説明

液状ゴム組成物およびそれを用いた電子写真用部材

【課題】優れた圧縮永久歪み特性および耐摩耗性を備えたロールを得ることができ、低コストで、成形性に優れた液状ゴム組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)成分を主成分とし、下記の(B)成分および(C)成分を含有する液状ゴム組成物である。
(A)ブタジエンおよびイソプレンの少なくとも一方から誘導され、側鎖にアルケニル基をもつ構造単位(α)を有する液状ゴム。
(B)ヒドロシリル架橋剤。
(C)ヒドロシリル化触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機,プリンター,ファクシミリ等の電子写真装置に用いられる、現像ロール,帯電ロール,転写ロール,給紙ロール,トナー層形成部材,クリーニングブレード,帯電ブレード等に用いられる液状ゴム組成物およびそれを用いた電子写真用部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記電子写真装置に用いられる、現像ロール,帯電ロール,転写ロール等のロールとしては、例えば、軸体の外周に最内層が形成され、さらにその外周に中間層や表層が形成されたものが用いられている。上記最内層の形成材料としては、従来より、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等の汎用ゴムを主成分とするゴム組成物が用いられている。
【0003】
しかしながら、上記EPDM等の汎用ゴムを主成分とするゴム組成物は、材料コストの面では優れているが、分子量が高く、流動性が少ないため、成形性に劣るという難点がある。そのため、オイルを多量に配合して低粘度にすることにより、成形性の改善を図っているが、依然として充分な成形性を得ることができず、また、ロール要求特性の一つである圧縮永久歪み特性が悪くなるという難点がある。これらの問題を解決するため、最近では、ウレタンエラストマーや液状シリコーンゴムを主成分とする液状ゴム組成物が提案され、実用化されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記液状シリコーンゴムを主成分とする液状ゴム組成物は、成形性に優れ、優れた圧縮永久歪み特性を得ることができる点では優れているが、その反面、上記液状シリコーンゴムは非常に高価で、材料コストの面で劣るとともに、耐摩耗性に劣るという難点がある。一方、上記ウレタンエラストマーは、優れた耐摩耗性を得ることができ、液状シリコーンゴムに比べて材料コストが安価であるという点では優れているが、その反面、上記ウレタンエラストマーは液状シリコーンゴムに比べて粘度が高いため、充分な成形性が得られず、また圧縮永久歪み特性が不充分であるという難点がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、優れた圧縮永久歪み特性および耐摩耗性を備えたロールを得ることができ、低コストで、成形性に優れた液状ゴム組成物およびそれを用いた電子写真用部材の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の(A)成分を主成分とし、下記の(B)成分および(C)成分を含有する液状ゴム組成物を第1の要旨とする。(A)ブタジエンおよびイソプレンの少なくとも一方から誘導され、側鎖にアルケニル基をもつ構造単位(α)を有する液状ゴム。
(B)ヒドロシリル架橋剤。
(C)ヒドロシリル化触媒。
【0007】
また、本発明は、上記液状ゴム組成物を用いてなる電子写真用部材を第2の要旨とする。
【0008】
すなわち、本発明者らは、優れた圧縮永久歪み特性および耐摩耗性を備えたロールを得ることができる液状ゴム組成物を得るため、鋭意研究を重ねた。そして、液状ゴム材料を中心に研究を続けた結果、ブタジエンおよびイソプレンの少なくとも一方から誘導され、側鎖にアルケニル基をもつ構造単位(α)を有する液状ゴム(A成分)が、液状シリコーンゴムよりも安価で、ウレタンエラストマーと同程度まで低コスト化を図ることができるとともに、液状シリコーンゴムと同等の優れた成形性が得られ、しかも液状シリコーンゴムの欠点である耐摩耗性を改善できることを突き止めた。また、上記液状ゴム(A成分)中の構造単位(α)中のアルケニル基が架橋サイトとなり、いわゆるペンダント型で分子中に存在するため、ヒドロシリル架橋剤(B成分)およびヒドロシリル化触媒(C成分)の作用によって、得られる成形架橋体が密な網目構造になり、優れた圧縮永久歪み特性を得ることができることを突き止めた。その結果、上記特定の液状ゴム(A成分)を主成分とし、ヒドロシリル架橋剤(B成分)およびヒドロシリル化触媒(C成分)を含有する液状ゴム組成物が、所期の目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
そして、上記液状ゴム(A成分)が、上記構造単位(α)を有するとともに、スチレンから誘導される構造単位を有するものである場合は、成形精度がさらに向上し、得られる成形架橋体を低硬度化できるとともに、液状シリコーンゴムを最内層形成材料として用いた場合に必要であった軸体表面のコロナ放電処理等が不要になる。
【0010】
また、上記液状ゴム(A成分)中の上記構造単位(α)の含有割合を特定の範囲に設定することにより、得られる成形架橋体の安定性が向上する。
【0011】
さらに、上記液状ゴム(A成分)の数平均分子量を特定の範囲に設定することにより、取り扱い性に優れ、架橋反応が良好に行えるようになる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の液状ゴム組成物は、ブタジエンおよびイソプレンの少なくとも一方から誘導され、側鎖にアルケニル基をもつ構造単位(α)を有する液状ゴム(A成分)を主成分とするため、液状シリコーンゴムよりも安価で、ウレタンエラストマーと同程度まで低コスト化を図ることができるとともに、液状シリコーンゴムと同等の優れた成形性が得られ、しかも液状シリコーンゴムの欠点である耐摩耗性を改善することができる。また、上記液状ゴム(A成分)中の構造単位(α)中のアルケニル基が架橋サイトとなり、いわゆるペンダント型で分子中に存在するため、ヒドロシリル架橋剤(B成分)およびヒドロシリル化触媒(C成分)の作用によって、得られる成形架橋体が密な網目構造になり、優れた圧縮永久歪み特性を得ることができる。
【0013】
そして、上記液状ゴム(A成分)が、上記構造単位(α)を有するとともに、スチレンから誘導される構造単位を有するものである場合は、成形精度がさらに向上し、得られる成形架橋体を低硬度化できるとともに、液状シリコーンゴムを最内層形成材料として用いた場合に必要であった軸体表面のコロナ放電処理等が不要になる。
【0014】
さらに、上記液状ゴム(A成分)の数平均分子量を特定の範囲に設定することにより、取り扱い性に優れ、架橋反応が良好に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
本発明の液状ゴム組成物は、特定の液状ゴム(A成分)を主成分とし、ヒドロシリル架橋剤(B成分)およびヒドロシリル化触媒(C成分)を含有するものである。なお、本発明において、液状ゴム(A成分)を主成分とするとは、上記液状ゴム(A成分)が組成物の特性に大きな影響を与えるものであることを意味する。
【0017】
上記特定の液状ゴム(A成分)は、ブタジエンおよびイソプレンの少なくとも一方から誘導され、側鎖にアルケニル基をもつ構造単位(α)を有するものである。上記特定の構造単位(α)としては、特に限定はなく、例えば、下記の構造式(1)〜(3)で表される構造単位があげられる。そして、上記構造単位中の側鎖であるアルケニル基(ビニル基、イソプロペニル基)が架橋反応に供され、液状ゴムが3次元網目構造となりゴム状の弾性を示すようになる。
【0018】
【化1】

