴吐出ヘッドとしては、ノズルに連通し、液体を収容する収容室と、この収容室の一部を区画形成する振動板と、この振動板に微小空隙を隔てて対向する電極とを備えるもの(静電駆動方式)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような液滴吐出ヘッドでは、前記振動板と前記電極との間に電圧が印加されることにより、これらの間に静電引力が生じる。この静電引力により、前記振動板が前記電極に引き付けられて変形して、前記収容室の容積が拡大する。そして、前記電圧の印加が解除されることにより、前記振動板が元の状態に復元して、収容室の容積が縮小して、ノズルから液滴が吐出される。
特許文献1の液滴吐出ヘッドは、振動板を有する基板と他の基板とを接合してこれらの間でノズルおよび収容室を区画形成してなる複数のチップが、電極を有する電極基板に沿って、前記電極基板に接合されている。
【0004】
しかし、特許文献1の液滴吐出ヘッドでは、複数のチップを電極基板に接合するに際し、複数のチップ間でのノズルの位置決めのため、チップの位置を1ずつ調整しなければならないので、液滴吐出ヘッドの製造時に光学計測やチップ同士の接合等の複雑な工程が必要となる。その結果、液滴吐出ヘッドの高コスト化を招くこととなってしまう。
また、ヘッドチップを電極基板に沿って並べて配置しているため、ノズル数を一方向にしか増やすことができない。仮に、このような液滴吐出ヘッドを基板の板厚方向に積層して、ノズル数を増やしても、ノズル同士の間に、前記2枚の基板および電極基板の3つの基板が介在することとなるので、ノズル同士の間の距離を小さくすることが難しい。その結果、液滴吐出ヘッドの大型化を招くこととなってしまう。
【0005】
【特許文献1】特開2000−154652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低コスト化および小型化を図りつつ、複数のノズルを高密度に配することができる液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法、および液滴吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するためのヘッド部が複数重ねられた液滴吐出ヘッドであって、
前記各ヘッド部は、ノズルと、該ノズルに連通し、液体を収容する収容室と、該収容室の一部を区画形成する振動板と、該振動板に微小間隔を隔てて対向する電極とを有し、前記振動板と前記電極との間に電圧が印加されることにより、前記振動板を変位させて、前記収容室の容積を変化させ、前記ノズルから前記液体を液滴として吐出するよう構成されており、
互いに隣接する2つのヘッド部は、それらの間に共通基板を共有しており、一方のヘッド部の電極が前記共通基板の一方の面に設けられているとともに、前記共通基板の他方の面により他方のヘッド部の収容室が区画形成されていることを特徴とする。
【0008】
これにより、複数のヘッド部を共通基板の板厚方向に重ねることができるので、ヘッド部を構成する基板の材料となるウエハ同士の位置決めを行うことにより、比較的容易に、複数のヘッド部間のノズルの位置決めを行うことができる。その結果、複雑な工程を要することなく、液滴吐出ヘッドの製造に要する時間を短縮することができ、液滴吐出ヘッドの低コスト化を図ることができる。
【0009】
また、1つの共通基板が一方のヘッド部の電極のための基板と他方のヘッド部の収容室を形成するための基板とを兼ねるので、互いに隣接するヘッド部間におけるノズル同士の距離を小さくすることが容易である。その結果、液滴吐出ヘッドの小型化を図りつつ、複数のノズルを高密度に配することができる。また、液滴吐出ヘッドを構成する部品点数が低減されるとともに、製造工程が簡略化されるので、液滴吐出ヘッドの低コスト化を図ることができる。
【0010】
本発明の液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するためのヘッド部が複数重ねられた液滴吐出ヘッドであって、
前記各ヘッド部は、ノズルと、該ノズルに連通し、液体を収容する収容室と、該収容室の一部を区画形成する振動板と、該振動板に微小間隔を隔てて対向する電極とを有し、前記振動板と前記電極との間に電圧が印加されることにより、前記振動板を変位させて、前記収容室の容積を変化させ、前記ノズルから前記液体を液滴として吐出するよう構成されており、
互いに隣接する2つのヘッド部は、それらの間に共通基板を共有しており、一方のヘッド部の電極が前記共通基板の一方の面に設けられているとともに、前記共通基板の他方の面に他方のヘッド部の電極が設けられていることを特徴とする。
【0011】
これにより、複数のヘッド部を共通基板の板厚方向に重ねることができるので、ヘッド部を構成する基板の材料となるウエハ同士の位置決めを行うことにより、比較的容易に、複数のヘッド部間のノズルの位置決めを行うことができる。その結果、複雑な工程を要することなく、液滴吐出ヘッドの製造に要する時間を短縮することができ、液滴吐出ヘッドの低コスト化を図ることができる。
【0012】
また、1つの共通基板が一方のヘッド部の電極のための基板と他方のヘッド部の電極のための基板とを兼ねるので、互いに隣接するヘッド部間におけるノズル同士の距離を小さくすることが容易である。その結果、液滴吐出ヘッドの小型化を図りつつ、複数のノズルを高密度に配することができる。また、液滴吐出ヘッドを構成する部品点数が低減されるとともに、製造工程が簡略化されるので、液滴吐出ヘッドの低コスト化を図ることができる。
【0013】
本発明の液滴吐出ヘッドは、液滴を吐出するためのヘッド部が複数重ねられた液滴吐出ヘッドであって、
前記各ヘッド部は、ノズルと、該ノズルに連通し、液体を収容する収容室と、該収容室の一部を区画形成する振動板と、該振動板に微小間隔を隔てて対向する電極とを有し、前記振動板と前記電極との間に電圧が印加されることにより、前記振動板を変位させて、前記収容室の容積を変化させ、前記ノズルから前記液体を液滴として吐出するよう構成されており、
互いに隣接する2つのヘッド部は、それらの間に共通基板を共有しており、一方のヘッド部の収容室が前記共通基板の一方の面により区画形成されているとともに、前記共通基板の他方の面により他方のヘッド部の収容室が区画形成されていることを特徴とする。
【0014】
これにより、複数のヘッド部を共通基板の板厚方向に重ねることができるので、ヘッド部を構成する基板の材料となるウエハ同士の位置決めを行うことにより、比較的容易に、複数のヘッド部間のノズルの位置決めを行うことができる。その結果、複雑な工程を要することなく、液滴吐出ヘッドの製造に要する時間を短縮することができ、液滴吐出ヘッドの低コスト化を図ることができる。
【0015】
また、1つの共通基板が一方のヘッド部の収容室を形成するための基板と他方のヘッド部の収容室を形成するための基板とを兼ねるので、互いに隣接するヘッド部間におけるノズル同士の距離を小さくすることが容易である。その結果、液滴吐出ヘッドの小型化を図りつつ、複数のノズルを高密度に配することができる。また、液滴吐出ヘッドを構成する部品点数が低減されるとともに、製造工程が簡略化されるので、液滴吐出ヘッドの低コスト化を図ることができる。
【0016】
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記互いに隣接する2つのヘッド部は、前記共通基板を介して、前記一方のヘッド部と前記他方のヘッド部とが対称な形状に配置されていることが好ましい。
これにより、各基板の共通化を図ることができ、液滴吐出ヘッドの設計がより簡単なものとなりコストも下げることができる。
【0017】
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記共通基板には、前記振動板を有する振動基板が接合され、前記共通基板と前記振動基板とが交互に積層されていることが好ましい。
これにより、液滴吐出ヘッドの構造をより簡単なものとすることができ、製造工程の短縮によりコストを下げることができる。
