説明

液滴形成条件決定方法、液滴の体積計測方法、粒子数計測方法、及び液滴形成装置

【課題】 静電力を利用した液滴形成において、ノズル内の液体と基板との間に印加する電圧の印加条件を容易に最適化できる液滴形成条件決定方法、及びこの液滴形成条件決定方法を好適に実施できる液滴形成装置を提供する。
【解決手段】 液滴形成条件決定方法は、ノズル3に蓄えられたサンプル液21と、ノズル3の先端に対して対向配置された基板5との間にパルス電圧Pを印加し、ノズル3の先端からサンプル液21を吐出させて基板5上にサンプル液21からなる液滴27を形成するとともに、ノズル3内のサンプル液21と基板5との間に流れる電流Iの時間波形を測定する波形測定ステップS1と、電流Iの時間波形に基づいて、基板5上に液滴27を形成する際のパルス電圧Pの印加条件を決定する印加条件決定ステップS2とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴形成条件決定方法、液滴の体積計測方法、粒子数計測方法、及び液滴形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微量の液体を分注して液滴を形成するための技術として、静電力を利用した液滴形成方法が知られている。例えば、特許文献1,2には、ノズル先端から所定の距離を隔てて設けられた基板とノズル内の液体との間にパルス電圧を印加し、ノズル先端から液体を引き出すことにより液滴を形成する技術が開示されている。このうち特許文献1には、ノズル内の液体と基板との間に印加するパルス電圧の波高値を制御することによって、液滴の体積を制御できることが記載されている。また、特許文献2には、パルス電圧の波高値、パルス電圧のパルス幅、またはノズル先端と基板との距離を制御することによって、液滴の体積を制御できることが記載されている。
【0003】
また、特許文献3には、静電力を利用したインクジェット式記録装置が開示されている。この特許文献3には、ノズル内の吐出電極に印加するパルス電圧の波高値、パルス幅、パルス周波数等をインク特性(トナー濃度)に基づいて制御する技術が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−039811号公報
【特許文献2】国際公開第03/020418号パンフレット
【特許文献3】特許第2885716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
静電力を利用して微量の液滴を形成する場合、液滴の体積を安定させるために、分注される液体の特性、例えば粘性や導電性に応じて、ノズル先端と基板との距離、パルス電圧の波高値、パルス電圧のパルス幅等の電圧印加条件を最適化する必要がある。しかしながら、この作業には多くの時間と熟練した労力とを必要とする。また、液体が比較的高い導電性を有する場合には、液体の挙動が不安定になり易く、さらなる時間及び労力を必要とする。なお、特許文献3は、経時変化するトナー濃度に応じて電圧印加条件を制御する方法であって、トナー濃度に応じた最適な電圧印加条件を予め求めておく必要があり、上記した電圧印加条件の最適化作業を回避できるものではない。
【0006】
本発明は、上記した問題点を鑑みてなされたものであり、静電力を利用した液滴形成において、ノズル内の液体と基板との間に印加する電圧の印加条件を容易に最適化できる液滴形成条件決定方法、及びこの液滴形成条件決定方法を好適に実施できる液滴形成装置を提供することを目的とする。また、本発明は、この液滴形成条件決定方法を用い、分注された液滴の体積を容易に計測できる液滴の体積計測方法を提供することを目的とする。また、本発明は、この液滴形成条件決定方法を用い、分注された液滴中に含まれる粒子の個数を容易に且つ精度良く計測できる粒子数計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明による液滴形成条件決定方法は、基板上に液滴を形成するための条件を決定する方法であって、ノズルに蓄えられた液体と、ノズルの先端に対して対向配置された基板との間にパルス電圧を印加し、ノズルの先端から液体を吐出させて基板上に液滴を形成するとともに、ノズルに蓄えられた液体と基板との間に流れる電流の時間波形を測定する第1の波形測定ステップと、第1の波形測定ステップにおいて測定された電流の時間波形に基づいて、基板上に液滴を形成する際のパルス電圧の印加条件を決定する印加条件決定ステップとを備えることを特徴とする。
【0008】
ノズルに蓄えられた液体と基板との間にパルス電圧が印加されると、静電力によってノズル先端から液体が引っ張られ、その一部が基板上に移動して液滴が形成される。このとき、パルス電圧の印加条件に応じて、基板上に液滴が形成される際のノズル先端における液体の挙動が変化する。本発明者らは、基板上に液滴が形成される際のノズル先端の液体の挙動を、液体と基板との間に流れる電流の時間波形によって観察できることを見出した。従って、上記した液滴形成条件決定方法によれば、印加条件決定ステップにおいて、液体と基板との間に流れる電流の時間波形に基づいてパルス電圧の印加条件を決定することにより、液体と基板との間に印加されるパルス電圧の印加条件を容易に最適化できる。
【0009】
また、液滴形成条件決定方法は、印加条件決定ステップにおいて、パルス電圧の印加条件として、ノズルの先端と基板との距離、パルス電圧の波高値、及びパルス電圧の時間幅のうち少なくとも1つを決定することを特徴としてもよい。これにより、基板上に液滴が形成される際の液体の挙動を好適に制御し、液滴量を分注毎に容易に安定させることができる。
【0010】
また、液滴形成条件決定方法は、印加条件決定ステップにおいて、電流の時間波形に含まれる複数の電流パルス波形の出現頻度に基づいて、パルス電圧の印加条件を決定することを特徴としてもよい。本発明者らは、ノズル先端から液体が移動する際に液体と基板との間に流れる電流の時間波形に複数の電流パルス波形が含まれること、さらには、この電流パルス波形の出現頻度が高い(すなわち、単位時間あたりの電流パルス波形の数が多い)ほど、液滴量が分注毎に安定することを見出した。従って、この液滴形成条件決定方法によれば、基板上に液滴が形成される際の液体の挙動を好適に制御し、液滴量を分注毎に容易に安定させることができる。
【0011】
また、液滴形成条件決定方法は、印加条件決定ステップにおいて、電流の時間波形に含まれる電流パルス波形の波高値に基づいて、パルス電圧の印加条件を決定することを特徴としてもよい。本発明者らは、液体と基板との間に流れる電流の時間波形に含まれる電流パルス波形の波高値が低い(すなわち、電流パルス波形における電流値が小さい)ほど、液滴量が分注毎に安定することを見出した。従って、この液滴形成条件決定方法によれば、基板上に液滴が形成される際の液体の挙動を好適に制御し、液滴量を分注毎に容易に安定させることができる。なお、電流パルス波形の波高値としては、例えば複数の電流パルス波形それぞれの波高値の平均値を用いることが好ましい。
【0012】
本発明による液滴の体積計測方法は、基板上に形成された液滴の体積を計測する方法であって、上記したいずれかの液滴形成条件決定方法を用いてパルス電圧の印加条件を決定する液滴形成条件決定ステップと、液滴形成条件決定ステップにおいて決定されたパルス電圧の印加条件に基づいて、ノズルに蓄えられた液体と基板との間にパルス電圧を印加し、ノズルの先端から液体を吐出させて基板上に液滴を形成するとともに、ノズルに蓄えられた液体と基板との間に流れる電流の時間波形を測定する第2の波形測定ステップと、第2の波形測定ステップにおいて測定された電流の時間波形の積分値に基づいて、液滴の体積を計測する体積計測ステップとを備えることを特徴とする。
【0013】
ノズル内の液体と基板との間に流れる電流は、ノズル内の液体が基板へ移動することによって生じる。従って、上記した液滴の体積計測方法によれば、該電流の時間波形を積分する(すなわち、ノズル内の液体から基板へ移動した電荷量を求める)ことにより、液滴の体積を容易に且つ精度良く計測することができる。
