説明

液状樹脂供給装置及び樹脂モールド装置

【課題】複数プレス部に搬入されるワークにコンパクトな装置構成で効率よくしかも製品に応じた仕様でワークに液状樹脂を供給できる液状樹脂供給装置を提供する。
【解決手段】シリンジ19に充填された液状樹脂5をワークWに吐出して供給するディスペンスユニット18に交換用の複数のシリンジ19を保持したシリンジ供給部17が回転可能に設けられ、ディスペンスユニット18はシリンジ供給部17から交換用のシリンジ19を受け取って液材吐出位置Jに保持されたワークWに液状樹脂5を所定量吐出して供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップがキャリア上に保持されたワークに液状樹脂を供給する液状樹脂供給装置及びこれを備えた樹脂モールド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを複数プレス部に対して供給して樹脂モールドする場合、各プレス部にはローダーによってワーク及び樹脂(タブレット樹脂、液状樹脂、粉末・顆粒状樹脂、或いはペースト状樹脂など)をプレス部に備えたモールド金型に搬入してクランプすることで樹脂モールドされる。このとき、複数プレス部において効率的に樹脂モールドを行なうためには、ローダーや減圧装置を各プレス部において兼用することによるコンパクト化のほかに、成形サイクルを最も遅いプレス部の樹脂モールド動作に合わせて行うことが知られている(特許文献1参照)。
また、液状樹脂を供給するディスペンサーに液状樹脂の収容量によらずにシリンジを自動装着する装置も提案されている。具体的にはプランジャーの中央部に備えたねじ穴にロッドをねじ嵌合させたままロッドを後退させてシリンジをロック機構によりロックすることでシリンジをディスペンサーに自動装着するようになっている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−83027号公報
【特許文献2】特開2009−285858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、複数プレス部にワークと共に液状樹脂を供給する場合には、一の液状樹脂供給装置(ディスペンサー)でワークに液状樹脂を供給する場合、温度管理が必要な液状樹脂の吐出時間が長くなるため、生産効率が落ちてしまうおそれがある。
また、ディスペンサーにシリンジを自動装着させるとしても、シリンジ搬送機構によりシリンジのプランジャーのねじ穴とロッドを位置合わせして個別にねじ嵌合させて装着するのは、装置が大がかりになるうえに設置面積も必要になるし、シリンジの交換から液状樹脂の供給までに時間がかかる。
更には、液状樹脂の種類や供給量が異なる製品に対して効率よく液状樹脂を供給することでミックスプロダクションを実現したいというニーズもある。
【0005】
本発明は上記従来技術の課題を解決し、コンパクトな装置構成で液状樹脂を充填したシリンジの交換を迅速かつ効率よく行いしかも製品に応じた仕様でワークに液状樹脂を供給できる液状樹脂供給装置及びこれを用いた樹脂モールド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
半導体チップがキャリア上に保持されたワークに液状樹脂を供給する液状樹脂供給装置であって、シリンジに充填された液状樹脂をワークに吐出して供給するディスペンスユニットに交換用の複数のシリンジを保持したシリンジ供給部が回転可能に設けられ、ディスペンスユニットはシリンジ供給部から交換用のシリンジを受け取って液材吐出位置に保持されたワークに液状樹脂を所定量吐出して供給することを特徴とする。
上記構成によれば、交換用シリンジを保持したシリンジ供給部が回転することにより、ディスペンスユニットに対するシリンジ交換位置及び作業者によるシリンジ供給部のシリンジ交換位置のいずれにおいてもシリンジにアクセスすることができるので、装置を簡素化、コンパクトに設置できるうえに、シリンジ供給部の回転によって、シリンジ交換位置を変更することなく一定の位置で行えるため交換作業が容易に行える。
【0007】
一対のディスペンスユニットの間に前記シリンジ供給部が回転可能に設けられ、各ディスペンスユニットは前記シリンジ供給部を共用して交換用のシリンジを受け取って液材吐出位置に保持されたワークに液状樹脂を所定量吐出して供給することを特徴とする。
上記構成によれば、一対のディスペンスユニットが共通のシリンジ供給部を共用して交換用のシリンジを受け取って液材吐出位置に保持されたワークに液状樹脂を所定量吐出して供給することで、温度管理が必要なディスペンスユニットからワークに対する液状樹脂の吐出動作が効率よく実現でき、複数プレス部において連続する樹脂モールド動作に追従することができ、生産効率の向上に寄与することができるうえに、異なるワークに対しても液状樹脂を供給することができ汎用性が向上する。
【0008】
前記シリンジ供給部には回転角で60°ごとにシリンジが保持されており、各ディスペンスユニットは、前記シリンジ供給部のシリンジ受け取り位置と液材供給位置との間を移動可能であって、シリンジ受け取り位置と前記シリンジ供給部の回転中心とを結ぶ角度が120°となるように配置されていることを特徴とする。
これによれば、例えばロボットハンドが同じ位置から液材吐出位置にワークを供給してディスペンスユニットにより液材を供給することができるので、液状樹脂供給装置をコンパクトに配置することができるうえに、シリンジ供給部に回転角で60°ごとにシリンジを保持しておくことで、各ディスペンスユニットもシリンジ供給部に保持されたシリンジを同時に交換することも可能になる。
【0009】
前記シリンジ供給部及び前記ディスペンスユニットには、シリンジ先端に設けられたチューブノズルを開閉するピンチバルブが各々設けられていることを特徴とする。
これによって、シリンジ供給部においてもディスペンスユニットにおいても保持されたシリンジから液状樹脂が漏れ出すのを防ぐことができる。
【0010】
前記ディスペンスユニットに保持されたシリンジのチューブノズル付近の液状樹脂を捨て打ちする捨て打ちカップが前記液材供給位置と退避位置との間を移動可能に設けられていることを特徴とする。
