説明

測位装置、測位方法およびプログラム

【課題】自律航法用センサの方位計測の誤差修正を適宜行って、正確な位置情報を取得することのできる測位装置、測位方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】現在位置を測定可能な測位手段と、相対的な移動量の計測と移動方向の計測とを行う移動計測手段と、基準地点の位置情報に前記移動計測手段の計測結果に基づく変位情報を積算することで移動経路上の各地点の位置情報を算出する位置算出手段とを備えた測位装置において、移動中に任意のタイミング(A,B)で測位手段により現在位置の測定を連続的に行わせるとともに、当該測定により得られた複数の位置情報に基づいて移動方向(a1)を求め、この移動方向(a1)に基づいて移動計測手段の移動方向の計測誤差(θ1)を修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、測位装置、測位方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、自律航法機能を備えた測位装置がある。自律航法機能では、例えばGPS(全地球測位システム)など絶対位置の測定が可能な測位手段を用いて基準地点の測位を行い、その後、加速度センサや方位センサなどの自律航法用センサを利用して移動方向や移動量を計測し、基準地点の位置情報に自律航法用センサで取得した変位情報を積算していくことで、移動経路上の各地点の位置情報を算出していく。
【0003】
従来、自律航法機能を備えた測位装置において、自律航法用センサの方位計測に関わる誤差を修正して、自律航法機能による測位の精度を向上させる技術について幾つか提案されている(例えば、特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−238220号公報
【特許文献2】特開平11−230772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の自律航法用センサの誤差修正技術は、ある程度の距離を移動する間に、この移動経路上の複数地点の位置情報をGPSの測位と自律航法機能の測位によってそれぞれ求め、GPSの測位結果により示される移動経路の始端から終端にかけた移動方向と、自律航法機能の測位結果により示される同じ移動経路の始端から終端にかけた移動方向とをそれぞれ比較し、これらの移動方向のズレに基づいて自律航法用センサの方位計測の誤差を求めるものであった。
【0006】
しかしながら、自律航法機能により求められる位置情報には、移動方向の誤差だけではなく、移動量の誤差も含まれている。特に、ポータブルの測位装置に自律航法機能を付加した場合、自動車の車輪速センサなど正確な速度を検出するセンサを設けることができないため、移動量の誤差は比較的に大きくなる。
【0007】
そのため、上記従来の自律航法用センサの誤差修正技術では、移動経路の始端から終端にかけて直線状の経路を進んだときには、移動方向のズレがそのまま方位計測の誤差とほぼ一致するため、比較的正確に方位計測の誤差を修正することができる。一方、始端から終端にかけて一方向にのみカーブした移動経路を進んでいるときには、移動量の計測誤差が、始端を中心とした回転方向の誤差としても累積されていく。そのため、移動経路の始端から終端にかけた移動方向に方位計測以外の誤差も混入することになり、これらの移動方向の比較から自律航法用センサの方位計測の誤差を正確に求めることは困難となる。
【0008】
この発明の目的は、自律航法用センサの方位計測の誤差修正を適宜行って、自律航法機能により比較的に正確な位置情報を取得することのできる測位装置、測位方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
現在位置を測定可能な測位手段と、
相対的な移動量の計測と移動方向の計測とを行う移動計測手段と、
基準地点の位置情報に前記移動計測手段の計測結果に基づく変位情報を積算することで移動経路上の各地点の位置情報を算出する位置算出手段と、
移動中、任意のタイミングで、前記測位手段により現在位置の測定を連続的に行わせるとともに、当該測定により得られた複数の位置情報に基づいて移動方向を求める移動方向算出手段と、
前記移動方向算出手段により求められた移動方向と、前記移動計測手段により計測される移動方向とを比較して、当該移動計測手段の移動方向の計測誤差を求める誤差算出手段と、
