無線装置
【課題】緊急パケットの到達率を向上可能な無線装置を提供する。
【解決手段】無線装置1の緊急パケット発生手段115は、外部から受けた緊急情報を含む緊急パケットを発生してMACモジュール112を介して送受信手段111へ出力するとともに、信号OEMGを発生して定期パケット発生手段114へ出力し、送受信手段111は、周波数チャネルftおよび拡散符号Code_tを用いて緊急パケットを送信する。また、送受信手段111の転送処理部1111は、緊急パケットを受けると、信号REMGを生成して定期パケット発生手段114へ出力するとともに、ヘッダを更新し、その更新したヘッダを一時記憶したヘッダ以外の部分に付加して緊急パケットを転送する。定期パケット発生手段114は、信号OEMG,REMGに応じて、定期パケット停止期間の間、定期パケットの送信および転送を禁止する。
【解決手段】無線装置1の緊急パケット発生手段115は、外部から受けた緊急情報を含む緊急パケットを発生してMACモジュール112を介して送受信手段111へ出力するとともに、信号OEMGを発生して定期パケット発生手段114へ出力し、送受信手段111は、周波数チャネルftおよび拡散符号Code_tを用いて緊急パケットを送信する。また、送受信手段111の転送処理部1111は、緊急パケットを受けると、信号REMGを生成して定期パケット発生手段114へ出力するとともに、ヘッダを更新し、その更新したヘッダを一時記憶したヘッダ以外の部分に付加して緊急パケットを転送する。定期パケット発生手段114は、信号OEMG,REMGに応じて、定期パケット停止期間の間、定期パケットの送信および転送を禁止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線装置に関し、特に、マルチチャネルを用いて無線通信を行なう無線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カットスルー方式によってパケットを転送する高速転送技術が知られている(非特許文献1)。
【0003】
この高速転送技術は、パケットを受信し始めると、そのパケットのヘッダを参照して、そのパケットが中継パケットであると判定すると、そのパケットをそのまま転送するものである。
【非特許文献1】酒井 敏宏、門脇 直人、板谷 聡子、Nouri Shirazi Mahdad、小花 貞夫,“アドホック無線通信システムの高レスポンス化に関する提案”,電子情報通信学会技術研究報告,RCS−2006−128(2006−8).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、定期パケットと緊急パケットとを送受信する無線ネットワークにおいては、各無線装置が従来のカットスルー方式を用いてパケットを中継すると、多くの定期パケットおよび緊急パケットが送受信され、緊急パケットの到達率を向上させることが困難であるという問題がある。
【0005】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、緊急パケットの到達率を向上可能な無線装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によれば、無線装置は、複数の周波数から選択した1個の周波数と複数の拡散符号から選択した1個の拡散符号とを用いてパケットを送受信する無線装置であって、第1および第2の送信手段と、受信手段とを備える。第1の送信手段は、当該無線装置の位置情報を含む定期パケットを1個の周波数と1個の拡散符号とを用いて定期的に送信する。第2の送信手段は、緊急情報を含む緊急パケットを1個の周波数と1個の拡散符号とを用いて送信する。受信手段は、他の無線装置から送信されたパケットを複数の周波数のいずれかで受信するとともに、その受信したパケットのヘッダのみを復調して、受信したパケットが緊急パケットであると判定したとき、パケットのヘッダ以外の部分を復調せずに緊急パケットを転送する高速転送処理を実行する。そして、第1の送信手段は、緊急情報が発生したとき、または受信手段によって受信されたパケットが緊急パケットであるとき、定期パケット停止期間の間、定期パケットの送信および転送を禁止する。また、第2の送信手段は、緊急情報が発生すると、緊急パケットを規定回数だけ繰り返し送信する。
【0007】
好ましくは、受信手段は、ヘッダが緊急パケットを示すフラグを含むとき、パケットが緊急パケットであると判定し、ヘッダを更新するとともに一時記憶したヘッダ以外の部分に更新したヘッダを付加して転送する。
【0008】
好ましくは、受信手段は、物理層に属し、受信したパケットが緊急パケットであると判定したとき、緊急パケットを物理層よりも上位の層へ上げることなく緊急パケットを転送する。
【0009】
好ましくは、受信手段は、受信した緊急パケットを転送するか否かを判断するための転送テーブルを保持しており、転送テーブルを参照して、緊急パケットの転送実績がないと判定したとき、高速転送処理を実行し、緊急パケットの転送実績があると判定したとき、高速転送処理を実行しない。
【0010】
好ましくは、転送テーブルは、受信手段によって受信されたパケットの発信元と、パケットの生成順を示すシーケンス番号と、当該無線装置に対するパケットの発信元の存在方向を示す相対方向とが相互に対応付けられた構成からなる。受信手段は、受信したパケットが緊急パケットであり、かつ、緊急パケットの発信元に対応する転送テーブル中のシーケンス番号が零または緊急パケットに含まれるシーケンス番号よりも小さい値からなるとき、高速転送処理を実行するとともに、転送テーブル中のシーケンス番号を緊急パケットに含まれるシーケンス番号に更新する。
【0011】
好ましくは、受信手段は、受信したパケットのヘッダに含まれる緊急パケットの転送方向に合致する相対方向が転送テーブルに含まれているとき、緊急パケットを転送する。
【0012】
好ましくは、第2の送信手段は、当該無線装置が緊急情報の発生元であるとき、繰返し送信期間タイマーを起動し、繰返し送信期間タイマーが満了する毎に緊急パケットを送信する処理を規定回数だけ繰り返し実行する。また、第1の送信手段は、緊急情報が発生したことを示す信号を第2の送信手段から受ける毎に、または緊急パケットを受信したことを示す信号を受信手段から受ける毎に、定期パケット停止期間タイマーを起動し、その起動した定期パケット停止期間タイマーが満了するまでの間、定期パケットの送信および転送を禁止する。
【0013】
好ましくは、第2の送信手段は、当該無線装置が同じ拡散符号の使用が不可能な一定領域内に存在するとき、他の無線装置における拡散符号と異なる拡散符号を用いて緊急パケットを送信し、当該無線装置が一定領域外に存在し、かつ、当該無線装置における干渉波の強度に対する所望波の強度の比がプロセスゲインの範囲であるとき、複数の拡散符号から任意に選択した拡散符号を用いて緊急パケットを送信する。受信手段は、当該無線装置が一定領域内に存在するとき、他の無線装置における拡散符号と異なる拡散符号を用いて緊急パケットを転送し、当該無線装置が一定領域外に存在し、かつ、当該無線装置における干渉波の強度に対する所望波の強度の比がプロセスゲインの範囲であるとき、複数の拡散符号から任意に選択した拡散符号を用いて緊急パケットを転送する。
【0014】
好ましくは、受信手段は、Rake受信方式によって複数の他の無線装置からの複数のパケットを受信する。
【発明の効果】
【0015】
この発明においては、無線装置は、緊急情報が発生すると、定期パケット停止期間の間、定期パケットの送信および転送を禁止し、緊急情報を含む緊急パケットを規定回数だけ送信する。また、無線装置は、緊急パケットを他の無線装置から受信すると、定期パケット停止期間の間、定期パケットの送信および転送を禁止し、緊急パケットを転送する。その結果、定期パケットの停止が他の無線装置へ順次伝達され、緊急パケットの到達領域が順次拡大される。
【0016】
従って、この発明によれば、緊急パケットの到達率を向上できる。
【0017】
また、この発明においては、無線装置は、拡散符号を用いて緊急パケットを送信または転送する。その結果、CSMA方式に比べ、緊急パケットの繰返し送信間隔が短く設定される。
【0018】
従って、この発明によれば、緊急パケットを高速に伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0020】
図1は、この発明の実施の形態による無線ネットワークの概略図である。この発明の実施の形態による無線ネットワーク10は、無線装置1〜8を備える。無線装置1〜8は、それぞれ、車両C1〜C8に搭載される。そして、無線装置1〜8は、自律的に無線ネットワークを構成する。
【0021】
車両C1〜C8は、道路を走行し、交差点を通過する。このような場合、各車両C1〜C8は、信号機が交差点に設置されていなければ、出会い頭衝突事故を起こすこともあるので、このような事故を防止する必要がある。また、各車両C1〜C8は、自己の前方で交通事故が発生したことを検知した場合、前方における交通事故の発生を後方の車両へ知らせる必要がある。更に、各車両C1〜C8は、後方から救急車が近づいて来ていることを検知した場合、救急車の接近を前方の車両へ知らせる必要がある。
【0022】
そこで、以下においては、交通事故の発生を防止するとともに、救急車等の緊急車両のスムーズな走行を確保するために、各無線装置1〜8が自己の周辺を走行している他の車両の位置情報を検知するとともに、交通事故の発生または緊急車両の接近を知らせるための緊急パケットの他の無線装置への到達率を向上させる方法について説明する。
【0023】
図2は、拡散符号と周波数との関係を示す図である。図2において、縦軸は、拡散符号を表し、横軸は、周波数を表す。15個の拡散符号Code1〜Code15は、周波数f1〜f4の各々に対して割り当てられる。
【0024】
従って、各無線装置1〜8は、後述する方法によって、周波数f1〜f4から1つの周波数ft(周波数f1〜f4のいずれか)を選択するとともに、拡散符号Code1〜Code15から1つの拡散符号Code_t(拡散符号Code1〜Code15のいずれか)を選択し、その選択した周波数ftおよび拡散符号Code_tを用いてパケットを送信する。
【0025】
また、各無線装置1〜8は、後述する方法によって、周波数f1〜f4から1つの周波数fd(周波数f1〜f4のいずれか)を選択するとともに、拡散符号Code1〜Code15から1つの拡散符号Code_d(拡散符号Code1〜Code15のいずれか)を選択し、その選択した周波数fdおよび拡散符号Code_dを用いてパケットを受信する。
【0026】
図3は、図1に示す無線装置1の構成を示す概略図である。無線装置1は、通信制御部11と、GPS(Global Positioning System)受信機12とを備える。
【0027】
通信制御部11は、階層構造からなり、送受信手段111と、MAC(Media Access Control)モジュール112と、処理手段113と、定期パケット発生手段114と、緊急パケット発生手段115とを含む。
【0028】
GPS受信機12は、GPS衛星からGPS信号を定期的に受信し、その受信したGPS信号を処理手段113および定期パケット発生手段114へ出力する。
【0029】
送受信手段111は、物理層に属し、転送処理部1111を含む。そして、送受信手段111は、他の無線装置からパケットPKTを受信すると、後述する方法によって、4個の周波数f1〜f4および15個の拡散符号Code1〜Code15によって構成される60個のチャネルの各々におけるパケットPKTの受信信号強度である60個の評価値を演算する。その後、送受信手段111は、その演算した60個の評価値のち、最大の評価値が得られたときの周波数fdおよび拡散符号Code_dを選択するとともに、60個の評価値のうち、最小の評価値が得られたときの周波数ftおよび拡散符号Code_tを選択する。
【0030】
送受信手段111は、周波数fdおよび拡散符号Code_dを選択すると、周波数チャネルfdにおけるパケットPKTのヘッダのみを復調するとともに、拡散符号Code_dによって逆拡散し、その逆拡散後のヘッダのみをデコードする。そして、送受信手段111は、ヘッダを参照してパケットPKTが緊急パケットPKT_EMGであるか定期パケットPKT_PRDであるかを判定する。
【0031】
送受信手段111は、パケットPKTが緊急パケットPKT_EMGであると判定したとき、緊急パケットPKT_EMGの転送の要否の判定処理およびその判定結果に応じた緊急パケットPKT_EMGの転送処理を転送処理部1111によって実行する。その後、送受信手段111は、周波数チャネルfdにおけるパケットPKTのヘッダ以外の部分も復調するとともに、拡散符号Code_dによって逆拡散し、その逆拡散後のヘッダ以外の部分をデコードする。そして、送受信手段111は、そのデコードしたパケットPKT(=緊急パケットPKT_EMG)をMACモジュール112へ出力する。
【0032】
一方、送受信手段111は、パケットPKTが定期パケットPKT_PRDであると判定したとき、周波数チャネルfdにおけるパケットPKTのヘッダ以外の部分を復調するとともに、拡散符号Code_dによって逆拡散し、その逆拡散後のヘッダ以外の部分をデコードする。そして、送受信手段111は、そのデコードしたパケットPKT(=定期パケットPKT_PRD)をMACモジュール112へ出力する。
【0033】
また、送受信手段111は、MACモジュール112からパケットPKT(定期パケットPKT_PRDまたは緊急パケットPKT_EMG)を受けると、その受けたパケットPKTにプリアンブル(PR)およびユニークワード(UW)を付加し、そのプリアンブル(PR)およびユニークワード(UW)を付加したパケットPKTを拡散符号Code_tによってスペクトル拡散するとともに、その拡散したパケットPKTを周波数チャネルftで送信する。
【0034】
更に、送受信手段111は、定期パケットPKT_PRDの送信元のアドレスと無線装置1に対する送信元の存在方向を示す相対方向とを処理手段113から定期的に受ける。そして、送受信手段111は、その受けた送信元のアドレスと相対方向とを用いて、後述する方法によって、緊急パケットPKT_EMGを転送すべきか否かを判定するための転送テーブルを作成または更新し、その作成または更新した転送テーブルを保持する。
【0035】
転送処理部1111は、送受信手段111によってパケットPKTが緊急パケットPKT_EMGであると判定されると、緊急パケットPKT_EMGを受信したことを示す信号REMGを生成して定期パケット発生手段114へ出力する。
【0036】
また、転送処理部1111は、転送テーブルを参照して、後述する方法によって、緊急パケットPKT_EMGを転送すべきか否かを判定する。そして、転送処理部1111は、緊急パケットPKT_EMGを転送すべきと判定したとき、後述する方法によって、緊急パケットPKT_EMGのヘッダを更新するとともに、一時記憶バッファに記憶しておいたヘッダ以外の部分にヘッダを付加して緊急パケットPKT_EMGを転送する。この場合、転送処理部1111は、ヘッダをエンコードし、そのエンコード後のヘッダを拡散符号Code_dによってスペクトル拡散する。そして、転送処理部1111は、その拡散後のヘッダをヘッダ以外の部分に付加して緊急パケットPKT_EMGを再構築し、その再構築した緊急パケットPKT_EMGを周波数チャネルfdで転送する。
【0037】
MACモジュール112は、MAC層に属し、定期パケット発生手段114から受けた定期パケットPKT_PRDまたは緊急パケット発生手段115から受けた緊急パケットPKT_EMGに対してMACヘッダの付加等のMAC部における制御および処理を行なう。そして、MACモジュール112は、定期パケットPKT_PRDまたは緊急パケットPKT_EMGを送受信手段111へ出力する。
【0038】
