説明

炭素−ブリッジしたシクロペンタジエニル−フルオレニルリガンド

【課題】炭素−ブリッジを有するシクロペンタジエニル−フルオレニルリガンド。
【解決手段】モノ−炭素ブリッジを有する置換シクロペンタジエニル−フルオレニル触媒成分の効率的な製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は炭素−ブリッジ(carbon-bridged)シクロペンタジエニル−フルオレニルリガンドをベースにしたメタロセン触媒成分の新規な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アイソタクチック、シンジオタクチックまたはアタクチック等の種々のポリマーを製造できる触媒系は開発可能である。しかし、アイソタクチックまたはシンジオタクチックポリマーが主として製造され、アタクチックポリマーはほとんど製造されない触媒が望ましい。アイソタクチックポリオレフィンを製造するC2−またはC1−対称メタロセン触媒は公知である。例えば、C2−対称ビス−インデニル型ジルコノセンは高分子量の高融点アイソタクチックポリプロピレンを製造できる。しかし、このメタロセン触媒は製造コストが高く、製造に時間がかかる。さらに最も問題になることは最終触媒を構成する混合物中でのラセミ異性体とメソ異性体との比が好ましくないことである。すなわち、重合反応中にアタクチックポリプロピレンが形成するのを避けるためにメソ立体異性体を分離しなければならないという欠点がある。
【0003】
下記文献には触媒成分としてイソプロピル(フルオレニル)(シクロペンタジエニル)二塩化ジルコニウムを用いてプロピレンのようなオレフィンのシンジオタクチックコポリマーを製造する方法が記載されている。
【特許文献1】欧州特許第EP−A−0426644号公報
【0004】
シンジオタクチックペンタドの量で測定したシンジオタクチック性rrrrは73〜80%である。
下記文献にはシンジオタクチック/アイソタクチックブロックポリオレフィン、特にポリプロピレンブロックを形成するためのオレフィンモノマーの重合方法が記載されている。
【特許文献2】欧州特許第EP 747406号公報
【0005】
重合触媒の一成分はイソプロピリデンまたはジフェニルメチリデンブリッジを有する3−トリメチルシリル シクロペンタジエニル−9−フルオレニル二塩化ジルコニウムまたはハフニウムである。
下記文献には2−と7−位を置換したフルオレニル基を有し、非置換シクロペンタジエニル環を有するメタロセン触媒を用いてシンジオタクチックポリプロピレンを製造する方法が記載されている。
【特許文献3】欧州特許第EP−A−577581号公報
【0006】
下記文献には成形時に高い剛性を有する樹脂組成物を製造するためのシンジオタクチックポリプロピレンの製造方法が記載されている。
【特許文献4】欧州特許第EP−A−0419677号公報
【0007】
イソプロピル(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)二塩化ジルコニウムのようなメタロセン触媒を用いてポリプロピレンを製造してるが、得られた生成物の分子量、融点およびシンジオタクチック性はかなり低い。
従って、改良された特性を有するポリマーを製造することができる新規な触媒系と、そうしたポリマーを効率的に製造する方法を開発するというニーズが存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高分子量のポリマーを製造するための触媒系を提供することにある。
本発明の別の目的は、溶融温度の高いポリマーを製造することにある。
本発明のさらに別の目的は、耐衝撃性が改良された耐衝撃性コポリマーを製造することにある。
本発明のさらに別の目的は、上記の改良されたポリマーを製造することが可能な触媒系を製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の対象は、下記一般式:
【化1】

【0010】
(ここで、Ra2Cはモノ−炭素ブリッジであり、RaはHまたは、置換または非置換の芳香族基、好ましくはフェニル基の中から互いに独立して選択され、Rb、RcおよびRdは全てが同時に水素ではないという条件下で、H、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基または置換または非置換のアリール基の中から互いに独立して選択され、Mは周期律表の第4族金属であり、Qはハロゲンまたは1〜12個の炭素原子を有するアルキルであり、ただし、Rcがアルキル基で、一方のRaが非置換芳香族基の場合には他方のRaは水素であり、Rcがアルキル基で、一方のRaが置換芳香族基の場合には他方のRaは水素または同一または別の置換芳香族基にすることができ、置換基は電子求引基であり、Rcが水素の場合にはRaはHまたは置換または非置換の芳香族基の中から互いに独立して選択される)
の触媒成分の製造方法であって、下記(a)〜(e)の段階から成る方法にある:
(a)溶媒中で下記の基:
【化2】

