説明

無線通信システムおよびそれを用いる給電監視制御システム

【課題】遠隔検針を行うユニット電力計に専用ツールを用いて設定や不達データの吸い上げを現場で行うにあたって、本来の電話番号が分らなくても、通信を行えるようにする。
【解決手段】検針データをサーバ装置1へ送信したり、制御データを受けたりする通常使用する電話番号(各ユニット電力計Tの円内の上段)とは別に、副電話番号(下段)を設定しておく。そして、その副電話番号は、機体に付されている固有のデータに基づいて、予め規定されている算出方法によって一義的に導き出すことができる番号、たとえばシリアルナンバーの下4桁から成る。また、そのシリアルナンバー自体を付加電話番号として設定し、メッセージ中で送信する。したがって、作業者は、製造銘板等を見れば、容易に副電話番号を知ることができるとともに、副電話番号での収容数を超えて、端局(ユニット電力計T)を正確に指定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気、ガス、水道等の検針に用いることができる無線通信システムおよびそれを用いる給電監視制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
前記電気、ガス、水道等の検針に用いられる無線通信システムの典型的な従来技術は、特許文献1に示されている。この従来技術では、検針データを上位側の端局(無線通信装置)に吸い上げて統合し、さらに上位側へと転送してゆくので、基端の管理装置が各端局を個別にポーリングする場合に比べて、短時間でデータを収集できるようになっている。
【0003】
ところで、そのような端局の設置や更新に伴う設定を行う場合、或いはネットワークの故障で検針データが上げられず、孤立状態となった端局から作業者が検針データを吸い上げるような場合、専用ツールで端局と直接通信を行う必要がある。ここで、そのような場合に、端局と専用ツールとを直接ケーブルを接続してデータの通信を行うことが考えられるが、隣家との隙間や高所に設置される端局のカバーを外し、ケーブルを接続するのは非常に煩雑である。特に、ネットワークの上位側の端局が故障した場合、多くの端局から検針データを吸い上げる必要があり、極めて煩雑である。また、屋外に設置されるそのような端局で、経年による端子の汚れなどでの接続の信頼性も問題になる。
【0004】
そこで、特許文献2には、コードレス電話機において、親機のROM内に被呼先の電話番号がグループ名を付けて記憶されているとともに、グループ名に対応した呼出し先の識別情報が記憶されており、外部から掛かってきた電話がどのグループ、すなわち家族の内の誰に対するものかに応じて、鳴動させる機器を切換えることが提案されている。
【特許文献1】特開2000−187793号公報
【特許文献2】特許第3911887号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上述の特許文献2を特許文献1に用いることで、自動検針を行う端局の識別情報(電話番号)を実質的に設定することができる。しかしながら、その設定は親機の側での処理になり、特許文献2は前述のように家庭用のコードレス電話機であるので、その際の問題は少ないが、自動検針を行う端局を別の識別情報(電話番号)に変更しようとすると、管理装置側から変更の指示を与える必要があり、作業が非常に煩雑である。また、ネットワーク故障の際の不達検針データを吸い上げる場合には、管理装置側からはアクセスできず、前記専用ツールから端局の識別情報(電話番号)を指定してアクセスする必要がある。ところが、無線通信にPHSを用いた場合では、そのトランシーバモードでの電話番号が動的に変り、作業者が現場で端局を見ても電話番号が分らず、アクセスできないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、各端局の設置箇所において、本来の識別情報(電話番号)が分らなくても、容易に通信を行うことができる無線通信システムおよびそれを用いる給電監視制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線通信システムは、複数の無線通信装置から成り、各無線通信装置は、所定のビット数の第1の識別情報を記憶しており、受信された識別情報が前記第1の識別情報と一致することで、他の無線通信装置との間でメッセージの無線通信を可能とする無線通信システムにおいて、前記各無線通信装置には、機体に付されている固有のデータに基づいて予め規定されている算出方法によって一義的に導き出すことができ、前記所定のビット数から成る第2の識別情報と、前記固有のデータから成る第3の識別情報とがさらに記憶され、前記第2の識別情報で所望とする無線通信装置の呼出しを行い、呼出した無線通信装置と前記メッセージの通信を行うことで前記第3の識別情報を取得し、該第3の識別情報が前記所望とする無線通信装置における前記第3の識別情報と一致する場合に、以降のメッセージの無線通信を行う専用ツールを備えることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、各無線通信装置には、電話番号などの所定のビット数から成り、個別に呼び出すための第1の識別情報を設定しておき、その第1の識別情報を指定することでメッセージの無線通信が可能になる無線通信システムにおいて、もう1つの(裏の)電話番号となり、所定のビット数から成る第2の識別情報を設定しておく。