火災検出装置及び火災検出方法
【課題】誤報がなく、しかも早期に火災を検出することができる火災検出装置を提供する。
【解決手段】MPUが、ヒータの低温時に触媒に吸着した可燃ガスが燃焼しているときの可燃ガスセンサの出力V1を第1燃焼値V11とし、ヒータの低温時に触媒に吸着した分の可燃ガスの燃焼が終了した後の可燃ガスセンサの出力V1を第2燃焼値V12を得て、第1燃焼値V11と第2燃焼値V12との両出力に基づいて閾値の値を設定する。MPUが、煙量やCO濃度が設定した閾値を越えたとき火災を検出する。
【解決手段】MPUが、ヒータの低温時に触媒に吸着した可燃ガスが燃焼しているときの可燃ガスセンサの出力V1を第1燃焼値V11とし、ヒータの低温時に触媒に吸着した分の可燃ガスの燃焼が終了した後の可燃ガスセンサの出力V1を第2燃焼値V12を得て、第1燃焼値V11と第2燃焼値V12との両出力に基づいて閾値の値を設定する。MPUが、煙量やCO濃度が設定した閾値を越えたとき火災を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災検出装置に係り、特に、一酸化炭素濃度又は煙量を検出するセンサと、該検出した一酸化炭素濃度又は煙量が閾値を越えたとき火災を検出する火災検出手段とを有する火災検出装置及び火災検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、上述した火災検出装置としては、例えば温度上昇を検出する熱センサ、煙量を検出する煙センサ、炎量を検出する炎センサ、一酸化炭素(CO)濃度を検出するCOセンサなどを単独に有する単独式、若しくはこれらセンサを組み合わせた複合式のものがある。住宅用火災警報器および住宅用自動火災報知設備に係る技術上の規格を定める省令では、煙センサを有することを定めている。
【0003】
煙センサを有する煙式の火災検出装置は、居室では埃等の蓄積やタバコの煙に反応して、台所では調理の際に発生する煙や水蒸気に反応して誤報が発生することがある。従来、煙式は誤報の問題から台所での使用は認められていなかった。しかし、近年戸建て住宅への火災検出装置の設置が義務化され、その技術基準では煙式が採用されており、台所で煙式が使用可能となり誤報対策がますます重要となっている。
【0004】
また、住宅火災を模した実験から寝タバコによるフトンのくん焼のように煙量が高くなる前に、有毒なCO濃度が上昇してしまう火災が存在し、最悪の場合、煙による火災警報が出る前にCO濃度もしくは一酸化炭素ヘモグロビン(COHb)が危険な領域に達し、逃げ遅れてしまう。
【0005】
一方、火災発生時に煙と共に発生するCOを検知して、CO濃度が閾値を超えると警報を発する警報器が国際基準化機構(ISO)において提案されている。CO濃度の閾値は、EN規格の火災試験基準TF3の実験に基づいて決定されており、その閾値は50ppmとかなり低い。日常的に使用されている燃焼機器(ストーブ、ファンヒータ等)から発生するCO濃度は、50ppmよりも高くなることもあり得るので、このような低いCO濃度閾値では、燃焼機器の運転に反応して誤警報を発することがある。
【0006】
以上のように、従来の火災検出装置では、閾値を超える煙量といった物理量が検出されても、それが火災によるものなのか、それとも調理や燃焼器の使用などが原因なのか判断できず、誤警報を発生したり、火災を早期に検出できなかった。
【0007】
上記問題を解決するため、例えばCO濃度出力と煙検出出力との積が判定レベルを越えるときに火災を検出するものが提案されている(例えば特許文献1)。しかしながら、煙量もCOも出る燃焼器使用時や焼き魚を焼いているときは誤報となる可能性が高い。
【特許文献1】特開2001−216579号公報
【特許文献2】特開2006−92508号公報
【特許文献3】特開2006−65656号公報
【特許文献4】特開2000−30165号公報
【特許文献5】特開2000−137875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、誤報がなく、しかも早期に火災を検出することができる火災検出装置及び火災検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、一酸化炭素濃度又は煙量を検出するセンサと、該検出した一酸化炭素濃度又は煙量が閾値を越えたとき火災を検出する火災検出手段とを有する火災検出装置であって、可燃ガスと接触燃焼しない低温と、可燃ガスと接触燃焼する高温とに順次温度が制御される接触燃焼式のセンサ素子を有する可燃ガスセンサと、前記センサ素子の前記低温時に当該センサ素子に吸着した可燃ガスが燃焼しているときの前記可燃ガスセンサの出力を第1燃焼値とし、前記センサ素子の前記低温時に当該センサ素子に吸着した分の可燃ガスの燃焼が終了した後の前記可燃ガスセンサの出力を第2燃焼値として得る燃焼値取得手段と、前記第1燃焼値と前記第2燃焼値との両出力に基づいて前記閾値の値を設定する閾値設定手段とを有することを特徴とする火災検出装置に存する。
【0010】
請求項1記載の発明によれば、閾値設定手段が可燃ガスセンサからの第1燃焼値と第2燃焼値との両出力に基づいて閾値の値を設定する。従って、例えば、第1燃焼値と第2燃焼値との両出力から火災が発生している可能性が高いときには火災の発生を想定した値に閾値を設定し、調理が行われている可能性が高いときには調理を想定した閾値に設定することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記閾値が、前記閾値設定手段によって(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)の値に基づいて設定されていることを特徴とする請求項1記載の火災検出装置に存する。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、閾値が、閾値設定手段によって(第1燃焼値)/(第2燃焼値)の値に基づいて設定されているので、簡単に、くん焼火災が発生している可能性が高いか調理時が行われている可能性が高いかを判断して、状況に応じた適切な閾値を設定することができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記第1燃焼値が第1所定値を越えかつ(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)が第2所定値以上のときには、前記煙量に対する閾値が、前記閾値設定手段によって第1煙判定値に設定され、また、前記第1燃焼値が前記第1所定値を越えかつ(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)が前記第2所定値未満のときには、前記煙量に対する閾値が、前記閾値設定手段によって前記第1煙判定値よりも高い第2煙判定値に設定されることを特徴とする請求項2記載の火災検出装置に存する。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、第1燃焼値が第1所定値を越えかつ(第1燃焼値)/(第2燃焼値)が第2所定値以上のときには、煙量に対する閾値が、閾値設定手段によって第1煙判定値に設定される。また、第1燃焼値が第1所定値を越えかつ(第1燃焼値)/(第2燃焼値)が第2所定値未満のときには、煙量に対する閾値が、閾値設定手段によって第1煙判定値よりも高い第2煙判定値に設定される。このため、状況に応じた適切な煙量に対する閾値を設定することができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記第1燃焼値が前記第1所定値未満のときには、前記煙量に対する閾値が、前記閾値設定手段によって前記第2煙判定値よりも高い第3煙判定値に設定されることを特徴とする請求項3記載の火災検出装置に存する。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、第1燃焼値が第1所定値未満のときには、煙量に対する閾値が、閾値設定手段によって第2煙判定値よりも高い第3煙判定値に設定される。このため、より一層、状況に応じた適切な煙量に対する閾値を設定することができる。
【0017】