【0011】
と、下記の基:
【化3】

【0012】
とを求核付加反応(reaction by nucleophilic addition)させ、
(b)得られたリガンドを加水分解し、分離し、
(c)R'M'' (ここで、R'は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、M''はLi、NaまたはKである)を用いて(b)段階で得られたリガンドを脱プロトン化してジアニオンリガンド(di-anion ligand)を作り、
(d)溶媒中でMQ4を用いて(c)段階で得られたジアニオンリガンドを塩メタセシス反応 (salt metathesis) を行い、
(e)触媒成分を単離する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好ましい実施例ではブリッジRa2C中の一方のRaは非置換のフェニルで、他方のRaはHである。
別の好ましい実施例では上記ブリッジ中の両方のRaが置換フェニル基である。フェニル基上の置換基は電子求引基であるのが好ましく、これはハロゲン、さらに好ましくはFまたはClまたはCX3(ここで、Xはハロゲン、さらに好ましくはFである)、好ましくはFまたはNO2の中から選択できる。フェニル基上の置換基は、単一の置換基の場合には4−位に、2つの置換基の場合には3−位と5−位に存在することができる。両方のフェニルが同じ置換パターンを有するのが好ましい。
【0014】
本明細書中では各位置は下記のように名付ける:
【化4】

【0015】
両方のRbは1〜6個の炭素原子を有するアルキルであるのが好ましく、さらに好ましくは同じtert-ブチル、である。
cは好ましくはHまたはメチルである。
dは1〜6個の炭素原子を有するアルキルであるのが好ましく、さらに好ましくはtert-ブチルである。
MはZr、HfまたはTiであるのが好ましく、さらに好ましくはZrである。
Qはハロゲンまたはメチルであるのが好ましく、さらに好ましくは塩素である。
M''は好ましくはLiである。
【0016】
(a)段階および(d)段階の溶媒は同一でも異なっていてもよく、炭化水素、好ましくはペンタン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)またはジエチルエーテル(Et2O)の中から選択される炭化水素にすることができる。これらの溶媒は同じEt2Oであるのが好ましい。理論に縛られるものではないが、Et2Oは拘束されたバルキーな成分を含む求核付加反応の遷移状態を安定化させると考えられる。(a)段階の反応は0〜60℃の温度、好ましくは室温で6〜24時間、好ましくは約12時間行う。
【0017】
上記メタロセン成分の活性化には当業者に公知の電離作用を有する任意の活性化剤を用いることができる。この活性化剤は例えばアルミニウム−含有またはホウ素−含有化合物の中から選択できる。アルミニウム−含有化合物にはアルミノキサン(aluminoxane)、アルキルアルミニウムおよび/またはルイス酸がある。
【0018】
アルミノキサンが好ましい。これは下記式で表されるオリゴマーの直鎖および/または環状のアルキルアルミノキサンから成る:
オリゴマーの直鎖アルミノキサン
【化5】

