説明

無線通信装置および無線通信システム

【課題】 運転支援の信頼性を向上させることができる無線通信装置および無線通信システムを提供する。
【解決手段】 無線通信装置(100)は、他無線通信装置と通信を行う通信手段(30)を備えた無線通信装置であって、通信手段(30)が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと無線通信装置(100)を搭載した車両の運転支援を実現するために通信手段(30)が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとを設定する通信エリア設定手段(43)と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするか否かを判定する判定手段(43)と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーしないと判定手段(43)により判定された場合、運転支援できない旨または運転支援が制限される旨を報知する報知手段(50)とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置および無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両同士で通信を行い(車々間通信)、車間距離を計測し、車両同士の衝突を回避するシステムが提案されている。例えば、この車々間通信を利用して得られた走行情報から他車両の位置を予測することにより、その他車両と自車両との衝突可能性を算出し、その算出結果に基づいて衝突危険性がある場合には衝突を回避する制御を行う技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−276696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、中継局(他車両)は自由に移動することから、中継局が存在しなかったり中継局が存在しても適切な位置に中継局が存在しなかったりする場合がある。したがって、通信可能エリアが狭いアドホックネットワークが構成されてしまう場合がある。この場合、特許文献1の技術では、他車両との衝突を予測するために必要な情報が得られているか否かが確認されていないことになる。したがって、特許文献1の技術に基づいて運転支援を行おうとしても信頼性の面で問題となる。
【0005】
本発明は、運転支援の信頼性を向上させることができる無線通信装置および無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る無線通信装置は、他無線通信装置と通信を行う通信手段を備えた車載の無線通信装置にであって、通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと無線通信装置を搭載した車両の運転支援を実現するために通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとを設定する通信エリア設定手段と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするか否かを判定する判定手段と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーしないと判定手段により判定された場合、運転支援できない旨または運転支援が制限される旨を報知する報知手段とを備えることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係る無線通信装置においては、通信手段によって他無線通信装置と通信が行われ、通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと無線通信装置を搭載した車両の運転支援を実現するために通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとが通信エリア設定手段によって設定され、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするか否かが判定手段によって判定され、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーしないと判定手段により判定された場合に運転支援できない旨または運転支援が制限される旨が報知手段によって報知される。この場合、無線通信装置を搭載した車両の運転者は、他車両との衝突を予測するために必要な情報が得られているか否かを確認することができる。したがって、運転者が運転支援を過信することが防止される。以上のことから、運転支援の信頼性が向上する。
【0008】
本発明に係る他の無線通信装置は、他無線通信装置と通信を行う通信手段を備えた車載の無線通信装置であって、通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと、無線通信装置を搭載した車両の走行状態に基づいて設定された運転支援を実現するために通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとを設定する通信エリア設定手段と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするか否かを判定する判定手段と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーしないと判定手段により判定された場合、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするために無線通信装置を搭載した車両が必要とする走行条件を報知する報知手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る他の無線通信装置においては、通信手段によって他無線通信装置と通信が行われ、通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと無線通信装置を搭載した車両の走行状態に基づいて設定された運転支援を実現するために通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとが通信エリア設定手段によって設定され、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするか否かが判定手段によって判定され、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーしないと判定手段により判定された場合に第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするために無線通信装置を搭載した車両が必要とする走行条件が報知手段によって報知される。この場合、本発明に係る無線通信装置を搭載した車両の運転者は、他車両との衝突を予測することのできる走行条件を認識することができる。したがって、運転者が運転支援をされたい場合に、走行条件を満たすように運転することで、運転支援を確実に受けることができるようになる。以上のことから、運転支援の信頼性が向上する。
【0010】
本発明に係るさらに他の無線通信装置は、他無線通信装置と通信を行う通信手段を備えた車載の無線通信装置であって、通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと、無線通信装置を搭載した車両の走行状態に基づいて設定された運転支援を実現するために通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとを設定する通信エリア設定手段と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするか否かを判定する判定手段と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーしないと判定手段により判定された場合、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするように無線通信装置を搭載した車両の走行状態を制御する走行状態制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0011】