【0019】
上記特定の構造単位(α)を有する液状ゴム(A成分)としては、特に限定はなく、例えば、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム等があげられる。
【0020】
また、上記液状ゴム(A成分)は、上記特定の構造単位(α)とともに、スチレンから誘導される構造単位を有するものであってもよい。上記スチレンは、置換基を有していてもよく、上記置換基としては、アルキル基が好ましく、特に好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜5のアルキル基である。このような液状ゴム(A成分)としては、例えば、ブタジエン−スチレン共重合ゴム、イソプレン−スチレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン−スチレン共重合ゴム等があげられる。
【0021】
上記スチレンから誘導される構造単位を有する液状ゴム(A成分)のなかでも、下記の一般式(4)で表わされるイソプレン−スチレン共重合ゴムが好適に用いられる。
【0022】
【化2】

【0023】
上記特定の液状ゴム(A成分)において、上記特定の構造単位(α)の含有割合は、上記液状ゴム(A成分)全体の0.5〜80重量%の範囲に設定されていることが好ましい。すなわち、上記構造単位(α)の含有割合が0.5重量%未満であると、架橋反応が不充分となって、得られる成形架橋体の安定性が悪くなるおそれがあり、逆に80重量%を超えると、架橋による網目構造が密になりすぎて、得られる成形架橋体が固くなったり脆くなったりするおそれがあるからである。
【0024】
また、上記液状ゴム(A成分)がスチレンから誘導される構造単位を有するものである場合、上記スチレンから誘導される構造単位の含有量は、上記液状ゴム(A成分)全体の5〜30重量%の範囲に設定されていることが好ましく、特に好ましくは10〜25重量%である。すなわち、上記スチレンから誘導される構造単位の含有量が5重量%未満であると、スチレンの効果が充分に得られないおそれがあり、逆に30重量%を超えると、液状ゴムが高粘度化し、成形性が悪化したり、圧縮永久歪み特性が悪化するおそれがあるからである。
【0025】
上記特定の液状ゴム(A成分)の数平均分子量(Mn)は、700〜100,000の範囲に設定されていることが好ましく、特に好ましくは2,000〜100,000である。すなわち、上記液状ゴム(A成分)の数平均分子量(Mn)を上記範囲内に設定することにより、取り扱い性に優れ、架橋反応が良好に行えるようになるからである。なかでも、上記液状ゴム(A成分)が、スチレンから誘導される構造単位を有しないものである場合、その数平均分子量(Mn)は、700〜60,000の範囲が好ましく、特に好ましくは2,000〜50,000である。また、上記液状ゴム(A成分)が、スチレンから誘導される構造単位を有するものである場合、その数平均分子量(Mn)は、1,000〜100,000の範囲が好ましく、特に好ましくは10,000〜80,000である。
【0026】
上記特定の液状ゴム(A成分)は、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、まず、モノマー成分として、ブタジエンおよびイソプレンの少なくとも一方、および必要に応じてスチレンを準備する。ついで、上記モノマー成分を用い、適宜の触媒(例えば、リチウム系触媒)の存在下、各種の方法によって、単独重合あるいは共重合させることにより得ることができる。
【0027】
上記特定の液状ゴム(A成分)とともに用いられるヒドロシリル架橋剤(B成分)としては、特に限定はなく、分子中にヒドロシリル基を有するものがあげられる。なお、上記ヒドロシリル基とは、珪素原子の4つの結合手のうち、少なくとも1つに水素原子が結合したものをいう。
【0028】
上記ヒドロシリル架橋剤(B成分)の分子構造は、特に限定はなく、直鎖状、分枝鎖状、環状あるいは網状のいずれでもよい。また、上記ヒドロシリル架橋剤(B成分)の重合度は、特に限定はされないが、通常25℃における粘度が23〜10,000センチストークスの範囲内のものが好ましい。
【0029】
上記ヒドロシリル架橋剤(B成分)のなかでも、下記の一般式(5)〜(7)で表される炭化水素系ヒドロシリル化合物が好適に用いられる。
【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

