説明

液滴吐出方法及び液滴吐出装置

【課題】液滴吐出装置において材料の大量の廃棄を行うことなく、加圧室内の気泡を除去し、吐出不良を防ぐ液滴吐出方法を提供する。
【解決手段】液滴吐出装置において材料を吐出する前に、加圧室と接続している材料供給部内を減圧状態とし、加圧室内に存在する気泡を除去する工程を設ける。加圧室のノズル表面の開口や、材料供給部の材料注入口などの外部に接続する流路を封止し、材料供給部に接続する入出口よりポンプなどによる減圧手段を用いて、加圧室及び材料供給部を減圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出して選択的に形成物を形成する液滴吐出方法に関する。詳しくは、半導体装置、表示装置等に用いられる構成物を作製する際に用いられる液滴吐出装置、液滴吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法を代表とする液滴吐出法において、材料供給容器より供給される材料は、加圧室(ポンピングチャンバともいう)を通って吐出口より吐出(噴出)される。材料は加圧室においてピエゾ変換方式(ピエゾ素子など)や熱変換方式を用いて圧力を印加することにより、吐出される。
【0003】
加圧室に材料を供給する際に空気の混入などによって、加圧室内に気泡が存在してしまうことがある。気泡は気体であるため、液体よりも容易に膨張、収縮しやすい。そのため、加圧室内に気泡が存在すると、印加された圧力は気体により吸収されてしまう。結果液体に十分な圧力を与えることができないため、吐出不良を招く。また、材料供給容器に存在する気泡も、吐出途中に加圧室内に流入し、吐出不良を引き起こす可能性がある。
【0004】
このような加圧室内に存在する気泡を除去する方法として、材料を吐出口より排出し、材料と共にヘッド内に存在する気泡を排出する方法がある。気泡がより容易に除去されるように、インクが供給される供給管の内面に親水化処理を行う方法も提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−162817号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように材料を排出することで気泡を取り除く方法であると、大量の材料を無駄に消費してしまうことになり、コスト的には大きなロスとなる。また、材料の性質によっては、例えばフッ素系界面活性剤等の発泡性の高い界面活性剤を含む材料においては、材料を大量に排出する程度では気泡の完全なる除去が難しい。
【0006】
本発明は、液滴吐出装置において材料の大量の廃棄を行うことなく、加圧室内の気泡を除去し、吐出不良を防ぐ液滴吐出方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、材料を吐出する前に、接続している加圧室、材料供給通路及び材料供給室内を減圧状態とし、加圧室内に存在する気泡を除去する工程を設ける。加圧室と材料供給室は材料供給通路を介して接続されており、材料は、材料供給室より材料供給通路を経て加圧室へ充填される。
【0008】
気泡の体積Vbは加圧室、材料供給通路及び材料供給室内の圧力Ptに逆比例するので、Vb=C/Ptとなる。一方、気泡に加わる浮力Fは、気泡の体積Vbと材料の密度ρiに比例するので、F=C×ρi/Ptとなる。なお、Cは定数である。加圧室、材料供給通路及び材料供給室内を減圧すると、圧力Ptは減少するので、気泡にかかる浮力Fは増加する。結果材料内に存在する気泡は浮力を受けて加圧室より材料液表面が存在する材料供給室の方へ浮上する。
【0009】
従って、気泡を加圧室内より除去することができる。また、材料供給室内において気泡は、材料液表面に浮上し、破裂もしくは泡沫として材料液表面に留まるので、加圧室内に気泡が流入(進入)する危険性を大幅に低減することができる。
【0010】
加圧室に設けられた吐出口や、材料供給室の材料供給口など、気体供給排出部以外の外部に接続する流路を封止し、気体供給排出部よりポンプなどによる減圧手段を用いて、加圧室、材料供給通路及び材料供給室を減圧化する。
【0011】
本発明の液滴吐出方法の一形態は、材料供給室に液状の膜形成材料を含む組成物を供給し、材料供給室より、材料供給通路を通し吐出口が設けられた加圧室に膜形成材料を含む組成物を供給し、吐出口を封じ材料供給室、材料供給通路、及び加圧室内を減圧し、材料供給室、材料供給通路、及び加圧室内を減圧した状態より加圧し、吐出口を開き、加圧室に圧力を加えて吐出口より膜形成材料を含む組成物を吐出し膜を形成する。
【0012】
本発明の液滴吐出方法の一形態は、気体供給排出部が設けられた材料供給室に、液状の膜形成材料を含む組成物を供給し、材料供給室より、材料供給通路を通し吐出口が設けられた加圧室に膜形成材料を含む組成物を供給し、吐出口を封じ、気体供給排出部より排気を行い材料供給室、材料供給通路、及び加圧室内を減圧し、気体供給排出部より給気を行い材料供給室、材料供給通路、及び加圧室内を減圧した状態より加圧し、吐出口を開き、加圧室に圧力を加えて吐出口より膜形成材料を含む組成物を吐出し膜を形成する。
【0013】
本発明の液滴吐出方法の一形態は、材料供給室に液状の膜形成材料を含む組成物を供給し、材料供給室より、材料供給通路を通し吐出口が設けられた加圧室に膜形成材料を含む組成物を供給し、吐出口を封じ材料供給室、材料供給通路、及び加圧室内を減圧することで加圧室内に存在する気泡を材料供給室内へ移動させ、材料供給室、材料供給通路、及び加圧室内を減圧した状態より加圧し、吐出口を開き、加圧室に圧力を加えて吐出口より膜形成材料を含む組成物を吐出し膜を形成する。
【0014】
本発明の液滴吐出方法の一形態は、気体供給排出部が設けられた材料供給室に、液状の膜形成材料を含む組成物を供給し、材料供給室より、材料供給通路を通し吐出口が設けられた加圧室に膜形成材料を含む組成物を供給し、吐出口を封じ、気体供給排出部より排気を行い材料供給室、材料供給通路、及び加圧室内を減圧することで加圧室内に存在する気泡を材料供給室内へ移動させ、気体供給排出部より給気を行い材料供給室、材料供給通路、及び加圧室内を減圧した状態より加圧し、吐出口を開き、加圧室に圧力を加えて吐出口より膜形成材料を含む組成物を吐出し膜を形成する。
【0015】
上記構成において、材料供給室内を減圧し、加圧室内に存在する気泡を効率よく材料供給室内に移動し除去するために、減圧状態で加圧室を振動させてもよい。振動させることによって、加圧室内の凹凸形状に捕らわれた気泡が移動し、気泡を効果的に加圧室より除去することができる。また、吐出口は封止材や粘着テープなどを設けることによって封じることができる。
【0016】
上記構成において膜形成材料を含む組成物は、形成する膜によって適宜設定すればよく、導電膜を形成する場合は、導電性材料を含む組成物とすればよい。また絶縁膜を形成する場合は、同様に絶縁性材料を含む組成物、半導体膜を形成する場合は、半導体材料を含む組成物とすればよい。また、膜形成材料を含む組成物はフッ素を有する界面活性剤を含んでもよい。
【0017】
本発明の液滴吐出装置の一形態は、ヘッド部と、ヘッド部に設けられた気体供給排出口と、気体供給排出口に接続するヘッド部内の圧力を制御する圧力制御手段と、封止材と、被処理物が配置されるステージと、ヘッド部と封止材とを相対的に走査し、かつヘッド部とステージとを相対的に走査する走査装置とを有する。
【0018】
本発明の液滴吐出装置の一形態は、ヘッド部と、ヘッド部に設けられた第1のコックにより開閉される気体供給排出口、及び第2のコックにより開閉される材料供給口と、第1のコックを介して気体供給排出口に接続するヘッド部内の圧力を制御する圧力制御手段と、第2のコックを介して材料供給口に接続する材料貯蔵室と、材料貯蔵室よりヘッド部内に材料を供給する供給手段と、封止材と、被処理物が配置されるステージと、ヘッド部と封止材とを相対的に走査し、かつヘッド部とステージとを相対的に走査する走査装置とを有する。
【0019】
上記構成において、材料貯蔵室内を減圧する減圧手段を有してもよい。封止材を洗浄する洗浄液を吐出する洗浄液吐出手段を有してもよい。また、封止材を洗浄した廃液を廃棄する廃液貯蔵室を有してもよい。
【0020】
本発明は表示機能を有する装置である表示装置にも用いることができ、本発明を用いる表示装置には、エレクトロルミネセンス(以下「EL」ともいう。)と呼ばれる発光を発現する有機物、無機物、若しくは有機物と無機物の混合物を含む層を、電極間に介在させた発光素子とTFTとが接続された発光表示装置や、液晶材料を有する液晶素子を表示素子として用いる液晶表示装置などがある。本発明において、表示装置とは、表示素子(液晶素子や発光素子など)を有する装置のことを言う。なお、基板上に液晶素子やEL素子などの表示素子を含む複数の画素やそれらの画素を駆動させる周辺駆動回路が形成された表示パネル本体のことでもよい。さらに、フレキシブルプリントサーキット(FPC)やプリント配線基盤(PWB)が取り付けられたもの(ICや抵抗素子や容量素子やインダクタやトランジスタなど)も含んでもよい。さらに、偏光板や位相差板などの光学シートを含んでいても良い。さらに、バックライト(導光板やプリズムシートや拡散シートや反射シートや光源(LEDや冷陰極管など)を含んでいても良い)を含んでいても良い。
