説明

炭窒酸化チタンコーティングが施された切削インサートおよびその製造方法

【課題】炭窒酸化チタンコーティングが施された切削インサートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】コーティングされた切削インサートの製造方法、およびコーティングされた切削インサートは、表面を有する基材を提供するステップと、炭窒酸化チタンのCVDコーティング層を被覆するステップとを含む。炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するためのガス状混合物は、窒素、メタン、塩化水素、四塩化チタン、アセトニトリル、一酸化炭素および水素の組成物を有する。炭窒酸化チタンコーティング層は、2次元平面図で測定すると、平均長が約1.0μmより大きく、平均幅が約0.2μmより大きく、平均アスペクト比が約2.0より大きい炭窒酸化チタンウィスカを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティングスキームを有するコーティングされた切削インサート、および該切削インサートを製造する方法に関し、コーティングスキームは炭窒酸化チタン(titanium oxycarbonitride)のコーティング層を含む。より具体的には、本発明は、コーティングスキームを有するコーティングされた切削インサート(基材は、多結晶立方晶窒化ホウ素(PcBN)であってもよい)、および該切削インサートを製造する方法に関し、コーティングスキームは、アセトニトリルを含むガス状混合物、特にガス状混合物の約0.15モル%以下の量のアセトニトリルを含むガス状混合物から、化学蒸着法(CVD)によって被覆した炭窒酸化チタンコーティング層を含む。さらに、本発明は、CVDによって施される炭窒酸化チタンコーティング層を含むコーティングスキームを有するコーティングされた切削インサート(基材は、多結晶立方晶窒化ホウ素(PcBN)であってもよい)であって、炭窒酸化チタンウィスカが、後述する技法に従って2次元平面図で測定すると、平均長が約1.0μmより大きく、平均幅が約0.2μmより大きく、平均アスペクト比が約2.0をより大きいコーティングされた切削インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、CVDによりコーティング層を被覆するために、ガス状混合物においてアセトニトリル(CHCN)が使用されてきた。ゲイツ・ジュニア(Gates,Jr.)らの米国特許第7,455,918号は、炭窒酸化チタンを含む複数の層を含む改質層の被覆に使用することができる、アセトニトリルを含む複数のガス状組成物を列挙している(第6欄、第48行目〜第67行目を参照)。具体例が示されているが、水素、窒素、四塩化チタンおよび一酸化炭素のガス状混合物における、アセトニトリルの体積は開示されていない(米国特許第7,455,918号の表5および表6)。住友電気工業株式会社の欧州特許第1413648号は、CHCNを他のガスとともに使用して、場合によってはTiOCNであってもよい、柱状構造を生成することを示すようだ(第3頁、第48行目〜第4頁、第5行目を参照)。他のガスには、VCl、ZrCl、TiCl、H、N、Ar、COおよびCOから選択されるものが含まれるようだ。ガス状混合物にはHOの存在が必要であるようだ。第8頁の表Iには、TiCNOコーティング層を形成するために0.3体積%〜2.0体積%のアセトニトリルを使用する例が示されている。
【0003】
しばらくの間、アセトニトリルは、CVDによって炭窒化チタンコーティング層を他のコーティング層と同様に被覆するために用いられるガス状混合物の一部であった。これに関して、アンダーコッファー(Undercoffer)の(ケンナメタル・インコーポレイテッドに譲渡された)国際公開第2000/052224号は、アセトニトリルを(たとえばTiClおよびHなどの他のガスとともに)使用して、炭窒化チタンを被覆することを明らかに開示しており、それは、国際公開第2000/052224号の焦点であるようだ(第2頁、第12行目〜第3頁、第11行目)。国際公開第2000/052224号は、ガス状混合物にCOまたはCOを追加することにより、炭窒酸化チタン(TiOCN)を含む他のチタン含有コーティングを生成することができることを記載している(第11頁、第4行目〜第12行目)。
【0004】
大森らの米国特許出願公開第2007/0298280号は、アセトニトリルを使用して炭窒化チタンコーティング層を被覆することを開示する。アセトニトリルを使用して、CVDにより炭窒酸化チタンコーティング層を被覆することに関しての一般的記載を含む(段落[0057]〜[0060]を参照)。児玉らの欧州特許出願公開第1138800号は、炭窒酸化チタンを含むハードコーティングの生成においてエタンを用いることに焦点を当てている。しかしながら、このプロセスにおいてはエタンの代わりにアセトニトリルを使用することができると記載されている(段落[0021」〜[0024]を参照)。
【0005】
平川らの欧州特許出願公開第1160353号は、ガス状混合物におけるCHCN濃度がTiCN濃度に影響を与える要素のうちの1つである、濃度勾配を有するTiCN層を開示している。実施例では、TiOCN層には、ガス状混合物の成分としてCHCNが使用されていない。
【0006】
ルッピ(Ruppi)の米国特許出願公開第2006/0115662号は、CHCNを使用して、炭窒酸化チタンアルミニウムコーティングの「接着」層を作製することを開示する(表Iおよび表IIを参照)。ゾットケ(Sottke)らの米国特許出願公開第2006/0257689号は、Tiが少なくともある程度ZrまたはHfで置き換えられているTiOCNであってもよい中間層の被覆において、アセトニトリル(0.5vol%〜2vol%)を使用することを開示する。ルッピ(Ruppi)の米国特許第7,192,660号は、CHCNを使用して、x、uおよびvが0より大きく、y、zおよびwのうちの少なくとも1つが0より大きい、(Ti,Al,X)(C,O,N)コーティング層を生成することを示唆する開示を含む(第5欄、第53行目〜第63行目を参照)。
【0007】
以下の特許文献、すなわち、森口らの欧州特許第0732423号、加藤らの欧州特許第1188504号、市川らの欧州特許出願公開第0900860号、吉村らの米国特許第5,681,651号、内野らの米国特許第5,915,162号、ホルツシュー(Hlozschuh)の米国特許第6,436,519号、三菱マテリアルの欧州特許第0685572号、ケンナメタル・インコーポレイテッドの欧州特許第1157143号、三菱マテリアルの欧州特許第0709484号では、ガス状混合物にアセトニトリルを使用して炭窒化チタンコーティング層を被覆している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,455,918号
【特許文献2】欧州特許第1413648号
【特許文献3】国際公開第2000/052224号
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0298280号
【特許文献5】欧州特許出願公開第1138800号
【特許文献6】欧州特許出願公開第1160353号
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0115662号
【特許文献8】米国特許出願公開第2006/0257689号
【特許文献9】米国特許第7,192,660号
【特許文献10】欧州特許第0732423号
【特許文献11】欧州特許第1188504号
【特許文献12】欧州特許出願公開第0900860号
【特許文献13】米国特許第5,681,651号
【特許文献14】米国特許第5,915,162号
【特許文献15】米国特許第6,436,519号
【特許文献16】欧州特許第0685572号
【特許文献17】欧州特許第1157143号
【特許文献18】欧州特許第0709484号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
基材へのコーティングスキームの密着性は、コーティングされた切削インサートにとって重要な特徴である。密着性が向上したコーティングスキームは、性能に有益である。したがって、基材に対するコーティングスキームの密着性が向上したコーティングされた切削インサートを提供することが非常に望ましい。
【0010】
コーティングされた切削インサートで用いられるいくつかのコーティングスキームでは、アルミナコーティング層が、接着層を介して中温度(moderate temperature)炭窒化チタン(MT−TiCN)に接合されている。本出願人らは、特定の寸法およびアスペクト比を有する炭窒酸化チタンの細長いウィスカを有する炭窒酸化コーティング層を接着層として使用することにより、炭窒化チタンの接着層に比較してアルミナコーティング層の密着性が向上することを見出した。したがって、密着性の向上をもたらす炭窒酸化チタンを含むコーティングスキームを有するコーティングされた切削インサートを提供することが非常に望ましい。さらに、密着性の向上をもたらす炭窒酸化チタンを含むコーティングスキームを有するコーティングされた切削インサートであって、炭窒酸化チタンウィスカが、密着性の向上を促進する特定の寸法およびアスペクト比を有している、切削インサートを提供することが非常に望ましい。
【0011】
炭窒酸化チタンウィスカが、後述する技法に従って2次元平面図で測定すると、平均長が約1.0μmより大きく、平均幅が約0.2μmより大きく、平均アスペクト比が約2.0より大きい炭窒酸化チタンコーティング層を達成するために、本出願人らは、炭窒酸化チタンコーティング層の被覆に用いるガス状混合物において、アセトニトリルの量を減らして使用した。本出願人らは、ガス状混合物におけるアセトニトリルの最大量が、ガス状混合物の約0.15モル%を超えるべきではないことを見出した。したがって、炭窒酸化チタンコーティング層を含むコーティングスキームを有するコーティングされた切削インサートであって、炭窒酸化チタンコーティング層の被覆に用いられるガス状混合物におけるアセトニトリル含有量が少ない(すなわち、ガス状混合物の約0.15モル%以下である)、コーティングされた切削インサートを提供することが非常に望ましい。