これにより、シリンジのチューブノズル付近の比較的質の悪い液状樹脂を捨て打ちカップに捨ててから使用することで、液状樹脂の品質を高品質に維持することができる。
【0011】
各ディスペンスユニットは液材供給位置においてワークに吐出された液状樹脂の吐出量が各々計量されて供給されることを特徴とする。
これにより、温度管理が必要なディスペンスユニットからワークに対する液状樹脂の吐出動作が精度良く行えるため、複数プレス部において連続する樹脂モールド動作に追従することができ、生産効率の向上に寄与することができる。
【0012】
樹脂モールド装置においては、ワークをロボットハンドに保持して搬送するワーク搬送機構に備えた多関節ロボットの移動範囲を囲んで前記ワーク供給部、前述したいずれかの液状樹脂供給装置、前記プレス部及び前記ワーク収納部が配置されていることを特徴とする。
これにより、ワークや液状樹脂の供給から樹脂モールドを行なって成形品を収納するまでの一連の作業を効率よくしかも製品に応じた仕様で樹脂モールドすることができる。
【発明の効果】
【0013】
上記液状樹脂供給装置を用いれば、コンパクトな装置構成で液状樹脂を充填したシリンジの交換を迅速かつ効率よく行いしかも製品に応じた仕様でワークに液状樹脂を供給できる。また、樹脂モールド装置においては、複数プレス部に搬入されるワークに液状樹脂を効率よく供給することで、複数プレス部における連続する樹脂モールド動作に追従することができ、生産効率の向上に寄与することができる。また、液状樹脂の種類や供給量が異なる製品に対して効率よく液状樹脂を供給することでミックスプロダクションを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】樹脂モールド装置の全体構成例を示す平面レイアウト図である。
【図2】ワーク搬入時の液状樹脂供給装置の側面図である。
【図3】ピンチバルブの開閉動作を示す断面説明図である。
【図4】シリンジ供給部からシリンジを受け取る前の液状樹脂供給装置の側面図である。
【図5】シリンジ供給部からシリンジを受け取る状態を示す液状樹脂供給置の側面図である。
【図6】シリンジ供給部からシリンジを受け取った後の液状樹脂供給置の側面図である。
【図7】液状樹脂を捨て打ちする状態を示す液状樹脂供給置の側面図である。
【図8】ワークに液状樹脂を吐出している状態を示す液状樹脂供給置の側面図である。
【図9】一対のディスペンスユニットとシリンジ供給部のレイアウト構成を示す平面説明図である。
【図10】圧縮成形動作を示す断面説明図である。
【図11】他例に係る圧縮成形動作を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る樹脂モールド装置の好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。以下の実施形態では、プレス装置の一例として圧縮成形装置を用い、下型を可動型とし上型を固定型として説明する。
【0016】
(樹脂モールド装置の全体構成)
図1は、本発明に係る樹脂モールド装置の一実施形態である平面レイアウト図である。本実施形態の樹脂モールド装置は、ワーク搬送機構Hに備えた多関節ロボットの移動範囲を囲んでワーク供給部A、樹脂供給部B、プレス部C、ワーク検査部D(冷却部)、加熱硬化部E及びワーク収納部Fのような各処理工程を行う処理部と、これらの処理部の動作を制御する制御部Gが配置されている。プレス部Cの近傍には情報読取り部Iが設けられている。また、樹脂供給部Bの近傍には、表示部J及び操作部Mが設けられている。このように多関節ロボットの移動範囲を囲んで各工程を配置したことにより、移動距離が短縮されて工程間で効率の良いワーク搬送が実現できる。特に樹脂モールド装置に加熱硬化部Eを組み込まれているので、樹脂モールド後の成形品を迅速にキュア炉に搬入して加熱硬化させることができる。以下各部の構成について具体的に説明する。
【0017】
図1において、ワークWは、半導体チップがキャリア上に保持されたものが用いられる。このワークWは、例えばE−WLP(Embedded Wafer Level Package)若しくはeWLB (embededd Wafer Lebel BGA)と呼ばれる樹脂封止方法に用いられるものである。具体的には、例えばウエハ搬送治具のような周辺装置を共用するため半導体ウエハと同じサイズとして、直径12インチ(約30cm)の丸型の金属製(SUS等)のキャリアプレートKに熱はく離性を有する粘着シート(粘着テープ)が貼着されており、該粘着シートに複数の半導体チップが行列状に粘着されたものが用いられる。各ワークWの縁部には、製品に関する情報が対応付けられた情報コード(QRコード、バーコード等)が付与されている。なお、キャリアプレートKは矩形状であってもよい。この場合、半導体チップを複数行の行列状配置する場合、半導体チップが配置できないエリアを小さくすることができ成形効率上好ましい。
【0018】
また、ワークWとしては、半導体チップがキャリアプレートK上に保持されたE−WLP(eWLB)用のワークWではなく、再配線層にボールマウントしたウエハを樹脂モールドするウエハレベルパッケージ(WLP)のワークWであってもよい。この場合、可能なときはウエハ自体に情報コードを付与してもよいし、マガジンの各スリット(収納位置)に対して個別に情報コードを付与してもよい。更に、ワークWは半導体チップが実装された樹脂基板やリードフレームであっても良い。
【0019】
(表示部L及び操作部M)
図1に示すように、表示部L及び操作部Mは一体的に配置されている。作業者は、表示部Lに表示された情報を確認しながら、必要に応じて操作部Mを操作して装置内部における各部(例えば多関節ロボット2)の動作を制御可能となっている。また、後述する各種情報の入力や変更を行なうことも可能となっている。なお、通信回線を用いることで装置から離れた位置に表示部と操作部を設けて遠隔操作する構成としてもよい。
【0020】
(ワーク搬送機構H)
