説明

減速機構付モータ

【課題】接点の早期摩耗を抑制しつつ接点に酸化被膜が形成されるのを抑制し、長期に亘り初期性能を維持する。
【解決手段】ウォームホイール34の径方向に向けて弾性変形可能な第1導電部材56を設け、第1導電部材56に、ウォームホイール34の径方向から環状凸部34b,第1部分凸部34c,第2部分凸部34dに摺接し、第1導電部材56を弾性変形させる摺接駒56aを設け、第1導電部材56の弾性変形により第1導電部材56の第1接点部56b,第2接点部56cが摺接し、モータ部をオンオフさせる第2導電部材57,第3導電部材58を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸を有するモータ部と、回転軸の回転を減速する減速機構を有するギヤ部とを備えた減速機構付モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両に搭載されるワイパ装置の駆動源として、減速機構を備えたワイパモータ(減速機構付モータ)を用いている。ワイパモータは、小型でありながら高出力が可能であり、これによりエンジンルームやバックドア等の限られた搭載スペースに設置することができる。ワイパモータには、減速機構に加えて、ワイパブレードをウィンドシールド上の所定の停止位置(例えば下反転位置等)で停止させる装置、所謂、自動定位置停止装置を内蔵したものがある。この自動定位置停止装置は、例えば、操作者によりワイパスイッチがオフ操作されたときに、ワイパブレードがウィンドシールド上の上反転位置にある場合であっても、ワイパブレードを継続して作動させ、ワイパブレードを所定の停止位置にまで作動させるものである。
【0003】
このような自動定位置停止装置を内蔵したワイパモータとしては、例えば、特許文献1および特許文献2に記載された技術が知られている。
【0004】
特許文献1に記載されたワイパモータ(モータ装置)は、自動定位置停止装置を、減速機構を形成するウォームホイールの軸方向一側面に装着した薄膜状の可動導電プレートと、ウォームホイールの回転運動に伴い可動導電プレート上を摺接する3つのコンタクトプレートとから形成している。そして、ウォームホイールの回転運動に伴い回転する可動導電プレートにより、各コンタクトプレートの短絡状態が切り換えられて自動定位置停止制御が行われる。このように、特許文献1に記載のワイパモータは、ウォームホイールが回転運動している間に、各コンタクトプレートが可動導電プレートに対して常時摺接する「常時摺接タイプ」の自動定位置停止装置を採用している。
【0005】
特許文献2に記載されたワイパモータ(減速機構付モータ)は、自動定位置停止装置を、減速機構を形成するウォームホイールの軸方向一側面に一体に形成された複数の凸部と、導電体よりなるギヤケースに一体に設けた3つのコンタクトプレートとから形成している。そして、ウォームホイールの回転運動に伴い各凸部がそれぞれのタイミングで各コンタクトプレートを押し上げて、各コンタクトプレートをギヤケースに接触させる。これにより、各コンタクトプレートの短絡状態が切り換えられて自動定位置停止制御が行われる。このように、特許文献2に記載のワイパモータは、ウォームホイールの回転運動に伴い回転する各凸部により、各コンタクトプレートをギヤケースに接触させる「非摺動タイプ」の自動定位置停止装置を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−236995号公報(図1)
【特許文献2】特開2007−215337号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された「常時摺動タイプ」の自動定位置停止装置によれば、可動導電プレートおよび各コンタクトプレートが早期に磨耗して導通不良を引き起こし、ひいてはチャタリング現象等が発生してワイパ装置の初期性能を長期に亘り維持することが難しい。また、可動導電プレートと各コンタクトプレートとが摺動により摩耗し、摺動面積が拡大することで摺動抵抗が増加する。これにより、各コンタクトプレートに自励振動が起こり異音が発生してしまう。さらに、上述の特許文献2に記載された「非摺動タイプ」の自動定位置停止装置によれば、各コンタクトプレートとギヤケースとの接点に酸化皮膜が発生した場合には、その酸化皮膜を取り除くことができずに導通不良を引き起こし、ひいてはチャタリング現象等が発生してワイパ装置の初期性能を長期に亘り維持することが難しい。
