説明

炎症および免疫関連用途のためのピリジン化合物

本発明は、免疫抑制剤として、ならびに、炎症状態、アレルギー性障害および免疫障害を治療および予防するために有用な化合物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2007年8月1日に出願された米国仮特許出願第60/962,789号(その教示内容全体を本明細書に援用する)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、生物学的に活性な化学物質(chemical compound)、すなわち、免疫抑制のため、あるいは、炎症状態および免疫障害を治療または予防するために使用できるピリジルフェニル誘導体に関する。
【背景技術】
【0003】
病原体の侵入から哺乳動物を守る機序が炎症である。しかしながら、哺乳動物を感染から守る上で一過性の炎症が必要であるとはいえ、制御のない炎症は組織の損傷を引き起こし、多くの病気の背景にある原因である。炎症は一般に、抗原がT細胞抗原受容体と結合することで開始される。T細胞による抗原結合は、Ca2+遊離活性化Ca2+チャネル(CRAC)などのカルシウムイオンチャネルを介した細胞へのカルシウム流入を開始する。カルシウムイオン流入は、次いで、これらの細胞の活性化とサイトカイン産生を特徴とする炎症反応につながるシグナルカスケードを開始する。
【0004】
細胞へのカルシウムイオン流入に応答してT細胞によって分泌されるサイトカインのひとつにインターロイキン2(IL−2)がある。IL−2は、免疫系の多くの細胞に対する免疫学的な影響を調節する。例えば、これはT細胞の増殖に必要とされる強力なT細胞マイトジェンであり、そのG1期からS期への進行を促進する。これはまた、NK細胞の増殖を刺激し、B細胞に対する成長因子として作用して抗体合成を刺激する。
【0005】
IL−2は、免疫応答においては有用であるが、多岐にわたる問題を引き起こし得る。IL−2は血液脳関門や脳血管内皮を損傷する。これらの作用は、疲労、見当識障害、鬱などのIL−2療法下で観察される神経精神的な副作用の背景要因となり得る。また、ニューロンの電気生理学的挙動も変化させる。
【0006】
T細胞とB細胞の両方に対しておよぼす作用がゆえに、IL−2は免疫応答の主要な中心調節因子のひとつである。これは、炎症反応、腫瘍監視、造血で役割を果たす。また、他のサイトカインの産生にも影響し、IL−1、TNF−α、TNF−βの分泌を誘発するとともに、末梢白血球でのIFN−γの合成を刺激する。
【0007】
IL−2を産生できないT細胞は、不活性(アネルギー性)になる。これによって、その細胞は将来的に受ける可能性のある一切の抗原刺激に対して潜在的に不活性となる。このため、IL−2の産生を阻害する作用剤を免疫抑制のため、あるいは、炎症および免疫障害を治療または予防するために使用することが可能である。このアプローチは、シクロスポリン、FK506、RS61443などの免疫抑制薬により臨床的に効果が立証されている。このように概念が実証されているにもかかわらず、IL−2の産生を阻害する作用剤は理想的なものからは程遠いままである。いくつかの課題のうち、薬効の制約と望ましくない副作用(用量依存性の腎毒性および高血圧症を含む)によって、その利用が妨げられている。
【0008】
IL−2以外の炎症誘発性サイトカインの過剰産生がまた、多くの自己免疫疾患に関与している。たとえば、喘息では、好酸球の産生を増すサイトカインであるインターロイキン5(IL−5)が増加する。IL−5の過剰産生は、アレルギー性炎症の特徴である喘息気管支粘膜における好酸球の集積と関連している。このため、好酸球の集積を伴う喘息や他の炎症性障害を有する患者にとって、IL−5の産生を阻害する新たな薬剤の開発には利点があろう。
【0009】
インターロイキン4(IL−4)およびインターロイキン13(IL−13)が、炎症性腸疾患および喘息に見られる平滑筋の過剰収縮のメディエータであることが確認されている。このため、喘息および炎症性腸疾患の患者にとって、IL−4およびIL−13の産生を阻害する新たな薬剤の開発には利点があろう。
【0010】
顆粒球およびマクロファージ系細胞集団の成熟の制御因子のひとつに、顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)があるが、これは炎症性疾患や自己免疫疾患に重要な因子として関与している。抗GM−CSF抗体を遮断することで、自己免疫疾患が改善することが示されている。このため、GM−CSFの産生を阻害する新たな薬剤が開発されれば、炎症性疾患または自己免疫疾患の患者にとって有益であろう。
【0011】
このため、免疫抑制のために、あるいは、炎症性疾患、アレルギー性障害および自己免疫疾患の治療または予防において現在使用されている薬剤の1または2以上の欠点を克服する新たな薬剤に対して継続的なニーズがある。新たな薬剤の望ましい特性として、現在治療不能であるかほとんど治療できない疾患または障害に対する薬効、新たな作用機序、経口バイオアベイラビリティおよび/または副作用の低減があげられる。
【0012】
発明の要約
本発明は、CRACイオンチャネルの活性を阻害し、IL−2、IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、TNF−αおよびIFNγの産生を阻害する特定のピリジルフェニル誘導体を提供することで、上述した需要を満たす。これらの化合物は、免疫抑制のために、および/または炎症状態、アレルギー性障害、免疫障害を治療または予防するのに特に有用である。
【0013】
本発明は、
5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−2−アミン、
5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−2−アミン塩酸塩、
N−(2,6−ジフルオロベンジル)−6−(5−(イソキサゾール−5−イル)−2−メチルフェニル)ピリジン−3−アミン、
6−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−3−アミン、
5−(2−クロロ−5−(オキサゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−2−アミン、
2,6−ジフルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド、
2,6−ジフルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリミジン−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−3−フルオロイソニコチンアミド、
2−クロロ−6−フルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド、
2−クロロ−6−フルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド塩酸塩、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−2−フルオロベンズアミド、
2−クロロ−N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−6−フルオロベンズアミド、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−2−フルオロ−6−(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
N−(6−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−3−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−3−メチル−1H−ピロール−2−カルボキサミド、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−1−メチル−1H−イミダゾール−5−カルボキサミド、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−4−メチルチアゾール−5−カルボキサミド、または
N−(5−(2−クロロ−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−2,6−ジフルオロベンズアミド
からなる群から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグに関する。
【0014】
本発明による化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグは、特に免疫細胞(例えば、T細胞および/またはB細胞など)の活性化(例えば、抗原に応答する活性化など)を阻害するのに有用である。特に、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグは、免疫細胞の活性化を制御する特定のサイトカインの産生を阻害することが可能である。例えば、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグは、IL−2、IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、TNF−α、INF−γまたはこれらの組み合わせの産生を阻害することが可能である。さらに、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグは、CRACイオンチャネルなど、免疫細胞の活性化に関与する1種または2種以上のイオンチャネルの活性を調節することが可能である。
【0015】
本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグは、免疫抑制あるいは、炎症状態、アレルギー性障害および免疫障害の治療または予防に、特に有用である。
【0016】
また、本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグと、薬学的に許容されるキャリアまたはビヒクルとを含む医薬組成物を包含する。これらの組成物は、別の作用剤をさらに含むものであってもよい。これらの組成物は、免疫抑制ならびに、炎症状態、アレルギー性障害および免疫障害の治療または予防に有用である。
【0017】
さらに、本発明は、炎症状態、アレルギー性障害および免疫障害の治療または予防が必要な対象に、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグあるいは、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグを含む医薬組成物を、有効量で投与することを含む、炎症状態、アレルギー性障害および免疫障害を治療または予防するための方法も包含する。これらの方法は、別途あるいは、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグとの複合組成物で、別の作用剤を対象に投与することも含むものであってもよい。
【0018】
本発明は、免疫系の抑制が必要な対象に、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグあるいは、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグを含む医薬組成物を、有効量で投与することを含む、対象の免疫系を抑制するための方法もさらに包含する。これらの方法は、別の作用剤を、別途あるいは、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグとの複合組成物で、対象に投与することも含むものであってもよい。
【0019】
本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグあるいは、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグを含む医薬組成物を、有効量で細胞に投与することを含む、in vivoまたはin vitroにて、T細胞および/またはB細胞の増殖を阻害することをはじめとする、免疫細胞の活性化を阻害するための方法もさらに包含する。
【0020】
本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグあるいは、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグを含む医薬組成物を、有効量で細胞に投与することを含む、in vivoまたはin vitroにて、細胞におけるサイトカインの産生(例えば、IL−2、IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、TNF−αおよび/またはINF−γの産生など)を阻害するための方法もさらに包含する。
【0021】
本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグあるいは、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグを含む医薬組成物を有効量で投与することを含む、in vivoまたはin vitroにて、イオンチャネル活性(例えば、CRACなど)を調節するための方法もさらに包含する。
【0022】
本発明の方法はいずれも、本発明の化合物単独で実施してもよいし、他の作用剤、例えば、他の免疫抑制剤、抗炎症剤、アレルギー性障害を治療するための作用剤または免疫障害を治療するための作用剤などと併用して実施してもよいものである。
【0023】
発明の詳細な説明
定義
特に明記しないかぎり、本明細書で使用する下記の用語を以下のとおり定義する。
【0024】
本明細書で使用する場合、「芳香環」または「アリール」という用語は、炭素原子と水素原子とを含む単環式または多環式の芳香環または環ラジカルを意味する。好適なアリール基としては、フェニル、トリル、アントラセニル、フルオレニル、インデニル、アズレニル、ナフチルならびに、ベンゾ縮合炭素環式部分、例えば5,6,7,8−テトラヒドロナフチルなどがあげられるが、これに限定されるものではない。アリール基は、非置換であってもよいし、1または2以上の置換基(限定することなく、アルキル(好ましくは、低級アルキルまたは1または2以上のハロで置換されたアルキル)、ヒドロキシ、アルコキシ(好ましくは、低級アルコキシ)、アルキルチオ、シアノ、ハロ、アミノおよびニトロを含む)で置換されていてもよい。特定の態様において、アリール基は環に6個の炭素原子を含む単環である。
【0025】
本明細書で使用する場合、「アルキル」という用語は、一般に1〜10個の炭素原子を有する非環式直鎖飽和炭化水素または非環式分枝飽和炭化水素を意味する。代表的な直鎖飽和アルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシルがあげられ、分枝飽和アルキルとしては、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソペンチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、4−メチルヘキシル、5−メチルヘキシル、2,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルペンチル、2,4−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルヘキシル、2,4−ジメチルヘキシル、2,5−ジメチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,2−ジメチルヘキシル、3,3−ジメチルペンチル、3,3−ジメチルヘキシル、4,4−ジメチルヘキシル、2−エチルペンチル、3−エチルペンチル、2−エチルヘキシル、3−エチルヘキシル、4−エチルヘキシル、2−メチル−2−エチルペンチル、2−メチル−3−エチルペンチル、2−メチル−4−エチルペンチル、2−メチル−2−エチルヘキシル、2−メチル−3−エチルヘキシル、2−メチル−4−エチルヘキシル、2,2−ジエチルペンチル、3,3−ジエチルヘキシル、2,2−ジエチルヘキシル、3,3−ジエチルヘキシルなどがあげられる。本発明の化合物に含まれるアルキル基は、1または2以上の置換基、例えば、アミノ、アルキルアミノ、アルコキシ、アルキルチオ、オキソ、ハロ、アシル、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ、アリール、アルキルアリール、アリールオキシ、アリールチオ、アリールアミノ、カルボシクリル、カルボシクリルオキシ、カルボシクリルチオ、カルボシクリルアミノ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロシクリルアミノ、ヘテロシクリルチオなどで置換されていてもよい。また、アルキルセグメントの任意の炭素は、酸素(=O)、硫黄(=S)または窒素(=NR23、式中、R23は、−H、アルキル、アセチルまたはアラルキルである)で置換されていてもよい。本発明の化合物には低級アルキルが一般に好ましい。
【0026】
アルキレンという用語は、2つの部分(例えば、{−CH−}、−{CHCH−}、
【化1】