請求項5記載の発明は、前記第1燃焼値が第1所定値を越えかつ(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)が第2所定値以上のときには、前記CO濃度に対する閾値が、前記閾値設定手段によって第1CO判定値に設定され、また、前記第1燃焼値が前記第1所定値を越えかつ(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)が前記第2所定値未満のときには、前記CO濃度に対する閾値が、前記閾値設定手段によって前記第1CO判定値よりも高い第2CO判定値に設定されることを特徴とする請求項2〜4いずれかに記載の火災検出装置に存する。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、第1燃焼値が第1所定値を越えかつ(第1燃焼値)/(第2燃焼値)が第2所定値以上のときには、CO濃度に対する閾値が、閾値設定手段によって第1CO判定値に設定される。また、第1燃焼値が第1所定値を越えかつ(第1燃焼値)/(第2燃焼値)が第2所定値未満のときには、CO濃度に対する閾値が、閾値設定手段によって第1CO判定値よりも高い第2CO判定値に設定される。このため、状況に応じた適切なCO濃度に対する閾値を設定することができる。
【0019】
請求項6記載の発明は、センサが検出した一酸化炭素濃度又は煙両が閾値を超えたとき火災を検出する火災検出方法であって、可燃ガスセンサが有する接触燃焼式のセンサ素子を可燃ガスと接触燃焼しない低温、前記可燃ガスと接触燃焼する高温に順次温度を制御し、前記前記センサ素子の前記低温時に当該センサ素子に吸着した可燃ガスが燃焼しているときの前記可燃ガスセンサの出力を第1燃焼値とし、前記センサ素子の前記低温時に当該センサ素子に吸着した分の可燃ガスの燃焼が終了した後の前記可燃ガスセンサの出力を第2燃焼値として得て、前記第1燃焼値と前記第2燃焼値との両出力に基づいて前記閾値の値を設定することを特徴とする火災検出方法に存する。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、可燃ガスセンサからの第1燃焼値と第2燃焼値との両出力に基づいて閾値の値を設定する。従って、例えば、第1燃焼値と第2燃焼値との両出力から火災が発生している可能性が高いときには火災の発生を想定した値に閾値を設定し、調理が行われている可能性が高いときには調理を想定した閾値に設定することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように請求項1及び6記載の発明によれば、例えば、第1燃焼値と第2燃焼値との両出力から火災が発生している可能性が高いときには火災の発生を想定した値に閾値を設定し、調理が行われている可能性が高いときには調理を想定した閾値に設定することができるので、誤報がなく、しかも早期に火災を検出することができる。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、簡単に、くん焼火災が発生している可能性が高いか調理時が行われている可能性が高いかを判断して、状況に応じた適切な閾値を設定することができるので、より確実に、誤報がなく、しかも早期に火災を検出することができる。
【0023】
請求項3〜5記載の発明によれば、状況に応じた適切な煙量に対する閾値を設定することができるので、より確実に、誤報がなく、しかも早期に火災を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の火災検出装置の一実施の形態を示すブロック図である。図2は、図1に示す可燃ガスセンサの詳細な回路図である。図3は、(A)〜(C)は各々、図1に示す可燃ガスセンサの平面図、背面図及びAA線断面図である。
【0025】
同図に示すように、火災検出装置は、可燃ガスセンサ1、COセンサ2、煙センサ3及び温度センサ4といった火災時に発生する物理量を検出する複数のセンサを有している。火災検出装置はまた、マイクロプロセッサ(MPU)5と、火災検出の旨が表示される表示部6と、火災検出の旨の音声が出力される音声警報部7をさらに有している。
【0026】
上記可燃ガスセンサ1は、図2に示すように、可燃性ガスと接触燃焼する接触燃焼式のガス検知素子(センサ素子)8及び比較素子9を有している。ガス検知素子8は、図3に示すように、白金から成るPtヒータ10sと、このPtヒータ10s上に設けられた、可燃ガスの接触燃焼を促進するPd/Al2O3触媒層11sとで構成されている。比較素子9は、Ptヒータ10rと、このPtヒータ10r上に設けられた、可燃ガスの接触燃焼を起こさないアルミナ(Al2O3)層11rとで構成されている。
【0027】
図3(A)及び(B)に示すように、可燃性ガスセンサ1は、シリコン(Si)ウエハ41の上に、(酸化)SiO2膜48c、(窒化)SiN膜48b及び(酸化ハフニウム)HfO2膜48aからなる絶縁薄膜が生膜され、その上に、ガス検知素子8としてPtヒータ10s及びPd/Al2O3触媒層11s、比較素子9としてPtヒータ10r及びAl2O3層11rが形成されている。また、図3(C)に示すように、Siウエハ41を異方性エッチングして凹部46及び47を形成して、それぞれ薄膜ダイヤフラムDs及びDrを形成することにより熱容量を小さくしている。
【0028】
上記ガス検知素子8のPtヒータ10sと、比較素子9のPtヒータ10rとは、可燃性ガスのない空気中では等しい抵抗値になるように設けられている。
【0029】
上述したガス検知素子8及び比較素子9は、図2に示すように、抵抗12、13と共にブリッジ回路14を構成している。このブリッジ回路14の端子aと端子bとの間には、ヒータ駆動回路15からパルス状のセンサ駆動電圧が供給される。
【0030】
以上の構成によれば、ブリッジ回路14は可燃性ガスのない空気中では平衡状態となり、c、d間に電位差が生じない。これに対して、可燃性ガスを含む空気中では可燃性ガスとの燃焼熱によりガス検知素子8のPtヒータ10sの抵抗値が増加するため不平衡状態となり、c、d間に電位差が生じる。この電位差は可燃性ガスの濃度に比例した値である。そして、ブリッジ回路14の端子c、端子d間に接続されたセンサ出力検出部16が、上記電位差を増幅してセンサ出力V1として出力する。
【0031】
また、ブリッジ回路14に供給されるセンサ駆動電圧は、図4に示すように、10秒周期で低電圧、高電圧を繰り返し出力する信号であり、高電圧時間が0.4秒で低電圧時間が9.6秒である。このセンサ駆動電圧の高電圧時間中にガス検知素子8及び比較素子9が高温に制御されガス検知素子8が可燃ガスと接触燃焼する。一方、低電圧時間中にガス検知素子8及び比較素子9が低温に制御されガス検知素子8は可燃ガスと接触燃焼しない。
【0032】
ところで、エタノール(C2H5OH)などの吸着性の高い可燃性ガスは、センサ駆動電圧が低電圧のときにPd/Al2O3触媒層11s表面に吸着した分がセンサ駆動電圧が高電圧になったとき瞬間的に燃焼する。一方、吸着性の低いメタン(CH4)、水素(H2)等の一般的な可燃ガスは、Pd/Al2O3触媒層11s表面への吸着量が少ないので、センサ駆動電圧が高電圧になったときの出力が小さく、ピーク状の出力とならない。
【0033】
このため、図6に示すように、H2、CH4に対するセンサ出力V1は、9.6秒後に低電圧から高電圧にオンしてから0.04秒程度で定常状態に達する。一方、C2H5OHでは、9.6秒後に低電圧から高電圧にオンしてから0.02秒後に極大値を持つピークを示した後に定常状態に達し、ピーク値は定常値の約5倍を示している。
【0034】
そこで、MPU5は、低電圧時間が充分に長いセンサ駆動電圧を印加して、図5に示すように、センサ駆動電圧が低電圧から高電圧になった直後にセンサ出力V1に現れるピーク値を第1燃焼値V11として取得する。また、センサ駆動電圧が高電圧から低電圧になる直前のピーク終了後の定常値を第2燃焼値V12として取得する。上記第1燃焼値V11は、Ptヒータ10sの低温時にPd/Al2O3触媒層11sに吸着した可燃ガス(例えばC2H5OH)が燃焼しているときのセンサ出力V1であり、接触燃焼するC2H5OH、CH4、H2といった可燃ガスのうち吸着性の高いC2H5OHの濃度に応じた値となる。
【0035】
また、上記第2燃焼値V12は、Ptヒータ10sの低温時にPd/Al2O3触媒層11sに吸着した分の可燃ガスの燃焼が終了した後のセンサ出力V1であり、接触燃焼するC2H5OH、CH4、H2といった全ての可燃ガスの濃度に応じた値となる。
【0036】
上記COセンサ2は、空気中のCO濃度を検出してCO濃度に応じたセンサ出力V2を出力するものである。COセンサ2としては、CO濃度が検出できるものであればよく、例えば接触燃焼式、電気化学式、NDIR式などが考えられる。
【0037】
煙センサ3は、空気中の煙量を検出して煙量に応じたセンサ出力V3を出力するものである。煙センサ3は、発光素子と、煙粒子による乱反射光を受光する受光素子とを備えた光電式のものなどが考えられる。
【0038】