さらに、この第2の識別情報は、機体に付されている固有のデータに基づいて、予め規定されている算出方法によって一義的に導き出すことができる番号とし、この第2の識別情報とセットで、前記固有のデータから成る第3の識別情報を設定する。
【0009】
そして、専用ツールによる通信時は、先ず前記第2の識別情報で呼出しを行い、さらに第3の識別情報を前記メッセージ中に付記してやりとりし、一致する場合に、以降のメッセージの無線通信を可能とする。
【0010】
したがって、多くの無線通信装置から構成されるネットワーク内で、交換や新設などを行うべき無線通信装置に設定等のために発呼を行うにあたって、その無線通信装置の第1の識別情報が分らない場合にも、作業者は、機体に付されている固有のデータに基づいて、既知の算出方法から第2の識別情報を算出して発呼を行うことができ、しかもビット数に規定のある前記第2の識別情報が一致する無線通信装置が偶然近くに存在しても、さらに第3の識別情報によって所望とする無線通信装置のみを個別に指定することができる。こうして、各無線通信装置の設置箇所において、本来の識別情報(電話番号)が分らなくても、容易に通信を行うことができるとともに、前記識別情報(電話番号)の本来のビット数を超えるデータ量で、所望とする無線通信装置を正確に指定することができる。これによって、遠隔検針に好適な無線通信システムを実現することができる。
【0011】
また、本発明の無線通信システムでは、前記無線通信装置は、前記専用ツールから前記第2の識別情報で呼出しが行われ、メッセージを通信して、前記メッセージ中の第3の識別情報が自機の第3の識別情報と異なる場合には、前記専用ツールに接続拒否信号を送信し、所定時間、前記専用ツールからの呼出しに対する応答を休止する(黙っている)ことを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、前記無線通信装置は、前記専用ツールから前記第2の識別情報で呼出しが行われ、該第2の識別情報が一致すると応答を行い、さらにメッセージを通信して、前記第3の識別情報から前記専用ツールが接続を希望する無線通信装置ではないと判定すると、前記専用ツールに接続拒否信号を送信し、所定時間、呼出しに対する応答を休止する(黙っている)。
【0013】
したがって、前記第2の識別情報が一致する無線通信装置からの応答が錯綜して、前記所望とする無線通信装置からの応答がいつまでたっても到達しないような事態を回避することができる。
【0014】
さらにまた、本発明の無線通信システムでは、前記無線通信装置は、前記第2の識別情報が一致する呼出しを受けたときは、前記固有のデータに基づくタイミングだけ遅延して応答を行うことを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、前記第2の識別情報が一致する無線通信装置が複数存在する場合に、呼出しに対する各無線通信装置からの応答をずらして、衝突しないようにして、順次別の無線通信装置と通信を行う。
【0016】
したがって、前記所望とする無線通信装置を、確実かつ速やかに見つけることができる。
【0017】
また、本発明の無線通信システムでは、前記各無線通信装置および専用ツールは、PHSトランシーバモードで通信を行うことを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、PHSトランシーバモードでは、通信相手先端局を呼び出す42bitの着信識別符号の内、13bitの個別の無線通信装置の識別情報となるPS呼出し番号は、ネットワークの状態によって動的に変化し、外部からは分らないので、本発明のように変化せず、算出方法が既知であれば、外部から一見して分る第2および第3の識別情報(裏の電話番号)を用いることで、所望とする無線通信装置を容易に指定することができ、好適である。
【0019】
また、前記PHSトランシーバモードでは、前記のように通信相手先端局を呼び出す42bitの着信識別符号の内、個別の無線通信装置の識別情報となるPS呼出し番号は13bit、すなわち収容数は8192個しかないので、前記第2の識別情報では、その8192個しか無線通信装置を個別に指定できないのに対して、さらに第3の識別情報を用いることで、所望とする無線通信装置を正確に指定することができる。
【0020】