など、式中、括弧は結合点を示す)への2つの結合点を有するアルキル基を示す。アルキレン基は、1または2以上の置換基で置換されていてもよいし、非置換であってもよい。
【0027】
アラルキル基とは、アルキレンリンカーを介して別の部分に結合(attach)するアリール基を示す。アラルキル基は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。
【0028】
「アルコキシ」という用語は、本明細書で使用する場合、酸素原子を介して別の部分に結合するアルキル基を示す。アルコキシ基は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。
【0029】
「アルコキシアルコキシ」という用語は、本明細書で使用する場合、アルキル部分が別のアルコキシ基で置換されたアルコキシ基を示す。
「アルキルスルファニル」という用語は、本明細書で使用する場合、二価の硫黄原子を介して別の部分に結合するアルキル基を示す。アルキルスルファニル基は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。
【0030】
「アルキルアミノ」という用語は、本明細書で使用する場合、窒素に結合した1個の水素原子がアルキル基で置き換えられたアミノ基を示す。「ジアルキルアミノ」という用語は、本明細書で使用する場合、窒素に結合した2個の水素原子がアルキル基で置き換えられたアミノ基を示し、この場合のアルキル基は、同一であっても異なっていてもよい。アルキルアミノ基およびジアルキルアミノ基は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。
【0031】
本明細書で使用する場合、「アルケニル」という用語は、一般に2〜10個の炭素原子を有し、かつ、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する、直鎖炭化水素ラジカルまたは分枝炭化水素ラジカルを意味する。代表的な直鎖アルケニルおよび分枝アルケニルとしては、ビニル、アリル、1−ブテニル、2−ブテニル、イソブチレニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−メチル−1−ブテニル、1−メチル−2−ブテニル、2,3−ジメチル−2−ブテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、1−ヘプテニル、2−ヘプテニル、3−ヘプテニル、1−オクテニル、2−オクテニル、3−オクテニル、1−ノネニル、2−ノネニル、3−ノネニル、1−デセニル、2−デセニル、3−デセニルなどがあげられる。アルケニル基は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。
【0032】
本明細書で使用する場合、「アルキニル」という用語は、一般に2〜10個の炭素原子を有し、かつ、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を有する、直鎖炭化水素ラジカルまたは分枝炭化水素ラジカルを意味する。代表的な直鎖アルキニルおよび分枝アルキニルとしては、アセチレニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−メチル−1−ブチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、5−ヘキシニル、1−ヘプチニル、2−ヘプチニル、6−ヘプチニル、1−オクチニル、2−オクチニル、7−オクチニル、1−ノニニル、2−ノニニル、8−ノニニル、1−デシニル、2−デシニル、9−デシニルなどがあげられる。アルキニル基は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。
【0033】
本明細書で使用する場合、「シクロアルキル」という用語は、一般に3〜10個の炭素原子を有する単環式飽和アルキルラジカルまたは多環式飽和アルキルラジカルを意味する。代表的なシクロアルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、アダマンチル、デカヒドロナフチル、オクタヒドロペンタレン、ビシクロ[1.1.1]ペンタニルなどがあげられる。シクロアルキル基は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。
【0034】
本明細書で使用する場合、「シクロアルケニル」という用語は、環系内に少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有し、かつ、一般に5〜10個の炭素原子を有する、環式非芳香族アルケニルラジカルを意味する。代表的なシクロアルケニルとしては、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタジエニル、シクロヘプタトリエニル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、シクロオクタトリエニル、シクロオクタテトラエニル、シクロノネニル、シクロノナジエニル、シクロデセニル、シクロデカジエニルなどがあげられる。シクロアルケニル基は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。
【0035】
本明細書で使用する場合、「複素環」または「ヘテロシクリル」という用語は、飽和環または不飽和非芳香環のいずれかである単環式または多環式の複素環(一般に3〜14員環)を意味する。3員環の複素環は、最大3個のヘテロ原子を含み得る。4〜14員の複素環は、1〜約8個のヘテロ原子を含み得る。各ヘテロ原子は、四級化されていてもよい窒素、酸素、および、スルホキシドおよびスルホンを含む硫黄から独立して選択される。複素環は、任意のヘテロ原子または炭素原子を介して結合され得る。代表的な複素環としては、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニルなどがあげられる。ヘテロ原子は、当業者に知られた保護基で置換されていてもよく、例えば、窒素上の水素がtert−ブトキシカルボニル基で置換されていてもよい。さらに、ヘテロシクリルは、任意に1または2以上の置換基(限定することなく、ハロゲン原子、アルキルラジカル、またはアリールラジカルを含む)で置換されていてもよい。このような置換複素環基の安定した異性体だけが、この定義に包含される。ヘテロシクリルは、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。
【0036】
本明細書で使用する場合、「複素芳香族」、「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子の環員と、1または2以上のヘテロ原子の環員(例えば、酸素、硫黄または窒素など)とを含む単環式複素芳香環または多環式複素芳香環(またはそのラジカル)を意味する。一般に、複素芳香環は、5〜約14の環員を有し、このうち少なくとも1つの環員が、酸素、硫黄および窒素から選択されるヘテロ原子である。別の態様において、複素芳香環は5員環または6員環であり、1〜約4個のヘテロ原子を含み得る。別の態様において、複素芳香環系は、7〜14の環員を有し、1〜約7個のヘテロ原子を含み得る。代表的なヘテロアリールとしては、ピリジル、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリジニル、チアゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、トリアゾリル、ピリジニル、チアジアゾリル、ピラジニル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、インドリジニル、イミダゾピリジニル、イソチアゾリル、テトラゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、インドリル、テトラヒドロインドリル、アザインドリル、イミダゾピリジル、キナゾリニル、プリニル、ピロロ[2,3]ピリミジル、ピラゾロ[3,4]ピリミジルまたはベンゾ(b)チエニルなどがあげられる。これらのヘテロアリール基は、置換されていてもよい。
【0037】
ヘテロアラルキル基とは、アルキレンリンカーを介して別の部分に結合するヘテロアリール基を示す。ヘテロアラルキル基は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。
【0038】
本明細書で使用する場合、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、−F、−Cl、−Brまたは−Iを意味する。
【0039】
本明細書で使用する場合、「ハロアルキル」という用語は、1または2以上の−Hがハロ基で置き換えられたアルキル基を意味する。ハロアルキル基の例として、−CF、−CHF、−CCl、−CHCHBr、−CHCH(CHCHBr)CH、−CHICHなどがあげられる。
【0040】
本明細書で使用する場合、「ハロアルコキシ」という用語は、1または2以上の−Hがハロ基で置き換えられたアルコキシ基を意味する。ハロアルコキシ基の例として、−OCFおよび−OCHFがあげられる。
【0041】
「生物学的等価体(bioisostere)」および「生物学的に等価な置き換え(bioisosteric replacement)」という用語は、当該技術分野において一般に認識されているものと同じ意味である。生物学的等価体は、電子の周辺層を実質的に同一であるとみなし得る原子、イオンまたは分子である。生物学的等価体という用語は通常、分子自体の全体との対比で、分子全体の一部の意味で用いられる。生物学的に等価な置き換えは、最初の生物学的等価体の生物活性を維持またはわずかに変化させることを期待して、1つの生物学的等価体により別の生物学的等価体を置き換えることを含む。よって、この場合の生物学的等価体は、大きさ、形状、電子密度が似通った原子または原子群である。エステル、アミドまたはカルボン酸の好ましい生物学的等価体は、水素結合受容のための2つの部位を含む化合物である。一態様において、エステル、アミドまたはカルボン酸の生物学的等価体は、5員環の単環式ヘテロアリール環、例えば、任意に置換された1H−イミダゾリル、任意に置換されたオキサゾリル、1H−テトラゾリル、[1,2,4]トリアゾリルまたは任意に置換された[1,2,4]オキサジアゾリルなどである。
【0042】
本明細書で使用する場合、「対象」、「患者」、「動物」という用語は互換的に用いられ、ウシ、サル、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモットおよびヒトがあげられるが、これに限定されるものではない。好ましい対象、患者または動物は、ヒトである。
【0043】
本明細書で使用する場合、「低級」という用語は、4個以下の炭素原子を有する基を示す。例えば、「低級アルキル」は1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカルを示し、「低級アルケニル」または「低級アルキニル」は、それぞれ2〜4個の炭素原子を有するアルケニルラジカルまたはアルキニルラジカルを示す。低級アルコキシまたは低級アルキルスルファニルは、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシまたはアルキルスルファニルを示す。一般に低級置換基が好ましい。
【0044】
特定の置換基、例えばアルキル置換基などが、特定の構造または部分に複数出現する場合、その置換基のアイデンティティーは、それぞれの場合で独立しており、当該構造または部分におけるその置換基の他の出現と同一であっても異なっていてもよい。さらに、特定の態様および本発明の例示的化合物における個々の置換基は、かかる個々の置換基が好ましいものとして明記されていない、あるいは他の置換基との組み合わせで明記されていない場合であっても、本発明の化合物における他のかかる置換基と組み合わせることが好ましい。
【0045】
本発明の化合物は、本明細書ではその化学構造および/または化学名によって定義される。ある化合物が化学構造と化学名の両方で参照され、化学構造と化学名とが一致しない場合、化学構造がその化合物のアイデンティティーを示す上での決定要因となる。
【0046】
アルキル、アルコキシ、アルキルスルファニル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキレン、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキル基に適した置換基としては、安定した本発明の化合物を形成する任意の置換基があげられる。アルキル、アルコキシ、アルキルスルファニル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキレン、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルに対する置換基の例としては、アルキル、アルコキシ、アルキルスルファニル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、ハロアルキル、−C(O)NR1314、−NR15C(O)R16、ハロ、−OR15、シアノ、ニトロ、ハロアルコキシ、−C(O)R15、−NR1314、−SR15、−C(O)OR15、−OC(O)R15、−NR15C(O)NR1314、−OC(O)NR1314、−NR15C(O)OR16、−S(O)15または−S(O)NR1314があげられ、式中、R13およびR14は、それぞれの出現について独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたシクロアルケニル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたアラルキルまたは任意に置換されたヘテロアラルキルであるか、R13およびR14は、それらが結合する窒素と一緒になって、任意に置換されたヘテロシクリルまたは任意に置換されたヘテロアリールであり、R15およびR16は、それぞれの出現について独立して、H、任意に置換されたアルキル、任意に置換されたアルケニル、任意に置換されたアルキニル、任意に置換されたシクロアルキル、任意に置換されたシクロアルケニル、任意に置換されたヘテロシクリル、任意に置換されたアリール、任意に置換されたヘテロアリール、任意に置換されたアラルキルまたは任意に置換されたヘテロアラルキルである。
【0047】
また、アルキル、シクロアルキル、アルキレン、ヘテロシクリルならびに、アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、アラルキルおよびヘテロアラルキル基の任意の飽和部分はまた、=O、=S、=N−R15で置換されていてもよい。
【0048】
ヘテロシクリル、ヘテロアリールまたはヘテロアラルキル基が窒素原子を含有する場合、それは置換されていても非置換であってもよい。ヘテロアリール基の芳香環の窒素原子が置換基を有する場合、その窒素は第四級窒素であってもよい。
【0049】
本発明で想定した置換基および変数の選択肢と組み合わせは、安定した化合物の形成をもたらすものだけである。「安定した」という用語は、本明細書で使用する場合、製造を可能にするのに十分な安定性を持ち、なおかつ、本明細書にて詳細に説明する目的(対象への治療的な投与または予防的な投与など)に有用な十分な期間にわたってその完全性を保つ化合物を示す。一般に、このような化合物は、過剰な水分が存在しなければ40℃またはそれ未満の温度で少なくとも1週間安定している。こうした選択肢と組み合わせは、当業者には明らかであり、過度の実験を行うことなく決定できるものである。
【0050】
特に明記しないかぎり、反応性官能基(限定されることなく、カルボキシ、ヒドロキシ、アミノ部分など)を含有する本発明の化合物は、その保護された誘導体も含む。「保護された誘導体」とは、1または2以上の反応部位が1または2以上の保護基でブロックされた化合物のことである。カルボキシ部分に適した保護基の例として、ベンジル、tert−ブチルなどがあげられる。アミノ基およびアミド基に適した保護基の例としては、アセチル、tert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどがあげられる。ヒドロキシル基に適した保護基の例として、ベンジルなどがあげられる。他の好適な保護基は当業者に周知であり、その教示内容全体を本明細書に援用するT.W.Greene、Protecting Groups in Organic Synthesis、John Wiley&Sons,Inc.1981に記載されているものなどがあげられる。
【0051】
本明細書で使用する場合、「本発明の化合物」という用語およびこれに類する表現は、表1の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグを示し、その保護された誘導体も含む。
【0052】
本明細書で使用する場合、かつ、特に明記しないかぎり、「プロドラッグ」という用語は、生物学的条件(in vitroまたはin vivo)下で加水分解、酸化または別様に反応して、本発明の化合物を提供することが可能な化合物の誘導体を意味する。プロドラッグは、生物学的条件下でのこのような反応によってのみ活性になってもよいが、未反応の形態で活性を有していてもよい。本発明で企図されるプロドラッグの例としては、生加水分解可能な部分、例えば、生加水分解可能なアミド、生加水分解可能なエステル、生加水分解可能なカルバメート、生加水分解可能なカーボネート、生加水分解可能なウレイドおよび生加水分解可能なホスフェート類似物などを含む、表1の化合物の類似体または誘導体があげられるが、これに限定されるものではない。プロドラッグの他の例としては、−NO、−NO、−ONOまたは−ONO部分を含む、表1の化合物の誘導体があげられる。プロドラッグは一般に、その教示内容全体を本明細書に援用する1 BURGER’S MEDICINAL CHEMISTRY AND DRUG DISCOVERY(1995)172〜178、949〜982(Manfred E.Wolff編、第5版)に記載されているものなどの周知の方法で調製可能である。
【0053】
本明細書で使用する場合、特に明記しないかぎり、「生加水分解可能なアミド」、「生加水分解可能なエステル」、「生加水分解可能なカルバメート」、「生加水分解可能なカーボネート」、「生加水分解可能なウレイド」および「生加水分解可能なホスフェート類似物」という用語はそれぞれ、1)化合物の生物活性を損なわずに、その化合物に対して、取り込み、作用の持続時間または作用の発現など、in vivoでの好都合な特性を与えるか、2)それ自体は生物学的に不活性であるが、in vivoで生物学的に活性な化合物に変換されるかのいずれかである、アミド、エステル、カルバメート、カーボネート、ウレイドまたはホスフェート類似物を意味する。生加水分解可能なアミドの例としては、低級アルキルアミド、α−アミノ酸アミド、アルコキシアシルアミドおよびアルキルアミノアルキルカルボニルアミドがあげられるが、これに限定されるものではない。生加水分解可能なエステルの例としては、低級アルキルエステル、アルコキシアシルオキシエステル、アルキルアシルアミノアルキルエステルおよびコリンエステルがあげられるが、これに限定されるものではない。生加水分解可能なカルバメートの例としては、低級アルキルアミン、置換エチレンジアミン、アミノ酸、ヒドロキシアルキルアミン、複素環式アミンおよび複素芳香族アミンおよびポリエーテルアミンがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0054】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、表1の化合物のうちの1つの酸性基および塩基性基から形成される塩である。塩の一例として、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、パモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトアート))塩があげられるが、これに限定されるものではない。「薬学的に許容される塩」という用語はまた、カルボン酸官能基などの酸性官能基を有する表1のいずれかの化合物と、薬学的に許容される無機塩基または有機塩基とから調製される塩も示す。好適な塩基としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;アルミニウムおよび亜鉛などの他の金属の水酸化物;アンモニアならびに、非置換またはヒドロキシ置換モノアルキルアミン、ジアルキルアミンまたはトリアルキルアミンなどの有機アミン;ジシクロヘキシルアミン;トリブチルアミン;ピリジン;N−メチル,N−エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;モノ−、ビス−またはトリス−(2−ヒドロキシエチル)−アミン、2−ヒドロキシ−tert−ブチルアミンまたはトリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミンなどのモノ−、ビス−またはトリス−(2−ヒドロキシ−低級アルキルアミン)、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−アミンなどのN,N−ジ−低級アルキル−N−(ヒドロキシ低級アルキル)−アミンまたはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミン;N−メチル−D−グルカミン;アルギニン、リジンなどのアミノ酸などがあげられるが、これに限定されるものではない。「薬学的に許容される塩」という用語はまた、アミノ官能基などの塩基性官能基を有する、表1の化合物と、薬学的に許容される無機酸または有機酸とから調製される塩も示す。好適な酸としては、硫酸水素、クエン酸、酢酸、シュウ酸、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硝酸、リン酸、イソニコチン酸、乳酸、サリチル酸、酒石酸、アスコルビン酸、コハク酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルカロン酸、糖酸、ギ酸、安息香酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸およびp−トルエンスルホン酸があげられるが、これに限定されるものではない。
【0055】
ここに開示の化合物をその構造により命名または示す場合、その化合物の溶媒和物(水和物など)またはその薬学的に許容される塩も含まれる旨を理解されたい。「溶媒和物」とは、結晶化の過程で溶媒分子が結晶格子に取り込まれた結晶形態を示す。溶媒和物は、水あるいは非水性溶媒、例えば、エタノール、イソプロパノール、DMSO、酢酸、エタノールアミン、EtOAcなどを含んでもよい。結晶格子に取り込まれる溶媒分子が水である溶媒和物は一般に、「水和物」と呼ばれる。水和物は、非共有結合的な分子間力によって結合した化学量論量または非化学量論量の水を含む。
【0056】
ここに開示の化合物をその構造により命名または示す場合、その化合物(その溶媒和物を含む)は、結晶形態、非結晶形態またはこれらの混合物で存在し得る旨を理解されたい。この化合物または溶媒和物は、多形性(すなわち、異なる結晶形態になる能力)を呈するものであってもよい。これらの異なる結晶形態は一般に「多形」として知られている。構造により命名または示す場合、ここに開示の化合物および溶媒和物(水和物など)には、その多形もすべて含まれることを理解されたい。本明細書で使用する場合、「多形」という用語は、本発明の化合物の固体結晶形態またはその複合体を意味する。同一化合物の異なる多形は、異なる物性、化学的特性および/または分光特性を呈することがある。異なる物性としては、(熱や光などに対する)安定性、(製剤化や生成物製造において重要な)圧縮性および密度、(バイオアベイラビリティに影響する可能性がある)溶解速度があげられるが、これに限定されるものではない。安定性の違いは、化学的反応性(剤形が、ある多形からなる場合よりも別の多形からなる場合に、より早く変色するような示差酸化(differential oxidation)など)または機械的特性(動力学的に好ましい多形が熱力学的に一層安定した多形に変わると、錠剤が保管中に砕けるなど)またはその両方(ある多形の錠剤が、高湿度の場合の方が崩壊しやすいなど)における変化が原因で生じる可能性がある。多形の物性の違いは、その加工性に影響する可能性がある。例えば、ある多形の方が別の多形に比して溶媒和物を形成しやすかったり、その粒子の形状または粒度分布がゆえに濾過や不純物の洗浄が困難であったりといったことがある。また、特定の条件下で、ある多形が自然に別の多形に変わることもある。
【0057】
ここに開示の化合物をその構造により命名または示す場合、その化合物の包接体(「包接化合物」)またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物または多形も含まれる旨を理解されたい。本明細書で使用する場合、「包接体」という用語は、ゲスト分子(溶媒または水など)が捕捉される空間(チャネルなど)を含む結晶格子状の本発明の化合物またはその塩を意味する。
【0058】
本明細書で使用する場合、「喘息」という用語は、可逆性気道閉塞、気道の炎症、さまざまな刺激に対する気道の応答性増大を特徴とする肺疾患、障害または症状を意味する。
【0059】