本発明に係るさらに他の無線通信装置においては、通信手段によって他無線通信装置と通信が行われ、通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと無線通信装置を搭載した車両の走行状態に基づいて設定された運転支援を実現するために通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとが通信エリア設定手段によって設定され、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするか否かが判定手段によって判定され、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーしないと判定手段により判定された場合に第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするように無線通信装置を搭載した車両の走行状態が走行状態制御手段によって制御される。この場合、適切な運転支援が実現可能となるように無線通信装置を搭載した車両の走行状態が制御されることから、運転支援が確実に行われるようになり、無線通信装置を搭載した車両の安全最優先の走行が可能となる。したがって、運転支援の信頼性が向上する。
【0012】
本発明に係るさらに他の無線通信装置は、他無線通信装置と通信を行う通信手段を備えた車載の無線通信装置であって、通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと無線通信装置を搭載した車両の運転支援を実現するために通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとを設定する通信エリア設定手段と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするか否かを判定する判定手段と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーしないと判定手段により判定された場合、第1の通信エリアが拡大するように通信手段を制御する通信エリア制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0013】
本発明に係るさらに他の無線通信装置においては、通信手段によって他無線通信装置と通信が行われ、通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと無線通信装置を搭載した車両の運転支援を実現するために通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとが通信エリア設定手段によって設定され、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするか否かが判定手段によって判定され、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーしないと判定手段により判定された場合に第1の通信エリアが拡大するように通信手段が通信エリア制御手段によって制御される。この場合、運転支援を実現するために必要な通信エリアが確保される。したがって、運転支援の信頼性が向上する。また、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーできない場合に初めて第1の通信エリアが拡大されることから、通信手段の無駄な出力増加を防止することができる。
【0014】
通信エリア設定手段は、無線通信装置を搭載した車両の走行状態に基づいて第2の通信エリアを設定してもよい。また、通信エリア設定手段は、無線通信装置を搭載した車両の走行速度に基づいて第2の通信エリアを設定してもよい。さらに、通信エリア設定手段は、想定する運転支援の形態に基づいて前記第2の通信エリアを設定してもよい。
【0015】
無線通信装置を搭載した車両の走行経路を予想する走行経路予想手段をさらに備え、通信エリア設定手段は走行経路予想手段により予想された走行経路に基づいて第2の通信エリアを設定してもよい。この場合、走行経路に応じた運転支援が実現される。
【0016】
通信手段は、アドホックネットワークを構成する無線通信端末装置であり、通信エリア設定手段は、通信手段の通信可能エリアと他の無線通信装置が備える通信手段の通信可能エリアとに基づいて第1の通信エリアを設定してもよい。この場合、通信手段は、他無線装置とアドホックネットワークを形成する。したがって、他無線装置が中継局となって第1の通信エリアが拡大する。以上のことから、運転支援の信頼性がさらに向上する。
【0017】
本発明に係る無線通信システムは、複数の無線通信装置を有する無線通信システムであって、車両に搭載されて他無線通信装置と通信を行う通信手段を備えた無線通信装置と、通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと無線通信装置を搭載した車両の運転支援を実現するために通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとを設定する通信エリア設定手段と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするか否かを判定する判定手段と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーしないと判定手段により判定された場合に運転支援できない旨または運転支援が制限される旨を報知する報知手段とを備えることを特徴とするものである。
【0018】
本発明に係る無線通信システムにおいては、車両に搭載され通信手段を備えた無線通信装置によって他無線通信装置と通信が行われ、通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと無線通信装置を搭載した車両の運転支援を実現するために通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとが通信エリア設定手段によって設定され、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするか否かが判定手段によって判定され、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーしないと判定手段により判定された場合に運転支援できない旨または運転支援が制限される旨が報知手段によって報知される。この場合、無線通信装置を搭載した車両の運転者は、他車両との衝突を予測するために必要な情報が得られているか否かを確認することができる。したがって、運転者が運転支援を過信することが防止される。以上のことから、運転支援の信頼性が向上する。
【0019】
本発明に係る他の無線通信システムは、複数の無線通信装置を有する無線通信システムであって、車両に搭載されて他無線通信装置と通信を行う通信手段を備えた無線通信装置と、通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと無線通信装置を搭載した車両の走行状態に基づいて設定された運転支援を実現するために通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとを設定する通信エリア設定手段と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするか否かを判定する判定手段と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーしないと判定手段により判定された場合に第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするために無線通信装置を搭載した車両が必要とする走行条件を報知する報知手段とを備えることを特徴とするものである。
【0020】
本発明に係る他の無線通信システムにおいては、車両に搭載され通信手段を備えた無線通信装置によって他無線通信装置と通信が行われ、通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと無線通信装置を搭載した車両の走行状態に基づいて設定された運転支援を実現するために通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとが通信エリア設定手段によって設定され、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするか否かが判定手段によって判定され、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーしないと判定手段により判定された場合に第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするために無線通信装置を搭載した車両が必要とする走行条件が報知手段によって報知される。この場合、本発明に係る無線通信装置を搭載した車両の運転者は、他車両との衝突を予測することのできる走行条件を認識することができる。したがって、運転者が運転支援をされたい場合に、走行条件を満たすように運転することで、運転支援を確実に受けることができるようになる。以上のことから、運転支援の信頼性が向上する。
