炭化珪素半導体装置の製造方法
【課題】ニッケルシリサイド層の酸化を防止するとともに、良好なオーミックコンタクトを有したオーミック電極を備えた炭化珪素半導体装置を得る。
【解決手段】シリコン層3の一方主面上に厚さ約100nmのニッケル層4を、スパッタリング法によって形成し、さらに、ニッケル層4の一方主面上に酸化保護層として厚さ300〜500nmの窒化チタン層5を、スパッタリング法によって形成する。その後、400〜700℃の高温アニール処理を5分間行うことで、シリコン層3とニッケル層4とを反応させてニッケルシリサイド層6を形成する。
【解決手段】シリコン層3の一方主面上に厚さ約100nmのニッケル層4を、スパッタリング法によって形成し、さらに、ニッケル層4の一方主面上に酸化保護層として厚さ300〜500nmの窒化チタン層5を、スパッタリング法によって形成する。その後、400〜700℃の高温アニール処理を5分間行うことで、シリコン層3とニッケル層4とを反応させてニッケルシリサイド層6を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置の製造方法に関し、特に、炭化珪素基板の主面にオーミックコンタクトしたオーミック電極を有した炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化珪素(SiC)半導体層上に、例えばニッケル(Ni)などの電極を形成する際には、低抵抗のオーミックコンタクトを形成するために約800〜1000℃の熱処理を行うシリサイドプロセスを適用している。この熱処理を行うことニッケルとSiC中のシリコン(Si)とが反応し、ニッケルシリサイドが形成される。
【0003】
しかしながら、SiC上にオーミック電極を形成する従来の方法では、ニッケルシリサイド形成時にニッケル層とシリサイド層との界面に余分なカーボンが析出され、このカーボンがニッケル層の剥離を引き起こす原因となっていた。このカーボンの析出を低減する方法としては、例えば特許文献1に開示されるように、ニッケル層とSiC層との間にシリコン層を介在させて熱処理を行い、シリコン層のみをニッケル層と反応させカーボンの析出を防ぐ方法が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−106350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上説明した、ニッケル層とSiC層との間にシリコン層を介在させて熱処理を行うという従来の方法では、シリサイドプロセスは、不活性ガス雰囲気中で行うことになっているが、ウエハのサセプタなどの製造装置自身から酸素が放出され、僅かながらも不活性ガス雰囲気中に酸素が存在することとなる。その酸素によってニッケルシリサイドが酸化し絶縁膜であるシリコン酸化膜(SiO2)を形成する。その結果、ニッケルシリサイドの抵抗が部分的に増大し、オーミック抵抗のばらつきを引き起こし装置特性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、ニッケルシリサイド層の酸化を防止するとともに、良好なオーミックコンタクトを有したオーミック電極を備えた炭化珪素半導体装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第1の態様は、炭化珪素基板の第1の主面に設けられた第1の主電極と、前記炭化珪素基板の第2の主面に設けられた第2の主電極と、を備え、前記炭化珪素基板の厚み方向に主電流が流れる炭化珪素半導体装置の製造方法であって、前記炭化珪素基板を準備する工程(a)と、前記炭化珪素基板の第1の主面にシリコン層を形成する工程(b)と、前記シリコン層上にニッケル層および酸化保護層を前記シリコン層側から順に連続的に形成する工程(c)と、前記酸化保護層が形成された前記炭化珪素基板を所定の温度で熱処理して、前記ニッケル層と前記シリコン層とを反応させてニッケルシリサイド層を形成して前記第1の主電極を形成する工程(d)と、前記ニッケルシリサイド層の形成後、前記酸化保護層を除去する工程(e)と、前記酸化保護層の除去後、前記第2の主面上に前記第2の主電極を形成する工程(f)とを備えている。
【0008】
本発明に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第2の態様は、炭化珪素基板の第1の主面に設けられた第1の主電極と、前記炭化珪素基板の第2の主面に設けられた第2の主電極と、を備え、前記炭化珪素基板の厚み方向に主電流が流れる炭化珪素半導体装置の製造方法であって、前記炭化珪素基板を準備する工程(a)と、前記炭化珪素基板の第1の主面にシリコン層を形成する工程(b)と、前記シリコン層上にニッケル層、金層および酸化保護層を前記シリコン層側から順に形成する工程(c)と、前記酸化保護層が形成された前記炭化珪素基板を所定の温度で熱処理して、前記ニッケル層と前記シリコン層とを反応させてニッケルシリサイド層を形成して前記第1の主電極を形成する工程(d)と、前記ニッケルシリサイド層の形成後、前記酸化保護層を除去する工程(e)と、前記酸化保護層の除去後、前記第2の主面上に前記第2の主電極を形成する工程(f)とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第1の態様によれば、シリコン層上にニッケル層および酸化保護層を形成した後に熱処理して、ニッケル層とシリコン層とを反応させてニッケルシリサイド層を形成するので、ニッケル層とシリサイド層との界面にカーボンが析出することを防ぎつつ、酸化保護層によってニッケル層およびニッケルシリサイド層の酸化を防止することができる。ニッケルシリサイド層の酸化が回避されることで、オーミック電極のオーミック抵抗のばらつきが防止され、良好なオーミック特性を有したオーミック電極が得られる。また、ニッケル層と酸化保護層とを連続的に形成することで、熱処理のために炭化珪素基板を一旦、大気中に曝し、酸化保護層上に水分が吸着したまま熱処理したとしても、水分とニッケルやニッケルシリサイドとが反応することを防止でき、ニッケルシリサイド層の酸化を防止することができる。
【0010】