【0032】
【化5】

【0033】
そして、上記一般式(5)〜(7)で表される炭化水素系ヒドロシリル化合物は、例えば、下記の(i)〜(iii)に示す方法によって製造することができる。上記方法のなかでも、比較的簡便に実施できる点で、(iii)に示す方法が特に好適である。
【0034】
(i)分子構造中にクロロシリル基(SiCl)を有する炭化水素系化合物を、還元剤(LiAlH4 ,NaBH4 等)を用いて処理することにより、クロロシリル基をヒドロシリル基に還元して製造する方法。
【0035】
(ii)官能基を有する炭化水素系化合物と、上記官能基と反応し得る官能基およびヒドロシリル基の双方を有する化合物とを反応させることにより製造する方法。
【0036】
(iii)アルケニル基を有する炭化水素系化合物と、ポリヒドロシラン化合物とを、得られる反応物の分子構造中にヒドロシリル基が残存するように反応させることにより製造する方法。
【0037】
このようにして得られる炭化水素系ヒドロシリル化合物のなかでも、下記の構造式(8)〜(12)で表わされるものが特に好ましい。
【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
そして、この炭化水素系ヒドロシリル化合物、例えば、上記構造式(8)で表される炭化水素系ヒドロシリル化合物は、下記に示す反応によって製造することができる。
【0044】
【化11】

【0045】
上記ヒドロシリル架橋剤(B成分)の配合割合は、上記特定の液状ゴム(A成分)100重量部(以下「部」と略す)に対して、1〜15部の範囲に設定することが好ましく、特に好ましくは2〜8部である。すなわち、1部未満であると、架橋が充分に行われないため、強度や圧縮永久歪みが悪くなり、逆に15部を超えると、架橋が進みすぎ、硬くて脆くなったり、ポットライフが短くなるからである。
【0046】
上記液状ゴム(A成分)およびヒドロシリル架橋剤(B成分)とともに用いられるヒドロシリル化触媒(C成分)としては、架橋反応に対し触媒機能を発揮できるものであれば特に限定はなく、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール,アルデヒド,ケトン等との錯体、白金/ビニルシロキサン錯体、白金/オレフィン錯体、白金/ホスファイト錯体、白金,アルミナ,シリカ,カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの等があげられる。また、白金化合物以外の触媒としては、パラジウム化合物,ロジウム化合物,イリジウム化合物,ルテニウム化合物等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0047】
上記ヒドロシリル化触媒(C成分)の配合量は、液状ゴム(A成分)やヒドロシリル架橋剤(B成分)の種類等によって適宜設定されるが、上記A成分100部に対して0.0001〜0.03部の範囲に設定することが好ましい。
【0048】
なお、本発明の液状ゴム組成物には、上記A〜C成分に加えて、シリカ,石英,炭酸カルシウム,タルク,マイカ等の充填剤や、可塑剤、架橋促進剤、架橋遅延剤、老化防止剤等を適宜配合してもよい。
【0049】
本発明の液状ゴム組成物は、例えば、つぎのようにして調製することができる。すなわち、まず、液状ゴム(A成分)とヒドロシリル化触媒(C成分)とを適宜の割合で配合して液状主剤を調製するとともに、ヒドロシリル架橋剤(B成分)を含む液状架橋剤を調製する。なお、必要に応じて、上記A〜C成分以外の他の成分を、上記液状主剤中および液状架橋剤中にそれぞれ添加する。そして、使用に際し、液状主剤と液状架橋剤とを混合することにより調製することができる。このように本発明の液状ゴム組成物は、貯蔵安定性の観点から、液状主剤と液状架橋剤を別々に保存し、使用の際に両液を混合して調製することが好ましい。
【0050】
本発明の液状ゴム組成物の用途としては、特に限定はなく、例えば、電子写真装置に用いられる現像ロール,帯電ロール,転写ロール,給紙ロール,トナー層形成部材,クリーニングブレード,帯電ブレード等の電子写真用部材に好適に用いられる。
【実施例】
【0051】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【0052】
(1)ベースロールの作製
〔実施例1〕
液状ゴムであるブタジエンゴム(クラレ社製、クラプレンLIR−300)〔Mn:40,000、構造単位(α)の含有割合:9.4重量%〕100部と、シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル200)5部と、下記の構造式(13)で表されるヒドロシリル架橋剤(東芝シリコーン社製、TSF484)6.2部と、ヒドロシリル化触媒である白金カルボニル錯体(アヅマックス社製、SIP 6829.0)0.01部と、パラフィン系可塑剤(出光興産社製、PW−150)15部を用意した。そして、上記液状ゴムであるブタジエンゴムと、白金カルボニル錯体と、シリカとを混合して液状主剤を調製するとともに、ヒドロシリル架橋剤と、パラフィン系可塑剤とを混合して液状架橋剤を調製した。ついで、この両者を使用に際して混合することにより、液状ゴム組成物を調製した。そして、この液状ゴム組成物を、軸体である芯金(直径10mm、SUS304製)をセットした射出成形用金型内に充填し、130℃×2分の条件で加熱して架橋を行った。その後、脱型して、軸体の外周面に沿って最内層が形成されたベースロールを作製した。
【0053】
【化12】