さらにまた、本発明の無線通信システムは、ネットワークを管理する管理装置から、複数の無線通信装置がツリー状に配列されて成り、一の無線通信装置が第1の識別情報を用いて他の無線通信装置と通信を行うことで、各無線通信装置で送受信すべきデータが、自機より上位側の無線通信装置で中継されて前記管理装置との間で送受信されることを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、管理装置からツリー状にネットワークを構成し、データ収集やデータ配信を行うことができる無線通信システムを実現することができる。
【0022】
好ましくは、前記各無線通信装置から管理装置へ伝送されるデータは各無線通信装置で収集されたセンシングデータであり、管理装置から各無線通信装置へ伝送されるデータは各無線通信装置に対する制御データであることを特徴とする。
【0023】
また、本発明の給電監視制御システムは、前記の無線通信システムにおいて、各無線通信装置に、前記センシングデータを取得する電力量計および前記制御データに応答して開閉制御を行う負荷開閉器が併設されて成ることを特徴とする。
【0024】
上記の構成によれば、管理装置は、各無線通信装置がどのように配列されているかを表すルートテーブルを保持して、各無線通信装置から定期的に電力量計のセンシングデータを取得し、必要に応じて各無線通信装置を介して負荷開閉器を制御することができる。
【0025】
したがって、時間帯別の使用電力量の集計や、入退居に伴う給停電を、作業者が直接契約家庭や事業所に出向くことなく、電力会社の営業所などで遠隔にて行うことができる。これによって、細かな料金体系を採用したり、課金や給停電を速やかに行うことができ、電力会社において、顧客サービスを向上することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の無線通信システムは、以上のように、各無線通信装置に電話番号などの所定のビット数から成り、個別に呼び出すための第1の識別情報を設定しておき、その第1の識別情報を指定することでメッセージの無線通信が可能になる無線通信システムにおいて、もう1つの(裏の)電話番号となり、所定のビット数から成る第2の識別情報を設定しておき、さらにこの第2の識別情報を、機体に付されている固有のデータに基づいて、予め規定されている算出方法によって一義的に導き出すことができる番号とし、この第2の識別情報とセットで、前記固有のデータから成る第3の識別情報を設定する。
【0027】
それゆえ、多くの無線通信装置から構成されるネットワーク内で、交換や新設などを行うべき無線通信装置に設定等のために発呼を行うにあたって、その無線通信装置の第1の識別情報が分らない場合にも、作業者は、機体に付されている固有のデータに基づいて、既知の算出方法から第2の識別情報を算出して発呼を行うことができ、しかもビット数に規定のある前記第2の識別情報が一致する無線通信装置が偶然近くに存在しても、さらに第3の識別情報によって所望とする無線通信装置のみを個別に指定することができる。こうして、各無線通信装置の設置箇所において、本来の識別情報(電話番号)が分らなくても、容易に通信を行うことができるとともに、前記識別情報(電話番号)の本来のビット数を超えるデータ量で、所望とする無線通信装置を正確に指定することができる。これによって、遠隔検針に好適な無線通信システムを実現することができる。
【0028】
さらにまた、本発明の給電監視制御システムは、以上のように、前記の無線通信システムにおいて、各無線通信装置に、センシングデータを取得する電力量計および制御データに応答して開閉制御を行う負荷開閉器を併設して成る。
【0029】
それゆえ、時間帯別の使用電力量の集計や、入退居に伴う給停電を、作業者が直接契約家庭や事業所に出向くことなく、電力会社の営業所などで遠隔にて行うことができる。これによって、細かな料金体系を採用したり、課金や給停電を速やかに行うことができ、電力会社において、顧客サービスを向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の一形態に係る給電監視制御システムの全体構成を示すブロック図である。この給電監視制御システムは、電力会社の営業所などに設置されるサーバ装置1と、そのサーバ装置1と社内光ファイバ網などの通信回線2を介して接続される1または複数のゲートウエイGWa,GWb,GWc,・・・(総称するときは、以下参照符号GWで示す)と、前記各ゲートウエイGWから最下位の末端局であるユニット電力計T1−1,T1−2,T1−3,・・・まで、複数の階層を備えるツリー状に配列される前記ユニット電力計T1−1,T1−2,T1−3,・・・;T2−1,T2−2,・・・;T3−1,T3−2,・・・(総称するときは、以下参照符号Tで示す)とを備えて構成される。
【0031】