本発明に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第2の態様によれば、シリコン層上にニッケル層、金層および酸化保護層を形成した後に熱処理して、ニッケル層とシリコン層とを反応させてニッケルシリサイド層を形成するので、ニッケル層とシリサイド層との界面にカーボンが析出することを防ぎつつ、酸化保護層によってニッケル層およびニッケルシリサイド層の酸化を防止することができる。ニッケルシリサイド層の酸化が回避されることで、オーミック電極のオーミック抵抗のばらつきが防止され、良好なオーミック特性を有したオーミック電極が得られる。また、金層の上に酸化保護層を形成するので、酸化保護層をニッケル層上に直接形成する場合に比べてニッケル層がダメージを受けることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図3】本発明に係る実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図4】本発明に係る実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図5】本発明に係る実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図6】本発明に係る実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図7】本発明に係る実施の形態2の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図8】本発明に係る実施の形態2の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図9】本発明に係る実施の形態2の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図10】本発明に係る実施の形態2の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図11】本発明に係る実施の形態2の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図12】本発明に係る実施の形態2の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図13】本発明の他の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態として、SiCショットキーバリアダイオードの製造方法を例に挙げて説明する。
【0013】
<実施の形態1>
製造工程を順に示す断面図である図1〜図6を用いて、本発明に係る実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する。
【0014】
まず、図1に示す工程においてN型不純物を比較的低濃度(N-)に含んだ厚さ5〜15μmのドリフト層1と、N型不純物を比較的高濃度(N+)に含んだ厚さ300〜400μmのドリフト層2とで構成されるSiC基板SB(炭化珪素基板)を準備する。
【0015】
SiC基板SBは、例えば、N型不純物を比較的高濃度に含んだSiC基板の一方の主面上に、エピタキシャル成長によりドリフト層1を形成し、残るSiC基板の部分をドリフト層2とする方法によって得ることができる。
【0016】
次に、図2に示す工程において、SiC基板SBの第1の主面、すなわちドリフト層2の一方主面(ドリフト層1と接する側とは反対側の主面)上に例えば厚さ100nmのシリコン層3を、例えばシランガスをソースガスとして用いたCVD法により形成する。
【0017】
次に、図3に示す工程において、シリコン層3の一方主面(ドリフト層2と接する側とは反対側の主面)上に厚さ約100nmのニッケル層4を、スパッタリング法によって形成する。
【0018】
さらに、ニッケル層4の一方主面(シリコン層3と接する側とは反対側の主面)上に酸化保護層として厚さ300〜500nmの窒化チタン(TiN)層5を、スパッタリング法によって形成する。
【0019】
ここで、ニッケル層4および窒化チタン層5の形成においては、同じスパッタリング装置を使用し、ニッケル層4に続いて窒化チタン層5を形成する際には、ニッケル層4が形成されたSiC基板SBを大気中に曝すことなく、連続成膜を行うので、ニッケル層4に大気中の水分が吸着したり、酸化されることがない。
【0020】
なお、ここで使用するスパッタリング装置においては、スパッタターゲットを装置内の真空を破らずに交換できる構成を有しており、ニッケル層4を形成した後は、使用したニッケルターゲットを、チタンターゲットに交換して、窒素ガスを装置内に流しながらスパッタリングを行うことで窒化チタン層5を形成する。
【0021】
この後、図4に示す工程において、400〜700℃の高温アニール処理を5分間行うことで、シリコン層3とニッケル層4とが反応し、オーミック電極としてのニッケルシリサイド層6が形成される。
【0022】
なお、シリコン層3およびニッケル層4の厚さを同じとすることで、シリコン層3とニッケル層4とがほぼ全て反応して、ニッケルシリサイド層6が形成されることとなる。
【0023】
ここで、本発明では、先に説明したように、ニッケル層4の上に窒化チタン層5を真空を破らずに連続成膜しているので、高温アニール処理のためにSiC基板SBを一旦、大気中に曝し、窒化チタン層5上に水分が吸着したままアニールしたとしても、水分とニッケルやニッケルシリサイドとが反応することを防止でき、ニッケルシリサイド層6の酸化を防止することができる。
【0024】
このように、ドリフト層2上にシリコン層3を形成し、ニッケル層4上には窒化チタン層5を形成した後に高温アニール処理を行うことで、ニッケル層とシリサイド層との界面にカーボンが析出することを防ぎつつ、酸化しにくい窒化チタン層5が酸化保護層となってニッケル層4およびニッケルシリサイド層6の酸化を防止することができる。
【0025】
なお、窒化チタン層5の厚さを300〜500nmとすることで、下層の酸化を確実に防止することができる。
【0026】
ニッケルシリサイド層6の酸化が回避されることで、オーミック電極のオーミック抵抗のばらつきが防止され、良好なオーミック特性を有したオーミック電極が得られる。
【0027】
次に、図5に示す工程において、例えばスパッタエッチング(不活性ガスを用いた物理的なエッチング)で窒化チタン層5を除去する。なお、窒化チタン層5の除去にはドライエッチングを用いても良い。
【0028】
その後、SiC基板SBの第2の主面、ドリフト層1の一方主面(ドリフト層2と接する側とは反対側の主面)上にショットキー電極として厚さ200nmのチタン層7を真空蒸着法により形成し、さらにチタン層7上に配線電極として厚さ3μmのアルミニウム(Al)層8を形成する。なお、チタン層7の形成後には、ショットキーバリアの高さ(φB)を安定させるため、約600℃の熱処理を行うこともある。
【0029】