また、MACモジュール112は、送受信手段111から定期パケットPKT_PRDまたは緊急パケットPKT_EMGを受け、その受けた定期パケットPKT_PRDまたは緊急パケットPKT_EMGからMACヘッダを除去等して定期パケットPKT_PRDまたは緊急パケットPKT_EMGを処理手段113へ出力する。
【0039】
処理手段113は、上位層に属し、他の無線装置から送信された定期パケットPKT_PRDまたは緊急パケットPKT_EMGをMACモジュール112から受ける。そして、処理手段113は、定期パケットPKT_PRDから定期パケットPKT_PRDの送信元のアドレスと、送信元のGPS信号とを取り出す。なお、GPS信号は、緯度、経度、速度、進行方向(=方位)、および時刻からなる。
【0040】
また、処理手段113は、GPS受信機12から無線装置1のGPS信号を受ける。そして、処理手段113は、公知の方法によって、無線装置1のGPS信号の緯度および経度を無線装置1の位置情報(x,y座標からなる)に変換するとともに、他の無線装置のGPS信号の緯度および経度を他の無線装置の位置情報に変換する。その後、処理手段113は、無線装置1の位置情報と他の無線装置の位置情報とに基づいて、無線装置1に対する他の無線装置の相対位置を求めるとともに、無線装置1に対する他の無線装置の存在方向を示す相対方向を求める。
【0041】
そうすると、処理手段113は、他の無線装置のアドレス、他の無線装置のGPS信号、他の無線装置の相対位置および他の無線装置の相対方向に基づいて、周辺車両情報テーブルを作成または更新し、その作成または更新した周辺車両情報テーブルを保持する。
【0042】
そして、処理手段113は、周辺車両情報テーブルから他の無線装置のアドレスおよび相対方向を定期的(例えば、100msec毎)に取り出して送受信手段111へ出力する。
【0043】
更に、処理手段113は、他の無線装置のアドレスおよび他の無線装置のGPS信号を定期パケット発生手段114へ出力する。
【0044】
更に、処理手段113は、緊急パケットPKT_EMGから緊急情報を取り出し、その取り出した緊急情報を表示手段(図示せず)によってドライバーに視聴覚情報として与える。
【0045】
定期パケット発生手段114は、上位層に属し、GPS受信機12から無線装置1のGPS信号を定期的に受け、処理手段113から他の無線装置のアドレスおよび他の無線装置のGPS信号を受ける。そして、定期パケット発生手段114は、無線装置1のアドレス/無線装置1のGPS信号と、他の無線装置のアドレス/他の無線装置のGPS信号とを含む定期パケットPKT_PRDを発生し、その発生した定期パケットPKT_PRDをMACモジュール112を介して定期的に送信する。
【0046】
また、定期パケット発生手段114は、送受信手段111の転送処理部1111から信号REMGを受ける毎に、または緊急情報が発生したことを示す信号OEMGを緊急パケット発生手段115から受ける毎に、内蔵した定期パケット停止期間タイマー(図示せず)を起動し、その起動した定期パケット停止期間タイマーが満了するまで、定期パケットPKT_PRDの送信及び転送を禁止する。そして、定期パケット発生手段114は、定期パケット停止期間タイマーが満了すると、定期パケットPKT_PRDの定期的な送信及び転送を再開する。
【0047】
このように、緊急情報が発生し、緊急パケットPKT_EMGの送信および転送が行なわれている期間、緊急パケットPKT_EMGの送信および転送に対する優先度を上げ、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を規定期間(=定期パケット停止期間)の間、停止させることで、緊急パケットPKT_EMGの通信品質(パケット到着率)を向上させる。
【0048】
緊急パケット発生手段115は、無線装置1が搭載された車両C1のドライバーが交通事故の発生または緊急車両の接近を示す情報を緊急情報として無線装置1へ入力することによって、緊急情報を外部から受ける。
【0049】
そして、緊急パケット発生手段115は、緊急情報を受けると、緊急情報と、無線装置1のアドレスと、シーケンス番号(SEQ_A)と、伝達方向とを含む緊急パケットPKT_EMGを発生し、その発生した緊急パケットPKT_EMGをMACモジュール112を介して送信する。
【0050】
その後、緊急パケット発生手段115は、緊急パケットPKT_EMGの送信回数が規定回数に達したか否かを判定する。そして、緊急パケット発生手段115は、緊急パケットPKT_EMGの送信回数が規定回数に達したと判定したとき、緊急パケットPKT_EMGの送信を停止する。
【0051】
一方、緊急パケット発生手段115は、緊急パケットPKT_EMGの送信回数が規定回数に達していないと判定したとき、内蔵した繰返し送信間隔タイマー(図示せず)を起動し、その起動した繰返し送信間隔タイマーが満了すると、信号OEMGを生成して定期パケット発生手段114へ出力する。緊急パケット発生手段115は、緊急パケットPKT_EMGの送信回数が規定回数に達するまで、緊急パケットPKT_EMGの送信、繰返し送信間隔タイマーの起動および信号OEMGの定期パケット発生手段114への出力を繰返し行なう。
【0052】
なお、図1に示す無線装置2〜8の各々は、図3に示す無線装置1と同じ構成からなる。
【0053】
図4は、パケットのフォーマットを示す図である。パケットPKTは、プリアンブル(PR)と、ユニークワード(UW)と、DATA_Aと、DATA_Bと、DATA_Cとを含む。
【0054】
DATA_Aは、CTと、CRC_Aとを含む。DATA_Bは、MACと、LLC(Logical Link Control)と、CRC_Bとを含む。DATA_Cは、LSDU(Link Service Data Unit)と、CRC_Cとを含む。
【0055】
CTは、緊急パケットであるか否かを判断するためのフラグFLGと、緊急情報の発信元の無線装置を識別する識別番号ID_Sと、緊急パケットPKT_EMGの転送元である無線装置を識別する識別番号ID_Tと、緊急パケットPKT_EMGの伝達方向DRと、緊急パケットPKT_EMGの生存期間TTLと、緊急パケットPKT_EMGのシーケンス番号SEQ_Aとを含む。
【0056】
CRC_A,CRC_B,CRC_Cの各々は、誤り検出符号である。MACは、MAC制御を行なうためのフィールドである。LLCは、LLC制御を行なうためのフィールドである。LSDUは、リンクサービスデータ単位であり、シーケンス番号SEQ_Bを含む。
【0057】
CTは、CRC_Aによって誤り検出され、MACおよびLLCは、CRC_Bによって誤り検出され、LSDUは、CRC_Cによって誤り検出される。
【0058】
プリアンブル(PR)およびユニークワード(UW)は、送受信手段111によって付加される。なお、各領域に対する誤り訂正符号は、FEC1,FEC2およびFEC3であり、図4のパケットフォーマットに示した通りである。
【0059】
パケットPKTが緊急パケットPKT_EMGであるとき、フラグFLGには、“ON”情報が格納され、パケットPKTが定期パケットPKT_PRDであるとき、フラグFLGには、“OFF”情報が格納される。
【0060】
そして、この発明においては、CTおよびCRC_Aは、ヘッダHEDを構成する。
【0061】
図5は、受信信号を拡散符号によって逆拡散して得られる評価値の演算に用いるパケット中のシンボル部の概念図である。
【0062】
シンボル部は、受信されたパケットPKTの任意の位置からなる。即ち、シンボル部は、各無線装置1〜8においてパケットの送信が発生したときに各無線装置1〜8が受信しているパケットの一部に相当する。例えば、各無線装置1〜8においてパケットの送信が発生したときに各無線装置1〜8がパケットの中央部を受信しているのであれば、パケットの中央部がシンボル部になり、各無線装置1〜8がパケットの先頭部を受信しているのであれば、パケットの先頭部がシンボル部になり、各無線装置1〜8がパケットの後部を受信しているのであれば、パケットの後部がシンボル部になる。つまり、パケットの送信が発生したときに各無線装置1〜8が受信している部分がシンボル部になる。そして、シンボル部は、N(Nは、2以上の整数)個のシンボルからなる。
【0063】
周波数f(f=f1〜f4)における受信信号を拡散符号k(k=Code1〜Code15)によって逆拡散して得られた値(複素数)の絶対値をN個のシンボルにわたって平均化した値を<ξk>av,fとする。N個のシンボルのうちのs(s=1〜N)番目のシンボルにおいて、受信信号を拡散符号kによって逆拡散して得られる値ξIk,s,fおよびξQk,s,fをそれぞれ次の式(1)および式(2)によって求める。
【0064】
【数1】
【0065】
【数2】
【0066】
なお、式(1)において、Iは、周波数fにおける受信信号の実数成分を表し、Qは、周波数fにおける受信信号の虚数成分を表す。
【0067】
そして、各シンボルの干渉量の大きさξk,s,fを次式によって求める。
【0068】
【数3】
【0069】
そして、干渉量の大きさξk,s,fを次式によってN個のシンボルについて平均化し、評価値<ξk>av,fを求める。
【0070】
【数4】
【0071】
従って、送受信手段111は、上述した式(1)〜式(4)を用いて評価値<ξk>av,fを全ての周波数f1〜f4および全ての拡散符号Code1〜Code15に対して求め、その求めた60個の評価値<ξCode1>av,f〜<ξCode15>av,f(f=f1〜f4)のうち、最も小さい評価値が得られる周波数および拡散符号をそれぞれ干渉量が少ない周波数ftおよび拡散符号Code_tとして選択する。
【0072】
また、送受信手段111は、60個の評価値<ξCode1>av,f〜<ξCode15>av,f(f=f1〜f4)のうち、最も大きい評価値が得られる周波数および拡散符号をそれぞれ周波数fdおよび拡散符号Code_dとして選択する。
【0073】
図6は、周辺車両情報テーブルの構成を示す図である。周辺車両情報テーブル20は、無線装置IDと、時刻と、位置情報と、シーケンス番号SEQ_Bと、相対位置と、相対方向とからなる。
【0074】
無線装置ID、時刻、位置情報、シーケンス番号SEQ_B、相対位置、および相対方向は、相互に対応付けられる。無線装置IDは、定期パケットPKT_PRDの送信元の識別情報を示し、定期パケットPKT_PRDの送信元のアドレスからなる。
【0075】
時刻は、位置情報を取得した時刻を示し、時/分/秒(HHHH/MMMM/SSSS)からなっており、アプリケーションに応じて、年/月/日(YYYY/MMMM/DDDD)の情報を付加してもよい。位置情報は、緯度、経度、方位および速度からなる。シーケンス番号SEQ_Bは、定期パケットPKT_PRDの送信元によって付与され、正の整数からなる。そして、シーケンス番号SEQ_Bは、定期パケットPKT_PRDの生成順を示す。従って、シーケンス番号SEQ_Bの数値が大きい程、定期パケットPKT_PRDが新しいことを表す。
【0076】
相対位置は、周辺車両情報テーブル20を作成する無線装置の位置に対する定期パケットPKT_PRDの送信元の位置からなる。相対方向は、周辺車両情報テーブル20を作成する無線装置に対する定期パケットPKT_PRDの送信元の存在方向からなる。
【0077】
図7は、転送テーブルの構成を示す図である。転送テーブル30は、無線装置IDと、シーケンス番号(SEQ_A)と、相対方向とからなる。無線装置ID、シーケンス番号(SEQ_A)、および相対方向は、相互に対応付けられる。
【0078】
無線装置IDは、定期パケットPKT_PRDの送信元のアドレスからなる。図7中のシーケンス番号(SEQ_A)は、“0”または緊急パケットPKT_EMGのヘッダHEDに含まれるシーケンス番号SEQ_Aからなる。相対方向は、転送テーブル30を作成する無線装置に対する定期パケットPKT_PRDの送信元の存在方向からなる。
【0079】
なお、無線装置IDおよび相対方向は、それぞれ、図6に示す周辺車両情報テーブル20における無線装置IDおよび相対方向からなる。
【0080】
ここで、図3に示す転送処理部1111における緊急パケットPKT_EMGの転送の要否を判定する判定方法について説明する。
【0081】
転送処理部1111は、送受信手段111によってパケットPKTが緊急パケットPKT_EMGであると判定されると、緊急パケットPKT_EMGのヘッダHEDを参照して、緊急パケットPKT_EMGの生存期間TTLが有効であるか否かを判定し、ヘッダHEDに含まれる伝達方向DRが転送テーブル30に登録されている相対方向と一致するか否かを判定する。
【0082】
そして、転送処理部1111は、生存期間TTLが有効であり、かつ、ヘッダHEDに含まれる伝達方向DRが転送テーブル30に登録されている相対方向に一致すると判定したとき、転送テーブル30中のシーケンス番号(SEQ_A)が“0”からなるか否かを判定する。
【0083】
転送処理部1111は、この判定において、転送テーブル30中のシーケンス番号(SEQ_A)が“0”からなると判定したとき、該緊急パケットPKT_EMGを未転送と判断でき、緊急パケットPKT_EMGを転送すべきと判定する。
【0084】
一方、転送処理部1111は、転送テーブル30中のシーケンス番号(SEQ_A)が“0”ではないと判定したとき、緊急パケットPKT_EMGのヘッダHEDに含まれるシーケンス番号SEQ_Aと転送テーブル30中のシーケンス番号(SEQ_A)とを比較する。そして、転送処理部1111は、シーケンス番号SEQ_Aが転送テーブル30中のシーケンス番号(SEQ_A)よりも大きいとき、緊急パケットPKT_EMGを転送すべきと判定し、シーケンス番号SEQ_Aが転送テーブル30中のシーケンス番号(SEQ_A)以下であるとき、緊急パケットPKT_EMGを転送すべきでないと判定する。つまり、転送処理部1111は、転送テーブル30中のシーケンス番号(SEQ_A)が“0”ではないとき、通常のシーケンス番号の使用方法に基づいて、緊急パケットPKT_EMGを転送すべきか否かを判定する。
【0085】
図8は、交通状況を示す図である。また、図9は、定期パケットのタイミングチャートを示す図である。更に、図10は、周辺車両情報テーブルの第1の例を示す図である。更に、図11は、転送テーブルの第1の例を示す図である。更に、図12は、周辺車両情報テーブルの第2の例を示す図である。更に、図13は、転送テーブルの第2の例を示す図である。
【0086】
なお、図9において、上向きの矢印は、定期パケットPKT_PRDの送信を表す。また、図9においては、図を見易くするために、定期パケットPKT_PRDの受信を示す下向きの矢印を省略している。
【0087】
図8に示すように、車両C1〜C3,C6,C7は、道路RD1を交差点CRへ向かって走行しており、車両C4は、道路RD4を交差点CRへ向かって走行しており、車両C5は、道路RD2を交差点CRから遠ざかる方向へ走行しており、車両C8は、道路RD3を交差点CRから遠ざかる方向へ走行している。
【0088】
このような、状況において、車両C1〜C8にそれぞれ搭載された無線装置1〜8は、図9に示すように、上述した方法によって周期Tcで定期パケットPKT_PRDを発生するとともに、その発生した定期パケットPKT_PRDを送信する。
【0089】
その結果、車両C2に搭載された無線装置2の処理手段113は、他の無線装置から受信した定期パケットPKT_PRDに含まれる他の無線装置1,3〜8のアドレスおよびGPS信号と、自己のGPS信号とに基づいて、上述した方法によって、図10に示す周辺車両情報テーブル20−1を作成する。
【0090】
そして、無線装置2の処理手段113は、周辺車両情報テーブル20−1から無線装置IDと相対方向との組[Add1/前方],[Add3/後方],[Add4/前方],[Add5/左前方],[Add6/前方],[Add7/前方],[Add8/右前方]を取り出し、その取り出した組[Add1/前方],[Add3/後方],[Add4/前方],[Add5/左前方],[Add6/前方],[Add7/前方],[Add8/右前方]を送受信手段111へ出力する。