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記共通基板および前記振動基板からなる複数の基板のうち、該基板の板厚方向における液滴吐出ヘッドの中央部側に位置する基板の面積が、端部側に位置する基板の面積よりも大きくなっていることが好ましい。
これにより、共通基板の材料となる基板と振動基板の材料となる基板とを、ウエハの状態で積層した後に、振動板と電極とに電圧を印加しやすい形状に、比較的簡単に加工することができる。
【0018】
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記基板の板厚方向における液滴吐出ヘッドの中央部側に位置する基板の端部が、印加端部側に位置する基板に対し突出し、前記端部を介して前記振動板または前記電極に通電するように構成されていることが好ましい。
これにより、基板の端部から振動板または電極に通電して、振動板と電極との間に電圧を印加することができる。
【0019】
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記ノズルおよび前記収容室は、前記共通基板と前記振動基板とにより区画形成されることが好ましい。
これにより、液滴吐出ヘッドの構造をさらに簡単なものとすることができる。
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記振動基板は、シリコンを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、振動板の加工精度をより優れたものとすることができる。
【0020】
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記共通基板は、ガラスを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、共通基板を比較的安価なものとすることができる。
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記共通基板と前記振動基板とは互いに陽極接合により接合されていることが好ましい。
これにより、共通基板と振動基板との接合強度をより高いものとし、液滴吐出ヘッドの耐久性を向上させることができる。
また、接着剤等を用いることなく、共通基板と振動基板とを接合することができるので、使用する液体の選択の幅がより大きいものとなる。
【0021】
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記共通基板は、前記ノズルを区画形成するための溝が形成されていることが好ましい。
これにより、ノズル形状の自由度が高くなり、幅広い設計を可能とすることができる。
本発明の液滴吐出ヘッドでは、前記振動基板は、前記ノズルを区画形成するための溝が形成されていることが好ましい。
これにより、共通基板の加工が一方の面のみで済むので、共通基板の加工が容易となる。
【0022】
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法は、液滴を吐出するためのヘッド部が複数重ねられ、前記各ヘッド部が、ノズルと、該ノズルに連通し、液体を収容する収容室と、該収容室の一部を区画形成する振動板と、該振動板に微小間隔を隔てて対向する電極とを有し、前記振動板と前記電極との間に電圧が印加されることにより、前記振動板を変位させて、前記収容室の容積を変化させ、前記ノズルから前記液体を液滴として吐出するよう構成されている液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
第1の基板の一方の面に前記電極を形成して、共通基板を得る第1の工程と、
前記共通基板の両面に、前記振動板を有する振動基板を接合して、前記共通基板の一方の面側で、前記電極と前記振動板とを微小間隔を隔てて対向させるとともに、前記共通基板の他方の面側で、前記ノズルおよび前記収容室を形成する第2の工程とを有することを特徴とする。
これにより、低コスト化および小型化の図られた液滴吐出ヘッドを得ることができる。
【0023】
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法は、液滴を吐出するためのヘッド部が複数重ねられ、前記各ヘッド部が、ノズルと、該ノズルに連通し、液体を収容する収容室と、該収容室の一部を区画形成する振動板と、該振動板に微小間隔を隔てて対向する電極とを有し、前記振動板と前記電極との間に電圧が印加されることにより、前記振動板を変位させて、前記収容室の容積を変化させ、前記ノズルから前記液体を液滴として吐出するよう構成されている液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
第1の基板の両方の面に前記電極を形成して、共通基板を得る第1の工程と、
前記共通基板の両面に、前記振動板を有する振動基板を接合して、前記共通基板の両面側で、前記電極と前記振動板とを微小間隔を隔てて対向させる第2の工程とを有することを特徴とする。
これにより、低コスト化および小型化の図られた液滴吐出ヘッドを得ることができる。
【0024】
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法は、液滴を吐出するためのヘッド部が複数重ねられ、前記各ヘッド部が、ノズルと、該ノズルに連通し、液体を収容する収容室と、該収容室の一部を区画形成する振動板と、該振動板に微小間隔を隔てて対向する電極とを有し、前記振動板と前記電極との間に電圧が印加されることにより、前記振動板を変位させて、前記収容室の容積を変化させ、前記ノズルから前記液体を液滴として吐出するよう構成されている液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
第1の基板を加工して、前記ノズルの一部を区画形成するための共通基板を得る第1の工程と、
前記共通基板の両面に、前記振動板を有する振動基板を接合して、前記共通基板の両面側で、前記ノズルおよび前記収容室を形成する第2の工程とを有することを特徴とする。
これにより、低コスト化および小型化の図られた液滴吐出ヘッドを得ることができる。
【0025】
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記第1の工程において、前記第1の基板をプレス成形し、前記共通基板を得ることが好ましい。
これにより、より高精度な共通基板を比較的簡単に得ることができる。
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記プレス成形は、前記第1の基板の両面に対し同時に行うことが好ましい。
これにより、より高精度な共通基板をさらに簡単に得ることができる。
【0026】
本発明の液滴吐出ヘッドの製造方法では、前記第1の基板は、ガラスを主材料として構成されていることが好ましい。
これにより、より確実に、より高精度な共通基板を得ることができる。
本発明の液滴吐出装置は、本発明の液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする。
これにより、低コスト化および小型化の図られた液滴吐出装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドの製造方法、および液滴吐出装置の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態を説明する。
【0028】
◆◆◆液滴吐出装置◆◆◆
まず、本発明の液滴吐出ヘッドを備える液滴吐出装置、すなわち本発明の液滴吐出装置を簡単に説明する。なお、以下、液滴吐出装置としてインクジェットプリンタに本発明を適用した例を説明するが、本発明はこれに限定されない。
図1は、本発明のインクジェットプリンタの第1実施形態を示す概略図である。なお、以下の説明では、図1中、上側を「上部」、下側を「下部」という。
図1に示すインクジェットプリンタ1は、装置本体2を備えており、上部後方に記録用紙(記録媒体)Pを設置するトレイ2Aと、下部前方に記録用紙Pを排出する排紙口2Bと、上部面に操作パネル7とが設けられている。