【0054】
〔実施例2〕
上記パラフィン系可塑剤の配合割合を70部に変更する以外は、実施例1と同様にして液状ゴム組成物を調製した。そして、架橋時間を5分にする以外は、実施例1と同様にしてベースロールを作製した。
【0055】
〔実施例3〕
上記ブタジエンゴムに代えて、イソプレン:スチレン=90:10(重量比)であるイソプレン−スチレン共重合ゴム(クラレ社製、クラプレンLIR−310)〔Mn:30,000、構造単位(α)の含有割合:5.4重量%〕を用い、かつ、上記パラフィン系可塑剤の配合割合を30部に変更する以外は実施例1と同様にして液状ゴム組成物を調製した。そして、架橋時間を6分にする以外は、実施例1と同様にしてベースロールを作製した。
【0056】
〔実施例4〕
上記ブタジエンゴムに代えて、ブタジエン:イソプレン=90:10(重量比)であるブタジエン−イソプレン共重合ゴム(クラレ社製、クラプレンLIR−390)〔Mn:34,000、構造単位(α)の含有割合:9.3重量%〕を用い、かつ、上記パラフィン系可塑剤の配合割合を30部に変更する以外は実施例1と同様にして液状ゴム組成物を調製した。そして、架橋時間を5分にする以外は、実施例1と同様にしてベースロールを作製した。
【0057】
〔実施例5〕
イソプレンゴム(クラレ社製、クラプレンLIR−30)〔Mn:29,000、構造単位(α)の含有割合:6.5重量%〕100部と、シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル200)5部と、上記構造式(13)で表されるヒドロシリル架橋剤6.2部と、白金カルボニル錯体(アヅマックス社製、SIP 6829.0)0.01部と、パラフィン系可塑剤(出光興産社製、PW−380)30部を用いて、実施例1と同様にして、液状ゴム組成物を調製した。そして、この液状ゴム組成物を用いて、実施例1と同様にして、ベースロールを作製した。
【0058】
〔比較例1〕
EPDM(三井石油化学社製、EPT4045)100部と、パラフィン系オイル(出光興産社製、ダイアナプロセスPW380)90部と、ZnO(酸化亜鉛2種)3部と、カーボンブラック(昭和キャボット社製、ショウブラックN−550)1部と、シリカ(日本シリカ社製、ニップシールVN3)20部と、クレー(バンダービルト社製、デキシークレー)20部と、架橋剤(硫黄)1.5部と、架橋促進剤(大内新興化学社製、ノクセラーTT)0.5部と、架橋促進剤(大内新興化学社製、ノクセラーPZ)1.5部と、架橋促進剤(大内新興化学社製、ノクセラーDM)0.5部を配合して、ゴム組成物を調製した。そして、このゴム組成物を、軸体である芯金(直径10mm、SUS304製)をセットした射出成形用金型内に充填し、180℃×20分の条件で加熱して架橋を行った。その後、研磨して、軸体の外周面に沿って最内層が形成されたベースロールを作製した。
【0059】
〔比較例2〕
上記EPDMに代えて、EPDM(住友化学社製、エスプレン532)を用いる以外は比較例1と同様にしてゴム組成物を調製し、ベースロールを作製した。
【0060】
〔比較例3〕
液状シリコーンゴム(東レダウコーニング社製、SE6706)を、軸体である芯金(直径10mm、SUS304製)をセットした射出成形用金型内に充填し、180℃×2分の条件で加熱して架橋を行った。その後、脱型して、軸体の外周面に沿って最内層が形成されたベースロールを作製した。
【0061】
〔比較例4〕
上記液状シリコーンゴムに代えて、液状シリコーンゴム(東レダウコーニング社製、SE6744)を用いる以外は、比較例3と同様にしてベースロールを作製した。
【0062】
〔比較例5〕
ポリエチレンアジペート(Mn:2000)55.2部と、4,4′−MDI 33.6部と、2,4′−MDI 14.4部からなる主剤と、ポリエチレンアジペート(Mn:2000)50.7部と、1,4−ブタンジオール8.2部と、トリメチロールプロパン4.0部と、触媒(トリエチレンジアミン)0.033部とからなる硬化剤とを別々に調製した。そして、上記主剤および硬化剤を、軸体である芯金(直径10mm、SUS304製)をセットした射出成形用金型内に充填し、140℃×5分の条件で加熱して硬化を行った。その後、脱型して、軸体の外周面に沿って最内層が形成されたベースロールを作製した。
【0063】
〔比較例6〕
ポリエチレンアジペート(Mn:2000)55.2部と、4,4′−MDI 43.2部と、2,4′−MDI 4.8部からなる主剤と、ポリエチレンアジペート(Mn:2000)50.7部と、1,4−ブタンジオール10.7部と、トリメチロールプロパン2.7部と、触媒(トリエチレンジアミン)0.033部とからなる硬化剤とを別々に調製した。そして、架橋時間を3分にする以外は、比較例5と同様にしてベースロールを作製した。
【0064】
〔比較例7〕