【0091】
そうすると、無線装置2の送受信手段111は、処理手段113から組[Add1/前方],[Add3/後方],[Add4/前方],[Add5/左前方],[Add6/前方],[Add7/前方],[Add8/右前方]を受け、その受けた組[Add1/前方],[Add3/後方],[Add4/前方],[Add5/左前方],[Add6/前方],[Add7/前方],[Add8/右前方]に基づいて、上述した方法によって、図11に示す転送テーブル30−1を作成する。この場合、無線装置2の送受信手段111は、無線装置1,3〜8からの緊急パケットPKT_EMGを転送した実績がないので、シーケンス番号に“0”を格納して転送テーブル30−1を作成する。
【0092】
同様にして、無線装置1の処理手段113は、図12に示す周辺車両情報テーブル20−2を作成し、無線装置1の送受信手段111は、図13に示す転送テーブル30−2を作成する。
【0093】
なお、図示していないが、無線装置3〜8も、同様にして、周辺車両情報テーブル20および転送テーブル30を作成する。
【0094】
このように、緊急情報が発生していない状況においては、各無線装置1〜8は、定期パケットPKT_PRDを定期的に送受信して周辺車両情報テーブル20および転送テーブル30を作成し、その作成した周辺車両情報テーブル20に基づいて、他の無線装置が搭載された車両の位置、相対位置、進行方向および相対方向を検知し、その検知した車両の位置、相対位置、進行方向および相対方向に基づいて、交差点における出会い頭衝突事故防止のための安全支援として、車両接近の情報をドライバーに伝える。
【0095】
図14は、他の交通状況を示す図である。また、図15は、緊急パケットのタイミングチャートを示す図である。更に、図16および図17は、それぞれ、転送テーブルの第3および第4の例を示す図である。
【0096】
なお、図15においては、×は、定期パケットの送信キャンセルを表し、点線の矢印は、定期パケット停止期間を表し、上向きの矢印は、定期パケット送信を表し、太い上向きの矢印は、緊急パケットPKT_EMGの送信を表し、太い下向きの矢印は、緊急パケットPKT_EMGの受信を表す。
【0097】
図14に示すように、救急車が後方から車両C3に接近した場合、無線装置3の緊急パケット発生手段115は、外部から緊急情報を受けると、信号OEMGを生成して定期パケット発生手段114へ出力する。
【0098】
無線装置3の定期パケット発生手段114は、緊急パケット発生手段115から信号OEMGを受けると、定期パケット停止期間タイマーを起動し、定期パケット停止期間タイマーが満了するまで定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する。
【0099】
その後、無線装置3の緊急パケット発生手段115は、周辺車両情報テーブル20を参照して、救急車が後方から車両C3へ接近していることを検知し、後方から救急車が接近していることを車両C3の前方に位置する車両に通知する必要があると判断する。そして、無線装置3の緊急パケット発生手段115は、緊急パケットPKT_EMG1を他の車両に搭載された無線装置へ送信するために、緊急パケットPKT_EMGであることを示すフラグFLG=ON、送信元の識別番号ID_S=Add3、中継無線装置ID_T=Add3、伝達方向=前方、生存期間TTL=4、シーケンス番号SEQ_A=10および緊急情報(=救急車の接近)を含む緊急パケットPKT_EMG1=[ON/Add3/Add3/前方/4/10/救急車の接近]を発生し、その発生した緊急パケットPKT_EMG1=[ON/Add3/Add3/前方/4/10/救急車の接近]をMACモジュール112を介して送受信手段111へ出力する。この場合、緊急情報(=救急車の接近)は、シーケンス番号SEQ_Bと共にパケットPKTのLSDU(図4参照)に格納される。
【0100】
そして、無線装置3の送受信手段111は、プリアンブル(PR)およびユニークワード(UW)を緊急パケットPKT_EMG1に付加し、そのプリアンブル(PR)およびユニークワード(UW)を付加した緊急パケットPKT_EMG1を拡散符号Code_tでスペクトル拡散し、その拡散後の緊急パケットPKT_EMG1を周波数チャネルftで送信する。
【0101】
その後、無線装置3の緊急パケット発生手段115は、緊急パケットPKT_EMG1の送信回数が規定回数に達したか否かを判定し、緊急パケットPKT_EMG1の送信回数が規定回数に達していないと判定したとき、繰返し送信間隔タイマーを起動する。そして、無線装置3の緊急パケット発生手段115は、繰返し送信間隔タイマーが満了すると、新規のシーケンス番号(SEQ_A)を付与した緊急パケットPKT_EMG1を再発生し、これを送信する。無線装置3の緊急パケット発生手段115は、緊急パケットPKT_EMG1の送信回数が規定回数に達するまで、信号OEMGの定期パケット発生手段114への出力、緊急パケットPKT_EMG1の再発生、その再発生した緊急パケットPKT_EMG1の送信および繰返し送信間隔タイマーの起動を繰返し行なう。これによって、緊急パケットPKT_EMG1は、規定回数(例えば、3回)だけ送信される。その結果、図15に示すように、本来、タイミングt3で送信される定期パケットPKT_PRDの送信が禁止される。
【0102】
そして、無線装置3の緊急パケット発生手段115は、緊急パケットPKT_EMG1の送信回数が規定回数に達すると、信号OEMGの定期パケット発生手段114への出力、緊急パケットPKT_EMG1の再発生、その再発生した緊急パケットPKT_EMG1の送信および繰返し送信間隔タイマーの起動を停止する。
【0103】
車両C2に搭載された無線装置2の送受信手段111は、緊急パケットPKT_EMG1=[ON/Add3/Add3/前方/4/10/救急車の接近]を無線装置3から周波数チャネルfd(=無線装置3における周波数チャネルft)で受信し、その受信した緊急パケットPKT_EMG1のヘッダHEDのみを拡散符号Code_d(=無線装置3における拡散符号Code_t)によって逆拡散し、その逆拡散後のヘッダHEDのみをデコードする。そして、無線装置2の送受信手段111は、ヘッダHEDのフラグFLG=ONを参照して、受信したパケットが緊急パケットPKT_EMG1であることを検知する。
【0104】
そうすると、無線装置2において、転送処理部1111は、信号REMGを生成して定期パケット発生手段114へ出力する。無線装置2の定期パケット発生手段114は、転送処理部1111から信号REMGを受けると、定期パケット停止期間タイマーを起動し、定期パケット停止期間タイマーが満了するまで定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する。
【0105】
その後、無線装置2の転送処理部1111は、緊急パケットPKT_EMG1=[ON/Add3/Add3/前方/4/10/救急車の接近]のヘッダHEDの送信元ID_S=Add3および伝達方向=前方を参照して、緊急パケットPKT_EMG1が無線装置3において発生されたものであること、および緊急パケットPKT_EMG1を無線装置3よりも前方へ中継すべきことを検知する。
【0106】
そして、無線装置2の転送処理部1111は、転送テーブル30−1(図11参照)に登録されている相対方向(=後方)から、無線装置3から見た無線装置2の相対方向が前方となることと、ヘッダHEDの伝達方向=前方とが一致することを検知する。
【0107】
そうすると、無線装置2の転送処理部1111は、送信元ID_S=Add3に対応するシーケンス番号(SEQ_A)が“0”であることと、生存期間TTL=4が“0”よりも大きいこととを検出し、無線装置3からの緊急パケットPKT_EMG1を転送すべきであると判定する。その後、無線装置2の転送処理部1111は、緊急パケットPKT_EMG1のヘッダHEDに格納された中継無線装置を無線装置3から無線装置2(=ID_T=add2)に代え、更に、生存期間TTL=4を“1”だけ減少させてヘッダHEDをヘッダHED=[ON/Add3/Add2/前方/3/10]に更新する。
【0108】
そして、無線装置2の転送処理部1111は、ヘッダHED=[ON/Add3/Add2/前方/3/10]を拡散符号Code_dによってスペクトル拡散する。
【0109】
引き続いて、無線装置2の転送処理部1111は、ヘッダHED以外の部分を一時記憶バッファから取り出し、その取り出したヘッダHED以外の部分にヘッダHED=[ON/Add3/Add2/前方/3/10]を付加して緊急パケットPKT_EMG1を緊急パケットPKT_EMG2=[ON/Add3/Add2/前方/3/10/救急車の接近]に更新し、緊急パケットPKT_EMG2=[ON/Add3/Add2/前方/3/10/救急車の接近]を周波数チャネルfdで転送する。そうすると、無線装置2の転送処理部1111は、転送テーブル30−1(図11参照)の無線装置ID=Add3に対応するシーケンス番号SEQ_Aに緊急パケットPKT_EMG1のヘッダHEDに含まれるシーケンス番号SEQ_A=10を格納し、転送テーブル30−1を転送テーブル30−3(図16参照)に更新する。
【0110】
無線装置2は、図15に示すように、無線装置3からの緊急パケットPKT_EMG1を3回受信し、上述した方法によって、緊急パケットPKT_EMG1を3回転送する。その結果、無線装置2においては、無線装置3から緊急パケットPKT_EMG1を受信する毎に、定期パケット停止期間タイマーが起動され、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送が禁止されるので、本来、タイミングt2で送信されるべき定期パケットPKT_PRDの送信が禁止される。
【0111】
無線装置1は、無線装置2から緊急パケットPKT_EMG2を受信し、無線装置2と同じ方法によって、緊急パケットPKT_EMG2を緊急パケットPKT_EMG3として無線装置6へ転送するとともに、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する。そして、無線装置1の転送処理部1111は、転送テーブル30−2(図13参照)の無線装置ID=Add3に対応するシーケンス番号SEQ_Aに緊急パケットPKT_EMG1のヘッダHEDに含まれるシーケンス番号SEQ_A=10を格納し、転送テーブル30−2を転送テーブル30−4(図17参照)に更新する。
【0112】
無線装置1は、図15に示すように、無線装置2からの緊急パケットPKT_EMG2を3回受信し、上述した方法によって、緊急パケットPKT_EMG3を3回転送する。その結果、無線装置1においては、無線装置2から緊急パケットPKT_EMG2を受信する毎に、定期パケット停止期間タイマーが起動され、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送が禁止されるので、本来、タイミングt1,t4で送信されるべき定期パケットPKT_PRDの送信が禁止される。
【0113】
また、無線装置6は、無線装置1から緊急パケットPKT_EMG3を受信し、無線装置2と同じ方法によって、緊急パケットPKT_EMG3を緊急パケットPKT_EMG4として無線装置7へ転送するとともに、転送テーブル30を更新し、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する。
【0114】
そして、無線装置7は、緊急パケットPKT_EMG4を無線装置6から受信して定期パケット停止期間タイマーを起動し、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する。この場合、無線装置7は、緊急パケットPKT_EMG4を転送しない。無線装置7が緊急パケットPKT_EMG4を受信することによって、緊急パケットの生存期間TTLが“0”になるからである。
【0115】
図18は、緊急パケットの転送を示す概念図である。なお、図18は、緊急パケットPKT_EMGを規定回数n(nは2以上の整数)だけ転送する場合を示す。
【0116】
車両C3に搭載された無線装置3は、緊急パケットPKT_EMGを1回目に発生して送信したときに、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する。この時点では、無線装置2,1,6,7は、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止していない。
【0117】
そして、車両C2に搭載された無線装置2は、無線装置3からの緊急パケットPKT_EMGを1回目に受信すると、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する。その後、無線装置2は、無線装置3から緊急パケットPKT_EMGを受信する毎に、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する。
【0118】
車両C1,C6,C7にそれぞれ搭載された無線装置1,6,7についても同様である。
【0119】
従って、緊急パケットPKT_EMGの複数回の送信によって、定期パケットPKT_PRDの送信および転送の禁止は、無線装置3から無線装置2、無線装置1、無線装置6および無線装置7へ順次伝達される。つまり、緊急パケットPKT_EMGの到達領域が順次拡大される。
【0120】
その結果、無線装置3から送信された緊急パケットPKT_EMGの無線装置2,1,6,7への到達率を向上できる。そして、各車両C1,C2,C6,C7の無線装置1,2,6,7は、緊急パケットPKT_EMGを正確に受信し、緊急情報=救急車の接近を車両C1,C2,C6,C7のドライバーに視聴覚情報として与え、車両C1,C2,C6,C7のドライバーは、救急車に道を譲る等の対処を行なうことができる。
【0121】
上記においては、救急車が後方から接近した場合の緊急パケットPKT_EMGの伝搬について説明したが、例えば、図14において、右折しようとした車両C7が交差点CR内で車両C4と衝突事故を起こした場合、車両C6に搭載された無線装置6は、交通事故からなる緊急情報を含む緊急パケットPKT_EMGを発生し、その発生した緊急パケットPKT_EMGを上述した方法によって、無線装置1、無線装置2および無線装置3へ順次伝達する。
【0122】
そして、無線装置1〜3は、無線装置6からの緊急パケットPKT_EMGを正確に受信し、交差点CR内で交通事故が起こっていることを検知し、緊急情報=交通事故を車両C1〜C3のドライバーに視聴覚情報として与える。従って、車両C1〜C3のドライバーは、更なる事故を防止するための対処を行なうことができる。
【0123】
図19は、転送テーブルの第5の例を示す図である。無線装置6の送受信手段111は、転送テーブル30−5を保持している。従って、無線装置6の転送処理部1111は、既に、無線装置2,3,4,7が発生した緊急パケットPKT_EMGを受信して転送している。
【0124】
このような状況において、無線装置6の転送処理部1111は、無線装置2が発生した緊急パケットPKT_EMGを新たに受信した場合、転送テーブル30−5を参照して、無線装置ID=Add2に対応するシーケンス番号(SEQ_A)=20と、無線装置2から送信された緊急パケットPKT_EMGのヘッダHEDに含まれるシーケンス番号SEQ_Aとを比較し、シーケンス番号SEQ_Aがシーケンス番号(SEQ_A)=20よりも大きければ、緊急パケットPKT_EMGを転送し、シーケンス番号SEQ_Aがシーケンス番号(SEQ_A)=20以下であれば、緊急パケットPKT_EMGを転送しない。無線装置6の転送処理部1111は、無線装置3,4,7から緊急パケットPKT_EMGを新たに受信した場合も、同様に処理する。
【0125】