【0019】
オリゴマーの環状アルミノキサン
【化6】

【0020】
(ここで、nは1〜40、好ましくは10〜20であり、mは3〜40、好ましくは3〜20であり、RはC1〜C8のアルキル基、好ましくはメチル基である)
【0021】
使用可能なホウ素−含有活性化剤は下記特許文献5に記載のようなボロン酸トリフェニルカルベニウム、例えばテトラキス−ペンタフルオロフェニル−ボラート−トリフェニルカルベニウムまたは下記特許文献6(第6頁30行〜第7頁7行)に記載のような一般式[L'−H]+[B Ar1 Ar234]−のものを含む。
【特許文献5】欧州特許第EP−A−0427696号公報
【特許文献6】欧州特許第EP−A−0277004号公報
【0022】
上記触媒系は必要に応じて担体で支持できる。担体が存在する場合、担体は多孔質無機酸化物、好ましくはシリカ、アルミナおよびこれらの混合物の中から選択できる。担体はシリカであるのが好ましい。
変形例では活性化担体を用いることができる。
【0023】
本発明の触媒系はエチレンおよびα−オレフィンの重合で用いることができる。本発明の触媒系は重量平均分子量が少なくとも500kDa、好ましくは700kDa、融点が150℃以上、好ましくは160℃以上と高いアイソタクチック性の高いプロピレンのホモポリマーの製造で用いるのが好ましい。
【0024】
エチレン含有率が8〜15重量%、重量平均分子量が少なくとも500kDa、好ましくは少なくとも700kDa、メルトフローインデックスMFIが2〜10dg/分であるエチレン−プロピレンゴム(EPR)の製造にも用いることができる。メルトフローインデックスはASTM D 1238規格の方法に従って2.16kgの荷重下、230℃の温度で測定する。本発明で得られるEPRは優れた耐衝撃性を有することに特徴がある。本発明は優れた熱可塑性を有するエラストマーを必要とする全ての用途で使用できる。
【実施例】
【0025】
以下の全ての実験操作は標準的なシュレンク(Schlenk)技術を用い、または、グローブボックス中で精製アルゴン雰囲気下で行った。溶媒は窒素下にNa/ベンゾフェノン(テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル(Et2O))とNa/K合金(トルエン、ペンタン)とから蒸留し、完全脱気し、窒素下に貯蔵した。重水素化した溶媒(ベンゼン−d6、トルエン−d8、THF−d8 >99.5%D、Deutero GmbH)はNA/K合金から貯蔵チューブへ真空移動させた。クロロホルム−d1およびCD2Cl2は水素化カルシウム上で維持し、使用前に真空移動させた。
【0026】
先駆体3,6,6'−トリメチル−フルベン、2−メチル−4−tert-ブチル−シクロペンタジエン(異性体混合物)および1−メチル−3−tert-ブチル−シクロペンタジエニルリチウムは公知の操作に従って調製し、1H NMRスペクトルによって特徴付けた。1−tert-ブチル−シクロペンタジエン(異性体混合物)は下記文献に記載の操作に従って調製した。
【非特許文献1】Moore and Jean King(Moore.W.R.and Jean King B.,J.Org.Chem.,36,1882,1971)
【0027】
下記錯体(3)の合成:
【化7】

【0028】
スキームは[図1]に示してある。
(a)3,6−ジ−tert-ブチル−9−[(3−tert-ブチル−5−メチルシクロペンタ−1,4−ジエン−1−イル)メチル]−9H−フルオレン(2)の合成
50mlのTHF中に溶かした3.2g(16.73mmol)の6−ジメチルアミノ−2−メチル−4−tert-ブチル−フルベンの溶液に、4.65g(16.70mmol)の3,6−ジ−tert-ブチル−フルオレンと、6.70mlの(16.70mmol)のn−ブチル−リチウムの2.5M溶液とから調製された50mlの3,6−ジ−tert-ブチル−フルオレニル−リチウム溶液を室温で添加した。反応混合物を室温で12時間攪拌した。次に、1.17g(30.79mmol)のLiAlH4を添加し、得られた混合物をさらに12時間還流した後、100mlのジエチルエーテルに希釈した50mlのNH4Clの飽和溶液で慎重に冷却した。有機層を分離し、200mlの水で2回洗浄し、CaCl2上で乾燥した。全ての揮発物は真空除去した。黄色の粗生成物をシリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィで精製し、4.27g(10.02mmol)の最終生成物2を得た(収率=60%)。この生成物はシクロペンタジエニル環中の二重結合異性体の1:1混合物であった。
1H NMR(CDCl3、300MHz、25℃)スペクトルは[図2]に示してある。特徴は下記の通り:
【0029】
【化8】

【0030】
(b)下記錯体の合成:
【化9】

【0031】
40mlのEt2O中に溶かした1.67g(3.91mmol)の6−ジメチルアミノ−2−メチル−4−tert-ブチル−フルベン(1)の溶液に、ヘキサンに溶かした3.10ml(7.82mmol)のブチル−リチウムの2.5M溶液を0℃で添加した。反応混合物を4時間攪拌し、溶媒を減圧蒸発した。次に、グローブボックス中で0.91g(3.90mmol)の無水ZrCl4を添加した後、50mlのペンタンを添加した。得られたピンクの反応混合物を室温で一晩攪拌した。この反応混合物を濾過し、濾液を真空蒸発した。約30mlのヘキサンの一部を添加して得られた透明な溶液を−30℃に一晩維持し、錯体3のピンクの微結晶粉末沈殿物を得た。冷却して母液から1.48g(2.52mmol)の生成物3の第2バッチを64%の収率で得た。CH2Cl2/ヘキサン3:7混合物を徐々に濃縮してX線回折に適した結晶を得た。1H NMR(CD2Cl2、300MHz、25℃)スペクトルは[図3]に示してある。特徴は下記の通り:
【0032】
【化10】

