説明

淡水化装置

【課題】海水などの淡水化で用いられる淡水化装置は、蒸発凝縮方式では、海水から水分を蒸発させるために多くのエネルギーを消費してしまう課題がある。本発明は消費エネルギーの少ない、純度の高い淡水化装置を提供する事を目的とする。
【解決手段】海水などの原水1を望ましくは10μm以下のサイズで噴霧できるノズル2に導入し、霧化室3内に噴霧し、霧化した原水4が吸着材5に吸着されるよう、吸着材5の後段に設けたファン6により吸い込む。霧化室3と吸着材5の間には、孔径が1μm程度の濾過フィルター7を設け、不純物や原水の粒子を除去し、濾過フィルター7を通過した水分を吸着材が吸着し、この吸着材を再生装置19によって再生することで、高湿度の水分を得、これを凝縮することで淡水を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水や泥水といった原水を淡水にするための装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
現在、地球上では人口増加、産業活動の活性化により水の需要は増加傾向にあり、水資源の安定的な供給は必要不可欠なものとなっている。しかしながら、地球上に存在する水は塩化ナトリウムを含む海水であったり、また、泥水のような飲用や生活に使用できない水が多い。そのため、これら海水や泥水を原水として淡水を作り出す淡水化装置が注目されている。また、地球環境の視点からは、地球上各地での砂漠化は深刻化しており、淡水化装置による水の供給とそれによる植物の栽培によって砂漠化の進行をストップする研究も盛んである。
【0003】
淡水化の方法としては、採取した原水を加熱して、生成した水蒸気を凝縮することにより淡水を得る、蒸発型淡水化装置や採取した原水を逆浸透膜に導き、加圧することにより淡水を得る逆浸透膜方式淡水化装置等が知られている。
【0004】
以下、その蒸発型淡水化装置について図9を参照しながら説明する。
【0005】
図に示すように、淡水化装置101はスプレーノズル102と熱交換器103からなり、タービン104等で加熱した空気105を熱交換器103に流し、それに海水106を吹きかける。熱交換器の面積が広くなることで、効率的に水分を蒸発させ、これを後に冷却用の熱交換器107で凝縮することで、淡水108を回収している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭52−110279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の技術では、例えば、蒸発型淡水化装置を用いる場合は原水を高温で加熱するために大量のエネルギーを消費するし、逆浸透膜方式の場合においても、加圧のためにエネルギーを消費するため、淡水製造にかかるエネルギーが膨大であるという課題があり、低エネルギー、省エネルギーで淡水を得られる手法が求められている。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、低エネルギー、省エネルギーで淡水を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、わずかなエネルギーのみで、淡水を取り出す方法として、原水を噴霧して外気との接触によって効率的に気化させたのち、気化水分を吸着材によって吸湿し、これを加熱等の再生手段によって、再生することで吸着材から放出する高湿空気を得、これを凝縮機で水とすることで、淡水を得る方法を開発した。これによって、原水を高温に熱したり、膜を通過させるために加圧するようなエネルギーも要求されず、少ない消費エネルギーによって原水を淡水化することが出来る。
【0009】
しかしながら、原水を気化した場合に、気化とともに原水から取り除かれた固形分は大方が沈降するが、空中に漂ったり、空気の流れによっては吸着材に引き寄せられる。そのため、吸着材の前で、このような不純物や気化しなかった原水の粒子を取り除く除去装置の設置が望まれる。その除去装置として、湿度を通しながら、粒子は通さない密度の濾過フィルターを配置し、固形分が吸着材に入らないようにする。そうすることによって、吸着材の目詰まりをなくし、装置の長寿命化ができ、より純粋な淡水が得られる。
【0010】
また、この際のフィルターは、水滴が付着することを考え、防カビ材を含んだものがより望ましい。
【0011】