図1において、ワーク搬送機構Hは、ワークWをロボットハンド1に吸着保持して各工程間を搬送する回転及び直線移動可能な多関節ロボット2を備えている。多関節ロボット2は、折りたたみ可能な垂直リンクによる上下動と、回転可能な水平リンクとの組み合わせにより構成されている。上記各リンクは、図示しないサーボモータに備えたエンコーダにより回転量が検出されてフィードバック制御が行われる。ロボットハンド1は、キャリアプレートKを載置して吸着保持するようになっている。尚、ロボットハンド1は、ワークWを吸着保持するほかに、機械的にチャックする方式でも良い。また、ロボットハンド1は垂直軸を中心に回転する他に、水平軸を中心に回転(反転)するようになっていても良い。
【0021】
また、図1において、多関節ロボット2のベース部3は、直動ガイドレール4に沿って往復移動可能に設けられている。例えば、ベース部3に設けられたナットにボールねじが連繋しており、図示しないサーボモータにより正逆回転駆動することにより、多関節ロボット2が直動ガイドレール4に沿って往復動するようになっている。
【0022】
(ワーク供給部A及びワーク収納部F)
図1において、多関節ロボット2が往復動する直動ガイドレール4の手前側には、ワーク供給部Aとワーク収納部Fが併設されている。具体的には、ワークW(被成形品)を収納した供給マガジン9と、ワークW(成形品)を収納可能な収納マガジン10が2列ずつ併設されている。尚、供給マガジン9と収納マガジン10とは構造が同様であるので、以下では供給マガジン9の構造を代表して説明するものとする。また、2列設けられた供給マガジン9は、同じ種類のワークWを収納する場合でも、異なる種類のワークWを収納する場合でもいずれでも良い。収納マガジン10についても同様である。また、供給マガジン9及び収納マガジン10を1列ずつ設ける構成としてもよく、或いはそれぞれを3列以上設ける構成としてもよい。
【0023】
(情報読取り部I)
図1において、情報読取り部Iには、コード情報読取り装置16とアライナ16aとが設けられており、供給マガジン9から搬送されたワークWを受け取ったアライナ16aを回転させることでワークWの情報コードをコード情報読取り装置16の直下に移動させる。この際に、ワークWは一定の方向に統一される。コード情報読取り装置16は、ワークWに付与された製品に関する情報コード(QRコード、バーコード等)を読み取る。この情報コードに対応して、記憶部47には、樹脂供給情報(樹脂種別、樹脂供給量、供給時間など)やモールド条件(プレス番号、プレス温度、プレス時間、成形厚など)、キュア情報(キュア温度、キュア時間など)、冷却情報(冷却時間)、などの成形条件が記憶されている。コード情報読取り装置16が読み取った情報コードに対応した成形条件情報に基づいて、搬送しているワークWに対して後述する各工程の処理を行う。多関節ロボット2は成形条件の読み取りが完了したワークWを樹脂供給部Bからワーク収納部Fに至る後の各処理工程へ順次搬送する。
【0024】
(樹脂供給部Bの構成)
図1において、ワーク供給部Aに隣接して樹脂供給部Bが設けられている。樹脂供給部Bには液状樹脂供給装置が設けられている。液状樹脂供給装置には、複数のシリンジ19を回転可能に保持したリボルバ式のシリンジ供給部17を挟んで両側に一対のディスペンスユニット18が設けられている。樹脂供給部B内は、液状樹脂の品質維持のため、室内を冷却し除湿する空調装置が設けられている。また、後述するように装置側面には扉が設けられており、作業者がシリンジを交換可能となっている。
【0025】
図9Aにおいて、シリンジ19に充填された液状樹脂をワークWに吐出して供給する一対のディスペンスユニット18の間に交換用の複数のシリンジ19を保持したシリンジ供給部17が回転可能に設けられている。各ディスペンスユニット18はシリンジ供給部17を共用して交換用のシリンジ19を受け取って液材吐出位置に保持されたワークWに液状樹脂を所定量吐出して供給する。
【0026】
また、図9(B)において、シリンジ供給部17には回転角で60°ごとにシリンジ19が6か所に保持されている。また、一対のディスペンスユニット18は、シリンジ供給部17のシリンジ受け取り位置Lと液材供給位置Jとの間を移動可能であって、シリンジ受け取り位置とシリンジ供給部17の回転中心とを結ぶ角度が120°となるように配置されている。
【0027】
これによれば、例えばロボットハンド1が同じ位置から液材吐出位置Jにワークを供給してディスペンスユニット18により液材を供給することができるので、液状樹脂供給装置をコンパクトに配置することができるうえに、シリンジ供給部17に回転角で60°ごとにシリンジ19を保持しておくことで、各ディスペンスユニット18もシリンジ供給部17に保持されたシリンジを同時に交換することも可能になる。また、装置手前側(図9(A)図示の下側)もしくは装置側面側にシリンジ交換用の扉を設けた場合、該当する扉を開けることでその方向に向けられたシリンジ19を容易に交換することができる。
【0028】
(プレス部C)
次に図1及び図10を参照してプレス部Cの構成について説明する。
図1に示すように、本実施形態では複数のプレス部Cが直動ガイドレール4より奥側に併設されている。一例としてプレス部Cを2台設けたが、1台であっても3台以上であっても良い。またプレス部Cは同じ製品を樹脂モールドするモールド金型を備えていても、異なる製品を樹脂モールドするモールド金型を備えていてもいずれでも良い。プレス部Cの搬送エリア11に臨む側には仕切り壁24が設けられており、該仕切り壁24には開口部(図示せず)が設けられている。開口部は開閉可能なシャッター25によって通常は閉塞されている。シャッター25は、シリンダ、ソレノイドなどの駆動源により開閉するように設けられる。
【0029】
また、プレス部Cにはプレス装置26から搬送エリア11にかけて往復動可能なローダー32が設けられている。また、シャッター25により手前側の搬送エリア11には、図示しないワーク載置部が設けられている。ワーク載置部には、ロボットハンド1に吸着保持された液状樹脂が塗布されたワークWが受け渡され、或いはプレス装置26からローダー32によって取出されたワークWが受け渡される。
【0030】
