火炎可視化装置
【課題】屋外であっても無色・透明の火炎の可視化ができる装置であって、小型であり且つコスト性に優れた火炎可視化装置の提供。
【解決手段】OH基又は水蒸気の発光スペクトルに透過波長中心を有する第1の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、OH基又は水蒸気の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第2の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、監視対象空間からの光を第1および第2の撮像手段へ導く集光手段と、演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、画像処理部は、第1の撮像手段により得られた画像と第2の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した画像を第2の撮像手段により得られた画像に重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置。
【解決手段】OH基又は水蒸気の発光スペクトルに透過波長中心を有する第1の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、OH基又は水蒸気の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第2の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、監視対象空間からの光を第1および第2の撮像手段へ導く集光手段と、演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、画像処理部は、第1の撮像手段により得られた画像と第2の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した画像を第2の撮像手段により得られた画像に重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉眼で見えない火炎を可視画像化することにより火炎の発生の有無や位置の認識を遠方から安全に行う技術に関し、更に詳しくは、例えば、水素供給ステーションや燃料電池などの水素ガス利用設備の運用に利用できる火炎可視化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な物質の燃焼時においては、成分中の炭素が燃えて可視光線を発するため、その火炎を肉眼で捕らえることができるが、例えば水素ガスの燃焼のように着火しても太陽光線下では肉眼ではほぼ透明にしか見えないものもある。
【0003】
肉眼で捕らえることのできない火炎を検出するためには、火炎に含まれる紫外線を検知することが有効である。従来から、紫外線センサを用いた火炎検出装置は種々提言されており、例えば、長波長域の紫外線を取り出し、この紫外線を受光素子で受光し、この受光素子からの出力信号のうち所定周波数帯域の信号を光学バンドパスフィルターにより取り出し、この所定周波数帯域の信号成分の強度と基準信号発生器からの所定レベルの基準信号を比較器で比較し、この比較結果に基づいて外部出力部より火炎の有無を出力するものがある(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、従来の火炎検出装置は、火炎の有無のみを検出するものであって、火炎を可視化することはできなかった。
そこで、発明者は、監視対象空間において、火炎に起因する被検出光の特定波長を集光し、電子画像に変換し、増幅し、再度光学像に変換することで特定波長の空間強度分布を画像化することで火炎を可視化する技術を提言した(特許文献2〜5)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−61950号公報
【特許文献2】特開2004−294423号公報
【特許文献3】国際公開WO 2004/079350
【特許文献4】特開2005−091343号公報
【特許文献5】国際公開WO2005/015183
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2〜5の技術により、無色・透明・無臭の水素ガス等に起因する肉眼で捕らえることのできない火炎を可視化することが可能となったが、装置構成上小型化することができず、しかも装置を構成する部品のコストが高額であった。
一方、火炎の可視化の需要が高い水素ガスの利用・貯蔵環境では、パイプ等の障害物があり、これらの死角となる箇所をカバーするために、複数の装置を配備する必要がある。そのため、実用化の観点からは、小型で安価な装置の開発が求められていた。
【0007】
また、屋外の観測においては、太陽光線の影響が強く観測対象の波長域にもノイズが強く生じるため、単一画像だけでは火炎を検出することは難しい。しかしながら、光学バンドパスフィルターを用いた構成においては、透過波長幅を狭くすると透過率が低下し、画像化に必要な光量を確保することが難しくなる。すなわち、狭帯域の光学バンドパスフィルター(例えば、バンド幅:1.5nm、透過率:7%)を使用すると、イメージインテンシファイヤーによる光増倍が不可欠となる。図1は、特許文献2〜5に係る火炎可視化手段であるが、特に光増幅器4(イメージインテンシファイヤー)のサイズが大きく、高額であり、実用化の足かせとなっていた。
【0008】
ところで、検出した火炎を背景画像に重ねて表示する場合、背景画像としてはモノクロ画像よりもカラー画像を使用した方がユーザーの利便性は高い。カラー画像を使用するためには、背景撮影用のカラーカメラが必要となるが、カメラの数を増やすことは、小型化・低価格化の要請に反することとなる。小型化・低価格化の要請に反することなく、背景画像のカラー化を実現をすることも解決すべき課題である。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、屋外であっても無色・透明の火炎の可視化ができる装置であって、小型であり且つコスト性に優れた火炎可視化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の基本的な原理は、火炎の発する紫外光や赤外光を検出して、この特定波長の画像と近接する波長の画像の差分画像を抽出することで火炎の発生を検知し、紫外光背景画像や近赤外光背景画像と重ね合わせることで火炎発生箇所の特定を行うものである。
2波長の差分を取る理由は、火炎の発光を捉えるときにその波長において太陽光や照明光などの外乱光が存在するので、この成分を近接する波長で測定して火炎の波長帯域に含まれる外乱光の分量を差し引くことで、火炎の検出精度を高めるためである。
ここで、背景画像の撮影に近接する波長の画像を使用するのは、太陽光の角度や照明光の種類によって外乱光のスペクトル分布が波長に対して変化するため、近い波長ほど近似的に同じ強度と見なせるからである。
【0011】
装置構成を小型化・低コスト化するためには、市販のCCDカメラで装置構成をすることが好ましいが、市販のCCDカメラにおいては、±5nm程度の波長を撮像するのがせいぜいである。自然光によるノイズを減らすためには、観察する波長の帯域を絞ることが有効であるが、±3nm程度の波長を撮像するためには、CCDカメラを特注のものとする必要があり、コスト高となる上、耐用年数も短くなる。
【0012】
発明者は、火炎の発光スペクトルは幅が広いことに着目し、透過バンド幅を広げ、透過率を高くして火炎の光量を多くすることにより上記課題を解決した。すなわち、透過波長が広く且つ透過率の高い光学バンドパスフィルターを用いることで、市販のCCDカメラで撮像するのに必要な光量を確保すると共に、OH基の発光スペクトルや水蒸気の発光スペクトル(H2Oの発光スペクトル)波長を含まない近接した波長で背景を撮像して差分画像を得ることにより、イメージインテンシファイヤーによる光増倍を行わずとも、市販のCCDカメラにより火炎を可視化することを可能とした。
【0013】
すなわち、第1の発明は、OH基の発光スペクトルに透過波長中心を有する第1の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、OH基の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第2の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、監視対象空間からの光を第1および第2の撮像手段へ導く集光手段と、演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、前記画像処理部は、第1の撮像手段により得られた画像と第2の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した画像を第2の撮像手段により得られた画像に重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置である。