【0033】
下記錯体(6)の合成:
【化11】

【0034】
スキームは[図4]に示してある。
(a)6−フェニル−2−メチル−4−tert-ブチル−フルベン(4)の合成
50mlのジエチルエーテル中に溶かした1.94g(14.24mmol)の1−メチル−3−tert-ブチル−シクロペンタジエン(異性体混合物)の溶液に、ヘキサン中に溶かした5.7ml(14.24mmol)のブチルリチウムの2.5M溶液を0℃で添加した。反応混合物を2時間攪拌し、30mlのエーテル中に溶かした1.44ml(14.24mmol)のベンズアルデヒドの溶液を一滴ずつ添加した。反応混合物は橙色になった。2時間後、50mlのNH4Cl濃縮液を徐々に添加した。この混合物を一晩攪拌した。有機層を分離し、MgSO4上で乾燥し、全ての揮発物は真空除去した。橙色の残留物をメタノールから−30℃で再結晶し、1.0g(4.46mmol)の化合物(1)を31%の収率で得た。1H NMR(CDCl3、300MHz、25℃)スペクトルは[図5]に示してある。特徴は下記の通り:
【0035】
【化12】

【0036】
(b)3,6−ジ−tert-ブチル−9−[(4−tert-ブチル−2−メチルシクロペンタ−1,4−ジエニル−)−フェニル−エチル]−9H−フルオレン(5)の合成
20mlのTHF中に溶かした1.75g(7.80mmol)の化合物(1)の溶液に、1.95g(7.00mmol)の3,6−ジ−tert-ブチル−フルオレンと、2.80ml(7.00mmol)のn−ブチル−リチウムの2.5M溶液との反応で調製された30mlの3,6−ジ−tert-ブチル−フルオレニル−リチウム溶液を室温で添加した。反応混合物を室温(約25℃)で4時間攪拌した後、50mlのNH4Clの飽和溶液で急冷し、50mlのジエチルエーテルで希釈した。有機層を分離し、200mlの水で2回洗浄し、CaCl2上で乾燥した。全ての揮発物は真空除去し、残留物は高温MeOHに溶かした。この溶液を−30℃に冷却すると白色沈殿物が生成した。この白色沈殿物を濾過し、低温メタノール(−30℃)で洗浄し、一晩真空乾燥して、2.30g(4.57mmol)の最終生成物(2)を65%の収率で得た。この最終生成物(2)は約20%の異性体3,6−ジ−tert-ブチル−9−[(4−tert-ブチル−2−メチルシクロペンタ−1,3−ジエン−1−イル)(フェニル)メチル]−9H−フルオレンを含む。
1H NMR(CDCl3、300MHz、25℃)スペクトルは[図6]に示してある。特徴は下記の通り:
【0037】
【化13】

【0038】
(c)下記錯体(6)の合成:
【化14】

【0039】
40mlのEt2O中に溶かした1.025g(2.04mmol)の化合物2の溶液に、ヘキサンに溶かした1.67ml(4.08mmol)のブチル−リチウムの2.5M溶液を0℃で添加した。反応混合物を4時間攪拌した後、グローブボックス中で0.475g(2.04mmol)の無水ZrCl4を添加した。得られたピンクの反応混合物を室温で一晩攪拌した。次いで溶媒を真空蒸発し、40mlのヘキサンを減圧凝縮した。得られた混合物を濾過し、濾液を真空蒸発して、1.18g(1.78mmol)の粗錯体(3)のピンクの粉末を88%の収率で得た。このピンクの残留物に新しい20mlのヘキサンを添加した。1〜2時間後、ピンクの沈殿物が生成した。この沈殿物をデカンテーションして単離し、10mlの低温ヘキサンで洗浄し、真空乾燥して0.53g(8.80mmol)のジクロロジルコノセン(3)を40%の収率で得た。CH2Cl2/ヘキサン1:9混合物を徐々に濃縮してX線測定に適した結晶を得た。1H NMR(CD2Cl2、300MHz、25℃)スペクトルは[図7]に示してある。特徴は下記の通り:
【0040】
【化15】

