説明

溶接ビード欠陥検出装置及び溶接ビード欠陥検出方法

【課題】溶接ビード欠陥の検出精度を向上できる溶接ビード欠陥検出装置及び溶接ビード欠陥検出方法を提供する。
【解決手段】溶接ビードの欠陥を検出する溶接ビード欠陥検出装置10であって、溶接モデルBLと平滑モデルSLとの比較、あるいは、平滑モデルSLと折線モデルVLとの比較、に基づいて、溶接モデルBLを、異常点と正常点とに分別する点群データ分別手段200と、異常点と、隣接する正常点間の距離と、に基づいて、溶接モデルBLを、欠落領域GGと非欠落領域GNとに分別する欠落領域分別手段300と、欠落領域GGまたは非欠落領域GNを順次併合して併合欠落領域GGGとする欠落領域併合手段400と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ビードの欠陥を検出する溶接ビード欠陥検出装置及び溶接ビード欠陥検出方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光切断法によって溶接ビードの断面形状を形状点群として測定し、計測した形状点群において点群が欠落している領域を穴あき等の欠陥部位として検出する溶接ビード欠陥検出方法は公知である(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、穴あき等の欠陥部位においては、測定時のレーザ光の多重反射によって形状点群の異常値が発生する場合がある。さらに、穴あき部位に発生した形状点群の異常値は、穴あき部位に蓋をするような形状点群となる場合がある。穴あき部位に蓋をするような形状点群は、穴あき部位として検出されないため、穴あきを見逃して判定することになる。
【0004】
一方、何ら欠陥のない正常部位、例えば、母材とビードとの隅部、あるいは、反射率の高い板合わせ部においても、レーザ光の多重反射による形状点群の異常値が発生する場合がある。何ら欠陥のない正常部位での異常値を欠陥部位として検出することは、良品を異常として判定することになる。
【0005】
そこで、溶接ビード欠陥検出装置及び溶接ビード欠陥検出方法では、穴あきの見逃しを防止し、かつ、誤検出を最小限に抑えることが必要とされている。つまり、溶接ビード欠陥検出装置及び溶接ビード欠陥検出方法では、溶接ビード欠陥の検出精度を向上することが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−215839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決しようとする問題は、溶接ビード欠陥の検出精度を向上できる溶接ビード欠陥検出装置及び溶接ビード欠陥検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、溶接ビードの欠陥を検出する溶接ビード欠陥検出装置であって、溶接ビードの表面形状について所定断面方向の点群データを取得する点群データ取得手段と、前記点群データと前記点群データを平滑化した平滑モデルとの比較、あるいは、前記平滑モデルと前記溶接ビードの表面形状を折線に近似した折線モデルとの比較、に基づいて、該点群データを、異常点と正常点とに分別する点群データ分別手段と、前記異常点と、隣接する前記正常点間の距離と、に基づいて、前記点群データを、欠落領域と非欠落領域とに分別する欠落領域分別手段と、所定断面方向の一側の最端に位置する前記欠落領域に対して、所定断面方向の他側に向かって、前記欠落領域または前記非欠落領域を順次併合して併合欠落領域とするにあたって、併合される前記非欠落領域の所定断面方向の幅と、併合した前記欠落領域の所定断面方向の幅の累積値と併合した前記非欠落領域の所定断面方向の幅の累積値との差と、に基づいて、その併合を終了する欠落領域併合手段と、前記併合欠落領域の所定断面方向の幅に基づいて、前記併合欠落領域を穴あき領域として判定する穴あき領域判定手段と、を具備するものである。
【0010】