【0008】
本発明の目的は、接点の早期摩耗を抑制しつつ接点に酸化被膜が形成されるのを抑制でき、長期に亘り初期性能を維持することが可能な減速機構付モータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の減速機構付モータは、回転軸を有するモータ部と、前記回転軸の回転を減速する減速機構を有するギヤ部とを備えた減速機構付モータであって、前記回転軸の一端側に設けられ、前記減速機構を形成するウォームと、前記ウォームと噛み合わされ、前記減速機構を形成するウォームホイールと、前記ウォームホイールの軸方向一側面に設けられ、前記ウォームホイールの軸方向に突出する環状凸部と、前記環状凸部の径方向外側に設けられ、前記環状凸部から径方向外側に部分的に突出する部分凸部と、前記ウォームホイールの径方向外側に設けられるホルダ部材と、前記ホルダ部材に設けられ、前記ウォームホイールの径方向に向けて弾性変形可能なスイッチング導電部材と、前記スイッチング導電部材に設けられ、前記ウォームホイールの径方向から前記環状凸部および前記部分凸部に摺接し、前記スイッチング導電部材を弾性変形させる摺接部材と、前記ホルダ部材に設けられ、前記スイッチング導電部材の弾性変形により前記スイッチング導電部材が摺接し、前記電動モータをオンオフさせる固定導電部材とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の減速機構付モータは、前記環状凸部と前記部分凸部との間に、前記摺接部材の摺接をスムーズにする案内傾斜部を設けることを特徴とする。
【0011】
本発明の減速機構付モータは、前記固定導電部材を前記スイッチング導電部材の摺接方向に複数ずらして設け、前記部分凸部を前記環状凸部から突出高さを異ならせて複数設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の減速機構付モータによれば、ウォームホイールの径方向に向けて弾性変形可能なスイッチング導電部材を設け、スイッチング導電部材に、ウォームホイールの径方向から環状凸部および部分凸部に摺接し、スイッチング導電部材を弾性変形させる摺接部材を設け、スイッチング導電部材の弾性変形によりスイッチング導電部材が摺接し、電動モータをオンオフさせる固定導電部材を設ける。これにより、ウォームホイールの径方向から摺接部材が環状凸部および部分凸部に摺接してスイッチング導電部材が弾性変形し、スイッチング導電部材を固定導電部材に摺接させることができる。よって、従前の「常時摺接タイプ」に比して接点の早期摩耗を抑制できる。また、スイッチング導電部材と固定導電部材との摩擦により起こる摺動面積の拡大を抑制できるので、摺動抵抗の増大による各導電部材の自励振動を防止して、それに伴う異音の発生を抑制することができる。さらに、スイッチング導電部材および固定導電部材は摺接により短絡するので、必要最小限の摺接を確保して酸化被膜を除去するためのワイピング効果が得られる。これにより、接点に酸化被膜が形成されるのを抑制して、従前の「非摺接タイプ」に比してチャタリング現象等の発生を確実に防止できる。したがって、減速機構付モータの初期性能を長期に亘り維持することができる。
【0013】
本発明の減速機構付モータによれば、環状凸部と部分凸部との間に、摺接部材の摺接をスムーズにする案内傾斜部を設けるので、摺接部材を環状凸部から部分凸部へ略抵抗無く案内することができ、ウォームホイールの回転抵抗が増大するのを抑制できる。
【0014】
本発明の減速機構付モータによれば、固定導電部材をスイッチング導電部材の摺接方向に複数ずらして設け、部分凸部を環状凸部から突出高さを異ならせて複数設けるので、スイッチング導電部材と固定導電部材との短絡状態のパターンを複数形成することができる。よって、電動モータのオンオフのパターンを種々設定することができ、種々のニーズに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係るワイパモータを説明する説明図である。