【0041】
下記錯体(9)の合成:
【化16】

【0042】
スキームは[図8]に示してある。
(a)下記錯体(8)の合成
【化17】

【0043】
立体障害によって安定化された6,6'−ジフェニルフルベンとフルオレニルアニオンとの反応は進行が遅く、長時間かつ相当な加熱を必要とすることが知られている。6,6'−ジフェニル−3−tert-ブチルフルベン(7)とフルオレニルアニオンとの反応は溶媒の種類に依存するように見えた。ジエチルエーテルが最良の結果を出した。すなわち、60〜70℃の温度で5〜7日かけて反応が進行し、所望の生成物(8)を21%の収率で得た。
(b)下記錯体(9)の合成
【化18】

【0044】
インシチュー(in situ)で製造したリガンド(8)のジアニオンとZrCl4との塩メタセシス反応を行った。反応はペンタン中で室温で進行し、同時にLiClが沈殿した。通常作業の後、反応混合物をヘキサン溶液として室温で1ヶ月間維持し、赤色の錯体(9)の微結晶を46%の収率で得た。
錯体(9)の1Hおよび13C NMR分光分析法では、錯体(3)および(6)で説明した構造と同様の液体中の非対称構造が示された。
【0045】
(p−Cl−Ph)2C(3,6−ジ−tert-ブチル−9フルオレニル)(2−)Me−4−tert-ブチル−シクロペンタジエニル)二塩化ジルコニウム(17)の合成
スキームは[図9]に示してある。
(a)6,6’−ビス(4−クロローフェニル)−4−tert-ブチル−2−メチル−フルベン(14)の合成
150mlのテトラヒドロフラン中に溶かした2.27g(16.66mmol)の1−メチル−3−tert-ブチル−シクロペンタジエンの異性体混合物の溶液に、ヘキサンに溶かした6.67ml(16.66mmol)のブチルリチウムのd2.5M溶液を0℃で添加した。反応混合物を2時間攪拌し、50mlのTHFに溶かした4.18g(16.66mmol)の4,4'−ジクロロベンゾフェノンの溶液を一滴ずつ添加した。反応混合物は橙色になった。4時間後、50mlのNH4Cl濃縮液を徐々に添加した。この混合物を一晩攪拌した。有機層を分離し、MgSO4上で乾燥し、全ての揮発物は真空除去した。橙色の残留物を高温メタノールから25℃で再結晶し、3.7g(10.02mmol)の6,6'−ビス(4−クロローフェニル)−2−メチル−4−tert-ブチル−フルベンを60%の収率で得た。1H NMR(CDCl3、400MHz、25℃)は下記の通り:
【化19】

【0046】
(b)3,6−ジ−tert-ブチル−9−{(4−tert-ブチル−2−メチルシクロペンタ−1,4−ジエン−1−イル)[ビス(4−クロロフェニル)]メチル}−9H−フルオレン(15)の合成
30mlのEt2Oに溶かした1.33g(3.60mmol)の6,6'−ビス(4−クロロ−フェニル)−2−メチル−4−tert-ブチル−フルベンの溶液に、1.0g(3.59mmol)の3,6−ジ−tert-ブチル−フルオレンと、ヘキサンに溶かした1.44mlの(3.59mmol)のn−ブチル−リチウムの2.5M溶液とから調製された30mlの3,6−ジ−tert-ブチル−フルオレニル−リチウム溶液を室温で添加した。反応混合物を還流時に5日間攪拌した後、50mlのジエチルエーテルに希釈した、50mlのNH4Clの飽和溶液で急冷した。有機層を分離し、200mlの水で2回洗浄し、CaCl2上で乾燥した。全ての揮発物は真空除去した。残留物をMeOHで洗浄した後、−30℃の温度の低温ペンタンによってフィルター上で洗浄し、一晩真空乾燥して、1.4g(2.16mmol)の最終生成物を60%の収率で得た。
質量スペクトルMS−ESI:m/z 645.7、 370.3、277.4。
1H NMR(THF−d8、300MHz、90℃)は下記の通り:
【0047】
【化20】

