説明

無機配向膜の形成方法及び液晶装置

【課題】信頼性の高い無機配向膜を低コストで形成する。
【解決手段】プラズマ生成領域を挟むように対向配置された2つのターゲット5を備えるスパッタ粒子放出部3と、基板10を水平方向に搬送する搬送手段6aを収容する成膜室2と、を備えるスパッタ装置1を用いて、搬送される基板10にスパッタ粒子27を入射させて、10基板に接する下層配向膜132と液晶分子37に接し液晶分子37の配向を制御する上層配向膜131を含む無機配向膜31を形成する方法であって、スパッタ粒子27の基板10に対する入射角の範囲を入射角範囲と定義した場合において、下層配向膜132を形成する工程である第1の工程における入射角範囲である第1の入射角範囲が、上層配向膜131を形成する工程である第2の工程における入射角範囲である第2の入射角範囲に比べて広いことを特徴とする無機配向膜31の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機配向膜の形成方法及び液晶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクターの光変調手段等に用いられる液晶装置は、液晶層と該液晶層を挟持するように対向配置された一対の基板等で構成されている。該一対の基板の内面側には液晶層に電圧を印加する電極が形成されている。そしてかかる電極の内面側には、液晶分子の配向を制御する配向膜が形成されている。液晶装置はかかる構成により、選択電圧の印加時と非印加時との液晶分子の配向変化に基づいて光源光を変調して、画像等を形成できる。
【0003】
配向膜は形成材料により、有機配向膜と無機配向膜に大別される。ポリイミドなどの有機材料からなる有機配向膜は形成が容易であり、ラビング処理により液晶分子の配向能力を容易に付与できる。しかし、かかるラビング処理は、(1)配向性の均一さを確保することが困難であること、(2)ラビング処理時の筋跡が残り易いこと、(3)ラビング布からのダスト発生による表示不良が発生しがちであること、等の不都合が指摘されている。そこでこのような不都合を解消するため、近年、カラム状に結晶成長した無機材料からなる無機配向膜、すなわちカラム構造を有する無機配向膜が提案されている。このような構成であれば、上述の不都合が解消された高い信頼性等を有する配向膜が得られるものと期待されている。
【0004】
しかし、無機材料をカラム状に形成した場合、液晶分子が無機材料の隙間に入り込んで電極と接触する可能性がある。かかる現象は液晶装置の信頼性を大きく低下させる。そのため、無機配向膜を蒸着法で形成する場合において、90度の蒸着角度で形成された最下層と鋭角な蒸着角度で形成された最上層とからなる2層構造として、液晶分子と電極との接触を低減する手法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−210766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、蒸着法は基板に入射する粒子の指向性が良いため、蒸着角度を90度に固定して行う1回のみの成膜では、隙間が充分に低減された下層膜を得ることが困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]本適用例の無機配向膜の形成方法は、プラズマ生成領域を挟むように対向配置された2つのターゲットを備えるスパッタ粒子放出部と、基板を水平方向に搬送する搬送手段を収容する成膜室と、を備えるスパッタ装置を用いて、搬送される上記基板にスパッタ粒子を入射させて、上記基板に接する下層配向膜と液晶分子に接し上記液晶分子の配向を制御する上層配向膜を含む無機配向膜を形成する方法であって、上記スパッタ粒子の上記基板に対する入射角の範囲を入射角範囲と定義した場合において、上記下層配向膜を形成する工程である第1の工程における入射角範囲である第1の入射角範囲が、上記上層配向膜を形成する工程である第2の工程における入射角範囲である第2の入射角範囲に比べて広いことを特徴とする。
【0009】
このような形成方法であれば、1台の装置を用いて、かつ真空引き工程を1回に留めた上で、互いに異なる性質を有する2層の薄膜を連続的に形成できる。したがって、高い信頼性と高い配向性とを兼ね備えた無機配向膜を低コストで形成できる。
【0010】
[適用例2]上述の無機配向膜の形成方法であって、上記基板の法線方向を90度とした場合において、上記第1の入射角範囲は90度を超える角度を含むことを特徴とする無機配向膜の形成方法。
【0011】
このような形成方法であれば、多方向から入射する粒子で形成された、緻密な構造を有する下層配向膜を形成できる。したがって、より一層信頼性の向上した無機配向膜を形成できる。
【0012】
[適用例3]上述の無機配向膜の形成方法であって、上記第2の入射角範囲は90度〜60度の範囲であることを特徴とする無機配向膜の形成方法。
【0013】
このような形成方法であれば、上層配向膜に傾きの均一性が向上したカラム構造を形成できる。したがって、より一層配向性の向上した無機配向膜を形成できる。
【0014】