その後、図6に示す工程において、ニッケルシリサイド層6の一方主面(ドリフト層2と接する側とは反対側の主面)上に厚さ約700nmのニッケル層9を、例えば真空蒸着法により形成し、さらに、ニッケル層9上に、厚さ200nmの金(Au)層10を真空蒸着法により形成する。以上の工程を経て、コンタクト抵抗10-6Ωcm2台の良好なオーミック電極を有したSiCショットキーバリアダイオード100が完成する。
【0030】
<実施の形態2>
製造工程を順に示す断面図である図7〜図12を用いて、本発明に係る実施の形態2の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する。
【0031】
まず、図7に示す工程においてN型不純物を比較的低濃度(N-)に含んだ厚さ5〜15μmのドリフト層1と、N型不純物を比較的高濃度(N+)に含んだ厚さ300〜400μmのドリフト層2とで構成されるSiC基板SBを準備する。
【0032】
次に、図8に示す工程において、SiC基板SBの裏面、すなわちドリフト層2の一方主面(ドリフト層1と接する側とは反対側の主面)上に例えば厚さ100nmのシリコン層3を、例えばシランガスをソースガスとして用いたCVD法により形成する。
【0033】
その後、シリコン層3の一方主面(ドリフト層2と接する側とは反対側の主面)上に厚さ約700nmのニッケル層4Aを、スパッタリング法によって形成する。
【0034】
次に、図9に示す工程において、ニッケル層4Aの一方主面(シリコン層3と接する側とは反対側の主面)上に、真空蒸着法により厚さ約200nmの金層10を形成する。
【0035】
次に、図10に示す工程において、金層10の一方主面(ニッケル層4Aと接する側とは反対側の主面)上に、酸化保護層として厚さ300〜500nmの窒化チタン層5を、スパッタリング法によって形成する。
【0036】
この後、図11に示す工程において、400〜700℃の高温アニール処理を5分間行うことで、シリコン層3とニッケル層4Aとが反応し、オーミック電極としてのニッケルシリサイド層6が形成される。
【0037】
なお、ニッケル層4Aは約700nmの厚さがあり、厚さ約100nmのシリコン層3と全て反応しても、ニッケルシリサイド層6上には未反応のニッケル層4Aが残ることとなる。ここで、ニッケル層4Aを厚く形成して未反応のニッケル層4Aを残す理由は、ニッケルシリサイド層6と金層10とが直接に接触する構成を採ると接触抵抗が大きくなるので、ニッケル層4Aに金層10を接触させて接触抵抗を低減するためである。
【0038】
なお、ニッケル層4Aの厚さは700nmに限定されるものではなく、シリコン層3よりも厚く、シリコン層3と全て反応しても、未反応のニッケル層が残る厚さであれば良く、例えば、シリコン層3の2倍から7倍の厚さとすれば良い。
【0039】
その後、例えばスパッタエッチングで窒化チタン層5を除去する。なお、窒化チタン層5の除去にはドライエッチングを用いても良い。
【0040】
このように、ドリフト層2上にシリコン層3を形成し、ニッケル層4A上には金層10を介して窒化チタン層5を形成した後に高温アニール処理を行うことで、ニッケル層とシリサイド層との界面にカーボンが析出することを防ぎつつ、酸化しにくい窒化チタン層5が酸化保護層となってニッケル層4Aおよびニッケルシリサイド層6の酸化を防止することができる。
【0041】
また、金層10の上に窒化チタン層5を形成するので、窒化チタン層5をニッケル層4A上に直接形成する場合に比べてニッケル層4Aがダメージを受けることが防止される。すなわち、窒化チタン層5はスパッタリング法によって形成するので、窒化チタン層5をニッケル層4A上に直接形成する場合には、窒化チタン層5の形成時にニッケル層4Aがダメージを受けるとともに、窒化チタン層5を除去する場合のスパッタエッチングによってもニッケル層4Aがダメージを受けることになる。しかし、本実施の形態の製造方法では、ニッケル層4A上には金層10を介して窒化チタン層5を形成するので、ニッケル層4Aがダメージを受けることが回避される。
【0042】
また、金層10は真空蒸着法によりニッケル層4A上に形成されるので、ニッケル層4Aにダメージを与えることなく密着性良く形成することができる。
【0043】
次に、図12に示す工程において、ドリフト層1の一方主面(ドリフト層2と接する側とは反対側の主面)上にショットキー電極として厚さ200nmのチタン層7を真空蒸着法により形成し、さらにチタン層7上に配線電極として厚さ3μmのアルミニウム(Al)層8を形成する。なお、チタン層7の形成後には、ショットキーバリアの高さ(φB)を安定させるため、約600℃の熱処理を行うこともある。
【0044】
以上の工程を経て、コンタクト抵抗10-6Ωcm2台の良好なオーミック電極を有したSiCショットキーバリアダイオード200が完成する。
【0045】
<変形例>
以上説明した実施の形態1および2においては、ニッケルシリサイド層6の酸化を防止するための酸化保護層として窒化チタン層を使用する例について説明したが、これに限定されるものではなく、酸化開始温度が600℃以上で耐酸化性が非常に高い窒化タンタル(TaN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ボロン(BN)、窒化クロム(CrN)および窒化ニオブ(NbN)などの窒化物を使用しても良い。
【0046】
また、硬度が高く、400℃以上の高温アニール時でもシリサイド表面の均一性を保つことができる炭化チタン(TiC)、炭化タングステン(WC)および炭化バナジウム(VC)などの炭化物を使用しても良い。
【0047】
また、SiCと熱膨張係数が近く、アニール時のウエハの反りを抑えることができるホウ化チタン(TiB)、ホウ化タングステン(WB2)およびホウ化ジルコニウム(ZrB)などのホウ化物などを使用しても良い。
【0048】
なお、上述した窒化物は、窒素雰囲気中で、各金属のスパッタターゲットをスパッタリングすることで形成でき、上述した炭化物は、メタンガス雰囲気中で、各金属のスパッタターゲットをスパッタリングすることで形成でき、上述したホウ化物は、イオンプレーティング法で形成することができる。
【0049】
<その他の適用例>
以上説明した実施の形態1および2においては、本発明に係る製造方法を、SiCショットキーバリアダイオードの製造に適用する例を説明したが、本発明に係る製造方法は、他のSiCデバイスの製造に適用できることは言うまでもなく、例えば、縦形二重拡散構造のMOSFET(DMOSFET)への適用も可能である。
【0050】