請求項2においては、溶接ビードの欠陥を検出する溶接ビード欠陥検出方法であって、溶接ビードの表面形状について所定断面方向の点群データを取得し、前記点群データと前記点群データを平滑化した平滑モデルとの比較、あるいは、前記平滑モデルと前記溶接ビードの表面形状を折線に近似した折線モデルとの比較、に基づいて、該点群データを、異常点と正常点とに分別し、前記異常点と、隣接する前記正常点間の距離と、に基づいて、前記点群データを、欠落領域と非欠落領域とに分別し、所定断面方向の一側の最端に位置する前記欠落領域に対して、所定断面方向の他側に向かって、前記欠落領域または前記非欠落領域を順次併合して併合欠落領域とするにあたって、併合される前記非欠落領域の所定断面方向の幅と、併合した前記欠落領域の所定断面方向の幅の累積値と併合した前記非欠落領域の所定断面方向の幅の累積値との差と、に基づいて、その併合を終了し、前記併合欠落領域の所定断面方向の幅に基づいて、前記併合欠落領域を穴あき領域として判定するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の溶接ビード欠陥検出装置及び溶接ビード欠陥検出方法によれば、溶接ビード欠陥の検出精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】溶接ビード欠陥検出装置の周囲構成を示す模式図。
【図2】溶接ビード欠陥検出装置の構成を示す構成図。
【図3】溶接ビード欠陥検出工程の流れを示すフロー図。
【図4】点群データ取得工程の流れを示すフロー図。
【図5】マスタモデルを示すグラフ図。
【図6】マスタモデル及び溶接モデルを示すグラフ図。
【図7】マスタモデル、溶接モデル及びZ方向差分を示すグラフ図。
【図8】点群データ分別工程の流れを示すフロー図。
【図9】マスタモデル、溶接モデル及び平滑モデルを示すグラフ図。
【図10】マスタモデル、平滑モデル及び折線モデルを示すグラフ図。
【図11】欠落領域及び非欠落領域を示すグラフ図。
【図12】欠落領域併合工程の流れを示すフロー図。
【図13】累積値βを示すグラフ図。
【図14】累積値βを示す別のグラフ図。
【図15】累積値βを示す別のグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を用いて、溶接ビード欠陥検出装置10の周囲構成について説明する。
なお、図1では、破線が電気通信線を示し、二点鎖線がレーザ光を示している。また、以下では、図1に示すX、Y及びZ方向に従って説明する。
【0014】
溶接ビード欠陥検出装置10は、本発明に係る溶接ビード欠陥検出装置の実施形態である。溶接ビード欠陥検出装置10は、溶接部品20の表面形状を測定する表面形状測定装置15に接続されている。
【0015】
溶接部品20は、下板21と上板22とを部分的に重ね、重ねた部分を溶接したものである。下板21及び上板22は、緩やかに湾曲している。下板21と上板22とを部分的に重ねた部分(溶接部分)は、溶接ビード25となっている。
【0016】
表面形状測定装置15は、レーザスキャナであって、溶接部品20の表面形状について、Y方向に伸びる溶接ビード25に略直交するX方向断面の形状を測定するものである。より詳しくは、表面形状測定装置15は、光切断法によって、溶接部品20の溶接ビード25を横断する線状のレーザ光を照射し、線状のレーザ光が投影された領域(溶接部品20の二点鎖線)を撮影する。表面形状測定装置15は、溶接ビード25が伸びるY方向に沿って一定間隔毎に溶接部品20の表面形状を測定していくものとする。
【0017】
溶接ビード欠陥検出装置10は、一般的なコンピュータにより構成され、記憶装置(図示略)と、演算装置(図示略)と、を具備している。溶接ビード欠陥検出装置10には、表面形状測定装置15によって測定された表面形状のデータが入力される。
【0018】
図2を用いて、溶接ビード欠陥検出装置10の構成について説明する。
溶接ビード欠陥検出装置10は、点群データ取得手段100と、点群データ分別手段200と、欠落領域分別手段300と、欠落領域併合手段400と、穴あき領域判定手段500と、を具備している。
【0019】
図3を用いて、溶接ビード欠陥検出方法における溶接ビード欠陥検出工程S10の構成について説明する。