[適用例4]上述の無機配向膜の形成方法であって、上記スパッタ装置は、上記成膜室と上記スパッタ粒子放出部との間に上記基板が搬送される搬送方向に沿って動作するスリット部材を備えるスパッタ装置であり、上記第1の工程及び上記第2の工程は、上記スリット部材の動作により寸法が変化する開口部を介して上記スパッタ粒子を入射させる工程であることを特徴とする無機配向膜の形成方法。
【0015】
このような形成方法であれば、入射角範囲の変更や制御を容易に実施できる。したがって、より一層配向性と信頼性の向上した無機配向膜を、より一層低コストで得ることができる。
【0016】
[適用例5]上述の無機配向膜の形成方法であって、上記スパッタ装置は、上記2つのターゲットが、上記搬送方向と上記法線方向とに直交する線を軸として、上記法線方向に対して所定角度回転させた状態で固定されたスパッタ装置であり、上記第2の工程は、上記2つのターゲットと上記法線方向とが成す角度が鋭角である側から鈍角である側へと向かう方向を順方向とした場合において、上記基板を順方向に搬送しつつ該基板に上記スパッタ粒子を入射させる工程であることを特徴とする無機配向膜の形成方法。
【0017】
このような形成方法であれば、上層配向膜に形成されるカラム構造の傾きの均一性をより一層向上できる。したがって、より一層配向性の向上した無機配向膜を形成できる。
【0018】
[適用例6]上述の無機配向膜の形成方法であって、上記入射角が90度となる上記基板の上記スパッタ粒子放出部に対する相対位置である成膜位置をシミュレーションにより算出する第3の工程をあらかじめ実施し、上記第1の工程及び上記第2の工程は、上記第3の工程で得られた成膜位置を基準に上記スリット部材を動作させて行うことを特徴とする無機配向膜の形成方法。
【0019】
このような形成方法であれば、スリット部材の位置を容易に設定できる。したがって、高い信頼性と高い配向性とを兼ね備えた無機配向膜をより一層低コストで形成できる。
【0020】
[適用例7]上述の無機配向膜の形成方法であって、上記基板を固定した状態で上記無機配向膜を形成し、次に該基板を用いて液晶装置を形成し、次に該液晶装置のプレチルト角を測定して該プレチルト角が0度となる上記基板の上記スパッタ粒子放出部に対する相対位置である成膜位置を算出する第4の工程をあらかじめ実施し、上記第1の工程及び上記第2の工程は、上記第4の工程で得られた成膜位置を基準に上記スリット部材を動作させて行うことを特徴とする無機配向膜の形成方法。
【0021】
このような形成方法であれば、プレチルト角の精度を向上できる。したがって、より一層と配向性が向上した無機配向膜を形成できる。
【0022】
[適用例8]本適用例の液晶装置は、上述のいずれかに記載の無機配向膜の形成方法を用いて形成された無機配向膜を備えたことを特徴とする。
【0023】
このような構成であれば、カラム構造を有する上層と緻密な構造を有する下層を備える無機配向膜で液晶分子を配向できるため、表示品質及び信頼性の向上した液晶装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】液晶装置の概略構成を示す図。
【図2】スパッタリング装置の概略構成を示す図。
【図3】成膜位置と入射角範囲を示す図。
【図4】シミュレーションにより求めた成膜位置−入射角線図。
【図5】第1の実施形態にかかる無機配向膜の形成方法を示す図。
【図6】第1の実施形態にかかる基板に対するスパッタ粒子の堆積の態様を示す図。
【図7】第1の実施形態にかかる無機配向膜の形成方法により基板上に形成された無機配向膜を液晶分子と共に示す図。
【図8】実測により求められたプレチルト角−成膜位置線図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態にかかる無機配向膜の形成方法について、図面を参照しつつ述べる。なお本発明は、以下の図に示す構造、形状に限定されるものではない。また、以下の各図においては、各構成要素を図面で認識可能な程度の寸法とするため、該構成要素の縮尺を実際とは異ならせてある。
【0026】
(第1の実施形態)
<液晶装置>
まず、本実施形態にかかる無機配向膜の形成方法の対象となる液晶装置について、説明する。図1は、液晶装置100の概略構成を示す図である。図1(a)は液晶装置100を各構成要素とともに対向基板11の側から示す模式平面図であり、図1(b)は液晶装置100のH−H’線における断面を示す模式断面図である。
【0027】
図1(b)に示すように、液晶装置100は、シール材52と該シール材により所定の間隔を有するように対向配置された素子基板10と対向基板11の一対の基板等で構成されている。上記の一対の基板は、ガラス等の透明性材料からなる基板である。そして、かかるシール材52と素子基板10と対向基板11とで構成される空間内には液晶分子37(図7参照)を含有する液晶層36が充填されている。なお、上述の一対の基板の外側の面(液晶層36に面している側の反対側の面)には、偏光膜等が形成されているが、本図では図示を省略している。
【0028】
そして液晶装置100は、図1(a)に示すように、平面視においてシール材52で囲まれた領域である光変調領域99と、シール材52の外側の領域である周辺回路領域に区画されている。周辺回路領域には、画像信号駆動回路101及び外部回路実装端子102が素子基板10の一辺に沿って形成されており、この一辺に隣接する2辺に沿って走査信号駆動回路104が形成されている。また、対向基板11の角部においては、素子基板10と対向基板11との間で電気的導通をとるための基板間導通材106が形成されている。