図1において、各プレス装置26には、フィルム供給装置35が設けられている。図10(A)に示すようにフィルム供給装置35は上型28のクランプ面を覆う長尺状のリリースフィルム36をリール間で繰り出し及び巻き取りを行う装置である。リリースフィルム36は上型面に公知の吸引機構により吸着保持されるようになっている。リリースフィルム36としては、モールド金型の加熱温度に耐えられる耐熱性を有するもので、金型面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するフィルム材、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEP、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリジン等が好適に用いられる。尚、リリースフィルム36として、クランプ面を覆う程度の大きさの短冊状に切断されたものを用いる構成を採用してもよい。
【0031】
ワークWのプレス部Cへの搬入搬出動作及びプレス動作について説明する。図10(A)において、プレス装置26の上型28と下型30とは型開きした状態にあり、図1に示す仕切り壁24のシャッター25は開口部を閉塞した状態にある。ロボットハンド1に吸着保持されたワークWはワーク載置部(図示せず)に載置されて吸着が解除されて受け渡される。ロボットハンド1が退避すると、ローダー32がワーク載置部よりワークWをハンドにより掴みシャッター25が開放した状態で開口部よりプレス装置26内に進入して下型30にワークWをセットする。
【0032】
下型30にワークWがセットされた状態を図10(A)に示す。ワークWをセットしたローダー32はプレス装置26から開口部を経て搬送エリア11に戻るとシャッター25が閉じて(図1参照)、プレス装置26がワークWをクランプして圧縮成形が行われる。図10(B)に示すように、下型30が上昇して上型28との間でワークWがクランプされる。上型28のキャビティ28aを含むクランプ面にはリリースフィルム36が吸着保持されている。
【0033】
また、圧縮成形が終了すると、図10(C)に示すようにプレス装置26が型開きし、ワークWはリリースフィルム36が吸着された上型28より離型し、下型30に載置されたままの状態にある。シャッター25が開放されるとローダー32が搬送エリア11からプレス装置26内に進入して下型30に載置されたワークWを掴んで搬送エリア11へ取出してワーク載置部22に受け渡す(図1参照)。
【0034】
ここでプレス装置26の他例について図11を参照して説明する。
上述したプレス装置26と同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとする。図10では下型30に対してワークWを搬入する構成になっていたが、上型28に対してワークWを搬入する構成としてもよい。たとえば、該ロボットハンド1が液状樹脂の塗布されたワークWをチャックハンドにより掴んで反転して上型28に供給する構成とすることができる。この場合、ある程度チクソ性が高く樹脂モールド前の状態で反転させても樹脂が落下しない程度の粘度を有するエポキシ樹脂等を用いるのが好ましい。
【0035】
本実施形態における上型28は、キャリアプレートKの縁部で開閉してこれを支持可能な爪部28bを有してワークWを保持可能に構成される。図11(A)は型開きしたプレス装置26にワークWが搬入された状態を示す。ワークWは、キャリアプレートKが上型28のクランプ面から離間した状態で爪部28bによって上型28に吊り下げ保持(フローティング支持)されている。この場合、クランプするまで上型28のクランプ面からキャリアプレートKを離して保持することにより、液状樹脂への加熱を抑制される。これにより、液状樹脂の粘度が加熱によって一時的に低下して液状樹脂が下型30に落下してしまうような事態を効果的に回避できる。また、E−WLPに用いられる粘着シートの加熱を遅らせることもでき、フライングダイの防止にも有効である。
【0036】
図11(B)は、プレス装置26が型閉じした状態を示す。ワークWは上型28と下型30とでクランプされて圧縮成形される。圧縮成形が完了するとプレス装置26が型開きする。図11(C)に示すように、下型30が下動すると、ワークWはモールド面がリリースフィルム36に覆われた下型30より離型し、かつ上型28に吸着保持されたままになる。この状態で搬送エリア11に待機する前述した多関節ロボット2のロボットハンド1を反転させてプレス装置26内へ進入させて、ワークWを掴んだまま上型28面への吸着を解除することで、ロボットハンド1に受け渡して搬出することができる。
この場合には、プレス部Cに設けたローダー32を省略して、ロボットハンド1を反転させた状態で直接型開きしたプレス装置26に進入させてワークWを上型28に吸着保持させ、成形後のワークWを上型28より受け取ってプレス装置26から取り出すことが可能になる。
【0037】
(ワーク検査部D)
次にワーク検査部Dの構成について図1を参照して説明する。図1において、ベース部39には直動レール39aが設けられている。この直動レール39aには可動ステージ40がレール長手方向に往復動可能に設けられている。可動ステージ40は例えば公知の駆動機構、ナット部がボールねじに連繋し、該ボールねじをモータにより正逆回転駆動することにより直動レール39a上を往復動するようになっている。可動ステージ40は、加熱硬化後のワークWの冷却部を兼用している。
【0038】
可動ステージ40は直動レール39の一端側であるワーク受取位置に待機している。この可動ステージ40に、プレス部Cで圧縮成形されたワークWがロボットハンド1によって載置され吸着を解除されて受け渡される。受け渡し位置にある可動ステージ40のワーク搬送機構H側には、レーザー変位計41がワークWの上下一対で設けられており、ロボットハンド1によってワークWが可動ステージ40に載置される前に該レーザー変位計41によってレーザー光を照射してワークWの厚みが計測される。制御部Gは、測定した厚みを稼働情報として記憶部47に記憶する。この場合、ワークWの厚みからキャリアプレートKの厚みを差し引くことで成形品の厚みを算出可能である。また、可動ステージ40は、直動レール39の一端側より他端側に移動する。この直動レール39の他端側の上方には外観検査部42が設けられている。外観検査部42では、成形品を一括或いは分割して撮像して外観観察によって未充填、フローマークまたはフライングダイのような成形不良がないか否かが検査される。成形の良否と不良がある場合には不良の種類や撮像画像を稼働情報として記憶部47に記憶する。検査が終了すると、ワークWを載置した可動ステージ40が受け渡し位置へ戻って、ロボットハンド1に受け渡されて、加熱硬化部Eへ搬送される。