【0012】
本出願人らは、より低いCVD被覆温度において、アルミナコーティング層の密着性を向上させる炭窒酸化チタン接着層に対して利点があることを見出した。これは、多結晶立方晶窒化ホウ素(PcBN)の基材上に炭窒酸化チタン層をCVD被覆する場合に特に当てはまる。PcBN基材は、非常に高い被覆温度では、炭窒酸化チタン層のCVD被覆時に劣化する可能性がある。より低い被覆温度とは、約1000℃未満である。ある代替態様では、CVD被覆温度は約800℃〜約950℃である。別の代替態様では、CVD被覆温度は約895℃〜約925℃である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ある形態では、本発明は、コーティングされた切削インサートを製造する方法であって、表面を有する基材を提供するステップ、および化学蒸着法により、約5モル%〜約40モル%の量で存在する窒素と、約0.5モル%〜約8.0モル%の量で存在するメタンと、所望により最大約5.0モル%の量で存在してもよい塩化水素と、約0.2モル%〜約3.0モル%の量で存在する四塩化チタンと、約0.02モル%〜約0.15モル%の量で存在するアセトニトリルと、約0.4モル%〜約2.0モル%の量で存在する一酸化炭素と、約41.85モル%〜約93.88モル%の量で存在する水素とを含むガス状混合物から炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するステップを含む方法である。
【0014】
さらに別の形態では、本発明は、表面を有する基材と、基材の表面上のコーティングスキームとを含む、コーティングされた切削インサートである。コーティングスキームは、炭窒酸化チタンコーティング層を含み、炭窒酸化チタンは、2次元平面図で測定すると、平均長が約1.0μmより大きく、平均幅が約0.2μmより大きく、平均アスペクト比が約2.0より大きい炭窒酸化チタンウィスカを含む。
【0015】
別の形態では、本発明は、表面を有する基材を提供するステップ、および化学蒸着法により、約5モル%〜約40モル%の量で存在する窒素と、約0.5モル%〜約8.0モル%の量で存在するメタンと、所望により最大約5.0モル%の量で存在してもよい塩化水素と、約0.2モル%〜約3.0モル%の量で存在する四塩化チタンと、約0.02モル%〜約0.15モル%の量で存在するアセトニトリルと、約0.4モル%〜約2.0モル%の量で存在する一酸化炭素と、約41.85モル%〜約93.88モル%の量で存在する水素とを含むガス状混合物から炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するステップを含むプロセスによって製造される、コーティングされた切削インサートである。
【0016】
以下は、この特許出願の一部を形成する図面の簡単な説明である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ガス状混合物にアセトニトリルを使用する炭窒酸化チタンのCVDで施されたコーティング層を含むコーティングスキームを有する切削インサートの具体的実施形態の等角図である。
【0018】
【図2】図1の切削インサートの基材とその上のコーティングスキームとを示す機械的概略断面図である。
【0019】
【図2A】基材上のコーティングスキームの別の具体的実施形態の機械的概略断面図である。
【0020】
【図3】基材上のコーティングスキームのさらに別の具体的実施形態の機械的概略断面図である。
【0021】
【図3A】基材上のコーティングスキームのさらに別の具体的実施形態の機械的概略断面図である。
【0022】
【図4】基材上のコーティングスキームの別の具体的実施形態の機械的概略断面図である。
【0023】
【図4A】基材上のコーティングスキームの別の具体的実施形態の機械的概略断面図である。
【0024】
【図5】基材上のコーティングスキームの別の具体的実施形態の機械的概略断面図である。
【0025】
【図5A】基材上のコーティングスキームの別の具体的実施形態の機械的概略断面図である。
【0026】
【図6】走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影された本発明の実施例1の炭窒酸化チタンコーティング層の表面の顕微鏡写真であり、顕微鏡写真の目盛りは10マイクロメートルである。
【0027】
【図7】走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影された従来技術の炭窒酸化チタンコーティング層の表面の1つの顕微鏡写真であり、顕微鏡写真の目盛りは5マイクロメートルである。
【0028】
【図8】走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影された本発明の実施例2の炭窒酸化チタンコーティング層の表面の顕微鏡写真であり、顕微鏡写真の目盛りは5マイクロメートルである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、コーティングスキームを有し、基材を有するコーティングされた切削インサート、およびコーティングスキームを有するコーティングされた切削インサートを製造する方法に関する。コーティングスキームは、化学蒸着法(CVD)によりガス状混合物から被覆された炭窒酸化チタンコーティング層を含む。例示的な基材の1つには、PcBN基材がある。後述するように、本出願人らは、本発明のプロセスによって基材の表面に被覆された炭窒酸化チタンウィスカのコーティング層に関連する利点(たとえば、コーティング密着性の向上)を見出した。これらの利点は、金属切削操作中の基材に対するコーティングスキームの密着性の向上に関する。
【0030】
ガス状混合物には、炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するために用いられるガス状混合物の約0.15モル%以下の量でアセトニトリルが含まれる。さらに、炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するために用いられるガス状混合物は、窒素、メタン、水素、(所望により)塩化水素、四塩化チタン、一酸化炭素、アセトニトリルおよび水素のガスを含む。
【0031】
炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するためのガス状混合物の組成に関し、1つの選択肢として、ガス状混合物は、約5モル%〜約40モル%の量で存在する窒素と、約0.5モル%〜約8.0モル%の量で存在するメタンと、所望により最大約5.0モル%の量で存在してもよい塩化水素と、約0.2モル%〜約3.0モル%の量で存在する四塩化チタンと、約0.02モル%〜約0.15モル%の量で存在するアセトニトリルと、約0.4モル%〜約2.0モル%の量で存在する一酸化炭素と、約41.85モル%〜約93.88モル%の量で存在する水素とを含む。
【0032】
炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するためのガス状混合物の組成についての別の選択肢として、組成は、約10モル%〜約35モル%の量で存在する窒素と、約1モル%〜約6.0モル%の量で存在するメタンと、所望により最大約4.0モル%の量で存在してもよい塩化水素と、約0.5モル%〜約2.5モル%の量で存在する四塩化チタンと、約0.02モル%〜約0.1モル%の量で存在するアセトニトリルと、約0.4モル%〜約1.8モル%の量で存在する一酸化炭素と、約50.6モル%〜約88.08モル%の量で存在する水素とを含む。炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するためのガス状混合物の組成ついての別の選択肢として、組成は、約15モル%〜約30モル%の量で存在する窒素と、約1モル%〜約5.0モル%の量で存在するメタンと、所望により最大約3.0モル%の量で存在してもよい塩化水素と、約0.5モル%〜約2.0モル%の量で存在する四塩化チタンと、約0.02モル%〜約0.08モル%の量で存在するアセトニトリルと、約0.40モル%〜約1.5モル%の量で存在する一酸化炭素と、約58.87モル%〜約83.08モル%の量で存在する水素とを含む。
【0033】
炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するためのガス状混合物の組成についての別の選択肢として、組成は、約25.4モル%の量で存在する窒素と、約1.7モル%の量で存在するメタンと、約1.4モル%の量で存在する塩化水素と、約0.7モル%の量で存在する四塩化チタンと、約0.03モル%の量で存在するアセトニトリルと、約0.6モル%の量で存在する一酸化炭素と、約70.2モル%の量で存在する水素とを含む。炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するためのガス状混合物の組成についてのさらに別の選択肢として、組成は、約26モル%〜約28モル%の量で存在する窒素と、約4モル%〜約5モル%の量で存在するメタンと、約1.6モル%〜約2.0モル%の量で存在する塩化水素と、約0.7モル%〜約1.0モル%の量で存在する四塩化チタンと、約0.04モル%〜約0.06モル%の量で存在するアセトニトリルと、約0.7モル%〜約1.1モル%の量で存在する一酸化炭素と、約62.84モル%〜約66.96モル%の量で存在する水素とを含む。炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するためのガス状混合物の組成についての別の選択肢として、組成は、約27モル%の量で存在する窒素と、約4.5モル%の量で存在するメタンと、約1.8モル%の量で存在する塩化水素と、約0.8モル%の量で存在する四塩化チタンと、約0.05モル%の量で存在するアセトニトリルと、約0.9モル%の量で存在する一酸化炭素と、約64.9モル%の量で存在する水素とを含む。