【0029】
図1(b)に示すように、素子基板10の内側の面上には画素電極34が規則的に形成されている。そして該電極を覆うように、第1の無機配向膜31aが形成されている。なお、上記面上には各画素電極34を駆動するTFT(薄膜トランジスター)等が形成されているが、本図では図示を省略している。
【0030】
対向基板11の内側の面上には第1の遮光層32a及び第2の遮光層32bが形成されている。そして該双方の遮光層(32a、32b)を、共通電極35を介して覆うように、第2の無機配向膜31bが形成されている。図示するように、第1の無機配向膜31aは画素電極34による段差を覆うように形成されており、第2の無機配向膜31bは第1の遮光層32aによる段差を覆うように形成されている。第2の遮光層32bは、図1(a)に示すように、光変調領域99を囲む枠状の遮光層である。第1の遮光層32aは画素電極34が形成されていない領域を覆うようにパターニングされた遮光層であるが、図1(a)では図示を省略している。
【0031】
なお、以下の記載において、上述の「遮光層」のように、末尾のアルファベットによって第1(の遮光層)と第2(の遮光層)が区別されている構成要素について該アルファベットを省略した場合は、総称(第1と第2の双方)を意味するものとする。
【0032】
上記双方の電極(34、35)は、ITO(酸化インジウム・すず合金)等の透明導電性材料からなる。画素電極34は島状にパターニングされた電極であり、上記のTFTにより個別に電圧が印加される。一方、共通電極35は少なくとも光変調領域99の全域に形成された電極であり、該光変調領域の全域で同電位となっている。上述の液晶分子37は、電圧無印加時においては上述の無機配向膜(31a、31b)により所定のプレチルト角で配向されている。そして、画素電極34に印加される電圧に応じて駆動され、光変調機能を発揮する。そして、素子基板10側から照射された光源光が変調されて、対向基板11側に画像等が形成される。
【0033】
液晶装置100の無機配向膜31は、(SiO2、SiOなど)等の酸化シリコンからなる。なお、無機配向膜31の材料としては、酸化シリコンの他にAl23、ZnO、MgO、及びITO等の金属酸化物を用いることもできる。そして無機配向膜31は、液晶層36と接する面に所定方向に傾斜するカラム構造(斜方柱構造)を有している。上述のプレチルト角は、かかるカラム構造により発現される。本実施形態の無機配向膜の形成方法は、かかるカラム構造を有する無機配向膜31を、信頼性等を損なうことなく、かつ低コストで形成することを目的としている。
【0034】
<無機配向膜の形成装置>
図2は、本実施形態の無機配向膜の形成方法に用いるスパッタリング装置(以下、「スパッタ装置」と称する。)1の概略構成を示す図である。以下、本図を用いてスパッタ装置1の概要を説明する。なお、本実施形態にかかる無機配向膜の形成方法は、上述の素子基板10及び対向基板11等の基板の一方の面上に無機配向膜を形成する方法に関するものである。そこで、以下の記載においては、対象の基板として素子基板10を例に説明する。そして以下、素子基板10を単に「基板10」と称する。
【0035】
図2に示すように、スパッタ装置1は、基板10を収容する真空チャンバーである成膜室2と、基板10の表面にスパッタ粒子を放出するスパッタ粒子放出部3と、を備えている。成膜室2内には、基板10をその基板面(被処理面)がスパッタ粒子放出部3と対向するように保持して搬送可能な基板ホルダー6が配置されている。基板10が搬送される方向がX方向であり、被搬送中の基板10の基板面においてX方向と直交する方向がY方向である。そして、該基板面に直交する方向がZ方向である。
【0036】
本実施形態の無機配向膜の形成方法に用いるスパッタ装置1は対向ターゲット型のスパッタ装置であり、スパッタ粒子放出部3には、平板状の一対のターゲットが対向配置されている。上述の一対のターゲットのうち、被搬送中の基板10に近い側のターゲットが第1のターゲット5aであり、遠い側のターゲットが第2のターゲット5bである。かかる一対のタ−ゲットは、Y方向に延びる細長い板状の形状を有している。そして後述するように、酸素ガスと反応して無機配向膜の構成物質となる材料で形成されている。本実施形態のスパッタ装置1における上述の一対のターゲット5はシリコンからなるが、他の材料を用いることもできる。
【0037】
そして、スパッタ装置1においては、上述の一対のターゲット5のターゲット面が、上記基板面すなわちXY面に対して傾くように、すなわちY軸を中心に回転した状態で配置されている。本実施形態で用いるスパッタ装置1では、上記の傾き、すなわちスパッタ粒子放出部3と被搬送中の基板10とがなす角度は略45度である。
【0038】
成膜室2のX方向における外側には、該成膜室内の真空度を保持した状態での基板10の搬入/搬出を可能とするロードロックチャンバー(不図示)が備えられている。ロードロックチャンバーと成膜室2とは、チャンバー間を気密に閉塞するゲートバルブを介して接続されている。そして基板ホルダー6には、該基板ホルダーを上述のロードロックチャンバー側からその反対側へX方向に搬送する移動手段6aが接続されている。移動手段6aは、基板10を一定速度で往路と復路の双方の方向に搬送することができる。以下の記載において、上述の一対のターゲット5とX方向とが成す角度が小さい側から大きき側に搬送する方向(本図においては左側から右側に向かう方向)を、順方向とする。