第2の発明は、水蒸気の発光スペクトルに透過波長中心を有する第1の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、水蒸気の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第2の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、監視対象空間からの光を第1および第2の撮像手段へ導く集光手段と、演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、前記画像処理部は、第1の撮像手段により得られた画像と第2の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した画像を第2の撮像手段により得られた画像に重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置である。
第3の発明は、OH基の発光スペクトルに透過波長中心を有する第1の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、OH基の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第2の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、水蒸気の発光スペクトルに透過波長中心を有する第3の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第3の撮像手段と、水蒸気の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第4の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第4の撮像手段と、監視対象空間からの光を第1ないし第4の撮像手段へ導く集光手段と、演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、前記画像処理部は、第1の撮像手段により得られた画像と第2の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した紫外光二値画像、および/または、第3の撮像手段により得られた画像と第4の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した近赤外光二値画像を取得し、第2または第3の撮像手段により得られた画像に重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置である。
第4の発明は、第3の発明において、前記集光手段は、レンズと半透鏡であり、レンズで集光され、半透鏡によって分配された光がそれぞれ第3および第4の撮像手段へ導かれるよう配置されることを特徴とする。
第5の発明は、第1ないし4のいずれかの発明において、前記集光手段は、レンズと半透鏡であり、レンズで集光され、半透鏡によって分配された光がそれぞれ第1および第2の撮像手段へ導かれるよう配置されることを特徴とする。
第6の発明は、水蒸気の発光スペクトルに透過波長中心を有する光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、カラー画像を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、監視対象空間からの光を第1および第2の撮像手段へ導く集光手段と、演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、前記画像処理部は、第2の撮像手段により得られた画像から単色成分画像を抽出し、第1の撮像手段により得られた画像と当該単色成分画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した画像を背景撮像手段により得られた画像に重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置である。
第7の発明は、第6の発明において、前記集光手段は、レンズと波長選択鏡であり、レンズで集光され、波長選択鏡によって分配された近赤外光が第1の撮像手段に導かれ、可視光が第2の撮像手段へ導かれるよう配置されることを特徴とする。
第8の発明は、第1ないし7のいずれかの発明において、前記画像処理部は、前記差分画像のヒストグラムを作成し、当該ヒストグラムから公知の閾値自動決定方法により閾値を自動で算出し、当該閾値に基づき前記差分画像を二値化することを特徴とする。
第9の発明は、第1ないし7のいずれかの発明において、前記画像処理部は、前記差分画像を二値化する際の閾値を入力する手段を有することを特徴とする。
第10の発明は、第1ないし9のいずれかの発明において、前記画像処理部は、前記二値化画像を圧縮し、続いて膨張させて、ノイズを除去してから前記着色を行うことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかの火炎可視化装置。
第11の発明は、第1ないし10のいずれかの発明において、前記光学バンドパスフィルターのバンド幅が全値全幅10〜50nmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、自然光によるノイズが多い屋外環境においても、無色透明の火炎の可視化を汎用的な部品構成により実現することができる。すなわち、廉価な汎用部品を使用することができるため、従来装置と比べ、小型化・低コスト化をはかることが可能であり、更には、耐用年数の長い汎用的部品を用いることができるため、運用の低コスト化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の好ましい火炎可視化装置は、紫外光による火炎検出手段(図2参照)と近赤外光による火炎検出手段(図3参照)とから構成される。以下では本発明の好ましい態様として、水素ガスに起因する火災の検知手段として、水素火炎から発せられる309nmの波長の紫外光(OH基の発光スペクトル)や950nmの波長の近赤外光(水蒸気の発光スペクトル)を監視する場合を説明する。ただし、本発明は燃焼によりOH基の発光スペクトルや水蒸気の発光スペクトルを発するもの(例えば、メタンガスやプロパンガス)であれば全て可視化の対象とすることができるものであり、対象は水素ガスに限定されるものではない。
【0016】
(一)紫外光による火炎検出手段
撮像部は、紫外光火炎撮像手段と、紫外光背景撮像手段とから構成される(図2参照)。
紫外光火炎撮像手段は、特定波長の紫外光を抽出することで火炎画像のみを撮像する装置であり、通過波長が309nm±5nmの光学バンドパスフィルター10と、紫外レンズ12aと、紫外光対応CCDカメラ13aとから構成さる。
紫外光背景撮像手段は、通過波長が320nm±5nm(OH基の発光スペクトル±5nm)の光学バンドパスフィルター11と、紫外レンズ12bと、紫外光対応CCDカメラ13bとから構成される。
このようにして得られた紫外光火炎画像(Ia)および紫外光背景画像(Ib)は、画像処理部に送られて処理される。
【0017】
画像処理部は、画像入力ボード16と、画像処理ソフト17を備えたパーソナルコンピュータである。なお、画像処理部をモニター付き専用コンピュータにより構成することにより、携帯可能な火炎可視化装置を実現することもできる。
画像処理ソフト17による処理は、図4に示すとおりであり、まず、撮像部から送られてきたアナログ画像から紫外光差分画像(Ic)を取得し、これを二値デジタル化した紫外光二値画像(Id)を取得する。この際、二値化処理においては、紫外光差分画像(Id)を予め定めた閾値との比較を行い、閾値以上の値を火炎と判断して二値化処理を行う。閾値の決定は、事前に値を設定しておく方法、画像全体の平均輝度を求めてその値を閾値とする方法、或いは、現場でユーザーが値を入力する方法が考えられる。続いて、紫外光二値画像(Id)と紫外光背景画像(Ib)とを合成することにより、紫外光合成画像(Ie)を取得することができる。紫外光合成画像において、火炎の存在が検知された場合には、画像処理部から警報が発せられる。
【0018】
(二)近赤外光による火炎検出手段
撮像部は、近赤外光火炎撮像手段と、近赤外光背景撮像手段とから構成される(図3参照)。
近赤外光火炎撮像手段は、監視対象範囲における火炎周辺の水蒸気の発光スペクトルを撮像する手段であり、光学バンドパスフィルター14,15と、レンズ2a,2bと、CCDカメラ3a,3bとから構成される。近赤外光火炎撮像手段と近赤外光背景撮像手段とは、光学バンドパスフィルター14,15の通過波長を除いては同じ構成である。
光学バンドパスフィルター14の通過波長は950nm±25nm(水蒸気の発光スペクトル±25nm)であり、光学バンドパスフィルター15の通過波長は900nm±25nmである。ここで、バンド幅を狭くする程ノイズを少なくすることができるが、バンド幅を一定値以上狭くすると、光量が減って差分画像における火炎輝度値が低下するため、市販のCCDカメラでは火炎を検出できるバンド幅としている。また、背景画像の画質向上という点からも、ある程度広いバンド幅とする必要がある。更には、950nm±25nmの波長域は太陽光の影響が少ないという特徴もある。
なお、950nmより長い波長域は、市販のCCDカメラで撮像することができないため、950nmより短い波長域を撮像する。
