説明

溶解性COD成分含有水の処理方法及び装置

【課題】粉末活性炭を用いた場合よりも溶解性COD成分を十分に除去することが可能な溶解性COD成分含有水の処理方法及び装置を提供する。
【解決手段】原水に微粒状のCOD成分除去材を添加した後、無機凝集剤、有機凝結剤又は有機高分子凝集剤を添加して凝集処理した後、固液分離する。COD成分除去材は好ましくは、架橋構造を有した電解質ポリマーであり、実質的に水不溶性であり、カチオン性、アニオン性又は水素結合性の官能基を有する。この有機系微粒子は、炭化水素液体含有液体中に分散した逆相エマルションとして添加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種産業排水、浄水、用水など、溶解性COD成分を含有した水から溶解性COD成分を除去する方法及び装置に関する。詳しくは、本発明は、有機系微粒子よりなるCOD成分除去材を用いて溶解性COD成分を除去する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
I.溶解性COD成分含有水からCOD成分除去材としてイオン交換樹脂を用いて溶解性COD成分を除去する場合、従来はイオン交換樹脂を充填したイオン交換樹脂塔に通水するのが通常である(例えば特開2000−317445号公報、特開2001−276825号公報)。
【0003】
このように、イオン交換樹脂塔に通水して排水処理を行う場合、排水中の懸濁物質等のために樹脂塔に閉塞を起こす場合がある。
【0004】
II.排水処理のために粉末活性炭を排水に添加した後、この粉末活性炭を凝集剤によって凝集させ、沈降分離することは周知である。(例えば特開平6−226011号)。
【特許文献1】特開2000−317445号公報
【特許文献2】特開2001−276825号公報
【特許文献3】特開平6−226011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、粉末活性炭を用いた場合と同様に、あるいはそれよりも十分に溶解性COD成分を十分に除去することが可能な溶解性COD成分含有水の処理方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の溶解性COD成分含有水の処理方法は、溶解性COD成分含有水に微粒状のCOD成分除去材を添加した後、固液分離することにより、溶解性COD成分含有水から溶解性COD成分を除去するCOD成分含有水の処理方法において、該COD成分除去材は、カチオン性官能基、アニオン性官能基、又は水素結合能を持つ官能基を有した、実質的に水不溶性の有機系微粒子であって、該有機系微粒子を炭化水素液体含有媒体中に分散した状態で、又は希釈水に分散させて希釈した状態で添加することを特徴とするものである。
【0007】
本発明の溶解性COD成分含有水の処理装置は、溶解性COD成分含有水に微粒状のCOD成分除去材を添加する手段と、その後、この液を固液分離処理する固液分離手段とを有する溶解性COD成分含有水の処理装置において、該COD成分除去材は、カチオン性官能基、アニオン性官能基、又は水素結合能を有した、実質的に水不溶性の有機系微粒子であって、該有機系微粒子を炭化水素液体含有媒体中に分散した状態で、又は希釈水に分散させて希釈した状態で添加するようにしたことを特徴とするものである。
【0008】
この有機系微粒子としては架橋構造を有する電解質ポリマーが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明者らが種々研究を重ねた結果、架橋構造を有する電解質ポリマーなど、COD成分除去能を有した有機系微粒子を溶解性COD成分含有水に添加すると、水中の溶解性COD成分がこの有機系微粒子に吸着され、従って有機系微粒子を固液分離すると溶解性COD成分も水中から除去されること、この有機系微粒子による溶解性COD成分の吸着作用は粉末活性炭と略同等又はそれ以上であることが見出された。
【0010】
本発明は、かかる知見に基づくものであり、本発明によれば、従来の粉末活性炭添加プラス凝集分離プロセスと同様の簡易なプロセスによって、十分に溶解性COD成分を除去することが可能となる。
【0011】
本発明においては、処理対象水に架橋構造を有する電解質ポリマーなどの有機系微粒子を逆相エマルションとして添加することにより、処理対象液中の懸濁物質が多量にあっても、樹脂塔通水で起こる閉塞トラブルが全くなく、効率的に処理することができる。なお、イオン性のCOD成分に対しては樹脂のカチオン性官能基又はアニオン性官能基が作用し、ノニオン性のCOD成分に対しては樹脂の水素結合能を持つ官能基の作用により、COD成分の吸着が起こるものと推察される。
【0012】