また、空気を遠心状に回転させ、高湿空気より重い不純物の固形分や大きな水滴と空気とを遠心分離し、吸着材に入らないように回収する。これによって吸着材が目詰まりをなくし、装置の長寿命化ができ、また、より純粋な淡水が得られる。
【0012】
また、原水を気化した場合に、気化した空間から吸着材までに、気化した空気を一旦ためるようなトラップ空間を設けることで、重い不純物や水滴をその空間に保持し、高湿の空気のみを吸着材に導入する。これによって吸着材が目詰まりをなくし、装置の長寿命化ができ、また、より純粋な淡水が得られる。
【0013】
また、除去装置として荷電部と集塵部を設け、不純物を荷電部にて帯電し、集塵部を帯電した粒子と逆の電位にすることで、集塵部に不純物を吸着させることで、不純物を回収する。なお、集塵部には不純物が蓄積していくため、集塵部が洗浄可能であることが望ましい。
【0014】
また、除去装置として、前段の加湿部と後段の吸着部との間に、十分な長さの配管を通す。重い不純物や原水の粒子は配管下部に落下するか付着をする。これによって高湿の空気のみを吸着材に導入でき、吸着材が目詰まりをなくし、装置の長寿命化が計れ、また、より純粋な淡水が得られる。なお、この配管は取り外して洗浄可能であることが望ましい。
【0015】
なお、前述の除去装置は複数配してもよい。
【0016】
また、不純物および気化しなかった水粒子を取り除くように、請求項2乃至6のいずれかに記載の除去装置の複数を備えたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、原水を噴霧して気化させ、そのために分離し固形化した不純物や、気化しきらず残留した水滴を、重力、トラップ管、遠心分離、濾過フィルター、帯電集塵等の手段のうちいずれかひとつ、もしくは複数を組み合わせた除去装置を設けることによって取り除き、気化水分のみを吸着材に送り込んで、吸着材で吸湿し、これを加熱手段によって再生することで高湿空気を得、これを熱交換器等の凝縮機で水にすることで、低エネルギー、省エネルギーで淡水を得ることが出来る。
【0018】
また、不純物が吸着材に付着しないようにすることで、吸着材の能力の低下を防ぎ、淡水を得る能力の劣化を防ぐ効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の請求項1記載の発明は、前段に原水の霧化装置と後段に吸着材を備え、原水を霧化したうちの水分を吸着材が吸着し、この吸着材を再生装置によって再生することで、高湿度の水分を得、これを凝縮することで淡水を得られる淡水化装置において、加湿部から吸着部までの間に、噴霧によって出来る気化した水から分離した不純物や、霧化によって気化できなかった大きな原水粒子を取り除く除去装置を設置する。不純物や原水の粒子を取り除くことによって吸着材に不純物がつかず、装置や吸着材の劣化を防ぎ、また、不純物が再生装置によって濃縮され、淡水中に混ざるのを防ぎ、低エネルギー、省エネルギーで淡水を得ることが出来る。
【0020】
本発明の請求項2記載の発明は、淡水化装置の加湿部から吸着部までの間に原水中の不純物や、水蒸気まで気化しなかった水分を取り除く濾過フィルターを設置することで、吸着材に不純物がつかず、装置や吸着材の劣化を防ぎ、また、不純物が再生装置によって濃縮され、淡水中に混ざるのを防ぐことが出来る。濾過フィルターは、網目が数100μm程度でも、不純物や原水の粒子を補足できるが、望ましくは透湿のみが可能で、粒子を通さない密度のものがよい。そしてその孔径としては1μm程度のものが望ましい。
【0021】
本発明の請求項3記載の発明は、淡水化装置の加湿部から吸着部までの間に、サイクロン方式で空気を回転させ、遠心力を与えることで、重い不純物や水の粒を外周部に飛ばし、回収し、気化水分と分離することで、霧化した原水のうち完全に水蒸気にならなかった水分や、原水中の不純物を取り除くことができ、吸着材に不純物がつかず、装置や吸着材の劣化を防ぎ、また、不純物が再生装置によって濃縮され、淡水中に混ざるのを防ぐことが出来る。
【0022】
本発明の請求項4記載の発明は、淡水化装置の加湿部から吸着部までの間に、トラップ用の空間を設置する。それにより、霧化した原水のうち完全に水蒸気にならなかった水分や、原水中の不純物をトラップ空間で捕集することが出来、それにより吸着材に不純物がつかず、装置や吸着材の劣化を防ぎ、また、不純物が再生装置によって濃縮され、淡水中に混ざるのを防ぐことが出来る。
