説明

測定設定データ作成装置、測定設定データ作成方法、測定設定データ作成装置用のプログラム及び寸法測定装置

【課題】 ワークの寸法を測定するための測定設定データを容易に作成することができる測定設定データ作成装置を提供する。
【解決手段】 形状線の位置情報、寸法線の位置情報、寸法線に関連付けられた設計値及び公差からなる設計値情報、並びに、寸法種別情報を含む設計データを取得する設計データ取得部21と、形状線の位置情報、寸法線の位置情報及び寸法種別情報に基づいて、寸法線を形状線によって規定される位置に対応づけることにより、形状線における測定対象箇所及び測定種別を特定する測定対象箇所特定部23と、形状線の位置情報に基づいて、ワーク画像からワークを検出するための特徴量情報を生成する特徴量情報生成部24と、特徴量情報、測定対象箇所情報、並びに、測定対象箇所に関連付けた設計値情報からなる測定設定データを生成する測定設定データ生成部25により構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定設定データ作成装置、測定設定データ作成方法、測定設定データ作成装置用のプログラム及び寸法測定装置に係り、さらに詳しくは、ワークを撮影したワーク画像内のエッジを検出することにより、ワークの寸法を測定するための測定設定データを作成する測定設定データ作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、寸法測定装置は、ワークを撮影してワーク画像を取得し、ワーク画像のエッジ位置に基づいてワークの寸法を測定する装置であり、画像測定器と呼ばれることもある(例えば、特許文献1から3)。通常、ワークは、X,Y及びZ軸方向に移動可能な可動ステージ上に載置される。可動ステージをZ軸方向に移動させることにより、ワーク画像のピント合わせが行われ、X,Y軸方向に移動させることにより、ワークの視野内への位置調整が行われる。
【0003】
ワーク画像は、可動ステージのZ軸方向の位置に関わらず、ワークに対して極めて正確な相似形であることから、画像上で距離や角度を判定することにより、ワーク上における実際の寸法を検知することができる。ワークの寸法測定では、ワーク画像のエッジ抽出が行われる。エッジ抽出は、ワーク画像の輝度変化を解析してエッジ点を検出し、検出した複数のエッジ点に直線や円弧などの幾何学図形をフィッティングさせることにより行われ、ワークと背景との境界を示すエッジが求められる。ワークの寸法は、この様にして求められるエッジ間の距離や角度、円形状のエッジの中心位置や直径として測定される。また、測定した寸法値と設計値との差分(誤差)を公差と比較して良否判定が行われる。
【0004】
上述したワークの寸法測定は、予め作成される測定設定データに基づいて実行される。測定設定データは、ワーク画像からワークを検出するための特徴量情報、測定対象箇所や測定種別を示す測定対象箇所情報、及び、良否判定のための設計値や公差を示す設計値情報により構成される。従来の測定設定データ作成装置では、基準物を撮影して得られたマスター画像に対して、ユーザが測定対象箇所や測定種別を指定することにより、エッジを抽出するためのエッジ検出領域が設定され、エッジ検出領域内のマスター画像からエッジを抽出して寸法値が測定される。そして、マスター画像から得られた寸法値を元にして、ユーザが、設計値や公差を指定することにより、測定設定データが得られる。このため、測定したい箇所が多数存在する場合に、これらの箇所を測定対象箇所として指定し、測定対象箇所ごとに測定種別を指定しなければならず、測定設定データの作成作業が極めて煩雑であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−300124号公報
【特許文献2】特開2009−300125号公報
【特許文献3】特開2010−19667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、測定設定データの作成作業を簡略化することができる測定設定データ作成装置、測定設定データ作成方法、測定設定データ作成装置用のプログラム及び寸法測定装置を提供することを目的とする。特に、ワーク画像からワークを検出してエッジ抽出を行い、ワークの寸法を測定するための測定設定データを容易に作成することができる測定設定データ作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明による測定設定データ作成装置は、ワークを撮影したワーク画像を取得し、上記ワーク画像内のエッジを検出することにより、上記ワークの寸法を測定するための測定設定データを作成する測定設定データ作成装置であって、上記ワークの輪郭形状を示す形状線の位置情報、寸法線の位置情報、上記寸法線に関連付けられた設計値及び公差からなる設計値情報、並びに、寸法種別を示す寸法種別情報を含む設計データを取得する設計データ取得手段と、上記形状線の位置情報、上記寸法線の位置情報及び上記寸法種別情報に基づいて、上記寸法線を上記形状線によって規定される位置に対応づけることにより、上記形状線における測定対象箇所及び測定種別を特定する測定対象箇所特定手段と、上記形状線の位置情報に基づいて、上記ワーク画像から上記ワークを検出するための特徴量情報を生成する特徴量情報生成手段と、上記特徴量情報、上記測定対象箇所及び上記測定種別を示す測定対象箇所情報、並びに、上記測定対象箇所に関連付けた上記設計値情報からなる測定設定データを生成する測定設定データ生成手段とを備えて構成される。
【0008】
この様な構成によれば、取得した設計データを用いて、測定対象箇所及び測定種別を特定し、特徴量情報を生成して測定設定データが生成されるので、設計データから測定設定データを自動生成することができる。従って、測定しようとするワークを変更するごとに、測定対象箇所や測定種別を指定しなくても良いので、ワーク画像からワークを検出してエッジ抽出を行い、ワークの寸法を測定するための測定設定データを容易に作成することができる。
【0009】
第2の本発明による測定設定データ作成装置は、上記構成に加え、上記測定対象箇所特定手段が、上記寸法線を当該寸法線の延長線上における上記形状線の頂点又は線分に対応づけるように構成される。この様な構成によれば、頂点間の距離や平行な線分間の距離として長さ寸法を正しく測定することができる。
【0010】