【図2】図1のワイパモータのウォームホイールの詳細構造を示す斜視図である。
【図3】図1のワイパモータのコネクタユニットの詳細構造を示す斜視図である。
【図4】自動定位置停止装置の第1動作状態を説明する部分拡大図である。
【図5】自動定位置停止装置の第2動作状態を説明する部分拡大図である。
【図6】自動定位置停止装置の第3動作状態を説明する部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態に係る減速機構付モータついて、図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施の形態に係るワイパモータを説明する説明図を、図2は図1のワイパモータのウォームホイールの詳細構造を示す斜視図を、図3は図1のワイパモータのコネクタユニットの詳細構造を示す斜視図をそれぞれ表している。
【0018】
図1に示すワイパモータ10は、自動車等の車両におけるリヤウィンドシールドを払拭するリヤワイパ装置(図示せず)の駆動源として用いられるものである。ワイパモータ10は、電動モータであるモータ部20と、減速機構32および運動変換機構33を収容するギヤ部30とを備え、ワイパモータ10は本発明における減速機構付モータを構成している。
【0019】
モータ部20は、鋼板をプレス加工(深絞り加工)することにより有底筒状に形成されたヨーク21を備えている。ヨーク21の内部には、断面が略円弧形状に形成された一対の永久磁石22が対向するよう配置されている。各永久磁石22の内側には、外周部分にコイル(図示せず)が巻装されたアーマチュア23が、所定の隙間(エアギャップ)を介して回転自在に設けられている。アーマチュア23の回転中心には、アーマチュア軸(回転軸)24が貫通して固定され、アーマチュア軸24の軸方向一端側(図中右側)は、ギヤ部30を形成するギヤケース31の内部にまで延ばされ、アーマチュア軸24の軸方向他端側(図中左側)は、ヨーク21の底部に回転自在に支持されている。
【0020】
アーマチュア軸24の軸方向一端側には、減速機構32を形成するウォーム25が一体に設けられ、ウォーム25は、ギヤケース31内に回転自在に収容されている。アーマチュア軸24の軸方向略中央部分で、かつアーマチュア23寄りの部分には、アーマチュア23に巻装されたコイルに電気的に接続されたコンミテータ26が固定されている。コンミテータ26の外周には、複数(図示では2つのみ示す)のブラシ27が摺接するようになっており、これによりコネクタユニット51を介してコイルに駆動電流が供給され、アーマチュア23は所定の回転速度および回転トルクで回転駆動される。
【0021】
ギヤ部30は、溶融したアルミ材料等を鋳造成形することによりバスタブ状に形成された有底のギヤケース31を備えている。ギヤケース31の開口部分(図中手前側)は、ギヤケース31内に雨水や埃等が進入するのを防止するケースカバー(図示せず)により閉塞される。これにより、ギヤケース31内に収容した減速機構32および運動変換機構33に塗布したグリスの劣化やグリス切れ等を防止できる。
【0022】
減速機構32は、アーマチュア軸24に設けたウォーム25と、ギヤケース31内に回動自在に収容されたウォームホイール34とから構成されている。ウォームホイール34の外周部分にはギヤ歯34aが形成され、当該ギヤ歯34aはウォーム25に噛み合わされている。これにより、ウォーム25の回転数、つまりアーマチュア軸24の回転数は所定の回転数にまで減速され、ウォームホイール34からは高トルク化された回転力が出力される。
【0023】
運動変換機構33は、ウォームホイール34の回転運動を揺動運動に変換して出力するものであり、動力変換部材35とピニオンギヤ36とを備えている。動力変換部材35の一端側は、第1連結軸37を介してウォームホイール34に回動自在に連結され、動力変換部材35の他端側には、略扇形のセクタギヤ38が設けられている。第1連結軸37は、ウォームホイール34の回転軸C1からオフセットした位置に設けられ、これにより動力変換部材35の一端側は、ウォームホイール34の回転に伴い回転軸C1の周囲を回転するようになっている。