【0021】
なお、表示素子や表示装置は、様々な形態を用いたり、様々な素子を有することが出来る。例えば、EL素子(有機EL素子、無機EL素子又は有機物及び無機物を含むEL素子)、電子放出素子、液晶素子、電子インク、グレーティングライトバルブ(GLV)、プラズマディスプレイ(PDP)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、圧電セラミックディスプレイ、カーボンナノチューブ、など、電気磁気的作用によりコントラストが変化する表示媒体を適用することができる。なお、EL素子を用いた表示装置としてはELディスプレイ、電子放出素子を用いた表示装置としてはフィールドエミッションディスプレイ(FED)やSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface−conduction Electron−emitter Disply)など、液晶素子を用いた表示装置としては液晶ディスプレイ、透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、電子インクを用いた表示装置としては電子ペーパーがある。
【0022】
また、本発明を用いて半導体素子(トランジスタ、メモリ素子やダイオードなど)を含む回路を有する装置や、プロセッサ回路を有するチップなどの半導体装置を作製することができる。なお、本発明において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置を指す。
【発明の効果】
【0023】
本発明を用いることにより、液滴吐出装置を用いる液滴吐出方法において材料の大量の廃棄を行うことなく、加圧室内の気泡を除去し、吐出不良を防ぐことができる。
【0024】
従って、本発明の液滴吐出方法を用いて作製した導電層などの配線、絶縁層は、吐出不良に起因する断線などの形状不良を防ぐことができる。本発明により形成した配線や絶縁層を用いて、信頼性の高い半導体装置、表示装置を低コストで歩留まりよく作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0026】
(実施の形態1)
本実施の形態では、材料の大量の廃棄を行うことなく、加圧室内の気泡を除去し、吐出不良を防ぐ液滴吐出方法について、図1及び図2を用いて説明する。
【0027】
本発明の液滴吐出法を用いて、配線層若しくは電極を形成する導電層や、所定のパターンに形成するためのマスク層など表示装置などを作製するために必要な構成物を、選択的に所望な形状に形成することができる。本発明において、構成物(パターンともいう)とは、薄膜トランジスタや表示装置を構成する、配線層、ゲート電極層、ソース電極層、ドレイン電極層などの導電層、半導体層、マスク層、絶縁層などをいい、所定の形状を有して形成される全ての構成要素を含む。液滴吐出法(その方式によっては、インクジェット法とも呼ばれる。)は、選択的に所望なパターンで形成物を形成可能な方法であり、特定の目的に調合された組成物の液滴を選択的に吐出(噴出)して所定のパターンに導電層や絶縁層などを形成する。構成物の被形成領域に、構成物形成材料を含む液滴を吐出し、焼成、乾燥等を行って固定化し所望なパターンの構成物を形成する。
【0028】
本実施の形態における液滴吐出装置のブロック図を図2(A)(B)に示す。図2(B)は図2(A)をより具体化した例である。
【0029】
図2(A)に示すように、液滴吐出装置100は、加圧室101、材料供給通路103と材料供給室104とを含む材料供給部102、材料貯蔵室107、加圧室101に対する吐出制御手段105、一点鎖線で囲まれている加圧室101及び材料供給部102内の圧力を制御する圧力制御手段106を有している。加圧室101には吐出口150が設けられており、吐出口150は、封止材151によって封止することができる。なお、加圧室101及び吐出口150は総称してノズルと言うこともできる。
【0030】
図2(B)は、材料供給室104に気体供給排出部108における気体供給排出口109が設けられており、気体供給排出口109に接続された圧力制御手段106により、気体を供給、又は排出することによって加圧室101、材料供給部102(材料供給通路103及び材料供給室104)の圧力を制御している。例えば、圧力制御手段106としてポンプ等で排気を行うと、加圧室101、材料供給部102(材料供給通路103及び材料供給室104)内を減圧状態とすることができ、逆に気体を供給すると加圧室101、材料供給部102(材料供給通路103及び材料供給室104)内を加圧状態とすることができる。
【0031】
本発明を用いた、本実施の形態における液滴吐出方法を図1を用いて説明する。図1(A)は、加圧室201、材料供給通路203、材料供給室204、材料供給口206、気体供給排出口205、吐出口207を含む液滴吐出装置であり膜形成材料を含む組成物(形成する膜の材料を含む組成物)212が充填されている。膜形成材料を含む組成物は材料供給口206より材料供給室204に供給され、材料供給室204より材料供給通路203を通って加圧室201に供給され充填される。材料供給室204において、膜形成材料を含む組成物212は上方に空間211を有して供給されている。本実施の形態では、空間211は大気である。
【0032】
材料供給室及び加圧室に材料を供給する際に空気の混入などによって、図1(A)に示すように、材料供給室204、材料供給通路203及び加圧室201内に気泡213a乃至213eが存在してしまうことがある。気泡213a乃至213eは気体であるため、液体よりも容易に膨張、収縮しやすい。そのため、加圧室内に気泡(図1(A)における気泡213aや213dなど)が存在すると、印加された圧力は気体により吸収されてしまう。結果液体に十分な圧力を与えることができないため、吐出不良を招く。また、材料供給通路及び材料供給室(図1(A)における気泡213b、213c、213eなど)に存在する気泡も、吐出途中に加圧室内に流入し、吐出不良を引き起こす可能性がある。
【0033】
本発明では、材料である膜形成材料を含む組成物212を吐出する前に、接続している加圧室201、材料供給通路203及び材料供給室204内を減圧状態とし、加圧室201内に存在する気泡を除去する工程を設ける。
【0034】
加圧室に設けられた吐出口や、材料供給室の材料供給口などの気体供給排出部以外の外部に接続する流路を封止し、気体供給排出部よりポンプなどによる圧力制御手段を用いて、加圧室、材料供給通路及び材料供給室を減圧化する。具体的には、図1(B)のように、吐出口を封止板220によって封止し、材料供給口206もコック221によって封止する。
【0035】
封止板220、コック221によって密閉された閉空間となった加圧室201、材料供給通路203及び材料供給室204より気体供給排出部である気体供給排出口205より矢印222のように気体を排出する。気体供給排出口より排気することによって、加圧室201、材料供給通路203及び材料供給室204は減圧される。その後、気体供給排出口205にもコック228を設けて封止し、加圧室201、材料供給通路203及び材料供給室204を減圧状態223とする(図1(C)参照。)。
【0036】
気泡の体積Vbは加圧室201、材料供給通路203及び材料供給室204内の圧力Ptに逆比例するので、Vb=C/Ptとなる。一方、気泡に加わる浮力Fは、気泡の体積Vbと材料の密度ρiに比例するので、F=C×ρi/Ptとなる。なお、Cは定数である。加圧室201、材料供給通路203及び材料供給室204内を減圧すると、圧力Ptは減少するので、気泡にかかる浮力Fは増加する。結果材料内に存在する気泡213a乃至213eは矢印のように浮力を受けて加圧室201より材料液表面が存在する材料供給室204の方へ浮上(移動)する。
【0037】
結果、図1(D)に示すように気泡226a乃至226eとして材料である膜形成材料を含む組成物225界面に浮上する。従って、気泡を加圧室201内より除去することができる。また、材料供給室204内において気泡は、材料液表面に浮上し、破裂もしくは泡沫として材料液表面に留まるので、加圧室201内に気泡が流入(進入)する危険性を大幅に低減することができる。
【0038】