【0019】
画像処理部は、紫外光による火炎検出手段と同じ構成であり、画像入力ボード16と、画像処理ソフト17を備えたパーソナルコンピュータである。画像処理手順についても紫外光による火炎検出手段と同様であり、図4に示す手順で行われる。これによって、背景画像上に火炎を画像表示することができる。この際、紫外光合成画像と近赤外光合成画像は、同時に表示してもよいし別個に表示してもよい。
【0020】
OH基の発光スペクトルが検出されたこと、或いはH2Oの発光スペクトルが検出されたことのみをもって火炎の発生と判定することは誤動作の原因となりうるため、両方の発光スペクトルを併用して判定を下すことにより、高精度な自動検知システムを構成することができる。なお、上記紫外光による火炎検知手段と上記近赤外光による火炎検知手段を単独で利用することもできるが、誤報を避けるためには最終判断は技術者により行う方がよい。
【0021】
本発明は外乱光の多い屋外での利用を前提とするものであり、外乱光の少ない屋内であれば差分画像の抽出がなくとも火炎の検知を行うことが可能である。
また、夜間においては背景画像を撮像することができないため、火炎等の検知後にライトを照射して背景画像の取得を行うよう構成してもよい。
また、広角レンズを用いることにより、より広い範囲を監視対象としてもよい。
【0022】
(三)背景画像のカラー化を実現するための構成
さらに、上記(二)の近赤外光による火炎検出手段を改良して、図17に示す構成により、背景画像のカラー化を実現した。
撮像部は、レンズ2により集光した光を波長選択鏡25により、可視光と近赤外線光に分光している。
波長選択鏡25は、可視光線(400nm〜700nm)を反射し(反射光には熱線は含まれない)、近赤外線(800nm以上)を透過するミラーである。コールドミラーとも呼ばれ、例えば、白板ガラスに屈折率の異なる誘電体物質を、交互に多層コーティングして構成される。
また、逆に可視光線(400nm〜700nm)を透過し近赤外線(800nm以上)を反射するミラーを使用することも可能である。
【0023】
光学バンドパスフィルター14とCCDカメラ3は、上記(二)と同じものである。
カラーCCDカメラ20は、RGBフィルターを備えた公知のCCDカメラである。RGBフィルターの特性は、通常図18に示すごとくであり、REDの領域が光学バンドパスフィルター20の透過波長と近いため、REDの信号を差分画像(Ic2)取得のために利用する。
また、REDの波長域が近赤外線領域に及ぶタイプのRGBフィルターの場合には、GREENの信号を利用してもよい。
また、植物は近赤外線を強く散乱するため、植物の多い環境では葉の反射率の高い波長域であるGREENの信号を利用することが望ましい。
画像処理ソフト17に、用途に応じて抽出する単色成分(RED、GREENまたはBLUE)を選択できるよう色選択機能を持たせてもよい。
【0024】
上記構成の装置において、可視光カラー画像上に火炎を重畳表示する手順は次のとおりとなる(図19参照)。
(1)撮像部により、近赤外光火炎画像(Ia_i)と背景カラー画像(Ib_c)を取得する。なお、取得した各画像の平均輝度が均一で無い場合には、全体の平均輝度を同じにする画像処理を施すことが好ましい。
(2)背景カラー画像(Ib_c)から単色成分画像(Ib_m)を抽出する。
(3)近赤外光火炎画像(Ia_i)と単色成分画像(Ib_m)との差分画像(Ic2)を取得する。
(4)差分画像(Ic2)の閾値を取得し、二値デジタル化した二値画像(Id2)を取得する。閾値を自動で取得する場合には、差分画像(Ic2)の濃度ヒストグラムを取得し、背景と火炎の閾値を公知の自動閾値決定方法により算出し、それに基づいて差分画像(Ic2)を二値化する。手動で取得する場合には、(3)で取得した差分画像(Ic2)の表示を見ながら二値化の閾値を手動で調整し、高輝度部分の画像(Id2’)を取得する。
(5)(4)で取得した二値画像(Id2) あるいは(Id2’)を着色した着色画像(Id3)を取得する。この際、(4)で取得した画像から、事前にノイズを除去しておくことが好ましい。ノイズ除去のためには、二値化画像(Id2)あるいは(Id2’)の高輝度部分を圧縮し、続いて膨張させて、細かいノイズ(高輝度面積の少ない部分)を削除する。
(6)背景カラー画像(Ib_c)に(5)で取得した着色画像(Id3)を重畳表示して合成画像(Ie_c)を取得する。
【0025】
上記(4)〜(6)の手順は、モノクロ背景画像上での火炎可視化手順(上記(一)および(二))にも転用することができる。すなわち、図4のステップ4を図9のステップ15〜17の手順で行うことができる。
【0026】
以下では、本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明は何ら実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
火炎可視化装置として、CCDカメラと透過波長幅が広く且つ透過率の高い光学バンドパスフィルターを用いた構成の装置(実施例1)と、特許文献2に示す従来のイメージインテンシファイヤーを用いた構成の装置(比較例1)の構成部品の価格を比較したところ、実施例1の装置は約半分の価格で装置を構成することができた。本実施例においては、イメージインテンシファイヤーやサーモカメラなどの高額な部品を用いないことがコスト低下に寄与している。表1に実施例1と比較例1の装置構成を示す。
【0028】
【表1】
【0029】
また、比較例1の装置のサイズは、撮像部:12×22×32cm、画像処理部:34×11×40cm(デスクトップPC1台)であり、これに若干の付属品が付く。これに対し、本実施例の装置は、撮像部を比較例1の1/2程度のサイズとすることができるため、ポータブルPCまたは専用のコンピュータと組み合わせることにより、携帯可能な装置を構成することができる。
【実施例2】
【0030】
実施例1と同様の構成の火炎可視化装置により、水素ガスに起因する火炎の可視化実験を行った。
(一)紫外光による火炎の可視化
《構成》
市販のレンズ(TU2440A1[f=24mm,F4](Nikon Rayfact:Texas Instruments社製)および紫外光対応CCDカメラ(MC-781P-0077[AGC=OFF]:Texas Instruments社製)を用いて特定波長の紫外光を観測し、水素ガスに起因する火炎を可視画像化した。図15に紫外光撮像手段の構成図および写真を示す。
【0031】
《処理手順》
まず、OHの発光スペクトル(309nm)に透過波長中心を有する光学バンドパスフィルター10(バンド幅10nm、透過率18%)を用いて紫外光対応CCDカメラ13aにより火炎画像(Ia_u)を撮像し(図5)、OHの発光スペクトルと近接した波長に(320nm)に透過波長中心を有する光学バンドパスフィルター11(バンド幅10nm、透過率31%)を用いて紫外光対応CCDカメラ13bにより紫外光背景画像(Ib_u)を撮像する(図6)。
続いて画像処理ソフト17により、紫外光火炎画像(Ia_u)から紫外光背景画像(Ib_u)の紫外光差分画像(Ic_u)を取得し(図7)、二値化着色した紫外光二値画像(Id)を取得する(図8)。紫外光背景画像(Ib_u)に紫外光二値画像(Id)を重ね合わせることにより、火炎を可視化した紫外光合成画像(Ie_u)が得られる(図9)。
【0032】
(二)近赤外光による火炎の可視化
《構成》
市販のレンズ(A4869[f=50mm,F4.5](HAMAMATU社製)およびCCDカメラ(WAT-902H[AGC=ON]:Watec社製)を用いて特定波長の近赤外光を観測し、水素ガスに起因する火炎を可視画像化した。図16に近赤外光撮像手段の構成図および写真を示す。
【0033】
《処理手順》
まず、H2Oの発光スペクトル(950nm)に透過波長中心を有する光学バンドパスフィルター14(バンド幅50nm、透過率57%)を用いてCCDカメラに3aより近赤外光火炎画像(Ia_i)を撮像し(図10)、H2Oの発光スペクトルと近接した波長に(900nm)に透過波長中心を有する光学バンドパスフィルター15(バンド幅50nm、透過率53%)を用いてCCDカメラ3bにより近赤外光背景画像(Ib_i)を撮像する(図11)。
続いて、画像処理ソフト17により、火炎近赤外画像(Ia_i)から近赤外光背景画像(Ib_i)の近赤外光差分画像(Ic_i)を取得し(図12)、二値化着色した近赤外光二値画像(Id_i)を取得する(図13)。近赤外光背景画像(Ib_i)に近赤外光二値画像(Id')を重ね合わせることにより、火炎を可視化した近赤外光合成画像(Ie_i)が得られる(図14)。
なお、紫外光と近赤外光の両方による監視は常時行う必要はなく、紫外光或いは近赤外光のいずれかによって火炎が検知された場合にのみ他方の可視化機構が作動するようにしてもよい。
【実施例3】
【0034】
《構成》
実施例3は、実施例2の装置構成中、半透鏡24を、波長選択鏡25に置き換え、光学バンドパスフィルター15を備えたCCDカメラ3bをカラーCCDカメラに置き換えたものである。波長選択鏡25は、可視光線(400nm〜700nm)の90%以上を反射し(反射光には熱線は含まれない)、近赤外線(800nm以上)の80%以上を透過するミラーである。
【0035】
《処理手順》