本発明では、固液分離、好ましくは無機凝集剤、有機凝結剤又は有機高分子凝集剤を添加して凝集分離することにより、液中からCOD成分及び有機系微粒子が十分に除去される。なお、有機系微粒子と凝集剤又は凝結剤の添加順序に限定はない。ただし、有機系微粒子よりも先に凝集剤又は凝結剤を添加すると、無機凝集剤等から持ち込まれるイオン成分によって、有機系微粒子等への負荷が上がり、効率的な処理ができなくなることがあるので、先に凝集剤又は凝結剤を添加し、その後、有機系微粒子等を添加するのが好ましい場合もある。
【0013】
なお、本発明においては、架橋した高分子電解質ゲルを実質的に水不溶性の有機系微粒子として添加するので、架橋した高分子の分子間にもCOD成分の拡散が起こるため、ポリマーの官能基がゲル内部まで有効に機能できる。また、O/W(逆相)エマルジョンとすることで、ゲル状の有機系微粒子同士が付着したり、合一したりするのを防止でき、製品安定性を保つことができる、という効果も奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0015】
本発明では、溶解性COD成分含有水に有機系微粒子を添加した後、固液分離して溶解性COD成分含有水から溶解性COD成分を除去する。この固液分離としては、無機凝集剤、有機凝結剤又は有機高分子凝集剤を添加して凝集させ、生成した凝集フロックを分離するのが好適である。ただし、固液分離としては凝集剤や凝結剤を利用しない固液分離、例えば、浮上分離、遠心分離、濾過などの分離操作を採用してもよい。
【0016】
以下、溶解性COD成分含有水、有機系微粒子、凝集剤及び凝結剤、装置形態等について項目別に詳述する。
【0017】
1)溶解性COD成分含有水
本発明方法及び装置が処理対象とする溶解性COD成分含有水としては、印刷工場、半導体工場、食品工場、紙・パルプ工場、化学工場などから排出される工場排水、し尿処理場、下水処理場からの処理水、あるいは浄水や用水が例示されるが、これらに限定されない。
【0018】
溶解性COD成分としては、糖類、タンパク質などの天然由来のもの、界面活性剤や工業原料や科学由来のもの、食品由来のもの、およびそれらの分解物など種々のものが例示されるが、これらに限定されない。溶解性COD成分に、アニオン性、カチオン性、ノニオン性などのイオン性の限定もない。
【0019】
溶解性COD成分の分子量は、特に限定されるものではないが、概ね数十〜数百万、特に数百〜数十万程度である。
【0020】
本発明は、被処理水中における溶解性COD成分の濃度が10〜5000mg/L、特に20〜1000mg/L程度である場合に適用するのに好適である。
【0021】
2)有機系微粒子
有機系微粒子のカチオン性官能基としては、一級アミン、二級アミン、三級アミンおよびそれらの酸塩や四級アンモニウム基等の官能基を挙げることができる。また、アニオン性官能基としては、カルボキシル基、スルホン基、硫酸基、ホスホン酸基およびそれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩から選ばれる官能基などを挙げることができる。水素結合能を持つ官能基としては、カルボキシル基など上記のものの一部も含まれるが、水酸基、エーテル基、アミド基、エーテル基などのノニオン基も挙げることができる。
【0022】
有機系微粒子としては架橋構造を有する電解質ポリマーが好適である。電解質ポリマーの例を次に示すが、これらに限定されるものではない。
【0023】
有機系微粒子としては架橋構造構成モノマー単位として、アニオン系であれば、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸等、およびそれらのアルカリ金属塩等のアニオン性モノマーが挙げられる。ノニオン系であれば、ポリ(メタ)アクリルアミド、Nイソプロピルアクリルアミド、Nメチル(NNジメチル)アクリルアミド、アクリロニトリル、スチレン、メチルもしくはエチル(メタ)アクリレート等のノニオン性モノマーが挙げられる。カチオン系であれば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートもしくはその四級アンモニウム塩やジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドもしくはその四級アンモニウム塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド等のカチオン性モノマーが挙げられる。これらのホモポリマー、あるいは上記モノマーを組み合わせた共重合体が、電解質ポリマーの基本となる。実質的に水溶解しないようにするため、上記モノマーに加えて、架橋剤として、メチレンビスアクリルアミド、ジビニルベンゼンなどのジビニルモノマーをエマルション重合させる。ジビニルモノマー量は、全モノマーに対して0.0001〜0.1モル%必要で、この量によって、ポリマー微粒子の膨潤度つまり水中での粒子径を調整できる。
【0024】
本発明では、この実質的に水不溶性の有機系微粒子を逆相エマルションとして被処理水に添加する。
【0025】