各ユニット電力計Tは、本願出願人が先に特開2006−292442号公報や特開2006−170787号公報で提案したような構造に類似しており、たとえば図2で示すように構成される。すなわち、宅内の各配電線が接続される端子台6側から、負荷開閉器3、電力量計4および無線通信装置5が配列されて構成されている。前記電力量計4は、積算電力量を予め定める周期、たとえば30分毎に検針し、センシングデータであるその検針データを、無線通信装置5が、各ユニット電力計Tに予め設定されたタイミングに、自機の属するゲートウエイGWへ向けて送信し、集約されてサーバ装置1に入力される。一方、サーバ装置1からは、負荷開閉器3の開閉や、不達検針データを再送させるバックアップ検針などを行わせるための制御データが、必要に応じて、ゲートウエイGWを介して各無線通信装置5へ向けて送信される。
【0032】
前記サーバ装置1は、各ユニット電力計Tがどのように配列されているかを表す図1で示すようなルートテーブルを保持しており、上述のようにしてそれぞれに内蔵する無線通信装置5から定期的に電力量計4の検針データを取得し、必要に応じて各無線通信装置5を介して負荷開閉器3を制御することができるようになっており、時間帯別の使用電力量の集計や、入退居に伴う給停電を、作業者が直接契約家庭や事業所に出向くことなく、電力会社の営業所などで遠隔にて行うことができる。これによって、細かな料金体系を採用したり、課金や給停電を速やかに行うことができ、電力会社において、顧客サービスを向上することができるようになっている。
【0033】
各ユニット電力計Tにおいて、前記特許文献1の従来技術では、前記無線通信装置5の部分には、電柱などからの通信信号線を引込むタイプワイヤードの通信装置が使用されていたのを、本発明では、PHS(Personal Handyphone System)トランシーバモードで無線通信を行う装置を用い、以下のようにして通信動作を行う。前記PHSトランシーバモードでは、見通し可能な場合、半径150〜200mの範囲で通信可能となり、各無線通信装置5は、隣接する無線通信装置だけでなく、場合によっては、直接ゲートウエイGWと通信を行うことも可能になる。
【0034】
図3は、無線通信装置5の一構成例を示すブロック図である。この無線通信装置5は、無線通信手段である前記PHSの無線機11と、その通信を制御する制御手段である無線通信制御部12と、タイマ13と、通信に必要なパラメータを記憶している記憶手段であるメモリ14と、前記メモリ14の内容の一部を設定することができる入力操作部15と、電力量計4から検針データを受信するインタフェイス21と、前記負荷開閉器3へ制御データを送信するインタフェイス22と、それらの電力量計4および負荷開閉器3との通信を制御する機内通信制御部23と、前記検針データをバックアップ記憶しておくメモリ24と、前記検針データや制御データを前記無線機11から送受信するにあたって、後述するような併合・分割の処理を行うデータ加工部25と、そのデータ加工の際に使用されるワーキングメモリ26とを備えて構成される。
【0035】
一方、図4は、管理装置であるサーバ装置1の一構成例を示すブロック図である。サーバ装置1は、入力操作部51と、端局となる各ユニット電力計Tの電力量計4から検針データを収集するとともに、負荷開閉器3を制御するユニット制御部52と、その検針データや負荷の制御状況を記憶しているデータベース53と、各ユニット電力計Tに関する状況を管理するネットワーク管理部56およびデータベース54と、前記通信回線2に接続され、ゲートウエイGWから各ユニット電力計Tと通信を行うインタフェイス57とを備えて構成される。
【0036】
前記ゲートウエイGWは、前記図3で示す無線通信装置5の構成において、電力量計4および負荷開閉器3との通信を制御する機内通信制御部23、インタフェイス21,22およびデータメモリ24に代えて、通信回線2と通信を行う通信制御部およびインタフェイスを備えて構成される。
【0037】
上述のように構成される給電監視制御システムにおいて、各無線通信装置5は、前記入力操作部15から設定され、前記メモリ14に、自機の電話番号♯01を有するとともに、前記検針データを転送する上位の相手(発呼)先の電話番号♯11とを有する。前記電話番号♯11は前記ルートテーブルの階層に従う自機に隣接するユニット電力計の電話番号である。具体的には、図1の例では、最下位の末端局であるユニット電力計T1−1,T1−2,T1−3,T1−4,T1−5;T1−11,T1−12(総称するときは、以下参照符号T1で示す)には、それぞれ前記電話番号♯01として、a−300,a−310,a−320,a−330,a−340;b−300,b−310が、前記入力操作部15から予め登録されている。そして、電話番号♯11には、それぞれ1つ上位の局であるユニット電力計T2−2,T2−4,T2−6,T2−8,T2−10;T2−12,T2−14の電話番号a−120,a−140,a−160,a−180,a−200;b−120,b−140が予め登録されている。