(1)H2Oの発光スペクトル(950nm)に透過波長中心を有する光学バンドパスフィルター14(バンド幅50nm、透過率57%)を用いてCCDカメラに3aより近赤外光火炎画像(Ia_i)を撮像し、カラーCCDカメラ20によりRGB画像(Ib_c)を撮像する。
(2)画像処理ソフト17により、各画像をアフィン変換して、両画像の平行ずれ、回転ずれを無くし、縮尺を揃え、また各画像の輝度の平均を揃える(全体の平均を揃える)。
(3)RGB画像(Ib_c)から赤色成分画像(Ib_m)を抽出する。
(4)近赤外光火炎画像(Ia_i)と赤色成分画像(Ib_m)との差分画像(Ic2)を取得する。
(5)差分画像(Ic2)の濃度ヒストグラムを取得し、背景と火炎の閾値を公知の自動閾値決定方法により算出し、差分画像(Ic2)を二値デジタル化した二値画像(Id2)を取得する。本実施例では、画像の濃度ヒストグラムから統計的な最大の谷部分を閾値とする大津の方法を利用した。
(6)二値化画像(Id2)の高輝度部分を圧縮し、続いて膨張させて、細かいノイズ(高輝度面積の少ない部分)を削除する。
(7)(6)で取得した画像を着色した着色画像(Id3)を取得する。
(8)RGB画像(Ib_c)に(7)で取得した着色画像(Id3)を重畳表示して合成画像(Ie_c)を取得する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、燃焼時に火炎が見難いガス等を扱う設備における火災の監視に適しており、特に火炎の発生箇所を事前に知覚して、作業の安全性を確保する場合に好適である。装置サイズを持ち運び可能な程度コンパクト化できるため、携帯して火災現場で利用することも期待される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来の火炎可視化装置の構成図である。
【図2】本発明の紫外光画像処理による火炎可視化装置の構成図である。
【図3】本発明の近赤外光画像処理による火炎可視化装置の第1の態様の構成図である。
【図4】本発明の火炎の可視化処理の概要流れ図である。
【図5】実施例1の紫外光火炎画像(Ia_u)である。
【図6】実施例1の紫外光背景画像(Ib_u)である。
【図7】実施例1の紫外光差分画像(Ic_u)である。
【図8】実施例1の紫外光二値画像(Id_u)である。
【図9】実施例1の紫外光合成画像(Ie_u)である。
【図10】実施例1の近赤外光火炎画像(Ia_i)である。
【図11】実施例1の近赤外光背景画像(Ib_i)である。
【図12】実施例1の近赤外光差分画像(Ic_i)である。
【図13】実施例1の近赤外光二値画像(Id_i)である。
【図14】実施例1の近赤外光合成画像(Ie_i)である。
【図15】実施例1の紫外光撮像手段の構成図および写真である。
【図16】実施例1の近赤外光撮像手段の構成図および写真である。
【図17】本発明の近赤外光画像処理による火炎可視化装置の第2の態様の構成図である。
【図18】RGBフィルターの特性を示すグラフ例である。
【図19】背景画像のカラー化を実現するための処理の概要流れ図である。
【符号の説明】
【0038】
2 レンズ
3 CCDカメラ
4 光増幅器(イメージインテンシファイヤー)
10,11,14,15,23 光学バンドパスフィルター
12 紫外レンズ
12,15 紫外光対応CCDカメラ
16 画像入力ボード
17 画像処理ソフト
18 赤外レンズ
19 赤外線カメラ(サーモカメラ)
20 カラーCCDカメラ
24 半透鏡
25 波長選択鏡
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉眼で見えない火炎を可視画像化することにより火炎の発生の有無や位置の認識を遠方から安全に行う技術に関し、更に詳しくは、例えば、水素供給ステーションや燃料電池などの水素ガス利用設備の運用に利用できる火炎可視化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な物質の燃焼時においては、成分中の炭素が燃えて可視光線を発するため、その火炎を肉眼で捕らえることができるが、例えば水素ガスの燃焼のように着火しても太陽光線下では肉眼ではほぼ透明にしか見えないものもある。
【0003】
肉眼で捕らえることのできない火炎を検出するためには、火炎に含まれる紫外線を検知することが有効である。従来から、紫外線センサを用いた火炎検出装置は種々提言されており、例えば、長波長域の紫外線を取り出し、この紫外線を受光素子で受光し、この受光素子からの出力信号のうち所定周波数帯域の信号を光学バンドパスフィルターにより取り出し、この所定周波数帯域の信号成分の強度と基準信号発生器からの所定レベルの基準信号を比較器で比較し、この比較結果に基づいて外部出力部より火炎の有無を出力するものがある(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、従来の火炎検出装置は、火炎の有無のみを検出するものであって、火炎を可視化することはできなかった。
そこで、発明者は、監視対象空間において、火炎に起因する被検出光の特定波長を集光し、電子画像に変換し、増幅し、再度光学像に変換することで特定波長の空間強度分布を画像化することで火炎を可視化する技術を提言した(特許文献2〜5)。
【0005】
【特許文献1】特開平10−61950号公報
【特許文献2】特開2004−294423号公報
【特許文献3】国際公開WO 2004/079350
【特許文献4】特開2005−091343号公報
【特許文献5】国際公開WO2005/015183
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2〜5の技術により、無色・透明・無臭の水素ガス等に起因する肉眼で捕らえることのできない火炎を可視化することが可能となったが、装置構成上小型化することができず、しかも装置を構成する部品のコストが高額であった。
一方、火炎の可視化の需要が高い水素ガスの利用・貯蔵環境では、パイプ等の障害物があり、これらの死角となる箇所をカバーするために、複数の装置を配備する必要がある。そのため、実用化の観点からは、小型で安価な装置の開発が求められていた。
【0007】
また、屋外の観測においては、太陽光線の影響が強く観測対象の波長域にもノイズが強く生じるため、単一画像だけでは火炎を検出することは難しい。しかしながら、光学バンドパスフィルターを用いた構成においては、透過波長幅を狭くすると透過率が低下し、画像化に必要な光量を確保することが難しくなる。すなわち、狭帯域の光学バンドパスフィルター(例えば、バンド幅:1.5nm、透過率:7%)を使用すると、イメージインテンシファイヤーによる光増倍が不可欠となる。図1は、特許文献2〜5に係る火炎可視化手段であるが、特に光増幅器4(イメージインテンシファイヤー)のサイズが大きく、高額であり、実用化の足かせとなっていた。
【0008】
ところで、検出した火炎を背景画像に重ねて表示する場合、背景画像としてはモノクロ画像よりもカラー画像を使用した方がユーザーの利便性は高い。カラー画像を使用するためには、背景撮影用のカラーカメラが必要となるが、カメラの数を増やすことは、小型化・低価格化の要請に反することとなる。小型化・低価格化の要請に反することなく、背景画像のカラー化を実現をすることも解決すべき課題である。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、屋外であっても無色・透明の火炎の可視化ができる装置であって、小型であり且つコスト性に優れた火炎可視化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の基本的な原理は、火炎の発する紫外光や赤外光を検出して、この特定波長の画像と近接する波長の画像の差分画像を抽出することで火炎の発生を検知し、紫外光背景画像や近赤外光背景画像と重ね合わせることで火炎発生箇所の特定を行うものである。
2波長の差分を取る理由は、火炎の発光を捉えるときにその波長において太陽光や照明光などの外乱光が存在するので、この成分を近接する波長で測定して火炎の波長帯域に含まれる外乱光の分量を差し引くことで、火炎の検出精度を高めるためである。
ここで、背景画像の撮影に近接する波長の画像を使用するのは、太陽光の角度や照明光の種類によって外乱光のスペクトル分布が波長に対して変化するため、近い波長ほど近似的に同じ強度と見なせるからである。
【0011】
装置構成を小型化・低コスト化するためには、市販のCCDカメラで装置構成をすることが好ましいが、市販のCCDカメラにおいては、±5nm程度の波長を撮像するのがせいぜいである。自然光によるノイズを減らすためには、観察する波長の帯域を絞ることが有効であるが、±3nm程度の波長を撮像するためには、CCDカメラを特注のものとする必要があり、コスト高となる上、耐用年数も短くなる。
【0012】
発明者は、火炎の発光スペクトルは幅が広いことに着目し、透過バンド幅を広げ、透過率を高くして火炎の光量を多くすることにより上記課題を解決した。すなわち、透過波長が広く且つ透過率の高い光学バンドパスフィルターを用いることで、市販のCCDカメラで撮像するのに必要な光量を確保すると共に、OH基の発光スペクトルや水蒸気の発光スペクトル(H2Oの発光スペクトル)波長を含まない近接した波長で背景を撮像して差分画像を得ることにより、イメージインテンシファイヤーによる光増倍を行わずとも、市販のCCDカメラにより火炎を可視化することを可能とした。