【0014】
本発明による粒子数計測方法は、基板上に形成された液滴中の粒子数を計測する方法であって、上記したいずれかの液滴形成条件決定方法を用いてパルス電圧の印加条件を決定する液滴形成条件決定ステップと、液体中に粒子を含ませて粒子混合液とし、液滴形成条件決定ステップにおいて決定されたパルス電圧の印加条件に基づいて、ノズルに蓄えられた粒子混合液と基板との間にパルス電圧を印加し、ノズルの先端から粒子混合液を吐出させて基板上に粒子混合液の液滴を形成するとともに、ノズルに蓄えられた粒子混合液と基板との間に流れる電流の時間波形を測定する第3の波形測定ステップと、第3の波形測定ステップにおいて測定された電流の時間波形に基づいて、液滴に含まれる粒子の個数を計測する粒子数計測ステップとを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明者らは、ノズルに蓄えられた粒子混合液がノズル先端から基板上へ移る際に、粒子混合液と基板との間に流れる電流の時間波形が、個々の粒子の移動の瞬間に変化することを見出した。従って、この電流の時間波形の変化を観察することによって、ノズルから基板上へ幾つの粒子が移動したかを計測することが可能となる。上記した粒子数計測方法では、粒子数計測ステップにおいて、液滴に含まれる粒子の個数を電流の時間波形に基づいて計測するので、液滴に含まれる粒子の個数を容易に且つ精度良く計測できる。
【0016】
また、粒子数計測方法は、粒子数計測ステップにおいて、電流の時間波形に含まれる複数の電流パルス波形のうち、パルス幅が所定値よりも長い電流パルス波形の個数に基づいて、液滴に含まれる粒子の個数を計測することを特徴としてもよい。本発明者らは、ノズルに蓄えられた粒子混合液がノズル先端から基板上へ移る際に、ひとつの粒子がノズル先端から基板上へ移動すると、粒子の移動が無いときと比較して、移動の瞬間に生じる電流パルス波形のパルス幅が長くなることを見出した。この粒子数計測方法では、液滴に含まれる粒子の個数を、パルス幅が所定値よりも長い電流パルス波形の個数に基づいて計測するので、液滴に含まれる粒子の個数を更に精度良く計測できる。
【0017】
本発明による液滴形成装置は、液体を蓄えるノズルと、ノズルの先端に対向するように基板を載置する載置台と、液体と基板との間にパルス電圧を印加する電圧印加手段と、パルス電圧に応じて液体と基板との間に流れる電流の時間波形を測定する電流測定手段とを備えることを特徴とする。これにより、上記した液滴形成条件決定方法を好適に実施できる液滴形成装置を提供できる。
【0018】
また、液滴形成装置は、ノズルの先端と基板との相対位置を変化させる可動手段をさらに備えることを特徴としてもよい。これにより、パルス電圧の印加条件のうち、ノズル先端と基板との距離を決定する作業を簡易にできる。
【0019】
また、液滴形成装置は、電流測定手段によって測定された電流の時間波形を解析するための解析手段をさらに備え、解析手段は、電流の時間波形に含まれる複数の電流パルス波形の出現頻度を求めることを特徴としてもよい。これにより、電流の時間波形に含まれる複数の電流パルス波形の出現頻度に基づいて、パルス電圧の印加条件を決定する作業を容易にできる。
【0020】
また、液滴形成装置は、電流測定手段によって測定された電流の時間波形を解析するための解析手段をさらに備え、解析手段は、電流の時間波形に含まれる電流パルス波形の波高値を求めることを特徴としてもよい。これにより、電流の時間波形に含まれる電流パルス波形の波高値に基づいて、パルス電圧の印加条件を決定する作業を容易にできる。なお、電流パルス波形の波高値としては、例えば複数の電流パルス波形それぞれの波高値の平均値を求めることが好ましい。
【0021】
また、液滴形成装置は、電流の時間波形に基づいて、基板上に液滴を形成する際のパルス電圧の印加条件を決定する印加電圧決定手段をさらに備えることを特徴としてもよい。これにより、パルス電圧の印加条件を決定する作業を簡易にできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明による液滴形成条件決定方法及び液滴形成装置によれば、静電力を利用した液滴形成において、ノズル内の液体と基板との間に印加する電圧の印加条件を容易に最適化できる。また、本発明による液滴の体積計測方法によれば、液滴形成条件決定方法による効果に加え、分注された液滴の体積を容易に計測できる。また、本発明による粒子数計測方法によれば、液滴形成条件決定方法による効果に加え、液滴中に含まれる粒子の個数を容易に且つ精度良く計測できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しながら本発明による液滴形成条件決定方法、液滴の体積計測方法、粒子数計測方法、及び液滴形成装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0024】
(第1の実施の形態)
まず、本発明に係る液滴形成条件決定方法、液滴の体積計測方法、及び粒子数計測方法を好適に実施できる液滴形成装置について説明する。図1は、液滴形成装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。図1を参照すると、本実施形態の液滴形成装置1は、サンプル液21といった液体を蓄えるノズル3と、液滴27が形成される基板5を載置するための載置台であるXYZステージ9と、パルス電圧発生装置7とを備える。サンプル液21としては、例えばDNA試料の調製に用いられる緩衝液Saline-Sodium Citrate(SSC)の3×SSC溶液などが用いられる。なお、3×SSC溶液の抵抗率は15Ω・cmであり、純水(18.3MΩ・cm)と比較して極めて高い導電性を有する。また、パルス電圧発生装置7は、図2に示すような時間幅Wt、波高値Tのパルス電圧Pを発生する。XYZステージ9は、ノズル3の先端と基板5とが互いに対向するように基板5を載置する。また、XYZステージ9は、ノズル3の先端と基板5との相対位置を変化させる可動手段を兼ねており、基板5の表面に垂直な方向(Z方向)、及び基板5の表面に平行であり且つ互いに直交する2方向(X方向及びY方向)へ基板5を移動させることができる。
【0025】
また、液滴形成装置1は、パルス電圧Pに応じてサンプル液21と基板5との間に流れる電流Iの時間波形を測定するための電流測定手段として、ノズル3に蓄えられたサンプル液21と基板5との間を流れる電流Iを電圧値に変換するための抵抗素子Rと、抵抗素子Rの両端電圧を測定することにより電流Iの時間波形を取得するオシロスコープ15とを更に備える。
【0026】
また、液滴形成装置1は、電流Iの時間波形を解析する波形解析装置17を更に備える。波形解析装置17は、オシロスコープ15によって測定された電流Iの時間波形を解析するための解析手段であって、電流Iの時間波形に含まれる複数の電流パルス波形の出現頻度及び平均波高値を求めることができる。また、波形解析装置17は、電流Iの時間波形に基づいてパルス電圧Pの印加条件を決定する印加条件決定手段を兼ねており、電流Iの時間波形に含まれる複数の電流パルス波形の出現頻度及び平均波高値に基づいて、最適なパルス電圧Pを決定する。また、液滴形成装置1は、XYステージ9を制御するステージコントローラ11と、電流Iの時間波形の解析結果を表示するモニタ19と、パルス電圧発生装置7、ステージコントローラ11、及び波形解析装置17が互いに連動するよう制御するとともに、モニタ19へ電流Iの時間波形の解析データを送る制御装置13とを更に備える。
【0027】
基板5は、その表面がノズル3の先端に対向するように配置されている。ノズル3に蓄えられたサンプル液21はパルス電圧発生装置7のプラス側端子7aに電気的に導通されており、基板5は抵抗素子Rを介してパルス電圧発生装置7のマイナス側端子7bに電気的に接続されている。また、パルス電圧発生装置7のマイナス側端子7bは、基準電位線Gに接地されている。この構成によって、ノズル3に蓄えられたサンプル液21と基板5との間には、パルス電圧発生装置7からのパルス電圧Pが印加される。
