説明

測位装置、測位方法、および、プログラム

【課題】 測定精度の高い位置データおよび軌跡データを取得することのできる測位装置、測位方法、および、プログラムを提供する。
【解決手段】 現在位置を測定する絶対位置測定手段と、移動方向及び移動量を計測する移動計測手段と、移動計測手段により計測された移動情報を当該移動の始点の位置情報に積算していくことで現在位置を算出する自律測位手段と、絶対位置測定手段により求められた現在位置の精度指標と自律測位手段により求められた現在位置の精度指標とを比較して、より高精度な現在位置データを選択する位置選択手段とを備え、絶対位置測定手段により求められた現在位置データが位置選択手段によって選択された場合には、選択された現在位置を基準点として設定し、自律測位手段により求められた現在位置の精度指標は、基準点から累積的に精度が低下するように設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動体の移動経路データを取得する測位装置、測位方法、および、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、GPS(Global Positioning System)などの衛星測位システムを利用した測位機能とモーションセンサを利用した自律航法機能とを併用した測位装置がある。この測位装置では、モーションセンサにより歩行者や車などの移動体の移動方向および移動距離を計測する。そして、衛星測位システムを用いて求められた絶対位置に、計測された相対的な移動量を積算していくことによって、移動体が移動してきた経路の軌跡データを取得することができる。
【0003】
衛星測位システムを利用した測位(衛星測位)においては、測定される位置(衛星測位位置)の精度は、測位装置によって電波が受信された測位衛星の配置により変化する。従って、周囲の環境によっては、測定の精度が低下して誤った位置が求められる場合があるという問題点があった。
【0004】
そこで、従来、衛星測位位置の精度を示すパラメータの値と、予め定められた閾値とを比較して、衛星測位位置の精度がこの閾値によって設定されたレベルよりも低い場合には、モーションセンサの測定結果を用いて現在位置を決定する(自律測位)測位装置が開発されている(例えば、特許文献1)。また、例えば、特許文献2には、衛星測位位置の精度を示すパラメータ、および、自律測位により求められた位置(自律測位位置)の見積もり誤差をそれぞれに対して予め設定された基準値と比較して、より正確と推定される方の位置を初期位置として設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−233186号公報
【特許文献2】特開2006−177772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自律航法機能による移動量の計測値の誤差は、自律測位を続けていくと自律測位位置に毎回蓄積されていく。しかしながら、従来技術では、このような見積もり誤差や測定位置の精度を示すパラメータは、それぞれ所定の判定基準値と比較することで、初期位置を設定する際に用いられるだけであった。従って、初期位置に採用された自律測位位置に含まれる誤差の影響により、精度の良い位置データおよび軌跡データを取得することができないという課題がある。
【0007】
本発明の目的は、測定精度の高い位置データおよび軌跡データを取得することのできる測位装置、測位方法、および、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
現在位置の測定を行う絶対位置測定手段と、
移動方向及び移動量を計測する移動計測手段と、
前記移動計測手段により計測された移動方向及び移動量の情報を当該移動の始点の位置情報に積算していくことで、現在位置を算出する自律測位手段と、
前記絶対位置測定手段により求められた現在位置の精度を示す精度指標と、前記自律測位手段により求められた現在位置の精度指標とを比較して、より高精度な現在位置データを選択する位置選択手段と、
前記絶対位置測定手段により求められた現在位置データが前記位置選択手段によって選択された場合には、当該選択された現在位置を基準点として設定する基準点設定手段と
を備え、
前記自律測位手段により求められた現在位置の前記精度指標は、前記基準点から累積的に精度が低下するように設定される
ことを特徴とする測位装置である。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記自律測位手段により算出された移動経路中の位置を順次記憶する測位データ記憶手段と、
前記基準点の位置データ、及び、当該基準点の設定前の前記基準点である前回基準点の位置データに基づいて、前記測位データ記憶手段に記憶された前記移動経路中の位置を補正する経路データ補正手段と、
を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の測位装置において、
前記経路データ補正手段は、
前記前回基準点の位置から前記基準点の位置へのベクトルに、前記前回基準点の位置から前記基準点の位置データの取得タイミングで前記自律測位手段によって算出された現在位置へのベクトルを一致させる回転伸縮操作を、前記前回基準点から前記測位データ記憶手段に記憶された位置へのベクトルのそれぞれに対して行う
ことを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3記載の測位装置において、
前記絶対位置測定手段により求められた現在位置の前記精度指標と、所定の閾値とを比較することにより、当該現在位置の精度が前記閾値で示される精度より高いか否かを判別する精度判定手段を備え、