温度センサ4は、周囲温度を検出して周囲温度に応じたセンサ出力V4を出力するものである。温度センサ4としては、一般的な、例えば熱電対、サーミスタ、測温ICなどを用いることが考えられる。また、マイクロセンサチップ上に白金抵抗体を設け、その抵抗値変化を見てもよい。
【0039】
上述したMPU5は、アナログのセンサ出力V1〜V4をそれぞれ入力して、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器17と、センサ出力V1〜V4から可燃ガス量、CO濃度、煙量、温度などを求める演算部18と、求めた可燃ガス量、CO濃度、煙量、温度に基づいて火災を検出する判定部19とを備えている。
【0040】
上述した構成の火災検出装置の原理について図7〜図13を参照して以下説明する。図7は、種々の火災実験パターンや誤報につながりやすい事象に対する可燃ガスセンサ1、COセンサ2、煙センサ3の出力を示す表である。火災パターンとして、寝たばこによるフトンのくん焼(以下くん焼)、ストーブを火源とするフトンのくん焼火災(以下ストーブ火災)、ゴミ箱を火元とする火災(以下ゴミ箱)を、誤報につながりやすい事象として、酒を使った調理、焼き魚及び水蒸気発生の実験を選んで行った。なお、酒を使った調理、焼き魚および水蒸気実験は、一般住宅のキッチンを模した実験室にて行った。また、くん焼き、ストーブ火災、ゴミ箱火災は、一般住宅の居所を模した火災実験室にて行った。
【0041】
図7に示すように、誤報になりやすい事象である酒を使った調理、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値V11は0.9V程度であり、第2燃焼値V12は0.3V程度であった。このとき20ppm程度のCOが発生していることが確認された。
【0042】
また、誤報を引き起こす事象である魚を焼いているとき、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値V11は0.1V以下であり、第2燃焼値V12は0.05V以下である。また、50ppm以下のCOが発生し、10%/m以上の煙が発生している。即ち、魚を焼いているときは、煙量が大きく、光電式の煙センサの出力のみに応じて火災を検出する火災検出装置では、設置場所や部屋の換気状況によっては火災警報が頻発してしまう可能性がある。
【0043】
また、誤報を引き起こす事象である調理中に水蒸気が発生しているとき、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値V11と第2燃焼値V12とは共に小さく0.05V以下であり、5ppm以下のCOが発生している。
【0044】
また、くん焼火災では、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値V11は0.5V程度であり、第2燃焼値V12は0.05V程度である。また、200ppm程度のCOが発生し、煙はほとんど発生していない。即ち、くん焼のような火災は、CO濃度が200ppm程度発生していても、煙は発生しておらず、危険な状態に陥る可能性がある。
【0045】
また、ストーブ火災では、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値V11は0.4V程度であり、第2燃焼値V12は0.05V程度である。また、5ppm程度のCOが発生し、10%/m以上の煙が発生している。
【0046】
また、ゴミ箱火災では、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値V11は0.4V程度であり、第2燃焼値V12は0.05V程度である。また、50ppm程度のCOが発生し、10%/m以上の煙が発生している。
【0047】
図8、図9はそれぞれ、魚を焼いたときの可燃ガスセンサ1の第1燃焼値及び第2燃焼値と、CO濃度とを示すタイムチャートである。図10は、酒を使った調理を行ったときの可燃ガスセンサ1の第1燃焼値と第2燃焼値とを示すタイムチャートである。なお、酒蒸発試験とは、酒100ccをフライパンで蒸発する試験である。図11は、ストーブを火源としたフトンのくん焼火災における可燃ガスセンサ1の第1燃焼値と第2燃焼値とのタイムチャートである。
【0048】
図8から明らかなように、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値及び第2燃焼値は、焼き魚の煙に対して感度が低いことが分かる。図9から明らかなように、魚を焼いているときでも数十ppm程度のCOが検出されることが分かる。このとき、煙量は非常に高い。図10により、酒を使った調理を行うと、第1燃焼値と第2燃焼値との両出力共に高い値を示すが、第1燃焼値と第2燃焼値との比がほぼ3〜4対1であることがわかった。
【0049】
また、図11により、くん焼火災が発生した場合、第1燃焼値と第2燃焼値との両出力共に高い値を示し、また第1燃焼値と第2燃焼値との比がほぼ10対1であることがわかった。
【0050】
次に、図12及び図13に、居室における寝たばこを想定したフトン(綿100%)のくん焼実験における可燃ガスセンサ1の第1燃焼値と、煙量及びCO濃度とを示すタイムチャートを示す。なお、煙量は、光の減光率で表している。減光率としては、実際の減光率と煙式火災報知器が計測した減光率とを示す。同図に示すように、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値V11とCO濃度は、初期(20分)から立ち上がっているのに対し、煙量は45分過ぎからようやく立ち上がった。このときCO濃度はすでに300ppmを越えており、さらに点線で示す煙式火災報知器の警報点では500ppmにまで達した。
【0051】
以上のことをふまえて、下記に示すように判定条件1、2、3毎に異なるCO閾値、煙量閾値を設定する。なお、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値をV11(V)、第2燃焼値をV12(V)とする。COセンサ2が検出したCO濃度をCco(ppm)、煙センサ3が検出した煙濃度をCsm(%/M)とする。
【0052】
(判定条件1)V11≧X(第1所定値)かつV11/V12≧Y(第2所定値)の時(例えばXは0.05〜0.1(V)、Yは7〜10に設定。)
煙閾値A%/m(例5%/m)、CO閾値Dppm(例えば50ppm)に設定する。つまり、(判定条件1)では、高濃度のCOが発生し、かつ煙量の少ないくん焼火災が発生している可能性が高いと判断して、CO閾値をDppm(第1CO判定値)に下げる。加えて、煙閾値をA%/m(第1煙判定値)に下げて、検知感度を上げる。これにより、状況に応じた適切なCO閾値、煙閾値を設定することができる。
【0053】
(判定条件2)V11≧XかつV11/V12<Yの時
煙閾値B(>A)%/m(例10%/m)、CO閾値E(>D)ppm(例えば50ppm〜100ppm)に設定する。つまり、(判定条件2)では、調理が行われている可能性が高いと判断して、煙閾値をB%/m(第2煙判定値)に上げる。加えて、CO閾値もEppm(第2CO判定値)に上げて、誤報の可能性を低くする。これにより、状況に応じた適切なCO閾値、煙閾値を設定することができる。
【0054】
(判定条件3)V11<Xの時
煙閾値C(>B)%/m(例15%/m)、CO閾値E(>D)ppm(例えば50ppm〜100ppm)に設定する。(判定条件3)では、くん焼火災が発生している可能性も低く、調理が行われている可能性も低くと判断し、また火災によって発生が予測されるガスが無いことから火災の危険性が低いと判断し煙閾値をC%/m(第3CO判定値)に上げて、調理や蒸気あるいはタバコ、埃などによる誤報の可能性を低くする。CO閾値はEppmに設定される。
【0055】
但し、第1燃焼値V11がF(V)以上、又は、CO濃度CcoがGppm以上、又は、煙濃度CsmがH%/m以上になったら即時警報するようにする。
【0056】
上記概略で説明した火災検出装置の詳細な動作について、図14に示すMPUの処理手順を示すフローチャートを参照して以下説明する。まず、MPU5は、電源投入に応じて火災検出処理を行う。まず、最初のステップS1において、MPU5は、初期化動作を行った後、図示しないメモリ内に格納された各センサ出力V2〜V4の換算式を読み込む(ステップS2)。その後、MPU5の演算部18は、各センサ出力V1〜V4を読み込む(ステップS3)。
【0057】
次に、MPU5の演算部18が、COセンサ2、煙センサ3、温度センサ4からのセンサ出力V2、V3、V4を上記換算式に代入してCO濃度、煙量、温度を求める換算演算処理を行う(ステップS4)。その後、MPU5は、ステップS3で読み込んだ第1燃焼値V11/第2燃焼値V12を演算する(ステップS5)。