図13には、DMOSFETの構成の一例を示す。図13に示すDMOSFETは、SiC基板の第2の主面、すなわちN型不純物を比較的高濃度(N+)に含んだSiCのドリフト層22の一方の主面上に、ドレイン電極28が形成され、ドリフト層22の他方の主面上にはN型不純物を比較的低濃度(N-)に含んだSiCのドリフト層21が形成されている。そして、ドリフト層21の上層部には、P型不純物を含んだ複数のボディ領域23が選択的に形成され、ボディ領域23の表面内には、N型不純物を比較的高濃度(N+)に含んだソース領域24が形成されている。
【0051】
そして、SiC基板の第1の主面、すなわちドリフト層21の一方の主面上には、隣り合うボディ領域23のソース領域24間上に渡るようにゲート絶縁膜25が形成され、ゲート絶縁膜25上にはゲート電極26が形成されている。ゲート絶縁膜25の直下のボディ領域23の表面内には、DMOSFETの動作時にチャネルが形成される。
【0052】
ゲート絶縁膜25は、ソース領域24間と各ソース領域24の端縁部上に形成されるが、ゲート絶縁膜25が形成されていないソース領域24上およびボディ領域23上にはソース電極27が形成されている。
【0053】
このような構成のDMOSFETにおいて、ソース電極27をシリサイドで形成するような場合に、本発明に係る製造方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
3 シリコン層、4 ニッケル層、5 窒化チタン層、6,6A ニッケルシリサイド層、10 金層、SB SiC基板。
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置の製造方法に関し、特に、炭化珪素基板の主面にオーミックコンタクトしたオーミック電極を有した炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炭化珪素(SiC)半導体層上に、例えばニッケル(Ni)などの電極を形成する際には、低抵抗のオーミックコンタクトを形成するために約800〜1000℃の熱処理を行うシリサイドプロセスを適用している。この熱処理を行うことニッケルとSiC中のシリコン(Si)とが反応し、ニッケルシリサイドが形成される。
【0003】
しかしながら、SiC上にオーミック電極を形成する従来の方法では、ニッケルシリサイド形成時にニッケル層とシリサイド層との界面に余分なカーボンが析出され、このカーボンがニッケル層の剥離を引き起こす原因となっていた。このカーボンの析出を低減する方法としては、例えば特許文献1に開示されるように、ニッケル層とSiC層との間にシリコン層を介在させて熱処理を行い、シリコン層のみをニッケル層と反応させカーボンの析出を防ぐ方法が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−106350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上説明した、ニッケル層とSiC層との間にシリコン層を介在させて熱処理を行うという従来の方法では、シリサイドプロセスは、不活性ガス雰囲気中で行うことになっているが、ウエハのサセプタなどの製造装置自身から酸素が放出され、僅かながらも不活性ガス雰囲気中に酸素が存在することとなる。その酸素によってニッケルシリサイドが酸化し絶縁膜であるシリコン酸化膜(SiO2)を形成する。その結果、ニッケルシリサイドの抵抗が部分的に増大し、オーミック抵抗のばらつきを引き起こし装置特性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は上記のような問題点を解決するためになされたもので、ニッケルシリサイド層の酸化を防止するとともに、良好なオーミックコンタクトを有したオーミック電極を備えた炭化珪素半導体装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第1の態様は、炭化珪素基板の第1の主面に設けられた第1の主電極と、前記炭化珪素基板の第2の主面に設けられた第2の主電極と、を備え、前記炭化珪素基板の厚み方向に主電流が流れる炭化珪素半導体装置の製造方法であって、前記炭化珪素基板を準備する工程(a)と、前記炭化珪素基板の第1の主面にシリコン層を形成する工程(b)と、前記シリコン層上にニッケル層および酸化保護層を前記シリコン層側から順に連続的に形成する工程(c)と、前記酸化保護層が形成された前記炭化珪素基板を所定の温度で熱処理して、前記ニッケル層と前記シリコン層とを反応させてニッケルシリサイド層を形成して前記第1の主電極を形成する工程(d)と、前記ニッケルシリサイド層の形成後、前記酸化保護層を除去する工程(e)と、前記酸化保護層の除去後、前記第2の主面上に前記第2の主電極を形成する工程(f)とを備えている。
【0008】
本発明に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第2の態様は、炭化珪素基板の第1の主面に設けられた第1の主電極と、前記炭化珪素基板の第2の主面に設けられた第2の主電極と、を備え、前記炭化珪素基板の厚み方向に主電流が流れる炭化珪素半導体装置の製造方法であって、前記炭化珪素基板を準備する工程(a)と、前記炭化珪素基板の第1の主面にシリコン層を形成する工程(b)と、前記シリコン層上にニッケル層、金層および酸化保護層を前記シリコン層側から順に形成する工程(c)と、前記酸化保護層が形成された前記炭化珪素基板を所定の温度で熱処理して、前記ニッケル層と前記シリコン層とを反応させてニッケルシリサイド層を形成して前記第1の主電極を形成する工程(d)と、前記ニッケルシリサイド層の形成後、前記酸化保護層を除去する工程(e)と、前記酸化保護層の除去後、前記第2の主面上に前記第2の主電極を形成する工程(f)とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第1の態様によれば、シリコン層上にニッケル層および酸化保護層を形成した後に熱処理して、ニッケル層とシリコン層とを反応させてニッケルシリサイド層を形成するので、ニッケル層とシリサイド層との界面にカーボンが析出することを防ぎつつ、酸化保護層によってニッケル層およびニッケルシリサイド層の酸化を防止することができる。ニッケルシリサイド層の酸化が回避されることで、オーミック電極のオーミック抵抗のばらつきが防止され、良好なオーミック特性を有したオーミック電極が得られる。また、ニッケル層と酸化保護層とを連続的に形成することで、熱処理のために炭化珪素基板を一旦、大気中に曝し、酸化保護層上に水分が吸着したまま熱処理したとしても、水分とニッケルやニッケルシリサイドとが反応することを防止でき、ニッケルシリサイド層の酸化を防止することができる。