【0024】
セクタギヤ38はピニオンギヤ36と噛み合わされている。ピニオンギヤ36の回転中心には、出力軸39の基端部が固定され、当該出力軸39の先端部はギヤケース31の外部に延出されている。出力軸39の先端部には、リヤワイパ装置を形成するワイパアームの基端部(図示せず)が固定されている。
【0025】
セクタギヤ38の回転中心には第2連結軸40が設けられ、第2連結軸40と出力軸39との間には、連結板41が設けられている。連結板41は、第2連結軸40と出力軸39との間の距離を一定に保持、つまりセクタギヤ38とピニオンギヤ36との噛み合いを保持するものである。
【0026】
第2連結軸40および出力軸39には、ポリアセタール等の合成樹脂素材により形成されたキャップ部材42がそれぞれ装着され、各キャップ部材42は、ケースカバーに摺接するようになっている。これにより、運動変換機構33のギヤケース31内でのスムーズな動作を保証している。
【0027】
ここで、減速機構32および運動変換機構33の動作について説明する。車室内等に設けられたワイパスイッチ(図示せず)をオン操作すると、矢印R1の方向にアーマチュア軸24が回転する。すると、ウォーム25が回転してこれに伴いウォームホイール34が矢印R2の方向に回転する。アーマチュア軸24の回転は、減速機構32により減速されて高トルク化され、動力変換部材35に伝達される。そして、動力変換部材35がギヤケース31内で揺動運動してセクタギヤ38が揺動し、セクタギヤ38に噛み合うピニオンギヤ36が矢印Sのように揺動する。これにより、出力軸39を介してワイパアームに取り付けたワイパブレード(図示せず)が、リヤウィンドシールド上の所定の払拭範囲を往復払拭動作する。
【0028】
ワイパモータ10は、ワイパアームをリヤウィンドシールド上の所定の停止位置(例えば下反転位置)に停止させるための自動定位置停止装置50を備えている。自動定位置停止装置50は、ウォームホイール34に設けた環状凸部34b,第1部分凸部34c,第2部分凸部34dと、コネクタユニット51に設けたスイッチ機構部52とから構成されている。
【0029】
図1および図2に示すように、ウォームホイール34の軸方向一側面、つまりギヤケース31の底部側と対向する面には、ウォームホイール34の軸方向に突出するよう環状凸部34bが一体に設けられている。環状凸部34bの径方向外側には、環状凸部34bから径方向外側に部分的に突出した第1部分凸部34cと、第1部分凸部34cよりも径方向外側への突出高さが高く設定された第2部分凸部34dとが一体に設けられている。つまり、第1部分凸部34cおよび第2部分凸部34dは、環状凸部34bに対してそれぞれ突出高さを異ならせて設けられている。
【0030】
ここで、ウォームホイール34は、溶融したプラスチック等の樹脂材料を射出成形することで所定形状に形成され、環状凸部34b,第1部分凸部34cおよび第2部分凸部34dは、いずれもウォームホイール34を射出成形する際に一体に形成される。環状凸部34b,第1部分凸部34cおよび第2部分凸部34dは、ウォームホイール34の軸方向に対して、いずれも同じ突出高さに設定されている。
【0031】
環状凸部34b,第1部分凸部34cおよび第2部分凸部34dは、ウォームホイール34の周方向に沿って、それぞれ傾斜面(案内傾斜部)SPを介して接続されている。つまり、環状凸部34bと第1部分凸部34cとの間,第1部分凸部34cと第2部分凸部34dとの間,第2部分凸部34dと環状凸部34bとの間には、傾斜面SPがそれぞれ設けられている。環状凸部34b,第1部分凸部34cおよび第2部分凸部34dには、径方向外側からスイッチ機構部52の摺接駒56a(図3参照)が摺接するようになっており、各傾斜面SPは、例えば環状凸部34bから第1部分凸部34cへの摺接駒56aの乗り上げ(摺接)をスムーズに案内する役割を果たしている。
【0032】
ギヤケース31のヨーク21側には、図1に示すように、コネクタ収容部31aが一体に設けられ、当該コネクタ収容部31aには、図3に示すコネクタユニット51が収容されている。コネクタユニット51は、コネクタ接続部53,コネクタ本体部54およびスイッチ機構部52を備えている。
