説明

測位装置、測位方法及びプログラム

【課題】ユーザの現在位置の測位を行う測位装置において、ユーザの移動状態から有り得ない誤った測位結果が使用されることを防止する。
【解決手段】撮像装置1AのCPU10は、GPSユニット31における前回の測位結果と今回の測位結果に基づいて、ユーザの前回の測位位置からの移動距離Lを算出し、3軸加速度センサ16により検出されたユーザの移動状態に基づいて前回の測位位置からユーザが移動し得る距離の許容範囲を設定し、算出された移動距離Lが設定された許容範囲内である場合にGPSユニット31による測位結果を使用し、算出された移動距離Lが設定された許容範囲内ではない場合にGPSユニット31による測位結果を使用しないように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位装置、測位方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、GPS(全地球測位システム)や自律航法により測位を行う測位装置が知られている。例えば、特許文献1には、自律航法により自機の位置を検出し、GPSを用いて自機位置を修正するナビゲーション装置が記載されている。このナビゲーション装置では、高層建造物等の障害物が密集する場所で障害物の反射波による伝搬遅延(マルチパス)を検出し、マルチパス検出時にはGPSによる位置修正を行わないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−180191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、GPSによる測位には、例えば、上述のマルチパスのほか、受信機雑音、電離層遅延、対流圏遅延、GPS衛星の原子時計誤差、GPS衛星の起動誤差等、様々な要因による測位誤差が生じる。測位誤差は、実用に耐えうる許容範囲であれば問題ないが、例えば、測位装置のユーザが停止している状態であるにもかかわらず、測位結果が前回の測位位置から数十メートル移動しているような場合は、その測位結果は明らかに誤りであり、この測位結果をユーザに提供することは好ましくない。
【0005】
本発明の課題は、ユーザの現在位置の測位を行う測位装置において、ユーザの移動状態から有り得ない誤った測位結果が使用されることを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
ユーザに携帯される測位装置であって、
現在位置を測定する測位手段と、
前記測位手段における測位結果の履歴を記憶する記憶手段と、
前記ユーザの移動状態を検出するユーザ状態検出手段と、
前記測位手段における前回の測位結果と今回の測位結果に基づいて、前記ユーザの前回の測位位置からの移動距離を算出し、前記ユーザ状態検出手段により検出されたユーザの移動状態に基づいて、前回の測位位置から前記ユーザが移動し得る距離の許容範囲を設定し、前記算出された移動距離が前記設定された許容範囲内である場合に前記測位手段による測位結果を使用し、前記算出された移動距離が前記設定された許容範囲内ではない場合に前記測位手段による測位結果を使用しないように制御する制御手段と、
を備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記測位手段は、GPS衛星からの信号を受信して現在位置を測定する測位手段であり、
自律航法により現在位置を測定する自律航法測位手段を更に備え、
前記制御手段は、前記算出された移動距離が前記設定された許容範囲内である場合に前記測位手段による測位結果を使用し、前記算出された移動距離が前記設定された許容範囲内ではない場合に前記測位手段による測位結果を使用せずに前記自律航法測位手段による測位結果を使用するように制御する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記制御手段は、少なくとも前記ユーザ状態検出手段により検出されたユーザの移動状態において前記測位手段の測位間隔の時間内にユーザが移動可能な距離と、前記測位手段から出力される位置精度劣化係数とに基づいて、前記許容範囲を設定する。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、
前記制御手段は、少なくとも前記ユーザ状態検出手段により検出されたユーザの移動状態において前記測位手段の測位間隔の時間内にユーザが移動可能な距離と、前記測位手段から出力されるS/N比とに基づいて、前記許容範囲を設定する。
【0010】
請求項5に記載の発明は、
ユーザに携帯され、現在位置を測定する測位手段と、前記測位手段における測位結果の履歴を記憶する記憶手段と、前記ユーザの移動状態を検出するユーザ状態検出手段と、を備える測位装置における測位方法であって、
前記測位手段における前回の測位結果と今回の測位結果に基づいて、前記ユーザの前回の測位位置からの移動距離を算出するステップと、