【0038】
このように構成される無線通信装置5において、無線通信制御部12は、無線機11で受信された下位側からの検針データを前記データ加工部25に入力する。一方、前記データ加工部25には、前記インタフェイス21を介して機内通信制御部23が受信し、データメモリ24に格納しておいた自機の電力量計4からの検針データが、予め定める送信周期、たとえば前記30分毎に読出されている。そして前記データ加工部25は、ワーキングメモリ26を使用して、入力されたデータを併合する処理を行い、新たな検針データを作成する。
【0039】
その新たな検針データには、無線通信制御部12において、前記メモリ14の電話番号♯01に格納されている自機の電話番号、たとえば前記ユニット電力計T3−12ではb−80が付加された後、タイマ13で規定されたタイミングに、無線機11から、前記電話番号♯11に格納されている自機に隣接する上位側の無線通信装置の電話番号、たとえば前記ユニット電力計T3−12ではユニット電力計T4−11のb−30に発呼させて送信を行う。
【0040】
こうして、自機が中継局となってデータを転送する際に、無線通信制御部12が、下位側からの検針データに、自機の検針データを併合して、上位側へ転送してゆくことで、基端局(上位)側となる程データ長が長くなるが、各無線通信装置が基端局へデータを個別に送信してゆく場合に比べて、トラヒックを大幅に削減することができる。なお、自機が末端局である場合は、転送されて来る検針データが無いので、前記無線機11での受信は行われず、またデータ加工部25での検針データの併合は行われず、メモリ24からの検針データがそのまま送信される。サーバ装置1では、インタフェイス57からユニット制御部52が検針データを受信し、併合されているデータを分割して、データベース53に、需要家毎に格納してゆく。
【0041】
前記メモリ24に格納されるデータは、図3において参照符号24aで示すような、毎時0分および30分において電力量計4で検針された積算電力量のデータであり、或いは図示しない停電などの情報も合わせて格納されていてもよく、その記憶容量は、検針データを、たとえば40日分蓄積可能な容量に選ばれる。サーバ装置1側のデータベース53には、需要家毎の検針データや、負荷の制御状況、給停電の状況などが、さらに長期間分、格納されている。
【0042】
一方、各需要家の負荷開閉器3を所定の時間に制御するための制御データ等は、そのヘッダ部分に前記ルートテーブルに従い、途中に経由すべき無線通信装置の電話番号が総て記載されており、無線通信制御部12は、前記ユニット制御部52から自機に届いた制御データを解析し、次に送信すべき無線通信装置の電話番号に発呼することで転送を行う。たとえば、前記ユニット電力計T4−11で中継されたサーバ装置1からの制御データは、任意のタイミングで、次の階層のユニット電力計T3−11とT3−12との内、データに従って、たとえばT3−12に転送されることになる。このとき、前記無線機11で受信された制御データは、無線通信制御部12から前記データ加工部25に入力されて、ワーキングメモリ26を使用して自機宛の制御データが分割される。
【0043】
こうして、上位側からの制御データから、自機が受取るべき制御データを分割して、下位側へ転送してゆくことで、基端局(上位)側となる程データ長が長くなるが、基端局が各無線通信装置へデータを個別に送信してゆく場合に比べて、トラヒックを大幅に削減することができる。なお、自機が末端局である場合は、転送すべき制御データが無いので、前記無線機11での送信は行われず、またデータ加工部25での制御データの分割は行われない。図1では、ゲートウエイGWa側のツリーにおいて、前記検針データの併合および制御データの分割の様子を分り易く示すように、データ量に対応した太さの矢印を付して示している。
【0044】
このようにして、定時の検針データの収集や制御データの配信を規則的にかつ短時間で行うことができる。また、各無線通信装置5のメモリ14には、隣接する上位の無線通信装置の電話番号♯11を記憶しておくだけで、前記ツリー全体のルートテーブルを備えていなくてもよく、記憶容量を小さくすることができるとともに、ルート変更も容易である。
【0045】
上述のように構成される給電監視制御システムにおいて、注目すべきは、本発明では、各無線通信装置5は、通常時に使用され、第1の識別情報である前記電話番号♯01以外に、メンテナンス時に使用され、第2の識別情報であるもう1つの電話番号を有することである。前記もう1つの(裏の)電話番号は、製造銘板等、機体に付されている固有のデータに基づいて、予め規定されている算出方法によって一義的に導き出すことができる番号であり、本実施の形態では、ユニット電力計Tのシリアルナンバーの下4桁が、副電話番号♯02として前記メモリ14に記憶されている。また注目すべきは、前記第2の識別情報に付随する第3の識別情報を有し、本実施の形態では、前記シリアルナンバー自体が、付加電話番号♯03として前記メモリ14に記憶されている。前記副電話番号♯02および付加電話番号♯03は、セットで、前記入力操作部15から設定され、或いは事前にメーカなどで設定される。