【0028】
続いて、液滴形成装置1を用いた本実施形態による液滴形成条件決定方法について、図1及び図3を参照しながら説明する。図3は、本実施形態の液滴形成条件決定方法を示すフローチャートである。まず、サンプル液21の性質やノズル3の口径に基づいて、ノズル3と基板5との距離Gpの上限値Gpe及びステップ間隔ΔGp、パルス電圧発生装置7のパルス電圧Pの波高値Tの上限値Te及びステップ間隔ΔT、並びにパルス電圧Pの時間幅Wtなどの諸条件を制御装置13に入力する(初期設定ステップ、S0)。
【0029】
続いて、波形測定ステップS1(第1の波形測定ステップ)を行う。まず、XYZステージ9を制御することにより、ノズル3の先端と基板5との距離Gpを最小値Gpsに設定する(S11)。また、パルス電圧Pの波高値Tを下限値Tsに設定する(S12)。パルス電圧Pの印加電圧条件をこのように設定した後、パルス時間幅Wtのパルス電圧Pをサンプル液21と基板5との間に印加する(S13)。パルス電圧Pの印加により、ノズル3の先端のサンプル液21は基板5へ向けて引っ張られ、ノズル3の先端にはサンプル液21からなる円錐状のテーラーコーン23が形成される。そして、パルス電圧Pによって、テーラーコーン23の頂部から基板5の表面に達するジェット流25が生じ、サンプル液21の一部が基板5上へ移動して液滴27となる。このとき、ノズル3内のサンプル液21と基板5とが瞬間的に等電位となるので、テーラーコーン23の頂部が基板5から離れるが、サンプル液21に電荷が蓄積されることによって再びテーラーコーン23の頂部が基板5に近づき、ジェット流25が生じる。このような現象を繰り返すことによって、ノズル3の先端からサンプル液21が吐出され、基板5上にサンプル液21の液滴27が形成される。そして、ジェット流25が生じるたびに、サンプル液21と基板5との間にはパルス状の電流Iが流れる。電流Iは抵抗素子Rによって電圧値に変換され、オシロスコープ15によって時間波形として計測・記録される(S14)。なお、この電流Iの時間波形には、ジェット流25の発生に応じた複数のパルス波形が含まれる。
【0030】
そして、パルス電圧Pの波高値TがTe(>Ts)になるまで波高値TをΔT刻みで増加させ(S15、S16)、パルス電圧Pの印加(S13)、及びオシロスコープ15による電流Iの時間波形の計測・記録(S14)を繰り返す。このとき、前のステップで形成された液滴27が測定に影響しないように、波高値Tを増加させる毎にXYZステージ9を水平方向(X方向またはY方向)に移動させ、基板5上の液滴形成位置LをΔLだけ移動させる(S17)。
【0031】
パルス電圧Pの波高値Tが上限値Teに達すると、ノズル3の先端と基板5との距離GpをΔGpだけ増加させる(S19)とともに基板5上の液滴形成位置LをΔLだけ移動させ(S20)、再びパルス電圧Pの波高値Tを下限値TeからΔTずつ上限値Teまで増加させつつ、オシロスコープ15による電流Iの時間波形の計測・記録を繰り返す(S12〜S17)。この動作を、ノズル3の先端と基板5との距離Gpが上限値Gpeに達するまで繰り返す(S18)。こうして、下限値Tsから上限値TeまでΔT刻みで設定された波高値Tと、下限値Gpsから上限値GpeまでΔGp刻みで設定された距離Gpとの組み合わせのそれぞれにおける、電流Iの時間波形データが得られる。こうして、本実施形態における波形測定ステップS1が完了する。
【0032】
なお、波形測定ステップS1における各ステップのうち、XYZステージ9の制御(S17、S20)は、制御装置13からの指示信号A1に従ってステージコントローラ11が行う。また、パルス電圧Pの波高値Tの設定(S12、S16)、及びパルス電圧Pの印加(S13)は、制御装置13からの指示信号A2に従ってパルス電圧発生装置7が行う。また、電流Iの時間波形の計測・記録(S14)は、制御装置13からの指示信号A3に従ってオシロスコープ15が行う。すなわち、波形測定ステップS1における各ステップS11〜S20は、すべて制御装置13からの指示によって自動的に行うことが可能である。
【0033】
続いて、波形測定ステップS1において測定された電流Iの時間波形に基づいて、基板5上に液滴を形成する際のパルス電圧Pの最適な印加条件を決定する(印加条件決定ステップ、S2)。液滴形成に際して良好な電圧印加条件のもとでは、ノズル3の先端から引き出されるテーラーコーン23の形状が比較的安定するため、ノズル3内のサンプル液21と基板5との間に流れる電流Iのパルス波形が小刻みとなる(すなわち、パルス波形の単位時間あたりの出現回数(出現頻度)が高くなる)とともに、パルス波形の平均波高値が小さくなる傾向がある。ここで、図4は、ノズル3と基板5との距離GpをGpsからGpeまで変化させたときの、電流パルス波形の出現頻度及び平均波高値の一例を示すグラフである。なお、図4においては、距離Gpを横軸にとり、電流パルス波形の出現頻度をグラフG1、電流パルス波形の平均波高値をグラフG2としてそれぞれ示している。上記した波形測定ステップS1において、図4に示すようにグラフG1が距離Gpoで最大となり、グラフG2が距離Gpoで最小となった場合には、距離Gpoが、このサンプル液21の液滴形成においてテーラーコーン23の形状が最も安定する最適な距離Gpとなる。
【0034】
また、図5は、パルス電圧Pの波高値TをTsからTeまで変化させたときの、電流パルス波形の出現頻度及び平均波高値の一例を示すグラフである。なお、図5においては、波高値Tを横軸にとり、電流パルス波形の出現頻度をグラフG3、電流パルス波形の平均波高値をグラフG4としてそれぞれ示している。上記した波形測定ステップS1において、図5に示すようにグラフG3が波高値Toで最大となり、グラフG4が波高値Toで最小となった場合には、波高値Toが、このサンプル液21の液滴形成においてテーラーコーン23の形状が最も安定する最適な波高値Tとなる。
【0035】
また、図6は、ノズル3内のサンプル液21と基板5との間に流れる電流Iの時間波形の模式図である。図6の横軸は、パルス電圧Pが印加され始めてからの経過時間である。また、図6の縦軸は、電流Iの電流値である。図6に示すように、最初の電流パルス波形Cが、パルス電圧Pの印加開始から時間Wsだけ遅延して出現している。これは、パルス電圧Pの印加開始から、テーラーコーン23が形成されて最初のジェット流25が発生するまでに時間Wsを要することを意味している。このことから、パルス電圧Pの時間幅Wtを時間Wsよりも長く設定する必要があることがわかる。また、パルス電圧Pの印加開始から時間Weが経過すると、電流パルス波形がなくなり、ノズル3内のサンプル液21と基板5との間に定電流が流れる。これは、時間We経過後には基板5上の液滴27が過度に堆積してテーラーコーン23と繋がってしまい、ノズル3内のサンプル液21と基板5とが導電状態となったことを示している。このことから、パルス電圧Pの時間幅Wtを時間Weよりも短く設定する必要があることがわかる。以上のように、電流Iの時間波形に基づいて、パルス電圧Pの好適な時間幅WtがWs<Wt<Weの範囲内で決定される。
【0036】
上述のようにして、サンプル液21において最適な電圧印加条件(ノズル3先端と基板5との距離Gp、パルス電圧Pの波高値T、及びパルス電圧Pの時間幅Wt)が決定される(S21)。なお、このステップS21は、制御装置13からの解析指示信号A4を波形解析装置17が受けることによって開始される。すなわち、波形解析装置17がデータ要求信号A5をオシロスコープ15へ送ると、このデータ要求信号A5に応じてオシロスコープ15から電流Iの時間波形に関する時間波形データD1が提供される。波形解析装置17は、時間波形データD1に基づいて、各電圧印加条件(Gps<Gp<Gpe,Ts<T<Te)における電流パルス波形の出現頻度及び平均波高値をそれぞれ求め、最適な電圧印加条件の決定を行う。