溶接ビード欠陥検出工程S10は、本発明に係る溶接ビード欠陥検出方法における溶接ビード欠陥検出工程の実施形態である。溶接ビード欠陥検出工程S10は、点群データ取得工程S100と、点群データ分別工程S200と、欠落領域分別工程S300と、欠落領域併合工程S400と、穴あき領域判定工程S500と、を具備している。
【0020】
なお、溶接ビード欠陥検出工程S10の各工程S100〜S500は、それぞれ溶接ビード欠陥検出装置10の各手段100〜500により行われる工程である。より具体的には、点群データ取得工程S100は、点群データ取得手段100により行われ、点群データ分別工程S200は、点群データ分別手段200により行われ、欠落領域分別工程S300は、欠落領域分別手段300により行われ、欠落領域併合工程S400は、欠落領域併合手段400により行われ、穴あき領域判定工程S500は、穴あき判定手段500により行われる。
【0021】
図4〜図7を用いて、点群データ取得工程S100について説明する。
点群データ取得工程S100は、溶接ビード25の表面形状についてX方向の断面形状を点群データとして取得し、点群データにおいて溶接ビード25が存在するビード区間Wを特定する工程である。
【0022】
図4を用いて、点群データ取得工程S100の流れについて説明する。
点群データ取得工程S100は、マスタ形状取得工程S110と、溶接形状取得工程S120と、位置合わせ工程S130と、ビード区間特定工程S140と、を具備している。
【0023】
図5を用いて、マスタ形状取得工程S110について説明する。
なお、図5では、横軸がX方向(溶接部品20の表面形状を測定する断面方向)を、縦軸がZ方向(鉛直方向)を示している。また、図5では、実線がマスタモデルMLを示している。
【0024】
マスタ形状取得工程S110では、溶接前における、溶接部品20の表面形状についてX方向の断面形状としてマスタモデルMLを取得する。マスタモデルMLは、下板21の表面形状である下板マスタモデルMULと、上板22の表面形状である上板マスタモデルMOLと、から構成されている。マスタモデルMLは、下板21及び上板22の製品CADデータからそれぞれ取得するものとする。
【0025】
マスタ形状取得工程S110では、X方向断面において、上板22の裏面の端側が下板21の表面と接する点を基準点CUとして、座標位置を決定する。つまり、上板22と下板21との内側境界点を基準点CUとして設定する。また、X方向断面において、下板21及び上板22の表面における、表面に溶接の影響を受けない、溶接ビード25から十分離れた区間を、それぞれのフィッティング区間RU・ROとして、座標位置を決定する。
【0026】
溶接形状取得工程S120について説明する。
溶接形状取得工程S120では、表面形状測定装置15によって測定された溶接ビード25の表面形状についてX方向の断面形状の点群データとしての溶接モデルBLとして取得する。
【0027】
図6を用いて、位置合わせ工程S130について説明する。
なお、図6では、横軸がX方向(溶接部品20の表面形状を測定する断面方向)を、縦軸はZ方向(鉛直方向)を示している。また、図6では、実線は溶接モデルBLを、破線がマスタモデルMLを示している。
【0028】
位置合わせ工程S130では、溶接モデルBLに対して、マスタモデルMLを重ね合わせる。このとき、溶接モデルBLに対して、下板マスタモデルMULと、上板マスタモデルMOLと、を独立して重ね合わせる。より具体的には、溶接モデルBLに対して、フィッティング区間RUにおいて、下板マスタモデルMULを重ね合わせ、溶接モデルBLに対して、フィッティング区間ROにおいて、上板マスタモデルMOLを重ね合わせる。
【0029】
位置合わせ工程S130においては、下板マスタモデルMUL側の基準点CUと、上板マスタモデルMOL側の基準点CUとは、溶接モデルBLに対してマスタモデルMLを重ね合わせた際に、溶接モデルBLにおける溶接による歪等が影響してそれぞれ基準点CU´・CU´となり、互いの位置が一致しない。そこで、溶接モデルBLに対して重ね合わされた下板マスタモデルMULの表面と、上板マスタモデルMOLの端面とを、それぞれ延長して交わる交点を改めて基準点CUとする。
【0030】
図7を用いて、ビード区間特定工程S140について説明する。