前記位置選択手段により、前記絶対位置測定手段によって求められた現在位置のデータが選択され、且つ、前記精度判定手段により、当該現在位置の精度が前記閾値で示される精度より低いと判別された場合には、前記基準点設定手段は、この求められた現在位置を暫定基準点として設定し、
前記暫定基準点が設定された後、前記精度判定手段により、所定の補正待機期間内に前記絶対位置測定手段によって求められた現在位置の精度が前記閾値で示される精度より高くなったと判別された場合には、前記基準点設定手段は、この新たに求められた現在位置を前記基準点として設定し、
前記暫定基準点が設定された後、前記精度判定手段により、前記補正待機期間内に前記絶対位置測定手段によって求められた現在位置の精度が前記閾値で示される精度より高いと判別されなかった場合には、前記基準点設定手段は、前記暫定基準点を前記基準点として設定する
ことを特徴としている。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の測位装置において、
前記絶対位置測定手段により求められた現在位置の前記精度指標と、所定の閾値とを比較することにより、当該現在位置の精度が前記閾値で示される精度より高いか否かを判別する精度判定手段を備え、
前記精度判定手段により、前記絶対位置測定手段によって求められた現在位置の精度が前記閾値で示される精度より高いと判別された場合には、
前記位置選択手段は、前記絶対位置測定手段により求められた現在位置を選択し、
前記基準点設定手段は、この現在位置を前記基準点として設定する
ことを特徴としている。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の測位装置において、
前記位置選択手段が選択した現在位置情報と、当該現在位置情報の前記精度指標が示す誤差範囲とを表示する表示手段を備える
ことを特徴としている。
【0014】
請求項7記載の発明は、
現在位置の測定を行う絶対位置測定手段と、移動方向及び移動量を計測する移動計測手段と、からの情報に基づき、移動経路中の位置データを取得する測位方法において、
前記移動計測手段により計測された移動方向及び移動量の情報を当該移動の始点の位置情報に積算していくことで、現在位置を算出する自律測位ステップと、
前記絶対位置測定手段により求められた現在位置の精度を示す精度指標と、前記自律測位ステップで求められた現在位置の精度指標とを比較して、より高精度な現在位置データを選択する位置選択ステップと、
前記絶対位置測定手段により求められた現在位置データが前記位置選択ステップで選択された場合には、当該選択された現在位置を基準点として設定する基準点設定ステップと
を含み、
前記自律測位ステップで求められた現在位置の前記精度指標は、前記基準点から累積的に精度が低下するように設定される
ことを特徴としている。
【0015】
請求項8記載の発明は、
現在位置の測定を行う絶対位置測定手段と、移動方向及び移動量を計測する移動計測手段とを備えた測位装置に用いられるコンピュータを、
前記移動計測手段により計測された移動方向及び移動量の情報を当該移動の始点の位置情報に積算していくことで、現在位置を算出する自律測位手段と、
前記絶対位置測定手段により求められた現在位置の精度を示す精度指標と、前記自律測位手段により求められた現在位置の精度指標とを比較して、より高精度な現在位置データを選択する位置選択手段と、
前記絶対位置測定手段により求められた現在位置データが前記位置選択手段によって選択された場合には、当該選択された現在位置を基準点として設定する基準点設定手段と、
として機能させるプログラムであって、
前記自律測位手段により求められた現在位置の前記精度指標は、前記基準点から累積的に精度が低下するように設定される
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明に従うと、自律測位手段により算出される位置は、絶対位置測定手段により求められた位置のみに基づいて設定された基準点の情報に自律航法機能により求められた移動量を積算することによって求められる。そして、自律測位手段により算出される位置の精度指標は、この基準点から累積的に低下するように設定されて、絶対位置測定手段の精度指標と比較され、より精度の高いデータが取得されるので、精度の高い位置データ、および、軌跡データを取得することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態の測位装置の構成を示すブロック図である。
【図2】経路データの取得方法を示す図である。
【図3】経路データ取得処理を示すフローチャートである。
【図4】経路データの取得例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態の測位装置の構成を示すブロック図である。
【0020】
この実施形態の測位装置1は、歩行者であるユーザが装着して利用するものであり、装置の動作を全体的に統括制御し、また、演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)10(基準点設定手段)と、CPU10に作業用メモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)11と、実行プログラムや設定データを格納するROM(Read Only Memory)12と、不揮発性メモリ13と、GPS受信アンテナ14と、絶対位置測定手段としてのGPS受信処理部15と、3軸地磁気センサ16と、3軸加速度センサ17と、表示部18(表示手段)と、CPU10および3軸加速度センサ17に電力を供給する電源19と、操作キー20と、自律測位制御処理部21(自律測位手段)と、自律測位補正処理部22(経路データ補正手段)と、位置精度判別処理部23(位置選択手段、精度判定手段)などを備えている。