【0029】
操作パネル7は、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、LEDランプ等で構成され、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示せず)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示せず)とを備えている。
また、装置本体2の内部には、主に、往復動するヘッドユニット3を備える印刷装置(印刷手段)4と、記録用紙Pを1枚ずつ印刷装置4に送り込む給紙装置(給紙手段)5と、印刷装置4および給紙装置5を制御する制御部(制御手段)6と、各部に電力を供給する電源部(図示せず)とを有している。
【0030】
制御部6の制御により、給紙装置5は、記録用紙Pを一枚ずつ間欠送りする。この記録用紙Pは、ヘッドユニット3の下部近傍を通過する。このとき、ヘッドユニット3が記録用紙Pの送り方向とほぼ直交する方向に往復移動して、記録用紙Pへの印刷が行なわれる。すなわち、ヘッドユニット3の往復動と記録用紙Pの間欠送りとが、印刷における主走査および副走査となって、インクジェット方式の印刷が行なわれる。
【0031】
印刷装置4は、ヘッドユニット3と、ヘッドユニット3の駆動源となるキャリッジモータ4Aと、キャリッジモータ4Aの回転を受けて、ヘッドユニット3を往復動させる往復動機構4Bとを備えている。
ヘッドユニット3は、その下部に、本発明の液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)100と、液滴吐出ヘッド100にインクを供給するインクカートリッジ3Aと、液滴吐出ヘッド100およびインクカートリッジ3Aを搭載したキャリッジ3Bとを有している。
【0032】
なお、インクカートリッジ3Aとして、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(黒)の4色のインクを充填したものを用いることにより、フルカラー印刷が可能となる。この場合、ヘッドユニット3には、各色にそれぞれ対応した液滴吐出ヘッド100が設けられることになる。
往復動機構4Bは、その両端をフレーム(図示せず)に支持されたキャリッジガイド軸4B1と、キャリッジガイド軸4B1と平行に延在するタイミングベルト4B2とを有している。
【0033】
キャリッジ3Bは、キャリッジガイド軸4B1に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト4B2の一部に固定されている。
キャリッジモータ4Aの動作により、プーリ(図示せず)を介してタイミングベルト4B2を正逆走行させると、キャリッジガイド軸4B1に案内されて、ヘッドユニット3が往復動する。そして、この往復動の際に、液滴吐出ヘッド100から適宜インクが吐出され、記録用紙Pへの印刷が行われる。
【0034】
給紙装置5は、その駆動源となる給紙モータ5Aと、給紙モータ5Aの作動により回転する給紙ローラ5Bとを有している。
給紙ローラ5Bは、記録用紙Pの送り経路(記録用紙P)を挟んで上下に対向する従動ローラ5B1と駆動ローラ5B2とで構成され、駆動ローラ5B2は給紙モータ5Aに連結されている。これにより、給紙ローラ5Bは、トレイ2Aに設置した多数枚の記録用紙Pを、印刷装置4に向かって1枚ずつ送り込めるようになっている。なお、トレイ2Aに代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成であってもよい。
【0035】
制御部6は、例えばパーソナルコンピュータやディジタルカメラ等のホストコンピュータから入力された印刷データに基づいて、印刷装置4や給紙装置5等を制御することにより印刷を行うものである。
制御部6は、いずれも図示しないが、主に、各部を制御する制御プログラム等を記憶するメモリ、圧電素子(振動源)を駆動して、インクの吐出タイミングを制御する圧電素子駆動回路、印刷装置4(キャリッジモータ4A)を駆動する駆動回路、給紙装置5(給紙モータ5A)を駆動する駆動回路、ホストコンピュータからの印刷データを入手する通信回路、および、印刷データを処理するデータ処理回路と、これらに電気的に接続され、各部での各種制御を行うCPUとを備えている。
【0036】
また、CPUには、例えば、液滴吐出ヘッド100の周囲の環境条件(例えば、温度、湿度等)、インクの吐出状況、記録用紙(記録媒体)P上の印刷状況、記録用紙Pの供給状態、記録用紙Pの印刷部位付近の雰囲気のインク溶媒濃度等を検出可能な各種センサが、それぞれ電気的に接続されている。
このようなインクジェットプリンタ1では、まず、CPUが、通信回路を介して、印刷データを入手してメモリに格納する。次いで、データ処理回路は、この印刷データを処理する。次いで、CPUは、この処理データおよび各種センサの検出データに基づいて、各駆動回路にそれぞれ駆動信号を出力する。この駆動信号により印刷装置4および給紙装置5は、それぞれ作動する。これにより、記録用紙Pに印刷が行われる。
【0037】
◆◆◆液滴吐出ヘッド◆◆◆
次に、本発明の液滴吐出ヘッドである液滴吐出ヘッド100を詳細に説明する。
図2は、液滴吐出ヘッド100の概略構成を示す上半分の分解斜視図であり、図3は、液滴吐出ヘッド100の概略構成を示す断面図である。なお、以下の説明では、図2および図3中、上側を「上」、下側を「下」という。また、図2では、共通基板10よりも下方の図示を省略してある。
【0038】
図2および図3に示すように、液滴吐出ヘッド100は、上下方向でのほぼ中央に、共通基板10を有し、この共通基板10の両面に、振動基板20、共通基板30、振動基板40、端部基板50が順次積層(接合)されている。言い換えすれば、液滴吐出ヘッド100は、共通基板10に対して、上下にほぼ対称な構成をなすように、振動基板20、共通基板30、振動基板40、端部基板50が順次積層(接合)されている。
【0039】
共通基板10は、その両面に、複数の凹部11が形成されているとともに、その底面に電極(個別電極)12が設けられている。
共通基板10は、ガラスを主材料として構成されているのが好ましい。これにより、共通基板10の加工精度を優れたものとしつつ、共通基板10を比較的安価に得ることができる。なお、このことは、後述する共通基板30、端部基板50についても同様である。
【0040】
このような共通基板10に接合された振動基板20は、図2および図3に示すように、前述した電極12に対応する部位に凹部21が形成されている。この凹部21により振動基板20の肉薄化された部分が、電極12に対し微小間隔を隔てて対向する振動板23をなしている。
【0041】
この振動板23は、前述した電極12との間に電圧を印加する電圧印加装置(図示せず)に接続されており、この電圧印加装置からの電圧により弾性変形する。
また、振動基板20は、前記凹部21と間隔を隔てて、1つの凹部22が形成されている。
さらに、振動基板20は、下面近傍に、シリコンの酸化膜(SiO)等の絶縁層24が形成されている。これにより、振動板23と電極12との接触による短絡を好適に防止することができる。
【0042】
振動基板20は、シリコンを主材料として構成されているのが好ましい。これにより、振動板23の加工精度をより優れたものとすることができる。なお、このことは、後述する振動基板40についても同様である。
振動基板20がシリコンを主材料として構成されているとともに、共通基板10がガラスを主材料として構成されている場合には、共通基板10と振動基板20とは互いに陽極接合により接合されているのが好ましい。これにより、共通基板10と振動基板20との接合強度をより高いものとし、液滴吐出ヘッド100の耐久性を向上させることができる。また、接着剤等を用いることなく、共通基板10と振動基板20とを接合することができるので、使用する液体の選択の幅がより大きいものとなる。なお、このことは、振動基板20と共通基板30との接合、共通基板30と振動基板40との接合、さらには、振動基板40と端部基板50との接合についても同様である。
【0043】