【0034】
炭窒酸化チタンコーティング層の特性に関して、Ti(O)の組成は以下のような範囲を有する。すなわち、xは約0.005〜約0.15の範囲であり、yは約0.3〜約0.8の範囲であり、zは約0.2〜約0.8の範囲である。代替形態として、xは約0.01〜約0.1の範囲であり、yは約0.3〜約0.6の範囲であり、zは約0.3〜約0.7の範囲である。炭窒酸化チタンは、ウィスカの形態をとる。この場合、用語「ウィスカ」は、炭窒酸化チタンの細長い単結晶形態を意味し、長さ対幅のアスペクト比は、基材表面に対して平行な平面図において約2より大きい。ある代替形態では、長さ対幅のアスペクト比は約4より大きい。さらに別の代替形態では、長さ対幅のアスペクト比は約6より大きい。
【0035】
長さおよび幅の測定を含む、長さ対幅のアスペクト比を測定する技法は、5,000倍の倍率で20マイクロメートル×24マイクロメートルの視野を使用した二次電子顕微鏡によるものである。視野に1つの線をランダムに引き、この線と交差する粒子を、それら粒子の長さおよび幅の測定に使用し、これらを使用してアスペクト比(アスペクト比=長さ/幅)を計算することができる。5枚の写真に対してこの手順を繰り返す。そして、交差する全粒子のアスペクト比を、最終アスペクト比として平均する。
【0036】
図面について、図1は、全体として20として示されるコーティングされた切削インサートを示す。コーティングされた切削インサート20はコーティングスキーム22の一部が欠けており、それにより基材24を露出させている。コーティングされた切削インサート20は、逃げ面28およびすくい面30を有している。逃げ面28とすくい面30との交差部(または接合部)に切れ刃32がある。本発明の範囲を、特定の幾何学形状のコーティングされた切削インサート20に限定する意図はない。本発明は、いかなる幾何学形状の切削インサートにも適用可能である。コーティングされた切削インサート20の典型的な用途は、被加工物から材料を除去すること、たとえば、被加工物のチップフォーミング機械加工である。
【0037】
チップフォーミング機械加工操作に関して、材料除去操作により、被加工物材料のチップが生成される。機械加工に関する刊行物により、この事実が立証されている。例えば、Moltrechtによる「機械工作実習(Machine Shop Practice)」(インダストリアル・プレス社、ニューヨーク、ニューヨーク州(1981))という本には、第199頁〜第204頁において、特にチップ形成、および異なる種類のチップ(すなわち、連続したチップ、不連続なチップ、セグメント状のチップ)の記述が提示されている。Moltrechtの第199頁〜第200頁には、(部分的に)以下のように書かれている。
切削工具は、最初に金属と接触すると、切れ刃前方の金属を圧縮する。工具が前進すると、切れ刃前方の金属は、内部がせん断されることになる状態まで応力が印加され、それにより金属の粒子が変形し、せん断面と呼ばれる面に沿って塑性的に流動し…切削される金属の種類が、スチールなどの延性があるものである場合、チップは連続したリボンで剥がれる…。
【0038】
Moltrecht、さらに、不連続なチップおよびセグメント状のチップの形成について記載している。別の例として、ASTE工具技術者ハンドブック(Tool Engineers Handbook)、(マグロウヒルブック社、ニューヨーク、ニューヨーク州(1949))の第302頁〜第315頁に見られる文章は、金属切削プロセスにおけるチップ形成について詳細に説明する。ASTEハンドブックの第303頁では、チップ生成と、旋削、フライス加工およびドリル加工などの機械加工操作とを明確に関連付けている。
【0039】
図2は、図1の切削インサートの基材24、および該基板上のコーティングスキーム(括弧22)を示す機械的概略断面図を示す。基材24は、切削インサートとして用いられるのに好適な多数の基材材料のうちのいずれであってもよい。例示的な基材としては、これらに限定されるものではないが、超硬合金(たとえば、炭化タングステン−コバルト材料)、セラミックス(たとえば、窒化ケイ素およびSiAlONセラミックス)、多結晶立方晶窒化ホウ素(PcBN)材料およびサーメット(たとえば炭化チタン系材料)が挙げられる。基材24は表面26を有している。
【0040】
基材24の表面26の上には、CVDによって窒化チタンコーティング層38が被覆されている。窒化チタンコーティング層38を被覆するためのガス状混合物は、通常(ガス状混合物に対する含有体積のモル%で)TiCl(0.93モル%)、N(18.08モル%)およびH(79.11モル%)を含む。窒化チタンコーティング層38のCVD被覆のための典型的な温度範囲には、約800℃〜約950℃が含まれる。窒化チタンコーティング層38のCVD被覆のための別の温度範囲には、約850℃〜約920℃が含まれる。窒化チタンコーティング層38のCVD被覆のための好ましい温度は、約890℃である。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な圧力範囲は、約60トル〜約380トルである。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の圧力範囲は、約80トル〜約150トルである。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な時間範囲は、約10分〜約60分である。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の時間範囲は、約20分〜約50分である。窒化チタンコーティング層38の厚さは約0.5マイクロメートルである。窒化チタンコーティング層の厚さの1つの範囲は、約0.1マイクロメートル〜約2マイクロメートルである。窒化チタンコーティング層の厚さの別の範囲は、約0.2マイクロメートル〜約1マイクロメートルである。
【0041】
窒化チタンの代わりに窒化チタン以外のコーティングを被覆してもよいことが理解されるべきである。この(窒化チタン以外の)中間コーティング層に対するコーティングには、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化ハフニウム、炭化ハフニウム、炭窒化ハフニウム、窒化ジルコニウム、炭化ジルコニウムおよび炭窒化ジルコニウムからなる群から選択される1種または複数種が含まれていてもよい。
【0042】
窒化チタンコーティング層38の上部には、MT−CVDによってMT−CVD炭窒化チタンコーティング層40が被覆されている。炭窒化チタンコーティング層40を被覆するためのガス状混合物は、通常(ガス状混合物に対する含有体積のモル%で)TiCl(0.99モル%)、N(18.96モル%)およびH(73.74モル%)、CHCN(0.34モル%)ならびにHCl(0.41モル%)を含む。炭窒化チタンコーティング層40のCVD被覆のための典型的な温度範囲には、約750℃〜約950℃が含まれる。炭窒化チタンコーティング層40のCVD被覆のための別の温度範囲には、約770℃〜約900℃が含まれる。炭窒化チタンコーティング層40のCVD被覆のための好ましい温度は、約890℃である。炭窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な圧力範囲は、約40トル〜約150トルである。炭窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の圧力範囲は、約40トル〜約100トルである。炭窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な時間範囲は、約60分〜約360分である。炭窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の時間範囲は、約60分〜約180分である。炭窒化チタンコーティング層40の厚さは約7マイクロメートルである。炭窒化チタンコーティング層40の厚さの1つの範囲は、約2マイクロメートル〜約12マイクロメートルである。炭窒化チタンコーティング層40の厚さの別の範囲は、約3マイクロメートル〜約9マイクロメートルである。
【0043】
炭窒化チタンの代わりに炭窒化チタン以外のコーティングを被覆してもよいということが理解されるべきである。この(炭窒化チタン以外の)中間コーティング層に対するコーティングには、炭化チタン、窒化チタン、窒化ハフニウム、炭化ハフニウム、炭窒化ハフニウム、窒化ジルコニウム、炭化ジルコニウムおよび炭窒化ジルコニウムからなる群から選択される1種または複数種が含まれていてもよい。
【0044】
炭窒化チタンコーティング層40の表面上には、CVDにより炭窒酸化チタンコーティング層44が被覆されている。炭窒酸化チタンコーティング層44を被覆するためのガス状混合物を表Bに示す。炭窒酸化チタンコーティング層44のCVD被覆のための典型的な温度範囲には、約800℃〜約950℃が含まれる。炭窒酸化チタンコーティング層44のCVD被覆のための別の温度範囲には、約850℃〜約920℃が含まれる。炭窒酸化チタンコーティング層44のCVD被覆のための好ましい温度は、約900℃である。炭窒酸化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な圧力範囲は、約60トル〜約500トルである。炭窒酸化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の圧力範囲は、約120トル〜約400トルである。したがって、炭窒酸化チタンコーティング層に対する被覆ステップのためのあるパラメータセットには、約800℃〜約950℃の温度、および約60トル〜約500トルの圧力が含まれる。炭窒酸化チタンコーティング層の被覆のための別のパラメータセットには、約895℃〜約925℃の温度、および約120トル〜約400トルの圧力が含まれる。
【0045】