【0046】
ここで、前記PHSトランシーバモードでは、通信相手先端局を呼び出す42bitの着信識別符号の内、個別の端局の識別情報となるPS呼出し番号は13bitであり、その13bitが前記副電話番号♯02となる。したがって、無線通信制御部12は、発呼時の電話番号としては、前記付加電話番号♯03は送信しないが、前記副電話番号♯02で回線が確立した後に送信するメッセージ中に付記して送信する。そして、無線通信制御部12は、その付加電話番号♯03まで一致した場合に、以降のメッセージの無線通信を可能とする。
【0047】
前記副電話番号♯02および付加電話番号♯03は、ユニット電力計Tの交換や新設に伴う設定時、或いはネットワーク故障で孤立したユニット電力計Tから前記検針データを吸い上げる際などの前記メンテナンス時に使用され、専用ツール10による呼出しに使用される。たとえば図1の例では、前記副電話番号♯02として、末端のユニット電力計T1−1,T1−2,T1−3,T1−4,T1−5;T1−11,T1−12には、f−301,e−311,d−321,c−331,b−341;a−301,g−311が登録されている。
【0048】
図5は、前記ユニット電力計Tの交換や新設に伴う設定時の動作を説明するための図である。この図5は、設定すべき(目的とする)ユニット電力計Cの他に、2台のユニット電力計A,Bが、前記専用ツール10との通信可能範囲に存在している例を示している。そして、各ユニット電力計A,B,Cのシリアルナンバー、すなわち前記付加電話番号♯03は、それぞれ「12345678112」,「12345678111」,「12345668111」で個別であり、PS呼出し番号、すなわち副電話番号♯02は、下4桁で、それぞれ「8112」,「8111」,「8111」で、ユニット電力計B,C間で同一となっている。
【0049】
したがって、専用ツール10がユニット電力計Cに向けて、副電話番号♯02の「8111」で発呼すると、同じ「8111」の副電話番号♯02を有するユニット電力計Bも、自機宛の通信であると認識し、送信信号に同期する。その後、通常のPHS−TR動作によって、ユニット電力計B,C共に呼を確立して、通信動作に移る。これによって、メンテナンス専用の動作に移り、専用ツール10が、前記付加電話番号♯03、すなわちシリアルナンバーを要求し、タイマ13を起動して、所定時間、応答待ちを行う。
【0050】
図5の例では、前記タイマ13のタイムアウト以前に、先に目的外のユニット電力計Bから応答があり、目的とするユニット電力計Cからの応答は衝突により不達となっている。ただし、前記目的外のユニット電力計Bからの応答は、前記シリアルナンバーが自機のものと一致せず、そのことを表す接続拒否信号NACKである。この接続拒否信号NACKを受信すると、専用ツール10は、一旦呼を切断する。また、前記接続拒否信号NACKを送信したユニット電力計Bでは、前記タイマ13を起動して、所定時間、呼出しに対する応答を休止する(黙っている)。
【0051】
そして次の送信フレームで、専用ツール10は、同様にユニット電力計Cに向けて、副電話番号♯02の「8111」で発呼する。このとき、ユニット電力計Bは接続拒否タイマのカウント中であり、呼出しには応答せず(無視し)、したがってユニット電力計Cの応答だけが専用ツール10で受信されることになる。これによって、目的のユニット電力計Cと専用ツール10との呼が確立し、専用ツール10が、メッセージで前記付加電話番号♯03、すなわちシリアルナンバーを要求する。タイマ13のタイムアウト時間までにユニット電力計Cから応答があり、前記シリアルナンバーが目的とするユニット電力計Cの値と一致すると、専用ツール10は、以降のメッセージで、契約番号や、当初の電話番号♯01,♯11などの設定を行う。ネットワーク故障による端局孤立時における検針データの吸い上げも、前記専用ツール10によって、PHS通信回線を使用して、上記と同様の手順で行われる。
【0052】
このように通常使用する電話番号♯01以外に、メンテナンス用に、機体に付されている固有のデータに基づいて、予め規定されている算出方法によって一義的に導き出すことができる副電話番号♯02およびさらにそれを補充する付加電話番号♯03を用いることで、多くのユニット電力計Tから構成されるネットワーク内で、交換や新設などを行うべきユニット電力計に設定等のために発呼を行うにあたって、そのユニット電力計の電話番号♯01が分らない場合にも、作業者は、機体に付されている固有のデータに基づいて、既知の算出方法から電話番号♯02を算出して発呼を行うことができ、しかもビット数に規定のある前記副電話番号♯02が一致するユニット電力計が偶然近くに存在しても、さらに付加電話番号♯03によって所望とするユニット電力計のみを個別に指定することができる。こうして、各ユニット電力計Tの設置箇所において、本来の電話番号♯01が分らなくても、容易に通信を行うことができるとともに、前記電話番号♯01の本来のビット数を超えるデータ量で、所望とするユニット電力計を正確に指定することができる(前記13bitの端局収容数8192台を超えて指定することができる)。また、速やかに検針データを送信可能となる。