【0013】
すなわち、第1の発明は、OH基の発光スペクトルに透過波長中心を有する第1の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、OH基の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第2の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、監視対象空間からの光を第1および第2の撮像手段へ導く集光手段と、演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、前記画像処理部は、第1の撮像手段により得られた画像と第2の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した画像を第2の撮像手段により得られた画像に重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置である。
第2の発明は、水蒸気の発光スペクトルに透過波長中心を有する第1の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、水蒸気の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第2の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、監視対象空間からの光を第1および第2の撮像手段へ導く集光手段と、演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、前記画像処理部は、第1の撮像手段により得られた画像と第2の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した画像を第2の撮像手段により得られた画像に重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置である。
第3の発明は、OH基の発光スペクトルに透過波長中心を有する第1の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、OH基の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第2の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、水蒸気の発光スペクトルに透過波長中心を有する第3の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第3の撮像手段と、水蒸気の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第4の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第4の撮像手段と、監視対象空間からの光を第1ないし第4の撮像手段へ導く集光手段と、演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、前記画像処理部は、第1の撮像手段により得られた画像と第2の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した紫外光二値画像、および/または、第3の撮像手段により得られた画像と第4の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した近赤外光二値画像を取得し、第2または第3の撮像手段により得られた画像に重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置である。
第4の発明は、第3の発明において、前記集光手段は、レンズと半透鏡であり、レンズで集光され、半透鏡によって分配された光がそれぞれ第3および第4の撮像手段へ導かれるよう配置されることを特徴とする。
第5の発明は、第1ないし4のいずれかの発明において、前記集光手段は、レンズと半透鏡であり、レンズで集光され、半透鏡によって分配された光がそれぞれ第1および第2の撮像手段へ導かれるよう配置されることを特徴とする。
第6の発明は、水蒸気の発光スペクトルに透過波長中心を有する光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、カラー画像を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、監視対象空間からの光を第1および第2の撮像手段へ導く集光手段と、演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、前記画像処理部は、第2の撮像手段により得られた画像から単色成分画像を抽出し、第1の撮像手段により得られた画像と当該単色成分画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した画像を背景撮像手段により得られた画像に重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置である。
第7の発明は、第6の発明において、前記集光手段は、レンズと波長選択鏡であり、レンズで集光され、波長選択鏡によって分配された近赤外光が第1の撮像手段に導かれ、可視光が第2の撮像手段へ導かれるよう配置されることを特徴とする。
第8の発明は、第1ないし7のいずれかの発明において、前記画像処理部は、前記差分画像のヒストグラムを作成し、当該ヒストグラムから公知の閾値自動決定方法により閾値を自動で算出し、当該閾値に基づき前記差分画像を二値化することを特徴とする。
第9の発明は、第1ないし7のいずれかの発明において、前記画像処理部は、前記差分画像を二値化する際の閾値を入力する手段を有することを特徴とする。
第10の発明は、第1ないし9のいずれかの発明において、前記画像処理部は、前記二値化画像を圧縮し、続いて膨張させて、ノイズを除去してから前記着色を行うことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかの火炎可視化装置。
第11の発明は、第1ないし10のいずれかの発明において、前記光学バンドパスフィルターのバンド幅が全値全幅10〜50nmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、自然光によるノイズが多い屋外環境においても、無色透明の火炎の可視化を汎用的な部品構成により実現することができる。すなわち、廉価な汎用部品を使用することができるため、従来装置と比べ、小型化・低コスト化をはかることが可能であり、更には、耐用年数の長い汎用的部品を用いることができるため、運用の低コスト化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の好ましい火炎可視化装置は、紫外光による火炎検出手段(図2参照)と近赤外光による火炎検出手段(図3参照)とから構成される。以下では本発明の好ましい態様として、水素ガスに起因する火災の検知手段として、水素火炎から発せられる309nmの波長の紫外光(OH基の発光スペクトル)や950nmの波長の近赤外光(水蒸気の発光スペクトル)を監視する場合を説明する。ただし、本発明は燃焼によりOH基の発光スペクトルや水蒸気の発光スペクトルを発するもの(例えば、メタンガスやプロパンガス)であれば全て可視化の対象とすることができるものであり、対象は水素ガスに限定されるものではない。
【0016】
(一)紫外光による火炎検出手段
撮像部は、紫外光火炎撮像手段と、紫外光背景撮像手段とから構成される(図2参照)。
紫外光火炎撮像手段は、特定波長の紫外光を抽出することで火炎画像のみを撮像する装置であり、通過波長が309nm±5nmの光学バンドパスフィルター10と、紫外レンズ12aと、紫外光対応CCDカメラ13aとから構成さる。
紫外光背景撮像手段は、通過波長が320nm±5nm(OH基の発光スペクトル±5nm)の光学バンドパスフィルター11と、紫外レンズ12bと、紫外光対応CCDカメラ13bとから構成される。
このようにして得られた紫外光火炎画像(Ia)および紫外光背景画像(Ib)は、画像処理部に送られて処理される。
【0017】
画像処理部は、画像入力ボード16と、画像処理ソフト17を備えたパーソナルコンピュータである。なお、画像処理部をモニター付き専用コンピュータにより構成することにより、携帯可能な火炎可視化装置を実現することもできる。
画像処理ソフト17による処理は、図4に示すとおりであり、まず、撮像部から送られてきたアナログ画像から紫外光差分画像(Ic)を取得し、これを二値デジタル化した紫外光二値画像(Id)を取得する。この際、二値化処理においては、紫外光差分画像(Id)を予め定めた閾値との比較を行い、閾値以上の値を火炎と判断して二値化処理を行う。閾値の決定は、事前に値を設定しておく方法、画像全体の平均輝度を求めてその値を閾値とする方法、或いは、現場でユーザーが値を入力する方法が考えられる。続いて、紫外光二値画像(Id)と紫外光背景画像(Ib)とを合成することにより、紫外光合成画像(Ie)を取得することができる。紫外光合成画像において、火炎の存在が検知された場合には、画像処理部から警報が発せられる。