なお、加圧室201、材料供給通路203及び材料供給室204内を減圧状態とし、膜形成材料を含む組成物内より気泡を界面に放出した後、気体供給排出口のコック228を開封し、圧力制御手段により気体を供給し、加圧室201、材料供給通路203及び材料供給室204内を常圧、もしくは加圧状態とし、封止板220を除去する。その後、加圧室201に電圧を印加し、吐出口207より膜形成材料を含む組成物225を吐出することができる。
【0039】
加圧室、材料供給通路及び材料供給室内を減圧し、加圧室内に存在する気泡を効率よく材料供給室内に移動し除去するために、減圧状態で加圧室を振動させてもよい。振動させることによって、加圧室内の凹凸形状に捕らわれた気泡が移動し、気泡を効果的に加圧室より除去することができる。また、封止板(封止材)としては開口が封止されればよいのでどのような材料及び形状のものを用いてもよく、可撓性の材料が好ましく、ゲル状、ゴム状の樹脂等を用いることができる。また粘着テープなどを設けることによっても密着性よく開口を封じることができる。なお、封止板(封止材)として用いる材料は、吐出する膜形成材料を含む組成物と反応しない材料が好ましい。
【0040】
封止材として用いることのできる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ビスフェノールA型液状樹脂、ビスフェノールA型固形樹脂、含ブロムエポキシ樹脂、ビスフェノールF型樹脂、ビスフェノールAD型樹脂、フェノール型樹脂、クレゾール型樹脂、ノボラック型樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、エピビス型エポキシ樹脂、グリシジルエステル樹脂、グリジシルアミン系樹脂、複素環式エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、シリコーン樹脂を用いることができる。
【0041】
また、材料供給室と材料貯蔵室との間に設けられた材料供給口の封止や、気体供給排出部における気体供給排出口の封止は、バルブや活栓(コック)などを用いて接続している通路(配管)を遮断すればよい。
【0042】
圧力制御手段としては、ロータリーポンプ、拡散ポンプなどのポンプ等を用いて気体の排出を行えばよい。また圧力の制御は圧力計(真空計)で管理しつつポンプ等で加圧室、材料供給通路、及び材料供給室内を排気してもよい。
【0043】
膜形成材料を含む組成物は、形成する膜によって適宜設定すればよく、導電膜を形成する場合は、導電性材料を含む組成物とすればよい。また絶縁膜を形成する場合は、同様に絶縁性材料を含む組成物、半導体膜を形成する場合は、半導体材料を含む組成物とすればよい。また、膜形成材料を含む組成物はフッ素を有する界面活性剤を含んでもよい。
【0044】
液滴吐出手段とは、組成物の吐出口を有するノズルや、1つ又は複数のノズルを具備したヘッド等の液滴を吐出する手段を有するものの総称とする。液滴吐出手段が具備するノズルの径は、0.02〜100μm(好適には30μm以下)に設定し、該ノズルから吐出される組成物の吐出量は0.001pl〜100pl(好適には0.1pl以上40pl以下、より好ましくは10pl以下)に設定する。吐出量は、ノズルの吐出口の面積の大きさに比例して増加する。また、被処理物とノズルの吐出口との距離は、所望の箇所に滴下するために、出来る限り近づけておくことが好ましく、好適には0.1〜3mm(好適には1mm以下)程度に設定する。
【0045】
膜として導電膜を形成する場合、吐出口から吐出する組成物は、導電性材料を溶媒に溶解又は分散させたものを用いる。導電性材料とは、Ag、Au、Cu、Ni、Pt、Pd、Ir、Rh、W、Al等の一種又は複数種の金属の微粒子又は分散性ナノ粒子に相当する。また前記導電性材料には、Cd、Znの金属硫化物、Fe、Ti、Ge、Si、Zr、Baなどの酸化物、ハロゲン化銀の一種又は複数種の微粒子又は分散性ナノ粒子を混合してもよい。また、導電性材料として、透明導電膜として用いられるインジウム錫酸化物(ITO)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)、有機インジウム、有機スズ、酸化亜鉛、窒化チタン等を用いてもよい。導電性材料は、単一元素、又は複数種の元素の粒子を混合して用いることができる。但し、吐出口から吐出する組成物は、比抵抗値を考慮して、金、銀、銅のいずれかの材料を溶媒に溶解又は分散させたものを用いることが好適であり、より好適には、低抵抗な銀、銅を用いるとよい。但し、銀、銅を用いる場合には、不純物対策のため、合わせてバリア膜を設けるとよい。バリア膜としては、窒化珪素膜やニッケルボロン(NiB)膜を用いるとことができる。
【0046】
吐出する組成物は、導電性材料(絶縁性材料)を溶媒に溶解又は分散させたものであるが、他にも分散剤や、バインダーと呼ばれる熱硬化性樹脂が含まれている。特にバインダーに関しては、焼成時にクラックや不均一な焼きムラが発生するのを防止する働きを持つ。よって、形成される導電層には、有機材料が含まれることがある。含まれる有機材料は、加熱温度、雰囲気、加熱時間により異なる。この有機材料は、金属粒子のバインダー、溶媒、分散剤、及び被覆剤として機能する有機樹脂などであり、代表的には、ポリイミド、アクリル、ノボラック樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フラン樹脂、ジアリルフタレート樹脂等の有機樹脂が挙げられる。
【0047】
また、導電性材料の周りに他の導電性材料がコーティングされ、複数の層になっている粒子でも良い。例えば、銅の周りにニッケルボロン(NiB)がコーティングされ、その周囲に銀がコーティングされている3層構造の粒子などを用いても良い。溶媒は、酢酸ブチル、酢酸エチル等のエステル類、イソプロピルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン、アセトン等の有機溶剤等、又は水を用いる。組成物の粘度は20mPa・s以下が好適であり、これは、吐出時に乾燥が起こることを防止するためや、吐出口から組成物を円滑に吐出できるようにするためである。また、組成物の表面張力は、40mN/m以下が好適である。但し、用いる溶媒や、用途に合わせて、組成物の粘度等は適宜調整するとよい。一例として、ITOや、有機インジウム、有機スズを溶媒に溶解又は分散させた組成物の粘度は5〜20mPa・s、銀を溶媒に溶解又は分散させた組成物の粘度は5〜20mPa・s、金を溶媒に溶解又は分散させた組成物の粘度は5〜20mPa・sに設定するとよい。
【0048】
膜としてマスク層などに用いることができる絶縁層を形成する場合は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾシクロブテン、パリレン、フッ化アリーレンエーテル、ポリイミドなどの有機材料、シロキサン結合を有する樹脂を用いて液滴吐出法で形成する。いずれの材料を用いるとしても、その表面張力と粘度は、溶媒の濃度を調整する、界面活性剤等を加えるなどして適宜調整する。
【0049】
各ノズルの径や所望のパターン形状などに依存するが、ノズルの目詰まり防止や高精細なパターンの作製のため、導電体の粒子の径はなるべく小さい方が好ましく、好適には粒径0.1μm以下が好ましい。組成物は、電解法、アトマイズ法又は湿式還元法等の各種方法で形成されるものであり、その粒子サイズは、一般的に約0.01〜10μmである。但し、ガス中蒸発法で形成すると、分散剤で保護されたナノ粒子は約7nmと微細であり、またこのナノ粒子は、被覆剤を用いて各粒子の表面を覆うと、溶剤中に凝集がなく、室温で安定に分散し、液体とほぼ同じ挙動を示す。従って、被覆剤を用いることが好ましい。
【0050】
また、組成物を吐出する工程は、減圧下で行ってもよい。吐出時に基板を加熱しておいてもよい。組成物を吐出後、乾燥と焼成の一方又は両方の工程を行う。乾燥と焼成の工程は、両工程とも加熱処理の工程であるが、例えば、乾燥は100度(℃)で3分間、焼成は200〜550度(℃)で15分間〜60分間で行うもので、その目的、温度と時間が異なるものである。乾燥の工程、焼成の工程は、常圧下又は減圧下で、レーザ光の照射や瞬間熱アニール、加熱炉などにより行う。なお、この加熱処理を行うタイミング、加熱処理の回数は特に限定されない。乾燥と焼成の工程を良好に行うためには、そのときの温度は、基板の材質及び組成物の性質に依存するが、一般的には室温〜800度(℃)(好ましくは100〜550度(℃))とする。本工程により、組成物中の溶媒の揮発、又は化学的に分散剤を除去するとともに、周囲の樹脂が硬化収縮することで、ナノ粒子間を接触させ、融合と融着を加速する。
【0051】