【0053】
また、前記ユニット電力計B、Cの無線通信装置5は、前記専用ツール10から前記副電話番号♯02で呼出しが行われ、該副電話番号♯02が一致すると応答を行い、さらにメッセージを通信して、前記付加電話番号♯03から前記専用ツール10が接続を希望する無線通信装置ではないと判定すると、前記専用ツール10に接続拒否信号NACKを送信し、所定時間、呼出しに対する応答を休止する(黙っている)。前記接続拒否信号NACKを受信した専用ツール10は、その無線通信装置に対する呼出しを止め、他の無線通信装置の呼出しを行う。これによって、前記副電話番号♯02が一致するユニット電力計B,Cからの応答が錯綜して、前記所望とするユニット電力計Cからの応答がいつまでたっても到達しないような事態を回避することができる。
【0054】
[実施の形態2]
図6および図7は、本発明の実施の他の形態に係る給電監視制御システムにおけるメンテナンス時の通信動作を説明するための図である。本実施の形態には、前述の図1〜図4で示す構成を用いることができ、無線通信制御部12における一部の動作タイミングが、以下のように異なるだけである。前述の図5の動作では、2台のユニット電力計B,Cの応答にずれがあり、ユニット電力計Bからの付加電話番号♯03(シリアルナンバー)の応答を専用ツール10で受信できたけれども、図6で示すようにあまりずれがないときは、応答信号が衝突してしまう。具体的には、図6の例では、専用ツール10からの距離が近いなどのために先に応答するユニット電力計Bが、前のフレームの開始時刻t1から所定の着信監視期間W1内にキャリアが検出されず、時刻t2からの次のフレームから応答を開始し始めた際、前記距離が遠いなどのために少し送れて応答したユニット電力計Cも、キャリアセンスの結果、所定の着信監視期間W1内にキャリアが検出されず、時刻t3からのさらに次のフレームから応答してしまうと、以降のフレームでは応答信号が衝突してしまう。
【0055】
そこで本実施の形態では、図7で示すように、各ユニット電力計Tは、固有のデータである前記シリアルナンバーに基づくタイミングW2だけ遅延して応答を行う。図7の例では、図面の簡略化のために、ユニット電力計BではW2=0であり、またユニット電力計Cでは、W2は略4フレーム相当期間である。したがって、前記タイミングW2だけ待機したユニット電力計Cでは、キャリアセンスによって、前記ユニット電力計Bからの応答を確実に検知し、応答は行わない。
【0056】
このように構成することで、前記副電話番号♯02が一致するユニット電力計Tが複数存在する場合に、呼出しに対する各ユニット電力計Tからの応答をずらして、衝突しないようにして、順次専用ツール10と通信を行うようにすることができ、前記所望とするユニット電力計Cを確実かつ速やかに見つけることができる。
【0057】
なお、上記実施形態では、管理装置が、サーバ装置1とゲートウエイGWとから成る例を示した。これは、管理装置の一例であり、複数のサーバ装置を備えている管理装置、ゲートウエイGWを使用していない管理装置等であってもよい。また、端局である各ユニット電力計T間の無線通信方式としてPHSを例示したが、他の無線通信方式を採用することもできる。たとえば、無線LANを構成しているサーバとクライアントに、本発明を適用することも可能である。さらに、上記実施形態では、端局である各ユニット電力計Tは、複数の階層を備えたツリー状にネットワーク接続されている例を示した。これに代えて、各ユニット電力計Tが個別にサーバ装置1へ接続されるようにしてもよい。さらにまた、各ユニット電力計Tからサーバ装置1へ伝送されるデータは、電圧データなどの他のデータであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の一形態に係る給電監視制御システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】前記給電監視制御システムに用いられるユニット電力計の一構成例を示す正面図である。
【図3】前記ユニット電力計における無線通信装置の一構成例を示すブロック図である。
【図4】サーバ装置の一構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の一形態に係る給電監視制御システムにおけるメンテナンス時の通信動作を説明するための図である。