【0018】
(二)近赤外光による火炎検出手段
撮像部は、近赤外光火炎撮像手段と、近赤外光背景撮像手段とから構成される(図3参照)。
近赤外光火炎撮像手段は、監視対象範囲における火炎周辺の水蒸気の発光スペクトルを撮像する手段であり、光学バンドパスフィルター14,15と、レンズ2a,2bと、CCDカメラ3a,3bとから構成される。近赤外光火炎撮像手段と近赤外光背景撮像手段とは、光学バンドパスフィルター14,15の通過波長を除いては同じ構成である。
光学バンドパスフィルター14の通過波長は950nm±25nm(水蒸気の発光スペクトル±25nm)であり、光学バンドパスフィルター15の通過波長は900nm±25nmである。ここで、バンド幅を狭くする程ノイズを少なくすることができるが、バンド幅を一定値以上狭くすると、光量が減って差分画像における火炎輝度値が低下するため、市販のCCDカメラでは火炎を検出できるバンド幅としている。また、背景画像の画質向上という点からも、ある程度広いバンド幅とする必要がある。更には、950nm±25nmの波長域は太陽光の影響が少ないという特徴もある。
なお、950nmより長い波長域は、市販のCCDカメラで撮像することができないため、950nmより短い波長域を撮像する。
【0019】
画像処理部は、紫外光による火炎検出手段と同じ構成であり、画像入力ボード16と、画像処理ソフト17を備えたパーソナルコンピュータである。画像処理手順についても紫外光による火炎検出手段と同様であり、図4に示す手順で行われる。これによって、背景画像上に火炎を画像表示することができる。この際、紫外光合成画像と近赤外光合成画像は、同時に表示してもよいし別個に表示してもよい。
【0020】
OH基の発光スペクトルが検出されたこと、或いはH2Oの発光スペクトルが検出されたことのみをもって火炎の発生と判定することは誤動作の原因となりうるため、両方の発光スペクトルを併用して判定を下すことにより、高精度な自動検知システムを構成することができる。なお、上記紫外光による火炎検知手段と上記近赤外光による火炎検知手段を単独で利用することもできるが、誤報を避けるためには最終判断は技術者により行う方がよい。
【0021】
本発明は外乱光の多い屋外での利用を前提とするものであり、外乱光の少ない屋内であれば差分画像の抽出がなくとも火炎の検知を行うことが可能である。
また、夜間においては背景画像を撮像することができないため、火炎等の検知後にライトを照射して背景画像の取得を行うよう構成してもよい。
また、広角レンズを用いることにより、より広い範囲を監視対象としてもよい。
【0022】
(三)背景画像のカラー化を実現するための構成
さらに、上記(二)の近赤外光による火炎検出手段を改良して、図17に示す構成により、背景画像のカラー化を実現した。
撮像部は、レンズ2により集光した光を波長選択鏡25により、可視光と近赤外線光に分光している。
波長選択鏡25は、可視光線(400nm〜700nm)を反射し(反射光には熱線は含まれない)、近赤外線(800nm以上)を透過するミラーである。コールドミラーとも呼ばれ、例えば、白板ガラスに屈折率の異なる誘電体物質を、交互に多層コーティングして構成される。
また、逆に可視光線(400nm〜700nm)を透過し近赤外線(800nm以上)を反射するミラーを使用することも可能である。
【0023】
光学バンドパスフィルター14とCCDカメラ3は、上記(二)と同じものである。
カラーCCDカメラ20は、RGBフィルターを備えた公知のCCDカメラである。RGBフィルターの特性は、通常図18に示すごとくであり、REDの領域が光学バンドパスフィルター20の透過波長と近いため、REDの信号を差分画像(Ic2)取得のために利用する。
また、REDの波長域が近赤外線領域に及ぶタイプのRGBフィルターの場合には、GREENの信号を利用してもよい。
また、植物は近赤外線を強く散乱するため、植物の多い環境では葉の反射率の高い波長域であるGREENの信号を利用することが望ましい。
画像処理ソフト17に、用途に応じて抽出する単色成分(RED、GREENまたはBLUE)を選択できるよう色選択機能を持たせてもよい。
【0024】
上記構成の装置において、可視光カラー画像上に火炎を重畳表示する手順は次のとおりとなる(図19参照)。
(1)撮像部により、近赤外光火炎画像(Ia_i)と背景カラー画像(Ib_c)を取得する。なお、取得した各画像の平均輝度が均一で無い場合には、全体の平均輝度を同じにする画像処理を施すことが好ましい。
(2)背景カラー画像(Ib_c)から単色成分画像(Ib_m)を抽出する。
(3)近赤外光火炎画像(Ia_i)と単色成分画像(Ib_m)との差分画像(Ic2)を取得する。
(4)差分画像(Ic2)の閾値を取得し、二値デジタル化した二値画像(Id2)を取得する。閾値を自動で取得する場合には、差分画像(Ic2)の濃度ヒストグラムを取得し、背景と火炎の閾値を公知の自動閾値決定方法により算出し、それに基づいて差分画像(Ic2)を二値化する。手動で取得する場合には、(3)で取得した差分画像(Ic2)の表示を見ながら二値化の閾値を手動で調整し、高輝度部分の画像(Id2’)を取得する。
(5)(4)で取得した二値画像(Id2) あるいは(Id2’)を着色した着色画像(Id3)を取得する。この際、(4)で取得した画像から、事前にノイズを除去しておくことが好ましい。ノイズ除去のためには、二値化画像(Id2)あるいは(Id2’)の高輝度部分を圧縮し、続いて膨張させて、細かいノイズ(高輝度面積の少ない部分)を削除する。
(6)背景カラー画像(Ib_c)に(5)で取得した着色画像(Id3)を重畳表示して合成画像(Ie_c)を取得する。
【0025】
上記(4)〜(6)の手順は、モノクロ背景画像上での火炎可視化手順(上記(一)および(二))にも転用することができる。すなわち、図4のステップ4を図9のステップ15〜17の手順で行うことができる。
【0026】
以下では、本発明の詳細を実施例により説明するが、本発明は何ら実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
火炎可視化装置として、CCDカメラと透過波長幅が広く且つ透過率の高い光学バンドパスフィルターを用いた構成の装置(実施例1)と、特許文献2に示す従来のイメージインテンシファイヤーを用いた構成の装置(比較例1)の構成部品の価格を比較したところ、実施例1の装置は約半分の価格で装置を構成することができた。本実施例においては、イメージインテンシファイヤーやサーモカメラなどの高額な部品を用いないことがコスト低下に寄与している。表1に実施例1と比較例1の装置構成を示す。
【0028】
【表1】
【0029】
また、比較例1の装置のサイズは、撮像部:12×22×32cm、画像処理部:34×11×40cm(デスクトップPC1台)であり、これに若干の付属品が付く。これに対し、本実施例の装置は、撮像部を比較例1の1/2程度のサイズとすることができるため、ポータブルPCまたは専用のコンピュータと組み合わせることにより、携帯可能な装置を構成することができる。
【実施例2】
【0030】
実施例1と同様の構成の火炎可視化装置により、水素ガスに起因する火炎の可視化実験を行った。
(一)紫外光による火炎の可視化
《構成》
市販のレンズ(TU2440A1[f=24mm,F4](Nikon Rayfact:Texas Instruments社製)および紫外光対応CCDカメラ(MC-781P-0077[AGC=OFF]:Texas Instruments社製)を用いて特定波長の紫外光を観測し、水素ガスに起因する火炎を可視画像化した。図15に紫外光撮像手段の構成図および写真を示す。
【0031】
《処理手順》
まず、OHの発光スペクトル(309nm)に透過波長中心を有する光学バンドパスフィルター10(バンド幅10nm、透過率18%)を用いて紫外光対応CCDカメラ13aにより火炎画像(Ia_u)を撮像し(図5)、OHの発光スペクトルと近接した波長に(320nm)に透過波長中心を有する光学バンドパスフィルター11(バンド幅10nm、透過率31%)を用いて紫外光対応CCDカメラ13bにより紫外光背景画像(Ib_u)を撮像する(図6)。
続いて画像処理ソフト17により、紫外光火炎画像(Ia_u)から紫外光背景画像(Ib_u)の紫外光差分画像(Ic_u)を取得し(図7)、二値化着色した紫外光二値画像(Id)を取得する(図8)。紫外光背景画像(Ib_u)に紫外光二値画像(Id)を重ね合わせることにより、火炎を可視化した紫外光合成画像(Ie_u)が得られる(図9)。
【0032】
(二)近赤外光による火炎の可視化
《構成》
市販のレンズ(A4869[f=50mm,F4.5](HAMAMATU社製)およびCCDカメラ(WAT-902H[AGC=ON]:Watec社製)を用いて特定波長の近赤外光を観測し、水素ガスに起因する火炎を可視画像化した。図16に近赤外光撮像手段の構成図および写真を示す。
【0033】
《処理手順》
まず、H2Oの発光スペクトル(950nm)に透過波長中心を有する光学バンドパスフィルター14(バンド幅50nm、透過率57%)を用いてCCDカメラに3aより近赤外光火炎画像(Ia_i)を撮像し(図10)、H2Oの発光スペクトルと近接した波長に(900nm)に透過波長中心を有する光学バンドパスフィルター15(バンド幅50nm、透過率53%)を用いてCCDカメラ3bにより近赤外光背景画像(Ib_i)を撮像する(図11)。