炭窒酸化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な時間範囲は、約25分〜約120分である。炭窒酸化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の時間範囲は、約40分〜約90分である。炭窒酸化チタンコーティング層44の厚さは、約0.6マイクロメートル〜約0.7マイクロメートルである。炭窒酸化チタンコーティング層44の厚さの1つの範囲は、約0.3マイクロメートル〜約2マイクロメートルである。炭窒酸化チタンコーティング層44の厚さの別の範囲は、約0.5マイクロメートル〜約1.2マイクロメートルである。
【0046】
窒化チタンコーティング層と炭窒化チタンコーティング層との間に、介在コーティング層を被覆されてもよいことが理解されるべきである。さらに、介在コーティング層を、炭窒化チタンコーティング層と炭窒酸化チタンコーティング層との間に被覆してもよいことが理解されるべきである。介在コーティング層には、たとえば窒化チタン、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化ハフニウム、炭化ハフニウム、炭窒化ハフニウム、窒化ジルコニウム、炭化ジルコニウムおよび炭窒化ジルコニウムなど、多数の組成物のうちのいずれか1種または複数種が含まれていてもよい。
【0047】
炭窒酸化チタンコーティング層44の表面上には、CVDによってアルファ−アルミナコーティング層46が被覆されている。アルファ−アルミナコーティング層46を被覆するためのガス状混合物は、通常(ガス状混合物に対する含有体積のモル%で)AlCl(1.53モル%)、CO(9.18モル%)およびH(84.95モル%)、HS(0.13モル%)ならびにHCl(2.3モル%)を含む。アルファ−アルミナコーティング層46のCVD被覆のための典型的な温度範囲には、約800℃〜約950℃が含まれる。アルファ−アルミナコーティング層46のCVD被覆のための別の温度範囲には、約850℃〜約920℃が含まれる。アルファ−アルミナコーティング層46のCVD被覆のための好ましい温度は、約900℃である。アルファ−アルミナコーティング層のCVD被覆のための典型的な圧力範囲は、約40トル〜約150トルである。アルファ−アルミナコーティング層のCVD被覆のための別の圧力範囲は、約60トル〜約90トルである。アルファ−アルミナコーティング層のCVD被覆のための典型的な時間範囲は、約60分〜約600分である。アルファ−アルミナコーティング層のCVD被覆のための時間範囲は、約120分〜約360分である。アルファ−アルミナコーティング層46の厚さは約7マイクロメートルである。アルファ−アルミナコーティング層46の厚さの1つの範囲は、約1マイクロメートル〜約10マイクロメートルである。アルファ−アルミナコーティング層46の厚さの別の範囲は、約3マイクロメートル〜約8マイクロメートルである。
【0048】
図2Aは、基材24’上のコーティングスキーム22’の別の具体的実施形態20’を示す。コーティングスキーム22’は、コーティング層38’(窒化チタンコーティング層)、コーティング層40’(MT−CVD炭窒化チタンコーティング層)、コーティング層44’(炭窒酸化チタンコーティング層)およびコーティング層46’(アルファ−アルミナコーティング層)を含む。これらのコーティング層38’、40’、44’および46’は、図2に関連して上述したコーティング層38、40、44および46それぞれと本質的に同じである。基材24’は表面26’を有している。
【0049】
図2Aのコーティングスキーム22’は、最外窒化チタンコーティング層47をさらに含む。窒化チタンコーティング層を被覆するための処理パラメータに関して、窒化チタンコーティング層を被覆するためのガス状混合物は、通常(ガス状混合物に対する含有体積のモル%で)TiCl(0.93モル%)、N(18.08モル%)およびH(79.11モル%)を含む。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な温度範囲には、約800℃〜約950℃が含まれる。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の温度範囲には、約850℃〜約920℃が含まれる。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための好ましい温度は、約890℃である。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な圧力範囲は、約60トル〜約380トルである。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の圧力範囲は、約80トル〜約150トルである。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な時間範囲は、約10分〜約60分である。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の時間範囲は、約20分〜約50分である。窒化チタンコーティング層の厚さは約0.5マイクロメートルである。窒化チタンコーティング層の厚さの1つの範囲は、約0.1マイクロメートル〜約2マイクロメートルである。窒化チタンコーティング層の厚さの別の範囲は、約0.2マイクロメートル〜約1マイクロメートルである。
【0050】
本出願人らは、アルミナコーティング層上での窒化チタン上層の使用よりもむしろ、炭窒酸化チタン/窒化チタン、窒化チタン/炭窒化チタン/窒化チタン、炭窒酸化チタン/炭窒化チタン/窒化チタン、複数の炭窒酸化チタン/窒化チタンの層、および複数の炭窒酸化チタン/炭窒化チタンの層のいずれかの上層コーティングスキームが使用される可能性があることを予期している。これらのさまざまなコーティング材料に対するプロセスパラメータは、これらの材料について本明細書において上述したものと同じである。
【0051】
図3は、基材52を含む、全体として50として示されるコーティングされた切削インサートの第2実施形態の機械的概略断面図である。基材52は、切削インサートとして用いられるのに好適な多数の基材材料のうちのいずれであってもよい。基材52は表面54を有する。基材表面54は、その表面表にコーティングスキーム56を有する。コーティングスキーム56は、基材52の表面54上にCVDによって被覆された窒化チタンのベースコーティング層58を含む。窒化チタンコーティング層58を被覆するためのガス状混合物は、通常、(ガス状混合物に対する含有体積のモル%で)TiCl(0.93モル%)、N(18.08モル%)およびH(79.11モル%)を含む。窒化チタンコーティング層58のCVD被覆のための典型的な温度範囲には、約800℃〜約950℃が含まれる。窒化チタンコーティング層58のCVD被覆のための別の温度範囲には、約850℃〜約920℃が含まれる。窒化チタンコーティング層58のCVD被覆のための好ましい温度は、約890℃である。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な圧力範囲は、約60トル〜約380トルのである。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の圧力範囲は、約80トル〜約150トルである。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な時間範囲は、約10分〜約60分である。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の時間範囲は、約20分〜約50分である。窒化チタンコーティング層58の厚さは約0.5マイクロメートルである。窒化チタンコーティング層の厚さの1つの範囲は、約0.1マイクロメートル〜約2マイクロメートルである。窒化チタンコーティング層の厚さの別の範囲は、約0.2マイクロメートル〜約1マイクロメートルである。
【0052】
コーティングスキーム56の次の領域(括弧60を参照)は、複数のコーティング層の組(括弧62を参照)を含む。各コーティング層の組62は、炭窒化チタンコーティング層66と炭窒酸化チタンコーティング層68とを含む。この実施形態では、3つのコーティング層の組62が存在している。しかしながら、本発明を、任意の具体的な数のコーティング層の組62に限定する意図はない。被覆コーティング層の組62のCVD被覆のための典型的な温度範囲には、約750℃〜約950℃が含まれる。コーティング層の組62のCVD被覆のための温度範囲には、約770℃〜約900℃が含まれる。コーティング層の組62のCVD被覆のための好ましい温度は、約890℃である。コーティング層の組のCVD被覆のための典型的な圧力範囲は、約40トル〜約500トルである。コーティング層の組のCVD被覆のための別の圧力範囲は、約60トル〜約400トルである。コーティング層の組のCVD被覆のための典型的な時間範囲は、約10分〜約150分である。コーティング層の組のCVD被覆のための別の時間範囲は、約40分〜約120分である。
【0053】
各コーティング層の組62に対して、1つのコーティング層の組62の厚さは約1.5マイクロメートルである。1つのコーティング層の組62の厚さの1つの範囲は、約0.2マイクロメートル〜約4マイクロメートルである。1つのコーティング層の組62の厚さの別の範囲は、約0.5マイクロメートル〜約2マイクロメートルである。
【0054】
炭窒化チタンコーティング層66の場合、炭窒化チタンコーティング層66の厚さは約1.2マイクロメートルである。炭窒化チタンコーティング層の厚さの1つの範囲は、約0.2マイクロメートル〜約4マイクロメートルである。炭窒化チタンコーティング層の厚さの別の範囲は、約0.5マイクロメートル〜約2マイクロメートルである。炭窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な圧力範囲は、約40トル〜約150トルである。炭窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の圧力範囲は、約40トル〜約100トルである。炭窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な時間範囲は、約10分〜約100分である。炭窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の時間範囲は、約20分〜約60分である。