前記ユーザ状態検出手段により検出された前記ユーザの移動状態に基づいて、前回の測位位置から前記ユーザが移動し得る距離の許容範囲を設定するステップと、
前記算出された移動距離が前記設定された許容範囲内である場合に前記測位手段による測位結果を使用し、前記算出された移動距離が前記設定された許容範囲内ではない場合に前記測位手段による測位結果を使用しないように制御するステップと、
を含む。
【0011】
請求項6に記載の発明のプログラムは、
ユーザに携帯され、現在位置を測定する測位手段と、前記測位手段における測位結果の履歴を記憶する記憶手段と、前記ユーザの移動状態を検出するユーザ状態検出手段と、を備える測位装置に用いられるコンピュータを、
前記測位手段における前回の測位結果と今回の測位結果に基づいて、前記ユーザの前回の測位位置からの移動距離を算出し、前記ユーザ状態検出手段により検出された前記ユーザの移動状態に基づいて、前回の測位位置から前記ユーザが移動し得る距離の許容範囲を設定し、前記算出された移動距離が前記設定された許容範囲内である場合に前記測位手段による測位結果を使用し、前記算出された移動距離が前記設定された許容範囲内ではない場合に前記測位手段による測位結果を使用しないように制御する制御手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ユーザの現在位置の測位を行う測位装置において、ユーザの移動状態から有り得ない誤った測位結果が使用されることを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態における撮像装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図2】図1の移動履歴記憶領域のデータ格納例を示す図である。
【図3】図1のCPUにより実行される測位処理Aを示すフローチャートである。
【図4】第2の実施の形態における撮像装置の機能的構成を示すブロック図である。
【図5】図4のCPUにより実行される測位処理Bを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明に係る好適な実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態における測位装置としての撮像装置1Aの機能的構成を示すブロック図である。
【0016】
撮像装置1Aは、ユーザに携帯され、ユーザの現在位置を測定する測位機能を有する。
図1に示すように、装置の全体的な制御を行うCPU(中央演算処理装置)10と、CPU10に作業用のメモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)11と、CPU10が実行する制御プログラムや制御データを格納したROM(Read Only Memory)
12と、GPS(全地球測位システム)衛星からの送信データを受信するためのGPS受信アンテナ13およびGPS受信部14と、3軸加速度センサ16と、各種の情報表示や画像表示を行う表示部18と、各部に動作電圧を供給する電源19と、外部から操作指令を入力する操作部20と、撮像により画像データを取得する撮像部21と、各種データを記憶する記憶装置22と、計時を行うタイマ23と、地図データベース24と、を備えている。
【0017】
GPS受信部14は、CPU10からの動作指令に基づいて、GPS受信アンテナ13を介して受信される信号の復調処理を行って、GPS衛星の各種送信データを取得する。そして、GPS受信部14は、このGPS衛星の送信データに基づいて所定の測位演算を行うことで、現在位置を表わす位置データを測位結果として取得することができる。GPS受信アンテナ13及びGPS受信部14は、現在位置を測定する測位手段としてのGPSユニット31を構成する。
【0018】
3軸加速度センサ16は、3軸方向の加速度をそれぞれ検出し、CPU10に出力するセンサである。本実施の形態において、3軸加速度センサ16は、撮像装置1Aを携帯しているユーザの移動状態(停止状態、歩行状態、走行状態、その他状態)を検出するユーザ状態検出手段として機能する。
【0019】
撮像部21は、撮像レンズ、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の光電変換素子、A/D変換部等を備えている。撮像部21では、撮像レンズにより取り込まれた光学像を光電変換素子により画像信号に変換し、この画像信号をA/D変換部によりデジタル画像情報(画像データ)に変換し、画像データを取得する。
【0020】
記憶装置22は、例えばRAMまたは不揮発性メモリなどにより構成される。記憶装置22は、画像記憶領域221、移動履歴記憶領域222を有している。