第3の本発明による測定設定データ作成装置は、上記構成に加え、上記測定対象箇所特定手段が、上記寸法線を当該寸法線の延長線上に中心を有する円形状の上記形状線に対応づけるように構成される。この様な構成によれば、円の中心から線分までの距離として長さ寸法を正しく測定することができる。
【0011】
第4の本発明による測定設定データ作成装置は、上記構成に加え、上記測定対象箇所特定手段が、同一直線上に端点を対向させて配置された2つの上記寸法線を端点間の中点を中心とする円形状の上記形状線に対応づけるように構成される。この様な構成によれば、円の直径を正しく測定することができる。
【0012】
第5の本発明による測定設定データ作成装置は、上記構成に加え、上記測定対象箇所特定手段が、上記寸法線を当該寸法線の端点を中心とする円形又は円弧状の上記形状線に対応づけるように構成される。この様な構成によれば、円又は円弧の半径を正しく測定することができる。
【0013】
第6の本発明による測定設定データ作成装置は、上記構成に加え、上記測定対象箇所特定手段が、上記寸法線を当該寸法線の端点から最も近い上記形状線に対応づけるように構成される。
【0014】
第7の本発明による寸法測定装置は、ワークを撮影したワーク画像を取得し、上記ワーク画像内のエッジを検出することにより、上記ワークの寸法を測定する寸法測定装置であって、上記ワークの輪郭形状を示す形状線の位置情報、寸法線の位置情報、上記寸法線に関連付けられた設計値及び公差からなる設計値情報、並びに、寸法種別を示す寸法種別情報を含む設計データを取得する設計データ取得手段と、上記形状線の位置情報、上記寸法線の位置情報及び上記寸法種別情報に基づいて、上記寸法線を上記形状線によって規定される位置に対応づけることにより、上記形状線における測定対象箇所及び測定種別を特定する測定対象箇所特定手段と、上記形状線の位置情報に基づいて、上記ワーク画像から上記ワークを検出するための特徴量情報を生成する特徴量情報生成手段と、上記特徴量情報、上記測定対象箇所及び上記測定種別を示す測定対象箇所情報、並びに、上記測定対象箇所に関連付けた上記設計値情報からなる測定設定データを生成する測定設定データ生成手段と、上記特徴量情報を用いて上記ワーク画像を解析し、上記ワークの位置及び姿勢を検出する配置状態検出手段と、位置及び姿勢が検出されたワークに対し、上記測定対象箇所情報に基づいて上記測定対象箇所を特定し、エッジ検出領域を指定するエッジ検出領域指定手段と、上記エッジ検出領域内の上記ワーク画像からエッジを抽出するエッジ抽出手段と、抽出された上記エッジに基づいて、上記測定対象箇所の寸法値を算出する寸法値算出手段とを備えて構成される。
【0015】
第8の本発明による測定設定データ作成方法は、ワークを撮影したワーク画像を取得し、上記ワーク画像内のエッジを検出することにより、上記ワークの寸法を測定するための測定設定データを作成する測定設定データ作成方法であって、上記ワークの輪郭形状を示す形状線の位置情報、寸法線の位置情報、上記寸法線に関連付けられた設計値及び公差からなる設計値情報、並びに、寸法種別を示す寸法種別情報を含む設計データを取得する設計データ取得ステップと、上記形状線の位置情報、上記寸法線の位置情報及び上記寸法種別情報に基づいて、上記寸法線を上記形状線によって規定される位置に対応づけることにより、上記形状線における測定対象箇所及び測定種別を特定する測定対象箇所特定ステップと、上記形状線の位置情報に基づいて、上記ワーク画像から上記ワークを検出するための特徴量情報を生成する特徴量情報生成ステップと、上記特徴量情報、上記測定対象箇所及び上記測定種別を示す測定対象箇所情報、並びに、上記測定対象箇所に関連付けた上記設計値情報からなる測定設定データを生成する測定設定データ生成ステップとからなる。
【0016】
第9の本発明による測定設定データ作成装置用のプログラムは、ワークを撮影したワーク画像を取得し、上記ワーク画像内のエッジを検出することにより、上記ワークの寸法を測定するための測定設定データを作成する測定設定データ作成装置用のプログラムであって、上記ワークの輪郭形状を示す形状線の位置情報、寸法線の位置情報、上記寸法線に関連付けられた設計値及び公差からなる設計値情報、並びに、寸法種別を示す寸法種別情報を含む設計データを取得する設計データ取得手順と、上記形状線の位置情報、上記寸法線の位置情報及び上記寸法種別情報に基づいて、上記寸法線を上記形状線によって規定される位置に対応づけることにより、上記形状線における測定対象箇所及び測定種別を特定する測定対象箇所特定手順と、上記形状線の位置情報に基づいて、上記ワーク画像から上記ワークを検出するための特徴量情報を生成する特徴量情報生成手順と、上記特徴量情報、上記測定対象箇所及び上記測定種別を示す測定対象箇所情報、並びに、上記測定対象箇所に関連付けた上記設計値情報からなる測定設定データを生成する測定設定データ生成手順とを実行させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明による測定設定データ作成装置、測定設定データ作成方法、測定設定データ作成装置用のプログラム及び寸法測定装置では、取得した設計データを用いて、測定対象箇所及び測定種別を特定し、特徴量情報を生成して測定設定データが生成されるので、設計データから測定設定データを自動生成することができる。つまり、測定しようとするワークを変更するごとに、測定対象箇所や測定種別を指定しなくても良いので、ワーク画像からワークを検出してエッジ抽出を行い、ワークの寸法を測定するための測定設定データを容易に作成することができる。従って、測定設定データの作成作業を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態による測定設定データ作成装置100の一構成例を示した斜視図である。
【図2】図1の測定設定データ作成装置100における測定ユニット10内の構成例を模式的に示した説明図であり、測定ユニット10の垂直面による切断面の様子が示されている。
【図3】図1の測定設定データ作成装置100の動作の一例を示したフローチャートである。
【図4】従来の測定設定データ作成装置を用いた測定設定データの作成動作を示したフローチャートである。
【図5】図1の測定設定データ作成装置100における寸法測定時の動作の一例を示したフローチャートである。
【図6】図1の測定設定データ作成装置100を用いた測定設定データの作成動作の一例を示したフローチャートである。
【図7】図1の測定設定データ作成装置100における測定設定データの作成時の動作の一例を示した図であり、形状線1,2及び寸法線3〜5を含む設計データの一例が示されている。