【0021】
本発明に係るさらに他の無線通信システムは、複数の無線通信装置を有する無線通信システムであって、車両に搭載されて他無線通信装置と通信を行う通信手段を備えた無線通信装置と、通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと無線通信装置を搭載した車両の走行状態に基づいて設定された運転支援を実現するために通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとを設定する通信エリア設定手段と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするか否かを判定する判定手段と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーしないと判定手段により判定された場合に第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするように無線通信装置を搭載した車両の走行状態を制御する走行状態制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0022】
本発明に係るさらに他の無線通信システムにおいては、車両に搭載され通信手段を備えた無線通信装置によって他無線通信装置と通信が行われ、通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと無線通信装置を搭載した車両の走行状態に基づいて設定された運転支援を実現するために通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとが通信エリア設定手段によって設定され、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするか否かが判定手段によって判定され、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーしないと判定手段により判定された場合に第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするように無線通信装置を搭載した車両の走行状態が走行状態制御手段によって制御される。この場合、実現可能な運転支援がなされるように無線通信装置を搭載した車両の走行状態が制御されることから、無線通信装置を搭載した車両の安全最優先の走行が可能となる。したがって、運転支援の信頼性が向上する。
【0023】
本発明に係るさらに他の無線通信システムは、複数の無線通信装置を有する無線通信システムであって、車両に搭載されて他無線通信装置と通信を行う通信手段を備えた無線通信装置と、通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと無線通信装置を搭載した車両の運転支援を実現するために通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとを設定する通信エリア設定手段と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするか否かを判定する判定手段と、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーしないと判定手段により判定された場合に第1の通信エリアが拡大するように通信手段を制御する通信エリア制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0024】
本発明に係るさらに他の無線通信システムにおいては、車両に搭載され通信手段を備えた無線通信装置によって他無線通信装置と通信が行われ、通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと無線通信装置を搭載した車両の運転支援を実現するために通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとが通信エリア設定手段によって設定され、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーするか否かが判定手段によって判定され、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーしないと判定手段により判定された場合に第1の通信エリアが拡大するように通信手段が通信エリア制御手段によって制御される。この場合、運転支援を実現するために必要な通信エリアが確保される。したがって、運転支援の信頼性が向上する。また、第1の通信エリアが第2の通信エリアをカバーできない場合に初めて第1の通信エリアが拡大されることから、通信手段の無駄な出力増加を防止することができる。
【0025】
通信エリア設定手段は、無線通信装置を搭載した車両の走行状態に基づいて第2の通信エリアを設定してもよい。通信エリア設定手段は、無線通信装置を搭載した車両の走行速度に基づいて第2の通信エリアを設定してもよい。通信エリア設定手段は、想定する運転支援の形態に基づいて第2の通信エリアを設定してもよい。
【0026】
無線通信装置は、無線通信装置を搭載した車両の走行経路を予想する走行経路予想手段をさらに備え、通信エリア設定手段は走行経路予想手段により予想された走行経路に基づいて第2の通信エリアを設定してもよい。この場合、走行経路に応じた運転支援が実現される。
【0027】
通信手段は、アドホックネットワークを構成する無線通信端末装置であり、通信エリア設定手段は通信手段の通信可能エリアと他の無線通信装置が備える通信手段の通信可能エリアとに基づいて第1の通信エリアを設定してもよい。この場合、通信手段は、他無線装置とアドホックネットワークを形成する。したがって、他無線装置が中継局となって第1の通信エリアが拡大する。以上のことから、運転支援の信頼性がさらに向上する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、無線通信装置を搭載した車両の運転者は、他車両との衝突を予測するために必要な情報が得られているか否かを確認することができる。したがって、運転者が運転支援を過信することが防止される。以上のことから、運転支援の信頼性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0030】
図1は、本発明の第1実施例に係る無線通信装置100の全体構成を示すブロック図である。無線通信装置100は、車両に搭載されている。以下、この車両のことを自車両と呼ぶ。図1に示すように、無線通信装置100は、車両情報取得部10、GPS(Global Positioning System)20、通信機30、制御部40、表示モニタ50および運転支援制御部60を備える。なお、図1の無線通信装置100は、他車両の無線通信装置とともに無線通信システムを構成する。
【0031】
車両情報取得部10は、自車両の走行速度、ウィンカーの動作状態、ブレーキ装置の動作状態、故障情報等に関する自車両の車両情報を取得し、取得した車両情報を通信機30、制御部40の車両情報処理部42および通信エリア算出部43に与える。GPS20は、道路接続情報、自車両の現在位置(経度および緯度)、自車両の進行方向等のGPS情報を取得し、取得したGPS情報を車両情報処理部42および通信エリア算出部43に与える。
【0032】
通信機30は、他車両の無線通信装置が備える通信機とアドホックネットワークを構成する車々間通信機であり、他車両の通信機との間で情報の送受信を行う。例えば、通信機30は、車両情報取得部10から与えられた自車両の車両情報およびGPS20から与えられたGPS情報を無線により他車両の通信機に送信する。また、通信機30は、他車両の車両情報および他車両のGPS情報を受信する。通信機30は、受信した他車両の車両情報およびGPS情報を車両情報処理部42および通信エリア算出部43に与える。
【0033】
制御部40は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)等からなり、通信制御部41、車両情報処理部42、通信エリア算出部43および表示モニタ制御部44を含む。通信制御部41は、車々間通信を行うために必要な通信機30の送信出力、変調速度、変調方式等を制御する。車両情報処理部42は、GPS20から与えられたGPS情報、車両情報取得部10から与えられた車両情報および通信機30から与えられた他車両のGPS情報および車両情報に基づいて、自車両の運転支援に必要な条件を計算する。