「免疫抑制」は、免疫機能の低下につながる、免疫系のいずれかの構成要素の機能障害を示す。この機能障害については、リンパ球機能の全血アッセイ、リンパ球増殖の検出、T細胞表面抗原の発現評価をはじめとする従来の任意の手段で測定することができる。抗ヒツジ赤血球(SRBC)一次(IgM)抗体応答アッセイ(通常、プラークアッセイと呼ばれる)が、具体的な方法のひとつである。この方法および他の方法について、Luster,M.I.,Portier,C.,Pait,D.G.,White,K.L.,Jr.,Gennings,C.,Munson,A.E.,and Rosenthal,G.J.(1992)、“Risk Assessment in Immunotoxicology I:Sensitivity and Predictability of Immune Tests.”Fundam.Appl.Toxicol.,18,200-210に説明されている。T細胞依存性免疫原に対する免疫応答を測定することが、別の特に有用なアッセイである(Principles and Methods of Toxicology:Fourth Edition(A.W. Hayes,Ed.),pp.1415-1450,Taylor & Francis,Philadelphia,Pennsylvania中のDean,J.H.,House,R.V.,and Luster, M.I.(2001). "Immunotoxicology:Effects of,and Responses to,Drugs and Chemicals."In )。
【0060】
本発明の化合物を利用して、免疫障害の患者を治療することができる。本明細書で使用する場合、「免疫障害」という用語ならびに同様の用語は、自己免疫障害をはじめとする、動物の免疫系によって引き起こされる疾患、障害または症状を意味する。免疫障害は、免疫成分を有する疾患、障害または症状ならびに、実質的にまたは完全に免疫系介在性のものを含む。自己免疫障害は、動物の自己の免疫系が誤って自らを攻撃するものであり、これによって動物自身の体の細胞、組織および/または臓器が標的になる。例えば、多発性硬化症では神経系に対して自己免疫反応が惹起され、クローン病では腸に対して自己免疫反応が惹起される。紅斑性狼瘡(狼瘡)などの他の自己免疫障害では、同じ疾患でも個体によって冒される組織および臓器が異なることがある。ある狼瘡患者では皮膚と関節が冒される場合があるのに対し、別の人では皮膚と腎臓、肺が冒される場合がある。最終的には、1型糖尿病における膵臓のインスリン生成細胞破壊の場合のように、免疫系による特定組織への打撃が永久的なものとなることもある。本発明の化合物および方法を用いて改善可能な特定の自己免疫障害としては、限定することなく、神経系の自己免疫障害(例えば、多発性硬化症、重症筋無力症ならびに、ギラン・バレーおよび自己免疫性ブドウ膜炎などの自己免疫性神経障害など)、血液の自己免疫障害(例えば、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血および自己免疫性血小板減少症など)、血管の自己免疫障害(側頭動脈炎、抗リン脂質抗体症候群、ウェゲナー肉芽腫症などの血管炎、およびベーチェット病)、皮膚の自己免疫障害(例えば、乾癬、疱疹状皮膚炎、尋常性天疱瘡および白斑など)、胃腸管系の自己免疫障害(例えば、クローン病、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変および自己免疫性肝炎など)、内分泌腺の自己免疫障害(例えば、1型または免疫介在性糖尿病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、自己免疫性卵巣炎および精巣炎ならびに、副腎の自己免疫障害)、多臓器の自己免疫障害(結合組織および筋骨格系疾患を含む)(例えば、関節リウマチ、紅斑性狼瘡、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎ならびに、強直性脊椎炎およびシェーグレン症候群などの脊椎関節症など)があげられる。また、移植片対宿主病およびアレルギー性障害などの他の免疫系介在性疾患も、本明細書における免疫障害の定義に含まれる。多くの免疫障害が炎症によって生じるため、免疫障害とみなされる障害と炎症性障害との間には若干の重複がある。本発明の目的で、このような重複する障害の場合は、免疫障害または炎症性障害のいずれかとみなすことができる。「免疫障害の治療」とは、本明細書では、本発明の化合物または組成物を、免疫障害、そのような疾患の症候またはそのような疾患に対する素因を有する対象に、自己免疫障害、その症候またはそれに対する素因を治癒、軽減あるいは、これを変化させる、これに影響を与えるまたはこれを予防する目的で投与することを示す。
【0061】
本明細書で使用する場合、「アレルギー性障害」という用語は、通常は無害の物質に対するアレルギー応答に関連した疾患、症状または障害を意味する。これらの物質は、環境中(屋内の大気汚染や空気アレルゲンなど)に見られることもあれば、非環境的(皮膚科学的アレルギーまたは食物アレルギーを引き起こすものなど)のこともある。アレルゲンは、吸入、口からの摂取、皮膚との接触または注入(虫さされを含む)など、多数の経路で体内に侵入可能である。多くのアレルギー性障害は、アレルギー抗体のIgEを生成する素因であるアトピーと関連している。IgEは体内のどこにおいても肥満細胞を感作できるため、アトピー個体には2以上の臓器で疾患が発現することが多い。本発明に関し、アレルギー性障害は、感作アレルゲンに再曝露される際に生じるあらゆる過敏症を含み、これが炎症性メディエータの放出につながる。アレルギー性障害としては、限定することなく、アレルギー性鼻炎(枯草熱など)、副鼻腔炎、鼻副鼻腔炎、慢性または再発性中耳炎、薬剤反応、虫さされ反応、ラテックス反応、結膜炎、蕁麻疹、アナフィラキシーおよびアナフィラキシー様反応、アトピー性皮膚炎、喘息および食物アレルギーがあげられる。
【0062】
本発明の化合物を利用して、炎症性障害を有する対象を治療または予防することができる。本明細書で使用する場合、「炎症性障害」とは、体組織の炎症または炎症性成分を有することを特徴とする疾患、障害または症状を意味する。これには、局所性炎症反応と全身性炎症とが含まれる。このような炎症性障害の例としては、皮膚移植片拒絶反応を含む移植片拒絶反応;関節炎、関節リウマチ、変形性関節炎を含む関節の慢性炎症性障害、骨吸収増大に関連する骨疾患;回腸炎、潰瘍性大腸炎、バレット症候群およびクローン病などの炎症性腸疾患;喘息、成人呼吸促迫症候群および慢性閉塞性気道疾患などの炎症性肺障害;角膜変性症、トラコーマ、回旋糸状虫症、ブドウ膜炎、交感性眼炎および眼内炎をはじめとする眼の炎症性障害;歯肉炎および歯周炎をはじめとする歯肉の慢性炎症性障害;結核;ライ病;尿毒症の合併症、糸球体腎炎および腎症をはじめとする腎臓の炎症性疾患;硬化性皮膚炎、乾癬および湿疹をはじめとする皮膚の炎症性障害;神経系の慢性脱髄疾患、多発性硬化症、AIDS関連神経変性およびアルツハイマー病、感染性髄膜炎、脳脊髄炎、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症およびウイルス性または自己免疫性脳炎をはじめとする中枢神経系の炎症性疾患;自己免疫障害、免疫複合体血管炎、全身性狼瘡およびエリテマトーデス;全身性紅斑性狼瘡(SLE);心筋症、虚血性心疾患、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症などの心臓の炎症性疾患;ならびに、子癇前症;慢性肝不全、脳外傷および脊髄外傷、癌をはじめとする有意な炎症性成分を有する他のさまざまな疾患があげられる。また、グラム陽性ショックまたはグラム陰性ショック、出血性ショックまたはアナフィラキシーショックあるいは、炎症促進性サイトカインに応答して癌の化学療法によって誘発されるショック、例えば、炎症促進性サイトカインに関連したショックにより例示されるような体の全身性の炎症もあり得る。このようなショックは、癌の化学療法で使用する化学療法剤によって誘発されることがある。「炎症性障害の治療」とは、本明細書では、本発明の化合物または組成物を、炎症性障害、そのような障害の症候またはそのような障害に対する素因を有する対象に、炎症性障害、その症候またはそれに対する素因を治癒、軽減あるいは、これを変化させる、これに影響を与えるまたはこれを予防する目的で投与することを示す。
【0063】
「有効量」は、対象に化合物を投与したときに有益な成果が達成される化合物の量あるいは、in vivoまたはin vitroで所望の活性を有する化合物の量である。炎症性障害および自己免疫障害の場合、有益な臨床転帰には、何ら治療をしない場合と比較した、疾患または機能障害に関連した症状の度合いまたは重篤度の低減および/または対象の寿命および/または生活の質の向上が含まれる。対象に投与される化合物の厳密な量は、疾患または症状のタイプおよび重篤度ならびに、全身健康状態、年齢、性別、体重および薬物耐性などの対象の特徴によって左右されることになる。またこれは、炎症性障害または自己免疫障害の程度、重篤度およびタイプあるいは、求められる免疫抑制の度合いによっても変わる。当業者であれば、これらの要因および他の要因に応じて適切な薬用量を決定することができる。本明細書に開示の化合物の有効量は一般に、1日あたり約1mg/m〜1日あたり約10グラム/mの範囲であり、好ましくは1日あたり10mg/m〜約1グラム/mの範囲である。
【0064】
本発明の化合物は、1または2以上のキラル中心および/または二重結合を含むものであってもよく、このため、二重結合異性体(すなわち、幾何異性体)、エナンチオマーまたはジアステレオマーなどの立体異性体として存在する。本発明によれば、本発明の化合物をはじめとする、本明細書に記載の化学構造は、対応する化合物のエナンチオマーおよび幾何異性体をすべて、すなわち、立体化学的に純粋な形態(幾何学的に純粋、鏡像異性的に純粋またはジアステレオ異性的に純粋など)と、エナンチオマー混合物、ジアステレオマー混合物および幾何異性体混合物の両方を包含する。場合によっては、エナンチオマー、ジアステレオマーまたは幾何異性体の1つが、他の異性体よりも高活性であるか、毒性または動態プロファイルが改善されていることもある。これらの場合、本発明の化合物の当該エナンチオマー、ジアステレオマーおよび幾何異性体が好ましい。
【0065】
「IL−2の産生を阻害する」という用語および同様の用語は、IL−2を産生および/または分泌する機能を有する細胞(Tリンパ球など)での(転写(mRNA発現)または翻訳(タンパク質発現)を阻害することなどによる)IL−2合成の阻害および/またはIL−2分泌の阻害を意味する。同様に、「IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、TNF−αまたはINF−γの産生を阻害する」という用語は、これらのサイトカインを産生および/または分泌する機能を有する細胞での(転写または翻訳を阻害することなどによる)合成の阻害および/または分泌の阻害を意味する。
【0066】
本明細書で使用する場合、化合物を「実質的に」含む組成物とは、その組成物が約80重量%を超えて、より好ましくは約90重量%を超えて、なお一層好ましくは約95重量%を超えて、最も好ましくは約97重量%を超えてその化合物を含有することを意味する。
【0067】
本明細書で使用する場合、ある化合物を「実質的に含まない」組成物とは、その組成物がその化合物を、約20重量%未満、より好ましくは約10重量%未満、なお一層好ましくは約5重量%未満、最も好ましくは約3重量%未満しか含まないことを意味する。
【0068】
本明細書で使用する場合、「実質的に完全な」反応とは、その反応が、約80重量%を超える所望の生成物、より好ましくは約90重量%を超える所望の生成物、なお一層好ましくは約95重量%を超える所望の生成物、最も好ましくは約97重量%を超える所望の生成物を含むことを意味する。
【0069】
本明細書で使用する場合、ラセミ混合物とは、分子のすべてのキラル中心に対して、あるエナンチオマー約50%とその対応するエナンチオマー約50%とを意味する。本発明は、表1の化合物のエナンチオマー的に純粋な混合物、エナンチオマー的に濃縮された混合物、ジアステレオマー的に純粋な混合物、ジアステレオマー的に濃縮された混合物、ラセミ混合物をすべて包含する。
【0070】
エナンチオマー混合物およびジアステレオマー混合物は、キラル相ガスクロマトグラフィ、キラル相高性能液体クロマトグラフィ、化合物のキラル塩複合体としての結晶化またはキラル溶媒中での化合物の結晶化といった周知の方法で、それらの成分のエナンチオマーまたはステレオイソマーに分離できる。また、エナンチオマーおよびジアステレオマーは、周知の不斉合成法によって、ジアステレオマー純度の中間体またはエナンチオマー純度の中間体、試薬および触媒から得られる。
【0071】
獣医学的な用途または家畜類の改良目的で非ヒト動物、あるいは臨床用途でヒトなどの患者に投与する場合、本発明の化合物は一般に、単離された形態で、あるいは、医薬組成物中で単離された形態として投与される。本明細書で使用する場合、「単離された」とは、本発明の化合物が(a)植物または細胞、好ましくは細菌培養物などの天然起源または(b)合成有機化学反応混合物のいずれかの他の成分から分離されていることを意味する。好ましくは、本発明の化合物は、従来の技法で精製される。本明細書で使用する場合、「精製される」とは、単離された場合に、この単離物に、単離物の重量比で少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%の単一の本発明の化合物が含有されることを意味する。
【0072】
ここでは、安定した構造が得られる置換基の選択肢と組み合わせのみ考慮している。当該選択肢と組み合わせは当業者には自明であり、過度の実験をせずとも決定できるものである。
【0073】
本発明の非限定的な例をあげることを意図した、以下の詳細な説明ならびに例示的な例を参照することで、本発明についてさらに十分に理解することができる。
【0074】
具体的な態様
本発明は、免疫抑制用あるいは、炎症状態、免疫障害およびアレルギー性障害を治療または予防するのに特に有用な化合物および医薬組成物に関する。
【0075】
一態様において、本発明は、
5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−2−アミン、
5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−2−アミン塩酸塩、
N−(2,6−ジフルオロベンジル)−6−(5−(イソキサゾール−5−イル)−2−メチルフェニル)ピリジン−3−アミン、
6−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−3−アミン、
5−(2−クロロ−5−(オキサゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−2−アミン、
2,6−ジフルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド、
2,6−ジフルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリミジン−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−3−フルオロイソニコチンアミド、
2−クロロ−6−フルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド、
2−クロロ−6−フルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド塩酸塩、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−2−フルオロベンズアミド、
2−クロロ−N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−6−フルオロベンズアミド、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−2−フルオロ−6−(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
N−(6−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−3−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−3−メチル−1H−ピロール−2−カルボキサミド、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−1−メチル−1H−イミダゾール−5−カルボキサミド、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−4−メチルチアゾール−5−カルボキサミド、または
N−(5−(2−クロロ−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−2,6−ジフルオロベンズアミド
からなる群から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグに関する。
【0076】
一態様では、本発明は、5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−2−アミンである。
別の態様では、本発明は、5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−2−アミン塩酸塩である。
別の態様では、本発明は、N−(2,6−ジフルオロベンジル)−6−(5−(イソキサゾール−5−イル)−2−メチルフェニル)ピリジン−3−アミンである。
別の態様では、本発明は、6−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−3−アミンである。
別の態様では、本発明は、5−(2−クロロ−5−(オキサゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−2−アミンである。
【0077】
別の態様では、本発明は、2,6−ジフルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミドである。
別の態様では、本発明は、2,6−ジフルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリミジン−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミドである。
別の態様では、本発明は、N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−3−フルオロイソニコチンアミドである。
別の態様では、本発明は、2−クロロ−6−フルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミドである。
【0078】
別の態様では、本発明は、2−クロロ−6−フルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド塩酸塩である。
別の態様では、本発明は、N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−2−フルオロベンズアミドである。
別の態様では、本発明は、2−クロロ−N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−6−フルオロベンズアミドである。
一態様では、本発明は、N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−2−フルオロ−6−(トリフルオロメチル)ベンズアミドである。
【0079】
別の態様では、本発明は、N−(6−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−3−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンズアミドである。
別の態様では、本発明は、N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−3−メチル−1H−ピロール−2−カルボキサミドである。
別の態様では、本発明は、N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−1−メチル−1H−イミダゾール−5−カルボキサミドである。
別の態様では、本発明は、N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−4−メチルチアゾール−5−カルボキサミドである。
別の態様では、本発明は、N−(5−(2−クロロ−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−2,6−ジフルオロベンズアミドである。
【0080】
本明細書に開示のすべての特徴、特定の態様および特定の置換基については、どのような組み合わせで組み合わせてもよい。本明細書に開示のそれぞれの特徴、態様または置換基を、同一、等価または同等の目的を果たす別の特徴、態様または置換基で置き換えてもよい。化学物質の場合、本明細書に開示の化学式における変数の具体的な値(本明細書に開示の例示としての化合物に示す値など)については、安定した構造につながる任意の組み合わせで組み合わせてもよい。さらに、あるタイプの化学構造における置換基の具体的な値(好ましいか否かを問わない)を、同じまたは異なるタイプの化学構造における他の置換基での値(好ましいか否かを問わない)と組み合わせてもよい。このように、特に明記しないかぎり、本明細書に開示のそれぞれの特徴、態様または置換基は、一連の汎用的な等価または同様の特徴、態様または置換基の例にすぎない。
【0081】
別の態様において、本発明は、表1の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグを活性成分として含み、かつ、薬学的に許容されるキャリアまたはビヒクルを含む、医薬組成物に関する。この組成物は、免疫抑制用あるいは、炎症状態、アレルギー状態および免疫障害を治療または予防するのに有用である。
【0082】
別の態様において、本発明は、表1の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグを有効量で投与することを含む、免疫抑制あるいは、炎症状態、免疫障害またはアレルギー性障害の治療または予防が必要な患者で、免疫抑制方法あるいは、炎症状態、免疫障害またはアレルギー性障害を治療または予防するための方法に関する。
【0083】
別の態様において、本発明は、表1の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグを含む医薬組成物を有効量で投与することを含む、免疫抑制あるいは、炎症状態、免疫障害またはアレルギー性障害の治療または予防が必要な患者における、免疫抑制のための方法、あるいは、炎症状態、免疫障害またはアレルギー性障害を治療または予防するための方法に関する。
【0084】
別の態様において、表1の化合物あるいは、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグは、免疫細胞(T細胞および/またはB細胞など)活性化(抗原に応答した活性化など)および/またはT細胞および/またはB細胞の増殖を阻害するのに特に有用である。免疫細胞活性化の指標としては、T細胞によるIL−2の分泌、T細胞および/またはB細胞の増殖などがあげられる。一態様において、免疫細胞の活性化および/またはT細胞および/またはB細胞の増殖は、哺乳動物(ヒトなど)において、当該哺乳動物(ヒトなど)に、表1の化合物あるいは、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグを投与することで阻害される。
【0085】
別の態様において、表1の化合物あるいは、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグは、免疫細胞の活性化を制御する特定のサイトカインの産生を阻害することが可能である。例えば、表1の化合物あるいは、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグは、IL−2、IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、IFN−γ、TNF−αおよびこれらの組み合わせの産生を阻害することが可能である。一態様において、表1の化合物は、哺乳動物(ヒトなど)において、サイトカインの産生を阻害する。
【0086】
別の態様において、表1の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグは、CRACイオンチャネルなどの免疫細胞の活性化に関与する1つ以上のイオンチャネルの活性を制御することが可能である。一態様において、表1の化合物は、CRACイオンチャネルの作用を阻害することによって、免疫細胞(T細胞および/またはB細胞など)へのカルシウムイオンの流入を阻害することが可能である。通常、細胞が化合物と接触したときのICRAC電流の減少が、化合物阻害CRACイオンチャネルのひとつの指標である。ICRAC電流は、たとえば、後述の例で詳細に説明するパッチクランプ法を用いて測定可能である。一態様において、表1の化合物が、哺乳動物(ヒトなど)のイオンチャネルを調節する。
【0087】
本発明の例示的な化合物
本発明の例示的な化合物を以下の表1にあげておく。
【0088】
【表1】