このような振動基板20に接合された共通基板30は、その一方の面(振動基板20に対向する側の面)に、前述の凹部21に対応して、外部に通ずる溝31と、これに間隔を隔てた溝32とが形成されている。また、共通基板30には、凹部22に対応する部位に、孔35が形成されている。
前述した凹部21、凹部22、溝31、溝32により、振動基板20と共通基板30との間には、ノズル60と、これに連通し、インク(液体)を収容する収容室(キャビティ)70と、収容室70に供給するインクを収容するリザーバ80と、収容室70とリザーバ80とを連通させるインク供給口90が形成されている。より具体的には、ノズル60は、溝31の壁面と振動基板20の面とにより区画形成されている。また、インク供給口(オリフィス)90は、溝32の壁面と振動基板20の面とにより区画形成されている。また、収容室70は、凹部21の壁面と共通基板30の面とにより区画形成されている。また、リザーバ80は、凹部22の壁面と共通基板30の面とにより区画形成されている。
【0044】
収容室70は、前述した振動板23の振動(変位)により、その容積が変化して、ノズル60からインク(液体)を液滴状に吐出するよう構成されている。
すなわち、前述した共通基板10、振動基板20、共通基板30により、液滴を吐出するヘッド部Aが構成されている。
共通基板30は、ノズル60を区画形成するための溝31が形成されているので、例えば、後述する製造工程のようにプレス成形を用いることにより、ノズル60の加工精度をより優れたものとすることができる。
【0045】
このようなヘッド部Aに他のヘッド部Bを積層するため、共通基板30の他方の面(振動基板40に対向する側の面)には、前述した共通基板10の凹部11、電極12と同様に、凹部33および電極(個別電極)34が設けられている。
このような共通基板30に接合された振動基板40は、前述した振動基板20と同様に構成されている。
【0046】
すなわち、前述した電極34に対応する部位に凹部41が形成されている。この凹部41により振動基板40を肉薄化した部分が、電極34に対し微小間隔を隔てて対向する振動板43をなしている。また、振動基板40には、孔35に対応する部位に、孔45が形成されている。
【0047】
この振動板43は、前述した電極34との間に電圧を印加する電圧印加装置(図示せず)に接続されており、この電圧印加装置からの電圧により弾性変形する。
また、振動基板40は、前記凹部41と間隔を隔てて、1つの凹部42が形成されている。
さらに、振動基板40は、下面近傍に、シリコンの酸化膜(SiO)等の絶縁層44が形成されている。これにより、振動板43と電極34との接触による短絡を好適に防止することができる。
【0048】
このような振動基板40に接合された端部基板50の一方の面は、前述した共通基板30の振動基板20に対向する面と同様に構成されている。
すなわち、端部基板50は、その一方の面(振動基板40に対向する側の面)に、前述の凹部41に対応して、外部に通ずる溝51と、これに間隔を隔てた溝52とが形成されている。また、端部基板50には、凹部42に対応する部位に孔53が形成されているとともに、孔45に対応する部位に孔54が形成されている。
【0049】
ヘッド部Bにおいても、ヘッド部Aと同様に、前述した凹部41、凹部42、溝51、溝52により、振動基板40と端部基板50との間には、ノズル60と、これに連通し、インク(液体)を収容する収容室(キャビティ)70と、収容室70に供給するインクを収容するリザーバ80と、収容室70とリザーバ80とを連通させるインク供給口90が形成されている。
【0050】
このようにして、前述した共通基板30、振動基板40、端部基板50により、液滴を吐出するヘッド部Bが構成されている。
このような液滴吐出ヘッド100にあっては、互いに隣接する2つのヘッド部である、ヘッド部Aとヘッド部Bとは、共通基板である共通基板30の一方の面に一方のヘッド部Bの電極が設けられているとともに、共通基板30の他方の面により他方のヘッド部Aの収容室70が区画形成されている。
【0051】
また、互いに隣接する2つのヘッド部である、ヘッド部A同士は、共通基板である共通基板10の一方の面に一方のヘッド部Aの電極が設けられているとともに、共通基板10の他方の面に他方のヘッド部Aの電極が設けられている。
このような液滴吐出ヘッド100は、複数のヘッド部A、Bを各基板の板厚方向(共通基板の板厚方向)に重ねられているので、後述する製造工程において、ヘッド部A、Bを構成する基板、すなわち共通基板10、30、振動基板20、40、端部基板50の材料となるウエハ同士の位置決めを行うことにより、比較的容易に、ヘッド部Aとヘッド部Bとの間、およびヘッド部A同士の間のノズルの位置決めを行うことができる。その結果、複雑な工程を要することなく、液滴吐出ヘッド100の製造に要する時間を短縮することができ、液滴吐出ヘッド100の低コスト化を図ることができる。
【0052】
また、1つの共通基板30が一方のヘッド部Bの電極のための基板と他方のヘッド部Aの収容室を形成するための基板とを兼ねるので、互いに隣接するヘッドA−B間におけるノズル同士の距離を小さくすることが容易である。その結果、液滴吐出ヘッド100の小型化を図ることができる。また、液滴吐出ヘッド100を構成する部品点数が低減されるとともに、製造工程が簡略化されるので、液滴吐出ヘッド100の低コスト化を図ることができる。
【0053】
また、1つの共通基板10が一方のヘッド部Aの電極のための基板と他方のヘッド部Aの電極のための基板とを兼ねるので、互いに隣接するヘッドA−A間におけるノズル同士の距離を小さくすることが容易である。その結果、液滴吐出ヘッド100の小型化を図ることができる。また、液滴吐出ヘッド100を構成する部品点数が低減されるとともに、製造工程が簡略化されるので、液滴吐出ヘッド100の低コスト化を図ることができる。
【0054】
また、共通基板10には、振動板23を有する振動基板20が接合され、共通基板30には、振動基板20と、振動板43を有する振動基板40とが接合されており、共通基板と振動基板とが交互に積層されているので、液滴吐出ヘッド100の構造をより簡単なものとすることができる。
【0055】
また、ノズル60および収容室70が共通基板と振動基板とにより区画形成されているので、液滴吐出ヘッド100の構造がさらに簡単なものとなっている。
また、共通基板および振動基板の面積(大きさ)が共通基板10、振動基板20、共通基板30、振動基板40、端部基板50の順となっている。すなわち、共通基板および振動基板からなる複数の基板のうち、該基板の板厚方向における液滴吐出ヘッド100の中央部側に位置する基板の面積が、端部側に位置する基板の面積よりも大きくなっている。これにより、後述する製造工程において、共通基板と振動基板とを、ウエハの状態で積層した後に、振動板と電極とに電圧を印加しやすい形状に、比較的簡単に加工することができる。
【0056】
また、共通基板10、振動基板20、共通基板30、振動基板40、端部基板50において、前記基板の板厚方向における液滴吐出ヘッド100の中央部側に位置する基板の端部が、印加端部側に位置する基板に対し突出し、前記端部を介して振動板または電極に通電するように構成されている。すなわち、共通基板10、振動基板20、共通基板30、振動基板40のそれぞれの図3における右側の端部は、露出していて、はんだや導電粒子等により配線を固定しやすいようになっている。これにより、基板の端部から振動板または電極に通電して、振動板と電極との間に電圧を印加することができる。
【0057】
また、互いに隣接する2つのヘッド部A、A同士は、共通基板10を介して、一方のヘッド部Aと他方のヘッド部Aとが対称な形状に配置されている。すなわち、互いに隣接する2つのヘッド部A、A同士は、共通基板10を介して、一方のヘッド部Aと他方のヘッド部Aとが鏡像関係となっている。これにより、液滴吐出ヘッド100の設計がより簡単なものとなり、一方のヘッド部Aと他方のヘッド部Aで共通基板20および振動基板30を共通化することができる。これは、ヘッド部Bに関しても同様である。
【0058】