【0058】
次に、MPU5は、第1燃焼値V11がX=例えば0.1V以上であるか否かを判断する(ステップS6)。第1燃焼値V11が0.1V以上であれば(ステップS6でY)、MPU5は有機ガスが発生していると判断して、ステップS5で求めた第1燃焼値V11/第2燃焼値V12がY=例えば8以上であるか否かを判断する(ステップS7)。第1燃焼値V11/第2燃焼値V12が8以上であれば(ステップS7でY)、くん焼火災が発生している可能性が高いと判断して上記(判定条件1)に煙閾値、CO閾値を設定した後(ステップS8)、ステップS11に進む。
【0059】
これに対して、第1燃焼値V11/第2燃焼値V12が8未満であれば(ステップS7でN)、調理など火災以外の原因で有機ガスが発生していると判断して判定条件2に煙閾値、CO閾値を設定した後(ステップS9)、ステップS11に進む。
【0060】
これに対して、第1燃焼値V11が0.1V未満であれば(ステップS6でN)、MPU5は有機ガスが発生していないと判断して、判定条件3に設定した後(ステップS10)、ステップS11に進む。以上のことから明らかなように、MPU5は、ステップS5〜S10において閾値設定手段として働く。
【0061】
その後、MPU5は、火災検出手段として働き、上記ステップS4で換算したCO濃度、煙量が上記ステップS8、S9、S10で設定されたCO閾値、煙閾値を越えると火災が発生したと判断して(ステップS11でY)、表示部6に火災の旨を伝える表示を行わせると共に音声警報部7に火災警報を出力させた後(ステップS12)、処理を終了する。これに対して、上記ステップS4で換算したCO濃度、煙量が上記ステップS8、S9、S10で設定されたCO閾値、煙閾値を越えていなければ火災が発生していないと判断して(ステップS11でN)、再びステップS3に戻る。
【0062】
以上のようにCO閾値、煙閾値を設定すれば、図7に示すような酒を使用した調理、焼き魚、水蒸気といった警報したくない事象については警報されない。一方、くん焼、ストーブ、ゴミ箱火災といった警報したい事象については警報される。
【0063】
以上の火災検出装置によれば、第1燃焼値V11と第2燃焼値V12との差がくん焼火災時と調理時とでは大きく異なることに着目して、MPU5が可燃ガスセンサ1からの第1燃焼値V11と第2燃焼値V12との両出力に基づいてCO閾値、煙閾値の値を設定する。従って、第1燃焼値V11と第2燃焼値V12との両出力からくん焼火災が発生している可能性が高いときにはくん焼火災の発生を想定した値にCO閾値、煙閾値を設定し、調理が行われている可能性が高いときには調理を想定したCO閾値、煙閾値に設定することができ、誤報がなく、しかも早期に火災を検出することができる。
【0064】
また、MPU5が、(第1燃焼値)/(第2燃焼値)の値に基づいて前記閾値の設定を行うので、簡単に、くん焼火災が発生している可能性が高いか調理時が行われている可能性が高いかを判断して、状況に応じた適切な閾値を設定することができ、より確実に、誤報がなく、しかも早期に火災を検出することができる。
【0065】
また、上述した実施形態によれば、ヒータ駆動回路15は接触燃焼しない低温時にも低電圧のセンサ駆動電圧を印加していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、接触燃焼しない低温時にはセンサ駆動電圧を印加せずに、常温に制御してもよい。
【0066】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の火災検出装置の一実施の形態を示す回路図である。
【図2】図1に示す可燃ガスセンサの詳細な回路図である。
【図3】(A)〜(C)は各々、図1に示す可燃ガスセンサの平面図、背面図及びAA線断面図である。
【図4】図2に示すブリッジ回路に供給されるセンサ駆動電圧のタイムチャートである。
【図5】図2に示す可燃ガスセンサのセンサ出力のタイムチャートである。
【図6】9.6秒のセンサ駆動電圧の低電圧時間後に高電圧を印加してからの経過時間とH2、CH4、C2H5OHに対するセンサ出力との関係を示すグラフである。
【図7】種々の火災実験パターンや誤報につながりやすい事象に対する可燃ガスセンサ、COセンサ、煙センサの出力を示す表である。
【図8】一般住宅のキッチンを模した実験室にて、魚(サンマ)を焼いたときの可燃ガスセンサの第1燃焼値と第2燃焼値とを示すタイムチャートである。
【図9】一般住宅のキッチンを模した実験室にて、魚(サンマ)を焼いたときのCO濃度を示すタイムチャートである。
【図10】一般住宅のキッチンを模した実験室にて、酒蒸発試験を行ったときの可燃ガスセンサの第1燃焼値と第2燃焼値とを示すタイムチャートである。
【図11】一般住宅の居室を模した火災実験室で行った、ストーブにフトンが触れたことを想定したくん焼火災実験における可燃ガスセンサの吸着燃料出力と第2燃焼値とのタイムチャートである。
【図12】居室における寝たばこを想定したフトン(綿100%)のくん焼実験における可燃ガスセンサ1の第1燃焼値のタイムチャートである。
【図13】居室における寝たばこを想定したフトン(綿100%)のくん焼実験における煙量及びCO濃度とを示すタイムチャートを示す。
【図14】火災検出装置を構成するMPUの処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1 可燃ガスセンサ
2 COセンサ(センサ)
3 煙センサ(センサ)
5 MPU(火災検出手段、閾値設定手段)
8 ガス検知素子(センサ素子)
V1 センサ出力
V11 第1燃焼値
V12 第2燃焼値
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災検出装置に係り、特に、一酸化炭素濃度又は煙量を検出するセンサと、該検出した一酸化炭素濃度又は煙量が閾値を越えたとき火災を検出する火災検出手段とを有する火災検出装置及び火災検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、上述した火災検出装置としては、例えば温度上昇を検出する熱センサ、煙量を検出する煙センサ、炎量を検出する炎センサ、一酸化炭素(CO)濃度を検出するCOセンサなどを単独に有する単独式、若しくはこれらセンサを組み合わせた複合式のものがある。住宅用火災警報器および住宅用自動火災報知設備に係る技術上の規格を定める省令では、煙センサを有することを定めている。
【0003】
煙センサを有する煙式の火災検出装置は、居室では埃等の蓄積やタバコの煙に反応して、台所では調理の際に発生する煙や水蒸気に反応して誤報が発生することがある。従来、煙式は誤報の問題から台所での使用は認められていなかった。しかし、近年戸建て住宅への火災検出装置の設置が義務化され、その技術基準では煙式が採用されており、台所で煙式が使用可能となり誤報対策がますます重要となっている。
【0004】
また、住宅火災を模した実験から寝タバコによるフトンのくん焼のように煙量が高くなる前に、有毒なCO濃度が上昇してしまう火災が存在し、最悪の場合、煙による火災警報が出る前にCO濃度もしくは一酸化炭素ヘモグロビン(COHb)が危険な領域に達し、逃げ遅れてしまう。
【0005】
一方、火災発生時に煙と共に発生するCOを検知して、CO濃度が閾値を超えると警報を発する警報器が国際基準化機構(ISO)において提案されている。CO濃度の閾値は、EN規格の火災試験基準TF3の実験に基づいて決定されており、その閾値は50ppmとかなり低い。日常的に使用されている燃焼機器(ストーブ、ファンヒータ等)から発生するCO濃度は、50ppmよりも高くなることもあり得るので、このような低いCO濃度閾値では、燃焼機器の運転に反応して誤警報を発することがある。
【0006】
以上のように、従来の火災検出装置では、閾値を超える煙量といった物理量が検出されても、それが火災によるものなのか、それとも調理や燃焼器の使用などが原因なのか判断できず、誤警報を発生したり、火災を早期に検出できなかった。
【0007】
上記問題を解決するため、例えばCO濃度出力と煙検出出力との積が判定レベルを越えるときに火災を検出するものが提案されている(例えば特許文献1)。しかしながら、煙量もCOも出る燃焼器使用時や焼き魚を焼いているときは誤報となる可能性が高い。
【特許文献1】特開2001−216579号公報
【特許文献2】特開2006−92508号公報
【特許文献3】特開2006−65656号公報
【特許文献4】特開2000−30165号公報