【0048】
次いで、錯体(3)または錯体(6)の調製で示したスキームと同じスキームに従って無水ZrCl4と反応させてジルコノセン(17)を得た。
変形例として、ビフェニルブリッジ中の各フェニル基は[図10]で示す位置をフッ素で置換するか、または、[図11]に示す3および5の位置を2つのCF3でそれぞれ置換することができる。
【0049】
[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]CH(3,6−ジ−tert-ブチル−9フルオレニル)(2−Me−4−tert-ブチル−シクロペンタジエニル)二塩化ジルコニウム(24)の合成
(a)6[3,5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル]−3−tert-ブチル−5−メチル−フルベン(22)の合成
150mlのジエチルエーテルに溶かした2.81g(20.63mmol)の1−メチル−3−tert-ブチル−シクロペンタジエニルの異性体混合物の溶液に、ヘキサンに溶かした8.20ml(20.63mmol)のブチルリチウムの2.5M溶液を0℃で添加した。反応混合物を2時間攪拌し、50mlのエーテルに溶かした5.0g(20.65mmol)の3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒドの溶液を一滴ずつ添加した。反応混合物は赤色になった。2時間後、50mlのNH4Cl濃縮液を徐々に添加した。この混合物を一晩攪拌した。有機層を分離し、MgSO4上で乾燥し、全ての揮発物は真空除去した。橙色の残留物を−30℃のメタノールから再結晶し、2.60g(7.22mmol)の化合物22を35%の収率で得た。1H NMR(CDCl3、300MHz、25℃)は下記の通り:
【0050】
【化21】

【0051】
(b)9−[[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル](4−tert-ブチル−2−メチルシクロペンタ−1,4−ジエン−1−イル)メチル]−3,6−ジ−tert-ブチル−9H−フルオレン(23)の合成
成分(23)の調製スキームは[図12]に示してある。
25mlのTHFに溶かした2.60g(7.21mmol)の化合物22の溶液に、2.00g(7.20mmol)の3,6−ジ−tert-ブチル−フルオレンと、2.90mlの(7.21mmol)のn−ブチル−リチウムの2.5M溶液とから調製された30mlの3,6−ジ−tert-ブチル−フルオレニル−リチウム溶液を室温で添加した。反応混合物を室温で4時間攪拌した後、50mlのジエチルエーテルに希釈した50mlのNH4Clの飽和溶液で急冷した。有機層を分離し、200mlの水で2回洗浄し、CaCl2上で乾燥した。全ての揮発物は真空除去した。残留物を溶離剤としてヘキサンを用いてシリカゲル上でカラムクロマトグラフィによって精製し、0.2g(0.31mmol)の最終生成物23を相対量が2:3の2つの異性体混合物として4%の収率で得た。
1H NMR(CDCl3、300MHz、25℃)は下記の通り:
【0052】
【化22】

【0053】
次いで、錯体(3)および錯体(6)の調製で用いた方法に従ってジルコノセン(24)を調製した。
【0054】
上記で合成した触媒成分をプロピレンの単独重合または共重合で試験した。触媒をメチルアルミノキサン(MAO)で活性化し、必要に応じてシリカ担体に付着させた。すなわち、耐衝撃性に優れたアイソタクチック性の高いプロピレンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレンゴム(EPR)を製造した。重合条件および結果を不均一重合は[表1]に、均一重合は[表2]に示してある。
【0055】
不均一触媒でのアイソタクチックポリプロピレンの製造
【表1】

【0056】
Dは重量平均分子量分布Mwを数平均分子量分布Mnで割った比Mw/Mnで定義される多分散指数である。分子量はゲル透過クロマトグラフィ(GPC)で測定する。TfおよびTcはそれぞれ溶融温度および結晶化温度であり、DSC熱量測定法によって測定する。
【0057】
均一触媒でのアイソタクチックポリプロピレンの製造
【表2】

【0058】
本発明の新規触媒系を用いて製造した全ての樹脂は極めて高い分子量と融点とを有していた。
追加の実施例はエチレンとプロピレンとの共重合で行った。得られたエチレン−プロピレンゴムは高い粘度、高い分子量および10dg/分以下のメルトフローインデックスを有し、従って、耐衝撃性が優れていた。従来の触媒系を用いたEPRは分子量が極めて低く、粘度も極めて低く、耐衝撃性は悪かった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】下記錯体(3)を製造するための反応スキーム:
【化23】