以上のような構成の液滴吐出ヘッド100は、次のようにして駆動する。なお、以下の説明では、ヘッド部Aの動作について説明し、ヘッド部Bの動作については、ヘッド部Aの動作と同様であるので、その説明を省略する。
振動板23と電極12との間に、電圧を印加すると、振動板23と電極12との間に、静電引力(クーロン力)が生じる。この静電引力により、振動板23が下方に撓んで変位する。
【0059】
このようにして、収容室70内の容積が拡大する。その際、インクには、図示しないインクカートリッジから収容室70へ向かう圧力(正方向への圧力)とノズル60から収容室70へ向かう圧力とが作用している。これらの圧力に対してノズル60にはメニスカスの表面張力が作用しているため、空気がノズル60から収容室70へ入り込むことが防止され、インクの吐出量に見合った量のインクが前記インクカートリッジからリザーバ80およびインク供給口90を介して収容室70へ供給される。このとき、前記インクカートリッジから凹部22によるリザーバ80へのインク供給は、孔54、45、35を通じて行われる。前記インクカートリッジから凹部42によるリザーバ80へのインク供給は、孔53を通じて行われる。
【0060】
このように収容室70の容積が拡大された状態から、振動板23と電極12との間の電位差を急激に低下させると、振動板23は、その弾性復元力によって図中上方に復元して、初期状態となる。
これにより、収容室70の容積が急激に収縮する。その結果、収容室70を満たすインク(液体)の一部が、この収容室70に連通するノズル60からインク滴として吐出される。
【0061】
◆◆◆液滴吐出ヘッドの製造方法◆◆◆
前述した液滴吐出ヘッド100は、例えば、次のようにして製造することができる。
図4〜図5は、液滴吐出ヘッド100の製造工程を説明するための模式的な縦断面図、図6は、プレス成形装置の縦断面図である。なお、以下では、図4〜7中、上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」、左側を「先方」、右側を「後方」として説明する。また、共通基板がガラスを主材料として構成され、振動基板がシリコンを主材料として構成されている場合を例に説明する。
液滴吐出ヘッド100の製造方法は、振動基板20、40の製造工程と、共通基板10、30の製造工程(第1の工程)と、端部基板50の製造工程と、振動基板と共通基板と端部基板との接合工程(第2の工程)とを有する。以下、これらの工程を順次説明する。
【0062】
(振動基板の製造工程)
まず、振動基板20を製造する。
図4(A)に示すように、例えば、シリコンを主材料として構成された基板110を用意する。
次に、図4(B)に示すように、基板110の両面に、熱酸化処理により、酸化膜111(SiO膜)を形成する。
熱酸化処理の方法としては、特に限定されず、スチーム酸化、ウェット酸化、ドライ酸化、高圧酸化、希釈酸素酸化等のうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、スチーム酸化の場合には、水蒸気を含有する酸素存在雰囲気下で行う。
【0063】
次に、図4(C)に示すように、基板110の下方の面側の酸化膜111bを除去し、基板110の下方の面にボロン等を所望する振動板の厚み分だけ拡散した拡散層112を形成する。
次に、図4(D)に示すように、基板110の上方の面側の酸化膜111aのうち、凹部21、22を形成する領域を除去する。このとき、凹部22に対応する領域については、酸化膜の膜厚の半分程度だけ除去する。
【0064】
次に、図4(E)に示すように、酸化膜111aを介して、基板110を水酸化カリウム水溶液等で途中までエッチングする。
そして、基板110の前記上方の面側の酸化膜111aをその膜厚の半分だけ除去して、凹部22に対応する領域の酸化膜111aを完全に除去した後に、酸化膜111aを介して、基板110をエッチングする。これにより、凹部21、22が形成される。
【0065】
また、拡散層112では水酸化カリウム等によるエッチングが極端に遅くなるため、拡散層112は薄膜状に残り、これが高精度な振動板23となる。
次に、図4(F)に示すように、必要に応じて酸化膜111を全て除去した後に、基板110の全面にドライ酸化等で絶縁膜113を成膜する。
これには、酸化膜の優れた親水性により、インク流路をなす収容室70およびリザーバ80へのインクの充填性を優れたものとする効果も期待できる。
また、振動基板20と同様にして、振動基板40を製造する。
【0066】
(共通基板の製造工程)
まず、共通基板30を製造する。
図5(G)に示すように、ガラスを主材料とする基板120を用意し、これを、下型130と上型140との間に介在させる。
基板120としては、基板110(振動基板20、40)との熱膨張係数の差が小さいものを用いるのが好ましい。具体的には、基板120を構成するガラスの熱膨張係数は、20×10−7〜90×10−7−1であるのが好ましく、35×10−7〜45×10−7−1であるのがより好ましい。これにより、振動基板20、40と共通基板10、30、50を接合するに際して、これらの基板に生じる応力が小さく抑えられ、基板の破損を防止することができる。例えば、基板110としてシリコン基板を使用する場合、基板120としては、硼珪酸ガラスを主材料とする基板等を使用するのが好ましい。これは、これらの材料が、シリコンと熱膨張特性が近似しているためである。
【0067】
上型140は、基板120に形成すべき凹部33に対応した凹凸が形成された型であり、下型130は、基板120に形成すべき溝31、32に対応した凹凸が形成された型である。すなわち、上型140には、凹部33の凹凸パターンの反転パターンが形成され、下型130には、溝31、32の凹凸パターンの反転パターンが形成されている。
下型130および/または上型140の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、石英、シリコン、セラミック、カーボン等が挙げられ、これらの中でも、石英を使用するのが好ましい。これにより、良好な転写性が得られ、また耐久性に優れ繰り返し使用が可能な下型130および/または上型140が得られる。
【0068】
また、下型130および/または上型140には、前記他方の面(以下、「押し当て面」ともいう)に離型処理が施されているのが好ましい。これにより、基板120を、下型130および/または上型140から容易に取り外すことができる。
前記離型処理は、下型130および/または上型140の少なくとも押し当て面に、離型剤を付与することにより行うことができる。離型剤としては、Rh、Pd、Ag、Ir、Pt、Au、またはこれらのうち少なくとも1種を含む合金などが挙げられる。
【0069】
特に、前記離型処理は、下型130および/または上型140の少なくとも押し当て面に、Ptを含む合金および/またはIrを含む合金で構成された薄膜を形成するものであるのが好ましい。これにより、基板120を、下型130および/または上型140からより容易に取り外すことができる。
この場合、前記薄膜は、前記薄膜と下型130および/または上型140との密着性を向上させるための下地層を介して、下型130および/または上型140の少なくとも押し当て面に形成されているのが好ましい。これにより、下型130および/または上型140と前記薄膜との密着性が向上し、基板120を下型130および/または上型140から取り外すに際して、下型130および/または上型140からの薄膜の剥離が防止される。
【0070】
下地層としては、前記薄膜と下型130および/または上型140との密着性を向上させるものであれば、特に限定されず、例えば、Ni、Cr、Co等の金属を主材料とするものが挙げられるが、Niを主材料として構成されているものが好ましい。
また、前記離型処理は、下型130および/または上型140の押し当て面に、粗面化加工を施した後に行われるのが好ましい。
【0071】
前記粗面化加工は、特に限定されず、例えば、サンドブラスト処理、ショットブラスト処理、酸またはアルカリによる表面処理、逆スパッタ処理などが挙げられる。これらの中でも、逆スパッタ処理であるのが好ましい。これにより、下型130および/または上型140の外表面(押し当て面)が逆スパッタ処理により粗面化されるので、下型130および/または上型140と前記薄膜との密着性がより向上する。