【0021】
RAM11は、自律測位制御処理部21で算出された現在位置のデータを一時的に記憶する自律測位データ記憶部11a(測位データ記憶手段)を更に備えている。この自律測位データ記憶部11aは、順次送られてくる複数個のデータを順番に記憶することが可能である。
【0022】
ROM12には、本実施形態における測位装置1に測位処理を行わせるための実行プログラム12aが格納されている。CPU10は、電源投入時に、或いは、操作キー20からの入力指令に基づき、この実行プログラム12aを読み込んで実行する。このプログラム12aは、不揮発性メモリ13に記憶させることも可能である。或いは、CDROMやフラッシュメモリといった可搬型記録媒体に実行プログラム12aを記録し、読み取り装置を介してCPU10が実行可能とすることも可能である。また、プログラム12aは、キャリアウェーブ(搬送波)を媒体として、通信回線を介して測位装置1にダウンロードされる形態を適用することもできる。
【0023】
不揮発性メモリ13は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)である。この不揮発性メモリ13には、CPU10の制御処理によって決定された移動位置データを順番に記憶する移動履歴データ記憶部13a、および、GPS衛星の軌道データであるエフェメリスデータを記憶する衛星軌道データ記憶部13bが備えられている。また、不揮発性メモリ13は、地図データを記憶することが可能であり、CPU10により読み出された地図データは、表示部18に表示される。
【0024】
GPS受信処理部15は、CPU10から入力する制御信号に基づいて、GPS受信アンテナ14が受信した複数のGPS衛星からの電波信号を復調する。また、このGPS受信処理部15は、これらの復調信号に基づいて演算処理を行い、算出された測位データを設定されたフォーマットでCPU10へ出力する。このGPS受信処理部15から出力可能なフォーマットには、NMEA‐0183(National Marine Electronics Association)の規格に従った信号が含まれている。
【0025】
GPS受信処理部15において算出されるGPS測位位置には、誤差が含まれている。このGPS測位位置の誤差範囲は、演算処理に用いられたGPS衛星の数やGPS衛星の配置によって大きさが変化する。GPS受信処理部15から出力されるNMEA‐0183の規格に従ったデータには、このようなGPS測位位置の誤差範囲を示す指標としてGSTメッセージ出力(GNSS(Global Navigation Satellite System) Pseudo Error Statistics)が含まれている。具体的には、このGSTメッセージ出力には、GPS測位位置の誤差範囲を示す楕円の長軸半径と短軸半径の標準偏差、および、楕円の傾き角度や、緯度誤差、経度誤差、および、高度誤差のそれぞれの標準偏差の値といった統計的エラー項目が含まれている。
【0026】
3軸地磁気センサ16は、特に限られないが、例えば、磁気抵抗素子を用いたセンサであり、地磁気の方位を三次元的に計測してCPU10へ出力することが可能である。また、3軸加速度センサ17は、3軸方向の加速度を計測してCPU10へ出力する。これらの3軸地磁気センサ16および3軸加速度センサ17により、移動計測手段が構成される。
【0027】
自律測位制御処理部21は、3軸地磁気センサ16、および、3軸加速度センサ17からCPU10に送られたそれぞれの計測データに基づいて測位装置1の移動方向および移動距離を算出する。例えば、重力方向の加速度変化に基づいて測位装置1を装着したユーザの歩数を計測し、この計測された歩数に予め設定された歩幅を乗算することによって移動距離が算出される。そして、自律測位制御処理部21は、この算出された移動距離および移動方向と、元の位置データとに基づいて現在位置を算出して、この自律測位位置のデータをCPU10へ送信する。この自律測位位置のデータは、自律測位データ記憶部11aに記憶される。
【0028】
自律測位制御処理部21で算出された自律測位位置には、設定された歩幅と実際の歩幅との間に一定のずれがあると、算出された移動距離に対して一定の割合で誤差が生じてくる。すなわち、自律測位制御処理部21で算出される移動距離の誤差は、ユーザが移動経路を進むにつれて継続的に蓄積されていく。また、3軸地磁気センサ16では、測位装置1の帯磁などによる一定方向へのオフセット誤差や、周辺環境の影響による一時的な方位誤差が生じる。従って、この誤差の影響は、算出された自律測位位置にも現れる。
【0029】
図2は、測位装置1を装着したユーザの位置をGPS測位および自律測位によって計測する方法を示す図である。
【0030】
ユーザは、経路w上を記号“×”で示された地点a0から地点f0へとまっすぐに移動する。この期間に、GPS測位によって所定の時間間隔(例えば、1秒毎)で求められた位置を記号“○”を用いて地点a1〜f1として表示し、また、GPS測位によって求められた各地点の位置の誤差範囲(例えば、GSTメッセージにより示された緯度誤差の標準偏差と経度誤差の標準偏差(何れもメートル表記)のうちの大きい方の値、以後、GST誤差と記す)を各地点a1〜f1の左側にそれぞれ表示している。一方、GPS測位により地点b1〜f1を求めたタイミングとほぼ同時に自律測位によって求められた位置をそれぞれ記号“□”を用いて地点b2〜f2として表示している。
【0031】