【0034】
通信エリア算出部43は、通信機30から与えられた他車両のGPS情報およびGPS20から与えられたGPS情報に基づいて、通信機30によりアドホック通信が可能なエリアである通信可能エリアXを算出する。また、通信エリア算出部43は、車両情報処理部42による計算結果に基づいて、自車両の運転支援に必要となる通信機30の送信データの到達範囲(通信必要エリアY)を算出する。さらに、通信エリア算出部43は、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーするか否かを判定し、その判定結果を表示モニタ制御部44に与える。表示モニタ制御部44は、通信エリア算出部43の判定結果に基づいて表示モニタ50を制御する。
【0035】
表示モニタ50は、表示モニタ制御部44の指示により、運転支援の可否または通信可能エリアXで実現可能な運転支援を表示する。なお、表示モニタ50の代わりに音声案内装置が設けられていてもよい。この場合、音声案内装置は、運転支援の可否または通信可能エリアXで実現可能な運転支援を音声によって運転者に報知することができる。運転支援制御部60は、車両情報処理部42の計算結果および通信エリア算出部43の算出結果に基づいて可能な運転支援を制御する。詳細は後述する。
【0036】
続いて、通信可能エリアXに応じた運転支援についての詳細を説明する。図2は、通信可能エリアXに応じた運転支援の一例を示す模式図である。図2においては、十字路における出会い頭事故防止に関する運転支援が例として示されている。図2(a)は上記運転支援の実現に必要な通信必要エリアYについて説明するための図であり、図2(b)は通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーする場合を示し、図2(c)は通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーできない場合を示す。
【0037】
図2(a)に示すように、自車両200は優先道路を十字路201の方向に進行している。一方、他車両202は自車両200の進行方向と直角なす方向から非優先道路を十字路201の方向に進行している。この場合、自車両200の走行速度の上限が70km/hかつ他車両201の走行速度の上限が25km/hである場合の出会い頭事故防止の運転支援がなされるためには、自車両200から十字路201までの200mの範囲および他車両202から十字路201までの25mの範囲に自車両200の通信機30の送信データが到達することが必要である。
【0038】
図2(a)の場合には、この通信エリアが上記運転支援に必要な通信必要エリアYとなる。したがって、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーすることができれば自車両200と他車両202との出会い頭事故防止の運転支援がなされることになる。なお、自車両200と他車両202とが互いに向かって進行しているか否かは、GPS20から与えられる情報および他車両202の通信機から無線通信により受信される情報に基づいて車両情報処理部42によって判断される。なお、出会い頭事故防止の運転支援における通信必要エリアYは、自車両200および他車両202の走行速度等の走行状態に応じて複数用意されている。
【0039】
図2(b)に示すように、自車両200と他車両202との間に中継局となる他車両203が存在する場合には、自車両200の通信可能エリアXは、他車両203および他車両202の通信可能エリアを介して拡大する。自車両200、他車両203および他車両202の単独での通信可能エリアをそれぞれX1、X2およびX3とした場合、自車両200の通信可能エリアXは、X1、X2およびX3の全体にまで拡大する。したがって、自車両200の通信可能エリアXは、上記運転支援を実現するために必要な通信必要エリアYの全体をカバーする。
【0040】
この場合には、通信エリア算出部43によって通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーすると判定されるため、表示モニタ制御部44の指示によって表示モニタ50に通常の運転支援が可能である旨の表示がなされる。また、運転支援制御部60によって自車両200の運転支援がなされる。
【0041】
図2(c)に示すように、自車両200と他車両202との間に中継局となる他車両203が存在しない場合には、自車両200の通信可能エリアXは拡大されない。したがって、通信可能エリアXは、上記運転支援を実現するために必要な通信必要エリアYの一部をカバーできないことになる。
【0042】
図2(c)の場合には、通信エリア算出部43によって通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしないと判定されるため、表示モニタ制御部44の指示によって表示モニタ50の運転支援が不可能である旨の表示がなされる。以上のことから、本実施例に係る無線通信装置100を用いれば、自車両200の運転者が他車両202との衝突を予測するために必要な情報が得られているか否かを確認することができる。
【0043】
なお、上記運転支援ができなくても、制限された運転支援であれば可能である旨が表示モニタ50に表示されてもよい。例えば、自車両200および他車両202の走行速度の上限がそれぞれ20km/hおよび5km/hであり、自車両200および他車両202から十字路までの距離がそれぞれ50mおよび5mである場合の出会い頭事故防止の運転支援であれば実現可能である旨が表示モニタ制御部44の指示によって表示モニタ50に表示されてもよい。
【0044】
図3は、通信可能エリアXに応じた運転支援の他の例を示す模式図である。図3は、対向車との衝突事故防止に関する運転支援が例として示されている。図3(a)は上記運転支援の実現に必要な通信必要エリアYについて説明するための図であり、図3(b)は通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーする場合を示し、図3(c)は通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーできない場合を示す。
【0045】
図3(a)に示すように、自車両200は一車線道路を進行している。一方、他車両202は、自車両200の進行方向とは逆向きに自車両200の方向に上記一車線道路を進行している。この場合、自車両200および他車両202の走行速度の上限が60km/hである場合の衝突事故防止の運転支援が実現されるためには、自車両200から他車両202までの270mの範囲に自車両200の通信機30の送信データが到達することが必要である。なお、上記270mの範囲は、情報提供されてからドライバが操作を行うまでの遅れ時間、車両の減速度等の走行状態に応じて可変の値としてもよい。
【0046】
図3(a)の場合には、この通信エリアが通信必要エリアYとなる。したがって、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーすることができれば、自車両200と他車両202との衝突事故が防止されることになる。なお、自車両200と他車両202とが互いに向かって進行しているか否かは、GPS20から与えられる情報および他車両202の通信機から無線通信により受信する情報に基づいて車両情報処理部42によって判断される。なお、対向車との衝突事故防止に関する運転支援における通信必要エリアYは、自車両200および他車両202の走行速度等の走行状態に応じて複数用意されている。
【0047】
図3(b)に示すように、自車両200と他車両202との間に中継極となる他車両203が存在する場合には、自車両200の通信可能エリアXは、他車両203および他車両202の通信可能エリアを介して拡大する。自車両200、他車両203および他車両202の単独での通信可能エリアをそれぞれX1、X2およびX3とした場合、自車両200の通信可能エリアXは、X1、X2およびX3の全体にまで拡大する。したがって、自車両200の通信可能エリアXは、上記運転支援を実現するために必要な通信必要エリアYの全体をカバーする。
【0048】
したがって、図3(b)の場合には通信エリア算出部43によって通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーすると判定される。その結果、表示モニタ制御部44の指示によって表示モニタ50に運転支援が可能である旨の表示がなされる。
【0049】
図3(c)に示すように、自車両200と他車両202との間に中継局となる他車両203が存在しない場合には、自車両200の通信可能エリアXは拡大されない。したがって、通信可能エリアXは、上記運転支援を実現するために必要な通信必要エリアYの一部をカバーできないことになる。