【0072】
具体的には、例えば、石英製の下型130および/または上型140に対し、Niを主材料として構成された下地層を形成した後に、Pt−Ir合金を主材料として構成された薄膜を形成する場合には、少なくとも離型剤を付与する領域に、逆スパッタ処理を行うことによって表面を粗面化した後、下地層、薄膜を順次形成するのが好ましい。これにより、下型130および/または上型140と下地層および/または薄膜との密着性がよくなり、基板120を下型130および/または上型140から取り外す際に、下地層および/または薄膜が下型130および/または上型140から剥離してしまうのが防止される。
【0073】
次に、基板120に、下型130および上型140を用いて、プレス成形によって凹部33、溝31、32を形成する。
このプレス成形は、下型130と上型140とによって、加熱された基板120を狭圧することによって行う。より具体的には、このプレス成形は、例えば、図6に示すプレス成形装置200を用いて行われる。
このプレス成形装置200は、下型130を保持する下保持体201と、上型140を保持する上保持体202とを有している。
【0074】
下保持体201は、上面にプレス面203Aを有する円柱状本体203と、その周囲を覆う胴型204とを有しており、円柱状本体203に対して胴型204が相対的に移動し得るように構成されている。また、円柱状本体203には加熱手段および冷却手段が設けられており、下型130上に載置された基板120を、適宜加熱または冷却し得るようになっている。
下型130は、円柱状本体203のプレス面203A上に載置され、円柱状本体203に取付けられた爪205によって固定されている。
【0075】
この下型130は、板状に形成されており、その一方の面がプレス面203Aに当接した状態で、下保持体201に保持されている。
一方、上保持体202は、下保持体201のプレス面203Aに対向するように、上型140が保持されている。この上保持体202は、図示しないエアシリンダの駆動軸に垂下支持され、下保持体201に対し接離する方向に移動可能となっている。
このようなプレス成形装置200によって基板120のプレス成形を行うには、下型130上に基板120を載置した状態で、基板120を加熱により軟化させる。
【0076】
加熱温度は、基板120の結晶化温度以上であるのが好ましく、350〜800℃であるのがより好ましく、550〜700℃であるのがさらに好ましい。加熱温度が前記下限値未満であると、基板120を構成する材料などによっては、基板120が十分に軟化せず、下型130や上型140の押し当て面の形状(溝31、32、凹部33)が、基板120に十分に転写されない可能性がある。また、加熱温度が前記上限値を超えると、プレス成形装置のプレス条件などによっては、下型130や上型140等、プレス成形装置の各部にダメージを与える可能性がある。
【0077】
次に、上保持体202を、下保持体201へ向け下降させる。そして、上保持体202に保持された上型140の押し当て面を、基板120に当接させ、加圧する。これにより、基板120は、図5(H)に示すように、下型130と上型140とにより狭圧され、溝31、32、凹部33が転写される。
この加圧による荷重は、10〜50kg/cm2であるのが好ましく、20〜30kg/cm2であるのがより好ましい。荷重が前記下限値未満であると、基板120や下型130および上型140を構成する材料や、加熱温度等によっては、下型130および/または上型140の押し当て面の形状が基板120に十分に転写されない可能性がある。また、荷重が前記上限値を超えると、基板120や下型130および上型140を構成する材料等によっては、基板120を適正な厚さとするのが困難になる。
そして、下型130および上型140による加圧状態を維持したまま、基板120を冷却する。その結果、下型130および上型140の押し当て面の形状が転写された状態で基板120が固化し、図5(I)に示すように、溝31、32、凹部33が形成された基板120が得られる。
【0078】
次に、基板120の凹部33が形成された側の面に、図5(J)に示すように、導電膜121を形成する。
導電膜121の構成材料としては、基板120上に形成できるとともに電極として機能するものであれば、特に限定されず、例えば、Pd、Pt、Au、W、Ta、Mo、Al、Cr、Ti、Cuまたはこれらを含む合金等の金属材料、ITO、FTO、ATO、SnO等の導電性酸化物等が挙げられる。さらに、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
導電膜121の形成方法としては、例えば、プラズマCVD、熱CVD、レーザーCVDのような化学蒸着法(CVD)、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、浸漬メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、溶射法、ゾル・ゲル法、MOD法、金属箔の接合等が挙げられる。
ここで、導電膜121の厚さは、凹部33の深さよりも小さいものとする。
【0080】
次に、導電膜121上に、フォトリソグラフィ法によって、電極34に対応する平面形状のフォトレジストを形成する。そして、このフォトレジストをマスクとして、導電膜121をエッチングした後、フォトレジストを剥離除去する。これにより、図5(K)に示すように、基板120の凹部33の底面に電極34が形成される。
この導電膜121のエッチング方法としては、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
以上の工程により共通基板30が作製される。
本工程(第1の工程)においては、基板120(第1の基板)をプレス成形し、共通基板30を得るので、より高精度な共通基板を比較的簡単に得ることができる。
特に、前記プレス成形は、基板120(第1の基板)の両面に対し同時に行うので、より高精度な共通基板30をさらに簡単に得ることができる。
【0082】
また、基板120(第1の基板)がガラスを主材料として構成されているので、より確実に、より高精度な共通基板30を得ることができる。
また、共通基板30と同様にして、共通基板10を製造する。このとき、共通基板10の製造に際しては、下型130に代えて、上型140を上下反転したような型を下型として用いる。
なお、共通基板の製造方法は、前述したものに限定されない。
例えば、基板120の一方の面に、例えば、クロムや金、アルミニウム等により金属膜のマスクを形成し、エッチングを行うことにより、溝31、32、凹部33を形成してもよい。
【0083】
(端部基板の製造工程)
また、共通基板30と同様にして、端部基板50を製造する。下型130および上型140を用いて、端部基板50を製造に際する場合には、例えば、上型140に代えて、平坦な板面をなす平板形状の型を上型として用いる。
(振動基板と共通基板と端部基板との接合工程)
前述のようにして得られた、共通基板10、振動基板20、共通基板30、振動基板40、端部基板50を順次、陽極接合により接合して、図1および図2に示すような液滴吐出ヘッド100を得る。なお、各基板の接合としては、陽極接合に限定されず、直接接合や接着接合を用いることもできる。例えば、各基板をすべてシリコン基板とした場合には、各基板を直接接合により接合することができる。
【0084】
<第2実施形態>
次に、本発明の液滴吐出ヘッドの第2実施形態について図に基づいて説明する。以下、第2実施形態について、前述した第1実施形態との違いを中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
図7は、本実施形態にかかる液滴吐出ヘッド100’の概略構成を示す図である。なお、以下では、図中、上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」として説明する。
【0085】
本実施形態の液滴吐出ヘッド100’は、ヘッド部A、Bの配置、ノズル60のための溝が形成される基板が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。