【0039】
スパッタ粒子放出部3は、上記一対のターゲット5を備える箱型筐体部3Aと、箱型筐体部3Aを成膜室2に取付けるための接続部3Bとを備えている。接続部3Bは、箱型筐体部3Aと成膜室2とを接続させる部分であり、フランジ等により構成されている。そして箱型筐体部3Aは、スパッタ粒子27を発生させる部分である。成膜室2とスパッタ粒子放出部3は接続部3Bにより導通しており、箱型筐体部3A内で生じたスパッタ粒子27は、接続部3Bを介して成膜室2へ向けて飛翔する。
【0040】
図示するように、箱型筐体部3Aは、互いに対向する略平板状の電極である第1電極9aと第2電極9b、及び側壁部材等で構成されている。第1のターゲット5aは第1電極9aに装着され、第2のターゲット5bは第2電極9bに装着されている。そして、かかる第1電極9a及び第2電極9bは、接続部3B側とは反対側の端部を構成する側壁部材19及び他の図示しない側壁部材と共にスパッタ粒子放出部3の真空チャンバーとなる箱型筐体部3Aを構成している。ただし、第1電極9a及び第2電極9bは、箱型筐体部3Aを構成する上述の側壁部材(19等)とは互いに絶縁されている。そして、第1電極9aには直流電源又は高周波電源からなる電源(不図示)が接続され、第2電極9bには直流電源又は高周波電源からなる電源(不図示)が接続されている。したがって、第1のターゲット5aと第2のターゲット5bとが対向する部分が、プラズマ生成領域となる。
【0041】
スパッタ粒子放出部3には、プラズマ生成領域に放電用のアルゴンガスを流通させる第1のガス供給手段21が配置されている。成膜室2には、搬送中の基板10上に入射するスパッタ粒子27と反応して無機配向膜を形成する反応ガスとしての酸素ガスを供給する第2のガス供給手段22が配置されている。また、成膜室2には、内部圧力を制御して所望の真空度を得るための排気制御装置20が、配管20aを介して接続されている。
【0042】
第2のガス供給手段22は、排気制御装置20のX方向における反対側に接続されている。したがって、第2のガス供給手段22から供給される酸素ガスは、基板10の基板面を経由して排気制御装置20側へ流通する。上述のロードロックチャンバーにも、該ロードロックチャンバー内を独立して真空雰囲気に調整する排気制御装置(不図示)が接続されている。そして上述したように、ロードロックチャンバーと成膜室2とは、チャンバー間を気密に閉塞するゲートバルブを介して接続されている。かかる構成により、スパッタ装置1は、成膜室2を大気に解放することなく基板10の出し入れを行うことができる。
【0043】
プラズマ生成領域において成膜室2側の反対側に配置された側壁部材19には、第1のガス供給手段21が接続されている。第1のガス供給手段21から供給されるアルゴンガスは、側壁部材19側からプラズマ生成領域すなわち一対のターゲット5間の領域に流入し、接続部3Bを介して成膜室2内に流入する。そして、成膜室2に流入したアルゴンガスは、第2のガス供給手段22から供給されて流通する酸素ガスと合流して排気制御装置20側へ流動する。
【0044】
スパッタ装置1により基板10の基板面に無機配向膜を形成する場合、該基板を移動手段6aにより搬送させつつ、第1のガス供給手段21からアルゴンガスを導入しつつ、第1電極9a及び第2電極9bにDC電力(RF電力)を供給する。その結果、プラズマ生成領域にプラズマ雰囲気が発生する。そして該プラズマ雰囲気中のアルゴンイオン等がターゲット5に衝突することで、ターゲット5から配向膜材料(シリコン)がスパッタ粒子27としてたたき出される。そして、該スパッタ粒子のうちプラズマPzから開口部25側へ飛翔するスパッタ粒子27が、接続部3Bを介して成膜室2側へ放出される。
【0045】
接続部3Bと移動手段6aで搬送される基板10との間には、X方向に沿って動作(移動)する第1のスリット部材24aと第2のスリット部材24bが配置されている。そして、平面視で第1のスリット部材24aと第2のスリット部材24bとの間の領域、すなわち上記双方のスリット部材24のどちらにも重ならない部分が、開口部25である。上記一対のターゲット5間に発生するスパッタ粒子27は、スリット部材24の動作によりX方向の寸法が変化する開口部25を介して基板10の基板面に入射する。かかるスパッタ粒子27が堆積することで、上述の基板面に無機配向膜が形成される。なお、スリット部材24はX方向にのみ動作する。したがって、開口部25の寸法もX方向にのみ変化する。
【0046】
なお、上述の一対の電極9等以外のスパッタ装置1の構成要素について、以下に記載する。
基板ホルダー6には、保持した基板10を加熱するためのヒーター7、及び保持した基板10を冷却するための第3の冷却手段8cが配置されている。ヒーター7は制御部7aに接続されており、制御部7aを介した昇温動作により基板ホルダー6及び基板10を所望の温度まで加熱できる。第3の冷却手段8cは第3の冷媒循環手段18cと配管等を介して接続されており、第3の冷媒循環手段18cから供給される冷媒を循環させることにより、基板ホルダー6及び基板10を所望の温度まで冷却できる。