【図8】図1の測定設定データ作成装置100における測定設定データの作成時の動作の一例を示した図であり、寸法線の対応づけの一例が示されている。
【図9】図1の測定設定データ作成装置100における測定設定データの作成時の動作の一例を示した図であり、寸法線の対応づけの他の一例が示されている。
【図10】図1の測定設定データ作成装置100における測定設定データの作成時の動作の一例を示した図であり、寸法線の対応づけのその他の一例が示されている。
【図11】図1の測定設定データ作成装置100における測定設定データの作成時の動作の一例を示した図であり、測定設定データの編集画面101が示されている。
【図12】図1の測定設定データ作成装置100における寸法測定時の動作の一例を示した図であり、ワークを撮影したワーク画像110が示されている。
【図13】図1の測定設定データ作成装置100における寸法測定時の動作の一例を示した図であり、複数のエッジ検出領域111が指定されたワーク画像110が示されている。
【図14】図1の測定設定データ作成装置100における制御ユニット20の構成例を示したブロック図であり、制御ユニット20内の機能構成の一例が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<測定設定データ作成装置>
図1は、本発明の実施の形態による測定設定データ作成装置100の一構成例を示した斜視図である。この測定設定データ作成装置100は、可動ステージ12上の検出エリア13内に配置された複数のワークを異なる撮影倍率で撮影し、その撮影画像を解析して各ワークの寸法を自動測定する画像測定器であり、測定ユニット10、制御ユニット20、キーボード31及びマウス32からなる。ワークは、その形状や寸法が測定される測定対象物である。
【0020】
測定ユニット10は、ワークに検出光を照射し、その透過光又は反射光を受光して撮影画像を生成する光学系ユニットであり、ディスプレイ11、可動ステージ12、XY位置調整つまみ14a、Z位置調整つまみ14b、電源スイッチ15及び測定開始スイッチ16が設けられている。
【0021】
ディスプレイ11は、撮影画像や測定結果を表示画面11a上に表示する表示装置である。可動ステージ12は、測定対象とするワークを載置するための載置台であり、検出光を透過させる検出エリア13が設けられている。検出エリア13は、透明ガラスからなる円形状の領域である。この可動ステージ12は、検出光の光軸に平行なZ軸方向と、光軸に垂直なXYの各軸方向とに移動させることができる。
【0022】
XY位置調整つまみ14aは、可動ステージ12をX軸方向及びY軸方向に移動させるための操作部である。Z位置調整つまみ14bは、可動ステージ12をZ軸方向に移動させるための操作部である。電源スイッチ15は、測定ユニット10及び制御ユニット20の電源をオンするための操作部であり、測定開始スイッチ16は、ワークに対する測定を開始させるための操作部である。
【0023】
制御ユニット20は、測定ユニット10による撮影や画面表示を制御し、撮影画像を解析してワークの寸法を測定するコントローラであり、キーボード31及びマウス32が接続されている。電源投入後、検出エリア13内に複数のワークを適当に配置して測定開始スイッチ16を操作すれば、各ワークについてその寸法が自動的に測定される。
【0024】
<測定ユニット>
図2は、図1の測定設定データ作成装置100における測定ユニット10内の構成例を模式的に示した説明図であり、測定ユニット10を垂直面により切断した場合の切断面の様子が示されている。この測定ユニット10は、筐体40内部が、Z駆動部41、XY駆動部42、撮像素子43,44、透過照明ユニット50、リング照明ユニット60、同軸落射照明用光源71、受光レンズユニット80により構成されている。
【0025】
Z駆動部41は、制御ユニット20からの駆動信号に基づいて、可動ステージ12をZ軸方向に移動させ、ワークのZ軸方向の位置を調整するZ位置調整手段である。XY駆動部42は、制御ユニット20からのXY駆動信号に基づいて、可動ステージ12をX軸方向及びY軸方向に移動させ、ワークのXY平面内の位置を調整するXY位置調整手段である。
【0026】
透過照明ユニット50は、可動ステージ12上に載置されたワークに対し、検出光を下側から照射するための照明装置であり、透過照明用光源51、ミラー52及び光学レンズ53からなる。透過照明用光源51から出射された検出光は、ミラー52により反射され、光学レンズ52を介して出射される。この検出光は、可動ステージ12を透過し、その透過光の一部は、ワークにより遮断され、他の一部が受光レンズユニット80に入射する。
【0027】
リング照明ユニット60は、可動ステージ12上のワークに対し、検出光を上側から照射するための照明装置であり、受光レンズユニット80を取り囲むリング状の光源からなる。同軸落射照明用光源71は、可動ステージ12上のワークに対し、検出光を上側から照射するための光源であり、ワークに対する照射光の光軸とワークによる反射光の光軸とが同軸となるように、ハーフミラー72が配置されている。ワークの照明方法としては、透過照明、リング照明又は同軸落射照明のいずれかを選択的に切り替えることができる。
【0028】
受光レンズユニット80は、受光レンズ81,84,86、ハーフミラー82、絞り板83及び85からなる光学系であり、透過照明ユニット50からの透過光と、検出光のワークによる反射光とを受光して撮像素子43及び44に結像させる。受光レンズ81は、可動ステージ12側に配置された光学レンズであり、当該可動ステージ12の上面に対向させて配置されている。受光レンズ84は、撮像素子43側に配置された光学レンズであり、当該撮像素子43に対向させて配置されている。また、受光レンズ86は、撮像素子44側に配置された光学レンズであり、当該撮像素子44に対向させて配置されている。
【0029】
絞り板83及び受光レンズ84は、撮影倍率の低い低倍側結像部であり、その中心軸を光学レンズ53及び受光レンズ81と一致させて配置されている。一方、絞り板85及び受光レンズ86は、撮影倍率の高い高倍側結像部であり、ワークからの検出光はハーフミラー82を介して入射される。受光レンズ81,84及び86は、ワークの光軸方向(Z軸方向)の位置が変化しても、像の大きさを変化させない性質を有し、テレセントリックレンズと呼ばれる。
【0030】