なお、図7では、横軸がX方向(溶接部品20の表面形状を測定する断面方向)を、縦軸がZ方向(鉛直方向)及びZ方向差分ΔZを示している。また、図7では、上段のグラフでは、実線が溶接モデルBLを、破線がマスタモデルMLを示し、下段のグラフでは、一点鎖線がZ差分ラインΔZLを示している。
【0031】
ビード区間特定工程S140は、溶接モデルBLとマスタモデルMLとの差分に基づいて、溶接モデルBLを領域Gに分割し、さらに分割された領域Gを併合して、溶接ビードが存在するビード区間Wを特定する工程である。
【0032】
ビード区間特定工程S140では、最初に、溶接モデルBLとマスタモデルMLとのZ方向の差分であるZ方向差分ΔZを算出してZ差分ラインΔZLとする。次に、Z差分ラインΔZLをX方向について性質の異なるそれぞれの領域Gに分割する。
【0033】
より具体的には、フィッティング区間RUの溶接ビード25に近い側の境界点である始点R1からフィッティング区間ROの溶接ビード25に近い側の境界である終点R2までにおける、Z方向差分ΔZと閾値TH11とを比較する。Z方向差分ΔZの絶対値が閾値TH11以下である領域Gを0グループとする(例えば、領域G1または領域G3)。また、Z方向差分ΔZが閾値TH11より大きい領域Gを+グループとする(例えば、領域G4または領域G8)。Z方向差分ΔZが閾値−TH11より小さい領域Gを−グループとする(例えば、領域G2及び領域G6)。
【0034】
次に、分割した領域Gのうちで、+グループまたは−グループの中から、面積(Z差分ラインΔZLの積分値)の絶対値が最大の領域Gを選択して最大領域G*とする。なお、+グループまたは−グループが存在しない場合には、ビード区間Wが存在しないものとする。
【0035】
次に、最大領域G*からX方向の両側に向かって、隣接する領域Gについて、領域Gの面積(Z差分ラインΔZLのX方向の積分値)の絶対値が閾値TH12以上である、領域Gにおける溶接モデルBLの境界点同士の距離hGが閾値TH13以下である、あるいは、領域Gが0グループである、場合には、その隣接する領域Gを順次併合していくものとする。
【0036】
最大領域G*からX方向の両側に向かって、隣接する領域Gを順次併合し、併合が終了した領域をビード区間Wとする。図7では、領域G4が最大領域G*であり、領域G2、領域G3、領域G5、領域G6、領域G7、領域G8が、「面積の絶対値が閾値TH12以上である」、「距離hGが閾値TH13以下である」、または「0グループである」のいずれかに該当する。一方、領域G1の面積の絶対値が閾値TH12より小さく、領域G9における溶接モデルBLの境界点同士の距離hGが閾値TH13より大きいため、ビード区間Wは領域G2〜領域G8までの領域となる。
【0037】
図8〜図10を用いて、点群データ分別工程S200について説明する。
点群データ分別工程S200は、点群データとしての溶接モデルBLと、溶接モデルBLを平滑化した平滑モデルSLとの比較、あるいは、平滑モデルSLと溶接ビード25の表面形状を折線に近似した折線モデルVLとの比較、に基づいて、溶接モデルBL(点群データ)を、異常点と正常点とに分別する工程である。
【0038】
点群データ分別工程S200では、まず、溶接モデルBLを移動平均によって平滑化した平滑モデルSLを作成する。そして、溶接モデルBLを形成する点群データを、点Qj(j=1、・・・・J)とする。また、平滑モデルSLを形成する点群データを、平滑点Sj(j=1、・・・・J)とする。なお、j=1となる点は、始点R1である。また、j=Jとなる点は、終点R2である(図9参照)。
【0039】
ステップS210において、点Qj及び平滑点Sjがビード区間Wに存在するかどうかを確認する。点Qj及び平滑点Sjがビード区間Wに存在する場合は、ステップS220に移行する。それ以外の場合は、ステップS211に移行する。
【0040】
ステップS211において、平滑点SjからマスタモデルMLへの最短距離が閾値TH24より大きいかどうかを確認する。最短距離が閾値TH24より大きい場合は、点Qj及び平滑点Sjを異常点と判定する。それ以外の場合は、点Qj及び平滑点Sjを正常点と判定する。
【0041】