図2に示すように、GPS測位によって求められた地点a1〜c1のGST誤差は、10mである。このGST誤差の大きさは、通常のGPS測位において地平線上のGPS衛星からの電波が全て明瞭に受信できる場合に期待される値に対応している。そして、求められた地点a1〜c1は、経路w上にほぼ正確に求められている。これに対して、GPS測位により求められた地点d1〜f1のGST誤差は、30mとなっている。また、地点d1〜f1は、経路w上の正確な地点d0〜f0から外れて(例えば、数メートル)求められている。
【0032】
一方、図2に示すように、自律測位によって算出された移動距離および移動方向のデータに基づいて、地点b2〜f2が求められる。このとき、前回のGPS測位により求められた位置データを基準位置として(例えば、地点a1〜c1)現在位置を求めるとすると、求められた現在位置(地点b2〜d2)には、経路wに対して時計回りにほぼ一定の角度のオフセットと、実際の歩幅と比較して約10%長い移動距離の誤差とが現れている。
【0033】
また、前回の自律測位によって求められた地点(d2、e2)と、今回の自律測位によって算出された移動距離および移動方向とに基づいて現在位置(地点e2、f2)を求めるとすると、求められた現在位置(地点e2、f2)には、それぞれ2回分、3回分の移動方向および移動距離の誤差が累積されて現れることとなる。
【0034】
自律測位補正処理部22は、自律測位データ記憶部11aに記憶された自律測位位置のデータをその後に取得されたGPS測位位置に基づいて補正する。補正された測位位置は、確定値として不揮発性メモリ13に記憶される。
【0035】
位置精度判別処理部23は、GPS受信処理部15から取得したGPS測位位置のデータ、および、自律測位制御処理部21から取得した自律測位位置のデータのそれぞれの誤差の大きさに基づいてデータ処理の方法を選択する処理を行う。また、位置精度判別処理部23は、GPS測位位置の誤差範囲を予め設定された閾値と比較して、求められたGPS測位位置の精度が十分であるかを判別する。
【0036】
表示部18は、例えば、液晶による表示を行う画面である。或いは、有機EL(Electro-Luminescent)ディスプレイなどの他の方式の表示手段を用いても良い。この表示部18には、不揮発性メモリ13から地図データを読み出して表示し、求められた位置を示す記号、および、移動の軌跡を示す線を重ねて表示させることができる。また、このとき、表示部18に表示された各位置を示す記号に対しては、例えば、GSTメッセージ出力から解読された誤差範囲情報に基づいてこの誤差範囲を示す楕円を同時に表示させることが可能な構成となっている。
【0037】
次に、測位処理の動作内容について、フローチャートに基づいて説明する。
【0038】
図3は、CPU10が実行する測位制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0039】
本実施形態の測位制御処理は、操作キー20のユーザ操作に基づく入力信号によって開始される。この測位制御処理が開始されると、先ず、CPU10は、GPS受信処理部15へ信号を送って受信処理を開始させる。それから、CPU10は、GPS受信処理部15から入力する信号に基づいて、GPS衛星からの電波が受信されたか否かを判別する(ステップS1)。そして、GPS衛星からの電波が受信されていると判別された場合には、CPU10は、続いて、最新のエフェメリスデータが衛星軌道データ記憶部13bに記憶されているか否かを判別する(ステップS2)。最新のエフェメリスデータが衛星軌道データ記憶部13bに記憶されていないと判別されると、CPU10は、受信したエフェメリスデータをGPS受信処理部15から取得して衛星軌道データ記憶部13bに記憶させる(ステップS3)。それから、CPU10の処理は、ステップS4へ移行する。最新のエフェメリスデータが既に記憶されていると判別された場合には、CPU10の処理は、そのままステップS4へ移行する。
【0040】
次に、CPU10は、GPS受信処理部15からの入力データを解読して、GPS測位によって求められた現在位置情報を取得するGPS測位処理を行う(ステップS4)。そして、CPU10の処理は、ステップS5へ移行する。
【0041】
ステップS1の判別処理でGPS衛星からの電波が受信されていないと判別された場合には、CPU10の処理は、ステップS2〜S4の処理を行わずにステップS5へ移行する。
【0042】
ステップS5へ移行すると、CPU10は、3軸加速度センサ17により計測された3軸加速度のデータから必要な期間(例えば、前回のGPS測位処理が行われた時刻から今回のGPS測位処理が行われた時刻までの期間)のデータを取得する。続いて、CPU10は、3軸地磁気センサ16により計測された3軸地磁気データから必要な期間のデータを取得する(ステップS6)。
【0043】
次いで、CPU10は、取得した3軸加速度データに重力加速度以外の加速度が含まれているか否かを判別する(ステップS7)。重力加速度以外の加速度が含まれていないと判別された場合は、歩行者であるユーザが前回の計測位置から移動をしていないと判断されて、CPU10は以降の処理を行わずに、ステップS1へと戻る。
【0044】
一方、ステップS7の判別処理で、重力加速度以外の加速度が含まれていると判別された場合には、CPU10は、基準位置データが設定されているか否かを判別する(ステップS8)。測位制御処理のスタート直後には、基準位置データが存在しないと判別されて、CPU10は、最初のGPS測位処理(ステップS4)で取得した現在位置および時刻データを基準位置・時刻の初期値としてRAM11に設定登録する(ステップS9)。この初期値は、誤差の大小に拠らずに設定されて、誤差情報とともに表示部18に示される。すなわち、この初期値の表示段階では、データの精度に比してユーザに位置情報を提供することを優先させる。それから、CPU10の処理は、ステップS10へ移行する。一度基準位置データの初期値が設定登録された後には、ステップS7の判別処理では、基準位置データがあると判別されて、そのままステップS10へ移行する。