この発明においては、緊急パケットPKT_EMGのシーケンス番号SEQ_Aは、緊急パケットPKT_EMGの発生元のみによって付与され、転送テーブル30のシーケンス番号(SEQ_A)には、緊急パケットPKT_EMGが転送された場合、緊急パケットPKT_EMGに含まれるシーケンス番号SEQ_Aを格納する構成を採用しているので、“0”以外の値が転送テーブル30のシーケンス番号(SEQ_A)に格納されている場合、転送テーブル30のシーケンス番号(SEQ_A)と緊急パケットPKT_EMGに含まれるシーケンス番号SEQ_Aとの大小関係によって緊急パケットPKT_EMGが転送されたり、転送されなかったりする。
【0126】
従って、緊急パケットPKT_EMGの重複転送を回避できる。
【0127】
また、無線装置6の転送処理部1111は、例えば、無線装置1によって発生された緊急パケットPKT_EMGを受信すると、その受信した緊急パケットPKT_EMGを上述した方法によって転送するとともに、無線装置ID=Add1に対応するシーケンス番号(SEQ_A)を“0”から“30”(=無線装置1の緊急パケット発生手段115によって付与されたシーケンス番号(SEQ_A))に変え、転送テーブル30−5を更新する。無線装置6の転送処理部1111が無線装置5,8によって発生された緊急パケットPKT_EMGを受信して転送した場合も同様である。
【0128】
図20は、各無線装置における緊急パケットの送信動作を説明するためのフローチャートである。一連の動作が開始されると、各無線装置1〜8は、外部から緊急情報を受けたか否かによって、緊急情報が発生したか否かを判定する(ステップS1)。
【0129】
そして、緊急情報が発生すると、各無線装置1〜8は、定期パケット停止期間タイマーを起動し、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する(ステップS2)。
【0130】
その後、各無線装置1〜8は、上述した方法によって、緊急パケットPKT_EMGを生成し、その生成した緊急パケットPKT_EMGを送信する(ステップS3)。
【0131】
引き続いて、各無線装置1〜8は、緊急パケットPKT_EMGの送信回数が規定回数に達したか否かを判定する(ステップS4)。そして、ステップS4において、緊急パケットPKT_EMGの送信回数が規定回数に達していないと判定されたとき、各無線装置1〜8は、繰返し送信間隔タイマーを起動する(ステップS5)。
【0132】
その後、各無線装置1〜8は、繰返し送信間隔タイマーが満了したか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6において、繰返し送信間隔タイマーが満了したと判定されると、一連の動作は、ステップS2へ戻り、上述したステップS3〜ステップS6が繰返し実行される。つまり、ステップS4において、緊急パケットPKT_EMGの送信回数が規定回数に達するまで、上述したステップS3〜ステップS6が繰返し実行される。
【0133】
そして、ステップS4において、緊急パケットPKT_EMGの送信回数が規定回数に達したと判定されると、一連の動作は、終了する。
【0134】
図21は、各無線装置における緊急パケットの受信および転送動作を説明するためのフローチャートである。
【0135】
一連の動作が開始されると、各無線装置1〜8は、パケットPKTを受信したか否かを判定する(ステップS11)。そして、各無線装置1〜8は、パケットPKTを受信すると、その受信したパケットPKTのヘッダHEDをデコードし、そのデコードしたヘッダHEDのフラグFLGを参照して、緊急フラグがONであるか否かを更に判定する(ステップS12)。
【0136】
ステップS12において、緊急フラグがOFFであると判定されると、各無線装置1〜8は、定期パケットの受信処理を行なう(ステップS13)。
【0137】
一方、ステップS12において、緊急フラグがONであると判定されると、各無線装置1〜8は、定期パケット停止期間タイマーを起動し、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する(ステップS14)。
【0138】
その後、各無線装置1〜8は、上述した方法によって、緊急パケットPKT_EMGの転送が必要であるか否かを判定する(ステップS15)。そして、ステップS15において、緊急パケットPKT_EMGの転送が必要であると判定されると、各無線装置1〜8は、緊急パケットPKT_EMGを転送する(ステップS16)。
【0139】
一方、ステップS11において、パケットを受信しないとき、またはステップS15において、緊急パケットPKT_EMGの転送が必要でないとき、またはステップS13の後、一連の動作は、ステップS11へ戻り、以降、上述したステップS11〜ステップS16が繰返し実行される。
【0140】
なお、各無線装置1〜8は、図20または図21に示すフローチャートを繰り返し実行して、緊急パケットPKT_EMGの発生または受信に応じて、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止し、緊急パケットPKT_EMGの送信または転送を優先する。従って、緊急パケットPKT_EMGの到達率を向上できる。
【0141】
上記においては、各無線装置1〜8の送受信手段111は、上述した方法によって演算した60個の評価値<ξCode1>av,f1〜<ξCode15>av,f1,<ξCode1>av,f2〜<ξCode15>av,f2,<ξCode1>av,f3〜<ξCode15>av,f3,<ξCode1>av,f4〜<ξCode15>av,f4のうち、最小の評価値が得られたときの周波数ftおよび拡散符号Code_tをそれぞれ送信用の周波数および拡散符号として選択すると説明したが、これは、拡散符号の再利用が不可能な一定領域内で他の無線装置の拡散符号と異なる拡散符号を選択し、その選択した拡散符号を用いて定期パケットPKT_PRDおよび緊急パケットPKT_EMGを送信することを意味する。
【0142】
拡散符号を用いてパケットをスペクトル拡散した場合、2つの無線装置間の距離が数10mよりも短ければ、同じ拡散符号によってスペクトル拡散された2つの信号が識別不可能であるからである。
【0143】
例えば、図14において、無線装置3から無線装置1までの距離が数10mよりも短い場合、無線装置1〜3の送受信手段111は、上述した方法によって、他の無線装置における拡散符号と異なる拡散符号を選択して使用する。
【0144】
一方、拡散符号を用いてパケットをスペクトル拡散した場合、2つの無線装置間の距離が数10m以上であれば、同じ拡散符号によってスペクトル拡散された2つの信号が識別可能である。従って、無線装置3から数10m以上離れた無線装置6,7は、無線装置3における拡散符号と同じ拡散符号を用いても、無線装置3から送信された信号が無線装置6,7において干渉波になり難い。
【0145】
従って、この発明においては、各無線装置1〜8の送受信手段111は、拡散符号の再利用が不可能な一定領域内(<数10m)では、上述した方法によって、他の無線装置における拡散符号と異なる拡散符号を選択し、その選択した拡散符号を用いて定期パケットPKT_PRDおよび緊急パケットPKT_EMGを送信または転送し、一定領域外(=数10m以上離れた領域)では、[所望波の強度]/[干渉波の強度]がプロセスゲインの範囲である場合、他の無線装置における拡散符号と同じ拡散符号を選択して定期パケットPKT_PRDおよび緊急パケットPKT_EMGを送信または転送してもよい。つまり、各無線装置1〜8の送受信手段111は、一定領域外(=数10m以上離れた領域)では、[所望波の強度]/[干渉波の強度]がプロセスゲインの範囲である場合、複数の拡散符号Code1〜Code15から任意に1個の拡散符号を選択して定期パケットPKT_PRDおよび緊急パケットPKT_EMGを送信または転送する。
【0146】
このようにすることによって、各無線装置1〜8は、他の無線通信方式(例えば、CSMA(Carrier Sense Multiple Access)方式)に比べ、緊急パケットPKT_EMGの繰返し送信間隔を短く設定でき、緊急パケットPKT_EMGを高速に転送できる。
【0147】
また、この発明においては、各無線装置1〜8の送受信手段111は、Rake受信方式によって複数の他の無線装置からの複数のパケットPKTを受信するようにしてもよい。
【0148】
例えば、図14において、無線装置1の送受信手段111は、無線装置3からのパケットPKTと無線装置2からのパケットPKTとを重複したパケットのマルチパスとしてRake受信方式によって受信してもよい。
【0149】
更に、上記においては、4個の周波数f1〜f4および15個の拡散符号Code1〜Code15を用いると説明したが、この発明においては、これに限らず、1個以上の周波数および1個以上の周波数の各々に割り当てられた2個以上の拡散符号を用いればよい。
【0150】
この発明においては、定期パケットPKT_PRDを発生して送信する定期パケット発生手段114、MACモジュール112および送受信手段111は、「第1の送信手段」を構成する。
【0151】
また、この発明においては、緊急パケットPKT_EMGを発生して送信する緊急パケット発生手段115、MACモジュール112および送受信手段111は、「第2の送信手段」を構成する。
【0152】
更に、パケットのヘッダのみを復調し、かつ、ヘッダ以外の部分を復調せずに緊急パケットPKT_EMGを転送する処理は、「高速転送処理」を構成する。
【0153】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0154】
この発明は、緊急パケットの到達率を向上可能な無線装置に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】この発明の実施の形態による無線ネットワークの概略図である。
【図2】拡散符号と周波数との関係を示す図である。
【図3】図1に示す無線装置の構成を示す概略図である。
【図4】パケットのフォーマットを示す図である。
【図5】受信信号を拡散符号によって逆拡散して得られる評価値の演算に用いるパケット中のシンボル部の概念図である。
【図6】周辺車両情報テーブルの構成を示す図である。
【図7】転送テーブルの構成を示す図である。
【図8】交通状況を示す図である。
【図9】定期パケットのタイミングチャートを示す図である。
【図10】周辺車両情報テーブルの第1の例を示す図である。
【図11】転送テーブルの第1の例を示す図である。
【図12】周辺車両情報テーブルの第2の例を示す図である。
【図13】転送テーブルの第2の例を示す図である。
【図14】他の交通状況を示す図である。
【図15】緊急パケットのタイミングチャートを示す図である。
【図16】転送テーブルの第3の例を示す図である。
【図17】転送テーブルの第4の例を示す図である。
【図18】緊急パケットの転送を示す概念図である。
【図19】転送テーブルの第5の例を示す図である。
【図20】各無線装置における緊急パケットの送信動作を説明するためのフローチャートである。
【図21】各無線装置における緊急パケットの受信および転送動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0156】
1〜8 無線装置、10 無線ネットワーク、11 通信制御部、12 GPS受信機、20 周辺車両情報テーブル、30 転送テーブル、111 送受信手段、112 MACモジュール、113 処理手段、114 定期パケット発生手段、115 緊急パケット発生手段、1111 転送処理部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線装置に関し、特に、マルチチャネルを用いて無線通信を行なう無線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カットスルー方式によってパケットを転送する高速転送技術が知られている(非特許文献1)。
【0003】
この高速転送技術は、パケットを受信し始めると、そのパケットのヘッダを参照して、そのパケットが中継パケットであると判定すると、そのパケットをそのまま転送するものである。
【非特許文献1】酒井 敏宏、門脇 直人、板谷 聡子、Nouri Shirazi Mahdad、小花 貞夫,“アドホック無線通信システムの高レスポンス化に関する提案”,電子情報通信学会技術研究報告,RCS−2006−128(2006−8).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、定期パケットと緊急パケットとを送受信する無線ネットワークにおいては、各無線装置が従来のカットスルー方式を用いてパケットを中継すると、多くの定期パケットおよび緊急パケットが送受信され、緊急パケットの到達率を向上させることが困難であるという問題がある。
【0005】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、緊急パケットの到達率を向上可能な無線装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によれば、無線装置は、複数の周波数から選択した1個の周波数と複数の拡散符号から選択した1個の拡散符号とを用いてパケットを送受信する無線装置であって、第1および第2の送信手段と、受信手段とを備える。第1の送信手段は、当該無線装置の位置情報を含む定期パケットを1個の周波数と1個の拡散符号とを用いて定期的に送信する。第2の送信手段は、緊急情報を含む緊急パケットを1個の周波数と1個の拡散符号とを用いて送信する。受信手段は、他の無線装置から送信されたパケットを複数の周波数のいずれかで受信するとともに、その受信したパケットのヘッダのみを復調して、受信したパケットが緊急パケットであると判定したとき、パケットのヘッダ以外の部分を復調せずに緊急パケットを転送する高速転送処理を実行する。そして、第1の送信手段は、緊急情報が発生したとき、または受信手段によって受信されたパケットが緊急パケットであるとき、定期パケット停止期間の間、定期パケットの送信および転送を禁止する。また、第2の送信手段は、緊急情報が発生すると、緊急パケットを規定回数だけ繰り返し送信する。
【0007】
好ましくは、受信手段は、ヘッダが緊急パケットを示すフラグを含むとき、パケットが緊急パケットであると判定し、ヘッダを更新するとともに一時記憶したヘッダ以外の部分に更新したヘッダを付加して転送する。
【0008】
好ましくは、受信手段は、物理層に属し、受信したパケットが緊急パケットであると判定したとき、緊急パケットを物理層よりも上位の層へ上げることなく緊急パケットを転送する。
【0009】
好ましくは、受信手段は、受信した緊急パケットを転送するか否かを判断するための転送テーブルを保持しており、転送テーブルを参照して、緊急パケットの転送実績がないと判定したとき、高速転送処理を実行し、緊急パケットの転送実績があると判定したとき、高速転送処理を実行しない。
【0010】
好ましくは、転送テーブルは、受信手段によって受信されたパケットの発信元と、パケットの生成順を示すシーケンス番号と、当該無線装置に対するパケットの発信元の存在方向を示す相対方向とが相互に対応付けられた構成からなる。受信手段は、受信したパケットが緊急パケットであり、かつ、緊急パケットの発信元に対応する転送テーブル中のシーケンス番号が零または緊急パケットに含まれるシーケンス番号よりも小さい値からなるとき、高速転送処理を実行するとともに、転送テーブル中のシーケンス番号を緊急パケットに含まれるシーケンス番号に更新する。
【0011】
好ましくは、受信手段は、受信したパケットのヘッダに含まれる緊急パケットの転送方向に合致する相対方向が転送テーブルに含まれているとき、緊急パケットを転送する。
【0012】