撮像素子43は、受光レンズユニット80により形成される低倍率視野内のワークを低倍率で撮影し、低倍率画像を生成する低倍率用のイメージセンサである。撮像素子44は、受光レンズユニット80により形成される高倍率視野内のワークを高倍率で撮影し、高倍率画像を生成する高倍率用のイメージセンサである。高倍率視野は、低倍率視野よりも狭い視野であり、低倍率視野内に形成される。
【0031】
撮像素子43,44は、いずれもCCD(Charge Coupled Devices:電荷結合素子)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化物半導体)などの半導体素子からなる。
【0032】
この測定設定データ作成装置100では、可動ステージ12の検出エリア13内であれば、ワークをどこに配置しても、低倍率視野で捉えられる。また、低倍率視野内に配置されたワークは、低倍率画像を解析して可動ステージ12をXY平面内で移動させることにより、高倍率視野内へ案内され、高倍率で撮影される。この測定設定データ作成装置100では、低倍率視野及び高倍率視野が略同心であり、低倍率画像と高倍率画像とを同時に取得することができる。
【0033】
<測定設定データ作成装置の動作>
図3のステップS101〜S103は、図1の測定設定データ作成装置100の動作の一例を示したフローチャートである。この測定設定データ作成装置100では、その動作が3つのプロセス、すなわち、測定設定データの作成(ステップS101)、測定の実行(ステップS102)及び測定結果の表示(ステップS103)からなる。
【0034】
測定設定データは、測定の実行に必要な情報であり、特徴量を示す特徴量情報、測定箇所や測定種別を示す情報、測定箇所ごとの設計値や公差を示す情報などからなる。特徴量情報は、ワーク画像を解析してワークの位置や姿勢を検出するための位置決め用の情報であり、マスターピースなどの基準物を撮影して取得したマスター画像に基づいて設定され、或いは、CAD(Computer Aided Design)を用いて作成された設計データに基づいて設定される。なお、特徴量情報、測定箇所や測定種別を示す情報が高倍率画像に基づいて設定されたものである場合には、その旨を示す識別情報が測定設定データとして保持される。
【0035】
測定設定データは、制御ユニット20において作成される。測定処理は、この様な測定設定データに基づいて実行される。そして、測定結果の表示処理は、測定によって得られた寸法値などをディスプレイ11上に表示することにより行われる。
【0036】
図4のステップS201〜S204は、従来の測定設定データ作成装置を用いた測定設定データの作成動作を示したフローチャートである。従来の測定設定データの作成処理は、以下に示す4つの処理手順からなる。まず、設計データの入力が行われる(ステップS201)。設計データの入力では、特徴量の設定や輪郭比較に用いるマスター画像が取得される。マスター画像は、マスターピースなどの所定の基準物を撮影した撮影画像、或いは、CADにより作成された設計データから抽出される。
【0037】
次に、特徴量の設定が行われる(ステップS202)。特徴量の設定ステップは、マスター画像を用いて、マスター画像全体から特徴量を抽出したり、ユーザにより特に特徴がある箇所として指定された範囲の中から特徴量を抽出するステップである。特徴量としては、例えば、画像のコントラストやエッジ強度、方向など、後述するワークの位置及び姿勢を検出可能なものであれば種々のものが利用できる。
【0038】
次に、測定対象箇所及び測定種別の指定が行われる(ステップS203)。測定対象箇所及び測定種別の指定は、ディスプレイ11上に表示されたマスター画像に対し、所望の測定対象箇所ごとにエッジ検出領域や測定種別を指定することにより行われる。
【0039】
エッジ検出領域は、領域内の撮影画像について、輝度変化を解析してエッジを抽出するための領域である。測定種別の指定は、何を測定するかの測定方法を指定するものである。例えば、線分と線分の間の寸法、角度、円の直径など、測定の対象となる測定対象箇所の何をどの様な方法で測定するかを指定する。測定対象箇所及び測定種別の指定が完了すれば、マスター画像を用いて測定が実行される。すなわち、マスター画像について、エッジ抽出を行い、測定対象箇所ごとの寸法値が測定される。寸法値の測定結果は、例えば、マスター画像上に表示される。
【0040】
次に、設計値及び公差の設定が行われる(ステップS204)。設計値及び公差の設定では、表示された測定対象箇所ごとの寸法値が必要に応じて変更され、設計値として設定される。また、設計値に関連付けて公差が設定される。この様にして作成された測定設定データは、制御ユニット20内の記憶領域に書き込まれる。
【0041】
<寸法測定>
図5のステップS301〜S306は、図1の測定設定データ作成装置100における寸法測定時の動作の一例を示したフローチャートである。寸法測定は、以下に示す6つの処理手順からなる。まず、可動ステージ12上に配置されたワークを撮影してワーク画像を取得し、測定設定データの特徴量情報に基づいてワーク画像を解析することにより、ワークの位置決めが行われる(ステップS301)。このワークの位置決めは、特徴量情報に基づくパターンマッチングなどの手法を用いて、ワーク画像内におけるワークの位置及び姿勢を検出することにより行われる。
【0042】
次に、位置及び姿勢の検出結果と測定設定データに基づいて、測定箇所を特定し(ステップS302)、ワーク画像のエッジ抽出が行われる(ステップS303)。寸法測定は、抽出された測定箇所ごとのエッジ位置と、測定設定データの測定種別情報に基づいて、距離や角度を算出することにより行われる(ステップS304)。
【0043】
次に、測定された寸法値と測定設定データの設計値との差分から誤差を求め、誤差を対応する公差と比較することにより(ステップS305)、測定箇所の良否判定やワークの良否判定が行われる(ステップS306)。
【0044】
上述したように、測定設定データを生成するには、ユーザが測定の対象となる測定対象箇所を指定し、各測定対象箇所の測定種別や設計値、公差などをいちいち設定する必要があり、非常に手間がかかる。また、寸法測定装置を製造現場で使用する場合、ユーザは測定の対象となるワークを設計したときのデータであるCADデータを保有しているケースが多い。本実施の形態では、CADデータから測定設定データをほぼ自動的に生成することができるので、測定設定データを生成するためのユーザの手間を省くことができる。以下、設計データであるCADデータから測定設定データを自動的に生成するための構成を図6から図14に基づいて説明する。