【0055】
炭窒酸化チタンコーティング層68の場合、炭窒酸化チタンコーティング層68の厚さは約0.3マイクロメートルである。炭窒酸化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な圧力範囲は、約60トル〜約500トルである。炭窒酸化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の圧力範囲は、約120トル〜約400トルである。炭窒酸化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な時間範囲は、約10分〜約150分である。炭窒酸化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の時間範囲は、約20分〜約80分である。炭窒酸化チタンコーティング層の厚さの1つの範囲は、約0.1マイクロメートル〜約2マイクロメートルである。炭窒酸化チタンコーティング層の厚さの別の範囲は、約0.2マイクロメートル〜約1マイクロメートルである。
【0056】
最も外側のコーティング層の組62の表面上には、CVDによってアルファ−アルミナコーティング層72が被覆されている。アルファ−アルミナコーティング層72を被覆するためのガス状混合物は、通常、(ガス状混合物に対する含有体積のモル%で)AlCl(1.53モル%)、CO(9.18モル%)およびH(84.95モル%)、HS(0.13モル%)ならびにHCl(2.3モル%)を含む。アルファ−アルミナコーティング層72のCVD被覆のための典型的な温度範囲には、約800℃〜約950℃が含まれる。アルファ−アルミナコーティング層72のCVD被覆のための別の温度範囲には、約850℃〜約920℃が含まれる。アルファ−アルミナコーティング層72のCVD被覆のための好ましい温度は、約900℃である。アルファ−アルミナコーティング層のCVD被覆のための典型的な圧力範囲は、約40トル〜約150トルである。アルファ−アルミナコーティング層のCVD被覆のための別の圧力範囲は、約60トル〜約90トルである。アルファ−アルミナコーティング層のCVD被覆のための典型的な時間範囲は、約60分〜約600分である。アルファ−アルミナコーティング層のCVD被覆のための別の時間範囲は、約120分〜約360分である。アルファ−アルミナコーティング層72の厚さは約7マイクロメートルである。アルファ−アルミナコーティング層72の厚さの1つの範囲は、約1マイクロメートル〜約10マイクロメートルである。アルファ−アルミナコーティング層72の厚さの別の範囲は、約3マイクロメートル〜約8マイクロメートルである。
【0057】
図3Aは、基材52’上のコーティングスキーム56’の別の具体的実施形態50’を示す。コーティングスキーム56’は、窒化チタンのベースコーティング層58’を含む。コーティングスキーム56’は、複数のコーティング層の組(括弧62’を参照)を含む領域(括弧60’)をさらに含む。各コーティング層の組62’は、炭窒化チタンコーティング層66’と、炭窒酸化チタンコーティング層68’とを含む。3つのコーティング層の組を示すが、コーティングの組の数をいかなる具体的な数にも限定する意図はない。コーティングスキーム56’は、最も外側のコーティング層の組62’の表面上に被覆されたアルファ−アルミナコーティング層72’をさらに含む。コーティング層58’、コーティング層62’、コーティング層66’、コーティング層68’およびコーティング層72’は、図3に関連して説明したコーティング層58、コーティング層62、コーティング層66、コーティング層68およびコーティング層72と本質的に同じである。
【0058】
図3Aのコーティングスキーム56’は、最外窒化チタンコーティング層78をさらに含む。窒化チタンコーティング層を被覆するための処理パラメータに関して、窒化チタンコーティング層を被覆するガス状混合物は、通常、(ガス状混合物に対する含有体積のモル%で)TiCl(0.93モル%)、N(18.08モル%)およびH(79.11モル%)を含む。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な温度範囲には、約800℃〜約950℃が含まれる。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の温度範囲には、約850℃〜約920℃が含まれる。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための好ましい温度は、約890℃である。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な圧力範囲は、約60トル〜約380トルである。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の圧力範囲は、約80トル〜約150トルである。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な時間範囲は、約10分〜約60分である。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の時間範囲は、約20分〜約50分である。窒化チタンコーティング層の厚さは約0.5マイクロメートルである。窒化チタンコーティング層の厚さの1つの範囲は、約0.1マイクロメートル〜約2マイクロメートルである。窒化チタンコーティング層の厚さの別の範囲は、約0.2マイクロメートル〜約1マイクロメートルである。
【0059】
本出願人らは、アルミナコーティング層上での窒化チタン上層の使用よりもむしろ、炭窒酸化チタン/窒化チタン、窒化チタン/炭窒化チタン/窒化チタン、炭窒酸化チタン/炭窒化チタン/窒化チタン、複数の炭窒酸化チタン/窒化チタンの層、および複数の炭窒酸化チタン/炭窒化チタンの層のいずれかの上層コーティングスキームが使用される可能性があることを予期している。これらのさまざまなコーティング材料に対するプロセスパラメータは、これらの材料に対して本明細書において上述したものと同じである。
【0060】
図4は、基材102上のコーティングスキーム107のさらに別の具体的実施形態100を示す。コーティングスキーム107は、窒化チタンのベースコーティング層104を含み、コーティング層104を被覆するための処理パラメータは、図2のコーティング層38を被覆するために用いられるものと本質的に同じである。コーティングスキーム107には、窒化チタンコーティング層104の上にあるMT−CVD炭窒化チタンコーティング層106をさらに含む。コーティング層106を被覆するための処理パラメータは、図2のMT−CVD炭窒化チタン40を被覆するために用いられるものと本質的に同じである。最終的に、コーティングスキーム107は、炭窒酸化チタンコーティング層とアルファ−アルミナコーティング層との組を複数含む領域108を含む。炭窒酸化チタンの層を被覆するために用いられる処理パラメータは、図2の炭窒酸化チタンコーティング層44を被覆するために用いられるものと本質的に同じである。アルファ−アルミナの層を被覆するために用いられる処理パラメータは、図2のアルファ−アルミナコーティング層46を被覆するために用いられるものと本質的に同じである。
【0061】
図4Aは、基材102’上のコーティングスキーム107’のさらに別の具体的実施形態100’を示す。コーティングスキーム107’は、窒化チタンのベースコーティング層104’、炭窒化チタンのMT−CVDコーティング層106’、および炭窒酸化チタンコーティング層とアルファ−アルミナコーティング層との組を複数含む領域108’とを有している。コーティング層104’およびコーティング層106’ならびに領域108’は、図4のコーティング層104およびコーティング層106ならびにコーティング領域108と本質的に同じである。コーティングスキーム107’は、最外窒化チタンコーティング層110をさらに含む。窒化チタンコーティング層を被覆するための処理パラメータに関して、窒化チタンコーティング層を被覆するためのガス状混合物は、通常、(ガス状混合物に対する含有体積のモル%で)TiCl(0.93モル%)、N(18.08モル%)およびH(79.11モル%)を含む。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な温度範囲には、約800℃〜約950℃が含まれる。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の温度範囲には、約850℃〜約920℃が含まれる。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための好ましい温度は、約890℃である。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な圧力範囲は、約60トル〜約380トルである。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の圧力範囲は、約80トル〜約150トルである。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な時間範囲は、約10分〜約60分である。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の時間範囲は、約20分〜約50分である。窒化チタンコーティング層の厚さは約0.5マイクロメートルである。窒化チタンコーティング層の厚さの1つの範囲は、約0.1マイクロメートル〜約2マイクロメートルである。窒化チタンコーティング層の厚さの別の範囲は、約0.2マイクロメートル〜約1マイクロメートルである。
