説明

無線通信による移動端末の検出システム

【課題】 消費電力、無線の帯域、位置計算処理能力等のリソースにマイナスの影響を与えることなく、位置の精度を向上させることを可能とする無線通信による移動端末の検出システムを実現する。
【解決手段】 移動端末から周期的に送信される無線信号を、固定配置された基地局が受信する無線通信による移動端末の検出システムにおいて、
前記移動端末に加速度センサを設け、この加速度センサの検出値に基づいて前記無線信号の送信周期を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末から周期的に送信される無線信号を、固定配置された基地局が受信する無線通信による移動端末の検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動端末から周期的に送信される無線信号を、固定配置された3個の基地局で受信し、検出される移動端末との距離情報により3辺測量法の原理で移動端末に位置を同定する無線通信による移動端末の検出システムについては、特許文献1に開示されている。
【0003】
図2は、三辺測量法により移動端末の位置を同定するシステム構成図である。移動端末10は、無線信号を送信する機能を備えた装置(ノートパソコン、携帯電話等)であり、人が身に付けて移動する。
【0004】
3個の無線基地局21,22,23は、移動端末10の無線信号を受信する機能を備えた装置(無線LANのアクセスポイント等)で、所定の間隔で設置されており、ネットワークを介して位置計算装置30に測定情報を渡す。
【0005】
3個の無線基地局21,22,23は移動端末10の無線信号を受信し、夫々の無線信号の受信強度(RSSI)または基地局から移動端末に送信される無線信号を基地局に返送する無線信号の到達時間(TDOA)を測定する。
【0006】
位置計算装置30は、3個の無線基地局21,22,23からの測定情報に基づいて各基地局21,22,23と移動端末10との距離を算出し、三辺測量法により移動端末10の位置を同定する。
【0007】
図3は、移動端末10と3個の基地局21,22,23との通信手順を示すタイムチャートである。以下の処理を、一定周期(T秒)で実行している。
【0008】
(a)移動端末10は、無線信号を周期T秒間隔で送信する。
(b)無線基地局21,22,23は、移動端末10が送信した無線信号を受信して、以下のいずれか(もしくは両方)の情報を得る。
・受信強度RSSI (Received Signal Strength Indicator)
・到達時間TDOA (Time Difference Of Arival)
(c)各無線基地局は受信強度・到達時間情報を、位置計算装置30に伝送する。
(d)位置計算装置30は、取得した情報に基づいて、三辺測量法により移動端末10の位置(座標)を同定する。
【0009】
図4は、従来の移動端末の構成例を示す機能ブロック図である。移動端末10は、タイミング生成手段(定周期タイマ)11を内蔵しており、一定の定周期Tのタイミング信号を生成する。無線送信手段12は、このタイミング毎に無線信号を無線基地局21,22,23に送信する。
【0010】
【特許文献1】特開2005−86579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の移動端末検出システムでは、以下のトレードオフがある。
(1)位置計算装置30が出力する位置計算の精度を上げるためには、移動端末の通信頻度を上げる(通信間隔Tを小さくする)必要がある。
【0012】
(2)移動端末の通信頻度を上げると、以下の問題が発生する。
・移動端末の消費電力が増加する
・無線の帯域を浪費する
・位置計算装置の処理能力(CPU資源)を浪費する
【0013】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、消費電力、無線帯域、位置計算処理能力等のリソースにマイナスの影響を与えることなく、位置の精度を向上させることを可能とする無線通信による移動端末の検出システムの実現を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を達成するために、本発明は次の通りの構成になっている。
(1)移動端末から周期的に送信される無線信号を、固定配置された基地局が受信する無線通信による移動端末の検出システムにおいて、
前記移動端末に加速度センサを設け、この加速度センサの検出値に基づいて前記無線信号の送信周期を変更することを特徴とする無線通信による移動端末の検出システム。
【0015】
(2)前記基地局が受信する無線信号の受信強度に基づいて、前記移動端末と前記基地局間の距離を検出することを特徴とする(1)に記載の無線通信による移動端末の検出システム。
【0016】
(3)前記基地局から前記移動端末に送信される無線信号を前記基地局に返送する時間に基づいて、前記移動端末と前記基地局間の距離を検出することを特徴とする(1)に記載の無線通信による移動端末の検出システム。
【0017】
(4)前記移動端末から送信される無線信号を3個の基地局で受信して検出される夫々の基地局と前記移動端末間の距離情報に基づいて、前記移動端末の位置を三辺測量法により検出することを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の無線通信による移動端末の検出システム。