【0045】
<測定設定データの作成>
図6のステップS401〜S409は、図1の測定設定データ作成装置100を用いた測定設定データの作成動作の一例を示したフローチャートである。この測定設定データ作成装置100では、PCなどの外部機器において作成された設計データを外部機器から取得し、取得した設計データを用いて測定設定データが自動生成される。
【0046】
設計データは、CADにより作成されるCADデータであり、ワークの輪郭形状を示す形状線の位置情報と、寸法線の位置情報と、寸法線に関連付けられた設計値及び公差からなる設計値情報と、寸法種別を示す寸法種別情報を含む。
【0047】
まず、測定設定データ作成装置100は、外部機器において作成された設計データを当該外部機器から取得し、メモリ内に格納する(ステップS401)。次に、ユーザによる所定の操作に基づいて、設計データから不要情報が削除される(ステップS402)。不要情報とは、寸法測定に関係のない線や文字列からなる情報のことであり、CAD図面に付された図枠や注記などが不要情報として除去される。
【0048】
次に、測定設定データ作成装置100は、ワーク画像を解析してワークを検出するためのパターンデータを生成する(ステップS403)。このパターンデータは、視野内におけるワークの位置や姿勢などの配置状態を検出するための位置決め用の情報であり、ワークの特徴量情報からなり、形状線の位置情報に基づいて生成される。
【0049】
パターンデータを用いたワークの位置決め方法としては、設計データの輪郭形状情報からワークの擬似画像を生成し、ワーク画像及び擬似画像間で画像レベルのマッチングを行う方法、例えば、正規化相関サーチが利用される。或いは、擬似画像を作成することなく、輪郭形状情報自体を用いて特徴量レベルでマッチングを行う方法、例えば、幾何学相関サーチを利用しても良い。測定設定データ作成装置100では、ユーザによる所定の操作に基づいて、この様な位置決め方法や、設計データの形状線の中から位置決めに利用する範囲を指定することができる。
【0050】
次に、測定設定データ作成装置100は、設計データに基づいて、測定対象箇所を自動決定し、測定設定データを生成する。この測定設定データの生成動作は、4つの処理手順、すなわち、前処理(ステップS404)、寸法線の対応づけ(ステップS405)、測定箇所及び種別の特定(ステップS406)、並びに、エッジ検出領域の生成(ステップS407)からなる。
【0051】
前処理は、重複している形状線や分断している形状線を1本の形状線に統合させる処理である。例えば、同一箇所に2以上の形状線が重複して配置されている場合や、直線状の形状線が短い間隙により分断されている場合に、これらの形状線が1本の形状線に纏められる。
【0052】
寸法線の対応づけは、形状線の位置情報、寸法線の位置情報及び寸法種別情報に基づいて、寸法線を形状線によって規定される位置に対応づけることにより行われ、これにより、形状線における測定対象箇所及び測定種別が特定される。
【0053】
寸法線を形状線によって規定される位置に対応づける際の対応づけ方は、寸法線の種別に応じて異なる。寸法種別としては、長さ寸法、直径寸法、半径寸法、角度寸法、座標寸法、円弧寸法などがある。
【0054】
エッジ検出領域の生成は、エッジ抽出を行うべき画像領域をエッジ検出領域として指定する処理手順であり、測定対象箇所情報に基づいて、形状線上に所定のエッジ検出領域が自動生成される。エッジ検出領域は、ワーク画像におけるワーク輪郭のゆらぎを考慮して、一定の幅を持たせた領域からなる。また、エッジ検出領域は、領域内で抽出されたエッジ点に幾何学図形をフィッティングさせる際の誤差を小さくするために、形状線の頂点、すなわち、形状線上の角(かど)部を含まない領域からなる。
【0055】
ステップS404からステップS407までの処理手順を経て作成された測定設定データは、登録情報としてメモリ内に格納され、ユーザによる所定の編集操作に基づいて、登録情報が更新される(ステップS408,S409)。すなわち、自動生成されたエッジ検出領域の配置、設計値又は公差の値が必要に応じて変更され、或いは、形状線上の位置を指定することにより、新たな測定対象箇所が追加される。
【0056】
<設計データ>
図7は、図1の測定設定データ作成装置100における測定設定データの作成時の動作の一例を示した図であり、形状線1,2及び寸法線3〜5を含む設計データの一例としてCADデータが示されている。このCADデータは、薄い平板状の部材からなる部品の設計データであり、部品の輪郭形状を示す形状線1,2の位置情報と、寸法線3〜5の位置情報と、寸法線3〜5に関連付けられた設計値6及び公差からなる設計値情報と、寸法種別を示す寸法種別情報により構成される。
【0057】
形状線1は、部品の外縁や内縁を示す外形線であり、形状線2は、部品に設けられた小孔の周縁を示す外形線である。寸法線3〜5は、寸法が形状線1,2上のどの位置について何を測定したものであるのかを指し示すものである。
【0058】
寸法線3は、寸法を記入するのに用いる線分であり、一端に矢印などの端末記号が配置される。寸法線4は、寸法を記入するために形状線から引き出される線分であり、寸法補助線と呼ばれることもある。寸法線5は、記号などを記入するために形状線から引き出される線分であり、引き出し線と呼ばれることもある。
【0059】
長さ寸法には、水平寸法、垂直寸法及び角度指定寸法がある。水平寸法は、図面上で水平方向の長さ(距離)を示す寸法であり、垂直寸法は、垂直方向の長さを示す寸法である。この例では、寸法線3,4を用いて、形状線1における2つの平行な線分間の距離(設計値「33.6」、「22」)と、小孔の中心間の距離(設計値「44.8」)とが水平寸法として記載されている。また、寸法線3,4を用いて、形状線1上の線分と小孔の中心との間の距離(設計値「24.8」)と、小孔の中心間の距離(設計値「20」)とが垂直寸法として記載されている。
【0060】
また、寸法線3を用いて、円形状の形状線2の直径(設計値「2.3」)が直径寸法として記載され、寸法線5を用いて、円形状の形状線2の直径(設計値「2」)が記載されている。直径寸法の設計値「2.3」には、記号「2−」及び「φ」が付されている。記号「2−」(「2×」と記載される場合もある)は、中心線7に関して線対称となる位置にも同様の図形が存在することを示す。「n−」の場合には、全部でn個の同種図形に対して同一寸法が付与される。記号「φ」は、設計値が直径であることを示す。
【0061】