このようにして、ステップS211では、ビード区間Wにない点Qj及び平滑点Sjは、マスタモデルMLとの距離のみに基づいて異常点であるか正常点であるかを判断している。
【0042】
図9を用いて、ステップS220及びステップS230について説明する。
なお、図9では、横軸がX方向(溶接部品20の表面形状を測定する断面方向)を、縦軸がZ方向(鉛直方向)を示している。また、図9では、実線が溶接モデルBLを、破線がマスタモデルMLを、一点鎖線が平滑モデルSLを示している。
【0043】
ステップS220において、点QjからマスタモデルMLへの最短距離h(Qj)、ならびに、平滑点SjからマスタモデルMLへの最短距離h(Sj)、を算出する。次に、最短距離h(Qj)が閾値TH21より大きい、あるいは、最短距離h(Sj)が閾値TH21より大きいかを確認する。最短距離h(Qj)が閾値TH21より大きい、あるいは、最短距離h(Sj)が閾値TH21より大きい場合には、ステップS230に移行する。それ以外の場合には、点Qj及び平滑点Sjを正常点と判定する。
【0044】
このようにして、ステップS220では、マスタモデルMLから近い位置にある点Qj及び平滑点Sjを正常点と判定している。
【0045】
ステップS230において、点Qjと平滑点SjとのZ成分における距離であるZ成分距離dZを算出する。そして、Z成分距離dZが閾値TH22より大きいかどうかを確認する。Z成分距離dZが閾値TH22より大きい場合には、点Qj及び平滑点Sjを異常点と判定する。それ以外の場合には、ステップS240に移行する。
【0046】
このようにして、ステップS230では、溶接モデルBLと平滑モデルSLとを比較して差が大きい点Qj及び平滑点Sjを異常点と判定している。
【0047】
図10を用いて、ステップS240及びステップS241について説明する。
なお、図10では、横軸がX方向(溶接部品20の表面形状を測定する断面方向)を、縦軸がZ方向(鉛直方向)を示している。また、図9では、実線が折線モデルVLを、破線がマスタモデルMLを、一点鎖線が平滑モデルSLを示している。
【0048】
ステップS240では、まず、ビード区間Wの各端点W1・W2と、平滑点Sjとを直線で結んだ折線モデルVLを作成する。次に、ビード区間Wの平滑点Sk(k=j1、・・・、j2)から折線モデルVLへの最短距離hj(Sk)を別途算出する。
【0049】
ステップS241では、ビード区間Wの平滑点Sk(k=j1、・・・、j2)のうち、閾値TH23より大きい最短距離hj(Sk)が過半数(50%以上)存在するかどうか確認する。閾値TH23より大きい最短距離hj(Sk)が過半数存在する場合は、点Qj及び平滑点Sjを異常点と判定する。それ以外の場合には、点Qj及び平滑点Sjを正常点と判定する。
【0050】
このようにして、ステップS240では、平滑点Sjが溶接モデルBLに近いかどうかを判定している。
【0051】
図11を用いて、欠落領域分別工程S300について説明する。
なお、図11では、横軸がX方向(溶接部品20の表面形状を測定する断面方向)を、縦軸がZ方向(鉛直方向)を示している。また、図9では、実線が溶接モデルBLを、破線がマスタモデルMLを示している。
【0052】
欠落領域分別工程S300は、異常点と、隣接する正常点間の距離と、に基づいて、溶接モデルBLを、欠落領域GGm(m=1、・・・)と非欠落領域GNm(m=1、・・・)とに分別する工程である。
【0053】
欠落領域分別工程S300では、始点R1から終点R2までにおいて、隣接する2つの正常点が、隣接する2つの正常点の2点間距離が閾値TH31より大きい、あるいは、隣接する2つの正常点の間に異常点が存在する、場合には、その隣接する2つの正常点を両端とする区間を欠落領域GGm(m=1、・・・)とする。また、欠落領域GGに挟まれる区間を非欠落領域GNm(m=1、・・・)とする。
【0054】
図12〜図15を用いて、欠落領域併合工程S400及び穴あき領域判定工程S500について説明する。
なお、図12では、図の上側に欠落領域併合工程S400を示し、図の下側に穴あき領域判定工程S500を示している。
【0055】