ポリカプロラクトン(Mn:2000)63.1部と、1,3−ブタンジオール0.5部と、4,4′−MDI 45.0部とからなる主剤と、ポリカプロラクトン(Mn:2000)48.2部と、1,4−ブタンジオール7.7部と、トリメチロールプロパン1.9部と、触媒(トリエチレンジアミン)0.033部とからなる硬化剤とを別々に調製した。そして、架橋時間を2分にする以外は、比較例5と同様にしてベースロールを作製した。
【0065】
このようにして得られた各ベースロールを用いて、下記の基準に従い、各特性の比較評価を行った。これらの結果を後記の表1および表2に併せて示した。
【0066】
〔型の転写性〕
最内層となる層を目視することにより評価した。評価結果は、以下のように表示した。
○:層表面に凹みや膨れ等の成形不良が生じず、外径の再現性が良好
×:成形不良が生じ、外径の再現性が悪い
【0067】
〔ポットライフ〕
常温(25℃)で保管した時に、初期粘度の2倍になるまでの時間を測定した。
【0068】
〔硬度〕
JIS K 6301に準じ、JIS Aによる硬度を測定した。
【0069】
〔圧縮永久歪み〕
JIS K 6301に準じ、温度70℃、試験時間22時間、圧縮率25%の条件で測定した。この測定値が、5%以下であれば圧縮永久歪みが非常に良好であるが、8%以下であれば使用上問題はない。
【0070】
〔脱型時形状保持性〕
引裂破断強度(B型)TrBを測定し、30N/mm以上のものを○、30N/mm未満のものを×とした。
【0071】
〔成形性(成形タクト)〕
ロータレスレオメータ(東洋精機社製、RLM−2)を用いて、130℃でのt90値(トルク定常値の90%の高さの点に達するまでの時間)を測定した。評価結果は、以下のように表示した。
○:3分以内
△:3〜10分以内
×:10分以上
【0072】
〔材料コスト〕
ゴム組成物の材料コストを評価した。評価結果は、以下のように表示した。
◎:500円以内/kg
○:1000円未満/kg
×:1000円以上/kg
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
上記表1および表2の結果から、実施例品のベースロールは、すべての特性において良好であることがわかる。これに対して、比較例1品および比較例2品のベースロールは、パラフィン系オイルを多量に配合しているため、型の転写性が悪く、圧縮永久歪みが劣り、またベースポリマーとしてEPDMを用いているため成形性に劣ることがわかる。比較例3品および比較例4品のベースロールは、ベースポリマーとしてシリコーンを用いているため、脱型時形状保持性が悪く、材料コストが高いことがわかる。比較例5品〜比較例7品のベースロールは、ベースポリマーとしてウレタンポリマーを用いているため、成形性が若干劣ることがわかる。
【0076】
(2)ロールの作製
〔実施例6〜10、比較例8〜14〕
上記実施例1〜5および比較例1〜7と同様にしてベースロールをつくり、各ベースロールの外周面に、NBRにカーボンブラックを分散したものを芯金に接するよう(導通するよう)に塗布し、各ベースロールの外周面に電極層を形成した。ついで、この電極層の外周面に、表層形成材料(コーティング液)をディッピング法により塗布して表層を形成し、これを加熱架橋(硬化)してロールを作製した。上記表層形成材料(コーティング液)としては、シリコーングラフトアクリル樹脂に、導電剤および硬化剤を配合したものを、溶剤中で分散したものを用いた。
【0077】
このようにして得られた各ロールを用いて、各特性の比較評価を行った。これらの結果を後記の表3および表4に併せて示した。
【0078】
〔へたり(圧接テスト)〕
上記ロールを直径30mmの金属製円筒体に対して平行に配置した後、ロールを径方向に0.5mm凹ませた状態で押圧して1週間放置した。ついで、このロールを取り出し、プリンターに組み込み、べた黒の画像出しを行った。評価結果は、以下のように表示した。
○:押圧部分に相当する画像が白くぬけていない
×:押圧部分に相当する画像が白くぬけている
【0079】
〔現像特性〕
上記ロールをプリンターに組み込み、35℃×85%の環境下、1週間放置した後、文字画像をプリントして、画像を目視評価した。評価結果は、以下のように表示した。
○:細線の途切れがなく、画像のかすれが見られない
×:細線の途切れがあり、画像のかすれが見られる
【0080】
〔帯電特性〕
上記現像特性に準じて、ハーフトーンの画像を目視評価した。そして、画像に帯電ロールのへこみによる濃度の高いすじがないものを○、あるものを×とした。
【0081】
〔転写特性〕
上記現像特性に準じて評価を行った。
【0082】
〔給紙特性〕
コピー用紙(A4サイズ)を100枚置き、その紙を給紙ロールで引っ張りその力をトルクゲージを用いて測定した。そして、400±50gfのものを○、それ以外のものを×とした。
【0083】
〔信頼性〕
23℃×53%の環境下で上記ロールの外径を測定した後、35℃×85%の環境下に48時間放置し、ロール外径の膨張率を測定した。そして、膨張率が0.3%以下のものを○、0.3%を超えるものを×とした。
【0084】
【表3】