【0045】
ステップS10へ移行すると、CPU10は、自律測位処理を行う。この自律測位処理では、CPU10は、取得した3軸加速度データおよび3軸地磁気データに基づいて自律測位制御処理部21に進行方向を同定させ、また、加速度データの座標系を変換させる。それから、CPU10は、この3軸加速度データの時系列変化のパターンに基づいて自律測位制御処理部21にユーザの移動歩数を算出させる。また、CPU10は、移動量計測処理を行う(ステップS11)。この移動量計測処理では、CPU10は、算出された移動歩数に基づいて設定された期間内の移動距離を自律測位制御処理部21に算出させて取得する。
【0046】
次に、CPU10は、GPS受信処理部15から取得したGSTメッセージを解読する(ステップS12)。CPU10は、この解読したGSTメッセージに基づいてGST誤差の値を設定し、それから、位置精度判別処理部23にこのGST誤差の大きさを評価させる(ステップS13)。先ず、GST誤差が予め設定された閾値、例えば、10m以下であると判別された場合には、CPU10は、求められた現在位置データの信頼性が高いと判断してステップS16へ移行する。一方、GST誤差が予め設定された他の閾値、例えば、100m以上であると判別された場合には、CPU10は、求められた現在位置データの信頼性が低いと判断して、CPU10の処理は、ステップS17へ移行する。GST誤差が10mから100mの間であると判別された場合には、CPU10の処理は、ステップS14へ移行する。
【0047】
ステップS14へ移行すると、CPU10は、基準時間差変換処理を行う。この基準時間差変換処理では、CPU10は、先ず、現在設定されている基準位置の設定時刻から今回のGPS測位が行われたタイミングまでの経過時間を予め設定された移動速度に基づいて移動可能距離に換算する。そして、CPU10は、この移動可能距離を自律測位誤差の値として設定する。従って、この自律測位誤差は、基準位置を設定した時刻からの経過時間が長くなるにつれて単調に増加する。
【0048】
次いで、CPU10は、求められた自律測位誤差の値とGST誤差の値とを位置精度判別処理部23へ送り、位置精度の判別処理を行わせる(ステップS15)。自律測位誤差がGST誤差より小さいと判別された場合には、CPU10の処理は、ステップS16へ移行する。一方、GST誤差が自動測位誤差より小さいと判別された場合には、CPU10の処理は、ステップS17へ移行する。
【0049】
ステップS16へ移行すると、CPU10は、自律測位位置採用処理を実行する。この自律測位位置採用処理では、CPU10は、ステップS11の移動量計測処理によって算出された移動方向および移動距離を前回求められた位置情報に加算することによって、現在位置を設定する。そして、CPU10は、この自律測位位置採用処理で設定された現在位置のデータを現在時刻データとともに自律測位データ記憶部11aに記憶させる。また、CPU10は、この設定された現在位置および移動経路を表示部18に表示させるとともに、この現在位置の誤差範囲を併せて表示させる。それから、CPU10の処理は、ステップS1へ戻る。
【0050】
一方、ステップS17へ移行すると、CPU10は、GPS測位位置採用処理を実行する。このGPS測位位置採用処理では、CPU10は、先ず、GPS測位により求められた地点を現在位置として設定する。前回の基準位置の設定登録以降に自律測位データ記憶部11bに記憶させた位置データがある場合には、CPU10は、これらの位置データ、前回の基準位置データ、および、決定されたGPS測位による現在位置を自律測位補正処理部22に送り、後述する自律測位データの補正処理を行わせる。次いで、CPU10は、自律測位補正処理部22から取得したこれらの補正後の位置データおよび現在位置データを順番に移動履歴データ記憶部13aに記憶させる。CPU10は、補正後の位置データに基づいてこれらの位置およびその誤差範囲と、移動経路とを表示部18へ表示させる。それから、CPU10は、現在位置データおよびこの現在位置データの取得時刻を基準位置・時刻データとしてRAM11に更新登録した後に、ステップS1へ戻る。
【0051】
なお、上記フローチャートでは、ステップS13、S15の判別処理のみを位置精度判別処理部23に行わせることとしたが、ステップS13〜S15の処理を全て位置精度判別処理部23で行わせることとしても良い。
【0052】
また、上記フローチャートでは、移動を開始したのちに初期位置の設定がなされているが、最初にGPS測位データが取得された段階で初期位置の設定を行うこととしても良い。また、上記初期位置の設定は、GST誤差の値が小さくなった場合には、ユーザの移動がなくても更新登録することとしても良い。
【0053】
次に、本実施形態の測位装置1における位置決定の具体例について説明する。
【0054】
図4は、本実施形態の測位装置による測位例を示す図である。
【0055】
図4の測位例において、測位装置1を装着したユーザは、地点mから地点qへ高層建築物hの際を通って移動する。
【0056】
まず、測位制御処理をスタートすると、GPS衛星から電波を受信して(ステップS1)、最新のエフェメリスデータが衛星軌道データ記憶部13bに記憶されていなければ、最新のエフェメリスデータを取得する(ステップS2、S3)。それから、GPS測位処理が行われる(ステップS4)。このときに測定された位置(地点m1、記号“○”)、および、時刻のデータは、基準位置・時刻の初期値としてRAM11に設定登録される(ステップS8、S9)。また、2回目以降のGPS測位処理では、それぞれユーザが移動した先の位置データ(地点n1〜q1、記号“○”)が、例えば、5秒間隔で取得されている。