尚、異常(想定を上回る未充填など)が検出されたときには表示部Jにその旨を通知し、装置全体の動作を止めてメンテナンスすることで、不良品が連続生産されるのを防ぐことができる。
【0039】
(加熱硬化部E)
次に加熱硬化部Eの構成について図1を参照して説明する。加熱硬化部Eにはキュア炉43が設けられており、検査後のワークWをロボットハンド1によりキュア炉43に収納してモールド樹脂を120℃から150℃程度で加熱硬化(ポストキュア)することで加熱硬化を完了させる。キュア炉43内には、対向配置されたスリット43aが高さ方向に所定ピッチで形成されこのピッチでワークWが保持されるようになっている。ワークWをキュア炉43に収納するときには、いずれかに形成されたスリット43aに沿ってワークWを挿入して保持するようになっている。
【0040】
図1においてキュア炉43の搬送エリア11を囲む側には内扉44が設けられており、装置外面側には外扉45が開閉可能に設けられている。内扉44には2段分のスリット43a位置に対応して開口部(図示せず)が各々設けられている。内扉44の内方には開閉扉46が各開口部を常時遮断するように個別に開閉可能に設けられている。また、図1に示すように、12段のスリット43aを平面視で2列備えることで、総数で24枚のワークWを並行してポストキュアすることが可能となっている。
【0041】
この場合、プレス部Cで樹脂モールドしてからポストキュアを開始するまでの時間が長くなった場合、樹脂モールド部分に反りが発生してしまうことがある。しかしながら、多関節ロボット2を用いて高さ方向にもワークWをスムーズに移動可能な構成にしたことにより、高さの異なる所望のスリット43aに対していずれも短時間で移動可能となっている。このように、搬送に要する時間が成形品質に影響のあるモールド装置では多関節ロボット2による搬送時間の短縮の効果は特に大きい。
【0042】
一つの開閉扉46を開放すると2枚分のワークWをロボットハンド1によって上下2段のスリット43aに各々挿入して保持させることができる。このように開閉扉46を個別に開閉することで開閉面積を小さくしてワークWを収納取出しすることができるので、炉内の温度の低下を防ぎ、かつ搬送エリア11側への放熱を抑制することができる。
【0043】
ワーク検査部Dにおいて検査されたワークWはロボットハンド1に吸着保持されてキュア炉43へ搬送される。キュア炉43は開閉扉46が閉塞されて所定温度に加熱されている。ワークWを挿入するときは、ロボットハンド1が内扉44に近づくと制御部Gが図示しない駆動機構を制御してスリット43aに対向する開閉扉46が開放し、ロボットハンド1が炉内に進入してワークWをスリット43aに沿って挿入する。そして、ロボットハンド1の吸着を解いてワークWをキュア炉43に受け渡してからロボットハンド1がキュア炉43から退避する。ロボットハンド1が内扉44より離れると開閉扉46を閉塞する。以上の動作が繰り返し行われる。ワークWをキュア炉43に収納してから所定時間経過すると、再度ロボットハンド1がキュア炉43内に進入して、ワークWを吸着保持したままキュア炉43より搬出し冷却部Nへ搬送するようになっている。
【0044】
(冷却部N)
冷却部Nは、ワーク検査部Dの上方における空間に、冷却用マガジン(図示せず)が設けられている。冷却用マガジン内の両側壁には、対向配置されたスリットが高さ方向に所定ピッチで形成されておりこのピッチでワークWを保持可能に構成されている。この場合、ロボットハンド1を任意の高さに移動可能な多関節ロボット2によって、所定のスリットに対してワークWを受渡し可能となっている。成形品の加熱硬化が完了したワークWはロボットハンド1により吸着保持されたまま冷却部Nのスリット(受け渡し位置)へ搬送されて吸着を解除されて受け渡される。この状態で所定時間放置することでワークWが自然冷却される。尚、冷却部Nは、ワーク検査部Dとは別個に設けることも可能であるが、ワーク検査部Dの空いているエリアを利用することで装置をコンパクトに構成することができる。
【0045】
(ワーク収納部F)
ワーク収納部Dの構成は前述したようにワーク供給部Aの構成と同様である。ロボットハンド1は、冷却部で冷却されたワークWを可動ステージ40より受け取って隣接する収納マガジン10へ搬送して収納する。
【0046】
(制御部G)
図1において、制御部Gは、CPU(中央演算処理装置)やROM、RAMなどの記憶部47を備え、前述した装置各部の動作を制御する。記憶部47には各種制御プログラムが記憶されているほかに、ワーク搬送対象候補リストや搬送順序情報やワークWに付されたコード情報が記憶されている。CPUは、ROMより必要なプログラムをRAMに読み出して実行させ、RAMを用いて入力情報を一次的に記憶させたり入力情報に応じた演算処理を行ったりして制御プログラムに基づいてコマンドを出力する。
【0047】
制御部Gには、ワーク供給部Aの稼働情報(受け渡し済みの供給マガジンスリット番号)、コード情報読取り装置16の稼働情報(レシピ情報;樹脂条件、モールド条件、キュア条件、冷却条件)、樹脂供給部Bの情報(シリンジ番号;(樹脂の種類、樹脂の解凍時刻、収容総量)、使用料(供給毎/総量)、供給開始/完了時刻)、プレス部Cの稼働情報(金型温度曲線、クランプ圧力曲線、成形厚、フィルム使用量)、キュア炉43の稼働情報(炉内温度)、ワーク検査部Dの稼働情報(フライングダイ、成形厚)、ワーク収納部Fの情報(受取済みスリットの位置)などの情報が随時入力され、各部に必要なコマンドを出力する。制御部Gは、このような稼働情報や上述した成形条件などをワークWに紐付けして記憶する。これにより、成形後のワークWについての実際の製造条件等を確認することができる。例えば成形後のワークWのキャリアプレートKの情報コードを読取ることで、成形条件と稼働情報とを確認することができ、実際の成形品と関連する情報を容易に閲覧可能としたことにより、成形条件の最適化に利用可能となっている。