【0085】
【表4】

【0086】
上記表3および表4の結果から、実施例品のロールは、すべての特性において良好であることがわかる。これに対して、比較例8品および比較例9品のロールは、へたりによる画像不具合が生じることがわかる。比較例10品および比較例11品のロールは、ベースポリマーとしてシリコーンを用いているため、耐摩耗性が悪く、給紙ロール特性に劣ることがわかる。比較例12品〜比較例14品のロールは、信頼性に劣ることがわかる。
【0087】
(3)ブレードの作製
〔実施例11〜15、比較例15〜21〕
上記実施例1〜5および比較例1〜7で調製した各ゴム組成物を用いて、従来公知の方法により、ブレードを作製した。そして、このブレードを用いて、各特性の比較評価を行った。これらの結果を後記の表5および表6に併せて示した。
【0088】
〔トナー層形成特性〕
層形成ブレードとして、市販のレーザービームプリンター(HP社製、レーザージェット4)にロールとブレードのニップが1mmとなるように組み付けを行い、常温常湿下で6000枚の画出しを行った。この後の画出し画像の画質について目視評価を行った。評価結果は、以下のように表示した。
○:画像に問題がなく、細線が鮮明に画出しされたもの
×:かぶり、白抜け、濃度むら等が発生して、画像に不具合が見られるもの
【0089】
〔クリーニング特性〕
クリーニングブレードとして市販のレーザービームプリンター(HP社製、レーザージェット4)に組み付け、常温常湿下で6000枚の画出しを行った。この後の画出し画像の画質について目視評価を行った。評価結果は、以下のように表示した。
○:画像に問題がなく、細線が鮮明に画出しされたもの
×:かぶり、白抜け等が発生して、画像に不具合が見られるもの
【0090】
〔帯電特性〕
帯電ブレードとして市販のレーザービームプリンター(HP社製、レーザージェット4)に組み付けを行い、画出し評価を行った。評価結果は、以下のように表示した。
○:画像に問題がなく、細線が鮮明に画出しされたもの
×:かぶり、白抜け、濃度むら等が発生して、画像に不具合が見られるもの
【0091】
〔耐摩耗性〕
上記クリーニング特性を評価したクリーニングブレードのエッジ部の摩耗量を観察し、摩耗した部分の断面積と先端部の単位長さより、摩耗量を評価した。評価結果は、以下のように表示した。
○:摩耗量が100μm3 未満のもの
×:摩耗量が100μm3 以上のもの
【0092】
【表5】