を備えていることを特徴とする測位装置である。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記位置算出手段は、前記移動計測手段の計測結果から前記誤差算出手段により求められた計測誤差を除去する補正処理を行って、各地点の位置情報を算出することを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の測位装置において、
前記誤差算出手段により求められた移動方向の計測誤差に基づいて、前記位置算出手段により過去に算出された位置情報を補正する位置情報補正手段を備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項4記載の発明は、
現在位置を測定可能な測位手段と、
相対的な移動量の計測と移動方向の計測とを行う移動計測手段と、
基準地点の位置情報に前記移動計測手段の計測結果に基づく変位情報を積算することで移動経路上の各地点の位置情報を算出する位置算出手段と、
移動中、任意のタイミングで、前記測位手段により現在位置の測定を連続的に行わせるとともに、当該測定により得られた複数の位置情報に基づいて移動方向を求める移動方向算出手段と、
前記移動方向算出手段により求められた移動方向に基づいて、前記移動計測手段の移動方向の計測に対する較正処理を行う方位計測較正手段と、
を備えていることを特徴とする測位装置である。
【0013】
請求項5記載の発明は、
現在位置を測定可能な測位手段と、相対的な移動量の計測と移動方向の計測とを行う移動計測手段とを用いて、移動経路上の位置情報を求める測位方法において、
基準地点の位置情報に前記移動計測手段の計測結果に基づく変位情報を積算することで移動経路上の各地点の位置情報を算出する位置算出ステップと、
移動中、任意のタイミングで、前記測位手段により現在位置の測定を連続的に行わせるとともに、当該測定により得られた複数の位置情報に基づいて移動方向を求める移動方向算出ステップと、
前記移動方向算出ステップにより求められた移動方向と、前記移動計測手段により計測される移動方向とを比較して、当該移動計測手段の移動方向の計測誤差を求める誤差算出ステップと、
を含んでいることを特徴としている。
【0014】
請求項6記載の発明は、
現在位置を測定可能な測位手段と、相対的な移動量の計測と移動方向の計測とを行う移動計測手段とから測定結果をそれぞれ入力して、移動経路上の位置情報を求めるコンピュータに、
基準地点の位置情報に前記移動計測手段の計測結果に基づく変位情報を積算することで移動経路上の各地点の位置情報を算出する位置算出機能と、
移動中、任意のタイミングで、前記測位手段により現在位置の測定を連続的に行わせるとともに、当該測定により得られた複数の位置情報に基づいて移動方向を求める移動方向算出機能と、
前記移動方向算出機能により求められた移動方向と、前記移動計測手段により計測される移動方向とを比較して、当該移動計測手段の移動方向の計測誤差を求める誤差算出機能と、
を実現させるプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に従うと、測位手段による連続的な位置測定によって移動方向が求められ、これと移動計測手段により計測された移動方向とが比較されて、当該移動計測手段の移動方向に関する計測誤差が求められる。従って、移動方向の計測誤差のほかに移動量の計測にも誤差が生じる場合であっても、この移動量の計測誤差が移動方向の計測誤差を求める際に影響を与えない。それゆえ、正確に移動方向の計測誤差を求めることができ、この計測誤差を適宜補正してより正確な位置情報を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態であるナビゲーション装置の全体を示すブロック図である。
【図2】方位補正が行われた移動軌跡と方位補正が行われていない移動軌跡とを比較する説明図である。
【図3】未補正の位置データに対する方位補正処理の内容を示す説明図である。
【図4】CPUにより実行される移動測位処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態である測位装置としてのナビゲーション装置1の全体を示すブロック図である。
【0019】
この実施の形態のナビゲーション装置1は、移動中に測位処理を行って移動経路上の各地点の位置データを取得していく装置である。このナビゲーション装置1は、図1に示すように、装置の全体的な制御を行うCPU(中央演算処理装置)10と、CPU10に作業用のメモリ空間を提供するRAM11と、CPU10が実行する制御プログラムや制御データを格納したROM12と、GPS(全地球測位システム)衛星からの送信データを受信するためのGPS受信アンテナ13およびGPS受信部14と、自律航法用センサである3軸地磁気センサ15および3軸加速度センサ16と、各種の情報表示や画像表示を行う表示部18と、各部に動作電圧を供給する電源19と、自律航法用センサ(15,16)の計測データに基づいて自律航法の測位演算を行う自律航法制御処理部20と、3軸地磁気センサ15の計測誤差の補正処理を行う自律航法誤差補正処理部21等を備えている。