【0018】
(5)前記移動端末は、前記加速度センサの検出値を演算する演算手段を備え、演算結果に基づいて前記無線信号の送信周期を変更することを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の無線通信による移動端末の検出システム。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、次のような効果を期待することができる。
(1)加速度センサの出力が激しく変化している時は、移動端末の位置が大きく変化している可能性があるので、通信頻度を増やして位置の検出精度を高め、逆に、加速度センサの出力が変化していない場合は、移動端末の位置があまり変化していないと判断できるので、無線の通信頻度を減らして、各種リソースを節約することができる。
【0020】
(2)その結果、移動端末の消費電力、無線帯域、位置計算装置の処理能力等のリソースにマイナスの影響を与えることなく、位置の検出精度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。図1は、本発明を適用した無線通信による移動端末の検出システムの一実施形態を示す機能ブロック図である。図2乃至図4で説明した従来システムと同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0022】
本発明が適用された移動端末100は、内部に加速度センサ101を備えている。この加速度センサ101の検出値Sが演算手段102に入力される。演算手段102は、加速度の検出値Sに基づいて最適の周期信号Tを演算して無線送信手段103に出力する。
【0023】
演算手段102は、例えば、内部の加速度センサ101の出力値Sにより、以下のような処理を実行する。
(a)加速度が激しく変化している場合は、無線の送信周期Tを短くする。
(b)加速度が激しく変化していない場合は、無線の送信周期Tを長くする。
【0024】
演算手段102は、加速度センサ101の出力値Sの振動波形の振幅を抽出し、この振幅値に反比例または所定の非直線特性を演算した送信周期Tを算出する。
【0025】
市販されている移動端末の位置検出システムでは、検出精度を最大にするために、例えば、無線の送信周期Tを5msec(200回/秒)程度に固定しているものがある。
【0026】
検出精度が厳しく要求されない室内の人の移動管理システム等への適用では、移動端末に加速度センサを設けることにより、動きのない移動端末では送信周期Tを、例えば、2秒乃至16秒とすることで、移動端末の電池寿命を格段に伸ばすことが可能となる。これにより、電池コスト並びに交換メンテナンスコストの削減に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を適用した移動端末の一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】三辺測量法により移動端末の位置を同定するシステム構成図である。
【図3】移動端末と基地局との通信手順を示すタイムチャートである。
【図4】従来の移動端末の構成例を示す機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0028】
100 移動端末
101 加速度センサ
102 演算手段
103 無線送信手段
21,22,23 無線基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動端末から周期的に送信される無線信号を、固定配置された基地局が受信する無線通信による移動端末の検出システムにおいて、
前記移動端末に加速度センサを設け、この加速度センサの検出値に基づいて前記無線信号の送信周期を変更することを特徴とする無線通信による移動端末の検出システム。
【請求項2】
前記基地局が受信する無線信号の受信強度に基づいて、前記移動端末と前記基地局間の距離を検出することを特徴とする請求項1に記載の無線通信による移動端末の検出システム。
【請求項3】
前記基地局から前記移動端末に送信される無線信号を前記基地局に返送する時間に基づいて、前記移動端末と前記基地局間の距離を検出することを特徴とする請求項1に記載の無線通信による移動端末の検出システム。
【請求項4】
前記移動端末から送信される無線信号を3個の基地局で受信して検出される夫々の基地局と前記移動端末間の距離情報に基づいて、前記移動端末の位置を三辺測量法により検出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の無線通信による移動端末の検出システム。
【請求項5】
前記移動端末は、前記加速度センサの検出値を演算する演算手段を備え、演算結果に基づいて前記無線信号の送信周期を変更することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の無線通信による移動端末の検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−17321(P2009−17321A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177890(P2007−177890)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】