【0037】
ステップS21において決定された最適電圧印加条件は、条件データD2として波形解析装置17から制御装置13に送られる。制御装置13は、条件データD2をモニタ19へ送り、モニタ19は条件データD2に基づいて最適な電圧印加条件(距離Gp、波高値T、及び時間幅Wt)を表示する(S22)。操作者は、この表示内容によって最適電圧印加条件を認識し、液滴形成工程において液滴形成装置1をこの条件に設定することにより、サンプル液21と同じ性質のサンプル液に対して安定した液滴形成工程を実施することができる。
【0038】
なお、本実施形態では理解を容易にするためにノズル3と基板5との距離Gpとパルス電圧Pの波高値Tとを個別に最適化したが、さらに好ましくは、距離Gp及び波高値Tを変数とし、電流パルス波形の出現頻度及び平均波高値をそれぞれプロットした3次元グラフにおいて、最適な距離Gp、波高値Tを決定するとよい。そして、上述した方法によりパルス電圧Pの時間幅Wtを決定するとよい。また、本実施形態では所定範囲における距離Gpと波高値Tとの組み合わせの全てについて電流Iの時間波形を取得しているが、後述する実施例のように、まず距離Gp及び波高値Tのうちいずれか一方のみを変化させて電流Iの時間波形を取得し、距離Gpまたは波高値Tの最適値GpoまたはToを求めた後に、距離Gp及び波高値Tのうち他方を変化させて電流Iの時間波形を取得し、その最適値を求めてもよい。この方法によれば、最適化の精度は低下するが、最適な印加条件をより簡易に求めることができる。
【0039】
以上に説明した本実施形態の液滴形成条件決定方法が有する効果について説明する。基板5上に液滴27が形成される際のサンプル液21の挙動(例えばテーラーコーン23の形状)は、パルス電圧Pの印加条件に応じて変化する。そして、テーラーコーン23の形状が不安定だと、テーラーコーン23の頂部から発生するジェット流25が安定せず、良好な液滴27を形成できない。本発明者らは、鋭意研究の末、基板5上に液滴27が形成される際のサンプル液21の挙動を、サンプル液21と基板5との間に流れる電流Iの時間波形によって観察できることを見出した。すなわち、液滴形成に際して良好な電圧印加条件のもとでは、テーラーコーン23の形状が比較的安定するため、電流Iのパルス波形の出現頻度が高くなるとともに、パルス波形の平均波高値が小さくなる傾向がある。従って、本実施形態による液滴形成条件決定方法によれば、印加条件決定ステップS2において、サンプル液21と基板5との間に流れる電流Iの時間波形に基づいてパルス電圧Pの印加条件を決定することにより、3×SSCといった比較的導電性の高いサンプル液21であっても、サンプル液21と基板5との間に印加されるパルス電圧Pの印加条件を容易に最適化できる。
【0040】
また、印加条件決定ステップS2では、本実施形態のように、パルス電圧Pの印加条件として、ノズル3の先端と基板5との距離Gp、パルス電圧Pの波高値T、及びパルス電圧Pの時間幅Wtのうち少なくとも1つを決定することが好ましい。これにより、基板5上に液滴27が形成される際のテーラーコーン23の形状といったサンプル液21の挙動を好適に制御し、液滴27の量を分注毎に容易に安定させることができる。なお、本実施形態ではパルス電圧Pの印加条件として距離Gp、波高値T、及び時間幅Wtを挙げているが、パルス電圧Pの印加条件としてはこれらに限られるものではない。例えばパルス電圧の形状(矩形とは限らない)を決定するための条件や、周囲温度などの環境条件を決定する際にも、本実施形態による液滴形成条件決定方法を応用することが可能である。
【0041】
また、印加条件決定ステップS2では、本実施形態のように、電流Iの時間波形に含まれる複数の電流パルス波形の出現頻度に基づいて、パルス電圧Pの印加条件を決定することが好ましい。上述したように、本発明者らの研究により、液滴27が形成される際には、サンプル液21と基板5との間に流れる電流Iの時間波形にジェット流25による複数の電流パルス波形が含まれることがわかった。さらには、この電流パルス波形の出現頻度が高いほど、テーラーコーン23の形状が安定し、液滴27の量が分注毎に安定することがわかった。本実施形態の液滴形成条件決定方法によれば、電流パルス波形の出現頻度に基づいてパルス電圧Pの印加条件を決定することにより、基板5上に液滴27が形成される際のテーラーコーン23の形状といったサンプル液21の挙動を好適に制御し、液滴27の量を分注毎に容易に安定させることができる。
【0042】
また、印加条件決定ステップS2では、本実施形態のように、電流Iの時間波形に含まれる電流パルス波形の波高値に基づいて、パルス電圧Pの印加条件を決定することが好ましい。上述したように、本発明者らの研究により、液滴27が形成される際には、電流パルス波形の波高値が低い(すなわち、電流パルス波形における電流値が小さい)ほど、テーラーコーン23の形状が安定し、液滴27の量が分注毎に安定することがわかった。本実施形態の液滴形成条件決定方法によれば、電流パルス波形の波高値に基づいてパルス電圧Pの印加条件を決定することにより、基板5上に液滴27が形成される際のテーラーコーン23の形状といったサンプル液21の挙動を好適に制御し、液滴27の量を分注毎に容易に安定させることができる。なお、電流パルス波形の波高値としては、本実施形態のように、複数の電流パルス波形それぞれの波高値の平均値を用いることが好ましい。
【0043】
また、本実施形態による液滴形成装置1は、次の効果を有する。すなわち、本実施形態の液滴形成装置1は、サンプル液21を蓄えるノズル3と、ノズル3の先端に対向するように基板5を載置するXYZステージ9と、サンプル液21と基板5との間にパルス電圧Pを印加するパルス電圧発生装置7と、パルス電圧Pに応じてサンプル液21と基板5との間に流れる電流Iの時間波形を測定する抵抗素子R及びオシロスコープ15とを備えることにより、液滴形成条件決定方法の波形測定ステップS1及び印加条件決定ステップS2を好適に実施できる。
【0044】
また、液滴形成装置1は、本実施形態のように、ノズル3の先端と基板5との相対位置を変化させる可動手段(XYZステージ9)を備えることが好ましい。これにより、パルス電圧Pの印加条件のうち、ノズル3の先端と基板5との距離Gpを決定するための作業(具体的には、ステップS17、S19、及びS20において、基板5を移動する作業)を簡易にできる。
【0045】
また、液滴形成装置1は、本実施形態のように、オシロスコープ15によって測定された電流Iの時間波形を解析するための解析手段として波形解析装置17を備え、波形解析装置17は、電流Iの時間波形に含まれる複数の電流パルス波形の出現頻度を求めることが好ましい。これにより、電流Iの時間波形に含まれる複数の電流パルス波形の出現頻度に基づいて、パルス電圧Pの印加条件を決定する作業(ステップS21)を容易にできる。また、波形解析装置17は、電流Iの時間波形に含まれる電流パルス波形の波高値を求めることが好ましい。これにより、電流Iの時間波形に含まれる電流パルス波形の波高値に基づいて、パルス電圧Pの印加条件を決定する作業(ステップS21)を容易にできる。
【0046】
また、液滴形成装置1は、本実施形態のように、基板5上に液滴27を形成する際のパルス電圧Pの印加条件を電流Iの時間波形に基づいて決定するための印加電圧決定手段として、波形解析装置17を備えることが好ましい。これにより、パルス電圧Pの印加条件を決定する作業(ステップS21)を簡易にできる。なお、本実施形態では波形解析装置17が解析手段及び印加条件決定手段を兼ねているが、これらの手段は互いに別の装置によって実現されてもよい。
【0047】
(第1の実施例)
続いて、上記した液滴形成条件決定方法の第1実施例について説明する。本実施例では、サンプル液21として緩衝液SSCを3×SSCの濃度で使用した。先に述べたように、3×SSC溶液は純水と比較して極めて高い導電性を有する。このような高い導電性を有する液体に対しても、本発明による液滴形成条件決定方法の効果が充分に得られることを確認した。