【特許文献5】特開2000−137875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、誤報がなく、しかも早期に火災を検出することができる火災検出装置及び火災検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、一酸化炭素濃度又は煙量を検出するセンサと、該検出した一酸化炭素濃度又は煙量が閾値を越えたとき火災を検出する火災検出手段とを有する火災検出装置であって、可燃ガスと接触燃焼しない低温と、可燃ガスと接触燃焼する高温とに順次温度が制御される接触燃焼式のセンサ素子を有する可燃ガスセンサと、前記センサ素子の前記低温時に当該センサ素子に吸着した可燃ガスが燃焼しているときの前記可燃ガスセンサの出力を第1燃焼値とし、前記センサ素子の前記低温時に当該センサ素子に吸着した分の可燃ガスの燃焼が終了した後の前記可燃ガスセンサの出力を第2燃焼値として得る燃焼値取得手段と、前記第1燃焼値と前記第2燃焼値との両出力に基づいて前記閾値の値を設定する閾値設定手段とを有することを特徴とする火災検出装置に存する。
【0010】
請求項1記載の発明によれば、閾値設定手段が可燃ガスセンサからの第1燃焼値と第2燃焼値との両出力に基づいて閾値の値を設定する。従って、例えば、第1燃焼値と第2燃焼値との両出力から火災が発生している可能性が高いときには火災の発生を想定した値に閾値を設定し、調理が行われている可能性が高いときには調理を想定した閾値に設定することができる。
【0011】
請求項2記載の発明は、前記閾値が、前記閾値設定手段によって(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)の値に基づいて設定されていることを特徴とする請求項1記載の火災検出装置に存する。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、閾値が、閾値設定手段によって(第1燃焼値)/(第2燃焼値)の値に基づいて設定されているので、簡単に、くん焼火災が発生している可能性が高いか調理時が行われている可能性が高いかを判断して、状況に応じた適切な閾値を設定することができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記第1燃焼値が第1所定値を越えかつ(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)が第2所定値以上のときには、前記煙量に対する閾値が、前記閾値設定手段によって第1煙判定値に設定され、また、前記第1燃焼値が前記第1所定値を越えかつ(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)が前記第2所定値未満のときには、前記煙量に対する閾値が、前記閾値設定手段によって前記第1煙判定値よりも高い第2煙判定値に設定されることを特徴とする請求項2記載の火災検出装置に存する。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、第1燃焼値が第1所定値を越えかつ(第1燃焼値)/(第2燃焼値)が第2所定値以上のときには、煙量に対する閾値が、閾値設定手段によって第1煙判定値に設定される。また、第1燃焼値が第1所定値を越えかつ(第1燃焼値)/(第2燃焼値)が第2所定値未満のときには、煙量に対する閾値が、閾値設定手段によって第1煙判定値よりも高い第2煙判定値に設定される。このため、状況に応じた適切な煙量に対する閾値を設定することができる。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記第1燃焼値が前記第1所定値未満のときには、前記煙量に対する閾値が、前記閾値設定手段によって前記第2煙判定値よりも高い第3煙判定値に設定されることを特徴とする請求項3記載の火災検出装置に存する。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、第1燃焼値が第1所定値未満のときには、煙量に対する閾値が、閾値設定手段によって第2煙判定値よりも高い第3煙判定値に設定される。このため、より一層、状況に応じた適切な煙量に対する閾値を設定することができる。
【0017】
請求項5記載の発明は、前記第1燃焼値が第1所定値を越えかつ(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)が第2所定値以上のときには、前記CO濃度に対する閾値が、前記閾値設定手段によって第1CO判定値に設定され、また、前記第1燃焼値が前記第1所定値を越えかつ(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)が前記第2所定値未満のときには、前記CO濃度に対する閾値が、前記閾値設定手段によって前記第1CO判定値よりも高い第2CO判定値に設定されることを特徴とする請求項2〜4いずれかに記載の火災検出装置に存する。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、第1燃焼値が第1所定値を越えかつ(第1燃焼値)/(第2燃焼値)が第2所定値以上のときには、CO濃度に対する閾値が、閾値設定手段によって第1CO判定値に設定される。また、第1燃焼値が第1所定値を越えかつ(第1燃焼値)/(第2燃焼値)が第2所定値未満のときには、CO濃度に対する閾値が、閾値設定手段によって第1CO判定値よりも高い第2CO判定値に設定される。このため、状況に応じた適切なCO濃度に対する閾値を設定することができる。
【0019】
請求項6記載の発明は、センサが検出した一酸化炭素濃度又は煙両が閾値を超えたとき火災を検出する火災検出方法であって、可燃ガスセンサが有する接触燃焼式のセンサ素子を可燃ガスと接触燃焼しない低温、前記可燃ガスと接触燃焼する高温に順次温度を制御し、前記前記センサ素子の前記低温時に当該センサ素子に吸着した可燃ガスが燃焼しているときの前記可燃ガスセンサの出力を第1燃焼値とし、前記センサ素子の前記低温時に当該センサ素子に吸着した分の可燃ガスの燃焼が終了した後の前記可燃ガスセンサの出力を第2燃焼値として得て、前記第1燃焼値と前記第2燃焼値との両出力に基づいて前記閾値の値を設定することを特徴とする火災検出方法に存する。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、可燃ガスセンサからの第1燃焼値と第2燃焼値との両出力に基づいて閾値の値を設定する。従って、例えば、第1燃焼値と第2燃焼値との両出力から火災が発生している可能性が高いときには火災の発生を想定した値に閾値を設定し、調理が行われている可能性が高いときには調理を想定した閾値に設定することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように請求項1及び6記載の発明によれば、例えば、第1燃焼値と第2燃焼値との両出力から火災が発生している可能性が高いときには火災の発生を想定した値に閾値を設定し、調理が行われている可能性が高いときには調理を想定した閾値に設定することができるので、誤報がなく、しかも早期に火災を検出することができる。
【0022】
請求項2記載の発明によれば、簡単に、くん焼火災が発生している可能性が高いか調理時が行われている可能性が高いかを判断して、状況に応じた適切な閾値を設定することができるので、より確実に、誤報がなく、しかも早期に火災を検出することができる。
【0023】
請求項3〜5記載の発明によれば、状況に応じた適切な煙量に対する閾値を設定することができるので、より確実に、誤報がなく、しかも早期に火災を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の火災検出装置の一実施の形態を示すブロック図である。図2は、図1に示す可燃ガスセンサの詳細な回路図である。図3は、(A)〜(C)は各々、図1に示す可燃ガスセンサの平面図、背面図及びAA線断面図である。
【0025】
同図に示すように、火災検出装置は、可燃ガスセンサ1、COセンサ2、煙センサ3及び温度センサ4といった火災時に発生する物理量を検出する複数のセンサを有している。火災検出装置はまた、マイクロプロセッサ(MPU)5と、火災検出の旨が表示される表示部6と、火災検出の旨の音声が出力される音声警報部7をさらに有している。
【0026】
上記可燃ガスセンサ1は、図2に示すように、可燃性ガスと接触燃焼する接触燃焼式のガス検知素子(センサ素子)8及び比較素子9を有している。ガス検知素子8は、図3に示すように、白金から成るPtヒータ10sと、このPtヒータ10s上に設けられた、可燃ガスの接触燃焼を促進するPd/Al2O3触媒層11sとで構成されている。比較素子9は、Ptヒータ10rと、このPtヒータ10r上に設けられた、可燃ガスの接触燃焼を起こさないアルミナ(Al2O3)層11rとで構成されている。