【0023】
本発明の請求項5記載の発明は、淡水化装置の加湿部から吸着部までの間に荷電部と集塵部を設け、不純物を荷電部にて帯電し、集塵部の帯電した粒子と逆の電位部位に、不純物を吸着、捕集する。それにより吸着材に不純物がつかず、装置や吸着材の劣化を防ぎ、また、不純物が再生装置によって濃縮され、淡水中に混ざるのを防ぐことが出来る。なお、この集塵部は、不純物が蓄積するので、取り外して洗浄できることが望ましい。
【0024】
本発明の請求項6記載の発明は、淡水化装置の加湿部から吸着部までの間に不純物や気化しなかった原水の粒子が沈降もしくは気化する程度に十分な長さの配管を通す。重い不純物や原水の粒子は配管下部に落下するか付着をする。これによって高湿の空気のみを吸着材に導入でき、吸着材が目詰まりをなくし、装置の長寿命化ができ、また、より純粋な淡水が得られる。なお、この配管は取り外して洗浄可能であることが望ましい。また、配管の形状としては直線より上下方向に曲がっていることで、重量のある不純物が取り除きやすくなるため、望ましい。
【0025】
本発明の請求項7記載の発明は、不純物および気化しなかった水粒子を取り除くように、請求項2乃至6のいずれかに記載の除去装置の複数を備えたことを特徴とする請求項1の淡水化装置としたものであり、上述の不純物および、原水の粒子をより確実に除去できることとなる。
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
(実施の形態1)
図1に示すように、海水などの原水1を望ましくは10μm以下のサイズで噴霧できるノズル2に導入し、霧化室3内に噴霧し、霧化した原水4が吸着材5に吸着されるよう、吸着材5の後段に設けたファン6により吸い込む。霧化室3と吸着材5の間には、孔径が1μm程度の濾過フィルター7を設け、不純物や原水の粒子を除去する。このとき、濾過フィルター7の目が大きすぎると不純物などが通過しやすくなるので、1μm程度のものが望ましい。また、折り曲げなどの加工を施すことでフィルター7の圧損を低減できる。
【0028】
なお、図2に示すように、霧化直後から、原水粒子8はその表面より蒸発気化するため、徐々に気化9していき、最終は不純物10と細かい水粒子11と水分子12(気体)に分離する。そのため、ノズル2などの霧化装置から濾過フィルター7までは出来る限り十分な距離を設けるのが望ましい。
【0029】
なお、図3に示すように、濾過フィルター13の孔径14はもや15(10μm)や霧16(10〜100μm程度)といった粒子は不純物を十分に溶かして持っているため、通過は望ましくなく、1μm以下のフィルタが良い。また水分子17が透湿するためにも1μm程度が必要になるため、濾過フィルター13の孔径が1μm程度が望ましい。
【0030】
そして、水分を吸った吸着材は回転手段18などにより回転し加熱装置などの再生装置19によって再生され、高湿空気となって熱交換器20に導入され、冷やされ凝縮することで、淡水21となり、重力で流され、タンク22に回収され、低エネルギー、省エネルギーで淡水を得ることとなる。
【0031】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態1と同一部分は同一番号を付し、詳細な説明は省略する。実施の形態1では除去装置として濾過フィルター7を用いたが、図4に示すように霧化室3と吸着材5の間には空気を回転させるサイクロン装置23を設けることで、空気に遠心力をあたえ、水分子より重い不純物や、大きな水の粒子を分離することができ、水分を含んだ空気のみを吸着材5に導入することが出来る。
【0032】
(実施の形態3)
実施の形態1では除去装置として濾過フィルター7を用いたが、図5に示すように霧化室3と吸着材5の間に、空気のトラップ装置24を設けることで水分を含んだ空気のみを吸着材5に導入することが出来る。
【0033】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態1または2と同一部分は同一番号を付し、詳細な説明は省略する。実施の形態1では除去装置として濾過フィルター7を用いたが、図6および7に示すように霧化室3と吸着材5の間に、荷電部25と集塵部26を設け、不純物27を荷電部25にて帯電し、集塵部26の帯電した粒子と逆の電位部位に不純物を吸着、捕集する。これにより、水分を含んだ空気のみを吸着材5に導入することが出来る。