【0010】
本発明に係る炭化珪素半導体装置の製造方法の第2の態様によれば、シリコン層上にニッケル層、金層および酸化保護層を形成した後に熱処理して、ニッケル層とシリコン層とを反応させてニッケルシリサイド層を形成するので、ニッケル層とシリサイド層との界面にカーボンが析出することを防ぎつつ、酸化保護層によってニッケル層およびニッケルシリサイド層の酸化を防止することができる。ニッケルシリサイド層の酸化が回避されることで、オーミック電極のオーミック抵抗のばらつきが防止され、良好なオーミック特性を有したオーミック電極が得られる。また、金層の上に酸化保護層を形成するので、酸化保護層をニッケル層上に直接形成する場合に比べてニッケル層がダメージを受けることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図3】本発明に係る実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図4】本発明に係る実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図5】本発明に係る実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図6】本発明に係る実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図7】本発明に係る実施の形態2の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図8】本発明に係る実施の形態2の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図9】本発明に係る実施の形態2の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図10】本発明に係る実施の形態2の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図11】本発明に係る実施の形態2の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図12】本発明に係る実施の形態2の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する断面図である。
【図13】本発明の他の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態として、SiCショットキーバリアダイオードの製造方法を例に挙げて説明する。
【0013】
<実施の形態1>
製造工程を順に示す断面図である図1〜図6を用いて、本発明に係る実施の形態1の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する。
【0014】
まず、図1に示す工程においてN型不純物を比較的低濃度(N-)に含んだ厚さ5〜15μmのドリフト層1と、N型不純物を比較的高濃度(N+)に含んだ厚さ300〜400μmのドリフト層2とで構成されるSiC基板SB(炭化珪素基板)を準備する。
【0015】
SiC基板SBは、例えば、N型不純物を比較的高濃度に含んだSiC基板の一方の主面上に、エピタキシャル成長によりドリフト層1を形成し、残るSiC基板の部分をドリフト層2とする方法によって得ることができる。
【0016】
次に、図2に示す工程において、SiC基板SBの第1の主面、すなわちドリフト層2の一方主面(ドリフト層1と接する側とは反対側の主面)上に例えば厚さ100nmのシリコン層3を、例えばシランガスをソースガスとして用いたCVD法により形成する。
【0017】
次に、図3に示す工程において、シリコン層3の一方主面(ドリフト層2と接する側とは反対側の主面)上に厚さ約100nmのニッケル層4を、スパッタリング法によって形成する。
【0018】
さらに、ニッケル層4の一方主面(シリコン層3と接する側とは反対側の主面)上に酸化保護層として厚さ300〜500nmの窒化チタン(TiN)層5を、スパッタリング法によって形成する。
【0019】
ここで、ニッケル層4および窒化チタン層5の形成においては、同じスパッタリング装置を使用し、ニッケル層4に続いて窒化チタン層5を形成する際には、ニッケル層4が形成されたSiC基板SBを大気中に曝すことなく、連続成膜を行うので、ニッケル層4に大気中の水分が吸着したり、酸化されることがない。
【0020】
なお、ここで使用するスパッタリング装置においては、スパッタターゲットを装置内の真空を破らずに交換できる構成を有しており、ニッケル層4を形成した後は、使用したニッケルターゲットを、チタンターゲットに交換して、窒素ガスを装置内に流しながらスパッタリングを行うことで窒化チタン層5を形成する。
【0021】
この後、図4に示す工程において、400〜700℃の高温アニール処理を5分間行うことで、シリコン層3とニッケル層4とが反応し、オーミック電極としてのニッケルシリサイド層6が形成される。
【0022】
なお、シリコン層3およびニッケル層4の厚さを同じとすることで、シリコン層3とニッケル層4とがほぼ全て反応して、ニッケルシリサイド層6が形成されることとなる。
【0023】
ここで、本発明では、先に説明したように、ニッケル層4の上に窒化チタン層5を真空を破らずに連続成膜しているので、高温アニール処理のためにSiC基板SBを一旦、大気中に曝し、窒化チタン層5上に水分が吸着したままアニールしたとしても、水分とニッケルやニッケルシリサイドとが反応することを防止でき、ニッケルシリサイド層6の酸化を防止することができる。
【0024】
このように、ドリフト層2上にシリコン層3を形成し、ニッケル層4上には窒化チタン層5を形成した後に高温アニール処理を行うことで、ニッケル層とシリサイド層との界面にカーボンが析出することを防ぎつつ、酸化しにくい窒化チタン層5が酸化保護層となってニッケル層4およびニッケルシリサイド層6の酸化を防止することができる。
【0025】
なお、窒化チタン層5の厚さを300〜500nmとすることで、下層の酸化を確実に防止することができる。
【0026】
ニッケルシリサイド層6の酸化が回避されることで、オーミック電極のオーミック抵抗のばらつきが防止され、良好なオーミック特性を有したオーミック電極が得られる。
【0027】
次に、図5に示す工程において、例えばスパッタエッチング(不活性ガスを用いた物理的なエッチング)で窒化チタン層5を除去する。なお、窒化チタン層5の除去にはドライエッチングを用いても良い。
【0028】