【0089】
【表2】

【0090】
【表3】

【0091】
作用機序
抗原に応答してのTリンパ球の活性化は、カルシウムイオン振動に依存する。Tリンパ球でのカルシウムイオン振動では、T細胞抗原受容体による刺激がそのトリガーとなり、ストア感受性Ca2+遊離活性化Ca2+(CRAC)チャネルによるカルシウムイオン流入を伴う。また、肥満細胞の抗原誘発脱顆粒も、流動状態のカルシウムイオンによって開始されることが明らかになっている。CRACイオンチャネルの分子構造は同定されていないが、チャネルの詳細な電気生理学的特性が存在する。このため、ICRAC電流を測定して、CRACイオンチャネルを測定することが可能である。T細胞のカルシウムイオン振動は、T細胞の活性化に不可欠ないくつかの転写因子(NFAT、Oct/OapおよびNFκBなど)の活性化に関わっている(その教示内容全体を本明細書に援用するLewis,Biochemical Society Transactions(2003),31:925-929)。理論に拘泥されることなく、本発明の化合物はCRACイオンチャネルの活性を阻害するため、免疫細胞の活性化を阻害すると思われる。
【0092】
治療および予防の方法
本発明によれば、表1の化合物あるいは、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体およびプロドラッグあるいは、表1の化合物あるいは、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体およびプロドラッグを含む医薬組成物を、免疫抑制が必要な患者または炎症状態、免疫障害またはアレルギー性障害の治療または予防が必要な患者に有効量で投与する。このような患者は、治療を受けたことがなくてもよく、または従来の治療法に対して部分応答するか、まったく応答しなくてもよい。
【0093】
対象における特定の炎症状態、免疫障害またはアレルギー性障害の応答性を直接的に(本発明の化合物の投与後に炎症性サイトカイン(IL−2、IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、TNF−α、IFN−γなど)の血中濃度を測定するなど)測定してもよいし、疾患の病因および進行について理解されていることから推測してもよい。表1の化合物あるいは、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体およびプロドラッグを、ヒトで使用する前にその所望の治療活性または予防活性についてin vitroまたはin vivoにてアッセイすることが可能である。例えば、炎症状態、免疫障害またはアレルギー性障害の周知の動物モデルを利用して、本発明の化合物の安全性と薬効を実証することが可能である。
【0094】
医薬組成物および剤形
本発明の医薬組成物および剤形は、1つ以上の活性成分を相対量で含み、所定の医薬組成物または剤形が、免疫抑制のためあるいは、炎症状態、免疫障害およびアレルギー性障害を治療または予防するために使用できるような形で製剤化される。好ましい医薬組成物および剤形は、表1の化合物あるいは、その薬学的に許容されるプロドラッグ、塩、溶媒和物または包接体を、任意に1種または2種以上の別の活性剤との組み合わせで含む。
【0095】
本発明の単回投与剤形は、患者への経口投与、粘膜(経鼻、舌下、経膣、頬側または直腸など)投与、非経口(皮下、静脈内、急速静注、筋肉内または動脈内など)投与または経皮投与に適している。剤形の例としては、錠剤;カプレット;ゼラチン軟カプセルなどのカプセル;カシェ(cachet);トローチ;薬用キャンディ;分散物;座剤;軟膏;パップ剤(湿布);ペースト剤;散剤;包帯剤;クリーム;硬膏剤;液剤;パッチ;エアロゾル(点鼻スプレーまたは吸入器など);ゲル;懸濁液(水性または非水性液体懸濁液、水中油滴型エマルションまたは油中水滴型液体エマルションなど)、液剤およびエリキシル剤をはじめとする、患者への経口投与または経粘膜投与に適した液体剤形;患者への非経口投与に適した液体剤形;再構成して患者への非経口投与に適した液体剤形を提供可能な滅菌固体(結晶質固体または非晶質固体など)があげられるが、これに限定されるものではない。
【0096】
本発明の剤形の組成、形状およびタイプは一般に、その用途に応じて変わってくる。例えば、同じ適応症の治療に用いる場合でも、経粘膜投与に適した剤形は経口剤形よりも含まれる活性成分の量が少ないことがある。本発明のこの態様については、当業者であれば容易に理解できよう。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)18th ed.,Mack Publishing,Easton PAを参照のこと。
【0097】
代表的な医薬組成物および剤形は、1種または2種以上の賦形剤を含む。好適な賦形剤は、調剤分野の当業者には周知であり、好適な賦形剤の非限定的な例を本明細書にてあげておく。ある医薬組成物または剤形に用いるのに特定の賦形剤が好適であるか否かは、患者へのその剤形の投与方法を含むがこれに限定されるものではない、当該技術分野において周知のさまざまな要因に左右される。例えば、錠剤などの経口剤形は、非経口剤形で使用するのには適さない賦形剤を含むことがある。
【0098】
特定の賦形剤の適合性は、その剤形に含まれる特定の活性成分にも左右されることがある。例えば、ラクトースなど賦形剤によって、あるいは水に曝露されたときに、いくつかの活性成分の分解が促進される場合がある。第1級アミンまたは第2級アミン(N−デスメチルベンラファキシンおよびN,N−ジデスメチルベンラファキシンなど)を含む活性成分では、特にこのような分解の加速が生じやすい。このため、本発明は、ラクトースを含むとしてもわずかしか含まない医薬組成物および剤形を包含する。本明細書で使用する場合、「ラクトースを含まない」という用語は、ラクトースが存在するとしてもその量が、活性成分の分解率を実質的に高めるには不十分であることを意味する。本発明のラクトースを含まない組成物は、当該技術分野において周知であり、かつ、例えば、米国薬局方(USP)SP(XXI)/NF(XVI)に列挙されている賦形剤を含み得る。通常、ラクトースを含まない組成物は、活性成分、バインダー/フィラーおよび潤沢剤を、薬学的に混合可能かつ薬学的に許容される量で含む。ラクトースを含まない好ましい剤形は、活性成分、微結晶性セルロース、アルファ澱粉およびステアリン酸マグネシウムを含む。
【0099】
本発明はさらに、活性成分を含む無水の医薬組成物および剤形を包含する。これは、化合物によっては水が分解を加速することがあるためである。例えば、製剤の経時的な保管寿命または安定性などの特性を判断する目的で長期保存性をシミュレートする手段として、水を加える(5%など)ことが製薬業界では広く受け入れられている。例えば、Jens T.Carstensen(1995)Drug Stability:Principles & Practice,2d.Ed.,Marcel Dekker,NY,NY,379-80を参照のこと。実際、化合物によっては水や熱によって分解が加速される。結果として、製剤に対する水の影響が非常に重要となる場合がある。製剤の製造、取扱い、包装、保管、輸送および使用時には、水分および/または湿気に触れるのが一般的であるためである。
【0100】
本発明の無水の医薬組成物および剤形は、無水または水分含有量の少ない成分を使用して、低水分または低湿度の条件で調製することができる。ラクトースと、第1級アミンまたは第2級アミンを含む少なくとも1種の活性成分とを含む医薬組成物および剤形は、製造、包装および/または保管時に水分および/または湿気と相当な接触があると想定されるのであれば、好ましくは無水である。
【0101】
無水の医薬組成物については、その無水性が保たれるように調製および保管しなければならない。このため、無水組成物を包装する際には、これを好適な処方用キットに同梱可能なように、水への曝露を防ぐことが分かっている材料を用いるのが好ましい。好適な包装材の例としては、密封ホイル、プラスチック、単回用量のための容器(バイアルなど)、ブリスター包装材、ストリップ包装材があげられるが、これに限定されるものではない。
【0102】
本発明はさらに、活性成分が分解される速度を低減する1種または2種以上の化合物を含む医薬組成物および剤形を包含する。本明細書では「安定剤」と呼ぶこのような化合物としては、アスコルビン酸などの抗酸化剤、pH緩衝液または塩緩衝液があげられるが、これに限定されるものではない。
【0103】
賦形剤の量およびタイプと同様に、剤形中の活性成分の量と具体的なタイプも、限定されるものではないが、患者への投与経路などの要因に応じて変わることがある。しかしながら、本発明の代表的な剤形は、表1の化合物あるいは、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグを、約1mg〜約1000mgの量、好ましくは約50mg〜約500mgの量、最も好ましくは約75mg〜約350mgの量で含む。表1の化合物あるいは、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、包接体またはプロドラッグの代表的な1日の総薬用量は、1日あたり約1mg〜約5000mgの範囲、好ましくは1日あたり約50mg〜約1500mgの量、一層好ましくは1日あたり約75mg〜約1000mgの量であってもよい。患者ごとに適切な用量と剤形を決定するのは、当業者に対応できる範囲内である。
【0104】
経口剤形
経口投与に適した本発明の医薬組成物は、錠剤(チュアブル錠)、カプレット、カプセル、液体(例えば、香りのするシロップ)などであるが、これに限定されるものではない、別個の剤形として提供可能である。このような剤形は、あらかじめ定められた量の活性成分を含み、当業者に周知の調剤方法で調製できるものである。概要については、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)18th ed.,Mack Publishing,Easton PAを参照のこと。
【0105】
本発明の代表的な経口剤形は、従来の調剤配合法に従って混合状態の活性成分を少なくとも1つの賦形剤と組み合わせて調製される。賦形剤は、投与に望ましい調製形態に応じて、多種多様な形態を取り得る。例えば、経口液剤またはエアロゾル剤形で使用するのに適した賦形剤としては、水、グリコール、油、アルコール、着香料、防腐剤および着色料があげられるが、これに限定されるものではない。固体の経口剤形(粉末、錠剤、カプセルおよびカプレット)で使用するのに適した賦形剤の例としては、澱粉、糖類、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤沢剤、バインダー、崩壊剤があげられるが、これに限定されるものではない。
【0106】
投与のしやすさから、錠剤およびカプセルが最も都合のよい単回経口投薬剤形となる。この場合、固体の賦形剤が用いられる。好みに応じて、標準的な水性または非水性の手法を用いて錠剤にコーティングをほどこすことが可能である。このような剤形については、どのような調剤方法で調製してもよい。通常、医薬組成物および剤形は、活性成分を、液体キャリア、微粉砕した固体キャリアまたはその両方と均一かつ十分に混合した後、必要があれば生成物を所望の形に成形して調製される。
【0107】
例えば、圧縮または成形によって錠剤を調製することが可能である。粉末または顆粒などの自由に流動する状態の活性成分を、任意に賦形剤と混合して、適当な装置内で圧縮すれば圧縮錠を調製可能である。一方、不活性希釈液で湿らせた粉末状化合物の混合物を適当な装置内で成形すれば、湿製錠を生成可能である。
【0108】
本発明の経口剤形において使用可能な賦形剤の例としては、バインダー、フィラー、崩壊剤および潤沢剤があげられるが、これに限定されるものではない。医薬組成物および剤形で使用するのに適したバインダーとしては、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉または他の澱粉、ゼラチン、天然ゴムおよび合成ゴム、例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、他のアルギン酸塩、トラガント末、グアーガム、セルロースおよびその誘導体(エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど)、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、アルファ澱粉、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910など)、微結晶性セルロースおよびこれらの混合物などがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0109】
微結晶性セルロースの好適な形態としては、AVICEL−PH−101、AVICEL−PH−103、AVICEL RC−581、AVICEL−PH−105(FMC Corporation、American Viscose Division、Avicel Sales、Marcus Hook、PAから入手可能)として販売されている材料およびこれらの混合物があげられるが、これに限定されるものではない。具体的なバインダーの1つが、微結晶性セルロースとAVICEL RC−581として販売されているカルボキシメチルセルロースナトリウムの混合物である。無水または低水分の好適な賦形剤または添加剤としては、AVICEL−PH−103Jおよびスターチ 1500 LMがあげられる。
【0110】
本明細書に開示の医薬組成物および剤形で使用するのに適したフィラーの例としては、タルク、炭酸カルシウム(顆粒または粉末)、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストレート、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、澱粉、アルファ澱粉およびこれらの混合物があげられるが、これに限定されるものではない。本発明の医薬組成物のバインダーまたはフィラーは一般に、医薬組成物または剤形の約50〜約99重量パーセントの量で含有される。
【0111】
本発明の組成物では、水性環境に曝露されたときに崩壊する錠剤とするのに、崩壊剤を利用する。崩壊剤が多すぎると錠剤が保管時に崩壊してしまうことがある一方、崩壊剤が少なすぎる錠剤は所望の速度または所望の条件下で崩壊しなくなることがある。このため、本発明の固体経口剤形を生成する際には、活性成分の放出を良くない形で変えてしまうほど多すぎもせず少なすぎもしない十分な量の崩壊剤を使用すべきである。崩壊剤の使用量は、製剤のタイプによって変わるが、当業者であれば容易に判断できるものである。代表的な医薬組成物は、約0.5〜約15重量パーセントの崩壊剤を含み、好ましくは約1〜約5重量パーセントの崩壊剤を含む。
【0112】
本発明の医薬組成物および剤形で使用可能な崩壊剤としては、アガーアガー、アルギン酸、炭酸カルシウム、微結晶性セルロース、クロスカルメロース、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ジャガイモまたはタピオカ澱粉、他の澱粉、アルファ澱粉、他の澱粉、クレー、他のアルギン、他のセルロース、ゴムおよびこれらの混合物があげられるが、これに限定されるものではない。
【0113】
本発明の医薬組成物および剤形で使用可能な潤沢剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、鉱油、軽油、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、ポリエチレングリコール、他のグリコール、ステアリン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、硬化植物油(落花生油、綿実油、ヒマワリ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびダイズ油)、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸エチル、ラウリン酸エチル、寒天およびこれらの混合物があげられるが、これに限定されるものではない。別の潤沢剤として、例えば、サイロイドシリカゲル(AEROSIL 200,W.R.Grace Co.of Baltimore,MD製)、合成シリカの凝固エアロゾル(coagulated aerosol)(Degussa Co.of Plano,TXから市販)、CAB−O−SIL(Cabot Co.of Boston,MAから販売されている発熱性二酸化ケイ素生成物)、これらの混合物があげられる。使用されるとしても、潤沢剤は一般に、これが取り込まれる医薬組成物または剤形の約1重量パーセント未満の量で用いられる。
【0114】
徐放剤形
本発明の活性成分は、当業者に周知の徐放手段または送達デバイスによって投与可能である。一例として、米国特許第3,845,770号、同第3,916,899号、同第3,536,809号、同第3,598,123号、同第4,008,719号、同第5,674,533号、同第5,059,595号、同第5,591,767号、同第5,120,548号、同第5,073,543号、同第5,639,476号、同第5,354,556号、同第5,733,566号(各々、本明細書に援用する)に記載されているものがあげられるが、これに限定されるものではない。このような剤形を用いれば、例えば、ヒドロプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、ゲル、浸透膜、浸透圧システム、多層コーティング、微粒子、リポソーム、ミクロスフェアまたはこれらの組み合わせを利用して、さまざまな割合で所望の放出プロファイルとすることで、1種または2種以上の活性成分の持続放出または徐放を提供することができる。当業者に周知の好適な徐放製剤については、本明細書に記載したものを含めて、本発明の活性成分と一緒に用いる目的で容易に選択可能である。よって、本発明は、徐放用錠剤、カプセル、ジェルキャップ、カプレットを含むがこれに限定されるものではない、経口投与に適した単一の単回剤形を包含する。