また、寸法線3を用いて、形状線1における円弧部分の半径(設計値「2」)が半径寸法として記載され、寸法線5を用いて、小孔の周縁における円弧部分の半径(設計値「1」)が記載されている。さらに、寸法線3,4及び中心線7を用いて、形状線における線分と中心線7との間の角度(設計値「45°」)が角度寸法として記載されている。測定設定データ作成装置100は、この様な設計データを利用して、測定設定データを自動生成する。
【0062】
<寸法線の対応づけ>
図8(a)〜(c)は、図1の測定設定データ作成装置100における測定設定データの作成時の動作の一例を示した図であり、寸法線の対応づけの一例が示されている。この図は、長さ寸法を測定する場合の寸法線3,4の対応づけである。図中の(a)には、寸法線3,4を形状線1上の2つの頂点1aに対応づける場合が示され、(b)には、寸法線3,4を形状線1上の平行な2つの線分に対応づける場合が示されている。また、(c)には、寸法線3,4を円形状の形状線2及び形状線1上の線分に対応づける場合が示されている。
【0063】
寸法線を形状線によって規定される位置に対応づける場合、その対応づけ方は、寸法線の種類や寸法種別に応じて異なる。長さ寸法の場合、寸法線3,4は、2つの寸法線4をそれぞれ延長し、その延長線上に存在する形状線1の頂点1a、線分、延長線と接する円形状の形状線、又は、延長線上に中心を有する円形状の形状線2に対応付けられる。
【0064】
なお、寸法線を形状線の頂点や延長線と接する円形状の形状線に対応づける場合、寸法測定時に、形状線上の線分間で交点を求める処理や、円形状の形状線上の接点を求める処理が実行される。また、寸法線の対応づけが複数考えられる場合には、例えば、寸法線4の端点に最も近い形状線だけに対応付けられる。
【0065】
さらに、寸法線4の延長線上で対応づけられる図形の組合せに応じて測定種別が特定される。具体的には、2つの寸法線4にそれぞれ対応づけられる図形が2つの点である場合、寸法線の種類(寸法種別)に応じて測定種別が特定される。すなわち、水平寸法、垂直寸法又は角度指定寸法のいずれかであれば、その角度に応じて2点間の距離が測定される。特に、寸法種別が平行寸法であれば、2点間の最短距離が測定される。
【0066】
(a)の場合、寸法線4の延長線上に存在する頂点1aが、この頂点1aを挟む形状線上の2つの線分の交点として抽出される。そして、2つの寸法線4に対してそれぞれ抽出した2つの頂点1a間の距離が測定される。エッジ検出領域Aは、頂点1aを抽出するのに適した線分が正しく抽出されるように、形状線1上に設定される。
【0067】
2つの寸法線4にそれぞれ対応づけられる図形が2つの線分である場合には、両線分が平行であるという前提で幾何学図形のフィッティングを行って、平行な2線分を得るとともに、当該線分間の距離が測定される。或いは、2つの線分の角の2等分線に垂直な方向に関して、それぞれの線分の中点間の距離を測定する方法や、一方の線分の中点と他方の線分との距離を測定する方法を選択することができる。
【0068】
(b)の場合、2つの寸法線4の延長線上にそれぞれ存在する形状線1上の2つの線分間の距離が測定される。エッジ検出領域Aは、これらの線分が正しく抽出されるように、形状線1上に設定される。
【0069】
2つの寸法線4にそれぞれ対応づけられる図形が点と線分である場合には、点から線分に下ろした垂線の長さが測定される。(c)の場合、一方の寸法線4の延長線上に存在する円形状の形状線2の中心と、他方の寸法線4の延長線上に存在する形状線1上の線分との距離が測定される。エッジ検出領域Aは、円形状の形状線2や形状線1上の線分が正しく抽出されるように設定される。
【0070】
寸法線3,4を寸法線4の延長線と接する円形状の形状線に対応づける場合、円形状の形状線上の接点が抽出され、この接点と他の頂点又は線分との距離が測定される。
【0071】
図9(a)及び(b)は、図1の測定設定データ作成装置100における測定設定データの作成時の動作の一例を示した図であり、寸法線の対応づけの他の一例が示されている。この図は、直径寸法又は半径寸法を測定する場合の寸法線3,4の対応づけである。図中の(a)には、2つの寸法線3を円形状の形状線2に対応づけて直径寸法を測定する場合が示され、(b)には、寸法線3,4を形状線1上の円弧部分に対応づけて半径寸法を測定する場合が示されている。
【0072】
直径寸法の場合、2つの寸法線3が、同一直線上にその端点を対向させて配置される。(a)では、2つの寸法線3が寸法線4を挟んで対向配置されている。そこで、この様な場合、寸法線3,4は、2つの寸法線3について、それぞれの端点(端末記号が付された方)間の中点を中心とする円形状の形状線2に対応付けられる。
【0073】
なお、設計値に記号「2−」又は「2×」が付されていれば、寸法が付与された図形以外に、同種図形が存在するので、寸法線3,4を対応づけた形状線2の近傍に配置された形状線2にも当該寸法線が対応づけられる。
【0074】
半径寸法の場合には、同一直線上に寸法線3,4が配置され、寸法線3の端点(端末記号が付された方)と寸法線4の端点との距離が円の半径である。そこで、この様な場合、寸法線3,4は、寸法線4の端点を中心とする円形又は円弧状の形状線2に対応付けられる。
【0075】
なお、ここで挙げた寸法線の表示形態はあくまでも一例であり、CADデータの寸法線の表示形態は様々なものがある。例えば、直径寸法の場合、円の中心から両端に矢印が延びる一本の寸法線で表示する形態や、対向する2つの接線を寸法線として引き出して、寸法値を円とは離れた位置に表示する形態がある。
【0076】
図10は、図1の測定設定データ作成装置100における測定設定データの作成時の動作の一例を示した図であり、寸法線の対応づけのその他の一例が示されている。この図は、角度寸法を測定する場合の寸法線3,4の対応づけである。角度寸法の場合、寸法線3,4は、2つの寸法線4をそれぞれ延長し、その延長線上に存在する仮想線と、形状線1上の線分とに対応付けられる。
【0077】
仮想線は、仮想線上に中心を有する2以上の円形状の形状線2によって構成され、その様な仮想線と形状線1上の線分との角度が測定される。なお、円弧寸法を測定する場合には、寸法線3,4は、2つの寸法線4をそれぞれ延長し、その延長線上に端点が存在する円弧状の形状線に対応付けられる。
【0078】
また、寸法線5の場合、その端点(端末記号が付された方)を円周上の点として含む円形又は円弧状の形状線、或いは、端点を含む形状線上の線分に対応付けられる。なお、寸法線5に寸法種別を示す記号や幾何公差が付されていれば、それらの情報を元に、図形の絞り込みが行われる。