液滴吐出ヘッド100’は、図7に示すように、上下方向でのほぼ中央に、共通基板50’を有し、この共通基板50’の両面に、振動基板40’、共通基板30’、振動基板20’、端部基板10’が順次積層(接合)されている。言い換えすれば、液滴吐出ヘッド100’は、共通基板50’に対して、上下にほぼ対称な構成をなすように、振動基板40’、共通基板30’、振動基板20’、端部基板10’が順次積層(接合)されている。
【0086】
共通基板50’は、その両面に、振動基板40’の凹部41に対応して、外部に通ずる溝51と、これに間隔を隔てた溝52とが形成されている。
端部基板10’は、その一方の面(振動基板20’と対向する側の面)に、複数の凹部11が形成されているとともに、その底面に電極(個別電極)12が設けられている。
振動基板20’、40’は、ノズル60を区画形成するための溝31’、51’が形成されている。これにより、共通基板50’の加工がほとんど不要、また、共通基板30’の加工が一方の面のみで済むので、共通基板30’、50’の加工が容易となる。
【0087】
このような端部基板10’および共通基板50’を用いて、共通基板50’、振動基板40’、共通基板30’、振動基板20’、端部基板10’が順次積層されることにより、液滴吐出ヘッド100’は、ヘッド部A、ヘッド部B、ヘッド部B、ヘッド部Aが順次積層されている。
このような液滴吐出ヘッド100’においても、複数のヘッド部A、Bが各基板の板厚方向(共通基板の板厚方向)に重なっているので、ヘッド部を構成する基板の材料となるウエハ同士の位置決めを行うことにより、比較的容易に、複数のヘッド部間のノズルの位置決めを行うことができる。その結果、複雑な工程を要することなく、液滴吐出ヘッド100’の製造に要する時間を短縮することができ、液滴吐出ヘッド100’の低コスト化を図ることができる。
【0088】
また、1つの共通基板30’が一方のヘッド部Bの電極のための基板と他方のヘッド部Aの収容室を形成するための基板とを兼ねるので、互いに隣接するヘッドA−B間におけるノズル同士の距離を小さくすることが容易である。その結果、液滴吐出ヘッド100’の小型化を図ることができる。また、液滴吐出ヘッド100’を構成する部品点数が低減されるとともに、製造工程が簡略化されるので、液滴吐出ヘッド100’の低コスト化を図ることができる。
【0089】
また、1つの共通基板50’が一方のヘッド部Bの収容室を形成するための基板と他方のヘッド部Bの収容室を形成するための基板とを兼ねるので、互いに隣接するヘッドB−B間におけるノズル同士の距離を小さくすることが容易である。その結果、液滴吐出ヘッド100’の小型化を図ることができる。また、液滴吐出ヘッド100’を構成する部品点数が低減されるとともに、製造工程が簡略化されるので、液滴吐出ヘッド100’の低コスト化を図ることができる。
【0090】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明の液滴吐出ヘッドを構成する各部は、同様の機能を発揮する任意のものと置換、または、その他の構成を追加することもできる。
また、前述した実施形態では、4つのヘッド部を重ねた液滴吐出ヘッドについて説明したが、これに限定されず、2つ以上のヘッド部を重ねた液滴吐出ヘッドであれば、本発明を適用することができる。また、3つ以上のヘッド部を重ねた液滴吐出ヘッドに本発明を適用する場合、互いに隣接する2つのヘッド部が、これらの間に前述したような共通基板を共有していれば、本発明の効果を得ることができる。
【0091】
また、本発明の液滴吐出ヘッド(上述の実施形態では、液滴吐出ヘッド1)から吐出する吐出対象液(液滴)としては、特に限定されず、例えば以下のような各種の材料を含む液体(サスペンション、エマルション等の分散液を含む)とすることができる。すなわち、カラーフィルタのフィルタ材料を含むインク、有機EL(Electro Luminescence)装置におけるEL発光層を形成するための発光材料、電子放出装置における電極上に蛍光体を形成するための蛍光材料、PDP(Plasma Display Panel)装置における蛍光体を形成するための蛍光材料、電気泳動表示装置における泳動体を形成する泳動体材料、基板の表面にバンクを形成するためのバンク材料、各種コーティング材料、電極を形成するための液状電極材料、2枚の基板間に微小なセルギャップを構成するためのスペーサを構成する粒子材料、金属配線を形成するための液状金属材料、マイクロレンズを形成するためのレンズ材料、レジスト材料、光拡散体を形成するための光拡散材料、DNAや蛋白質を含む液体などである。
また、本発明によって製造されたノズルプレートを備える液滴吐出装置において、液滴を吐出する対象となる液滴受容物は、記録用紙のような紙に限らず、フィルム、織布、不織布等の他のメディアや、ガラス基板、シリコン基板等の各種基板のようなワークであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる液滴吐出装置の一例であるインクジェットプリンタの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示すインクジェットプリンタに備えられた液滴吐出ヘッドの概略構成を示す上半分の分解斜視図である。
【図3】図1に示す液滴吐出ヘッドの縦断面図である。
【図4】液滴吐出ヘッドの製造工程を説明するための図である。
【図5】液滴吐出ヘッドの製造工程を説明するための図である。
【図6】プレス成形装置を示す平面図である。
【図7】本発明の第2実施形態にかかる液滴吐出ヘッドの概略構成を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0093】
1……インクジェットプリンタ(液滴吐出装置) 2……装置本体 2A……トレイ 2B……排紙口 3……ヘッドユニット 3A……インクカートリッジ 3B……キャリッジ 4……印刷装置 4A……キャリッジモータ 4B……往復動機構 4B1……キャリッジガイド軸 4B2……タイミングベルト 5……給紙装置 5A……給紙モータ 5B……給紙ローラ 5B1……従動ローラ 5B2……駆動ローラ 6……制御部 7……操作パネル 100、100’……液滴吐出ヘッド 10……共通基板 10’……端部基板 11……凹部 12……電極 20、20’、40、40’……振動基板 21、22、41、42……凹部 23、43……振動板 24、44……絶縁膜 30、30’……共通基板 31、31’、32、51、51’、52……溝 33……凹部 34……電極 35……孔 45……孔 50……端部基板 50’……共通基板 53、54……孔 60……ノズル 70……収容室 80……リザーバ 90……インク供給口 110……基板 111……酸化膜 112……拡散層 120……基板 121……導電膜 130……下型 140……上型 200……プレス成形装置 201……下保持体 202……上保持体 203……円筒状本体 203A……プレス面 204……胴型 205……爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するためのヘッド部が複数重ねられた液滴吐出ヘッドであって、
前記各ヘッド部は、ノズルと、該ノズルに連通し、液体を収容する収容室と、該収容室の一部を区画形成する振動板と、該振動板に微小間隔を隔てて対向する電極とを有し、前記振動板と前記電極との間に電圧が印加されることにより、前記振動板を変位させて、前記収容室の容積を変化させ、前記ノズルから前記液体を液滴として吐出するよう構成されており、
互いに隣接する2つのヘッド部は、それらの間に共通基板を共有しており、一方のヘッド部の電極が前記共通基板の一方の面に設けられているとともに、前記共通基板の他方の面により他方のヘッド部の収容室が区画形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
液滴を吐出するためのヘッド部が複数重ねられた液滴吐出ヘッドであって、