【0033】
コネクタユニット51は、溶融したプラスチック等の樹脂材料を射出成形することにより所定形状に形成され、コネクタユニット51には、複数の導電部材ET1がインサート成形や嵌め込みにより装着されている。コネクタ接続部53は、コネクタ収容部31aの外部に設けられ、コネクタ接続部53には、バッテリ(電源)やワイパスイッチ等に電気的に接続された車両側の給電コネクタ(図示せず)が接続されるようになっている。
【0034】
コネクタ本体部54には、チョークコイルやコンデンサ等の複数の電子部品EPが装着され、これらの電子部品EPは、モータ部20の各ブラシ27(図1参照)から発生するブラシノイズがワイパモータ10の外部に放射されるのを防止するようになっている。コネクタ本体部54には貫通孔54aが設けられ、当該貫通孔54aには、ワイパモータ10を組み立てた状態のもとで、軸心C2を中心に回転するアーマチュア軸24の軸方向一端側(ウォーム25側)が貫通するようになっている。また、コネクタ本体部54のヨーク21側(図中上側)からは、一対の給電ターミナルET2が延出されており、各給電ターミナルET2は、ヨーク21の開口部分に装着されたブラシホルダ(図示せず)に電気的に接続されるようになっている。これにより、各ブラシ27に駆動電流を供給することができる。
【0035】
スイッチ機構部52は、コネクタ本体部54に一体に設けられたホルダ部材55を備えている。ホルダ部材55は、ワイパモータ10を組み立てた状態のもとで、ウォームホイール34の径方向外側に配置されるようになっている。ホルダ部材55は、断面が略U字形状に形成され、ホルダ部材55の内側には、第1導電部材56,第2導電部材57および第3導電部材58が固定されている。各導電部材56〜58の基端側は、コネクタユニット51に設けられた各導電部材ET1に、所定の電気回路を形成するよう電気的に接続されている。ここで、第1導電部材56は本発明におけるスイッチング導電部材を構成し、第2導電部材57および第3導電部材58は本発明における固定導電部材を構成している。
【0036】
第1導電部材56は、黄銅等よりなる導電板を打ち抜き加工した後に、断面が略U字形状となるよう屈曲して形成されている。第1導電部材56の基端側は、ホルダ部材55の短手方向一側(図中左側)に固定され、第1導電部材56は、屈曲部Aを基準に、ホルダ部材55に対してウォームホイール34の径方向(矢印M方向)に向けて弾性変形可能となっている。
【0037】
第1導電部材56の略中央部分には、プラスチック等よりなる略円筒状の摺接駒(摺接部材)56aが取り付けられている。摺接駒56aは、ワイパモータ10を組み立てた状態のもとで、ウォームホイール34に設けた環状凸部34b,第1部分凸部34cおよび第2部分凸部34dに対して、径方向外側から摺接するようになっている。つまり摺接駒56aは、環状凸部34b,第1部分凸部34c,第2部分凸部34dの径方向外側の形状に倣って摺接してウォームホイール34の径方向に移動し、これに伴い第1導電部材56を弾性変形させるようになっている。ここで、第1導電部材56は、摺接駒56aを環状凸部34b,第1部分凸部34cおよび第2部分凸部34dに対して所定の押圧力で押圧するようバネ性を持っている。
【0038】
第1導電部材56の先端側には、第1接点部(接点)56bおよび第2接点部(接点)56cが設けられている。第1接点部56bは摺接駒56a寄りに設けられ、ホルダ部材55の長手方向一側(ウォームホイール34側)に配置されている。第2接点部56cは第1接点部56bよりも先端側に設けられ、ホルダ部材55の長手方向略中央部分に配置されている。第1接点部56bおよび第2接点部56cは、摺接駒56aのウォームホイール34の径方向への移動に伴う第1導電部材56の弾性変形により、ホルダ部材55の長手方向に沿って移動するようになっている。
【0039】
ホルダ部材55の短手方向に沿う略中央部分には、黄銅等よりなる導電板を打ち抜き加工することにより長尺状に形成した第2導電部材57が固定されている。第2導電部材57の先端側は、ホルダ部材55の長手方向一側にまで延ばされており、第2導電部材57の先端側には、第1導電部材56の第1接点部56bが摺接して電気的に接続可能となっている。