【0027】
図3(A)及び(B)に示すように、可燃性ガスセンサ1は、シリコン(Si)ウエハ41の上に、(酸化)SiO2膜48c、(窒化)SiN膜48b及び(酸化ハフニウム)HfO2膜48aからなる絶縁薄膜が生膜され、その上に、ガス検知素子8としてPtヒータ10s及びPd/Al2O3触媒層11s、比較素子9としてPtヒータ10r及びAl2O3層11rが形成されている。また、図3(C)に示すように、Siウエハ41を異方性エッチングして凹部46及び47を形成して、それぞれ薄膜ダイヤフラムDs及びDrを形成することにより熱容量を小さくしている。
【0028】
上記ガス検知素子8のPtヒータ10sと、比較素子9のPtヒータ10rとは、可燃性ガスのない空気中では等しい抵抗値になるように設けられている。
【0029】
上述したガス検知素子8及び比較素子9は、図2に示すように、抵抗12、13と共にブリッジ回路14を構成している。このブリッジ回路14の端子aと端子bとの間には、ヒータ駆動回路15からパルス状のセンサ駆動電圧が供給される。
【0030】
以上の構成によれば、ブリッジ回路14は可燃性ガスのない空気中では平衡状態となり、c、d間に電位差が生じない。これに対して、可燃性ガスを含む空気中では可燃性ガスとの燃焼熱によりガス検知素子8のPtヒータ10sの抵抗値が増加するため不平衡状態となり、c、d間に電位差が生じる。この電位差は可燃性ガスの濃度に比例した値である。そして、ブリッジ回路14の端子c、端子d間に接続されたセンサ出力検出部16が、上記電位差を増幅してセンサ出力V1として出力する。
【0031】
また、ブリッジ回路14に供給されるセンサ駆動電圧は、図4に示すように、10秒周期で低電圧、高電圧を繰り返し出力する信号であり、高電圧時間が0.4秒で低電圧時間が9.6秒である。このセンサ駆動電圧の高電圧時間中にガス検知素子8及び比較素子9が高温に制御されガス検知素子8が可燃ガスと接触燃焼する。一方、低電圧時間中にガス検知素子8及び比較素子9が低温に制御されガス検知素子8は可燃ガスと接触燃焼しない。
【0032】
ところで、エタノール(C2H5OH)などの吸着性の高い可燃性ガスは、センサ駆動電圧が低電圧のときにPd/Al2O3触媒層11s表面に吸着した分がセンサ駆動電圧が高電圧になったとき瞬間的に燃焼する。一方、吸着性の低いメタン(CH4)、水素(H2)等の一般的な可燃ガスは、Pd/Al2O3触媒層11s表面への吸着量が少ないので、センサ駆動電圧が高電圧になったときの出力が小さく、ピーク状の出力とならない。
【0033】
このため、図6に示すように、H2、CH4に対するセンサ出力V1は、9.6秒後に低電圧から高電圧にオンしてから0.04秒程度で定常状態に達する。一方、C2H5OHでは、9.6秒後に低電圧から高電圧にオンしてから0.02秒後に極大値を持つピークを示した後に定常状態に達し、ピーク値は定常値の約5倍を示している。
【0034】
そこで、MPU5は、低電圧時間が充分に長いセンサ駆動電圧を印加して、図5に示すように、センサ駆動電圧が低電圧から高電圧になった直後にセンサ出力V1に現れるピーク値を第1燃焼値V11として取得する。また、センサ駆動電圧が高電圧から低電圧になる直前のピーク終了後の定常値を第2燃焼値V12として取得する。上記第1燃焼値V11は、Ptヒータ10sの低温時にPd/Al2O3触媒層11sに吸着した可燃ガス(例えばC2H5OH)が燃焼しているときのセンサ出力V1であり、接触燃焼するC2H5OH、CH4、H2といった可燃ガスのうち吸着性の高いC2H5OHの濃度に応じた値となる。
【0035】
また、上記第2燃焼値V12は、Ptヒータ10sの低温時にPd/Al2O3触媒層11sに吸着した分の可燃ガスの燃焼が終了した後のセンサ出力V1であり、接触燃焼するC2H5OH、CH4、H2といった全ての可燃ガスの濃度に応じた値となる。
【0036】
上記COセンサ2は、空気中のCO濃度を検出してCO濃度に応じたセンサ出力V2を出力するものである。COセンサ2としては、CO濃度が検出できるものであればよく、例えば接触燃焼式、電気化学式、NDIR式などが考えられる。
【0037】
煙センサ3は、空気中の煙量を検出して煙量に応じたセンサ出力V3を出力するものである。煙センサ3は、発光素子と、煙粒子による乱反射光を受光する受光素子とを備えた光電式のものなどが考えられる。
【0038】
温度センサ4は、周囲温度を検出して周囲温度に応じたセンサ出力V4を出力するものである。温度センサ4としては、一般的な、例えば熱電対、サーミスタ、測温ICなどを用いることが考えられる。また、マイクロセンサチップ上に白金抵抗体を設け、その抵抗値変化を見てもよい。
【0039】
上述したMPU5は、アナログのセンサ出力V1〜V4をそれぞれ入力して、アナログ/デジタル(A/D)変換するA/D変換器17と、センサ出力V1〜V4から可燃ガス量、CO濃度、煙量、温度などを求める演算部18と、求めた可燃ガス量、CO濃度、煙量、温度に基づいて火災を検出する判定部19とを備えている。
【0040】
上述した構成の火災検出装置の原理について図7〜図13を参照して以下説明する。図7は、種々の火災実験パターンや誤報につながりやすい事象に対する可燃ガスセンサ1、COセンサ2、煙センサ3の出力を示す表である。火災パターンとして、寝たばこによるフトンのくん焼(以下くん焼)、ストーブを火源とするフトンのくん焼火災(以下ストーブ火災)、ゴミ箱を火元とする火災(以下ゴミ箱)を、誤報につながりやすい事象として、酒を使った調理、焼き魚及び水蒸気発生の実験を選んで行った。なお、酒を使った調理、焼き魚および水蒸気実験は、一般住宅のキッチンを模した実験室にて行った。また、くん焼き、ストーブ火災、ゴミ箱火災は、一般住宅の居所を模した火災実験室にて行った。
【0041】
図7に示すように、誤報になりやすい事象である酒を使った調理、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値V11は0.9V程度であり、第2燃焼値V12は0.3V程度であった。このとき20ppm程度のCOが発生していることが確認された。
【0042】
また、誤報を引き起こす事象である魚を焼いているとき、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値V11は0.1V以下であり、第2燃焼値V12は0.05V以下である。また、50ppm以下のCOが発生し、10%/m以上の煙が発生している。即ち、魚を焼いているときは、煙量が大きく、光電式の煙センサの出力のみに応じて火災を検出する火災検出装置では、設置場所や部屋の換気状況によっては火災警報が頻発してしまう可能性がある。
【0043】
また、誤報を引き起こす事象である調理中に水蒸気が発生しているとき、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値V11と第2燃焼値V12とは共に小さく0.05V以下であり、5ppm以下のCOが発生している。
【0044】
また、くん焼火災では、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値V11は0.5V程度であり、第2燃焼値V12は0.05V程度である。また、200ppm程度のCOが発生し、煙はほとんど発生していない。即ち、くん焼のような火災は、CO濃度が200ppm程度発生していても、煙は発生しておらず、危険な状態に陥る可能性がある。
【0045】
また、ストーブ火災では、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値V11は0.4V程度であり、第2燃焼値V12は0.05V程度である。また、5ppm程度のCOが発生し、10%/m以上の煙が発生している。
【0046】
また、ゴミ箱火災では、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値V11は0.4V程度であり、第2燃焼値V12は0.05V程度である。また、50ppm程度のCOが発生し、10%/m以上の煙が発生している。
【0047】
図8、図9はそれぞれ、魚を焼いたときの可燃ガスセンサ1の第1燃焼値及び第2燃焼値と、CO濃度とを示すタイムチャートである。図10は、酒を使った調理を行ったときの可燃ガスセンサ1の第1燃焼値と第2燃焼値とを示すタイムチャートである。なお、酒蒸発試験とは、酒100ccをフライパンで蒸発する試験である。図11は、ストーブを火源としたフトンのくん焼火災における可燃ガスセンサ1の第1燃焼値と第2燃焼値とのタイムチャートである。
【0048】