続いて、画像処理ソフト17により、火炎近赤外画像(Ia_i)から近赤外光背景画像(Ib_i)の近赤外光差分画像(Ic_i)を取得し(図12)、二値化着色した近赤外光二値画像(Id_i)を取得する(図13)。近赤外光背景画像(Ib_i)に近赤外光二値画像(Id')を重ね合わせることにより、火炎を可視化した近赤外光合成画像(Ie_i)が得られる(図14)。
なお、紫外光と近赤外光の両方による監視は常時行う必要はなく、紫外光或いは近赤外光のいずれかによって火炎が検知された場合にのみ他方の可視化機構が作動するようにしてもよい。
【実施例3】
【0034】
《構成》
実施例3は、実施例2の装置構成中、半透鏡24を、波長選択鏡25に置き換え、光学バンドパスフィルター15を備えたCCDカメラ3bをカラーCCDカメラに置き換えたものである。波長選択鏡25は、可視光線(400nm〜700nm)の90%以上を反射し(反射光には熱線は含まれない)、近赤外線(800nm以上)の80%以上を透過するミラーである。
【0035】
《処理手順》
(1)H2Oの発光スペクトル(950nm)に透過波長中心を有する光学バンドパスフィルター14(バンド幅50nm、透過率57%)を用いてCCDカメラに3aより近赤外光火炎画像(Ia_i)を撮像し、カラーCCDカメラ20によりRGB画像(Ib_c)を撮像する。
(2)画像処理ソフト17により、各画像をアフィン変換して、両画像の平行ずれ、回転ずれを無くし、縮尺を揃え、また各画像の輝度の平均を揃える(全体の平均を揃える)。
(3)RGB画像(Ib_c)から赤色成分画像(Ib_m)を抽出する。
(4)近赤外光火炎画像(Ia_i)と赤色成分画像(Ib_m)との差分画像(Ic2)を取得する。
(5)差分画像(Ic2)の濃度ヒストグラムを取得し、背景と火炎の閾値を公知の自動閾値決定方法により算出し、差分画像(Ic2)を二値デジタル化した二値画像(Id2)を取得する。本実施例では、画像の濃度ヒストグラムから統計的な最大の谷部分を閾値とする大津の方法を利用した。
(6)二値化画像(Id2)の高輝度部分を圧縮し、続いて膨張させて、細かいノイズ(高輝度面積の少ない部分)を削除する。
(7)(6)で取得した画像を着色した着色画像(Id3)を取得する。
(8)RGB画像(Ib_c)に(7)で取得した着色画像(Id3)を重畳表示して合成画像(Ie_c)を取得する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、燃焼時に火炎が見難いガス等を扱う設備における火災の監視に適しており、特に火炎の発生箇所を事前に知覚して、作業の安全性を確保する場合に好適である。装置サイズを持ち運び可能な程度コンパクト化できるため、携帯して火災現場で利用することも期待される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来の火炎可視化装置の構成図である。
【図2】本発明の紫外光画像処理による火炎可視化装置の構成図である。
【図3】本発明の近赤外光画像処理による火炎可視化装置の第1の態様の構成図である。
【図4】本発明の火炎の可視化処理の概要流れ図である。
【図5】実施例1の紫外光火炎画像(Ia_u)である。
【図6】実施例1の紫外光背景画像(Ib_u)である。
【図7】実施例1の紫外光差分画像(Ic_u)である。
【図8】実施例1の紫外光二値画像(Id_u)である。
【図9】実施例1の紫外光合成画像(Ie_u)である。
【図10】実施例1の近赤外光火炎画像(Ia_i)である。
【図11】実施例1の近赤外光背景画像(Ib_i)である。
【図12】実施例1の近赤外光差分画像(Ic_i)である。
【図13】実施例1の近赤外光二値画像(Id_i)である。
【図14】実施例1の近赤外光合成画像(Ie_i)である。
【図15】実施例1の紫外光撮像手段の構成図および写真である。
【図16】実施例1の近赤外光撮像手段の構成図および写真である。
【図17】本発明の近赤外光画像処理による火炎可視化装置の第2の態様の構成図である。
【図18】RGBフィルターの特性を示すグラフ例である。
【図19】背景画像のカラー化を実現するための処理の概要流れ図である。
【符号の説明】
【0038】
2 レンズ
3 CCDカメラ
4 光増幅器(イメージインテンシファイヤー)
10,11,14,15,23 光学バンドパスフィルター
12 紫外レンズ
12,15 紫外光対応CCDカメラ
16 画像入力ボード
17 画像処理ソフト
18 赤外レンズ
19 赤外線カメラ(サーモカメラ)
20 カラーCCDカメラ
24 半透鏡
25 波長選択鏡
【特許請求の範囲】
【請求項1】
OH基の発光スペクトルに透過波長中心を有する第1の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、
OH基の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第2の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、
監視対象空間からの光を第1および第2の撮像手段へ導く集光手段と、
演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、
前記画像処理部は、第1の撮像手段により得られた画像と第2の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した画像を第2の撮像手段により得られた画像に重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置。
【請求項2】
水蒸気の発光スペクトルに透過波長中心を有する第1の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、
水蒸気の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第2の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、
監視対象空間からの光を第1および第2の撮像手段へ導く集光手段と、
演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、
前記画像処理部は、第1の撮像手段により得られた画像と第2の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した画像を第2の撮像手段により得られた画像に重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置。
【請求項3】
OH基の発光スペクトルに透過波長中心を有する第1の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、
OH基の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第2の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、
水蒸気の発光スペクトルに透過波長中心を有する第3の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第3の撮像手段と、
水蒸気の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第4の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第4の撮像手段と、
監視対象空間からの光を第1ないし第4の撮像手段へ導く集光手段と、
演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、
前記画像処理部は、第1の撮像手段により得られた画像と第2の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した紫外光二値画像、および/または、第3の撮像手段により得られた画像と第4の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した近赤外光二値画像を取得し、第2または第3の撮像手段により得られた画像と重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置。
【請求項4】
前記集光手段は、レンズと半透鏡であり、レンズで集光され、半透鏡によって分配された光がそれぞれ第3および第4の撮像手段へ導かれるよう配置されることを特徴とする請求項3の火炎可視化装置。
【請求項5】
前記集光手段は、レンズと半透鏡であり、レンズで集光され、半透鏡によって分配された光がそれぞれ第1および第2の撮像手段へ導かれるよう配置されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの火炎可視化装置。
【請求項6】
水蒸気の発光スペクトルに透過波長中心を有する光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、
カラー画像を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、