好ましくは、第2の送信手段は、当該無線装置が緊急情報の発生元であるとき、繰返し送信期間タイマーを起動し、繰返し送信期間タイマーが満了する毎に緊急パケットを送信する処理を規定回数だけ繰り返し実行する。また、第1の送信手段は、緊急情報が発生したことを示す信号を第2の送信手段から受ける毎に、または緊急パケットを受信したことを示す信号を受信手段から受ける毎に、定期パケット停止期間タイマーを起動し、その起動した定期パケット停止期間タイマーが満了するまでの間、定期パケットの送信および転送を禁止する。
【0013】
好ましくは、第2の送信手段は、当該無線装置が同じ拡散符号の使用が不可能な一定領域内に存在するとき、他の無線装置における拡散符号と異なる拡散符号を用いて緊急パケットを送信し、当該無線装置が一定領域外に存在し、かつ、当該無線装置における干渉波の強度に対する所望波の強度の比がプロセスゲインの範囲であるとき、複数の拡散符号から任意に選択した拡散符号を用いて緊急パケットを送信する。受信手段は、当該無線装置が一定領域内に存在するとき、他の無線装置における拡散符号と異なる拡散符号を用いて緊急パケットを転送し、当該無線装置が一定領域外に存在し、かつ、当該無線装置における干渉波の強度に対する所望波の強度の比がプロセスゲインの範囲であるとき、複数の拡散符号から任意に選択した拡散符号を用いて緊急パケットを転送する。
【0014】
好ましくは、受信手段は、Rake受信方式によって複数の他の無線装置からの複数のパケットを受信する。
【発明の効果】
【0015】
この発明においては、無線装置は、緊急情報が発生すると、定期パケット停止期間の間、定期パケットの送信および転送を禁止し、緊急情報を含む緊急パケットを規定回数だけ送信する。また、無線装置は、緊急パケットを他の無線装置から受信すると、定期パケット停止期間の間、定期パケットの送信および転送を禁止し、緊急パケットを転送する。その結果、定期パケットの停止が他の無線装置へ順次伝達され、緊急パケットの到達領域が順次拡大される。
【0016】
従って、この発明によれば、緊急パケットの到達率を向上できる。
【0017】
また、この発明においては、無線装置は、拡散符号を用いて緊急パケットを送信または転送する。その結果、CSMA方式に比べ、緊急パケットの繰返し送信間隔が短く設定される。
【0018】
従って、この発明によれば、緊急パケットを高速に伝達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0020】
図1は、この発明の実施の形態による無線ネットワークの概略図である。この発明の実施の形態による無線ネットワーク10は、無線装置1〜8を備える。無線装置1〜8は、それぞれ、車両C1〜C8に搭載される。そして、無線装置1〜8は、自律的に無線ネットワークを構成する。
【0021】
車両C1〜C8は、道路を走行し、交差点を通過する。このような場合、各車両C1〜C8は、信号機が交差点に設置されていなければ、出会い頭衝突事故を起こすこともあるので、このような事故を防止する必要がある。また、各車両C1〜C8は、自己の前方で交通事故が発生したことを検知した場合、前方における交通事故の発生を後方の車両へ知らせる必要がある。更に、各車両C1〜C8は、後方から救急車が近づいて来ていることを検知した場合、救急車の接近を前方の車両へ知らせる必要がある。
【0022】
そこで、以下においては、交通事故の発生を防止するとともに、救急車等の緊急車両のスムーズな走行を確保するために、各無線装置1〜8が自己の周辺を走行している他の車両の位置情報を検知するとともに、交通事故の発生または緊急車両の接近を知らせるための緊急パケットの他の無線装置への到達率を向上させる方法について説明する。
【0023】
図2は、拡散符号と周波数との関係を示す図である。図2において、縦軸は、拡散符号を表し、横軸は、周波数を表す。15個の拡散符号Code1〜Code15は、周波数f1〜f4の各々に対して割り当てられる。
【0024】
従って、各無線装置1〜8は、後述する方法によって、周波数f1〜f4から1つの周波数ft(周波数f1〜f4のいずれか)を選択するとともに、拡散符号Code1〜Code15から1つの拡散符号Code_t(拡散符号Code1〜Code15のいずれか)を選択し、その選択した周波数ftおよび拡散符号Code_tを用いてパケットを送信する。
【0025】
また、各無線装置1〜8は、後述する方法によって、周波数f1〜f4から1つの周波数fd(周波数f1〜f4のいずれか)を選択するとともに、拡散符号Code1〜Code15から1つの拡散符号Code_d(拡散符号Code1〜Code15のいずれか)を選択し、その選択した周波数fdおよび拡散符号Code_dを用いてパケットを受信する。
【0026】
図3は、図1に示す無線装置1の構成を示す概略図である。無線装置1は、通信制御部11と、GPS(Global Positioning System)受信機12とを備える。
【0027】
通信制御部11は、階層構造からなり、送受信手段111と、MAC(Media Access Control)モジュール112と、処理手段113と、定期パケット発生手段114と、緊急パケット発生手段115とを含む。
【0028】
GPS受信機12は、GPS衛星からGPS信号を定期的に受信し、その受信したGPS信号を処理手段113および定期パケット発生手段114へ出力する。
【0029】
送受信手段111は、物理層に属し、転送処理部1111を含む。そして、送受信手段111は、他の無線装置からパケットPKTを受信すると、後述する方法によって、4個の周波数f1〜f4および15個の拡散符号Code1〜Code15によって構成される60個のチャネルの各々におけるパケットPKTの受信信号強度である60個の評価値を演算する。その後、送受信手段111は、その演算した60個の評価値のち、最大の評価値が得られたときの周波数fdおよび拡散符号Code_dを選択するとともに、60個の評価値のうち、最小の評価値が得られたときの周波数ftおよび拡散符号Code_tを選択する。
【0030】
送受信手段111は、周波数fdおよび拡散符号Code_dを選択すると、周波数チャネルfdにおけるパケットPKTのヘッダのみを復調するとともに、拡散符号Code_dによって逆拡散し、その逆拡散後のヘッダのみをデコードする。そして、送受信手段111は、ヘッダを参照してパケットPKTが緊急パケットPKT_EMGであるか定期パケットPKT_PRDであるかを判定する。
【0031】
送受信手段111は、パケットPKTが緊急パケットPKT_EMGであると判定したとき、緊急パケットPKT_EMGの転送の要否の判定処理およびその判定結果に応じた緊急パケットPKT_EMGの転送処理を転送処理部1111によって実行する。その後、送受信手段111は、周波数チャネルfdにおけるパケットPKTのヘッダ以外の部分も復調するとともに、拡散符号Code_dによって逆拡散し、その逆拡散後のヘッダ以外の部分をデコードする。そして、送受信手段111は、そのデコードしたパケットPKT(=緊急パケットPKT_EMG)をMACモジュール112へ出力する。
【0032】
一方、送受信手段111は、パケットPKTが定期パケットPKT_PRDであると判定したとき、周波数チャネルfdにおけるパケットPKTのヘッダ以外の部分を復調するとともに、拡散符号Code_dによって逆拡散し、その逆拡散後のヘッダ以外の部分をデコードする。そして、送受信手段111は、そのデコードしたパケットPKT(=定期パケットPKT_PRD)をMACモジュール112へ出力する。
【0033】
また、送受信手段111は、MACモジュール112からパケットPKT(定期パケットPKT_PRDまたは緊急パケットPKT_EMG)を受けると、その受けたパケットPKTにプリアンブル(PR)およびユニークワード(UW)を付加し、そのプリアンブル(PR)およびユニークワード(UW)を付加したパケットPKTを拡散符号Code_tによってスペクトル拡散するとともに、その拡散したパケットPKTを周波数チャネルftで送信する。
【0034】
更に、送受信手段111は、定期パケットPKT_PRDの送信元のアドレスと無線装置1に対する送信元の存在方向を示す相対方向とを処理手段113から定期的に受ける。そして、送受信手段111は、その受けた送信元のアドレスと相対方向とを用いて、後述する方法によって、緊急パケットPKT_EMGを転送すべきか否かを判定するための転送テーブルを作成または更新し、その作成または更新した転送テーブルを保持する。
【0035】
転送処理部1111は、送受信手段111によってパケットPKTが緊急パケットPKT_EMGであると判定されると、緊急パケットPKT_EMGを受信したことを示す信号REMGを生成して定期パケット発生手段114へ出力する。
【0036】
また、転送処理部1111は、転送テーブルを参照して、後述する方法によって、緊急パケットPKT_EMGを転送すべきか否かを判定する。そして、転送処理部1111は、緊急パケットPKT_EMGを転送すべきと判定したとき、後述する方法によって、緊急パケットPKT_EMGのヘッダを更新するとともに、一時記憶バッファに記憶しておいたヘッダ以外の部分にヘッダを付加して緊急パケットPKT_EMGを転送する。この場合、転送処理部1111は、ヘッダをエンコードし、そのエンコード後のヘッダを拡散符号Code_dによってスペクトル拡散する。そして、転送処理部1111は、その拡散後のヘッダをヘッダ以外の部分に付加して緊急パケットPKT_EMGを再構築し、その再構築した緊急パケットPKT_EMGを周波数チャネルfdで転送する。
【0037】
MACモジュール112は、MAC層に属し、定期パケット発生手段114から受けた定期パケットPKT_PRDまたは緊急パケット発生手段115から受けた緊急パケットPKT_EMGに対してMACヘッダの付加等のMAC部における制御および処理を行なう。そして、MACモジュール112は、定期パケットPKT_PRDまたは緊急パケットPKT_EMGを送受信手段111へ出力する。
【0038】
また、MACモジュール112は、送受信手段111から定期パケットPKT_PRDまたは緊急パケットPKT_EMGを受け、その受けた定期パケットPKT_PRDまたは緊急パケットPKT_EMGからMACヘッダを除去等して定期パケットPKT_PRDまたは緊急パケットPKT_EMGを処理手段113へ出力する。
【0039】
処理手段113は、上位層に属し、他の無線装置から送信された定期パケットPKT_PRDまたは緊急パケットPKT_EMGをMACモジュール112から受ける。そして、処理手段113は、定期パケットPKT_PRDから定期パケットPKT_PRDの送信元のアドレスと、送信元のGPS信号とを取り出す。なお、GPS信号は、緯度、経度、速度、進行方向(=方位)、および時刻からなる。
【0040】
また、処理手段113は、GPS受信機12から無線装置1のGPS信号を受ける。そして、処理手段113は、公知の方法によって、無線装置1のGPS信号の緯度および経度を無線装置1の位置情報(x,y座標からなる)に変換するとともに、他の無線装置のGPS信号の緯度および経度を他の無線装置の位置情報に変換する。その後、処理手段113は、無線装置1の位置情報と他の無線装置の位置情報とに基づいて、無線装置1に対する他の無線装置の相対位置を求めるとともに、無線装置1に対する他の無線装置の存在方向を示す相対方向を求める。
【0041】
そうすると、処理手段113は、他の無線装置のアドレス、他の無線装置のGPS信号、他の無線装置の相対位置および他の無線装置の相対方向に基づいて、周辺車両情報テーブルを作成または更新し、その作成または更新した周辺車両情報テーブルを保持する。
【0042】
そして、処理手段113は、周辺車両情報テーブルから他の無線装置のアドレスおよび相対方向を定期的(例えば、100msec毎)に取り出して送受信手段111へ出力する。
【0043】
更に、処理手段113は、他の無線装置のアドレスおよび他の無線装置のGPS信号を定期パケット発生手段114へ出力する。
【0044】
更に、処理手段113は、緊急パケットPKT_EMGから緊急情報を取り出し、その取り出した緊急情報を表示手段(図示せず)によってドライバーに視聴覚情報として与える。
【0045】
定期パケット発生手段114は、上位層に属し、GPS受信機12から無線装置1のGPS信号を定期的に受け、処理手段113から他の無線装置のアドレスおよび他の無線装置のGPS信号を受ける。そして、定期パケット発生手段114は、無線装置1のアドレス/無線装置1のGPS信号と、他の無線装置のアドレス/他の無線装置のGPS信号とを含む定期パケットPKT_PRDを発生し、その発生した定期パケットPKT_PRDをMACモジュール112を介して定期的に送信する。
【0046】
また、定期パケット発生手段114は、送受信手段111の転送処理部1111から信号REMGを受ける毎に、または緊急情報が発生したことを示す信号OEMGを緊急パケット発生手段115から受ける毎に、内蔵した定期パケット停止期間タイマー(図示せず)を起動し、その起動した定期パケット停止期間タイマーが満了するまで、定期パケットPKT_PRDの送信及び転送を禁止する。そして、定期パケット発生手段114は、定期パケット停止期間タイマーが満了すると、定期パケットPKT_PRDの定期的な送信及び転送を再開する。
【0047】
このように、緊急情報が発生し、緊急パケットPKT_EMGの送信および転送が行なわれている期間、緊急パケットPKT_EMGの送信および転送に対する優先度を上げ、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を規定期間(=定期パケット停止期間)の間、停止させることで、緊急パケットPKT_EMGの通信品質(パケット到着率)を向上させる。
【0048】
緊急パケット発生手段115は、無線装置1が搭載された車両C1のドライバーが交通事故の発生または緊急車両の接近を示す情報を緊急情報として無線装置1へ入力することによって、緊急情報を外部から受ける。
【0049】
そして、緊急パケット発生手段115は、緊急情報を受けると、緊急情報と、無線装置1のアドレスと、シーケンス番号(SEQ_A)と、伝達方向とを含む緊急パケットPKT_EMGを発生し、その発生した緊急パケットPKT_EMGをMACモジュール112を介して送信する。
【0050】
その後、緊急パケット発生手段115は、緊急パケットPKT_EMGの送信回数が規定回数に達したか否かを判定する。そして、緊急パケット発生手段115は、緊急パケットPKT_EMGの送信回数が規定回数に達したと判定したとき、緊急パケットPKT_EMGの送信を停止する。
【0051】
一方、緊急パケット発生手段115は、緊急パケットPKT_EMGの送信回数が規定回数に達していないと判定したとき、内蔵した繰返し送信間隔タイマー(図示せず)を起動し、その起動した繰返し送信間隔タイマーが満了すると、信号OEMGを生成して定期パケット発生手段114へ出力する。緊急パケット発生手段115は、緊急パケットPKT_EMGの送信回数が規定回数に達するまで、緊急パケットPKT_EMGの送信、繰返し送信間隔タイマーの起動および信号OEMGの定期パケット発生手段114への出力を繰返し行なう。
【0052】
なお、図1に示す無線装置2〜8の各々は、図3に示す無線装置1と同じ構成からなる。
【0053】
図4は、パケットのフォーマットを示す図である。パケットPKTは、プリアンブル(PR)と、ユニークワード(UW)と、DATA_Aと、DATA_Bと、DATA_Cとを含む。
【0054】
DATA_Aは、CTと、CRC_Aとを含む。DATA_Bは、MACと、LLC(Logical Link Control)と、CRC_Bとを含む。DATA_Cは、LSDU(Link Service Data Unit)と、CRC_Cとを含む。
【0055】
CTは、緊急パケットであるか否かを判断するためのフラグFLGと、緊急情報の発信元の無線装置を識別する識別番号ID_Sと、緊急パケットPKT_EMGの転送元である無線装置を識別する識別番号ID_Tと、緊急パケットPKT_EMGの伝達方向DRと、緊急パケットPKT_EMGの生存期間TTLと、緊急パケットPKT_EMGのシーケンス番号SEQ_Aとを含む。