画像記憶領域221は、撮像部21において取得された画像データを記憶するための領域である。画像データには、撮影地点の位置データが付加されて記憶される。
移動履歴記憶領域222は、GPS受信部14によって取得された位置データを順次記憶するための領域である。移動履歴記憶領域222においては、図2に示すように、位置データの取得順序を表わすインデックスナンバー「No.」、位置データが取得されたときの時刻を表わす時刻データ、位置データが使用可能であるか否かを示すフラグ(ここでは、フラグ=1の場合、使用可能)等が、それぞれ位置データに対応付けて記憶されるようになっている。
【0021】
次に、上記構成の撮像装置1AのCPU10において実行される測位処理Aについて説明する。図3は、測位処理Aを示すフローチャートである。測位処理Aは、撮像装置1Aの電源がオンされた際に開始され、CPU10とROM12に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0022】
測位処理Aにおいては、まず、GPSユニット31の各部が起動される(ステップS1)。
【0023】
次いで、タイマ23に測位間隔T秒がセットされ計時が開始されるとともに、GPS受信部14に測位を指示するコマンドが出力され、GPS測位(GPSユニット31による現在位置の測定)が実施される(ステップS2)。即ち、GPS受信部14において、GPS受信アンテナ13を介して受信されるGPS衛星からの信号の復調処理が行われることによりGPS衛星の各種送信データが取得され、取得された送信データに基づいて所定の測位演算が行われることにより、現在位置を表わす位置データが取得される。取得された位置データはCPU10に出力され、記憶装置22の移動履歴記憶領域222にインデックスナンバー、現在の時刻データと対応付けて記憶される。
【0024】
次いで、移動履歴記憶領域222から前回の測位時の位置データが読み出され、前回のGPS測位により取得された位置データと今回のGPS測位により取得された位置データに基づいて、前回の測位位置からの移動距離Lが算出される(ステップS3)。
【0025】
次いで、3軸加速度センサ16において検出された加速度の値に基づいて、現在のユーザの移動状態が停止状態か、歩行状態か、走行状態か、その他の状態か、が判断される(ステップS4)。ここで、走行状態とは、ユーザ自身が走行していることを指す。その他の状態とは、ユーザが乗り物(例えば、自転車、電車、自動車等)に載って移動中の状態等が挙げられる。ステップS4においては、例えば、3軸加速度センサ16において加速度が検出されていない場合、ユーザは停止状態であると判断される。3軸加速度センサ16から検出された縦方向の振動の周期が2Hz以下である場合、ユーザは歩行状態であると判断される。3軸加速度センサ16から検出された縦方向の振動の周期が2Hzを超えた場合、ユーザは走行状態であると判断される。3軸加速度センサ16から縦方向の振動がほとんどなく(予め定められた閾値以下であり)、横方向のみ加速度が検出された場合、及び、検出後、逆の加速度が検出されていない状態である場合、ユーザはその他状態であると判断される。
【0026】
ステップS4において現在のユーザの移動状態が判断されると、ステップS5〜ステップS14において、ユーザの移動状態に基づいて、移動距離Lが前回の測位位置からユーザが移動し得る距離の許容範囲内であるか否かを判断するための閾値Dを設定する処理が行われる。閾値Dは、ユーザの移動状態においてT秒間(測位間隔)でユーザが移動可能な距離D1とすることができる。D1には、所定の測位誤差を含めてもよい。また、GPS衛星の配置に起因した測位精度劣化係数(DOP値)に応じた測位誤差D2や受信機雑音(S/N比)の程度に応じた測位誤差D3等、測位時の状況に応じた測位誤差を考慮して閾値Dを設定することもできる。このように測位時の状況を考慮して閾値Dを設定することにより、むやみにGPSの測位結果が使用されなくなってしまうことを防止することができる。本実施の形態においては、D=D1+D2+D3により算出することとする。
【0027】
ステップS4において、現在のユーザの移動状態が停止状態であると判断されると(ステップS4;停止)、D1=S×T(S=0.5m/秒)が算出される(ステップS5)。Sは、停止状態において1秒間でユーザが移動可能な距離(所定の測位誤差を含む)として実験的経験的に予め求められた値である。
【0028】
ステップS4において、現在のユーザの移動状態が歩行状態であると判断されると(ステップS4;歩行)、D1=W×T(W=1.6m/秒)が算出される(ステップS6)。Wは、歩行状態において1秒間でユーザが移動可能な距離(所定の測位誤差を含む)として実験的経験的に予め求められた値である。
【0029】
ステップS4において、現在のユーザの移動状態が走行状態であると判断されると(ステップS4;走行)、D1=R×T(R=4.0m/秒)が算出される(ステップS7)。Rは、走行状態において1秒間でユーザが移動可能な距離(所定の測位誤差を含む)として実験的経験的に予め求められた値である。