【図2】リガンド3,6−ジ−tert-ブチル−9−[(3−tert-ブチル−5−メチルシクロペンタ−1,4−ジエン−1−イル)メチル]−9H−フルオレン(2)の1H NMRスペクトル。
【図3】下記錯体(3)の1H NMRスペクトル:
【化24】

【図4】下記錯体(6)を製造するための反応スキーム:
【化25】

【図5】6−フェニル−2−メチル−4−tert-ブチル−フルベン(4)の1H NMRスペクトル。
【図6】リガンド3,6−ジ−tert-ブチル−9−[(4−tert-ブチル−2−メチルシクロペンタ−1,4−ジエニル−)−フェニル−エチル]−9H−フルオレン(5)の1H NMRスペクトル。
【図7】下記錯体(6)の1H NMRスペクトル:
【化26】

【図8】下記錯体(9)を製造するための反応スキーム:
【化27】

【図9】下記錯体(17)を製造するための反応スキーム:
【化28】

【図10】リガンド3,6−ジ−tert-ブチル−9−{(4−tert-ブチル−2−メチルシクロペンタ−1,4−ジエン−1−イル)[ビス(4−フルオロフェニル)]メチル}−9H−フルオレン(19)を製造するための反応スキーム。
【図11】リガンド9−{ビス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル](4−tert-ブチル−2−メチルシクロペンタ−1,4−ジエン−1−イル)メチル]−3,6−ジ−tert-ブチル−9H−フルオレン(21)を製造するための反応スキーム。
【図12】リガンド9−[[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル](4−tert-ブチル−2−メチルシクロペンタ−1,4−ジエン−1−イル)メチル]−3,6−ジ−tert-ブチル−9H−フルオレン(23)を製造するための反応スキーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式:
【化1】

(ここで、Ra2Cはモノ−炭素ブリッジであり、各RaはHまたは置換または非置換のフェニル基の中から互いに独立して選択され、Rb、RcおよびRdはH、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基または置換または非置換のアリール基の中から互いに独立して選択されるが、全てが同時に水素ではなく、Mは周期律表の第4族金属であり、Qはハロゲンまたは1〜12個の炭素原子を有するアルキルであり、ただし、Rcがアルキル基で、一つのRaが非置換フェニル基の場合には他のRaは水素であり、Rcがアルキル基で、一つのRaが置換フェニル基である場合には他のRaは水素か、互いに同一または別の置換フェニル基にすることができ、置換基は電子求引基であり、Rcが水素の場合には各RaはHまたは、置換または非置換のフェニル基の中から互いに独立して選択される)
の触媒成分の製造方法であって、
下記(a)〜(e)段階から成ることを特徴とする方法:
(a)溶媒中で下記の基:
【化2】

と下記の基:
【化3】

とを求核付加反応させ、
(b)得られたリガンドを加水分解し、分離し、
(c)R'M''(ここで、R'は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、M''はLi、NaまたはKである)を用いて(b)段階で得られたリガンドを脱プロトン化してジアニオン(di-anion)リガンドとし、
(d)溶媒中てMQ4を用いて(c)段階で得られたジアニオンリガンドの塩メタセシス反応を行い、
(e)触媒成分を単離する。
【請求項2】
両方のRaが水素であるか、一方のRaが水素で、他方のRaが置換または非置換のフェニルである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
両方のRaが置換フェニル基である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
フェニル基上に置換基が存在する場合、単一の置換基は4-位に、2つの置換基は3-位と5-位にある請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
両方のRbが同一で、tert-ブチルである請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
cの2−位がメチル、Rdの4−位がtert-ブチルである請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(a)段階の溶媒がEt2Oである請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(d)段階の溶媒もEt2Oである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
M''がLiである請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法で得られるメタロセン触媒成分。
【請求項11】
適当な活性化剤と組み合せた、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法によって得られるメタロセン触媒成分の、エチレン含有率が8〜15重量%で、重量平均分子量が少なくとも500kDaで、優れた衝撃特性を有するエチレン−プロピレンゴムの製造での使用。
【請求項12】
適当な活性化剤と組み合せた、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法によって得られるメタロセン触媒成分の、重量平均分子量が500kDa以上で、融点が150℃以上で、mmmmが95以上であるアイソタクチックポリプロピレンの製造での使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−546857(P2008−546857A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516299(P2008−516299)
【出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063133
【国際公開番号】WO2006/134098
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】