【0115】
徐放医薬品にはいずれも、非徐放の対応物を用いる場合よりも薬物療法の成果を改善するという共通の目標がある。理想的には、薬剤物質を最小限しか用いずに最小限の時間で症状を治癒または制御することが、最適に設計された徐放調製物を医療に使用している場合の特徴である。徐放製剤の利点としては、薬剤の活性が長く持続する、投薬頻度が少なくなる、患者のコンプライアンスが増すことがあげられる。また、徐放製剤を使用して、作用発現時期あるいは、薬剤の血中濃度などの他の特徴に影響を与えるようにしてもよく、よって、副(有害など)作用の発生に影響を与えるようにしてもよい。
【0116】
ほとんどの徐放製剤は、最初は所望の治療効果がすぐに得られる量の薬剤(活性成分)を放出し、長時間にわたってこのレベルの治療効果または予防効果を維持する量の薬剤を徐々にかつ継続的に放出するよう設計されている。体内でこうした薬剤の一定レベルを維持するために、薬剤は、代謝されて体外に排出される薬剤量を元に戻せる速度で剤形から放出されなければならない。活性成分の徐放は、pH、温度、酵素、水または他の生理学的条件または化合物を含むがこれに限定されるものではない、さまざまな条件で刺激することが可能である。
【0117】
本発明の特定の持続放出製剤は、微結晶性セルロース、および任意にヒドロキシプロピルメチルセルロースをさらに含み、エチルセルロースとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの混合物でコーティングされた球状体に、治療有効量または予防有効量の表1の化合物あるいは、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、包接体またはプロドラッグを含む。このような持続放出製剤は、その教示内容全体を本明細書に援用する米国特許第6,274,171号に従って調製可能なものである。
【0118】
本発明の具体的な徐放製剤は、表1の化合物を約6重量%〜約40重量%と、微結晶性セルロースNFを約50重量%〜約94重量%と、任意に、ヒドロキシプロピル−メチルセルロースUSPを約0.25%〜約1%とを含み、球状体はエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる薄膜コーティング組成物でコーティングされている。
【0119】
非経口剤形
非経口剤形は、皮下投与、静脈内投与(急速静注を含む)、筋肉内投与および動脈内投与を含むがこれに限定されるものではない、さまざまな経路で患者に投与可能なものである。これらの投与は一般に、汚染物質に対する患者自身の自然防御対象から外れるため、非経口剤形は、好ましくは滅菌されているか、患者への投与前に滅菌可能なものとする。非経口剤形の例としては、すぐに注射できる状態の溶液、薬学的に許容される注射用ビヒクルにすぐに溶解または懸濁できる状態の乾燥製品、すぐに注射できる状態の懸濁液、エマルションがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0120】
本発明の非経口剤形を得るのに使用可能な好適なビヒクルは、当業者に周知である。一例として、USP基準の注射用水、水性ビヒクル、例えば、限定されずに、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース、塩化ナトリウム注射液および乳酸リンゲル注射液など;水混和性ビヒクル、例えば、限定されずに、エチルアルコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールなど;非水性ビヒクル、例えば、限定されずに、トウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピルおよび安息香酸ベンジルなどがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0121】
本明細書に開示の1種または2種以上の活性成分の溶解性を高める化合物も本発明の非経口剤形に取り入れることが可能である。
【0122】
経皮剤形、局所剤形および経粘膜剤形
本発明の経皮剤形、局所剤形および経粘膜剤形としては、点眼液、スプレー、エアロゾル、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、溶液、エマルション、懸濁液または当業者に周知の他の形態があげられるが、これに限定されるものではない。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1980 & 1990)16th and 18th eds.,Mack Publishing, Easton PAおよびIntroduction to Pharmaceutical Dosage Forms(1985)4th ed.,Lea & Febiger,Philadelphiaを参照のこと。口腔内での粘膜組織の治療に適した剤形は、洗口液または経口ゲルとして製剤可能である。さらに、経皮剤形には、「レザバタイプ」または「マトリクスタイプ」のパッチも含まれるが、これらは皮膚に適用して一定の時間そのままにすることで、所望の量の活性成分を浸透させることができるものである。
【0123】
本発明に包含される経皮剤形、局所剤形および経粘膜剤形を得るのに使用可能な好適な賦形剤(キャリアおよび希釈剤)および他の材料は、薬学分野の当業者に周知であり、特定の医薬組成物または剤形を適用することになる具体的な組織によって決まる。その点を念頭において、代表的な賦形剤としては、非毒性かつ薬学的に許容される、ローション、チンキ剤、クリーム、エマルション、ゲルまたは軟膏を形成するための水、アセトン、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鉱油およびこれらの混合物があげられるが、これに限定されるものではない。所望により、医薬組成物および剤形に保湿剤または湿潤剤を加えることも可能である。このような付加成分の例は当該技術分野において周知である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(1980 & 1990)16th and 18th eds.,Mack Publishing,Easton PAを参照のこと。
【0124】
治療対象となる具体的な組織に応じて、本発明の活性成分を用いる治療の前、こうした治療と同時、あるいはこうした治療の後に、別の成分を使用してもよい。例えば、浸透促進剤を用いて、組織への活性成分の送達を補助することが可能である。好適な浸透促進剤としては、アセトン;エタノール、オレイルおよびテトラヒドロフリルなどのさまざまなアルコール;ジメチルスルホキシドなどのアルキルスルホキシド;ジメチルアセトアミド;ジメチルホルムアミド;ポリエチレングリコール;ポリビニルピロリドンなどのピロリドン;コリドングレード(Kollidon grade)(ポビドン、ポリビドン);尿素;ツイーン80(ポリソルベート80)およびスパン60(モノステアリン酸ソルビタン)などのさまざまな水溶性または水不溶性糖エステルがあげられるが、これに限定されるものではない。
【0125】
医薬組成物または剤形のpHあるいは、医薬組成物または剤形を適用する組織のpHを調節して、1種または2種以上の活性成分の送達を改善することもできる。同様に、溶媒キャリアの極性、そのイオン強度または浸透圧を調節して、送達を改善することも可能である。送達を改善すべく、ステアリン酸塩などの化合物を医薬組成物または剤形に加えて、1種または2種以上の活性成分の親水性または親油性を都合よく変化させることも可能である。このとき、ステアリン酸塩は、医薬用の液体ビヒクル、乳化剤または界面活性剤および送達促進剤または浸透促進剤として機能することができる。活性成分の異なる塩、水和物または溶媒和物を利用すれば、得られる組成物の特性をさらに調節することが可能である。
【0126】
併用療法
免疫抑制または炎症状態および免疫障害の治療または予防が必要な患者における、免疫抑制のための、あるいは、炎症状態、アレルギー性障害および免疫障害を治療または予防するための方法は、本発明の化合物の投与対象となる患者に、1つ以上の他の活性剤を有効量で投与することをさらに含む。このような活性剤は、免疫抑制用あるいは炎症状態または免疫障害に従来から用いられているものを含んでもよい。これらの他の活性剤はまた、本発明の化合物と併用して投与した場合に他の利点が得られるものであってもよい。例えば、他の治療薬は、限定することなく、ステロイド性抗炎症薬、非ステロイド性抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、鎮痛剤、免疫抑制剤、これらの好適な混合物を含んでもよい。このような併用療法では、本発明の化合物と1種または2種以上の他の薬剤とを、従来の方法で対象(例えば、ヒト、男性または女性など)に投与する。これらの作用剤は、単一剤形で投与してもよいし、別々の剤形で投与してもよい。他の治療薬の有効量および剤形は当業者に周知である。他の治療薬の最適な有効量の範囲を決定することは、当業者の見識の範囲内である。
【0127】
別の治療薬を対象に投与する本発明の一態様において、本発明の化合物の有効量は、他の治療薬を投与しない場合の有効量未満である。別の態様において、従来の作用剤の有効量は、本発明の化合物を投与しない場合の有効量未満である。このように、いずれかの作用剤の高用量と関連する望ましくない副作用を最小限に抑えられる。他の潜在的な利点(限定することなく、投与計画の改善および/または薬剤コストの削減を含む)については、当業者であれば自明であろう。
【0128】
自己免疫状態および炎症状態に関連した一態様において、他の治療薬はステロイド性抗炎症薬または非ステロイド性抗炎症薬であってもよい。特に有用な非ステロイド性抗炎症薬としては、アスピリン、イブプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、ベノキサプロフェン、フルルビプロフェン、フェノプロフェン、フルブフェン、ケトプロフェン、インドプロフェン、ピルプロフェン、カルプロフェン、オキサプロジン、プラノプロフェン、ムロプロフェン、トリオキサプロフェン、スプロフェン、アミノプロフェン、チアプロフェン酸、フルプロフェン、ブクロクス酸、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ゾメピラク、チオピナク、ジドメタシン、アセメタシン、フェンチアザク、クリダナク、オキシピナック、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、ニフルム酸、トルフェナム酸、ジフルニサル、フルフェニサール、ピロキシカム、スドキシカム、イソキシカム;アスピリン、サリチル酸ナトリウム、トリサリチル酸コリンマグネシウム、サルサラート、ジフルニサル、サリチルサリチル酸、スルファサラジン、オルサラジンをはじめとするサリチル酸誘導体;アセトアミノフェンおよびフェナセチンをはじめとするパラアミノフェノール誘導体;インドメタシン、スリンダク、エトドラクをはじめとするインドールおよびインデン酢酸;トルメチン、ジクロフェナク、ケトロラクをはじめとするヘテロアリール酢酸;メフェナム酸およびメクロフェナム酸をはじめとするアントラニル酸(フェナム酸塩);オキシカム(ピロキシカム、テノキシカム)およびピラゾリジンジオン(フェニルブタゾン、オキシフェンタルタゾン(oxyphenthartazone)をはじめとするエノール酸;ナブメトンをはじめとするアルカノンおよびその薬学的に許容される塩ならびに混合物があげられるが、これに限定されるものではない。NSAIDの詳細については、いずれもその内容全体を本明細書に援用するPaul A.Insel,Analgesic-Antipyretic and Antiinflammatory Agents and Drugs Employed in the Treatment of Gout,in Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics 617-57(Perry B.Molinhoff and Raymond W. Ruddon eds.,9th ed 1996)およびGlen R.Hanson,Analgesic,Antipyretic and Anti-Inflammatory Drugs in Remington:The Science and Practice of Pharmacy Vol II 1196-1221(A.R.Gennaro ed.19th ed.1995)(を参照のこと。
【0129】
アレルギー性障害と特に関連して、他の治療薬は抗ヒスタミン薬であってもよい。有用な抗ヒスタミン薬としては、ロラタジン、セチリジン、フェキソフェナジン、デスロラタジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、クロルシクリジン、ピリラミン、プロメタジン、テルフェナジン、ドキセピン、カルビノキサミン、クレマスチン、トリペレナミン、ブロンフェニラミン、ヒドロキシジン、シクリジン、メクリジン、シプロヘプタジン、フェニンダミン、アクリバスチン、アゼラスチン、レボカバスチンおよびこれらの混合物があげられるが、これに限定されるものではない。抗ヒスタミン薬の詳細については、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics(2001)651-57,10th edを参照のこと。
【0130】
免疫抑制剤としては、糖質コルチコイド、副腎皮質ステロイド(プレドニゾンまたはソルメドロールなど)、T細胞ブロッカー(シクロスポリンAおよびFK506など)、プリン類似体(アザチオプリン(イムラン)など)、ピリミジン類似体(シトシンアラビノシドなど)、アルキル化剤(ナイトロジェンマスタード、フェニルアラニンマスタード、ブスルファンおよびシクロホスファミドなど)、葉酸アンタゴニスト(アミノプテリンおよびメトトレキサートなど)、抗生物質(ラパマイシン、アクチノマイシンD、マイトマイシンC、プラマイシンおよびクロラムフェニコールなど)、ヒトIgG、抗リンパ球グロブリン(ALG)、抗体(抗CD3(OKT3)、抗CD4(OKT4)、抗CD5、抗CD7、抗IL−2受容体、抗α/βTCR、抗ICAM−1、抗CD20(リツキサン)、抗IL−12および免疫毒素に対する抗体など)があげられる。
【0131】
当業者であれば、上記および他の有用な併用療法も理解・認識できるであろう。このような併用療法の潜在的な利点としては、異なる薬効特性、個々の活性成分を少ない量で使用して有毒な副作用を最小限に抑えられること、薬効の相乗的な改善、投与しやすさまたは使いやすさの改善および/または化合物の調製または製剤全体にかかる費用の低減があげられる。
【0132】
他の態様
本発明の化合物は、(他の潜在的なCRAC阻害剤またはIL−2、IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、TNF−αおよび/またはINF−γ阻害剤を評価するための陽性対照としてなど)研究ツールとして使用してもよい。本発明の化合物および組成物のこれらの用途および他の用途ならびに態様は、当業者には自明であろう。
【0133】
以下、本発明の化合物の調製について詳細に述べる例を参照して、本発明をさらに定義する。当業者であれば、本発明の目的および関心の対象から逸脱することなく、材料および方法の両方で多くの改変を実施できることは自明であろう。以下の例は、本発明の理解を助ける目的で示されるものであり、本明細書にて記載および権利請求をする本発明を具体的に限定するものと解釈されるべきではない。当業者が対応できる範囲内である、現時点で周知の、または今後開発される等価物をすべて置き換えたものを含む、本発明のかかる変形態様ならびに、製剤の変更または実験設計の些細な変更は、本明細書に記載される本発明の範囲内に包含されるものとする。
【実施例】
【0134】
実験原理
理論に拘泥されることなく、本発明の化合物は、CRACイオンチャネルの活性を阻害することで、炎症応答および免疫応答に関与するIL−2および他の重要なサイトカインの産生を阻害するのだと思われる。以下の例は、これらの特性を実証するものである。
【0135】
材料および一般的方法
以下で用いる試薬および溶媒については、Aldrich Chemical Co.(Milwaukee, Wisconsin, USA)などの商業的な提供元から入手可能である。H−NMRおよび13C−NMRのスペクトルは、Varian300MHz NMRスペクトロメータでを記録した。有意なピークを以下の順で列挙する。δ(ppm):化学シフト、多重度(s、一重線;d、二重線;t、三重線;q、四重線;m、多重線;br s、幅の広い一重線)、ヘルツ(Hz)単位の結合定数、プロトン数。
【0136】
密封したホールセル構成で、21〜25℃にてパッチクランプ実験を実施した。コンピュータベースのパッチクランプ増幅システム(EPC-9、HEKA、Lambrecht、Germany)によって、高解像度の電流を記録した。パッチピペットは、標準的な細胞内液充填後の抵抗値が2〜4MΩであった。ホールセルを構成した直後に、電圧範囲−100〜+100mVにわたる、持続時間50〜200msの電圧ランプ(voltage ramp)を300〜400秒の期間にわたり0.5Hzの速度で与えた。細胞内アニオンとしてグルタミン酸塩を使用する場合、すべての電圧を外液と内液とのあいだの液界電位が10mVになるように補正した。電流を2.9kHzでフィルタリングし、10μs間隔でデジタル化した。それぞれの電圧ランプの前に、EPC−9の自動キャパシタンス補償を用いて、容量性電流と直列抵抗とを求めて補正した。−80mVまたは+80mVでの電流振幅を個々のランプ電流記録から抽出して、膜電流の低解像度での時間的推移を評価した。
【0137】
総じて、本発明の化合物は、これらの特許出願の教示内容全体を本明細書に援用する米国特許出願第10/897,681号および同第11/233,224号に記載されたのと同様の方法を用いて合成可能である。
【0138】
本発明の代表的な例示化合物の合成
例1:N−[6−(2−クロロ−5−トリフルオロメチル−フェニル)−ピリジン−3−イル]−2,6−ジフルオロ−ベンズアミド
【化2】