【0056】
CRC_A,CRC_B,CRC_Cの各々は、誤り検出符号である。MACは、MAC制御を行なうためのフィールドである。LLCは、LLC制御を行なうためのフィールドである。LSDUは、リンクサービスデータ単位であり、シーケンス番号SEQ_Bを含む。
【0057】
CTは、CRC_Aによって誤り検出され、MACおよびLLCは、CRC_Bによって誤り検出され、LSDUは、CRC_Cによって誤り検出される。
【0058】
プリアンブル(PR)およびユニークワード(UW)は、送受信手段111によって付加される。なお、各領域に対する誤り訂正符号は、FEC1,FEC2およびFEC3であり、図4のパケットフォーマットに示した通りである。
【0059】
パケットPKTが緊急パケットPKT_EMGであるとき、フラグFLGには、“ON”情報が格納され、パケットPKTが定期パケットPKT_PRDであるとき、フラグFLGには、“OFF”情報が格納される。
【0060】
そして、この発明においては、CTおよびCRC_Aは、ヘッダHEDを構成する。
【0061】
図5は、受信信号を拡散符号によって逆拡散して得られる評価値の演算に用いるパケット中のシンボル部の概念図である。
【0062】
シンボル部は、受信されたパケットPKTの任意の位置からなる。即ち、シンボル部は、各無線装置1〜8においてパケットの送信が発生したときに各無線装置1〜8が受信しているパケットの一部に相当する。例えば、各無線装置1〜8においてパケットの送信が発生したときに各無線装置1〜8がパケットの中央部を受信しているのであれば、パケットの中央部がシンボル部になり、各無線装置1〜8がパケットの先頭部を受信しているのであれば、パケットの先頭部がシンボル部になり、各無線装置1〜8がパケットの後部を受信しているのであれば、パケットの後部がシンボル部になる。つまり、パケットの送信が発生したときに各無線装置1〜8が受信している部分がシンボル部になる。そして、シンボル部は、N(Nは、2以上の整数)個のシンボルからなる。
【0063】
周波数f(f=f1〜f4)における受信信号を拡散符号k(k=Code1〜Code15)によって逆拡散して得られた値(複素数)の絶対値をN個のシンボルにわたって平均化した値を<ξk>av,fとする。N個のシンボルのうちのs(s=1〜N)番目のシンボルにおいて、受信信号を拡散符号kによって逆拡散して得られる値ξIk,s,fおよびξQk,s,fをそれぞれ次の式(1)および式(2)によって求める。
【0064】
【数1】
【0065】
【数2】
【0066】
なお、式(1)において、Iは、周波数fにおける受信信号の実数成分を表し、Qは、周波数fにおける受信信号の虚数成分を表す。
【0067】
そして、各シンボルの干渉量の大きさξk,s,fを次式によって求める。
【0068】
【数3】
【0069】
そして、干渉量の大きさξk,s,fを次式によってN個のシンボルについて平均化し、評価値<ξk>av,fを求める。
【0070】
【数4】
【0071】
従って、送受信手段111は、上述した式(1)〜式(4)を用いて評価値<ξk>av,fを全ての周波数f1〜f4および全ての拡散符号Code1〜Code15に対して求め、その求めた60個の評価値<ξCode1>av,f〜<ξCode15>av,f(f=f1〜f4)のうち、最も小さい評価値が得られる周波数および拡散符号をそれぞれ干渉量が少ない周波数ftおよび拡散符号Code_tとして選択する。
【0072】
また、送受信手段111は、60個の評価値<ξCode1>av,f〜<ξCode15>av,f(f=f1〜f4)のうち、最も大きい評価値が得られる周波数および拡散符号をそれぞれ周波数fdおよび拡散符号Code_dとして選択する。
【0073】
図6は、周辺車両情報テーブルの構成を示す図である。周辺車両情報テーブル20は、無線装置IDと、時刻と、位置情報と、シーケンス番号SEQ_Bと、相対位置と、相対方向とからなる。
【0074】
無線装置ID、時刻、位置情報、シーケンス番号SEQ_B、相対位置、および相対方向は、相互に対応付けられる。無線装置IDは、定期パケットPKT_PRDの送信元の識別情報を示し、定期パケットPKT_PRDの送信元のアドレスからなる。
【0075】
時刻は、位置情報を取得した時刻を示し、時/分/秒(HHHH/MMMM/SSSS)からなっており、アプリケーションに応じて、年/月/日(YYYY/MMMM/DDDD)の情報を付加してもよい。位置情報は、緯度、経度、方位および速度からなる。シーケンス番号SEQ_Bは、定期パケットPKT_PRDの送信元によって付与され、正の整数からなる。そして、シーケンス番号SEQ_Bは、定期パケットPKT_PRDの生成順を示す。従って、シーケンス番号SEQ_Bの数値が大きい程、定期パケットPKT_PRDが新しいことを表す。
【0076】
相対位置は、周辺車両情報テーブル20を作成する無線装置の位置に対する定期パケットPKT_PRDの送信元の位置からなる。相対方向は、周辺車両情報テーブル20を作成する無線装置に対する定期パケットPKT_PRDの送信元の存在方向からなる。
【0077】
図7は、転送テーブルの構成を示す図である。転送テーブル30は、無線装置IDと、シーケンス番号(SEQ_A)と、相対方向とからなる。無線装置ID、シーケンス番号(SEQ_A)、および相対方向は、相互に対応付けられる。
【0078】
無線装置IDは、定期パケットPKT_PRDの送信元のアドレスからなる。図7中のシーケンス番号(SEQ_A)は、“0”または緊急パケットPKT_EMGのヘッダHEDに含まれるシーケンス番号SEQ_Aからなる。相対方向は、転送テーブル30を作成する無線装置に対する定期パケットPKT_PRDの送信元の存在方向からなる。
【0079】
なお、無線装置IDおよび相対方向は、それぞれ、図6に示す周辺車両情報テーブル20における無線装置IDおよび相対方向からなる。
【0080】
ここで、図3に示す転送処理部1111における緊急パケットPKT_EMGの転送の要否を判定する判定方法について説明する。
【0081】
転送処理部1111は、送受信手段111によってパケットPKTが緊急パケットPKT_EMGであると判定されると、緊急パケットPKT_EMGのヘッダHEDを参照して、緊急パケットPKT_EMGの生存期間TTLが有効であるか否かを判定し、ヘッダHEDに含まれる伝達方向DRが転送テーブル30に登録されている相対方向と一致するか否かを判定する。
【0082】
そして、転送処理部1111は、生存期間TTLが有効であり、かつ、ヘッダHEDに含まれる伝達方向DRが転送テーブル30に登録されている相対方向に一致すると判定したとき、転送テーブル30中のシーケンス番号(SEQ_A)が“0”からなるか否かを判定する。
【0083】
転送処理部1111は、この判定において、転送テーブル30中のシーケンス番号(SEQ_A)が“0”からなると判定したとき、該緊急パケットPKT_EMGを未転送と判断でき、緊急パケットPKT_EMGを転送すべきと判定する。
【0084】
一方、転送処理部1111は、転送テーブル30中のシーケンス番号(SEQ_A)が“0”ではないと判定したとき、緊急パケットPKT_EMGのヘッダHEDに含まれるシーケンス番号SEQ_Aと転送テーブル30中のシーケンス番号(SEQ_A)とを比較する。そして、転送処理部1111は、シーケンス番号SEQ_Aが転送テーブル30中のシーケンス番号(SEQ_A)よりも大きいとき、緊急パケットPKT_EMGを転送すべきと判定し、シーケンス番号SEQ_Aが転送テーブル30中のシーケンス番号(SEQ_A)以下であるとき、緊急パケットPKT_EMGを転送すべきでないと判定する。つまり、転送処理部1111は、転送テーブル30中のシーケンス番号(SEQ_A)が“0”ではないとき、通常のシーケンス番号の使用方法に基づいて、緊急パケットPKT_EMGを転送すべきか否かを判定する。
【0085】
図8は、交通状況を示す図である。また、図9は、定期パケットのタイミングチャートを示す図である。更に、図10は、周辺車両情報テーブルの第1の例を示す図である。更に、図11は、転送テーブルの第1の例を示す図である。更に、図12は、周辺車両情報テーブルの第2の例を示す図である。更に、図13は、転送テーブルの第2の例を示す図である。
【0086】
なお、図9において、上向きの矢印は、定期パケットPKT_PRDの送信を表す。また、図9においては、図を見易くするために、定期パケットPKT_PRDの受信を示す下向きの矢印を省略している。
【0087】
図8に示すように、車両C1〜C3,C6,C7は、道路RD1を交差点CRへ向かって走行しており、車両C4は、道路RD4を交差点CRへ向かって走行しており、車両C5は、道路RD2を交差点CRから遠ざかる方向へ走行しており、車両C8は、道路RD3を交差点CRから遠ざかる方向へ走行している。
【0088】
このような、状況において、車両C1〜C8にそれぞれ搭載された無線装置1〜8は、図9に示すように、上述した方法によって周期Tcで定期パケットPKT_PRDを発生するとともに、その発生した定期パケットPKT_PRDを送信する。
【0089】
その結果、車両C2に搭載された無線装置2の処理手段113は、他の無線装置から受信した定期パケットPKT_PRDに含まれる他の無線装置1,3〜8のアドレスおよびGPS信号と、自己のGPS信号とに基づいて、上述した方法によって、図10に示す周辺車両情報テーブル20−1を作成する。
【0090】
そして、無線装置2の処理手段113は、周辺車両情報テーブル20−1から無線装置IDと相対方向との組[Add1/前方],[Add3/後方],[Add4/前方],[Add5/左前方],[Add6/前方],[Add7/前方],[Add8/右前方]を取り出し、その取り出した組[Add1/前方],[Add3/後方],[Add4/前方],[Add5/左前方],[Add6/前方],[Add7/前方],[Add8/右前方]を送受信手段111へ出力する。
【0091】
そうすると、無線装置2の送受信手段111は、処理手段113から組[Add1/前方],[Add3/後方],[Add4/前方],[Add5/左前方],[Add6/前方],[Add7/前方],[Add8/右前方]を受け、その受けた組[Add1/前方],[Add3/後方],[Add4/前方],[Add5/左前方],[Add6/前方],[Add7/前方],[Add8/右前方]に基づいて、上述した方法によって、図11に示す転送テーブル30−1を作成する。この場合、無線装置2の送受信手段111は、無線装置1,3〜8からの緊急パケットPKT_EMGを転送した実績がないので、シーケンス番号に“0”を格納して転送テーブル30−1を作成する。
【0092】
同様にして、無線装置1の処理手段113は、図12に示す周辺車両情報テーブル20−2を作成し、無線装置1の送受信手段111は、図13に示す転送テーブル30−2を作成する。
【0093】
なお、図示していないが、無線装置3〜8も、同様にして、周辺車両情報テーブル20および転送テーブル30を作成する。
【0094】
このように、緊急情報が発生していない状況においては、各無線装置1〜8は、定期パケットPKT_PRDを定期的に送受信して周辺車両情報テーブル20および転送テーブル30を作成し、その作成した周辺車両情報テーブル20に基づいて、他の無線装置が搭載された車両の位置、相対位置、進行方向および相対方向を検知し、その検知した車両の位置、相対位置、進行方向および相対方向に基づいて、交差点における出会い頭衝突事故防止のための安全支援として、車両接近の情報をドライバーに伝える。
【0095】
図14は、他の交通状況を示す図である。また、図15は、緊急パケットのタイミングチャートを示す図である。更に、図16および図17は、それぞれ、転送テーブルの第3および第4の例を示す図である。
【0096】
なお、図15においては、×は、定期パケットの送信キャンセルを表し、点線の矢印は、定期パケット停止期間を表し、上向きの矢印は、定期パケット送信を表し、太い上向きの矢印は、緊急パケットPKT_EMGの送信を表し、太い下向きの矢印は、緊急パケットPKT_EMGの受信を表す。
【0097】
図14に示すように、救急車が後方から車両C3に接近した場合、無線装置3の緊急パケット発生手段115は、外部から緊急情報を受けると、信号OEMGを生成して定期パケット発生手段114へ出力する。
【0098】
無線装置3の定期パケット発生手段114は、緊急パケット発生手段115から信号OEMGを受けると、定期パケット停止期間タイマーを起動し、定期パケット停止期間タイマーが満了するまで定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する。
【0099】
その後、無線装置3の緊急パケット発生手段115は、周辺車両情報テーブル20を参照して、救急車が後方から車両C3へ接近していることを検知し、後方から救急車が接近していることを車両C3の前方に位置する車両に通知する必要があると判断する。そして、無線装置3の緊急パケット発生手段115は、緊急パケットPKT_EMG1を他の車両に搭載された無線装置へ送信するために、緊急パケットPKT_EMGであることを示すフラグFLG=ON、送信元の識別番号ID_S=Add3、中継無線装置ID_T=Add3、伝達方向=前方、生存期間TTL=4、シーケンス番号SEQ_A=10および緊急情報(=救急車の接近)を含む緊急パケットPKT_EMG1=[ON/Add3/Add3/前方/4/10/救急車の接近]を発生し、その発生した緊急パケットPKT_EMG1=[ON/Add3/Add3/前方/4/10/救急車の接近]をMACモジュール112を介して送受信手段111へ出力する。この場合、緊急情報(=救急車の接近)は、シーケンス番号SEQ_Bと共にパケットPKTのLSDU(図4参照)に格納される。
【0100】
そして、無線装置3の送受信手段111は、プリアンブル(PR)およびユニークワード(UW)を緊急パケットPKT_EMG1に付加し、そのプリアンブル(PR)およびユニークワード(UW)を付加した緊急パケットPKT_EMG1を拡散符号Code_tでスペクトル拡散し、その拡散後の緊急パケットPKT_EMG1を周波数チャネルftで送信する。
【0101】
その後、無線装置3の緊急パケット発生手段115は、緊急パケットPKT_EMG1の送信回数が規定回数に達したか否かを判定し、緊急パケットPKT_EMG1の送信回数が規定回数に達していないと判定したとき、繰返し送信間隔タイマーを起動する。そして、無線装置3の緊急パケット発生手段115は、繰返し送信間隔タイマーが満了すると、新規のシーケンス番号(SEQ_A)を付与した緊急パケットPKT_EMG1を再発生し、これを送信する。無線装置3の緊急パケット発生手段115は、緊急パケットPKT_EMG1の送信回数が規定回数に達するまで、信号OEMGの定期パケット発生手段114への出力、緊急パケットPKT_EMG1の再発生、その再発生した緊急パケットPKT_EMG1の送信および繰返し送信間隔タイマーの起動を繰返し行なう。これによって、緊急パケットPKT_EMG1は、規定回数(例えば、3回)だけ送信される。その結果、図15に示すように、本来、タイミングt3で送信される定期パケットPKT_PRDの送信が禁止される。
【0102】
そして、無線装置3の緊急パケット発生手段115は、緊急パケットPKT_EMG1の送信回数が規定回数に達すると、信号OEMGの定期パケット発生手段114への出力、緊急パケットPKT_EMG1の再発生、その再発生した緊急パケットPKT_EMG1の送信および繰返し送信間隔タイマーの起動を停止する。
【0103】