レーザ光の照射は、連続発振またはパルス発振の気体レーザ又は固体レーザを用いれば良い。前者の気体レーザとしては、エキシマレーザ、YAGレーザ等が挙げられ、後者の固体レーザとしては、Cr、Nd等がドーピングされたYAG、YVO、GdVO等の結晶を使ったレーザ等が挙げられる。なお、レーザ光の吸収率の関係から、連続発振のレーザを用いることが好ましい。また、パルス発振と連続発振を組み合わせたレーザ照射方法を用いてもよい。但し、基板の耐熱性に依っては、レーザ光の照射による加熱処理は、該基板を破壊しないように、数マイクロ秒から数十秒の間で瞬間的に行うとよい。瞬間熱アニール(RTA)は、不活性ガスの雰囲気下で、紫外光乃至赤外光を照射する赤外ランプやハロゲンランプなどを用いて、急激に温度を上昇させ、数分〜数マイクロ秒の間で瞬間的に熱を加えて行う。この処理は瞬間的に行うために、実質的に最表面の薄膜のみを加熱することができ、下層の膜には影響を与えない。つまり、プラスチック基板等の耐熱性が弱い基板にも影響を与えない。
【0052】
また、液滴吐出法により、導電層などを組成物を吐出し形成した後、その平坦性を高めるために表面を圧力によってプレスして平坦化してもよい。プレスの方法としては、ローラー状のものを表面に走査することによって、凹凸を平坦化し、凹凸を軽減してもよく、平坦な板状な物で表面を垂直にプレスしてもよい。プレスする時に、加熱工程を行っても良い。また溶剤等によって表面を軟化、または融解させエアナイフで表面の凹凸部を除去しても良い。また、CMP法を用いて研磨しても良い。この工程は、液滴吐出法によって凹凸が生じる場合に、その表面を平坦化する場合適用することができる。
【0053】
液滴吐出法を用いて導電層(または絶縁層)を形成する場合、粒子状に加工された導電性材料(または絶縁性材料)を含む組成物を吐出し、焼成によって融合や融着接合させ固化することで導電層(または絶縁層)を形成する。このように導電性材料(または絶縁性材料)を含む組成物を吐出し、焼成することによって形成された導電層(または絶縁層)においては、スパッタ法などで形成した導電層(または絶縁層)が、多くは柱状構造を示すのに対し、多くの粒界を有する多結晶状態を示すことが多い。
【0054】
本実施の形態では、本発明を用いて導電層を形成する例を示したが、吐出する液状の組成物に含まれる形成材料を絶縁性材料、又は半導体材料とすることによって、本発明を用いて絶縁層、半導体層なども作製することができる。
【0055】
本発明を用いた本実施の形態により、液滴吐出装置を用いる液滴吐出方法において材料の大量の廃棄を行うことなく、加圧室内の気泡を除去し、吐出不良を防ぐことができる。
【0056】
従って、本発明を用いた本実施の形態の液滴吐出方法を用いて作製した導電層などの配線、絶縁層は、吐出不良に起因する断線などの形状不良を防ぐことができる。本発明を用いた本実施の形態により形成した配線や絶縁層を用いて、信頼性の高い半導体装置、表示装置を低コストで歩留まりよく作製することができる。
【0057】
(実施の形態2)
本実施の形態では、材料の大量の廃棄を行うことなく、加圧室内の気泡を除去し、吐出不良を防ぐ液滴吐出方法について、図3を用いて説明する。具体的には、実施の形態1において材料供給室における材料供給状態が異なる例である。従って、実施の形態1と、同一部分又は同様な機能を有する部分は実施の形態1と同様であり、その繰り返しの説明は省略する。
【0058】
本実施の形態における液滴吐出装置のブロック図を図3(A)(B)に示す。図3(B)は図3(A)をより具体化した例である。
【0059】
図3(A)に示すように、液滴吐出装置110は、加圧室111、材料供給通路113と材料供給室114とを含む材料供給部112、材料貯蔵室117、加圧室111に対する吐出制御手段115、一点鎖線で囲まれている加圧室111、材料供給部112、及び材料貯蔵室117内の圧力を制御する圧力制御手段116を有している。加圧室111には吐出口160が設けられており、吐出口160は、封止材161によって封止することができる。
【0060】
図3(B)は、材料貯蔵室117に気体供給排出部118における気体供給排出口119が設けられており、気体供給排出口119に接続された圧力制御手段116により、気体を供給、又は排出することによって、加圧室111、材料供給部112(材料供給通路113及び材料供給室114)及び材料貯蔵室117内の圧力を制御している。例えば、圧力制御手段116としてポンプ等で排気を行うと、加圧室111、材料供給部112(材料供給通路113及び材料供給室114)及び材料貯蔵室117内を減圧状態とすることができ、逆に気体を供給すると加圧室111、材料供給部112(材料供給通路113及び材料供給室114)及び材料貯蔵室117内を加圧状態とすることができる。
【0061】
本実施の形態は材料供給室114が材料である膜形成材料を含む組成物で完全に充填されていて、膜形成材料を含む組成物の液表面が材料貯蔵室117にある例である。膜形成材料を含む組成物は材料貯蔵室117より材料供給室114に供給され、材料供給室114より材料供給通路113を通って加圧室111に供給され充填される。本実施の形態では、材料が充填されている加圧室、材料供給通路、材料供給室を排気により減圧状態とするので、減圧状態とする閉空間に気体(本実施の形態では空気)による空間を有している必要がある。従って、本実施の形態では、材料貯蔵室117内の気体を排気することによって、連続して接続している加圧室111、材料供給通路113、材料供給室114を減圧する。
【0062】
従って、圧力制御手段116は、加圧室111、材料供給通路113、材料供給室114及び材料貯蔵室117内の圧力を制御する。
【0063】
材料供給室及び加圧室に材料を供給する際に空気の混入などによって、材料供給室114、材料供給通路113及び加圧室111内に気泡が存在してしまうことがある。気泡は気体であるため、液体よりも容易に膨張、収縮しやすい。そのため、加圧室内に気泡が存在すると、印加された圧力は気体により吸収されてしまう。結果液体に十分な圧力を与えることができないため、吐出不良を招く。また、材料供給通路及び材料供給室に存在する気泡も、吐出途中に加圧室内に流入し、吐出不良を引き起こす可能性がある。
【0064】
本実施の形態では、材料である膜形成材料を含む組成物を吐出する前に、接続している加圧室111、材料供給通路113、材料供給室114及び材料貯蔵室117内を減圧状態とし、加圧室111内に存在する気泡を除去する工程を設ける。
【0065】
加圧室111に設けられた吐出口160や、材料供給室114に設けられた材料供給口などの、気体供給排出部118における気体供給排出口119以外の外部に接続する流路を封止し、気体供給排出部118によりポンプなどの圧力制御手段を用いて、加圧室、材料供給通路及び材料供給室を減圧化する。
【0066】
封止材によって密閉された閉空間となった加圧室111、材料供給通路113、材料供給室114及び材料貯蔵室117において、気体供給排出部118より気体を排出する。気体供給排出部より排気することによって、加圧室111、材料供給通路113、材料供給室114及び材料貯蔵室117内は減圧される。その後気体供給排出部にもコック等を設けて封止し、加圧室111、材料供給通路113、材料供給室114及び材料貯蔵室117を減圧状態とする。
【0067】
気泡の体積Vbは加圧室111、材料供給通路113、材料供給室114及び材料貯蔵室117内の圧力Ptに逆比例するので、Vb=C/Ptとなる。一方、気泡に加わる浮力Fは、気泡の体積Vbと材料の密度ρiに比例するので、F=C×ρi/Ptとなる。なお、Cは定数である。加圧室111、材料供給通路113、材料供給室114及び材料貯蔵室117内を減圧すると、圧力Ptは減少するので、気泡にかかる浮力Fは増加する。結果材料内に存在する気泡は浮力を受けて加圧室111より材料液表面が存在する材料貯蔵室117の方へ浮上(移動)する。
【0068】
従って、気泡を加圧室111内より除去することができる。また、材料貯蔵室117内において気泡は、材料液表面に浮上し、破裂もしくは泡沫として材料液表面に留まるので、加圧室111内に気泡が流入(進入)する危険性を大幅に低減することができる。
【0069】
なお、加圧室111、材料供給通路113、材料供給室114及び材料貯蔵室117内を減圧状態とし、膜形成材料を含む組成物内より気泡を界面に放出した後、気体供給排出口のコックを開封し、圧力制御手段116により気体を供給し、加圧室111、材料供給通路113、材料供給室114及び材料貯蔵室117内を常圧、もしくは加圧状態とした後、封止材161を除去する。その後、加圧室111に電圧を印加し、吐出口より膜形成材料を含む組成物を吐出することができる。
【0070】
加圧室、材料供給通路、材料供給室及び材料貯蔵室内を減圧し、加圧室内に存在する気泡を効率よく材料供給室内に移動し除去するために、減圧状態で加圧室を振動させてもよい。振動させることによって、加圧室内の凹凸形状に捕らわれた気泡が移動し、気泡を効果的に加圧室より除去することができる。また、封止材としては開口が封止されればよいのでどのような材料及び形状のものを用いてもよく、可撓性の材料が好ましく、ゲル状、ゴム状の樹脂等を用いることができる。また粘着テープなどを設けることによっても密着性よく開口を封じることができる。なお、封止材として用いる材料は、吐出する膜形成材料を含む組成物と反応しない材料が好ましい。