図8から明らかなように、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値及び第2燃焼値は、焼き魚の煙に対して感度が低いことが分かる。図9から明らかなように、魚を焼いているときでも数十ppm程度のCOが検出されることが分かる。このとき、煙量は非常に高い。図10により、酒を使った調理を行うと、第1燃焼値と第2燃焼値との両出力共に高い値を示すが、第1燃焼値と第2燃焼値との比がほぼ3〜4対1であることがわかった。
【0049】
また、図11により、くん焼火災が発生した場合、第1燃焼値と第2燃焼値との両出力共に高い値を示し、また第1燃焼値と第2燃焼値との比がほぼ10対1であることがわかった。
【0050】
次に、図12及び図13に、居室における寝たばこを想定したフトン(綿100%)のくん焼実験における可燃ガスセンサ1の第1燃焼値と、煙量及びCO濃度とを示すタイムチャートを示す。なお、煙量は、光の減光率で表している。減光率としては、実際の減光率と煙式火災報知器が計測した減光率とを示す。同図に示すように、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値V11とCO濃度は、初期(20分)から立ち上がっているのに対し、煙量は45分過ぎからようやく立ち上がった。このときCO濃度はすでに300ppmを越えており、さらに点線で示す煙式火災報知器の警報点では500ppmにまで達した。
【0051】
以上のことをふまえて、下記に示すように判定条件1、2、3毎に異なるCO閾値、煙量閾値を設定する。なお、可燃ガスセンサ1の第1燃焼値をV11(V)、第2燃焼値をV12(V)とする。COセンサ2が検出したCO濃度をCco(ppm)、煙センサ3が検出した煙濃度をCsm(%/M)とする。
【0052】
(判定条件1)V11≧X(第1所定値)かつV11/V12≧Y(第2所定値)の時(例えばXは0.05〜0.1(V)、Yは7〜10に設定。)
煙閾値A%/m(例5%/m)、CO閾値Dppm(例えば50ppm)に設定する。つまり、(判定条件1)では、高濃度のCOが発生し、かつ煙量の少ないくん焼火災が発生している可能性が高いと判断して、CO閾値をDppm(第1CO判定値)に下げる。加えて、煙閾値をA%/m(第1煙判定値)に下げて、検知感度を上げる。これにより、状況に応じた適切なCO閾値、煙閾値を設定することができる。
【0053】
(判定条件2)V11≧XかつV11/V12<Yの時
煙閾値B(>A)%/m(例10%/m)、CO閾値E(>D)ppm(例えば50ppm〜100ppm)に設定する。つまり、(判定条件2)では、調理が行われている可能性が高いと判断して、煙閾値をB%/m(第2煙判定値)に上げる。加えて、CO閾値もEppm(第2CO判定値)に上げて、誤報の可能性を低くする。これにより、状況に応じた適切なCO閾値、煙閾値を設定することができる。
【0054】
(判定条件3)V11<Xの時
煙閾値C(>B)%/m(例15%/m)、CO閾値E(>D)ppm(例えば50ppm〜100ppm)に設定する。(判定条件3)では、くん焼火災が発生している可能性も低く、調理が行われている可能性も低くと判断し、また火災によって発生が予測されるガスが無いことから火災の危険性が低いと判断し煙閾値をC%/m(第3CO判定値)に上げて、調理や蒸気あるいはタバコ、埃などによる誤報の可能性を低くする。CO閾値はEppmに設定される。
【0055】
但し、第1燃焼値V11がF(V)以上、又は、CO濃度CcoがGppm以上、又は、煙濃度CsmがH%/m以上になったら即時警報するようにする。
【0056】
上記概略で説明した火災検出装置の詳細な動作について、図14に示すMPUの処理手順を示すフローチャートを参照して以下説明する。まず、MPU5は、電源投入に応じて火災検出処理を行う。まず、最初のステップS1において、MPU5は、初期化動作を行った後、図示しないメモリ内に格納された各センサ出力V2〜V4の換算式を読み込む(ステップS2)。その後、MPU5の演算部18は、各センサ出力V1〜V4を読み込む(ステップS3)。
【0057】
次に、MPU5の演算部18が、COセンサ2、煙センサ3、温度センサ4からのセンサ出力V2、V3、V4を上記換算式に代入してCO濃度、煙量、温度を求める換算演算処理を行う(ステップS4)。その後、MPU5は、ステップS3で読み込んだ第1燃焼値V11/第2燃焼値V12を演算する(ステップS5)。
【0058】
次に、MPU5は、第1燃焼値V11がX=例えば0.1V以上であるか否かを判断する(ステップS6)。第1燃焼値V11が0.1V以上であれば(ステップS6でY)、MPU5は有機ガスが発生していると判断して、ステップS5で求めた第1燃焼値V11/第2燃焼値V12がY=例えば8以上であるか否かを判断する(ステップS7)。第1燃焼値V11/第2燃焼値V12が8以上であれば(ステップS7でY)、くん焼火災が発生している可能性が高いと判断して上記(判定条件1)に煙閾値、CO閾値を設定した後(ステップS8)、ステップS11に進む。
【0059】
これに対して、第1燃焼値V11/第2燃焼値V12が8未満であれば(ステップS7でN)、調理など火災以外の原因で有機ガスが発生していると判断して判定条件2に煙閾値、CO閾値を設定した後(ステップS9)、ステップS11に進む。
【0060】
これに対して、第1燃焼値V11が0.1V未満であれば(ステップS6でN)、MPU5は有機ガスが発生していないと判断して、判定条件3に設定した後(ステップS10)、ステップS11に進む。以上のことから明らかなように、MPU5は、ステップS5〜S10において閾値設定手段として働く。
【0061】
その後、MPU5は、火災検出手段として働き、上記ステップS4で換算したCO濃度、煙量が上記ステップS8、S9、S10で設定されたCO閾値、煙閾値を越えると火災が発生したと判断して(ステップS11でY)、表示部6に火災の旨を伝える表示を行わせると共に音声警報部7に火災警報を出力させた後(ステップS12)、処理を終了する。これに対して、上記ステップS4で換算したCO濃度、煙量が上記ステップS8、S9、S10で設定されたCO閾値、煙閾値を越えていなければ火災が発生していないと判断して(ステップS11でN)、再びステップS3に戻る。
【0062】
以上のようにCO閾値、煙閾値を設定すれば、図7に示すような酒を使用した調理、焼き魚、水蒸気といった警報したくない事象については警報されない。一方、くん焼、ストーブ、ゴミ箱火災といった警報したい事象については警報される。
【0063】
以上の火災検出装置によれば、第1燃焼値V11と第2燃焼値V12との差がくん焼火災時と調理時とでは大きく異なることに着目して、MPU5が可燃ガスセンサ1からの第1燃焼値V11と第2燃焼値V12との両出力に基づいてCO閾値、煙閾値の値を設定する。従って、第1燃焼値V11と第2燃焼値V12との両出力からくん焼火災が発生している可能性が高いときにはくん焼火災の発生を想定した値にCO閾値、煙閾値を設定し、調理が行われている可能性が高いときには調理を想定したCO閾値、煙閾値に設定することができ、誤報がなく、しかも早期に火災を検出することができる。
【0064】
また、MPU5が、(第1燃焼値)/(第2燃焼値)の値に基づいて前記閾値の設定を行うので、簡単に、くん焼火災が発生している可能性が高いか調理時が行われている可能性が高いかを判断して、状況に応じた適切な閾値を設定することができ、より確実に、誤報がなく、しかも早期に火災を検出することができる。
【0065】
また、上述した実施形態によれば、ヒータ駆動回路15は接触燃焼しない低温時にも低電圧のセンサ駆動電圧を印加していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、接触燃焼しない低温時にはセンサ駆動電圧を印加せずに、常温に制御してもよい。
【0066】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の火災検出装置の一実施の形態を示す回路図である。
【図2】図1に示す可燃ガスセンサの詳細な回路図である。
【図3】(A)〜(C)は各々、図1に示す可燃ガスセンサの平面図、背面図及びAA線断面図である。
【図4】図2に示すブリッジ回路に供給されるセンサ駆動電圧のタイムチャートである。
【図5】図2に示す可燃ガスセンサのセンサ出力のタイムチャートである。
【図6】9.6秒のセンサ駆動電圧の低電圧時間後に高電圧を印加してからの経過時間とH2、CH4、C2H5OHに対するセンサ出力との関係を示すグラフである。
【図7】種々の火災実験パターンや誤報につながりやすい事象に対する可燃ガスセンサ、COセンサ、煙センサの出力を示す表である。