【0030】
一方、現在のユーザの移動状態がその他状態であると判断されると(ステップS4;その他)、処理はステップS16に移行する。
【0031】
D1の算出後、DOP値が良好な範囲であるか否かが判断される(ステップS8)。例えば、GPS受信部14からDOP値(PDOP)が取得され、DOP値が所定値(例えば、6)以上である場合、DOP値は良好な範囲ではない(不良)であると判断され、所定値未満である場合、DOP値は良好な範囲であると判断される。
【0032】
ステップS8において、DOP値が良好な範囲であると判断されると(ステップS8;良好)、D2=1.0が設定される(ステップS9)。ステップS8において、DOP値が良好な範囲ではないと判断されると(ステップS8;不良)、D2=2.0が設定される(ステップS10)。
【0033】
D2の算出後、受信機(GPSユニット31)の信号状態が良好であるか否かが判断される(ステップS11)。具体的には、GPS受信部14からS/N比が取得され、取得されたS/N比が所定値(例えば、28dB−Hz)以下である場合、受信機の信号状態は不良であると判断され、所定値以上である場合、受信機の信号状態は良好であると判断される。
【0034】
ステップS11において、受信機の信号状態が良好であると判断されると(ステップS11;良好)、D3=0.3が設定される(ステップS12)。ステップS11において、受信機の信号状態が不良であると判断されると(ステップS11;不良)、D3=0.6が設定される(ステップS13)。
【0035】
D3の算出後、D=D1+D2+D3が算出される(ステップS14)。そして、移動距離L≦Dであるか否かが判断される(ステップS15)。L≦Dである、即ち、移動距離Lが、ユーザの移動状態において前回の測位位置からユーザが移動し得る距離の許容範囲内であると判断されると(ステップS15;YES)、ステップS2において取得された位置データが使用されるとともに、ステップS2において移動履歴記憶領域222に記憶された今回の位置データに使用可能フラグが付加され(ステップS16)、処理はステップS17に移行する。L>Dである、即ち、移動距離Lが、ユーザの移動状態において前回の測位位置からユーザが移動し得る距離の許容範囲を超えていると判断されると(ステップS15;NO)、ステップS2において取得された位置データは使用されずに、処理はステップS17に移行する。
移動距離Lが閾値Dを超えている場合は、GPSによる測位結果が、例えば電波の反射等を受ける等により大幅にずれているものとなっており、実用に耐え得ないので、GPSによる位置データは使用されない。
【0036】
例えば、当該測位処理Aと並行して行われている処理(第2の処理と呼ぶ)において表示部18においてユーザの移動した軌跡を地図上に表示しているような場合、ステップS15の判断がYESであれば、第2の処理に位置データが出力され、第2の処理によって当該位置データに基づいてユーザの位置の表示が行われる。ステップS15の判断がNOであれば、第2の処理に位置データが出力されず、位置データに基づくユーザの位置の表示は行われない。
また、例えば、第2の処理において、撮像部21で取得された画像データに撮影地点の位置データを付加して画像記憶領域221に記憶しているような場合、ステップS15の判断がYESであれば、第2の処理に位置データが出力され、当該位置データが撮像部21で取得された画像データに付加されて画像記憶領域221に記憶される。ステップS15の判断がNOであれば、第2の処理に位置データが出力されず、撮像部21で取得された画像データに位置データが付加されずに画像記憶領域221に記憶される。
【0037】
ステップS17においては、タイマ23による計時がT秒を経過したか否かが判断され、T秒を経過したと判断されると(ステップS17;YES)、処理はステップS2に戻り、ステップS2以降の処理が繰り返し実行される。測位処理Aは、撮像装置1Aの電源がOFFされるまで繰り返し実行される。
【0038】
上記測位処理Aでは、現在のユーザの移動状態を判断し、移動距離Lが現在のユーザの移動状態において移動可能な範囲を超えている場合はGPS受信部14からの位置データを使用しないため、ユーザの移動状態から有り得ない誤った測位結果が使用されることを防止することが可能となる。
また、移動履歴記憶領域222に記憶する位置データに使用可能であるか否かを示すフラグを付加して記憶するので、移動履歴記憶領域222に記憶されている位置データが移動可能な範囲を超えていると判断された位置データである場合に、その旨をユーザに音声や表示等により通知することで、ユーザに誤った測位結果であることを認識させることが可能となる。
【0039】
[第2の実施の形態]
以下、本発明の第2の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図4は、第2の実施の形態における測位装置としての撮像装置1Bの機能的構成を示すブロック図である。
【0040】
撮像装置1Bは、ユーザに携帯され、ユーザの現在位置を測定する測位機能を有する。
撮像装置1Bは、図4に示すように、現在位置を検出する測位手段として、GPSユニット31のほか、3軸地磁気センサ15、3軸加速度センサ16及び自律航法制御処理部17により構成される自律航法ユニット32を備えている。
即ち、撮像装置1Bの構成は、図4に示すように、図1に示す撮像装置1Aの構成に、自律航法用のセンサを構成する3軸地磁気センサ15と、自律航法用センサ(15,16)の計測データに基づいて自律航法による測位演算を行う自律航法制御処理部17と、が付加されたものである。
【0041】
3軸地磁気センサ15は地磁気の方向を検出するセンサである。
自律航法制御処理部17は、CPU10の演算処理を補助するための専用のハードウエアであり、所定のサンプリング周期で3軸地磁気センサ15と3軸加速度センサ16の計測データをCPU10を介して入力し、これらの計測データからナビゲーション装置1の移動方向と移動量とを算出していく。さらに、CPU10から供給される基準地点の位置データに、上記算出された移動方向および移動量からなるベクトルデータを積算していくことで、移動地点の位置データを求めてCPU10に供給する。
【0042】
また、第2の実施の形態において、移動履歴記憶領域222は、GPS受信部14から出力された位置データを記憶するGPS用領域222aと、自律航法制御処理部17から出力された位置データを記憶する自律航法用領域222bと、を有する。
その他の撮像装置1Bの各部の構成は、撮像装置1Aで説明した同名の各部と同様であるので説明を援用する。
【0043】
次に、上記構成の撮像装置1AのCPU10において実行される測位処理Bについて説明する。図5は、測位処理Bを示すフローチャートである。測位処理Bは、撮像装置1Bの電源がオンされた際に開始され、CPU10とROM12に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0044】
測位処理Bにおいては、まず、GPSユニット31及び自律航法ユニット32の各部が起動される(ステップS21)。
【0045】
次いで、タイマ23に測位間隔T秒がセットされ計時が開始されるとともに、GPS受信部14に測位を指示するコマンドが出力され、GPS測位(GPSユニット31による現在位置の測定)が実施される(ステップS22)。即ち、GPS受信部14において、GPS受信アンテナ13を介して受信される信号の復調処理が行われることによりGPS衛星の各種送信データが取得され、取得された送信データに基づいて所定の測位演算が行われることにより、現在位置を表わす位置データが取得される。取得された位置データはCPU10に出力され、移動履歴記憶領域222のGPS用領域222aにインデックスナンバー、現在の時刻データと対応付けて記憶される。
【0046】
次いで、自律航法制御処理部17に測位を指示するコマンドが出力され、自律航法測位が実行される(ステップS23)。即ち、自律航法制御処理部17において、CPU10から入力された3軸地磁気センサ15と3軸加速度センサ16の計測データに基づいて、撮像装置1Bの移動方向と移動量とが算出される。さらに、CPU10から供給される基準地点の位置データに、上記算出された移動方向および移動量からなるベクトルデータが積算され、現在位置を表す位置データが取得される。取得された位置データはCPU10に出力され、移動履歴記憶領域222の自律航法用領域222bにインデックスナンバー、現在の時刻データと対応付けて記憶される。
【0047】
次いで、移動履歴記憶領域222のGPS用領域222aから前回の位置データが読み出され、前回の測位位置からの移動距離Lが算出される(ステップS24)。
【0048】
次いで、3軸加速度センサ16において検出された加速度の値に基づいて、現在のユーザの移動状態が停止状態か、歩行状態か、走行状態か、その他の状態か、が判断される(ステップS25)。現在のユーザ状態の判断基準は、第1の実施の形態で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0049】
ステップS25において現在のユーザの移動状態が判断されると、ステップS26〜ステップS35において、ユーザの移動状態に基づいて、移動距離Lが前回の測位位置からユーザが移動し得る距離の許容範囲内であるか否かを判断するための閾値Dを設定する処理が行われる。ステップS26〜ステップS35の処理は、第1の実施の形態のステップS5〜ステップS14の処理と同様であるので説明を援用する。
【0050】