【0057】
一方、測位装置1に内蔵された3軸加速度センサ17の計測データ、および、3軸地磁気センサ16の計測データからは、ユーザの移動による加速度変化が検出されると(ステップS5〜S7)、ユーザの歩数が算出され、更に、移動距離と移動方位のデータに変換されて出力される(ステップS10、S11)。
【0058】
次に、GPS測位処理により求められたこれらのGPS測位位置(地点m1〜q1)に関するそれぞれのGSTメッセージ出力を解読して、GST誤差を取得する(ステップS12)。地点m1、q1の測位位置の精度は、GST誤差が10mである。従って、GPS測位位置採用処理がなされ、これらのGPS測位位置は、基準位置として設定される(ステップS13、S17)。
【0059】
これに対し、高層建築物hの際で求められたGPS測位位置n1〜p1のGST誤差は、何れも30mである。従って、この期間の各GST誤差は、基準位置m1の設定時刻からの経過時間に基づいて算出される自律測位誤差(ステップS14)と比較される(ステップS15)。そして、この期間の自律測位誤差が各GST誤差よりも小さいとすると、自律測位位置n2〜p2(それぞれ記号“□”で示す)は、自律測位位置採用処理により、現在位置として選択される(ステップS16)。すなわち、自律測位位置o2〜q2は、それぞれ地点n2〜p2からの移動距離および移動方位として算出され、移動距離の誤差が徐々に累積されるとともに、ほぼ一定の方向への角度誤差が現れる。
【0060】
GPS測位位置q1のGST誤差は、10mに回復する。このときに実行されるGPS測位位置採用処理(ステップS17)では、自律測位によって算出され、現在位置として選択されていた地点n2〜p2の補正処理が行われる。具体的には、先ず、先の基準位置m1から自律測位位置q2へのベクトルV2に対して回転伸縮操作を行って、先の基準位置m1から新たな基準位置q1へのベクトルV1と一致させるための変換行列Tが算出される。すなわち、この変換行列Tにより、V1=TV2が成り立つ。そして、先の基準位置m1から地点n2〜p2への各ベクトルに対し、それぞれこの変換行列Tによる回転伸縮操作を行って求められた地点n3〜p3(記号“△”で示す)をそれぞれ通過した位置データとして決定する。
【0061】
また、ここで、GPS測位位置q1のGST誤差が30mのままであっても、自律測位位置n2〜q2のそれぞれにおいて、例えば、8mずつの自律測位誤差が加算されていった場合には、地点q2における累積の自律測位誤差は32mとなる。従って、この自律測位誤差は、GST誤差の値より大きいので、やはり地点q1を基準位置として設定し、地点n2〜p2の補正処理を行う。
【0062】
以上のように、本実施形態の測位装置1によれば、GSTメッセージ出力を用いてGPS測位の誤差範囲を規定することにより、GPS測位の誤差範囲と自律測位による誤差範囲とを毎回直接比較することができる。そして、GPS測位で十分な精度が得られない場合には、自律測位位置とGPS測位位置のうち、誤差の小さい方の位置を選択することができるので、常に精度の良い位置データの取得を行うことができる。
【0063】
また、自律測位位置をそのまま基準位置として採用せず、GPS測位によって決められた精度の良い位置データのみを基準位置として設定するので、基準位置の設定後の自律測位による累積の誤差範囲を考慮して位置データの取得を行うことができる。従って、同様なGST誤差の状況においても、自律測位による誤差が累積されて増加する影響を考慮に入れて、より精度のよい位置データの選択を行うことができる。
【0064】
また、2点のGPS測位位置に基づいて自律測位位置のデータを補正するので、自律測位による累積した移動距離の誤差や角度誤差を遡って取り除くことができる。また、累積していく自律測位位置の誤差をほぼ一様なレベルへ減少させることができる。
【0065】
また、自律測位位置の補正処理をベクトルの回転及び伸縮操作の組み合わせといった線形変換で行うので、難しい処理を必要とせず簡便に精度の高い補正を行うことができる。
【0066】
また、GPS測位の誤差範囲が10m以下や100m以上のときは、自律測位による見積もり誤差との大小の比較を行わずにそれぞれGPS測位位置、自律測位位置の採用処理を行うので、十分に精度の足りているデータを除外したり、明らかに精度の足りないデータを用いたりする状況を避けることができる。
【0067】
また、位置、および、経路データの表示画面には、位置データだけではなく、誤差データも表示させるので、ユーザは、現在の測位データがどの程度正確であるかを把握しながら表示情報を利用することができる。
【0068】
[変形例1]
上述の実施形態の測位装置1において、図3で示したフローチャートにおけるステップS13のGST誤差が10m以下の場合の分岐を省略することができる。GST誤差が10m以内であっても、自律測位誤差がGST誤差よりも大きくなるまでは、自律測位により求められた移動距離と移動方位に従って経路を測定し、自律測位誤差がGST誤差よりも大きくなったときに経路の補正処理を行う。
【0069】
この変形例1の測位装置を用いることによって、GPS測位の通常の限界精度以下の移動経路であっても自律測位の誤差範囲内で位置データを取得することができるので、常に精度の高い経路データを取得することができる。
【0070】
また、道路情報などとの照合を行わずに細かい移動経路のデータを取得することができるので、屋内の通過、広場や山道などの道路データのない場所での経路データの取得を高精度で行うことができる。