【0040】
ホルダ部材55の短手方向他側(図中右側)には、黄銅等よりなる導電板を打ち抜き加工することにより長尺状に形成した第3導電部材58が固定されている。第3導電部材58は第2導電部材57よりも短い長さ寸法に設定され、第3導電部材58の先端側は、ホルダ部材55の長手方向略中央部分にまで延びている。第3導電部材58の先端側には、第1導電部材56の第2接点部56cが摺接して電気的に接続可能となっている。つまり、第2導電部材57および第3導電部材58は、ホルダ部材55に対して第1導電部材56の摺接方向にそれぞれずらして設けられている。
【0041】
ここで、スイッチ機構部52は、ワイパモータ10のモータ部20をオンオフさせるスイッチとして機能し、スイッチ機構部52のスイッチングパターンは、以下のようになっている。
【0042】
摺接駒56aが環状凸部34b上を摺接している場合には、第1導電部材56の第1接点部56bが第2導電部材57と電気的に接続されて「モータ駆動」状態(オン状態)となる。摺接駒56aが第1部分凸部34c上を摺接している場合には、第1導電部材56の第1接点部56bおよび第2接点部56cが、第2導電部材57および第3導電部材58のいずれにも非接続の状態となり、「モータ停止」状態(オフ状態)となる。摺接駒56aが第2部分凸部34d上を摺接している場合には、第1導電部材56の第2接点部56cが第3導電部材58と電気的に接続されて「閉回路形成」状態(発電制動状態)となる。
【0043】
次に、以上のように形成した一実施の形態に係るワイパモータ10の動作について、図面を用いて詳細に説明する。
【0044】
図4は自動定位置停止装置の第1動作状態を説明する部分拡大図を、図5は自動定位置停止装置の第2動作状態を説明する部分拡大図を、図6は自動定位置停止装置の第3動作状態を説明する部分拡大図をそれぞれ表している。なお、図示においては、各導電部材56〜58の電気的な接続を分かり易くするために、第1導電部材56に網掛けを付すとともに、第1導電部材56と電気的に接続状態にある第2導電部材57および第3導電部材58にも網掛けを付している。
【0045】
[第1動作状態]
リヤウィンドシールドを払拭するために、操作者によりワイパスイッチをオン操作すると、車両側の給電コネクタから各ブラシ27を介してアーマチュア23(モータ部20)に駆動電流が供給され、アーマチュア軸24およびウォーム25が回転する。これに伴い、図中矢印Rの方向にウォームホイール34が減速しつつ回転し、高トルク化された回転力が運動変換機構33を介して出力軸39に伝達される。そして、出力軸39が揺動することにより、ワイパブレードがリヤウィンドシールド上を上反転位置と下反転位置との間(払拭範囲)で往復払拭動作する。
【0046】
このとき、第1導電部材56に取り付けた摺接駒56aは、ウォームホイール34に対して図4中矢印(1)の方向に相対移動し、環状凸部34bから傾斜面SPを介して第1部分凸部34cおよび第2部分凸部34dに乗り上げてそれぞれに摺接する。ここで、ワイパスイッチはオン状態にあることから、摺接駒56aのウォームホイール34の径方向への移動に関わらずモータ部20には駆動電流が供給され続け、ワイパモータ10は継続して動作する。
【0047】
[第2作動状態]
ワイパモータ10の作動を停止させるために、操作者によりワイパスイッチをオフ操作し、当該オフ操作の時点で、第1接点部56bが第2導電部材57に電気的に接続されている場合(図4参照)には、第1導電部材56と第2導電部材57との電気的な接続によりモータ部20に駆動電流が供給され、ワイパモータ10の動作が継続される。その後、図5中矢印(2)に示すように、摺接駒56aが傾斜面SPを介して第1部分凸部34cを乗り上げると、第1導電部材56が弾性変形し、第1接点部56bおよび第2接点部56cが矢印(3)の方向に移動する。すると、第1接点部56bが第2導電部材57上を摺動して第2導電部材57上から外れて、第1導電部材56と第2導電部材57との電気的な接続が解除される。これにより、モータ部20への駆動電流の供給が遮断されて、ワイパモータ10の動作が停止する。
【0048】
[第3作動状態]