【図6】本発明の実施の他の形態に係る給電監視制御システムにおけるメンテナンス時の通信動作を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の他の形態に係る給電監視制御システムにおけるメンテナンス時の通信動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0059】
1 サーバ装置
2 通信回線
3 負荷開閉器
4 電力量計
5 無線通信装置
6 端子台
10 専用ツール
11 無線機
12 無線通信制御部
13 タイマ
14,24 メモリ
15,51 入力操作部
21,22,57 インタフェイス
23 機内通信制御部
24データメモリ
25 データ加工部
26 ワーキングメモリ
52 ユニット制御部
53,54 データベース
56 ネットワーク管理部
T1−1〜T1−5,T1−11,T1−12 ユニット電力計
T2−1〜T2−10,T2−11〜T2−14 ユニット電力計
T3−1〜T3−5,T3−11,T3−12 ユニット電力計
T4−1〜T4−4,T4−11,T4−12 ユニット電力計
T5−1,T5−2,T5−11,T5−12 ユニット電力計
GWa,GWb,GWc,・・・ ゲートウエイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線通信装置から成り、各無線通信装置は、所定のビット数の第1の識別情報を記憶しており、受信された識別情報が前記第1の識別情報と一致することで、他の無線通信装置との間でメッセージの無線通信を可能とする無線通信システムにおいて、
前記各無線通信装置には、機体に付されている固有のデータに基づいて予め規定されている算出方法によって一義的に導き出すことができ、前記所定のビット数から成る第2の識別情報と、前記固有のデータから成る第3の識別情報とがさらに記憶され、
前記第2の識別情報で所望とする無線通信装置の呼出しを行い、呼出した無線通信装置と前記メッセージの通信を行うことで前記第3の識別情報を取得し、該第3の識別情報が前記所望とする無線通信装置における前記第3の識別情報と一致する場合に、以降のメッセージの無線通信を行う専用ツールを備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記無線通信装置は、前記専用ツールから前記第2の識別情報で呼出しが行われ、メッセージを通信して、前記メッセージ中の第3の識別情報が自機の第3の識別情報と異なる場合には、前記専用ツールに接続拒否信号を送信し、所定時間、前記専用ツールからの呼出しに対する応答を休止することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記無線通信装置は、前記第2の識別情報が一致する呼出しを受けたときは、前記固有のデータに基づくタイミングだけ遅延して応答を行うことを特徴とする請求項1または2記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記各無線通信装置および専用ツールは、PHSトランシーバモードで通信を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
ネットワークを管理する管理装置から、複数の無線通信装置がツリー状に配列されて成り、一の無線通信装置が第1の識別情報を用いて他の無線通信装置と通信を行うことで、各無線通信装置で送受信すべきデータが、自機より上位側の無線通信装置で中継されて前記管理装置との間で送受信されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記各無線通信装置から管理装置へ伝送されるデータは各無線通信装置で収集されたセンシングデータであり、管理装置から各無線通信装置へ伝送されるデータは各無線通信装置に対する制御データであることを特徴とする請求項5記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記請求項6記載の無線通信システムにおいて、各無線通信装置に、前記センシングデータを取得する電力量計および前記制御データに応答して開閉制御を行う負荷開閉器が併設されて成ることを特徴とする給電監視制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−188920(P2009−188920A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29264(P2008−29264)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000204424)大井電気株式会社 (25)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】