【0071】
[変形例2]
上述の実施形態の測位装置1において、図3で示したフローチャートのステップS15で自律測位誤差がGST誤差より大きくなったと判別された場合、ステップS16のGPS測位位置採用処理で行う経路の補正、および、基準位置の設定処理を行う際に、GST誤差が10mよりも大きい場合には、当該補正された経路、および設定された基準位置のデータを更に一定の期間暫定値として、例えば、自律測位データ記憶部11aに記憶させておくこととする。そして、GST誤差がその後10m以下にまで低下した場合には、当初の基準位置からこの暫定基準位置へのベクトルと、GST誤差が10m以下に低下するまでの自律測位位置へのベクトルとに対し、それぞれ回転伸縮変換を行う変換行列T1、T2を算出して、測位データの補正を行う。
【0072】
一方、一定の期間内にGST誤差が10m以下にまで低下しなかった場合には、補正された経路と暫定基準位置をそのまま決定された位置データとして確定する。
【0073】
このような変形例2の測位装置においては、可能な限りGST誤差が10m以下のGPS測位データに基づいて測位データの補正処理を行い、また、GST誤差が10m以下に回復しない場合でも自律測位による位置データ以上の精度でGPS測位データによる補正処理を行う。従って、精度の低い位置データが最終的に記録される軌跡データに含まれる可能性が低く、且つ、全体としても精度の良い補正を行うことができる。
【0074】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上述の実施の形態では、GPS誤差データの評価として、GSTメッセージ出力のデータを用いたが、他の指標を用いることとしてもよい。例えば、NMEA‐0183の規格によるGSA(GPS DOP(Dilution of Precision) and active satellites)メッセージ出力に含まれるPDOP(Position Dilution of precision)の値および受信周波数に基づいて移動距離の誤差範囲を規定しても良い。例えば、PDOPの2drms(twice distance root mean square)を利用することができる。
【0075】
また、上述の実施の形態では、自律測位位置の精度を示す見積もり誤差は、基準位置が設定された時刻からの経過時間によって求めたが、他の方法を用いても良い。例えば、自律測位処理(ステップS10)でカウントされた歩数データと予め設定された歩幅データとの乗算結果や、更に、この乗算結果の値に所定の係数α(0<α<1)を乗じた値を用いて自律測位位置の精度を示す値として用いることも可能である。
【0076】
また、本実施形態では、GPS衛星のデータを用いて衛星測位を行ったが、GLONASS(Global Navigation Satellite System)などの他の衛星測位システムを利用することとしてもよい。或いは、複数の携帯電話の基地局との通信による測位を利用するなど、衛星以外の通信システムを利用することも可能である。
【0077】
また、上述の実施の形態では、自律測位により求められた位置データをGPS測位により求められた2点の位置データにより補正したが、3点以上の位置データを用いて補正することも可能である。また、2点のGPS測位データを用いる場合にも、この2点の間の期間に取得された自律測位位置だけではなく、基準点とされるGPS測位データの時間間隔に応じて前後の期間の自律測位位置を補正するように構成することもできる。
【0078】
また、上記の実施の形態では、歩行者の移動軌跡を具体例として挙げて説明したが、自転車など、他の移動手段に係る測位装置に適用することも可能である。
【0079】
また、上記の実施の形態では、衛星測位と自律測位を同一の時間間隔でほぼ同時に行ったが、対象となる移動体の移動速度に応じて、例えば、衛星測位を自律測位の半分の実行回数に減らすこともできる。
【0080】
また、上述の実施の形態では、ROM12に格納されたプログラム12aに基づいて、CPU10がGPS受信処理部15、自律測位制御処理部21、自律測位補正処理部22、位置精度判別処理部23などに各処理を実行させる形態を示したが、これらの処理を全てCPU10の演算によるソフトウェア処理として行わせることとしても良い。
【0081】
また、上述の実施の形態では、表示画面に求められた経路情報と誤差情報を表示したが、数値データとして出力して、接続した外部機器から使用可能な構成としても良い。その他、本実施形態で示した具体的な構成の細部や設定された数値などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 測位装置
10 CPU
11 RAM
11a 自律測位データ記憶部
11b 自律測位データ記憶部
12 ROM
12a プログラム
13 不揮発性メモリ
13a 移動履歴データ記憶部
13b 衛星軌道データ記憶部
14 GPS受信アンテナ
15 GPS受信処理部
16 3軸地磁気センサ
17 3軸加速度センサ
18 表示部
19 電源
20 操作キー
21 自律測位制御処理部
22 自律測位補正処理部
23 位置精度判別処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置の測定を行う絶対位置測定手段と、
移動方向及び移動量を計測する移動計測手段と、
前記移動計測手段により計測された移動方向及び移動量の情報を当該移動の始点の位置情報に積算していくことで、現在位置を算出する自律測位手段と、
前記絶対位置測定手段により求められた現在位置の精度を示す精度指標と、前記自律測位手段により求められた現在位置の精度指標とを比較して、より高精度な現在位置データを選択する位置選択手段と、