尚、制御部Gはワーク搬送機構Hを囲むように配置されているが、例えばコントローラのように有線若しくは無線により遠隔操作できるものであっても良い。
【0048】
制御部Gは、最も時間がかかる工程の繰り返しサイクルに合わせて多関節ロボット2によるワーク供給動作及びワーク取り出し動作のタイミングを制御している。ちなみに各工程の最小サイクルは、所要時間を装置数で除して算出される。本実施形態では、プレス装置26における樹脂モールド工程の最小サイクルが工程間で最大となるためこれに合わせてワークWの搬入搬出のタイミングが決められている。
【0049】
ここで液状樹脂供給装置の構成について、図2乃至図8を参照して具体的に説明する。図2において、シリンジ供給部17は、保持部本体17aに回転ホルダー17bが回転可能に支持されている。シリンジ19は、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂といった熱硬化性樹脂を所定量ずつ貯留し、回転ホルダー17bの上部に設けられたフランジ部17cに周方向で6箇所に設けられた凹部17dに保持されている。また、回転ホルダー17bの下方にはシリンジ19の先端に設けられたチューブノズル19aから万一液状樹脂が漏出してもこれを受け止めるための樹脂受け部17eが設けられている。
【0050】
凹部17dに保持された各シリンジ19のチューブノズル19aに対応する位置には、ピンチバルブ17fが各々設けられている。ピンチバルブ17fは、図3(B)に示すように通常の状態ではチューブノズル19aを閉じた状態になっている。これによって、シリンジ供給部17において保持されたシリンジ19から液状樹脂が漏れ出すのを防いでいる。また、後述するディスペンスユニット18にシリンジ19を受け渡すとき、後述するピンチバルブ18fによってチューブノズル19aを閉じてから図3(A)に示すようにピンチバルブ17fを開放してシリンジ19をディスペンスユニット18に受け渡すようになっている。
【0051】
図2において、保持部本体17aの上部にはモータ20が組み付けられている。モータ20のモータ軸20aはフランジ部17cと連繋している。モータ20を起動すると、回転ホルダー17bは所定方向に60°回転して新たな交換用シリンジ19をシリンジ受け取り位置Lまで回転するようになっている。尚、前述したように、シリンジ供給部17は、一対のディスペンサユニット18により共用しているため、双方のディスペンサユニット18に供給するシリンジ19を同時に交換することができる。また、一対のディスペンサユニット18は、個別にシリンジ19を交換してもよい。
【0052】
次に、図2において、一方のディスペンスユニット18についてその構成を説明する。尚、他方のディスペンスユニット18はシリンジ供給部17を挟んで反転した配置となっている以外同様の構成要素を備えているため説明は省略する。ディスペンスユニット18は、シリンジ供給部17に対して図示しない直動機構によって接離動可能なユニット本体18aにピストン保持部18bが上下動可能に保持されている。ピストン保持部18bの上部にはピストン18cが上下動可能に設けられている。ピストン保持部18bにはピストン18cの高さ位置を検出する位置検出部が設けられ、ピストン18cにはシリンジ19内における接触を検出可能なスイッチが設けられている。これにより、ディスペンスユニット18では、装着中のシリンジ19における液状樹脂の残量を検出可能となっている。また、樹脂供給開始からのピストン18c移動量から液状樹脂の供給量も検出可能である。このような構成により、所定のシリンジ19における液状樹脂の残量が1つのワークWに対する供給量に満たないときは、そのシリンジ19を未使用のシリンジ19に交換してもよく、残量を使い切った後に交換して不足分を新たなシリンジ19から供給してもよい。
【0053】
また、ピストン保持部18bには、ピストン18cより下方にシリンジ19を受け取って保持するチャック18dが設けられている。また、チャック18dより下方には、シリンジ19やチューブノズル19aの姿勢を保持するガイド部18eが設けられている。また、チャック18dに保持された各シリンジ19のチューブノズル19aに対応する位置には、ピンチバルブ18fが各々設けられている。ピンチバルブ18fは、図3に示すシリンジ保持部17に設けられたものと同様の構成である。これによって、チャック18dに保持されたシリンジ19から液状樹脂が漏れ出し装置に付着したり供給量が変動したりするのを防ぐことができる。
【0054】
また、ユニット本体18aの近傍には捨て打ちカップ21が回転可能に設けられている。捨て打ちカップ21は、シリンジ19から液状樹脂を吐出する際に、チューブノズル19a先端側の比較的品質が劣化した液状樹脂5を吐出するため設けられている。捨て打ちカップ21は、後述するように回動機構7によってワークWに液状樹脂を吐出する前に退避位置から液材吐出位置Jへ回転移動して不要樹脂が捨て打ちされる。
【0055】
図1に示す樹脂供給部Bと搬送エリア11とは仕切り壁により仕切られており、該仕切り壁には、ロボットハンド1が進退可能な開口部を開閉するシャッター6が設けられている。このシャッター6は、一対のディスペンスユニット18とワーク搬送機構Hとを挟む位置に配置され、ワークWを出し入れするときを除いて閉止することで樹脂供給部B内を気密に保ち装置外とワーク搬送機構Hのエリアとが直接繋がって空気の移動が行われないようにしている。シャッター6を開放することによりワークWが液材吐出位置Jへ搬入される。
【0056】
図2において、液材吐出位置Jには、ワークWを載置するワーク載置部22が設けられている。ワーク載置部22にはロボットハンド1に吸着保持されたワークWの吸着が解かれて載置される。ワークWはキャリアプレートKが支持突起22aに支持される。ワーク載置部22には、重量計23が設けられており、ワークWの重さとワークWに吐出される液状樹脂の重さが計量される。液状樹脂の吐出量は、製品に応じて予め決まっており、いずれの場合にも目標値±0.3g程度の精度で吐出される。液状樹脂が吐出されたワークWは、ワーク載置部22よりロボットハンド1に吸着保持されてプレス部Cへ搬送される。