【0020】
GPS受信部14は、CPU10からの動作指令に基づいて、GPS受信アンテナ13を介して受信される信号の復調処理を行って、GPS衛星の各種送信データをCPU10に送る。CPU10は、このGPS衛星の送信データに基づいて所定の測位演算を行うことで、現在位置を表わす位置データを取得することができる。
【0021】
3軸地磁気センサ15は地磁気の方向を検出するセンサであり、3軸加速度センサ16は3軸方向の加速度をそれぞれ検出するセンサである。
【0022】
自律航法制御処理部20は、CPU10の演算処理を補助するためのものであり、所定のサンプリング周期で3軸地磁気センサ15と3軸加速度センサ16の計測データをCPU10を介して入力し、これらの計測データからナビゲーション装置1の移動方向と移動量とを算出していく。さらに、CPU10から供給される基準位置の位置データに、上記算出された移動方向および移動量からなるベクトルデータを積算していくことで、現在位置の位置データを求めてCPU10に供給する。
【0023】
自律航法誤差補正処理部21は、CPU10の演算処理を補助するためのものであり、CPU10から3軸地磁気センサ15の計測誤差の情報が設定されることで、この計測誤差の情報に基づいて3軸地磁気センサ15から出力される計測データの補正を行うものである。自律航法誤差補正処理部21は、3軸地磁気センサ15と自律航法制御処理部20との間に介在して、CPU10を介して3軸地磁気センサ15の計測データを受けると、これを補正して補正後の計測データをCPU10を介して自律航法制御処理部20に送るように構成されている。
【0024】
ROM12には、GPSを利用した位置測定と自律航法機能による位置測定とを併用して移動経路上の各地点の位置データを取得していく移動測位処理のプログラムが格納されている。このプログラムは、ROM12に格納するほか、例えば、データ読取装置を介してCPU10が読み取り可能な、例えば、光ディスク等の可搬型記憶媒体、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリに格納しておくことが可能である。また、このようなプログラムをキャリアウェーブ(搬送波)を媒体として通信回線を介してナビゲーション装置1にダウンロードされる形態を適用することもできる。
【0025】
次に、上記構成のナビゲーション装置1において実行される移動測位処理について説明する。以下、GPS衛星の送信データに基づく測位のことをGPS測位、自律航法機能による位置測定のことを自律航法測位と呼ぶ。
【0026】
図2には、移動測位処理で方位補正が行われた移動軌跡T1と方位補正が行われていない移動軌跡T2とを比較する説明図を示す。
【0027】
移動測位処理においては、GPS測位が一定時間ごとに行われる一方、GPS測位された地点を基準地点として自律航法測位が連続的に行われることで、移動経路上の各地点の位置データがナビゲーション装置1に取得されていく。図2には、ユーザが基準地点Aから基準地点Cまでナビゲーション装置1を携帯して道なりに進行して得られた一連の位置データの軌跡T1を示している。この例では、基準地点A,BでGPS測位が行われ、続いて、自律航法測位が連続的に行われて一連の位置データが取得されている。そして、自律航法測位が一定時間行われた後、基準地点Cにおいて再びGPS測位が行われている。
【0028】
この実施形態のナビゲーション装置1において、上記のGPS測位の際には、連続的に複数地点のGPS測位が行われ、このGPS測位により得られた連続的な複数地点の測位データから移動方向が算出される。図2の例では、基準地点A,Bの2つの地点でGPS測位が行われて、この2地点を結ぶ移動方向a1が算出されている。
【0029】
さらに、このGPS測位の際には、GPS測位と並行して、自律航法用センサ(15,16)の計測データに基づく移動方向a2についても計測される。この移動方向a2には、例えば3軸地磁気センサ15の測定誤差が含まれている。そして、これら2つの移動方向a1,a2のズレが算出されて、方位計測の誤差θ1が求められる。
【0030】