【0093】
【表6】

【0094】
上記表5および表6の結果から、実施例品のブレードは、すべての特性において良好であることがわかる。これに対して、比較例15品および比較例16品のブレードは、帯電特性に劣ることがわかる。比較例17品および比較例18品のブレードは、ベースポリマーとしてシリコーンを用いているため、耐摩耗性に劣ることがわかる。比較例19品〜比較例21品のブレードは、帯電特性に劣ることがわかる。
【0095】
(4)層形成ブレードの作製
〔実施例16〕
液状ゴムである、ブタジエン:イソプレン=87.4:12.6(重量比)のブタジエン−イソプレン共重合ゴム(クラレ社製、クラプレンLIR−390)〔Mn:34,000、構造単位(α)の含有割合:9.3重量%〕100部と、下記の構造式(8)で表されるヒドロシリル架橋剤4部と、ヒドロシリル化触媒である白金カルボニル錯体(アヅマックス社製、SIP 6829.0)0.01部を用意した。そして、液状ゴムと、白金カルボニル錯体とを混合して液状主剤を調製するとともに、ヒドロシリル架橋剤からなる液状架橋剤を得た。一方、断面L字状に形成された板金製支持ホルダーを準備し、上記板金製支持ホルダーの片面に、プライマーX(東レ・ダウコーニングシリコーン社製)とプライマーY(東レ・ダウコーニングシリコーン社製)の等重量混合液を塗工した。そして、上記支持ホルダーを、予備加熱された金型にセットした。ついで、上記液状主剤と液状架橋剤を混合して液状ゴム組成物をつくり、これを上記金型内に170℃×1分の条件で射出成形し、上記支持ホルダーの片面に液状ゴム組成物硬化体からなるブレード体を固着させ、目的とする層形成ブレードを作製した。
【0096】
【化13】

【0097】
〔実施例17〕
液状ゴムであるブタジエンゴム(クラレ社製、クラプレンLIR−300)100部と、石英粉末(龍森社製、クリスタライト)15部と、上記の構造式(8)で表されるヒドロシリル架橋剤6部と、ヒドロシリル化触媒である白金カルボニル錯体(アヅマックス社製、SIP 6829.0)0.01部を用意した。この液状ゴムと白金カルボニル錯体と石英粉末とを混合して液状主剤を調製するとともに、ヒドロシリル架橋剤からなる液状架橋剤を得た。そして、実施例16の液状主剤と液状架橋剤に代えて、上記液状主剤と液状架橋剤を用いた以外は実施例16と同様にして層形成ブレードを作製した。
【0098】
〔実施例18〕
液状ゴムである、イソプレン:スチレン=90:10(重量比)であるイソプレン−スチレン共重合ゴム(クラレ社製、クラプレンLIR−310)〔Mn:30,000、構造単位(α)の含有割合:5.4重量%〕100部と、石英粉末(龍森社製、クリスタライト)20部と、前記の構造式(8)で表されるヒドロシリル架橋剤16部と、ヒドロシリル化触媒である白金カルボニル錯体(アヅマックス社製、SIP 6829.0)0.01部を用意した。この液状ゴムと白金カルボニル錯体と石英粉末とを混合して液状主剤を調製するとともに、ヒドロシリル架橋剤からなる液状架橋剤を得た。そして、実施例16の液状主剤と液状架橋剤に代えて、上記液状主剤と液状架橋剤を用いた以外は実施例16と同様にして層形成ブレードを作製した。
【0099】
〔実施例19〕
液状ゴムであるブタジエンゴム(クラレ社製、クラプレンLIR−300)100部と、前記の構造式(8)で表されるヒドロシリル架橋剤2部と、ヒドロシリル化触媒である白金カルボニル錯体(アヅマックス社製、SIP 6829.0)0.01部を用意した。この液状ゴムと白金カルボニル錯体とを混合して液状主剤を調製するとともに、ヒドロシリル架橋剤からなる液状架橋剤を得た。そして、実施例16の液状主剤と液状架橋剤に代えて、上記液状主剤と液状架橋剤を用いた以外は実施例16と同様にして層形成ブレードを作製した。
【0100】
〔実施例20〕
液状ゴムであるブタジエンゴム(クラレ社製、クラプレンLIR−300)100部と、石英粉末(龍森社製、クリスタライト)40部と、前記の構造式(8)で表されるヒドロシリル架橋剤16部と、ヒドロシリル化触媒である白金カルボニル錯体(アヅマックス社製、SIP 6829.0)0.01部を用意した。この液状ゴムと白金カルボニル錯体と石英粉末とを混合して液状主剤を調製するとともに、ヒドロシリル架橋剤からなる液状架橋剤を得た。そして、実施例16の液状主剤と液状架橋剤に代えて、上記液状主剤と液状架橋剤を用い、かつ、架橋時間を2分にした以外は実施例16と同様にして層形成ブレードを作製した。
【0101】
〔比較例22〕
上記液状ゴム組成物として、液状シリコーンゴム KE1950−40(信越化学工業製、MD−1硬度:40度)を用いた。これを実施例16の液状ゴム組成物に代えて用いた以外は、実施例16と同様にして層形成ブレードを作製した。
【0102】
〔比較例23〕
ポリエチレンアジペート(Mn:2000)55.2部と、4,4′−MDI 33.6部と、2,4′−MDI 14.4部からなる主剤と、ポリエチレンアジペート(Mn:2000)50.7部と、1,4−ブタンジオール8.2部と、トリメチロールプロパン4.0部と、触媒(トリエチレンジアミン)0.033部とからなる硬化剤とを別々に調製した。そして、実施例16と同様の板金製支持ホルダーおよび金型を準備し、上記支持ホルダーにはプライマー塗工をせずに、そのまま予備加熱された金型にセットした。ついで、上記主剤および硬化剤を混合して液状ゴム組成物をつくり、これを上記金型内に140℃×5分の条件で射出成形し、上記支持ホルダーの片面に液状ゴム組成物硬化体からなるブレード体を固着させ、目的とする層形成ブレードを作製した。
【0103】
このようにして得られた実施例16品〜20品および比較例22品,23品について、下記の基準に従い、各特性の比較評価を行った。これらの結果を後記の表7に併せて示した。なお、各測定方法は以下の通りである。
【0104】
〔硬度〕
JIS K 6301に準じ、JIS Aによる硬度を測定した。
【0105】
〔溶剤浸漬抽出〕
得られた層形成ブレード(実施例16品〜20品および比較例22品)のゴム製硬化体の部分をトルエン中に24時間浸漬し、このときにトルエン中に抽出された上記ゴム製硬化体の割合を重量%で示したもので、以下の式に従って算出した。なお、比較例23品の場合は、抽出溶剤としてトルエンに代えてメタノールを用いた以外は、同様にして抽出を行った。
【0106】
【数1】