【0034】
このとき水分子28は荷電部25でほとんど電荷を受け取らないため集塵部26に集まらない。ただし、高湿度過ぎる場合、集塵部、荷電部の結露による濡れが電気のショートを起こす可能性があるので、加湿しすぎない制御が必要である。
【0035】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態1乃至3のいずれかと同一部分は同一番号を付し、詳細な説明は省略する。実施の形態1では除去装置として濾過フィルター7を用いたが、図8に示すように、霧化室3と吸着材5の間をつなぐダクト29を長く、また曲げて設け、重力により不純物が吸着材まで届かないような十分の距離を設けることで水分を含んだ空気のみを吸着材5に導入することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0036】
海水や泥水などから、少ないエネルギーで淡水を回収できる装置を提供でき、従来のものより低エネルギーで淡水を提供できる。また、吸着材に不純物が入らないためより純水に近く、かつ能力劣化の少ない淡水化装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1の淡水化装置を示す概略図
【図2】同噴霧から気化までの概略図
【図3】同濾過フィルターと水粒子の大きさの関係を示す概略図
【図4】本発明の実施の形態2の淡水化装置を示す概略図
【図5】本発明の実施の形態3の淡水化装置を示す概略図
【図6】本発明の実施の形態4の淡水化装置を示す概略図
【図7】同不純物の捕集の様子を示す概略図
【図8】本発明の実施の形態5の淡水化装置を示す概略図
【図9】従来の淡水化装置の例を示す概略図
【符号の説明】
【0038】
1 原水
2 ノズル
3 霧化室
4 原水(霧化)
5 吸着材
6 ファン
7 濾過フィルター
8 原水粒子(噴霧後)
9 気化
10 不純物
11 水粒子(微細)
12 水分子(気体)
13 濾過フィルター
14 孔径(1μm)
15 もや(10μm)
16 霧(10〜100μm)
17 水分子
18 回転手段
19 再生装置
20 熱交換器
21 淡水
22 タンク
23 サイクロン装置
24 トラップ装置
25 荷電部
26 集塵部
27 不純物
28 水分子
29 ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前段に原水の霧化装置による加湿部と中段に霧化した原水中の不純物および原水の霧化分のうち気化しなかった水粒子のすべてもしくは一部を取り除く除去装置と後段に吸着材を備える吸着部を有し、前段で加湿された空気中の水分を後段の吸着材で吸着し、この吸着材を再生装置によって再生することで、高湿度の水分を得、これを凝縮することで淡水を得ることを特徴とする淡水化装置。
【請求項2】
除去装置が湿分のみが通過でき、粒子が通らないサイズの孔径を持つ濾過フィルターであることを特徴とする請求項1に記載の淡水化装置。
【請求項3】
除去装置が、回転によって空気に遠心力をかけ、水蒸気のみを吸着材に導入することを特徴とした請求項1に記載の淡水化装置。
【請求項4】
除去装置が前段と中段の間に設けられたトラップ室であることを特徴とする請求項1記載の淡水化装置。
【請求項5】
除去装置として中段に荷電部と集塵部を設け、除去装置に入る不純物を荷電部にて帯電し、集塵部を帯電した粒子と逆の電位にすることで、集塵部に不純物を吸着させることを特徴とする請求項1記載の淡水化装置。
【請求項6】
除去装置として、前段の加湿部と後段の吸着部とを離し、この二つを通気口で結んだ構成で不純物を除去することを特徴とした請求項1記載の淡水化装置。
【請求項7】
不純物および気化しなかった水粒子を取り除くように、請求項2乃至6のいずれかに記載の除去装置の複数を備えたことを特徴とする請求項1の淡水化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−245014(P2007−245014A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72344(P2006−72344)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】