モータ部20への駆動電流の供給が遮断され、ワイパモータ10の動作が停止した後は、アーマチュア23やアーマチュア軸24等の慣性力によりウォームホイール34は回転し続ける。そして、図6中矢印(4)に示すように、摺接駒56aが傾斜面SPを介して第2部分凸部34dを乗り上げると、第1導電部材56がさらに弾性変形し、第1接点部56bおよび第2接点部56cが矢印(5)の方向に移動する。すると、第2接点部56cが第3導電部材58上を摺動して、第1導電部材56と第3導電部材58とが電気的に接続されるようになる。これにより、ワイパモータ10の駆動回路は閉回路とされてモータ部20には発電制動力が発生する。この発電制動力によりモータ部20は、第1導電部材56と第3導電部材58とが電気的に接続たれた状態(図6参照)で停止され、ワイパブレードをリヤウィンドシールド上の所定の停止位置(例えば下反転位置)に停止させることができる。
【0049】
以上詳述したように、本実施の形態に係るワイパモータ10によれば、ウォームホイール34の径方向に向けて弾性変形可能な第1導電部材56を設け、第1導電部材56に、ウォームホイール34の径方向から環状凸部34b,第1部分凸部34c,第2部分凸部34dに摺接し、第1導電部材56を弾性変形させる摺接駒56aを設け、第1導電部材56の弾性変形により第1導電部材56の第1接点部56b,第2接点部56cが摺接し、モータ部20をオンオフさせる第2導電部材57,第3導電部材58を設けた。
【0050】
これにより、ウォームホイール34の径方向から摺接駒56aが環状凸部34b,第1部分凸部34c,第2部分凸部34dに摺接して第1導電部材56が弾性変形し、第1導電部材56の第1接点部56b,第2接点部56cを第2導電部材57,第3導電部材58に摺接させることができる。よって、従前の「常時摺接タイプ」に比して接点の早期摩耗を抑制できる。また、第1導電部材56と第2導電部材57,第3導電部材58との摩擦により起こる摺動面積の拡大を抑制できるので、摺動抵抗の増大による各導電部材56,57,58の自励振動を防止して、それに伴う異音の発生を抑制することができる。さらに、第1導電部材56,第2導電部材57,第3導電部材58は摺接により短絡するので、必要最小限の摺接を確保して酸化被膜を除去するためのワイピング効果が得られる。これにより、接点に酸化被膜が形成されるのを抑制して、従前の「非摺接タイプ」に比してチャタリング現象等の発生を確実に防止できる。したがって、ワイパモータ10の初期性能を長期に亘り維持することができる。
【0051】
また、本実施の形態に係るワイパモータ10によれば、環状凸部34b,第1部分凸部34c,第2部分凸部34d間に、摺接駒56aの摺接をスムーズにする傾斜面SPを設けたので、摺接駒56aを、環状凸部34bから第1部分凸部34c(第1部分凸部34cから第2部分凸部34d)へ略抵抗無く案内することができ、ウォームホイール34の回転抵抗が増大するのを抑制できる。
【0052】
さらに、本実施の形態に係るワイパモータ10によれば、第2導電部材57と第3導電部材58とを第1導電部材56の摺接方向にずらして設け、第1部分凸部34cと第2部分凸部34dとを環状凸部34bから突出高さを異ならせて設けたので、第1導電部材56の第2導電部材57および第3導電部材58への短絡状態のパターンを2通り(「モータ停止」,「閉回路形成」)形成できる。よって、モータ部20のオンオフのパターン(制御パターン)を種々設定して、種々のニーズに対応することができる。
【0053】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、本発明に係る固定導電部材と部分凸部とをそれぞれ2つずつ対応させて設け、「モータ駆動」,「モータ停止」,「閉回路形成」の状態にできるようにしたものを示したが、本発明はこれに限らず、固定導電部材と部分凸部とをそれぞれ1つずつ設け、「モータ駆動」,「モータ停止」の状態にできるようにしても良い。さらには、固定導電部材と部分凸部とをそれぞれ3つずつ対応させて設け、ワイパモータ10を他の状態にできるようにしても良い。要は、ワイパモータ10に必要とされる機能に応じて、固定導電部材と部分凸部とを任意数設ければ良い。