その後、SiC基板SBの第2の主面、ドリフト層1の一方主面(ドリフト層2と接する側とは反対側の主面)上にショットキー電極として厚さ200nmのチタン層7を真空蒸着法により形成し、さらにチタン層7上に配線電極として厚さ3μmのアルミニウム(Al)層8を形成する。なお、チタン層7の形成後には、ショットキーバリアの高さ(φB)を安定させるため、約600℃の熱処理を行うこともある。
【0029】
その後、図6に示す工程において、ニッケルシリサイド層6の一方主面(ドリフト層2と接する側とは反対側の主面)上に厚さ約700nmのニッケル層9を、例えば真空蒸着法により形成し、さらに、ニッケル層9上に、厚さ200nmの金(Au)層10を真空蒸着法により形成する。以上の工程を経て、コンタクト抵抗10-6Ωcm2台の良好なオーミック電極を有したSiCショットキーバリアダイオード100が完成する。
【0030】
<実施の形態2>
製造工程を順に示す断面図である図7〜図12を用いて、本発明に係る実施の形態2の炭化珪素半導体装置の製造方法を説明する。
【0031】
まず、図7に示す工程においてN型不純物を比較的低濃度(N-)に含んだ厚さ5〜15μmのドリフト層1と、N型不純物を比較的高濃度(N+)に含んだ厚さ300〜400μmのドリフト層2とで構成されるSiC基板SBを準備する。
【0032】
次に、図8に示す工程において、SiC基板SBの裏面、すなわちドリフト層2の一方主面(ドリフト層1と接する側とは反対側の主面)上に例えば厚さ100nmのシリコン層3を、例えばシランガスをソースガスとして用いたCVD法により形成する。
【0033】
その後、シリコン層3の一方主面(ドリフト層2と接する側とは反対側の主面)上に厚さ約700nmのニッケル層4Aを、スパッタリング法によって形成する。
【0034】
次に、図9に示す工程において、ニッケル層4Aの一方主面(シリコン層3と接する側とは反対側の主面)上に、真空蒸着法により厚さ約200nmの金層10を形成する。
【0035】
次に、図10に示す工程において、金層10の一方主面(ニッケル層4Aと接する側とは反対側の主面)上に、酸化保護層として厚さ300〜500nmの窒化チタン層5を、スパッタリング法によって形成する。
【0036】
この後、図11に示す工程において、400〜700℃の高温アニール処理を5分間行うことで、シリコン層3とニッケル層4Aとが反応し、オーミック電極としてのニッケルシリサイド層6が形成される。
【0037】
なお、ニッケル層4Aは約700nmの厚さがあり、厚さ約100nmのシリコン層3と全て反応しても、ニッケルシリサイド層6上には未反応のニッケル層4Aが残ることとなる。ここで、ニッケル層4Aを厚く形成して未反応のニッケル層4Aを残す理由は、ニッケルシリサイド層6と金層10とが直接に接触する構成を採ると接触抵抗が大きくなるので、ニッケル層4Aに金層10を接触させて接触抵抗を低減するためである。
【0038】
なお、ニッケル層4Aの厚さは700nmに限定されるものではなく、シリコン層3よりも厚く、シリコン層3と全て反応しても、未反応のニッケル層が残る厚さであれば良く、例えば、シリコン層3の2倍から7倍の厚さとすれば良い。
【0039】
その後、例えばスパッタエッチングで窒化チタン層5を除去する。なお、窒化チタン層5の除去にはドライエッチングを用いても良い。
【0040】
このように、ドリフト層2上にシリコン層3を形成し、ニッケル層4A上には金層10を介して窒化チタン層5を形成した後に高温アニール処理を行うことで、ニッケル層とシリサイド層との界面にカーボンが析出することを防ぎつつ、酸化しにくい窒化チタン層5が酸化保護層となってニッケル層4Aおよびニッケルシリサイド層6の酸化を防止することができる。
【0041】
また、金層10の上に窒化チタン層5を形成するので、窒化チタン層5をニッケル層4A上に直接形成する場合に比べてニッケル層4Aがダメージを受けることが防止される。すなわち、窒化チタン層5はスパッタリング法によって形成するので、窒化チタン層5をニッケル層4A上に直接形成する場合には、窒化チタン層5の形成時にニッケル層4Aがダメージを受けるとともに、窒化チタン層5を除去する場合のスパッタエッチングによってもニッケル層4Aがダメージを受けることになる。しかし、本実施の形態の製造方法では、ニッケル層4A上には金層10を介して窒化チタン層5を形成するので、ニッケル層4Aがダメージを受けることが回避される。
【0042】
また、金層10は真空蒸着法によりニッケル層4A上に形成されるので、ニッケル層4Aにダメージを与えることなく密着性良く形成することができる。
【0043】
次に、図12に示す工程において、ドリフト層1の一方主面(ドリフト層2と接する側とは反対側の主面)上にショットキー電極として厚さ200nmのチタン層7を真空蒸着法により形成し、さらにチタン層7上に配線電極として厚さ3μmのアルミニウム(Al)層8を形成する。なお、チタン層7の形成後には、ショットキーバリアの高さ(φB)を安定させるため、約600℃の熱処理を行うこともある。
【0044】
以上の工程を経て、コンタクト抵抗10-6Ωcm2台の良好なオーミック電極を有したSiCショットキーバリアダイオード200が完成する。
【0045】
<変形例>
以上説明した実施の形態1および2においては、ニッケルシリサイド層6の酸化を防止するための酸化保護層として窒化チタン層を使用する例について説明したが、これに限定されるものではなく、酸化開始温度が600℃以上で耐酸化性が非常に高い窒化タンタル(TaN)、窒化ジルコニウム(ZrN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ボロン(BN)、窒化クロム(CrN)および窒化ニオブ(NbN)などの窒化物を使用しても良い。
【0046】
また、硬度が高く、400℃以上の高温アニール時でもシリサイド表面の均一性を保つことができる炭化チタン(TiC)、炭化タングステン(WC)および炭化バナジウム(VC)などの炭化物を使用しても良い。
【0047】
また、SiCと熱膨張係数が近く、アニール時のウエハの反りを抑えることができるホウ化チタン(TiB)、ホウ化タングステン(WB2)およびホウ化ジルコニウム(ZrB)などのホウ化物などを使用しても良い。
【0048】
なお、上述した窒化物は、窒素雰囲気中で、各金属のスパッタターゲットをスパッタリングすることで形成でき、上述した炭化物は、メタンガス雰囲気中で、各金属のスパッタターゲットをスパッタリングすることで形成でき、上述したホウ化物は、イオンプレーティング法で形成することができる。
【0049】
<その他の適用例>