2−クロロ−5−トリフルオロメチル−フェニルボロン酸(a、1mmol)と、6−ブロモ−ピリジン−3−イルアミン(b、1mmol)と、パラジウム触媒(0.1mmol)と、重炭酸ナトリウム(1mmol)とを、トルエン(5mL)、水(1mL)、エタノール(1mL)の混合物に入れた混合物を、100℃で24時間加熱した。この混合物をEtOAc(100mL)で溶解し、水で洗浄し(2×100mL)、乾燥させた(NaSO)。濃縮時に得られた油をフラッシュクロマトグラフィで精製して、cを帯黄色の油(0.20mg)として得た。
【0139】
上記の油を、2,6−ジフルオロ安息香酸クロリド(0.6mmol)をDCM(5mL)およびピリジン(0.2mL)に入れた溶液で、室温にて2時間処理した。溶媒を除去し、残渣をクロマトグラフィで精製して、生成物dを黄色の固体(0.15g)として得た。H−NMR(CDCl δ 8.8(d,1H,J=2),8.5(dd,1H,J=9,J=2),7.91(s,2H),7.8(d,1H,J=8),7.6(m,2H),7.5(m,1H),7.0(t,2H,J=8)ppm;C1910ClFOとしたときのESMS計算値:412.0;実測値:413.0(M+H)。
【0140】
例2:N−(5−(5−(イソキサゾール−5−イル)−2−メチルフェニル)ピリジン−2−イル)−4−メチル−1,2,3−チアジアゾール−5−カルボキサミド
【化3】