【0062】
図5は、基材152上のコーティングスキーム159の具体的実施形態150を示す。コーティングスキーム159は、複数組のナノ層を含むベースコーティング領域154を含み、ナノ層の各層は厚さが100ナノメートル未満であり、ナノ層の組には、窒化チタンおよび炭窒化チタンが含まれる。代替形態では、ベースコーティング領域は複数組のナノ層を含むことができ、ナノ層は、炭窒酸化チタンおよび窒化チタンであってもよく、またはナノ層は、炭窒酸化チタンおよび炭窒化チタンであってもよい。コーティングスキーム159は、図2のMT−CVD炭窒化チタンコーティング層40を被覆するために用いられるような処理パラメータを用いて被覆した、MT−CVD炭窒化チタンコーティング層156をさらに含む。コーティングスキーム159は、MT−CVD炭窒化チタンコーティング層156上に炭窒酸化チタンコーティング層158をさらに含む。炭窒酸化チタンコーティング層158を被覆するために用いられる処理パラメータは、図2の炭窒酸化チタンコーティング層44を被覆するために用いられるものと本質的に同じである。最終的に、コーティングスキーム159は、最外アルファ−アルミナコーティング層160を含み、これは、図2のアルファ−アルミナコーティング層46を被覆するために用いられるものと本質的に同じである処理パラメータによって被覆される。
【0063】
図5Aは、基材152’上のコーティングスキーム159’のさらに別の具体的実施形態150’を示す。コーティングスキーム159’は、ベースコーティング領域154’と、MT−CVD炭窒化チタンコーティング層156’と、MT−CVD炭窒化チタンコーティング層156’上の炭窒酸化チタンコーティング層158’と、アルファ−アルミナコーティング層160とを含む。コーティング層154’、コーティング層156’、コーティング層158’およびコーティング層160’は、図5のコーティング層154、コーティング層156、コーティング層158およびコーティング層160それぞれと本質的に同じである。
【0064】
図5Aのコーティングスキーム159’は、最外窒化チタンコーティング層162をさらに含む。状況によっては、本出願人らは、ウェットブラスト法によって最外窒化チタンコーティング層を除去することを予期していることが理解されるべきである。これは、この実施形態、および最外窒化チタンコーティング層を含む先の実施形態のいずれにも適用可能である。一般に、窒化チタンをウェットブラストによりアルミナを露出させることにより、露出したアルミナ層の応力状態が、初期引張応力状態から圧縮応力状態に変化する。ペンシルバニア州、ラトローブ、15650のケンナメタル・インコーポレイテッドに譲渡されたSottkeらの米国特許出願公開第2011/0107679号は、最外コーティング層は窒化チタンではないが、アルミナコーティング層上の最外コーティング層のウェットブラストを示している。
【0065】
窒化チタンコーティング層を被覆するための処理パラメータに関して、窒化チタンコーティング層を被覆するためのガス状混合物は、通常、(ガス状混合物に対する含有体積のモル%で)TiCl(0.93モル%)、N(18.08モル%)およびH(79.11モル%)を含む。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な温度範囲には、約800℃〜約950℃が含まれる。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の温度範囲には、約850℃〜約920℃が含まれる。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための好ましい温度は、約890℃である。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な圧力範囲は、約60トル〜約380トルである。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の圧力範囲は、約80トル〜約150トルである。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための典型的な時間範囲は、約10分〜約60分である。窒化チタンコーティング層のCVD被覆のための別の時間範囲は、約20分〜約50分である。窒化チタンコーティング層の厚さは約0.5マイクロメートルである。窒化チタンコーティング層の厚さの1つの範囲は、約0.1マイクロメートル〜約2マイクロメートルである。窒化チタンコーティング層の厚さの別の範囲は、約0.2マイクロメートル〜約1マイクロメートルである。
【0066】
本出願人らは、アルミナコーティング層上での窒化チタン上層の使用よりもむしろ、炭窒酸化チタン/窒化チタン、窒化チタン/炭窒化チタン/窒化チタン、炭窒酸化チタン/炭窒化チタン/窒化チタン、複数の炭窒酸化チタン/窒化チタンの層、複数のおよび炭窒酸化チタン/炭窒化チタンの層のいずれかの上層コーティングスキームが使用される可能性があることを予期している。これらのさまざまなコーティング材料に対するプロセスパラメータは、これらの材料に対して本明細書において上述したものと同じである。
【0067】
本出願人らは、コーティングスキームが外側コーティング層を含んでもよいことをさらに予期している。外側コーティング層は、窒化チタン、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化ハフニウム、炭化ハフニウム、炭窒化ハフニウム、窒化ジルコニウム、炭化ジルコニウムおよび炭窒化ジルコニウムからなる群から選択される。外側コーティング層は、炭窒酸化チタンコーティングよりもさらに基材から離れている。
【実施例】
【0068】
炭窒酸化チタンコーティング層を含むコーティングスキームを有するコーティングされた切削インサートの2つの具体例を以下に示す。表Aは、窒化チタンのベースコーティング層、炭窒化チタンのMT−CVDコーティング層、および炭窒酸化チタンコーティング層のCVD被覆のためのパラメータを示す。
【表1】

【0069】
図6は、走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影された本発明の実施例1の炭窒酸化チタンコーティング層の表面の顕微鏡写真であり、この顕微鏡写真の目盛りは10マイクロメートルである。顕微鏡写真(図6)を精査すると、平均長さが1.85μm、平均幅が0.94μm、および平均アスペクト比が2.05であるウィスカ構造が形成されていることが分かる。これらの平均値は、以下の技法に従って確定した。すなわち、視野に1本の線をランダムに引き、この線が交差する粒子を、それらの長さおよび幅の測定に使用し、これらを用いてアスペクト比(アスペクト比=長さ/幅)を計算することができる。5枚の写真に対してこの手順を繰り返す。そして、交差する全粒子のアスペクト比を、最終アスペクト比として平均する。
【0070】
図7は、走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影された従来技術の炭窒酸化チタンコーティング層の表面の顕微鏡写真であり、この顕微鏡写真の目盛りは5マイクロメートルである。顕微鏡写真(図7)を精査すると、本発明のサンプルと比べてはるかに微細なウィスカ構造が形成されていることが分かり、その平均長さは0.3μmであり、平均幅は0.06μmであり、平均アスペクト比は5.83である。これらの平均値を、以下の技法に従って確定した。すなわち、視野に1本の線をランダムに引き、この線が交差する粒子を、それらの長さおよび幅の測定のために使用し、これらを用いてアスペクト比(アスペクト比=長さ/幅)を計算することができる。5枚の写真に対してこの手順を繰り返す。そして、交差する全粒子のアスペクト比を、最終アスペクト比として平均する。従来技術の構造がより微細であるため、この場合、5マイクロメートル×6マイクロメートルの視野で、20,000倍の倍率が選択されている。
【0071】
図8は、走査電子顕微鏡(SEM)によって撮影された本発明の実施例2の炭窒酸化チタンコーティング層の表面の顕微鏡写真であり、この顕微鏡写真の目盛りは5マイクロメートルである。顕微鏡写真(図8)を検討することにより、平均長さが1.54μm、平均幅が0.49μm、および平均アスペクト比が3.22であるウィスカ構造が形成されていることが分かる。
【0072】
本出願人らは、コーティングされた切削インサートが、その表面に直接被覆された炭窒酸化チタンコーティング層を有する基材を含むことがあることを予期している。窒化チタンまたは炭窒化チタンまたはアルファ−アルミナのコーティング上層のうちの1つまたは複数が、炭窒酸化チタンコーティング層の表面上に被覆されている。炭窒酸化チタンコーティング層とコーティング上層との合計厚さは、約3マイクロメートル〜約4マイクロメートルである。炭窒酸化チタンコーティング層の厚さは、約0.5マイクロメートル〜約1マイクロメートルである。コーティング上層の厚さは、約2マイクロメートル〜約3マイクロメートルである。
【0073】
金属切削試験として湿式旋削サイクル断続運転を使用して、本発明の切削インサートを従来の切削インサートと比較した。試験には、以下のパラメータを使用した。
切削インサート:CNMA432
被加工物材料:80−55−06ダクタイル鉄
速度:656表面フィート/分(sfm)(200表面メートル/分)
送り速度:0.004インチ(0.1ミリメートル)/回転
切削深さ:0.08インチ(2.0ミリメートル)
リード角:−5度
フラッド冷却。1サイクルあたりの時間は1.01分間、1サイクルあたりのパスは18である。
【0074】
本発明の切削インサートおよび従来の切削インサートのための基材は、6wt%のCoを含むWCであった。本発明のコーティングスキームを被覆するためのプロセスを以下の表Bに示す。ステップ2Aおよび2Bは4回繰り返した。
【表2】

【0075】
従来の切削インサート用のコーティングスキームは、窒化チタン層/MT−CVD炭窒化チタン層/炭窒酸化チタン接着層/アルミナ層/炭窒化チタン層/窒化チタン層を含んでいた。炭窒酸化チタン接着層およびその上の層を、960℃〜1020℃の温度範囲で被覆した。