前記各ヘッド部は、ノズルと、該ノズルに連通し、液体を収容する収容室と、該収容室の一部を区画形成する振動板と、該振動板に微小間隔を隔てて対向する電極とを有し、前記振動板と前記電極との間に電圧が印加されることにより、前記振動板を変位させて、前記収容室の容積を変化させ、前記ノズルから前記液体を液滴として吐出するよう構成されており、
互いに隣接する2つのヘッド部は、それらの間に共通基板を共有しており、一方のヘッド部の電極が前記共通基板の一方の面に設けられているとともに、前記共通基板の他方の面に他方のヘッド部の電極が設けられていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
液滴を吐出するためのヘッド部が複数重ねられた液滴吐出ヘッドであって、
前記各ヘッド部は、ノズルと、該ノズルに連通し、液体を収容する収容室と、該収容室の一部を区画形成する振動板と、該振動板に微小間隔を隔てて対向する電極とを有し、前記振動板と前記電極との間に電圧が印加されることにより、前記振動板を変位させて、前記収容室の容積を変化させ、前記ノズルから前記液体を液滴として吐出するよう構成されており、
互いに隣接する2つのヘッド部は、それらの間に共通基板を共有しており、一方のヘッド部の収容室が前記共通基板の一方の面により区画形成されているとともに、前記共通基板の他方の面により他方のヘッド部の収容室が区画形成されていることを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
前記互いに隣接する2つのヘッド部は、前記共通基板を介して、前記一方のヘッド部と前記他方のヘッド部とが対称な形状に配置されている請求項2または3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
前記共通基板には、前記振動板を有する振動基板が接合され、前記共通基板と前記振動基板とが交互に積層されている請求項1ないし4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項6】
前記共通基板および前記振動基板からなる複数の基板のうち、該基板の板厚方向における液滴吐出ヘッドの中央部側に位置する基板の面積が、端部側に位置する基板の面積よりも大きくなっている請求項5に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項7】
前記基板の板厚方向における液滴吐出ヘッドの中央部側に位置する基板の端部が、印加端部側に位置する基板に対し突出し、前記端部を介して前記振動板または前記電極に通電するように構成されている請求項6に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項8】
前記ノズルおよび前記収容室は、前記共通基板と前記振動基板とにより区画形成される請求項5ないし7のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項9】
前記振動基板は、シリコンを主材料として構成されている請求項5ないし8のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項10】
前記共通基板は、ガラスを主材料として構成されている請求項1ないし9のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項11】
前記共通基板と前記振動基板とは互いに陽極接合により接合されている請求項1ないし10のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項12】
前記共通基板は、前記ノズルを区画形成するための溝が形成されている請求項1ないし11のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項13】
前記振動基板は、前記ノズルを区画形成するための溝が形成されている請求項1ないし12のいずれかに記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項14】
液滴を吐出するためのヘッド部が複数重ねられ、前記各ヘッド部が、ノズルと、該ノズルに連通し、液体を収容する収容室と、該収容室の一部を区画形成する振動板と、該振動板に微小間隔を隔てて対向する電極とを有し、前記振動板と前記電極との間に電圧が印加されることにより、前記振動板を変位させて、前記収容室の容積を変化させ、前記ノズルから前記液体を液滴として吐出するよう構成されている液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
第1の基板の一方の面に前記電極を形成して、共通基板を得る第1の工程と、
前記共通基板の両面に、前記振動板を有する振動基板を接合して、前記共通基板の一方の面側で、前記電極と前記振動板とを微小間隔を隔てて対向させるとともに、前記共通基板の他方の面側で、前記ノズルおよび前記収容室を形成する第2の工程とを有することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項15】
液滴を吐出するためのヘッド部が複数重ねられ、前記各ヘッド部が、ノズルと、該ノズルに連通し、液体を収容する収容室と、該収容室の一部を区画形成する振動板と、該振動板に微小間隔を隔てて対向する電極とを有し、前記振動板と前記電極との間に電圧が印加されることにより、前記振動板を変位させて、前記収容室の容積を変化させ、前記ノズルから前記液体を液滴として吐出するよう構成されている液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
第1の基板の両方の面に前記電極を形成して、共通基板を得る第1の工程と、
前記共通基板の両面に、前記振動板を有する振動基板を接合して、前記共通基板の両面側で、前記電極と前記振動板とを微小間隔を隔てて対向させる第2の工程とを有することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項16】
液滴を吐出するためのヘッド部が複数重ねられ、前記各ヘッド部が、ノズルと、該ノズルに連通し、液体を収容する収容室と、該収容室の一部を区画形成する振動板と、該振動板に微小間隔を隔てて対向する電極とを有し、前記振動板と前記電極との間に電圧が印加されることにより、前記振動板を変位させて、前記収容室の容積を変化させ、前記ノズルから前記液体を液滴として吐出するよう構成されている液滴吐出ヘッドの製造方法であって、
第1の基板を加工して、前記ノズルの一部を区画形成するための共通基板を得る第1の工程と、
前記共通基板の両面に、前記振動板を有する振動基板を接合して、前記共通基板の両面側で、前記ノズルおよび前記収容室を形成する第2の工程とを有することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項17】
前記第1の工程において、前記第1の基板をプレス成形し、前記共通基板を得る請求項14ないし16のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項18】
前記プレス成形は、前記第1の基板の両面に対し同時に行う請求項17に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項19】
前記第1の基板は、ガラスを主材料として構成されている請求項17または18に記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
【請求項20】
請求項1ないし13のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドを備えることを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−82314(P2006−82314A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267883(P2004−267883)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】