【0107】
〔トナー層形成特性(画像濃度変化)〕
層形成ブレードとして、市販のレーザービームプリンター(HP社製、レーザージェット4)にロールとブレードのニップが1mmとなるように組み付けを行い、常温常湿下で6000枚の画出しを行った。この後の画出し画像の画質について目視評価を行った。評価結果は、以下のように表示した。
○:画像に問題がなく、細線が鮮明に画出しされたもの
△:上記評価結果ほどではないものの、実用に問題がない程度に線画が画出しされたもの
×:かぶり、白抜け、濃度むら等が発生して、画像に不具合が見られるもの
【0108】
〔横すじ判定〕
上記のようにして層形成ブレードを実機に組み付けたのち、温度30℃,湿度90%の環境下で7日間放置した。そののち、黒ベタの画出しを行い、横すじの発生の有無を目視で判定した。横すじのなかったものを○として、横すじのあったものを×として表した。
【0109】
〔トナーフィルミング判定〕
上記のようにして層形成ブレードを実機に組み付けたのち、6000枚の耐久画出しを行い、層形成ブレード表面へのトナーフィルミングの発生の有無を目視で判定した。そして、トナーフィルミングが発生しなかったものを○、トナーフィルミングの傾向は若干あるものの、実用に問題がない程度であったものを△、トナーフィルミングが発生したものを×として表した。
【0110】
〔成形性(成形タクト)〕
ロータレスレオメータ(東洋精機社製、RLM−2)を用いて、130℃でのt90値(トルク定常値の90%の高さの点に達するまでの時間)を測定した。評価結果は、以下のように表示した。
○:3分以内
△:3〜10分以内
×:10分以上
【0111】
【表7】

【0112】
上記表7の結果から、実施例品の層形成ブレードはすべて、ベースポリマーとして液状シリコーンゴムを用いている比較例22品のブレード、およびベースポリマーとしてウレタンエラストマーを用いている比較例23品のブレードと同程度の硬度を保持していることがわかる。しかも各実施例品は、それ以外の特性においても良好であることがわかる。これに対して、比較例22品および比較例23品のブレードは、ともに溶剤に抽出される低分子量の成分を多く含有していることがわかる。また、比較例22品のブレードは、トナー層形成特性および横すじ判定に劣り、比較例23品のブレードは、トナーフィルミング判定および成形性に劣ることがわかる。また、実施例品はすべて、液状シリコーンゴムを用いている比較例22品と同様、架橋時間が短くて済むため、上記の良特性に加えて製造時間の短縮化も実現することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分を主成分とし、下記の(B)成分および(C)成分を含有することを特徴とする液状ゴム組成物。
(A)ブタジエンおよびイソプレンの少なくとも一方から誘導され、側鎖にアルケニル基をもつ構造単位(α)を有する液状ゴム。
(B)ヒドロシリル架橋剤。
(C)ヒドロシリル化触媒。
【請求項2】
上記(A)成分である液状ゴムが、上記構造単位(α)を有するとともに、スチレンから誘導される構造単位を有するものである請求項1記載の液状ゴム組成物。
【請求項3】
上記構造単位(α)の含有割合が、上記(A)成分である液状ゴム全体の0.5〜80重量%の範囲に設定されている請求項1または2記載の液状ゴム組成物。
【請求項4】
上記(A)成分である液状ゴムの数平均分子量が、700〜100,000の範囲に設定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の液状ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の液状ゴム組成物を用いたことを特徴とする電子写真用部材。

【公開番号】特開2006−16621(P2006−16621A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238093(P2005−238093)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【分割の表示】特願平11−245051の分割
【原出願日】平成11年8月31日(1999.8.31)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】