車両C2に搭載された無線装置2の送受信手段111は、緊急パケットPKT_EMG1=[ON/Add3/Add3/前方/4/10/救急車の接近]を無線装置3から周波数チャネルfd(=無線装置3における周波数チャネルft)で受信し、その受信した緊急パケットPKT_EMG1のヘッダHEDのみを拡散符号Code_d(=無線装置3における拡散符号Code_t)によって逆拡散し、その逆拡散後のヘッダHEDのみをデコードする。そして、無線装置2の送受信手段111は、ヘッダHEDのフラグFLG=ONを参照して、受信したパケットが緊急パケットPKT_EMG1であることを検知する。
【0104】
そうすると、無線装置2において、転送処理部1111は、信号REMGを生成して定期パケット発生手段114へ出力する。無線装置2の定期パケット発生手段114は、転送処理部1111から信号REMGを受けると、定期パケット停止期間タイマーを起動し、定期パケット停止期間タイマーが満了するまで定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する。
【0105】
その後、無線装置2の転送処理部1111は、緊急パケットPKT_EMG1=[ON/Add3/Add3/前方/4/10/救急車の接近]のヘッダHEDの送信元ID_S=Add3および伝達方向=前方を参照して、緊急パケットPKT_EMG1が無線装置3において発生されたものであること、および緊急パケットPKT_EMG1を無線装置3よりも前方へ中継すべきことを検知する。
【0106】
そして、無線装置2の転送処理部1111は、転送テーブル30−1(図11参照)に登録されている相対方向(=後方)から、無線装置3から見た無線装置2の相対方向が前方となることと、ヘッダHEDの伝達方向=前方とが一致することを検知する。
【0107】
そうすると、無線装置2の転送処理部1111は、送信元ID_S=Add3に対応するシーケンス番号(SEQ_A)が“0”であることと、生存期間TTL=4が“0”よりも大きいこととを検出し、無線装置3からの緊急パケットPKT_EMG1を転送すべきであると判定する。その後、無線装置2の転送処理部1111は、緊急パケットPKT_EMG1のヘッダHEDに格納された中継無線装置を無線装置3から無線装置2(=ID_T=add2)に代え、更に、生存期間TTL=4を“1”だけ減少させてヘッダHEDをヘッダHED=[ON/Add3/Add2/前方/3/10]に更新する。
【0108】
そして、無線装置2の転送処理部1111は、ヘッダHED=[ON/Add3/Add2/前方/3/10]を拡散符号Code_dによってスペクトル拡散する。
【0109】
引き続いて、無線装置2の転送処理部1111は、ヘッダHED以外の部分を一時記憶バッファから取り出し、その取り出したヘッダHED以外の部分にヘッダHED=[ON/Add3/Add2/前方/3/10]を付加して緊急パケットPKT_EMG1を緊急パケットPKT_EMG2=[ON/Add3/Add2/前方/3/10/救急車の接近]に更新し、緊急パケットPKT_EMG2=[ON/Add3/Add2/前方/3/10/救急車の接近]を周波数チャネルfdで転送する。そうすると、無線装置2の転送処理部1111は、転送テーブル30−1(図11参照)の無線装置ID=Add3に対応するシーケンス番号SEQ_Aに緊急パケットPKT_EMG1のヘッダHEDに含まれるシーケンス番号SEQ_A=10を格納し、転送テーブル30−1を転送テーブル30−3(図16参照)に更新する。
【0110】
無線装置2は、図15に示すように、無線装置3からの緊急パケットPKT_EMG1を3回受信し、上述した方法によって、緊急パケットPKT_EMG1を3回転送する。その結果、無線装置2においては、無線装置3から緊急パケットPKT_EMG1を受信する毎に、定期パケット停止期間タイマーが起動され、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送が禁止されるので、本来、タイミングt2で送信されるべき定期パケットPKT_PRDの送信が禁止される。
【0111】
無線装置1は、無線装置2から緊急パケットPKT_EMG2を受信し、無線装置2と同じ方法によって、緊急パケットPKT_EMG2を緊急パケットPKT_EMG3として無線装置6へ転送するとともに、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する。そして、無線装置1の転送処理部1111は、転送テーブル30−2(図13参照)の無線装置ID=Add3に対応するシーケンス番号SEQ_Aに緊急パケットPKT_EMG1のヘッダHEDに含まれるシーケンス番号SEQ_A=10を格納し、転送テーブル30−2を転送テーブル30−4(図17参照)に更新する。
【0112】
無線装置1は、図15に示すように、無線装置2からの緊急パケットPKT_EMG2を3回受信し、上述した方法によって、緊急パケットPKT_EMG3を3回転送する。その結果、無線装置1においては、無線装置2から緊急パケットPKT_EMG2を受信する毎に、定期パケット停止期間タイマーが起動され、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送が禁止されるので、本来、タイミングt1,t4で送信されるべき定期パケットPKT_PRDの送信が禁止される。
【0113】
また、無線装置6は、無線装置1から緊急パケットPKT_EMG3を受信し、無線装置2と同じ方法によって、緊急パケットPKT_EMG3を緊急パケットPKT_EMG4として無線装置7へ転送するとともに、転送テーブル30を更新し、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する。
【0114】
そして、無線装置7は、緊急パケットPKT_EMG4を無線装置6から受信して定期パケット停止期間タイマーを起動し、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する。この場合、無線装置7は、緊急パケットPKT_EMG4を転送しない。無線装置7が緊急パケットPKT_EMG4を受信することによって、緊急パケットの生存期間TTLが“0”になるからである。
【0115】
図18は、緊急パケットの転送を示す概念図である。なお、図18は、緊急パケットPKT_EMGを規定回数n(nは2以上の整数)だけ転送する場合を示す。
【0116】
車両C3に搭載された無線装置3は、緊急パケットPKT_EMGを1回目に発生して送信したときに、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する。この時点では、無線装置2,1,6,7は、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止していない。
【0117】
そして、車両C2に搭載された無線装置2は、無線装置3からの緊急パケットPKT_EMGを1回目に受信すると、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する。その後、無線装置2は、無線装置3から緊急パケットPKT_EMGを受信する毎に、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する。
【0118】
車両C1,C6,C7にそれぞれ搭載された無線装置1,6,7についても同様である。
【0119】
従って、緊急パケットPKT_EMGの複数回の送信によって、定期パケットPKT_PRDの送信および転送の禁止は、無線装置3から無線装置2、無線装置1、無線装置6および無線装置7へ順次伝達される。つまり、緊急パケットPKT_EMGの到達領域が順次拡大される。
【0120】
その結果、無線装置3から送信された緊急パケットPKT_EMGの無線装置2,1,6,7への到達率を向上できる。そして、各車両C1,C2,C6,C7の無線装置1,2,6,7は、緊急パケットPKT_EMGを正確に受信し、緊急情報=救急車の接近を車両C1,C2,C6,C7のドライバーに視聴覚情報として与え、車両C1,C2,C6,C7のドライバーは、救急車に道を譲る等の対処を行なうことができる。
【0121】
上記においては、救急車が後方から接近した場合の緊急パケットPKT_EMGの伝搬について説明したが、例えば、図14において、右折しようとした車両C7が交差点CR内で車両C4と衝突事故を起こした場合、車両C6に搭載された無線装置6は、交通事故からなる緊急情報を含む緊急パケットPKT_EMGを発生し、その発生した緊急パケットPKT_EMGを上述した方法によって、無線装置1、無線装置2および無線装置3へ順次伝達する。
【0122】
そして、無線装置1〜3は、無線装置6からの緊急パケットPKT_EMGを正確に受信し、交差点CR内で交通事故が起こっていることを検知し、緊急情報=交通事故を車両C1〜C3のドライバーに視聴覚情報として与える。従って、車両C1〜C3のドライバーは、更なる事故を防止するための対処を行なうことができる。
【0123】
図19は、転送テーブルの第5の例を示す図である。無線装置6の送受信手段111は、転送テーブル30−5を保持している。従って、無線装置6の転送処理部1111は、既に、無線装置2,3,4,7が発生した緊急パケットPKT_EMGを受信して転送している。
【0124】
このような状況において、無線装置6の転送処理部1111は、無線装置2が発生した緊急パケットPKT_EMGを新たに受信した場合、転送テーブル30−5を参照して、無線装置ID=Add2に対応するシーケンス番号(SEQ_A)=20と、無線装置2から送信された緊急パケットPKT_EMGのヘッダHEDに含まれるシーケンス番号SEQ_Aとを比較し、シーケンス番号SEQ_Aがシーケンス番号(SEQ_A)=20よりも大きければ、緊急パケットPKT_EMGを転送し、シーケンス番号SEQ_Aがシーケンス番号(SEQ_A)=20以下であれば、緊急パケットPKT_EMGを転送しない。無線装置6の転送処理部1111は、無線装置3,4,7から緊急パケットPKT_EMGを新たに受信した場合も、同様に処理する。
【0125】
この発明においては、緊急パケットPKT_EMGのシーケンス番号SEQ_Aは、緊急パケットPKT_EMGの発生元のみによって付与され、転送テーブル30のシーケンス番号(SEQ_A)には、緊急パケットPKT_EMGが転送された場合、緊急パケットPKT_EMGに含まれるシーケンス番号SEQ_Aを格納する構成を採用しているので、“0”以外の値が転送テーブル30のシーケンス番号(SEQ_A)に格納されている場合、転送テーブル30のシーケンス番号(SEQ_A)と緊急パケットPKT_EMGに含まれるシーケンス番号SEQ_Aとの大小関係によって緊急パケットPKT_EMGが転送されたり、転送されなかったりする。
【0126】
従って、緊急パケットPKT_EMGの重複転送を回避できる。
【0127】
また、無線装置6の転送処理部1111は、例えば、無線装置1によって発生された緊急パケットPKT_EMGを受信すると、その受信した緊急パケットPKT_EMGを上述した方法によって転送するとともに、無線装置ID=Add1に対応するシーケンス番号(SEQ_A)を“0”から“30”(=無線装置1の緊急パケット発生手段115によって付与されたシーケンス番号(SEQ_A))に変え、転送テーブル30−5を更新する。無線装置6の転送処理部1111が無線装置5,8によって発生された緊急パケットPKT_EMGを受信して転送した場合も同様である。
【0128】
図20は、各無線装置における緊急パケットの送信動作を説明するためのフローチャートである。一連の動作が開始されると、各無線装置1〜8は、外部から緊急情報を受けたか否かによって、緊急情報が発生したか否かを判定する(ステップS1)。
【0129】
そして、緊急情報が発生すると、各無線装置1〜8は、定期パケット停止期間タイマーを起動し、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する(ステップS2)。
【0130】
その後、各無線装置1〜8は、上述した方法によって、緊急パケットPKT_EMGを生成し、その生成した緊急パケットPKT_EMGを送信する(ステップS3)。
【0131】
引き続いて、各無線装置1〜8は、緊急パケットPKT_EMGの送信回数が規定回数に達したか否かを判定する(ステップS4)。そして、ステップS4において、緊急パケットPKT_EMGの送信回数が規定回数に達していないと判定されたとき、各無線装置1〜8は、繰返し送信間隔タイマーを起動する(ステップS5)。
【0132】
その後、各無線装置1〜8は、繰返し送信間隔タイマーが満了したか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6において、繰返し送信間隔タイマーが満了したと判定されると、一連の動作は、ステップS2へ戻り、上述したステップS3〜ステップS6が繰返し実行される。つまり、ステップS4において、緊急パケットPKT_EMGの送信回数が規定回数に達するまで、上述したステップS3〜ステップS6が繰返し実行される。
【0133】
そして、ステップS4において、緊急パケットPKT_EMGの送信回数が規定回数に達したと判定されると、一連の動作は、終了する。
【0134】
図21は、各無線装置における緊急パケットの受信および転送動作を説明するためのフローチャートである。
【0135】
一連の動作が開始されると、各無線装置1〜8は、パケットPKTを受信したか否かを判定する(ステップS11)。そして、各無線装置1〜8は、パケットPKTを受信すると、その受信したパケットPKTのヘッダHEDをデコードし、そのデコードしたヘッダHEDのフラグFLGを参照して、緊急フラグがONであるか否かを更に判定する(ステップS12)。
【0136】
ステップS12において、緊急フラグがOFFであると判定されると、各無線装置1〜8は、定期パケットの受信処理を行なう(ステップS13)。
【0137】
一方、ステップS12において、緊急フラグがONであると判定されると、各無線装置1〜8は、定期パケット停止期間タイマーを起動し、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止する(ステップS14)。
【0138】
その後、各無線装置1〜8は、上述した方法によって、緊急パケットPKT_EMGの転送が必要であるか否かを判定する(ステップS15)。そして、ステップS15において、緊急パケットPKT_EMGの転送が必要であると判定されると、各無線装置1〜8は、緊急パケットPKT_EMGを転送する(ステップS16)。
【0139】
一方、ステップS11において、パケットを受信しないとき、またはステップS15において、緊急パケットPKT_EMGの転送が必要でないとき、またはステップS13の後、一連の動作は、ステップS11へ戻り、以降、上述したステップS11〜ステップS16が繰返し実行される。
【0140】
なお、各無線装置1〜8は、図20または図21に示すフローチャートを繰り返し実行して、緊急パケットPKT_EMGの発生または受信に応じて、定期パケット停止期間の間、定期パケットPKT_PRDの送信および転送を禁止し、緊急パケットPKT_EMGの送信または転送を優先する。従って、緊急パケットPKT_EMGの到達率を向上できる。
【0141】
上記においては、各無線装置1〜8の送受信手段111は、上述した方法によって演算した60個の評価値<ξCode1>av,f1〜<ξCode15>av,f1,<ξCode1>av,f2〜<ξCode15>av,f2,<ξCode1>av,f3〜<ξCode15>av,f3,<ξCode1>av,f4〜<ξCode15>av,f4のうち、最小の評価値が得られたときの周波数ftおよび拡散符号Code_tをそれぞれ送信用の周波数および拡散符号として選択すると説明したが、これは、拡散符号の再利用が不可能な一定領域内で他の無線装置の拡散符号と異なる拡散符号を選択し、その選択した拡散符号を用いて定期パケットPKT_PRDおよび緊急パケットPKT_EMGを送信することを意味する。
【0142】