【0057】
ユニット本体18aは図示しない駆動源(モータ、シリンダ等)を起動すると液材吐出位置Jからシリンジ供給部17へ近接したシリンジ受け取り位置Lへ移動してチャック18dにシリンジ19を保持する。ユニット本体18aはシリンジ19を保持したまま液材吐出位置Jへ移動してピストン18cを図示しないシリンダやモータなどの駆動源により下動させてシリンジ19内に圧入することで液圧によりピンチバルブ18fを開放してチューブノズル19aより液状樹脂を吐出する。ピストン18cの下動が停止するとピンチバルブ18fによってチューブノズル19aが閉じるようになっている。
【0058】
以上のように構成された一対のディスペンスユニット18を併用することにより、温度管理が必要なディスペンスユニット18からワークWに対する液状樹脂の吐出動作が効率良くかつ精度良く行えるため、複数プレス部Cにおいて連続する樹脂モールド動作に追従することができ、生産効率の向上に寄与することができる。
【0059】
次に、ディスペンスユニット18によるシリンジ19の受け取りから液状樹脂の供給までの動作について図4乃至図8を参照して説明する。
図4に示すように、シリンジ供給部17にはシリンジ19が保持されている。シリンジ19のチューブノズル19aはピンチバルブ17fにより閉じられている。また、ディスペンスユニット18は、液材吐出位置Jに待機している。またピストン18cはピストン保持部18bの上方に待機した状態にある。
【0060】
次に図5に示すように、ディスペンスユニット18が図示しない直動機構により液材吐出位置Jからシリンジ受け取り位置Lまで移動する。ディスペンスユニット18のチャック18dがシリンジ19を保持しピンチバルブ18fがチューブノズル19aをクランプする。また、シリンジ供給部17のピンチバルブ17fを開放する。
【0061】
そして、図6に示すようにディスペンスユニット18の直動機構を作動させてシリンジ受け取り位置Lから液材吐出位置Jまで移動する。これにより、ディスペンスユニット18にシリンジ19を装着することができる。シリンジ19を交換する場合には、使用後のシリンジ19を元の位置に戻した後、シリンジ供給部17のモータ20を起動して回転ホルダー17bを60°回転させることにより新たなシリンジ19を供給可能になる。
【0062】
次に液状樹脂の供給動作について図7及び図8を参照して説明する。
尚、ワークWはロボットハンド1によってワーク載置部22に載置されており、シャッター6は閉じた状態にあるものとする。図7に示すように、シリンジ19が交換された後、或いは樹脂モールド動作を再開しシリンジ19より樹脂供給を開始する前には、回動機構7を作動させて回転軸7aに直交して連続する保持アーム8に保持された捨て打ちカップ21を退避位置(図9A,B参照)から液材吐出位置Jまで回転させる。そして、ピンチバルブ18fを開放しピストン18cを所定量下動させて、ディスペンスユニット18に保持されたシリンジ19のチューブノズル19a付近の液状樹脂5を捨て打ちカップ21に捨て打ちする。捨て打ちが終了すると、ピンチバルブ18fを閉じ、回動機構7を作動させて捨て打ちカップ21を液材吐出位置Jから退避位置まで回転させる。これにより、シリンジ19のチューブノズル19a付近の比較的質の悪い液状樹脂5を捨て打ちカップ21に捨ててから使用することで、液状樹脂5の品質を高品質に維持することができる。
【0063】
図8において、液状樹脂5の捨て打ちが終了すると、再度ピンチバルブ18fが開放され、ピストン18cが下動して液状樹脂5がワークW上に吐出される。ワーク載置部22に設けられた重量計23により、ワークWの重さとワークWに吐出される液状樹脂5の重さが計量される。ピストン18cの下動が停止するとピンチバルブ18fが閉じて液状樹脂5の供給が停止する。
【0064】
ここで、液状樹脂5の供給時の具体的な動作について説明する。液状樹脂5の吐出が開始されると例えば最終的な供給量の目標値の8〜9割程度といった十分に少ない量まで供給する。この際の供給量の詳細な計測値を重量計23により計量し、目標値と計測値との差として算出される供給量に対して十分に少ない量まで供給する。このように各供給において最終的な供給量に対して十分に少ない量まで供給する動作を1回以上実行する。高精度な供給を行うためにはこの動作を繰り返す必要があるが、本装置ではディスペンスユニット18が複数設けられているため、樹脂供給部Bにおける液状樹脂5の供給により装置全体のスループットを下げることなく液状樹脂5を高精度に供給することが可能となっている。続いて、最後の供給時には供給した総量が最終的な供給量となるように最後の供給時の供給量を算出して供給する。
【0065】
また、各供給時には室内が冷却されているため、シリンジ19内から吐出される液状樹脂5の粘度は高くなっている。このため、チューブノズル19aからの吐出された液状樹脂5はそのままではチューブノズル19aに吊り下がった状態となってしまうことがある。そこで、ピストン18cの移動量により検出した供給量に応じてチューブノズル19aを閉止し、ピストン保持部18bを上下動させることでチューブノズル19aからワークWの間に吊り下がった液状樹脂5を強制的に切り離してワークW側に塗布する糸きり動作を行う。この場合、シリンジ19の内外をチューブノズル19aによって閉止しているため、シリンジ19内の液状樹脂5が糸きり動作の際に外側の液状樹脂5に引き寄せられて流れ出てしまい供給量が変動することはない。したがって、冷却されて粘度が高くなった液状樹脂5であっても高精度に供給することができる。
【0066】
ワークWは、ロボットハンド1によって保持されてワーク載置部22よりプレス部Cへ搬送されて樹脂モールド動作に移行する。
【0067】
上記樹脂モールド装置を用いれば、ワークWや液状樹脂5の供給から樹脂モールドを行なって成形品を検査して良品のみを加熱硬化させて収納するまでの一連の作業をコンパクトな装置構成で効率よくしかも製品に応じた仕様で樹脂モールドが行える樹脂モールド装置を提供することができる。