【0071】
また、材料供給室と材料貯蔵室との間に設けられた材料供給口の封止や、気体供給排出部における気体供給排出口の封止は、バルブや活栓(コック)などを用いて接続している通路(配管)を遮断すればよい。
【0072】
本発明を用いた本実施の形態により、液滴吐出装置を用いる液滴吐出方法において材料の大量の廃棄を行うことなく、加圧室内の気泡を除去し、吐出不良を防ぐことができる。
【0073】
従って、本発明を用いた本実施の形態の液滴吐出方法を用いて作製した導電層などの配線、絶縁層は、吐出不良に起因する断線などの形状不良を防ぐことができる。本発明を用いた本実施の形態により形成した配線や絶縁層を用いて、信頼性の高い半導体装置、表示装置を低コストで歩留まりよく作製することができる。
【0074】
(実施の形態3)
本実施の形態では、材料の大量の廃棄を行うことなく、加圧室内の気泡を除去し、吐出不良を防ぐ液滴吐出方法について、図4を用いて説明する。具体的には、実施の形態1において振動手段を設ける例である。従って、実施の形態1と、同一部分又は同様な機能を有する部分は実施の形態1と同様であり、その繰り返しの説明は省略する。
【0075】
本実施の形態における液滴吐出装置のブロック図を図4(A)(B)に示す。
【0076】
図4(A)に示すように、液滴吐出装置100は、加圧室101、材料供給通路103と材料供給室104とを含む材料供給部102、材料貯蔵室107、加圧室101に対する吐出制御手段105、一点鎖線で囲まれている加圧室101、及び材料供給部102内の圧力を制御する圧力制御手段106、加圧室101に対する振動手段139を有している。加圧室101には吐出口150が設けられており、吐出口150は、封止材151によって封止することができる。
【0077】
本実施の形態では、材料である膜形成材料を含む組成物を吐出する前に、接続している加圧室101、材料供給通路103、及び材料供給室104内を減圧状態とし、加圧室101内に存在する気泡を除去する工程を設ける。
【0078】
加圧室101に設けられた吐出口150や、材料供給室104の材料供給口など、気体供給排出部における気体供給排出口以外の外部に接続する流路を封止し、気体供給排出部によりポンプなどの圧力制御手段を用いて、加圧室、材料供給通路及び材料供給室を減圧化する。
【0079】
封止材によって密閉された閉空間となった加圧室101、材料供給通路103、材料供給室104において、気体供給排出部により気体を排出する。気体供給排出部により排気することによって、加圧室101、材料供給通路103、材料供給室104内は減圧される。その後気体供給排出部における気体供給排出口に設けられたコックを封止し、加圧室101、材料供給通路103、及び材料供給室104を減圧状態とする。
【0080】
気泡の体積Vbは加圧室101、材料供給通路103、及び材料供給室104内の圧力Ptに逆比例するので、Vb=C/Ptとなる。一方、気泡に加わる浮力Fは、気泡の体積Vbと材料の密度ρiに比例するので、F=C×ρi/Ptとなる。なお、Cは定数である。加圧室101、材料供給通路103、及び材料供給室104内を減圧すると、圧力Ptは減少するので、気泡にかかる浮力Fは増加する。結果材料内に存在する気泡は浮力を受けて加圧室101より材料液表面が存在する材料供給室104の方へ浮上(移動)する。
【0081】
従って、気泡を加圧室101内より除去することができる。また、材料供給室104内において気泡は、材料液表面に浮上し、破裂もしくは泡沫として材料液表面に留まるので、加圧室101内に気泡が流入(進入)する危険性を大幅に低減することができる。
【0082】
本実施の形態では、より気泡を効率よく除去するために、減圧状態で加圧室101を振動手段139により振動させる。図4(A)は、加圧室101を振動手段139により振動させる例であり、図4(B)は加圧室101の他に材料供給部102(材料供給室104及び材料供給通路103)も連動して振動させる振動手段139を設ける例である。このように、振動手段は加圧室のみに設けても良いし、材料供給部などにも設けてもよい。振動させることによって、加圧室内の凹凸形状に捕らわれた気泡が移動し、気泡を効果的に加圧室より除去することができる。
【0083】
振動手段としては、加圧室が設けられたヘッド部を支持する支持台を上下左右に回転可能な可動式にしておけばよく、可動方向は上下のみ、左右のみでもよい。
【0084】
なお、加圧室101、材料供給通路103、及び材料供給室104内を減圧状態とし、膜形成材料を含む組成物内より気泡を界面に放出した後、気体供給排出口のコックを開封し、圧力制御手段106により気体を供給し、加圧室101、材料供給通路103、及び材料供給室104内を常圧、もしくは加圧状態とする。そして封止材151を除去した後、加圧室101に電圧を印加し、吐出口より膜形成材料を含む組成物を吐出することができる。
【0085】
また、封止材としては開口が封止されればよいのでどのような材料及び形状のものを用いてもよく、可撓性の材料が好ましく、ゲル状、ゴム状の樹脂等を用いることができる。また粘着テープなどを設けることによっても密着性よく開口を封じることができる。なお、封止材として用いる材料は、吐出する膜形成材料を含む組成物と反応しない材料が好ましい。
【0086】
また、材料供給室と材料貯蔵室との間に設けられた材料供給口の封止や、気体供給排出部における気体供給排出口の封止は、バルブや活栓(コック)などを用いて接続している通路(配管)を遮断すればよい。
【0087】
本発明を用いた本実施の形態により、液滴吐出装置を用いる液滴吐出方法において材料の大量の廃棄を行うことなく、加圧室内の気泡を除去し、吐出不良を防ぐことができる。
【0088】
従って、本発明を用いた本実施の形態の液滴吐出方法を用いて作製した導電層などの配線、絶縁層は、吐出不良に起因する断線などの形状不良を防ぐことができる。本発明を用いた本実施の形態により形成した配線や絶縁層を用いて、信頼性の高い半導体装置、表示装置を低コストで歩留まりよく作製することができる。
【0089】
(実施の形態4)
本実施の形態では、材料の大量の廃棄を行うことなく、加圧室内の気泡を除去し、吐出不良を防ぐ液滴吐出方法について、図5を用いて説明する。具体的には、実施の形態1において示す液滴吐出装置を詳細に説明する。従って、実施の形態1と、同一部分又は同様な機能を有する部分は実施の形態1と同様であり、その繰り返しの説明は省略する。
【0090】
本実施の形態における液滴吐出装置のブロック図を図5に示す。図5に示すように、液滴吐出装置120は、加圧室121、材料供給通路123と材料供給室124とを含む材料供給部122、材料貯蔵室127、加圧室121に対する吐出制御手段125、一点鎖線で囲まれている加圧室121、及び材料供給部122内の圧力を制御する圧力制御手段126、材料貯蔵室127内の圧力を減圧する減圧手段130、材料供給口132の開閉を行うコック135、加圧室121に対する振動手段129を有している。
【0091】
材料供給室124には気体供給排出部128における気体供給排出口136及び材料供給口132が設けられている。本実施の形態では、材料供給室124には空間を有して材料である膜形成材料を含む組成物が材料貯蔵室127より供給されている。よって、気体供給排出部128により材料供給室124内の気体を供給、又は排出することによって加圧室121、材料供給部122(材料供給通路123及び材料供給室124)の圧力を制御している。例えば、気体供給排出部128におけるポンプ等の圧力制御手段126で排気を行うと、加圧室121、材料供給部122(材料供給通路123及び材料供給室124)内を減圧状態とすることができ、逆に気体を供給すると加圧室121、材料供給部122(材料供給通路123及び材料供給室124)内を加圧状態とすることができる。また、吐出口133に供給されている材料と空気との液界面を制御するメニスカス制御手段131を有している。本実施の形態のように、メニスカス制御手段131を材料供給室に接続する接続口(メニスカス調整口ともいう)として、気体供給排出部128の気体供給排出口136を共通して用いてもよい。
【0092】
本実施の形態では、材料である膜形成材料を含む組成物を吐出する前に、接続している加圧室121、材料供給通路123、及び材料供給室124内を減圧状態とし、加圧室121内に存在する気泡を除去する工程を設ける。
【0093】
加圧室121に設けられた吐出口133や、材料供給室の材料供給口132など、気体供給排出部128における気体供給排出口136以外の外部に接続する流路を封止し、気体供給排出部128に設けられたポンプなどの圧力制御手段126を用いて、加圧室、材料供給通路及び材料供給室を減圧化する。