【図8】一般住宅のキッチンを模した実験室にて、魚(サンマ)を焼いたときの可燃ガスセンサの第1燃焼値と第2燃焼値とを示すタイムチャートである。
【図9】一般住宅のキッチンを模した実験室にて、魚(サンマ)を焼いたときのCO濃度を示すタイムチャートである。
【図10】一般住宅のキッチンを模した実験室にて、酒蒸発試験を行ったときの可燃ガスセンサの第1燃焼値と第2燃焼値とを示すタイムチャートである。
【図11】一般住宅の居室を模した火災実験室で行った、ストーブにフトンが触れたことを想定したくん焼火災実験における可燃ガスセンサの吸着燃料出力と第2燃焼値とのタイムチャートである。
【図12】居室における寝たばこを想定したフトン(綿100%)のくん焼実験における可燃ガスセンサ1の第1燃焼値のタイムチャートである。
【図13】居室における寝たばこを想定したフトン(綿100%)のくん焼実験における煙量及びCO濃度とを示すタイムチャートを示す。
【図14】火災検出装置を構成するMPUの処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1 可燃ガスセンサ
2 COセンサ(センサ)
3 煙センサ(センサ)
5 MPU(火災検出手段、閾値設定手段)
8 ガス検知素子(センサ素子)
V1 センサ出力
V11 第1燃焼値
V12 第2燃焼値
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化炭素濃度又は煙量を検出するセンサと、該検出した一酸化炭素濃度又は煙量が閾値を越えたとき火災を検出する火災検出手段とを有する火災検出装置であって、
可燃ガスと接触燃焼しない低温と、可燃ガスと接触燃焼する高温とに順次温度が制御される接触燃焼式のセンサ素子を有する可燃ガスセンサと、
前記センサ素子の前記低温時に当該センサ素子に吸着した可燃ガスが燃焼しているときの前記可燃ガスセンサの出力を第1燃焼値とし、前記センサ素子の前記低温時に当該センサ素子に吸着した分の可燃ガスの燃焼が終了した後の前記可燃ガスセンサの出力を第2燃焼値として得る燃焼値取得手段と、
前記第1燃焼値と前記第2燃焼値との両出力に基づいて前記閾値の値を設定する閾値設定手段と
を有することを特徴とする火災検出装置。
【請求項2】
前記閾値が、前記閾値設定手段によって(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)の値に基づいて設定されていることを特徴とする請求項1記載の火災検出装置。
【請求項3】
前記第1燃焼値が第1所定値を越えかつ(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)が第2所定値以上のときには、前記煙量に対する閾値が、前記閾値設定手段によって第1煙判定値に設定され、また、
前記第1燃焼値が前記第1所定値を越えかつ(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)が前記第2所定値未満のときには、前記煙量に対する閾値が、前記閾値設定手段によって前記第1煙判定値よりも高い第2煙判定値に設定される
ことを特徴とする請求項2記載の火災検出装置。
【請求項4】
前記第1燃焼値が前記第1所定値未満のときには、前記煙量に対する閾値が、前記閾値設定手段によって前記第2煙判定値よりも高い第3煙判定値に設定されることを特徴とする請求項3記載の火災検出装置。
【請求項5】
前記第1燃焼値が第1所定値を越えかつ(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)が第2所定値以上のときには、前記CO濃度に対する閾値が、前記閾値設定手段によって第1CO判定値に設定され、また、
前記第1燃焼値が前記第1所定値を越えかつ(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)が前記第2所定値未満のときには、前記CO濃度に対する閾値が、前記閾値設定手段によって前記第1CO判定値よりも高い第2CO判定値に設定される
ことを特徴とする請求項2〜4いずれかに記載の火災検出装置。
【請求項6】
センサが検出した一酸化炭素濃度又は煙両が閾値を超えたとき火災を検出する火災検出方法であって、
可燃ガスセンサが有する接触燃焼式のセンサ素子を可燃ガスと接触燃焼しない低温、前記可燃ガスと接触燃焼する高温に順次温度を制御し、
前記前記センサ素子の前記低温時に当該センサ素子に吸着した可燃ガスが燃焼しているときの前記可燃ガスセンサの出力を第1燃焼値とし、前記センサ素子の前記低温時に当該センサ素子に吸着した分の可燃ガスの燃焼が終了した後の前記可燃ガスセンサの出力を第2燃焼値として得て、
前記第1燃焼値と前記第2燃焼値との両出力に基づいて前記閾値の値を設定する
ことを特徴とする火災検出方法。
【請求項1】
一酸化炭素濃度又は煙量を検出するセンサと、該検出した一酸化炭素濃度又は煙量が閾値を越えたとき火災を検出する火災検出手段とを有する火災検出装置であって、
可燃ガスと接触燃焼しない低温と、可燃ガスと接触燃焼する高温とに順次温度が制御される接触燃焼式のセンサ素子を有する可燃ガスセンサと、
前記センサ素子の前記低温時に当該センサ素子に吸着した可燃ガスが燃焼しているときの前記可燃ガスセンサの出力を第1燃焼値とし、前記センサ素子の前記低温時に当該センサ素子に吸着した分の可燃ガスの燃焼が終了した後の前記可燃ガスセンサの出力を第2燃焼値として得る燃焼値取得手段と、
前記第1燃焼値と前記第2燃焼値との両出力に基づいて前記閾値の値を設定する閾値設定手段と
を有することを特徴とする火災検出装置。
【請求項2】
前記閾値が、前記閾値設定手段によって(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)の値に基づいて設定されていることを特徴とする請求項1記載の火災検出装置。
【請求項3】
前記第1燃焼値が第1所定値を越えかつ(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)が第2所定値以上のときには、前記煙量に対する閾値が、前記閾値設定手段によって第1煙判定値に設定され、また、
前記第1燃焼値が前記第1所定値を越えかつ(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)が前記第2所定値未満のときには、前記煙量に対する閾値が、前記閾値設定手段によって前記第1煙判定値よりも高い第2煙判定値に設定される
ことを特徴とする請求項2記載の火災検出装置。
【請求項4】
前記第1燃焼値が前記第1所定値未満のときには、前記煙量に対する閾値が、前記閾値設定手段によって前記第2煙判定値よりも高い第3煙判定値に設定されることを特徴とする請求項3記載の火災検出装置。
【請求項5】
前記第1燃焼値が第1所定値を越えかつ(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)が第2所定値以上のときには、前記CO濃度に対する閾値が、前記閾値設定手段によって第1CO判定値に設定され、また、
前記第1燃焼値が前記第1所定値を越えかつ(前記第1燃焼値)/(前記第2燃焼値)が前記第2所定値未満のときには、前記CO濃度に対する閾値が、前記閾値設定手段によって前記第1CO判定値よりも高い第2CO判定値に設定される
ことを特徴とする請求項2〜4いずれかに記載の火災検出装置。
【請求項6】
センサが検出した一酸化炭素濃度又は煙両が閾値を超えたとき火災を検出する火災検出方法であって、
可燃ガスセンサが有する接触燃焼式のセンサ素子を可燃ガスと接触燃焼しない低温、前記可燃ガスと接触燃焼する高温に順次温度を制御し、
前記前記センサ素子の前記低温時に当該センサ素子に吸着した可燃ガスが燃焼しているときの前記可燃ガスセンサの出力を第1燃焼値とし、前記センサ素子の前記低温時に当該センサ素子に吸着した分の可燃ガスの燃焼が終了した後の前記可燃ガスセンサの出力を第2燃焼値として得て、
前記第1燃焼値と前記第2燃焼値との両出力に基づいて前記閾値の値を設定する
ことを特徴とする火災検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−40940(P2008−40940A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−216712(P2006−216712)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000220262)東京瓦斯株式会社 (1,166)
【Fターム(参考)】
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