【0050】
この場合には、通信エリア算出部43によって通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしないと判定されるため、表示モニタ制御部44の指示によって表示モニタ50の運転支援が不可能である旨の表示がなされる。以上のことから、本実施例に係る無線通信装置100を用いれば、自車両200の運転者が他車両202との衝突を予測するために必要な情報が得られているか否かを確認することができる。
【0051】
なお、上記運転支援ができなくても、制限された運転支援であれば可能である旨が表示モニタ50に表示されてもよい。例えば、自車両200および他車両202の走行速度の上限が20km/hであり、自車両200から他車両202までの距離が90mである場合の衝突事故防止に関する運転支援であれば実現可能である旨が表示モニタ制御部44の指示によって表示モニタ50に表示されてもよい。
【0052】
図4は、制御部40が無線通信装置100を制御する際のフローチャートの一例を示す図である。図4に示すように、まず、車両情報処理部42は、通信機30から与えられる他車両のGPS情報に基づいて自車両の周辺の他車両の位置を取得する(ステップS1)。次に、通信エリア算出部43は、想定している運転支援の実現に必要な通信必要エリアYを算出する(ステップS2)。次いで、通信エリア算出部43は、自車両の通信可能エリアXを算出する(ステップS3)。
【0053】
次に、通信エリア算出部43は、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしているか否かを判定する(ステップS4)。ステップS4において通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしていると判定された場合、通信エリア算出部43は、運転支援制御部60に通常の運転支援が可能である旨の指示を与える(ステップS6)。その後、制御部40は動作を終了させる。
【0054】
ステップS4において通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしていると判定されなかった場合、表示モニタ制御部44は、表示モニタ50に運転支援が実現できない旨を表示させる(ステップS5)。その後、制御部40は動作を終了させる。なお、ステップS5において、表示モニタ制御部44は、算出された通信エリアXにより実現可能な制限された運転支援であれば可能である旨を表示モニタ50に表示させてもよい。
【0055】
以上のように、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーできない場合には運転支援ができない旨または制限された運転支援が可能である旨が表示モニタ50に表示されることから、自車両の運転者が他車両との衝突を予測するために必要な情報が得られているか否かを確認することができる。したがって、運転者が運転支援を過信することが防止される。以上のことから、運転支援の信頼性が向上する。
【0056】
なお、図2および図3で示した運転支援は、複数の運転支援の一例である。したがって、本実施例に係る無線通信装置100によって実現される運転支援は図2および図3で示した運転支援に限定されるものではない。運転支援の例としては、例えば、追突警報、右折警報、合流制御等がある。また、通信必要エリアYは複数用意されており、本実施例に係る無線通信装置100が実現する運転支援に応じて適宜選択される。
【0057】
本実施例においては、通信機30が通信手段に相当し、通信可能エリアXが第1の通信エリアに相当し、通信必要エリアYが第2の通信エリアに相当し、通信エリア算出部43が通信エリア設定手段および判定手段に相当し、表示モニタ50が報知手段に相当し、GPS20が走行経路予想手段に相当する。
【0058】
なお、上述した走行状態は、車速、加減速度、ウィンカ操作、アクセル・ブレーキ操作等の車両の走行状態、および、予測される車両の走行状態を含む。本実施例に係る車速に基づく通信必要エリアYの設定の他、例えば、ウィンカ操作があったときに右折または左折することを予測して右折または左折での通信必要エリアYを設定したり、車両の加速度を検出した場合には通信必要エリアYを広めに設定したり、アクセル操作を検出した場合には通信必要エリアYを広めに設定したり、ブレーキ操作を検出した場合には通信必要エリアYを狭めに設定してもよい。
【0059】
また、本実施例においては、通信可能エリアXが通信必要エリアYの全体をカバーしているか否かによって通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーするか否かを判定しているが、本発明はこれに限られない。例えば、通信可能エリアXと通信必要エリアYとを比較して、通信可能エリアXが通信必要エリアYを、運転支援を行えるようにカバーしているか否かを判定してもよい。具体的には、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしている領域の割合を算出して、その割合が所定値以上のときに通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしていると判定してもよいし、カバーしている領域の形状からカバーしていると判定してもよい。
【実施例2】
【0060】
図5は、本発明の第2実施例に係る無線通信装置100aの全体構成を示すブロック図である。無線通信装置100aが図1の無線通信装置100と異なる点は、表示モニタ制御部44および表示モニタ50がない点および車両制御部70が設けられている点である。
【0061】
車両制御部70以外の各構成部分は、無線通信装置100と同様の動作を行う。車両制御部70は、車両情報処理部42の計算結果および通信エリア算出部43の算出結果に基づいて、無線通信装置100が搭載されている自車両が実現可能な運転支援に基づいて自車両の走行状態を制御する。以下、上述した図2および図3の運転支援のケースに基づいて詳細を説明する。
【0062】
図2(c)の場合には、通信エリア算出部43によって通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしないと判定されるため、自車両200の走行速度が大きいと出会い頭の衝突事故防止に関する運転支援が実現されないことになる。この場合、自車両200および他車両202の走行速度の上限がそれぞれ20km/hおよび5km/hであり、自車両200および他車両202から十字路までの距離がそれぞれ50mおよび5mである場合の出会い頭事故防止の運転支援であれば実現可能である。したがって、車両制御部70は、この運転支援が実現されるように自車両200のブレーキ装置(図示せず)を制御して自車両200の走行速度を低下させる。
【0063】
図3(c)の場合にも、通信エリア算出部43によって通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしないと判定されるため、自車両200の走行速度が大きいと、対向車との衝突事故防止に関する運転支援が実現されないことになる。この場合、車両制御部70は、自車両200および他車両202の走行速度の上限が20km/hである場合の衝突事故防止の運転支援であれば実現可能である。したがって、車両制御部70は、この運転支援が実現されるように自車両200のブレーキ装置を制御して自車両200の走行速度を低下させる。
【0064】
図6は、制御部40が無線通信装置100aを制御する際のフローチャートの一例を示す図である。図6に示すように、まず、車両情報処理部42は、通信機30から与えられる他車両のGPS情報に基づいて自車両の周辺の他車両の位置を取得する(ステップS11)。次に、通信エリア算出部43は、想定している運転支援の実現に必要な通信必要エリアYを算出する(ステップS12)。次いで、通信エリア算出部43は、自車両の通信可能エリアXを算出する(ステップS13)。
【0065】
次に、通信エリア算出部43は、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしているか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14において通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしていると判定された場合、通信エリア算出部43は、運転支援制御部60に通常の運転支援が可能である旨の指示を与える(ステップS16)。その後、制御部40は動作を終了させる。
【0066】