【0048】
本実施例では、ノズル3として、内径12μmのガラスキャピラリーノズルを使用した。また、基板5として、Indium-Tin Oxide(ITO)薄膜でコーティングされたガラス基板(以下、ITO基板という)を使用した。そして、このITO基板を精密Zステージ上に固定し、ガラスキャピラリーノズルとITO基板との距離Gpを精度良く制御できる構成とした。また、XY電動ステージによってITO基板の水平位置を制御することにより、ITO基板上の任意の位置に液滴27を形成できる構成とした。なお、本実施例における精密Zステージ及びXY電動ステージは、上記実施形態におけるXYZステージ9に相当する。
【0049】
ガラスキャピラリーノズルの内側にはタングステン電極を挿入し、タングステン電極にパルス電圧発生装置7のプラス端子を、ITO基板にマイナス端子をそれぞれ接続することにより、ノズル内の3×SSC溶液とITO基板との間にパルス電圧Pを印加できる構成とした。また、ノズル内の3×SSC溶液とITO基板との間に流れる電流Iを、抵抗素子R(10MΩ)の両端電位差に変換し、パルス電圧の印加と同期して動作するオシロスコープ15(デジタルオシロスコープ)により測定し、電流Iの時間波形をデジタルデータとして記録できる構成とした。
【0050】
以上の構成を用いて、ガラスキャピラリーノズルとITO基板との距離Gp、パルス電圧Pの波高値T、及びパルス電圧Pの時間幅Wtの各電圧印加条件を変化させて液滴27を形成し、そのときの電流Iの時間波形を測定した。
【0051】
まず、距離Gpの範囲を、ガラスキャピラリーノズルの内径に基づいて決定した。ここで、距離Gpの下限値Gpsは、サンプル液21が水である場合を参考に決定するとよい。サンプル液21が水である場合、静電力により形成されるテーラーコーン23の側面の傾斜角は49.3°となる。本実施例ではノズル内径を12μmとしたので、サンプル液21が水である場合、テーラーコーン23の高さ(底面と頂部との間の長さ)は、計算上では5.2μmとなる。従って、本実施例では、距離Gpの下限値Gps、上限値Gpe、及び刻み値ΔGpを、それぞれGps=5μm、Gpe=20μm、ΔGp=2.5μmとした。また、パルス電圧Pの波高値Tの下限値Ts、上限値Te、及び刻み値ΔTを、それぞれTs=200V、Te=3000V、ΔT=200Vとし、パルス電圧Pの時間幅Wtを150msに設定した。
【0052】
図7は、波高値Tが2000Vである場合の、距離Gp=5μm(グラフG5)、10μm(グラフG6)、15μm(グラフG7)、及び20μm(グラフG8)における電流Iの時間波形を示すグラフである。図7においては、横軸に経過時間を示し、縦軸に電流値(1divあたり25mA)を示している。なお、本実施例では時間幅Wt=150msのパルス電圧Pを印加したが、電流パルス形状を観察し易いように図7には50msまでの時間波形を示す。
【0053】
図7に示すように、電流Iの時間波形は断続的なパルス状となる。高い導電性を有する3×SSC溶液を用いた場合、ジェット流25がITO基板上の液滴27に接触すると、瞬時にしてテーラーコーン23と液滴27表面とが等電位となり、静電力を消失する。それに伴いジェット流25も消失して、テーラーコーン23と液滴27表面との間は間隔のあいた状態となる。このとき、パルス電圧Pは継続して印加されているため、テーラーコーン23と液滴27表面との間には再び電位差が生じ、ジェット流25が生じる。図7の時間波形は、このジェット流25の形成−消失が繰り返されるためと考えられる。
【0054】
安定したテーラーコーン23においては、電流Iの時間波形が次の2つの条件を満たすと考えられる。1つは、テーラーコーン23の頂部から射出されるジェット流25が微細となるため、ジェット流25が形成する導電路が電気的に高抵抗となり、電流パルス波形の波高値が低くなると考えられる。他の1つは、ジェット流25が射出されるテーラーコーン23の頂部の形状が安定しているため、繰返し周期の短い電流パルス波形が生じると考えられる。従って、各印加電圧条件で取得された電流Iの時間波形から、単位時間当りの電流パルス波形の出現頻度、及び電流パルス波形の平均波高値を解析すれば、最適な印加電圧条件を見出すことができる。
【0055】
本実施例では、まず、距離Gpを5μmから20μmまで2.5μm刻みで変化させて、パルス電圧Pの波高値T=2000Vにおける電流パルス波形の頻度及び平均波高値を求めた。図8は、横軸に距離Gpを、縦軸に電流パルス波形の出現頻度及び平均波高値を示している。図8において、グラフG9は電流パルス波形の頻度を示すグラフであり、グラフG10は電流パルス波形の平均波高値を示すグラフである。図8を参照すると、距離Gp=10μmのときに、電流パルス波形の出現頻度が最大且つ平均波高値が最小となり、上記の安定したテーラーコーン23の条件を最も満たしている。すなわち、本実施例における距離Gpの最適値Gpoは10μmとなる。
【0056】
次に、パルス電圧Pの波高値Tを200Vから3000Vまで200V刻みで変化させて、距離Gp=10μm(=最適値Gpo)における電流パルス波形の出現頻度及び平均波高値を求めた。図9は、横軸にパルス電圧Pの波高値Tを、縦軸に電流パルス波形の出現頻度及び平均波高値を示している。図9において、グラフG11は電流パルス波形の出現頻度を示すグラフであり、グラフG12は電流パルス波形の平均波高値を示すグラフである。図9を参照すると、パルス電圧Pの波高値T=2000Vのときに、電流パルス波形の出現頻度が最大、且つ電流パルス波形の平均波高値が最小となり、上記の安定したテーラーコーン23の条件を最も満たしている。すなわち、本実施例におけるパルス電圧Pの波高値Tの最適値Toは2000Vとなる。
【0057】
最後に、パルス電圧Pの時間幅Wtの好適な範囲を求める。再び図7を参照すると、距離Gp=10μm、パルス電圧Pの波高値T=2000Vの場合(グラフG6)、電流パルス波形はパルス電圧Pの印加開始後1.3ms以降に発生していることがわかる。また、この電圧印加条件のときには、パルス電圧Pの時間幅Wt=150msの間に、液滴27が過度に堆積してテーラーコーン23と繋がってしまうことは無かった。従って、パルス電圧Pの時間幅Wtは、1.3ms<Wt<150msの範囲で任意の値に設定可能であることが確認された。
【0058】
本実施例においては、以上の結果から、高導電性溶液である3×SSCの液滴形成に好適な印加電圧条件は、ノズル3と基板5との距離Gpが10μm、パルス電圧Pの波高値Tが2000V、パルス電圧Pの時間幅Wtが1.3ms<Wt<150msであると決定することができた。
【0059】
(第2の実施例)
続いて、上記した液滴形成条件決定方法の第2実施例について説明する。本実施例では、複数のノズル3を用いて、該複数のノズル3のそれぞれに蓄えられたサンプル液21からなる一つの液滴を基板5上において形成する場合の、電圧印加条件の決定方法について説明する。サンプル液21としては、上記実施例と同じ3×SSCを使用した。また、基板5としては、上記実施例と同じITO基板を使用した。
【0060】
まず、ノズル3(ガラスキャピラリーノズル)を2本用意し、各ノズル3に3×SSC溶液を充填した。これらのノズル3としては、外径が13μm、内径が7.8μmのものを使用した。これらのノズル3を、各ノズル3同士の間隔が17μmとなるように並列配置した。そして、各ノズル3内の3×SSC溶液のそれぞれとITO基板との間にパルス電圧Pを印加して、液滴をITO基板上に形成した。
【0061】