【0047】
また、第1電極9aには、第1の冷媒循環手段18aと配管等を介して接続されている第1の冷却手段8aが配置されている。同じく第2電極9bには、第2の冷媒循環手段18bと配管等を介して接続されている第2の冷却手段8bが配置されている。双方の冷却手段8は内部に冷媒を流通させる冷媒流路を備えており、かかる冷媒流路に対して冷媒循環手段18から供給される冷媒を循環させることで、一対のターゲット5の冷却を行うことができる。
【0048】
また、上記双方の冷却手段8を平面視で囲むように、矩形枠状の永久磁石等からなる第1の磁界発生手段16a及び第2の磁界発生手段16bが配置されている。これらの磁界発生手段16は、一対のターゲット5を取り囲むZa方向の磁界を発生させることができる。そしてかかる磁界によりプラズマPzに含まれる電子をプラズマ生成領域内に拘束して、該電子が基板10の基板面に入射して該基板面の濡れ性が上昇してスパッタ粒子27のマイグレーションが生じ、柱状構造形成が阻害されるのを抑制できる。
【0049】
<スリット部材と入射角範囲>
次に、スパッタ粒子27の入射角範囲等について説明する。図3は、成膜位置と入射角範囲βを示す図である。図3(a)、図3(b)の双方とも、成膜室2の一部とスパッタ粒子放出部3とを簡略化して基板10と共に示している。成膜室2内の要素については、基板ホルダー6等の搬送系は図示を省略している。またスパッタ粒子放出部3内の要素については、一対のターゲット5以外の要素の図示を省略している。
【0050】
図3(a)は成膜位置を示す図である。上述したように、スパッタ粒子放出部3は、一対のターゲット5のターゲット面がXY面に対して傾くように取り付けられている。本実施形態のスパッタ装置1における取り付け角(上記の傾きの角度)θは、45度である。また、本実施形態のスパッタ装置1におけるターゲット間距離aは60mm〜100mm、ターゲット端部と基板10との間の距離bは100mm〜200mmである。
【0051】
そして本実施形態の説明においては、一対のターゲット5の中心線cが基板10と交わる位置のX方向の座標を0とし、スリット部材24の(端部の)位置の基準点としている。そして該0点を基準に、本図においては左側を「−」、右側を「+」として、スリット部材24の位置を(mm単位で)表している。成膜位置とは、基板10の基板面のうち、スリット部材24と重ならない領域、すなわちスパッタ粒子27が入射してくる領域のX方向の座標を、上述の0点を基準に示す物である。すなわち、スリット部材24の端部の位置を示す概念である。したがって、X方向の座標すなわちある一点を示す概念でもあり、X方向における所定の範囲を示す概念でもある。後者の概念として用いる場合、開口部25のX方向における大きさを示すこととなる。図3(a)では、第1のスリット部材24aが−60、第2のスリット部材24bが+20に位置している。すなわち、図3(a)に示す成膜位置は、−60〜+20である。
【0052】
図3(b)は、入射角範囲βを示している。図示するように、一対のターゲット5で生じたスパッタ粒子27は、図3(a)に示す中心線cの方向のみでなく、所定の角度範囲で基板10に向けて飛翔する。すなわち、スパッタ粒子27が基板10に入射するときの該基板に対する角度である入射角は、所定の範囲の分布を有している。かかる入射角の範囲が入射角範囲βである。
【0053】
本実施形態の無機配向膜の形成方法は、基板10をX方向に搬送しつつ、該基板の基板面にスパッタ粒子27を入射させ堆積させるものである。したがって該基板面には、入射角範囲β内のあらゆる角度からスパッタ粒子27が入射する。そして、入射角範囲βは、スリット部材24を動作させることで任意に設定できる。本実施形態の無機配向膜の形成方法は、かかるスリット部材24の動作により、限定された入射角範囲βでスパッタ粒子27を堆積させるものである。なお入射角は、Z方向すなわち基板10に垂直な方向を90度としている。そして、図中の左側、すなわち取り付け角θが鋭角である側を、90度以上(90度〜180度)としている。また、図中の右側を90度以下(0度〜90度)としている。
【0054】
<基準成膜位置の算出>
図4は、シミュレーションにより求めた、成膜位置−入射角線図である。スリット部材24により入射角範囲βを制限するには、上述の関係を調べる必要がある。特に、本実施形態の無機配向膜の形成方法のように、入射角を90度以内に制限する工程を有する場合には、基準成膜位置すなわち入射角が90度となる成膜位置を事前に確認する必要がある。本実施形態の無機配向膜の形成方法では、第3の工程として、かかる基準成膜位置と入射角の関係をシミュレーションにより求めている。
【0055】
シミュレーションは、個々のスパッタ粒子の軌跡をモンテカルロ法で算出することにより行う。入射角は、成膜位置により一義的に決まるものではない。すなわち、ある成膜位置に様々な方向(角度)から複数のスパッタ粒子27が入射する。かかる入射角をスパッタ粒子27毎にモンテカルロ法により算出して、該入射角の平均値を該成膜位置における入射角としている。図示するように、シミュレーションによれば、成膜位置が−70の点において、入射角が90度となる。すなわち成膜位置が−70の点において、スパッタ粒子27は基板10の基板面に対して垂直方向から入射する。したがって、基準成膜位置は−70となる。