以上説明した実施の形態1および2においては、本発明に係る製造方法を、SiCショットキーバリアダイオードの製造に適用する例を説明したが、本発明に係る製造方法は、他のSiCデバイスの製造に適用できることは言うまでもなく、例えば、縦形二重拡散構造のMOSFET(DMOSFET)への適用も可能である。
【0050】
図13には、DMOSFETの構成の一例を示す。図13に示すDMOSFETは、SiC基板の第2の主面、すなわちN型不純物を比較的高濃度(N+)に含んだSiCのドリフト層22の一方の主面上に、ドレイン電極28が形成され、ドリフト層22の他方の主面上にはN型不純物を比較的低濃度(N-)に含んだSiCのドリフト層21が形成されている。そして、ドリフト層21の上層部には、P型不純物を含んだ複数のボディ領域23が選択的に形成され、ボディ領域23の表面内には、N型不純物を比較的高濃度(N+)に含んだソース領域24が形成されている。
【0051】
そして、SiC基板の第1の主面、すなわちドリフト層21の一方の主面上には、隣り合うボディ領域23のソース領域24間上に渡るようにゲート絶縁膜25が形成され、ゲート絶縁膜25上にはゲート電極26が形成されている。ゲート絶縁膜25の直下のボディ領域23の表面内には、DMOSFETの動作時にチャネルが形成される。
【0052】
ゲート絶縁膜25は、ソース領域24間と各ソース領域24の端縁部上に形成されるが、ゲート絶縁膜25が形成されていないソース領域24上およびボディ領域23上にはソース電極27が形成されている。
【0053】
このような構成のDMOSFETにおいて、ソース電極27をシリサイドで形成するような場合に、本発明に係る製造方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
3 シリコン層、4 ニッケル層、5 窒化チタン層、6,6A ニッケルシリサイド層、10 金層、SB SiC基板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素基板の第1の主面に設けられた第1の主電極と、前記炭化珪素基板の第2の主面に設けられた第2の主電極と、を備え、前記炭化珪素基板の厚み方向に主電流が流れる炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
(a)前記炭化珪素基板を準備する工程と、
(b)前記炭化珪素基板の第1の主面にシリコン層を形成する工程と、
(c)前記シリコン層上にニッケル層および酸化保護層を前記シリコン層側から順に連続的に形成する工程と、
(d)前記酸化保護層が形成された前記炭化珪素基板を所定の温度で熱処理して、前記ニッケル層と前記シリコン層とを反応させてニッケルシリサイド層を形成して前記第1の主電極を形成する工程と、
(e)前記ニッケルシリサイド層の形成後、前記酸化保護層を除去する工程と、
(f)前記酸化保護層の除去後、前記第2の主面上に前記第2の主電極を形成する工程と、を備える炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
炭化珪素基板の第1の主面に設けられた第1の主電極と、前記炭化珪素基板の第2の主面に設けられた第2の主電極と、を備え、前記炭化珪素基板の厚み方向に主電流が流れる炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
(a)前記炭化珪素基板を準備する工程と、
(b)前記炭化珪素基板の第1の主面にシリコン層を形成する工程と、
(c)前記シリコン層上にニッケル層、金層および酸化保護層を前記シリコン層側から順に形成する工程と、
(d)前記酸化保護層が形成された前記炭化珪素基板を所定の温度で熱処理して、前記ニッケル層と前記シリコン層とを反応させてニッケルシリサイド層を形成して前記第1の主電極を形成する工程と、
(e)前記ニッケルシリサイド層の形成後、前記酸化保護層を除去する工程と、
(f)前記酸化保護層の除去後、前記第2の主面上に前記第2の主電極を形成する工程と、を備える炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記工程(c)は、前記酸化保護層を窒化物で形成する工程を含む、請求項1または請求項2記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記窒化物を300〜500nmの厚さで形成する工程を含む、請求項3記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記窒化物として、TiN、TaN、ZrN、AlN、BN、CrNおよびNbNから選択される何れかの窒化物を形成する工程を含む、請求項3記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記工程(d)は、前記所定の温度として400〜700℃で前記炭化珪素基板を熱処理する工程を含む、請求項1または請求項2記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記工程(c)は、前記酸化保護層を炭化物で形成する工程を含む、請求項1または請求項2記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記炭化物として、TiC、WCおよびVCから選択される何れかの炭化物を形成する工程を含む、請求項7記載の炭化珪素半導体装置の製造方法
【請求項9】
前記工程(c)は、前記酸化保護層をホウ化物で形成する工程を含む、請求項1または請求項2記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記ホウ化物として、TiB、WB2およびZrBから選択される何れかのホウ化物を形成する工程を含む、請求項9記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記工程(d)は、
前記ニッケル層を前記シリコン層と同程度の厚さに形成する工程を含む、請求項1記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記工程(d)は、
前記ニッケル層を前記シリコン層の2倍〜7倍の厚さに形成する工程を含む、請求項1記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記工程(a)は、
半導体不純物を比較的高濃度に含んだ、第1の炭化珪素ドリフト層と、
前記半導体不純物を比較的低濃度に含んだ、第2の炭化珪素ドリフト層と、が積層されて構成される前記炭化珪素基板を準備する工程を含み、