ステップS14において通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしていると判定されなかった場合、通信エリア算出部43は、車両制御部70に制限された運転支援を行うように指示を与える(ステップS15)。その後、制御部40は動作を終了させる。
【0067】
以上のように、本実施例に係る無線通信装置100aを用いれば、通信可能エリアXから算出された制限された運転支援に合わせて自車両200の走行状態が制御される。したがって、自車両200の安全最優先の走行が可能となる。また、運転者が運転支援を過信することが防止される。以上のことから、運転支援の信頼性が向上する。なお、本実施例においては、車両制御部70が走行状態制御手段に相当する。
【実施例3】
【0068】
続いて、本発明の第3実施例に係る無線通信装置100bについて説明する。無線通信装置100bの構成は図1の無線通信装置100と同様の構成を有する。無線通信装置100bが無線通信装置100と異なる点は、通信機30の制御方法である。以下、詳細を説明する。
【0069】
図7は、上述した図2の運転支援のケースの場合に通信機30を制御する方法について説明するための模式図である。図7(a)に示すように通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーできない場合、通信エリア算出部43によって通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしないと判定される。したがって、出会い頭の衝突事故防止に関する運転支援が実現されないことになる。
【0070】
この場合、通信エリア算出部43は、通信機30の送信出力を所定の出力まで大きくすることによって自車両200の通信可能エリアXがどの程度まで拡大するかを算出する。拡大された通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーすると通信エリア算出部43によって判定された場合、図7(b)に示すように、通信制御部41は、通信機30の送信出力を変化させて自車両200の通信可能エリアXを通信必要エリアYをカバーするように拡大させる。この場合、図2で説明した運転支援が実現可能となる。
【0071】
通信可能エリアXが拡大されても通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーすると通信エリア算出部43によって判定されなかった場合、表示モニタ制御部44は、表示モニタ50に運転支援が実現できない旨を表示させる。なお、表示モニタ制御部44は、算出された通信エリアXにより実現可能な制限された運転支援を表示モニタ50に表示させてもよい。
【0072】
なお、通信制御部41は、通信機30の変調方式を雑音に強い方式に変えることによって通信可能エリアXを拡大させてもよい。また、通信制御部41は、通信機30の変調速度を低下させて受信側通信機の必要CNR(Carrier to Noise Ratio)を低下させることによって、通信可能エリアXを拡大させてもよい。
【0073】
図8は、制御部40が無線通信装置100bを制御する際のフローチャートの一例を示す図である。図8に示すように、まず、車両情報処理部42は、通信機30から与えられる情報に基づいて自車両の周辺の他車両の位置を取得する(ステップS21)。次に、通信エリア算出部43は、想定している運転支援の実現に必要な通信必要エリアYを算出する(ステップS22)。次いで、通信エリア算出部43は、自車両の通信可能エリアXを算出する(ステップS23)。
【0074】
次に、通信エリア算出部43は、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしているか否かを判定する(ステップS24)。ステップS24において通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしていると判定された場合、通信エリア算出部43は、運転支援制御部60に通常の運転支援が可能である旨の指示を与える(ステップS28)。その後、制御部40は動作を終了させる。
【0075】
ステップS24において通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしていると判定されなかった場合、通信エリア算出部43は、通信機30の送信出力を所定の出力まで変更することを想定する(ステップS25)。次に、通信エリア算出部43は、通信機30の送信出力を所定の出力まで大きくすることによって自車両200の通信可能エリアXがどの程度まで拡大するかを算出する(ステップS26)。
【0076】
次いで、通信エリア算出部43は、拡大された通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーするか否かを判定する(ステップS27)。ステップS26において拡大された通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーすると判定された場合、通信制御部41は、通信機30の送信出力を制御して自車両200の通信可能エリアXを拡大させる(ステップS29)。その後、制御部40は、ステップS28の動作を行う。
【0077】
ステップS26において拡大された通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーすると判定されなかった場合、表示モニタ制御部44は、表示モニタ50に運転支援が実現できない旨を表示させる(ステップS28)。その後、制御部40は動作を終了させる。なお、ステップS28において、表示モニタ制御部44は、算出された通信エリアXにより実現可能な運転支援を表示モニタ50に表示させてもよい。
【0078】
以上のように、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーできない場合には通信可能エリアXが拡大される。それにより、運転支援に必要な通信エリアが確保される。また、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーできない場合に初めて通信可能エリアXが拡大されることから、通信機30の無駄な出力増加を防止することができる。
【0079】
また、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーできることが判定されてから通信可能エリアXが拡大されることから、通信機30の無駄な出力増加を防止することができる。さらに、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーできない場合には運転支援ができない旨または制限された運転支援が可能である旨が表示モニタ50に表示されることから、自車両の運転者が他車両との衝突を予測するために必要な情報が得られているか否かを確認することができる。また、運転者が運転支援を過信することが防止される。その結果、運転支援の信頼性が向上する。なお、本実施例においては、通信制御部41が通信エリア制御手段に相当する。
【実施例4】
【0080】
続いて、本発明の第4実施例に係る無線通信装置100cについて説明する。無線通信装置100cの構成は図1の無線通信装置100と同様の構成を有する。無線通信装置100cが無線通信装置100と異なる点は、通信機30の制御方法である。以下、詳細を説明する。
【0081】
図9は、上述した図2の運転支援のケースの場合に通信機30を制御する方法について説明するための模式図である。図9(a)に示すように通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーできない場合、通信エリア算出部43によって通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしないと判定される。したがって、出会い頭の衝突事故防止に関する運転支援が実現されないことになる。
【0082】
この場合、通信制御部41は、図9(b)に示すように通信機30の送信出力を所定の出力まで増大させて自車両200の通信可能エリアXを拡大させる。通信可能エリアXが拡大される過程で中継局となる他車両が確認されれば、通信可能エリアXはさらに拡大されることになる。この場合、通信エリア算出部43は、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーするか否かを再度判定する。一方、通信可能エリアXが拡大されても中継局となる他車両が確認されなければ、通信制御部41は、通信機30の送信出力を元の出力まで低下させる。
【0083】
図10は、制御部40が無線通信装置100cを制御する際のフローチャートの一例を示す図である。図10に示すように、まず、車両情報処理部42は、通信機30から与えられる情報に基づいて自車両の周辺の他車両の位置を取得する(ステップS31)。次に、通信エリア算出部43は、想定している運転支援の実現に必要な通信必要エリアYを算出する(ステップS32)。次いで、通信エリア算出部43は、自車両の通信可能エリアXを算出する(ステップS33)。