自律航法測位の際には、ナビゲーション装置1において3軸地磁気センサ15の計測データに対して上記の計測誤差θ1を除去するような補正処理が行われる。そして、補正処理された3軸地磁気センサ15の計測データと、3軸加速度センサ16の計測データに基づいて移動量と移動方向の算出が行われる。それにより、図2の軌跡T1に示すように、移動方向の誤差が補正された正確な位置データが求められる。補正処理を行わなかった場合には、図2の軌跡T2に示すように、移動方向の誤差が移動に伴って蓄積されて、求められる位置データが実際の地点から大きくずれてしまう。
【0031】
ナビゲーション装置1を携帯した移動が継続される場合には、上記の一定時間ごとのGPS測位と、連続的な自律航法測位とが繰り返し行われ、さらに、GPS測位の際には連続的なGPS測位により3軸地磁気センサ15の計測誤差が求められて、続く自律航法測位においてこの計測誤差を除去するように補正処理が行われる。このような移動測位処理によって、移動経路上の各地点の正確な位置データが継続して求められていく。
【0032】
なお、移動測位処理においては、移動開始の時点においてGPS衛星の電波が届いていないなど、GPS測位が行えない場合がある。このような場合、移動開始からGPS衛星の電波が受信できる地点に移動するまでは、自律航法測位によって方位計測の誤差補正を行わずに移動経路上の各地点の位置データを算出していく。そして、GPS測位が可能になった時点で、上述のように連続的なGPS測位を行って方位計測の誤差を求めるようになっている。
【0033】
さらに、方位計測の誤差を求めた段階で、その前段に誤差補正を行わずに自律航法測位によって一連の位置データが求められている場合には、これら一連の位置データに対して、事後的な方位補正処理が行われるようになっている。
【0034】
図3には、移動測位処理において過去に取得された未補正の位置データに対する方位補正処理の内容を表わした説明図を示す。
【0035】
図3の例は、ユーザが基準地点Eから基準地点Gまでナビゲーション装置1を携帯して道なりに進行した場合を示している。基準地点Eで一地点でのGPS測位あるいは移動開始地点のデータ入力等によって位置データが与えられ、その後、基準地点Eから基準地点Fに移動するまではGPS測位ができずに自律航法測位によって一連の位置データが取得されている例である。この一連の位置データを地図上に示したものが軌跡T3である。さらに、図3の例では、基準地点F,Gにおいて連続的なGPS測位が行われて、3軸地磁気センサ15の計測誤差が求められている。
【0036】
事後的な方位補正処理における3軸地磁気センサ15の計測誤差の求め方は、上述した方法と同様である。GPS測位により連続的な2つの基準地点G,Fの位置データを算出し、この2地点を結ぶ移動方向a3を求める。また、このGPS測位と並行して、自律航法用センサ(15,16)の計測データに基づいて移動方向a4を計測する。そして、これらGPS測位に基づく移動方向a3と、自律航法用センサの計測データに基づく移動方向a4とのズレを、方位計測の誤差θ2として求める。
【0037】
未補正の位置データに対する事後的な方位補正処理は、次のように行われる。すなわち、軌跡T3の任意の地点X1について説明すれば、地点X1の位置データを、GPS測位により位置データが求められている基準地点Eを中心として、方位計測の誤差θ2だけ回転移動させた位置データ、すなわち、地点X2の位置データに補正する。このような補正を、自律航法測位によって得られた基準地点Eから地点Hまでの位置データの全てに対して行う。このような補正処理により、移動方向の誤差が修正されて実際の移動経路に近い軌跡T4の位置データを得ることができる。
【0038】
なお、図3の例では、移動経路の始端である基準地点Eを中心とした回転により位置データを補正しているが、GPS測位により位置データが求められている他の地点(例えば基準地点G或いは基準地点F)を中心とした回転により位置データを補正することもできる。例えば、基準地点Gを中心とした回転により位置データを補正する場合には、先ず、軌跡T3の終端地点Hが基準地点Gと重なるように軌跡T3の位置データを全てへ平行移動させ、その後、軌跡T3を基準地点Gを中心に誤差θ2だけ回転させるように位置データを補正する。このような補正処理によっても、移動方向の誤差が修正された実際の移動経路に近い軌跡T4の位置データを得ることができる。
【0039】
図4には、CPU10により実行される移動測位処理のフローチャートを示す。次に、このフローチャートに基づき上記の移動測位処理を詳細に説明する。
【0040】
移動測位処理は、例えばナビゲーション装置1が電源オンされることで開始される。或いは、図示略の操作部によって始動操作が行われた場合に開始されるようにしても良い。
【0041】