欠落領域併合工程S400(ステップS410〜ステップS480)は、始点R1から終点R2までにおいて、X方向のマイナス側の最端に位置する欠落領域GG1に対して、X方向のプラス側に向かって、欠落領域GGm(m=1、・・・)または非欠落領域GNm(m=1、・・・)を順次併合して併合欠落領域GGGとするにあたって、併合される非欠落領域GNmのX方向の幅DNm(m=1、・・・)と、併合した欠落領域GGmのX方向の幅DGm(m=1、・・・)の累積値と併合した非欠落領域GNmのX方向の幅DNm(m=1、・・・)との累積値との差である累積値βと、に基づいて、その併合を終了する工程である。
【0056】
穴あき領域判定工程S500(ステップS510〜ステップS530)は、併合欠落領域GGGのX方向の幅(後述する累積最大値αmax)に基づいて、併合欠落領域GGGを穴あき領域として判定する工程である。
【0057】
図12の上側を用いて、欠落領域併合工程S400の流れについて説明する。
欠落領域併合工程S400では、始点R1から終点R2までにおいて、欠落領域GGm(m=1、・・・M)を併合していくものとする。さらに、以下では、併合するに伴い累積値α、累積値β、併合するにあたってのそれぞれの最大値である累積最大値αmax、累積最大値βmaxを計算していくものとする。
【0058】
ステップS410において、残存している欠落領域GGmのうちで、X方向のマイナス側の最端にある欠落領域GGmを開始の欠落領域GGm0とする。開始の欠落領域GG0からX方向のプラス側に向かって、順次、欠落領域GGm、非欠落領域GNmを併合していくものとする。
【0059】
ステップS420において、累積値αは、併合開始時に0に初期化される。累積値βは、併合開始時に0に初期化される。累積最大値αmaxは、併合開始時に0に初期化される。累積最大値βmaxは、併合開始時に0に初期化される。
【0060】
ステップS430において、欠落領域GGmを併合する場合には、累積値αが幅DGmだけ増加され、累積値βが幅DGmだけ増加される。
【0061】
ステップS440では、現在の累積値βが、累積最大値βmaxより大きいかどうかを確認する。現在の累積値βが、累積最大値βmaxより大きい場合にはステップS450に移行する。それ以外の場合には、ステップS460に移行する。
【0062】
ステップS450では、累積最大値αmaxを現在の累積値αとする。累積最大値βmaxを現在の累積値βとする。また、現在の欠落領域GGmを累積最大値βmaxが存在するβ最大欠落領域GGmmaxとする。
【0063】
ステップS460では、併合する欠落領域GGmが終点R2に最も近い欠落領域GGM(m=M)であるかどうかを確認する。併合する欠落領域GGmが欠落領域GGMである場合は(例えば、図13に示すように、欠落領域GG4が最後の欠落領域GGMに該当する場合)、欠落領域GGm0〜β最大欠落領域GGmmaxまでを併合し併合欠落領域GGGとする。それ以外の場合には、ステップS470に移行する。
【0064】
ステップS470では、併合するにつれて閾値TH41より大きい幅DNmの非欠落領域GNmに到達したか、あるいは、非欠落領域GNmを併合すると累積値βが0より小さくなるか、を確認する。併合するにつれて閾値TH41より大きい幅DNmの非欠落領域GNmに到達した(例えば、図14に示すように、非欠落領域GN2の幅DN2が閾値TH41より大きい場合)、あるいは、非欠落領域GNmを併合すると累積値βが0より小さくなる場合(例えば、図15に示すように、非欠落領域GN3を併合すると累積値βが0より小さくなる場合)には、欠落領域GGm0〜β最大欠落領域GGmmaxまでを併合し併合欠落領域GGGとする。それ以外の場合には、ステップS480に移行する。
【0065】
ステップS480では、非欠落領域GNmを併合する場合には、累積値αが幅DGmだけ増加され、累積値βが幅DNmだけ減少される。そして、ステップS430に移行する。
【0066】
図12の下側を用いて、穴あき領域判定工程S500の流れについて説明する。
ステップS510では、併合欠落領域GGGにおける累積最大値αmaxすなわち併合欠落領域GGGのX方向の幅が閾値TH51より大きいかどうかを確認する。累積最大値αmaxが閾値TH51より大きい場合には、ステップS520へ移行する。それ以外の場合には、ステップS530へ移行する。