【0056】
<無機配向膜の形成方法>
図5は、本実施形態にかかる無機配向膜の形成方法を示す図である。本実施形態の無機配向膜の形成方法は、無機配向膜31を下層配向膜132(図6参照)と上層配向膜131(図7参照)とに分けて形成する点に特徴がある。すなわち本実施形態の形成方法で得られる無機配向膜31は、下層配向膜132と上層配向膜131との積層体である。下層配向膜132を形成する工程が第1の工程であり、上層配向膜131を形成する工程が第2の工程である。
下層配向膜132と上層配向膜131の膜厚比は、2:8〜8:2の範囲である。合計の膜厚すなわち無機配向膜31の膜厚は、50nm〜150nmである。成膜時における成膜室2内の圧力は、0.3Pa〜1.0Paである。放電用ガスとしてのアルゴンガスと反応ガスとしての酸素ガスとの供給比は、20:1〜3:1の範囲である。
【0057】
図5(a)は、第1の工程における成膜位置等を示す図である。成膜位置は−90〜50である。したがって、開口部25の大きさは140mmである。上述の成膜位置は、入射角が90度となる基準成膜位置の−70を含んでいる。すなわち一方の成膜位置(−90)は、基準成膜位置の−70を超えている。その結果、本工程における入射角範囲である第1の入射角範囲β1は、略45度〜110度、すなわち90度を超える角度を含む範囲となる。
【0058】
図6は、本実施形態の無機配向膜の形成方法における、画素電極34が形成された基板10に対するスパッタ粒子27の堆積の態様を示す図である。
図6(a)は、第1の工程における上述の態様等を示している。図示するように、第1の入射角範囲β1が90度以上の領域を含んでいるため、画素電極34の両側からスパッタ粒子27が入射する。その結果、画素電極34の端部の段差の部分にもスパッタ粒子27が満遍なく堆積する。したがって、図6(b)に示すように、かかる段差の部分にも下層配向膜132が充分な膜厚で形成される。また、入射角範囲が広いため、カラム構造が形成されない。したがって、本工程で形成される下層配向膜132は液晶分子37を配向する機能は弱い代わりに、緻密な膜質を有することとなる。このように、下層配向膜132を形成した後、第2の工程としてスリット部材24を動作させて成膜位置を変更した上で、上層配向膜131を形成する。
【0059】
なお、本工程では基板10を矢印に示す方向すなわち逆方向に搬送しているが、順方向に搬送して成膜してもかまわない。本工程はカラム構造を有しない配向膜を形成する工程であり、また、入射角範囲が広く、かつ90度を含んでいるため、どちらの搬送方向を用いても緻密な構造を有する下層配向膜132を形成できる。
【0060】
図5(b)は、第2の工程における成膜位置等を示す図である。成膜位置は−50〜20である。したがって、開口部25の大きさは70mmである。上述の成膜位置は、入射角が90度となる基準成膜位置すなわち−70を含んでいない。その結果、本工程における入射角範囲である第2の入射角範囲β2は、略60度〜80度の範囲となる。すなわち、第1の工程における第1の入射角範囲β1に比べて狭い範囲であり、かつ90度以内に収まる範囲である。なお、本工程における基板10の搬送方向は矢印に示す方向すなわち順方向に限定される。
【0061】
図6(b)は、第2の工程における上述の態様等を示す図である。すなわち、下層配向膜132の上層にスパッタ粒子27が堆積する態様を示す図である。上述したように第2の入射角範囲β2が狭いため、画素電極34の片側のみからスパッタ粒子27が入射する。一方で、入射角範囲βが90度、すなわち基板10に対する直角方向を含まないため、カラム構造を有する無機配向膜が形成される。
【0062】
また、基板10は開口部25(図2参照)を順方向に横切る様に搬送されるため、入射角は80度から60度まで徐々に減少する。すなわち上層配向膜131の最上層は略60度の方向から入射したスパッタ粒子27で構成される。したがって、上層配向膜131が有するカラム構造は、全面で略均一な傾きを有することとなる。
【0063】
図7は、上述の第1の工程及び第2の工程を実施することにより基板10上に形成された無機配向膜31を、液晶分子37と共に示す図である。上述したように、下層配向膜132は画素電極34の両側からスパッタ粒子27を入射させて形成されているため、該画素電極による段差を完全に被っている。一方、上層配向膜131は略60度〜80度の範囲の入射角でスパッタ粒子27を入射させて形成されているためカラム構造を有しており、液晶分子37に均一なプレチルト角を付与できる。そして、上層配向膜131はカラム構造に起因する若干の隙間を有しているが、下層配向膜132が充分に緻密に形成されているため、液晶分子37と画素電極34との接触は抑制されている。そのため、本実施形態にかかる形成方法により得られた、上層配向膜131と下層配向膜132の2層構造を有する無機配向膜31は、液晶分子37を配向する機能と絶縁性を併せ持っている。したがって、上述の無機配向膜31を用いることで、信頼性と表示品質の双方が向上した液晶装置を得ることができる。
【0064】
また、本実施形態の無機配向膜の形成方法は、スリット部材24を動作させて成膜位置を変更することのみで、上述の上層配向膜131と下層配向膜132という、互いに異なる特性を有する2層の膜を形成している点にも特徴がある。このような形成方法であれば、基板10を成膜室2内に出し入れすることなく連続的に上述の互いに異なる性質を有する2層の膜を形成できるため、無機配向膜31の形成コストを低減できる。