【0084】
次に、通信エリア算出部43は、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしているか否かを判定する(ステップS34)。ステップS24において通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしていると判定された場合、通信エリア算出部43は、運転支援制御部60に通常の運転支援が可能である旨の指示を与える(ステップS41)。その後、制御部40は動作を終了させる。
【0085】
ステップS34において通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしていると判定されなかった場合、通信制御部41は、通信機30の送信出力を所定の出力まで増加させる(ステップS35)。次に、通信エリア算出部43は、中継局となる他車両が拡大された通信可能エリアX内に確認されたか否かを判定する(ステップS36)。
【0086】
ステップS36において中継局となる他車両が拡大された通信可能エリアX内に確認されなかった場合、通信制御部41は、通信機30の送信出力を元の出力に戻す(ステップS37)。次に、表示モニタ制御部44は、表示モニタ50に運転支援が実現できない旨を表示させる(ステップS38)。その後、制御部40は動作を終了させる。なお、ステップS38において、表示モニタ制御部44は、算出された通信エリアXにより実現可能な運転支援を表示モニタ50に表示させてもよい。
【0087】
ステップS36において中継局となる他車両が拡大された通信可能エリアX内に確認された場合には、通信エリア算出部43は中継局によってさらに拡大されつ通信エリアXを算出する(ステップS39)。次に、通信エリア算出部43は、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしているか否かを判定する(ステップS40)。ステップS40において通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしていると判定された場合、制御部40は、ステップS41の動作を行う。ステップS40において通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーしていると判定されなかった場合、制御部40は、ステップS37の動作を行う。
【0088】
以上のように、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーできない場合には通信可能エリアXが拡大される。それにより、運転支援に必要な通信エリアが確保される。また、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーできない場合に初めて通信可能エリアXが拡大されることから、通信機30の無駄な出力増加を防止することができる。
【0089】
さらに、通信可能エリアXが通信必要エリアYをカバーできない場合には運転支援ができない旨または制限された運転支援が可能である旨が表示モニタ50に表示されることから、自車両の運転者が他車両との衝突を予測するために必要な情報が得られているか否かを確認することができる。また、運転者が運転支援を過信することが防止される。その結果、運転支援の信頼性が向上する。
【0090】
なお、上記第1実施例〜第4実施例においては、通信エリアの設定、通信可能エリアが通信必要エリアをカバーできているか否かの判定等の全ての処理が無線通信装置によってなされているが、本発明に係る無線通信システムはこれに限定されない。例えば、通信エリア算出部が判断する通信エリアの設定、通信可能エリアが通信必要エリアをカバーできているか否かの判定等がインフラ側のセンタにおいてなされてもよい。すなわち、全ての構成が無線通信装置に備えられている必要はなく、無線通信システム全体として全ての構成が備えられていればよい。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の第1実施例に係る無線通信装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】通信可能エリアに応じた運転支援の一例を示す模式図である。
【図3】通信可能エリアに応じた運転支援の他の例を示す模式図である。
【図4】制御部が無線通信装置を制御する際のフローチャートの一例を示す図である。
【図5】本発明の第2実施例に係る無線通信装置の全体構成を示すブロック図である。
【図6】制御部が無線通信装置を制御する際のフローチャートの一例を示す図である。
【図7】図2の運転支援のケースの場合に通信機を制御する方法について説明するための模式図である。
【図8】制御部が無線通信装置を制御する際のフローチャートの一例を示す図である。
【図9】図2の運転支援のケースの場合に通信機を制御する方法について説明するための模式図である
【図10】制御部が無線通信装置を制御する際のフローチャートの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
10 車両情報取得部
20 GPS
30 通信機
40 制御部
41 通信制御部
42 車両情報処理部
43 通信エリア算出部
44 表示モニタ制御部
50 表示モニタ
60 運転支援制御部
70 車両制御部
100,100a,100b,100c 無線通信装置
200 自車両
X 通信可能エリア
Y 通信必要エリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他無線通信装置と通信を行う通信手段を備えた無線通信装置において、
前記通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと前記無線通信装置を搭載した車両の運転支援を実現するために前記通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとを設定する通信エリア設定手段と、
前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーするか否かを判定する判定手段と、
前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーしないと前記判定手段により判定された場合、運転支援できない旨または運転支援が制限される旨を報知する報知手段とを備えることを特徴とする車載の無線通信装置。
【請求項2】
他無線通信装置と通信を行う通信手段を備えた無線通信装置において、
前記通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと、前記無線通信装置を搭載した車両の走行状態に基づいて設定された運転支援を実現するために前記通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとを設定する通信エリア設定手段と、
前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーするか否かを判定する判定手段と、
前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーしないと前記判定手段により判定された場合、前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーするために前記無線通信装置を搭載した車両が必要とする走行条件を報知する報知手段とを備えることを特徴とする車載の無線通信装置。
【請求項3】
他無線通信装置と通信を行う通信手段を備えた無線通信装置において、
前記通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと、前記無線通信装置を搭載した車両の走行状態に基づいて設定された運転支援を実現するために前記通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとを設定する通信エリア設定手段と、
前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーするか否かを判定する判定手段と、
前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーしないと前記判定手段により判定された場合、前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーするように前記無線通信装置を搭載した車両の走行状態を制御する走行状態制御手段とを備えることを特徴とする車載の無線通信装置。