閾値Dが算出されると、移動距離L≦Dであるか否かが判断される(ステップS36)。L≦Dである、即ち、移動距離Lが、ユーザの移動状態において前回の測位位置からユーザが移動し得る距離の許容範囲内であると判断されると(ステップS36;YES)、ステップS22においてGPS測位により取得された位置データが使用されるとともに、ステップS22においてGPS用領域222aに記憶された今回の位置データに使用可能フラグが付加され(ステップS37)、処理はステップS39に移行する。L>Dである、即ち、移動距離Lが、ユーザの移動状態において前回の測位位置からユーザが移動し得る距離の許容範囲を超えていると判断されると(ステップS36;NO)、ステップS22において取得されたGPS測位による位置データは使用されずに、ステップS23において取得された自律航法測位による位置データが使用されるとともに、ステップS23において自律航法用領域222bに記憶された今回の位置データに使用可能フラグが付加され(ステップS38)、処理はステップS39に移行する。
移動距離Lが閾値Dを超えている場合は、GPSによる測位結果が電波の反射等を受けて大幅にずれているものとなっており、実用に耐えないので、GPSによる位置データは使用されず、自律航法による測位結果が使用される。
【0051】
例えば、当該測位処理Bと並行して行われている処理(第2の処理と呼ぶ)において表示部18においてユーザの移動した軌跡を地図上に表示しているような場合、ステップS36の判断がYESであれば、第2の処理にGPS測位による位置データが出力され、第2の処理によってGPS測位による位置データに基づいてユーザの位置の表示が行われる。ステップS36の判断がNOであれば、第2の処理に自律航法測位による位置データが出力され、第2の処理によって自律航法測位による位置データに基づいてユーザの位置の表示が行われる。
また、例えば、第2の処理において、撮像部21で取得された画像データに撮影地点の位置データを付加して画像記憶領域221に記憶しているような場合、ステップS36の判断がYESであれば、第2の処理にGPS測位による位置データが出力され、第2の処理によってGPS測位による位置データが撮像部21で取得された画像データに付加されて画像記憶領域221に記憶される。ステップS36の判断がNOであれば、第2の処理に自律航法測位による位置データが出力され、第2の処理によって自律航法測位による位置データが撮像部21で取得された画像データに付加されて画像記憶領域221に記憶される。
【0052】
ステップS39においては、タイマ23による計時がT秒を経過したか否かが判断され、T秒を経過したと判断されると(ステップS39;YES)、処理はステップS22に戻り、ステップS22以降の処理が繰り返し実行される。測位処理Bは、撮像装置1Bの電源がOFFされるまで繰り返し実行される。
【0053】
上記測位処理Bでは、現在のユーザの移動状態を判断し、GPS測位における移動距離Lがユーザの移動状態において前回の測位位置からユーザが移動し得る距離の許容範囲を超えている場合はGPSユニット31から検出された位置データを使用せず、自律航法ユニット32から検出された位置データを使用するため、ユーザの移動状態から有り得ない誤った測位結果が使用されることを防止することが可能となる。また、GPSユニット31における測位結果が使用できない場合であっても、自律航法ユニット32において測定された測位結果をユーザに提供することが可能となる。
【0054】
また、GPS測位における移動距離Lが前回の測位位置からユーザが移動し得る距離の許容範囲を超えているか否かを判断するための閾値Dは、ユーザの移動状態において測位間隔の時間内にユーザが移動可能な距離D1のほか、GPSユニット31から出力されるDOP値、GPSユニット31から出力されるS/N比等を考慮して設定することで、むやみにGPSの測位結果が使用されなくなってしまうことを防止することが可能となる。
【0055】
なお、上記第1及び第2の実施の形態における記述は、本発明に係る撮像装置1A、1Bの好適な一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
【0056】
例えば、上記第1及び第2の実施の形態においては、本発明に係る測位装置を撮像装置に適用した場合を例にとり説明したが、これに限定されるものではない。
【0057】
また、第2の実施の形態では、自律航法測位の演算を自律航法制御処理部17により実行させる例を示したが、これらの演算をCPU10のソフトウェア処理により実現するようにしても良い。
【0058】
また、上記第2の実施の形態では、自律航法ユニットとして、3軸地磁気センサと3軸加速度センサとを例示したが、装置の天地の向きが一定となるものであれば、2軸の方位センサや2軸の加速度センサを用いることもできる。また、方位を求めるのに、ジャイロスコープなどを適用することもできる。さらに、車輪速センサを用いて移動速度を求めるようにしても良い。また、上記第2の実施の形態では、移動測位処理により求められる位置データを二次元の位置データとしているが、高さ方向の位置データを含めるようにしても良い。