移動測位処理が開始されると、先ず、CPU10はGPS受信部14にコマンドを発行してGPS衛星からの送信データの受信処理を行わせる(ステップS1)。そして、GPSの電波があるか否か判別して(ステップS2)、電波があれば、RAM11の所定領域に第2基準地点の測位データが記憶されているか確認する(ステップS3)。さらに、第2基準地点の測位データがなければ、RAM11の所定領域に第1基準地点の測位データが記憶されているか確認する(ステップS4)。第1基準地点の測位データおよび第2基準地点の測位データとは、GPS測位によって移動方向を求めるために連続的な2つの地点についてGPS測位により求められる位置データである。
【0042】
ステップS2,S3の判別処理の結果、両方の測位データがなければステップS5に移行する。そして、ステップS1で受信したGPS衛星の送信データに基づきGPS測位演算を行って現在位置を表わす位置データを算出する(ステップS5)。そして、この位置データを第1基準地点の測位データとしてRAM11に記憶する(ステップS6)。そして、再び、ステップS1に戻る。
【0043】
一方、ステップS2,S3の判別処理の結果、第2基準地点の測位データが無くて、第1基準地点の測位データがあれば、ステップS7に移行する。そして。ステップS1で受信したGPS衛星の送信データに基づきGPS測位演算を行って現在位置を表わす位置データを算出する(ステップS7)。そして、第1基準地点と現在地点が同じ位置か(例えば、測定誤差以上離れているか)否かを判別し(ステップS8)、同じ位置でないと判別されれば、算出した位置情報を第2基準地点の測位データとしてRAM11に記憶する(ステップS9)。一方、同じ位置であると判別されればステップS1に戻る。
【0044】
ステップS9で第2基準地点の測位データが記憶されたら、続いて、CPU10は自律航法制御処理部20に演算処理を実行させて移動方向の計測データを取得する(ステップS10)。3軸地磁気センサ15と3軸加速度センサ16の計測データは所定のサンプリング周期で自律航法制御処理部20に送られているので、ステップS10で取得される移動方向の計測データは、ナビゲーション装置1が第1基準地点から第2基準地点へ移動したときの計測データとなる。
【0045】
自律航法制御処理部20から移動方向の計測データを取得したら、CPU10は、第1基準地点と第2基準地点の測位データから第1基準地点から第2基準地点までの移動方向を求め、自律航法により求められた移動方向とのズレを算出する。そして、この方向のズレから3軸地磁気センサ15の計測誤差を計算して、算出された計測誤差を自律航法誤差補正処理部21に設定する(ステップS11:誤差算出手段)。続いて、一定時間ごとにGPS測位を行うためにタイマーをリセットする(ステップS12)。
【0046】
次に、CPU10は、移動開始時に連続的なGPS測位が行えなかった場合など、方位補正が行われないまま自動航法測位によって算出された未補正の位置データがRAM11等に格納されていないか確認する(ステップS13)。そして、未補正の位置データがなければ、このままステップS1に戻る。
【0047】
一方、未補正の位置データがあれば、図3で説明したように、CPU10は、未補正の位置データに対して移動方向の誤差を除去する方位補正処理を行って(ステップS14:位置情報補正手段)、ステップS1に戻る。
【0048】
ステップS2の判別処理でGPSの電波がないと判別されるか、或いは、第1と第2の基準地点の測位データが記憶されていて、ステップS3の判別処理で“YES”側に分岐した場合には、自律航法測位を行うためにステップS15へ移行する。
【0049】
ステップS15に移行すると、CPU10は、先ず、自律航法制御処理部20に3軸地磁気センサ15の計測データを送って方位計測処理を行わせ(ステップS15)、次いで、自律航法誤差補正処理部21により方位計測の補正処理を行わせる(ステップS16)。そして、自律航法制御処理部20に3軸加速度センサ16の計測データと補正後の方位計測データを送って移動方向および移動距離の計測処理を行わせる(ステップS17)。さらに、この計測された移動方向および移動距離からなるベクトルデータを前段の位置データに加算して、現在位置の位置データを確定する(ステップS18)。確定された位置データは、RAM11や図示略の記憶装置に順番に格納される。
【0050】
位置データを確定したら、ステップS12で開始したタイマーカウントが一定時間を超えているか判別し(ステップS19)、超えていなければそのままステップS1に戻るが、超えていれば、再び、GPS測位を連続して行うためにRAM11の所定領域に記憶されている第1および第2の基準地点の測位データをクリアして(ステップS20)、ステップS1に戻る。