拡散符号を用いてパケットをスペクトル拡散した場合、2つの無線装置間の距離が数10mよりも短ければ、同じ拡散符号によってスペクトル拡散された2つの信号が識別不可能であるからである。
【0143】
例えば、図14において、無線装置3から無線装置1までの距離が数10mよりも短い場合、無線装置1〜3の送受信手段111は、上述した方法によって、他の無線装置における拡散符号と異なる拡散符号を選択して使用する。
【0144】
一方、拡散符号を用いてパケットをスペクトル拡散した場合、2つの無線装置間の距離が数10m以上であれば、同じ拡散符号によってスペクトル拡散された2つの信号が識別可能である。従って、無線装置3から数10m以上離れた無線装置6,7は、無線装置3における拡散符号と同じ拡散符号を用いても、無線装置3から送信された信号が無線装置6,7において干渉波になり難い。
【0145】
従って、この発明においては、各無線装置1〜8の送受信手段111は、拡散符号の再利用が不可能な一定領域内(<数10m)では、上述した方法によって、他の無線装置における拡散符号と異なる拡散符号を選択し、その選択した拡散符号を用いて定期パケットPKT_PRDおよび緊急パケットPKT_EMGを送信または転送し、一定領域外(=数10m以上離れた領域)では、[所望波の強度]/[干渉波の強度]がプロセスゲインの範囲である場合、他の無線装置における拡散符号と同じ拡散符号を選択して定期パケットPKT_PRDおよび緊急パケットPKT_EMGを送信または転送してもよい。つまり、各無線装置1〜8の送受信手段111は、一定領域外(=数10m以上離れた領域)では、[所望波の強度]/[干渉波の強度]がプロセスゲインの範囲である場合、複数の拡散符号Code1〜Code15から任意に1個の拡散符号を選択して定期パケットPKT_PRDおよび緊急パケットPKT_EMGを送信または転送する。
【0146】
このようにすることによって、各無線装置1〜8は、他の無線通信方式(例えば、CSMA(Carrier Sense Multiple Access)方式)に比べ、緊急パケットPKT_EMGの繰返し送信間隔を短く設定でき、緊急パケットPKT_EMGを高速に転送できる。
【0147】
また、この発明においては、各無線装置1〜8の送受信手段111は、Rake受信方式によって複数の他の無線装置からの複数のパケットPKTを受信するようにしてもよい。
【0148】
例えば、図14において、無線装置1の送受信手段111は、無線装置3からのパケットPKTと無線装置2からのパケットPKTとを重複したパケットのマルチパスとしてRake受信方式によって受信してもよい。
【0149】
更に、上記においては、4個の周波数f1〜f4および15個の拡散符号Code1〜Code15を用いると説明したが、この発明においては、これに限らず、1個以上の周波数および1個以上の周波数の各々に割り当てられた2個以上の拡散符号を用いればよい。
【0150】
この発明においては、定期パケットPKT_PRDを発生して送信する定期パケット発生手段114、MACモジュール112および送受信手段111は、「第1の送信手段」を構成する。
【0151】
また、この発明においては、緊急パケットPKT_EMGを発生して送信する緊急パケット発生手段115、MACモジュール112および送受信手段111は、「第2の送信手段」を構成する。
【0152】
更に、パケットのヘッダのみを復調し、かつ、ヘッダ以外の部分を復調せずに緊急パケットPKT_EMGを転送する処理は、「高速転送処理」を構成する。
【0153】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0154】
この発明は、緊急パケットの到達率を向上可能な無線装置に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】この発明の実施の形態による無線ネットワークの概略図である。
【図2】拡散符号と周波数との関係を示す図である。
【図3】図1に示す無線装置の構成を示す概略図である。
【図4】パケットのフォーマットを示す図である。
【図5】受信信号を拡散符号によって逆拡散して得られる評価値の演算に用いるパケット中のシンボル部の概念図である。
【図6】周辺車両情報テーブルの構成を示す図である。
【図7】転送テーブルの構成を示す図である。
【図8】交通状況を示す図である。
【図9】定期パケットのタイミングチャートを示す図である。
【図10】周辺車両情報テーブルの第1の例を示す図である。
【図11】転送テーブルの第1の例を示す図である。
【図12】周辺車両情報テーブルの第2の例を示す図である。
【図13】転送テーブルの第2の例を示す図である。
【図14】他の交通状況を示す図である。
【図15】緊急パケットのタイミングチャートを示す図である。
【図16】転送テーブルの第3の例を示す図である。
【図17】転送テーブルの第4の例を示す図である。
【図18】緊急パケットの転送を示す概念図である。
【図19】転送テーブルの第5の例を示す図である。
【図20】各無線装置における緊急パケットの送信動作を説明するためのフローチャートである。
【図21】各無線装置における緊急パケットの受信および転送動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0156】
1〜8 無線装置、10 無線ネットワーク、11 通信制御部、12 GPS受信機、20 周辺車両情報テーブル、30 転送テーブル、111 送受信手段、112 MACモジュール、113 処理手段、114 定期パケット発生手段、115 緊急パケット発生手段、1111 転送処理部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数から選択した1個の周波数と複数の拡散符号から選択した1個の拡散符号とを用いてパケットを送受信する無線装置であって、
当該無線装置の位置情報を含む定期パケットを前記1個の周波数と前記1個の拡散符号とを用いて定期的に送信する第1の送信手段と、
緊急情報を含む緊急パケットを前記1個の周波数と前記1個の拡散符号とを用いて送信する第2の送信手段と、
他の無線装置から送信されたパケットを前記複数の周波数のいずれかで受信するとともに、その受信したパケットのヘッダのみを復調して前記受信したパケットが前記緊急パケットであると判定したとき、前記パケットのヘッダ以外の部分を復調せずに前記緊急パケットを転送する高速転送処理を実行する受信手段とを備え、
前記第1の送信手段は、前記緊急情報が発生したとき、または前記受信手段によって受信されたパケットが前記緊急パケットであるとき、定期パケット停止期間の間、前記定期パケットの送信および転送を禁止し、
前記第2の送信手段は、前記緊急情報が発生すると、前記緊急パケットを規定回数だけ繰り返し送信する、無線装置。
【請求項2】
前記受信手段は、前記ヘッダが緊急パケットを示すフラグを含むとき、前記パケットが前記緊急パケットであると判定し、前記ヘッダを更新するとともに一時記憶した前記ヘッダ以外の部分に前記更新したヘッダを付加して転送する、請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記受信手段は、物理層に属し、前記受信したパケットが前記緊急パケットであると判定したとき、前記緊急パケットを前記物理層よりも上位の層へ上げることなく前記緊急パケットを転送する、請求項2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記受信手段は、前記受信した緊急パケットを転送するか否かを判断するための転送テーブルを保持しており、前記転送テーブルを参照して、前記緊急パケットの転送実績がないと判定したとき、前記高速転送処理を実行し、前記緊急パケットの転送実績があると判定したとき、前記高速転送処理を実行しない、請求項1に記載の無線装置。
【請求項5】
前記転送テーブルは、前記受信手段によって受信されたパケットの発信元と、パケットの生成順を示すシーケンス番号と、当該無線装置に対する前記パケットの発信元の存在方向を示す相対方向とが相互に対応付けられた構成からなり、
前記受信手段は、前記受信したパケットが前記緊急パケットであり、かつ、前記緊急パケットの発信元に対応する前記転送テーブル中のシーケンス番号が零または前記緊急パケットに含まれるシーケンス番号よりも小さい値からなるとき、前記高速転送処理を実行するとともに、前記転送テーブル中のシーケンス番号を前記緊急パケットに含まれるシーケンス番号に更新する、請求項4に記載の無線装置。
【請求項6】
前記受信手段は、前記受信したパケットのヘッダに含まれる前記緊急パケットの転送方向に合致する相対方向が前記転送テーブルに含まれているとき、前記緊急パケットを前記転送方向へ転送する、請求項5に記載の無線装置。
【請求項7】
前記第2の送信手段は、当該無線装置が前記緊急情報の発生元であるとき、繰返し送信期間タイマーを起動し、前記繰返し送信期間タイマーが満了する毎に前記緊急パケットを送信する処理を規定回数だけ繰り返し実行し、
前記第1の送信手段は、前記緊急情報が発生したことを示す信号を前記第2の送信手段から受ける毎に、または前記緊急パケットを受信したことを示す信号を前記受信手段から受ける毎に、定期パケット停止期間タイマーを起動し、その起動した定期パケット停止期間タイマーが満了するまでの間、前記定期パケットの送信および転送を禁止する、請求項1に記載の無線装置。
【請求項8】
前記第2の送信手段は、当該無線装置が同じ拡散符号の使用が不可能な一定領域内に存在するとき、他の無線装置における拡散符号と異なる拡散符号を用いて前記緊急パケットを送信し、当該無線装置が前記一定領域外に存在し、かつ、当該無線装置における干渉波の強度に対する所望波の強度の比がプロセスゲインの範囲であるとき、前記複数の拡散符号から任意に選択した拡散符号を用いて前記緊急パケットを送信し、
前記受信手段は、当該無線装置が前記一定領域内に存在するとき、他の無線装置における拡散符号と異なる拡散符号を用いて前記緊急パケットを転送し、当該無線装置が前記一定領域外に存在し、かつ、当該無線装置における干渉波の強度に対する所望波の強度の比がプロセスゲインの範囲であるとき、前記複数の拡散符号から任意に選択した拡散符号を用いて前記緊急パケットを転送する、請求項1に記載の無線装置。
【請求項9】
前記受信手段は、Rake受信方式によって複数の他の無線装置からの複数のパケットを受信する、請求項1に記載の無線装置。
【請求項1】
複数の周波数から選択した1個の周波数と複数の拡散符号から選択した1個の拡散符号とを用いてパケットを送受信する無線装置であって、
当該無線装置の位置情報を含む定期パケットを前記1個の周波数と前記1個の拡散符号とを用いて定期的に送信する第1の送信手段と、
緊急情報を含む緊急パケットを前記1個の周波数と前記1個の拡散符号とを用いて送信する第2の送信手段と、
他の無線装置から送信されたパケットを前記複数の周波数のいずれかで受信するとともに、その受信したパケットのヘッダのみを復調して前記受信したパケットが前記緊急パケットであると判定したとき、前記パケットのヘッダ以外の部分を復調せずに前記緊急パケットを転送する高速転送処理を実行する受信手段とを備え、
前記第1の送信手段は、前記緊急情報が発生したとき、または前記受信手段によって受信されたパケットが前記緊急パケットであるとき、定期パケット停止期間の間、前記定期パケットの送信および転送を禁止し、
前記第2の送信手段は、前記緊急情報が発生すると、前記緊急パケットを規定回数だけ繰り返し送信する、無線装置。
【請求項2】
前記受信手段は、前記ヘッダが緊急パケットを示すフラグを含むとき、前記パケットが前記緊急パケットであると判定し、前記ヘッダを更新するとともに一時記憶した前記ヘッダ以外の部分に前記更新したヘッダを付加して転送する、請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
前記受信手段は、物理層に属し、前記受信したパケットが前記緊急パケットであると判定したとき、前記緊急パケットを前記物理層よりも上位の層へ上げることなく前記緊急パケットを転送する、請求項2に記載の無線装置。
【請求項4】
前記受信手段は、前記受信した緊急パケットを転送するか否かを判断するための転送テーブルを保持しており、前記転送テーブルを参照して、前記緊急パケットの転送実績がないと判定したとき、前記高速転送処理を実行し、前記緊急パケットの転送実績があると判定したとき、前記高速転送処理を実行しない、請求項1に記載の無線装置。
【請求項5】
前記転送テーブルは、前記受信手段によって受信されたパケットの発信元と、パケットの生成順を示すシーケンス番号と、当該無線装置に対する前記パケットの発信元の存在方向を示す相対方向とが相互に対応付けられた構成からなり、
前記受信手段は、前記受信したパケットが前記緊急パケットであり、かつ、前記緊急パケットの発信元に対応する前記転送テーブル中のシーケンス番号が零または前記緊急パケットに含まれるシーケンス番号よりも小さい値からなるとき、前記高速転送処理を実行するとともに、前記転送テーブル中のシーケンス番号を前記緊急パケットに含まれるシーケンス番号に更新する、請求項4に記載の無線装置。
【請求項6】
前記受信手段は、前記受信したパケットのヘッダに含まれる前記緊急パケットの転送方向に合致する相対方向が前記転送テーブルに含まれているとき、前記緊急パケットを前記転送方向へ転送する、請求項5に記載の無線装置。
【請求項7】
前記第2の送信手段は、当該無線装置が前記緊急情報の発生元であるとき、繰返し送信期間タイマーを起動し、前記繰返し送信期間タイマーが満了する毎に前記緊急パケットを送信する処理を規定回数だけ繰り返し実行し、
前記第1の送信手段は、前記緊急情報が発生したことを示す信号を前記第2の送信手段から受ける毎に、または前記緊急パケットを受信したことを示す信号を前記受信手段から受ける毎に、定期パケット停止期間タイマーを起動し、その起動した定期パケット停止期間タイマーが満了するまでの間、前記定期パケットの送信および転送を禁止する、請求項1に記載の無線装置。
【請求項8】
前記第2の送信手段は、当該無線装置が同じ拡散符号の使用が不可能な一定領域内に存在するとき、他の無線装置における拡散符号と異なる拡散符号を用いて前記緊急パケットを送信し、当該無線装置が前記一定領域外に存在し、かつ、当該無線装置における干渉波の強度に対する所望波の強度の比がプロセスゲインの範囲であるとき、前記複数の拡散符号から任意に選択した拡散符号を用いて前記緊急パケットを送信し、
前記受信手段は、当該無線装置が前記一定領域内に存在するとき、他の無線装置における拡散符号と異なる拡散符号を用いて前記緊急パケットを転送し、当該無線装置が前記一定領域外に存在し、かつ、当該無線装置における干渉波の強度に対する所望波の強度の比がプロセスゲインの範囲であるとき、前記複数の拡散符号から任意に選択した拡散符号を用いて前記緊急パケットを転送する、請求項1に記載の無線装置。
【請求項9】
前記受信手段は、Rake受信方式によって複数の他の無線装置からの複数のパケットを受信する、請求項1に記載の無線装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−34624(P2010−34624A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−191691(P2008−191691)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人情報通信研究機構、研究テーマ「高レスポンスマルチホップ自律無線通信システムの研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人情報通信研究機構、研究テーマ「高レスポンスマルチホップ自律無線通信システムの研究開発」に関する委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】
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