【0065】
さらに、第1の工程として基板10を逆方向に搬送しつつ下層配向膜132を形成した後、第2の工程として基板10を順方向に搬送しつつ上層配向膜131を形成できるため、基板10を成膜室2内で一往復させるのみで無機配向膜31を形成できる。したがって、より一層低コストで無機配向膜31を形成できる。
【0066】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態の無機配向膜の形成方法は、成膜位置を定める際の基準となる基準成膜位置の算出方法が上述の第1の実施形態にかかる形成方法と異なっている。他の要素、すなわち無機配向膜31の形成に用いるスパッタ装置1及び搬送方法等は、第1の実施形態にかかる形成方法と同一である。そこで、本実施形態の無機配向膜の形成方法は、基準成膜位置の算出方法についてのみ説明する。
【0067】
<基準成膜位置の算出>
図8は、本実施形態の無機配向膜の形成方法において基準成膜位置の算出方法に用いるプレチルト角−成膜位置線図である。本実施形態の無機配向膜の形成方法は、基準成膜位置の算出をシミュレーションではなく実測により行なっている。かかる、基準成膜位置を実測により求める工程が、第4の工程である。
【0068】
本工程に用いる液晶装置は、上述の液晶装置100と類似する構造の液晶装置である。すなわち、スパッタ装置1(図2参照)を用いて無機配向膜31を形成した基板10を貼り合せて、図1に示す液晶装置100と類似する液晶装置100を形成する。成膜位置とスパッタ粒子27の入射角は略1:1で対応する。そして、無機配向膜31の最上層となるスパッタ粒子27の入射角とプレチルト角は、略1:1で対応する。したがって、上述の構造の液晶装置における液晶分子37のプレチルト角を実測することで、図8のプレチルト角−成膜位置線図を求めることができる。
【0069】
本工程における基準成膜位置の算出に用いる無機配向膜31の形成は、上述の第1の実施形態における無機配向膜31の成膜方法とは異なり、基板10を搬送せず固定して行なっている。基板10を搬送しつつスパッタ粒子27を入射させて基板面に無機配向膜31を形成した場合、最上層のスパッタ粒子27、すなわち最後に上述の基板10に入射して堆積するスパッタ粒子27の入射角は、基板面の全面で略同一となる。そのため、成膜位置とプレチルト角の関係を求めることができない。そこで、本実施形態における基準成膜位置の算出方法では、スリット部材24を全開にして開口部25を広く確保した上で、基板10を固定して所定の膜厚(50nm〜150nm)の無機配向膜31を形成する。そして、かかる基板10を用いて液晶装置を形成後、液晶分子37のプレチルト角をX方向に沿って測定して、図8のプレチルト角−成膜位置線図を得ている。
【0070】
図示するように、プレチルト角を実測することにより求めた基準成膜位置は−60mmであり、上述のシミュレーションによる結果とは若干異なっている。以下、かかる結果を基にスリット部材24の位置を設定して、下層配向膜132と上層配向膜131とからなる無機配向膜31を形成する。搬送方向等は、上述の第1の実施形態にかかる無機配向膜の形成方法と同様なので、説明の記載は省略する。
【0071】
成膜位置は上述の基準成膜位置の−60を基に決定する。下層配向膜132は、緻密であり、かつステップカバレッジ性が良好なことが求められる一方で、プレチルト角の制御機能は不要である。そこで、上述の基準成膜位置よりもプレチルト角が小さくなる成膜位置を含むようにスリット部材(24a、24b)の位置を設定する。本実施形態の無機配向膜の形成方法では、下層配向膜132を形成する第1の工程を実施する時の成膜位置を−80〜60としている。かかる成膜位置の設定で基板10に対してスパッタ粒子27を入射させることで、画素電極34(図6等参照)を覆い、かつ緻密な構造を有する下層配向膜132を形成できる。
【0072】
上層配向膜131は、ステップカバレッジ性はあまり求められない一方で、液晶分子37のプレチルト角が一定の角度となるように制御する機能が必要である。そこで、基準成膜位置の−60mmよりプレチルト角が小さくなる成膜位置を含まないようにスリット部材24の位置を設定する。本実施形態の無機配向膜31の形成方法では、上層配向膜131を形成する第2の工程を実施する時の成膜位置を−40〜30としている。かかる成膜位置の設定で基板10に対してスパッタ粒子27を入射させることで、カラム構造を有する上層配向膜131を形成できる。
【0073】
このように、プレチルト角の実測により算出した基準成膜位置に基づいて実際の成膜位置を決定して、第1の工程と第2の工程を連続的に実施することで、図7に示す無機配向膜31と同様の、液晶分子37を配向する機能と絶縁性を併せ持つ無機配向膜31を形成できる。その結果、信頼性と表示品質の双方が向上した液晶装置100を得ることができる。
【0074】
(変形例)
上述の実施形態では、シリコンからなるターゲット5を用いており、シリコンからなるスパッタ粒子27を飛翔中に酸素ガスと反応させて酸化シリコンとした上で、基板10の基板面に堆積させている。しかし本発明の実施の形態はかかる態様に限定されるものではなく、酸化シリコン(SiOx)あるいは酸化アルミニウム(AlOy等)からなるターゲット5を用いることもできる。