図10(a)は、本実施例において一方のノズル3内の3×SSC溶液に印加したパルス電圧Pの時間波形の一例(波高値T=1000V、時間幅Wt=70ms)を示すグラフである。図10(b)は、他方のノズル3内の3×SSC溶液に印加したパルス電圧Pの時間波形の一例(波高値T=1000V、時間幅Wt=70ms)を示すグラフである。図10(c)は、図10(a)及び図10(b)に示したパルス電圧P、Pによって3×SSC溶液とITO基板との間に流れた電流Iの時間波形を示すグラフである。なお、この図10(c)は、各ノズル3の先端とITO基板との距離Gpが7.5μmのときのグラフである。本実施例では、まず、図10(a)に示すように、パルス電圧Pを一方のノズル3内の3×SSC溶液とITO基板との間に印加する。そして、3×SSC溶液とITO基板との間に流れる電流Iの時間波形を測定し(図10(c))、電流パルス波形群Aを得る。この電流パルス波形群Aにおける平均波高値が最小となり且つ電流パルス波形群Aにおける個々のパルス波形の頻度が最大となるように、上記実施形態に示した方法で、一方のノズル3とITO基板との距離Gp、パルス電圧Pの波高値T、及びパルス電圧Pの時間幅Wtを決定する。
【0062】
次に、図10(b)に示すように、パルス電圧Pの印加終了から或る程度の時間間隔をあけて(本実施例では5ms)、パルス電圧Pを他方のノズル3内の3×SSC溶液とITO基板との間に印加する。そして、3×SSC溶液とITO基板との間に流れる電流Iの時間波形を測定し(図10(c))、電流パルス波形群Bを得る。この電流パルス波形群Bにおける平均波高値が最小となり且つ電流パルス波形群Bにおける個々のパルス波形の頻度が最大となるように、上記実施形態に示した方法で、他方のノズル3とITO基板との距離Gp、パルス電圧Pの波高値T、及びパルス電圧Pの時間幅Wtを決定する。
【0063】
以上のように、複数のノズル3を使用する場合には、まず一方のノズル3を用いて液滴を形成した後、続いて他方のノズル3を用いて液滴を形成する。そして、このような場合、パルス電圧印加条件を決定するためには、まず一方のノズル3についてパルス電圧Pの印加条件を決定した後、他方のノズル3についてパルス電圧Pの印加条件を決定するとよい。このように、本発明による液滴形成条件決定方法は、複数のノズルを使用して液滴を形成する場合にも適用することができる。
【0064】
(第2の実施の形態)
続いて、本発明による液滴の体積計測方法の実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態の方法を用いてパルス電圧Pの印加条件を決定した後に、この印加条件下でサンプル液21を分注する際にサンプル液21と基板5との間に流れる電流Iの時間波形を積分することにより、分注された液滴27の体積を計測する。
【0065】
図11は、本実施形態による液滴の体積計測方法を示すフローチャートである。まず、第1実施形態の液滴形成条件決定方法により、ノズル3の先端と基板5との距離Gp、パルス電圧Pの波高値T、及びパルス電圧Pの時間幅Wtを決定する(液滴形成条件決定ステップ、S3)。続いて、波形測定ステップS4(第2の波形測定ステップ)を行う。この波形測定ステップS4では、まず、液滴形成条件決定ステップS3において決定された各電圧印加条件(距離Gp、波高値T、及び時間幅Wt)に液滴形成装置1を設定し、ノズル3内のサンプル液21と基板5との間にパルス電圧Pを印加することにより、サンプル液21を基板5上に分注してサンプル液21からなる液滴27を形成する(S41)。そして、サンプル液21を基板5上に分注する際に、サンプル液21と基板5との間に流れる電流Iの時間波形を計測する。具体的には、電流Iによって抵抗素子Rの両端に生じた電位差をオシロスコープ15によって計測・記録する(S42)。
【0066】
続いて、波形測定ステップS4において計測・記録された電流Iの時間波形を積分することにより、液滴27の体積を計測する(体積計測ステップ、S5)。体積計測ステップS5では、まず、ステップS42において得られた電流Iの時間波形のうち、パルス電圧Pの時間幅Wtに応じた区間の時間波形を積分する(S51)。そして、得られた積分値に基づいて、例えば該積分値に所定の係数を乗ずることにより、液滴27の体積の計測値を求める(S52)。
【0067】
ノズル3内のサンプル液21と基板5との間に流れる電流Iは、第1実施形態において述べたように、ノズル3内のサンプル液21が基板5へ移動することによって生じる。具体的には、パルス電圧Pを印加することによってサンプル液21のテーラーコーン23の頂部と基板5との間にジェット流25が発生し、このジェット流25を電荷が通過することによって電流Iが生じる。このときの通過電荷の総量は、ジェット流25が生じた通算時間と相関を有するが、ジェット流25によって基板5上に移動したサンプル液21の総量(すなわち液滴27の体積)も、ジェット流25が生じた通算時間に関係する。従って、本実施形態による液滴27の体積を計測する方法によれば、電流Iの時間波形を積分する(すなわち、ノズル3内のサンプル液21と基板5との間を通過した総電荷量を求める)ことにより、液滴27の体積を容易に且つ精度良く計測することができる。
【0068】
(第3の実施例)
上記した液滴の体積計測方法の第3実施例について説明する。本実施例では、サンプル液21として、第1実施例と同じ3×SSCを使用した。また、基板5として、ITOが蒸着されたガラス基板の表面にPVA(ポリビニルアルコール)膜がコーティングされた基板(以下、PVAコートITO基板という)を使用した。また、ノズル3として外径が20μm、内径が12μmのものを使用した。
【0069】
まず、上記した第1実施形態の液滴形成条件決定方法によって、パルス電圧Pの印加条件を決定した。本実施例における最適印加条件は、ノズル3とPVAコートITO基板との距離Gpo=10μm、パルス電圧Pの波高値To=1500V、パルス電圧Pの時間幅Wt=120msであった。
【0070】
続いて、液滴形成装置1を上記印加条件に設定し、3×SSCをPVAコートITO基板上に分注して液滴27を形成するとともに、ノズル3内の3×SSCとPVAコートITO基板との間に流れる電流Iの時間波形を計測・記録した。そして、この電流Iの時間波形の積分値を求めた。図12(a)は、本実施例における電流Iの時間波形を示すグラフである。また、図12(b)は、図12(a)に示した電流Iの時間波形を積分した値と、パルス電圧Pの印加開始からの時間経過との相関を示すグラフである。図12(b)を参照すると、電流Iの時間波形の積分値は、パルス電圧Pの印加開始からの経過時間にほぼ比例した値となった。
【0071】
続いて、液滴27の体積と電流Iの積分値(通過電荷量)との関係を調べた。液滴27の体積Vは、PVAコートITO基板の表面から盛り上がる液滴27のプロファイル(横からの断面)を長作動距離対物レンズ(ミツトヨ製)により液滴27の高さhと液滴27底面の半径rを測定し、体積換算式(V=π(h/6+h・r/2))によって求めた。このとき、各経過時間における液滴27の形状は、一連の液滴形成過程を観察可能な高速カメラ(フォトロン製:FASTCAM-X1280PCI)を用いて測定した。図13は、通過電荷量と液滴27の体積Vとの関係を示すグラフである。図13を参照すると、体積Vと通過電荷量とは略比例している。このことから、液滴27の体積Vは、通過電荷量すなわち電流Iの時間波形の積分値から計測できることがわかる。
【0072】
(第3の実施の形態)
続いて、本発明による粒子数計測方法の実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態の方法を用いてパルス電圧Pの印加条件を決定した後に、微小粒子を混ぜたサンプル液21をこの印加条件下で分注して液滴27を形成し、サンプル液21と基板5との間に流れる電流Iの時間波形に基づいて、液滴27に含まれる微小粒子の個数を計測する。
【0073】