【0076】
以下の表Cは工具寿命の結果を示す。
【表3】

【0077】
故障モード基準は、一様な摩耗に対して0.012インチ(0.3ミリメートル)、最大摩耗に対して0.012インチ(0.3ミリメートル)、先端摩耗に対して0.012インチ(0.3ミリメートル)、切削ノッチングの深さ(depth cut notching)に対して0.012インチ(0.3ミリメートル)、後縁摩耗に対して0.012インチ(0.3ミリメートル)、クレータ摩耗に対して0.004インチ(0.1ミリメートル)であった。
【0078】
これらの試験は、本発明の性能が従来技術に対して、1回目の反復では11%の向上を示し、2回目の反復では等しい性能を示している。両試験工具は、断続条件下でダクタイル鋳鉄を機械加工する際の工具の典型的な故障である切削ノッチングの深さによって故障した。この故障のメカニズムは、切削深さにおけるコーティングの密着性に関連する。驚くべきことに、触媒としてCHCNを用いて中温度で被覆された炭窒酸化チタン接着層を有する本発明は、より高い温度で被覆された炭窒酸化チタン接着層を有する従来技術に比較して、わずかに密着性の向上を示す。
【0079】
上述したように、コーティングスキームの基材に対する密着性は、コーティングされた切削インサートに対する重要な特徴である。上記記載から、本発明により、基材に対するコーティングスキームの密着性が向上したコーティングされた切削インサートが提供されることは明らかである。本発明により、密着性が向上した炭窒酸化チタンを含むコーティングスキームを有する、コーティングされた切削インサートが提供されることも明らかである。さらに、本発明により、密着性が向上した炭窒酸化チタンを含むコーティングスキームを有するコーティングされた切削インサートであって、炭窒酸化チタンウィスカが特定範囲の粒子径およびアスペクト比を有する、コーティングされた切削インサートが提供されることは明らかである。さらに、本発明により、炭窒酸化チタンコーティング層を含むコーティングスキームを有するコーティングされた切削インサートであって、炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するために用いられるガス状混合物におけるアセトニトリルの含有量が少ない、コーティングされた切削インサートが提供されることも明らかである。
【0080】
本明細書で特定される特許文献および他の文献は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明の他の実施形態は、本明細書を考慮しまたは本明細書に開示された発明を実施することから、当業者には明らかとなろう。明細書および実施例は、単に例示的なものであり、本発明の範囲を限定することは意図されない。本発明の真の範囲および趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0081】
20 切削インサート
20’ 切削インサート
22 コーティングスキーム
22’ コーティングスキーム
24 基材
24’ 基材
26 表面
26’ 表面
28 逃げ面
30 すくい面
32 切れ刃
38 窒化チタンコーティング層
38’ 窒化チタンコーティング層
40 炭窒化チタンコーティング層
40’ 炭窒化チタンコーティング層
44 炭窒酸化チタンコーティング層
44’ 炭窒酸化チタンコーティング層
46 アルファ−アルミナコーティング層
46’ アルファ−アルミナコーティング層
47 窒化チタンコーティング層
50 切削インサート
50’ 切削インサート
52 基材
52’ 基材
54 表面
54’ 表面
56 コーティングスキーム
56’ コーティングスキーム
58 窒化チタンコーティング層
58’ 窒化チタンコーティング層
60 領域
60’ 領域
62 コーティング層の組
62’ コーティング層の組
66 炭窒化チタンコーティング層
66’ 炭窒化チタンコーティング層
68 炭窒酸化チタンコーティング層
68’ 炭窒酸化チタンコーティング層
72 アルファ−アルミナコーティング層
72’ アルファ−アルミナコーティング層
100 切削インサート
100’ 切削インサート
102 基材
102’ 基材
104 窒化チタンコーティング層
104’ 窒化チタンコーティング層
106 炭窒化チタンコーティング層
106’ 炭窒化チタンコーティング層
107 コーティングスキーム
107’ コーティングスキーム
108 炭窒酸化チタンコーティング層
108’ 炭窒酸化チタンコーティング層
110 窒化チタンコーティング層
150 切削インサート
150’ 切削インサート
152 基材
152’ 基材
154 ベースコーティング領域
154’ ベースコーティング領域
156 炭窒化チタンコーティング層
156’ 炭窒化チタンコーティング層
158 炭窒酸化チタンコーティング層
158’ 炭窒酸化チタンコーティング層
159 コーティングスキーム
159’ コーティングスキーム
160 アルファ−アルミナコーティング層
160’ アルファ−アルミナコーティング層
162 窒化チタンコーティング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングされた切削インサートを製造する方法であって、
表面を有する基材を提供するステップと、
化学蒸着法により、
5モル%〜40モル%の量で存在する窒素と、
0.5モル%〜8.0モル%の量で存在するメタンと、
所望により最大5.0モル%の量で存在してもよい塩化水素と、
0.2モル%〜3.0モル%の量で存在する四塩化チタンと、
0.02モル%〜0.15モル%の量で存在するアセトニトリルと、
0.4モル%〜2.0モル%の量で存在する一酸化炭素と、
41.85モル%〜93.88モル%の量で存在する水素と
を含むガス状混合物から炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するための前記ガス状混合物が、10モル%〜35モル%の量で存在する窒素と、1モル%〜6.0モル%の量で存在するメタンと、所望により最大4.0モル%の量で存在してもよい塩化水素と、0.5モル%〜2.5モル%の量で存在する四塩化チタンと、0.02モル%〜0.1モル%の量で存在するアセトニトリルと、0.4モル%〜1.8モル%の量で存在する一酸化炭素と、50.6モル%〜88.08モル%の量で存在する水素とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するための前記ガス状混合物が、15モル%〜30モル%の量で存在する窒素と、1モル%〜5.0モル%の量で存在するメタンと、所望により最大3.0モル%の量で存在してもよい塩化水素と、0.5モル%〜2.0モル%の量で存在する四塩化チタンと、0.02モル%〜0.08モル%の量で存在するアセトニトリルと、0.40モル%〜1.5モル%の量で存在する一酸化炭素と、58.87モル%〜83.08モル%の量で存在する水素とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するための前記ガス状混合物が、25.4モル%の量で存在する窒素と、1.7モル%の量で存在するメタンと、1.4モル%の量で存在する塩化水素と、0.7モル%の量で存在する四塩化チタンと、0.03モル%の量で存在するアセトニトリルと、0.6モル%の量で存在する一酸化炭素と、70.2モル%の量で存在する水素とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記被覆するステップが、800℃〜950℃の温度、および60トル〜500トルの圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記被覆するステップが、895℃〜925℃の温度、および120トル〜400トルの圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するための前記ガス状混合物が、26モル%〜28モル%の量で存在する窒素と、4モル%〜5モル%の量で存在するメタンと、1.6モル%〜2.0モル%の量で存在する塩化水素と、0.7モル%〜1.0モル%の量で存在する四塩化チタンと、0.04モル%〜0.06モル%の量で存在するアセトニトリルと、0.7モル%〜1.1モル%の量で存在する一酸化炭素と、62.84モル%〜66.96モル%の量で存在する水素とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するための前記ガス状混合物が、27モル%の量で存在する窒素と、4.5モル%の量で存在するメタンと、1.8モル%の量で存在する塩化水素と、0.8モル%の量で存在する四塩化チタンと、0.05モル%の量で存在するアセトニトリルと、0.9モル%の量で存在する一酸化炭素と、64.9モル%の量で存在する水素とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記被覆するステップが、25分〜150分の時間にわたって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1つまたは複数の中間コーティング層を被覆するステップであって、前記中間コーティング層が、窒化チタン、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化ハフニウム、炭化ハフニウム、炭窒化ハフニウム、窒化ジルコニウム、炭化ジルコニウムおよび炭窒化ジルコニウムからなる群から選択され、前記中間コーティング層が、前記基材と前記炭窒酸化チタンコーティングの中間にあるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記中間コーティング層が窒化チタンであり、複数のコーティング層の組を含むコーティングシーケンスを被覆するステップであって、各コーティング層の組が、前記炭窒化チタンコーティング層と前記炭窒酸化チタンコーティングと層を含むステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記炭窒酸化チタンコーティング層上にアルミナコーティング層を被覆するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記アルミナコーティング層上に、(A)炭窒酸化チタンコーティング層と窒化チタンコーティング層とのコーティングシーケンス、(B)窒化チタンコーティング層と炭窒化チタンコーティング層と窒化チタンコーティング層とのコーティングシーケンス、(C)炭窒酸化チタンコーティング層と炭窒化チタンコーティング層と窒化チタンコーティング層とのコーティングシーケンス、(D)複数のコーティングセットであって、各コーティングセットが炭窒酸化チタンコーティング層と窒化チタンコーティング層とを含むコーティングセット、(E)複数のコーティングセットであって、各コーティングセットが炭窒酸化チタンコーティング層と炭窒化チタンコーティング層とを含むコーティングセット、および(F)窒化チタンコーティング層、のうちの1つの外側上層コーティングスキームを含む外側上層コーティングスキーム領域を被覆するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アルミナコーティング層の上に、窒化チタンの外側コーティング層を被覆するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記炭窒酸化チタンコーティング層が、2次元平面図で測定すると、平均長が1.0μmより大きく、平均幅が0.2μmより大きく、平均アスペクト比が2.0より大きい炭窒酸化チタンウィスカを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記炭窒酸化チタンコーティング層が、2次元平面図で測定すると、平均長が1.5μm〜1.9μm、平均幅が0.49μm〜0.94μ、および平均アスペクト比が2.0〜3.3である炭窒酸化チタンウィスカを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記被覆するステップが、前記基材の表面上に炭窒酸化チタンを被覆する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記炭窒酸化チタンコーティング層上に、窒化チタン、炭窒化チタン、またはアルファ−アルミナのうちの1つのコーティング上層を被覆するステップであって、前記コーティング上層が、厚さが1マイクロメートル〜3マイクロメートルであるステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
窒化チタンと炭窒化チタン;炭窒酸化チタンと窒化チタン;および炭窒酸化チタンと炭窒化チタン、からなる群から選択される複数組の交互のナノ層を含むベースコーティング領域を被覆するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
表面を有する基材と、
前記基材の表面上のコーティングスキームとを含み、
前記コーティングスキームが、炭窒酸化チタンコーティング層を含み、前記炭窒酸化チタンが、2次元平面図で測定すると、平均長が1.0μmより大きく、平均幅が0.2μmより大きく、平均アスペクト比が2.0より大きい炭窒酸化チタンウィスカを含む、コーティングされた切削インサート。
【請求項21】
前記炭窒酸化チタンコーティング層が、2次元平面図で測定すると、平均長が1.5μm〜1.9μm、平均幅が0.49μm〜0.94μm、および平均アスペクト比が2.0〜3.3である炭窒酸化チタンウィスカを含む、請求項20に記載のコーティングされた切削インサート。
【請求項22】
前記コーティングスキームが、炭窒化チタンコーティング層;窒化チタンコーティング層;前記炭窒酸化チタンコーティング層上にアルミナコーティング層;および前記アルミナコーティング層上に窒化チタンの外側コーティングをさらに含み、前記炭窒酸化チタンコーティング層が前記炭窒化チタンコーティング層の上にあり、前記炭窒化チタンコーティング層が前記窒化チタンのコーティング層の上にある、請求項20に記載のコーティングされた切削インサート。
【請求項23】
前記コーティングスキームが、複数のコーティング層の組を含む多層コーティング領域をさらに含み、各コーティング層の組が、炭窒化チタンコーティング層と前記炭窒酸化チタンコーティング層とを含み、前記コーティングスキームが、窒化チタンコーティング層をさらに含み、前記多層コーティング領域が前記窒化チタンコーティング層の上にあり、前記コーティングスキームが、前記多層コーティング領域上にアルミナコーティング層をさらに含み、前記コーティングスキームが、前記アルミナコーティング層上に窒化チタンコーティング層をさらに含む、請求項20に記載のコーティングされた切削インサート。
【請求項24】
前記炭窒酸化チタンが組成Ti(O)を有し、xが0.005〜0.15であり、yが0.3〜0.8であり、zが0.2〜0.8である、請求項20に記載のコーティングされた切削インサート。
【請求項25】
前記炭窒酸化チタンが組成Ti(O)を有し、xが0.01〜0.1であり、yが0.3〜0.6であり、zが0.3〜0.7である、請求項20に記載のコーティングされた切削インサート。
【請求項26】
前記コーティングスキームが中間コーティング層をさらに含み、前記中間コーティング層が、窒化チタン、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化ハフニウム、炭化ハフニウム、炭窒化ハフニウム、窒化ジルコニウム、炭化ジルコニウム、および炭窒化ジルコニウムからなる群から選択され、前記中間コーティング層が、前記基材と前記炭窒酸化チタンコーティングとの中間にある、請求項20に記載のコーティングされた切削インサート。
【請求項27】
前記コーティングスキームが外側コーティング層をさらに含み、前記外側コーティング層が、窒化チタン、炭化チタン、炭窒化チタン、窒化ハフニウム、炭化ハフニウム、炭窒化ハフニウム、窒化ジルコニウム、炭化ジルコニウム、および炭窒化ジルコニウムからなる群から選択され、前記外側コーティング層が、前記炭窒酸化チタンコーティングよりも前記基材から離れている、請求項20に記載のコーティングされた切削インサート。
【請求項28】
前記基材が、超鋼合金、セラミックス、多結晶立方晶窒化ホウ素(PcBN)およびサーメットからなる群から選択される、請求項20に記載のコーティングされた切削インサート。
【請求項29】
前記炭窒酸化チタンコーティング層上にアルミナコーティング層をさらに含む、請求項20に記載のコーティングされた切削インサート。
【請求項30】
前記アルミナコーティング層上に、(A)炭窒酸化チタンコーティング層と窒化チタンコーティング層とのコーティングシーケンス、(B)窒化チタンコーティング層と炭窒化チタンコーティング層と窒化チタンコーティング層とのコーティングシーケンス、(C)炭窒酸化チタンコーティング層と炭窒化チタンコーティング層と窒化チタンコーティング層とのコーティングシーケンス、(D)複数のコーティングセットであって、各コーティングセットが炭窒酸化チタンコーティング層と窒化チタンコーティング層とを含む複数のコーティングセット、(E)複数のコーティングセットであって、各コーティングセットが炭窒酸化チタンコーティング層と炭窒化チタンコーティング層とを含む複数のコーティングセット、および(F)窒化チタンコーティング層のうちの1つの外側上層コーティングスキームを含む外側上層コーティングスキーム領域をさらに含む、請求項29に記載のコーティングされた切削インサート。
【請求項31】
表面を有する基材を提供するステップと、
化学蒸着法により、
5モル%〜40モル%の量で存在する窒素と、
0.5モル%〜8.0モル%の量で存在するメタンと、
所望により最大5.0モル%の量で存在してもよい塩化水素と、
0.2モル%〜3.0モル%の量で存在する四塩化チタンと、
0.02モル%〜0.15モル%の量で存在するアセトニトリルと、
0.4モル%〜2.0モル%の量で存在する一酸化炭素と、
41.85モル%〜93.88モル%の量で存在する水素と
を含むガス状混合物から炭窒酸化チタンコーティング層を被覆するステップと、を含むプロセスによって製造される、コーティングされた切削インサート。
【請求項32】
前記炭窒酸化チタンコーティング層が、2次元平面図で測定すると、平均長が1.0μmより大きく、平均幅が0.2μmより大きく、平均アスペクト比が2.0より大きい炭窒酸化チタンウィスカを含む、請求項31に記載のコーティングされた切削インサート。
【請求項33】
前記炭窒酸化チタンコーティング層が、2次元平面図で測定すると、平均長が1.5μm〜1.9μm、平均幅が0.49μm〜0.94μm、および平均アスペクト比が2.0〜3.3である炭窒酸化チタンウィスカを含む、請求項31に記載のコーティングされた切削インサート。
【請求項34】
前記被覆するステップが、前記基材の表面上に前記炭窒酸化チタンを被覆するものであり、前記炭窒酸化チタンコーティング層上に、窒化チタンまたは炭窒化チタンまたはアルファ−アルミナのうちの1つのコーティング上層を被覆するステップをさらに含み、前記コーティング上層の厚さが1マイクロメートル〜3マイクロメートルである、請求項31に記載のコーティングされた切削インサート。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−46959(P2013−46959A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−188777(P2012−188777)
【出願日】平成24年8月29日(2012.8.29)
【出願人】(399031078)ケンナメタル インコーポレイテッド (182)
【氏名又は名称原語表記】Kennametal Inc.
【住所又は居所原語表記】1600 Technology Way Latrobe PA 15650−0231, USA
【Fターム(参考)】