【0067】
ステップS520では、併合欠落領域GGGを穴あき領域として判定する。
【0068】
ステップS530では、併合欠落領域GGGを穴あき領域として判定しない。
【0069】
なお、穴あき領域判定工程S500が終了した後でも、終点R2(m=M)に至るまでは、β最大欠落領域GGmmaxから欠落領域併合工程S400を再開していくものとする。
【0070】
溶接ビード欠陥検出方法S10の効果について説明する。
溶接ビード欠陥検出方法S10によれば、溶接ビード欠陥の検出精度を向上することができる。すなわち、溶接ビード欠陥検出方法S10によれば、穴あき見逃しを防止し、かつ、誤検出を最小限に抑えることができる。
【符号の説明】
【0071】
10 溶接ビード検出装置
15 表面形状測定装置
20 溶接部品
21 下板
22 上板
25 溶接ビード
100 点群データ取得手段
200 点群データ分別手段
300 欠落領域分別手段
400 欠落領域併合手段
500 穴あき判定手段
S10 溶接ビード検出方法
S100 点群データ取得工程
S200 点群データ分別工程
S300 欠落領域分別工程
S400 欠落領域併合工程
S500 穴あき判定工程
BL 溶接モデル
ML マスタモデル
SL 平滑モデル
VL 折線モデル
GG 欠落領域
GN 非欠落領域
DG 幅(欠落領域)
DN 幅(非欠落領域)
GGG 併合欠落領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ビードの欠陥を検出する溶接ビード欠陥検出装置であって、
溶接ビードの表面形状について所定断面方向の点群データを取得する点群データ取得手段と、
前記点群データと前記点群データを平滑化した平滑モデルとの比較、あるいは、前記平滑モデルと前記溶接ビードの表面形状を折線に近似した折線モデルとの比較、に基づいて、該点群データを、異常点と正常点とに分別する点群データ分別手段と、
前記異常点と、隣接する前記正常点間の距離と、に基づいて、前記点群データを、欠落領域と非欠落領域とに分別する欠落領域分別手段と、
所定断面方向の一側の最端に位置する前記欠落領域に対して、所定断面方向の他側に向かって、前記欠落領域または前記非欠落領域を順次併合して併合欠落領域とするにあたって、併合される前記非欠落領域の所定断面方向の幅と、併合した前記欠落領域の所定断面方向の幅の累積値と併合した前記非欠落領域の所定断面方向の幅の累積値との差と、に基づいて、その併合を終了する欠落領域併合手段と、
前記併合欠落領域の所定断面方向の幅に基づいて、前記併合欠落領域を穴あき領域として判定する穴あき領域判定手段と、
を具備する、
溶接ビード欠陥検出装置。
【請求項2】
溶接ビードの欠陥を検出する溶接ビード欠陥検出方法であって、
溶接ビードの表面形状について所定断面方向の点群データを取得し、
前記点群データと前記点群データを平滑化した平滑モデルとの比較、あるいは、前記平滑モデルと前記溶接ビードの表面形状を折線に近似した折線モデルとの比較、に基づいて、該点群データを、異常点と正常点とに分別し、
前記異常点と、隣接する前記正常点間の距離と、に基づいて、前記点群データを、欠落領域と非欠落領域とに分別し、
所定断面方向の一側の最端に位置する前記欠落領域に対して、所定断面方向の他側に向かって、前記欠落領域または前記非欠落領域を順次併合して併合欠落領域とするにあたって、併合される前記非欠落領域の所定断面方向の幅と、併合した前記欠落領域の所定断面方向の幅の累積値と併合した前記非欠落領域の所定断面方向の幅の累積値との差と、に基づいて、その併合を終了し、
前記併合欠落領域の所定断面方向の幅に基づいて、前記併合欠落領域を穴あき領域として判定する、
溶接ビード欠陥検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−68580(P2013−68580A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209217(P2011−209217)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】