鈴木クロスカップリングの基本手順:
5−(3−ブロモ−4−メチルフェニル)イソキサゾール(200mg、0.84mmol)と、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)(Pd(PPhCl、60mg、0.09mmol)と、6−アミノピリジン−3−イルボロン酸ピナコールエステル(185mg、0.84mmol)とをトルエン(10mL)に入れた溶液に、NaCO(2N、1.0mL)とエタノール(1.0mL)とを加えた。攪拌混合物を16時間で80℃まで加熱した。この溶液を室温まで冷却し、HO(10mL)とEtOAc(10mL)で希釈した。有機相をNaSO上で乾燥させ、濃縮し、クロマトグラフにかけて、純粋な生成物(120mg、57%)を得た。
【0141】
アミド結合形成の基本手順A:
5−(5−(イソキサゾール−5−イル)−2−メチルフェニル)ピリジン−2−アミン(60mg、0.24mmol)をDCM(4mL)に入れた溶液に、EDC(85mg、0.45mmol)と4−メチル−1,2,3−チアジアゾール−5−カルボン酸(70mg、0.48mmol)とを加えた。この溶液を室温にて6時間攪拌した上で、濃縮してクロマトグラフにかけ、純粋な生成物(50mg、55%)を得た。
H NMR(300 MHz,CDCl)δ 8.58(d,J=9 Hz,1 H),8.32−8.28(m,2 H),7.99−7.95(m,1 H),7.78−7.74(m,1 H),7.68(d,J=1.8Hz,1 H),7.45−7.43(m,1 H),6.54(d,J=1.8 Hz,1 H),2.35(d,3 H);)。(C1915S)としたときのESMS計算値:377.1;実測値:378.1(M+H)。
【0142】
例3:2,6−ジフルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド
【化4】

アミド結合形成の基本手順B:
5−(2−メチル−5−(1,3,4−オキサジアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−アミン(100mg、0.4mmol)を3 DCM(3mL)に入れた溶液に、2,6−ジフルオロベンゾイルクロリド(0.1ml、0.8mmol)を加えた。反応溶液を室温にて60分間攪拌した上で、濃縮してクロマトグラフにかけて、モノアミド生成物とジアミド生成物の混合物を得た。この混合物を5mLのMeOHに溶解させ、50℃で25分間加熱した上で、濃縮して酢酸エチルとHOとの間で抽出した。有機相を乾燥させ、濃縮して、純粋な最終生成物(117mg、75%)を得た。
H NMR(300 MHz,CDCl)δ 9.16(s,1 H),8.51−8.48(m,2 H),8.14−8.12(m,1 H),8.01(dd,J=8.1 and 2.1 Hz,1 H),7.91(d,J=1.8 Hz,1 H),7.79(dd,J = 8.7 and 2.4 Hz,1 H),7.45−7.42(m,2 H),7.05−6.98(m,2 H),2.35(s,3 H);(C2114)としたときのESMS計算値:392.1;実測値:393.2(M+H)。
【0143】
例4:5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−2−アミン
【化5】

H NMR(300 MHz,CDOD)δ 8.12(s,1 H),7.95−7.86(m,3 H),7.65−7.59(m,3 H),7.40−7.31(m,1 H),7.04−6.96(m,2 H),6.70−6.66(m,1 H),4.64(s,2 H);(C2114ClFS)としたときのESMS計算値:413.1;実測値:414.2(M+H)。
【0144】
例5:5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−2−アミン塩酸塩
【化6】

H NMR(300 MHz,CDOD) δ 8.19−7.95(m,5 H),7.73−7.70(m,2 H),7.55−7.46(m,1 H),7.25−7.09(m,3H),4.77(s,2 H);(C2114ClFS)としたときのESMS計算値:413.1;実測値:414.2(M+H)。
【0145】
例6:N−(2,6−ジフルオロベンジル)−6−(5−(イソキサゾール−5−イル)−2−メチルフェニル)ピリジン−3−アミン
【化7】

H NMR(300 MHz,CDCl)δ 8.25−8.20(m,2 H),7.79−7.69(m,2 H),7.38−7.14(m,4 H),6.95(t,J=8.1 Hz,2 H),6.50(s,1 H),4.52(brs,2 H),4.29(brs,1 H),2.40(s,3 H);(C2217O)としたときのESMS計算値:377.1;実測値:378.2(M+H)。
【0146】
例7:6−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−3−アミン
【化8】

H NMR(300 MHz,CDCl)δ 8.21(s,1 H),8.11(s,1 H),7.91−7.84(m,2 H),7.66−7.61(m,2 H),7.35−7.22(m,2 H),7.14−7.10(m,1 H),6.98−6.90(m,2 H),4.50(brs,2 H),4.32(brs,1 H);(C2114ClFS)としたときのESMS計算値:413.1;実測値:414.2(M+H)。
【0147】
例8:5−(2−クロロ−5−(オキサゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−2−アミン
【化9】

H NMR(300 MHz,CDCl)δ 8.26(s,1 H),8.05−7.91(m,2 H),7.71(s,1 H),7.62−7.41(m,4 H),6.98−6.90(m,2 H),6.62−6.59(m,1 H),5.04(brs,1 H),4.69(brs,2 H);(C2114ClFO)としたときのESMS計算値:397.1;実測値:398.1(M+H)。
【0148】
例9:2,6−ジフルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド
【化10】

H NMR(300 MHz,CDCl)δ 8.90(s,1 H),8.65−8.35(m,3 H),8.29(s,1 H),7.90−7.81(m,2 H),7.55−7.40(m,5 H),7.01(t,J=8.1 Hz,2 H),2.36(s,3 H);(C2417O)としたときのESMS計算値:401.1;実測値:402.2(M+H)。
【0149】
例10:2,6−ジフルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリミジン−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド
【化11】

H NMR(300 MHz,CDCl)δ 8.96(brs,1 H),8.83−8.80(m,2 H),8.47−8.19(m,4 H),7.84−7.80(m,1 H),7.46−7.40(m,2 H),7.23−7.19(m,1 H),7.03−6.97(m,2 H),2.35(s,3 H);(C2316O)としたときのESMS計算値:402.1;実測値:403.2(M+H)。
【0150】
例11:N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−3−フルオロイソニコチンアミド
【化12】

(C2012ClFNOS)としたときのESMS計算値:410.0;実測値:411.0(M+H)。
【0151】
例12:2−クロロ−6−フルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド
【化13】

H NMR(300 MHz,CDOD)δ 8.83−8.80(m,1 H),8.51−8.48(m,1 H),8.36−8.32(m,2 H),8.15−8.08(m,1 H),7.93−7.88(m,1 H),7.63−7.18(m,7 H),2.45(s,3 H);(C2417ClFNO)としたときのESMS計算値:417.1;実測値:418.2(M+H)。
【0152】
例13:2−クロロ−6−フルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド塩酸塩
【化14】

H NMR(300 MHz,CDOD)δ 9.30−9.29(m,1 H),9.03−8.99(m,1 H),8.85(d,J=5.4 Hz,1 H),8.55−8.50(m,2 H),8.22−8.17(m,1 H),7.91−7.85(m,3 H),7.66−7.57(m,2 H),7.49−7.43(m,1 H),7.37−7.30(m,1 H),2.45(s,3 H);(C2417ClFNO)としたときのESMS計算値:417.1;実測値:418.2(M+H)。
【0153】
例14:N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−2−フルオロベンズアミド
【化15】

H−NMR(CDOD)δ 8.5(m,2H),8.0(m,4H),7.7(m,3H),7.3(m,3H)ppm;C2113ClFNOSとしたときのESMS計算値:409.1;実測値:410.0(M+H)。
【0154】
例15:2−クロロ−N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−6−フルオロベンズアミド
【化16】

H−NMR(CDOD)δ 8.48(S,1H),8.4(m,1H),8.0(m,4H),7.7(m,2H),7.5(m,1H),7.4(m,1H),7.2(m,1H)ppm;C2112ClFNOSとしたときのESMS計算値:443.0;実測値:444.0(M+H)。
【0155】
例16:N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−2−フルオロ−6−(トリフルオロメチル)ベンズアミド
【化17】

H−NMR(CDOD)δ 8.48(s,1H),8.3(m,1H),8.0(m,3H),7.9(m,1H),7.5−7.7(m,5H)ppm;C2212ClFOSとしたときのESMS計算値:477.0;実測値:478.0(M+H)。
【0156】
例17:N−(6−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−3−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンズアミド
【化18】

H−NMR(CDOD)δ 8.44(s,1H),8.3(m,1H),7.5−8.0(m,10H)ppm;C2213ClFOSとしたときのESMS計算値:459.0;実測値:460.1(M+H)。
【0157】
例18:N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−3−メチル−1H−ピロール−2−カルボキサミド
【化19】

H−NMR(CDOD)δ 8.45(s,1H),8.3(m,2H),8.0(m,4H),7.6(m,2H),6.92(s,1H),6.13(s,1H),2.49(s,3H)ppm;C2015ClNOSとしたときのESMS計算値:394.1;実測値:395.1(M+H)。
【0158】
例19:N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−1−メチル−1H−イミダゾール−5−カルボキサミド
【化20】

H−NMR(CDCl)δ 8.4(m,2H),7.9(m,4H),7.6(m,3H),7.5(m,1H),7.4(m,1H),4.00(s,3H)ppm;C1914ClNOSとしたときのESMS計算値:395.1;実測値:396.1(M+H)。
【0159】
例20:N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−4−メチルチアゾール−5−カルボキサミド
【化21】

H−NMR(CDCl)δ 8.8(m,1H),8.4(m,3H),8.0(m,3H),7.3−7.5(m,3H),2.88(s,3H)ppm;C1913ClNOSとしたときのESMS計算値:412.0;実測値:413.0(M+H)。
【0160】
例21:N−(5−(2−クロロ−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−2,6−ジフルオロベンズアミド
【化22】

2314ClFOとしたときのESMS計算値:421.1;実測値:422.1(M+H)。
【0161】
−NHC(S)−または−C(S)NH−リンカーを有する化合物を、ラネーニッケルと接触させることによって、−CH−NH−または−NH−CH−リンカーを有する本発明の化合物を調製可能である。あるいは、−C(O)−NH−または−NH−C(O)−リンカーを有する化合物を、それぞれたとえば水素化ホウ素ナトリウムで還元することによって、−CH−NH−または−NH−CH−リンカーを有する本発明の化合物を調製可能である。あるいは、スキームVIaに示すようにアルデヒド(f)をアミン(XX)と反応させた後、シフト塩基を水素化ホウ素ナトリウムで還元して、−NHCH−リンカーを有する化合物を調製可能である(2004年7月22日に出願された米国特許出願第10/897,681号明細書(その教示内容全体を本明細書に援用する)を参照のこと)。
【0162】
【化23】

尿素リンカーを有する化合物をローソン試薬で処理することによって、チオ尿素リンカー(−NHC(S)NH−)を有する本発明の化合物を調製可能である。
【0163】
アミドリンカーを有する化合物をローソン試薬で処理することによって、Lが−NHC(S)−または−C(S)NH−である本発明の化合物を調製可能である。
【0164】
例A:IL−2産生の阻害
ジャーカット細胞を96ウェルプレートに入れ(1%FBS培地中1ウェルあたり細胞50万個)、続いて本発明の被験化合物を異なる濃度で加えた。10分後、細胞をPHAで活性化し(最終濃度2.5μg/mL)、CO下にて37℃で20時間インキュベートした。最終容量を200μLとした。インキュベーション後、細胞を遠心処理し、上清を回収し、IL−2の産生についてのアッセイまで−70℃で保存した。市販のELISAキット(IL-2 Eli-pair、Diaclone Research、Besancon、France)を利用してIL−2の産生を検出し、そこから用量応答曲線を得た。IC50値は、非刺激対照に対し、刺激後の最大IL−2産生の50%が阻害された濃度として計算した。
【0165】
【表4】