この逆相エマルションとしては、上記有機系微粒子(P)と、水(W)と、炭化水素液体(HC)と、界面活性剤(S)とを含むものが好ましい。これら成分P、W、HC、Sの割合は、重量比(%)でP:W:HC:S=20〜50:20〜40:20〜40:2〜20であり、PとWの合計量が全体重量に対して、40〜80重量%であるのが好ましい。
【0026】
この炭化水素液体としては、脂肪族系の炭化水素液体が好適であり、具体的にはイソヘキサンなどのイソパラフィン、n−ヘキサン、ケロシン、鉱物油などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
また、界面活性剤としては、例えば、HLB7〜10の高級脂肪族(C10〜20)アルコールのポリオキシエチレンエーテル、もしくは高級脂肪酸(C10〜22)のポリオキシエチレンエステルが好適である。前者の例としては、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、などのポリオキシエチレン(EO付加モル数=3〜10)エーテルが挙げられる。後者の例としては、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などのポリオキシエチレン(EO付加モル数=3〜10)エステルが挙げられる。ただし、界面活性剤はこれらに限定されない。
【0028】
[平均粒子径]
有機系微粒子の平均粒子径は、200μm以下、特に1〜100μm、とりわけ1〜10μmであることが好ましい。粒径が小さいと、比表面積が大きくなり、反応効率が向上する。
【0029】
なお、この粒径は、通常の散乱光方式、又は透過光方式等の粒度分布測定装置により測定される。
【0030】
[イオン性]
本発明では、処理対象水中の溶解性COD成分のイオン性に応じて有機系微粒子のイオン性を選択してもよい。なお、通常の溶解性COD成分はアニオン性もしくはノニオン性である。このような場合には、カチオン性の官能基を有する有機系微粒子を適用することが望ましい。
【0031】
[添加時における有機系微粒子の形態]
有機系微粒子は、被処理水に上記の逆相エマルションとして又は希釈水に分散させて希釈して添加される。
【0032】
被処理水に有機系微粒子含有エマルションを添加するには、例えばタンクに保管したエマルションを一般的な送液ポンプを用いて、添加することができる。なお、添加直前に水等の液状媒体に分散させて添加してもよい。
【0033】
[有機系微粒子の添加場所]
有機系微粒子の添加場所は特に限定はない。被処理水の配管にライン注入してもよく、何らかの撹拌装置を備えた反応槽に添加してもよい。
【0034】
[有機系微粒子の添加率]
有機系微粒子の添加率は被処理水中の溶解性COD成分溶濃度、性状等に応じて変わるが、概ね固形分で0.1〜5g/L特に0.5〜3g/L程度が好適である。
【0035】
3)無機凝集剤、有機凝結剤、有機高分子凝集剤
[無機凝集剤の種類及び添加量]
無機凝集剤の種類に特に限定はない。硫酸バンド、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、硫酸第一鉄など任意に選定できる。
【0036】
無機凝集剤の添加量に特に限定はない。被処理対象水の溶解性COD成分濃度その他の性状に応じて変わるが、概ね固形分で500〜5000mg/Lである。
【0037】
[有機凝結剤の種類及び添加量]
有機凝結剤の種類に特に限定はない。例えば、ポリエチレンイミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、エチレンジアミンエピクロルヒドリ重縮合物、ポリアルキレンポリアミンなど、通常水処理で使用されるカチオン性有機系ポリマーが挙げられる。
【0038】
有機凝結剤の添加量に特に限定はない。被処理対象液の性状に応じて変わるが、概ね固形分で1〜100mg/Lである。
【0039】
[有機高分子凝集剤]
有機高分子凝集剤の種類に特に限定はない。水処理で通常使用される高分子凝集剤であれば採用可能である。例えば、アニオン系であれば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミドの共重合物、およびそれらのアルカリ金属塩等が挙げられる。ノニオン系であれば、ポリ(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。カチオン系であれば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートもしくはその4級アンモニウム塩やジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドもしくはその4級アンモニウム塩等のカチオン性モノマーからなるホモポリマー、あるいはそれらカチオン性モノマーと共重合可能なノニオン性モノマーとの共重合体等が挙げられる。
【0040】
有機高分子凝集剤の添加量に特に限定はない。被処理対象液の性状に応じて変わるが、概ね固形分で1〜100mg/Lである。
【0041】