【0094】
封止材134によって密閉された閉空間となった加圧室121、材料供給通路123、材料供給室124において、気体供給排出部128により気体を排出する。気体供給排出部128により排気することによって、加圧室121、材料供給通路123、材料供給室124内は減圧される。その後気体供給排出部における気体供給排出口136をコックにより封止し、加圧室121、材料供給通路123、及び材料供給室124を減圧状態とする。
【0095】
気泡の体積Vbは加圧室121、材料供給通路123、及び材料供給室124内の圧力Ptに逆比例するので、Vb=C/Ptとなる。一方、気泡に加わる浮力Fは、気泡の体積Vbと材料の密度ρiに比例するので、F=C×ρi/Ptとなる。なお、Cは定数である。加圧室121、材料供給通路123、及び材料供給室124内を減圧すると、圧力Ptは減少するので、気泡にかかる浮力Fは増加する。結果材料内に存在する気泡は浮力を受けて加圧室121より材料液表面が存在する材料供給室124の方へ浮上(移動)する。
【0096】
従って、気泡を加圧室121内より除去することができる。また、材料供給室124内において気泡は、材料液表面に浮上し、破裂もしくは泡沫として材料液表面に留まるので、加圧室121内に気泡が流入(進入)する危険性を大幅に低減することができる。
【0097】
本実施の形態では、より気泡を効率よく除去するために、減圧状態で加圧室121を振動手段129により振動させる。振動手段は加圧室のみに設けても良いし、材料供給部などにも設けてもよい。振動させることによって、加圧室内の凹凸形状に捕らわれた気泡が移動し、気泡を効果的に加圧室より除去することができる。
【0098】
振動手段としては、加圧室及び材料供給通路内に存在する気泡を材料供給室へ移動させるため、斜めに傾けられるように、加圧室が設けられたヘッド部を支持する支持台を上下方向左右方向に回転可能な可動式にしておけばよく、可動方向は上下方向のみ、左右方向のみでもよい。
【0099】
なお、加圧室121、材料供給通路123、及び材料供給室124内を減圧状態とし、膜形成材料を含む組成物内より気泡を界面に放出した後、気体供給排出口136に設けられたコックを開き、圧力制御手段126により気体を供給し、加圧室121、材料供給通路123、及び材料供給室124内を常圧、もしくは加圧状態とし封止材134を除去する。その後加圧室121に電圧を印加し、吐出口133より膜形成材料を含む組成物を吐出することができる。
【0100】
ピエゾ素子を用いた吐出法において、加圧室に設けられたピエゾ素子に印加する電圧波形に材料の吐出量は依存する。よって、印加する電圧波形を選択することによって吐出量を適宜調整することができる。本発明で用いることのできる電圧波形の例を図7に示す。
【0101】
図7(A)乃至(C)はいずれも一滴の吐出に要する印加電圧波形を示している。図7(A)は、2つの連続した台形波であり、ダブルパルスと呼ばれる。図7(A)における電圧波形は印加電圧Vpを60V、時間t1を25μs、t2を3μs、t3を10μsとした例である。図7(B)は、1つの台形波である。図7(B)における電圧波形は印加電圧Vpを60V、時間trを3μs、tpを8μs、tfを3μsとした例である。図7(C)は、印加電圧を低下させるときに2段階にわたって低下させている。図7(C)における電圧波形は印加電圧Vpを60V、Vdを50V、時間trを3μs、tpを15μs、tfを30μsとした例である。また、吐出量は液滴吐出装置のヘッド形状にも影響を受けるため、ヘッド形状と印加電圧波形を選択することによって吐出量を制御することができる。
【0102】
また、材料供給室124へ材料を供給する前に、材料貯蔵室127において、材料である膜形成材料を含む組成物中の気泡の除去(脱気ともいう)を行ってもよい。気体の供給排出を制御する活栓であるコック135を閉じて材料貯蔵室127と材料供給室124とを分断し、かつ材料貯蔵室127を閉空間とし、減圧手段130によって材料貯蔵室127を減圧状態とする。材料貯蔵室127内の材料内の気泡は減圧状態にすることにより、材料液表面に浮上するので、材料内の気泡を軽減、除去することができる。このように、材料供給室124へ供給する前に材料貯蔵室127においても材料内の気泡の除去を行うと、より材料内の気泡を低減することができる。材料貯蔵室127の減圧制御は、材料貯蔵室127に気体排出口を設け、その気体排出口よりポンプ等を用いて気体を排出することによって材料貯蔵室127内の圧力を減圧すればよい。気泡の除去後は、材料貯蔵室127を開放し、常圧状態に戻せばよい。
【0103】
膜形成材料を含む組成物は溶媒を用いて粘度等を調整する。この場合、溶媒と液状の膜形成材料を含む組成物とを混合して加圧室へ供給してもよいし、先に溶媒を加圧室へ供給して脱気し、さらに膜形成材料を含む組成物をあとから混合するように供給し再び脱気してもよい。つまり先に溶媒を材料供給室より材料供給通路、加圧室へ充填し、吐出口を封止して減圧状態にする。溶媒中に含まれる気泡は材料供給室の液表面へ浮上し、加圧室より除去される。その後、膜形成材料を含む組成物を溶媒と同様に供給し、先に供給されている溶媒と混合する。再び吐出口を封止し、加圧室、材料供給通路及び材料供給室を減圧状態とする。吐出する材料である膜形成材料及び溶媒の混合した組成物に含まれる気泡は材料供給室の液表面に浮上し、加圧室より除去される。このように複数回の気泡の除去工程を行ってもよい。
【0104】
また、封止材としては開口が封止されればよいのでどのような材料及び形状のものを用いてもよく、可撓性の材料が好ましく、ゲル状、ゴム状の樹脂等を用いることができる。また粘着テープなどを設けることによっても密着性よく開口を封じることができる。なお、封止材として用いる材料は、吐出する膜形成材料を含む組成物と反応しない材料が好ましい。
【0105】
また、材料供給室と材料貯蔵室との間に設けられた材料供給口の封止や、気体供給排出部における気体供給排出口の封止は、バルブや活栓(コック)などを用いて接続している通路(配管)を遮断すればよい。
【0106】
本発明を用いた本実施の形態により、液滴吐出装置を用いる液滴吐出方法において材料の大量の廃棄を行うことなく、加圧室内の気泡を除去し、吐出不良を防ぐことができる。
【0107】
従って、本発明を用いた本実施の形態の液滴吐出方法を用いて作製した導電層などの配線、絶縁層は、吐出不良に起因する断線などの形状不良を防ぐことができる。本発明を用いた本実施の形態により形成した配線や絶縁層を用いて、信頼性の高い半導体装置、表示装置を低コストで歩留まりよく作製することができる。このような半導体装置及び表示装置を用いて様々な電子機器を作製することができる。
【0108】
本発明に係る電子機器として、テレビジョン装置(単にテレビ、又はテレビジョン受信機ともよぶ)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等のカメラ、携帯電話装置(単に携帯電話機、携帯電話ともよぶ)、PDA等の携帯情報端末、携帯型ゲーム機、コンピュータ用のモニタ、コンピュータ、カーオーディオ等の音響再生装置、家庭用ゲーム機等の記録媒体を備えた画像再生装置等が挙げられる。
【0109】
(実施の形態5)
本実施の形態では、材料の大量の廃棄を行うことなく、加圧室内の気泡を除去し、吐出不良を防ぐ液滴吐出方法について、図6を用いて説明する。具体的には、実施の形態1において示す液滴吐出装置を詳細に説明する。従って、実施の形態1と、同一部分又は同様な機能を有する部分は実施の形態1と同様であり、その繰り返しの説明は省略する。
【0110】
液滴吐出法に用いる液滴吐出装置の一態様を図6に示す。液滴吐出手段1403の個々のヘッド1405、ヘッド1412は制御手段1407に接続され、それがコンピュータ1410で制御することにより予めプログラミングされたパターンに描画することができる。描画するタイミングは、例えば、基板1400上に形成されたマーカー1411を基準に行えば良い。或いは、基板1400の縁を基準にして基準点を確定させても良い。これを撮像手段1404で検出し、画像処理手段1409にてデジタル信号に変換したものをコンピュータ1410で認識して制御信号を発生させて制御手段1407に送る。撮像手段1404としては、電荷結合素子(CCD)や相補型金属酸化物半導体を利用したイメージセンサなどを用いることができる。勿論、基板1400上に形成されるべきパターンの情報は記憶媒体1408に格納されたものであり、この情報を基にして制御手段1407に制御信号を送り、液滴吐出手段1403の個々のヘッド1405、ヘッド1412を個別に制御することができる。吐出する材料は、材料供給源である材料供給室1413、1414より配管を通してヘッド1405、ヘッド1412にそれぞれ供給される。なお、制御手段1407は吐出制御手段として機能する。
【0111】