【0166】
IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、TNF−αおよびINF−γなどの他のサイトカインの阻害を、それぞれのサイトカイン用の市販のELISAキットを用いて、同じ様に試験することが可能である。
【0167】
例B:RBL細胞、ジャーカット細胞、初代T細胞におけるICRAC電流阻害のパッチクランプ研究
概して、ホールセル式のパッチクランプ法を使用して、Icracを媒介するチャネルに対する本発明の化合物の効果を検討した。この実験では、パッチした細胞のベースライン測定値を確立した。次に、試験対象とする化合物を外液で細胞に灌流(または適用(puff))し、Icracに対する化合物の効果を測定した。Icracを調節する(例えば、阻害する)化合物は、本発明においてCRACイオンチャネル活性の調節に有用な化合物である。
【0168】
1)RBL細胞
細胞
95%が空気/5%がCOの雰囲気下で、10%ウシ胎仔血清加DMEM培地でラット好塩基球性白血病細胞(RBL−2H3)を増殖させる。使用する1〜3日前に、細胞をガラス製カバースリップに播種する。
【0169】
記録条件
パッチクランプ法のホールセル構成で、EPC10(HEKA Electronik、Lambrecht、Germany)を用いて個々の細胞の膜電流を記録する。電極(抵抗値2〜5MΩ)については、ホウケイ酸ガラス製の毛細管(Sutter Instruments、Novato、Ca)から作製する。記録は室温で実施する。
【0170】
細胞内ピペット液
細胞内ピペット液は、Cs−グルタミン酸塩120mM;CsCl 20mM;CsBAPTA 10mM;CsHEPES 10mM;NaCl 8mM;mgCl 1mM;IP3 0.02mMを含有し、CsOHでpH=7.4に調整する。実験を実施する前に、この溶液を氷上に保持し、遮光する。
【0171】
細胞外液
細胞外液は、NaCl 138mM;NaHEPES 10mM;CsCl 10mM;CaCl 10mM;グルコース5.5mM;KCl 5.4mM;KHPO 0.4mM;NaHPOO 0.3mMを含有し、NaOHでpH=7.4に調整する。
【0172】
化合物の処理
各試験化合物を10mMのストック溶液からDMSOを用いて連続希釈する。最終的なDMSO濃度を0.1%に保つ。
【0173】
実験手順
50msecのプロトコールを用いてICRAC電流を2秒ごとに監視する。このとき、電圧を−100mV〜+100mVまでランプさせる。試験ランプ間の膜電位を0mVに保つ。一般的な実験では、内向きのピーク電流は50〜100秒以内に現れると思われる。ICRAC電流が安定したら、細胞外液にて細胞を被験化合物で灌流する。実験の最後に、残留ICRAC電流を対照化合物(SKF96365、10μM)で検証し、依然として電流を阻害できることを確認する。
【0174】
データ解析
MATLABを用いるオフライン解析で、電圧ランプの−80mVにおける内向き電流振幅を測定することで、ICRAC電流レベルを求める。同じ細胞からの実験開始時のピーク振幅を用いて各濃度のICRAC電流阻害を算出する。個々のデータ点を単一のヒル式にフィットさせて、各化合物のIC50値とヒル係数を推定する。
【0175】
結果
本発明の化合物は、RBL細胞でICRAC電流を阻害すると思われる。
【0176】
2)ジャーカット細胞
細胞
ジャーカットT細胞をガラス製カバースリップで増殖させ、記録チャンバに移し、以下の組成の標準的な改変リンゲル液で維持する:NaCl 145mM、KCl 2.8mM、CsCl 10mM、CaCl 10mM、MgCl 2mM、グルコース10mM、HEPES・NaOH 10mM、pH7.2。
【0177】
細胞外液
外液は、10mMのCaNaRと、11.5mMのグルコースと、被験化合物とを、さまざまな濃度で含有する。
【0178】
細胞内ピペット液
標準的な細胞内ピペット液は、Cs−グルタミン酸塩145mM、NaCl 8mM、MgCl 1mM、ATP 0.5mM、GTP 0.3mMを含有し、CsOHでpH7.2に調整してある。この溶液に、10mMのCs−BAPTAと4.3〜5.3mMのCaClとの混合物を補充し、[Ca2+]iを100〜150nMの静止時レベルまで緩衝する。
【0179】
パッチクランプ記録
密封したホールセル構成で、21〜25℃にてパッチクランプ実験を実施する。コンピュータベースのパッチクランプ増幅システム(EPC-9、HEKA、Lambrecht、Germany)によって、高解像度の電流記録を取得する。Sylgard(登録商標)でコーティングしたパッチピペットは、標準的な細胞内液充填後の抵抗値が2〜4MΩである。ホールセルを構成した直後に、電圧範囲−100〜+100mVにわたる、持続時間50〜200msの電圧ランプを、300〜400秒の期間にわたり0.5Hzの速度で、0mVの保持電位から与える。細胞内アニオンとしてグルタミン酸塩を使用する場合、すべての電圧を外液と内液とのあいだの液界電位が10mVになるように補正する。電流を2.3kHzでフィルタリングし、10μs間隔でデジタル化する。それぞれの電圧ランプの前に、EPC−9の自動キャパシタンス補償を用いて、容量性電流と直列抵抗とを求めて補正する。
【0180】
データ解析
CRAC活性化前の全く初めてのランプ(通常は1〜3)を2kHzでデジタルフィルタリングし、プールし、以後の全電流記録でのリーク電流の差し引きに利用する。−80mVまたは最適な電圧における電流振幅を測定することで、リーク補正した個々のランプ電流記録から内向き電流の低解像度での時間的推移を抽出する。
【0181】
3)初代T細胞
初代T細胞の調製
100μLのRosetteSep(登録商標)ヒトT細胞富化カクテルを2mLの全血に加えることで、ヒト全血試料から初代T細胞を得る。この混合物を室温にて20分間インキュベートした後、同容量の2%FBS含有PBSで希釈する。混合物をRosetteSep(登録商標)DM−L密度媒体上に積層した後、室温にて1200gで20分間遠心処理する。富化T細胞を血漿/密度媒体界面から回収した後、2%FBS含有PBSで2回洗浄し、RBL細胞で説明した手順でパッチクランプ実験にて使用する。
【0182】
例C:初代ヒトPBMCにおける複数のサイトカインの阻害
さまざまな濃度で本発明の化合物または周知のサイトカイン産生阻害剤であるシクロスポリンA(CsA)の存在下、末梢血単核球(PBMCs)をフィトヘマグルチニン(PHA)で刺激する。市販のヒトELISAアッセイキット(Cell Science, Inc.)を製造業者の指示どおり使用して、サイトカインの産生を測定する。
【0183】
本発明の化合物は、初代ヒトPBM細胞におけるIL−2、IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、INF−γおよびTNF−αの強力な阻害剤であると思われる。また、本発明の化合物は、抗炎症性サイトカインIL−10を阻害しないと思われる。
【0184】
例D:RBL細胞における脱顆粒の阻害
手順:
アッセイ実施の前日に、96ウェルプレートでコンフルエントになるまで増殖させたRBL細胞を、37℃で少なくとも2時間インキュベートする。各ウェルの培地を、2μLg/mLの抗DNP IgEを含有する新鮮な培地100μLと交換する。
【0185】
翌日、細胞をPRS(2.6mMグルコース、0.1%BSA)で1回洗浄し、160μLのPRSを各ウェルに加える。被験化合物を20μLの溶液にて所望の濃度の10倍でウェルに加え、37℃で20〜40分間インキュベートする。10×マウス抗IgE(10μL/mL)20μLを加える。最大脱顆粒は、抗IgEの添加後15〜40分の間に発生する。
本発明の化合物は、RBL細胞の脱顆粒を阻害すると思われる。
【0186】
例E:T細胞における走化性の阻害
T細胞の単離:
ヘパリン化全血(ブタ2、ヒト1)のアリコート20mlを、フィコール・ハイパックで密度勾配遠心処理する。リンパ球と単球とを含む末梢血単核球(PBMC)を表すバフィーコート層を1回洗浄し、12mlの不完全RPMI 1640に再懸濁させた後、37℃で1時間、ゼラチンコートT75培養フラスコに配置した。単球を欠く末梢血リンパ球(PBL)である非接着細胞を完全RPMI培地に再懸濁させ、温かい培地で平衡化しておいた、ゆるく充填された活性化ナイロンウールカラムに入れる。37℃で1時間後、別の培地でカラムを洗浄して非接着T細胞集団を溶出する。T細胞調製物を遠心処理し、5mlの不完全RPMIに再懸濁させ、血球計数器を用いて計数する。
【0187】
細胞遊走アッセイ:
各T細胞調製物のアリコートをCalcien AM(TefLabs)で標識し、1.83mMのCaClと0.8mMのMgCl、pH7.4を含有するHEPES緩衝ハンクス平衡塩溶液に2.4×10/mlの濃度で懸濁させる(HHBSS)。0、20nM、200nMまたは2000nMの化合物1または20nMのEDTAを含有する同容量のHHBSSを加え、細胞を37℃で30分間インキュベートする。細胞懸濁液(細胞60,000個)のアリコート50μlを、HHBSS中10ng/mlのMIP−1αの入ったウェルの上に加えたNeuroprobe ChemoTxの96ウェルの走化ユニットの膜(細孔サイズ5μm)に載せる。T細胞を37℃で2時間遊走させた後、膜の頂端面から細胞を拭き取った。次に、走化ユニットをCytoFlour 4000(PerSeptive BioSystems)に入れ、各ウェルの蛍光を測定する(励起波長450nmおよび放出波長530nm)。各ウェルの遊走細胞数を、膜を取り付ける前に走化ユニットの下側のウェルに入れた標識細胞の2倍連続希釈物の蛍光を測定することで作出した標準曲線から求める。
本発明の化合物は、T細胞の走化応答を阻害すると思われる。
【0188】
本明細書にて引用した刊行物、特許出願、特許および他の文献についてはいずれも、その内容全体をここに援用する。矛盾が生じた場合は、定義を含めて本明細書が優先する。また、材料、方法および例は一例にすぎず、決して限定を意図したものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−2−アミン、
5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−2−アミン塩酸塩、
N−(2,6−ジフルオロベンジル)−6−(5−(イソキサゾール−5−イル)−2−メチルフェニル)ピリジン−3−アミン、
6−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−3−アミン、
5−(2−クロロ−5−(オキサゾール−2−イル)フェニル)−N−(2,6−ジフルオロベンジル)ピリジン−2−アミン、
2,6−ジフルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド、
2,6−ジフルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリミジン−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−3−フルオロイソニコチンアミド、
2−クロロ−6−フルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド、
2−クロロ−6−フルオロ−N−(5−(2−メチル−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)ベンズアミド塩酸塩、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−2−フルオロベンズアミド、
2−クロロ−N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−6−フルオロベンズアミド、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−2−フルオロ−6−(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
N−(6−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−3−イル)−2−(トリフルオロメチル)ベンズアミド、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−3−メチル−1H−ピロール−2−カルボキサミド、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−1−メチル−1H−イミダゾール−5−カルボキサミド、
N−(5−(2−クロロ−5−(チアゾール−2−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−4−メチルチアゾール−5−カルボキサミド、または
N−(5−(2−クロロ−5−(ピリジン−3−イル)フェニル)ピリジン−2−イル)−2,6−ジフルオロベンズアミド
からなる群から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
薬学的に許容されるキャリアと請求項1に記載の化合物とを含む、医薬組成物。
【請求項3】
1種または2種以上の別の治療薬をさらに含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
別の治療薬が、免疫抑制剤、抗炎症薬、およびこれらの好適な混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
別の治療薬が、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、抗ヒスタミン薬、鎮痛剤、およびこれらの好適な混合物からなる群から選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
免疫細胞の活性化を阻害する方法であって、前記細胞に請求項1に記載の化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項7】
化合物を対象に投与することで、前記対象での免疫細胞の活性化を阻害する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
対象がヒトである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
細胞におけるサイトカイン産生を阻害する方法であって、前記細胞に請求項1に記載の化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項10】
化合物を対象に投与することで、前記対象におけるサイトカイン産生を阻害する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
対象がヒトである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
サイトカインが、IL−2、IL−4、IL−5、IL−13、GM−CSF、IFN−γ、TNF−αおよびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
サイトカインがIL−2である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
免疫細胞の活性化に関与する、細胞におけるイオンチャネルを調節する方法であって、前記細胞に請求項1に記載の化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項15】
イオンチャネルが対象内にあり、これが、化合物を前記対象に投与することで調節される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
対象がヒトである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
イオンチャネルがCa2+遊離活性化Ca2+チャネル(CRAC)である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
抗原に応答したT細胞および/またはB細胞の増殖を阻害する方法であって、請求項1に記載の化合物を前記細胞に投与することを含む、前記方法。
【請求項19】
化合物を対象に投与することで、前記対象でのT細胞および/またはB細胞の増殖を阻害する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
対象がヒトである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
免疫障害の治療または予防が必要な対象において免疫障害を治療または予防するための方法であって、請求項1に記載の化合物を有効量で前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項22】
対象がヒトである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
障害が、多発性硬化症、重症筋無力症、ギラン・バレー、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血、自己免疫性血小板減少症、側頭動脈炎、抗リン脂質抗体症候群、ウェゲナー肉芽腫症などの血管炎、ベーチェット病、乾癬、疱疹状皮膚炎、尋常性天疱瘡、白斑、クローン病、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫性肝炎、1型または免疫介在性糖尿病、グレーブス病、橋本甲状腺炎、自己免疫性卵巣炎および精巣炎、副腎の自己免疫障害、関節リウマチ、紅斑性狼瘡、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎ならびに、強直性脊椎炎およびシェーグレン症候群からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
炎症状態の治療または予防が必要な対象において炎症状態を治療または予防するための方法であって、請求項1に記載の化合物を有効量で前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項25】
対象がヒトである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
状態が、移植片拒絶反応、皮膚移植片拒絶反応、関節炎、関節リウマチ、変形性関節炎および骨吸収増大に関連する骨疾患;炎症性腸疾患、回腸炎、潰瘍性大腸炎、バレット症候群、クローン病;喘息、成人呼吸促迫症候群、慢性閉塞性気道疾患;角膜変性症、トラコーマ、回旋糸状虫症、ブドウ膜炎、交感性眼炎、眼内炎;歯肉炎、歯周炎;結核;ライ病;尿毒症の合併症、糸球体腎炎、腎症;硬化性皮膚炎、乾癬、湿疹;神経系の慢性脱髄疾患、多発性硬化症、AIDS関連神経変性、アルツハイマー病、感染性髄膜炎、脳脊髄炎、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、ウイルス性または自己免疫性脳炎;自己免疫障害、免疫複合体血管炎、全身性狼瘡およびエリテマトーデス;全身性紅斑性狼瘡(SLE);心筋症、虚血性心疾患、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、子癇前症;慢性肝不全、脳外傷および脊髄外傷、ならびに癌から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
免疫系の抑制が必要な対象の免疫系を抑制するための方法であって、請求項1に記載の化合物を有効量で前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
対象がヒトである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
アレルギー性障害の治療または予防が必要な対象においてアレルギー性障害を治療または予防するための方法であって、請求項1に記載の化合物を有効量で前記対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項30】
対象がヒトである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
障害が、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、鼻副鼻腔炎、慢性中耳炎、再発性中耳炎、薬剤反応、虫さされ反応、ラテックス反応、結膜炎、蕁麻疹、アナフィラキシー反応、アナフィラキシー様反応、アトピー性皮膚炎、喘息または食物アレルギーである、請求項29に記載の方法。

【公表番号】特表2010−535215(P2010−535215A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519940(P2010−519940)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/009306
【国際公開番号】WO2009/017819
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(504151848)シンタ ファーマシューティカルズ コーポレーション (72)
【Fターム(参考)】