【請求項4】
他無線通信装置と通信を行う通信手段を備えた無線通信装置において、
前記通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと前記無線通信装置を搭載した車両の運転支援を実現するために前記通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとを設定する通信エリア設定手段と、
前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーするか否かを判定する判定手段と、
前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーしないと前記判定手段により判定された場合、前記第1の通信エリアが拡大するように前記通信手段を制御する通信エリア制御手段とを備えることを特徴とする車載の無線通信装置。
【請求項5】
前記通信エリア設定手段は、前記無線通信装置を搭載した車両の走行状態に基づいて前記第2の通信エリアを設定することを特徴とする請求項1または4記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記通信エリア設定手段は、前記無線通信装置を搭載した車両の走行速度に基づいて前記第2の通信エリアを設定することを特徴とする請求項5記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記通信エリア設定手段は、想定する運転支援の形態に基づいて前記第2の通信エリアを設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記無線通信装置を搭載した車両の走行経路を予想する走行経路予想手段をさらに備え、
前記通信エリア設定手段は、前記走行経路予想手段により予想された走行経路に基づいて前記第2の通信エリアを設定することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記通信手段は、アドホックネットワークを構成する無線通信端末装置であり、
前記通信エリア設定手段は、前記通信手段の通信可能エリアと他の無線通信装置が備える通信手段の通信可能エリアとに基づいて前記第1の通信エリアを設定することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項10】
複数の無線通信装置を有する無線通信システムであって、
車両に搭載されて他無線通信装置と通信を行う通信手段を備えた前記無線通信装置と、
前記通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと前記無線通信装置を搭載した車両の運転支援を実現するために前記通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとを設定する通信エリア設定手段と、
前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーするか否かを判定する判定手段と、
前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーしないと前記判定手段により判定された場合に運転支援できない旨または運転支援が制限される旨を報知する報知手段とを備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項11】
複数の無線通信装置を有する無線通信システムであって、
車両に搭載されて他無線通信装置と通信を行う通信手段を備えた前記無線通信装置と、
前記通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと前記無線通信装置を搭載した車両の走行状態に基づいて設定された運転支援を実現するために前記通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとを設定する通信エリア設定手段と、
前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーするか否かを判定する判定手段と、
前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーしないと前記判定手段により判定された場合に前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーするために前記無線通信装置を搭載した車両が必要とする走行条件を報知する報知手段とを備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項12】
複数の無線通信装置を有する無線通信システムであって、
車両に搭載されて他無線通信装置と通信を行う通信手段を備えた前記無線通信装置と、
前記通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと前記無線通信装置を搭載した車両の走行状態に基づいて設定された運転支援を実現するために前記通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとを設定する通信エリア設定手段と、
前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーするか否かを判定する判定手段と、
前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーしないと前記判定手段により判定された場合に前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーするように前記無線通信装置を搭載した車両の走行状態を制御する走行状態制御手段とを備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項13】
複数の無線通信装置を有する無線通信システムであって、
車両に搭載されて他無線通信装置と通信を行う通信手段を備えた前記無線通信装置と、
前記通信手段が他無線通信装置から情報を入手可能な第1の通信エリアと前記無線通信装置を搭載した車両の運転支援を実現するために前記通信手段が他無線通信装置から情報を入手する必要のある第2の通信エリアとを設定する通信エリア設定手段と、
前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーするか否かを判定する判定手段と、
前記第1の通信エリアが前記第2の通信エリアをカバーしないと前記判定手段により判定された場合に前記第1の通信エリアが拡大するように前記通信手段を制御する通信エリア制御手段とを備えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項14】
前記通信エリア設定手段は、前記無線通信装置を搭載した車両の走行状態に基づいて前記第2の通信エリアを設定することを特徴とする請求項10または13記載の無線通信システム。
【請求項15】
前記通信エリア設定手段は、前記無線通信装置を搭載した車両の走行速度に基づいて前記第2の通信エリアを設定することを特徴とする請求項14記載の無線通信システム。
【請求項16】
前記通信エリア設定手段は、想定する運転支援の形態に基づいて前記第2の通信エリアを設定することを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項17】
前記無線通信装置は、前記無線通信装置を搭載した車両の走行経路を予想する走行経路予想手段をさらに備え、
前記通信エリア設定手段は、前記走行経路予想手段により予想された走行経路に基づいて前記第2の通信エリアを設定することを特徴とする請求項10〜13のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項18】
前記通信手段は、アドホックネットワークを構成する無線通信端末装置であり、
前記通信エリア設定手段は、前記通信手段の通信可能エリアと他の無線通信装置が備える通信手段の通信可能エリアとに基づいて前記第1の通信エリアを設定することを特徴とする請求項10〜17のいずれかに記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−318087(P2006−318087A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−138312(P2005−138312)
【出願日】平成17年5月11日(2005.5.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】