監視対象空間からの光を第1および第2の撮像手段へ導く集光手段と、
演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、
前記画像処理部は、第2の撮像手段により得られた画像から単色成分画像を抽出し、第1の撮像手段により得られた画像と当該単色成分画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した画像を背景撮像手段により得られた画像に重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置。
【請求項7】
前記集光手段は、レンズと波長選択鏡であり、レンズで集光され、波長選択鏡によって分配された近赤外光が第1の撮像手段に導かれ、可視光が第2の撮像手段へ導かれるよう配置されることを特徴とする請求項6の火炎可視化装置。
【請求項8】
前記画像処理部は、前記差分画像のヒストグラムを作成し、当該ヒストグラムから公知の閾値自動決定方法により閾値を自動で算出し、当該閾値に基づき前記差分画像を二値化することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかの火炎可視化装置。
【請求項9】
前記画像処理部は、前記差分画像を二値化する際の閾値を入力する手段を有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかの火炎可視化装置。
【請求項10】
前記画像処理部は、前記二値化画像を圧縮し、続いて膨張させて、ノイズを除去してから前記着色を行うことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかの火炎可視化装置。
【請求項11】
前記光学バンドパスフィルターのバンド幅が全値全幅10〜50nmであることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかの火炎可視化装置。
【請求項1】
OH基の発光スペクトルに透過波長中心を有する第1の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、
OH基の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第2の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、
監視対象空間からの光を第1および第2の撮像手段へ導く集光手段と、
演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、
前記画像処理部は、第1の撮像手段により得られた画像と第2の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した画像を第2の撮像手段により得られた画像に重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置。
【請求項2】
水蒸気の発光スペクトルに透過波長中心を有する第1の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、
水蒸気の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第2の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、
監視対象空間からの光を第1および第2の撮像手段へ導く集光手段と、
演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、
前記画像処理部は、第1の撮像手段により得られた画像と第2の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した画像を第2の撮像手段により得られた画像に重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置。
【請求項3】
OH基の発光スペクトルに透過波長中心を有する第1の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、
OH基の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第2の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、
水蒸気の発光スペクトルに透過波長中心を有する第3の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第3の撮像手段と、
水蒸気の発光スペクトルと近接し、且つ、透過する光の波長域が重ならない第4の光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第4の撮像手段と、
監視対象空間からの光を第1ないし第4の撮像手段へ導く集光手段と、
演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、
前記画像処理部は、第1の撮像手段により得られた画像と第2の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した紫外光二値画像、および/または、第3の撮像手段により得られた画像と第4の撮像手段により得られた画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した近赤外光二値画像を取得し、第2または第3の撮像手段により得られた画像と重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置。
【請求項4】
前記集光手段は、レンズと半透鏡であり、レンズで集光され、半透鏡によって分配された光がそれぞれ第3および第4の撮像手段へ導かれるよう配置されることを特徴とする請求項3の火炎可視化装置。
【請求項5】
前記集光手段は、レンズと半透鏡であり、レンズで集光され、半透鏡によって分配された光がそれぞれ第1および第2の撮像手段へ導かれるよう配置されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの火炎可視化装置。
【請求項6】
水蒸気の発光スペクトルに透過波長中心を有する光学バンドパスフィルターと、その透過光を撮像する撮像素子からなる第1の撮像手段と、
カラー画像を撮像する撮像素子からなる第2の撮像手段と、
監視対象空間からの光を第1および第2の撮像手段へ導く集光手段と、
演算手段と表示手段を有する画像処理部とを備え、
前記画像処理部は、第2の撮像手段により得られた画像から単色成分画像を抽出し、第1の撮像手段により得られた画像と当該単色成分画像との差分画像を抽出し、二値化し、着色した画像を背景撮像手段により得られた画像に重畳表示することで背景画像上に火炎を可視化することを特徴とする火炎可視化装置。
【請求項7】
前記集光手段は、レンズと波長選択鏡であり、レンズで集光され、波長選択鏡によって分配された近赤外光が第1の撮像手段に導かれ、可視光が第2の撮像手段へ導かれるよう配置されることを特徴とする請求項6の火炎可視化装置。
【請求項8】
前記画像処理部は、前記差分画像のヒストグラムを作成し、当該ヒストグラムから公知の閾値自動決定方法により閾値を自動で算出し、当該閾値に基づき前記差分画像を二値化することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかの火炎可視化装置。
【請求項9】
前記画像処理部は、前記差分画像を二値化する際の閾値を入力する手段を有することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかの火炎可視化装置。
【請求項10】
前記画像処理部は、前記二値化画像を圧縮し、続いて膨張させて、ノイズを除去してから前記着色を行うことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかの火炎可視化装置。
【請求項11】
前記光学バンドパスフィルターのバンド幅が全値全幅10〜50nmであることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかの火炎可視化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図17】
【図19】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図17】
【図19】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図18】
【公開番号】特開2006−267097(P2006−267097A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−51790(P2006−51790)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000144991)株式会社四国総合研究所 (116)
【Fターム(参考)】
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