前記第1の主面は、前記第1の炭化珪素ドリフト層の前記第2の炭化珪素ドリフト層と接する側とは反対側の主面である、請求項1または請求項2記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記工程(a)は、
半導体不純物を比較的高濃度に含んだ、第1の炭化珪素ドリフト層と、
前記半導体不純物を比較的低濃度に含んだ、第2の炭化珪素ドリフト層と、が積層されて構成される前記炭化珪素基板を準備する工程を含み、
前記第1の主面は、前記第2の炭化珪素ドリフト層の前記第1の炭化珪素ドリフト層と接する側とは反対側の主面である、請求項1または請求項2記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項1】
炭化珪素基板の第1の主面に設けられた第1の主電極と、前記炭化珪素基板の第2の主面に設けられた第2の主電極と、を備え、前記炭化珪素基板の厚み方向に主電流が流れる炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
(a)前記炭化珪素基板を準備する工程と、
(b)前記炭化珪素基板の第1の主面にシリコン層を形成する工程と、
(c)前記シリコン層上にニッケル層および酸化保護層を前記シリコン層側から順に連続的に形成する工程と、
(d)前記酸化保護層が形成された前記炭化珪素基板を所定の温度で熱処理して、前記ニッケル層と前記シリコン層とを反応させてニッケルシリサイド層を形成して前記第1の主電極を形成する工程と、
(e)前記ニッケルシリサイド層の形成後、前記酸化保護層を除去する工程と、
(f)前記酸化保護層の除去後、前記第2の主面上に前記第2の主電極を形成する工程と、を備える炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項2】
炭化珪素基板の第1の主面に設けられた第1の主電極と、前記炭化珪素基板の第2の主面に設けられた第2の主電極と、を備え、前記炭化珪素基板の厚み方向に主電流が流れる炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
(a)前記炭化珪素基板を準備する工程と、
(b)前記炭化珪素基板の第1の主面にシリコン層を形成する工程と、
(c)前記シリコン層上にニッケル層、金層および酸化保護層を前記シリコン層側から順に形成する工程と、
(d)前記酸化保護層が形成された前記炭化珪素基板を所定の温度で熱処理して、前記ニッケル層と前記シリコン層とを反応させてニッケルシリサイド層を形成して前記第1の主電極を形成する工程と、
(e)前記ニッケルシリサイド層の形成後、前記酸化保護層を除去する工程と、
(f)前記酸化保護層の除去後、前記第2の主面上に前記第2の主電極を形成する工程と、を備える炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記工程(c)は、前記酸化保護層を窒化物で形成する工程を含む、請求項1または請求項2記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記窒化物を300〜500nmの厚さで形成する工程を含む、請求項3記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記窒化物として、TiN、TaN、ZrN、AlN、BN、CrNおよびNbNから選択される何れかの窒化物を形成する工程を含む、請求項3記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記工程(d)は、前記所定の温度として400〜700℃で前記炭化珪素基板を熱処理する工程を含む、請求項1または請求項2記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記工程(c)は、前記酸化保護層を炭化物で形成する工程を含む、請求項1または請求項2記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記炭化物として、TiC、WCおよびVCから選択される何れかの炭化物を形成する工程を含む、請求項7記載の炭化珪素半導体装置の製造方法
【請求項9】
前記工程(c)は、前記酸化保護層をホウ化物で形成する工程を含む、請求項1または請求項2記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記ホウ化物として、TiB、WB2およびZrBから選択される何れかのホウ化物を形成する工程を含む、請求項9記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記工程(d)は、
前記ニッケル層を前記シリコン層と同程度の厚さに形成する工程を含む、請求項1記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記工程(d)は、
前記ニッケル層を前記シリコン層の2倍〜7倍の厚さに形成する工程を含む、請求項1記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記工程(a)は、
半導体不純物を比較的高濃度に含んだ、第1の炭化珪素ドリフト層と、
前記半導体不純物を比較的低濃度に含んだ、第2の炭化珪素ドリフト層と、が積層されて構成される前記炭化珪素基板を準備する工程を含み、
前記第1の主面は、前記第1の炭化珪素ドリフト層の前記第2の炭化珪素ドリフト層と接する側とは反対側の主面である、請求項1または請求項2記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記工程(a)は、
半導体不純物を比較的高濃度に含んだ、第1の炭化珪素ドリフト層と、
前記半導体不純物を比較的低濃度に含んだ、第2の炭化珪素ドリフト層と、が積層されて構成される前記炭化珪素基板を準備する工程を含み、
前記第1の主面は、前記第2の炭化珪素ドリフト層の前記第1の炭化珪素ドリフト層と接する側とは反対側の主面である、請求項1または請求項2記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−146622(P2011−146622A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7924(P2010−7924)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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