ヘッド1405内部は、点線1406が示すように液状の材料を充填する空間と、ノズルを有する構造となっている。図示しないが、ヘッド1412もヘッド1405と同様な内部構造を有する。ヘッド1405とヘッド1412のノズルを異なるサイズで設けると、異なる材料を異なる幅で同時に描画することができる。一つのヘッドで、導電性材料や有機、無機材料などをそれぞれ吐出し、描画することができ、層間膜のような広領域に描画する場合は、スループットを向上させるため複数のノズルより同材料を同時に吐出し、描画することができる。大型基板を用いる場合、ヘッド1405、ヘッド1412は基板上を、矢印の方向に自在に走査し、描画する領域を自由に設定することができ、同じパターンを一枚の基板に複数描画することができる。
【0112】
材料供給室1413、1414は空間を有して材料(膜形成材料を含む組成物)が充填されており、ヘッド1405及びヘッド1412内に設けられた材料供給通路、加圧室、及びノズルに供給される。吐出工程の前に本発明を用いて、供給されている材料内の気泡を除去する。
【0113】
圧力制御手段1426によって、ヘッド1405、1412及び材料供給室1413、1414において気体供給排出部以外のノズルの吐出口などの開口を封止し、気体を排出することによって、ヘッド1405、1412内に設けられる材料供給通路、及び加圧室を減圧状態とする。
【0114】
気泡の体積Vbは加圧室、材料供給通路及び材料供給室1413、1414内の圧力Ptに逆比例するので、Vb=C/Ptとなる。一方、気泡に加わる浮力Fは、気泡の体積Vbと材料の密度ρiに比例するので、F=C×ρi/Ptとなる。なお、Cは定数である。加圧室、材料供給通路及び材料供給室1413、1414内を減圧すると、圧力Ptは減少するので、気泡にかかる浮力Fは増加する。結果材料内に存在する気泡は浮力を受けて加圧室より材料液表面が存在する材料供給室1413、1414の方へ浮上(移動)する。
【0115】
従って、気泡を加圧室内より除去することができる。また、材料供給室1413、1414内において気泡は、材料液表面に浮上し、破裂もしくは泡沫として材料液表面に留まるので、加圧室内に気泡が流入(進入)する危険性を大幅に低減することができる。
【0116】
なお、加圧室、材料供給通路及び材料供給室1413、1414内を減圧状態とし、膜形成材料を含む組成物内より気泡を界面に放出した後、加圧室、材料供給通路及び材料供給室1413、1414内を常圧、もしくは加圧状態とし、封止材を除去する。そして加圧室に電圧を印加し、ノズルの吐出口より膜形成材料を含む組成物を吐出する。
【0117】
また、封止材としては開口が封止されればよいのでどのような材料及び形状のものを用いてもよく、可撓性の材料が好ましく、ゲル状、ゴム状の樹脂等を用いることができる。また粘着テープなどを設けることによっても密着性よく開口を封じることができる。なお、封止材として用いる材料は、吐出する膜形成材料を含む組成物と反応しない材料が好ましい。
【0118】
また、材料供給室と材料貯蔵室との間に設けられた材料供給口の封止や、気体供給排出部における気体供給排出口の封止は、バルブや活栓(コック)などを用いて接続している通路(配管)を遮断すればよい。
【0119】
加圧室、材料供給通路及び材料供給室内を減圧し、加圧室内に存在する気泡を効率よく材料供給室内に移動し除去するために、減圧状態で加圧室を振動させてもよい。振動させることによって、加圧室内の凹凸形状に捕らわれた気泡が移動し、気泡を効果的に加圧室より除去することができる。
【0120】
本発明を用いた本実施の形態により、液滴吐出装置を用いる液滴吐出方法において材料の大量の廃棄を行うことなく、加圧室内の気泡を除去し、吐出不良を防ぐことができる。
【0121】
従って、本発明を用いた本実施の形態の液滴吐出方法を用いて作製した導電層などの配線、絶縁層は、吐出不良に起因する断線などの形状不良を防ぐことができる。本発明を用いた本実施の形態により形成した配線や絶縁層を用いて、信頼性の高い半導体装置、表示装置を低コストで歩留まりよく作製することができる。このような半導体装置及び表示装置を用いて様々な電子機器を作製することができる。
【0122】
(実施の形態6)
本実施の形態では、材料の大量の廃棄を行うことなく、加圧室内の気泡を除去し、吐出不良を防ぐ液滴吐出方法を行うことのできる液滴吐出装置の一形態について、図8を用いて説明する。実施の形態1乃至5と、同一部分又は同様な機能を有する部分は実施の形態1乃至5と同様であり、その繰り返しの説明は省略する。
【0123】
本実施の形態における液滴吐出装置800の概略図を図8に示す。図8に示すように、液滴吐出装置800は、加圧室、材料供給通路と材料供給室とを含む材料供給部、及び吐出口801を有するヘッド部802、気体供給排出口803、第1のコック804、圧力制御手段805、材料供給口806、第2のコック807、材料供給手段818、材料貯蔵室808、減圧手段809、被処理物810、封止材である封止板811、洗浄液吐出手段812、洗浄液貯蔵室813、廃液貯蔵室814、減圧手段815、ステージ816、並びに走査装置817で表されている。
【0124】
走査装置817は、ヘッド部と封止材とを相対的に走査し、かつヘッド部とステージとを相対的に走査する。走査方向は、XYZ方向及びθ方向に移動、回転する。
【0125】
第1のコック804により気体供給排出口803は開閉され、第2のコック807により材料供給口806は開閉される。
【0126】
第1のコック804の開閉と圧力制御手段805によって気体の供給又は排出を制御する。第2のコック807の開閉及び材料供給手段818によって材料貯蔵室808よりヘッド部への材料の供給を制御する。また、第2のコック807を閉めて減圧手段809によって材料貯蔵室808内を減圧し、材料中に含まれる気泡を除去することもできる。
【0127】
封止板811はヘッド部802の吐出口801を密閉するように接するため封止板811には材料が付着する。封止板811に付着した材料は洗浄液貯蔵室813より洗浄液吐出手段812から吐出される洗浄液によって洗浄され、廃液貯蔵室814へ廃棄される。廃液貯蔵室814は減圧手段815によって排気されており、洗浄液と材料液とが混合された廃液を廃液貯蔵室814へ吸引している。圧力制御手段805、減圧手段809、減圧手段815は矢印で示すように給気、又は排気を行い、接続するヘッド部802、材料貯蔵室808、廃液貯蔵室814内の圧力を制御する。
【0128】
気体供給排出口803はヘッド部802に供給されている材料と空気との液界面を調整するメニスカス調整口として用いることもできる。
【0129】
本実施の形態では、封止材である封止板をステージと接して設け、ステージとともに走査する例を示すが、封止板はこれに限定されず、液滴吐出装置内の他の場所に設けて、封止材を独立して走査しても構わない。また、同様に、洗浄液吐出手段も本実施の形態ではヘッド部の動きと連結するようにヘッド部と隣接して設ける例を示すが、液滴吐出装置内の他の場所に設けて、洗浄液吐出手段を独立に走査しても構わない。本実施の形態のように封止材をステージと隣接するように、洗浄液吐出手段をヘッド部と隣接するように設けると、広い範囲を走査する必要がなく、ヘッド部の動きの妨げにもなりにくいために好ましい。
【0130】
本実施の形態では、材料である膜形成材料を含む組成物を吐出する前に、接続しているヘッド部802内を減圧状態とし、ヘッド部802内に存在する気泡を除去する。
【0131】
ヘッド部802及び封止板811の少なくともどちらかを走査装置817によって走査し、ヘッド部802の吐出口801と封止板811と密着させ、吐出口801を封止する。ヘッド部802及び封止板811はどちらを走査させてもよく、両方を走査してもよい。
【0132】
第2のコック807も閉じ、第1のコック804のみを開いた状態とし、圧力制御手段805よりヘッド部802内の排気を行った後、第1のコック804を閉じる。圧力制御手段805によりヘッド部802内は減圧状態とすることができる。ヘッド部802内の材料液中に混在ずる気泡は、材料液表面に浮上(移動)し、破裂もしくは泡沫として材料液表面に留まる。
【0133】
従って、気泡をヘッド部802の特に加圧室内より除去することができる。さらに、材料供給室から加圧室内に気泡が流入(進入)する危険性を大幅に低減することができる。
【0134】
本実施の形態では、より気泡を効率よく除去するために、減圧状態でヘッド部を振動手段により振動させてもよい。振動させることによって、加圧室内の凹凸形状に捕らわれた気泡が移動し、気泡を効果的に加圧室より除去することができる。
【0135】
振動手段としては、加圧室及び材料供給通路内に存在する気泡を材料供給室へ移動させるため、斜めに傾けられるように、加圧室が設けられたヘッド部を支持する支持台を上下方向左右方向に回転可能な可動式にしておけばよく、可動方向は上下方向のみ、左右方向のみでもよい。