【符号の説明】
【0075】
1…スパッタ装置、2…成膜室、3…スパッタ粒子放出部、3A…箱型筐体部、3B…接続部、5a…第1のターゲット、5b…第2のターゲット、6…基板ホルダー、6a…移動手段、7…ヒーター、7a…制御部、8a…第1の冷却手段、8b…第2の冷却手段、8c…第3の冷却手段、9a…第1電極、9b…第2電極、10…素子基板、11…対向基板、16a…第1の磁界発生手段、16b…第2の磁界発生手段、18a…第1の冷媒循環手段、18b…第2の冷媒循環手段、18c…第3の冷媒循環手段、19…側壁部材、20…排気制御装置、20a…配管、21…第1のガス供給手段、22…第2のガス供給手段、24a…第1のスリット部材、24b…第2のスリット部材、25…開口部、27…スパッタ粒子、31…無機配向膜、31a…第1の無機配向膜、31b…第2の無機配向膜、32a…第1の遮光層、32b…第2の遮光層、34…画素電極、35…共通電極、36…液晶層、37…液晶分子、52…シール材、99…光変調領域、100…液晶装置、101…画像信号駆動回路、102…外部回路実装端子、104…走査信号駆動回路、106…基板間導通材、131…上層配向膜、132…下層配向膜、Pz…プラズマ、β…入射角範囲、β1…第1の入射角範囲、β2…第2の入射角範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ生成領域を挟むように対向配置された2つのターゲットを備えるスパッタ粒子放出部と、基板を水平方向に搬送する搬送手段を収容する成膜室と、を備えるスパッタ装置を用いて、搬送される前記基板にスパッタ粒子を入射させて、前記基板に接する下層配向膜と液晶分子に接し前記液晶分子の配向を制御する上層配向膜を含む無機配向膜を形成する方法であって、
前記スパッタ粒子の前記基板に対する入射角の範囲を入射角範囲と定義した場合において、前記下層配向膜を形成する工程である第1の工程における入射角範囲である第1の入射角範囲が、前記上層配向膜を形成する工程である第2の工程における入射角範囲である第2の入射角範囲に比べて広いことを特徴とする無機配向膜の形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の無機配向膜の形成方法であって、
前記基板の法線方向を90度とした場合において、前記第1の入射角範囲は90度を超える角度を含むことを特徴とする無機配向膜の形成方法。
【請求項3】
請求項2に記載の無機配向膜の形成方法であって、
前記第2の入射角範囲は90度〜60度の範囲であることを特徴とする無機配向膜の形成方法。
【請求項4】
請求項3に記載の無機配向膜の形成方法であって、
前記スパッタ装置は、前記成膜室と前記スパッタ粒子放出部との間に前記基板が搬送される搬送方向に沿って動作するスリット部材を備えるスパッタ装置であり、
前記第1の工程及び前記第2の工程は、前記スリット部材の動作により寸法が変化する開口部を介して前記スパッタ粒子を入射させる工程であることを特徴とする無機配向膜の形成方法。
【請求項5】
請求項4に記載の無機配向膜の形成方法であって、
前記スパッタ装置は、前記2つのターゲットが、前記搬送方向と前記法線方向とに直交する線を軸として、前記法線方向に対して所定角度回転させた状態で固定されたスパッタ装置であり、
前記第2の工程は、前記2つのターゲットと前記法線方向とが成す角度が鋭角である側から鈍角である側へと向かう方向を順方向とした場合において、前記基板を順方向に搬送しつつ該基板に前記スパッタ粒子を入射させる工程であることを特徴とする無機配向膜の形成方法。
【請求項6】
請求項5に記載の無機配向膜の形成方法であって、
前記入射角が90度となる前記基板の前記スパッタ粒子放出部に対する相対位置である成膜位置をシミュレーションにより算出する第3の工程をあらかじめ実施し、
前記第1の工程及び前記第2の工程は、前記第3の工程で得られた成膜位置を基準に前記スリット部材を動作させて行うことを特徴とする無機配向膜の形成方法。
【請求項7】
請求項5に記載の無機配向膜の形成方法であって、
前記基板を固定した状態で前記無機配向膜を形成し、次に該基板を用いて液晶装置を形成し、次に該液晶装置のプレチルト角を測定して該プレチルト角が0度となる前記基板の前記スパッタ粒子放出部に対する相対位置である成膜位置を算出する第4の工程をあらかじめ実施し、
前記第1の工程及び前記第2の工程は、前記第4の工程で得られた成膜位置を基準に前記スリット部材を動作させて行うことを特徴とする無機配向膜の形成方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の無機配向膜の形成方法を用いて形成された無機配向膜を備えたことを特徴とする液晶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−133271(P2012−133271A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287181(P2010−287181)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】