前記絶対位置測定手段により求められた現在位置データが前記位置選択手段によって選択された場合には、当該選択された現在位置を基準点として設定する基準点設定手段と
を備え、
前記自律測位手段により求められた現在位置の前記精度指標は、前記基準点から累積的に精度が低下するように設定される
ことを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記自律測位手段により算出された移動経路中の位置を順次記憶する測位データ記憶手段と、
前記基準点の位置データ、及び、当該基準点の設定前の前記基準点である前回基準点の位置データに基づいて、前記測位データ記憶手段に記憶された前記移動経路中の位置を補正する経路データ補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項3】
前記経路データ補正手段は、
前記前回基準点の位置から前記基準点の位置へのベクトルに、前記前回基準点の位置から前記基準点の位置データの取得タイミングで前記自律測位手段によって算出された現在位置へのベクトルを一致させる回転伸縮操作を、前記前回基準点から前記測位データ記憶手段に記憶された位置へのベクトルのそれぞれに対して行う
ことを特徴とする請求項2記載の測位装置。
【請求項4】
前記絶対位置測定手段により求められた現在位置の前記精度指標と、所定の閾値とを比較することにより、当該現在位置の精度が前記閾値で示される精度より高いか否かを判別する精度判定手段を備え、
前記位置選択手段により、前記絶対位置測定手段によって求められた現在位置のデータが選択され、且つ、前記精度判定手段により、当該現在位置の精度が前記閾値で示される精度より低いと判別された場合には、前記基準点設定手段は、この求められた現在位置を暫定基準点として設定し、
前記暫定基準点が設定された後、前記精度判定手段により、所定の補正待機期間内に前記絶対位置測定手段によって求められた現在位置の精度が前記閾値で示される精度より高くなったと判別された場合には、前記基準点設定手段は、この新たに求められた現在位置を前記基準点として設定し、
前記暫定基準点が設定された後、前記精度判定手段により、前記補正待機期間内に前記絶対位置測定手段によって求められた現在位置の精度が前記閾値で示される精度より高いと判別されなかった場合には、前記基準点設定手段は、前記暫定基準点を前記基準点として設定する
ことを特徴とする請求項2又は3記載の測位装置。
【請求項5】
前記絶対位置測定手段により求められた現在位置の前記精度指標と、所定の閾値とを比較することにより、当該現在位置の精度が前記閾値で示される精度より高いか否かを判別する精度判定手段を備え、
前記精度判定手段により、前記絶対位置測定手段によって求められた現在位置の精度が前記閾値で示される精度より高いと判別された場合には、
前記位置選択手段は、前記絶対位置測定手段により求められた現在位置を選択し、
前記基準点設定手段は、この現在位置を前記基準点として設定する
ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の測位装置。
【請求項6】
前記位置選択手段が選択した現在位置情報と、当該現在位置情報の前記精度指標が示す誤差範囲とを表示する表示手段を備える
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の測位装置。
【請求項7】
現在位置の測定を行う絶対位置測定手段と、移動方向及び移動量を計測する移動計測手段と、からの情報に基づき、移動経路中の位置データを取得する測位方法において、
前記移動計測手段により計測された移動方向及び移動量の情報を当該移動の始点の位置情報に積算していくことで、現在位置を算出する自律測位ステップと、
前記絶対位置測定手段により求められた現在位置の精度を示す精度指標と、前記自律測位ステップで求められた現在位置の精度指標とを比較して、より高精度な現在位置データを選択する位置選択ステップと、
前記絶対位置測定手段により求められた現在位置データが前記位置選択ステップで選択された場合には、当該選択された現在位置を基準点として設定する基準点設定ステップと
を含み、
前記自律測位ステップで求められた現在位置の前記精度指標は、前記基準点から累積的に精度が低下するように設定される
ことを特徴とする測位方法。
【請求項8】
現在位置の測定を行う絶対位置測定手段と、移動方向及び移動量を計測する移動計測手段とを備えた測位装置に用いられるコンピュータを、
前記移動計測手段により計測された移動方向及び移動量の情報を当該移動の始点の位置情報に積算していくことで、現在位置を算出する自律測位手段と、
前記絶対位置測定手段により求められた現在位置の精度を示す精度指標と、前記自律測位手段により求められた現在位置の精度指標とを比較して、より高精度な現在位置データを選択する位置選択手段と、
前記絶対位置測定手段により求められた現在位置データが前記位置選択手段によって選択された場合には、当該選択された現在位置を基準点として設定する基準点設定手段と、
として機能させるプログラムであって、
前記自律測位手段により求められた現在位置の前記精度指標は、前記基準点から累積的に精度が低下するように設定される
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−52898(P2012−52898A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195241(P2010−195241)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】