[凝集剤又は凝結剤の添加順序]
まず、被処理対象水に有機系微粒子を添加し、撹拌などによってさらに充分接触させた後に、上記凝集剤又は凝結剤を添加し、撹拌などによってさらに充分反応させるのが好ましいが、添加順序はこれに限定されるものではなく、次のa,b又はcの添加順序としてもよい。
【0042】
a:無機凝集剤を添加して反応させた後、有機系微粒子を添加して反応させ、pH調整後に有機高分子凝集剤を添加する。
【0043】
b:有機系微粒子を添加してよく反応させた後に、無機凝集剤と有機凝結剤を添加してpH調整後、有機高分子凝集剤を添加する。
【0044】
c:無機凝集剤を添加して反応させた後、有機系微粒子を添加して反応させ、pH調整
後に有機高分子凝集剤を添加する。
【0045】
[凝集剤又は凝結剤の添加方法]
通常の排水処理での操作と同様に、送液ポンプを用いて、水量に応じて一定量添加すればよい。ただし、添加のための機器はこれに限定されない。
【0046】
[他薬剤との併用]
必要に応じて、殺菌剤、消臭剤、消泡剤、防食剤などと併用してもよい。
【0047】
4)その他の形態
本発明においては、有機系微粒子を添加した後の固液分離として、凝集剤又は凝結剤を利用した固液分離以外の固液分離を採用してもよい。
【0048】
また、本発明による処理と共に、必要に応じて、紫外線照射、オゾン処理、膜処理、生物処理などを併用してもよく、これらの処理は本発明の処理の前、後又は途中のいずれにおいて行われてもよい。
【0049】
なお、処理水を通常のCODmnやCODcr測定を行うことにより、効果確認ができる。必要に応じて、測定前にろ過等の前処理を行ってもよい。
【0050】
5)本発明装置の一例
第1図は、本発明方法を行うのに好適な溶解性COD成分含有水の処理装置の一例を示す系統図である。原水(溶解性COD成分含有水)は、混合槽1に導入され、ここにおいて有機系微粒子含有逆相エマルションが添加され、好ましくは撹拌機でゆっくりと撹拌される。この混合槽1内の液は次いで凝集槽に送られ、無機凝集剤、有機凝結剤又は有機高分子凝集剤の添加を受け、好ましくはゆっくりと撹拌される。
【0051】
この凝集槽2内の液は、沈殿槽3に送られ、固形分と処理水(上澄水)とに固液分離され、処理水が系外に取り出される。
【0052】
なお、凝集槽2に無機凝集剤と有機高分子凝集剤又は有機凝結剤とを添加してもよく、凝集槽2と沈殿槽3との間にフロック成長用の槽を設け、凝集槽2で無機凝集剤を添加し、このフロック成長用の槽に有機高分子凝集剤又は有機凝結剤を添加してもよい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例及び比較例について説明する。なお、この実施例及び比較例では、原水として、試薬「でんぷん」をモデルCOD成分とした試験排水を用いた。でんぷん試薬としてはキシダ化学製試薬特級を使用した。コロイド当量測定によるアニオン化度は、−0・15mep/gで、若干アニオン性を示した。
【0054】
この試験排水の調整方法は次のとおりである。まずホットプレートスターラーにて過熱溶解した5重量%でんぷん水溶液を調製し、そのでんぷん水溶液83mlを純水9917mlに投入し、414mg/lでんぷん水溶液とした。この水溶液のCODmnは、実測で309mg/lであった。
【0055】
水不溶の有機系微粒子の逆相エマルション液体としては、有機系微粒子としてジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル四級化物/アクリルアミド=60/40(モル%)コポリマーの架橋ゲル微粒子(平均粒径15μm)を含むものを用いた。
【0056】
このゲルの製造手順は次の通りである。
【0057】
撹拌機、ジムロート冷却管、窒素導入管、温度計を備えた、1L4つ口セパラブルフラスコを用意し、窒素雰囲気下、HLB=9.5の高級アルコールポリオキシエチレンエーテル48gを混合したケロシン123gをフラスコに入れる。窒素雰囲気で強く撹拌しながら、ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル四級化物(65%)178gとアクリルアミド28gと、メチレンビスアクリルアミド0.01gと水82の混合物をゆっくりフラスコに投入する。フラスコ内を50℃に保ち、そこに開始剤として、アゾビスイソブチロニトリルのアセトン10%溶液0.65gを添加して、50℃のまま8時間窒素雰囲気下、撹拌しながら重合を行う。反応物は、水に入れても溶解しない、不溶性の微粒子ゲルであった。
【0058】
ゲル分散液の組成は、ポリマー31重量%、水31重量%、ケロシン27重量%、界面活性剤11重量%であった。ゲルの成分はポリマー50重量%、水50重量%である。
【0059】
説明の便宜上、まず粉末活性炭添加又は水溶性ポリマーを用いた比較例1,2について説明する。
【0060】
比較例1
この比較例1では、比重0.35Kg/Lの粉末活性炭を用いた。
【0061】