【0051】
このような移動測位処理によれば、タイマーにより一定時間のカウントが行われるごとに、ステップS5,S6の処理やステップS7〜S12の処理が行われて、GPS測位により連続的な2地点(第1基準地点と第2基準地点)の測位データが取得され、これらの測位データから3軸地磁気センサ15の測定誤差が求められる。
【0052】
そして、タイマーにより一定時間のカウントがなされるまでの期間、ステップS15〜S18の処理が繰り返されて、移動方向の計測誤差が補正されつつ、自律航法測位が継続的に行われて移動経路上の各地点の位置データが取得されるようになっている。
【0053】
以上のように、この実施形態のナビゲーション装置1、その測位方法、ならびに、移動測位処理のプログラムによれば、GPS測位を連続的に複数の地点で行うことで移動方向を求めるとともに、ほぼ同時に自律航法用センサ(15,16)の計測データに基づく移動方向を算出して、両者を比較することで、自律航法用センサ(15,16)の方位の計測誤差が求められるようになっている。従って、自律航法制御処理部20により算出される移動量のデータに誤差が生じる場合でも、この移動量の誤差が方位計測の誤差を求める際に影響を及ぼすことがなく、正確に方位計測の誤差を求めることができる。
【0054】
さらに、自律航法測位を行う際には、3軸地磁気センサ15の計測データに対して、上記求められた計測誤差を除去するように補正処理がなされ、補正された計測データに基づいて相対的な移動方向と移動量の算出が行われる。そのため、移動方向の誤差が修正された正確な位置データを取得していくことができる。
【0055】
また、方位計測の誤差を求める前に、未補正の位置データが取得されている場合には、事後的な補正処理により、移動方向の誤差が修正された正確な位置データに補正することも可能になっている。
【0056】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では、自律航法測位の演算や計測データの補正処理を、自律航法制御処理部20や自律航法誤差補正処理部21により実行させる例を示したが、これらの演算をCPU10のソフトウェア処理により実現するようにしても良い。
【0057】
また、上記実施形態では、測位手段として、GPSを利用して測位を行う構成を例示したが、例えば、携帯電話の基地局との通信により測位を行う構成や、位置情報を外部から入力することで測位情報を得る構成など、その他の種々の構成を適用することができる。また、相対的な位置変動の計測を行う移動計測手段として、3軸地磁気センサ、3軸加速度センサを例示したが、二次元方向の位置データのみを取得できれば良く、装置の天地の向きが一定となるものであれば、2軸の方位センサや2軸の加速度センサを用いることもできる。
【0058】
また、方位計測を行う手段として、相対角度を検出するジャイロスコープなどを用いることもできる。この場合、GPS測位により求められた移動方向を、基準方位として設定する較正処理を行う方位計測較正手段をナビゲーション装置1に設け、その後の角度変化の計測をジャイロスコープにより行って、各地点での移動方向を求めていくようにしても良い。このように構成しても、自律航法センサによる移動量に関する計測誤差があっても、この計測誤差に影響を受けることなく、移動方向の計測を正確に行うことが可能となる。
【0059】
また、方位計測を行う手段として地磁気センサを用いた場合でも、地磁気センサにより絶対的な地磁気の方向を検出するのではなく、時間経過に伴う相対的な方向変化を計測する構成を適用してもよい。この場合でも、GPS測位により求められた移動方向を、基準方位として設定する較正処理を行う方位計測較正手段をナビゲーション装置1に設け、その後の方位変化の計測を地磁気センサにより行って、各地点での移動方向を求めていくようにしても良い。このように構成しても、自律航法センサによる移動量に関する計測誤差があっても、この計測誤差に影響を受けることなく、移動方向の計測を正確に行うことが可能となる。
【0060】
また、上記実施形態では、GPS測位により連続的な2地点の測位を行って移動方向を算出しているが、3地点や4地点など連続的な複数地点の測位を行って移動方向を算出するようにしても良い。この場合、連続的な複数地点の測位により直線的な移動が行われていないと判断した場合には、移動方向の算出を中止したり、或いは、連続的な複数地点の測位データから、直線的な移動が行われている地点の測位データのみ抽出して、これらから移動方向の算出を行うようにしても良い。
【0061】