【0059】
その他、撮像装置1A、1Bを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0060】
1A、1B 撮像装置
10 CPU
11 RAM
12 ROM
13 GPS受信アンテナ
14 GPS受信部
15 3軸地磁気センサ
16 3軸加速度センサ
17 自律航法制御処理部
18 表示部
19 電源
20 操作部
21 撮像部
22 記憶装置
221 画像記憶領域
222 移動履歴記憶領域
222a GPS用領域
222b 自律航法用領域
23 タイマ
24 地図データベース
31 GPSユニット
32 自律航法ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに携帯される測位装置であって、
現在位置を測定する測位手段と、
前記測位手段における測位結果の履歴を記憶する記憶手段と、
前記ユーザの移動状態を検出するユーザ状態検出手段と、
前記測位手段における前回の測位結果と今回の測位結果に基づいて、前記ユーザの前回の測位位置からの移動距離を算出し、前記ユーザ状態検出手段により検出されたユーザの移動状態に基づいて、前回の測位位置から前記ユーザが移動し得る距離の許容範囲を設定し、前記算出された移動距離が前記設定された許容範囲内である場合に前記測位手段による測位結果を使用し、前記算出された移動距離が前記設定された許容範囲内ではない場合に前記測位手段による測位結果を使用しないように制御する制御手段と、
を備える測位装置。
【請求項2】
前記測位手段は、GPS衛星からの信号を受信して現在位置を測定する測位手段であり、
自律航法により現在位置を測定する自律航法測位手段を更に備え、
前記制御手段は、前記算出された移動距離が前記設定された許容範囲内である場合に前記測位手段による測位結果を使用し、前記算出された移動距離が前記設定された許容範囲内ではない場合に前記測位手段による測位結果を使用せずに前記自律航法測位手段による測位結果を使用するように制御する、請求項1に記載の測位装置。
【請求項3】
前記制御手段は、少なくとも前記ユーザ状態検出手段により検出されたユーザの移動状態において前記測位手段の測位間隔の時間内にユーザが移動可能な距離と、前記測位手段から出力される位置精度劣化係数とに基づいて、前記許容範囲を設定する請求項1又は2に記載の測位装置。
【請求項4】
前記制御手段は、少なくとも前記ユーザ状態検出手段により検出されたユーザの移動状態において前記測位手段の測位間隔の時間内にユーザが移動可能な距離と、前記測位手段から出力されるS/N比とに基づいて、前記許容範囲を設定する請求項1又は2に記載の測位装置。
【請求項5】
ユーザに携帯され、現在位置を測定する測位手段と、前記測位手段における測位結果の履歴を記憶する記憶手段と、前記ユーザの移動状態を検出するユーザ状態検出手段と、を備える測位装置における測位方法であって、
前記測位手段における前回の測位結果と今回の測位結果に基づいて、前記ユーザの前回の測位位置からの移動距離を算出するステップと、
前記ユーザ状態検出手段により検出された前記ユーザの移動状態に基づいて、前回の測位位置から前記ユーザが移動し得る距離の許容範囲を設定するステップと、
前記算出された移動距離が前記設定された許容範囲内である場合に前記測位手段による測位結果を使用し、前記算出された移動距離が前記設定された許容範囲内ではない場合に前記測位手段による測位結果を使用しないように制御するステップと、
を含む測位方法。
【請求項6】
ユーザに携帯され、現在位置を測定する測位手段と、前記測位手段における測位結果の履歴を記憶する記憶手段と、前記ユーザの移動状態を検出するユーザ状態検出手段と、を備える測位装置に用いられるコンピュータを、
前記測位手段における前回の測位結果と今回の測位結果に基づいて、前記ユーザの前回の測位位置からの移動距離を算出し、前記ユーザ状態検出手段により検出された前記ユーザの移動状態に基づいて、前回の測位位置から前記ユーザが移動し得る距離の許容範囲を設定し、前記算出された移動距離が前記設定された許容範囲内である場合に前記測位手段による測位結果を使用し、前記算出された移動距離が前記設定された許容範囲内ではない場合に前記測位手段による測位結果を使用しないように制御する制御手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−133229(P2011−133229A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289934(P2009−289934)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】