【0136】
ヘッド部802内の材料液中の気泡の除去を行った後、第1のコック804を開いてヘッド部802内に圧力制御手段805により気体を供給し、ヘッド部802内を減圧状態より加圧し、ヘッド部802内を常圧、もしくは加圧状態とする。
【0137】
その後、走査装置817によりヘッド部802及び封止板811を走査し、吐出口801より封止板811を離して、ヘッド部802及びステージ816を走査し、吐出口801を被処理物810の吐出位置に合わせる。
【0138】
そしてヘッド部802内の加圧室に電圧を印加し、吐出口801より材料である膜形成材料を含む組成物を吐出する。
【0139】
膜形成材料を含む組成物と被処理物への吐出後、洗浄液吐出手段812下に封止板811を位置し、洗浄液を封止板に吐出して封止材を洗浄する。上記のように洗浄後の廃液は、減圧手段815を用いて廃液貯蔵室814へ廃棄すればよい。
【0140】
封止材である封止板811としては開口が封止されればよいのでどのような材料及び形状のものを用いてもよく、可撓性の材料が好ましく、ゲル状、ゴム状の樹脂等を用いることができる。また粘着テープなどを設けることによっても密着性よく開口を封じることができる。なお、封止材として用いる材料は、吐出する膜形成材料を含む組成物と反応しない材料が好ましい。
【0141】
本発明を用いた本実施の形態により、液滴吐出装置を用いる液滴吐出方法において材料の大量の廃棄を行うことなく、加圧室内の気泡を除去し、吐出不良を防ぐことができる。
【0142】
従って、本発明を用いた本実施の形態の液滴吐出装置を用いて作製した導電層などの配線、絶縁層は、吐出不良に起因する断線などの形状不良を防ぐことができる。本発明を用いた本実施の形態により形成した配線や絶縁層を用いて、信頼性の高い半導体装置、表示装置を低コストで歩留まりよく作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の液滴吐出装置を説明する概念図。
【図2】本発明の液滴吐出装置を説明するブロック図。
【図3】本発明の液滴吐出装置を説明するブロック図。
【図4】本発明の液滴吐出装置を説明するブロック図。
【図5】本発明の液滴吐出装置を説明するブロック図。
【図6】本発明の液滴吐出装置を説明する図。
【図7】本発明の液滴吐出装置に用いることのできる印加電圧波形を説明する図。
【図8】本発明の液滴吐出装置を説明する図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料供給室に液状の膜形成材料を含む組成物を供給し、
前記材料供給室より、材料供給通路を通し吐出口が設けられた加圧室に前記膜形成材料を含む組成物を供給し、
前記吐出口を封じ前記材料供給室、前記材料供給通路、及び前記加圧室内を減圧し、
前記前記材料供給室、前記材料供給通路、及び前記加圧室内を前記減圧した状態より加圧し、
前記吐出口を開き、
前記加圧室に圧力を加えて前記吐出口より前記膜形成材料を含む組成物を吐出し膜を形成することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項2】
気体供給排出部が設けられた材料供給室に、液状の膜形成材料を含む組成物を供給し、
前記材料供給室より、材料供給通路を通し吐出口が設けられた加圧室に前記膜形成材料を含む組成物を供給し、
前記吐出口を封じ、前記気体供給排出部より排気を行い前記材料供給室、前記材料供給通路、及び前記加圧室内を減圧し、
前記気体供給排出部より給気を行い前記材料供給室、前記材料供給通路、及び前記加圧室内を前記減圧した状態より加圧し、
前記吐出口を開き、
前記加圧室に圧力を加えて前記吐出口より前記膜形成材料を含む組成物を吐出し膜を形成することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項3】
材料供給室に液状の膜形成材料を含む組成物を供給し、
前記材料供給室より、材料供給通路を通し吐出口が設けられた加圧室に前記膜形成材料を含む組成物を供給し、
前記吐出口を封じ前記材料供給室、前記材料供給通路、及び前記加圧室内を減圧することで前記加圧室内に存在する気泡を前記材料供給室内へ移動させ、
前記材料供給室、前記材料供給通路、及び前記加圧室内を前記減圧した状態より加圧し、
前記吐出口を開き、
前記加圧室に圧力を加えて前記吐出口より前記膜形成材料を含む組成物を吐出し膜を形成することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項4】
気体供給排出部が設けられた材料供給室に、液状の膜形成材料を含む組成物を供給し、
前記材料供給室より、材料供給通路を通し吐出口が設けられた加圧室に前記膜形成材料を含む組成物を供給し、
前記吐出口を封じ、前記気体供給排出部より排気を行い前記材料供給室、前記材料供給通路、及び前記加圧室内を減圧することで前記加圧室内に存在する気泡を前記材料供給室内へ移動させ、
前記気体供給排出部より給気を行い前記材料供給室、前記材料供給通路、及び前記加圧室内を前記減圧した状態より加圧し、
前記吐出口を開き、
前記加圧室に圧力を加えて前記吐出口より前記膜形成材料を含む組成物を吐出し膜を形成することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、前記材料供給室において上方に空間を有するように前記膜形成材料を含む組成物を供給することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、前記減圧した状態において前記加圧室を振動させることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、前記吐出口は封止材、又は粘着テープによって封じることを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項において、前記材料供給室には、材料貯蔵室より前記膜形成材料を含む組成物を供給することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項において、前記気体供給排出部によりメニスカスを調整することを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項において、前記膜形成材料を含む組成物は導電性材料、又は絶縁性材料を含むことを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項において、前記膜形成材料を含む組成物はフッ素を有する界面活性剤を含むことを特徴とする液滴吐出方法。
【請求項12】
ヘッド部と、
前記ヘッド部に設けられた気体供給排出口と、
前記気体供給排出口に接続する前記ヘッド部内の圧力を制御する圧力制御手段と、
封止材と、
被処理物が配置されるステージと、
前記ヘッド部と前記封止材とを相対的に走査し、かつ前記ヘッド部と前記ステージとを相対的に走査する走査装置と
を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項13】
ヘッド部と、
前記ヘッド部に設けられた第1のコックにより開閉される気体供給排出口、及び第2のコックにより開閉される材料供給口と、
前記第1のコックを介して前記気体供給排出口に接続する前記ヘッド部内の圧力を制御する圧力制御手段と、
前記第2のコックを介して前記材料供給口に接続する材料貯蔵室と、
前記材料貯蔵室より前記ヘッド部内に材料を供給する供給手段と、
封止材と、
被処理物が配置されるステージと、
前記ヘッド部と前記封止材とを相対的に走査し、かつ前記ヘッド部と前記ステージとを相対的に走査する走査装置と
を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項14】
請求項12又は請求項13において、前記材料貯蔵室内を減圧する減圧手段を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項15】
請求項12乃至14のいずれか一項において、前記封止材を洗浄する洗浄液を吐出する洗浄液吐出手段を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項16】
請求項12乃至15のいずれか一項において、前記封止材を洗浄した廃液を廃棄する廃液貯蔵室を有することを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−68253(P2008−68253A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209050(P2007−209050)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】