また、上記実施形態では、ポータブルのナビゲーション装置1に本発明を適用した例を示したが、移動体に据付型の測位装置に本発明を適用することもできる。その他、実施形態で具体的に示した細部等は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 ナビゲーション装置
10 CPU
11 RAM
12 ROM
13 GPS受信アンテナ
14 GPS受信部
15 3軸地磁気センサ
16 3軸加速度センサ
18 表示部
20 自律航法制御処理部
21 自律航法誤差補正処理部
A,B 連続的な基準地点
G,F 連続的な基準地点
θ1,θ2 方位計測誤差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在位置を測定可能な測位手段と、
相対的な移動量の計測と移動方向の計測とを行う移動計測手段と、
基準地点の位置情報に前記移動計測手段の計測結果に基づく変位情報を積算することで移動経路上の各地点の位置情報を算出する位置算出手段と、
移動中、任意のタイミングで、前記測位手段により現在位置の測定を連続的に行わせるとともに、当該測定により得られた複数の位置情報に基づいて移動方向を求める移動方向算出手段と、
前記移動方向算出手段により求められた移動方向と、前記移動計測手段により計測される移動方向とを比較して、当該移動計測手段の移動方向の計測誤差を求める誤差算出手段と、
を備えていることを特徴とする測位装置。
【請求項2】
前記位置算出手段は、
前記位置算出手段は、前記移動計測手段の計測結果から前記誤差算出手段により求められた計測誤差を除去する補正処理を行って、各地点の位置情報を算出することを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項3】
前記誤差算出手段により求められた移動方向の計測誤差に基づいて、前記位置算出手段により過去に算出された位置情報を補正する位置情報補正手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の測位装置。
【請求項4】
現在位置を測定可能な測位手段と、
相対的な移動量の計測と移動方向の計測とを行う移動計測手段と、
基準地点の位置情報に前記移動計測手段の計測結果に基づく変位情報を積算することで移動経路上の各地点の位置情報を算出する位置算出手段と、
移動中、任意のタイミングで、前記測位手段により現在位置の測定を連続的に行わせるとともに、当該測定により得られた複数の位置情報に基づいて移動方向を求める移動方向算出手段と、
前記移動方向算出手段により求められた移動方向に基づいて、前記移動計測手段の移動方向の計測に対する較正処理を行う方位計測較正手段と、
を備えていることを特徴とする測位装置。
【請求項5】
現在位置を測定可能な測位手段と、相対的な移動量の計測と移動方向の計測とを行う移動計測手段とを用いて、移動経路上の位置情報を求める測位方法において、
基準地点の位置情報に前記移動計測手段の計測結果に基づく変位情報を積算することで移動経路上の各地点の位置情報を算出する位置算出ステップと、
移動中、任意のタイミングで、前記測位手段により現在位置の測定を連続的に行わせるとともに、当該測定により得られた複数の位置情報に基づいて移動方向を求める移動方向算出ステップと、
前記移動方向算出ステップにより求められた移動方向と、前記移動計測手段により計測される移動方向とを比較して、当該移動計測手段の移動方向の計測誤差を求める誤差算出ステップと、
を含んでいることを特徴とする測位方法。
【請求項6】
現在位置を測定可能な測位手段と、相対的な移動量の計測と移動方向の計測とを行う移動計測手段とから測定結果をそれぞれ入力して、移動経路上の位置情報を求めるコンピュータに、
基準地点の位置情報に前記移動計測手段の計測結果に基づく変位情報を積算することで移動経路上の各地点の位置情報を算出する位置算出機能と、
移動中、任意のタイミングで、前記測位手段により現在位置の測定を連続的に行わせるとともに、当該測定により得られた複数の位置情報に基づいて移動方向を求める移動方向算出機能と、
前記移動方向算出機能により求められた移動方向と、前記移動計測手段により計測される移動方向とを比較して、当該移動計測手段の移動方向の計測誤差を求める誤差算出機能と、
を実現させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−7736(P2011−7736A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153795(P2009−153795)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】