【0079】
CADデータから測定設定データを自動生成する場合、測定対象箇所を特定するために、各寸法線と、各寸法線に対応する形状線を対応づける必要がある。しかし、当然のことながら、CADデータは測定設定データを生成するために作られたものではないため、寸法線と形状線をどの様に対応づけるかを決定しなければならない。上述した様に、本実施の形態では、寸法線の種別に応じて各寸法線に対応する形状線を特定することにより、寸法線から自動的に測定対象箇所を特定している。
【0080】
<編集画面>
図11は、図1の測定設定データ作成装置100における測定設定データの作成時の動作の一例を示した図であり、測定設定データの編集画面101が示されている。編集画面101は、設計データから自動生成された測定設定データを編集するための入力画面であり、ディスプレイ11上に表示される。
【0081】
この編集画面101には、エッジ検出領域Aが指定された形状線1,2の表示領域102、公差設定の表示領域103が形成されている。表示領域103には、設計値の入力欄104、公差上限の入力欄105、公差下限の入力欄106、OKボタン107、キャンセルボタン108及び適用ボタン109が配置されている。
【0082】
入力欄104〜106には、ユーザが表示領域102内に表示中の形状線1,2に対して所定の操作を行うことにより、選択指定された形状線上の位置に関連付けられた設計値及び公差の現在値が表示されている。これらの現在値は、所定の操作により変更することができる。
【0083】
また、表示領域102内に表示中の形状線1,2に対して所定の操作を行うことにより、エッジ検出領域Aの配置を変更し、或いは、新たな測定対象箇所を追加することができる。
【0084】
<ワーク画像>
図12及び図13は、図1の測定設定データ作成装置100における寸法測定時の動作の一例を示した図であり、図12には、ワークを撮影したワーク画像110が示され、図13には、複数のエッジ検出領域111が指定されたワーク画像110が示されている。ワーク画像110は、例えば、低倍率視野内のワークを低倍率で撮影して得られた撮影画像である。この図では、透過照明時に撮影されたワーク画像110が示されている。
【0085】
寸法測定では、測定設定データの特徴量情報に基づいてワーク画像110を解析することにより、低倍率視野内におけるワークの位置及び姿勢が検出される。そして、位置及び姿勢が検出されたワークに対し、測定対象箇所情報に基づいて測定対象箇所を特定することにより、エッジ抽出のためのエッジ検出領域111が指定される。
【0086】
<制御ユニット>
図14は、図1の測定設定データ作成装置100における制御ユニット20の構成例を示したブロック図であり、制御ユニット20内の機能構成の一例が示されている。この制御ユニット20は、設計データ取得部21、設計データ記憶部22、測定対象箇所特定部23、特徴量情報生成部24、測定設定データ生成部25、測定設定データ記憶部26、ワーク画像記憶部121、配置状態検出部122、エッジ検出領域指定部123、エッジ抽出部124及び寸法値算出部125により構成される。
【0087】
設計データ取得部21は、外部機器からCADデータを取得し、設計データ記憶部22内に格納する。CADデータは、ワークの輪郭形状を示す形状線の位置情報、寸法線の位置情報、寸法線に関連付けられた設計値及び公差からなる設計値情報、並びに、寸法種別を示す寸法種別情報からなる。
【0088】
測定対象箇所特定部23は、形状線の位置情報、寸法線の位置情報及び寸法種別情報に基づいて、寸法線を形状線によって規定される位置に対応づけることにより、形状線における測定対象箇所及び測定種別を特定する。
【0089】
特徴量情報生成部24は、形状線の位置情報に基づいて、ワーク画像からワークを検出するための特徴量情報を生成し、測定設定データ生成部25へ出力する。
【0090】
測定設定データ生成部25は、特徴量情報、測定対象箇所及び測定種別を示す測定対象箇所情報、並びに、測定対象箇所に関連付けた設計値情報からなる測定設定データを生成し、測定設定データ記憶部26内に格納する。
【0091】
ワーク画像記憶部121には、ワークを撮影したワーク画像が格納される。配置状態検出部122は、特徴量情報を用いてワーク画像を解析することにより、ワークの位置及び姿勢を検出し、その検出結果をエッジ検出領域指定部123へ出力する。
【0092】
エッジ検出領域指定部123は、位置及び姿勢が検出されたワークに対し、測定対象箇所情報に基づいて測定対象箇所を特定し、エッジ検出領域Aを指定する。エッジ抽出部124は、エッジ検出領域A内のワーク画像からエッジを抽出する。寸法値算出部125は、抽出されたエッジに基づいて、測定対象箇所の寸法値を算出し、測定結果として出力する。
【0093】
本実施の形態によれば、外部機器から取得した設計データを用いて、測定対象箇所及び測定種別を特定し、特徴量情報を生成して測定設定データが生成されるので、設計データから測定設定データを自動生成することができる。従って、測定しようとするワークを変更するごとに、測定対象箇所や測定種別を指定しなくても良いので、ワーク画像からワークを検出してエッジ抽出を行い、ワークの寸法を測定するための測定設定データを容易に作成することができる。
【符号の説明】
【0094】
1,2 形状線
1a 頂点
3〜5 寸法線
6 設計値
7 中心線
10 測定ユニット
11 ディスプレイ
11a 表示画面
12 可動ステージ
13 検出エリア
14a XY位置調整つまみ
14b Z位置調整つまみ
15 電源スイッチ
16 測定開始スイッチ
20 制御ユニット
21 設計データ取得部
22 設計データ記憶部
23 測定対象箇所特定部
24 特徴量情報生成部
25 測定設定データ生成部
26 測定設定データ記憶部
31 キーボード
32 マウス
40 筐体
41 Z駆動部
42 XY駆動部
43,44 撮像素子
50 透過照明ユニット
51 透過照明用光源
52 ミラー
53 光学レンズ
60 リング照明ユニット
71 同軸落射照明用光源
72 ハーフミラー
80 受光レンズユニット
81,84,86 受光レンズ
82 ハーフミラー
83,85 絞り板
100 測定設定データ作成装置
101 編集画面
110 ワーク画像
111 エッジ検出領域
121 ワーク画像記憶部
122 配置状態検出部
123 エッジ検出領域指定部
124 エッジ抽出部
125 寸法値算出部