【0054】
また、上記実施の形態においては、本発明に係る案内傾斜部として、環状凸部34b,第1部分凸部34c,第2部分凸部34d間に、平面形状(平坦状)の傾斜面SPを設けたものを示したが、本発明はこれに限らず、摺接駒56aの摺接をスムーズにできる形状であれば、断面が凹円弧形状の傾斜面や凸円弧形状の傾斜面等を設けることもできる。
【0055】
さらに、上記実施の形態においては、ワイパモータ10を、リヤウィンドガラスを払拭するリヤワイパ装置に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、運転席側および助手席側に設けられる複数のワイパアームを、リンク機構を介して駆動するフロントワイパ装置にも適用することができる。なお、ワイパ装置の形式(例えば、タンデム型やオーバーラップ型等)は問わないものである。
【符号の説明】
【0056】
10 ワイパモータ(減速機構付モータ)
20 モータ部
21 ヨーク
22 永久磁石
23 アーマチュア
24 アーマチュア軸(回転軸)
25 ウォーム(減速機構)
26 コンミテータ
27 ブラシ
30 ギヤ部
31 ギヤケース
31a コネクタ収容部
32 減速機構
33 運動変換機構
34 ウォームホイール(減速機構)
34a ギヤ歯
34b 環状凸部
34c 第1部分凸部(部分凸部)
34d 第2部分凸部(部分凸部)
35 動力変換部材(運動変換機構)
36 ピニオンギヤ(運動変換機構)
37 第1連結軸
38 セクタギヤ
39 出力軸
40 第2連結軸
41 連結板
42 キャップ部材
50 自動定位置停止装置
51 コネクタユニット
52 スイッチ機構部
53 コネクタ接続部
54 コネクタ本体部
54a 貫通孔
55 ホルダ部材
56 第1導電部材(スイッチング導電部材)
56a 摺接駒(摺接部材)
56b 第1接点部(接点)
56c 第2接点部(接点)
57 第2導電部材(固定導電部材)
58 第3導電部材(固定導電部材)
A 屈曲部
EP 電子部品
ET1 導電部材
ET2 給電ターミナル
SP 傾斜面(案内傾斜部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するモータ部と、前記回転軸の回転を減速する減速機構を有するギヤ部とを備えた減速機構付モータであって、
前記回転軸の一端側に設けられ、前記減速機構を形成するウォームと、
前記ウォームと噛み合わされ、前記減速機構を形成するウォームホイールと、
前記ウォームホイールの軸方向一側面に設けられ、前記ウォームホイールの軸方向に突出する環状凸部と、
前記環状凸部の径方向外側に設けられ、前記環状凸部から径方向外側に部分的に突出する部分凸部と、
前記ウォームホイールの径方向外側に設けられるホルダ部材と、
前記ホルダ部材に設けられ、前記ウォームホイールの径方向に向けて弾性変形可能なスイッチング導電部材と、
前記スイッチング導電部材に設けられ、前記ウォームホイールの径方向から前記環状凸部および前記部分凸部に摺接し、前記スイッチング導電部材を弾性変形させる摺接部材と、
前記ホルダ部材に設けられ、前記スイッチング導電部材の弾性変形により前記スイッチング導電部材が摺接し、前記電動モータをオンオフさせる固定導電部材とを備えることを特徴とする減速機構付モータ。
【請求項2】
請求項1記載の減速機構付モータにおいて、前記環状凸部と前記部分凸部との間に、前記摺接部材の摺接をスムーズにする案内傾斜部を設けることを特徴とする減速機構付モータ。
【請求項3】
請求項1または2記載の減速機構付モータにおいて、前記固定導電部材を前記スイッチング導電部材の摺接方向に複数ずらして設け、前記部分凸部を前記環状凸部から突出高さを異ならせて複数設けることを特徴とする減速機構付モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−254675(P2011−254675A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128591(P2010−128591)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】