【0068】
上述した樹脂モールド装置は、樹脂供給部Bにディスペンスユニット18をプレス部Cにプレス装置26を2台ずつ設けたが更に増やしてもよい。またワーク搬送機構Hに備えた多関節ロボットも1台に限らず複数台設けて、搬送エリアを分担させてワークの搬送を行うことも可能である。
また、プレス装置26は圧縮成形装置に限らずトランスファモールド装置であってもよく、減圧空間を形成してモールドを行っても良い。
【0069】
また、充填された液状樹脂5の異なる複数種類のシリンジ19をシリンジ供給部17に保持させ、選択的にディスペンスユニット18に対して受け渡す構成を採用することで複数種類の液状樹脂5を用いたモールド樹脂封止を並行して行うミックスプロダクションを行うこともできる。この場合でも、シリンジ供給部17が回転することでディスペンスユニット18のいずれに対してもシリンジ19を受け渡すことができる。このため、1つのシリンジ供給部17を一対のディスペンスユニット18で兼用でき、ミックスプロダクションを実現する構成であっても個別にシリンジ供給部を設ける必要がなく、装置をコンパクトにすることができる。
【0070】
また、1つのシリンジ供給部17に対してシリンジ19の交換作業を行なえばよい。この場合、例えば凹部17d毎に識別番号を設け、交換する際に識別番号が一致するシリンジを凹部17dにセットすることにより、交換作業を簡易にすることができると共に交換ミスも防止することができるため、例えばシリンジ保持部を樹脂の種類別に設ける構成と比較し、作業性を向上することもできる。このように、ミックスプロダクションを実現する構成であっても装置をコンパクトにすることができると共に作業性も向上することができる。
【符号の説明】
【0071】
A ワーク供給部
B 樹脂供給部
C プレス部
D ワーク検査部
E 加熱硬化部
F ワーク収納部
G 制御部
H ワーク搬送機構
I 情報読取り部
K キャリアプレート
L 表示部
M 操作部
N 冷却部
W ワーク
1 ロボットハンド
2 多関節ロボット
3,39 ベース部
4 直動ガイドレール
5 液状樹脂
6,15,25 シャッター
7 回動機構
8 保持アーム
9 供給マガジン
10 収納マガジン
11 搬送エリア
12,24 仕切り壁
16 コード情報読取り装置
16a アライナ
17 シリンジ供給部
17a 保持部本体
17b 回転ホルダー
17c フランジ部
17d 凹部
17e 樹脂受け部
17f,18f ピンチバルブ
18 ディスペンスユニット
18a ユニット本体
18b ピストン保持部
18c ピストン
18d チャック
18e ガイド部
19 シリンジ
19a チューブノズル
20 モータ
20a モータ軸
21 捨て打ちカップ
22 ワーク載置部
22a 支持突起
23 重量計
24a 開口部
26 プレス装置
28 上型
28a,30a キャビティ
28b 爪部
29 下型プラテン
30 下型
32 ローダー
35 フィルム供給装置
36 リリースフィルム
39a 直動レール
40 可動ステージ
42 外観検査部
43 キュア炉
44 内扉
45 外扉
46 開閉扉
47 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップがキャリア上に保持されたワークに液状樹脂を供給する液状樹脂供給装置であって、
シリンジに充填された液状樹脂をワークに吐出して供給するディスペンスユニットに交換用の複数のシリンジを保持したシリンジ供給部が回転可能に設けられ、ディスペンスユニットはシリンジ供給部から交換用のシリンジを受け取って液材吐出位置に保持されたワークに液状樹脂を所定量吐出して供給することを特徴とする液状樹脂供給装置。
【請求項2】
一対のディスペンスユニットの間に前記シリンジ供給部が回転可能に設けられ、各ディスペンスユニットは前記シリンジ供給部を共用して交換用のシリンジを受け取って液材吐出位置に保持されたワークに液状樹脂を所定量吐出して供給することを特徴とする請求項1記載の液状樹脂供給装置。
【請求項3】
前記シリンジ供給部には回転角で60°ごとにシリンジが保持されており、単数又は複数のディスペンスユニットは、前記シリンジ供給部のシリンジ受け取り位置と液材供給位置との間を移動可能であって、前記シリンジ受け取り位置と前記シリンジ供給部の回転中心を結ぶ角度が120°となるように配置されている請求項1又は請求項2記載の液状樹脂供給装置。
【請求項4】
前記シリンジ供給部及び前記ディスペンスユニットには、シリンジ先端に設けられたチューブノズルを開閉するピンチバルブが各々設けられている請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の液状樹脂供給装置。
【請求項5】
前記ディスペンスユニットに保持されたシリンジのチューブノズル付近の液状樹脂を捨て打ちする捨て打ちカップが前記液材供給位置と退避位置との間を移動可能に設けられている請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の液状樹脂供給装置。
【請求項6】
各ディスペンスユニットは液材供給位置においてワークに吐出された液状樹脂の吐出量が各々計量されて供給される請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の液状樹脂供給装置。
【請求項7】
ワークをロボットハンドに保持して搬送するワーク搬送機構に備えた多関節ロボットの移動範囲を囲んで前記ワーク供給部、請求項1乃至請求項6記載のいずれか1項記載の液状樹脂供給装置、前記プレス部及び前記ワーク収納部が配置されていることを特徴とする樹脂モールド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−126075(P2012−126075A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281467(P2010−281467)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000144821)アピックヤマダ株式会社 (194)
【Fターム(参考)】