図14は、本実施形態による粒子数計測方法を示すフローチャートである。まず、第1実施形態の液滴形成条件決定方法により、ノズル3の先端と基板5との距離Gp、パルス電圧Pの波高値T、及びパルス電圧Pの時間幅Wtを決定する(液滴形成条件決定ステップ、S3)。続いて、波形測定ステップS6(第3の波形測定ステップ)を行う。この波形測定ステップS6では、まず、サンプル液21に微小粒子を含ませて粒子混合液とし、この粒子混合液をノズル3に充填する(S61)。ここで、微小粒子としては、例えばイースト菌などの細胞やラテックス粒子(ポリマー)を挙げることができる。これらの微小粒子は、その電気抵抗率がサンプル液21の抵抗率よりも高い(すなわち、導電性が低い)。そして、液滴形成条件決定ステップS3において決定された各電圧印加条件(距離Gp、波高値T、及び時間幅Wt)に液滴形成装置1を設定し、ノズル3内の粒子混合液と基板5との間にパルス電圧Pを印加することにより、粒子混合液を基板5上に分注して粒子混合液からなる液滴27を形成する(S62)。そして、粒子混合液の液滴27を基板5上に形成する際に、粒子混合液と基板5との間に流れる電流Iの時間波形を計測する。具体的には、電流Iによって抵抗素子Rの両端に生じた電位差をオシロスコープ15によって計測・記録する(S63)。
【0074】
続いて、波形測定ステップS6において計測・記録された電流Iの時間波形に基づいて、液滴27に含まれる微小粒子の個数を計測する(粒子数計測ステップ、S7)。この粒子数計測ステップS7では、電流Iの時間波形に含まれる複数の電流パルス波形のうち、パルス幅が所定値よりも長い電流パルス波形の個数をカウントし、その数を液滴27に含まれる微小粒子の個数とする。
【0075】
ノズル3に蓄えられた粒子混合液がノズル3の先端から基板5上へ移る際に、粒子混合液と基板5との間に流れる電流Iの時間波形は、個々の微小粒子の移動に応じて変化する。この現象は、比較的高い導電性を有するサンプル液21を用いる場合に、ノズル3先端のテーラーコーン23の頂部から伸びるジェット流25の中に高抵抗の微小粒子が含まれていると、観測される電流パルス波形の波高値が小さくなる(すなわち、サンプル液と基板5との間を電荷が通過し難くなる)ことが影響していると考えられる。従って、このような電流Iの時間波形の変化を観察することによって、ノズル3から基板5上へ幾つの微小粒子が移動したかを計測することが可能となる。本実施形態による粒子数計測方法によれば、液滴27に含まれる微小粒子の個数を電流Iの時間波形に基づいて計測するので、分注された微小粒子の個数を容易に且つ精度良く計測できる。
【0076】
また、粒子数計測ステップS7においては、本実施形態のように、パルス幅が所定値よりも長い電流パルス波形の個数に基づいて、液滴27に含まれる微小粒子の個数を計測することが好ましい。ノズル3に蓄えられた粒子混合液がノズル3の先端から基板5上へ移る際には、ひとつの微小粒子がノズル3の先端から基板5上へ移動すると、微小粒子の移動が無いときと比較して、移動の瞬間に生じる電流パルス波形のパルス幅が長くなる。従って、本実施形態の粒子数計測方法によれば、液滴27に含まれる微小粒子の個数を更に精度良く計測できる。
【0077】
なお、本実施形態による粒子数測定方法は、各液滴27に含まれる微小粒子の個数のモニタリングに応用できるほか、微小粒子を所定個数だけ分注できるように微小粒子数の計測情報に基づいてパルス電圧Pの時間幅Wtを決定するといったフィードバック系に応用することもできる。
【0078】
(第4の実施例)
上記した粒子数計測方法の第4実施例について説明する。本実施例では、サンプル液21として、第1実施例と同じ3×SSCを使用し、微小粒子として、イースト菌を3×SSCに懸濁させた。基板5としては、ITO基板を使用した。ノズル3としては、外径が33μm、内径が19.8μmのものを使用した。
【0079】
まず、上記した第1実施形態の液滴形成条件決定方法によって、パルス電圧Pの印加条件を決定した。本実施例における最適印加条件は、ノズル3とITO基板との距離Gpo=10μm、パルス電圧Pの波高値To=1500V、パルス電圧Pの時間幅Wt=150msであった。
【0080】
続いて、液滴形成装置1を上記印加条件に設定し、ノズル3内のイースト菌入り3×SSC溶液と基板5との間にパルス電圧Pを印加することにより、イースト菌入り3×SSC溶液をITO基板上に分注して液滴27を形成するとともに、ノズル3内のイースト菌入り3×SSC溶液とITO基板との間に流れる電流Iの時間波形を計測・記録した。図15(a)は、本実施例における電流Iの時間波形を示すグラフである。また、図15(b)は、図15(a)に示した電流Iの時間波形に含まれる複数の電流パルス波形それぞれのパルス幅を示すグラフである。図15(a)を参照すると、パルス電圧Pの印加開始後85msを過ぎたあたりから、複数の電流パルス波形のうち幾つかの電流パルス波形のパルス幅が、他の電流パルス波形のパルス幅よりも大きくなっていることがわかる。また、これらの電流パルス波形の波高値は、他の電流パルス波形の波高値よりも低くなっている。これらの電流パルス波形は、イースト菌がテーラーコーン23からのジェット流25の中に含まれている状態を示唆している。従って、図15(b)に示すように、各電流パルス波形のパルス幅を求め、所定値Wpよりも長いパルス幅を有する電流パルス波形の個数をカウントすることによって、液滴27に含まれるイースト菌の個数を容易に且つ精度良く計測することができる。
【0081】
(第5の実施例)
続いて、上記した粒子数計測方法の第5実施例について説明する。本実施例では、サンプル液21として、第1実施例と同じ3×SSCを使用し、微小粒子として、平均粒径900nmのラテックス粒子(ポリマー)を3×SSCに懸濁させた。基板5としては、ITO基板を使用した。ノズル3としては、外径が15μm、内径が9μmのものを使用した。
【0082】
まず、上記した第1実施形態の液滴形成条件決定方法によって、パルス電圧Pの印加条件を決定した。本実施例における最適印加条件は、ノズル3とITO基板との距離Gpo=10μm、パルス電圧Pの波高値To=1500V、パルス電圧Pの時間幅Wt=30msであった。
【0083】
続いて、液滴形成装置1を上記印加条件に設定し、ノズル3内のラテックス粒子入り3×SSC溶液と基板5との間にパルス電圧Pを印加することにより、ラテックス粒子入り3×SSC溶液をITO基板上に分注して液滴27を形成するとともに、ノズル3内のラテックス粒子入り3×SSC溶液とITO基板との間に流れる電流Iの時間波形を計測・記録した。図16(a)は、本実施例における電流Iの時間波形を示すグラフである。また、図16(b)は、図16(a)に示した電流Iの時間波形に含まれる複数の電流パルス波形それぞれのパルス幅を示すグラフである。上記した第4実施例と同様に、本実施例においても、複数の電流パルス波形のうち幾つかの電流パルス波形のパルス幅が、他の電流パルス波形のパルス幅よりも大きくなっていることがわかる。また、これらの電流パルス波形の波高値は、他の電流パルス波形の波高値よりも低くなっている。これらの電流パルス波形は、ラテックス粒子がテーラーコーン23からのジェット流25の中に含まれている状態を示唆している。従って、図16(b)に示すように、各電流パルス波形のパルス幅を求め、所定値Wpよりも長いパルス幅を有する電流パルス波形の個数をカウントすることによって、液滴27に含まれるラテックス粒子の個数を容易に且つ精度良く計測することができる。
【0084】
本発明による液滴形成条件決定方法、液滴の体積計測方法、粒子数計測方法、及び液滴形成装置は、上記した各実施形態及び実施例に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記した第1実施形態の液滴形成装置では基板の位置を変化させる可動手段としてXYZステージが挙げられているが、可動手段はノズル側に設けられても良い。また、上記した第1実施形態の液滴形成装置では波形解析装置が電圧印加条件の決定まで行っているが、モニタに表示された電流パルス波形の出現頻度や平均波高値に基づいて、操作者が電圧印加条件を決定してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】液滴形成装置の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】パルス電圧発生装置が発生するパルス電圧の波形を示す図である。
【図3】第1実施形態の液滴形成条件決定方法を示すフローチャートである。
【図4】ノズルと基板との距離GpをGpsからGpeまで変化させたときの、電流パルス波形の出現頻度及び平均波高値の一例を示すグラフである。
【図5】パルス電圧の波高値TをTsからTeまで変化させたときの、電流パルス波形の出現頻度及び平均波高値の一例を示すグラフである。
【図6】ノズル内のサンプル液と基板との間に流れる電流の時間波形の模式図である。
【図7】波高値Tが2000Vである場合の、距離Gp=5μm(グラフG5)、10μm(グラフG6)、15μm(グラフG7)、及び20μm(グラフG8)における電流の時間波形を示すグラフである。
【図8】第1実施例における距離Gpと電流パルス波形の出現頻度及び平均波高値との相関を示す図である。
【図9】第1実施例におけるパルス電圧の波高値Tと電流パルス波形の出現頻度及び平均波高値との相関を示す図である。
【図10】(a)第2実施例において一方のノズル内の3×SSC溶液に印加したパルス電圧の時間波形の一例を示すグラフである。(b)他方のノズル内の3×SSC溶液に印加したパルス電圧の時間波形の一例を示すグラフである。(c)(a)及び(b)に示したパルス電圧によって3×SSC溶液とITO基板との間に流れた電流の時間波形を示すグラフである。
【図11】第2実施形態による液滴の体積計測方法を示すフローチャートである。
【図12】(a)第3実施例における電流の時間波形を示すグラフである。(b)(a)に示した電流の時間波形を積分した値と、パルス電圧の印加開始からの時間経過との相関を示すグラフである。
【図13】通過電荷量と液滴の体積との関係を示すグラフである。
【図14】第3実施形態による粒子数計測方法を示すフローチャートである。
【図15】(a)第4実施例における電流の時間波形を示すグラフである。(b)(a)に示した電流の時間波形に含まれる複数の電流パルス波形それぞれのパルス幅を示すグラフである。
【図16】(a)第5実施例における電流の時間波形を示すグラフである。(b)(a)に示した電流の時間波形に含まれる複数の電流パルス波形それぞれのパルス幅を示すグラフである。
【符号の説明】
【0086】
1…液滴形成装置、3…ノズル、5…基板、7…パルス電圧発生装置、9…XYZステージ、11…ステージコントローラ、13…制御装置、15…オシロスコープ、17…波形解析装置、19…モニタ、21…サンプル液、23…テーラーコーン、25…ジェット流、27…液滴、G…基準電位線、R…抵抗素子、S1…波形測定ステップ、S2…印加条件決定ステップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に液滴を形成するための条件を決定する方法であって、
ノズルに蓄えられた液体と、前記ノズルの先端に対して対向配置された前記基板との間にパルス電圧を印加し、前記ノズルの先端から前記液体を吐出させて前記基板上に液滴を形成するとともに、前記ノズルに蓄えられた前記液体と前記基板との間に流れる電流の時間波形を測定する第1の波形測定ステップと、
前記第1の波形測定ステップにおいて測定された前記電流の時間波形に基づいて、前記基板上に液滴を形成する際の前記パルス電圧の印加条件を決定する印加条件決定ステップと
を備えることを特徴とする、液滴形成条件決定方法。
【請求項2】
前記印加条件決定ステップにおいて、前記パルス電圧の印加条件として、前記ノズルの先端と前記基板との距離、前記パルス電圧の波高値、及び前記パルス電圧の時間幅のうち少なくとも1つを決定することを特徴とする、請求項1に記載の液滴形成条件決定方法。
【請求項3】
前記印加条件決定ステップにおいて、前記電流の時間波形に含まれる複数の電流パルス波形の出現頻度に基づいて、前記パルス電圧の印加条件を決定することを特徴とする、請求項1または2に記載の液滴形成条件決定方法。
【請求項4】
前記印加条件決定ステップにおいて、前記電流の時間波形に含まれる電流パルス波形の波高値に基づいて、前記パルス電圧の印加条件を決定することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の液滴形成条件決定方法。
【請求項5】
基板上に形成された液滴の体積を計測する方法であって、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液滴形成条件決定方法を用いて前記パルス電圧の印加条件を決定する液滴形成条件決定ステップと、
前記液滴形成条件決定ステップにおいて決定された前記パルス電圧の印加条件に基づいて、前記ノズルに蓄えられた前記液体と前記基板との間に前記パルス電圧を印加し、前記ノズルの先端から前記液体を吐出させて前記基板上に液滴を形成するとともに、前記ノズルに蓄えられた前記液体と前記基板との間に流れる電流の時間波形を測定する第2の波形測定ステップと、
前記第2の波形測定ステップにおいて測定された前記電流の時間波形の積分値に基づいて、前記液滴の体積を計測する体積計測ステップと
を備えることを特徴とする、液滴の体積計測方法。
【請求項6】
基板上に形成された液滴中の粒子数を計測する方法であって、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液滴形成条件決定方法を用いて前記パルス電圧の印加条件を決定する液滴形成条件決定ステップと、
前記液体中に前記粒子を含ませて粒子混合液とし、前記液滴形成条件決定ステップにおいて決定された前記パルス電圧の印加条件に基づいて、前記ノズルに蓄えられた前記粒子混合液と前記基板との間に前記パルス電圧を印加し、前記ノズルの先端から前記粒子混合液を吐出させて前記基板上に前記粒子混合液の液滴を形成するとともに、前記ノズルに蓄えられた前記粒子混合液と前記基板との間に流れる電流の時間波形を測定する第3の波形測定ステップと、
前記第3の波形測定ステップにおいて測定された前記電流の時間波形に基づいて、前記液滴に含まれる粒子の個数を計測する粒子数計測ステップと
を備えることを特徴とする、粒子数計測方法。
【請求項7】
前記粒子数計測ステップにおいて、前記電流の時間波形に含まれる複数の電流パルス波形のうち、パルス幅が所定値よりも長い前記電流パルス波形の個数に基づいて、前記液滴に含まれる粒子の個数を計測することを特徴とする、請求項6に記載の粒子数計測方法。
【請求項8】
液体を蓄えるノズルと、
前記ノズルの先端に対向するように基板を載置する載置台と、
前記液体と前記基板との間にパルス電圧を印加する電圧印加手段と、
前記パルス電圧に応じて前記液体と前記基板との間に流れる電流の時間波形を測定する電流測定手段と
を備えることを特徴とする、液滴形成装置。
【請求項9】
前記ノズルの先端と前記基板との相対位置を変化させる可動手段をさらに備えることを特徴とする、請求項8に記載の液滴形成装置。
【請求項10】
前記電流測定手段によって測定された前記電流の時間波形を解析するための解析手段をさらに備え、
前記解析手段は、前記電流の時間波形に含まれる複数の電流パルス波形の出現頻度を求めることを特徴とする、請求項8または9に記載の液滴形成装置。
【請求項11】
前記電流測定手段によって測定された前記電流の時間波形を解析するための解析手段をさらに備え、
前記解析手段は、前記電流の時間波形に含まれる電流パルス波形の波高値を求めることを特徴とする、請求項8〜10のいずれか一項に記載の液滴形成装置。
【請求項12】
前記電流の時間波形に基づいて、前記基板上に液滴を形成する際の前記パルス電圧の印加条件を決定する印加電圧決定手段をさらに備えることを特徴とする、請求項8〜11のいずれか一項に記載の液滴形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2006−58188(P2006−58188A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241589(P2004−241589)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】