A エッジ検出領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを撮影したワーク画像を取得し、上記ワーク画像内のエッジを検出することにより、上記ワークの寸法を測定するための測定設定データを作成する測定設定データ作成装置において、
上記ワークの輪郭形状を示す形状線の位置情報、寸法線の位置情報、上記寸法線に関連付けられた設計値及び公差からなる設計値情報、並びに、寸法種別を示す寸法種別情報を含む設計データを取得する設計データ取得手段と、
上記形状線の位置情報、上記寸法線の位置情報及び上記寸法種別情報に基づいて、上記寸法線を上記形状線によって規定される位置に対応づけることにより、上記形状線における測定対象箇所及び測定種別を特定する測定対象箇所特定手段と、
上記形状線の位置情報に基づいて、上記ワーク画像から上記ワークを検出するための特徴量情報を生成する特徴量情報生成手段と、
上記特徴量情報、上記測定対象箇所及び上記測定種別を示す測定対象箇所情報、並びに、上記測定対象箇所に関連付けた上記設計値情報からなる測定設定データを生成する測定設定データ生成手段とを備えたことを特徴とする測定設定データ作成装置。
【請求項2】
上記測定対象箇所特定手段は、上記寸法線を当該寸法線の延長線上における上記形状線の頂点又は線分に対応づけることを特徴とする請求項1に記載の測定設定データ作成装置。
【請求項3】
上記測定対象箇所特定手段は、上記寸法線を当該寸法線の延長線上に中心を有する円形状の上記形状線に対応づけることを特徴とする請求項1に記載の測定設定データ作成装置。
【請求項4】
上記測定対象箇所特定手段は、同一直線上に端点を対向させて配置された2つの上記寸法線を端点間の中点を中心とする円形状の上記形状線に対応づけることを特徴とする請求項1に記載の測定設定データ作成装置。
【請求項5】
上記測定対象箇所特定手段は、上記寸法線を当該寸法線の端点を中心とする円形又は円弧状の上記形状線に対応づけることを特徴とする請求項1に記載の測定設定データ作成装置。
【請求項6】
上記測定対象箇所特定手段は、上記寸法線を当該寸法線の端点から最も近い上記形状線に対応づけることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の測定設定データ作成装置。
【請求項7】
ワークを撮影したワーク画像を取得し、上記ワーク画像内のエッジを検出することにより、上記ワークの寸法を測定する寸法測定装置において、
上記ワークの輪郭形状を示す形状線の位置情報、寸法線の位置情報、上記寸法線に関連付けられた設計値及び公差からなる設計値情報、並びに、寸法種別を示す寸法種別情報を含む設計データを取得する設計データ取得手段と、
上記形状線の位置情報、上記寸法線の位置情報及び上記寸法種別情報に基づいて、上記寸法線を上記形状線によって規定される位置に対応づけることにより、上記形状線における測定対象箇所及び測定種別を特定する測定対象箇所特定手段と、
上記形状線の位置情報に基づいて、上記ワーク画像から上記ワークを検出するための特徴量情報を生成する特徴量情報生成手段と、
上記特徴量情報、上記測定対象箇所及び上記測定種別を示す測定対象箇所情報、並びに、上記測定対象箇所に関連付けた上記設計値情報からなる測定設定データを生成する測定設定データ生成手段と、
上記特徴量情報を用いて上記ワーク画像を解析することにより、上記ワークの位置及び姿勢を検出する配置状態検出手段と、
位置及び姿勢が検出されたワークに対し、上記測定対象箇所情報に基づいて上記測定対象箇所を特定し、エッジ検出領域を指定するエッジ検出領域指定手段と、
上記エッジ検出領域内の上記ワーク画像からエッジを抽出するエッジ抽出手段と、
抽出されたエッジに基づいて、上記測定対象箇所の寸法値を算出する寸法値算出手段とを備えたことを特徴とする寸法測定装置。
【請求項8】
ワークを撮影したワーク画像を取得し、上記ワーク画像内のエッジを検出することにより、上記ワークの寸法を測定するための測定設定データを作成する測定設定データ作成方法において、
上記ワークの輪郭形状を示す形状線の位置情報、寸法線の位置情報、上記寸法線に関連付けられた設計値及び公差からなる設計値情報、並びに、寸法種別を示す寸法種別情報を含む設計データを取得する設計データ取得ステップと、
上記形状線の位置情報、上記寸法線の位置情報及び上記寸法種別情報に基づいて、上記寸法線を上記形状線によって規定される位置に対応づけることにより、上記形状線における測定対象箇所及び測定種別を特定する測定対象箇所特定ステップと、
上記形状線の位置情報に基づいて、上記ワーク画像から上記ワークを検出するための特徴量情報を生成する特徴量情報生成ステップと、
上記特徴量情報、上記測定対象箇所及び上記測定種別を示す測定対象箇所情報、並びに、上記測定対象箇所に関連付けた上記設計値情報からなる測定設定データを生成する測定設定データ生成ステップとからなることを特徴とする測定設定データ作成方法。
【請求項9】
ワークを撮影したワーク画像を取得し、上記ワーク画像内のエッジを検出することにより、上記ワークの寸法を測定するための測定設定データを作成する測定設定データ作成装置用のプログラムにおいて、
上記ワークの輪郭形状を示す形状線の位置情報、寸法線の位置情報、上記寸法線に関連付けられた設計値及び公差からなる設計値情報、並びに、寸法種別を示す寸法種別情報を含む設計データを取得する設計データ取得手順と、
上記形状線の位置情報、上記寸法線の位置情報及び上記寸法種別情報に基づいて、上記寸法線を上記形状線によって規定される位置に対応づけることにより、上記形状線における測定対象箇所及び測定種別を特定する測定対象箇所特定手順と、
上記形状線の位置情報に基づいて、上記ワーク画像から上記ワークを検出するための特徴量情報を生成する特徴量情報生成手順と、
上記特徴量情報、上記測定対象箇所及び上記測定種別を示す測定対象箇所情報、並びに、上記測定対象箇所に関連付けた上記設計値情報からなる測定設定データを生成する測定設定データ生成手順とを実行させることを特徴とする測定設定データ作成装置用のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−32341(P2012−32341A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173969(P2010−173969)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】