上記試験排水を500mL入れた500mLビーカーを6個用意し、6連ジャーテスターに設置した。
【0062】
添加率が0、50、100、200、600、1000、2000mg/Lになるように、0、0.025、0.05、0.1、0.3、0.5、1.0gの粉末活性炭を粉末のまま添加し、まずスパーテルで液中に分散させた。
【0063】
直ちに、ジャーテスターにて150rpm30分間撹拌した。
【0064】
つづいて、各液に無機凝集剤として硫酸バンドを3000mg/L添加し、同じく150rpmで60秒撹拌した。
【0065】
つづいて、pHをおおよそ7に調整し、3000rpm10分間遠心分離にかけ、上澄液のCODmnを測定した。
【0066】
なお、原水のCOD測定は、活性炭を添加せずに上記と同じ操作を行い、計測を行った。
【0067】
結果を第2図に示す。
【0068】
比較例2
粉末活性炭の代わりに、水溶性ポリマーとしてメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル四級化物/アクリルアミド60/40(モル%)のコポリマーを用いたこと以外は比較例1と同じ操作にて行った。
【0069】
実施例1
上記比較例1の粉末活性炭の代わりに有機系微粒子含有エマルションとしてのゲルを用いたこと以外は比較例1と同じ操作にて行った。
【0070】
実施例1においても、有機系微粒子の添加率を、比較例1と同じく0、50、100、200、600、1000、2000mg/Lとした。
【0071】
処理水のCOD測定結果を第2図に示す。
【0072】
第2図の通り、実施例1によると、比較例1,2に比べて良好なCOD除去効果を得ることができる。通常の水溶性ポリマーは、COD成分としたでんぷんと吸着反応が起きたとしても、溶解したままであり、水中から析出分離できないため、ポリマーを入れた分に相当するCODが上昇したものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施例のフロー図である。
【図2】実施例及び比較例のCOD測定結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0074】
1 混合槽
2 凝集槽
3 沈殿槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解性COD成分含有水に微粒状のCOD成分除去材を添加した後、固液分離することにより、溶解性COD成分含有水から溶解性COD成分を除去するCOD成分含有水の処理方法において、
該COD成分除去材は、カチオン性官能基、アニオン性官能基、又は水素結合能を持つ官能基を有した、実質的に水不溶性の有機系微粒子であって、
該有機系微粒子を炭化水素液体含有媒体中に分散した状態で、又は希釈水に分散させて希釈した状態で添加することを特徴とする溶解性COD成分含有水の処理方法。
【請求項2】
請求項1において、分散した状態の前記有機系微粒子の平均粒径が200μm以下であることを特徴とするCOD成分含有水の処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記炭化水素液体が脂肪族系炭化水素液体であることを特徴とする溶解性COD成分含有水の処理方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記媒体が水と炭化水素液体との混合物であることを特徴とする溶解性COD成分含有水の処理方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記有機系微粒子は架橋構造を有する電解質ポリマーであることを特徴とするCOD成分含有水の処理方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記固液分離は、無機凝集剤、有機凝結剤及び有機高分子凝集剤の少なくとも1種を添加して凝集させ、生成した凝集フロックを分離する工程を有することを特徴とする溶解性COD成分含有水の処理方法。
【請求項7】
溶解性COD成分含有水に微粒状のCOD成分除去材を添加する手段と、その後、この液を固液分離処理する固液分離手段とを有する溶解性COD成分含有水の処理装置において、
該COD成分除去材は、カチオン性官能基、アニオン性官能基、又は水素結合能を有した、実質的に水不溶性の有機系微粒子であって、
該有機系微粒子を炭化水素液体含有媒体中に分散した状態で、又は希釈水に分散させて希釈した状態で添加するようにしたことを特徴とする溶解性COD成分含有水の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−36606(P2008−36606A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218472(P2006−218472)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】